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2021-03-08

必読書コピペマジレスしてみる・やっぱりオススメの21冊編 (1)

思い出してどうしても書きたくなったので書く。

前回→ anond:20210301080225

小野不由美魔性の子

ベストセラー十二国記シリーズエピソード0なのだけれど、独立して読めるのでこれにした。

この作品に魅了された理由は二つある。一つは、二つの異世界出会うことで起きる惨劇SF的に面白いということ。こちらの常識が向こうには全く通じず、逆もまたしかり。ホラーではあるが、コミュニケーション不全の悲しみもある。作中の大量死の原因は、たった一つの誤解が原因なのだ

もう一つは、主人公の未熟さが残酷なほど明らかになっていくことだ。ある意味ファンタジーに逃避しようとする読者に喧嘩を売る態度で、後述するが僕は作者に喧嘩を売られるのが好きである

ヤスミナ・カドラ「昼が夜に負うもの」。

貧困による家族との別離恋愛もつれや政治的立場の相違によってばらばらになっていく幼なじみ人妻による少年の誘惑、昔の知人との思いがけぬ場所での劇的な再会などなど、個人的に好きな要素が濃密に詰め込まれている。それは安易な娯楽に堕しそうでいて、何とか踏みとどまっている。

カミュ小説では背景に過ぎなかった人々を主役にしているのもいい。「異邦人」のアラブ人はまったくの他者というか、理解できない原理で動く人格を描かれない、あるいはそもそも持たない存在だったように記憶している。

同著者の「カブールの燕たち」も面白かった。イスラーム原理主義者により公衆面前で恥をかかされたことで、妻は夫を軽蔑し、憎むようになる。タリバン政権下の苛烈描写は読んでいて苦しく、告発の書としても読めるのだが、同時に、ストーリー自体オペラのように派手なのだ。わざとだろうか?

小松左京「果てしなき流れの果に」

壮大な時間空間の中で行われる追跡劇で、歴史改変タイムパラドックス進化の階梯など、テーマスケールが大きすぎてこの長さでそれをやろうとするのは完全な蛮勇なんだけど、でもたぶん小松左京作品では一番好き。この作品にはエピローグが二つあり、そのうちの片方は比較的序盤に現れる。失踪していたある登場人物が帰ってくる場面だ。これを、小説最後まで読んでからもう一度読むと、深いため息が出る。本当に果てしない旅を経て、帰ってきたのだなあと。

扱われた科学技術は古びるかもしれない。未来世界女性観や社会描写も今では受け入れられないかもしれない。でも、表現しようとしたテーマは古びていない。SFはいだって宇宙時間の果てに手を伸ばそうと愚直なまでの試みなのだ

フリオコルタサル「石蹴り遊び」

冒頭で、パリのどこを歩いていてもお互いに出会ってしま恋人の話で始まったので、どんなロマンチックな話になるのかな、と期待したのだが、友人が服毒自死未遂したり恋人赤ちゃんが死んだりしてもひたすらマテ茶や酒で飲んだくれている、こじらせ芸術家ワナビを含む)たちのお話だった。

しかし、この作品には仕掛けがある。通常の順番通りに読む「第一の書」という方法と、著者に指定された順番で、巻末にまとめられた付録の章を挟みながら読む「第二の書」という方法、この二通りで読めるのだ。第二の書では章の番号が飛び飛びになり、まさに石蹴り遊びのようになる。そこでは第一の書で省かれていたいくつかの事実や、登場人物の秘めた行動原理が明かされる。そればかりか新聞から脈絡ない切り抜きや、この本の著者と思しき人物の晦渋な文学論を含んだ独白が含まれ、そこでは一貫性を過剰に求め、受動的にしか読もうとしない者が批判される。要するに読者に喧嘩を売ってくるわけだ。

読者に喧嘩を売る芸術が好きだ。なぜなら偉大な作家と同じ土俵に立てた錯覚を持てるから

シドニー=ガブリエル・コレット青い麦

「ダフニスクロエー」並にこっぱずかしいイチャラブもの。誰だって一緒に育ってきた少年少女が迎える性の目覚め的なシチュエーション萌えしまう時期があるのだと思う。もっとも、村上春樹作品場合、一緒に育ってきた幼馴染の男女は不幸な結末を迎えるのが常套なのだけれど。

少年人妻に誘惑され先に性体験をするというのも、王道でいい気もする。とはいえ、昨今は少女が先に目覚めるパターンも読んでみたいと思うのである

沢木耕太郎深夜特急

北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」とか妹尾河童インド旅行記にしようかとも思ったが、終着地のロンドンについてからオチが笑えたのでこれにした(興味があったらこの二つも読んでください)。

元々はデリーからロンドンまでバスで行けるかどうかという賭けが旅のきっかけだが、「一人旅海外は二十六歳くらいがちょうどいい、それよりも若い経験値が少なすぎて、あまりにもすべてを吸収してしまおうとする」なんて趣旨のくだりがあり、初めての一人旅を読んでそうかもしれないとうなずいた。

少し前の時代旅行記面白い。今では身近なフォーケバブがすごく珍しいものとして書かれているし、天然痘が根絶されていない時代の怖さもある。一方、アフガニスタンイランが今ほど物騒ではなく書かれており、政変を身近な危険として感じることができる。

それはさておき、ほんと、スマホができて一人旅はずいぶんと楽になった。

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ夜間飛行

強くてかっこいいことや、くじけずに挑むことに背を向けていた自分が気に入った数少ない強い人間物語。「星の王子様」が気に入った人は、ぜひぜひこちらを読んでほしい。いや、星の王子様子供向けに感じられた人や、表現が簡潔すぎたり抽象的過ぎたりしていると感じた人にこそ読んでほしい。あの物語の背後にあった、サンテグジュペリ飛行機乗りとしての経験がそこにある。

ウラジーミルソローキン「青い脂」。

はるか未来の、中国の影響下にあるロシア。そこでは文豪クローン物語執筆させることで、謎の空色物質を生成する、錬金術プロジェクトが稼働していた! この神秘物質をめぐって繰り広げられる陰謀の周囲には、ロシア文豪文体パロディあり、フルシチョフ×スターリンのイチャラブセックスあり、ナチス同盟を結んだ並行宇宙ソ連あり。

筒井康隆高橋源一郎矢作俊彦を足して三で割らずに、ロシア権威文学暴力セックスでぶっ飛ばす。ちなみにラストは爆発オチループオチだ。

筒井康隆残像に口紅を

章が進むごとに使える文字を一つずつ減らしていく趣向で、たとえば最初の章から「あ」の含まれ言葉を使えなくなっている。表現の自由と不自由について体を張って考える作品であり、使えない文字が増えるにつれ、新しい表現開拓しなければならない。その中で語られる文学論や自伝は、片言だからこそ重い。また、使える文字制限がある中での官能表現も、表現の自由について鋭く問う。

筒井康隆のすごいところは、狂っているように見える文章を書く才能だ。それがなんですごいのかっていうと、正気を失った人をそれらしく演じるのがとても難しいからだ。というのも、精神を病んだ人のなかにも、本人の中では一貫した理屈があり、全くのでたらめではないからだ。また、倫理観の壊れた人間を書くのがめちゃくちゃうまい。かなりグロ耐性のある自分も「問題外科」だけは気持ち悪くて読めなかった。これも、人間常識についてかなり深く考えないとできないことだ。

ちなみに、ジョルジュ・ペレックの「煙滅」はイ段の文字を一回も使わないで翻訳された小説で、これもただの遊びにとどまらない。語りえないホロコーストという事件モチーフにしていて、あるべきものが不在なのにそれが何かわからない居心地の悪さをテーマにしている。これが気に入ったらオススメしたい。

レフ・トルストイアンナ・カレーニナ

ドストエフスキーヤバいやつだが、トルストイもそれ以上にヤバいやつだ。家庭を顧みずに財産を国に残そうとする狂信者だ。正直、妻や子供たちがかわいそうだ。後期の「光あるうち光の中を歩め」もはっきり言って宗教の勧誘パンフレットであり、読んでいて内容が完全に予想できる。ヤバい新興宗教パンフレットのほうが何が書いてあるか予想できなくてある意味でまだ興味深い。

しかし、そんな将来そこまで頭の固くなる人間不倫の話を書いたのだから面白い。確かに、清純な愛を貫くいい子ちゃんカップル不倫カップルの対比はわざとらしい。けれども、まじめカップル愛情の細やかさと、一時の感情に負けた罪のあるカップル、どちらも美しい文章で書かれている。物事は正しくあるべきと考えている人間が、罪を犯してしまう悲しみを描いているのがいい。

これは、プロット道徳に完全に屈従させてしまう前のトルストイのすばらしさが詰まっている(そういうわけで好きな長篇の順番は年代順に「アンナ・カレーニナ」、「戦争と平和」、「復活」)。

あ、今思い出したけど、ソルジェニーツィンも好きだったんだった。

星新一「つねならぬ話」

作品根底には人間性への諦念が横たわっているのだけれども、初期の頃はそれが明確な暴力となって描かれていた。表現淡々としているが、殺人人類滅亡なんてよくある話だった。けれども、このころになるともっと表現が静かになっていった。悟りを開いた、というのとは違う。間違いなく諦念はある。けれども、苦い絶望とはまた別の感情がこもっている気もする。非SFのものが多いのも面白いので、星新一の芸風に飽きた頃に改めて手に取ってほしい。

続く→ anond:20210308082031

2021-03-07

今のうちにシンエヴァの予想しとこうぜ

ゲンドウと冬月の登山の回想がある

・惣流は出てこない

One Last Kissは中盤で流れて隠しトラックの方がエンディング流れる

・「このシャシンを再び終局へと導いてくれた、スタッフキャスト、友人、そして、11人の女性に心から感謝いたします。」

ラストが完全にVガンダムと一致と話題

[]FF7R フリプ

25時間クリア

クエスト最初ネズミ退治の1つだけのみクリア

インストリーのみ+少々迷ったくらい

イベントスキップなしだとこれくらいはかかると思う

まったく詰まらなくて20時間くらいいけるかなあ・・

詰まったところはレバー旗揚げゲーム最後モータボール

ダーツは2回プレイ

懸垂とスクワットは1回もやってない

モータボール戦はイージーだったけど3回くらい死んだ

クレーンアーム動かすときも思ったけど、アナログスティックをどっちに入れたらどっちに動くかがすげーわかりにくいときがちょいちょいある

イベントシーンが長すぎっつーか冗長な会話シーンが長すぎてかったるすぎて途中からまともに画面見るのが馬鹿らしくなったかスマホ見ながらやってた

ラストセフィロスとのタイマン演出愕然とした

いやあれ本編ラストでやってたことなのに・・・

逆に1作めでここまでやったから2作目からはがらっとかわるっていう意思表示なのかもだがそーゆーの求めてないのに・・・

グラフィックをきれいにするだけでいいのになんで余計なことしちゃうんだろ

シン・エヴァ観に行く前の気持ちを書いておきたい

シン・エヴァンゲリオン劇場版、公開初日に観に行くのですが、その前に今の気持ちを書いておきたいと思いました。

そして明日3/8、これを見返したとき、どう思ってるのかも楽しみです。

まず、下記のシロクマさんのブログに書いてあることが、あまりにも自分の心情に近いので紹介します。

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■解呪と供養のためにシン・エヴァンゲリオンを観に行く

https://p-shirokuma.hatenadiary.com/.../20210306/1615017226

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そうなんです。

アニメからの26年にわたるファン自分も、いったいどんな気持ち最後エヴァを観に行っていいのかよくわかないのです。

心の準備ができておらず、戸惑いがあるのです。観たくないけど観たい、でも観なければならない。

幾度と公開延期を繰り返すたび、残念さと同時に安心感があったのです。これでまだエヴァが終わらない。まだリアルタイムに語れる子供の頃のままでいいんだ、くらいの。

登場人物葛城ミサトいつまでもお姉さんでいて欲しいというファンがいたんですが、その気持ちわからんでもないのです。

中の人物よりはるかに年上になってしまった自分たちを直視したくないのです。

からQでミサトさんがまた年上になって、またお姉さんでいてくれたことに、甘えのような嬉しさがあったのです。

それが、急に、3/8ですよ。えっもう?てなりましたよ。この26年間の想いに急激にピリオドを打たれる感じ。

番宣で「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」言われて、ああ、伝える側も、完全に終わらせに来てるな、ってのがわかりました。

Qでアスカが言ってた「エヴァ呪い」とは僕ら中年ファンのことです。

この作品に向かい合ってるときはいつまでも大人になれず、10代のノリで語ってしまうのです。

しかし気が付けば、監督も、役者も、僕らも年を取ったのです。

役者さんたちもこれ以上ひっぱれば満足な演技もできなくなるかもしれない。監督ファンも先に進めない。

からここで終わらせないといけないのです。

終わらなかった例がガンダムです。正確には新作もたくさんできてますが、アムロシャアの戦いは産業になってしまった。

もう、何が終わりだったのかもよく分かりません。

自分では逆シャアですが、ユニコーンでまさにシャアの亡霊を引きずり出してしまった。そうして旧ファンは喜んだし売れた。

エヴァは、何か寂しいけど綺麗に終わってほしい気がします。

3/8月曜に終われば、この紹介したブログに書いてある通り、エヴァ離れできなかった自分が供養されるような、穏やかな気持ちになれるような…そんなことを期待しています

から庵野監督、どうか旧劇のようなわけのわからないラストはやめてください(笑)もう引きずりたくない。

もうネット考察を書いてファン同士でバトルしあうような熱量はないんですよ…。

さて、僕は明日、何を想っているのか。楽しみです。

無事に解放と供養されているといいな…。

村上春樹文章は「うまくはないが読みやすい」(補足あり)

https://note.com/historicalmoc/n/n284957b96801

出したな! 俺の前で! 村上春樹文章の話を! 

村上春樹作品はほぼ読んだので大体同意だけれど、肝心の文章について全く語られていないのは片手落ちしか言いようがない。こういう何かを語っているようでその内実がわかりにくい言葉を並べるからハルキストだのなんだの揶揄られるんだ。ファンなら真面目にやれ。村上春樹以外の人間村上春樹の真似したら中身がない駄文しかならないって小学校で教わらなかったのか。

つーか村上春樹文章別にうまくねえから。特徴的で読解大好き人間ほいほいってだけ。

  1. リズムがあり、断定調である(巧くはないが読みやすい)
  2. 比喩表現を多用し、不思議モチーフをたくさん取り入れるが、書いてることの中身について説明しない
  3. めちゃくちゃはっきりした含意が含まれていることがある(ないこともある)

というこの3点が村上春樹文章もっとも印象に残る要素である。本気で語るなら時期によっての文体の変化とか、もっといえば情景描写についてもまとめたいのだけれど、とりあえず書き散らす。なお、3に関しては他作品に関する読解を含み、ひとによってはネタバレ解釈しうるものも混じるので注意。

1.リズムがあり、断定調である(巧くはないが読みやすい)

実例を挙げてみる。

四月のある晴れた朝、原宿の裏通りで僕は100パーセント女の子とすれ違う。

正直言ってそれほど綺麗な女の子ではない。目立つところがあるわけでもない。素敵な服を着ているわけでもない。髪の後ろの方にはしつこい寝癖がついたままだし、歳だってもう若くはない。もう三十に近いはずだ。厳密にいえば女の子とも呼べないだろう。しかしそれにもかかわらず、3メートルも先から僕にはちゃんとわかっていた。彼女は僕にとっての100パーセント女の子なのだ彼女の姿を目にした瞬間から僕の胸は地鳴りのように震え、口の中は砂漠みたいにカラカラに乾いてしまう。

村上春樹4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて

1文1文が短い。技巧的な表現を使うわけでもない。文章から浮かんでくるイメージ閃烈鮮烈なわけでもない。日常語彙から離れた単語を使うこともない(「閃烈鮮烈」とか「語彙」といった単語が読めない人間は思いの外多いからな。ここでの「外(ほか)」とか/悪いATOKに頼りすぎて誤用なの気づいてなかった。指摘ありがとう)。ただただ「シンプル」だ。わかりやすい。

また、冒頭の1文の次にくるのは「~ない」で終わる文章連続だ。テンポがいい。あと、どのくらい意図的なおかわからないが、↑の文章音読していみると適度に七五調がまじっているのがわかる。そして、大事なところで「彼女は僕にとっての100パーセント女の子なのだ。」という断言を入れる。リズムで読者を惹きつけた上ですっと断定されると、その一文がすっと印象的に刺さってくるのである

まり別にうまい」わけじゃないんですよ。ただ「読みやすい」。それにつきる。読みやすい以外の褒め言葉あんまり信用しちゃいけない。「うまさ」って意味なら村上春樹をこえる作家なんてゴマンといるし、村上春樹の「文章」がすごいなんてことは絶対にない。うまいとか下手とかを語るならナボコフあたり読んだ方がいい。

とはいえ個人的な所感だと、この「読みやすさ」は村上春樹発見あるいは発明した最大のポイントだ。「リズムがよくわかりやす文章で圧倒的リーダビティを獲得する」という、一見してみんなやってそうでやっていない方策村上春樹が徹底しているせいで、誰でも座れそうなその席に座ろうとすると村上春樹と闘わなければならない。

2.比喩表現を多用し、不思議モチーフをたくさん取り入れるが、書いてることの中身について説明しない

で、そのあとにくるのが「彼女は僕にとっての100パーセント女の子なのだ彼女の姿を目にした瞬間から僕の胸は地鳴りのように震え、口の中は砂漠みたいにカラカラに乾いてしまう。」という文章である村上春樹比喩表現は独特で、たとえば『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を適当パラパラめくって見つけた表現として、「不気味な皮膚病の予兆のよう」「インカの井戸くらい深いため息」「エレベーターは訓練された犬のように扉を開けて」といったものもあった。この、比喩表現の多様さは彼の最大の持ち味であり、真似しようにもなかなか真似できない。

そして何より、「100パーセント女の子である。何が100パーセントなのか、どういうことなのか、この6ページの短編ではその詳細が説明されることはない。ただ、語り手による「彼女は僕にとっての100パーセント女の子なのだ。」という断定だけが確かなもので、読者はそれを受け入れざるをえない。それはこの短編に限らない。「かえるくん、東京を救う」におけるかえるくんとは。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』における〈世界の終わり〉とは。「パン屋再襲撃」はなんでパン屋を襲うのか。「象の消失」で象はなぜ消失するのか。「レーダーホーセン」でどうして妻は離婚するのか。羊男ってなに。

こういった例には枚挙に暇が無い。文章単体のレベルでは「読むことはできる」のに対して、村上春樹小説比喩モチーフ物語様々なレベルで「言っていることはわかるが何を言っているかがわからない」ことが、ものすごく多いのだ。

3.めちゃくちゃはっきりした含意が含まれていることがある(ないこともある)

じゃあ、「村上春樹作品ふわふわしたものを描いているだけなのか?」と言えば、そんなことはない。村上春樹作品には「答えがある」ものが、地味に多い。

たとえば、「納屋を焼く」という作品がある。ある男が恋人の紹介で「納屋を焼く」のが趣味だという男性出会いふわふわした会話をして、ふわふわとした話が進み、語り手は時々恋人セックスをするが、そのうち女性がいなくなる。読んでいるうちは「そうか、この男は納屋を焼いているのか」という、村上春樹っぽいよくわからないことをするよくわからない男だな……という風に、読んでいるうちは受け入れることができる。

だけれど、この作品問題は、「納屋を焼く」とは「女の子を殺す」というメタファー可能性がある……ということを、うっかりしていると完全に読み飛ばししまうことだ(あらすじをまとめるとそんな印象は受けないかも知れないが、本当に読み落とす)。それが答えとは明示されていないけど、そう考えるとふわふわとした会話だと思っていたものが一気に恐怖に裏返り、同時に腑に落ちるのである

その他、上記の「レーダーホーセン」においてレーダーホーセンが「男性にぐちゃぐちゃにされる女性」というメタファーでありそれを見た妻が夫に愛想をつかした、という読みが可能だし、「UFO釧路に降りる」でふわふわゆきずりの女と釧路に行ってセックスする話は「新興宗教勧誘されそうになっている男」の話と読み解くことができる(『神の子どもたちはみな踊る』という短編集は阪神大震災地下鉄サリン事件が起きた1995年1-3月頃をモチーフにしている)。

勿論、これらはあくまで「そういう解釈可能」というだけの話で、絶対的な答えではない。ただ、そもそもデビュー作『風の歌を聴け自体断章の寄せ集めという手法をとったことで作中に「小指のない女の子」の恋人が出てきていることが巧妙に隠されていたりするし(文学論文レベルガンガン指摘されてる)、「鼠の小説には優れた点が二つある。まずセックス・シーンの無いことと、それから一人も人が死なないことだ。放って置いても人は死ぬし、女と寝る。そういうものだ。」と書かせた村上春樹がその小説の中で実は死とセックスに関する話題を織り込みまくっている。近作では『色彩をもたない田崎つくると、彼の巡礼の年』で○○を××した犯人は誰なのかということを推測することは可能らしい。

何が言いたいか

まり村上春樹は信用できないのである

たとえば、『ノルウェイの森』で主人公自分のことを「普通」と表現する箇所があったが、村上春樹作品主人公が「普通」なわけない。基本的信頼できない語り手なのだ。信用できないからしっかり読み解かないといけないようにも思える。

(なお、なんなら村上春樹自分作品について語ることも本当の部分でどこまで信用していいのかわからない。「○○は読んでない」とか「××には意味がない」とか、読解が確定してしまうような発言はめちゃくちゃ避けてる節がある)

ただ、勿論全部が全部そうというわけじゃなく、羊男とかいるかホテルって何よとかって話には特に答えがなさそうだけれど、『海辺のカフカ』『ねじまき鳥クロニクル』『1Q84』あたりは何がなんだか全くわからないようにも見えるし、しかし何かを含意しているのでは、あるいは村上春樹本人が意図していないことであっても、読み解くことのできる何かがあるのではないか、そういう風な気持ちにさせるものが、彼の作品なかにはある。

このように、村上春樹メタファーモチーフには、「答えがあるかもしれない」という点において、読者を惹きつける強い魅力があるのである

増田も昔は村上春樹を「雰囲気のある作家」くらいの認識で読んでたんだけど、『風の歌を聴け』の読解で「自分作品ちゃんと読んでないだけだった」ということに気づかされて頭をハンマーで殴られる経験してから村上春樹には真面目に向き合わないと良くないな」と思い直して今も読み続けてる。

……なお、それはそれとして、セックスしすぎで気持ち悪いとか(やれやれ。僕は射精した)、そもそも文章がぐねぐねしてるとか(何が100パーセントだよ『天気の子』でも観とけ)(なお「4月のある晴れた朝に~」が『天気の子』の元ネタひとつなのは有名な話)、そういう微妙な要素に関して、ここまで書いた特徴は別にそれらを帳消ししてくれたりする訳じゃないんだよね。

たとえば『ノルウェイの森』は大多数の人間経験することの多い「好きな人と結ばれないこと」と「知人の死を経験し、受け入れること」を描いたから多くの人間に刺さったと自分は思っているが、だけどそれが刺さらない人だって世の中にはたくさんいるのは想像に難くない。

から、嫌いな人は嫌いなままでいいと思う。小説は良くも悪くも娯楽なんだから

余談

マジで村上春樹論やるなら初期~中期村上春樹作品における「直子」のモチーフの変遷、「井戸」や「エレベーター」をはじめとした垂直の経路を伝って辿り着く異界、あたりが有名な要素ではあるんだけれど、まあその辺は割愛します。あと解る人にはわかると思いますがこの増田元ネタ加藤典洋石原千秋なので興味ある人はその辺読んでね。

文章うまい」に関する長い補足(「小説文章」に限定

「うまくない」って連呼しながら「『うまい』のは何かって話をしてないのおかしくない?」 というツッコミはたしかにと思ったので、「この増田が考える『うまい』って何?」というのを試しに例示してみようと思う。村上春樹に対する「別に文章うまくない」とはここで挙げるような視点からの話なので、別の視点からのうまさは当然あってよい。

小説家の文章が読みやすいのは当たり前だが、「文章が読みやすい」なら「文章が読みやすい」と書けばいいのであって、わざわざ「文章うまい」なんて書くなら、そこでの文章」は「小説じゃなきゃ書けない文章であるはずだ。

じゃあ、増田が考える「(小説の)文章うまい」は何か。読んでる間にこちらのイメージをガッと喚起させてくるものが、短い文章のなかで多ければ多いほど、それは「文章うまい」と認識する。小説のなかで読者に喚起させるイメージ情報量が多いってことだから

具体例を挙げてみる。

 長い歳月がすぎて銃殺隊の前に立つはめになったとき、おそらくアウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、父親に連れられて初めて氷を見にいった、遠い昔のあの午後を思い出したにちがいない。

 そのころのマコンドは、先史時代怪獣の卵のようにすべすべした、白く大きな石がごろごろしている瀬を澄んだ水がいきおいよく落ちていく川のほとりに、竹と泥づくりの家が二十軒ほど建っているだけの小さな村だった。

ガルシアマルケス百年の孤独』の冒頭。大佐子どもの頃を回想して大昔のマコンドに話が飛ぶ際、「先史時代の」という単語を選んでいることで文章上での時間的跳躍が(実際はせいぜいが数十年程度のはずなのに)先史時代にまで遡るように一瞬錯覚する。

津原泰水バレエメカニック』1章ラスト昏睡状態のままで何年も眠り続ける娘の夢が現実に溢れだして混乱に陥った東京で、父親世界を元に戻すために夢の中の浜辺で娘と最期の会話をするシーン。

「お父さんは?」

「ここにいる」君はおどける。

彼女は唇を尖らせる。「五人兄弟の」

「さあ……仕事で遠くまで出掛けているか、それとも天国かな。お母さんがいない子供は いないのと同じく、お父さんのいない子供もいない。世界のどこか、それとも天国、どちらかに必ずいるよ」

 彼女は君の答に満ち足りて、子供らしい笑みを泛べる。立ち上がろうとする彼女を、君は咄嗟に抱きとめる。すると君の腕のなかで、まぼろしの浜の流木の上で、奇蹟が織り成したネットワークのなかで、彼女はたちまち健やかに育って十六の美しい娘になる。「ああ面白かった」

 理沙は消え、浜も海も消える。君は景色を確かめ自分腰掛けていたのが青山通り表参道形成する交差の、一角に積まれ煉瓦であったことを知る。街は閑寂としている。 鴉が一羽、下り坂の歩道を跳ねている。間もなくそれも飛び去ってしまう。君は夢の終焉を悟る。電話が鳴りはじめる。

作中の主観時間にしてわずか数秒であろう情景、ありえたかもしれない姿とその幸せ笑顔から夢のなかで消えて一瞬で現実に引き戻すこの落差、そこからまれる余韻の美しさですよ。

あるいは(佐藤亜紀小説ストラテジーから受け売りで)ナボコフ「フィアルタの春」という小説ラスト

フィアルタの上の白い空はいつの間にか日の光に満たされてゆき、いまや空一面にくまなく陽光が行き渡っていたのだ。そしてこの白い輝きはますますますます広がっていき、すべてはその中に溶け、すべては消えていき、気がつくとぼくはもうミラノの駅に立って手には新聞を持ち、その新聞を読んで、プラタナスの木陰に見かけたあの黄色自動車がフィアルタ郊外巡回サーカス団のトラックに全速力で突っ込んだことを知ったのだが、そんな交通事故に遭ってもフェルディナンドとその友だちのセギュール、あの不死身の古狸ども、運命の火トカゲども、幸福の龍どもは鱗が局部的に一時損傷しただけで済み、他方、ニーナはだいぶ前から彼らの真似を献身的にしてきたというのに、結局は普通の死すべき人間しかなかった。

ふわーっと情景描写ホワイトアウトしていって、最後にふっと現実に引き戻される。この情景イメージの跳躍というか、記述の中でいつの間にか時間空間がふっと別の場所に移動してしまうことができるというのがナボコフの特徴のひとつである

散文として時間空間が一気に跳躍して物語世界を一気に拡張してしまう、この広がりを「わずかな文章」だけで実現していたとき増田は「文章うまい」と認識する。自分村上春樹文章を「うまくない」って書く時、そのような意味での「小説としての文章」を判断軸にしてた。

村上春樹は下手ではない。村上春樹に下手って言える人いるならよっぽどの書き手だし、その意味村上春樹に関しちゃ言うことはないでしょう。しかしごく個人的私見を言えば、「文章」って観点だと、文章から喚起されるイメージに「こちらの想像を超えてくる」ものがめちゃくちゃあるわけではないと思う。

日本語文法に則りシンプルで誤解の生まれにくい文章を書くことは高校国語レベル知識可能で、その点村上春樹文章プロとしてできて当たり前のことをやっているに過ぎない。平易な文章を徹底しつつその内実との間に謎や寓話モチーフを織り込んで物語を構築するところがすごいのであり、そこで特段褒められるべきは構成力や比喩表現の多様さだろう。その際に使うべきは「構成力がうまい」でも「比喩表現うまい」であって、「文章」などという曖昧模糊とした単語で「うまい」と表現することはない。小説=散文芸術において「文章うまい」と表現しうるときもっと文章としてできることは多いはずなので。そして、このことは、村上春樹がしばしば(「小説」ではなく)「エッセイ面白い」と言及されることと無関係ではない。

ちなみに、増田津原泰水ナボコフ文章技巧には翻訳村上春樹じゃおよぶべくもないと思ってるけど、面白いと思うのは圧倒的に村上春樹ですよ。技巧と好き嫌いは別の話なので。

ここで書こうとした「うまさ」は佐藤亜紀がいうところの「記述運動」を増田なりに表現したもので、元ネタ佐藤亜紀小説ストラテジー』です。

2021-03-06

anond:20210306181117

めっちゃ言及したい。けど後でにする

ざっと見ていくつか言えることは、

 

  1. Twitter規約に従っている限りは問題無い

  2. 同性愛ダメはない

  3. ただし異性愛だろうが同性愛だろうが"性描写センシティブコンテンツ"

  4. キャラクターセクシャルが明らかなものねじ曲げると、作品ファンだけでなく権利者にも怒られる・嫌がられるのでモラルと敬意を持って 

      例:『シャーロック・ホームズ著作権者激怒!続編でホームズワトソンの“ゲイ疑惑”に触れたら映画化権利剥奪 l シネマトゥデイ
      https://www.cinematoday.jp/news/N0021615


  5. 実在人物モチーフにした性的創作異性愛でも同性愛でも超えてはいけない一線(名誉毀損肖像権侵害)。プラットフォームOKでも自重して(責任負うのは当人だが)

  6. 恋愛別にセックス無しでも描ける。そもそもセックス義務ではない

  7. フェミニストAV監督普通にいる
    例:エリカラストErika Lust

  8. フェイクでも搾取でもないセックスを取り扱ったサイト普通にある

クラフトポルノ自分たちのいつものセックスをしてみて!」
(日本語説明こちら https://heapsmag.com/women-porn-director-give-us-an-alternative-to-mainstream-porn-Erika-Lust)

https://erikalust.com/

 

▼「一切、演技なし」のセックス動画サイト
(日本語説明こちら https://neutmagazine.com/makelovenotporn)

https://makelovenotporn.tv

 

日本の歪んだ女性観とセックス観が腐女子に与えている影響は絶大だけど

フェミニスト関係ないと思う

2021-03-04

anond:20210304153531

みえた!大島優子病院に運び込まれラスト患者 その男性のうまれながらの病気とは!

 

その名も 短小包茎! 緊急手術が必要なこと まちがいない! 未来を見通す 僕 小学生探偵。 江戸川乱歩もだいすき そう 僕の名は☆きらーん

映画好きなら死ぬまでに見ないと死にきれないGTH映画10GDH映画10

そもそもタイ音楽会社、グラミー映画部門であるGTH,GDH映画100もない。54しかない。全部見たっていい。

GTH作品邦題監督公開年
1 15 ค่ำ เดือน 11メコンフルムーンパーティJira Maligool2002
2แฟนฉันフェーン・チャン 僕の恋人Nithiwat Tharathorn他5名(共同監督)2003
3เพราะอากาศเปลี่ยนแปลงบ่อย早春Nithiwat Tharathorn2006
4ปิดเทอมใหญ่ หัวใจว้าวุ่น夏休み ハートはドキドキ!Songyos Sugmakanan2008
5รถไฟฟ้า มาหานะเธอBTS - Bangkok Traffic (Love) StoryAdisorn Tresirikasem2009
6ATM เออรัก เออเร่อATMエラーMez Tharatorn2012
7พี่มาก..พระโขนง愛しのゴーストBanjong Pisanthanakun2013
8ไอฟาย..แต๊งกิ้ว..เลิฟยู้アイ・ファインサンキュー、ラブ・ユーMez Tharatorn2014
9คิดถึงวิทยาすれ違いのダイアリーNithiwat Tharathorn2014
10เมย์ไหน..ไฟแรงเฟร่อMay Who?Chayanop Boonprakob2015
GDH作品(英題,もしくは邦題)監督公開年
1แฟนเดย์ แฟนกันแค่วันเดียว一日だけの恋人Banjong Pisanthanakun2016
2พรจากฟ้าギフトJira Maligool他3名(オムニバス)2016
3ฉลาดเกมส์โกงバッド・ジーニアス危険天才たちNattawut Poonpiriya2017
4เพื่อน..ที่ระลึกThe PromiseSophon Sakdaphisit2017
5น้อง.พี่.ที่รักブラザー・オブ・ザ・イヤーWitthaya Thongyooyong2018
6โฮมสเตย์ホームステイ ボクと僕の100日間Parkpoom Wongpoom2018
7ระวัง..สิ้นสุดทางเพื่อนフレンドゾーンChayanop Boonprakob2019
8ตุ๊ดซี่ส์ แอนด์ เดอะเฟคトッツィーズ&フェイスターKittiphak Thongauam2019
9ฮาวทูทิ้ง ทิ้งอย่างไรไม่ให้เหลือเธอハッピーオールド・イヤーNawapol Thamrongrattanarit2019
10อ้าย..คนหล่อลวงThe Con-HeartistMez Tharatorn2020


以下、各映画についての簡単解説

メコンフルムーンパーティ

まだGTHという会社すらなかった頃の実質1本目作品。超常自然現象?として国境の川に実在するイベントを「対岸の寺がヤラセでやってました」というぶっちゃけた設定にしてしまったところに監督非凡さが伺える。(Jira MalikulはこのあとほぼすべてのGTH,GDH映画プロデューサーなどで関わっている)

フェーン・チャン 僕の恋人

日本中が「マッハ!!!!!!!!」でアクション映画タイ映画だと思っていたところに「田舎に残した幼馴染の思い出」という振り返りあるある王道を突き進んだ作品。この映画いじめっ子のガキ大将役をやったChaleumpol Tikumpornteerawongはこの後脇役で大ブレイクするので、その成長を見るのも楽しい

早春

音楽学校を舞台にした三角関係ラブコメ。ちょうど日本での「のだめカンタービレ」が流行った頃に上映されたこともあって「タイのだめカンタービレ」と言われることもあるがストーリーは全く似ていない。ドラム先生役を日本パントマイマー矢野かずきが演じていて、この人の活躍を愛でる映画

夏休み ハートはドキドキ!

中学生から大学生までの4つのグループラブコメをかき混ぜた青春映画。幼馴染2人のナンパ競争対象になったことをこっそり知って小悪魔ムーブかます女子中学生ストーリーが一番手が込んでいてメインのストーリーだが、日本人的には大学生カップルサプライズプレゼントをぶち壊す蒼井そら活躍も見どころ。

BTS - Bangkok Traffic (Love) Story

30手前の奥手独身女性恋人探し、というちょうどこの時タイでも問題になり始めた晩婚化現象を都市鉄道開通10周年記念に無理やり組み合わせた、完全なトレンディドラマプロットが良くも悪くも話題になった作品。当時のあるあるを突っ込んだ結果、期せずしてタイ現代文化紹介になってしまった部分も含めて興味深い。主演女優は決して美人でないのに時々とんでもなく可愛く見えるところもリアリティを増した。矢野かずきも出る。

ATMエラー

ストーリー最近みずほ銀行とはあまり関係ないはずだが、「日系銀行ATMアップデート設定が日本語で書いてあったのでうまくアップデート出来なかった」という話の発端は何か今に通じるものを感じさせる。起きたエラー「出金すると口座から引かれた金額の倍が出てくる」の後始末をうまくやったほうが社内恋愛禁止会社に残る、という設定は日本女性コミックにもありがち。関係ないとはいえみずほ銀行のアレがあったから今ここに入った。入れ替えの可能性がGTHの今回の中では1番高いかもしれない。「フリーランス」とこっちのどっちを10本に入れるか今でも迷っている。

愛しのゴースト

「長い旅から帰還したら、妊婦だった妻は胎児ともども死んだのに待っていた」という、タイで一番有名な実話怪談を、時代設定をぼかしつつ時代劇で演じた作品。「『アナと雪の女王』を抜いてタイNo.1ヒット」というのが日本での宣伝文句だったが、タイであの作品は記録的な不入りだったことは知っている人ならみんな知っている不都合な真実とはいえ結局歴代No.1映画なので、リメイクの力は侮れない。

アイ・ファインサンキュー・ラブユ

アジア屈指の英語の通じない国タイが、アジア2番目英語の通じない国になった(1番は日本)頃の作品英語学校経営するキャリア女性が、工場メンテナンスエンジニア英語を教えるというラブコメと聞けばそれだけで話のラスト想像可能だが、数々のタイ英語あるあるに加え、「外人タイ人を妊娠させると妻を置いて逃げる」「日本人は面接でどうでもいいことを聞き、それを合否判定に使う」という社会?問題を入れているのが意外と深い。この映画にも蒼井そらがちょい役の域を超えて出ているので要注目。

すれ違いのダイアリー

タイの奥地に実在する水上分校をモデルに、素行問題があってそこに左遷されたベテラン教師と、教師のなり手がなくなってそこに送り込まれたやる気はあるもの教育方法問題のある新米教師見習いの奮闘を描く作品。2人はベテラン教師の残した日記だけで交流するので、ラストシーンまで出会うことはない。日本吹き替えの子役は東日本大震災被災者の子供がやった、というのが売りだったが、別にそこを気にする必要はない。タイ文字がわからないと若干面白さは減るのだが、それでも教育の大切さを教えてくれる良作品ではある。

May WHO?

超能力少女メイの学園での活躍アニメパートも含めて描いた青春映画、と書けば響きはいいが、実のところその超能力能力というより身体障害に近い扱いづらいものなので、観た直後の感想は「バリアフリーってなんだろう」になってしまうという作品カトゥーンレンダリングした3Dアニメ一見価値あり。

一日だけの恋人

北海道全面ロケ協力作品雪山に迷い込んで記憶喪失になった女性片思いしていた男が「俺が君の恋人だ」と言い張って、記憶が戻るまでの1日間、北海道縦横無尽デートする。タイ人の北海道好きは他の都道府県と比べても群を抜いているのだけれど、その中でもタイ人が何に興味を持つのかとても参考になる。日帰り周遊旅行という点を除けば、日本人にも旅行先は参考になる。

ギフト

生涯で五十数曲を作曲したプミポン国王(当時)の曲から3曲を使って、3つの短編に仕立て上げたオムニバス作品。主演俳優は近年GDH活躍している人ばかりなのである意味親近感を感じる。各作品に他の主人公を入れ込むなど芸の細かいところと、会社内の移動がなぜかオートバイ集団走行になってしまうという画作り優先のところが交じる、まさにJira Malikul節の炸裂。3曲聞くと、なぜ国王タイ国民にあそこまで愛されていたのかがわかってもくる。

バッド・ジーニアス危険天才たち

タイ国内No.1ヒット作品は「愛しのゴースト」だが、世界No.1ヒットタイ作品こちら、という、立ち位置的には「君の名は。」(当時)に近い名作。金銭的に腐敗した学校に憤った主人公カンニング商売に手を出したものの露見して一度破滅するものの、今度は時差と暗記とLINEメッセージを使った世界カンニングに乗り出す、というあらすじ。とりあえず明日金曜日19時からBS12チャンネル放送されるので観ておけ。地味な主人公役の少女は、実はけっこうすごいモデルだったりするので映画の力はすごい。

The Promise

バンコク現存する建てかけ放置高層ビルマンション舞台にしたホラー映画20年前のアジア経済危機に巻き込まれ百合心中を企てたが生き残ってしまった女性主人公で、娘が先に死んだ親友と同年齢になったことをきっかけに起き出す奇行に悩まされるのだけど、ホラーと言いつつ目に見える悪霊ほとんど出てこないので逆に怖い。GTH,GDHにはホラー作品も多いのだが、ここまでほぼ1本も入っていないのでここで紹介。もっといい作品が出たら入れ替わる可能性あり。

ブラザー・オブ・ザ・イヤー

日本マンガを通じて育った兄妹の、妹が日本留学を経て日系企業に入ったことで始まる、兄弟愛に関するコメディ作品。よしもとタイ住みます芸人接待漬けで陥落する上司役で好演している。日タイハーフの、妹の恋人役は、タイ語の話せる日本人を探したが見つから韓国人が演じていて、彼が頑張って日本語を話すところは期せずして日本人には笑えるシーンになってしまっている。北九州ロケあり。

ホームステイ ボクと僕の100日間

バッド・ジーニアスのおかげでGDH映画に陽が当たるようになり、こんな映画日本で上映されるようになった。森絵都の「カラフル」を原作とした作品で、主人公である"ある魂"は自殺したミンの代わりにミンの体に入り、ミンが手がかりを全て捨てて自殺した理由を探っていく。BNK48の中心メンバー相手役になっているだけでなく、その後注目されるようになったメンバーも1名その他大勢の中に写り込んでいるということで、BNK48フリークには有名な作品。確かにチャープランかわいい特に眼鏡

フレンドゾーン

日本では全く言葉として浸透していない「FRIEND ZONE」をそのままテーマにした作品高校時代から10年間「いい友達」を演じている男性が、女性同棲相手浮気疑惑に一念発起する作品。潰れかけのタイ航空全面協力で、主演俳優世界各国(ただしASEAN+香港)をまたにかけて活躍する。香港だけ地名表記の時に国名が出ないのは気がつくと意外と深い。両手にビールを持って飲みたい。

トッツィーズ&フェイスター

現在日本NETFLIXで唯一観られるGTH,GDH作品(今回挙げた他の作品は全て他の国では配信されている)。イケメンオカマと、デブオカマと、派手オカマの3人オカマ友達が起こすドタバタ、というTVドラマプロットはそのままに、映画化にあたって派手なシーケンスを増やした、という作品で、正直「日本でもNETFLIXで観られる」という点を除けばここで紹介するほどのものではないのだが、いじろうと思えば今でもこれくらいはオカマいじりできる、という基準点としては参考になるかもしれない。

ハッピーオールド・イヤー

まだ日本でも公開している映画館があるはず。北欧留学を経て、こんまりメソッドに目覚めた女性が、実家事務所にするために派手な断捨離を始める、という話。断捨離は本人の借りパクがバレたことで方向修正余儀なくされるのだけど、そこに元カレが絡んできて話はさらに複雑になる。たぶんこれも、バッド・ジーニアスがなければ日本公開はなかったはず。監督が若干アート寄りなので雰囲気は地味だが、やっぱり面白もの面白い。NETFLIX(観られれば)には日本字幕もある。

The Con-Heartist

昨日NETFLIX配信が始まった、昨年12月公開作品アカサギにやられた女性復讐を手伝う詐欺師、という「クロサギ」的作品。主演の詐欺師役をやっているナデット・クギミヤはかなり有名なのだが、おそらくGTH,GDH映画初主演のような気がする。2019年から2020年にかけて、という時系列が明らかにされているため、騙された主演女性マッチングアプリ出会っていたり、借金を返す足しにYoutuberになったり、さらに脇役の動作などにCovid-19も話に絡んでくるのが時事好きなGDHらしい。


追記

けっこう興味を持ってくれた人がいるので、現状見られる方法を紹介しとく。

うそう、大阪アジア映画祭でThe Con-Heartist観た人は途中女主人公電話で啖呵を切る「ワイドショーで持ちきりでしょうね」みたいなセリフに誰が使われていたか教えて欲しい。さすがにみのもんたではないけれど志らくでも小倉智昭でもないだろうから

anond:20210303190711

2021-03-02

抑圧があるからといって「嫌いだと口にする自由」を規制できるのか?

答え:できません。

この増田 a.k.a. id:muchonov は決定的な間違いをしています

たとえば、僕は身体障害者ですが、「身体障害者キモイ」という人に対して、実力でその口を塞いでも免責されることはありません。また、警察通報しても相手にされません。そして、これらが立法を通じて規制できるようにすれば、憲法違反になる可能性があります。なぜならば、この発言に「具体的な権利侵害(含む内心の静穏の権利)」や「明白かつ現在の危険」があるとは言えないからです。

これは、「オタクキモイ」でも「LGBT生産性が無い」でも「黒人犯罪者ばかり」でも「朝鮮人は帰れ」でも、同じです。

もちろん「〈誰かが(他者の同じ権利侵害しない限り)自分自身として存在できる自由本来のかたちで生存する自由〉」を尊重するべきだという主張は尤もです。しかし、それらの自由を一切侵害しない表現しか存在をゆるされない(=規制しうる)のでしょうか? そんなことはありません。たとえば、ポルノ雑誌SNSにアップされるエロイラスト存在は、女性自由を阻害しているかもしれません。バリバラのような、障害者エンパワーメントのための番組が、却って羞恥心社会への恐怖を煽る結果になってしまう人だっているかもしれません。あるいは、ピンカー研究マイノリティ申し立ての力を削いでしまうこともあるでしょう。

増田 a.k.a. id:muchonov見解に従えば、これらは容易に規制可能でしょう。違うと言うならば、何を規制出来て、何を規制できないかということを明確に説明しなければなりません。

さて、しかし、「社会的少数派を偏見に基づいて「嫌いだ」と口にする自由は制約される」ことはあります。たとえば、何度も事件を起こした暴力的差別主義団体指導者が、その集会で具体的な日時を示して、マイノリティが集住する地域の襲撃を扇動したような場合です。しかし、逆に「KKK指導者が、集会で白頭巾被って十字架を燃やしながら、抽象的に黒人差別する発言をした」場合は、アメリカ合法規制違憲であるという連邦最高裁判例があります。これは、有名なブランデンバー基準の基になった裁判です。

はっきり言いましょう、増田 a.k.a. id:muchonov は、「マイノリティを嫌いだと公言する」こと一般が、規制しうるほどのことかを証明する必要があります。もし、論旨を変更して「特に甚だしいものだけ」といった条件を付すとしても、その条件を明晰に説明しきることが必要です。なぜならば、これは「規制」、つまり人権の制約」の話だからです。仮に、曖昧基準で雑に人権規制できるなら、それは特別高等警察仕事になるでしょう。

なお、「周囲から攻撃を食らった」ことを「社会的に制約されること」と評していますが、これは、単に個々人は当該の発言に対して批判をする自由があるというだけのことです。当然に、「社会的な制約」として、リンチによる暴力行使逮捕監禁威迫契約に基づかない契約解除、不当な懲戒処分村八分行為などを行えば、むしろその違法性不法性が問われることになるでしょう。よって、あくま問題は「権利の制約」を合法的に行いうるのか、という部分になります

anond:20210302093544

2021-03-01

社会人ラストクエスト

親の夢は絵に描いた餅

霞が関は俺には無理な口

押しつけられたゲームスタート

ゲームは始まり縮む命

親は力で支配しがち

屈辱に耐える毎日

裸で熱湯の湯舟に放置

飯は床にぶちまける措置

会話も禁止女友達

強いられる意図の察知

進学先は名門じゃなきゃ平手打ち

泣けば口に布つめる処置

母の攻撃さながらアパッチ

見て見ぬふりのゲスな父

もしくは二人がかりのリンチ

帰りたくないそんな家

残り人生あと何クエスト

いつも警戒親の奇襲

勉強人間づきあいの予行復習

まずい飯並みに無味無臭

ネトゲけが僕の陣地

憧れた緑川光

現実見えぬ俺の無知

将来進路ひどく幼稚

求められる社会的地位

就職先は一方的通知

俺にはない選択余地

言えるわけない胸の内

努力足らぬとムチとムチ

アメの約束嘘のオチ

壊れていく俺の気持ち

順位下がる成績表

夢は妹にバトンタッチ

動かないマシンは無価値

要らない兄は無視仕打ち

かに卒業こんな大学

残り人生あと何クエスト

令和の世に平成風習

学校職場しか通じぬ優秀

飛びついたのはブラック企業

俺は親の夢叶えるマシン

生きる意味なし痛ましい

過労死より少しマシ?

黙れ負け組かまし

そのキレイゴトじんましん

積もる憎悪を持て余し

咳払いなどぶちまかし

まるで配信者の生きざま

自由の身なんと素晴らしい

財布の中身は清々しい

オフ会する武蔵野市

ブクロ出張ネタ探し

ネットで使い回し

他者しませ生きがい探し

それ奪ったのが荒らし

残り人生あと何クエスト

不満はない競争社会

気にしていない金の貧富

望んだのは居場所の補修

ダンジョン彷徨う俺のアバター

漂流してたらMPないや

きつい死闘でぶっ放した大魔法罵詈雑言

判断ミスの狭い視野

このペナルティかなりデンジャー

ネット燃え上がるかなりファイヤー

悔いる俺無様リタイヤ

周囲プレイヤーに多数被害者

原因不明もやもや

精神分析する医者

真意無視ならもういいや

余命刻むタグホイヤー

バンかかってこいや

アバターに食い込む錆びたワイヤー

迎えられないニューイヤー

後はよろしく管理人

残り人生あと何クエスト

審判で決する雌雄

二度消される罪人囚

それを喜ぶかつての友

アニメOP不要時代

週1でアニメ1話見る、というスタイルが廃れたこともあってか、現在アニメOP飛ばしやすい作りになっている

B: The Beginningというアニメはそれをわかって作られたものなんだ

見ればわかるが、OPという概念が極限まで削除されており、せいぜい話数を区切るためのセーブポイント程度の作りになっている

仮面ライダーのようにラスト戦闘シーンがED代わりになっているってのも、今後の主流になるんだろう

NETFLIX特にOPED飛ばし簡単で、今後もそういう傾向が続くんだろうなと思う

OPアニメドラマの顔だった時代は過ぎさり、OP曲にあまり力が向かわなくなったらどうなるんだろう

2021-02-28

anond:20210228165100

自由に読み解く範囲によるな。

小説テキスト読み解きって、証拠探しのようなものだと思うんだよ。

A→B←C という三角関係らしきものが描かれているとして、BはAとC、どちらが好きなのか。一見、Bがどちらも選ばなかったラストがあったときに、Bの台詞や行動、情景描写やシーンをまたいで繰り返し使われる比喩とか言葉から、「もしかしてBはAを選んでいたんではないか?」という仮説を構築していくような。

で、この証拠探しの方向性はいくつあってもいい。それが解釈自由というものだと思う。

2021-02-26

キャバクラ女の子に 簡単数学クイズ 全勝若手。

オジサンとして  すみませーん ドンペリー タイダルウェーブ きたれリバイアサン 流して

 

ぉぃ20代ラスト 若手社員。お呼び出しコース

2021-02-23

ネタバレ注意!)ナウシカ漫画版を読んだけど

何でナウシカ最後墓所破壊したと思う?

私はあれの解釈について、無宗教を代弁したメッセージであると思っている。

神様というのがいるならば、よくあれだけの残酷なことができたもんだ、尊敬する価値もない、結局存在のものが害だから消えてくれ、という物凄く強烈なメッセージに思えた。

もちろんこの解釈は間違ってるかもしれないし、絶対とは言えない。だからみんなにこのラスト解釈を問いたい。

ダフトパンク解散と聞いて。

しかにわかには信じがたい…

ソースとして挙げられてる動画は、確かに一応公式チャンネルから出されたものだが、

エレクトロマのラスト付近に1993-2021って付け足したくらいだし…それが致命的と言われればそうなんだろうけども

しか解散するならヒーローロボット#2の自爆まで流せばいいのにな。蛇足感あるからかな。そりゃ#1の大爆発の方が絵にはなるけど

信じたくないなあ…

好きになった時には既に休止状態で、ライブ一回も行ったことなかったのに

悲しすぎる

2021-02-22

ガンダムチャンネル配信されててポケットの中の戦争を今回はじめてみたけど、

当時からOVAアナザーだでガンダム作品だいぶ増えたけど、今見てもだいぶ珍しい作風作品だなあと思った。

話の全体については語り尽くされてるし大体の流れは知ってたけど、やっぱりラストは虚しさでいっぱいになってしまった。

かい所は

ザクが思ったより堂々と放置されてて見つからなかったこ

スカーレット隊が本当にいいとこなしでやられてたこ

Gジェネアレンジされてやたらかっこよく使われてるの聞いてたのもあって、BGMが当時の時代を感じるテクノ調?でちょっと違和感あった

必読書コピペマジレスしてみる・日本文学

方針

森鴎外舞姫

留学先で女性妊娠させて見捨ててしまう話なので、近頃は評判が非常によろしくない。そのくせ、この文体のせいで美しいと感じてしま自分がいて、実はこれ、レトリック文体によって騙されることに注意しろっていう警告なんじゃないかって気もする。「自分おすすめ編」にも書くつもりなんだけど、ナボコフロリータ」もそういう自己正当化がとにかくうまい

余談だが、鴎外自身東洋人だったこともあり、留学先では写真を撮らせてくれと頼まれたことがあったという。それに対して、構わないけどもあなた写真も逆に撮らせてくれ、と言って、相手も満足させつつ日本人としての尊厳も守ったことがあって、これは割と好きなエピソードの一つ。まあ、漱石よりは世渡りうまいよな。

樋口一葉にごりえ

古風な文体挫折しかかるも何とか読破。これよりは幼馴染系の「たけくらべ」のほうが好きだったなあ。増田では古文いるかどうかで議論になったことがあったらしいが、古文がすらすら読めるほうがこういう趣味というか楽しみが増える気もするし、純粋実用面だけでいえば法律用語や古い公文書を読む必要がまだあるんじゃないのかな。

舞姫」の話の続きだけど、古典文学にもやっぱりクズエピソード結構あり、じゃあどれを教えてどれを教えないかは割と難しい。

泉鏡花高野聖

僧侶山間で美しい妖怪出会う話。文庫ちくま日本文学全集で読んだ。全集と銘打っているけど、このシリーズ日本の近現代文学作家ベスト盤みたいな感じで、チョイスはいいのだけれどときどき抄、つまりダイジェスト版みたいなのが紛れていて、コンプリートしようとは思わなかった。

話としては幻想的ですごく好き。幻想譚が好きな自分がどうして泉鏡花にどっぷりはまるまでいかなかったのかが不思議なほどだ。当時は、著名な作品をどんどん消化しようと思って乱読していたからかもしれない。そういう意味でも、課題図書読破することが自己目的化した読書には幾分害がある。

国木田独歩武蔵野

とても好き。小説が読めなくなったときには、文豪の書いたこうした随筆というか、風景描写の豊かな文章を読むことで、自分リズムを整えたくなる。外出の難しい昨今、こうして空想世界でだけでも豊かな自然のなかで過ごしたいものだ。五感が刺激される文章というのはなかなかない。

夏目漱石吾輩は猫である

我輩を吾輩に修正

ここ最近漱石の評判はあまりよろしくないと聞く。所詮は当時の欧米文学の輸入に過ぎないとか、結局は男社会文学だとか。言われてみれば確かにその通りなのだけれども、日本近代文学開拓者にそこまで求めちゃうのも酷でしょうと思わないでもないし、この作品からたったの十年で「明暗」にまでたどり着いたのだから、やっぱりすごい人ではないかと思う。五十になる前に亡くなったのが惜しまれる。

で、肝心の内容だが。基本的おっさんおっさんの家をたまり場にしてわいわいやる日常ものなので、当時の人にしか面白くないギャグを除けば、普通に笑える。最終回は突然後ろ向きになるが、もしかしたら漱石の本分はユーモアにあるのかもしれない。

余談だが漱石留学時代日記に付き合いのお茶会について「行カネバナラヌ。厭ダナー」とのコメントを残している。

島崎藤村破戒

素直に面白かった。若干のプロパガンダっぽさがなくはないが、読んだ当時は差別する側のねちっこさや意地の悪さが良く書けているように思われた。とはいえ、昨今は善意から来る差別についても考える時代であり、問題はより複雑になった。

被差別部落問題については気になっているのだがなかなか追えていない。日本史について読んでさまざまな地域実例について断片的にかじった程度だ。それでも、地域によって温度差やあったり、差別対象が全く異なっていたりすることがわかり、どこかで日本全体の実情について知りたく思っている。

田山花袋蒲団

女中の布団の残り香を嗅いで悶々とする話だってことは覚えているんだけれども、読んだときにはあまり印象に残らなかった。なぜだろう。自分が読んできた近代文学は、基本的ダメな奴がダメなままうだうだする話ばかりだったからかもしれない。その多くの一つとして処理してしまたか

で、自分が好きなのは飢え死にするほど悲惨じゃないくらいのダメさであり、親戚のちょっと困ったおじさんくらいのダメさなんだろうと思う。

有島武郎或る女

読んだことがない。ただ、ドナルド・キーンの「百代の過客〈続〉 日記に見る日本人」によればこんなことを書き残しているそうだ。「僕ハ是レカラ日記ハ僕ノ身ニ大事件ガ起ツタ時ノミ記ケルコトニ仕様ト思ツタガ、矢張夫レハ駄目な様デアル。日記ヲ記ケ慣レタ身ニハ日記ヲ一日惰ルコトハ一日ヲ全生涯カラ控除シタ様子ナ気ガスル。夫レ故是レカラ再ビ毎日日記ヲ始メ様ト思フ」(意訳。日記書かないとその日が無かったみたいで落ち着かない)。ここでツイッターに常駐している自分としては大いに共感したのである。そのうち読もう。

志賀直哉小僧の神様

読んだはずだが記憶にない。「暗夜行路」で娼婦の胸をもみながら「豊年だ! 豊年だ!」と叫ぶよくわからないシーンがあったが、そこばかり記憶に残っている。これを読んだ当時は、この小説のように自分がどれほど理想を抱いていたとしても、モテいからいつかソープランドに行くのだろうな、とぼんやり思ったことを覚えている。

ちなみに、自分が初めて関係を持った女性貧乳だった。だがそれがいい

お父さんとうまくいっていない人は子供の才能をつぶす話である清兵衛と瓢箪」が刺さるんじゃないかな。あとは少女誘拐視点の「児を盗む話」もよかった。

内田百閒『冥途・旅順入城式』

大学時代知り合った文学少女から薦められて読んだはずなのだが、覚えているのは「阿房列車」の何編かだけだ。それと、いつも金に困っていて給料を前借りしていて、そのことのまつわるドタバタを描いた作品日記もあって、そうした印象ばかり残っている。

関係ないけど就職活動中に、この文学少女から二次関数を教えてくれと言われ、片想いしていた自分はそのためだけに都内にまで足を延ばしたことがある。いいように使われていたなあ、自分あいつには二度と会いたくないが、元気にしているかどうかだけは気になる。

宮澤賢治銀河鉄道の夜

めんどくさいファンがいることで有名な作家全集には第三稿や第四原稿が収録されており、比較するのも楽しい。俺は〇〇は好きだが〇〇が好きだと言ってるやつは嫌いだ、の○○に入れたくなる作家の一人。○○には「ライ麦畑で捕まえて」「村上春樹」「新世紀エヴァンゲリオン」「東京事変」などが入る(註:この四つのものとその愛好家に対する歪んだ愛情から来る発言です。僕も全部好きです。すみません)。サブカル系にはこれがモチーフになっているものが数多くあり、その点では「不思議の国のアリス」と並ぶ。

思想に偏りはあるが、独特の言語感覚や観察眼は今でもすごく好きだ。余談だが新書の「童貞としての宮沢賢治」は面白い。

江戸川乱歩押絵と旅する男

知り合いにいつもぬいぐるみキーホルダーを持ち歩いてかわいがっていた男がいたが、それで本人が落ち着くのならいいと思う。不安の多い世の中で、人が何か具体的に触れるものにすがるってどういうことなんだろう、って、ってことをこの作品を思い出すといつも考える。どこで読んだか思い出せなかったが、これもちくま文庫全集でだった。

横光利一機械

狭いコミュニティの中でこじれていく人間関係の話ではあるけれども、新潮文庫場合表題作よりも他の話のほうが気に入った。印象に残っているのは十二人の旅芸人夜逃げする「時間」と、ナポレオンヨーロッパ征服に乗り出したのはタムシのせいだったという「ナポレオンと田虫」。

谷崎潤一郎春琴抄

実はこの作品は読めていない。谷崎作品は割と好きで、「痴人の愛」「刺青秘密」「猫と庄造と二人のおんな」「細雪」は読んだ。「痴人の愛」という美少女を育てようと思ったら逆に飼育される話は自分人生観に多大な影響を与えたし(例の文学少女気持ちをもてあそばれても怒らなくなってしまったのもこれが遠因だろう)、「細雪」はただ文章リズムにぷかぷかと浮くだけで心底気持ちがいい。ついでに、戦時中生活爆弾が実際に降ってくるまでは震災コロナでただよう自粛雰囲気そっくりだったこととよくわかる。

ところで、最近久しぶりに谷崎作品を読もうと思ったら、ヒロイン名前が母と同じだったのですっかり萎えしまった。というか、ここ最近趣味が「健全」になり始めていて、谷崎作品に魅力を感じられなくなっている。感覚がどんどん保守的になっていく。これはいかん。

夢野久作ドグラ・マグラ

ミステリ編参照。anond:20210215101500

川端康成雪国

高校生の頃に読んだのは確かに記憶に残っているのだけれど、高校生川端康成エロティシズムが理解できたかどうかはよくわからない。たぶんわかっていない。せいぜい伊豆の踊子の裸の少女を読んで、ロリコン発症させたことくらいだろう。

太宰治斜陽

太宰はいいぞ。自分は愛される値打ちがあるんだろうか、というテーマを本人の育った境遇パーソナリティの偏りや性的虐待疑惑に求める説は多いが、そういう心理普遍的ものでもあり、だから多感な時期に読むとわかったつもりになる。芸術に何歳までに読むべきという賞味期限原則としてないが、これもできるだけ若いうちに読んでおくといい。太宰の理解者ぶるつもりはないが。

もっとも、本ばかり読んで他の活動をないがしろにしていいものだとは全く思わない。あまりにもドマイナーな本を読んでマウンティングするくらいならバンジージャンプでもやったほうが話の種にもなるし人間的な厚みも出るというものだ。たぶん。

三島由紀夫仮面の告白

天才的。男性のあらゆる種類のコンプレックスとその拗らせ方を書かせたら彼の右に出るものは少なかろう。ただ、大学卒業してから突然読めなくなってしまった作家でもある。息苦しくなるまで端正に磨きこまれ文章のせいかもしれない。

武田泰淳ひかりごけ

極限状況下でのカニバリズムテーマにした小説なんだけれども、途中から戯曲になって、「食べちまう葬式ってえのは、あっかなあ」などとやけにのんびりした台詞が出てくるなんともユニーク小説。ただし、これは単なるブラックジョークではない。物語は序章、戯曲第一部、第二部と別れているのだけれども、その構成にきちんとした意味がある。

人類全体の原罪を問うようなラストは必見。あなたは、本当に人を食べたことがないと言えますか?

安部公房砂の女

祖父母の家から貰ってきた作品で、愛蔵版らしくカバーに入っていた。カフカにはまっていた時期だから楽しんだ。カフカ父親の影から逃れられない主人公とは別の種類の渦巻にとらわれてしまった主人公がだらだら、ぐだぐだしてしまうのだが、カフカ男性によって抑圧されているとしたら、こちらは女性に飲み込まれている文章だ。

大西巨人神聖喜劇

未読。不条理陸軍の中で、最強の記憶力を頼りにサバイブする話だと聞いて面白そうだと思い購入したのだが、ずっと積んだままだ。これに限らず、自分戦争もの小説漫画をあまり読んでない。戦争に関しては文学よりも歴史書からアプローチすることが多い。

これは自分の悪癖だが、戦争ものになると庶民よりも知識人にばかり感情移入してしまう。

大江健三郎万延元年のフットボール

大江健三郎は初期の作品をいくつかと、「燃え上がる緑の木」三部作を読んだきりで、どういう態度を取ればいいのかよくわかっていない作家の一人だ。狭い人間関係の中のいじめだとかそうした描写に病的に関心のあった時期に読んだせいで適切な評価ができていない。

燃え上がる緑の木」は新興宗教原子力発電といった(結果的には)非常に予言的であった作品であったが、癖が強くカトリック宗教教育を受けた自分であっても世界観に入り込むのに時間がかかった。「1Q84」よりもきつい。面白いが。

萩原朔太郎『月に吠える』

大学時代の友人に薦められて読んだ。「この家の主人は病気です」と、飢えて自分を食ってしまったタコの詩ばかりを覚えている。覚えているのはこれだけだが、この二つが読めたからいいか、と考えている。大体、詩集ってのはピンとくる表現ひとつでもあれば当たりなのだ。そして、それはあらゆる書物にも当てはまることである

福沢諭吉福翁自伝

祖父学生時代に送ってくれたのだけれども、ぱらぱらとしか読んでいない。

子供向けのものだった気もするし、近々原文にチャレンジするべきか。自助論西国立志編)なんかと合わせて、自己啓発書の歴史を知る意味でも興味深いかもしれない。

正岡子規歌よみに与ふる書

読もうと思って読めていないけれども、これまたドナルド・キーンの本で面白記述を見つけた。「墨汁一滴」の中に、つまらない俳句乱造しているやつの作品にはどうせ碌なもんなんてありゃしないんだから、そういう連中は糸瓜でも作ってるほうがマシだ、という趣旨のくだりがあるそうだ。創作する上でのこういう厳しさは、いい。

石川啄木時代閉塞の現状』

ローマ字日記しか読んだことがない。たぶん日本最初フィストファックが描写された文学かもしれない。春画はどうか知らないけど。

小林秀雄『様々なる意匠

詩集翻訳しか読んだことがない……。

坂口安吾堕落論

堕落と言いつつもある種の誠実さについて語った本だった気がするが、それよりも新潮文庫で同時に収録されていた、天智天皇天武天皇家系にまつわる謎についてのほうが印象に残っている。

哲学編に続く→anond:20210222080300

関係ないけど芥川が載ってないのは納得できないぞ。

anond:20210222074150

鳴き声だす蛭は、それは居たら嫌だわ...

(「スクワーム」だっけ?巨大人喰いミミズ洋画あったな、ラストが地中からの鳴き声カットだった)

2021-02-21

ポストアポカリプスうろうろゲーム

人類は滅んでいるが、廃墟なんかはそこそこ残っていて、マッドマックスみたいな感じではない ラストオブアスくらい

登場人物は少なめがいい できたら主人公ひとりだけ

敵対する勢力モンスターなんかはいいか、いてもそんなに重要ではない

・ウロついて缶詰を見つけて食ったり、キャンプしたりする

・ところどころに残ったランドマークを訪れ、観光してみたり貴重なアイテムを手に入れたりする

・地形はある程度現実に即していると嬉しい

・大層なストーリーはない 滅んだ後の世界のいち個人としてうろうろするだけ

 

こういうゲームが欲しいんだよな

フォールアウト4をより現実に寄せて、ブレスオブザワイルドみたいな操作性とゲーム性で、戦闘要素を薄めてサバイバル要素を濃くした感じのやつ

学校廃墟に入り込んで一晩中寝たり、植物園廃墟で珍しい植物見たり、こわごわ動物園を見に行ったり

博物館から刀盗んだり、図書館サバイバル術学んだり!

そういうことをやりたいのだ

ヒープリってどこが癒やしだったんだ?

ラストの展開は終始「生存競争」だったんだが。

ビョーゲンズ→生存競争の果てに対立生存競争を生き残るために戦い滅ぼす

ヒーリングアニマル地球が生み出した抗体なので人類共闘。ただしいずれは人類を滅ぼす構想あり。

凄いな。

終始「今を生き残るためにとにかく戦う」がテーマだ。

地球をお手当するというテーマだっだがやってることは「ビョーゲンズとの生存競争のために殺し合う」ことばかりだったと思う。

戦ってるプリキュアあくまで使うのは武力、そして武力提供するヒーリングアニマルも本当なら人類を滅ぼしたいけどビョーゲンズと戦うのに人類の力を借りないといけないか共闘

癒やしとは?

俺のイメージだと「自己治癒力を手助けしつつ本来状態に戻す」ことなんだが。

どうもスタッフの考える癒やしって「敵を滅ぼして世界をあるべき姿に戻すこと」らしい。

まあねがん治療とかはがん細胞戦争して滅ぼしきることなんだけど、そこで滅ぼすための戦いをプリキュアパートに持ってきてるからこのプリキュアは癒やしじゃなくて滅ぼしのプリキュアしか見えないんだよね。

自分エピローグでいきなり「人間こそが地球を蝕むビョーゲンズ!」「まぁまぁ、そのうち滅ぼすから今は共闘、な?」って話しされなきゃこんなこと言わねえけどさあ。

癒やしってなんだろうな。

病原菌を殺すことだけが癒やしじゃねえと思うんだけどなあ

2021-02-20

ロック好きなら高校生までに聴いておきたい古典100

20世紀(2000年)までに出たアルバムを「古典」としています

1.Revolver / The Beatles

2.Beggars Banquet / The Rolling Stones

3.Who's Next / The Who

4.Led Zeppelin 2 / Led Zeppelin

5.Paranoid / Black Sabbath

6.Trout Mask Replica / Captain Beefheart

7.Live at the Harlem Square Club / Sam Cooke

8.Red / king Crimson

9.Tarkus / Emerson, Lake & Palmer

10.Close To The Edge / YES

11.Piper At Gates Of Dawn / Pink Floyd

12.Live / magma

13.Future Days / Can

14.Stand By / Heldon

15.Strange Days / The Doors

16.White Light White Heat / The Velvet Underground

17.Marquee Moon / Television

18.Radio Ethiopia / Patti Smith

19.End Of The Century / Ramones

20.Blank Generation / Richard Hell & The Voidoids

21.Remain In light / Talking Heads

22.Buy / James Chance & The Contortions

23.Never Mind The Bollocks / Sex Pistols

24.Damned Damned Damned / The Damned

25.London Calling / The Clash

26.Inflammable Material / Stiff Little Fingers

27.No More heroes / The Stranglers

28.Ace Of Spades / Motorhead

29.Over The Edge / Wipers

30.Dameged / Black Flag

31.Rock For Right / Bad brains

32.Why / Discharge

33.Heaven Up Here / Echo & The Bunnymen

34.Substance / Joy Division

35.Substance / New Order

36.Killing Joke / Killing Joke

37.Odyshape / The Raincoats

38.Cut / The Slits

39.Songs About Fucking / Big Black

40.Y / The Pop Group

41.Metal Box / Public Image Limited

42.This Heat / This heat

43.In"Jane Fron Occupied Europe" / Swell Maps

44.Heroes / David Bowie

45.Purple Rain / Prince & The Revolution

46.Our Favourite Shop / The Style Council

47.Psycho Candy / The Jesus and Mary Chain

48.Kollaps / Einstürzende Neubauten

49.Daydream Nation / Sonic Youth

50.Appetite For Destruction / Guns N' Roses

51.Nevermind / Nirvana

52.Wish / The Cure

53.Green Mind / Dinosaur jr.

54.Loveless / My Bloody Valentine

55.Screamadelica / Primal Scream

56.The Comforts Of Madness / Pale Saints

57.Siamese Dream / Smashing Punmpkins

58.Odelay / Beck

59.Parklife / Blur

60.Definitely Maybe / Oasis

61.OK Computer / Radiohead

62.Weezer (Blue Album) / Weezer

63.Satori / Flower Travellin' Band

64.PYG! / PYG

65.EVE / Speed, Glue & Shinki

66.晩餐 / Food Brain

67.一触即発 / 四人囃子

68.風街ろまん / はっぴいえんど

69.楽しい夕に / RC SUCCESSION

70.燃えつきる キャロルラストライヴ!! 1975.4.13. / CAROL

71.Public Pressure / Yellow Magic Orchestra

72.Welcome Plastics / Plastics

73.虫 / The Stalin

74.Deathtopia / Auto-Mod

75.蔵六の奇病 / 非常階段

76.Fight or Flight / The Mods

77.Boys & Girls / ARB

78.THE ROOSTERS / THE ROOSTERS

79.Phew / Phew

80.青盤 / あぶらだこ

81.ピース / 有頂天

82.GOOD EVENING WONDERFUL FIEND / THE WILLARD

83.Shambara / Dead End

84.裸の王様 / じゃがたら

85.DETESTation / G.I.S.M

86.服部 / ユニコーン

87.PSYCHOPATH / BOOWY

88.THE BLUE HEARTS / THE BLUE HEARTS

89.ヘッド博士世界塔 / Flipper's Guitar

90.Mother / LUNA SEA

91.空中キャンプ / Fishmans

92.Super Ae / BOREDOMS

93.フェイクファー / スピッツ

94.C.B.Jim / Blankey Jet City

95.ココロに花を / エレファントカシマシ

96.GEAR BLUES / thee michelle gun elephant

97.Kocorono / Bloodthirsty Butchers

98.Sim City / 平沢進

99.Buzz Songs / Dragon Ash

100. 無罪モラトリアム / 椎名林檎

追記2/21

すみませんJimi Hendrixを完全に入れ忘れてしまいました。

追記② 2/21

Sonic Youth綴りが違う、ご指摘感謝。訂正しました。

Stone RosesやSmithsあたりはTOP110なら入ったと思います

追記③ 2/22

ピストルズアルバム名も誤字有り、とご指摘。

ありがとうございます

四人囃子も「一色即発」と書いていたので

こちらも訂正しました。

あと数字=順位と思ってる方もいるようですが、

順位ではありません。

クローゼットガール』はそこまで出来が良くもないと思うんだけど。

クローゼットガール - 朱井よしお | 少年ジャンプ+

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/shonenjumpplus.com/episode/3269632237259870801

構成が上手い!」「トリックが凄い!」みたいに絶賛されてるけど

ネタばらしされても全然しっくりこなかった。

 

作者が用意した理屈より先に読者の目に入る描写、そこが全然ちゃんとしてない。

そこがちゃんとしてないからこそ読者を騙せる構成になってる。

これはどうかと思う。

 

全てのネタがばらされたあとでも各描写真相との整合性全然ないので

トリックによっていろんな伏線ピタッと収束したというような感心や快感もない。

あの真相意表を突くのは、それまでの描写によって刷り込まれ無意識理解からは有り得ない真相から

 

ちゃんと各要素を整理せずに読んでると「意表を突かれた感」がトリックによるものだと勘違いしてしまう。

  

以下具体的に言う。

 

 

1.親がおかし

最後の反応とか見るに、この親はお兄ちゃんもまほちゃんも可愛がってる。

出来のいいお兄ちゃんを良く見過ぎていたとかプレッシャー掛けちゃってたっていうだけで。 

 

そうなるとまほちゃんのあの全身のあざだらけはなにごと?

あんなの秒で異常に気付いちゃうじゃん親。

 

読者がなんであの兄妹虐待児相エンドに意表を突かれるかって

普通あんなのもっと前に即発覚してるはずだからなのよね。

え?よいご家庭の子がなんでそんなことやってて、なんでばれてないの?っておかしさ。

 

親には一緒にやってるor黙認してるような不穏な伏線はないのに

お兄ちゃんが妹にあん露骨虐待をやってたという真相おかしいでしょ?

  

描いてる側は「巧みな構成虐待という真相を隠してました」って言いたいのかもしれないけど

構成が巧みと言うより同居者である親にそういう描写が何もないから読者はその可能性は消してるわけでしょ。無意識の裡に。

 

なのに「虐待でした」って言われると「えっ?」って確かに意表突かれるんだけどそれはトリック凄さじゃなくてむしろ杜撰さでしょ。 

読後に「この親の設定や描写どうなっとるんや?」という矛盾が残る。

ラストでぱっとお姉ちゃんとまほちゃんのエモに世界を閉じるのはそこに気付かれないための逃げ切り法として見ればまあまあ上手いけども。)

 

 

そもそも痕でバレるバレない以前の話で

なんでまほちゃんは「お兄ちゃんにぶたれてる」って親に言わないの?

なんか親に言えないような性的虐待暗喩だよみたいな話を始めちゃう

  

 

2.おねえちゃんおかし

おねえちゃん普通女子高生だし、実はそれ以下の、

親の虐待に日々をおびやかされている子なんだよね?

 

そうなるとなんでこんなに終始強キャラオーラをまとってるの?

そのせいで色々まほちゃんや読者からミスリードを生んでるんだけど

この強キャラオーラ理由最後まで説明出来てないから「トリックです」とはならないんだよね。

 

なんでおねえちゃんがお兄ちゃん彼女に見えたのかって

親もいないのに部屋まで入り込んでるからだよ。する?そんなこと。

 

お姉ちゃんの行動がただのクラスメートとして不自然から彼女に見えてるだけで、これは叙述トリックの巧みさでもなんでもない。 

プリント押し付けられて仲がいいわけでもないむしろ嫌ってる男子の家まで行ったら、ドア越しでプリント渡してパッと帰るよね。

私室どころか玄関の内側まですら踏み込む女子おらんでしょ。 

 

2回目はもっとひどい。

からクソ野郎だと思ってたけど妹を虐待してて暴力癖まである奴だとほぼわかった。

なんでそんな奴の家に平然と一人で入っていけるの?またしても親もいないし。

 

引き続きお兄ちゃん彼女かなにかに見えるのはこのおかしい行動のせいなんだよね。

この行動が出来るのはせいぜいお兄ちゃん彼女、それもお兄ちゃんのことを色々見透かして性格が強くて精神的に支配してるような彼女

  

   

3.お兄ちゃんおかしい 

お兄ちゃんのようなああい性格世間体の奴が虐待を暴かれて問い詰められたら逆上するよね。

小さい女の子日常的に殴ってるような奴が同級生女子から非難されたり殴られたりしたらどうすると思う?

見下してる対象から殴られたんだから逆上して何をすることか。

 

別にそういう場面に慣れてなくてもそれぐらいの想像はつくはずなのに

おねえちゃんは終始なんの緊張感もなく堂々と振る舞ってるし

何の怖気もなくパンチで圧倒する。

 

この展開も確かに意表を突かれるけど、これはトリックが凄いとかじゃなくてみんなの行動がおかしいだけじゃん?

なんでお姉ちゃんはこんなに強キャラなの?

なんでおにいちゃんはあれだけクズなのに何の反撃もせずされるがままなの?

 

殴られた怒りだったり秘密を暴かれたパニックだったりで

とりあえず口を塞ごうと思ったらお姉ちゃんを殺しちゃって大惨事かになるよね?

日頃から変に暴力への敷居が低くなってるような奴だし。 

  

 

4.お姉ちゃん結局ナニモノ?

お姉ちゃんについてのミスリード

「お兄ちゃん彼女」→「異様に強キャラ感のある変な女」→「母親虐待されてる女」→「強キャラ感じゃなくてマジで強い女」になってるけど、

それぞれが見え方の問題ではなく行動自体おかしくて、その理由が結局説明出来てない。

これもうトリックとかミスリードとかじゃなく単に滅茶苦茶なだけでしょ。

キャラがぶれてるという言い方すら生ぬるい。

 

ほちゃ視点で年上のお姉さんが強キャラに見えてたとかじゃなくて、

クズお兄ちゃん精神的にも暴力的にも圧倒してるからマジで強いだけだし。

  

何故クズ同級生の私室に上がり込むのか、

何故一ミリも取り乱さず撥ねつけて帰れるのか、

何故一方的な難詰と暴力で圧倒できるのか。

全部説明なし。

こんなのをトリック中心部に置いたらそれは構成トリックとしては0点でしょ。

 

「酒乱ぽい母親」より「どうしようもないクズで弱い者への暴力癖のある同級生男子」の方が怖くないとか弱いだなんてこともないだろうし。

小学生同士のいじめに介入するお姉ちゃんとかならこの強キャラ感や圧倒力でもいいかもしれないけど。 

 

見せ方がテクニカルなのではなく行動自体が異常性の連発なので

これはまほちゃ視点どうこう叙述トリック的にどうこうじゃなくて

単に出来が悪いだけですぜ?

 

(『響』みたいに女子高生主人公の胆力と暴力テーマとした漫画なら違う評価になるけど、

 あくま構成力やトリック的なもの評価させようとしてるのであればと言う話ね。

 

(ちなみに『響』はテーマである暴力描写については真摯だったので素人女子高生が正面からパンチ一発で相手を昏倒させるなんて場面は一度もない。

 響がお姉ちゃん立場だったら、リビングの重いもの握って洗濯機の音に紛れて忍び寄り背後から頭にガツン→崩れ落ちたところに顔面蹴りだと思う。殺しかねないけど確実に反撃能力は削ぐ。) 

  

 

5.まとめ 

別に、頑張って構成して絵を描いて1本の漫画を仕上げた作者に対しては1ミリも悪意的なことを言いたいわけじゃないのよ。

けど読者サイドについては、これを「構成が見事」とか「四季賞級」とか言う人達はどうかと思うのよね。

あなたたちは流し読みの雰囲気しか受け取ってないレベルだよね。

漫画というのはもっとちゃんと読んでちゃん評価すべきでは?

 

それでまた腹立つんだけど

こうやってものすごく雑に読んで雑に褒め上げる読者が

ちゃんと読みこんだうえで「これこれこうだからうーん、いまいち」っていう読者よりも

「素直な良い読者」であるみたいな言い方をするじゃん。

 

んなアホな。

2021-02-17

「7年後で待ってる」感想

作者のハリウッドから声がかかったという記事を見てサブストーリー含めプレーした。

以下ネタバレ含む。

iOSAndroidプレーできるのでまだの人はやってみて。

大雑把な感想としてはイマイチだった。

ゲーム性はほぼないかストーリー重視な作品だが、これもそんなに出来が良いとは思えなかった。

チャプターごとのラストに「意外な展開」があって引っ張りはするけど、大半は伏線なしで新事実をどんどん言っていくだけ。いくつかレビューを見て伏線が凄いという感想もあったが、この作品伏線ではなく「思わせぶり」だと思う。(あからさまに読者の印象に残る引っ掛かりを残すのは伏線とは違うと思ってる)

もう少しゲーム性が高ければ感情移入度が高くなるからこれでももっと惹きつけられたと思うけど、このゲームちょっと操作するだけで謎解きも選択肢も全くないので、あまり思い入れることができなかった。

音楽の使い方も、ここは泣くところ、ここは驚くところ、みたいな感じで説明的だし逆に興を削がれる。

タイムリープ難病ものストーリーも、話のための話って感じでイマイチ乗れず。

難病すらオリジナル設定だから、なんでも都合良く設定できるのにそれだけですかという感じ。

タイムリープ2010年代後半の作品としては新しさに欠けると思う。

パッと元ネタが指摘できるようなポイントがいくつかあって、そこが肝になってもいるので、まあ元ネタ作品は超えれんよなという。

タイムリープの設定もカバーしきれてないと思う。

意識だけ戻る系だけどどうしてもタイムパラドクスは生じるし、そこが解消されないまま話上の意味しかない実験や、後付けみたいな設定により解決。うーん、勝手にやってくれという感じが強くなってしまった。

独特のドットタッチは良かった。

なんだかんだ最終的にこの絵のかわいさにやられるわけだしな。

タイムリープの凝った設定も面白みはある。タイトル意味が何度も変わる感じは秀逸。

色々思うところはあるけど時間無駄とまでは思わず、やってよかったとは思ってる。

そういうものじゃないとは思いつつ、もう少しゲーム性があればなー。

2021-02-14

ケガをして動けない白鳥を助けた男性 その後37年に渡り深い信頼関係を築く

警戒心が強く攻撃的な性格で知られる白鳥だが、ケガをしているのを見つけた男性は自宅に連れて帰り治療を施した。その白鳥はケガが治っても逃げ出すことなく、37年経った今では男性がどこに行くにも後を追いかけるほどの信頼関係を築いているという。白鳥寿命は長くて30年と言われるが、この白鳥男性愛情に応えるかのように37年以上も長生きしている。『Metro』などが伝えた。

【この記事の他の写真を見る】

トルコエディルネ市カラアーチ在住のレジェプ・ミズランさん(Recep Mirzan、63)は37年前、友人たちと車で走っていた時に羽が折れて草むらでうずくまっている白鳥発見した。当時のことをレジェプさんは「そのままにしていたら狐に狩られてしまうと思いました。動物好きとしてはこのまま放置することはできず、家に連れて帰らなければと感じたのです」と振り返っている。

この白鳥トルコ語で“運が悪い人”という意味の“ガリップ(Garip)”と名付けられ、ギリシャとの国境付近にあるレジェプさんの自宅の牧場に運ばれた。折れてしまった羽が治るまで面倒を見ようと思っていたレジェプさんだったが、ガリップは羽が治っても牧場から逃げ出すことはなかった。そしてレジェプさんだけでなく、そこにいる猫や犬とも仲良く過ごし始めたそうだ。

レジェプさんはすでに妻を亡くしており子どももいなかったため、ガリップの名前を“ミズラン(Mizran)”と自分ラストネームに変えて、我が子のように可愛がり始めた。

ミズランはレジェプさんが農場仕事をしていても、夜の散歩をするにも後を追いかけてずっと一緒にいるようになり、今ではほとんどの時間を囲いの外でレジェプさんとともに過ごしているという。「一緒にいることに慣れましたね。これから私達が離ればなれになることはないでしょう」とレジェプさんは嬉しそうに話す。

白鳥大人しそうなその見た目と違い、獰猛気質攻撃的な行動で知られており、警戒心の強さから一度危険を感じた場所には近づかないほどだという。

また一般的飼育された白鳥寿命は長くて30年と言われるが、ミズランは発見されてからすでに37年が経過していてかなりの長寿になる。レジェプさんの愛を一身に受け、心身ともに健康に過ごせた証拠かもしれない。

レジェプさんは「ミズランはもともと明るい性格でしたが、年を重ねて大人しくなってきました。もしミズランが死んでしまったら立派な墓を建てたいと思ますが、これからもずっと一緒に過ごせたらいいですね」と語っている。

https://news.livedoor.com/article/detail/19692104/

https://www.youtube.com/watch?v=y-vLT-cegRU

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