はてなキーワード: 女中とは
孤独な主人公。学費滞納のために大学から除籍され、サンクトペテルブルクの粗末なアパートに下宿している。
マルメラードフの娘。家族を飢餓から救うため、売春婦となった。ラスコーリニコフが犯罪を告白する最初の人物である。
予審判事。ラスコーリニコフを心理的証拠だけで追い詰め、鬼気迫る論戦を展開する。
兄や母の事を考え裕福な結婚をするため、ルージンと婚約するが、ルージンの横柄さに憤慨し、破局する。
以前家庭教師をしていた家の主人スヴィドリガイロフに好意を持たれている。
ドゥーニャを家庭教師として雇っていた家の主人。ラスコーリニコフのソーニャへの告白を立ち聞きする。
マルメラードフの遺児を孤児院に入れ、ソーニャと自身の婚約者へは金銭を与えている。
妻のマルファ・ペトローヴナは3,000ルーブルの遺産を残して他界。
ラスコーリニコフの友人。ラズミーヒンと呼ばれる。変わり者だが誠実な青年。ドゥーニャに好意を抱く。
居酒屋でラスコーリニコフと知り合う、飲んだくれの九等官の退職官吏。ソーニャの父。
仕事を貰ってもすぐに辞めて家の金を飲み代に使ってしまうという悪癖のため、一家を不幸に陥れる。最期は馬車に轢かれ、ソーニャの腕の中で息を引き取る。
マルメラードフの2人目の妻。良家出身で、気位が高い。肺病と極貧にあえぐ。夫の葬儀はラスコーリニコフの援助によって行われた。
7等文官の弁護士。45歳。ドゥーニャの婚約者。ドゥーニャと結婚しようとするが、ドゥーニャを支配しようとする高慢さが明らかになり、ラスコーリニコフと決裂し、破局する。
ラスコーリニコフへの当て付けにソーニャを罠にかけ、窃盗の冤罪をかぶせようとするが失敗する。
役人。サンクトペテルブルクでルージンを間借りさせている。ルージンのソーニャへの冤罪を晴らした。
高利貸しの老婆。14等官未亡人。悪徳なことで有名。ラスコーリニコフに殺害され金品を奪われる。
アリョーナの義理の妹。気が弱く、義姉の言いなりになっている。ラスコーリニコフに殺害される。ソーニャとは友人であった。
彼女の娘であるナターリヤ・エゴーロヴナ・ザルニーツィナはラスコーリニコフと婚約していたが、病死している。
ラスコーリニコフが住む区の警察署の副署長。かんしゃく持ちで、「火薬中尉」とあだ名される。
男が賃労働、女は家事って分業ってせいぜい数十年ぐらいしか成立してなかったんだし、大多数の人にとってそれが良かったっていうけど、本当にそれが良い人は今もそういう生き方するだろうし、できない人が多いってことはそもそも無理があったんだと思う。
それよりもっと昔はそもそも仕事にも家庭にもすごい多様性があったわけで、たとえば江戸時代の農村ってのは男女関係なく野良仕事、子供は子供が面倒見てた。だいたいの庶民の家は狭くてものもなく食べ物も限られてる以上「家事」なんてものに今ほど労力もかからない。
少女がメイドをやっている少女漫画のタイトルが思い出せません。
ちらっと見た紹介文には少女の性格について気が強いとか気丈みたいなことを言っていた気がします。
外ではいままで通りそういう性格で過ごしているけど中では主人に従っているみたいな話だったと思います。
コンセプトとして少女漫画版「これが私の御主人様」といった趣を個人的に感じました。主人公の少女に使用人になる弱みがあったのかどうかも覚えてないのですが…。また少女の容姿は性格に相応しいクーデレっぽい感じを漂わせるものだったかと。
雇っている人間は少女漫画にありがちな王子様系の容姿だった気もしますが、ショタだったような気もします。
こんな感じで記憶があいまいなところは多いのですが、以上の記述が思い当たる漫画があったら教えてほしいです。よろしくお願いします。
補足
執事であれば必然的に男装しているでしょうが髪型までボーイッシュだったというようなことはありません。
また話の中心人物の使用人(女中、給仕)は確実に女性(少女)です
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13260743938
上の質問をした人間だがrentaをかたっぱしから検索したところ暴君メイドかもしれん
その割には表紙を見てもいまいちビビッとこないのだが、暴君という単語を当時の俺が気が強いのう意味にとったと考えるのが今のところ一番妥当な筋に思われる
これ「陽」か?
https://twitter.com/yn_j1234/status/1487386476405207040 をリツイートしてる人のbioを上から順にコピペ
へらりん@21卒
@choco_tabe
ェケチャン
@watashihahime
KAURUキツネの顔
@cheeseballsuno
@mayuko0222_
葉脈
@nngn__skk
mick@ADHD
@restfromMarch
アラサー女子・ITベンチャーでセールスとかやったりしている・最近サウナが好きすぎるスチームルームにいる女性 #ADHD コンサータ飲んだり飲まなかったり あんまり最近体調悪くない、安定してる。ADHDっぽくなくなってきてしまった
もなか@発達垢
もなかの発達垢です。30過ぎてADHD+ASD+二次障害でうつ病判明、現在手帳3級です。嗚呼エビリファイ、エビリファイエビリムられるほどやかましい。「「子持ち」」主婦です、反出生派の方ごめんなさい。「薄いグレー」の六歳息子。BASEにてスマホケースやアクセサリーなど販売しています。ご興味がございましたら何卒。
メロ突き上げペロリンチョ栗四角囲み満
@tuchinoko_pi
4201-6696
@Pui23456789
チュウニズムプラれ ビートマニア十段 BMS五段 お爺ちゃんプレイヤーです
Chii
@Sakura_pierce
主に美容、恋愛。鳥、読書好き。絵、写真、詩→(@uta_hakanakiai) ⚠︎DMは親しい人のみお願いします。
⋆。☆
@_lOOclm
20歳/ブルベ夏/顔タイプキュートとフェミニン/骨格ウェーブ/160センチ42キロ/かわいくなる〜!❤︎
女々コ
@memeko__18
冠サフランライス❄
@izu_sousak
別称は焼畑です。強火でよく燃える歩く発火材。雑多垢。ツイーヨはよく読もうね。世界は「好き」で溢れてる。質問箱とマシュマロと時々戯言。冬馬推しのTHme Please do not reproduce the contents and do not share it with any 3rd party
すろーろりすちゃん
@roriroriroris
ろりすです 豚小屋勤務 大学生M2→社会人♪ 済 歯科矯正(抜歯4本) 目フル❤︎ 鼻フルをもう少しでします!
のの
@unkoshitakamo
ピコピコピンピンピン複数の音符 ゲームテレビゲーム @tori500cm
ももかスイギュウ
@momoneko0105
刀剣乱舞 刀ミュ 蜻蛉切 spiさん 三名槍 ZIPANG OPERA SONYα6000 〖成人済〗夢NL腐OK #ANCHOR⚓
怒ったネコの顔
@3230R
@puchipuchiland
アレン様の考え方に感銘を受けた栗四角囲み満バラキラキラとにかくポジティブハートのビックリマークなァんだょねキラキラスマイルヘラつき人生きらめくハートキラキラ普段はデェ学校生してるゎょ、普通に(笑)今すぐ5️⃣0️⃣0️⃣振り込んでくれなぃCA4️⃣LA!?因みにァィコンは自作ょラブホテルきらめくハート
かじたに
@kajr02
アラサー/昼職/ブルベ/骨スト/美白/整形(二重埋没/ほくろ除去/ピコトーニング/ボトックス/目の下脱脂)
味噌煮
@kanarishindoine
ℎ𝑖𝑛𝑎𝑛𝑜
@Ete3h
喪こちゃん
@mojojojo_power
正真正銘アラサー喪女 脱喪目指す 婚活戦闘マン ちょっとでも厳しくされると泣いて暴れる 常に架空の敵と戦っています アッパー系陰キャ 無言フォローすみません 質問箱→ https://peing.net/ja/mojojojo_power
どちゃん
@byoubyoubyoushi
今日も生きるのに必要なぶんだけ。元個営売女で今はゴリラに嫁いだ人妻パンピー。絡んでくれなきゃブロックするぞハグする顔特に絡みない鍵垢/スカウト/ホスト/風俗店はブロック対象です。アマギフくれる人は神様です。
トンデミック
@rin_252515
20↑ 雑食 腐
@Ux_xU_Rau
JK1 @jingai_Rau→彼氏 @hosizoracookie→姉 @e_69_s→推してる吹き出しの目血1滴 @kasumi_darkness→大切さん @ymakdhnti→弟
@kaeeeerunn
来世はキラキラキャバ嬢 ともだちほちい… きらきらしたい ゲロゲロゲロッピカエルの顔 夜職のおんな、、、
が ひ
@mobasan_
元ひが 邪二オタ遠隔子供部屋喪ばさん
米
@0k0m3_
嫌なことは嫌って言う拡声器 #SexIsReal #NoToSelfIDJP
@mainichi_yuchan
はたらけど はたらけど猶 わが生活 楽にならざり ぢつとアマギフを待つ
ほたてさんヒマワリ
@ebi_sama1
コンプライアンスを極めろ。法律勉強。誤字誤変換多い(めんどいのでそのまま) 2019113開始 共用垢 フォロー外通知はオフ(見逃し率多)無断転載お断り
トキコ
@VxSbx
04 圧倒的鼻ブス。ラテン十字Xラテン十字のウサギの顔さん好きだから、韓国国旗太字のドル記号好きな人とお話したいでヮ
@yasemasudiet401
ダイエットしよー!とおもって中学生の時に作ったけど全然痩せずにいます!コスメたのしい!みてるのすき!頑張ってるおんなのこもすき!!わー!!!おれのついったーらんどや!
@etoile_tao
20↑ 大学生 主人公右 女体化癖あり 無言フォローごめんなさい握った手
@Cat_7_shi
大人の夜の遊び場制覇しつつある。キャバ9年目。ホスト、スカウト、夜職と関係のない男要らんフォローもリプもDMもしてくんな。ジャニオタガチ勢。
まるまる
@wjtawe
早稲田 社学
クロ®凍結解除されました
@kuro__staff
ミスヘブン黒猫部門 /サブ垢@kuro__staff2 #クロごはん #ቻンቻンがቺቻቺቻ
豚
@084523684a45289
@lyricalsofia
2022年は美麗BBAになる事を目指して/コスメ収集/スキンケア/美容/オタク/映画/歴史・戦史/旧日本海軍/JOJO/氷上格くん/地雷なし/エス文学/濃厚耽美/レトロ/プチプラ/茶湯のみ/アイコンはこみやま様(
@k56t_h5n9n
hレディースハット゛
@_I6nx
♩゛~ 난 아직 널 그리워해 .
@HRPR_PNNK
初心者マーク成人済み初心者マークRT専門(RT非表示推奨)初心者マーク
HINI炎かちかち山
@hini_a
@098765LA1
親がDQN
@greentea_to
アイコンhttps://twitter.com/N00_M?s=09
れのん
@renon210
世界は君が思ってるほど君のことを想ってないよ
Hi虹考え吹き出しチョウ
@K0ljEampms7eTOO
19歳女子大生チョウ 美容&整形垢 整形した人、予定の人と情報交換したい。 春から韓国留学 次やる→輪郭3点、足二の腕腰回りの脂肪吸引 目頭目尻タレ目切開 頬の脂肪吸引 【4月予定】 切開リフト 162センチ now 40 だれよりもかわいくなる女中指を立てた手 ホストや整形垢じゃない男来んな。ぺっ!ぺっ!!
猫「ニャオー(当方、護民官ピート。故あってこの時空の管理を任されているが、本筋とは関係がない。あの扉の向こうには夏が待っている」
相棒「主人公!遂に万能家事手伝い自立思考型女中ロボットの発明に成功したぞ!」
おっぱいの大きい女「やったわね~~~ん♡」
↓
相棒「あとはこのコールドスリープマシーンで主人公を眠らせてっと」
↓
主人公「未来都市で目覚めた俺はクソビッチと相棒が俺を裏切って成功したことを知った」
通りすがりの気のいい夫婦「暗い顔だな。ヌードビーチは初めてか?力抜けよ」
主人公「クソ!こんな雑にエロ回想シーンを回収したからって何になるんだ!」
通りすがりの博士「ほっほっほ。そんなことよりタイムマシンって凄くね」
主人公「マジ?それ乗るわ」
↓
主人公「過去に飛んだぜ!じゃあ万能文化猫壊して設計図も燃やすぜ!」
ロボ「ご主人……なぜ……コロシタ……」
主人公「未来の知識でもっといいマシーン作るぜ!ついでに会社も新しくこっそり作るぜ!」
主人公「やっぱ女はおっぱいのデカイビッチじゃなくて、将来を誓いあったロリだよな。まあ俺はロリコンじゃないから君が成長するまでコールドスリープするけど」
相棒の義理の娘で本作のヒロインであるロリ「18歳未満に手を出さないのしゅてきぃ。まってりゅぅ」
主人公「よっし!じゃあコールドスリープすっか!元相棒とビッチは勝手に路頭に迷うだろ!」
↓
TRUE END
な に こ れ ?????
じゃあお前は信長のやったことを「良いこと」とか「悪いこと」で語る?
逆張りとか抜きに、そういう価値基準持ち込まないだろ?ごく自然に。
たくさん戦争起こしていっぱい殺してるし、
一つ一つを現代の価値基準なり当時の価値基準なりで「悪行」って言うことは出来るかもしれんけど
もしお前が戦国大名を「良い奴」「悪い奴」に分けたリストとか作ってたら
「信長のやった一向宗虐殺がこういう影響を及ぼしたのではないか」という話ならわかるけど
「一向宗虐殺が良いことか悪いことか」って言われてもそんなの何聞いてんのかすらわからん
「人殺しは悪いことでしょー!」レベルの話をしてるんならそうですねって思うけど
極端な話、ホロコーストに対して、「お前そんなこと言えんの?」って感満載のこのブコメがスターを集めるのは、よくいるはてなーの偽善者っぽいところをよく表していると思う。偽善者っぽいというか、冷めた目というか、私は公平だよーみたいなカッコつけ感というか、如何にもこう「私はリテラシーの高い人間であり、下々の者どもとは違う」みたいな優越感みたいなものすら感じてしまう私は卑屈なのだろうか?
お前もうっすら自分の頭の悪さを自覚していて、それゆえのコンプレックスの可能性があるな
このブコメの自己矛盾は、それ自身が「正しい」歴史への向き合う態度としているところにある。しかし、科学に必要なのは「可能な限り客観的であること」であって、価値観を加えない態度を持つことではない。
事前に恣意的に決めたなんらかの基準がない限り良いとか悪いとか言えないよね?
例えば、原爆が広島・長崎に投下されて、何十万人もの人が死に苦しんだ史実に対して、価値判断を加えないで「それによって大戦に終止符が打たれたこともまた事実である」と記述することは、それは「正しい」ことなのであろうか?
いやそれは価値判断だよね?
お前が今まで述べてた話ですらないじゃんその話
「原爆が投下されて何十万人死にました」「そのことが日本軍が降伏を決意する最大の材料になりました」ぐらいだろ?
それが良いことか悪いことかはなんとも言いようがない
Q.アメリカ兵の命のために良いことか?
これなら「良いこと」と答えられる。
たぶん「悪いこと」だよね。
良いことか悪いことかなんてそういう風に限定的な基準が先に示されないと回答すらできないだろ。
私たちは、歴史に対して、価値判断を加えないで評価するというのは、実際にはあり得ないことなのである。他にも、日本の歴史とそれ以外の国の歴史などを比較する場合に、どうして価値判断を加えないでいられようか?
いやそれはお前の頭が悪いだけです
また、Twitterを代表的な界隈として非常に多い「ナチスは良い事もした」のようなアホな意見へのカウンターは「そんなことはない」でしかあり得ない。私たちが歴史に学ぶということは、ナチスを認めたその時代を批判的に見ることなのであって、世間的な見方に対するカウンターとして発生した「良い事もした」と評価することなのではない。
俺はナチスに親戚も知り合いもいないけれどもそれははっきり間違いだと言えるね
何故なら上で見たように「良いこと」「悪いこと」というのがそもそも成り立たないジャッジだから。
基準を示したうえでなら「良いこと」も「悪いこと」も言える。
Q.ナチスはデザイン面でどうなのか?後世に残るような象徴を生み出したか?
これはYESだね。「良いこと」をしてるじゃん、ほら。
何一つ「良いこと」をしなかったってのはちょっと有り得ないことだよ。
俺は別にナチスマニアじゃないしナチスを好きでも何でもないけども。
「ナチスは悪事ばかりではなかった」がそのままナチスの政策全体を「悪事ではない」という見方へ昇華させてしまう事例は、高須を例に挙げるまでもないはずで、
えっそれは別の話ですよね?
悪事以外もしたって認めると高須が調子こくから悪事しかしなかったことにするって話なの?
なんだそりゃ
それこそ科学でもなんでもねーな
高須と同じじゃん
お前なんかカッコよさげな口調ばっかりに力入ってるけど
先に脳味噌に力入れてもうちょっとちゃんともの考えた方がいーよ?
捜査員がガルテン室内に入ると、その異様な臭いと光景で暫し立ち尽くした。
懐中電灯で照らされた暗い室内には、三つの乳幼児らしき死体が転がっていた。
腐敗が進み、白骨化が進んだ死体を見届けた後、奥の部屋から聞こえてくる打鍵音の方へ向かう。
奥の部屋には、物凄い形相でラップトップのキーを叩き続けるハンチング帽の男がデスクに座っていた。
捜査員員が声を掛けようとした刹那、ハンチング帽の男は突然金切り声で笑い始めた。
狂っている、そう感じつつもハンチング帽の男に語りかけた。
つづく
捜査員はハンチング帽の男に語りかけたが、男は不気味な笑みを浮かべたままキーを叩き続けるだけだった。
ラップトップの画面を覗くと、そこには何度も同じ文字が書き連ねてあった。
ーー何故、ぼくを置いて出て行った?
周囲には空の日本酒のビンが散乱し、ぷーんと酒の臭いが漂ってくる。
改めて懐中電灯で男を照らす。
崩れ落ちた男は白いシャツに花柄のスカートという異様な出で立ちをしていた。
「XXさんでよろしいですね?」
捜査員の問いかけに男はビクッと一瞬反応したが、そのまま動かなくなった。
顔を確認するため、ハンチング帽を取ろうとしたが何かで固定されているのかビクともしなかった。
少し力を入れて更に引っ張ると、鈍い音と共に大量の髪がハンチング帽と共に引き千切られた。
男の頭部が懐中電灯に照らされ、満月を思わせる煌々とした光を放った。
男はぶつぶつと呟き始める。
「ぼくの言う通りにやれば、サクッと月商百万は行きますねぇ。今ならこのnoteも貴方に百円で売ってあげましょう。
どうです?安いものですよ?」
つづく
ガルテンに捜査班が到達したのは、捜査員が連絡した1時間後だった。
ハンチング帽の男は、衰弱が激しいため救急車両に乗せられていった。
証拠品ではあるが、致し方ないだろう。
ハンチング帽の妻には直ぐに連絡が取れた。
麓の宗教団体の宿舎に世話になっているらしく、他の信者の付き添いがいる形での面会となった。
「あの人は家族を省みずパソコンに没頭していました。お酒が入ると豹変するんです。耐えかねた私は家を飛び出し、ここにお世話になりました。半年前くらいのことです。」
彼女は薄っすらと笑みを浮かべて、傍らの信者と寄り添っていた。
つづく
捜査員に鑑識からの連絡があったのは、宗教団体の宿舎を出て直ぐのことだった。
ハンチング帽の妻によると、娘が三人いるとの話だったが、おかしなことになった。
ーーーもう一人の女児がいない?
捜査員は意外な展開になったなと、急ぎ車を走らせた。
「春さん、遺体の検死結果はどうだった?」
袈裟春は神妙な表情で答える。
「ああ、遺体は三体とも他殺だった。
乳児は高いところから床に叩きつけられたようだ。死因は脳挫傷。
残る女児と男児は、共に斧の様なもので切りつけられたようで、死因は失血死だ。」
「他殺……ですか。」
捜査員は肝心の男児と居なくなっている女児について聞いてみた。
今、捜査班で手分けして女児の行方と男児の身元を聞き取り調査しているって話だ。」
袈裟春はそう伝えると、慌ただしく動く鑑識に指示を与え、部屋を出て行った。
捜査員はハンチング帽の男の様子を伺うため、取り調べ室に向かった。
つづく
取り調べ室の隣の部屋から、捜査員はハンチング帽の男の取り調べを眺めて居た。
ハンチング帽の男はうって変わって饒舌に取り調べに答えていた。
「やっこさん、ずっとあの調子なんですよ。
子供のことは全く知らぬ存ぜぬって感じで、自己責任とかよく分からないことを言うばかりで。」
ハンチング帽の男に依ると、子供は妻が連れて行った、自分へ全く知らないとのことだった。
男児のことも長女のことも全くわからないようで、ひたすらに自分の仕事の自慢を続けている。
「狂人ですね……。」
つづく
クラインガルテンから更に奥地にある荒地に建てられた小屋に、闇の中で蠢く何者かの姿があった。
人影が鈍く光る斧を翳すと、目の前の青年は驚きの形相でそれが振り下ろされるのを待つしか術はなかった。
あっと声をあげる間も無く、斧は青年の喉笛に一文字の醜い傷跡を刻みつけた。
その刹那、鮮血が宙を舞う。
崩れ去る青年は何かを掴もうとするように手を伸ばし空を握りしめた。
瞬く間に、物言わぬただの肉塊と化した青年を見下ろす人影。
ーーーこれは復讐……。プロブロガーは存在してはならない……。
そう呟いて、人影は返り血を拭いもせずに小屋を離れ、森の中に消えていった。
そして、荒地に再び静寂が訪れた。
つづく
その一報が入ったのは、捜査員がまだ寝室で静かに寝息を立てている時だった。
けたたましく携帯の鳴る音で安眠を妨害された彼は、不機嫌な声で応答した。
例のクラインガルテンの更に奥にある荒地の小屋に惨殺された遺体を発見したのは、同じNPO職員である森という男だった。
「猿さんが朝になっても戻って来ないので、探しに来たんです。
まさかこんなことになっているとは思わなくて……。」
彼の話によると、前日の夜にお世話になっている猟師の男のところに行くと言って出掛けたという。
死因は大量出血による失血死。
鑑識の話では凶器は周囲になく、犯人が持ち去った可能性が高いとのことだった。
念のためNPOの職員らのアリバイを聴取するも、時間が時間だけにアリバイがあるものはいなかった。
つづく
ハンチング帽の男は正気ではなかったし、その妻も他人事のようだった。
捜査線上に挙がった関係者のうちアリバイが成立したのはハンチング帽の妻のみであった。
三人の乳幼児の殺害方法について、まず脳挫傷の乳児は、ロフトの上から叩きつけられた可能性が高いことが分かった、
残る二人の幼児は、切り口に残った金属粉が荒地の小屋で殺害された青年の切り口のそれと一致したため、同じ凶器であると断定された。
しかし、誰が殺害したのか、行方不明の女児の行方や殺害された男児の身元については一向に掴めなかった。
荒地の小屋の事件の翌日、捜査員は殺害された青年が会いに行った猟師の家を訪ねたが長い間不在のようで彼の足取りも掴めなかった。
その後も、山奥の殺害現場では当然ながら目撃者もなく、徒らに時間が過ぎ去るのみだった。
つづく
衰弱はしていたものの、地下室には食料や水などが十分に用意されていたようで命に別状はなかった。
女児は血まみれの服を着ていた。
照合の結果、その血痕は殺害された三人の幼児のものと一致した。
しかし、女児の体力では斧を扱うことには難しく、殺害に関与することは難しく思えた。
「おとうさんが、みんないらないって。
おおきなぼうでみんなをたたいたの。」
女児の証言能力について認められ、ハンチング帽の男は緊急逮捕された。
彼は呟いた。
ぼくはずっとブログを書いてたのです。
早く、PCを返してください。
つづく
鬱蒼とした森の中、木の枝にぶら下がる人影が静かに揺れていた。
足元には黒光りする斧が投げ捨てられていた。
人影の顔が月明りに照らされると、そこには苦痛に歪んだ老人の顔があった。
その遺骸を見上げる人影が一つ。
彼は老人が確実に絶命しているのを確認すると、そこから離れた位置に落ちている猟銃を拾いその場を離れた。
男は猟銃を抱えたまま、また森の中に消えていった。
つづく
袈裟春は発見人の遺留品から唾液の入ったペットボトルを取り出して、軽くうなづいてみせた。
【作者からの挑戦状】
犯人は誰か?
解決編につづく
解決編1
「またお話をお聞きしたいことがありまして、お邪魔させて頂きました。」
ハンチング帽の妻は、少し怪訝そうな顔で捜査員の顔を見ていた。
ハンチング帽の妻はビクッと僅かに反応したが直ぐに冷静を取り繕った。
「我々がDNA鑑定したところ、長女はあなた方ご夫婦のDNA型と一致しませんでした。
貴女はご存知だったのでしょう?」
「あなた方夫婦に三人の娘がいるというのは、周囲でもよく知られたことだった。
しかし、何故か遺体には男児が含まれ、彼もDNA鑑定からはあなた方の子供である事実が判明しました。
ゴクリと息を飲む気配を感じる。
「多分ですが、生まれた時から女児と男児は入れ替わって暮らしていたのではありませんか?
一瞬の静寂の後、捜査員はこう告げた。
そう言って彼が目を合わせたのは、ハンチング帽の妻に寄り添う信者の男だった。
つづく
解決編2
捜査員は話を続ける。
そして、取り違えが起こった。
信者の男は少し怯んだが、直ぐに元の表情に戻った。
しかし、長女と男児が成長するにつれて違和感を感じるようになった。
そして、奥さんがDVを受けクラインガルテンから逃げ出してここに来た時に気づいてしまった。
そこに事件が起こったのです。
それをもう一人の娘が見ていた。
信者の男は不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「馬鹿馬鹿しい。では、男児も私が殺したと?私が殺す理由がない。」
捜査員は少しうなづいてこう返した。
奥さんと一緒になるにはハンチング帽の男の分身が邪魔だった。」
信者の男は凄い形相で睨み付けた。
「彼女は関係ない!私が彼女の安息のために自らの意志でやったことだ!」
ハンチング帽の妻が何か言おうとしたが、男がそれを遮る。
「神の啓示だ。プロブロガーがいる限り、私達家族に安息はないのだから……。」
つづく
解決編3
信者の男は告白するや否や、入り口のドアを開け部屋の外に飛び出した。
部屋を出た時には、別の部屋に男が飛び込むところだった。
彼が部屋の前にたどり着いたその刹那、部屋の中から銃声が響く。
扉を開いたそこには、猟師から奪ったと思われる猟銃で自殺を図った信者の男の骸があった。
しばらく立ち尽くしていると、ハンチング帽の妻がよろよろとその骸にしがみつき嗚咽し始めた。
つづく
<エピローグ>
事件の残る被害者については、ハンチング帽の妻から事情を聞くことができた。
NPO代表理事は、長女がハンチング帽の男の実子でないことに気づいたらしく、信者の男とハンチング帽の妻を強請ろうとしたために殺害されたとのことだった。
また、猟師の男については、罪をなすりつけるために自殺に見せかけて殺したようであった。
長女は責任能力のない年齢のため、当然罪には問われなかった。
また、ハンチング帽の妻も殺害に協力した訳ではないため、共犯の罪に問われることはなかった。
しかし、気が触れてしまったようで、クラインガルテンの周りを徘徊するのを度々目撃された後、ある日崖から転落してその人生を終えた。
つづく
<リ・プロローグ>
漆黒のクラインガルテンの中で、ハンチング帽の妻は自分の人生について悲壮感を感じていた。
まるで飯炊きの女中のような扱いが続き、自分の一生はこのまま終わるのかと思うと、涙が止まらなかった。
いつか白馬の王子さまが彼女を颯爽と救い出してくれる、そう願っていた。
そして、あの日。
ハンチング帽の男は一人で外出していた。
呪術回線の真希って呪力無いのだから女中として禅院家の中にいればいいのに呪力の無い男が所属義務のあるくるる隊に入ってそれでいじめられて禅院家はクソってなって当主目指すわって言って高専行って、そのあおりで望んでなかった真衣も呪術師になる羽目になって、渋谷で大火傷して、家戻ったら直哉がこのあとどうするんやと聞いても無視するし、禅院家の描写的に真希視点では悪かっただけで呪術師としては普通だったんだろうと思う
ここ1ヶ月、図らずも『結婚』について考えることがとても多かった。
本当に偶然色々なところから結婚とかそれに関係するものを見せつけられたというか、「目を逸らすな」と言われている気がした。今までも度々結婚に関して否定的なことも確かに書いてきたけど、手放しに「結婚なんてクソだ、絶対したくない」と思っているわけではない。
ただあまりにも「結婚=幸せ」の価値観を、全くの思考停止で受け入れている人間が多すぎることに辟易としていることは事実。それへのアンチテーゼというか、警鐘というわけではないけど「あんたらそれちゃんと考えて言ってんの?」と言いたかっただけ。
結婚にはメリットもデメリットもあると思う。今の自分にとってはデメリットの方が大きいような気がする、というだけで否定的なこともつらつら発信してきたのもまた事実なので、しっかり言語化して考えないとな、と思った次第であります。
まあメリットデメリットと言ってもそれらは結局表裏一体で、扱う人間やタイミングによって良くも悪くも簡単に変わってしまうもの。まずその良し悪しは考えずフラットに、恋愛から結婚に変わることによる影響を挙げてみる。
…あれ、こんだけ?って感じだけど、マジでこんだけ。この二項の中に色々な面が潜んでて複雑に入り組んでいるだけだと思う。
強いて言えば、⑶ 社会的立場の構築 ってのも追加できるけれど、自分にとってそれは全くメリットでもデメリットでもなければ、何かアクションを起こすに当たって原動力になるものではない。一緒にいることの周囲への説明が楽になるぐらい?
結果としてついてくる分には勝手にしろって感じだけど、社会的立場のために何かをしたりしなかったり、という判断はしない。それは結婚云々に限らず。
てことで⑴⑵について順番に書いていくけど、既に長丁場になりそうな予感がプンプンする。
それによって生まれるのは①安心感と②義務感。この時点でも善玉と悪玉に分かれてそうだけど、実はもう一つ階層がある。
①安心感
安心感がもたらすのは、文字通り “不安が取り除かれた心地よさ” ともう一つ、あらゆる人間関係において最大の敵 “馴れ合い” だ。
文字通りの意味については書くまでもないけど、やっぱり本能的に人間が自分以外の人間に求めるものってこれしかない。「愛されている」っていう実感が欲しいし、そこからの変化が一番恐ろしいものだと感じる。
つまり愛し愛されていると思っていた人が目の前から消えてしまう、という最も恐るべき状況に陥るリスクを最小化してくれる正攻法として、婚姻届という書類を提出して認められる結婚という契約が、最も手っ取り早くて一般的な手段であるということ。それによってお互いがある程度心地よく生活できるし、信頼にも繋がってくる。するとパートナーにも自由を与えることが容易になる。
それが一つ。厄介なのはもう一つの馴れ合いというやつで、先述の通り男女中に限らずあらゆる人間関係において最も脅威になるのがこいつ。
これは交際前と交際後という比較的浅い次元の関係性の変化でも猛威を振るう。「付き合ってから冷たくなった」だとか「もっと誠実だと思ってた」だとか、こういった類のパートナーに対する愚痴って全て馴れ合いから来ていると思うのだ。それは言う側も言われる側も同じこと。
言われる側からすえば、付き合う前だったら「この人に好かれたい、嫌われたくない」という一心でどんなことでもできてしまう。親切にするし、優しく受け答えするし、浮気な様子は見せない。けれど付き合い始めて「この人は自分が好きだ」と認識できた途端、「これぐらいいいだろう、許してくれる」という感情が生まれて、それまでとは違った対応や行いをしてしまうようになる。
言う側からすれば、付き合う前であれば「自分はこの人の何でもないし、相手にされなくて当然」という謙虚な気持ちでいられるのに、付き合い始めると「自分はこの人に大切にされて当然、自分のために動いてくれて当然」という傲慢さが顔を出して自分の勝手な期待を相手に押し付けて、それが叶わないと裏切られたような感覚になる。だから上記のような愚痴をこぼす。
言う側と言われる側は固定された立場ではなくて、どちらともがどちら側にもなりうる。こうしてすれ違って、ある日プツンと切れて、もうバイバイ。これがよくあるカップルの破局パターンなんじゃないかと思う。し、自分もこれまでほとんどそうだったような気がする。
浮気、冷たい、優しくない、好きじゃない、…どこにでもありふれた別れの真因としてこの馴れ合いがある。
人と人との関係を良好に保つには、「それぞれの人間だ」と認識できるほどの距離感が常に必要だ。
付き合う前のような「好かれたい」「嫌われたくない」というある種の緊張感が、その最たるものだということ。それがあるからこそ気遣いや思いやりが生まれるし、欠けてしまったところも受け取る側がカバーできる。
交際前から後への距離感の変化を乗り越えられたとしても、結婚前と後ではまた違ってくる可能性は大いにある。それは交際という口約束とは異なり、婚約というものが法的拘束力を持つからだ。
これが安心感がもたらす負の側面。乗り越えるには所謂「親しき仲にも礼儀あり」という先人の智慧を、片時も忘れないよう脳裏に焼き付けておくこと。しかない。
②義務感
さっきの安心感に比べればこちらはシンプルなもので、「この人を幸せにしなければならない」とより強く思うことができれば、そのおかげで仕事のモチベーション向上に繋がる良い面がある。
その代わりに、義務感という言葉に強制的な印象を持ってしまうと一気に嫌悪感を覚えてしまうことが大いにある。
人間は何でも強制されるものが嫌いだ。「好きだった物事も、強制されると嫌になる」なんてのは世の中にありふれた陳腐な言葉だが、それだけ多くの人に当てはまってしまう内容でもあるということだ。
できちゃった婚、なんてのが存在することからも分かるように、一般的に真っ当に子どもを育てようとしたらその両親は夫婦であることが望ましい。
とされている、と言った方が正しいのかもしれないけど。
まあともかく、「子ども作るなら結婚するでしょ」「子どもできたなら結婚するでしょ」という発想が当然という世の中であるということ。それが⑵の文意だから、必然的にここで議論を進めるのは、子どもを作る・子どもがいることによるメリットデメリットになる。
子どもが家庭の中で担う役割はやはり二つあると思っていて、一つは①家族の一員としての役割、もう一つは②夫婦の間に生まれた子どもとしての役割、というこの二つ。
これはやはり一般的に幸せとされていること。「家庭を持つことが全人類の夢」とでも言わんばかりの勢いで押し付けられがちな価値観だけど、確かにそれも一理ある。
正常に機能している家族であれば、そこに帰属する幾人かの繋がりはとても強くて、無条件に愛し愛され、外敵からの攻撃から守ってくれる居場所になるはずだ。そこに血縁関係が有るか無いかなんてそこまで重要な問題ではないとも思う。これが家族であることの幸せ。
ただ、現実問題そのように理想的に機能している家族は少ない。と思う。そんなことないのか?いや、きっとそうだと思う。そうだと思いたい。良いな、と思う家族は知り合いの中でも一握りだし、実際SNSなんかでも家族に対する愚痴ばかり流れてくる世界。
そして自分が育った環境もあまり良いものとは言えなかった。育児放棄だったりアルコール中毒者による虐待だったり、そんなような何か明らかに大きな問題を抱えていた訳ではないけれど、家族であることの決定的な意義でとなる、愛されているという実感や安心感、自己肯定感を育む教育、そんなものを一切享受することはできなかった。
それに、世間一般の家族における父親に対する風当たりというのは、相当に強いものがある。自分も父親が大嫌いだし、母も姉も、だ。家族から愛されている父親なんてパーセンテージでみたらほんのわずかだろう。
ほとんどの家族で見られる構図として、まず夫婦仲は良くない。子どもたちはずっと面倒を見てくれている母の味方につき、母を攻撃する存在である父を敵とみなす。ありふれた構図だ。
それだけならまだいいのだが、何故か、いくら育児に協力的であっても、家事をこなしていても、父親というものは基本的に孤立するようにできているらしい。悲しい習性だけど。
世の母親が「腹を痛めて子どもを産んでよかった」と答えるのは、そういうことだと思う。そこに綺麗なものは何もない。
もし自分が父親になったら、と考える。先述のように「愛されたい」という欲求を家庭で満たされることなく育ったがため、自分はこうも恋愛依存的になってしまったのだと確信している。他にその欲求をぶつける対象として友人や集団帰属などの手もあったにはあったんだろうが、自分にはそのどちらも受け入れられなかった。
まあともかくそうやって、ようやく見つけた「自分を愛してくれる人、肯定してくれる人、守ってくれる人」と結婚したとして、その人との間に子どもができれば、それがまた全て奪われて無に帰してしまう。
子どもにとっては母である自分のパートナーを奪われ、挙句の果てに家庭という場所から孤立する。そうなるとまた生まれ育った悪夢のような家族に逆戻りだ。それを恐れている。
「子は鎹」という言葉がある。
こんなクソみたいな言葉はこの世にないってぐらいクソみたいな言葉だと思う。鎹がなければ離れてしまうような関係の人間と一緒に過ごさざるを得ない上に、それに子どもを付き合わせるなんて最悪だ。
けれど皮肉なことに、その離れる原因はほとんどが子どもだったりもする。
子どもができることによって夫婦の関係は父母という関係にもなって、彼氏と彼女、夫と妻、という1:1の関係性ではなくなる。その変化の中で上手く2人の間を擦り寄せていかないと、育児や教育や家計の問題でやっかみ合うようになり、関係は悪化する一方だ。そうして子どもが原因で離れていった2人を、繋ぎ止めるのもまた子どもなのである。
…とまあ、長々と書いたけど今の自分で考えが及ぶ範囲はこれぐらいだ。
あとはもっと歳をとったり、独り身になったり、自分が結婚してみたりして見えてくるものもあるのだろうなとも思う。それはその時にならないとわからないし、とにかく今はこう考えている。
という記録。
自分は子供が欲しいのに、一向に子作りに協力をしてくれないので、理由を聞いた際の事だった。
「交際中は別れたくなかったから嫌々ながらセックスをした、結婚したらもうセックスはしたくない」
そのカミングアウトはショックだった。
それから三年程の結婚生活は寝室は別々で、一度もセックスは無かった。アセクシャルだから、という事だった。
世の中では、私達のような夫婦を「偽装結婚」や「友情結婚」と言うらしい、私は偽装をするつもりも友情のままでいるつもりも無く、彼の子供が欲しくて、家族になりたくて結婚をしたのだけれど、彼はそうでは無かったのだ。
何度も離婚を考えたし、発狂しそうな孤独の中、一人で泣いた夜も何度もあった、それでも別れなかったのは彼を好きだったからだ。
今思えばなんとも愚か過ぎるけれど、恋とは愚かなものだから仕方ない、愛されなくても、母親の様に女中のように生活を支える生き方でも、体で繋がる事が出来なくても心で繋がっていればと思っていた。
相手は人妻だった。何が起こっているのか、私には飲み込め無かった。
心がつながっていれば?心も繋がっていないじゃないか。
あれ?私は何のためにここにいるんだっけ?
“妻”ってなんだっけ?
なんで、こいつ私と結婚したの?
今、私は恋や愛という気持ちを持てなくなっている。
もっと言うと性欲もない。
ある一定まで感情が昂ると、まるでブレーカーが落ちるように気持ちが萎えてしまう。
まあ、もう三十路を過ぎた婆が恋だ愛だとのぼせてしまうのもきっと気持ちが悪いものだからこのままでも良いのかもしれないけれど。
もしかしたら私も「アセクシャル」になったのかもしれない。だとしたら彼と今の私なら「アセクシャル」同士でお似合いなのかもしれない。
恋の歌が、恋愛映画が、月9が共感できずに私の横を通りすぎていく。
以上のお話によって、郷田三郎と、明智小五郎との交渉、又は三郎の犯罪嗜好癖などについて、読者に呑み込んで頂いた上、さて、本題に戻って、東栄館という新築の下宿屋で、郷田三郎がどんな楽しみを発見したかという点に、お話を進めることに致しましょう。
三郎が東栄館の建築が出来上るのを待ち兼ねて、いの一番にそこへ引移ったのは、彼が明智と交際を結んだ時分から、一年以上もたっていました。随したがってあの「犯罪」の真似事にも、もう一向興味がなくなり、といって、外ほかにそれに代る様な事柄もなく、彼は毎日毎日の退屈な長々しい時間を、過し兼ねていました。東栄館に移った当座は、それでも、新しい友達が出来たりして、いくらか気がまぎれていましたけれど、人間というものは何と退屈極きわまる生物なのでしょう。どこへ行って見ても、同じ様な思想を同じ様な表情で、同じ様な言葉で、繰り返し繰り返し、発表し合っているに過ぎないのです。折角せっかく下宿屋を替えて、新しい人達に接して見ても、一週間たつかたたない内に、彼は又しても底知れぬ倦怠けんたいの中に沈み込んで了うのでした。
そうして、東栄館に移って十日ばかりたったある日のことです。退屈の余り、彼はふと妙な事を考えつきました。
彼の部屋には、――それは二階にあったのですが――安っぽい床とこの間まの傍に、一間の押入がついていて、その内部は、鴨居かもいと敷居との丁度中程に、押入れ一杯の巌丈がんじょうな棚があって、上下二段に分れているのです。彼はその下段の方に数個の行李こうりを納め、上段には蒲団をのせることにしていましたが、一々そこから蒲団を取出して、部屋の真中へ敷く代りに、始終棚の上に寝台ベッドの様に蒲団を重ねて置いて、眠くなったらそこへ上って寝ることにしたらどうだろう。彼はそんなことを考えたのです。これが今迄いままでの下宿屋であったら、仮令たとえ押入れの中に同じような棚があっても、壁がひどく汚れていたり、天井に蜘蛛くもの巣が張っていたりして、一寸その中へ寝る気にはならなかったのでしょうが、ここの押入れは、新築早々のことですから、非常に綺麗きれいで、天井も真白なれば、黄色く塗った滑かな壁にも、しみ一つ出来てはいませんし、そして全体の感じが、棚の作り方にもよるのでしょうが、何となく船の中の寝台に似ていて、妙に、一度そこへ寝て見たい様な誘惑を感じさえするのです。
そこで、彼は早速さっそくその晩から押入れの中へ寝ることを始めました。この下宿は、部屋毎に内部から戸締りの出来る様になっていて、女中などが無断で這入はいって来る様なこともなく、彼は安心してこの奇行を続けることが出来るのでした。さてそこへ寝て見ますと、予期以上に感じがいいのです。四枚の蒲団を積み重ね、その上にフワリと寝転んで、目の上二尺ばかりの所に迫っている天井を眺める心持は、一寸異様な味あじわいのあるものです。襖ふすまをピッシャリ締め切って、その隙間から洩れて来る糸の様な電気の光を見ていますと、何だかこう自分が探偵小説の中の人物にでもなった様な気がして、愉快ですし、又それを細目に開けて、そこから、自分自身の部屋を、泥棒が他人の部屋をでも覗く様な気持で、色々の激情的な場面を想像しながら、眺めるのも、興味がありました。時によると、彼は昼間から押入に這入り込んで、一間と三尺の長方形の箱の様な中で、大好物の煙草をプカリプカリとふかしながら、取りとめもない妄想に耽ることもありました。そんな時には、締切った襖の隙間から、押入れの中で火事でも始ったのではないかと思われる程、夥しい白煙が洩れているのでした。
ところが、この奇行を二三日続ける間に、彼は又しても、妙なことに気がついたのです。飽きっぽい彼は、三日目あたりになると、もう押入れの寝台ベッドには興味がなくなって、所在なさに、そこの壁や、寝ながら手の届く天井板に、落書きなどしていましたが、ふと気がつくと、丁度頭の上の一枚の天井板が、釘を打ち忘れたのか、なんだかフカフカと動く様なのです。どうしたのだろうと思って、手で突っぱって持上げて見ますと、なんなく上の方へ外はずれることは外れるのですが、妙なことには、その手を離すと、釘づけにした箇所は一つもないのに、まるでバネ仕掛けの様に、元々通りになって了います。どうやら、何者かが上から圧おさえつけている様な手ごたえなのです。
はてな、ひょっとしたら、丁度この天井板の上に、何か生物が、例えば大きな青大将あおだいしょうか何かがいるのではあるまいかと、三郎は俄にわかに気味が悪くなって来ましたが、そのまま逃げ出すのも残念なものですから、なおも手で押し試みて見ますと、ズッシリと、重い手ごたえを感じるばかりでなく、天井板を動かす度に、その上で何だかゴロゴロと鈍い音がするではありませんか。愈々いよいよ変です。そこで彼は思切って、力まかせにその天井板をはね除のけて見ますと、すると、その途端、ガラガラという音がして、上から何かが落ちて来ました。彼は咄嗟とっさの場合ハッと片傍かたわきへ飛びのいたからよかったものの、若もしそうでなかったら、その物体に打たれて大怪我おおけがをしている所でした。
「ナアンダ、つまらない」
ところが、その落ちて来た品物を見ますと、何か変ったものでもあればよいがと、少からず期待していた彼は、余りのことに呆あきれて了いました。それは、漬物石つけものいしを小さくした様な、ただの石塊いしころに過ぎないのでした。よく考えて見れば、別に不思議でも何でもありません。電燈工夫が天井裏へもぐる通路にと、天井板を一枚丈け態わざと外して、そこから鼠ねずみなどが押入れに這入はいらぬ様に石塊で重しがしてあったのです。
それは如何いかにも飛んだ喜劇でした。でも、その喜劇が機縁となって、郷田三郎は、あるすばらしい楽みを発見することになったのです。
彼は暫しばらくの間、自分の頭の上に開いている、洞穴ほらあなの入口とでも云った感じのする、その天井の穴を眺めていましたが、ふと、持前もちまえの好奇心から、一体天井裏というものはどんな風になっているのだろうと、恐る恐る、その穴に首を入れて、四方あたりを見廻しました。それは丁度朝の事で、屋根の上にはもう陽が照りつけていると見え、方々の隙間から沢山の細い光線が、まるで大小無数の探照燈を照してでもいる様に、屋根裏の空洞へさし込んでいて、そこは存外明るいのです。
先まず目につくのは、縦に、長々と横よこたえられた、太い、曲りくねった、大蛇の様な棟木むなぎです。明るいといっても屋根裏のことで、そう遠くまでは見通しが利かないのと、それに、細長い下宿屋の建物ですから、実際長い棟木でもあったのですが、それが向うの方は霞んで見える程、遠く遠く連つらなっている様に思われます。そして、その棟木と直角に、これは大蛇の肋骨あばらに当る沢山の梁はりが両側へ、屋根の傾斜に沿ってニョキニョキと突き出ています。それ丈けでも随分雄大な景色ですが、その上、天井を支える為に、梁から無数の細い棒が下っていて、それが、まるで鐘乳洞しょうにゅうどうの内部を見る様な感じを起させます。
「これは素敵だ」
一応屋根裏を見廻してから、三郎は思わずそう呟つぶやくのでした。病的な彼は、世間普通の興味にはひきつけられないで、常人には下らなく見える様な、こうした事物に、却かえって、云い知れぬ魅力を覚えるのです。
その日から、彼の「屋根裏の散歩」が始まりました。夜となく昼となく、暇さえあれば、彼は泥坊猫の様に跫音あしおとを盗んで、棟木や梁の上を伝い歩くのです。幸さいわいなことには、建てたばかりの家ですから、屋根裏につき物の蜘蛛の巣もなければ、煤すすや埃ほこりもまだ少しも溜っていず、鼠の汚したあとさえありません。それ故ゆえ着物や手足の汚くなる心配はないのです。彼はシャツ一枚になって、思うがままに屋根裏を跳梁ちょうりょうしました。時候も丁度春のことで、屋根裏だからといって、さして暑くも寒くもないのです。
三
東栄館の建物は、下宿屋などにはよくある、中央まんなかに庭を囲んで、そのまわりに、桝型ますがたに、部屋が並んでいる様な作り方でしたから、随って屋根裏も、ずっとその形に続いていて、行止ゆきどまりというものがありません。彼の部屋の天井裏から出発して、グルッと一廻りしますと、又元の彼の部屋の上まで帰って来る様になっています。
下の部屋部屋には、さも厳重に壁で仕切りが出来ていて、その出入口には締りをする為の金具まで取りつけているのに、一度天井裏に上って見ますと、これは又何という開放的な有様でしょう。誰の部屋の上を歩き廻ろうと、自由自在なのです。若し、その気があれば、三郎の部屋のと同じ様な、石塊の重しのしてある箇所が所々にあるのですから、そこから他人の部屋へ忍込んで、窃盗を働くことも出来ます。廊下を通って、それをするのは、今も云う様に、桝型の建物の各方面に人目があるばかりでなく、いつ何時なんどき他の止宿人ししゅくにんや女中などが通り合わさないとも限りませんから、非常に危険ですけれど、天井裏の通路からでは、絶対にその危険がありません。
それから又、ここでは、他人の秘密を隙見することも、勝手次第なのです。新築と云っても、下宿屋の安普請やすぶしんのことですから、天井には到る所に隙間があります。――部屋の中にいては気が附きませんけれど、暗い屋根裏から見ますと、その隙間が意外に大きいのに一驚いっきょうを喫きっします――稀には、節穴さえもあるのです。
この、屋根裏という屈指の舞台を発見しますと、郷田三郎の頭には、いつのまにか忘れて了っていた、あの犯罪嗜好癖が又ムラムラと湧き上って来るのでした。この舞台でならば、あの当時試みたそれよりも、もっともっと刺戟の強い、「犯罪の真似事」が出来るに相違ない。そう思うと、彼はもう嬉しくて耐たまらないのです。どうしてまあ、こんな手近な所に、こんな面白い興味があるのを、今日まで気附かないでいたのでしょう。魔物の様に暗闇の世界を歩き廻って、二十人に近い東栄館の二階中の止宿人の秘密を、次から次へと隙見して行く、そのこと丈けでも、三郎はもう十分愉快なのです。そして、久方振りで、生き甲斐を感じさえするのです。
彼は又、この「屋根裏の散歩」を、いやが上にも興深くするために、先ず、身支度からして、さも本物の犯罪人らしく装うことを忘れませんでした。ピッタリ身についた、濃い茶色の毛織のシャツ、同じズボン下――なろうことなら、昔活動写真で見た、女賊プロテアの様に、真黒なシャツを着たかったのですけれど、生憎あいにくそんなものは持合せていないので、まあ我慢することにして――足袋たびを穿はき、手袋をはめ――天井裏は、皆荒削あらけずりの木材ばかりで、指紋の残る心配などは殆どないのですが――そして手にはピストルが……欲しくても、それもないので、懐中電燈を持つことにしました。
夜更けなど、昼とは違って、洩れて来る光線の量が極く僅かなので、一寸先も見分けられぬ闇の中を、少しも物音を立てない様に注意しながら、その姿で、ソロリソロリと、棟木の上を伝っていますと、何かこう、自分が蛇にでもなって、太い木の幹を這い廻っている様な気持がして、我ながら妙に凄くなって来ます。でも、その凄さが、何の因果か、彼にはゾクゾクする程嬉しいのです。
こうして、数日、彼は有頂天になって、「屋根裏の散歩」を続けました。その間には、予期にたがわず、色々と彼を喜ばせる様な出来事があって、それを記しるす丈けでも、十分一篇の小説が出来上る程ですが、この物語の本題には直接関係のない事柄ですから、残念ながら、端折はしょって、ごく簡単に二三の例をお話するに止とどめましょう。
天井からの隙見というものが、どれ程異様な興味のあるものだかは、実際やって見た人でなければ、恐らく想像も出来ますまい。仮令、その下に別段事件が起っていなくても、誰も見ているものがないと信じて、その本性をさらけ出した人間というものを観察すること丈けで、十分面白いのです。よく注意して見ますと、ある人々は、その側に他人のいるときと、ひとりきりの時とでは、立居ふるまいは勿論もちろん、その顔の相好そうごうまでが、まるで変るものだということを発見して、彼は少なからず驚きました。それに、平常ふだん、横から同じ水平線で見るのと違って、真上から見下すのですから、この、目の角度の相違によって、あたり前の座敷が、随分異様な景色に感じられます。人間は頭のてっぺんや両肩が、本箱、机、箪笥たんす、火鉢などは、その上方の面丈けが、主として目に映ります。そして、壁というものは、殆ど見えないで、その代りに、凡ての品物のバックには、畳が一杯に拡っているのです。
何事がなくても、こうした興味がある上に、そこには、往々おうおうにして、滑稽こっけいな、悲惨な、或は物凄い光景が、展開されています。平常過激な反資本主義の議論を吐いている会社員が、誰も見ていない所では、貰もらったばかりの昇給の辞令を、折鞄おりかばんから出したり、しまったり、幾度も幾度も、飽かず打眺うちながめて喜んでいる光景、ゾロリとしたお召めしの着物を不断着ふだんぎにして、果敢はかない豪奢振ごうしゃぶりを示している、ある相場師が、いざ床とこにつく時には、その、昼間はさも無雑作むぞうさに着こなしていた着物を、女の様に、丁寧に畳んで、床の下へ敷くばかりか、しみでもついたのと見えて、それを丹念に口で嘗なめて――お召などの小さな汚れは、口で嘗めとるのが一番いいのだといいます――一種のクリーニングをやっている光景、何々大学の野球の選手だというニキビ面の青年が、運動家にも似合わない臆病さを以て、女中への附文つけぶみを、食べて了った夕飯のお膳の上へ、のせて見たり、思い返して、引込めて見たり、又のせて見たり、モジモジと同じことを繰返している光景、中には、大胆にも、淫売婦(?)を引入れて、茲ここに書くことを憚はばかる様な、すさまじい狂態を演じている光景さえも、誰憚らず、見たい丈け見ることが出来るのです。
三郎は又、止宿人と止宿人との、感情の葛藤かっとうを研究することに、興味を持ちました。同じ人間が、相手によって、様々に態度を換えて行く有様、今の先まで、笑顔で話し合っていた相手を、隣の部屋へ来ては、まるで不倶戴天ふぐたいてんの仇あだででもある様に罵ののしっている者もあれば、蝙蝠こうもりの様に、どちらへ行っても、都合のいいお座なりを云って、蔭でペロリと舌を出している者もあります。そして、それが女の止宿人――東栄館の二階には一人の女画学生がいたのです――になると一層興味があります。「恋の三角関係」どころではありません。五角六角と、複雑した関係が、手に取る様に見えるばかりか、競争者達の誰れも知らない、本人の真意が、局外者の「屋根裏の散歩者」に丈け、ハッキリと分るではありませんか。お伽噺とぎばなしに隠かくれ蓑みのというものがありますが、天井裏の三郎は、云わばその隠れ蓑を着ているも同然なのです。
若しその上、他人の部屋の天井板をはがして、そこへ忍び込み、色々ないたずらをやることが出来たら、一層面白かったでしょうが、三郎には、その勇気がありませんでした。そこには、三間に一箇所位の割合で、三郎の部屋のと同様に、石塊いしころで重しをした抜け道があるのですから、忍び込むのは造作もありませんけれど、いつ部屋の主が帰って来るか知れませんし、そうでなくとも、窓は皆、透明なガラス障子しょうじになっていますから、外から見つけられる危険もあり、それに、天井板をめくって押入れの中へ下り、襖をあけて部屋に這入り、又押入れの棚へよじ上って、元の屋根裏へ帰る、その間には、どうかして物音を立てないとは限りません。それを廊下や隣室から気附かれたら、もうおしまいなのです。
さて、ある夜更けのことでした。三郎は、一巡ひとまわり「散歩」を済ませて、自分の部屋へ帰る為に、梁から梁を伝っていましたが、彼の部屋とは、庭を隔てて、丁度向い側になっている棟の、一方の隅の天井に、ふと、これまで気のつかなかった、幽かすかな隙間を発見しました。径二寸ばかりの雲形をして、糸よりも細い光線が洩れているのです。なんだろうと思って、彼はソッと懐中電燈を点ともして、検しらべて見ますと、それは可也かなり大きな木の節で、半分以上まわりの板から離れているのですが、あとの半分で、やっとつながり、危く節穴になるのを免れたものでした。一寸爪の先でこじさえすれば、何なく離れて了い相なのです。そこで、三郎は外ほかの隙間から下を見て、部屋の主が已すでに寝ていることを確めた上、音のしない様に注意しながら、長い間かかって、とうとうそれをはがして了いました。都合のいいことには、はがした後の節穴が、杯さかずき形に下側が狭くなっていますので、その木の節を元々通りつめてさえ置けば、下へ落ちる様なことはなく、そこにこんな大きな覗き穴があるのを、誰にも気附かれずに済むのです。
これはうまい工合ぐあいだと思いながら、その節穴から下を覗いて見ますと、外の隙間の様に、縦には長くても、幅はせいぜい一分ぶ内外の不自由なのと違って、下側の狭い方でも直径一寸以上はあるのですから、部屋の全景が、楽々と見渡せます。そこで三郎は思わず道草を食って、その部屋を眺めたことですが、それは偶然にも、東栄館の止宿人の内で、三郎の一番虫の好かぬ、遠藤えんどうという歯科医学校卒業生で、目下はどっかの歯医者の助手を勤めている男の部屋でした。その遠藤が、いやにのっぺりした虫唾むしずの走る様な顔を、一層のっぺりさせて、すぐ目の下に寝ているのでした。馬鹿に几帳面きちょうめんな男と見えて、部屋の中は、他のどの止宿人のそれにもまして、キチンと整頓せいとんしています。机の上の文房具の位置、本箱の中の書物の並べ方、蒲団の敷き方、枕許まくらもとに置き並べた、舶来物でもあるのか、見なれぬ形の目醒めざまし時計、漆器しっきの巻煙草まきたばこ入れ、色硝子いろがらすの灰皿、何いずれを見ても、それらの品物の主人公が、世にも綺麗きれい好きな、重箱の隅を楊子ようじでほじくる様な神経家であることを証拠立てています。又遠藤自身の寝姿も、実に行儀がいいのです。ただ、それらの光景にそぐわぬのは、彼が大きな口を開あいて、雷の様に鼾いびきをかいていることでした。
三郎は、何か汚いものでも見る様に、眉をしかめて、遠藤の寝顔を眺めました。彼の顔は、綺麗といえば綺麗です。成程彼自身で吹聴ふいちょうする通り、女などには好かれる顔かも知れません。併し、何という間延びな、長々とした顔の造作でしょう。濃い頭髪、顔全体が長い割には、変に狭い富士額ふじびたい、短い眉、細い目、始終笑っている様な目尻の皺しわ、長い鼻、そして異様に大ぶりな口。三郎はこの口がどうにも気に入らないのでした。鼻の下の所から段を為なして、上顎うわあごと下顎とが、オンモリと前方へせり出し、その部分一杯に、青白い顔と妙な対照を示して、大きな紫色の唇が開いています。そして、肥厚性鼻炎ひこうせいびえんででもあるのか、始終鼻を詰つまらせ、その大きな口をポカンと開けて呼吸をしているのです。寝ていて、鼾をかくのも、やっぱり鼻の病気のせいなのでしょう。
三郎は、いつでもこの遠藤の顔を見さえすれば、何だかこう背中がムズムズして来て、彼ののっぺりした頬っぺたを、いきなり殴なぐりつけてやり度たい様な気持になるのでした。
四
そうして、遠藤の寝顔を見ている内に、三郎はふと妙なことを考えました。それは、その節穴から唾つばをはけば、丁度遠藤の大きく開いた口の中へ、うまく這入りはしないかということでした。なぜなら、彼の口は、まるで誂あつらえでもした様に、節穴の真下の所にあったからです。三郎は物好きにも、股引ももひきの下に穿いていた、猿股さるまたの紐を抜出して、それを節穴の上に垂直に垂らし、片目を紐にくっつけて、丁度銃の照準でも定める様に、試して見ますと、不思議な偶然です。紐と節穴と、遠藤の口とが、全く一点に見えるのです。つまり節穴から唾を吐けば、必ず彼の口へ落ちるに相違ないことが分ったのです。
併し、まさかほんとうに唾を吐きかける訳にも行きませんので、三郎は、節穴を元の通りに埋うずめて置いて、立去ろうとしましたが、其時そのとき、不意に、チラリとある恐しい考えが、彼の頭に閃きました。彼は思わず、屋根裏の暗闇の中で、真青になって、ブルブルと震えました。それは実に、何の恨うらみもない遠藤を殺害するという考えだったのです。
彼は遠藤に対して何の恨みもないばかりか、まだ知り合いになってから、半月もたってはいないのでした。それも、偶然二人の引越しが同じ日だったものですから、それを縁に、二三度部屋を訪ね合ったばかりで別に深い交渉がある訳ではないのです。では、何故なにゆえその遠藤を、殺そうなどと考えたかといいますと、今も云う様に、彼の容貌や言動が、殴りつけたい程虫が好かぬということも、多少は手伝っていましたけれど、三郎のこの考かんがえの主たる動機は、相手の人物にあるのではなくて、ただ殺人行為そのものの興味にあったのです。先からお話して来た通り、三郎の精神状態は非常に変態的で、犯罪嗜好癖ともいうべき病気を持ってい、その犯罪の中でも彼が最も魅力を感じたのは殺人罪なのですから、こうした考えの起るのも決して偶然ではないのです。ただ今までは、仮令屡々しばしば殺意を生ずることがあっても、罪の発覚を恐れて、一度も実行しようなどと思ったことがないばかりなのです。
ところが、今遠藤の場合は、全然疑うたがいを受けないで、発覚の憂うれいなしに、殺人が行われ相そうに思われます。我身に危険さえなければ、仮令相手が見ず知らずの人間であろうと、三郎はそんなことを顧慮こりょするのではありません。寧むしろ、その殺人行為が、残虐であればある程、彼の異常な慾望は、一層満足させられるのでした。それでは、何故遠藤に限って、殺人罪が発覚しない――少くとも三郎がそう信じていたか――といいますと、それには、次の様な事情があったのです。
東栄館へ引越して四五日たった時分でした。三郎は懇意こんいになったばかりの、ある同宿者と、近所のカフェへ出掛けたことがあります。その時同じカフェに遠藤も来ていて、三人が一つテーブルへ寄って酒を――尤もっとも酒の嫌いな三郎はコーヒーでしたけれど――飲んだりして、三人とも大分いい心持になって、連立つれだって下宿へ帰ったのですが、少しの酒に酔っぱらった遠藤は、「まあ僕の部屋へ来て下さい」と無理に二人を、彼の部屋へ引ぱり込みました。遠藤は独ひとりではしゃいで、夜が更けているのも構わず、女中を呼んでお茶を入れさせたりして、カフェから持越しの惚気話のろけばなしを繰返すのでした。――三郎が彼を嫌い出したのは、その晩からです――その時、遠藤は、真赤に充血した脣くちびるをペロペロと嘗め廻しながら