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2023-04-05

anond:20230405083415

昭和中期までの企業労働についてはサザエさん読むといいよ。

江戸

 企業ではなく財閥社長ではなく番頭

~~~明治維新

明治昭和初期:

 企業につとめてサラリーもらえてるだけですごくえらい(高杉晋作とか坂本龍馬のように藩主でもない人間事業おこして社長やっただけで名前が後世にのこってる)。

 女性大学に行くとニュースになる。教員医者作家など汗を流さなくてよい職業を「先生」といって尊敬の念を抱く。給料が高いので書生・秘書家事手伝いさんを雇える。

 ※ちなみにこの職業に貴賤をつけるやり方が偏差値教育をうみ、今の大学進学メインの学校にまでつづいている。

~~~第二次世界大戦

昭和中期:

 団塊世代。オーモーレツサザエさん企業につとめて三種の神器洗濯機冷蔵庫テレビかな)をおいた団地にすむのが若い男女の夢。

 家に自動車もあるとなおよい。女性大学生になる事例が増えたが都市部のみ。

 田舎だと高校うかっていかせてもらえただけでも頭いいね実家も太いんだね)レベル

 頭がいいと、なんとか地方唯一の商業高校にいけて、そこをでてすぐ働く人が多い。

 義務教育を終えただけの中卒で働くとか、中学卒業もだいぶお目こぼしされてた(本来なら卒業できてないけど義務教育には留年がないか卒業できました)という人も田舎には多い。

昭和後期:

 労働者のサラリーマンが8割。景気がよくてどんどん元が取れるので私立高校私立大学も増え塾もふえる。

 子供全員大学いかせないなんて正気か?

 そろそろクーラー自動車などが標準装備になる。「二十四時間働けますか」 

 パソコンでいうとPC*801MK2が出た。ハードディスクなにそれ。記録といえばフロッピーディスクだよ?

~~~平成3年リーマンショック…じゃなくて「経済バブルがはじけた」か

平成前期:

 ICチップ産業コメインターネットがそろーりそろりとはじまる。電話線のメタル回線テレホーダイからですね。

 ポケベル、ISDN、PHSなどスマホ前身になる技術がどんどん発達。テレビゲーム(据え置き型家庭用ゲーム機)が盛ん。

 パソコン市販されるけどたいていの人はまだキーボードのものに慣れてない。ダブルクリックムズカシイ

 エクセル方眼紙だろうが、「なにか」つくれれば尊敬されてた。

 ていうかワープロword機能と感熱紙プリンタけが入ってる機械ファックスのような通信機能はない)が現役だった。工業めちゃさかん

平成後期:

 ご存じIT革命スマホ世代リーマンショックって平成20年だったのか

令和

 今だよ

 

さて

・過重労働 

 ↑昭和スマホパソコンがないので仕事に即時対応することが物理的に不可能

 小学校で習ったそろばん電卓が使えればパソコンのかわりに足し算という単純な仕事を延々とやっていられて感謝もされる。のんびりしたもの

 あとは人脈と移動力ものをいう。つまり電車に乗って駅弁たべて「出張してました、〇〇さんに会ってきました、こういう感じでいってました」といえばかなり働いたことになる。営業職つよつよ。

 ※ちなみにメタル回線電話はすべて従量制課金だよ。長電話すると営業でも怒られるんだよ。長い話をするときは紙にまとめてファックスにしておくろうね。←令和になってもこれやってる不動産多い

残業代が出ない 

 ↑そのかわり働かない。公務員教員も)は定時で帰るし。

 土曜日半ドンといって昼までで家に帰る職場もけっこうたくさんあった。

 まあ最初リーマン先生たち、週休1日だったりもしたけど、どうしようもなくみんな貧しいんだから仕事もそうそうこないだろ的舐めプしてた。

 あくせくせずに遊びながら席に居るだけ居て、上のものがきたときにだけへこへこしようぜみたいな集団サボりが許されてた感。

 なんか親睦草野球大会飲み会みたいなのも多かったしな。

ハラスメント多め

 ↑ハラスメントなどという横文字言葉のもの日本企業風土にないが、

 そのかわりネクタイしめて会社に通ってるエリート、だの、美しいお嬢さん、という型にはまってくれる人間にたいする親密さや敬意はあった。

 要らないのにお見合い写真をもってこられたり、寿退社必須だったり、お子さんもっと産めばいいのにとか。今でいうハラスメントだが本人たちは親密のつもりでやってる。

 今でいうとさしずめ銀盾ユーチューバーくらいじゃないだろうか。

 「一般人の皮をかぶった厄介ファンがつくのも予測できてたはず。

 自ら選択してなったのだからサラリーマンやOLは、人格者でなければならない。」みたいな。

 今はお医者しか残ってないタイプのいらん敬意だね

 

から昭和でいうブラック企業はね、

ブラックでもなんでもなく、昭和の人の言うところの「あら~いいところにお勤めですね」だよ。

管理職になったらもう社長もすぐそこですねって取引からつけとどけのお中元お歳暮、お世辞がバンバンとどく。

そんななかでちょっと残業したり経営が苦しかった時期の苦労をいえばもはや美談、自慢話なんだよ。プロジェクトXだよ。

農業だの家業手工業だのをやらされてない当たり前のサラリーマンという時点で勝ち組なんだ。

まあ、あとは令和でもそういう「ブラック以前に自営業ばっか」の田舎については「セケンのハテまで」という漫画でもよんでくれ。今でも都市部以外はそんな感じだから

それこそ「まだ東京で消耗してるの?」は事実の一面は突いてた。

 

reiwa

平成令和はやっぱインターネットオリンピック級に仕事ができる人が可視化されちゃったからな。

荒木飛呂彦とか、AKBとか、どうみても常人じゃない人が「だれにでも見える」「目標に据えられる」「自分でもできるかもとおもわされる」。

昭和ってのは全員知らぬゆえ仏だったよ。

 

労組

ああ、あと昭和ならではの労働事情としては、労組もあったな

学生闘争活動してた人が頭いいか背広きて社員になって労組に入って労働闘争して、

何も知らずに搾取されてる同僚たちを企業経営陣の搾取から守ってくれてた部分もあった。

そういう労組から会社への指摘は「ブラック」だなんてふんわりした色だけの言葉ではなく「労基法違反」だの「経営陣は社員Aに残業代労災を払え」のような、

きちんとした要求になるから、「ブラック企業」に直接相当する言葉はやはり労組にもなかっただろう。「弊社経営陣は違法」といった、長めの告発タイトルならあったかもしれない。

元弊社を「ブラック企業」って命名してことたりちゃうのって、SNSでの、素人にもわかりやす内部告発私的労働闘争のほうが労組より効力が強くなったから、それで「ブラック」がようやくなりたったんだろうな

ツイッターがこのまま崩壊したらやっぱり労組が力をとりもどすのかもしれないけどどうだろ。

 

社員からすると労組経営かって結局どちらも選べない。どっちも歯車になれる強者おっさん理論なんだよな。

今は労組から管理職いける不思議労組ばっかりのこってる。結局企業論理に染まり切ったバカしか企業には残れない。

労基法だの業界基準だの行政だのも、結構いろいろ詳しく仕事のやりかたを(外部のくせに)指図してくるから

労組があっても経営と手を組んで黙って身内だけで法律かいくぐることに必死になってるタイプブラック企業もある(不祥事とかでしょっちゅうバレる。大成建設とか)

社員としては時間や魂を売り渡してる以上、金と地位くらいは見返りとして欲しいわけだからどっちのいうこともわかる。

経営陣はお客様代弁者だし、労組は「こんなやり方では迷惑だ」と社員やセケンを代弁してる。

でもどっちもそもそも働きたくない個人(今でいう発達障害とか個性のある一人一人の人間お気持ち)の味方ではないんだよ。

労組弱体とかそういう問題じゃなく、お気持ちを吐き出せるところとして現在最強なのがツイッターだという話。

 

 

あとブラック企業って呼び方

個人的には「黒人企業蔑称」みたいでいやだ。

「黒=悪」というイメージを植えるのはぽりてぃかりーコレクト違反だとしてアメリカなどではもうだいぶ禁止されていると思う。

まあ昭和だと「赤=労組テロ共産、悪」というこれも悪口ひっくるめた扱いだったし。

色にイメージをつけてわかったつもり・けなしたつもりになるってのはわかりやすくて訴求はできるけどやっぱり頭は悪いわな。

 

追記

・1桁ブクマが今さっきみたら2桁も後半になっててびくーりした。俺増田史上5本の指に入りそうだね。

バブルはじけとリーマンショックまちがえてたり、PC名前(買ってもらえなかったからどっちでもええんじゃコラ)まちがえてたのでちょこちょこと訂正した。

 もうどっちでも新入社員にとっては恐竜と大差ない大昔だからなぁ。

 というか「バブルがはじけ、第一就職氷河期がはじまった」というのを歴史家はいつまでも一言でいえる言葉にしないんだな。

 俺が命名していいなら「1991バブルショック」か。

 1971が石油ショックで、

 2008がリーマンショックなら、

 およそ18-20年に一回なんかそういう失業氷河期祭りがあるんだな。

 次は2025あたりにAIショックとかあるんじゃねえの。

漫画資料

理解するための漫画の追加ありがとう。たしかにそういうのもあったな~とおもった

 ・平成初期あたりの週刊モーニング作品

  (釣りバカ日誌クッキングパパOL進化論

 ・フジ三太郎東海林さだおコボちゃんなどのサラリーマンもの

  (絵柄が大体あの感じのやつ)

 ・YAMAZAKIっていう漫画があるんだって

 

 ※ただ、結局漫画家ってのはサラリーマンを途中でドロップアウトしてるし編集に「こんなのモデル企業に訴えられる」といって差し止められるので正確にはかかない。

  島耕作プロジェクトXも、イメージ向上してるからというだけで訴訟は乗り切れてるけど。

  金と社員だけみれば現実もっとド汚ねえ。だから読める程度には美しく書くんだけどさ。やくざ漫画でいう「ザ・ファブル」みたいなもん。売れるのは毒抜きしたものだけ

  一番サラリーマンの本体をしってるのは父親母親をみていた子供だよなとおもう。(なので一番最初サザエさんをすすめたし、「セケンのハテまで」もおすすめする)

  俺は、ここ二十年タバコの吸いすぎ闘病でずっとおまる使っててママ氏に介護の世話ばかりかけてるうちのパパ氏、

  外からみると島耕作に、だいぶ近いことをしていたんだなと改めて感じている。

  (部長には一時期なってたんじゃないかな。取締役とかはなってない)

 ちなみに俺のなかでは釣りキチ三平の作者(市役所…じゃなくて銀行、のだいぶえらい人だったのが「ドロップアウト」して漫画家に)と手塚治虫医者を「ドロップアウト」して漫画家に)が出世からの転身組漫画家の双璧だとおもいます

 

追記

・俺史上2本の指に入った

PC買ってもらえなかったっつってんだろ、ワイルドカードじゃコラ。最初は8801って書いてたんだぞちゃんと。マッきんとっしゅクラシックよりは安いけど、あのくそたかいのに数MBしかハードディスクがなかったおもちゃ買ってもらってたやつは今頃何してんだ、まさかブックマーカーなんかしてないよな。

・しゃぶでもやってるのかっていったやつは大成建設にでもつとめてんのか

・うちのパパがいよいよ危篤。結局あまり企業については話せなかったけど、まぁなんとなく雰囲気はわかるよ。

 花々しい企業づとめも、「宮仕え」「エリート」も、社内政治理系にとっちゃ全部ひかえめにいってクソでありうんこだよな。

 腰かけ程度に中小につとめてすぐやめたママはわかってないお嬢様OLだったんだなとおもうことが多々あった。

 というか子供からみて高校以降のママアドバイスは全部見当違いだったんだが、社会人ならとおもったらやっぱりだめだった。

 ママには大きな組織に働いてすりつぶされる感覚愚痴れないなとおもったのは就職して半年もたたないうちだった(見当違いな対処法を提案され余計につかれる)。

2023-03-13

男子高校生が三人でパンを食ってた

農業用ため池のほとりにおしゃれでちょっと高めのパン屋さんがあるんだ

今日の四時くらいにその前の道を通ったらさ

岸に男子高校生が三人で腰かけて笑いあいながらパンを食ってた

時間的にまだ高校の授業が終わる時間帯じゃないか卒業した三年生とかなんだろうな

何かの用事制服を着て、もう汚れても着る機会がないから地べたに腰かけて、濁った水面見ながらうまそうにパンを頬張っていた

食ってるから当たり前だけど、マスクも外して笑いあっててさ、幸せそうだなって思って、なんか心に残っちゃったよ

2023-01-24

そこになければないですね、みたいなことを何故言うのか

うんこことなのだが、便器腰かけて用を足しているときに、まずそれなりに済ませる。そこから、どうにもまだ用便が残っている感触があるので十数分続けて問い合わせてみるのだが、肛門なのか大腸なのか所掌がよくわからないんだけれども「そこになければないですね」みたいなことを平気で言う。

客としては、いやそこの、カウンターの奥の棚に残っているだろう。そこに見えてるやつ。それを出してくれればいいんだよ、という感じなのだが、店側が「ない」というのではしかたがなく、トイレの個室をあとにする。

果たして1時間弱ほどのち、「うんこあるんですけど。出るんですけど」という通知があり、お前がないって言ったんじゃねえか、とイラ立ちながらトイレに向かう。もちろんちゃんと出る。

こんな店潰れちまえばいい、と思うのだが店のオーナーは俺なのだった。しかたなく最近は水分をよく摂るようにしている。

2023-01-13

あるAIイラスト生成者の活動変遷

少し前に、AI利用してイラスト生成してる方の作品複数が、他の方の作品と高い類似性あるのではないかということで話題になっていた。


このエントリはどんな内容か

件の方がもともとは自分で絵を描いてたとあったので、どんなイラストを描いていたのか、どういう経過で現在に至ったのか気になってTwitter過去ログを覗いてみた。過去イラスト作品など見ていて感じたことを記していく。


以下、過去ログみて思ったこメモつらつら


まず過去ログみるといろいろな展示を見に行ったり、旅行して美しい景色をみたりそれを写真にとってアップしたり、イラスト表現手法の本を読んだり、インプットには事欠かない方で、素直にそういうところは感心した。インプットのわりにTwitter観測できる形でのアウトプット、絵を描く頻度はあまり高くないようだ。見えないところで描いている可能性はあるが、少なくともTwitterに上げている絵は少ない。

リンクたくさんは貼れないんで一部はh抜きで記載

https://twitter.com/U__masu/status/1450046705290788865

2021年10月エヴァアスカイラストをアップしている。現在AI利用して描いているものとは全然異なる。線のストロークが短めなのか、長い安定した滑らかな線がほとんどなく、言い方難しいが辿々しさを感じる線。腕のラインを見るとわかりやすい。ただ塗りが厚塗りっぽいおかげで、線の印象が緩和されてる感じはある。目の描き方が、ちょっと奥行き感掴めてないのかなという印象。背景の色彩はとてもきれいだと感じた。


https://twitter.com/U__masu/status/1522767188318326784

アスカ以降にメディア欄に絵が出てくるのは2022年5月月ノ美兎イラスト。やはり線の印象は変わらない。短いストロークで描きたいラインを構築していくやり方に見える。何かに腰かけているポーズだが椅子等はない。私だったら、座ってる女の子イラスト、を描こうと思ったら椅子かなにか座ってる物体ラインは軽くは描くと思う。人それぞれなのでわからないけど、参考にした資料等があってキャラ部分だけ描いたのかなと思った。ポーズの難しさのわりに人体自体バランスはとれてると思うので、資料あるんじゃないかと感じたが、絵を描く際に資料参照するのは普通なのでいいとか悪いとか言いたいわけではない。ただ、資料ありそう、と思っただけという。左右で目の形が少し変わってしまう(とくに奥側)癖があるように見える。まあそれはこのあとに続く何枚かを見ていくと感じるものなのだけれど。


https://twitter.com/U__masu/status/1529247072137846785

次は同じ月、2022年5月イラストこれは普通うまいと思った。俯瞰構図でこのポーズ、難しいと思う。膝から下がどの程度、どういうふうに見えるか、とても難しい角度だと思うし、前の月ノ美兎イラスト同様、資料がある気がする(3Dポーズ素材とか)。髪や服のしわが、前は結構線を描いてたのが、塗りでの表現になってる。左右で目の形がやや変わる癖は、今回も出ていると感じた。あと、線は相変わらず長い安定した滑らかな線がほとんどない。ストロークが短い。


ttps://twitter.com/U__masu/status/1531619551112093696

こちらはイラスト制作環境がみれるツイートクリスタ使ってるのが伺える。


https://twitter.com/U__masu/status/1531773266477588481

次のイラスト2022年6月。これも普通にうまいと感じる。光と影の配置がいいと思う。

線のストローク、塗りの傾向(厚塗り)、などはあまり変わってないが、奥側の目の形が変形しちゃうのはこのイラストではあまり出ていない。

耳の描き方が他のイラストちょっと違うのは不思議。瞳以上に、描き手の特徴が出るところだと私は思っているので。

これも参考資料あるんじゃないかなぁ。


https://twitter.com/U__masu/status/1538304015821221888

また2022年6月イラストラブライブ!スーパースター!!のイラスト

これはこの方の癖がよく出ている。線、塗り、目の歪み、に加えて、このあとに出てくる絵もそうなんだけど、顔や胴体のわりに腕が短めになってる。とくに鳩胸感あるボリュームしてるので、それもあって全体的にアンバランスになってしまってるなぁと思うが、描きたいものはわかる。水滴の表現はがんばっててよい。


このあと2022年夏、世の中にmid journeyやらstable diffusionやら出てくるタイミング

けっこう生成して遊んでる様子が伺える。


https://twitter.com/U__masu/status/1576537427266502656

2022年10月2日のイラスト6月の同キャライラストと同じで、この方の傾向がよく出ている。線、塗り、鳩胸胴体で腕が短め。とくに腕のせいで全体的にアンバランスさを感じる。描きたい構図や表情はかわいい。このキャラを描きたい気持ちは伝わる。


https://twitter.com/U__masu/status/1579113982191099904

ニジガクの絵から1週間後、10月9日のイラスト。直前のもの比較すると急にうまいバランス感もよくなってる。ただ以前も人体バランスそんなに変じゃないイラストはあったので、資料等あれば描けなくはないとは思うが…。全体にエフェクトかけてるのでわかりづらいが、線の迷いが少ない。以前のは短いストロークを重ねて輪郭を探りとろうとしている感じがあったが、これはスッと引いてる感じがある。あと、雪の日の想定なんだろうけど、背景の白がよくわからない塗りしてて、意図が掴めない。なんでそんな明度の白がそこに?という。マフラーの模様もしっかりしてて、以前までのイラストスカートの柄と比較すると、急に細かく丁寧に書き込むようになったな、と。線や塗りの粒度のわりにそこだけ細かい作風変えた、といえばそうなのかもしれないが、いろいろと急に変わったなぁと感じる一枚。


ttps://twitter.com/U__masu/status/1580195927478120448

そしてそのわずか3日後、作風ガラっと変わったイラスト投稿されている。今までのイラスト作成ペースからすると3日でここまで細部まで描き込んだイラスト描けるとは思えない。線はきれい、塗りはゲーム系というか、CG風で少なくともこれまでの厚塗りっぽいやつではない。AIという記載はなし。昨今、ある意味で見慣れたテイストの絵という感じのきれいさ。ここまで急激に作風変わるのって、なんでも描ける系の熟練した方が、極端に異なる絵柄で描き分ける、ことがあるのはわかるが、これまでの作品からするとそういう力量持ち合わせているとは感じられなかった。


https://twitter.com/U__masu/status/1580718097874370561

さらに2日後、10月14日にもイラスト作品制作ペースめっちゃあがってる。作風は前回のと同じ感じ。「イラスト描いた」といって投稿してる。

小綺麗に仕上がってる絵。


ttps://twitter.com/U__masu/status/1582712006812979200

AIですか?と聞かれたイラスト作品(おそらく。ツイート削除されてて不明)に対して、

AIで生成して構図がよかった絵を、自分の好みに描き直して仕上げてる感じです。

なので4割くらいAIで6割くらい手描きですね。

自分場合、もとからイラストは描ける方なのですがクオリティアップに役立てられないか模索しているといったところです。

とのこと。

それまでの作風からすると仕上げもAIなんじゃないかと感じる。あの塗りできるようには見えない。

加筆がどの段階でどのくらいやってて、AIもどの段階でどのように利用しているか、わからない。

AI生成→加筆→AI仕上げって感じなんだろうか。

文脈からして、10月12日、10月14日のイラストも、もしかしたら10月9日のイラストAI生成を利用しているってことかもしれない。


ttps://twitter.com/U__masu/status/1601598536839499776

少し間隔空いて、2022年12月11日に、AIArtのタグつけて投稿。ここからAI生成イラスト投稿が増えている。


類似度高い指摘あった画像12月から投稿あり。

ただ、2023年1月13日現在は、疑義を指摘された画像はいくつか削除されている。


https://twitter.com/U__masu/status/1608976477663498243

2022年12月31日の投稿AIArt。鬼加筆修正したとのこと。

どこをどう加筆修正したのかわからないけれど

水平線ずれてる

・砂浜側にいるであろうに、手前に水飛沫っぽいのある

・空の見切れたカモメらしきもの、ぱっと見は意味不明

・股の間も海になってるけど、本来パーカーだかラッシュガードだかがくるはずと思う

のが気になった。そこは直さないんだな。どこが気になるかは人それぞれだから、そこ以外を加筆修正しまくってやっとこの状態になったのかもしれない。

自分画力とは関係なく、自分では描けないものが生成できてしまう(それが魅力でもあると思う)ので、違和感に気づけないことはあると思う。

あとは、なかには敢えてAI味というかそういうのを残す向きもあるようなので、それかもしれない。

疑義指摘されてたやつも同じような違和感ある画像が多かった。水平線ずれ、キャラの居場所効果がずれてる(砂浜にいるのにめっちゃ濡れてる)、どうみても腕長すぎ、など。

AI生成→加筆→AIでこねくり回して仕上げるって感じだとしたらまあ気にしてなさそう。

AIイラストへの加筆って、私は最終的におかしなところを直すことだと若干思い込んでしまっていたが、そうとは限らないんだよな。i2iするときに、出力に影響を及ぼすようにインプットする絵をいじることも加筆といえば加筆だな。


ttps://twitter.com/U__masu/status/1609534254047952898

2023年1月1日AIイラスト生成してる人たちのイラストを集めた書籍つくりたい、と企画立ち上げ。

DMでたくさん参加希望がきたらしい。えらい人気だ。


ttps://twitter.com/U__masu/status/1611953334650568705

2023年1月8日出版社から話がきたり、自分から相談したりしているとのこと。

これに興味示す出版社って実在するとして、どういう狙いなんだろう、と素朴な疑問。

年明けから数日、一般的仕事始めから3日経って、3連休中日でもう出版社から連絡くるのか。

年末年始も休まず営業マーケティングに精を出してる人はいるんだろうけど、この企画粒度でこのタイミング声かけてくるってどういう考えなのか、興味ある。


このあと疑惑を指摘され、なんだかんだあって書籍化は中止、と。

出版社側にどう謝ったのか。別に謝る必要がなかった、そこまで具体的に話が進んでいたわけではなかった可能性もある。

表に出てこない話は全然からないし、発言してても嘘か本当かもわからないので、何もわからない。


2022年夏頃からAIを触り始めて、それまでの作品制作ペースからは考えられない頻度で2022年12月イラスト投稿しており、AIイラストを生成することの魅力にハマったんだなぁというのが伺える。

2022-12-07

増田♂52歳の考える居心地のいい呑み屋

(´・ω・`)「…ほっといてほしいんや」

(´・ω・`)「ワイはネットで『メシが美味い!』て評判の居酒屋に行って、」

(´・ω・`)「独りで離れた席に腰かけて、」

(´・ω・`)「ネットでとりあげられたウマいメニューをたのんで、」

(´・ω・`)「スマホ読みかけの なろう 小説を読みながら、」

(´・ω・`)「たのんだメシが到着するたびに『いただきますッ』てニコニコして、」

(´・ω・`)「奮発して注文した高い日本酒と一緒に、」

(´・ω・`)「誰にも邪魔されずに食事したいんや」

(´・ω・`)「…仕事で一日中お客さんや同僚と話してたから、」

(´・ω・`)「もう、」

(´・ω・`)「自分以外の他人に気ィ遣ってニコかに会話したりなんかしとうないんや」

そんな呑み屋、無いんだよねぇ…(´・ω・`)

2022-11-05

森の中の公園 老婆ふたり 薄っすら寒さ 秋のベンチに腰かける。

話すことは恋について。

2022-10-14

AI小説書いてくれたけどカオスだった3

おケツがかゆい。布団にダニでも湧いてるのかな?

まぁ、別にいっか。この程度なら我慢できるし。

それよりも、今は早く学校に行かないと。

「ふわぁ~……」

眠い目をこすりながら身支度を整えて家を出る。

から快晴気持ちいいなぁ……………………

「うぅ……さむっ」

朝の冷たい風が頬を撫でる。

ぶっちゃけ寒いけど、その分空気は澄んでる気がする。

今日数学の小テストがある日だ。しっかり勉強したし大丈夫だと思うけど、ちょっと緊張してるかも。

いつもより少し早めに歩いて学校に向かう。

校門が見えてきたところで、僕は立ち止まった。

(あれ?)

校門のところに人影が見える。

生徒にしてはかなり背が高い。それに、なんだか見覚えのあるシルエットだった。

おはようございます! 先輩!」

元気よく挨拶してくる女の子の声を聞いて確信に変わる。

「あ、あなたはもしや、地球を1時間後に破壊しようと企んでいると噂の女神アカネ!?

「そうです」

こうして人類生存タイムリミットが始まった。1時間以内に世界を救え!

僕の名前はゆうと。

ごく普通高校2年生だ。

今朝、登校中に謎の美少女出会いそいつ人類破滅させようとしている。

だがしかし、そんなことを信じろと言われても無理だろう。だから、僕の目の前で起こったことをありのまま話すぜ。

ライブ放送ニュースで『女神』を名乗る少女が現れたんだ。しかも空から落ちてきて、地面に激突する寸前に光に包まれて無傷になった。

まるでアニメみたいな光景だったが現実に起こった出来事だ。信じてくれ。

そして、この子出会たことがきっかけとなって、僕の人生は大きく変わっていくことになる―――

おはようございます! 先輩!」

元気いっぱいにあいさつしてきた女の子を見て驚いた。

だって彼女は―――

あなたはもしや、地球を1時間後に破壊しようと企んでいると噂の女神アカネ!?

「そうです」

「どうしてこんなところにいるんですか?」

「先輩に会いに来たんですよ」

「えっと……なんのために?」

「もちろん、先輩に会うためです!」

そう言って微笑みかけてくる彼女

とてもかわいい笑顔だけど、その言葉意味理解することはできなかった。

「んー……」

腕を組んで考え込む。

どうしようかな? ここで無視するのは簡単だけど、後々めんどくさそうな予感がするんだよなぁ。

よし、決めたぞ。

「とりあえず、しりとり勝負を決めよう」

「わかりました。では、わたしからいきますね。りんご

「ゴール」

ルビー

イスタンブール

ルール

ルービックキューブ

「ぶた」

「タール」

ルアー

「アール」

ルーレット

トーテムポール

ルビー

はいルビーは二回目。お前の負けね。」

こうして僕は世界を救った。女神に知能で勝利したのだ。

「負けてしまいました...悔しいかあなたをぶっ飛ばします。秘技、火炎双魔掌...!」

彼女が両手を突き出すと、そこから炎が出てきた。

「うわあああっ!!?

そこにあるのは屍だけだった。死んだのである。死因は焼け死。

こうして、僕の人生は終わった。享年17歳

ああ、もっと生きていたかった……。

と、その時だった。量子力学的なあらゆる法則作用して、尿意をもたらしはじめたのだ。

「はっ!?

目が覚めると、そこは教室の中。どうやら授業中に居眠りしていたらしい。

先生が呆れた顔でこちらを見ている。

「おい、起きてるならちゃんノートを取れよ」

すみません……」

恥ずかしさのあまり顔を赤くしながら頭を下げる。

「まったく……まあいい。じゃあこの問題を解いてみろ」

黒板で問題を解いている時、尿意限界に達してしまったので「まあいいや」といってそのままお漏らしした。

「うひぃ、快感!」と叫びながら射精までしてしまった。

「ふぅ~……」

一息ついてから、再び目を閉じて精神を集中させる。

目の前の難解な数式「xが1のとき、x+x=?」の?を埋めなければならない。

これは一見すると簡単問題に見えるかもしれない。

でも違うんだ。数学というのは、ある意味哲学であり、真理でもある。それを理解できない者は、数学を真に理解することはできない。

「よし、わかった」

答えはこうだ。

1 + 1 = 2

この方程式を解いて得られた結果は1+1という値。つまり1+1は2なのだ

これを証明するためにまず1と1を足す。最終的に得られる値は2になるはずだ。

さあ諸君、一緒にやってみよう!

「き、君ぃ、漏らしっぱなしで問題を解いている場合じゃないと思うんだが...」

先生は言う。凡人の発想である

「いいえ、これで合っています。なぜなら、1と1を足すと2になりますから

そう言って僕は1と1を足した。そしてその結果を紙に書き記す。

「ほぉ……」

先生はその解答を見て関心したように言った。

「素晴らしい! 正解だ! だが覚えておけ、この壇上は私の宇宙であり、君はそこに存在する塵だ。尿の臭い教室に充満し始めていることに君は気がついただろうか?」

「いえ、全然

そう言って、僕は教室から立ち去る。

「他に錯乱したい者は?」教師は何か言ったが、僕は聞いていなかった。

ここは保健室今日今日とて、僕はベッドで横になっている。

最近、僕はよくお漏らしすることがあって、こうして保健室で寝ることが多かった。

「ん?」

カーテンが揺れて誰かが入ってくる。僕は反射的にそちらに目を向けた。

こんにちは、先輩」

そこには、あの美少女がいた。

彼女は、僕の隣に腰かける。

「あれ? どうしてここに?」

「先輩に会いに来たんですよ」

「えっと……なんのために?」

「もちろん、あなたに会うためです」

「ええっ!?

「どうしまたか? そんなに驚いて」

「い、いや、なんでもないです」

「ところで、体調の方は大丈夫ですか?」

「うん、平気だよ」

本当はかなり辛かったけど、これ以上心配をかけるわけにはいかない。

「よかった。それじゃあ、早速始めましょうか」

「始めるって何を?」

「決まってるじゃないですか。核で悪の国を滅ぼすんですよ。」

問題タイミングだ。」

「そうですね。でも、もう時間がないですよ。」

「どういうことだい?」

「このままだと、先制攻撃されます。」

「何だって!」

「早くしないと間に合いませんよ。」

「分かった。それじゃあさっさと野球拳を始めよう。」

こうして僕たちは、核戦争危機回避した。僕たちがなにをしたかはお前の想像で補う部分だぞ。

ヒントを言えば、僕は「出る!核がでりゅぅぅうぅう!かはぁ....ぶっ放してしまいました」というセリフを言ったとだけ伝えておこう。

「先輩、私に何か隠していることありますよね?」

「いや、特に何もないよ。」

「嘘つかないでください! 先輩の体からは、邪悪波動を感じるんです!」

「いやいや、マジでほんとに知らないよ!」

ちょっとパンツ脱いでください」

「えぇ……」

「いいから、早く!」

はい……」

「やっぱり……! 先輩のお尻に、悪魔尻尾が生えています!」

「うん、知ってた」「え……!?

「実は僕、悪魔なんだ」

「そんな……!先輩は人間だったはず……!」

「いや、悪魔からね?」

「え……!?

悪魔だけど、君のことが好きだ。」

「ええ……!?

結婚してください」

はい……!」

数年後

「もうすぐ産まれますからね!ヒッヒッフー!はい!ヒッヒッフー!

「ピギィイイイ」

まれてきたのは、可愛らしい爬虫類だった。「可愛い……!」

「ええ……!?

名前は……そうね。ドラコしましょう」

「ええ……!?

「ピギャァアアア」

ドラコはそういって金切り声を上げ、母親を喰らう。

「そうそう、喰らわれる痛みというもの人生で一度は体験してみたかったんですよね」とアカネは言う。

「喰らわれる気分はどうですか?」と医者は言った。アカネ笑顔で答える。

「最高です!」

こうして世界は救われた。めでたしめでたし

2022-07-12

「もし二十年後に君の演奏を聴いたとしても、私はそれが君の演奏だと思い出せるだろう」


     ◇


 2019年5月モントリオール国際音楽コンクール主催するジュニア音楽家のためのコンサートが開かれた。

 その参加者の中に、一人の日本人少女の姿があった。

 名前村田夏帆、当時11である。小柄ながら卓越したヴァイオリンテクニックを有する彼女は、このコンサートでの演奏曲目をヴィヴァルディの『冬』としていた。コンサートの当日、疾走感と柔らかさを交互にもたらす複雑なメロディーは三楽章渡り、十分余り続いた。演奏が終わった時、彼女は微笑んでいた。

 熟練した室内楽オーケストラとの共演は、完全に成功を収めたのである

 演奏が終わると、司会者が壇上にやって来て、フランス語にて彼女演奏を讃えた。司会者を前に、恐らく村田夏帆フランス語を解してはいない様子ではあったが、真摯な表情で司会者言葉に向き合っていた。

 演奏を無事に終えた安心感と、そして異国の言葉で賛辞を向けられる緊張感。その二つをない交ぜに、彼女は生真面目な表情で司会者言葉に耳を傾けていた。

 そんな時である


ピエールアモイヤルがいらっしゃっています

 と司会者が口にしたのである

 オーケストラの面々の表情が瞬時にして緊張感を帯びた。


 ピエールアモイヤルは、フランスヴァイオリン界における重鎮中の重鎮である

 伝説的なヴァイオリニストの一人と言っても良い。かの魔術的なヴァイオリニストであるハイフェッツが寵愛した唯一にして最高の弟子であった。

 壇上にいた何人もの音楽家たちが慌てて居ずまいを正し、貴賓席でゆっくりと立ち上がる初老男性に向けて視線を注ぐ。「本当にアモイヤルが来ているのか?」と言わんばかりに、椅子腰かけていた数人の音楽家が僅かに腰を上げて、会場の奥へと探るような眼差しを向けた。

 ただ一人、村田夏帆けがその緊張感を共有していなかった。彼女にとって、アモイヤルは音楽界の重鎮ではなく、単にチャーミングな笑みを浮かべた初老男性の一人である。とは言え、彼女は著名な音楽家の一人からコメントを受けるとあって、程よい緊張感を含んだ表情で男性へと視線を向けた。アモイヤルは微笑んでいた。

 アモイヤルはまず、オーケストラと小さなヴァイオリニストの素晴らしい演奏を讃えた。その後、彼はゆっくりとした英語少女に向かってメッセージを紡ぎ始めた。

今日初めて君の演奏を聴いた」

 とアモイヤルは言うと、続けた。


「もし20年経って君の演奏を聴いたとしても、あの時聴いた音だとすぐに思い出せるだろう。

 それがもっとも素晴らしい徴(しるしなのだ

 過去巨匠であるハイフェッツオイストラフミルシュタインがそうだった。そのくらいあなたの『声』はとてもユニークだ」


 会場から拍手と共に微笑が漏れた。それはアモイヤルの英語がお世辞にも上手ではなかったからかもしれない。あるいは、その賛辞が、コンクールで優秀な成績を収め続けているとは言え弱冠11歳の少女に述べるには、あまりに本格的に過ぎたからかもしれない。

 いずれにせよ、村田夏帆通訳女性の声を通し、アモイヤルの賛辞を聞き届けると、微笑みを浮かべた。

 そんなこんなで、モントリオールにて開かれたジュニア演奏家のためのコンサート成功裏にて幕を閉じ、彼女日本への帰国の途に就くこととなった。彼女は、学業の傍らヴァイオリン演奏し続ける忙しい日々へと舞い戻っていくことになる。彼女ヴァイオリニストとしての物語は、2022年の現在に至ってもまだ続いている。


     ◇


 客観的に言えば、この時の村田夏帆演奏には些かの粗もあったと言えよう。

 そのような感想を抱く音楽愛好家は決して少なくはないだろう。才能があるヴァイオリニストであるとは言え、やはり彼女11歳の女の子なのであり、十分なキャリアを積んで技量に磨きを掛けてきたベテランヴァイオリニストに比べれば、見劣りする部分は(多くはないにせよ)存在する。

 しかし、それと同時にアモイヤルの言葉は間違っていなかった。

 彼女演奏は、過去偉人たちと同様、独特の『声』を持っている。そのことも同時に明らかなのだ

 弦に当てる弓を僅かに傾け、切ないまでの叫びを上げるヴァイオリン

 その響きには、明らかに音楽に対する愛と、そして、時代を超えて人の耳を捉え、心の奥底に触れる繊細なタッチが同居している。その音を聴くことができる喜びは、時代を超え、人の心を超えていく。我々はそんな彼女の『声』を耳にできることをきっと喜ぶべきなのだろう。


https://www.youtube.com/watch?v=lxTc7kLBbo4

2022-07-01

エロマンガを描いて生きている 2/3


長編作品DLsite投稿した次の日だった。

サイトを眺めたところ、新着のおススメ欄に自分のやつがあった。クリックしてみると……「ランキング 24時間1位」とあった。「ファッ!?」という声が出た。無意識だった。あんな声が人間から出るのだなと素朴に感じた。

pixiv活躍している絵師です」と自分のことを紹介してくれる人がいた。嬉しかった。コメントを読んでいると、こんなに多くの人が気持ちよくなってくれたんだと思って涙が出た。自分がやったことは無駄ではなかったんだ、これでよかったんだ、と心臓の奥からじんわりとした感情が湧き出した。

マックフライヤーに真新しいオイルを入れた時の、あの澄んだ小麦色の油面脳裏に浮かんだ。生卵をそこに割って落として、ポーチドエッグを作って食べるのが当時の朝マッククルーの楽しみだった(追記 お湯に落とすのが本来ポーチドエッグです。当時の呼び方尊重しました)。

朝五時くらいの周囲がまだ暗い中、夜マックから朝マックに切り替わるまさにその時、みんなでワイワイと集まって創作料理をやっていた。自分が作るのはポーチドエッグ相場が決まっていた。皆、おいしいと言ってくれた。そんな記憶が、あのランキング1位の画面を観た時に脳裏をよぎった。

デビュー作品投稿した年だけで1000万以上も稼いだ。図に乗った自分は、また同じ系統作品を作り始めた。再び三ヶ月程度は労しただろうか。前作と同程度の執筆期間だ。

いよいよその時だ。満を持して販売開始ボタンを押した。はっきりいって二番煎じだった。濃さについては前作よりも強いつもりだ。

売れ行きは……前回とほとんどいっしょだった。24時間ランキングは1位だったし、1週間ランキングでも、1ヵ月ランキングでも一番になった。コンテンツ需要があると確信した瞬間だった。

次作はこれとは違う作品を作ってみようと思い立った。妹凌辱ものではなくて、もっと社会的健全とされるエロ分野に挑戦してみようと思った。多くの大家のページを巡っていったところ、クリムゾン先生のページに辿り着いた。販売作品ひとつずつ見ていったところ、「この人すげー安定してるな」と感嘆したのを覚えている。それでいて創作ペースも早い。

自分場合はこうはいかない。下書きの段階では絵も字も死ぬほど汚いし、ペンタブを握ってもそんなに変わらない。初稿は売り物にならないレベルで、第二稿、第三稿と繰り返すたびにちょっとずつ売れる絵になっていき、販売開始をクリックする頃には第7稿とかになっている。

クリムゾン先生の安定感は素晴らしいとは思ったけど、自分には到底真似できないことも理解した。でも、これでいいのだ。自分場合は遅筆で、年に投稿できる作品は少ないけど、その代わり、とびっきり質のいいやつを出してやろう。それで読者に喜んでもらえばいい。

それから、いろんな経験をした。

DLsiteFANZAから個別に連絡があって、「今度、このようなキャンペーンで~~」といった内容で、いわゆる商談というやつだ。あとは出版社からも連絡があった。オリジナル作品をウチで出してみないか? という提案が。乗り気ではなかったが、編集者がいい人だったので1冊だけ紙の本を出した。

社会のことをもっと勉強しておけばよかった。会社員の人って、みんなけっこうシャキンとしていて、キビキビとしていて、マナーレベルが高かったりするだろう。絵描きというのは社会経験がない人が多いので、そのあたりはルーズだ。

例えば、FANZAとかで滅茶苦茶に売れている大御所の人で、態度が凄まじく横柄な人がいる。出版社の人や、イラストレーターや、もっというと初対面の人が誰だかわかっていなくても、自分が神であるかのような傲慢な態度で望む。20代はもちろん、30代、40代の人でさえそういう行動を取る人はいる。お金があれば何をしてもいいんだ、という心が透けて見えるようで気分が悪い。

自営業にとっては自然なことだ。自分が作った世界勝負して、それでお金を稼いでいるのだから会社員みたいに礼儀マナーを身に着ける必要はない。傲慢だろうと誠実だろうと、ご飯を食べていけるならそれでいい。他者への態度は、その人が自分責任で決めることだ。



かくいう自分も失敗をした。

二作目を売りに出してから少し時間が経っていた。通帳をみると、一作目の投稿から数えて約二千万円が入金されていた。このお金で何かしてみようと思ったところ、秋葉原にあるメイドカフェで豪遊してみようと思い立った。

専門学生だった頃に、友人と2回ばかり行った経験があるのだが、そこにはいい年をしたおっさん連中がいた。メイドさん達をわが物のように扱い、ほかのお客のところに行かせないようにしていた。彼らというのは基本的に、ものすごくうるさくて、ありえないほど近い距離メイドさんに接する。心理的にも物理的にも。ああいうのは苦手だ。

対照的に、ものかに食事を嗜んでいるおじさんや若い人もいたが、少数派だった――年齢は関係ない。大人びた人というのは、大抵は子どもの頃から大人だったりする。

結局、学生だった当時は、メイドさんとロクに喋ることはできず、40分ほど滞在して割高なオムライスを食べて帰った。世知辛い思い出だ。

ある秋の日、自分は一人でその店を訪れた。当時と変わらない佇まいだった。木目調のカウンターに色とりどりの置物が飾ってある。メニューもおしゃれだ。簡素だけど、手作り感が満載の。

あの時と一緒だった。おっさん連中が三人ほどいて、お気に入りメイドさんドリンクを飲ませていた。

観察してみると、カラオケサービスを頼む際にメイドAさんの胸を人差し指タッチしたり、フロアに立っているメイドBさんの隙を探して肩を揉んだりしていた。

40を過ぎた大人が、若いの子に対してお金と引き換えにセクハラをする場――学生などお呼びではない。それが当時のメイドカフェに対する認識だった。

でも今は違う。今の自分は専門学生ではなく、pixiv発のいっぱしのプロ絵描きなのだ

入店してすぐ、メイドさんこちらに気が付いた。

「お帰りなさいませ(はぁと)。ご主人様」

紋切り型の楽しげな挨拶を受けて、カウンター椅子腰かけた。今のはメイドCさんとする。ちょっとしゃがんで、上目遣いでこちらを見上げている。猫耳を付けていた。リボン付きの首輪も。

「初めてですか?」

はい。初めてです」

こちらがメニューです~(以下、お店のシステム説明)」

了解しました。1時間で帰る予定です」

「ご注文は何にいたしましょう? ご主人様」

オムライスください」

かしこまりました。オムライスの種類がこちらになります

「『くまたんはんばーぐ☆オムライス』にします。ドリンクは『ふりふりしゃかしゃか♥オレンジじゅーちゅ』で。何分くらいで来ますか」

「お飲み物はすぐに。オムライスはお時間かかります

了解です」

オレンジジュースはすぐに来た。メイドの人がふりふりしゃかしゃかすると、魔法がかかって味が変わるらしい。「今回はいいです」と断って、その場でグラスの半分まで飲んでみた。普通にうまい。前回は、お金がなかったのでウーロン茶を頼んだはずだ。

オムライスはあと20分お待ちください。私はあちらのご主人様の方にいますので、何かあったら呼んでくださいね

「そうですか。では待っている間にシャンパンを飲みます。これをください」

メニューの一番右上にあるシャンパンを指さした。ドンペリ白だった。当時、ドンペリが何なのかわかっていなかった。とりあえず高い酒ということは知っていたが。メニューには55,000円とあった。

メイドCさんは、「えっ!?」という声にならない声を上げて、おじさん方の接客をしているメイドAさんとBさんのところに駆けていった。

一時的キッチンの中に引っ込んでの作戦会議の後に、メイドBさんとCさんが自分のところにドンペリを――おそるおそる持ってきた。今思えばけっこう揺れていたかもしれない。Aさんは接客に戻っている。

ドンペリの瓶について、ずんぐりとした形状だったのを覚えている。天井LEDに照らされた酒瓶は、生まれたてナイフのような恥じらいを帯びていた。鈍い色の光沢が煌めいてる。生涯で初めてのドンペリだ。

こちらでよろしいですか」

OKです」

「ご主人様。ご自分でお開けになりますか――?」

「開け方がわかりません」

「そうなんですか。実は私達も開けたことがなくて」

「何……だと……?」(ブリーチ

Aさんの前にいるおじさん3人がこちらを睨んでいる。メイドAさんなら開け方がわかりそうなものだが、色々と事情があったのかもしれない。

やけくそだった。なんかもう適当ねじねじとしたやつを外して、ボトルの蓋を解体していった。コルクだけになったところで携帯電話をパカッと開いて、ようつべドンペリの開け方を調べた。どうやら、ねじねじとしたやつは残しておくものらしい。

ようつべの画面に映ったバーテンが、コルクの栓を捩じりながら開けていくのを見て成功確信を得た。自分も真似してやってみよう。メイド2人が手元をまじまじと眺めている。

何十秒かそこらだったと思うが、ずっとコルクを捩じり続けていた――ポォンッ!! という音を立てて、コルク天井に突き刺さった。すごい音だった。直後、メイドBさんの方にコルクが落っこちるのを観た。

冷たい、と感じた。見れば膝にドンペリが零れているではないかテーブルの上はさらにヒドイことになっている。

やってしまった、ドンペリの瓶を揺さぶり過ぎたのだ。炭酸がこんなに強いなんて。当時の自分は知らなかった。ドンペリの四分の一くらいが零れたのを見て、さっきのおじさん達がゲラゲラと笑っていた。メイドAさんがこっちに向かってきて、BさんとCさんを悲しそうな目で見た後で、

申し訳ありませんご主人様!」

謝罪したのを覚えている。

「いいですよ。みんなでゆっくり飲みましょう」としか言いようがなかった。零れたものしょうがないのだ。これが現実なのだハム太郎)。

メイドさんとしばらく話をした。あれは楽しかった。初めての体験というのが大きい。以下に抜粋してみよう、うろ覚えだ。BさんとCさんとの会話がメインで、Aさんは傍で見ていてたまにしゃべる感じだった。半ば酔っていたので、お見苦しい発言がいくつもある。

「改めて、Cといいます。どちらから来られたんですか?」

千葉の端っこからきました」(比企谷くんの近所に住んでます

「へー! わたし千葉に住んでるんです」

もしかして家が隣かもね」(なんてね!)

「かもしれませんねー」

「このお店、やって長いんですか。この木目調のカウンターとか。古さがいい感じです」(i'm lovin' it!)

「えっと、たしか五年目ですね。前ここバーだったんです」

へぇバーですか。どおりで。照明を消したらバーになりそうですね。ところで姉さん、失礼ですが年はおいくつですか」(24とみた)

「えー、いくつに見えますか?」

「22」

「ブー、違います

「うーん、25?」

「違います!」

「27?」

「ブー、ぜんぜん違います

「参った。正解を教えてよ」

「正解は……17才です!」

「あー、そっちかー」

意味わかるんですか? おにいさ……ご主人様」

「わかるよ。有名な声優さんのやつ。で、ぶっちゃけ本当は年いくつ? 自分は26。見た目はおにいさんじゃないけどね」(おにいさんってあなたもしかして夜の店で働いてた?)

「こないだ19になりました」

若いね。ところでなんだけど。なんかさ、たばこ匂いがするよ?」(この子まじでヤニ臭いんですけど……)

「そんな匂いしません! 未成年ですから

煙草は吸わないけど、ドンペリは飲むんだ」(やりますね!)

「ご主人様だから特別ですよ。内緒にしてくださいね

(ここで一瞬、AさんとBさんが神妙な顔つきに。Bさんが話してくる)

「ご主人様って、アニメ好きな人ですか~?」

「うん。アニメ好きです。毎季いろいろ見てます!」(うえぃ、酔いが回ってきた)

「え。アニメ好きなんですね。今のだったらどんなのおススメですか? 観てみたい」

「うーん。すぐにはちょっと。頭の回転が追い付かない。Bさんは、どんな感じのがお好み?」(装甲騎兵ボトムズとか? あまり答えたくないな。恥ずかしいし)

「笑えるやつがいいです」

「どんなアニメだって笑えるじゃん」(話題よ逸れてくれ)

「泣けるのが好きかな~。わたしにもおススメ教えてくださいよ」

「うん、ちょっと考えるね」(こんちきしょうめ!)

「あー、ご主人様かわいい。頭ひねってる」

「焦らずに。ちょっと待ちなって」(お答えしますよ!)

(当時のアニメ視聴リスト。○が思い出せた)

あかねさす少女 ○

・うちのメイドがウザすぎる!

アニマエール! ○

・俺が好きなのは妹だけど妹じゃない ○

寄宿学校のジュリエット

ジョジョの奇妙な冒険黄金の風

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない ○

やがて君になる ○

ゾンビランドサガ

アニマエール一見やんちゃなようで、友情がしっかりしていて面白いんで見ることにしましたよ。やがて君になるも捨てがたいですねェ」(戸愚呂弟)

アニマエール見てないです。どのへんが面白いんですか」

「緩くて、緩くて、緩いところかな。1話を見たらわかる。それだけでいい」(語彙貧困

「ご主人様、すごいですね」

「恐縮です。Bさんのおススメはある?」(もっと褒めてもいいんですよ)

「色づく世界明日から、てゆうのが感動できます。泣きますよ~」

「素晴らしい作品を見てるんだね」(そんなの知らない!)

「ご主人様、見る目あるんですね」

「どういたしまして」(ヘヘッ!)

絶対みてくださいね

(※翌年、全話視聴してガン泣きした)

「ところで。そちらのお姉さんはベテランさんですか?」(Aさん!Aさん!)

はい……まあ。そうですね。オープンからいるんで」

「へー。オープンから!! それはそれは!! 大事役割を任されてるんですねェ。今日開店時間からずっといるんですねェ」

「そういう意味じゃありません」

「ごめんなさいwww」

(※このあたりから記憶がない。ドンペリ白をほとんど飲み干していた)

「ご主人様ってなんか。自分をお持ちのお顔ですね。アニメだけではなくてー、ほかにもいろいろ趣味が多そうな気がします」

はいイラスト描くの好きですよ」(わかってますね!)

「そーなんですね。渋のアカウント持ってます?」

「持ってますとも」

「見せてくださいよー」

「また今度ね。もっと別の、楽しい話題に移りませう」(絶対みせないでをかう……)

「ご主人様の見たいです。次は絶対見せてくださいね

「その時が来たら見せますよ! ところで、自分さっき、どの漫画キャラの真似してたかわかりました?」

アニメ版の戸愚呂弟かなって思いました」

あんたもなかなかやるねェ」(ヘ、ヘッ!)

「ご主人様は、イラスト以外にもモノマネお上手なんですね」

「戸愚呂が一番好きなんです」(へへッ!)

わたし、戸愚呂兄のモノマネが得意なんですよ。今からやってみますね!」

割愛

しばらく喋っているうちにドンペリ(3/4)をほぼ1人で飲み切り(メイドAさんとCさんが2杯ずつ飲んだ)、美味しいオムライスを食べた後、現金でお会計を済ませると、のんびり歩いて秋葉原駅まで行った。

おじさん連中には、キッチンから出てきた料理担当とおぼしきメイドさん対応していた。あの時のおじさん達のことは今でも覚えている。自分カウンターを立って会計をする時も、物笑いにするような目つきでこちらを眺めていた。

それで、実家への帰り道の途中、酩酊した状態自転車に乗っていたものから、見事に転んでコンクリート水路蓋に頭を打ちつけた――転んだ自分の目の前に、青い空が映っていた。千葉県某所の空に、みたいなタイトルが頭をよぎった。当時は若かった。今の自分飲酒運転など絶対にしない。

しかし。真の失敗は飲み方の汚さにあった。あの時以降も、グラスに注いだ高い酒をペースを考えずにグイグイと飲みまくった。どう考えても見た目が悪い。高い酒を飲むやつが偉いだろうと心の奥底で考えていた。その時点で、あのおじさん達と同じ穴の狢というわけだ。

今はそういう飲み方をすることはなくなった。世の中には優しいおじさんもいて、ある時だった。別のメイドカフェで、ピンクドンペリを直飲みでイッキして騒いでいたところ、隣にいたおじさんが言ったのだ。

「君の飲み方は汚い。もっと周りのことを考えて吞みなさい」

はっとした。そのとおりだった。自分調子に乗っていたのだ。「ごめんなさい」と謝ったら、「俺もね、あなたくらいの時にお酒で失敗してね……」といろいろ話してくれた。

お金を稼げたから、それだけで偉いなんてことはない。人間の偉さがあるのだとしたら結局、人柄とか、人格とか、行動とかで見られるんだと思う。まだ30手前だけどわかる。人生の明らかな事実だ。



次で最後です

https://anond.hatelabo.jp/20220701210746

2022-06-09

俺の理想生活

朝に目が覚めたらストレッチしてそのまま5kgランニングして、汗だくで帰ってきて玄関に用意してるプロテイン飲んでシャワー浴びて、

団地に一人で住んでるんだけど、ベランダそばに置いてる観葉植物の横の椅子腰かけて昼まで図書館で借りた本読んで、お昼になったらカット野菜サラダと、鶏胸肉にサルサソースかけたの食べて、プロテイン飲んで、軽くストレッチして、夕方になってからスーパーが少しこむ前に翌日分の買い出しにでかけて、家に帰ったら図書館で借りた本読んで、夜になったら、作っておいた温かいミネストローネと鶏胸肉焼いたの食べて、プロテイン飲んで、温かい風呂入って、21:00にはぐっすり眠る

テレビもつけなければ新聞も読まない。

こんな生活毎日したい。

って話を友人にしたら「土日のお前じゃん。っていうかその生活生活保護受けても貯金できるよな」って言われて、働くのがマジで辛いんだが働く目的を誰かオラに与えてくれ。

2022-05-23

困らないけど困る

勤め先の建物のすぐ後ろが海なんだけど、人が少ないわりに明るくて景色がいいから、学校帰りの高校生堤防脇をよく歩いている。

堤防の上にあがる階段腰かけ黄昏れてるのもまあよく見かける。

問題なのは堤防の上にあがる階段が、うちの事務所の窓の真正面だということ。

階段に座ってイチャついてる男女が、窓枠という額縁にすっぽりきれいに収まっている。

じゃれあって、抱き合って、最後はチューしてるところまでしっかり見える。

いや、見ようとしてみているのではない。窓だから。窓から見えちゃうんだから

別にいいんだけど… 彼らはこちから一部始終が丸見えなことに気づいていないのだろうか。

2022-05-21

夫の祖父相続がまだ終わっていない。

 ちょっと用事があって、町内でもあまり行かないエリアを車で通り過ぎた。その途中、住宅街から少し離れた所に、畑にまじって放棄されて荒れ果てた土地があった。夫が言うには、そこが昔、夫の祖父銀行に唆されて買った土地なのだそうだ。

 夫の祖父はもう何年も前に天寿を全うして亡くなっている。普通に病院で死亡したから、何日の何時に死亡したか白だし勿論事件性もなにもない。そんな人の相続問題がいまだに片付いていないと、夫から聞かされて驚いた。とっくの昔に相続放棄ということで決着がついたのかと思っていた。

 義父は十数年前に亡くなったので、夫の祖父相続人には代襲で夫ら義父の子供達が入っている。夫の弟妹達、全員一致で相続放棄ということになったはずだった。迂闊に相続すると何を押し付けられるかわかったもんじゃいからだ。祖父本人も性格問題ありまくりだったのもあるが、義父の兄とその妻が輪をかけた曲者で信用ならないからだった。

 夫の祖父と義父の兄の住んでいた土地は広く、そして建物は立派な古民家だった。だが、家業が多額の負債を抱えたまま倒産したので、その土地家屋は夫の祖父のものではなくなったはずだった。だが、外戚資産家の手を借りてあれこれしたらしく、家業が潰れた後も、夫の祖父一家普通にそこに住み続けている。そこら辺はおそらく相続財産のリストには入っていない。

 家業が潰れた際、夫の祖父はその全責任を義父になすり付けた。そのせいで義父は亡くなった。それで夫と弟妹達は祖父を恨んでいるし、信用しない。

 本家から夫の祖父相続話がもたらされたのは、夫の祖父が亡くなってから何ヵ月も経った後だった。義父の兄嫁がやって来て、相続財産の一覧も見せずに、書類に判子をつけと言うのだ。夫に対して、長男として遠方に住んでいる弟妹達の所へ行って実印を預かって来い、そうすればこっちで書類に捺印をしとくから。そんな事を玄関先に腰かけて、しか相続とは無関係義母にことづけた。

 そんな事を言われて夫が怒らないはずもなく、そんなに判子ついて欲しいんなら相続財産の一覧を持って直接うちに出向いて頭をさげやがれ! と言った。以来、本家とは絶縁状態だ。

 信じらんないような話だが、本当の話だ。

2022-01-19

anond:20220119093521

スーツやさんで「裾上げは普通の長さでいいですか?」で切ると、

たいてい電車腰かけた時におじさん靴下が見えてしまうから長めにしてる。

電車で対面に座ってる人は

いいスーツだなーと思っても、たいがいオジサン靴下べろーんか、

脛の肌が見えてる。

2021-12-31

問題職員の正しい辞めさせ方 7/10

第二章 更生が期待できる問題職員について

できれば2人紹介したかったが、1人に留める。

ここまでの6人は問題ない。何かあっても私が責任を取ろう。が、この2人は今でもK市で働いている。うち1人は男性で、接触当時は入庁4年目だった。

協調性がないとの評判であり、人事評価では直属の上司から免職を促すことが相当である」とのコメントが入っていた。しかし、実際に本人と面談してみると……といったパターンの子だ。本質が見えていないのは上司の方だった。

残り1人は女性で、接触当時は入庁1年目。先に挙げたGさんと同じく直向きな職員だった。地元新聞記事にも「期待の新人職員!」という記事が載るほどに期待されていたのだが、残念なことに、頑張りすぎてうつ病になってしまった。その後のじりじりとしたリハビリと、復活後の活躍には目を見張るものがあった。よって、この子を取り上げようと思っていた。

迷ったが、男性の方を選んだ。理由は私と同性で、気質も似ているところがあったので心の内部を覗きやすいと感じたからだ。登場人物の男女比の関係もある。仮に、E太さんとする。

福祉関係部署のE太さん

私が特定任期付き職員として採用されて3年目のことだった。E太さんと話したのは。彼は入庁4年目だった。ある意味で先輩にあたる。

当時は20代後半で、福祉部署で働いていた。といっても、ケースワーカー自立支援福祉事業者審査といった類ではなく、裏方の仕事だった。直接福祉仕事に携わることはなかったが、それでも部署全体を支えるポジションだったのは間違いない。

梅雨時のある日、彼について人事面談をしてほしいと福祉課長から依頼があった。このE太さんというのは、いわゆる問題職員という扱いだった。私は、彼のいったい何が問題だったのか、その時は理解していなかった。が、K市の問題職員リストにE太さんが名を連ねていたのは事実だ。

福祉課長によると、彼には以下のような問題点があり、人事で指導してほしいという。

ミスをしても謝らない。それどころか相手を逆なでする。

・内部会議で一切しゃべらない。発言を求められても二言三言。

・みんなと協調的な行動を取ることができない。自己中心的である

今回は3点目で引っかかったようだ。

いろいろと調べていったが、やはり机上のデータでは見えてこない。他の福祉課の職員から聞き取った情報総合すると、先週あった課全体の飲み会でひと悶着あったらしい。

うす暗い飲み屋の片隅に座っていたE太さんが、近くにいた福祉課長やその他先輩がいた席まで呼ばれた。「この間のことで話がある。ちょっとこっちに座れ」と言われたE太さんは、ダイレクトに断った。「行きません」と突っぱねたとのこと。それで先輩職員らと口論になって、そのうち優しめの先輩職員が彼の席に移ってきて、まあ飲みなよとお酒を注ごうとしたところ、これもまた「帰りがバイクなので」(※真偽はわからない。E太さんの嘘かもしれない)と断った。

そんな態度に憤ったほかの上司や先輩が、E太さんに詰め寄り、お酒を吞ませようとした。それでも断固とした態度のE太さんに、先輩は次第に声を荒げ、ついに係長級の職員がE太さんの首根っこを掴んだところで、「やめてください!」と彼が拒否して……市役所職員の宴席から大声が響いたものから、近くに座っていた別のお客のグループ店員に静かにさせるよう苦情を入れるも、店側も注意ができず……翌日になって、その居酒屋で飲んでいた人が市役所に直接クレームを入れたというのが顛末になる。

どっちもどっちだ、と感じた。双方とも行動に問題がある。

福祉課長の言うことは明らかに自分寄りである。ここまでのハラスメント行為があったとは聞いていない。私がほかの係員に聞き取りをしなかったら、あやうくE太さんだけを悪者にするところだった。

彼にしても、飲み会に参加したなら、もっと仲間意識を持つ必要があった。飲み会は、「供食」の場だ。供食は仲間同士でしかしない。古今東西自分達の敵と一緒に食事を取るなんて文化はない。一緒に食事を取るということが仲間であることの証なのだ。昔の人間というのは、そんな儀式神聖視せざるを得ないほどには、人間組織の生き死にが間近にある生活をしていた。

ある日の午前、窓ガラスに雨粒が叩きつける中、面談室に入ってきたE太さんはソファの前で立ち止まった。「座ってください」と私が言うと、彼はゆっくり腰かけた。

初めに言ってしまうと、私はE太さんがそこまで悪い人間ではないとわかっていた(後述)。それで、リラックスしながら、今日は何を話すんだっけ? とバインダーに挟んだ聞取票を手に取った私は、簡単挨拶の後、E太さんとのやり取りを始めた。

朝ご飯は食べた?」

はい。食べました」

「どんなものを?」

コンビニおにぎりカップ麺を」

「どんなカップ麺が好き?」

特に好みはないです」

「そうか。私も毎日そんな感じだ。おにぎりカップ麺は合うよね」

「そうですね」

「E太さんは、バイクだっけ?」

「私は……バイクではありません」

バイクじゃないの?」

自転車です」

「E太さんって自転車だったの!? 人間じゃなくて?」

「そういう意味じゃありません」

※重ねて言うが、これまで私が記してきた会話の記録には不自然さが否めない。方言言葉の癖など、個人情報に関わる内容を編集していることによる。

指導目的とした人事面談というと厳しいイメージが漂うだろうが、相手が筋金入りの問題職員でなければ概ねこんなスタートを切ることが多い。信頼関係を築くためだ。

雑談が続いた後、いよいよ問題の核心のフチに触れる問いかけをしてみる。

「それで、福祉課長から聞いた件なんだけど。今回の面談きっかけ」

「……はい

「周りの職員のこと、どう思ってる? この人は好きとか、嫌な人とかいる?」

特にいません」

「E太さんの態度や行動が、同じ課の職員を傷つけることがあるみたいだ。私も調べてみたけど、そう思ってる人も確かにいる。どうしてこの結果になってしまうのか、考えていることを教えてほしい」

普通にやっていると、こうなります

普通に、とは」

「正しいと思うことを言ったりやったりして、でもほかの職員からするとそうでないみたいです。嫌われるのはわかっても、でも自分がやるべきだと思うのでやっています

思ったより早く本音を出してくれている。チャンスだ。私は、聞取票が挟んであるバインダーを机の端に裏返しに置いた。ここからのやり取りはうろ覚えだ。

「E太さん。せっかくの機会だから腹を割って話そう公文書には残さないから、もうこのバインダーはいらない。一対一でE太さんと話したいと思ってる。ところで、私のことは知ってるよね。ここのプロパー職員じゃないって」

「知っています。2年前にK新聞(※地元情報誌)で読みました。〇〇社の出身で、人事領域プロだと書いてありました」

「知ってるんだね。ありがとう。でも、プロと言えるほど経験は積んでない。社会人20年以上やっているけど、人事は6年くらいしか経験がない。ほとんど営業だった。大人の事情というやつで、プロにはほど遠くてもプロなんだと――そうアピールしないといけないことがあるんだ(ここで両者の笑い声があった)。で、話を戻すけど、E太さんはどうして今の状態を保ってるのかな。変えてみたいとは思わない?」

キツイと感じることはありますが、これでいいと思っています

「どういう理由で、キツくてもいいと思ってる?」

自分のやりたいことがあります社会人として、こういう生き方がいいって。それで、その目的から逆算して考えると、今は人間関係よりも実力がほしいんです」

申し訳ないがここまでだ。これ以上は、私の記憶からE太さんの口述を曝け出すことはしない。

簡潔に言うと、彼は仕事が一番ではないタイプだった。E太さんの人生優先順位の中で、仕事は3番目ということだった。だから民間から公務員転職しようと思ったし、だから、どれだけみんなに嫌われようがどこ吹く風でやってこれたのだ。

肝心なことを述べていなかった。E太さんの仕事ぶりだ。毎年、人事課に提出される査定表で、彼は3年連続で5段階中の2を取っていた。もちろん低い数字だ。実務能力は平均3.5だったが、礼儀マナー人格職務遂行姿勢などで大幅に減点を受けていた。

私が再調査したところだと、彼の査定は控えめに見ても3はあったように思える。福祉課で彼と同じくらい「人柄が悪い」と評価を受けている人間も、その多くが3を取っていた。それに彼は、年は若い福祉課の裏方として3年以上も職場を支えてきた実績がある。

ちなみに調査方法だが、①人事権限で福祉課の共有フォルダに入ってE太さんの成果物確認する、②E太さんの同僚を面談室に呼んで印象に残った行為や実績を聞き出す、③過去のE太さん関係始末書を読み解く――という3通りの方法で行った。確認できた事実は以下のとおりだ。

オフィスソフトの腕前は一流であるパワポExcelAccessも使いこなせる。文も読みやすい。

プレゼンテーション能力が高い。普段は物静かだが、かつて大都市商工会議所で行われた各市町合同での新人職員研修会の折、K市の未来について数分間のスピーチを行い、拍手喝采をもらったとのこと。

事業計画立案。E太さんは広告会社出身だった。その経験を活かし、福祉課の裏方としてケースワーカーなど福祉職を支えるための各種設備インフラを整えるための計画書を作り、それがそのまま課の予算要求に使われていた → ということは、彼の上司はその仕事振りだけは認めていたということだ。

福祉課の職員からの苦情はあるが、市民取引業者とのトラブルの記録はない。

・年下の職員には人気があるらしい。例えば、彼が選挙スタッフとして従事した際、開票作業の前に事務吏員の腕章をみんな装着するらしいのだが、「安全ピンが刺さりそうなので、私の腕に腕章をつけてください」という体で、何人かの女子職員がE太さんの前に並んでいたという。尾ひれが付いているとは思うが、そういうこともあったのだろう。

私が退職するまでの数年間で、E太さんと呑みに行くことが何度かあった。まさしく意気投合であり、今回ここまで赤裸々に彼のことを書いてきたのも、彼なら笑って許してくれるだろうという甘えから来ている。

私は、彼が悪い奴ではないとわかっていた。上の面談の1年前のことだ。かなり広めの川べりで行われたK市の音楽イベントに、私と彼もスタッフとして動員されていた。ステージ発表が始まると、スタッフはみな暇そうに周辺警備をしていた。

さて。一級河川にかかる橋の袂だった。カートを押している高齢のおばあさんがE太さんに声を掛けた。私は、高いところから偶然それを眺めていた。

E太さんは、話しかけてきた老婆としばらくにこやかに話をしていた。その老婆は、さっきはE太さんの上司や、ほかの若手職員にも声をかけていた。誰もが皆、迷惑そうに会話を切り上げてどこかに去ったというのに、彼だけは、その老婆の話し相手をしていた――貴重な体験だった。こういうところに人格が滲み出るのだ。

とはいえ、このままではE太さんの株は落ち続ける一方だ。それに、職員を傷つけるような冷たい態度もよくない。社会人には、絶えず相手不快にさせないよう振る舞う義務がある。会話をしたくなくても、そうした態度をおくびにも出さず、明るく振る舞わねばならないことだってある。わかっているのといないのとでは、社会生活に大きな差が出てしまう。

E太さんに何度も伝えた。「こんなのはもったいないもっと仕事に打ち込んで、本気をアピールして、みんなの信頼を集めてみたら?」と伝えてみたが、なしのつぶてだった。こちらとしても、今の状態でE太さんを問題職員リストから外すことはできない。どこかの部署で重大な人間関係トラブルを起こす可能性があるからだ。私はE太さんのことが好きだけれども、それとこれとは別問題だ。

結局、私が辞める時まで、E太さんを理解する人は少なかった。孤高で、人とは交わらない。でも仕事ができて、市民業者からの受けがいい。いろいろと惜しい職員だった。今でも彼を思い出すことがある。今度K市に遊びに行った時は、また彼を呑みに誘うつもりだ。

この章の最後に。なぜ、私は彼を好きになったのか。

渇き』を感じたからだ。E太さんは人生に飢えている。自分がやりたいこと、どんな人間になりたいのかはっきりしているのに、叶えられずにいる。叶えられる保障もない。

でも、足掻き続けている。まるで昔の私自身を思い出すようであり、懐かしい感じが脳内からビンビンと込み上げてくる――ビールは、渇いているからおいしいのだ。いつかE太さんが大成して、そんな美味を楽しめる未来があることを祈っている。

https://anond.hatelabo.jp/20211231220522

問題職員の正しい辞めさせ方 4/10

ここらで話題を変える。問題職員の話ばかりで疲れただろう。

市役所には魅力的な人物ももちろんいる。今これを読んでいるあなたも、人生で一度くらいは公務員に助けられることがあるだろう。

ここでは、そんな善き職員について2人ほど挙げる。脇道なので、1人につき二千字程度とする。



1例目.市民対応部署のGさん

とことん市民思いの職員だった。

見た目はスラッとしていて、無表情な感じの女性だった。その実、内面は安定していて朗らかである

この人を最初に見たのは、私が採用されて2ヵ月くらいの時だった。公用車に乗って近隣の政令市にある研修センターに行くところだった。

1階の市民課に繋がる階段を降りたところで、凄まじい怒号が聞こえた。「なんでできんのか!!」と、おそらく高齢男性が怒号を発していた。

窓口を覗くと、やはり老人が女性職員に対して声を荒げていた。話を聞いていると、どうやら身分証明書がなくて公的書類を発行できない類のトラブルのようだ。周りの市民職員怪訝な顔で覗いていた。たぶん堂々巡りの話になっているのだろう。

そして、交代したGさんは、静かな様子で男性の話をひたすらに聞いていた――これが傍から見ていても、「あなたの話を聞いています」「共感しています」「申し訳ございません」という態度が伝わってくる。男性は次第に落ち着いていった。最後まで納得はできないという面持ちだったが、諦めて正面玄関の方に歩きはじめた。

傾聴は苦情対応の基本である。ここまでできる人は、市の職員では初めて見る。

「この人、どんな業界が向いているだろうか」と、昔に就いていた転職支援仕事を思い出していた。

個人的感覚だと、やはり福祉だろうか。受付系も悪くはないが、こういう人には攻めの傾聴というか、そんな仕事が向いている。最初に浮かんだのは、証券会社リテール営業だった。しかし、Gさんはあの業界蔓延る罪悪に耐えることはできないだろうなぁ、と思い直したのを覚えている。

それから数年間、Gさんのメンタルの強さ、粘り強さを発揮したのを何度か見ることになった。市民の中には、自己表現としてのクレーム――己が主張を表明するために市役所の窓口に来る人もいる。何か強いストレスを抱えていて、それを発散するために市役所まで出向く。そういうタイプ市民だ。

そんな人にもGさんは優しかった。とにかく話を聞いて、あまりに騒々しいようであれば怒鳴る市民を別のスペースに誘導し、一般市民邪魔にならないようにして苦情の解決を図るのだ。

Gさんはこの部署が長かった。当時30才になるかならないかだったが、査定は常に5段階中の4だった。上司からも仲間からも信頼を集めていた。

が、それで万々歳とはならない。彼女はいつもそういうお客さんばかりを相手にするので、残業がとんでもない量になっていた。勤怠管理システムの記録によると、Gさんは毎月50時間以上の残業は基本であり、それに加えて、土日祝のいずれかに必ず出勤してサービス残業をしていた。

私も、なんやかんやで土日に出勤することが多かったが(もちろんサービス残業だ。管理職なので…)、Gさんを見かける確率は5割を超えていた。庁舎内の配置的に、3階にある私の職場に上がる時にGさんを見かけることになる。サービス出勤をしている職員はほかに何人もいたが、彼女が最も印象に残った。

黙々と仕事をこなすGさんを見ながら、私の時間は過ぎていた。

実際、Gさんはいい子だった。料理は上手いし、家事洗濯もばっちりだし、家では猫を飼っているのだが、これがまた人懐っこい。でも、猫カフェは嫌いらしい。なんでも、「あそこの猫はみんな苦しそう」とのことだ。私が「目の前にあるんだし、行ってみようよ」と誘っても、頑として首肯しなかったのを覚えている。ちなみに、好きな食べ物たこ焼きだ。食べ歩きはマナーが悪いよ、と何度言っても聞いてくれなかった。

思えば、Gさんが土日出勤しているのを眺めるのが当たり前になっていて、この人を助けなければという意識が働かなかった。ある大晦日に、Gさんが煖房をつけず、明かりもなしでパソコンに向かっているのを見たことがある。コートを着て自席に腰かけ、震えながらキーボードを叩いていた。

「Gさん。それじゃ寒いでしょ。煖房つけなさい」

私が言うと、Gさんは座ったまま、ぼんやりこちらを見詰めていた。

「すいません、これでいいです。いつもこうなんです」

「まあ、そう言わずに。一度体験したら病みつきになるかもよ」

「お気遣いありがとうございます。でも、わたし寒いのがいいんです」

「そうか。お寒いのがお好き、なんだね」

Gさんは、「こいつ何言ってるの?」という顔をしていたが、意味に気が付くと、パソコンに顔を向けながら噴き出した。

若い子でも意外と通じるんだな、と感じて私は、エアコンスイッチを押した(蛍光灯スイッチ場所はわからなかった)。人事課に続く階段を昇り始めるところで、Gさんが職場に明かりを灯したのを認めた。

この彼女は今、市役所と近い業種の仕事をしている。もう不当な時間外勤務はしていないはずだ。直接働いている姿を見たことはないが、きっと活躍していることだろう。今も幸せであってほしい。



2例目.地域振興系部署のHさん

この人も女性だ。地域を盛り上げるような感じの名前部署にいて、エース級の職員として知られていた。

さわやかな見た目の女の子だった。高校を出てすぐに市役所に入ったという。私が採用された年の4月時点で21才になる年だった。結論から言うと、この子はもう地方公務員ではない。その次の年に民間企業、よりによって当時の取引先に引き抜かれる形で退職した。

惜しいことをした。もしそのまま現職に留まっていれば、もっとイキイキと働ける環境があったかもしれない。今更言っても遅いのだが……。

Hさんを最初に見たのは、窓口でお客さんを見送っているタイミングだった。市役所で働く女子職員は、みんな仕事に使えそうな私服で来るのだが、Hさんは限りなくスーツに近い、パリッとした装いだった。凛とした覇気のある顔つきだったけれど、ちょっと不安げな瞳が印象的だった。

見た感じでは、大卒3年目くらいの雰囲気である市役所には、たまにこういう人がいる。早い話、Hさんは頭の回転が早くて、見た目がシッカリしていて、礼節を弁えており、創造的な仕事もできる。そんな子だった。

創造的な仕事』については特定のおそれがあるので述べないが、当時の公務員業界では花形とされる仕事だった。億単位の金が動く。上の人間は大枠を決めて指示をするが、Hさんにも商品企画業者選定などの権限が与えられていた。

その仕事をやりたいと希望する職員は何十人といて、その中には数年後に昇進を控えたベテランが何人もいた。民間においては、こういう花形とされる事業や、大金が動く案件というのは――事業部長みたいなポジションの人が直接担当するか、または管理職に昇進する手前のエース社員担当することが多い。それを、大学生ほどの年齢の子担当している。

ほかのポジションだと、例えば市長秘書の1人は臨時職員だった。早い話がパートさんだ。30代後半で、圧倒的清潔感の子持ちママだった。実力登用の文化トップから滲み出ているところがK市の美点のひとつだと感じる。

当時の私は不思議に感じていた。なぜ、官公庁ではこんな人事ができるのだろうか。将来の利益を重視するのはわかるが、今の利益のことも考えないと――と想念した瞬間、私の脳裏ビビッ!と走るものがあった。

そうだ。新人公務員向けの研修で習っただろう。公務員利益を追求しなくていい。だから利益度外視で、十数年先のことを考えた配置や処遇ができる。Hさんは、すでに幹部候補としての育成が決まっていた。ならば、さっさと重要ポジションを任せられる限り任せていった方がいい。そういう判断だった。

もちろん、幹部の好みの問題でもある。当時、市長と市外の飲み屋に出かけた時、嬉しそうにHさんのことを話していたのを覚えている。なんでも、市長室でその花形事業の今後の商品展開に関する協議をしていた時、事業部長に連れられていたHさんが、副市長と侃侃諤諤の議論になった――そんな内容だったろうか。Hさんは議論になると熱くなるタイプだが、それが終わると途端にホンワカになるらしい。気さくな感じで、癒される話し方になって、市長が言うには、そのギャップがいいらしい。

その事業部長も確か、とあるイベント終わりの飲み会の時にHさんのことを誇らしげに話していた。当時、入庁1ヶ月目だったHさんの部署飲み会の席で、会の最中参加者にお酌をして回ったのはHさんだけだった、みたいな話だ。嬉しそうな表情で、自然にみんなに一人ずつお酌をして回って、先輩との交流を深めていたということだ。

若干18~19歳でそこまでできる子は、そうはいない。エース枠としてチャンスを与えられて当然だ。こんなことを書いていると、増田民の方々には『飲み会不要論』的な観点攻撃を受けてしまいそうだ。しかし、これはあなた視点に立ってみればわかりやすいのではないかあなた飲み会に参加していたとして、若い男の子女の子が、「仲良くしてください!」みたいな雰囲気でお酌や会話をあなたに求めてきたら、嬉しいと思わないだろうか。可愛い奴だなと思うだろう。そういうことだ。

私はHさんと話したことは2回しかないが、わかるような気はした。頭がいいだけではなく、物事に対して本気になれる。そういう子だった。

さて。Hさんは突然退職してしまった。冒頭に述べたとおり、花形事業関係する取引先(パートナー)に引き抜かれたからだ。晴天の霹靂だった。

Hさんが書いた退職理由書を読んだ。要約すると、「市役所ルール職場環境がつまらなく、物足りない」とのことだった。例えば、公用文では「問合せ」を「問い合わせ」と書いてはならない。しかし、動詞になると「問い合わせて」と書かねばならない。細かいことだが、間違えたら稟議のやり直しになる。そういった文書事務に関する文化が、HさんがK市を辞めた理由ひとつだった。

若い子であれば仕方がないとも思う。確かに公務員業界というのは地味だ。完全なる聞きかじりだが、『若手のうちは仕事の何が面白いのかわからない。それが公務員の難点だ』というのが、当時のHさんの退職理由を読んでの副市長の談だった。

まあ、過ぎたこはいい。もういいのだ。気にするだけ損というもの――Hさん個人の件に限っては。

だが、Hさんを引き抜いたクソコンサルは別だ。きっちりとリベンジしてやった。K市の入札に入れないよう指名停止(※)にしたうえで、県内他市すべてと、都内の右半分くらいの地方自治体と、県庁と、国の機関各所にもこの度の情報提供を行った。

罪状はもちろん、『取引先の従業員を引き抜いた』ことだ。許されることではない。民間企業同士でも、そんな足の引っ張り合いはまず行われない。それを、あのクソ非常識ITコンサルはやってのけたのだ。それなりの報いがあって当然だろう。

正式指名停止は今回の場合だとできない。条例規則や要綱に定めがないからだ。よって、入札参加・指名業者リストにその会社名前を残したままで、入札には呼ばないという意味での指名停止になる。

https://anond.hatelabo.jp/20211231220518

2021-10-31

anond:20071031030318

ときどき、花に水をやったり玄関掃除とかしていると

母が生きていたら、この花を見たら喜んでくれるだろうな

さな花を可愛いねって言ってくれるだろうなって思うと

ときどきだけど

すごくすごく哀しくなる、

置き配用のコンテナ腰かけ

父ならハモニカを吹くだろうか、

ルーフ屋根をつけたので、雨の日でもしょんぼりしないでいいのにって

ときどき、だけど思う。

シャワーで脚とかも洗ってあげたかった。

さみしいとかいうよりそんな事を

思いながら

水やりや家事をしています

2021-09-19

バイト日記

 以前よく来店していたお得意様(定期的に商品をケース単位で注文してくれた)が来店しない理由をAさんから聞いた。

 ある日、Dさんがお得意様のレジ対応をした際、お得意様がお釣りを忘れて帰りそうになった。それに気づいたDさんは、普通に「お忘れですよ!」と言えばいいものを、

「忘れるなら私が貰っちゃいますよ」

 と冗談のつもりで言ったらしい。お得意様は激怒、以来、一度も来店していないそうだ。なるほど、それはやばいな!

 今日はいい天気だったので混むかと思ったら、案外そうでもなかった。ただ、駐車場の縁石に腰かけ飲食している客は多かった。

2021-07-16

木屋町にあるキャバクラ黒服仕事をしていた その3

 この体験を経て、私はある理解を得た。「正しい戦略は、その時々の環境文脈空気によって異なる」ということだ。世の中にはいろんなルール常識、慣習があるけれども、それらをストレート適用すべき場合もあるし、必要ならばかなぐり捨てないといけないこともある。

 アブラハム・マズロー欲求の五段階ピラミッドの人)の『完全なる経営』にこんなことが書いてある。

‟彼らの心理学によると、最善の思考や最善の問題解決ができるかどうかは、問題を含んだ状況を、期待や予想、憶測などを交えることなく、この上なく客観的な態度――先入観や恐怖、願望、個人的な利害などを交えない、神のような態度――で見ることができるかどうかにかかっている。…(中略)…解決すべき問題とは目の前に存在する問題であって、経験によって頭の中に蓄えられた問題ではない。頭の中に蓄えられた問題は、昨日の問題であって今日問題ではなく、また、両者は必ずしも一致するものではない‟ p.129-130

さら範囲を広げれば、家庭生活、すなわち妻や夫や友人たちとの関係についても、この方法を当てはめることができる。各状況における最善の管理方法とは、各状況において最もよく機能する管理方法のことだ。どの方法が最善であるかを見きわめるためには、予断や宗教的な期待を排した、完全な客観性が求められる。現実的な知覚は現実的に行動するための必要条件であり、現実的な行動は望ましい結果を生むための必要条件なのだ。‟ p.132

 マズローは、物事ありのままに見つめて、現実的に考え、行動することが成功への鍵だと言っている――と私は解釈した。

 イケメン先輩は結局、条件付きの免職処分になった。黒服が嬢と付き合った場合の店への罰金50万円と、Tちゃん彼氏への慰謝料として50万円、計100万円を返済したら辞めるという処分だ。店長は、翌日のミーティングの席において、みんなの前でイケメン公言した。「約束を破ったら組に売る」と。店に対する裏切り行為は許さないという態度を明白にしたのだった。

 これと、上の引用文がどう関係あるのかというと……この後すぐ、私と同学年のアルバイトの子が、S店の備品を盗んでいたのが判明した(立命館大学に通っていたので、以下リッツとする)。定期的に、ヘネシーなどの高級酒(そのうち廃棄される飲みかけ。キッチンに置いてある)や、午後の紅茶炭酸水チーズその他をくすねていたらしい。その犯行を見つけたのは、皮肉にもイケメン先輩だった。

 そのリッツは、イケメン先輩の時と同じく、閉店後に一番奥の席につかされた。最初の数分は、あの時と一緒だった。坦々とした、もの静かな事情聴取だ。その近くにM主任が座っていたのも同じだ。

 違ったのは、私も主任と一緒に丸椅子腰かけいたことだ。リッツ普段の行動に関する参考意見を述べることになっていた。

 別にリッツは、良くも悪くもない、普通の奴だった。口数は少なかったけど、まあ真面目かなという印象だった。サボっている様子はないし、店の女の子に声をかけるなどの御法度もないし、当日遅刻や欠勤もなかった。

 でも、人間とはそういうものなのだ。裏で何をしているかからない。人間言葉ではなく行動で判断すべきという金言があるが、それでも不十分だ。どんな人間にも裏がある。

 10ちょっとが経過した。私の供述も上の通り述べていた。その間、盗んだ物の確認と弁償代の話をしていたように思う。お店で無くなったとわかっているもの時価8万円相当(私の個人的計算では3万円~4万円相当)とされて、ほかにも盗まれた物があると仮定して、倍額の16万円を1か月以内に弁償すれば警察被害届は出さないという内容で決着した。

 最後店長は言った。「リッツ君。今日最後の勤務日だ。もう来なくていい。けど、ほかのお店に情報共有とかしないから、働きたかったら別のキャバで働いてもいいよ。今回は残念だったけど、また成長したあなたの姿を見たい。それで、いつかまたお客さんとしてうちに来てくれたら嬉しい」という言葉でお開きになった。

 当時の私は、「おかしいのではないか!?」と思った。当時のS店の黒服に課せられる罰金額は、記憶の限りでは以下のとおりだ。

・当日遅刻 5,000円

・当日欠勤 10,000円

窃盗その他の犯罪 250,000円+被害

・嬢と交際した場合 500,000円

・店の売上に影響するトラブルを起こした場合 時価(これが上記慰謝料

 リッツ規定どおりの罰金を科されなかった。被害額のみだ。しかし、イケメン先輩は規定どおりの罰金のうえボコボコにされている。

 当時の私は腑に落ちなかった。後に推測したことだが、店長には以下のような思考順序があったのではないか

リッツを殴って、25万円+16万円を請求したうえで脅す(イケメンと同じ対応

リッツ立命館大学学生課もしくは先輩もしくは親に相談する

相談先が交渉の窓口になる

罰金は減殺される可能性が高い。警察通報されたら逮捕リスクあり。

 上記①~④が成り立つならば、リッツに対して甘い対応をするのが正しい。そう読んだのではないか

 店長は、自他の権益に対してストレートな人だった。取れるモノはきっちり取っていく。悪く言えばがめつくて、善く言えば組織のことを考えている。

 今回の件だと、警察被害届を出してもS店には一銭も入らないし、リッツ問題行動を起こしたことをほかの店に情報共有するメリットはないし、彼がほかの店で問題を起こしても当店には関係がないし、リッツが負い目を感じていれば社会人になってからS店でお金を使うかもしれない。

 ※社会人になった今では、このような考え方は極めて短期的かつ自己本位的なものだと感じる。木屋町風俗営業を行うすべての店の利益を考えれば、リッツ警察に突き出すべきだったし、他店にも情報を共有すべきだった。こうした当たり前のことができないほどに、風俗業界というのは生存が厳しい世界なのだ

 憶測だが、店長には過去に痛い経験があったのかもしれない。16万円でも十分に得をしているからそれで済ませる。そういうことだ。

 一方で、イケメン先輩は、いわゆる「身分がない」タイプ社会人だった。だからルールに則った対応を採る(暴力のうえ正規罰金を課す)のが正しかった。

 私は今、地元広島地方公務員をしている。この仕事は、公平とか中立とか平等が叫ばれる業界ではあるが、確かに市民企業を公平に扱わないことが正しいケースがあるのだ。例えば、地元を盛り上げる活動をする部署が大きいイベントを開催する折には、成功キーパーソン及びその所属団体に対して相応の便宜を図る。近年の例だと、「全国菓子大博覧会」や「広島てっぱんグランプリ」といったものだ。

 上記の「成功キーパーソン及びその所属団体」について、関係者を良好な立地に出店させたり、相応の額の契約を用意したり、行政組織要職に就けたりする(教育委員など)。

 一般市民企業不公平に扱いたいからやっているのではない。公平に扱うのが長期的には一番正しい戦略なのはわかっている。これは、組織目的を達成するために必要不可欠な過程であると上の人間下の人間も判断たからそうなっている。

 反対に、戸籍課や税務課や医療課などの住民対応を行う部署においては、「融通が利かない」などのクレームをどれだけ食らっても、ひらすらに法律や要領に従って仕事をやり続けるのが正しい戦略ということになる。特定の人をひいきしても自治体にとってのメリットは薄いし、逆に訴訟リスクがあるからだ。

 キャバクラでの仕事は正直キツかった。嫌なお客さんには絡まれるし、たまに一気飲みを要求されるし、人が殴られるのを見ることがあるし、ホールに立ちっぱなしで足の裏が痛いし、キッチンものすごく忙しいうえに鼠とゴキブリだらけだ。

 でも、勉強になった。夜の歓楽街での仕事が、今の地方公務員としての自分の糧になっている。あの時、求人情報誌を開いてよかったと今では思える。



大学回生

 この春から時給は1,800円になった。昇給の際、店長からは、「お前以上の時間給をもらっている大学生は木屋町にも祇園にもいない。お前を評価している。就職活動中もシフトに入ってくれ」と言われた。※多分これが目的で時給を上げたのだと思う。これまでと違い、昨年比で増えた仕事もないからだ。

 この辺りからシフトに入ることが少なくなった。これまでは、週に4日、たまに5日という具合だった。でも、公務員試験勉強もしないといけないので週に3日の勤務になっていた。

 時間はあっという間に過ぎていって、夏が終わる頃に内定を得た私は、「自由だあああぁぁ!」とばかり、夜の街で遊びまわるようになった。

 私には小さい名誉があった。木屋町先斗町のいろんなバーに行ったが、S店で黒服をしています、付け回しの仕事を任されていますと言うと、大抵の店員さんや夜の街の常連の顔つきが変わるのだ。「こいつはやばい奴だ」という顔をする人もいれば、軽蔑した視線を向ける人もいれば、逆にすり寄ってくる人もいた。

 バーにはよく行ったが、キャバクラにはほとんど行かなかった。S店で働いているとわかったら追い出されるリスクがあったからだ。それに、私はKFJ京都風俗情掲示板)のお水板において、当時木屋町で№1とされていたS店で何年も働いている。お客さんに「おごってやるから来いよ」と誘われて他店に行ったことはあるが、なかなか満足がいかなかった。S店の子接客されたことはないが、それでもわかる。歴然とした『差』があった。

 今思えば、承認欲求というやつが足りていなかったのだろう。シロクマさんの本で言うと、「認められたい」というやつだ。当時は、自分をスゴい奴なんだと思いたかった。実際はぜんぜんそうではなかったし、逆に、本当にスゴい奴ほど自分を大きく見せたがらない。

 そういう人は飽きているのだ。ちやほやされることに。褒められることに。子どもの頃から自分パフォーマンスの高さを周りに認められるのが当たり前だった。だから調子に乗ったり、偉ぶったりしない。それだけのことだ。

 11月になった頃だった。M主任退職することになった。時期は来年の3月。田舎に帰るらしい。

 トラブルを起こしたわけではない。円満退職だ。夜の業界で7年も働けば、体はボロボロになる。普通は3年もてばいい方だが、M主任はそこまで働いて、十分すぎるほどの結果を出していた。私は「今までありがとうございました」と、お店の終わりに2人だけになったところで伝えた。

 この時のM主任言葉脳裏に刻んであるし、忘れた時のために日記にも取っている。重ねて言うが、この記事でところどころの描写がやたらと詳細なのは大学生当時の日記ベースにしていることによる。

 以下、M主任言葉になる。

「おう。〇〇ちゃん、お前もな、元気でな。ええけ?(※方言が入っている。いいか?の意味)〇〇ちゃん仕事ができる奴になれよ。仕事ができんかったらな、人間は終わりやぞ。どこに行っても生きてかれんようになる。仕事だけはな、ちゃんとやって一流になれよ。お前もこの店で何人も見てきたんやないけ、どうしようもない根性なしの連中を。ええけ? お前は悪い奴じゃない。でもな、どっか気が抜けて、間抜けなところがある。そこが好きなんやけどな。とにかく、仕事ができるって言われるようになれ。俺からお前に言えるんはそれだけや」

 呑みに行きましょう、と誘うつもりだった。でも、誘えなかった。私の中で、M主任はそれだけ偉大な存在だった。神だった。神を呑みに誘うことはできないのだ。

 その翌日。営業時間中の夜10時くらいだったか店長ともう1人、灰色スーツを来た人が紙袋を携えてS店にやってきた。「ちょっと時間あるか」と、上の階にある事務所に連れて行かれ、その人から名刺を渡された。

 このS店の母体である芸能事務所の人だった。取締役ナントカ部長だった。ソファに座らされてからの話の内容は端的で、「私を社員として採用したい」という話だった。

 部長の話には説得力があった。説得力要諦とは、ロジックにあるのではない。本人が持つ、その考えや判断への自信や信仰、そして意見を伝える際の胆力や粘りの強さが、本人の口を通して迫力となり、相手に伝わることで説得力生まれる。

公務員はこれから厳しい時代になる。お金問題ではない。本質的意味で割に合わなくなる。

あなた就職する自治体初任給は16万円だ。うちは基本給だけで26万円出す。

・S店での働き次第では本社に来てもらう

日本芸能界を盛り上げる一員になってほしい。それだけの才がある。

・お客さんも仲間もあなたを支持している

 今思えば典型的リップトークだ。なぜかといえば、上の内容の半分以上は私をほかの人に置き換えても、ちょっと修正するだけで通用するからだ。

 でも、当時の私は大学生だった。この時すっかり、S店で働こうか、それとも地元公務員になろうか迷い始めていた。もし、これが公務員試験を志す前であれば、この会社で働いていたかもしれない。

 特に最後にやつ。あれにはやられた。部長ソファの脇に置いていた紙袋から手紙を取り出した。十枚ほどの。小封筒に入った、そのひとつひとつを私の前にゆっくり差し出すと、それが――すべて嬢から手紙であることがわかった。

「〇〇君。試しにひとつ開けてみて」

 ある嬢からの簡潔なメッセージが入っていた。「これからも〇〇さんと働きたい」「〇〇さんに店長になってほしい」「卒業してもいなくならないで」。こんな言葉が認められていた。

「もうわかるね。〇〇君はみんなに慕われている。社会あなたを認めている。こんな大学生、ほかにいないよ」

 部長はA4サイズの用紙をボールペンとともに手渡してきた。

 『雇用契約書』とあった。裏面には雇用条件的なものが書いてある。これを片手に取って私は、ボールペンを握りしめた。

 右上に日付を書いて、ずっと下の方にある住所欄に個人情報を書き始めようとする。ボールペンをあてどなく前後に振って、書くのを静止しようとする脳と、書くのをやめたがらない右手が小さいラリーを繰り返していた。

 私は思い切って、ボールペンを紙面に押し付けた。そして、インクが紙に付いた途端――心臓から流れ出た血が、冷たい何かとともに押し戻されて、再び心臓へと逆流するのを感じた。私の指先は動くのをやめた。

 その場で立ち上がって私は、「残りを読んでから決めます」と告げて、手紙を抱きかかえてS店に帰ろうとしていた。事務所の扉を開けて出る時、舌打ちのような音が響いた。

 手紙ほとんどはテンプレートだった。ひな形がきっとあって、嬢はそれらを真似ている。そういう罠だった。手紙はぜんぶで11枚あって、その中でテンプレでないのは3通だった。そのうちひとつを挙げると、ヘタクソな文章で、私のこれまで4年間の行動や仕草がつらつらと書いてあった。

 私に対するポジティブ言葉も、ネガティブ言葉もあったけど、この3通の手紙には共通していることがあった。「地元に帰っても頑張って」。そんな内容だったかな……? 初めに読んだ1通はTちゃんからだった。

 彼女ハーフで、日本語がそこまで上手くはないのだが、それでも一生懸命な筆跡だった。何度かミスって修正液で消した跡があった。Tちゃんらしくて、不器用だけど愛が籠った手紙だった。

 一昨日それを読み返した時、ふいに涙が零れた。

 あの部長姑息な手を見抜いてから一週間後、私は2月末でS店を辞める旨を店長に告げた。残念そうにしていたけど、これは当然の結果なのだ

 私は地元公務員として働く道を選んだし、芸能事務所だって私が本当に欲しかったわけではなく、おそらくはM主任の代わりとしてだった。もし本気ならば、大学4年生の春までには声をかけている。

 最後の勤務日は静かだった。普通職場だと、辞める人には花束贈呈とかがあるんだろうけど、S店にそういった慣習はない。ただ普通に、最後の客が帰って、照明の光度を上げて、ホールキッチンを片付け始めて、嬢がみんな帰って……。

 最後に、このS店に初めて来た時に見た、この分厚い扉を閉める際に、「お疲れ様です」と小さく呟いた。私は、夜が明けてほんのりと水色の空が見える河原町通りへと歩みを進めていった。

(次が最後です)

 https://anond.hatelabo.jp/20210716220545

木屋町にあるキャバクラ黒服仕事をしていた その2

 そこから先は思い出したくない。身分証を出して、「あなたがしたのはキャッチという犯罪行為で~」と路上警察官2名から懇々と説諭を受け続け、彼らが帰った後に、暗い顔をした店長とM主任が地下のお店から出てきて、「ちょっと来い」と事務所に呼ばれ……面接の時のソファに座った私と、左隣に主任がいて、店長は斜めの位置にあるパイプ椅子腰かけていた。

「すいませんでした」

 私は粛々と謝った。沈黙が続いた後だった。

 店長パイプ椅子ちょっとずらすようにして身を乗り出した。ガラス張りのテーブルの上にあった煙草ライターガチャガチャと手に取る音がする、と思った時だった。

「誠に申し訳ありませんでした!!」

 M主任が謝ったのだ。直後、「私の責任です」という小さな声が聴こえた。

 この時、私が店長から告げられたのは以下の内容だ。

あなた警察に払う罰金は50万円。S店とM主任で25万円ずつ肩代わりする

今日警察は帰ったが、運が悪ければあなた逮捕される

・もう二度としないように。次はクビにする

 といったものだった。

 優しい人達だった。私のような盆暗に対して、ここまで優しい嘘をついてくれたのだから。今ではわかる。あの時、警察は私とS店を指導するだけで済ませてくれたのだ。

 状況が違ったら、普通に逮捕されていたかもしれない。あの場で解放されて、しかも私が罰金の納付書をもらっていないということは、そういうことなのだ。

 M主任には頭が上がらない。もし、もう一度会うことがあったら何万円でもおごるし、「百万円貸してくれ」と言われたら迷ってしまうに違いない(貸さない)。

 なお、当時のキャッチ行為規制基準においては、路上の客に声をかけた後に何メートルも付いていったり、身体接触しない限りはセーフだったようだ。一部の悪質な店は、警官の目が届かないビル内で付きまといや身体接触などをしていた。



大学回生

 大学講義に出ながら、S店でのアルバイトキッチンホール、店の前に立つ案内係)に週4でシフトに入る生活を続けている間に2年が過ぎた。単位はけっこう落としていた。履修しても半分ちかくは落とすので、できるだけ多く登録するようにしていた。教職課程も取っていたため、割とぎりぎりで卒業した感がある。

 この年が転機だった。キャバクラ黒服仕事にのめり込んでいた私の時給は、この年の秋に一気に1,600円に上がった。理由シンプルで、『付け回し』というポジションを任されるようになったからだ。

 すでに私の先輩は、店長とM主任イケメンだけになっていた。後は、2人の社員と2人のアルバイトが私の後に続く。ここまでの間で、お店で働き始めたのは10人以上はいただろうか。みんな、あっという間に辞めていった。

 この業界は、はっきりいって申し訳ないのだが、中途半端人生を送り続けた挙句に流れ着いた人間が多い。負け癖がついている。だからすぐに諦めるし、ふてくされるし、誘惑に負けて嬢を口説いたり、物を盗んだりして――制裁を受ける(後述)。

 『付け回し』の仕事ざっと説明する。要すると、女の子をどの席につけるか決める人だ。スナックだとチーママがやっている。併せて、各席の料金状況をチェックする。フロア中央から客席を常に見渡して、嬢の配置をどうするか考え続ける。

 このポジションは、自分の成果を数字で把握するのが難しい。というのも、いわゆるABテストというやつができない一発勝負系の仕事なので、自分が決めた配置が果たしてしかったのかすぐにはわからない。

 でも、時間が経つとわかる。ちゃんとした人が付け回しをやると、ゆっくりと、じんわりではあるが、お客さんが増えていく。一見さんがまたお店に来てくれ、月に何度か来てくれるようになり、やがては常連になる。店長やM主任レベルだとそうなる。

 そのお客さんに嬢を付けた時の反応を1回1回ちゃんと見ていて、それに応じて次はどの嬢を付けようかを思案し、試行錯誤を繰り返し、やがてそのお客さんの嬢の好みを理解するようになるからだ。それだけではなく、お客さん同士の空気を察して、喧嘩が起きないようにする心遣いも忘れない。

 お酒が入っているうえにそういう気質の人が多いので、しょっちゅうとは言わないが喧嘩が起きる。例えば、当時のM主任は、カラオケでほかのお客が歌えないほどに曲を入れまくる人がいると――それとなくデンモク操作して曲が流れる順番を変えたり、嬢を利用して歌わせないように場をコントロールしていた。

 女の子の側でもそうだ。

 彼女らもプロだが、やはり年若いので、「嫌な客」「苦手な客」「うざい客」みたいなものがある。反対に好みの客もあるわけで、一流の付け回しをする人は、そのあたりの機微理解しながら客と嬢との最適な組み合わせをシナジーとして導き、実行に移せる。

 私はその域に達することはできなかった。私が付け回しを任される時というのは、店長主任がそのポジションを離れざるを得ない時だけだった。

 実際、私はあまりセンスがなかったと思う。お客さんに怒られてばかりだった。私が付け回しをしていた時の一見さんリピート率は2人の先輩に比べて低かったし、お客さん同士が喧嘩に発展する前に止められないこともあった。

 ある時などは、あるお客のグループ(今でいう半グレ風の人達)が、堅気な感じのお客を店内で突然ボコりはじめた。カラオケトラブルだった気がする。

 その半グレは堅気の若者のところへ行き、いきなり胸倉を掴んで殴りつけ、引き起こしガラス卓の上に叩きつけた。そして、足で何度も胸や腹を踏みつけた――近くにいた嬢が絶句して吐き気を催していた。別の気丈な子が肩をさすって慰めている。

 また別の大柄の男が、殴られた男を引きずり起こし、その頬に一撃を加えて地面に引き倒したところで私が止めに入った(判断が遅い!)のだが、ヒートアップしていた彼らを抑えるのがやっとだった。店長やM主任だったら、リアルファイトになっても目線対話だけで事を収めるし、そもそも喧嘩になることがまずない。

 結局、私が物理的な意味で間に入って無理やり止めた。もみ合って、もみ合って、「もうやめてください!」と半分キレながら叫んで、それでようやくなんとかなった。殴られた人は、もちろん料金なしで帰ってもらった……後で警察官が店に事情聴取に来ることもなかった。

 私には付け回しの才能がなかった。『一応できる』というだけの交代要員であり、それ以上でも以下でもなかった。嬢達は、私を憐れんでか、明らかにおかしい付け回しに対しても苦情を言ってこなかった。一部の子は、「あのお客さん私に飽きてたよ」とか、「なんで今代わらせたの。指名の話してたのに」とか、「あの子芸能人の卵だから楽なお客さんにばっかり付けてるの?」とか、ちゃん本音を伝えてくれた。

 でも、ほとんどの女の子特に20才以下の若い子や、逆に30代半ば以降の子)は、私を憐れんでか、苦情すら言ってくることがなかった。信頼されていなかったのだ。

 さて。そろそろ(後述)の話をやりたい。

 この年の秋だった。イケメン先輩が罪を冒したのは。私の価値観ターニングポイントになった体験でもある。

 お店の女の子しかも上位数人に入るほどの人気で、そのうえS店のお客さんと付き合っていた嬢(以下Tちゃんとする)と交際していたことが判明したのだ。

 なぜわかったかというと、怪しいと感じたそのお客さんがTちゃん携帯を盗み見たところ、イケメンとの睦言のやり取りが画面に映っていたということだ。噂だから真実かどうかはわからない。でも、浮気はバレてしまった。

 嬢との恋愛は大きな罪だ。キャバクラなどにとっての女の子というのは、大事商品なのだマクドナルドでいえばハンバーガーだ。店員ハンバーガーを盗んで食べたら処分されるだろう。そういうことだ。

 しかも、前回の記事で、S店というキャバクラ母体芸能事務所であることを述べた。Tちゃんはそこに所属している子だった。今でもたまに、テレビバラエティで見ることがある。その度に、「あんた成長しすぎやろ!」と唇を尖らせて食い入るように番組を見ている私がいる。

 この時の私や、私の後輩達は、このことが問題になったのをイマイチ信じることができなかった。というのも、イケメンとTちゃんとの間柄は、スタッフ内では公然の秘密だったからだ。お店が終わった後のミーティングでは、イケメンに対するTちゃんの態度が違った。なんというか、口喧嘩がこなれているというか、恋人同士が醸し出す雰囲気だった。

 勤務中もそういうことがあった。Tちゃんお酒に弱かった。カクテルならば、どんな嬢であってもリキュールを一滴か二滴しか入れない。でも、ボトルシャンパンとなるとそうはいかない。ごまかしが効かないのだ。特にシャンパンを卓の上で薄めるわけにはいかない。

 そんなこんなで、稀に、酔いつぶれたTちゃんが私のいるキッチンに入ってきて、ビア樽(ビールの詰め替え用のタンク)に腰かけることがあった。うわごとを呟いたり、ボウっとしたり、どこか一点を見つめるようにしたり、急にキレだして携帯電話ごみ箱シュートしてトイレに駆け込んだりしていた。

 ある時、Tちゃん携帯ごみ箱に叩き込んだ後、イラついた声を上げ、キッチンを飛び出そうとした時だった。ガンッ!という音とともに、キッチンの出口にある真四角の排水溝にはまり込んでしまった。ガンッ、というのは排水溝の鉄板が跳ねた音だ。

 イケメン先輩の動きは速かった。いつもであれば、廊下に立っている嬢が貧血で倒れたりしても、涼しい顔をして対処に入るのだが、Tちゃん排水溝にハマった時は違った。「すぐにキッチンのドア閉めて!お客さんに見える」と血相を変えて対応に入ったのだ。

 イケメンの声と同じタイミングで私は、キッチンのドアを閉めにかかっていた。酩酊状態で泣き出したTちゃんを救う(掬う)役目はイケメンに任せて、懐中電灯を点け、排水溝に落ちたTちゃん私物を拾い上げる。

 その際、イケメン先輩が、Tちゃんに「馬鹿。気いつけや」と優しく呟いたのを覚えている。京都弁だったのでうまく思い出せない。

 だからこそ、イケメン先輩が犯した罪をすぐには意識できなかった。

 ある日の営業終了後だった。暗かったホールの照明の光度が上がって、店の片付けが始まって、嬢がみんな帰って、皿洗いや店内清掃もみんな終わった頃に、「そこに座れ!」という声が響いた。店長がお店の入口からやってきて、片付けをしていたイケメン先輩を一番奥の席に座らせたのだ。傍らには主任もいた。

 私や、ほかの役職のない社員アルバイトは店を出ていこうとしたが、店長が「いいからそこにいろ」と言った。私は、扉を1枚隔てたキッチンにいた。声はよく聞こえなかった。扉の隙間から、奥の席で事情聴取を受けるイケメンの後ろ姿が見える。

 細々とした声で、Tちゃんと付き合っていた事実説明していたと思う。事情聴取は5分も経たないうちに終わった。というのも、「オメー何してんだよ!しかも客の女と付き合って。おい!ふざけんな」と、急に店長ヒートアップたかと思うと、ガラスの卓にあった灰皿を、イケメンの顔めがけて投げつけた。

 おそらく口周りに当たったのだろう、イケメンが顎のあたりに手をやった途端に店長は立ち上がり、イケメンの顔を殴打した。M主任が丸椅子から立ち上がって止めに入るも、店長に突き飛ばされて断念した。

 床のカーペットに仰向けに倒れたイケメンの上に跨り、店長が何度も何度も、その端正な顔に鉄拳をぶつけていた。イケメンは、「すいません、すいません!」と謝り続けていた。

 耳に入っていないかのごとく、何十発もイケメンを殴り続けた店長だった。ある瞬間に、ふと立ち上がって、イケメンの体をサッカーボールみたいに思いっきり蹴飛ばすと、「ボケが」と呟いて、私達のいるキッチンの横を通って近くの席に座り、どこかに電話をかけ始めた……。

 その後、イケメンが泣きはらしながら、血だらけの顔でホールをうろついていたのを覚えている。

(続きます

 https://anond.hatelabo.jp/20210716220544

木屋町にあるキャバクラ黒服仕事をしていた

この日記の内容はみだしのとおりだ。京都での学生生活の4年間をキャバクラでの黒服仕事に捧げた。

年末のこと。コロナのおかげでストレスが溜まる中、ふと京都が懐かしくなって一人旅に行った。学生時代と社会人約十年目では、さすがに景色に差があった。いろいろと感じるものがあったので、ちょっとしたためてみることにした。

広島田舎から京都に出たばかりの、当時18才だった私は大学生活に憧れを抱いていた。第一志望ではなかったが、行きたいと思っていた大学だった。

4月はあっという間に過ぎた。入学式オリエンテーションサークル勧誘学部学科での新入生歓迎会、初めての履修登録、初めての講義、初めてのゼミ活動

楽しくもあったし、不安もあったけど、5月になって、まだあることをしていないのに気が付いた。

アルバイトである大学生アルバイトをするものだと思っていた。それ以前に読んだ漫画アニメでは、大学生はみんなアルバイトをしていた。

早速、求人情報掲示板を見た。インターネットではない。学生課の前に貼ってある物理的なやつだ。すると、学内カフェがよさそうな気がしてきた。時給もいい(850円だった気がする)。

その日のうちに、お店に行って店員のおばさんに声をかけた。アルバイトがしたい、と。

何分間か話した後、「土曜日シフトはいます」と告げると、大歓迎な感じで、「今度オーナーも交えて面接しましょう」と言ってくれた。私の携帯電話の番号を伝えた。

その翌日だった。知らない番号から着信があった。携帯が鳴っている最中ガラケー通話ボタンを押す直前に着信が切れた。

もう一度かけなおすと、女性の人が電話に出た。どうも話がかみ合わない。「こちからはかけていません」とのこと。どうやら、大学全体の電話受付窓口に繋がっていたようだ。でも学内の誰かが、私に電話をかけている……。

増田処刑はすでにおわかりだろう。あのカフェからの着信だったのだ。私はそんなことにも気が付かなかった。

それから3日が経って、あのカフェに行って、面接の件がどうなったのか聞いたところ、「オーナーに、あなた電話に出ないと伝えたら、もう面接はいいって」という衝撃の答えが返ってきた。

私が阿呆だっただけだ。今でも、仕事でこういう感じのミスを冒すことがある。

ある日、京都御所の近くにあるコンビニ求人雑誌を持ち帰った。

パラパラと中を覗いてみる。飲食店小売店が多いようだ。ただ、どのお店も時給が低い。大学の近所にあるお店は、だいたい750円~800円だった。今思えば、こういう視点はやはり若いな、と思う。

大学生場合は、たとえ時給400円だろうと、釈迦に生きる人としてふさわしい常識言動知識を身に着けられる職場がいい。大学の同期で、一流どころの企業官公庁NPO法人就職した連中は、リクルート株式会社はてな高島屋アルバイトをしていた。

当時の私は、リクルートはてな高島屋も知らなかった。私の出身広島県の府中市だった。そんなオシャンな会社地元にはない。天満屋だったらあるのだけど。もし私が東京府中市出身だったら、リクルートはてな高島屋も知っていたのかもしれない。

さて、求人情報誌も終わりの方まで来た。すると、スナックキャバクラバーのページが出ていた。

あるお店の男性スタッフの時給のところを見ると、22時までが900円で、22時以降が1000円とあった。基本の労働時間20:30~5:30で、開店準備と片付けを除いた9時間に対して給与が支払われる。ツッコミどころが満載だが、こういう業界なのだ。今でもおそらくこんな感じだろう。

「でも、夜の店はちょっとなあ」と感じつつ、「失敗したとしても私はまだ若い。なんとかなる」とよくわからないポジティブも抱いていた。

あるページを捲ろうとして私は、ある求人に目が留まった。「木屋町で一番レベルが高い店です!」みたいなことが延々と書いてあった。自画自賛もいいところだ。※本当に一番レベルが高い店だった。

でも、「面白いな」と思った。しかも深夜時間帯の時給は1100円ときている。さっそく電話をかけて、簡単自己紹介をして年齢と大学名を言ったら、「ぜひ面接に!」ということになった。

5月の割と寒い夜、私は親からもらった原付に乗って、家から木屋町まで10分ほどの距離を慎重にゆっくりと駆けていった。

マクドナルド河原町三条店の近くにある、小ぢんまりとしたビルの地下1階にその店はあった。

当時の私はビルの前に立ち竦んでいた。田舎育ちの私は、ビルの下に降りていく階段を見たことはなかった。真下の方から数人の話し声が聴こえる。

おそるおそる階下に降りていくと、廊下が十メートルぐらい続いていて、奥には分厚い扉が開け放たれていた。表面に店の名前が書いてありそうな。近づいていくと、店の中から男女が笑い合う声が響いた。

扉の前には小さい丸椅子が設えてあって、2人のお客さんとイケメン黒服(ボーイ)が楽しそうに話をしていた。お客さんは、丸っこい小さいグラスに入ったお茶を飲んでいる。

ふと、ひとりの嬢が出てきた。黄色い、ひらひらとしたドレスだった。歩く度に、ドレスの裾がブゥンと上下していた気がする。顔つきは覚えていない。失礼ではあるが、「化粧濃いな」と感じたのは覚えている。外国人風の浅黒い肌の、ツンとした表情だった――人生で初めてキャバクラ嬢を見た瞬間だった。

さて、イケメンの人に「面接に来ました」と告げると、「ちょっと待ってね」と言われ、奥に引っ込むと……すぐに別の男性がヌッと出てきた。

体格が大きい、熊みたいだ。笑っている。当時の私には恐い人に思えた。実際には、恐ろしさと優しさが同居するタイプ……と見せかけて、普通にサイコパスだった。

店長と名乗るその人と、同じビルの2階にある事務室に入って、さっそく面接が始まった。私はソファに座らせてもらっていて、ガラス張りの机の上にペットボトル緑茶が置いてあった(はずだ)。店長は反対側のソファ腰かけた。

「飲んでよ」

ありがとうございます

店長とどんな話をしたかはあまり覚えていない。

思い出せる限りだと、こんな感じだった。

広島出身? 俺の叔父さんが広島なんだ」

「いい高校行ってたんだね」

「18才か。若いね~」

柔道強いんだ。2段だって

「いつから来れる? できれば明後日がいいな」

こんな感じだったと思う。当時は、落ちる可能性が高いと思っていた。ボーイの経験がないどころか、アルバイトしたこともなかったからだ。自分が盆暗な方だということもわかっていた。

ところで、キャバクラで4年も働いていたのだ。私のような類型(実務経験のない若い子)を採用する理由はわかる。

①単純な労働力として

多くのお店では、ホールキッチン仕事を8時間ぶっ続けでやらないといけない。開店の準備と片付けもある。休憩はあるが非常に短い。キッチンのビア樽に座って5分間など。なので、体力のある人がほしい。

②肉壁として

態度の悪いお客さんは必ずいる。特にお酒が入っていると、接客が気に入らないということで難癖をつけたり、声を荒げたり、脅迫してくることもある。

※稀に暴力団組員も来る。「暴力団お断り」のステッカーをどの飲み屋も貼っているだろう? あれは歓楽街では冗談一種だと当時は思っていた。この業界では、清濁を併せ呑み、判断が早く、臨機応変対応できる者が生き残る(と店長が言っていた)。

お客さんとトラブルになっても、年が若くてガタイのいい奴がいるのといないのとでは展開が違ってくることがある。たとえ殴られても、私みたいに若いのは自分が悪いと判断して、お店に治療費請求しないことが多い。

レアドロップ枠として

一例として、私と同じ同志社大学で、かつ同じ法学部法律学科の奴で、大学生活の4年間、ホストをしていた奴がいる。週に3日ほどの出勤で、大学回生になる頃には月に30万~40万ほどは稼いでいた。本人いわく、「いろいろあるので稼ぎ過ぎないように気を付けていた」とのこと。全く正しい行動だ。大学生の年齢でその判断ができる時点で、奴は普通ではなかった。2021年現在も、堅気ではない仕事大金を稼ぎ続けている。その彼は、KFJ京都俗情掲示板)のホスト板にもスレッドができるほどの猛者だった。つまり、年が若くても超スゴイ奴は一定数必ずいる。そういった人材を時給1000円前後で使えるチャンスに賭けているのだ。

私が採用された店というのは、実は特殊タイプだった。

当時の木屋町祇園にあったスナックラウンジキャバクラは、そのほとんどが個人もしくは社員10名以下の会社経営していた。

私が働いていたお店(以後S店とする)は、それなりの企業経営母体だった。モデル女優なんかを育てている芸能事務所が、副業としてキャバクラを出していたのだ。そこに所属している子が修業や小遣い稼ぎの意味で働きに出てくる。そういう構造のお店だった。もちろん普通の子もいる。

以下、私が働いていた4年間で記憶に残っていることを書き出してみようと思う。たぶん長文になる。



大学回生

 キッチンホール仕事をやっていた。時給は1,100円。キッチンが主で、社員の人が少ない時に限ってホールに出る。

 最初の頃は、強面のM主任に怒られてばかりだった。今思えば強面ではなかったし、体格も中肉中背だったが、当時若輩だった私には圧が強すぎた。

 キッチン仕事というのは、いうまでもなく優先順位がモノをいうわけで……おしぼりとつきだしの用意も、ドリンク作りも、フード作りも、皿やグラス洗いも……人生最初に覚えた仕事は、社会に出てから仕事の縮図だった。

・次の次くらいまで優先順位を決めながら動く

・途中で別の仕事に移らない

・雑多な仕事はまとめておいて後でやる

 こういった原則ひとつずつ身に着けていった。

 より精神的な意味での教えもあった。例えば、トレンチお盆)の持ち方について。S店での持ち方は、指を立てて、手のひらが触れないようにして胸の前で持つというものだった。

 当然、最初のうちはできない。いや、言われたとおりにできるのだが、どうしても、たまに手のひらでベッタリと持ってしまう。

 最初にそのミスをした時だった。「おい」というM主任の声が聞こえた。怒られると思って身構えていると、「新人が間違えた持ち方しとんぞ」と、上で述べたイケメンの人が叱られていた。確かに、私は最初トレンチの持ち方をイケメン先輩に教わった。

 でも、当時は「なんでイケメン先輩が怒られるんだろう。なぜ私じゃないんだろう」と素朴に考えていた。

 このS店では、そういう社会人として基本的なことを教わる機会が何度もあった。私は盆暗でノロタイプ人間だったから、ありがたい教えでも、耳から耳にスーッと抜けていったのがたくさんあったに違いない。日記もっと細かくつけておけばよかった。

 今でもM主任を思い出すことがある。厳しい人だったけど、まともに仕事をこなすことを誰よりも考えていた。私のことを考えてくれていたかはわからないけど、今でも確かに思い出すのだ。

 めちゃくちゃ厳しくて……でも、ふいに無邪気で優しい笑顔を見せてくれる。私はずっとM主任の後ろを追いかけていた。今、この場で感謝を述べさせてください。ありがとうございます



大学回生

 この年の春先から初夏にかけて、正社員と同じ仕事が増えていった。一例として、ホールを回る仕事が主になった。棚卸しもするようになった。時給が上がり1,200円になった。

 本来大学生アルバイトは、キッチンでフード作りや洗い物をするものだ。ホールに出ることもあるが、あくま代打的に割り振られる。原則社員キッチンアルバイトホールということはない。にもかかわらず、なぜ私がホール担当になったかというと……。

 私の社歴が、スタッフ内で真ん中あたりになってきたからだ。

 信じられないだろう。でも事実だ。私がS店に入った時、社員5人のアルバイト3人(私を含む)体制だった。1年目の梅雨時に社員がひとり免職処分能力不足だと思う)になって、また秋になった頃に社員1人が系列店に行って、3月の春休みの頃、ひとつ上の学生アルバイトが飛んだ。従業員が3人いなくなって、3人補充された結果こうなった。

 ホールを回る仕事について、思い出せる範囲優先順位が高い方から挙げていくと、①お客さん又は女の子(=キャスト。以下嬢とする)の監視、②オーダーの受取と実行(買い出しを含む。お客さんだと煙草女の子だとストッキング生理用品)、③嬢によくない行為をしているお客さんへの注意、④お客さんからのイジリや自慢話やお酌に付き合う、⑤灰皿やアイスペールの交換、⑥喧嘩を止める(リアルファイト含む)……といったところか。

 重労働だが、そこまでキツイということはない。一般的飲食店でもこれらに近いことをしているはずだ。最初は立っているだけでも辛かった。足が棒になってしまう。慣れてもやっぱり足の裏が痛い。

 思い出に残っているのは、やはりM主任だ。仕事ができる男性で、30代半ばで月給は45万円(残業代は基本給に含まれている)だった。客引きプロであり、街を歩く人でその気のなさそうなお客さんでも、1分も経たないうちにお店への興味を起こさせ、大体3分以内にお店に連れていく。何より損切が早い。この人はだめだと感じたらすぐにその場を去って、別の人に声をかける。

 その主任にこっぴどく怒られたことがある。

 真夏の夜だった。私に初めての仕事が割り振られた。いわゆる、キャバクラの店の前にいる人の役だった。客引きではなく、連絡役に近い。お店に用のある人、例えばリース関係業者だったり、面接希望の嬢だったり、店長の知り合いだったり……むろん、通りがかりのお客さんにサービス内容を聞かれることもある。

 さて、ある3人組のお客さんが店の前を通った時、S店に興味を示した。「お兄さん。どのセットがお勧め?」と聞かれた私は、しどろもどろになりながら、2万円(2h)と1万3千円(1.5h)と1万円(1h)の3つのコース説明した。金額うろ覚えだ。たぶん違う。

 3人組のリーダー格は、「う~ん」という表情になって、何点か質問をしてきた。うまく答えられなかったのは間違いない。最後は、私の方が心が折れてしまった。

 その場を立ち去る3人組を見送る私の後ろに、M主任がいた――縄跳びで打たれたような、痺れた痛みが私を襲った。主任回し蹴りが私のお尻にクリーンヒットし、地下に入る階段の手すりの辺りにもんどり打って転げた。頭を壁面にぶつけたのを覚えている。

 主任に何と言われたかはよく覚えていない。罵倒の数が多すぎたのだ。「お前!売る気ないやんけ!」だったら確実に言われている。「すいません」とだけ謝ると、「〇〇ちゃん。次はないぞ」と言ってお店に入っていった……。

 数分後、また別のお客さんが店の前を通った。私は、ここまでの人生で最大の過ちを犯した。私はM主任の真似をして、お客さん候補トークを始めた。

「こんばんは。これから何件目ですか」

「2件目」

「どこ行ってきたんです」

居酒屋

「どちらにいらしたんです」

和民

「次は女の子のいるお店にしましょう」

「この店は高いからいい」

「安くしときます

 こんなやり取りだった。話すうち、だんだん相手の気が乗ってきて、でもお金がないのも事実のようで、でもお店に入ってほしくて、M主任を見返したくて……去ろうとする相手の腕に触ってしまった。

はいそこやめて!」※確かこんな口上だった。早口警官だった。

 その場で2名の警察官サンドイッチにされた私は、しどろもどろに言い訳を始めた。やがて応援警察官が到着し、単独でお店の中に入っていった……。

(続きます

 https://anond.hatelabo.jp/20210716220543

追記

ところどころやたらと鮮明なのは、当時の日記を見返しながら書いているからだ。

2021-07-04

anond:20210704004328

オートキャンプってベンツ創業者兄弟名前がオートで、広告代理店に勤めていたんだよね

広告ベンツの車に腰掛けつつバーベキューするスタイルを売り出して、それがドイツアメリカで人気になったんだよね。

それが一時期「オート」って呼ばれてたんだけど、ぶっちゃけ車が煙臭くなるしすぐ廃れて

ただジープとかそういうのに腰かけて軍関係者食事することを「オート」ってスタイルで呼ばれるようになったのを

1980年代キャンプにもちこんで、カーキャンプの事をオートキャンプって呼ぶようになったのが始まりなんや

2021-06-22

anond:20210622020229

バカかい椅子に難しい顔で腰かけポーズ決めてるのが仕事

実務描写は家来に指示出してるとこくらい

2021-06-20

われ泣き濡れて蟹とたわむる2021

今日夕方、すげー元気なくて、まあいつもないんだが、しかし元気なさすぎるのもよくねえなと思い、気合を振り絞って、せめて明るいうちに買い物に行くことにした

チャリに乗ってスーパーに向かう途中、川の横を通るんだが、その川沿いがジョギングロードになってて、なんとなく今日はそこを少し歩きたい気分になった

チャリ止めて、あてもなくジョギングロードに入って、少しでも開放的なほうに行きたいと思って、海側の方角に歩いてたら、河原に降りる階段があった

河原っつっても、メチャメチャ草が生い茂ってるもんだからサンダルパンで出かけた俺にとっては、実質立ち入れないような場所

なので、黒ずんだコンクリート階段の途中に腰かけて、たまにはちょっと自然に触れてみようと思ったわけだ

しかし、草の背丈が高いので、川面全然見えなかった

ウグイスの鳴き声、生活排水が横の水路を伝って川に注ぎ込む音、そういうのを聞きながら、ただ草を眺めるということになった

しかし、草なんて見ててもつまんねーので、なんとなく横を見てみると、カニがいたんすよ

そんで、俺は弱っているんだ

別に何があるってわけでもない ただ純粋に、労働するのが嫌になってきたという話だ

休んでも休んだ気がしないし、気がついたら週末が終わっていて、何にも手がつけられてない そういう状況が心から嫌になってきて、もう、その辺に倒れて、そのまんま動かなくなってしまいたい そういう気分なわけだ

カニですよ

俺は弱っている 心は泣いていると言っていい

誰の歌か知らねえし、さらにいうと上の句も知らねえが、「われ泣き濡れてカニとたわむる」ってやつじゃないですか

もう、そういう、日々の小さな気づきみたいなのを楽しみってことにやっていくしかないってわけ

ただ実際、カニがいたのはうれしかったんだ

カニってそんなにその辺にゴロゴロいる感じではないと勝手に思ってるので、見かけるとレア感があって嬉しい

俺はひとつカニ観測スポットを手に入れたわけで、と同時に、いよいよ泣きたくなったら、本当に泣き濡れてカニとたわむることが可能にもなった

ひとつ進歩だと俺は思う

そうですよね

2021-05-31

anond:20210531180229

スタバに限らず、喫茶店って多くの場合

駅前やらオフィス街やらの土地代の高いエリアの街ナカで

快適な温度場所椅子腰かけて休憩する権利料みたいなもんだと思ってる。

オシャレな店にするには内装費用だってかかるし。

土地代、場所代、部屋代光熱費

あとはサービスをする人(店員に限らず仕入れやら店舗管理やらの人も含む)の人件費

家で同様の飲み物を作っても、家に帰らないと飲めない。

「此処で座って休憩する場所時間+飲み物」を買っているのだと思う。

知らんけど。

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