2024-06-16

大学夏休み

24時間テレビと連動して24時間セックスをしてみない?と彼女に打診したことがある。

彼女は首肯した。

俺たちは若くて、馬鹿で、高校ときは真面目過ぎた。

その時の青春を取り戻そうとするみたいに、俺たちは24時間セックスをすることにした。

若さの限り何でも可能な気がしていた。

学生特有の、モラトリウムという名の万能感だったのだと思う。

当日、俺たちは馬鹿みたいに食料を買い込んで俺のアパートに帰ってきた時には17時過ぎで、18時過ぎから始まる24時間テレビに合わせて風呂に入った。

二人で狭いシャワーを浴びて、8帖の狭いリビングにあるのはベッドとテレビぐらいなもので、俺たちは缶チューハイを飲みながらベッドに腰かけるとテレビをつけた。

24時間テレビがはじまり飲みかけの酒をテーブルに置くと、俺たちはベッドに寝転んだ。

テレビではタレントがガヤガヤと喧しく喋り、24時間テレビの開始が宣告させると俺は彼女愛撫し始める。

セックスは遅々として、それでいて朗々としていた。

ゆっくりと。ときにはげしく。24時間セックスということを念頭に置けば当然のことだった。

それでも熱が入ればすべてを忘れて没頭し、俺たちは獣のようにセックスした。

あの時は常に息遣いが聞こえた気がした。息切れのような、興奮するような、相手を探し求めるような。

俺たちは電気の点いたアパートの中、暗闇に居たのだと思う。

何をしても満たされない。こんなものかという落胆と絶望恋人幸せ極致で、セックス天国じゃなかったのか。

俺たちは休憩し、服も着ずに酒を飲み、空のチューハイを増やし、24時間テレビのくだらない企画爆笑した。

だんだんと夜が更けていき辺りに静けさが増していく。俺は座ったまま窓辺に目をやり、カーテン越しに広がる明かりは既に消えていた。

彼女はベッドに寝っ転がり俺は背中越しに彼女視線を感じていた。

振り返ると彼女と目が合った。頷く。もう一度しよう。そう訴えかけるように。

俺は最初の時のように彼女愛撫し、それからゆっくりセックスを始めた。

まるでメビウスの輪のような倒錯感。最初に戻りそれは最後でそしてそれには終わりがない。

気付けば彼女は寝息を立てていた。俺はテレビを見た。確かに3時24分だった。今でも明確に覚えている。

不思議と眠気はなかった。疲れているはずなのに。

俺は明かりを消し、暗がりの中でテレビをじっと見つめた。くだらないバラエティが始まり、彼らは楽しそうで、夜の存在なんか信じていないようだった。

俺は少し泣きそうになる。ベッドから出て冷蔵庫を開けてチューハイを取りだすとすぐに開け、一気に飲もうとしたところで喉に詰まり嗚咽した。

長い長い夜だった。

俺はベッドに戻るのが急に怖くなった。

女々しくもベッドの傍に座ると膝を抱え、酒を飲みながら泣いた。

どうしてあれほど感傷的だったのか。それを言葉に出来たのなら俺はセックスなんていらない。

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