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2023-07-28

anond:20230728122126

なんかいきなり中学っぽいなとは思った。

芝浜高校もっと自由っぽかったじゃん。水面下で教員生徒会駆け引きしてる描写はあったけど、

話の筋として牽強付会な感じは否めぬ。

まあただ全体として面白いし、リアル中高生とかが読んだら違う感じ方をするのだろう。

anond:20230728115623

そうか?

作中の描写はともかく、顔は滅茶苦茶整ってるけどな

2023-07-27

徹頭徹尾愚痴。一緒にCoCセッションを楽しんだ人たちのこと

結論は「人間色々いるよな」で帰結する。私ももれなくバカな部類。

それでも良ければ

以前一緒に遊んだシナリオが、10人以上のPLを必要とする大規模シナリオだった。

意見の擦り合わせ、ダイス事故、秘匿情報の扱いなど、CoCのしんどさは色々ある。そういうのを「いやいけんだろ」の100%甘すぎな読みで参加した。

誘ってくれた友人と一緒に遊びたい、この人のRP大好きだからいっぱいやりたい、この人なら私が少しポカしてもカバー入ってくれそう。そのたった一人の友人に甘え切った判断

実際、セッション自体は楽しかった。友人とのRPは超楽しめたし、他メンバーともいろいろやり合って、ボケとツッコミの緩急がいい感じの物語が出来上がった。

でもそれは終わって半年以上経った自分の「大人評価」。


セッション終わって、実際面倒くさいって思ったところを羅列する。

1. こっちが「SAN値削れてもいいからその情報が欲しい」って言っても「いやあなたSAN値いから言えない」と断られた。
2. シナリオ中に出てきた情報をまとめるシートを作った。書いてくれって頼んだら、まともに転記されてなかった。
3. 探索箇所を手分けして探索する際、チーム分けの提案をした。チーム決めに1時間もかかった。
4.全員に情報が行き渡ってないことを常にアピってたのに、全部握ってる奴が「わかんなぁい考えて」と推理放棄しかけていた。
5.乗馬狂信者ですって言ったら嫌われた。



さて、ここから重箱の隅を楊枝でほじくる作業

1. こっちが「SAN値削れてもいいからその情報が欲しい」って言っても「いやあなたSAN値いから言えない」と断られた。

元々このシナリオ、完全協力シナリオって概要に書くくらい「PL全員で協力しろよな」というシナリオ製作からの圧があるのよ。

それ念頭におかないとトゥルーいけないくらいには高難易度。まぁ私はそんなこと知らずに突っ込んだけど。

から、全員が常に知り得たことを共有し、時には各PLに配られた秘匿HOや、調査結果で入手した秘匿情報を適切に伝えていく必要がある。

欲しいと思った情報は「欲しい」って素直に伝えた。そしたらコレよ。日本語読める?

しかもその時のSAN、58。何怖がってんの?

素直に聞いた。「何をそんなに怖がっているんですか? そもそもまだSAN値50あるのに、何が基準なんですか?」

帰ってきた答えは「SAN値が60以上の人に伝える」

馬鹿か。私が言い出さないとクラウド環境に共有シート置きもしなかったナァナァな野郎たちが。

うその時点でどうでも良くなったから「じゃあ私今から推理放棄するんで頑張ってくださいね」と返した。当たり前だよな、こんなん工藤新一だって推理放棄するっつーの。

正気? このシナリオ推理がメインのシナリオなんですがそこのところ考えてます? 私たちの記念すべき初セッションでそんなことする??

私に推理放棄させるってそれ楽しみを40%くらい奪ってる行為ですけど? 私、自分が人数合わせのために呼ばれた人員だって知っているんですよ。もういらねぇじゃん、この部外者

後々気づいた。こいつと私の日本語には乖離があるっぽい。

話しているのは流ちょうな日本語だけど、隙あらば自分語りする、視野の狭い人間。だから気づいたらつまんない話延々続けてるかまってちゃん

そして後々知った。以前にもセッション内で得た情報を沢山抱えて居なくなったことがあるらしい。

決めつけるのはあまり良くないけど、何かしらの特性があるんじゃないかとは思ってる。というかそうであってほしい。でないと救われないでしょ。

後で出てくるからの子のこと「カマッテチャン」って名前つけるね。



2. シナリオ中に出てきた情報をまとめるシートを作った。書いてくれって頼んだら、まともに転記されてなかった。

これも今更知ったんだけど、世の中には

 「天井に近いところに、貴方が連れているその鳥が苦手な香りがあるらしい。証拠に、鳥は貴方の肩ではなく足元に止まっている」

文章

 「肩が苦手」

と書く人がいるらしい。さっきのカマッテチャンもその一人だった。

総勢3名、5時間くらいで終わるシナリオならいいよ。

こちとら10名以上が集まって、4日以上かけてんのよ。いちいちRP文章遡れって? 正味無理。何故ならRPが盛ん過ぎて常にボケとツッコミが飛び交ってたから。

からまとめてくれっていったの。そのRP面白さは集まったメンバー武器だった。でも面白さが時にノイズになることもある。故に「出てきた情報逐次まとめろ」って言った。なんならKP陣営もその意見に賛成して適宜案内してくれてた。

だが出来なかった。KPから出てきた描写を丸々貼り付けてる奴の方がよっぽど可愛く見えた。

だって「肩が苦手」って、もう100%嘘じゃん。事実ではないじゃん。どこで躓いたミスリードなんだよ。平地で転んでんじゃねぇよ。

ここで私の悪いところは、相手に直させればよかったんだよね。仕事なら多分そうしていた。出てきた成果物が嘘だらけだったら突っ返してたよ。

うそれすら面倒くさかった。確保してるセッション日はお尻決まってるし、カマッテチャン含めてPLの中に卓修羅を誇るやつがいたし。ということはつまり、ここで私が時間を上げても、相手自由時間がないから私にとっての対価が得られない可能性がある。

でも目指すならトゥルー行きたかった。だから私が全部やった。1日のセッションが終わった後、全ての描写確認して共有シートに転記した。1.で言ったように、私には知らない情報があるのにも関わらず私が全部まとめていた。

ココフォの秘匿チャットも覗きに行けたら良かったんだけどな。流石にそこまではできない。

勿論途中でおかしいって気づいたよ。なんで私は10人以上人間が集まってるのに、ここでサビ残してんだろ。

でも、「私がトゥルーに行きたい」と「全員がトゥルーエンドにたどり着きたい」はイコールじゃない。「私がトゥルーに行きたい」なら、私がやるしかない。そういうケツの拭い方を私がするから、カマッテチャンとか、まともに描写転記すらできなかった奴に使いつぶされる。

世界ってマジでクソ。息がし辛いわ。

3. 探索箇所を手分けして探索する際、チーム分けの提案をした。チーム決めに1時間もかかった。

優しい人の良くないところ全部出た。

全部拾おうとする。心が優しい人ほど、捨て置けるもの選択ができない。提案却下されたときの痛みを知っているから。

集まったメンバーの大半もそうだった。だから私はもうごり押しした。

 「じゃあ『ここ行きたい』って言ってる人を一旦仮置きさせましょう。一人ずつ確認しまから、教えてください」

あくまで「仮置き」。でも日本語読めない子がいるの。だから必ず上がる。

 「でも勝手に決めるのはよくないし……」

黙ってろガキ。

時計見てみろよ。お前たちに任せたら1時間経ってんだよ。

最初のターン、探索技能持ちで分けようとした。1時間

次のターン、行きたいところがある人を優先しようとした。でも探索技能持ちの条件が引っ掛かった。1時間

次のターン、また行きたいところがある人を優先しようとした。でも探索技能持ちの条件が引っ掛かった。1時間

これを延々続けんの。しんどい。15分で決められるよこんなもん。

で、こっちが「仮置き法(今適当に名付けた)」を提案したら「でも勝手に決めるのは良くないし」で否定する。もちろん改善案は上がらない。

から頭に来てごり押した。技能なんてどうでもいいんだよ、常に1出し続ければこっちの勝ちだろうが。

まり技能を優先しすぎて「PLやPCがやりたかたこと」がつぶれる方がダメ


お前ら考えたことある? 「これやりたい!」って明確にビジョンがあって、それを実行するために考えて考えて、超ワクワクしていたのに

 「でもこっちの手が足りないか我慢して手伝って」

を繰り返される人の気持ち

まずお前らがやれよ、そのあと手伝ってやるから。なんで先にお前たちの我を通さなきゃいけないの?

〈鍵開け〉が要る? ぶち壊せよその両手でさ。テメェらの腕は飾りか? 壊すことも試さず臆してんじゃねぇ。

こういう押し問答で私のメンタルゲージをじわじわ削ってきた。

百歩譲って提案断るのは良い。改善案出せないなら黙ってろ。

まずやらせろ。それがダメなら次を考える。当たり前のトライアンドエラー。何故それができない?

4.全員に情報が行き渡ってないことを常にアピってたのに、全部握ってる奴が「わかんなぁい考えて」と推理放棄しかけていた。

これね。まぁ別にいいけど。全員ロストするだけだし。

救いだったのが、誘ってくれた友人が推理上手で、見事的中させていたこと。あの子いなかったら私が全部を終わらせていた。

何故か? いつまでもいつまでも結論を出さずうだうだ言い続けるお前たちの話にうんざりしていたからだよ。

情報ほとんどを握っていたのは約半数。最終的に2人だった気がする。

私は握っていない側。但し共通項目は知っているから、推理ニアミスまでなら届いた。


ただ問題があって、私そこまで神話生物に明るくないんだよね。

からクトゥグアに繋がる確定の証拠を出されてもわからない。何なら、確定で答えを導けるはずのところで私は別方法推理する。

しかも今回、シナリオ内に神話生物の詳細説明特になかった。唯一あったっぽいけど、それは秘匿情報。正直神話生物出てきたとき「お前ダレ!?」だったわ。名前だけ聞いても良く分からんし。

そんなPLが混ざった状態さらに秘匿のオンパレードなら、もう諦めたくもなるわ。気持ちだけはわかるよ。

でもさ、私が「知りたい」って言ったことに対して拒否をしたくせに、どうしてお前たちも放棄の道を選ぼうとしてんの?

私を踏み台にしたお前たちが選んでいい選択肢ではないんだよ? 何を馬鹿なことを言ってるわけ?

SAN値減少も最大1d6程度の、ちょーっと一時的狂気が見えるくらいの奴。

お前らの勝手配慮思考放棄につながってんの。わかるか?


とつらつら書いたけど、ここは正直私も悪いところがあった。

ラストラスト戦闘シーン。

私、戦闘始まる前から「2ターン目まで私がデバフ張る、3ターン目に殴る」って宣言してたの。ずっとよ。

そんで始まる戦闘。大半が探索キャラ全然ダメージ出せない。しかラスボスを本当に殺していいのかずっと悩んでる。

から言った。

 「そんなにラスボスHPに怯えてるんならHP観察できるようにしたら?」

答えはこう。

 「それは違う気がする」

もうずっっっっっっっとこう。このふんわりとした意味の分からない拒否

しかもこの時さらにウケたのが、どうやら副KP? が私のこと嫌いだったみたいで、それとなく拒否してきた。

 「えぇ~……? ずるくない?」

から、その当時の私に奴らの話を聞いてあげる耳はなかったの。

その判断の遅さに心底呆れていた。早く終わらせたかった。

だってあと少しで死ぬか生きるかわかるんだよ? 超盛り上がってるところでしょ、今。

私、最終章付近でだれる漫画嫌いなんだよね。最終章こそ面白トップスピードで突き抜けていくもんだと思ってる。自分たちの物語の終わりがトゥルーノーマルかバッドか。選んだものに悔いはないけど結果は早く知りたいんだよ。さっさとページめくりたいの。


というか、ずるいって思うんなら、1ターンの戦闘行動に15分も悩んで時間使いつぶすPLたちに言ってくれませんかね。

そっちの方がずるいわ。人の時間奪ってよくもまぁ。

つーか雑談だんだん言うことなくなって白けてんの。ちょっとタブの位置変えれば見えんだろ。見ろ。

 「ねぇねぇ殴っていいと思う? ねぇ私どうしたらいい?」

知らねぇよ。私のキャラがお前のこと殴ろうか? そしたら敵味方はっきりするねぇ。


5.乗馬狂信者ですって言ったら嫌われた。

ごめん。

私が悪いわ。ごめんね。

でも好きなんだ。許して。

あとカマッテチャンよりセッションメンバーに貢献してると思うよ。功績で考えたら全然ましだと思う。

それから狂信者が嫌いならKPしない方がいいよ。

向いてないよオマエ。



ここまで読んでくれた物好きがいるかもしれない。ありがとう

書いて分かったわ。誰かに聞いてもらえるってすごくすっきりする。だからカウンセラーって無くならない職業なんだね。あれはとても大切な仕事だわ。

何だかんだ言って、実は今も細々と交流があるの。カマッテチャン含めね。

たまーにそのグループ内でセッション募集立つから、私もふらっと参加してる。もちろん、大好きな友人目当てでさ。

今後悔してる。蕁麻疹止まんない。薬飲んでてもずーっと体痒い。あいつらのこと考えなくなったら少しマシになる。

嫌いなメンツも3割程度なのよ。残り7割はマシ、というか随分といい人ばっかり。だから余計嫌いが捗る。今の私はカマッテチャンが口を開くだけでキレるよ。人間そこまで言ったらもう終わり。離れた方がいい。

わかってんのに、残り7割がいい人だから離れられない。もしかしてこれってDV男にしがみつく女の思考回路?

嫌だね。わかってんのにできないの。

結局、人間色々いるよな。その大半はバカばっかりでさ。愚かだって笑って。何も笑顔にできない文章なっちゃったけど、ここまで読んでくれた人が今日幸せに生きたなら、私もちょっと嬉しくなるわ。

オチのない話でゴメンね。

anond:20230727105647

子持ちの同人女の方がそういうのやりたがる

自分育児作品に取り入れてよりリアル描写に拘ったりする

anond:20230727093239

grdgsさん温泉娘を性加害コンテンツといいながらパラレルパラダイスみたいな性暴力描写全開の漫画読んでたり

grdgs パラレルパラダイスでは甘いとかの記載はあったかなどうだろう。近所のバーに置いてあるし、そろそろ飲んでみよう

https://b.hatena.ne.jp/entry/4693938111197077570/comment/grdgs


ネトウヨ大嫌いなのにGATEみたいなネトウヨの夢を凝縮したなろう読んでたり

grdgs GATE範疇なら戦国自衛隊もいいか

https://b.hatena.ne.jp/entry/4678536086952638338/comment/grdgs


わりと生態が謎だよね(´・ω・`)

mobile_neko よくわからん温泉娘やら屋外掲示物での女性描写問題言及するのと、パラレルパラダイスやサタノファニみたいなお上漫画を楽しむことは矛盾しないのでは?いったい何が疑問なんだ?


grdgs 一部のゲイ有害な男らしさマッチョ文化を引きずっているからな。これはゲイ文化というより男社会が男への性加害を許容してきたから / 女同士では、アニメ漫画でよくある乳揉みや温泉での乳品評会もやめるべきだね

https://b.hatena.ne.jp/entry/4739060826880163749/comment/grdgs

grdgs 漫画など各種表現差別表現などが許されなくなったように、年々ポリコレが浸透しているのが現実思考が腐るとその現実を認められない。

https://b.hatena.ne.jp/entry/4726411081041432867/comment/grdgs


でもgrdgsさんは屋外掲示物以外の漫画でも性加害表現はやめるべきという立場みたいだよ(´・ω・`)

grdgs AVを真似する馬鹿結構いるってのはよく知られた話

https://b.hatena.ne.jp/entry/4690226779790985954/comment/grdgs

grdgs 漫画アニメで覗きが気軽に扱われてきたからだね。フィクションが罪悪感を薄れさせ、加害者自身破滅に導いた例。

https://b.hatena.ne.jp/entry/4738643098678435109/comment/grdgs


フィクション性犯罪を引き起こすとも考えてるみたいだしパラレルパラダイスを読んだgrdgsさん

女性快楽漬けにすれば支配できると星島貴徳のようなことを考えないか心配(´・ω・`)

よねぽオタが非オタ彼女米澤穂信作品を軽く紹介するための10

まあ、どのくらいの数のよねぽオタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、

「オタではまったくないんだが、しか自分のオタ趣味肯定的に黙認してくれて、その上で全く知らないミステリ世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」

ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、よねぽのことを紹介するために読ませるべき10作を選んでみたいのだけれど。

(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女ミステリ布教するのではなく相互コミュニケーション入口として)

あくまで「入口」なので、情緒に過大な負担を伴う短編集は避けたい。

できれば長編シリーズものでも最初の方にとどめたい。

あと、いくらよねぽ的に基礎といっても雑誌しか読めないものは避けたい。

よねぽの歴史小説好きが「安寿と厨子王ファーストツアー」は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ、と思う。

そういう感じ。

彼女の設定は

ミステリ知識はいわゆる『名探偵コナン』的なものを除けば、古畑任三郎程度は見ている

サブカル度も低いが、頭はけっこう良い

という条件で。

まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。

氷菓角川文庫)【2001年、〈古典部シリーズ第1作】

まあ、いきなりここかよとも思うけれど、「よねぽ以前」を濃縮しきっていて、「よねぽ以後」を決定づけたという点では外せないんだよなあ。長さも200ページちょいだし。

ただ、ここでオタトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。

この情報過多な作品について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃すぎず、それでいて必要最小限の情報彼女に伝えられるかということは、オタ側の「真のコミュニケーション能力」試験としてはいタスクだろうと思う。

インシテミル文春文庫)【2007年、非シリーズ】、王とサーカス創元推理文庫)【2015年、〈ベルーフシリーズ第1作】

アレって典型的な「オタクが考える映像化がうまくいきそうな推理小説(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際はインシテミルは一度も映像化されてない)」そのものという意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには一番よさそうな素材なんじゃないのかな。

「よねぽオタとしてはこの二つは“謎解き”としていいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。

折れた竜骨創元推理文庫)【2010年、非シリーズ

ある種のSFミステリオタが持ってるファンタジィとミステリの両立への憧憬と、中世ヨーロッパについてみっちり調べたオタ的な考証へのこだわりを彼女に紹介するという意味はいいなと思うのと、それに加えていかにも漫画映えしそうな

の二人をはじめとして、オタ好きのするキャラ世界にちりばめているのが、紹介してみたい理由

犬はどこだ(創元推理文庫)【2005年、〈S&R〉シリーズ第1作】

たぶんこれを読んだ彼女は「フィリップ・マーロウだよね」と言ってくれるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。

このシリーズ作品がその後続いていないこと、これがミステリ読みのあいだでは大人気になったこと、アメリカなら実写映画になって、それが日本に輸入されてもおかしくはなさそうなのに、日本国内でこういうのがつくられないこと、なんかを非オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。

栞と噓の季節(集英社)【2022年、〈図書委員シリーズ第2作】

「やっぱり学園ミステリ少年少女のためのものだよね」という話になったときに、そこで選ぶのは『秋期限定栗きんとん事件』でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この作品にかけるよねぽの思いが好きだから

断腸の思いで削りに削ってそれでも368ページ、っていう尺が、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、その「捨てる」ということへの諦めきれなさがいかにもオタ的だなあと思えてしまうから

図書委員シリーズの長さを俺自身冗長とは思わないし、もう削れないだろうとは思うけれど、一方でこれが相沢沙呼似鳥鶏だったらきっちり300ページにしてしまうだろうとも思う。

なのに、各所に頭下げて迷惑かけて368ページを作ってしまう、というあたり、どうしても「自分物語を形作ってきたものが捨てられないオタク」としては、たとえよねぽがそういうキャラでなかったとしても、親近感を禁じ得ない。作品自体の高評価と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。

さよなら妖精創元推理文庫)【2004年、〈ベルーフシリーズの前日譚】

今の若年層でユーゴスラヴィアたことのある人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。

折れた竜骨よりも前の段階で、よねぽの哲学とかヨーロッパ描写とかはこの作品で頂点に達していたとも言えて、こういうクオリティ作品ソフトカバー単行本でこの時代に出ていたんだよ、というのは、別に自身がなんらそこに貢献してなくとも、なんとなくミステリ好きとしては不思議に誇らしいし、いわゆるジブリ劇場アニメしかユーゴスラヴィアを知らない彼女には見せてあげたいなと思う。

クドリャフカの順番角川文庫)【2005年、〈古典部シリーズ第3作】

よねぽの「目」あるいは「伏線張り」をオタとして教えたい、というお節介焼きから読ませる、ということではなくて。

「終わらない学校祭を毎日生きる」的な感覚がオタには共通してあるのかなということを感じていて、だからこそアニメ版『涼宮ハルヒの憂鬱』で一番印象的なシーンはハルヒ学園祭で歌う「God knows...」以外ではあり得なかったとも思う。

「祝祭化した日常を生きる」というオタの感覚今日さらに強まっているとするなら、その「オタクの気分」の源は学園祭での謎解きにあったんじゃないか、という、そんな理屈はかけらも口にせずに、単純に楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。

ボトルネック新潮文庫)【2006年、非シリーズ

これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。

こういうジュベナイル小説風味の青春をこういうかたちでオススメして、それが非オタに受け入れられるか「二度と勧めてこなくて構いません」という反応を誘発するか、というのを見てみたい。

黒牢城(KADOKAWA)【2021年、非シリーズ

9本まではあっさり決まったんだけど10本目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的に直木賞受賞作を選んだ。

角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞から始まって直木三十五賞で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、日本の歴史をガッツリ舞台にする作風の先駆けとなった作品でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。

というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10本目はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。

「駄目だこの増田は。俺がちゃんとしたリストを作ってやる」というのは大歓迎。

こういう試みそのものに関する意見も聞けたら嬉しい。

蛇足

大元anond:20080721222220

今回の話題元:anond:20230725231257

インスパイア元:anond:20230726161801

id:lady_jokerさんの書いた増田を見て急によねぽ語りをしたくなったので書いた。今は反省していない。

おもしろミステリ」を読みたい増田はこれを参考に米澤穂信を読むか有栖川有栖の江神シリーズを読んでくれ。

追記

小市民シリーズがないのはツッコまれるかな、と思ってたけど(どれ入れるかは迷うところだけど、やっぱ仮に入れるとしたら『秋期限定栗きんとん事件』かな? でも『夏期限定トロピカルパフェ事件』もいいんだよなぁ〜〜〜……)、予想以上に『儚い羊たちの祝宴』がブコメ言及されててビックリした。いや、たしかに良い短編集ではあるけど、そんな高評価するか? 短編から1冊選ぶならどう考えても『儚い羊たちの祝宴』じゃなくて『満願』だろJK……

2023-07-26

発達障害自閉症メンヘラ認知度があがったと同時に人格破綻者には何でも「発達障害?」ってコメントつくようになったよなあ

漫画ネグレクトをしていた母親描写に「発達障害知的障害だ」ってコメントがあってそしてそれに大量のいいねがつく

干渉毒親描写に「統合失調症」って診断名つけてる人もいたりな(こっちもいいねがつく)

嫌悪感を持つ登場人物は全部障害持ち、病気持ち認定って当事者に物凄い失礼だと思うんだけど何で漫画コメント欄をつけるようになったんだろうな

ニュースコメント欄なら返信で異論が出ていたりするけど漫画コメント欄って承認欲求の塊の0:00コメントいいねを攫うから、ただの差別意識丸出しコメントが上の方にバーンと乗ってるんだよなー

オッペンハイマー』を見た感想

当方ヨーロッパ某国にいるので、先日クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を視聴することができた。

同日公開だった方向性の全く違う『バービー』との造語ミームになるなど、英語圏を中心に話題になっているが、『オッペンハイマー』は原爆開発のマンハッタン計画を指揮した物理学者の伝記映画であるため、日本での公開は未定であるという(しか8月が近いこの時期なので)。

本稿では、映画を観て思った感想を徒然に書いてみたい。

ネタバレ等は気にしないで書くので、情報を入れないで視聴したい向きは注意されたい。

複雑な映画である

この映画では、3つの時間が並列で進む。

戦中の原爆開発まで、戦後赤狩りによるオッペンハイマーの失脚、さらにその後のストラウス(オッペンハイマーへの個人的因縁から裏で糸を引いた人物)の議会公聴会だ。

人間関係は多層的で、時間経過とともに関係も変質する。

また、最初マンハッタン計画までを除けば、基本的法廷である

当方英語リスニングに慣れているとは思うが、聞き逃した事柄もあった。日本語字幕で見ればこの苦労は少なかったかもしれない。

さらに3時間と長い。劇場結構混んでいたが、途中で携帯を見たり同伴者と話したりするガキ共もいた。

原爆の扱いを巡って

映画的なクライマックスは、一応ロスアラモスでの原爆の爆発実験に置かれており、中盤に訪れる。

これによってオッペンハイマープロメテウスとなり、世界に滅亡をもたらす「死」となる。

オッペンハイマーはこの後苦悩し、戦後水爆開発に反対し、それが戦後公職追放の憂き目を見る仇となる。

日本人として気になる広島長崎描写は、直接行うことは避けられている。

しかし、罪の意識に苛まれ主人公が投下後にロスアラモスの職員を前に演説する際、喜びを口にしドイツに落としてやりたかった(オッペンハイマーユダヤ人)と盛り上げながらも、皮膚がポロポロと崩れ落ちる幻影を見せる(これは『はだしのゲン』での描写が思わず想起された)、職員向けの広島視察報告会で残虐な写真想像させるリアクションを演じさせる、という程度は行っている。

また、アメリカ軍原爆投下地を選定する際、

などと軽い調子で話し合う場面は生々しい。

僕は被爆出身ではないし、広島高校修学旅行で一度訪れた程度なのだが、上述の演説中のフラッシュバックの場面では、被爆者が受けた残酷な苦悩を思い、思わず涙がこぼれた。

これはアメリカ人が憎いとかどうのという話ではなく、(戦後も含めた)歴史という大きな対象個人との対比に心が動いたという話と言えようか。

あとちょっと思ったのは、爆発前のカウントダウンAVJOIみたいな効果がある。

個人的営為の究極であるAV鑑賞と、大衆娯楽にする装置であった映画館での映画観賞との接続は興味深い。

アメリカ合衆国暴力映画

アメリカ合衆国原罪のようなものも、映画に盛り込まれている。

まず、ロスアラモ研究所を作った砂漠原住民土地であり、オッペンハイマー自身戦後インディアンに返せと言う台詞がある。

原住民から取り上げて作った研究員居住空間は、まるで西部劇舞台である

ガランとした土埃舞う道、左右に並ぶ木製の建物

妻がシーツを取り込む場面はフォードにありそうだし、ロスアラモスに引っ越してきたオッペンハイマーの妻はサルーンがあれば完璧ねと言う台詞もある。

事程左様に西部劇的な舞台が用意されるが、アメリカ合衆国西部劇で描いてきた神話や、その自警的な暴力性と法による支配との相克は、これまで様々な映画で繰り返し取り上げられてきた主題である

この映画でも、原爆を無事作り終えて職員に肩車されるオッペンハイマーの背景には、星条旗がはためく。

アメリカ合衆国原理的に持つ暴力性を描いているのだろう。

科学者戦争協力

自明テーマであるが、見逃すことはできない。

オッペンハイマーナチズムへの反発からアメリカ軍原爆開発をリードする役目を引き受けた。

科学政治関係というテーマは、コロナ禍での専門知の活用学術アカデミー問題、そして2011年原発事故など、日本でも問題になってきた。

現代的でアクチュアルテーマを扱う映画である

共産主義科学資本主義

この映画テーマはもちろん原爆というプロメテウスの火である現代的なテーマである

しかし今一度思い返してみると、科学共産主義資本主義関係にも踏み込まれているのではないかと思う。

科学の進展と共産主義は切っても切れない関係にある。ソ連科学推し進め、オッペンハイマーマルクス主義科学的社会主義)に興味を持つなど、科学者共産主義楽園が訪れるのではないかと期待した。

しか共産党による独裁となったソ連崩壊し、その混乱を収めたプーチンウクライナに核の脅しをかけている。

では資本主義勝利かと言えば、その限界が指摘されて久しい。アメリカ合衆国共産主義への恐怖から赤狩りを進める。さら戦争に勝つために原爆まで作ってしまった当事者である

この映画は、冒頭で述べたように3分の2が赤狩りに関するものである

原爆映画ではあるのだが、共産主義科学に関する映画と考えることもできよう。

日本で公開すべきか・できるか

3時間という長尺の映画であるが、これだけ多様で重層的なテーマを盛り込み、商業作品にしたクリストファー・ノーラン製作チームの意欲は素晴らしい。

しかし、あくまでもアメリカ国内の話であるという感じもする。ソ連、そしてヨーロッパ中国の動向も薄い。

そして日本では、まずもって娯楽作品ではないから、商業成功は見込めるのかは分からない。

さら原爆開発に対する反発も大きいだろう。被爆者が親類にいる訳でもない私でも涙がこぼれたので、当然のことだと思う。

しかし、重く重要主題を扱う映画ではあると思うので、公開の判断がなされて多くの人が視聴する文化的土壌に期待したい。

ミステリトリック特に考えないで読んでる

俺がそんなにミステリ小説って読んでないからかもしれないけど、トリックって考えながら読んでもあんまり意味がないと思う。

作者は読者を騙そうとしてるんだから知恵比べでは作者の方が頭いいだろうし。

あと作品、作者によってトリックをどのくらいのリアリティで考えていいのか分からないというのが大きい。

昔読んだミステリトリックだと「殺した死体の死後硬直を利用して死体はしご替わりにして高い窓から脱出した」っていうのがあって

(そんなことできる?死体の死後硬直ってそんな強度あるの?)って疑問が湧いたけど作中で可能だっつってんだから可能なんだろうけど、こういう現実味があるのかないのか分からないトリックは多いので考えるだけ無駄のように思う。

から、ほかにも館の見取り図とか詳細に描写されたりするけど、あんまりトリックに拘らず文章と展開を追いかけるのが俺のミステリの楽しみ。

叙述トリックなんかも「暴いてやろう」と読み進めるより素直に読んでラストで単純にビックリするほうが楽だ。

つぐもも』とかいマンガ

当初のキャラクターデザインは、女の子ファンがついてもおかしくないような可愛らしいものだったのに。

なんであんな、ロリコン異常性欲者以外には正視にも耐えないような内容にしてしまったんだろうか。

Pixivエコーチェンバーに籠って普通感覚がなくなった?

あるいは、商業マンガ無修正版をネット公開って商法がよっぽど儲かるんだろうか? まともな物語作品をつくる誇りを捨てるほどに?

成人マンガみたいなことがやりたければ、成人マンガでやれば良いのに。

わざわざ規制を越えてセンセーションで売り込もうとするのは、表現の自由じゃなくて、単なる金儲け主義だよな。

オタク劣化。甚だしい。

 

#見たこともない人のために説明すると、バトルや儀式と称して全裸未成年股間執拗にアレする描写がほぼ毎回あり、Pixiv等で性器を描き足したバージョンを公開している。

殺戮にいたる病は、トリックがどうとかよりも、エロ描写性癖に刺さるかどうかがポイントだと思う

anond:20230725231257

おもしろミステリとは何か」を語るなら、まず「ミステリとは何か」を定義する必要がある。私は以下のように定義をしている。

 

 

倒叙ミステリ」のように犯人側が殺人を犯す心理を描いていく作品もあるのだが、本エントリではとりあえず上記定義を厳密に適用し、倒叙ものミステリではないとする。また東野圭吾容疑者Xの献身』のように、犯人側と探偵側の視点が入り混じり、その構造自体が読者へのサプライズになるような高等テクニックを用いた小説もあるのだが、こういうものも一旦ミステリではないとする(古いミステリファンならご存知だろうが、実際に『容疑者Xの献身』が本格ミステリなのか否かで、大議論が起きましたな)。

 

面白いミステリとは何か

ミステリとは〈謎を追う構造を持つ物語である。その謎には、大きく分けて二種類がある。〈人間の謎〉と〈トリックの謎〉だ。

ブコメでも出ているが北村薫の「私」シリーズ典型的な前者で、日常の中で発生する何らかの謎を解いていくと、その謎に関わった人間ドラマに突き当たるという構造を持つ(ざっくりと説明しているので、多くの例外を切り落としている)。ストーリーミステリ構造が使われていて、サプライズも用意されているものの、最終的には人間ドラマを描くことが主眼の小説と考えていい。

翻って「トリックの謎」というのはいわゆる〈本格ミステリ〉と呼ばれるジャンルで、絶対不可能方法殺人などが行われ、犯行に使われたトリック自体面白さで読ませるものと考えればよい。綾辻行人十角館の殺人』はもろにこちらに当てはまり、実際にトリック自体が斬新で衝撃があったため、名作としていまに至るまで読みつがれている。

ミステリを巡ってしばしば問題になるのが〈人間が描けていない〉という件だ。平たく言うと、トリック小説人間ドラマとの相性が悪いのだ。人を殺すならば夜道で後ろから刺せばいいだけで、わざわざ密室を作ってその中に閉じ込めたり、アリバイトリックを仕掛けて警察を欺いたり、クローズドサークルの中で大量殺人チャレンジしたりなど、コスパの悪い行動を取る必要はない(実際に、現実世界本格ミステリのような事件存在しない)。トリック小説としての面白さを作り込めば作り込むほど「こんなことをする人間がいるわけないやん」という問題が浮かび上がり、リアル人間ドラマからは遠ざかる。これは構造的に仕方のない問題であり、謎解きミステリ文学賞レースで弱い理由もここにある。

増田は〈トリックの謎〉に特化したミステリに対し〈キャラクター描写ストーリー偏重〉する読みかたをしており、こう読まれるといかに名作といえどつらいものがある。アダルトビデオを見て「ストーリーがめちゃくちゃじゃないか」と言っているようなもので、〈トリックの謎〉系の小説を読む際はモードを変えなければならない(とはいえ十角館の殺人』が小説として稚拙すぎるというのは私も同意するところで、いかトリックが斬新であろうともこんなもん評価できるかという増田の主張は、理解できる面もある)。

まとめると、ミステリには二つのタイプがあり、それぞれ別の軸で評価しなければならないということだ。〈人間の謎〉を描くタイプミステリでは、ミステリとしての驚き + 最終的に描かれる人間ドラマの深度が評価ポイントとなり、〈トリックの謎〉を描くタイプミステリでは、ミステリとしての驚き + トリック面白さが評価ポイントとなる。「面白いミステリ」とは、その作品が属するジャンルで高いポイントを得たものといえるだろう。両者をごちゃまぜにして測るべきでない物差しで測ってしまうと、価値を見誤る。

殺戮に至る病』は読んだのが昔なので覚えていないのだが、構造的にはサイコサスペンス + ラストに驚きがあるという作品だったと思うので、ここではミステリとしては扱わない。

上記2作はミステリとして何が優れていたのか

上述の通り。

自分ミステリを楽しむには何に着眼すべきなのか

キャラクター描写ストーリー偏重〉するのであれば、〈人間の謎〉を主眼に置いた作品を読むのがよいかと思う。とはいえ十角館の殺人』以降、綾辻行人はぐんぐん小説が上手くなった人なので、例えば代表作『時計館の殺人』なんかだと、あくまトリック小説ではあるのだが、小説としてのエグみは『十角館』よりもだいぶマイルドになっており増田も楽しめるかもしれない。

おすすめ作品

米澤穂信『王とサーカス

米澤穂信ミステリ構造を使いつつ、それを深みのある人間ドラマと融合させていくことに長年取り組んでいる人で、『王とサーカス』は代表作のひとつでもある。2001年カトマンズで起きたとある政変テーマとなっているが、殺人事件の謎を主人公女性記者が追っていくにつれ、〈報じるとはなにか〉という現代的なテーマが浮き彫りになる。磨き上げられた体温の低い文体も素晴らしく、読んでいる最中カトマンズの街を旅している気分になる。

島田荘司『奇想、天を動かす』

人間の謎〉と〈トリックの謎〉は相反するというようなことを書いてきたが、それをムリクリ融合する試みも過去何度も行われており、島田荘司はそれを最高レベルで達成した作家のひとりである。『奇想、天を動かす』では作中で大トリックが使われているものの単なるトリック小説ではなく、読むにつれ戦後日本という巨大なテーマが立ち上がってくる。

連城三紀彦『宵待草夜情』

連城三紀彦は〈人間の謎〉を描くことに主眼を置くタイプミステリ作家で、吉行淳之介を思わせる優れた文体をもっているのだが、そういった文芸調の作品にやけにハイコンテクストで作り込んだミステリ様式を持ち込むあたりがユニーク作家である。『宵待草夜情』はいずれも重厚人間ドラマが描かれつつ、そこに作り込まれミステリの要素が投入されていて大変面白い最高傑作と呼ばれる「花虐の賦」も収録されている。

anond:20230725231257

ミステリパズル

物語登場人物パズルを成立させる舞台装置として機能してりゃいいんだという方向に振り切ったのが新本格というジャンルなの。

角館キャラクター描写が古いのはそれが過去ミステリお約束をかき集めたものしかなく独創性を求めていないからだ。

極論すれば物語人物独創性排除してパズルの出題と解答として書かれていると考えればいい。

grdgsさんやべえバーばっかり行ってるな・・・

grdgs オタクがよく集るバーで、脈絡なく中韓民主党フェミ批判始めるような者は何人かいた。周りが白けたり諌めたりで話を引っ込めてエキサイトはしなかった。障害関係なく害オタは多いね

grdgs 以前普通バーっぽい店にふらっと入ったらバーテンがゲイパンツ下ろして見せてくれと言われた。ぞわっとして、これが普段女性が受けているセクハラなんだと身を持って感じた(もちろんゲイ全体を糾弾していない)


やべえな・・・

grdgs パラレルパラダイスでは甘いとかの記載はあったかなどうだろう。近所のバーに置いてあるし、そろそろ飲んでみよう


パラレルパラダイスとか読むんだな・・・あんな性暴力描写全開の漫画OKなんか・・・

2023-07-25

逆に聞くが「おもしろミステリ」って何?

https://anond.hatelabo.jp/20230725215629

これ書いてる増田ミステリ全然読まないのね。で、知人から「まずは『十角館の殺人』とか『殺戮に至る病』読め」って言われて読んだのよ。

正直言うがこの2つ面白いか? キャラクター観が激古くて読むに堪えないって感想がかなりでかい

もちろん、大ネタトリックはそこそこ驚いたので悪くはなかった。でもそれにしたって描写がかなり厳しいと思っちゃったんだよ。

まあ本音を言えばタイトルアオリよ。自分がどうやら小説を読むときキャラクター描写ストーリー偏重しすぎるきらいがあるので、例にあげた2つのおもしろさがわからないのは当たり前というか、どちらもそういうのを狙ってる作品じゃないよね。だからおもしろく思えないのは単にnot for meってのはわかる。

でもなお思っちゃうのはさ、世間的になんであんなにこの2作品が褒められてるのかが逆にわかんなかったんだよ。

で、逆張りでもなんでもなく知りたいのよ。ミステリファン的に

この辺でアドバイスあったら教えてくれないか? 世間的に褒められてる作品理解できないの、多分自分のレセプターが歪んでる可能性があるのでラーニングしたいんすよ。でもミステリに関する知識マジでいからとっかかりがなくてすごく困ってる。

追記

めっちゃコメントきてるありがとう!めちゃくちゃたくさん反応もらって追いきれてないけどすげえ助かる!整理するんで少し待ってくれ!

追記2

いきなり訂正なんだけど俺めっちゃミステリ読んでたわ! みんなが挙げてくれてた作品だとこんな感じだわ!

でも上に挙げた奴あんまりミステリミステリって気持ちで読んでなかったわ!

最初書かなかった事情を書くとさ、こないだたまたま見かけたおすすめミステリ100冊みたいな文章の冒頭に「『十角館の殺人』読んでないならまず読め。こんな文章読んでる場合じゃないんよ」って書かれてたから『十角館の殺人』読んだらピンと来なくて困ってたんだよ。「ミステリとは一体なんなんだ……?」みたいな気持ちですよ。でも全然読んでた! ごめん! 俺が間違ってた!

これはみんなが色々教えてくれて少しわかったと思う。そもそも本格ミステリ」と「新本格ミステリ」というジャンルの間に「社会派ミステリ」ってのがあったんだな。その反動新本格が出てきた。なんか「『本格って単語がついてるミステリ』がわからないならミステリのことがわかってない」みたいな気持ちになってたけどそんなことなかったんだな……。

十角館の殺人とかも、描写がちょい厳しいなってのも時代的なこと考えたら理解はできる。こないだヤマシタトモコの古い作品読んだら「ホモ」って言葉連呼されまくってて「マジで?」ってなったの思い出した。10年程度で感覚全然かわるし30年あれば言わずもがななんだよな。

いやさ「本格ミステリ」とか言われてる作品がピンとこなかったらちょいビビっちゃったんですよ。だって「本格」がわかんないなら「ミステリ」って何? って感じじゃん? でもあんまり気にしなくてよさそうだな。いろいろなミステリがあっていい! そういうことか!

自分が好きなSFとかが「SFとは認めん!」みたいなこと言ってる作家多かった経験からすげえジャンルに対して身構えていたんだけど、当たり前だがいろいろな楽しみ方があるんだな……。ありがとう。そこマジでわかってなかった。ミステリファンは全員「本格ミステリわからんやつはミステリことなんもわかってない」くらいに白眼視されると思ってた(冗談じゃなく本気で思ってた)。これは俺の偏見だったわ。本当にすまん。

どうやら世間的には日常ミステリとかキャラが経ってる新本格とかたくさんあるっぽい。みんなが面白いって言ってくれた作品追っかけてみる。ありがとう!!!

とりあえずみんなが言及してくれたレコメンド列挙した。

多いわ!!!

lady_joker 100文字では書けないのでこっちに書いた。推敲していないので、チビを迎えに行ってから直すかも https://anond.hatelabo.jp/20230726161801

fushigishiatsu 増田友達になりたい、という文章を書きました。https://twitter.com/3216/status/1684044848628916224

フレンド!!!

あと面白かったのがこの方のブコメ

bokmal 子供の頃親の本棚エラリー・クイーンを読んだらおもしろすぎて、小遣いで古本買い集めたけど、大人になってから読むと「おもしろいけどそこまでか…?」てなった。子供ゲームブックと小説区別しないしなー。

気のせいじゃなければエラリークイーン挙げたのこの方だけ?

クレしん漫画読んでるけど、ひろしは過大評価されてる

LINE漫画でずっとクレしん読んでる

新クレはたまにしか読んでないけど

ネットではひろしは理想父親、みさえはクズ嫁という評価だけど、

読んでたらひろし過大評価されてるわ

逆にみさえは過小評価されてるわ

ひろし、普通に子育て(しんのすけの躾やひまわり夜泣き対応など)をみさえに押し付けたりみさえの用意した朝食に文句言ったりしてるし、みさえのことをしんのすけと二人でペチャパイだのからかってひまわりにも教えてるし、子供の前でエロい番組見てるし、その上部下の若い女社員セクハラもしてるわ


ひろしが過大評価されたのって、アニメ年収600万だかの描写がされたのとか、連載当時はバブルで低スペックとされていたひろしのスペック時代に伴い高スペックになったのとか色々あるけど、

アニメだとお向かいの門呂さんが出てこないのも一因なんじゃないかと思うわ

みさえが草刈りだのゴキブリ退治だのをひろしに頼む→ひろし体調悪いと言って渋る→お向かいの門呂さんというセクシー人妻が野原家にきて男手がほしいと同じ用事をひろしに頼んでくる→ひろし、下心満載でノリノリで引き受け、最後は痛い目を見る

ってシリーズ

文句言いながら毎回ひろしを送り出すみさえって寛大だわ

門呂さんには怒らないし

あと、ひろしの父親って(たまに母親も)毎回野原家にアポ無し訪問してそのまま住み着くけど、

みさえの家事の手間が増えてその上みさえにセクハラ授乳覗き(未遂だけど)もしてるけど、

しかもひろしは碌に父親を諌めないで会社に逃げるという、現実だったら炎上しそうな有様だけど、

それでも義両親となんだかんだで仲良くしてるみさえは寛大だわ

やっぱり時代の流れで炎上しそうな描写は減って、アニメだともっと減ってるのかな

一番炎上しそうなのはしんのすけが預かった犬のパトリシアちゃん虐待しかいえない行為をしたやつだけど。しんちゃんから動物には優しいのにあれは異様だったわ


あと、クレしん世界人間、施錠甘すぎ

みんな鍵かけないかしんのすけに家に入り込まれたりミッチーヨシりんに入り込まれたりしてる

クレしん世界善人しかいないから施錠甘いし子供だけで留守番させられるのだろうか

またずれ荘編やおとなりのおばちゃんに顕著なんだけど、基本的に善人しかいないし超気軽に助け合ったり子供預けたりしてるし、ああいいなあ理想郷だなぁって思う。あん世界に住みたい。でもまたずれ荘は今思うと地獄すぎるだろ。雨降ったら雨漏りだらけで室内びしょ濡れだし、子供の力で壁壊れるくらい脆いし、何よりトイレが部屋の外で男女共用で和式一個しかないとかどんな地獄

仕事ポリコレしたら怒られた

最近仕事で、子ども向けのパンフレットを作った。

原稿はもちろん、イラストレーターへの発注も俺がやった。

パンフレットができあがって、印刷にかける直前という段階で上からストップがかかった。

パンフの中に出てくる外国人イラストが分かりにくいと。

いやいや、そこはむしろステレオタイプ外国人描写にならないよう、あえて日本人区別がつかないようにしたんだよ。

それを、上司判断で、結局「金髪、青い目、白い肌」に変更することになった。

俺はポリコレのことを散々訴えたのだが、聞き入れられず逆にキレられる始末。

子ども向けなんだから、分かりやすさを重視しなくてどうする!」とか言われたが、

子ども向けだからこそステレオタイプ描写を刷り込まないように配慮しなくてはならないのだが。

今時、外国人=「金髪、青い目、白い肌」みたいな露骨ホワイトウォッシュ、許されないだろ。

食い下がったら社長まで出てきて諭されたんだが。

これ、俺間違ってないよな。

anond:20230725105427

言うて上級国民醤油飲んだり金積んで兵役を逃れたり、

パヤオの君生きや風立ちぬ描写にあったように、食糧難とは無縁の生活を送り(砂糖使った料理缶詰やお櫃で米食ってた)、

なんなら軽井沢パーティーやって過ごしてたぞ

産経】「軽井沢爆撃するな」大戦末期 軽井沢から米英に電報 「国体護持」スイス仲介

https://www.sankei.com/life/news/150816/lif1508160020-n1.html

2023-07-24

宮崎駿終活君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか感想

具体的なネタバレはそれほど無いと思うが、作中のかわいいキャラクターのみ個体言及する。








一言で表すならば、眠りの浅い時に見た夢。


ナウシカラピュタトトロ魔女の宅急便紅の豚もののけ姫ハウルポニョ、そして風立ちぬといった宮崎駿歴代作品イメージボードブンブン振り回されて巡らされた。

宮崎駿終活を見た。



呆然とした。

映画が終わった時には、なるほどね、と口から漏れていた。何故広告を打たなかったのか、得心したからだ。むしろ広告が打てなかったと言う方が正しいのではないかと思う。



ストーリーが訳がわからんかったのは別にいいというか、この作品自体が夢みたいなもんだからどうでもいい。

まず引っかかったことの第一台詞回しが説明的だったのに結構ダメージを受けた。

映像だけで説明できているはずのシーンで重ねて行動の意図を口に出して「今この台詞言う必要あったか?」となったのが、覚えている限り少なくとも二回はあった。

今まで宮崎作品ではほとんど感じたことのないものだ。

他にも感情の流れの描写がなく、どうにも唐突に結果だけが放られる台詞が多かった。細田守彷彿とさせる台詞回し。辛かった……

私はキャラクターへの共感については特に必要性を感じない方なのだが、感情の流れだけはしっかり描いてほしいと思っている。その流れがブツブツ途切れていて、最後に繋げたい結論だけを口にさせていて、気持ちが悪かった。

それも意図的なのかもしれないが。




第二にショックだったのは、ワラワラがただ可愛いだけのゆるキャラだったこと。

駿の中にはもうマスコットになりうる「可愛くて、でも不思議な」キャラクターはいないんだなと痛感した。

安直でなんの捻りもない造形には、宮崎駿原体験自然の中にある生命伊吹を感じることができない。そこに「いる」必然性は描かれず、ただ丸く、かわいい、特徴の廃された「マスコットらしいマスコット」でしかない。

子供向けにフックとしてマスコットが要るだろうという「思いやり」もしくはジブリと言えばという商業要請から出されたキャラクターしか感じられなかった。

DNA螺旋なことは分かるが、それにしたって安直デザインには宮崎駿の興味・関心が感じられない。

まあそこは今の宮崎駿にとってはどうでも良かったのだろう。でもシンプルながら風変わりで、動物幼児の見せる原初感情愛嬌を細やかに描いたキャラクター達を愛していたので、個人的にショックが大きかった。



現在宮崎駿の中で鮮やかに表現されるのは、戦争であってファンタジーではないというのは今作を観て強く感じられた。

最も切実にこちらに訴えかけるのはやはり空襲のシーンであったし、街が燃え、人が炙られ彷徨うシーンだった。

主人公が自らを傷付け、結果二兎を得るが上手いこと加減できず割と深い傷になる小賢しさと迂闊さも少年らしく良かった。

背後に不穏さが漂う陰鬱現実こそが「今」の宮崎駿なのだろう。現代情勢から必然だろうとも思う。



私は宮崎駿の、普通エンターテインメントに乗りきらない切実で繊細なものを、エンターテインメントという砂糖をまぶして結実させ、本来ターゲット外の人までより広く世に送り出す手腕にこそ心酔していた。

風立ちぬ」なんかはその真骨頂で、あん純文学を大々的にお出ししてきたのは正気ではないと思いつつ狂喜乱舞したし、そこに込められた宮崎駿の諦念を目の当たりにし、これで創作活動を終いとするのは悲しすぎると涙した。庵野が棒すぎて頭に入らないから嫌と内容以外の部分で周りに否定されたのも悲しかった。



結果的に言うと「風立ちぬ」は宮崎駿終点とはなり得ず、私の望みは叶えられた。

君たちはどう生きるか」を鑑賞し、ここまでただ狼狽した心情を書いてきたが、今の宮崎駿に非常にショックを受けつつも、なんとなく心穏やかになった部分もある。

宮崎駿作品から既にひりついた表現への欲を感じなくなったのは、それはそれで救いであるとも思う。

そういう意味では、私にとっても「宮崎駿」への餞というか、終活になった。


どんなに作品の底に込めた意味があろうと、こちらに伝えようという意思が感じられない、というか作品を観ながら「伝えたかったもの」を考える余地がある、物語に没入できない時点で出来の悪い作品と考えているので、作品単体で言うと★1なのだが、監督宮崎駿ということを加味すると★3になってしまう。

君たちはどう生きるか」を宮崎駿ではなく、例えば米林宏昌あたりが作っていたら私は激怒し、オマージュ大義名分ジブリブランドを体良く利用して棄損するなと気炎吐き散らして暴れ回っていただろうが、宮崎駿ならばこれを作る権利がある。

それだけのものを今まで私たちに贈ってくれた。



そして、ここまでグチグチグダグダ書き連ねながらも、もし万が一にも次作があるなら絶対観に行ってしまうだろう。

観客なんて勝手なもんである


あと、米津好きだけど宮崎駿には合わなかった。ジブリにはもっと現代の売れ線とは関係のない歌と共にあってほしい。

2023-07-23

君たちはどう生きるか(映画)」が面白くなかったので気持ちを整理する

→これはもともと期待してなかったのでOK。寧ろ割と明確なテーマ提示してくる割に抽象的な尖った進行をしてきて、そのバランスが楽しかった。

→これが悲しかった。

ほかのジブリ映画では必ず複数個あった「うおすっげ♡」みたいなアニメーションが薄く感じて悲しかった。(火事の場面はほえ~かっこいい絵だなぁとおもった)

妙に説明的な動きやセリフが多い割にあまり画面が動かなくてもっと振り切った独善的描写にしてほしかった。(例えばアオサギから徐々に顔が出てくる感じとか、歯茎みたいなのが出てきた時点で皮被った異形なのわかるから一場面ごとに5cmくらいずつ出てくるんじゃなくてはよ出てこいやとなった。急につみきがスッと入る図が差しまれて笑いそうになってしまった。)

みんなだいすきばーちゃんたちも、最初鞄漁ってもぞもぞしてたところでテンション上がったけど、それ以降これといった描写がなくてかなしかった。

大発生していた白饅頭なんJ民みたいな恵体インコ達も、「キッモ♡」「オッかわいいね♡」「何食ったらこれ思いつくんだよ」みたいな感情があまり湧いてこず惹きつけられなかった。

否定的なことばかり言っていてもしゃあないので好きだったポイントも書く

主人公を引き留める割にスタスタついてきたり弓の命中にキャッキャしてたりと「なんかこのババア強いぞ…?」と感じ始めた流れが綺麗につながった気がして気分がよかった。

義理のかーちゃんちょっと妙な話し方するなぁという程度で、他は特に気にならなかった。あいみょんが喋る声を知らなかったからかも。

ポスターのカッコいいイメージと違って四畳半の小津みたいなキャラだなあと思いながら見ていて、その印象が覆されることはなかったけどラストの締めが好きだった。解釈が分かれるところらしいが自分主人公自身の心象投影+異空間との橋渡し役、みたいなキャラとして観ていた。単にそういうさらっと差しまれメタ描写が好きなだけかも。

毎度のことだがパヤオ感性が被っていて悔しい。

こんな感じ。周回遅れだけど突っ込んでくれたらうれしい

2023-07-22

anond:20230722133547

中学生迷惑行為マック出禁になったニュースとか、寿司ペロ事件件とか、中高生がそんな金使うんやなって感じだわ。

漫画とかでも中高生ファミレスとかカフェでたむろしてる描写とかあるし。

いいとこの子供でお小遣い多いのかな。

君生き感想宮崎監督、『名作』をありがとう!~

自分宮崎駿監督に対する身勝手な期待とか甘えを供養するために書く。今作品は期待半分、不安半分という気持ちだった。宣伝なしということだったし、宮崎駿監督作品を事前情報一切なしで視聴できる機会というのはおそらく最初最後であろうと思ったので、早バレ等も避けるために数日SNS断ちして初日に見に行った。ただ映画館に向かう足取りの中で最後感じていたのは恐怖感だった。子供のころにもののけ姫を見たときの衝撃を再び与えられて、おっさんになった今再度、人生観を揺るがされるかもしれないと―。

さて、いざ蓋を開けてみると、途中まではリアル物なのかファンタジーのどっちなの?というドキドキや不安感。方向性が確定したとき期待感MAXとなったが、それ以上膨らむことはなくしぼんでいった―。

総論

美術アニメーションの美しさは申し分ないが、ストーリー感情移入できない半端な作りと言ったところで、結局、いつもの宮崎監督後期作品という他ない。今、振り返ってみると監督キャリアハイとしての作品千と千尋の神隠しあたりになるのだろうが、その千と千尋も後半から、この半端さの片鱗がある。例えば終盤、千尋は豚の中に両親がいないことを見抜くが劇中にその説明はない。しかしながら説明不足ではあっても、千尋とハクとの心のふれあいみたいなものが十二分に描かれているから、感情的に押しきれている。手を離すシーンとか思い出しただけで泣けるわ。

しかしながら、君生きはストーリーっぽいもの感情の揺らぎみたいな表現はあるものの、説得力というか、それ自体根拠がはっきりと提示されないから、大抵の観客は感情移入できずに戸惑いを覚えると思う。例えば劇中で主人公自傷行為や継母の拒絶が描かれるが、その感情の根っこが分からないので観客は困る。自傷もっと構ってもらいたかったのかな?とか拒絶はやっぱり連れ子がうざかったのかな?とか想像はできるけど見てる側はそれを確定させる要素がないから、多分こうだろうとか理由を補完して見ていくしかない。つまり作品に気を遣う状態になるわけで、それは相当きつい。忖度要求されるが、圧倒的な感情の「分からせ」がない(※)。監督が一人で突っ走ってる。観客は置いてけぼり。かつて宮崎監督は、見終わったあとに2階から出てくる感覚になるような映画がいいとか言っていたような気がするが(ソース探したが見つからず)、君生きは観客が一生懸命2階への階段必死に探すものの見つけられないまま塔の中で迷子になり、最後パヤオけが悠然と2階から出てくるという感じだろうか(画・浜岡賢次想像してもらいたい)。

あとはヒロイン?3人は多すぎる。実母に継母に婆さんでしょ?詰め込み過ぎて破綻する典型。正直、継母は全部削除して、序盤で実母エピソード増やして、実母を探しに塔に行く形にして、最後、実母ときれいに別れてで多少は形になったろうにね。もっとシナリオ段階で練ればいいのに…もったいない

もう一つ、主人公が大叔父と話した後に、急にインコに囚われてるシーンになるが謎過ぎる。壁につながれた手が映ってからの下にパンしたときに、実母でも継母でもなくお前かーいってなったのが一番面白かったかもわからない。宮崎監督過去インディジョーンズの潜水艦移動を批判していたが( https://ei-gataro.hatenablog.jp/entry/20131030/p1 )、それと似たり寄ったりだろう。いくら異世界?だからといってワープしすぎである

※ 宮崎監督とも対談したことのある養老孟司は「バカの壁」において強制了解という語をつかった(p.41)。例えば数学においては前提と論理を共有しているのであれば同じ結論に達せざるを得ない。ある定理証明を正しく説明されたのであれば、その正しさを了解せざるを得ない。そういった強制力を強制了解と呼んだ。そうした強制力は感情においても成立する。例えば電車子供が騒いでるのをぼけっと放置している父親がいたとして、普通はそれを理解できないが、もし父親が「実は母親病院で亡くなって帰る所で、これからどうしていこうかと悩んでいたところなんです」と説明されれば、事情理解できるだろう。事情が分かれば感情了解できる。それは物語を受容する過程でも同じことが言えると思う。

なお、この流れで養老他人気持ち理解できることを重視すると同時に、「個性」信奉を批判する。そんなに個性大事かと。存分に「個性」を発揮している人は病院にいるという。白い壁に毎日、大便で名前を書く患者がいるらしい。芸術的にみればすごいかもわからないが、現実的には大変迷惑でたまらないだろうとのこと。奇しくも本作においては継母の美しい顔が鳥糞まみれになる描写があるのでそういう個性的なスカトロジー芸術理解を示す人はいるかもしれない。

自分映画

こうした一見てんでバラバラに見えるような物語の断片も、もしかしたら宮崎監督だけには分かるのかもしれない。スピルバーグだか有名監督が誰にも分らない映画つくるのはホームムービー撮ってるのと同じだ的なことを言っていた気がするが、もしかしたら本当に宮崎監督ホームムービーを撮ってしまったのかもしれない。自分けがわかる映画作品を作れるとしたら、映画監督としては最高の贅沢だろう。自分用の映画私小説と言われたらなるほどという気もする。今回、宣伝がなかったという点でも符号する。これはもはや天才にだけ許された所業なのかもしれない(現実に実行可能という意味で)。

ナウシカだったと思うが、興行的に大失敗とはならなかったこから次の作品を作るチケットを手に入れたみたいな監督インタビューがあった気がする。ジブリブランド確立するまではコケたら次はない状態であったろうから興行面は大変重視されたことだろう。つまり天才大衆に合わせてくれていたわけであるしかブランド確立された今となっては、大衆を気にすることなく好きな作品を作れるというわけであるジブリ体制を維持できなかった点には目をつむるとして)。だから今もしかしたら「天才が本当にやりたかたこと」を我々は目にしているのかもしれない。

過去パヤオ感性としてはもっとアニメーション表現に全振りしたかったのだろうが、それじゃあ興行的に成立しないから、ストーリーもしっかりさせていたというのが過去の名作への向き合い方だったのだろうか。我々、一般大衆天才現実的妥協のお陰で、(大衆的には)名作となる過去珠玉を見せてもらえていたということなのだろうか。凡人が天才ちょっと付き合ってもらったという感じ。天才ちょっと退屈していたのかもしれない。大衆は今の退屈を嘆くのではなく、昔、天才に付き合ってもらっていたということを感謝すべきなのかもしれない。

この作品のそういった諸々の分からなさに対してなんとか理解しようとする感想や、なんとか説明しようとする解説記事などが上がっているのを見かけるが、なんとも物悲しい。めっちゃ面白作品を骨までしゃぶりつくしたい!という渇望からまれてくる文章はいい。例えばもののけ姫においては「『もののけ姫』を描く、語る 」というムック本があったのだが、それには一ファンから文筆家まで様々な人々の作品に対するとてつもない熱量で溢れている。でも味のしない作品をなんとかして食えるようにしたいという動機から解説を書いたり、それに群がることの虚しさよ。宮崎監督から面白いはずなんてことはない。権威主義的だし、もうそれは諦めて次に行こうよ。これを知っていれば、本当は面白いんだよって本気で思っている人もいるかも知れない。でもそういう解説必要とすればするほど、その面白さが作品内で素直に伝わってないことの裏返しである野球大谷いくらいからって彼の(打者としての)ファールや三振をありがたがったりしないでしょ?今回の打席は残念だったねでいいじゃんね。(もちろん宮崎監督場合、次があるかは分らんが)

「問い」として捉える

さて、作品表題に立ち返ってみると、これは疑問形である作品としては名作とはとても言い難い。しかし聴衆に対する問いであると捉えたらどうであろうか。物語がてんで成立していないのに問いかけを見出すことができるのか?うーん正直、自分には無理。味がしないんだから問われたとも感じない。

しかし確かに思ったことがある。それは、大叔父のようなお爺さんに期待するんじゃなくて、自分が見たい作品があるのなら、他にそれを提供してくれる別の人を見つけるか、もしくは自分で作るべきだということ。初めから品質保証なんてものはなかった。自分勝手に期待して、勝手失望しているだけのことである

すでに名作はあるのに、なぜおかわりを望むのか

最後に話がそれるが、しかしながらなぜ我々大衆は次々と名作を望むのであろうか。新作を批判すると「じゃあ、過去の名作繰り返し見とけや!」って言われるかもしれない。そう言われるとちょっと答えに窮する。何度も見ればストーリーも覚え、感動も薄れてくる。やっぱり初見の衝撃に叶うものはないということだろうか。それを再び味わいたくて次の名作を追い求めているのかもしれない。キリがないし、わがままだなって思われるかもしれないが、正直人としての性としか言いようがなくないか?そこを内省しだしたら仙人になるしかない気がする。

あとは現実がつらいからね。時には金払ってちょっといい気分になりたい!ぐらい許してほしい。こっちは作者の高尚な構想にがんばってついていく苦行やマラソンじゃなくて、自動で楽しませてくれるジェットコースターに乗りたいの!

で、初見という点で最近思っていることは「私の体験」を大事にすることが重要なんじゃないかと思っている。ゲームでもなんでもあまりレビューを見ずに体験するように心がけている。あらかじめレビューを見て他の人が面白い!星4以上!と言っている作品なら、安定して面白いかもしれないが、半分ネタバレのようなものではないか

若い人にはタイパを優先しすぎて自己の視聴体験プレイ体験を損なっていないかと問いたい。面白さの保険料として自身体験・感動を売っていないか?と。おじさんおばさんは子供のころに自分図書館で本を表紙で選んで借りた体験とか、ネットもない時代ゲーム屋で「クソゲーかも知れんがままよ!」と覚悟してゲーム買った記憶とかを思い出してほしい。そういう多少、損するかもと思ってもクソ作品を引く勇気をもって、一対一で作品と向き合う、ぶつかってみるということを時々でもした方がいい気がする。だから、今回、作品に対しては残念だったが後悔はない。純度100%の自分感想を持てた。展覧会的な感じでいろんなアニメーションを見せてもらったという感触では数千円も損したという気もしない。今後もどんどん色んな作品に触れていきたいと思っている。例えばポノックの次作品ちょっと子供向けだろうけど、子供と一緒に見に行こうかなと思ってる。

各論

ゲド戦記を思い出した

視聴しながら、ぼんやり宮崎監督ゲド戦記作るとしたらこんな感じだろうなと思った。影との戦いでゲドは船で移動するし、ところどころの魔法感や大叔父大賢者になったゲドのイメージだなと感じた。大叔父のイケオジ度は過去最高かも分らんので一見価値はあると思う。

東映アニメ長靴をはいた猫』を思い出した

インコ大王を追いかける時に螺旋階段を落とされるシーンがあったが、長靴をはいた猫での魔王主人公たちとの大立ち回りを彷彿させた。この作品監督宮崎ではないが、そのクライマックス部分は大塚康生との二人で原画担当した箇所であり、とにかく面白い( https://www.ghibli.jp/shuppan/old/pickup/nagagutsu/ )。1969年作品なので絵のきれいさはどうしても現代作品には見劣りするがアニメーション面白さは今でも通用する。未見の人はぜひ見て欲しい。君生きよりよっぽど面白いと思う。で、君生きでは大王ラスボスっぽくでてくるが大した戦いもなく終わってしまうのであっけない。長靴をはいた猫でのアクションを思い出しただけに、「あ、これだけなのか・・・」という虚しさが半端なかった。念入りに階段落とさせたり、序盤で主人公の着替え丁寧に描写するぐらいならもっと面白カット増やした方が良かったろうにって思っちゃう

音楽

使いまわし多いし、特に盛り上がる曲もなし。3日で作りましたと言われても信じるレベル久石譲も「これぐらいの作品ならこれでいいや」って感じだったと思う。絶対名曲ストック持ってるだろうと思うが、映像側がそれを引き出せなかったというのは至極残念に思う。米津曲も悪くはないけど、作為ちょっと鼻についたかな。いつも何度でもみたいな作品とのマッチ感は正直ない。と言っても作品の味がしないのでどうしようもない気もする。そういう意味では米津もかわいそう。

2023-07-21

ぼくらのよあけ(映画メモ

地球外知的生命による宇宙探索という広大かつ深淵な話と、団地の子どもたちの感情の動き、人間関係問題というミニマル話題ミスマッチに絡み合う。どうしても食い合わせが悪い印象になる。

対話をすれば地球テクノロジーを大きく変容させるだろう超技術を持った探査機AIが、子どもたちの感情喧嘩の末に放っておかれる様子を見ると、なんともったいないというか、優先度が違うだろう…と外野の時点で思ってしまう。

もちろん前提として、大きな世界観の中で小さな物語を展開しようという話の構造、狙いがあるので、それはしょうがない。

人間の成長・夏の終わりというシチュエーションは、人間文明の成長・宇宙への旅立ちを示唆しているはずだが、どうもその間を埋める描写が少ないためか、上手に機能していないように感じる。

物語のコアの一つは、失われたままという感触

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