はてなキーワード: 限界費用とは
どうも、お久しぶりです。
東電が電力料金の値上げをしたときに解説増田(anond:20230123193135)を書いた人です。
原発に言及したらクッソ叩かれて致命傷を負ったのでしばらく書いてなかったんだけど、
あまりにもおかしいこと書いてあるからそこだけ訂正させてくれーーー
再生可能エネルギーは、施設の製造・建設・設置、さらに運営のノウハウが溜まってきて再エネが安定した投資先と見做されてきており
これは眉唾。再エネは採算の取りやすい良い立地から開発されて行って結局後のほうで開発されるのはあまり採算の良くないところになって、あまり儲からなくなってきてます。
例えばこれとか見てもらえると https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC221NG0S3A520C2000000/
既存電源と再生可能エネルギーの違いは何かと言うと、限界費用が全く違う。再生可能エネルギーは、燃料費がないと言うところが大きくて、0円以上で売却できれば利益になる。というか、勝手に発電されるので止める意味が無い。
0円以上で売っても利益にはなるとは限らないです。もしかして新聞は紙とインク代まで値下げしろってごねる人ですかね?固定費とかってご存知ないです?
あとね、原発も限界費用は0円です。逐一燃料投入しないからね。どっちも勝手に発電されるって書いてるのにおかしいと思いませんでした?
止める意味が無いっていうのもおかしいです。ネガティブプライス導入している時は止めるのも良くあります。
むしろ風力の場合だと上方の調整力供給という意味でも止めることは欧州とかでもよくありますね。
そんなものと価格競争しても意味が無いので、例えば火力発電所は再エネの供給が大きくなったら発電を止めて、採算より高くなったら稼働すると言う事を行っている。
いや、そこが問題なんですよ。製造業の人とかじゃないとわからないかもしれませんが、設備稼働率がそんな再エネに合わせて押さえつけれられるものを、
誰が好き好んで運用するんですかね?誰もそんな火力発電所なんて使いたくありませんよ。
ここはその通りでもう電力会社は採算合わないので、脱炭素電源オークションみたいな補助金が入る形でしか火力発電所は新設できなくなってますよ。
ちなみにその結果が日本で2021年とかにあった電力逼迫だったんですが、もう忘れました?
電力価格の決定が統括原価方式なので、例えば発電所を30年使うと設定して投資した場合、原則的に建設費などの初動費は30年間固定されて電力価格に転嫁することが認められている
あのさぁ。。。電力自由化って理解してます?原価総括はもう終わってますよ。
あくまで名残として規制料金が残ってますけどあれは旧一電が赤字で電気を供給させられてる料金メニューですよ。。。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度によく似ているが、そちらとの違いは、稼働していない発電所の維持費も電力価格に転嫁できる仕組み
あとこれもさあ。。。そもそも限界費用が0円の電気だから0円以上で売れば利益が出るっていうなら固定価格買取制度なんていらないよね。
なんでこの制度が必要なのかは結局維持費も含んだ固定費を賄って早期に投資回収させるために作った制度だよね。
電力料金も一緒で、結局発電所って毎日使えるわけじゃないから使えなくなったらバックアップが必要なわけで、でそのバックアップにも固定費がかかるから
あくまで冗長性確保のためのコストじゃないんですか?はてなーって普段は冗長性の大事さよく言ってるのに電力会社相手になったら無駄とか言い出すのは勘弁してほしいわ。
あとね、あえて「発電していない発電所の維持費」っていう書き方は良くないよ。まるで無駄遣いをしているように聞こえるしね。複数の発電所を束ねたシステムとしての維持費として理解してほしいな。
ほんとぉ?ソースほしいな
なんというか、電気の話題にしろ経済、ジェンダーの話題にしろ二項対立で考えすぎなんだよね。
電気の話題だと 再エネはクリーンで安いから善で旧一電は火発も原発もやっていて再エネを妨害している悪みたいな。
完全な悪なら警察とか政治も動くでしょ?動かないのは献金しているからとか考える人は陰謀論に片足突っ込んでいるから気をつけたほうがいいよ。
働いている人ならわかるけど世の中ってそんな単純じゃないよね?もしかして社会人なの俺だけ?みんな学生?え、怖いやめて
この人は言い方がムカつくけど仕事はできるから頼ってるみたいなのってあるじゃん。
結局いいところ悪いところ天秤にかけていいところが上回っているから選ぶわけだよね。
エネルギーの問題もそう。原発は放射性物質があるし、火発はCO2を出す。太陽光は森を切り開くし、風力はレーダーを妨害する。
全部悪いところはあるわけで、だから一つの悪いところを取り立てて反対するのは間違ってる。その中でメリットと照らし合わせてその中で一番マシな選択肢を選ぶのが重要なんだよ。
そうやって清濁合わせ呑んだ上で一番良いものを選ぶという考え方がエネルギーを考えることでは大事だと思うし、日本人にはそれができると思ってます。
考えをまとめるために書いているので長くなってしまった。
投資マネーが再エネに集まり、既存電源に行かない状況が続いている模様。
再生可能エネルギーは、施設の製造・建設・設置、さらに運営のノウハウが溜まってきて再エネが安定した投資先と見做されてきており、潤沢な資金供給が続いている。
例えば、利回りなども、再エネ設備の耐用年数を従来は20年などで計算していた。これは公的補助が20年だったと言う前提だが、次々と公的補助が終了した結果、耐用年数を30年以上で計算するところが増えていて、それらをミックスした投資商品が登場、安定した資金調達に繋がっているようだ。
一方で、相対的に既存電源に対する投資が減っている。欧州でもエネルギー安全保障の観点から、イギリス、フランスなどで原発の新規計画が出てる。
今時、国の金だけでやると言う計画をイギリスが建てるはずも無く、資金を募集しているのだが、全然投資が集まらなくてかなり苦戦している。
これとは別の話として、エネルギー安全保障の観点だと言っているのに、当初目論みの建設費で手を上げたのが中国企業(中国"系"ですらない、中国の国営企業)しかないと言う状況で、これだとまずいと言う事で、新規設置の原発が生み出す電力の買取保証価格をつり上げたところ、なんと再生可能エネルギーの2倍から3倍の価格になってしまって問題化している。
エネルギーの安定供給・安全保障の観点という点では色々な電源をミックスするのは当然で、そういう点では単価の高い電力が混ざっても仕方が無い。
が、その国のエネルギー価格は、その国の国際競争力に直結する。製造業はもちろんのこと、ITのデータセンターの立地、研究施設の立地など情報系にも影響してくる。
国策である程度電力価格をコントロールできるからと言って、上げれば今度は国際投資が逃げていくということで、苦しい状況が続いている。
欧州と言うより主にフランスでの問題なのだが、フランスは原子力発電所で発電した電力を他の国に売ると言うビジネスを行っていた。
ところが、再生可能エネルギーが市場を荒らすようになってしまったため、もくろみが崩れてしまって採算性が悪化している。
既存電源と再生可能エネルギーの違いは何かと言うと、限界費用が全く違う。再生可能エネルギーは、燃料費がないと言うところが大きくて、0円以上で売却できれば利益になる。というか、勝手に発電されるので止める意味が無い。
そのため、他の電源では燃料費が上回って赤字になるケースでも電力を市場に流す事ができる。そんなものと価格競争しても意味が無いので、例えば火力発電所は再エネの供給が大きくなったら発電を止めて、採算より高くなったら稼働すると言う事を行っている。
特にLNGのガスタービンは即応性が高いため、再生可能エネルギーに追従して運転をするのに適している様だ。
一方、そんな器用なことができない電源がある。
それが原発。
原発は燃料を燃やしているにもかかわらず、再生可能エネルギーと似たような性質を持っている。発電を始めたら勝手に発電されるので止められない、出力調整が難しい、燃料費に比べて設備費・初期投資の割合が大きいといったことだ。
そのため思いっきり市場を食い合っている。再エネがピークで安い時は下手するとマイナスの金額(つまり、売買に関わる諸経費を発電側が持つというようなもの)で売却される電力に対して経済面で追従を迫られる。
それでも、再エネが担う割合が低いころは、それ以外の時間帯で収益を出すことが可能だった。しかし、段々と再エネだけで賄える時間帯が増えてしまい採算性が悪化しているのである。
また、原子力発電所など大規模電源は30年以上の耐用年数を見込んで採算が取れるように投資商品にするのが一般的で、原発の場合は40年以上も当たり前だ。その間当然リスクを見込んでるんだけど、変化が急激すぎてそのリスク範囲を超えてしまっていている模様。
これは時限爆弾みたいなもので、実はちょっとヤバいと思われる。
電源関係の投資ってかなり安定的な投資と見做されてる影響で、年金など公共性の高い投資商品に基礎的なものとして組み込まれていることが多く、吹っ飛んだら電力関係だけじゃ済まないと思われる。
そしてここが不安定なので、従来型の大規模電源開発に投資が集まらない状況が続いている。
環境 テロリスト 団体はESG投資の結果だとか宣伝するし、それに呼応するように原発 村の盲信者 関係者が陰謀論じみたことを言ってるけど、実際には経済的なリスクが大きい一方で、利益が少ないことが要因だと思われる。
もはや後戻りができないぐらい進んでしまっている。この流れは止まらないだろう。
ただ、各種のデータを見ると本当にこれで電力の安定性大丈夫なの?と心配になるんだが、進んでいる源が経済という祟り神なので止めらんない。すると安定化する方法はそれに対応する電源開発なり大規模蓄電なり水素・アンモニア製造するなりしかないと思われる。
実は、原子力発電所も、負荷変動に柔軟に対応するようなものは設計可能らしく、そういったものが出てくる可能性はある。が、投資基準は再生可能エネルギーに対してになるので、それより優位なものが作れるかはわからない。
日本は電力の自由市場の中にはいないので、急激な変革に巻き込まれてはいない。
また電力価格の決定が統括原価方式なので、例えば発電所を30年使うと設定して投資した場合、原則的に建設費などの初動費は30年間固定されて電力価格に転嫁することが認められている。
ある意味、再生可能エネルギーの固定価格買取制度によく似ているが、そちらとの違いは、稼働していない発電所の維持費も電力価格に転嫁できる仕組みであるということ。
例えば原子力発電所で再稼働出来てない発電所は多くあるが、発電して無くてもそれらの費用は電力価格に乗ってきているし、原発が稼働してない分だけ維持している旧式の火力の維持費なども当然ここに乗っかってくる。
これによって電力価格の上昇を抑え、安定化すると言う効果があるのだが、ここ15年ぐらいの急激な環境変化に対応できなくなってきているのも否めない。
ただ、制度を続けていけば、急激な市場の変化は発生しないと思われる
と、国内だけを見てればいいのだが。
既に書いたが、その国のエネルギーコストは、その国の競争力に直結する。国際競争に晒されている今、エネルギーコストが高いと企業立地などを逃すことになるので投資が集まらなくなる。
直近の動きでは原発を再稼働させようという取り組みが継続して行われている。
原発は燃料費よりも建設費・維持費がかかる。それらは再稼働しなくても電力料金に乗っかってる一方で、それに加えて燃料費の割合の大きい旧式火力を回さなければならない。これが電力料金を上げる要因になっているのは確かだ。
だから短期的には原発を再稼働させるということはあっているのだけれど、長期的に見ると、ライバルになり得る欧州が再生可能エネルギーという安いエネルギー源を苦しみながらも獲得しつつあると言う事には追従出来ていない。
さらに、欧州は環境対応を大義名分に、自分たちの有利な点を伸ばすような、再エネを使った製品では無いと追加の関税を課して保護政策を実行してくるのも間違い無い。自由貿易どこいったって思うが仕方が無い。
環境問題への対応はもちろんしていく必要があるが、今一度、エネルギーコストをどうやって下げていくのかと言う基本に立ち戻って電源の選択を考える時に来ていると思う。
その点では、洋上風力発電を巡る汚職が痛かった。かなり安い入札が行われていたのに、なんだかんだと理由を付けて不可とした。
その結果、国内の商社と組んでいた海外の電源開発会社が投資を引き上げちゃったんだよな。
せめてそういうことは二度と無いようにしたい。
100人の凡才より1人の天才の方が生産性が高いから論、これよく言われるけど疑問なんだよなあ。
同じソフトを100個売るのと1000万個売るのでコストがほとんど変わらない。
サービスだともうちょっと事情が違うにしても、そこが圧倒的に違うような。
1人の天才の方が100人の凡人より生産性が高いのが当たり前の世界、ってのは、尖った機能を持ったソフトウエアライブラリや、単機能モジュールなんかは確かにそうだと思う。けど、一定以上の規模があると1人の天才じゃ物理的に対応ができなくなるよね。
例えば、超優秀なAIを開発したとして、それをサービス化するための作業はひとりじゃ無理。天才的能力は必要ないが、時間がかかる仕事は山のように発生する。
だから、ソフトウエアも労働集約型の性質を持っているんだよ。(もちろん例外はある)
そこで、ひとりの天才はソフトウエアアーキテクトは超高給を得られるのは当然としても、それ以外の凡人も他の産業よりも高給になっているのは何故か?
それは、限界費用がゼロに近いからだよ。それで収益力が高いからだよ。
超優秀な1人の生産性が凡人100人に勝るのは、エンジニアリングの世界ではわりと不変的な事で、ソフトウエアに限らないと思う。
その証拠に、数が出ないサービス、フルスクラッチのサービスの制作に従事する人々(増田が言う「SIerとかいうガラパゴスビジネスは労働集約型産業」のやつ)はお給料が安い訳よ。有象無象の中小企業よりはそりゃ出てるけど、大手製造業に比べると見劣りする。
そういったガラパゴスSIerので今何が起こっているかというと、収益力の高いビジネスの影響を受けた、ソフトウエア技術者の人件費高騰と人材不足。
自社はそんな収益力の高いビジネスをできているわけではないのにね。
で、SIerが一品モノの開発ビジネスから脱却して、オファリングだのルマーダだのユーバンスだのもがき苦しんでるってのが最近の話だよな。
従来はパッケージは最小限のモジュールしかなくて、、受注したら各社ごとにカスタマイズして売るって商売だった。そのカスタマイズこそが人月商売で安定した利益が望めるってんで、SE部隊と関連する下請け会社を食わせてたわけだ。各社導入時に必ず追加するような機能までコードを流用せず別開発したりして、それで商売していた。
一方で、人口減少の時代と需要爆発による人材不足に、更にカスタマイズ大杉問題によるシステムの肥大化、各種コスト上昇に加えて、株主に物言う株主、アクティビストが増えて、高収益を求められる時代に。そこで、
に行こうとしているわけだよ。
うまくいってないけどな!
うまくいってないけどな!!
うまくいってないけどな!!!
あと、パッケージ化のしようがなくてフルスクラッチで作り続けなければいけないシステムってのはどうしても存在するのも各社頭痛の種だよな。収益率低くてリスクが高いわりに儲からないし、優秀な若い人ほどやりたがらない。アクセンチュアとかが絶対手を出さない領域。
切りたいけど切れないやつ。
原発について書くと予想通り荒れるから嫌なんですよね。。。。。
(追記 15:00)
うーん。。。ちょっともう少し正しい理解をしてからコメントしてほしい感はありますが、あとでちゃんと答えます。
要点として書いておきますが、総括原価方式は規制料金として残っているので自由化にそぐわないから自分も廃止すべきって言ってるのは伝わってますかね。。。 あと今のエリア内での価格競争が真の自由競争じゃないってのはどういう理屈なんですかね?他エリアで売るつもりのない地域新電力とかあるけどどう考えてるんだろう?(ちなみに九州電力は東電管内で供給をしてますが)
あと今の規制料金は十分不当廉売水準です。他の電力会社を見ればわかりますが、燃料費調整単価に上限はありません。規制料金の値上げは新電力にもメリットがあります。以下は具体例です。
(追記終わり)
返事した増田の追記読みましたが相変わらずこちらの質問(エリア内での競争について)に答えられておらず、論理にも飛躍があるので議論はここまでにしておきます。ただ、論証のおかしい部分については指摘しておきます。
カルテルは高圧の話で、今は低圧規制料金の話をしているのは理解されてますかね。。。?カルテルの話から不当な競争は良くないってことをおっしゃられてるんだと思うんですが規制料金は今の水準は不当廉売で、電力の自由な競争を妨げています。カルテルの話から規制料金の値上げに反対するのは論理に飛躍があります。あと仮に旧一電が顧客からの信用を損ねているなら好きに他の小売から買えばいいというのはそこまでおかしいですかね?信用損ねた売り手から電気買いたいですか?他の小売から買いたくなりませんか?
内外無差別についてはすでに電力・ガス取引監視等委員会からすでにかなり強く監視されており、破ることは難しいです(不当な取引が無いことを証明するのは無理ですが)。内外無差別に基づいた卸売はすでに行われています(東北電力の例 https://www.tohoku-epco.co.jp/information/1228847_2521.html )。公取が動いた件に関しては内外無差別に関するものというよりむしろ以前から公取から指摘されていた規制料金のあり方にも踏み込んだものと理解しています。煙に巻いたつもりはありませんが、この辺は知っておいていただきたかったです。
何度も言っていますが、今の規制料金は不当廉売水準で、正当な値付けではないです。規制料金は今の状態で放置されることで東電もそうですが新電力もかなりダメージを受けています。私が規制料金の水準について言及したのはそれが原因です。不当廉売をさせてまで「上限に枷をはめておく」ことに公共性があると主張するのは無理があると感じます。
最後になりますが私のことに不誠実な印象があるというぐらいなら新電力に競争上有利な制度があること(常時BUなど)にも触れていただきたいという思いがあります。私がポジショントークをしているならあなたも十分ポジショントークをしていますよ。あと、これは感想でしかないのですが、せっかくの増田で上から目線で不誠実と言ったような人格に踏み込んだ発言をするのはやめていただきたいです。反論する気が失せ、議論の妨げになるので。
(追記終わり)
1. 設置変更許可
このうちよく話題になる柏崎刈羽6、7号機は1のみクリアしている状況です。安全対策工事についてかなり杜撰な体制が明らかになって来ていて(例:柏崎刈羽原発の安全対策工事 未完了 新たに13か所判明|NHK 新潟県のニュース)、原子力規制委員会(NRA)から核燃料移動禁止命令が出ており、いつできるのかは不透明です。これに関しては擁護のしようはないと思っています。2、3についてもいつ完了するかは完全に見通せない状況で、現状では全く再稼働できる見込みはありません。ただし原価計算においてKK7を2023年10月に再稼働することを織り込んでおり驚きを隠せないというのが正直なところです。
私は特重の設置期限延長というのはギリギリできるとしても1のみをクリアしているKKや東海第二などを動かすという意見には賛同できません。それこそ福島の教訓を忘れています。
翻って関電、九電、四電はそもそもNRAへの審査の気合いの入れ方も違い、審査があっさり通っているのはPWRというのもありますが、そもそもの彼らの能力の高さにも理由があります。10年後にははっきりとした電気料金の差が現れていることでしょう。
はっきりさせておきますがこれからのべるのは既設の原発です。新設する際のコストではありませんし、これについては議論しません。新設コストについてはもはや宗教論争で、未だコンセンサスはありません。
すでに設置されている原発については電気料金を計算する際のコストは追加安全対策と核燃料といった見通しのつく固定費用になります。核燃料が固定費となっているのは一度再稼働するとそれにかかったコストが全てサンクコストになるからです(火力と違い、発電をやめても燃料は節約できないため。すなわち短期限界費用が0です)。そのため、燃料費調整単価として計上する必要がなく、従量料金単価の中で見通しを立てることができます。そのため、燃料費調整単価の追加を抑えることができ、消費者が少なくとも短期的に支払う電気代を抑えるメリットがあります。
一つ断っておかなければならないのは原発を運営しているのは東電HDで小売は東電エナジーパートナー(EP)です。債務超過になったのは東電EPであり、関電、九電と異なり原発の運営者と小売りは違う事業者になります。そのため原発が再稼働できない問題は東電HDの問題であり、東電EPはむしろ被害者です。柏崎刈羽原発の杜撰な運営問題と値上げを絡めて論じるのは話がズレます(これは誤解を招いたという意味で私にも責任がありますが)。自由化以降は電気の卸売に内外無差別という原則があるため、発電事業者は同じグループだからといって小売を優遇することはできないことになっているためです(そのため、東電EPが原発の再稼働を織り込んでいるのは若干違和感がないこともありません)。
加えて、言及した増田で原発が動かせないのは東電の責任だから価格転嫁はおかしいという趣旨ですが、そもそもそこに不満がある方は他の電力会社に移られてはいかがでしょうか。東電は今や数ある電力小売事業者の一つでしかありません。不満のある会社とわざわざ契約を結ぶ必要もないはずです。今はもはや独占企業ではないのですし、そもそも規制料金という枠組みが電力自由化と矛盾しています。規制料金が小売の参照価格となっているのはわかりますが、これのニュースバリューは単なる値上げのみであり、政治的含意を含めるべきものではありません。それが自由化です。
(追記)
言及した増田に追記があったのでコメントというか、いまひとつ理解できないので質問を投げておきます。
EPの赤字は結局HDが引き受けているわけで規制料金の値上げで助かるのは結局HDですよね。そこの利害関係を無視してEPは可哀想な被害者でHDの不祥事は別っていうのはやはりフェアじゃない部分を感じます
東電EPがHDの傘下なのは事実ですが、そもそも債務超過の企業はJEPXに参加できません。EPが値上げをしないのならHDが無限に増資に応じるしか企業の存続策はありませんが、あくまで東電HDは私企業です。私企業に赤字での営業を強制する(そもそもその前に倒産するのでは?)ことはできないので致し方ないと思いますが、よくわからないのですが東電をどうしたら「フェア」になるのでしょうか?私はこの状況を放置して別の手段で東電を救済する方がフェアじゃないと感じますが。
これもよくわかりません。差があるというのはどういう意味ですか?同じ小売でも地域によって料金体系に差があるという意味ですか?それが自由な競争の阻害につながるのはなぜですか?エリア内での競争が自由な競争でないってことですか?
規制料金についてもエリアに関係なく本当に自由な競争が行われるのであれば競争によって値下げ圧力がかかるので不要だと思いますが、そういった状況でない以上はその公共性から適切にコストを反映しているか確認が入ってしかるべきだ
前にも書きましたが、規制料金は以前(2016ー2021ごろ)は割高な料金体系でした。それが資源価格の高騰によって軒並み自由料金が値上がりしているため、自由に上げられない規制料金が相対的に安くなっただけです。おっしゃる「公共性」の意味がよくわかりませんが2021年以前の規制料金にも公共性があったとお考えでしょうか?どう言った面で規制料金に公共性があるのか答えてほしいです。
アルミはボーキサイトからインゴットを作る時にはめちゃめちゃ電力を使うけど、再精練するときは驚異的にエネルギー効率がいいんだよ(新規精練の3%しかエネルギーを使わない)。だからリサイクル向きの素材だし、リサイクルの王と言われている。メガキャスティングの歩留まり問題が業界であまり重大視されていない理由もそれ。
新規製造時の電力消費がマッシブなので、アルミの新地金の生産は安い電力を使える国が中心になっている。そのひとつは石油やガスが出る資源国グループ(中国・ロシア・アラブ首長国連邦・オーストラリア・バーレーン・米国など)。もうひとつは再エネで電力限界費用が安い再エネ先進国グループ(水力+地熱発電のアイスランド、水力発電のノルウェーなど)。今後はLCAでのカーボンフットプリント評価が必須なので、自動車産業に限らず、世界的に後者から調達した「グリーンなアルミ」の導入量が増えるだろう。中国や米国も再エネ拡大で後者のグループへの移行が進んでいるね。
おまえはあれこれ言う割に、メガキャスティングのどこがどうダメなのか、多大なメリットと引き合わないようなデメリットがあるのか、全然説明できてない。
俺は親切だから、おまえがはっきり言えないが一般的に言われている「デメリット」をひとつひとつ論証してやろう。
まず、ギガプレスやメガキャスティングについて、決まり文句のように出てくる「歩留まりが悪い」という非難。これってそもそも、その歩留まりがコスト増や廃棄物増に繋がるというエビデンスあるのかねえ。テスラでは、2021年の段階でも歩留まり90%ラインを確保してる。それに使ってるのがもともとリサイクル容易でリターン材を再鋳造しやすいアルミ系合金なので、鋳造不良があった場合も不良品をそのまま溶湯にして再利用できる。もともと1プレスごとの限界費用が激減してるので、イールド率90%のままでもさほど問題がない。材料の無駄も出ないし、大幅なコスト増要因にもならない。ちゃんとできるまで何度でもやり直すだけ。
次、「クラッシャブルゾーンが確保できない」という非難。これはテスラの特許情報などから、トポロジー最適化シミュレーションによって構造的にリブやトラス構造などの変形部を持たせて確保しているのがわかっている(こういうノウハウを知財化できることは先行企業の特権で、この関連特許はトヨタ他の後発企業にとって模倣を妨げる重い足枷になるだろう)。前後アンダーボディをメガキャスト化した車両でのクラッシュテストでも、慣行的なボディと同じように前方衝突・オフセット衝突・後方衝突などを変形吸収できている。米とEUで新車を販売できるのはNCAP/Euro NCAP認定(日本のJNCAPより厳しい)を通ったモデルだけで、ギガプレス版テスラもそれを充足しているのだから、ある意味当たり前なんだけど。
最後、「修理が困難」という批判。メガキャスティングで作る車でも、一般的な乗用車と同じくバンパリインフォースとクラッシュボックスはアンダーボディから分離されていて、軽微な前後衝突はここで吸収されるし、当然交換もできる。それを超えるような(ボディ側に変形が生じるような)激しい衝突は確かに修理不能ということになるが、それは安全性から言えば鍛造+溶接で製造されたモノコック車でも全損とすべき事故だし(溶接で見た目の歪みは直せてもボディの強度自体は回復しないので)、修理にかかるコストも非常に高く、実際に多くの事故車はそうした修理をせずに全損にされてるのが実情だ。
となれば当然、メガキャスティングって利点はいっぱいあるけど、何か採用を妨げるようなマズいことがあったっけ?という話になるわけだ。
反論以前の問題なんですが、エネ庁の資料の12、13ページ見たらわかるけど統合コストに含まれる政策費用の内訳として「放射性廃棄物の処分」って書いてあるからね。しりょうはちゃんとよんでね。あとね、放射性廃棄物は管理じゃなくて処分。埋めた後にコストはかかりません。
TakamoriTarou Wikipediaでもいいので、すでに反論され誤りだとわかる事ぐらい踏まえて書こうな。ネットDE真実はもういらないの。例えば再エネは「統合コスト」なる謎値で既存電力は既存計算のコストと比べるとかほぼ詐欺師じゃんね
しりょうはよんだかな? 経産省とかエネ庁の偉い人たちはネットde真実を真面目に議論してんのか... もう終わりだねこの国
maninthemiddle 増田を読む限りだと、「洋上風力発電は安い再エネだけど政治的理由で無理やり高くしてる」からどんどん普及させて競争させろという感想にしかならない
その通り。それが理想なんだけど、海は国民の財産なので国が海域を決めて事業者に入札させる形式を取ってます。その入札で競争して安くなるはずなのに、値段での競争より早期運開とか他の要素を重視するようになってるから次のラウンドでは価格は下がらないということなんだ。
これは実はまともな発想。需要サイドが合わせるのはこれからの脱炭素への一つの方法で、TSMCの工場建設が九州なのもカーボンフリーの電力が安く手に入るからというのも一つの要素であるらしく(聞き齧っただけなので正確なところはわからないです)、これからデータセンターの立地も脱炭素電源の構成比率が考慮される時代が来ると思うよ。
いい質問だね。答えは資源価格。資源価格が安い2010年代中盤(kwhが潤沢だったのでベースロード不要論が言われてたのもこの頃。発想が3歳児みたいでかわいいね)にはLNGが今の1/10だったから安全対策のかさむ原発なんてコストで到底敵わないから儲からない。でもロシアの侵略で世界は様変わり。ロシアのガスめっちゃ使うやで〜ってなったドイツが今のザマ。一方で原発の高コストの象徴だったフィンランドのオルキルオト3号機は5.5年で元が取れるようになっちゃったんだ(https://twitter.com/noahrettberg/status/1557669614280216577)。まあだから、エネルギー政策は数十年単位の中長期的な視点が必要だということだね。
taitoku そういうのは「再エネ主力電源化」や「エネルギーの地産地消」を掲げた政権をこき下ろして、「2030年に原子力で電気の50%を賄う」と言った政権を褒めてから言ってくれよ。 前者は安倍政権、後者は鳩山政権だよ。
golf4_2001 うーん。太陽光やバイオマスのFITはもう終わって、市場価格連動プラス補助金(FIP)になるし、エネ庁のコスト比較は統合コストの扱いで批判されたやつだし。制度も、需給調整市場や容量市場のことは書いた方が。
よく知ってるね。FITは終わってないけどね。FIPって言うけどあんまり儲からないから今はPPAって小売と組んで自前で電気作って使いますスタイルの方が流行ってるね(再エネ賦課金どんだけ払いたくないねんという感想だけどね)。需給調整市場は調整力公募からの移行で広域的に調整できるので国民の負担軽減には役立つかもという感じかな。容量市場も電源投資の見通し維持のために小売に電源の固定費を負担させるもので、再エネ普及はあんま関係ない(そもそもFIT電源は入札できない。でも再エネ導入を妨げる目的では全くないよ)。相対契約で電源を確保していない小売は死ぬだろうけどね。まあこれまでやってこなかったから需給逼迫警報なんて出たんだけどね。
napsucks でもこんだけ電力高騰してるなかで九州だけかなり平和なのは再エネ(まあ原発再稼働もあるけど)のおかげだよ。https://insight.enechange.jp/markets?f=jepx_checker
これは市場の卸価格(要は短期限界費用)だね。これには後々社会的に負担する羽目になるコストは入ってないね。脱炭素電源は限界費用が0なので(原子力もね)、これが多い九州は当然値段が下がる。でもその分固定費が回収できない電源が増えるわけだから発電事業者からしたら撤退しちゃうよね。だから現に結局九州の2024年容量市場も全部電源が落札してるのに足りてないという割と危機的状況ではあって(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/042_03_01.pdf)、結局未来の固定費用の前借りに過ぎないんだよ。
まともなコメントもあればとんでもないコメントもあるけど、こんなエントリが注目を集めるのは割と嬉しいし、コメントくれてる人には感謝してます。明治維新以降エネルギーに振り回されてきたこの国ではみんなが考えて中長期的にエネルギーをどうするかを考えて、結論を出していくことが重要。風力とか地熱とかエネルギーの種類も大事だけど、1番大事なのはエネルギーの心配をせずにみんなが暮らしていけること。だから、こうやって色々とみんなが勉強して議論して、この国がより良い方向に進めていけることを願ってます。
クソみたいな制度設計のせいで日本はもう安定供給ができる国じゃなくなりつつあるよ
再エネの開発は不要
以前三菱商事系が洋上風力を総取りした件で軽く騒ぎになっていたが、日本で主力電源化しつつある太陽光、風力はコストが低下し、新規の開発案件が日本だけでも目白押しとなっている。ただ、この中長期的なベース電源という言葉を忘れてしまって再エネ大正義の「限界費用」ベースの電力市場の趨勢のために、今まで2回(オイルショック、東日本大震災)しか出たことのなかった電力使用制限令が常態化してしまうレベルで日本の電力環境が本当にめちゃくちゃになりつつある現状は知られていない。太陽光、風力(まとめて変動性再エネ、以下VREと呼ぶ)の3つの特徴を踏まえた議論をしてみたい。
1. 限界費用が0
2. 出力が不随意に変動する
VREは限界費用が0なので市場には0.01円で入札されており(この理論はFITがある現状では額面通り受け取れないものの、概ねこの通りであると理解していただいて構わない)、実際日本でも晴れた日の昼には約定価格が0.01円となっている。これはまさに燃料の投入が必要ないVREの恩恵と言え、この時間にはスポット市場では火力の電気はコスト面で負けるため落札しない。しかし当然VREには発電しない時間がある(設備利用率は太陽光で最大15%、風力で20−30%出典)ため、夕方以降は火力が落札され、現在では資源価格の高騰もあり、15-20円/kWh程度での落札となっている。再エネ関連のトピックでは風力と太陽光は補完関係にあるという言葉でミスリードされることがよくあるが、蓄電ソリューションやバックアップ電源なしでのVREのみでは設備稼働率の低さと稼働時間が集中しがちになるため電力を100%保証することは絶対にできない。そのため現在の電力システムへのVRE導入は火力による調整が前提になっている(蓄電池などによる蓄電ソリューションについては当然後で言及するが、少なくとも今の電力システムではあてにできない)。
しかしながら昼間には火力の電気は落札しないため、当然止めることになる。結果として火力発電は設備利用率が低下するため、採算が悪化する。そのため、効率の悪い火力発電所は環境的側面というよりは経済的要請から廃止されていく。すなわち、現状のやり方でのVREの導入は火力の調整が前提なのに、VREそのものによって火力が市場から追いやられているのである。 加えて、現在電源の大部分を所有する旧一般電気事業者(JERA、関西電力など大手地域電力系発電事業者のこと)は「自主的取り組み」として限界費用での玉出しを強制されているため、この傾向は当面続くと思われる。
加えて言及しておかなければならないのが火力発電の燃料確保(主にLNG)における問題である。燃料には長期契約及びスポット調達の二つがある。長期契約は比較的長期間(およそ10年単位)LNGを買い続け、価格についても変動が大きくない。これは一見いいことに聞こえるが、LNG価格が低下したときも契約通りの値段で支払う必要があるため、近い将来VREの導入が多くなりLNG火力が落札せずにLNGを余らせた場合、LNGを転売することになる。しかしその場合(余るのだから安くしか売れないため)差損が発生することになるため、発電事業者としては長期で需要が見通せる場合のみ契約しようとするのは明白である。一方でLNGをスポットに依存すると、当然高騰した場合でも安定供給のためには買い続ける必要がある上に、いつも買えるとは限らないため、LNGのスポットへの依存の増加が電力市場の高騰に結びつく。JERAのカタールとの長期契約の終了のニュースが記憶に新しい(JERA社長、カタールとの大型LNG契約は更新せず-年末に終了へ - Bloomberg)が、現状の電力市場取引のシステムは発電事業者のスポットへの依存を招く構造になっているため、日本のLNGの長期契約が次々と失われている現状がある。これは欧州の脱ロシアの流れの中においてはLNGの安定供給を危うくすると同時に余計な国富の流出を招くため、政府として対処すべき問題であると付言しておく(参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/sekiyu_gas/pdf/018_03_00.pdf)。
なお、火力発電設備の撤廃に伴う電源不足という現在の課題は既に共有されており、2024年から容量市場が導入され、電源容量(kW)に価値をつけて取引ができるようになった。発電側としては資金回収の目処がつくため発電所の新設のハードルが下がる、と思われていたが、新電力に配慮したい政治的思惑もあって現在の水準は既設発電所の維持はできるが新設は難しい水準となってしまっている。加えて全く語られないので言及しておくが、九州電力管内においては初年度の2024年から既に不調な結果に終わり、供給信頼度が低い結果となっている(ざっくりいうと、九州電力管内は非落札電源はないので「物理的に」電源が不足する)。一体どうするのだろうか?2025年以降の電源容量の不足は全国的に波及しそうで、中長期的に日本国内での電源は決定的に不足している(参考:https://www.occto.or.jp/iinkai/youryou/kentoukai/2020/files/youryou_kentoukai_29_04.pdf)。
これは広く知られていると思うが、稼働できる時間帯の中でも風はいつも吹かないし、太陽は雲に隠れたりする。ただ、その変動にもスケールがあり、数分ー数時間程度の短期間の変動から気候の季節変化に伴う数ヶ月程度の長期間の変動がある(冬に電力が不足しつつある現状を思い出してほしい)。短期間の変動はご存じのとおり蓄電池が解決策になる上に、スポット価格が高くなる他のVREが発電しない時間帯に売電のタイミングをずらせるため、発電事業者には収入の増加も見込めるメリットがある。加えて蓄電池+VREでも既に価格競争力を持ちつつあり、詳しくは言及しないが今年から始まったFIP制度がそれのインセンティブになりうると期待されており、要注目であるのだが、今のシステム設計では、あえて蓄電池のコストを負担しようとする者はいないだろう。
一方、である。長期間の変動は一体どうするのであろうか?残念ながら蓄電池などの既存の蓄電ソリューションでは対応できない上に、将来的にも難しいため、やはり火力発電によるバックアップが必要かつ前提になるのであるが、既に言及したようにこの有様なのでどうしようもないのである。残念。再エネで作った水素で火力発電、という声も聞こえてきそうだが、電気で作った水素を燃やして電気をつくるというこの二度手間、つまり現状の火力発電の熱効率が高くても40%程度(高位発熱量基準)で電気分解で90%とするなら35%程度のエネルギーしか利用できないことを考えると発電に使うより車を走らせるべきでコスト面やエネルギー効率の観点からで圧倒的に不利になる。それならブルー水素の方が良い気もするが、再エネで水素を作れる時代になればわざわざ褐炭だの天然ガスだのの採掘にファイナンスがつくわけないので非現実的。ということで詰んでいます。現状の解決策はありません。どうするんでしょう。再エネのコストが低下しつつあるのは間違いないのだが、それはあくまで発電事業者にとってのコストであり、VREを主電源化するにあたっては社会全体で追加で負担しなければならないコストが発生することはよく理解していただきたい。
インバーターとは直流を交流に変換する素子のこと。VREは交流の発電機は直接利用せず一旦直流で発電してから交流に変えたのちに電力網に乗せるため、従来の電源(火力、水力、原子力)で利用される同期発電機という一定の回転数で稼働させる発電機は利用しない。昼間に晴れた時間帯には以前太陽光の出力制御が行われた四国電力管内の例で言うと6割程度がこのインバータ電源が占めていた。実はこの際に語られないが非常に大きな問題が発生する。と言うのも、インバーター電源には「慣性力が存在しない」のである。?となった方もいると思うので、大縄跳びに喩えてみよう。大縄跳びを飛ぶときは紐に合わせるのではなく、一般に人の声にタイミングを合わせて跳ぶ。このうち、同期発電機は声を出している人、インバータ電源はその声を聞いて飛ぶタイミングを合わせている人である。縄跳びがちょうど周波数に相当し、声が慣性力に相当すると考えてもらって良い。先ほどの晴れた昼間の例で言うならば、昼間は火力が系統から退出してしまっているので、声だしのできる人が減ってしまっている。そのため、仮に残った数少ない声だしのできる人が急に捻挫を起こして縄跳びから退出してしまった場合、声でタイミングを合わせていたインバータ電源は急に声が聞こえなくなるのでジャンプのタイミングがわからなくなり、大縄跳びが成立しなくなる(周波数の乱れが起こり、UFRの作動による停電)。お分かりいただけるだろうか。すなわち系統を維持するためには一定割合の同期発電機や同期調相機といった慣性力確保のための仕組みが必要なのだが、現状のVREの導入の仕方では不可能なのである(よく話題になる太陽光発電の出力抑制もこのインバーター電源の割合を抑える目的も持っている)。以前の3/18の地震の際に火力発電所の停止の影響で関東に大規模な停電が起こったが、あれは仮に昼間であった場合、脱落しているのはほとんど火力発電=同期発電機だったため、インバータ電源だらけになってしまい周波数の乱れが深刻になり、停電する地域がより拡大していた可能性が高い。復旧の際には系統投入は同期発電機から順に行っていくが、VREのほとんどは分散型電源のため司令所で気軽にオンオフもできないため、逆に復旧にかなり時間を要する可能性も高い。つまり野放図なVREの導入はその分散型電源としてのイメージとは裏腹に電力系統の災害時のレジリエンスをも低下させてしまうのである。昼間に地震が起こらないことを祈るばかりである。
この対策としては、慣性力をもつインバーターがまだ技術的に開発されていない上に、すでに導入されている太陽光発電の規模を考慮すれば、現実的選択肢としてはフライホイールや同期調相機としての同期発電機タービンのから回しなどなのであるが、このような施策を行えるのは大手電力のみであり、自由化で体力を奪われている彼らに期待するのは難しいだろう。このままでは晴れた日は出力抑制が続出するのに曇れば火力がフル稼働というあまりにも不健全な電力構成となってしまう。なお、送電線の強化は出力抑制の問題と絡めて語られるが、この問題の対策としてはあまりコスパが良くない。と言うのもJEPXのスポット市場をご覧になればわかるが、例えば東京電力管内で晴れている時には隣の東北電力管内でも晴れている場合が多く、その場合にはどちらの場合でもインバータ電源の割合が高いため相互に接続しても同期発電機の脱落に備えると言う観点からは(もちろん役立つこともあるが、)役立たないことも多く、この問題の解決策として優先度は低い。ちなみに、この件に関しては日本風力開発傘下のエネルギー戦略研究所の安田陽氏のコラム(No.275 慣性問題の基礎知識と最新動向 - 京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座)やこれ が参考になる。
VREは確かに素晴らしい特性を持つが、裏腹にその主電源化には発電事業者ではなく電力系統や大手電力会社の側で新たな投資が必要となる。そのため、発電事業者側から見たコスト(発電コスト)は「安い(≦10\/kWh)」のだが、電力系統全体で負担するコスト(統合コスト)は「高い(~20\/kWh)」(ちなみにこれは電力卸市場+VRE大規模導入をおこなっている国はどこでも直面している問題であり、Death Spiralなどの言葉で検索していただくと良いと思う)。以前統合コストを論じたエントリで太陽光に火力のコストが含まれていることを批判するブコメが多くみられた(例えば、これ)が、この増田で納得いただけただろうか。筆者自身としてVREの導入は避けられないと思っているし、また賛成でもあるが、責任ある立場の人々からこれらの問題を解決しようという風潮があまり見られないので非常に心配している。また、そもそもで言うならばこれらの問題の根源はVREではなく制度設計であり、限界費用の考え方のみで、VREの導入と電力市場の安定を両立させようとするのはどう考えても最初から無理だったと思う。(現在の最もあり得る)結果として安定供給が担保されなくなることと燃料費高騰という二つのツケを消費者に負担させるようでは現在の小売システムや脱炭素に理解を得るのは難しくなるだろう。しかも最も高い代償を払うのはエネルギー支出の割合が大きくなり、家に太陽光パネルを設置できない低所得者層である。SDGsとは一体何だったのか(「10. 人や国の不平等をなくそう」ってあるんだが)。 再エネ議連の皆様には猛省をうながしたいところである。
「再エネの主電源化」: 太陽光、洋上及び陸上風力の変動性再エネ(以下VRE)を主力電源にすることで、電力分野においての低炭素化の達成。バックアップ電源としての化石エネルギーの利用は排除しない(調整力の問題から100%脱炭素は不可能のため、後で理由は説明する)
「小売自由化」:全ての消費者は、参入障壁の低い電力市場に参加した小売業者から自由に選択して電気を購入する。競争原理により消費者は低価格な電力を選択、もしくは証書つき電力を購入することにより非化石価値などの付加価値も購入できる。市場への入札は基本的に電力の限界費用で行われる(現行ルール)。これは達成済み。
「安定供給」:化石燃料市場の動向および天候や気温の条件に関わらず、発電サイドの問題(燃料制約、電源不足や天候不順など)での停電は起こさない(注意:配送電に起因する停電は災害などの理由から0にはできないので、ここの定義には含まない)
大手電力:自前の大規模電源を有する電力会社(JERA、関西電力などといった旧一般電気事業者、ENEOS、東京ガスなども含む)
新電力:大部分を市場で電力を購入して消費者に供給する小売事業者
「再エネの主電源化」「小売自由化」というものを両立する場合、少なくともこの先10年ー50年の短中期においては「安定供給」を日本においては完全に達成するのは不可能であるということ。
理由を説明していく。ただし「再エネの主電源化」を達成しない選択肢は国際的かつ政治的に今後取り得ないので、「安定供給」と「小売自由化」をどの程度のバランスで守るかということを考える材料を提供したいと考えている。まずは今の方向性を維持する場合を考える。
- VREはインバータ電源(直流→交流への変換を伴う)のため電力系統に大規模に導入すると電力系統が慣性力を失い、火力、水力、原子力などの同期発電機脱落時の大規模停電のリスクを高めるため、蓄電設備がない場合は出力抑制が必要
- 付言するが、蓄電池+VREも近年では価格競争力を持ち始めている(ただしあえて蓄電池のコストを負担しようとする者はいないだろう)。また2022年からFIP制度というのが始まり、再エネを市場価格+プレミアムで買い取る制度ができる(インバランスにはペナルティも課される)。この場合では再エネが発電できない、電力価格の高い時間帯に売電するインセンティブを生むため、アグリゲータやFIP対象の発電事業者が蓄電池コストを負担するモチベーションにつながる。一方で資源価格が上がっている現状で蓄電池の資本費を回収できるかは不透明
- この二つは国を超えたレベルの広域な電力系統が存在しない日本で特に顕在化する。
- ネガワット、DRは何れも短期間の電力の過不足への対応技術のためいずれも一日から1ヶ月の長期間のVREの変動には対応できない
- あくまで安定供給に向けた金銭的なインセンティブでしかなく、100%の保障を行えるメカニズムにはならない
- ただし、出力抑制が起こるような先週の土日の東北電力、四国電力管内の例には電力を活用する観点から重要
- VREが安い時間帯に水素を作ってkwが不足する場合の火力発電の燃料とするという発想
- 電気分解で90%、コンバインドサイクルを利用する場合でも高位発熱量基準で熱効率40%程度が限界なので全体として見た時に結果として3割ー4割程度のエネルギーしか利用できないため、ファイナンスの面から達成が難しい
- 発電に利用するならCCS付き水素を利用する方が現実的だが、将来的なタクソノミーを考えると採掘に関係する資産が座礁資産になる可能性が高いという筆者の予想
- 加えて重要なのが、火力発電の燃料、特にLNGは大手電力にとって長期契約するインセンティブが失われるため(長期による電力需要を見通せず、余った場合にはLNG転売損を招く)スポット調達がメインになるが、スポットは割高のため、VREが使えない時間帯のさらなる電力価格高騰の常態化を招く
- スポットは常に入手できるとは限らず、加えて無駄な国富流出の要因になり、経済安全保障の観点から政府も手を打つべき問題
- 結局VREの統合コストが2030年でも原子力に比べて割高なのはこれらの理由による
- 2024年度より容量市場が設置され、電源(kW)を取引できるようになった(すでに取引は開始されている)が、様々な理由から現在の市場価格では既存設備は維持するのは可能(難しいものも多いが)だが新設するには安い値段に落ち着いてしまっている。結果的に現在の市場設計では中長期的な将来の容量を担保できない。
- 既に2024年の九州電力管内の落札結果は供給信頼度が低く、管内の電源容量不足を示唆している。
- 発電設備の資本費を市場に負担させるシステムが必要ではあるが、新電力側からすればメリットが皆無なので難航するのは目に見えている
- 容量市場についても経過措置で取引価格が下がる仕組みになったことからほぼ期待できない
- 現状では再エネの主電源化は遠い目標なので脱炭素および電力価格の安定を目指すなら活用せざるを得ない
- 電力の完全脱炭素化を達成するには将来的にはSMRなどの調整力を備えた原子力発電所が必要不可欠だが...
- 利点
- 同期発電機であり大規模電源でもあるため電源として単純に優れている
- 限界費用は再エネと同様0、福島での事故を加味してもまだ既存原発の再稼働コストは安い
- 燃料費は発電コストの15%程度、かつそのうち加工コストが半分程度なのでウラン価格が費用に占める割合が低く、経済安全保障に資する
- 欠点
- 既存の原発に調整力を担わせるのは経済的理由から難しい(技術的には可能だが...)
- 事故が起こった時の恐怖感から賛否が分かれ、利用のための政治コストが高い上に政治家はそれを払おうとしないので期待できない
- 安全対策及び特重施設設置の問題から東日本大震災から止まっている原発については迅速な再稼働は期待できない
1. 価格面で起こること
現状の市場システムでは燃料調達のスポット市場への依存を促す仕組みになっており、資源価格の上昇がより厳しい形で市場に跳ね返る。そしてそれは最終的に一般の消費者が負担させられる構図が出来上がっている。特にエネルギー価格は逆進性があるため、低所得者への支援は必要不可欠。
2. 脱炭素面で起こること
VREの導入はこれからも進んでいくだろうが、主力電源化を進めるためにはVREの変動をカバーできるシステムが必要。蓄電池は有力な候補だが、主力電源化に必要なレベルの蓄電池導入のコストを誰が負担するのか決まっていないため、不透明と言わざるを得ない。このままでは長期的な変動はともかくとして、短期的な天候の変化にも対応できず、春や夏でも晴れた日には出力抑制が常態化するのに夜間や荒天の日には火力発電所がフル稼働する日常が迫っており、電力の脱炭素化は遥か遠い目標となる。
3. 安定供給面で起こること
中長期的なバックアップ電源を保障するシステムが今の日本には存在しない。現状が進行すると3/22のような需給逼迫警報が特に冬の時期に日常化しうる危険性がある。小売事業者に適切に発電設備の資本費を負担させる仕組みおよび長期的な発電事業者の収入を保証する仕組みが必要。安定供給は破綻に近づいている。
と、ここまで書いてきたが結局再エネの主電源化を妨げているのは制度設計のまずさとしか言いようがない。FITは再エネ導入に大きな役割を果たしたが、野放図な開発を招き、加えて電力系統の不安定さを招いた。パネル設置者が固定価格で買い取ってもらえる一方でそれによって増大した再エネ賦課金と安定供給維持のコストは広く国民が負担するハメになるのでまさに外部不経済としか言いようがない。理念が間違っているわけではないのだが、安定供給と再エネの柔軟性確保に誰が責任を持つのかはっきりすべきだった。つまりこれらは政治の責任であり、政治コストを払わなかった政治家の責任である。最も現実的選択肢としての(特重施設設置期限の延長による)原発再稼働も政治コストの高さから誰もやろうとしない。票にならないことを政治家がやりたがらないのはわかるが政治家の失策のコストを国民が払い続ける現状はおかしい。参院選の後からでも日本の電力の未来に責任あるビジョンを示す政治家が現れることを期待したい。
こんな感じで、今日は電力が足りない見通しで広範囲に節電要請が出されている
https://digital.asahi.com/articles/ASQ3P778DQ3PULFA00C.html
で、これに対する反応として「原発を動かせ」「原発があれば問題ない」という話がちらほらあるけれど、これは間違いだという話をちょっとしたい。
殆ど原発の有無は関係がない。というか再エネによる分散型にでもしない限り、災害対応の本質はそこじゃないだろう。
そして、国民民主党の玉木代表ら、電力関係の関係者はこのことをよく分かってるのに訂正しないのは不誠実じゃないのかと思っている。
簡単に言えばこうだ。(いずれも現在日本に設置されている既存の原発の場合)
一方で、原発があれば災害耐性がよくなる可能性があるものもある。それはこれだ
なぜそう考えるのか。説明しよう。
原発は「ベースロード電源」である、という話を聞いたことがある人は多いと思う。
例えばこんなグラフ
https://www.jaero.or.jp/sogo/detail/cat-01-03.html
サイトは日本有数の原子力ロビー団体、「日本原子力文化財団」のもの。
これは「優れた供給安定性と効率性を有している」と書いてあるが、逆に、長期間連続して同じ出力で稼働し続ける時に最大の効率を発揮するように設計されているため、出力調整ができない、あるいはしないという前提になっていると言う事になる。
だから、今回のように他の発電所が災害で停止に追い込まれても、突然原発の出力を上げることは出来ないし、するためのものではない。
電気は余ったからと言って垂れ流して捨てる事もできない。だからいつもバランスをとる必要があるわけだけれど、そのバランスを取る部分には既存の原発は使えないわけだ。
ただ、これは既存の原発の話で、出力調整が柔軟にできる様にする次世代原発の開発も進んでいる。
たとえば、フランスのマクロン大統領が(脱原発路線の対立候補と違いを鮮明にするため)開発すると言っているのはこちらだ。
この背景には、既にベースロード電源という話がどこかに行ってしまったからだ。
例えば、ドイツは、2018年に100%再生可能エネルギーで供給する日があった。
https://www.cleanenergywire.org/news/renewables-cover-about-100-german-power-use-first-time-ever
ドイツではその後、こういう日が当たり前に発生するようになって、ニュースにもなってない。日本でもそう言う場合がある
https://www.isep.or.jp/archives/library/11271
太陽光・風力などの再生可能エネルギーは燃料費ががほぼゼロなので、余るときはほぼタダで垂れ流してもマイナスにはならない。そうすると全電力需給を賄うほどの電気が生まれ、それが短期市場ではタダみたいな価格で流れ込んでくることになる。この状態の時、ベースロード電源はあるだけ無駄で、タダの電力がある時は止めておける発電所が必要とされている。
そのために原子力でも柔軟に出力が変更出来るものが望まれているというわけだ。ただこうなってくるとライバルは蓄電システムとスマートグリッドになるわけで、勝ち目がある様には見えないけれど。
それから、上に示した日本原子力文化財団のグラフと、その後に示した再生可能エネルギーが入った実際のグラフを見比べていただくと、これだけで原子力ロビー団体の不誠実さがよく現れていて乾いた笑いが出る。
日本原子力文化財団のグラフでは、既存電源の上に薄く再生可能エネルギーが載っているようなイメージ図で、縦軸には単位がない。完全にミスリードを誘っている。一方で再生可能エネルギーの値は実際の値に基づいている。再生可能エネルギーの値はチャンピオンケースが出がちと言う問題があるが、もう少しどうにかならないのか。
人の良い田舎者に聞こえの良いことだけを吹き込んで原発を受け入れさせる昔からのやり方をやり続けているように見える。そんなのはもうやめろ。
仮に、このままプーチンの侵略戦争が泥沼化し、西側の経済制裁が超長期化し、原油やLNGがどんどん上がり続け、原子力発電所の優位性が上がったとしよう。
その時、今の電源に加えて、原子力が加わる事にはならない。原子力発電所ができたぶんだけ、既存の発電は停止しなければならない。そうしなければ、コスト垂れ流しになってしまう。
そうなると、災害対応の難しい発電システムである既存の原発の依存度が高まり、災害への対応は悪化するので、供給の弾力性はむしろ落ちることになる。ただ、これは殊更論うほど影響は大きくないと思う。
一方で、原発をメインにすると改善する可能性があることも考えてみる。
原発に限らず、発電所は、規模をでかくすればでかくするほど効率が良くなると言うのが常識とされていて、どんどん大型化・集積化されてきた。だから一つの発電所が止まると影響が大きい。
さらに、原子力に限っては、法律で年に一回必ず止めて、最大で数ヶ月に及ぶ法定点検が必要とされている。そのため原子力発電所の稼働率は、実はあまり高く無い。
(余談だが、新世代で開発中の原発がやたらと費用を低く見積もられているのは、このメンテナンスが不要だと主張しているため。稼働率が高い事を仮定しているからだったりするが、結局お湯を沸かすわけで、本当にそれできるんか?疑問。閑話休題)
そのため、定期メンテナンスをしている間、それを肩代わりするための余剰電源が必要になり、原子力の場合には他の発電に比べてこの比率を大きくとらなければならない。
それが結果として、災害時の対応の為のシステムとして利用できるとするならば、より弾力性はよくなるかもしれない。
ただ、いわゆる「限界費用ゼロ社会」の典型としての再生可能エネルギーの登場への対応や、北海道電力のブラックアウトの教訓から生まれた分散型電源への転換、さらにはBEVの出現などを考えたとき、デメリットも大きいのだから、この道を今から選ぶ事は無いと思う。原発を活用するにしても、次世代の原発に役割を譲る事になるだろう。
この辺りは、電力関係の関係者はよく分かっているようだが、どうもあえて原子力発電再開へ利用したいのか、どうも誤解を放置しているように見える。
例えば国民民主党の玉木代表などが典型だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/032c2bad737bf517c4d2d5948557b217410858a3
「当面、国民の皆さんには節電をお願いせざるを得ませんが、本来なら国が責任を持って安全基準を満たした原発は動かすべきなのに、批判を恐れ誰も電力の安定供給に責任を持とうとしない現状こそ危険です」
元のツイートはこれか
https://twitter.com/tamakiyuichiro/status/1505521008400560132
これ、よく見ると、今回の電力供給の逼迫に原発が有効だ、と主張はしてないのである。
国民民主党は、脱原発を党の筆頭政策に掲げる立憲民主党には参加できない電力労連の組織内候補が参加しているなど、エネルギー政策については既存電源業界側に立っている政党なので、なるほどよく分かっているなとある意味感心している。
でもこれは最適な社会を実現していくためには問題だ。理想的には全ての情報がちゃんと表に出ていて、そこから何が大事かを考えることが必要だ。
きちんとした情報発信をしてみんなで考える問題だ。
理想的な政治家の仕事とはそう言うもんじゃないのか。利権団体のスピーカーだけなら存在価値はないんだぞと思ってほしい。
肉体作業が安いことが納得いかないというコメがあるが、価値がないんだから資本主義的には当たり前だろ。違うのか?
財の価値は効用で決まる。メディアコンテンツやソフトウェアはコピーが利いて限界費用がゼロになる。だから小説でもソフトでも、1本書いて10本売れば10本分のありがたみの総和が転がり込む。ここに法的規制は何も無いから10本でも100億本でも好きなだけ売れるし売っただけ価値が下がるということも必ずしも無い。
それに対して肉体労働なら車1台を直して10台に結果だけ複写することはできない。1台直したら1台分のありがたみしかない。だから価値がない。金を払うお客さんが一人しかいないのだから一家庭から百億万台分の修理費一億万円を取ることは逆立ちしなければできない。
じゃあ仮に小説やソフトは著作権で儲けているからキャップをかけようという発想があるとする。すると今度は小説家やソフト書きはコンサルに転職して適当な会社に社員千万人に一人一日あたり百円の経費節減を達成する計画を提案したりする。なんなら実際に汗水たらしてビールの一本飲んでもいい。当然その節約効果は現実に存在するのだから節減百円あたり三十円くらい寄越せそうでなければ計画は潰すという話になる。するとやはり車一台ぽっち直すより桁違いのありがたみがそいつに流れ込む。
作ればいいというものじゃない。買って食べてもらわないと意味がない。
今は、生産と消費と災害と補助金、高齢化による離農と参入、規模拡大がある意味よくバランスされていると思う。
ただちょっとした揺らぎでどこでどう転ぶか分からないので、とても不安ではあるが、
そのリスクを打ち消してくれるのが農業収入保険という制度。もはやこれは社会保険の一種だとも思う。
ただその効果は3年程度だ。過去5年の売上を平均して収入補填をする仕組みなので、
●消費拡大を唱えるが、輸出はできない
長期的に消費は落ちていく。
今のところ、輸出で成功しているのは高級果物と肉と加工品(日本酒など)だと思う。それ以外はムリ。
そこには色々な事情があり、個別の農家ではどうしようもない。一例をあげる。
・コメ
1俵2500円、安い安いと騒がれている今年のJA仮渡金(販売額みたいなもの)の一番安い地域の1/3だ。
もし輸出前提で作るコメに補助金がつくのであれば、その大義は国防だと思う。つまり過剰生産しても国民の食糧を守るということ。
そもそもコメの生産国は、自国消費分を作っているのがほとんどであって、生産量に比して輸出量が少ない。
基本的にはほとんどの国が国内消費を前提としている。例外的に生産超過しているのがタイとインド。
中国は現時点ではコメは生産力不足で輸入超過状態。しかしリン鉱石産出量世界一という農業上の最大のアドバンテージがあるので今後は未知数。
肥料について、すでに中国に首根っこを掴まれている状態のようだ。
・野菜
日本には野菜を長期保管するように加工できる施設が十分にない。
なぜなら、日本は国土が狭く生鮮品が生鮮のうちに目的地に着くため、加工施設が必要ない。
その他冷凍・長期保存技術の普及状態などは、おそらく勝ち目がない(たぶん)
投資をしたところで、ほとんど輸出前提の場合のみに使える技術となるので、元から加工が必要な国と比べると分が悪いだろう。
すまないが、これは想像も入っているので、気になる人はファクトチェックをお願いしたい。
全ての工程を自動化することは不可能だ。必ずボトルネックが存在し、そこには人間がいる。
農業は種籾を入れたらコメになるような機械が存在するわけではないし、
この例えですら「種籾を入れる」というボトルネックになりうる工程が存在する。
(#追記:籾を入れてコメにする機械は存在し、それを精米機というが、ここでは主題から外れるのは理解してもらえるだろう)
自動化をすすめるというのは「どこまでコストをかけてボトルネックを解消するか」という問題に半分は置き換えられる。
残念ながら、機械が高度になればなるほど、人間の作業環境は過酷になっていくのではないだろうか。
例えば田植え機を自動化できたとして、今の速度の2倍の速さで作業ができるようになったとしよう。
(田植え期間は限られるので、機械の性能向上と達成可能な規模拡大の最大値はイコールになるだろう)
苗の補給はというかコメ栽培で最も重労働なものの一つ、田植え作業の半分は苗運びと言っても過言ではない。
・2倍の作業者を投入して2倍の面積をこなす(田植え機をボトルネックになる)
・作業者数を同じとして規模を1.33倍にする(苗運びがボトルネックになる)
である。高齢化人不足の業界で前者が容易ではないのは想像つくだろうし、
後者は機械に乗る時間が規模拡大前の0.67倍になるが苗運びの時間は1.33倍になっている。
多分体がもたない上に2倍のはずの機械の能力が発揮されている気がしない。
これでは規模を拡大しない方が正解な気がする。
余談だけど、ヤンマーが提唱した密苗は、この業界では珍しく苗運びの負担減までを考えた優れたパッケージだと思う。徒長しやすいという問題は残ったが。
僕の予想は
・機械化はもう少し進むけど自動化は止まる。結局は人間がやる方が応用がきく。AIの出る幕は全然ない。
・分業が少し進み、プロ農家の仕事は野菜・作物を作ることにフォーカスされていく。イメージとしては酒蔵の杜氏が近いと思う。
・セミプロ農家としての収穫家(とでも言うべきか、収穫調整に特化した人、今はパートのおばちゃんが担当)の登場
・野菜農家は農作業者(正規雇用)1名あたり700万円程度の売上で4人程度で1経営体あたり年商3000万円程度(北海道を除く)
・コメ農家は1経営体あたり15-30ha程度、農作業者(正規雇用)が1-2名程度
多分、このくらいがそこそこ機械に投資もできて利益も上がる、最も競争力が上がる領域ではないだろうか。
そこから上は、規模拡大だけならハイリスクローリターンの領域なので、
突き出るためには、余程の工夫を凝らすか、余程良いビジネスモデルを構築できたものだけだろう。
・きちんと対策を打っていかないと、セミプロ農家が低賃金化していく。
・需要があれば規模拡大を狙う農家は出る。田んぼ一枚増えたところで限界費用は低い。それゆえ食糧不足にはならない。
・60歳あたりで参入してくる人は相変わらずいて、80くらいになれば誰でも限界が来る。農業従事者の高齢化は高止まりしたまま動かず70歳あたりを維持する
も付け加えておく。
https://anond.hatelabo.jp/20210912143002
https://anond.hatelabo.jp/20210911215734
割と無理がある話なので、注釈を入れようと思うよ。
まず基本的なことを確認すると、「ベース電源」、もしくは「ベースロード電源」っていうのは、コストが安くて24時間定常に発電する電源のこと。消費の変動に追従するのは難しいけど安い火力や原子力発電を動かしっぱなしにすると良いよね。という話。
そういう話なので、再エネの値段が原発などより下がって、再エネで24時間まかなえるようになったら、わざわざ「ベース電源」という言葉を使う必要はなくなる(原発も火発も廃止される)。というのは正しい。で、「メリットオーダー」という言葉は、各電源のコストを並べているので、「メリットオーダーで再エネが勝ってるから原発も火発もいらねぇ」、というのは一見正しそうに見える。でもそこには2つ落とし穴がある。
これは、元増田も言ってるけど、限界費用(発電に必要なランニングコスト)で決めてるというのがトリック。限界費用はざっくり言い換えると燃料費。もっというと発電設備の建築費などの初期費用は含まないもの。でも冷静に考えたら、初期費用だって消費者が負担してるはずなんだよね。メリットオーダーはあくまで電力卸取引市場での指標であって、消費者が支払うコストには初期費用が減価償却的に含まれる。にもかかわらず、メリットオーダー主義で再エネを増やすとどうなるか?国民が負担する電気代がドコドコ上がるのである。逆に言うとそのつもりがないなら原発や火発はまだまだ現役になる。この手の話に興味のある人なら、「太陽光は高い」、「原発は安い」という話を聞いたことがあると思う。これとメリットオーダー云々は実は矛盾なく両立するのだけど、これはメリットオーダーには初期費用などを含まない、というカラクリがあるから成り立つ話。
ドイツなんかはこの辺無視してメリットオーダー論などでゴリ押しして脱原発と再エネ増強を推し進めてるので、電気料金は2000年代の倍にまで膨れ上がっている。これについては、ドイツのような「再エネを増やすためなら国民が苦しんでも構わぬ」スタイルは菅直人が日本でもやっている(一般消費者の電気料金に、高いのに無理やり増やした再エネ分の価格が再エネ賦課金として上乗せされている)ので他人事ではない。一般消費者や産業界から批判されて減速しているが、今でも再エネ増強至上主義と国民負担軽減派で綱引きをしている状態である。
なんであれ、メリットオーダーなどではない、本当の意味で「再エネの方が原発や火発より安い」日が来ない限り「ベース電源」という言葉は生き続ける。
要は、再エネを増やしすぎると電力網が変動に耐えられず破綻するよ。って話。再エネは出力が安定しないが、電力というのは24時間365日「消費電力=発電電力」でないとならない。雨の日で太陽光パネルが発電しなくても工場は動くし、風の強い日にガンガン風車が回っても消費者は寝てるかもしれない。これを逸脱すると、普通に停電が起きるようになる。ヨーロッパやアメリカ一部地域で停電が多いのはそれも要因になっている。
現状再エネの変動にどう対処しているかというと、まずは広めの地域で電力網を接続することで、変動をマシなものにしている(平滑化)。つまり「こっちの地域は曇って太陽光の発電が減ってるけど、あっちは晴れてるから変動がマシになってる」的なやつである。とはいえ、それは限界があるので、日本の場合だと揚水発電を含む水力発電のような変動に追従できる電源が吸収して最終的には帳尻を合わせている。そして、そこの吸収力を超える分は電力会社が拒否している。無理に吸収すると電力価格が上がるからである。
ヨーロッパはドイツの先導で「吸収できるかどうかなんて関係ねぇ、再エネ増やすぞ」をやってるので、電力会社(というか電力網)は再エネを拒否しない。ヨーロッパは日本より広いので平滑化は上なのだけど、それでは足りないので変動を全然吸収しきれてない。どうしているかというと、値段が上がる代わりに変動に追従できる火力発電を炊いたりしてなんとかしている。前述の電力価格上昇の一因にもなっているし、ドイツは気候変動対策も掲げて再エネ増やしたはずなのに、二酸化炭素排出がなかなか減らないという状態に陥っている。
現状「再エネ先進国」として元増田が想定しているであろうヨーロッパ各国は、原子力や火発をベース電源的に動かしている(のでそもそもその時点で「ベースロード電源という概念は、再エネ先進国ではもう意味がなくなった」はおかしいのだけど)ので、再エネで本当にベース電源という概念を捨てるためにはもうひと頑張り再エネを増やす必要があるのだけど、実際にはもう相当無理が来ていて、元増田が推している電力卸売市場でも「負の電力価格」がちょくちょく出てきている。つまり「金を払って再エネで発電した電力を吸収してもらう」という状態である。今の所負の価格発動はあくまで短時間ではあるが、更に再エネを増やせば当然こういう時間は増えることになる。この辺さらに無理をすると、発電屋さんから電力網への電力の売値が平均値でも下がりすぎるということなので、再エネ発電屋さんは初期費用を回収できなくなるので発電事業が成り立たなくなる。この辺は1つ目の落とし穴とも絡む話である。
ベース電源が消えるためには上記を解決しないといけないが、現状は解決していないので、ベース電源という概念はまだまだ現役である。というのが結論。まぁ、ドイツの電力価格がガンガン下がったり、火力発電の発電割合が下がって来ないうちは、そのへんは解決されてないと思って良い。
基本的にヨーロッパの政治は、日本的な「実現可能そうな目標を掲げる」ではなく、「最初に無理な目標を掲げて、何年もかけて実現可能レベルに修正する」という流れがあって、有権者もそれを許容しているところがある。ドイツの脱原発とかもそう。それは別に必ずしも悪いことじゃないのだけど、最初のぶち上げのときにもそれなりの論理が求められるので、政治家がハチャメチャ目標を掲げる時にはシンクタンクによるハチャメチャ試算がくっついてるのがヨーロッパである。日本でも少子化対策について政府が出してる試算に無理がありすぎるとかって時々話題になる(いつの試算でも2~3年後には出生率がV字回復を始める試算になっている)が、ヨーロッパでもそれはあるというか、よりひどい傾向がある。なのでヨーロッパ発信の先進的なアイデアについて、それらしい試算が出ていても眉につばを付けたほうが良いよ。って話。
そういう背景があるので「baseload outdated」とかってググるとそういう記述は出てくるかもしれないけど、今の所はそういう記述は活動家が「そういうことにしたい」から書いてるだけだと思って良い。まぁ、そもそも日本語でも「ベーシックインカムをやるしかない!」とか「英語学習には「ながら聞き」が最適解!」とか突飛な記事なんかいくらでも出てくるので、そもそもある記述がグーグル検索で引っかかるからってそれがその言語圏での常識ではないよね。というリテラシーも欲しいところである。
皆さん、そろそろ「ベース電源」て言葉は忘れてくださいの続きというか、コメント増田への返答です。
安田先生は風力屋じゃなくて電力取引市場制度の研究者だよ。あと、引用したコラムは2015年のものなのね。そこから7年経って、太陽光と陸上風力は欧州でも中国でもグリッドパリティ(fitなどの補助金なしのメリットオーダー最上位)を達成しつつある。中国ではこの8月にFITが終了し、純粋なコスト競争力の面でも再エネが最も優位のエネルギーになった。海外の再エネ業界では次のマイルストーンは「洋上風力がいつグリッドパリティになるか」で、風況がよいロケーションなら、既にグリッドパリティの8円/kwh台に突入しつつある。これってどういうことかわかる? 環境正義とか、カーボンニュートラルとか、原子力発電のリスクとかは、もう関係なくなってくんの。正しく設計された電力取引市場では、追加仕入コストがほぼ0のエネルギーに、追加仕入コストに燃料代がかかるエネルギーは絶対に勝てない、ということなんだよ。 火発や原発は、環境倫理ではなく、純粋にコストで再エネに駆逐される。
安田先生の主張が「ポジショントーク」で信頼できないなら自分で色々調べてみればいい。例えばデロイトトーマツのレポートなんかどう?
あるいはwikipediaの「ベースロード電源」項目の英語版やドイツ語版、スペイン語版を読んでみるのもいいかも。日本語版にはない、「ベースロード電源は時代遅れ」という言葉がしっかり書かれている。"baseload outdated"とかでぐぐってみるのもいい。2010年頃から(ベースロード電力需要に対応する)「ベースロード電源という考え方はもう時代遅れだ」という論考がズラズラ出てくる。インテリジェントな電力グリッドと取引市場が整備されれば、ベースロード電力需要はVRE(変動性再エネ)だけで満たすことは理論的に可能だ、という認識自体は、先進国の電力業界ではだいぶ前から常識になっている。日本はこういう議論が10年ぐらい遅れてて、つい最近まで「ベースロード需要はベースロード電源で、ピーク電力はVREで補う」と言い続けてたけど、電力取引市場の導入でこれもだんだん変わってくると思う。
風力発電はコスト的に原子力の1.5倍以上だしもともと需要が低めの冬と夜が良いとなると,市場の余剰電力の飽和が常態化するとかなり設備負担が重くなってきそうだし,供給を絞ってくるように思える.(というか電力市場で売るという想定を立てた場合風力発電はコスト的に成り立つのか?)
これは上でも書いたとおり、少なくとも陸上風力は海外ではグリッドパリティを達成し、コスト的には「成り立つ」ことが証明された。あとは洋上風力をどこまで低コスト化できるかという段階。日本でも、北海道から東北・北陸にかけての日本海の風況なら、洋上風力でもいずれグリッドパリティが成り立つと見込まれているから、かなりの数の開発計画が目白押しになっている。https://mainichi.jp/premier/business/articles/20210421/biz/00m/070/002000d。
ただ,付けたり消したりが二番目に難しいのが原発である以上(一番難しいのは自然エネルギー発電ですよね,逆ザヤでも売らないといけないわけで)調整目的で動かすのもなかなか難しそう.
再エネには、長期償却計画的な意味での逆ザヤはあっても、限界費用的な観点での逆ザヤ状態はない。だから、設備が発電してる時は最安値でも売ればよくて、売電を止める必要は全くない。もし止めるとしても、太陽光はただ系統から切り離すだけ、風力はブレードを寝かすだけなんで、別に大変じゃないけど(九州で太陽光の出力制御をしたとき、「停止や稼動が大変だ」って声は全くなかったでしょ?)。稼働自体に追加コストがかからない再エネ発電設備の事業者にとって、安値でも売るのと設備を止めるののどっちが得か、少し考えてみればすぐわかると思う。
ちなみに、今は日本では出力制御の順序が国によって決められてて、発電量超過の時は、最初に火発を止め、次に太陽光と風力を止め、最後に水力・原子力・地熱を止める、ということになってる。なんでかというと、原発は国が定めた「長期安定電源」だから。経済合理性よりも「最後まで止めてはいけない電力はこれ」という国のルールが優先されて、限界費用が安い電力のほうを先に止めてる。つまり「長期安定電源」という概念自体が、電力エネルギーの効率的な生産と利用を阻害する反市場的な障害物になってしまうわけ。国民が損するってことだよ。
世界的には電力をめぐる議論の中で非主流になったどころか、すでに現実自体に追い越され否定されたようなことを、日本では未だに大真面目に主張してる既存電力業界のステークホルダーの人達がいる。で、ネットには、その人達の言うことを鵜呑みにして10年前の再エネ否定論を信じてる人達がこれまたいっぱいいる(実は俺もそうだった)。「ベース電源」はその象徴みたいなもんだよ。せっかくここまで読んでくれたなら、そのへんの状況は自分自身で納得行くまで調べてみてほしい。その上で生産的な再エネ否定論・懐疑論をやるのは良いことなんだから。
ベース電源とか知ってる?
元増田ではないけれど、ここで「ベース電源」て言葉を出すのは、それこそギャグになっちゃうよ。
電力卸取引市場が導入された地域では、もう「ベース電源(正確にはベースロード電源)」て概念は消失しつつある。「メリットオーダー」って言葉を検索して調べてみて。元増田も言ってるけど、再稼動・運用・停止という一連のフローに多くのコストがかかる発電設備で作る電力は、コスト面で再エネに負けて市場に買われなくなる。火発も原発もそうだし、実は再エネでもバイオマス火発はそれにあたる。
これは再エネの本質的な特性の割に、多くの人が見過ごしがちなことなんだけど、太陽光・風力・地熱・(揚水してない)水力などの燃料不要な再エネの根本的優位性は、環境にやさしいとか何とかじゃなくて、「限界費用(1単位の供給を増やすのに必要なコスト)がほぼ0」ってことなんだよ。なんせランニングコストはメンテ費用以外は0で、あとは自然エネルギーを使って設備が勝手に発電してるわけだからね。
だから再エネ発電事業者は、卸取引市場で多少でも値がつくならその値段で売る。償却費用を考えたら採算が合わなくても、発電しちゃった電力を捨てるよりはキャッシュインがあるぶん得、ということ。
だから再エネは、電力卸取引市場では一番最初に取引され、買われていく。これを、メリットオーダー(コスト比較による取引順位)の最上位に来る、という。再エネで確保しきれなかった電力量、たとえば翌日の想定需要電力量に対して不足する電力を、電力小売会社はメリットオーダーの次の順位にある、再エネの次に安い発電設備から買う。
現状だと、メリットオーダーで再エネの次に安いのは、だいたい原子力と石炭火発で、次にLNG火発、石油火発…という順で並んでいる。つまり原子力は、理論的にはもはや固定的に市場に電力を供給し続けるベースロード電源ではなく、一番安い再エネ系電力が全部買われた後に、まだ足りない分だけ買われるスポット電源になっている。いまは原子力発電所がある地域の多くで「まだ足りない分」がそこそこあるので、原子力発電の電力も全部買われて、さらに足りない分が火発で補われてるという状態だけど、それはあくまで再エネ導入量がまだ少ないからたまたまそうなってるだけで、原発が「ベースロード電源」だからではない。フランスでは、時間帯によっては効率の悪い原発が不採算状態になっている。
再エネに変動性という欠点があることはよく知られてるけど、再エネ化が進んでいる地域の多くでは、太陽光と風力が時間帯的にも季節的にも補完関係にある(昼は太陽光/夜は風力が優位、夏は太陽光/冬は風力が優位)ので、メリットオーダーの最上位という立場は、再エネ群全体で見れば24時間・365日、揺るがなくなっている。
別の言葉で言えば、原発や化石燃料火発の発電設備は、再エネの導入量が増えるとともに、メリットオーダー上の位置が悪くなり、電力を買われない時間や日が増え、稼動率が落ち、収益性が低下し、事業的に成立しなくなっていく宿命にある。しかも、稼動と停止に時間と手間がかかる発電設備は、スポット価格の採算が合わなくても簡単には止められない。止めたりつけたりするごとに余計な金がかかるし、一度止めたら、売りたい時にすぐ売れないから。つまりこういう発電設備=原発は、将来的には、実際に採算が合う価格で売れるかどうかもわからん電力を、ウラン燃料を燃やしながら作り続けることになる。元増田が原発の稼働・休止コストに言及してるのは、そういうこと。
今は欧州でも米国でも、この認識が定着しつつある。安田陽先生の記事とか読めばわかるよ。
https://www.energy-democracy.jp/1002
日本でも、電力卸取引市場の拡大と洋上風力発電の導入が進めば、これと同じことになる。
まあ、くどくど書いても予備知識ないとわかりにくい話だよね。だから今日はこれだけ覚えて帰ってください。「ベースロード電源という概念は、再エネ先進国ではもう意味がなくなった」。はいもう一度。「ベースロード電源という概念は、再エネ先進国ではもう意味がなくなった」。以上、よろしくお願いします。