はてなキーワード: 上着とは
(可能性は限りなく低いが)ネタバレになりうるので、見たくない人はみないでください。というか読む価値はほぼありません。
あんまり突飛な予想はできないし、割と”当たり前”な方向の予想しかしてないので。ほぼ確実に外れます……
1つ目は、酒とバラの日々(Days of Wine and Roses)について。S6Ep01の冒頭は、この映画の音楽をBGMに、恐らくブレイキングバッドで逃がし屋で逃げた後、ソウルの屋敷が差押えされるシーンがセリフ無しで描写される。映画「酒とバラの日々」では、アル中の夫婦の内、夫は立ち直るが、妻はアル中を認めずに夫の元から去ってゆく。この"アル中"は、BcSにおいてはハワードをはめる詐欺、悪事の事ではなかろうか。キムが悪事を止める事・認める事が出来ずに、ソウルの元を去っていく、もしくはソウルと何らかの理由により離ればなれにならざるを得ないという事で、これはBreaking Badにキムが出てこない事の説明になる。Breaking Badの時代にはキムは死んでいるという予想も世では根強いが、これは正直あり得ないと思う。理由は後述。
S6がスタートし、ジミー&キムは、ケトルマン夫妻との類似点が強く示唆されてる。ジミーはキムの言う事に強く影響される。
クレイグケトルマンはベッツィーの言いなりだ。役所から金をくすねたのも、ほぼ間違いなく彼女の入れ知恵で、その言い訳についても彼女の受け売りだ。彼らが横領した金をマイクが盗み、それをジミーがばらした時、金に執着を示した(金のありかに飛んで行った)のもベッツィーで、クレイグはあまり執着していなかった。「ピクニック」のテントでジミーとお金のバッグを引っ張り合ったのもベッツィーだ。S1Ep04で、くすねたお金の正当性をジミーに話しているときも、クレイグは事前にベッツィーに言い含められたことを喋っているに過ぎない。クレイグが執着したのはベッツィーだ。S1Ep01で初登場した際に、ベッツィーは赤いブレスレットと鞄を見につけているが、クレイグはライトブルーのシャツにネイビーのネクタイだ。赤は犯罪やその人の危険性を示している。いい人は青い。(cf. https://www.youtube.com/watch?v=1tN2K_Rq_K4 / https://twitter.com/petergould/status/570055433001369600)
他方、ジミーとキムについてみてみると、S1Ep05で、ネイルサロンでキムがジミーに高齢者法を勧めた直後、ジミーはチャックに高齢者法を専門にしようかと語っている。S6Ep01では、キムが「ソウルが乗る車はこういうの、ソウルの事務所はこういうの」とジミーに彼女の思うソウル像を語っている。S5Ep10から言及されだしたハワードを陥れる事についても、ジミーが乗り気でなかったのを、キムが促した。S6Ep03でも、ジミーはヒューエルに"A couple months from now, there are people whose lives are gonna be way better." と語っている。これはS5Ep10でキムに吹き込まれたことそのままだ。ジミーはキムの言う事をどんどん内面化している。そして、クレイグと同じく、ジミーも妻であるキムに執着している。
クレイグが詐欺などの言い訳をベッツィーに吹き込まれた通り喋ってるのは、ジミーのこれらの出来事と恐ろしいほど似通ってる。この2つのカップルの違いは、金に執着するベッツィーと、正義に執着するキムなんだと自分は予想する。勿論この正義はキムの考える正義で、それを実現するのはハワードを陥れる事によってすぐ手に入るサンドパイパー和解金で、結局金だ。キムはハワードに散々嫌がらせをされ、ジミーを貶されて気分を害してきたが、彼の社会的生命を終わらせるのは完全に一線を超えている。
ここまで2組のカップルの共通点を描いてきた制作チームが、このことをこれから起こる事の暗示として使っていないとは思えない。
実際、ジミーはここまでキムの言いなりで来たわけではない。キムが嫌がる事もやってきた。だからこそ、S6でそれが変わることの暗示としてケトルマン夫妻を再登場させたのでは?
ただ、ケトルマン夫妻は、少なくとも今の所、お互いを裏切るような事はしていない。これがジミーとキムの今後にも当てはまってくれることを願ってやまない。例え"Days of Wine and Roses"のように、キムがジミーの元を去る、もしくはなんらかの理由で離ればなれになるとしても。
滑りのジミー(Slippin' Jimmy)という二つ名を持ち、シカゴサンルーフを(運悪く)子供にみられて性犯罪者になりかけたジミー。彼ははS1では兄思いの善良な人間だった。更生していたのだ。そして独立開業の弁護士として悪戦苦闘してもいた。金に困って当たり屋をたくらんだり、横領犯のケトルマン夫妻から弁護士報酬として口止め料を受け取ったりはしたが、そもそも金に困った原因はチャック(兄)にもある事が描写されている。チャックの負担が無ければ困っていなかったのかどうかは判断がつかないが。
S1終盤に兄の2度にわたる裏切りが発覚し、Marcoの形見のピンキーリング(Slippin' Jimmyの象徴)を身につけ、少し"カラフル"にはなったものの、ジミーはS6になっても、未だに暴力的な事に拒否感を示し、ケトルマン夫妻のような非暴力犯罪者へのシンパシーをも持っている。これはBreaking Badで描かれていたソウル・グッドマンとは明らかに一線を画している。
BrBaS2Ep08で、「ヤツ(バッジャー)を殺せばいい」と言ったり、S5Ep10でハンクを"ベリーズ送り(殺すの暗喩)"にする事を提案するような、一線を越えたソウル・グッドマンにはまだなっていない。フランチェスカに白眼視されるようになった理由もまだ不明だ(ベターコールソウルではまだ非常に愛想が良い)。あと10エピソードでこのラインを超えるにはどういう流れがあるか、と考えると、これはもう「そうある事をキムが望んだから」以外に無いんじゃないかと現時点では思ってる。多分99%外れるんだろうが。実際、ジミーはBreaking Badでキムが「El Camino」で話したような車と事務所を実現している。これが、ケトルマン夫妻との類似点を描いてきた元になっていると考える。
一方でキムはどうか。貧しい家庭に生まれ、HHMの郵便室で働きながらロースクールに通い、弁護士になった。S1では上昇志向で、ハワードみたいなまっとうな弁護士に憧れて、そうなろうとしている彼女がいる。S1では法に触れる事も倫理的な問題もない。
S2Ep01で、キムはBreaking Badの最初の一歩を踏み出す。被害者はケンだ。ホテルのバーでGiselleとなり、ジミー扮するViktorと一緒に株屋をハメて、高級テキーラを奢らせた。しかし、せっかくD&M(有力弁護士事務所)に入れたジミーが、スクワットコブラーの証拠ビデオを捏造するという「危ない橋」を渡った事を非難し、二度としないで、という位には理性的だった。しかし、S2も後半になると、独立と同時にHHMから引き抜いた大規模クライアントメサ・ヴェルデを、チャックの口先で取り戻されてしまう。ジミーは書類を書き換え、兄に恥をかかせる事で、メサ・ヴェルデをキムの手に戻すことに成功する。キムはこのことを知るもジミーを責められず、逆に証拠隠滅を促すまでになっている。
S4ではヒューエルの投獄を避けるために、自ら大掛かりなお芝居を発案し、ジミーと一緒に検察・法廷を欺く。S5では暴走気味のジミーの足手纏いにならないように(という言い訳で)ついに結婚。ジミーがカルテルと仕事をするのも止められず、ジミーの危機には自らカルテルのボスに接触したり、言い負かしたりし、ついにはハワードを陥れる計画を立てるまでに。理由は社会的弱者への弁護に必要な金を調達するため、ではあるが。
S6Ep02の最後には、赤黒だんだら模様のブラウスを着て腕組みしており、最早悪人として描かれている。Ep03ではさらに「I guess it's basically... Do you wanna be a friend of the cartel, or do you wanna be a rat?」なんてセリフを吐くまでになっている。
こうしてみると、この物語が始まった時からの変化は、キムの方がジミーよりも何倍も大きいように思える。もはやS1の頃の、「あと2年頑張れば大手事務所のパートナーになれる」まっとうなキムは居ない。この先、さらにエスカレートしたキムが理想とするソウル・グッドマン。Better Call SaulのジミーとBreaking Badのソウルを超える壁は、このキムの理想・想像ではなかろうか、という予想は的外れだろうか。
Season5までの第一話は、Breaking Badで逃亡した後、ジーン・タカヴィクという人になり切ったジミーのモノクロ・フラッシュフォワード・コールドオープンで始まる。Season6のポスターは、そのジーン(白黒)が色鮮やかな赤い上着を羽織ろうとする瞬間が使われている。ソウル・グッドマンの復活の暗示(ほとんど明示)だ。
これは、Better Call Saul S4Ep05のコールドオープンで、フランチェスカに頼んだ11月12日の午後3時の件でもあるだろう。
さて、ジミー・モーガン・マッギルは、逃亡直前ソウル・グッドマン事務所に置いておいた金とわずかな思い出の品だけを持って姿を消し、ジーン・タカヴィクとなった。そのジーン・タカヴィクがソウル・グッドマンに戻る動機はどれくらいあるのか?想像力に乏しい自分には、キム・ウェクスラーの為としか思えない。どういう窮地のキムをどうやって助けるのか?これも想像力無さすぎて分からない……
一方で、キムを窮地に陥れるのか?という問題だが、こちらも現時点ではラロしか思い浮かばない。Better Call Saul最強ヴィラン笑うボス。彼は、Breaking Badでのガスのセリフ「あんたとホアキンだけだった。彼が最後の身内だ。サラマンカの名前は— あんたで終わりだ」と、Breaking Badでは一度も姿を見せない事で、Breaking Badタイムラインが始まる前に死亡しているというのが通説だった(名前だけはソウル・グッドマンが言及している)。
ここまで、Better Call SaulはBreaking Badの前日譚として、数々のEaster Eggを飾り立ててきた。それらはかなりストレートかつ不自然さのないものだった。視聴者的にも予想を裏切られるようなEaster Eggは無かったように思う。1点だけ、予想外のEaster Eggを埋め込んでくるとしたらここではないか、ここでそれを使うのが一番効果的ではないか?というメタ視点で、ラロの生存を予想している。生存とはいっても、ソウルはラロの死を知らず、ガスやヘクター(こちらだけは万一がありうるか?)はラロの生存もしらない。そういう形の計画的失踪をたくらめる知性も持っている。お膳立ては十分では?
以上、まぁ大した事も書いてないが、この中の少しでも当たってたら後からドヤ顔したいので、アリバイ的に投稿しておく。
いやぁ、しかしまぁ、本当に面白いドラマだよ。世界最高峰だよ。脚本だけじゃない、演技も映像も音楽も、すべてが最高峰。今のご時世、一挙配信ビンジウォッチ(一気見)が流行りだけど、1話ずつ(S6最初は2話公開だったが)公開されて、1週間その話題と次の予想でここまで盛り上がれる作品が今あるんだろうか?これからこれを超える作品が出てくるんだろうか?それが疑問に思えてしょうがないレベルでベターコールソウルにぞっこんだ。
一昨日、近所の焼き肉店で1人で酒席を囲うことがあった。道路や河川での土木仕事でさんざん疲れた後の一杯が最高なのだ。
この日は、川に橋をかけるための準備工として土嚢を積んでいた。小さい工務店の代表として、工事費の設計積算も、現場監督も、銃器捜査、肉体労働も兼任している。
体重が2kgは減った! という確信があるくらい今日は働いた。まずは冷えたビールを注文して、牛ロース100gに、上カルビ100gに、豚のハラミ100gに、鳥のもも肉100gに、石焼ビビンバに、韓国風冷麺に・・・単品のキャベツを素手で齧りながら食べ進めていった。
本題に移ろう。
その店にはキビキビと働く女の子がいる。多分高校生~ハタチくらいかと思われる。その日も、私が注文しそうなタイミングで傍に寄って来たり、注文をしようと厨房を見た段階で気が付いたり、トイレに行っている間に私のせいで汚くなった卓を整えたりと、ファインプレーを見ることができた。
それで、さあ帰ろうかと思ったところ、「お皿拭いたら上がっていいよ」という店主の声を聞いた。あの子が上がる時間になったようだ。22時だった。
その子は壁にあった扉を開くと、中の物置から上着を取り出して、賄いを食べに奥の座席に向かったわけだ。すると、私のふたつ隣に座っていた若い男性(30才過ぎかと思われる)が、「~~ください」と、その子を呼び止めた。その際、私は何とも思ってなかったが、その子が「もうアップ……」と小さく呟いたのを聞いた。
私は〆のアイスクリームを食べていた。考え事をしていた。すると、隣から「お前人生ナメとらんか!?」という声が響いた。例の若い男性だった。ちなみに初対面だ。
後で店主に確認したところ、女の子が「もう上がりなので」と説明したところ、奴さんはキレたらしい。うるせえな、と思いながらも彼の主張を聞くことになった。
・お客が求めているのだから、プロの自覚があるなら応えないといけない
といったものだ。
女の子は俯いていた。マスクをしていたが、瞳をまっすぐ地面に向けて、涙目になっていた。「すいません、すいません」と答えていた。
店主の方を見ると、天然パーマの頭だけがカウンター越しに覗いている。一応、こちらの方を向いてはいる。これは、店主がビヤ樽に座って休憩している時の姿だ。私の定位置から見るとそういう眺めになる。
残りの厨房スタッフは我関せずとばかり、肉肉肉、米米米!野菜ィィィッ!!!といった雰囲気で調理に打ち込んでいた。
若い男性の説教が続く中(上の3点目の途中だった)、私は声をかけることにした。メシがまずくなったからだ。「ちょっといいですか」と声をかけると、男性はこちらを向いて、「あんた、なん?」と方言混じりにこちらを向いた。
「その子は賢いんですよ。次は大丈夫です」と言ったところ、「大丈夫じゃないさかい、こうしてる」と息を巻いて私を威嚇してくる。
「おじさん、いちびんなや」
私は、彼の目をちょっと見つめた後で、
「調子乗っとんのはお前じゃボケ。おい、黙れ。〇すぞ!! おい、お前。黙れといったろ。聞こえとるんけ、おい!」
そんなことを叫ぼうとした直前、ハッとなって我に返った。
あれは5年前、私がまだ不惑になったばかりの頃だった。
この焼き肉店で同じようなこと(迷惑客が店員に絡んだ)があった時、そんなことを叫んで、そいつを蹴っ飛ばして、店から追い出して、さらに何発かブチ殴って、店を出入り禁止になったのだ。
その後、私は反省した。暴力に訴えてはならなかったと。店主に何度も謝って許しをもらい、再入店を許可してもらった思い出がある。
私は、彼に向かってできるだけ穏便になるように答えた。
「すいませんが、私は迷惑しています。聞いていると食事がおいしくないんです。そろそろ堪えてくれませんか。店主、あっちで座ってますけど、ほら。すごい表情で睨んでますよ」
と言った。
若い男性は店主の天然パーマの方を見ると、頭を振るようにして手元の手羽先に目をやった。そして焼酎を飲み始めた……解放のサインだった。
女の子は、私の方に会釈した。表情は見ていない。トコトコと奥の座席に向かい、もう1人のアルバイトの男の子と一緒に賄いを食べ始めた。
私の考えを述べていいだろうか。
やっぱり、ああいう勘違いをした御仁は、一度ガンと言ってやらないと効かないんじゃないか。痛い目をみないと反省しないからだ。あの日はどうにかなったが、あいつはまたやるんじゃないか。
だったら、あの時リスクを冒しても、私はあいつを全力で威嚇し、場合によっては店の内外で暴力によって制裁を下してやるべきではなかったのか。彼は若かった。それも愛だと思う。
そうすれば、もうあの女の子が絡まれることはなくなる。私も焼き肉店を出入り禁止になるリスクはあるが、私と店主は10年以上の付き合いだ。謝ったら許してくれるかもしれない。
少しだけ自慢をさせてもらうが、ケンカは強い方だと思う。社会人になってからも合計で30回以上、祇園や木屋町の路上や、飲食店やスナックの中で暴れたことがある。それこそ色んな輩と戦っているが、負けたことは二度しかない。
現行犯で警察に逮捕されたこともある。が、私は経営者だからクビになることはないし、従業員だって私がこういう人間だと知っている。みんなの前で、「また捕まったよ!」と冗談交じりに言ったなら、職場がまた笑いに包まれるのだろう。
別件だが、私が奴さんくらいの年の頃だった。2005年くらいか。先斗町寄りの祇園の端っこにある居酒屋で、深夜に大学生の男が酒に酔っていた。
私は彼の2つ隣のカウンターに座っていて、その間には黒っぽいスーツの男性が座っていた。片見知りだ。彼は私を知らないかもしれない。
「俺は立命館に現役合格してるし、そのうえ~~(よく聞き取れない)~~、△△(京都で一番有名な製作所)に内定をもらっている。いつか天下を取ってやる」「あのサークルの□□さんは俺のことが好きだ。付き合いたい」「人生はこれからも楽に勝てる」、みたいなことを言っていた。
彼が黒いスーツの男性に絡んだのを覚えている。それを確かめて、酎ハイをぐいっと飲んで、卓に置きかけたところで、カウンターの椅子がガッタン!と倒れる音が聞こえた。
怒号があった。あまりに驚いた私は聞き取ることができなかった。すぐ隣を見ると、さっきの大学生が黒いスーツの男性におそらく蹴っ飛ばされて、仰向けで倒れていた。
黒いスーツの男性はまた何か叫ぶと、大学生の脇腹の辺りを鋭く蹴った。うつ伏せ気味になった大学生を、何度も何度も革靴で踏んづけて、首根っこを掴んで引き上げたと思うと、右の拳を彼の顔に何度もぶつけていた(凄まじい台詞だった。そのまま書いたら当日記は削除されるだろう)。
私は周囲を見た。店長と思しき人間を始め、誰一人として暴行を止める様子はない。ほかの客もそうだ。それもそのはずで、スーツの男は本物の暴力団だった。相応の経験を積んでいる。
私もこの業界人を長いこと見てきた。堅気かそうでないかは、怒号の質と、暴力への慣れと、それらへの躊躇のなさで判断できる。
2022年現在、暴力団員が深夜に居酒屋を利用することは減ったし、居たとしても隅の方で大人しくしている。だが、この時代は違う。まだ彼らに勢いがあった。あの当時は、暴力団組員が数人連れで大手を振って繁華街をうろついていた(だんだん思い出してきた。この頃、木屋町の大通りで公衆の面前でのリンチ殺人事件が起きて、急に警察官が増えたのだ。それで反社や半グレが繁華街から消えた)。
この時、居酒屋の店主が警察に通報していたら復讐を受けたのは間違いない。もし、彼らが「〇す」と言ったら本当にやりかねない。いや、やるのだ。本気度が堅気の人間とは違う。
そういうオーラが立ち振る舞いから漂ってくるものだから、店側が「あのお客はもしや」と気が付いたとしても、また情報提供を受けて真実を得たとしても、何も対応することはない。これが、繁華街から反社の影が消えない理由のひとつである。
話が逸れた。大学生を見ると鼻血を流していた。何度も殴られて、男の衣服を掴んでいた片手がぶらんとなったところで、私は止めに入った。男の肩を後ろから触って、「○○の集まりでいた人だよね。店の奥の客が通報しとったで。はよ逃げ」と、彼の面子を潰さないように嘘をついた。その男は、店長と思しき人間を一睨みすると、お金を払うことなく店外に出て行った。
大学生の方を見ると、大泣きで仲間の肩につかまっていた。店員から「料金はいいですから」と説明を受けていた。
災難だったが、彼はいい勉強になっただろう。社会人になってからあまりに調子に乗ったことをしていると、ある意味で今回よりもひどい目に遭う恐れがある。その前に学べたのだから、彼はむしろツイていた。
例の反社の人は、あれから相当に勢いのある人間に育ったが、現在はわけあって娑婆にいない。あまりに男気が強すぎたのだ……。
さて、私もいい年だ。社会常識はわかっている。何事も、説得によるやり方が一番の至上なんだろう。
が、土木の仕事をしていると常々感じる。正しいやり方は、その時々の環境や条件によって変わるのだ。晴天時と小雨の日とでは、現場練りで配合するセメントと水の割合も違ってくる。
初めに戻る。私は、あの時あの状況では、女子店員と若い人(といっても30は超えてるだろうが)の未来のために、ついでに焼肉店のためにはどうするのが最上だったのだろう。またあの店で同じようなことがあった時、私はどうすればいいのか。
増田の人の知恵を貸してほしい。できればなのだが、金髪のダイダラボッチのアイコンの人か、物憂げな青っぽい女性の人か、楽しい雰囲気の黒髪の女の子か、鼻が大きい男性の人か、おたまじゃくしの人のコメントがあったらうれしい。おたまじゃくしの人は最近見ない。元気にしているのだろうか。
この日記の書き始めは、2022年の3月23日。私の増田歴は2年ほどになる。基本はROM専だ。
週末にはてなブログランキングを見る派なのだが、その一番下に増田部門があるだろう。
『弱者男性』というのは要するに、男としての権利や義務や果たすとか、オスとしての欲求を満たせずに苦しんでいる男性のことらしい。特に、お金とモテの問題が多いようだ。
どれだけお金がある人でも、どれだけモテる人でも悩みはある。自分の思いを果たせずに苦しむことには変わりない。自由は、苦しいのだ。
私は、30代後半になる男だ。これまでずっと、道路や、公園や、箸などの大型建築物を創る仕事に打ち込んできた。あなたが都内暮らしであれば、私が設計した橋梁を使ったことがあるかもしれない。
年に数えるほどしか増田には投稿しないが、退屈にならないように綴ってみる。
以下、当時の日記を加筆修正したものになる。逆時系列にしている。
2022/3/18
職場の窓口にお客さんが来た。女の人だ。見た目は25,6才ほどか。
カウンターに座るように案内をして、その子の説明を聞いていた。
五分も経つと、向こうの説明が粗方終わった。話の最後で、こちらの資料をサービスで何点か手渡した。
別れ際、その子が割と遠方から来ているのを知った。職務経験が浅い印象があったので、「質問はありますか?また来ることがあっても困るでしょう」と話を振った。
その子が顔を上げた。すると、次の瞬間だった。コロナウイルス対策のプラ製の衝立越しに、その子と目が合った。瞼の上の、ふわりとした茶色いパーマが特徴的だった。
「しまった」と感じた。
話の最中、その子の姿を見ないようにしていた。私はずっと、カウンターにある資料に目線をやっていたのだ。
・・・私と目が合った途端に、その子の瞳が大きくなった。茶色い瞳孔をふわっと見開いて、両手の掌をテーブルの端にちょこんと乗せて、こちらに身を乗り出してくる。目を逸らすのも失礼なので、ちょっとの間だけその子の瞳を見ていた。
その後、私は少しばかり視線を落としたはずだ。
「確認ですが、このフェンスのところには町内会の倉庫が置かれるんでしたっけ」
「はい、そうです!」
マスク越しでもわかる、その子の綻んだ顔に目を背けるようにして私は、カウンターの端にあるスタンプ台に視線を移した。
帰り際、その子が名刺を置いていった。会社名と、その子の氏名と、会社の電話番号と、メールアドレスと、上から鉛筆書きで携帯電話の番号が書いてあった。「会社にいない時はこちらに」とのことだ。
接客が終わって私は、名刺ホルダーの一番目立たないところにそれを突っ込んだ。
2021/12/21
給湯室までコーヒーのお湯を汲みに行こうと席を立ち、廊下に出たところで、細身で背が高い子が正面から歩いてきた。いつも髪をお団子みたいにまとめている。
今年入ってきた新人の子で、私と同じ高専の出だった。片手に厚生地のハンカチのようなもの(あれはなんて言うんだろう。ハンカチとタオルの中間みたいなやつだ)を持っていた。
その子は、私とすれ違おうとする時に、「ばぁっ!」と言いながら両手を広げ、私の方に躍り出てきた。私がのけ反るのと同じタイミングで、小走りで後ろ壁まで下がって、にやにやしながらその子の職場の方へと早歩きしていった。
「しまった、対応を間違えた」と思ったのは、その年の6月頃だ。
その子は私の部署で余った事務用品をもらいに来ていた。あの時私は、縦横5000×5000ほどの段ボール(中に大量の事務用品あり)を抱えて、その子に渡そうとしていた。
「○○さん。開いてるよ」
小さい声で、その子のスカートのファスナーが開いて、横から灰色の下着が見えているのを指摘した。
その子は、「あ……」とだけ呟いて、カチンコチンコチンに固まった。私がそそくさと自席の方に戻って座りかけたところで、その子が段ボールを床にガタンと落としたのを聞いた。
どうやら、片方の手だけでファスナーを元に戻すことには成功していた。その子のところまで行って、段ボールを持ち上げて、「ゆっくり運ぼうね」と声をかけた。
今思えば失敗だった。その子は、あれから廊下で私とすれ違う時、たまに凄く嫌そうな表情になる。廊下の端の方に寄って、小走りで駆け抜けるのだ。その度に、申し訳ない、ごめんなさいという気持ちになる。
2021/9/30
よく行く近所のコンビニに、高校生~大学生ほどの女子店員がいる。ハキハキした明るい接客をするし、どんなお客にも物怖じしないし、チャッチャとした勢いで在庫ケースを開けてアイスや冷凍食品を突っ込んでいく。将来有望な子だと感じていた。
ある夜だった。コンビニによっては、お客さんがレジの画面で決済手段を選んだり、現金をキャッシャーに入れたりするだろう。
私の目の前に並んでいたお爺さんだったが、どうやら初めてのようで画面操作に苦戦していた。その子はカウンター越しに指で指示をするのだが、なかなか難しい様子だった。その子の身長は低い。レジから身を乗り出すも、うまくお爺さんに指示ができていない。
でもなんとか、最後の画面までは行っている。私は近づいて、「ここを押すんですよ」とお爺さんにジェスチャーで示した。無事に決済処理が終わった。
私の番がくると、「ありがとうございました」とその子が言った。「○△さんは優しいんだね」と声をかけた。「そんなことないです!」と全力で謙遜をする。
その際、彼女の変化に気が付いたのと、心の中で「やめておけ!」という声がしたのは同時だった。喉の方が早かった。
「今日は、なにか顔が違う?」
家に帰って、ようやくコトバが浮かんできた。あれはチークだ。女性の瞳の下がうっすらと赤くなっているやつだ。
いつだったか、直属の上司が女性社員に対して、「その赤いのは何だ?」と声をかけると、その人が、「これチークです」と返して、さらに上司が「チンコ?」と問い返し、微妙な雰囲気になったのを思い出した。
その子は、私の問いかけにレジの前で飛び上がって、「えー、どこが違いますかっ?」と元気いっぱいに質問を返してきた。物凄い勢いで身を乗り出している。「わからないけど、なにか違う気がする」と答えたはずだ。
以後、その子にレジを受けてもらう時、話しかけてくるようになった。二週間に一度くらいか。
「昨日の朝、自転車で走ってましたね」
「すっかり寒くなりましたね」
「私、来月から薬学部の研修に行くんです。しばらく会えません」
去年のクリスマスを過ぎた頃だったか。その子と話をしなくなったのは。
急に暗い表情になって、私と世間話をすることはなくなった。
できるだけそのレジを避けるようにしたのだが、たまにどうしようもない時があって、その度にまた暗い面持ちを見ることになる。
こういうことがある度に、「間違えた」と感じる。
上に述べた内容は、人によっては嫌味に聞こえると思う。もし、あなたが異性にモテたい人間で、かつモテないのだとしたら、イライラとする内容であるに違いない。
私と目が合った異性愛者の女性は、私に異性としてのアプローチを求めるようになる。目が合わない場合ですらそうだ。
昨年の6月。他組織から依頼があって、コロナワクチンの接種協力の仕事をした時だった。文化ホールの2階席が待機場所だったのだが、覇権会社から来ている女の人は、周りが空いている状態でも私の隣付近に座ろうとした。
○ 私
△ それ以外の主に男性
△ ●●● △
● ○●△
△ ● ● △
オセロだったらと思うと恐ろしくなる。黒が集まっているし、左右には正体不明の駒がある。△がみんなルークで、かつ私の味方であることを祈りたい。
派遣会社の女の人は、昼食を食べている時、チラチラと私の胸板を見ていた。上着を着替える時は特にそうだ。
「お前、さっき俺が着替えてる時チラチラ見てただろ」と言いたくなった。
それで、相手の方に視線を向けると、メジロのようにサッと首を回して向こうを見る。これに限らず、何もしておらずとも人からの視線を感じることが頻繁にある。
2017/9/上旬(〃)
この時までは、「できれば女性の目を見ない方がいい」が方針だった。この体験の後は、「絶対に見ない」と自らに誓った。
あれはまだ、前の会社にいた時だ。地元密着型の企業で、年に一度、会社敷地でお祭りをやるところだった。一般の人を100人ほど招いてワイワイと楽しんでもらうのだが、私は輪投げゲームの担当になった。
昼下がり、1階の広い室内のひと区画で長机に座って店番をしていると、6才くらいの女の子が前を通った。同じ部署の女上司の子どもだった。
その子は輪投げスペースを通り抜けて、私のいる机の前まで来た。それで、微笑みながらその子の顔を見たところ、きょとんとした顔になって、トコトコと母親のところに歩いて行った……数分後、その子は母親の手を引いて、またこっちに来た。輪投げゲームをやりたいという。
その時は普通にプレイしてもらった。帰り際に何かの景品、水鉄砲だったかを渡してあげた記憶がある。
その一ヵ月後だった。私と同僚が、女上司(母親)の会社の忘れ物を家に届けた時のことだ。
呼び鈴を鳴らして玄関口に入ると、女上司が出てきた。忘れ物を渡して、「ありがとうね」と言われたところで、例のあの子が奥の方から玄関に出てきて、私の方を見た。
すると、口をちょっと開けて、後ずさったかと思うと、一目散に後ろに駆けて行った。柱の後ろに隠れると、「いやだ、わたし、あの人に会いたくない!」と叫んだ。
一言一句、誤ってはいない。確かにその子は、慌てた声で、亀のような姿勢になって、そう叫んだのだ。「あんた!この子になにしたの!」と言われた私は、何もできなかった。
次の日から職場に居ることが苦痛になった。とにかく仕事がやりづらい。女上司との仲が悪循環的に悪くなっていった。
この日から半年後、私は転職を決意した。それから約三ヶ月間、耐えに耐え、今の会社に入ってからは、ずっと今の職場で技術関係の仕事をしている。
上のような諸々の現象に出会うことは正直よくある。年に十回以上は固いだろう。
その度に、過去にあった嫌なことを思い出して、「馬鹿なことをしてはいけない」「自分も他人も傷つけてはいけない」と自らを律する。
過去にあった嫌だったこと。思い出したくはないが、この機会だから思い出してみよう。
・地元の高専にいた時、アルバイト先のマクドナルドで、ある女の子と彼氏彼女的な雰囲気になったことがあった。が、今の私も、当時の私も奥手で、仲が進展することはなかった。雪が降る中、飲み会の帰りにその子を家まで送って行って、アパートのドアが開いたところで「今日はありがとう。じゃあね」と言うと、その子は私の顔を見上げて、多分十秒くらい経ったろうか。視線を部屋の中へと送ってその子は、またしばらく黙っていた。すると、突然早歩きで部屋に入って、ガチャンと扉と鍵を閉めた。しばらく立ち竦んでいると、その子の部屋の中で、また何か音がした気がした。私は振り返って、自宅に帰った。申し訳ないことをした、と今では思う。
・電車で移動する時。愛車(自転車)の修理が必要な時や、会社に遅れるリスクがある時は山手線で通勤する。席を確保してゆっくりしていると、いわゆるトナラーというのか、見知らぬ女の人が隣席に腰をかけることがある。40もつれの女性であることが多い。やがて、その女性がウトウトしたかと思うと、私の肩に顔を傾けてくる。逃げるのも申し訳ないので、大抵は我慢している。
・電車通勤時に会社近くの駅で降りるとき、「すいません……」と斜め後ろからオドオドとした、だが妙に勇気を振り絞った声がすることが稀にある。そこには大抵、中学生や高校生がいて、顔を伏せがちにして私の方に歩いてくる。それで、カバンから可愛らしい封筒を取り出して、「読んでください」と手紙を差し出す。『ごめんね。申し訳ない』。そう思いながら、「勇気がいったよね。ありがとう。読ませてもらう」と返す。手紙を受け取ると、手提げかばんに仕舞って、会社が終わって家に帰ると衣装ケースの奥に入れる。時間がある時に恐る恐る読んでいる。
私は幸せではない。普通の人が望む恋愛で幸せを感じられないからだ。
先日の、ある洋風居酒屋を貸し切っての飲み会の席だった。何十人もの社員が参加する、それなりの規模の酒席だ。幹事集団が、開催前の挨拶で「ソーシャルディスタンス」を連呼していたのを覚えている。
若い子が多かった。30代は私と男の後輩の2人だけだった。飲み会の開始直後を除いては、ずっと1人でメシを食べていた。二十分が経ったところで、後輩の男が、「増田さん。今いいですか」と満面の笑みで声をかけてきた。かつては同じ部署で、手取り足取り何年も仕事を教えてきた後輩だ。
要約すると、「あっちに先輩の席用意してますよ」とのこと。
彼の身長は170あるかないかで、体格は太い。着古した作業着で居酒屋に来ていたが、ちょっと汚れのある様がパリピ向けの店の雰囲気にそぐうと感じた。
笑顔はきれいだった。店内の薄暗いLEDに照らされて。少年的な感じのするスマイル。顔は色黒いのだけど、爽やかな感じが伝わってくる。
彼はいいやつだ。数年後には、いいお嫁さんをもらっているのだろう。
「女の子が2人待ってますよ。増田さんのために揃えたんです、褒めてください! △△さん(4階の職場で一番綺麗とされる女性社員)が来てますよ」
後輩はそんなことを言った。私は特別席へと案内を受けるようだ。
後輩は、うす暗い居酒屋のとある一区画の前まで来ると、「俺は男同士で飲みますわ。先輩は楽しんでください」と向こうのスペースに行った。目の前には後輩が説明したとおり、女性が2人、灰色調のソファに並んで座っていた。それともう1人(「ばぁっ!」の子)が2つ隣のソファでまごまごしている。私は対面に座せばいいようだ。
それで、女の子達(同じ階の後輩3人だった)を見た。一人はショートカットで、一人はセミロング?をポニーテールみたいにしていた。もう1人は、肩甲骨の下までの長い髪だった気がする。
雑談を小一時間した。私目線だとそれなりに盛り上がった。みんな大体同じだけ会話ができていたはずだ。退屈そうな素振りをしたこともあったが、気付かれていないと信じる。
この時も、やはり後悔がある。トイレで席を立った時、あの男の後輩を見つけた。少し酔っていたのもあり、声をかけみてた。
「女の子はいいや。後輩君と2人で話したいんだけど。どうかな」
と彼に告げたのだが、鎧袖一触とばかり、「ふざけないでくださいよ~!」と、私の背中を押して、あの子たちのいる席へと連れて行かれた……。
それからずっと、あの子達とお喋りをしていた。やがて、飲み会の締めの挨拶が始まったのに合わせて、私は特別席を立って遠くのスペースに移動した。挨拶が終わる頃、幹事達に1万円を渡して、誰にも声をかけずに帰った。
色々と勉強になる飲み会だった。またいつか、機会があれば行ってみたい、かもしれない。
自分という存在が嫌になる。私にも心があり、胸にときめきを感じる瞬間があり、その存在がほしい、手にしたい、一緒になりたいと願うことがある。
でも、手に入ることはない。手に入れようとする行為自体が罪になる。挑むこと、それ自体が罪なのだ。私にできるはずがない。できない。できないよ。私には。
増田につらつらと想いを書き綴ってはみたけれど、どうやら少しだけ気分が楽になった。つまらない日記になっていたら申し訳ないけど、できればそうでないことを祈っている。
日曜日は金・土・日(昼間)の約三日分のドリンクの補充作業をオーナーから押し付けられた。オーナーから来たLINE、
「今日はドリンク補充をしてもらうことになると思うので、上着があった方がいいと思います」
これでオーナーは「ドリンク補充をやれ」と命令したことになると思っているのが常なのだが、Aさんは「これは命令ではないと思います! やってほしいならそうはっきり明言すればいい!!」と大反発。Aさんは一度怒り出すと本当に面倒くさい。私が自分の仕事を一個省略して、ドリンク補充するねと言うと、やっと納得してくれた。
ウォークイン冷蔵庫に入ったら、出入口の端までギチギチに物が詰まっていて、悲惨な状態だった。Aさんの主張通りに翌日の昼勤のパートさんに押し付けたら、めちゃめちゃ恨まれそうだ。
セール品のドリンクが一本も陳列されていない状態。一体いつからこんな状態なのか。真面目に商売する気あんのかオーナーめ。
一時間半くらいかけて、25ケースを開けて表側に陳列し、余りをストック棚に突っ込んだ。
その間、レジはAさんが一人で担当していたのだが、Aさんは一度も私をヘルプに呼ばなかった。まあ、呼ばれたところで、冷蔵庫内で私は段ボール箱の間に埋もれるようにして仕事をしていたので、すぐにはホールに出ていけない状態だったのだが。この一時間半の間、そんなに暇だったのか? とAさんに聞いたところ、結構混んで客が並んだけど大丈夫だったとのこと。お客様も店内に従業員の姿が一人しか見当たらないと、諦めるらしい。
翌日、今までにないほどの腰痛になった。狭いところで無理な姿勢で作業したのが祟ったっぽい。
火曜日。オーナーが急遽予防接種3回目を受けた。そのまま休んでりゃいいのに、シフトの調整をしなかったらしく、19頃に出勤してきた。
案の定、20時にはオーナーは辛いもうダメだと騒ぎ始めて、21時には、
「Aさんが22時に出勤することになっているけど、なるべく早くに来てって頼んであるから、Aさんだしきっと21時半頃には来てくれると思います」
と言い出した。よっぽど「ねーよ。」と口答えしようかと思ったが、辛い辛い言いながら居られても面倒くさいだけなので、「わかりました」と答えた。オーナー、そそくさと退勤。
幸い、21時から22時まで、珍しいほどの暇っぷりだったので、米飯とチルド商品の品出しを一人でやりつつ、レジ接客もこなせた。
21時56か7分頃、Aさんが出勤。私が一人で米飯の品出しを終えようとしているところを見て、ショックを受けていた。
「え、それ一人でやったんすか? オーナーは?」
「9時には帰りましたよ。きっとAさんが9時半には来てくれるとか言って~」
Aさんはしばし絶句した。
「俺、10時からじゃないとダメだって言ったのに……何でそんなことに……」
「オーナーのいつもの手口ですよ。自分が楽するために従業員を騙して、従業員同士の揉め事にすり替える。毎度の事なんだから、いい加減読んでください。早く来いとは言わないけどぉ」
Aさんが制服に着替えてフロアに出て来たのと入れ違いで、私は上がり。
「パンの品出しがまだ残っていますけど、これは今日は私はやらなくていいみたいなんで、あとは頑張ってくださいねー♪」
Aにショックを受けているようで立ち尽くしていたが、私、容赦なく退勤。
前日、オーナーから水曜はなるべく早くに出られないかとしつこく聞かれたので、
「せいぜい15分前ですかね。せいぜい15分前ですかね!」
と私もしつこく断言した。これはオーナー、私のせいにして17時に退勤してしまう、いつものパターン。だが、だからといって「なるべく早く」になど言ってやらん。本日の相棒はAさんだし。
17時45分に出勤した私を、Aさんの驚愕顔がお出迎え。昨日の今日で自分はなるべく来ないとか!? と言われるより前に、
「なるべく早くとか無理です。私、フリーターではないんで」
と言い切った。
オーナーはやっぱり、予防接種の副反応が辛い辛いと騒ぎまくって、「増田さんがなるべく早く来るって言ってたから!」と言い残して、17時にそそくさと帰って行ったとのこと。ほらね。
私が水曜日にシフトに入るのは珍しいことなのだが、比較的暇な曜日と聞いていたのに、私が出のときに限ってやたら混んだ。
木曜日。数週間前からの計画通り、私は昨日のぶんの代休で、予防接種3回目を打ちに行った。1回目・2回目共に副反応が大したことがなかったので、今回も大丈夫かなと思ったら、とんでもない。夜、急に全身の関節がバキバキに痛み出し、力が入らなくなった。風邪症状は全然ないし、体温も平熱なのに、インフルエンザの一番酷い時みたいな倦怠感だ。寒くないのに背中がぞくぞくするので、布団を何枚も被って寝た。
金曜日。倦怠感はだいぶましになったと思ったら、今度は酷い頭痛。せっかく日曜の午前中まで休みなのに、どこにも出掛けられなさそう。子供達は「ママが毎日家にいる!」と大喜びで、寝込み中の私の背中に突進してくる。
仕事はスーツで、暑いときは上着ネクタイ無しでドゥエボットーニのシャツ、寒いときはウールのステンカラーコート。
私服は上がギンガムチェックで下はスキニー、その上にフードだったり、ピーコートだったり。
体格は基本的に骨も細ければ筋肉も薄いタイプなので、程よくソフトで装飾的にしたい人。
ということで、これとこれに似た色と形の、そこそこの値段の靴を買った。
どっちもエレガントな印象かつカジュアルにも履けて、ギリギリスーツもOKだろうと思ったので。
あとはこういうのをそのうち買いたいと思っていたり。
というか黒の革靴は冠婚葬祭以外に履きたくないので、いつもスーツに合わせる黒靴はアッパーをスエードに変えてみるかーみたいな。
久しぶりの休日出勤は午前で終わるはずだった。
でも、なぜか午後も仕事をすることになった。
お昼を用意していないのでコンビニに行きたいが面倒なので
自販機のカップ麺とデニッシュと麦茶(各100円)が今日のお昼食になった。
気分が晴れない。
休日出勤が原因ではない。このところずっと塞ぎ込むことが多い。数ヶ月前までは三食自炊してお弁当を持参し職場で食べて、洗濯も掃除もしていたけど、ここ最近はご飯も作れず洗濯もほとんどできず散らかしっぱなし。服を洗っても畳まず部屋の隅に置いているので、多分これが洗ったものだろうと探しながら服を着ている。シンクは少し前まで自炊していたときの鍋や食器が洗わずにそのままにしてある。酒は毎日のように飲み続け、0時を過ぎたら飲まないと決めていたが平日でも3時まで飲んでいた。人と会わないときはシャワーを浴びることも髭を剃ることも着替えることもしない。今まで毎日資格の勉強をしていたそれも最近全くやっていない。
何故この生活になったかわからない。それまでは健康的にご飯を作ってそれなりに楽しく過ごしてきたけど何かがポッキリ折れたのか生活の水準が過去にないぐらい酷いレベルに落ち込んでしまった。
この感情をイメージするならば、よどんだ池の中に浮きがあり、それがずっと沈んでいる状態。
たまに水面に浮きが顔を出すことはあるがすぐに沈んで見えなくなってしまう。
何度か浮くことはあるが、浮き続けることができない状態が今である。
僕の仕事は工場の設備管理。学校でいうと用務員さんみたいなものだ。製造と直接関わらず保守管理をしている。
今日は工場の設備の更新工事がありその立ち会いだった。作業は午前だけのはずだったが夕方まで作業をする
と言う話になっており仕方なく夕方まで待った。
それまでは特にすることがないのでないので工場内のエアコンのフィルターをケルヒャーで洗って干して
立ち会いも常に現場にいるわけでなく朝と夕方に打ち合わせをしたり、業者さんが廃材や道具を
置きたいけど現場に置いても良いですか?と電話で聞かれたら「はい、いいですよ。」と言うだけ。これもたいした仕事でない。
せっかく職業訓練校で1年勉強して、それなりの会社に入れたけど技術的な面で全然向上でず
資格の勉強もはかどらず、今年で40歳になるのに結婚もせず彼女もいなくてかなり焦っている。
そのせいか人と話すことも上手くできず余計に落ち込み負のスパイラルに陥ってる。
今日も、ボールペンを落としそれが机の下の取りにくいところに入ってしまっただけで気持ちが塞ぎ込んだ。
池の浮きが水面からどんどん離れていき底に沈むようだった。
こうなったら何か美味しいものを食べようと決めた。ただ最近は外食をよくするが、どれも美味しいと感じない。
だから普段行かない店にしようと調べたら職場の近くに昭和からあるステーキハウスを見つけた。
肉はそんな好きな方ではない。どちらかというと魚派で焼き魚が好きだった。
鯖塩とかアジの干物、さんまの灰干しなどが好きだ。でも行ってみることにした。
仕事を終えたら店に向かう。行ってみると地方の幹線道路沿いというのもあり駐車場は20台ほどあり
うち三分の一は埋まってた。店はえんじ色の布看板で「ステーキハウス マスダ」(仮名)と白い文字で
書かれており「キ」と「マ」と「ダ」の上または下あたりが少し破けていた。レトロ風の建物にしているのではなく
入り口には何年か前の地元の新聞のコピーがあり余白に「○○新聞さんに紹介されました」と手書きで書かれていた。
中に入ると内装も古い印象だった。純喫茶のようなモダンな作りだけど奥には畳の座敷席もあった。
最近の飲食店ではワンオペも珍しくないのに、この規模にしては多い5人ほどのホールスタッフがいた。
メニューを見てこの店の人気メニューとされるハラミステーキ200gとスープ・ドリンクのセットを頼んだ。
最初にコーヒーと同時におかわり自由のサラダが出てきた。サラダはとても細い千切りのキャベツと少量の紫キャベツと人参にフレンチドレッシングがかかっており、ドレッシングはそんなに酸っぱくも甘くもなかった。
食べ終わってからコーンポタージュが出てきたが最近ではあまり見かけないタイプのものだった。
定番のコーンポタージュは黄色く甘くでつぶつぶコーンが入っているものだが、この店はほのかに甘い程度でコクのあるスープで粒もなくドロドロなスープだった。色も発色のいい黄色でなく、ややくすんだ茶色みがかった色だった。美味しかった。
しばらくするとメインディッシュのステーキがライスとともに来た。思ったより大きめの肉で
パセリ入りのバターがのっていてステーキ自体にも味が付いていたのでソースを掛ける必要は無かった。
肉は柔らかく脂もほどよくありとても美味しかった。美味しい肉なので味わうためにゆっくり食べた。
ほとんど関係ない話だが、僕は逆流性食道炎になったことがあり医者からはゆっくり食べるように言われたが守れていない。
(酒を減らすことも言われたがそれも守れていない。)
付け合わせはインゲン二本とスパゲッティとコーン。ステーキハウスなので本格的なステーキを出すはずなのに
付け合わせが社食にあるようなスパゲティ?と少し違和感があったが悪くはなかった。
不思議だったのはこのステーキを食べて「美味しい」と感じたことだった。ここ最近何を食べても何も満たされず
食べたあとは「何で食べたんだろ…」とガッカリすることが多かったので久しぶりに感じる「美味しい」だった。
このステーキより美味しいものは今まで食べてきたはずなのに何故かこのステーキは美味しいと素直に感じた。
斜向かいの席でビールを飲んでいる夫婦がいた。自分も飲みたいがバイクなので飲め無かったが落ち込むことはなかった。
さっきまではこんな事でも深く落ち込んで傷ついていたのに。
隣の席は親子三世代で来ていて一番小さい子は2歳ぐらいの女の子でその両脇に両親が座っていた。向かいには
お爺さんいて、孫と同じピンクの上着を着ていた。お爺さんは機嫌の良いオカメインコのように肩を上げたり下げたりして
孫の気を引こうとしていたが孫は無反応だった。
それをみたら少し可笑しかった。それまでだったら未婚の僕にとって小さい子供を囲み食事をする光景はつらかったが
今は微笑ましいと明るく思える。今ここで何かが変わったかも知れない。
食べ終わって一息つくと会計を済ませる。値段は3000円。今日の昼食の10倍だが特別高いとは思わなかった。
帰りのスーパーで普段は買わない併設されてるパン屋で、朝ご飯の惣菜パンを買う。毎日買ってる酒を買わず
朝ご飯用のフルーツゼリーとインスタントのカフェオレを買った。
シャワーをきちんと浴びて服も着替え久しぶりにノートPCを出して机に向かってこの文章を書いている。
なんか気分がだいぶ良くなった。酒も飲みたいとはそんなに思わない。
あのステーキに助けられたのかも知れない。よどんだ池の浮きがようやく水面から顔を出し浮き続けようとしていた
この気持ちをできるだけ維持したい。
なんだか今週はテンションがいまいち上がらなく低いような気がするんだけど、
なんだかきっと今の私はバイオグラフの波の下のところの停滞時期な気がするわ。
なんかションテン上げたいところだけど、
もうさ、
ここ2週間銭湯行けてないし、
これも一つに原因あるのかも知れないし、
やっぱり私に足りないのはもしかしたら
世間で品薄のヤクルト1000を毎日飲めてない原因が一番思い付いた要因の中で欠けていると言えばそれだと思ったのよね。
多分そうだわ!
飛び込み前転で奪取してその場で飲み干したいほどな意気込みなんだけど。
本当に売り切れ必至必須で
ここんところ輪を掛けて店頭で見かけなくなったわよね。
ここのところの停滞した気分を払拭したいわね。
断捨離もやったら効くのかしら?
まぁそればかりではないと思うけどさー。
そうそうも言ってられないので、
千葉ロッテマリーンズのションテンガリアー選手を見習わなくちゃね!
うふふ。
カフェオレよ。
もしかしたら私の大好きなサンドイッチを朝に取り入れてないというのがションテンが上がらないせいなのかも知れない理由もあるかも?って今さらながら。
まあこれはそれで仕方ないことね。
どこかでセーブしないと
猫まっしぐら!
いやもとい
控えるべきべきところは控えるのよ。
なんだか急に暑くなってきたんじゃない?
でも夜寒くなるかも知れないこともあるかも知れないので、
マジこの季節の次期シーズン的に
やっぱり羽織っておけるものはしのばせておいたほうがいいわね。
朝暑いので、
飲むのには調子良いわ。
すいすいすいようび~
今日も頑張りましょう!
わたしは痴漢やストーカー、セクハラといった性被害に遭ったことがほとんどない。
2年ほど前に電車内で盗撮っぽいものに遭ったことと、高校生の頃に頭のおかしいおじさんにホームから電車内まで延々と怒鳴られたことがあるくらいだ。
盗撮は突き出そうと近づいたらダッシュで逃げられ、怒鳴られた時はもともと要注意人物だったのか、すぐに駅員さん二人が来てくれて、おじさんを両側からガードしてくれていたので涼しい顔をして音楽を聴いていた。
中高と地元でも有名な女子校だったこともあり、周りの盗撮や痴漢被害はかなり多かった。
それに比べればわたしは遭いにくい方だと思う。
元々たまに「ハーフ?」と聞かれるくらい顔が濃く、全てのパーツが大きくて強い。
まさに「気の強そうな顔」だと思う。
さらに高校を卒業してからはウルフヘアにし、水色や紫、緑、緑と紫のツートンカラーなどド派手な髪色を続けてきた。
普段のメイクも派手なカラコンに濃いアイシャドウ、跳ね上げたアイラインとガッツリだ。
魔女みたいに伸ばした爪を真っ黒に塗ることも多かった。
おまけに服装も15センチの厚底を履いたり、露出が多めだったりと、いわゆる「強い」格好が好きでよくしている。
痴漢は特に、露出の多い格好は狙われにくいというのは本当だと思う。
しかし、今年の3月に就活が解禁されてから当然全てやめることとなった。
髪は結べる長さで真っ黒に染め、日常用のカラコンはしてるかしてないかもわからないナチュラルな茶色になり、爪も短く切って何も塗れなくなった。
説明会や面接で直接会社に行くとなれば、うっっっっっっっすいメイクで葬式のように髪を縛り、真っ黒のパンツスーツで向かうこととなる。
つまらない化粧とヘアセットをし、まだ少し肌寒かったのでトレンチコートを羽織り、なんの面白みも大して実用性もない真っ黒のビジネスバッグを持って地下鉄に乗った。
目的の駅で降りて、改札の手前の精算機でICカードにチャージをした。
ポイントも見ようとしたが、2mくらい離れたところに男性がこちらを見ながら立ってたため、精算機を使いたいのだと思い、すぐに譲って改札を出た。
一度目が合った。
カーキ色の上着を着た、大人しそうな20代〜30代くらいの男性だった。
男性は精算機を使わなかった。
わたしは改札を出てすぐのところで立ち止まって携帯のマップを見た。
面接の前にお昼ご飯を買うためにコンビニに行きたかったからだ。
2番出口から出ればすぐセブンイレブンがあったので、構内の案内板を探してきょろきょろしていたら、精算機を使わなかった男性がわたしのすぐ斜め後ろに立っていた。
また目が合った。
この時点で若干不気味に感じた。
ただまあ人を待ってるんだろうと思って変に気にせず、2番出口を目指した。
地下鉄ではあるが平日の昼間ということもあって構内に人はほとんどいなかった。
駅はかなり古く、トンネルのような薄暗く狭い道を歩かなければならなかった。
後ろを見ないようにしたが、ずっと足音がした。
めちゃくちゃ怖かった。
偶然じゃない。使わないのにわたしが使っている間精算機の近くに立ち、不規則に立ち止まるわたしに合わせて何をするでもなく立ち止まって、わたしが歩き出すと同時に同じ方向へ歩き出した。
全てこっちを見ながら。
明らかにわたしを認識している男性が、明らかにわたしの後をつけてきている。
後ろから何かされたらどうしよう。
もし肩を掴まれたら?
本当に生きてる心地がしなかった。
駆け足で階段を登ったら、本当に目の前にセブンイレブンがあったので入った。
走ってもないのに心臓が破裂しそうだった。
外を見たら男性が、肩からかけたカバンのベルトの胸のあたりを握りながら地下鉄の出口のところに立っていた。
また目が合った。
正直泣きそうだった。
声も震えてたと思う。
面接の時間までは30分以上あったから、とりあえずセブンイレブンから出ないように言われた。
外には相変わらず男性がおり、うろうろ歩いていた。
幸いオフィス街のコンビニでお昼休みの時間だったこともあり店内は大混雑。
しばらくしても男性がいなくならなければ店員に相談した方が良いと彼氏から言われ、落ち着かないのでとりあえずひたすら店内をうろうろしていた。
お昼ご飯を食べるつもりだったが、そんな気分になれなかった。
痴漢も突き出せると思ってたし、ストーカーや付き纏いもボコボコにできると思ってた。
気が強いのもあるが、幼少期から10年近く格闘技を習っていたし、大学に入ってからは趣味でキックボクシングもやっていた。
いざという時の護身術として、身についてると思ってた。
実際はどうだ。
だけど、身についていることと目的不明な加害行動を取られたときに恐怖心を抱かないというのは全く別物だった。
彼氏と電話は繋いだまま外に出て、周りを見回してもいなかった。
もちろん周囲に気をつけるよう言われ、そこから徒歩で2〜3分の面接会場のビルに入る時もしつこいくらいに周りを見渡した。
付き纏い、めちゃくちゃ怖い。
比べるものではないかもしれないが、明確に何をしたいかわかる「突然怒鳴られる」や盗撮に比べて、何をしたいか全くわからないのが本当に怖い。
カバンの中に刃物が入ってるかもしれないし、ポケットに薬品を持ってるかもしれない。
よくわからんがまあ何か気に入らなかったんだろうなとわかる怒鳴られや、足なりスカートの中なりが撮りたかったとわかる盗撮に比べて、付き纏いの目的はわからないのだ。
ただ少し付き纏うだけかもしれないし、家までつけてくる気かもしれない。
危害を加えてくるつもしかもしれないし、襲おうと思ってたかも、ナンパだったかもしれない。
ただ何であろうとめちゃくちゃ怖い。
真昼間の街中だったが、めちゃくちゃ怖い。
最悪の可能性をいくらでも孕んでるし、それを考えてしまうから怖い。
もし今までみたいに二度見されるような髪色で、ハロウィンみたいなメイクで、人を蹴り殺せるような靴を履いてたら、たぶん付き纏われてなかったと思う。
21年生きてきて初めての付き纏い被害がたまたま就活生ルックの時だった、なんて偶然馬鹿馬鹿しい。
強い見た目は武装だ。
自信を持つだけでなく、加害から身を守るための鎧だと思う。
誰も話しかけんな!という心持ちで強気でズカズカ歩いているつもりではあったが、「付き纏おう」と思える見た目だったのかと思うと普通にショックだ。
でも就活が終わるまではどうしようもない。
今回はたまたま面接まで時間があり、たまたま彼氏と電話が繋がり、たまたまコンビニに駆け込めたからまだよかった。
30分でだいぶ落ち着くことができ、面接は割と平常心で臨めた。
これがそこまで時間がなく、付き纏われたまま会場に行かなければいけなかった場合を思うとマジで怖い。
そんなん絶対落ちるし、そもそも会場に入った瞬間に泣く気がする。
弱そうな見た目で外を闊歩しなればならない間は、どう自衛したら良いのだろうか。
スカートではなくパンツスーツを着ているし、いくらメイクが薄いとはいえ普通に顔は強いままだし歩き方は強気だし。
本当に、どうしようもないのだ。
最近の当店は、すっかりコロナとは関係なさそうな混み具合になってきた。ちゃんとピーク時に混む。世の中の人達はもはや誰も感染を怖れていないのか? と不思議に思う。
女性店員に構われたいがために来店するおじいさんなお客様の名前を最近になってやっと知った。そしてその人の日常生活についても薄々わかってきた。どうやらずいぶん前に奥さんと死別しているらしい。30代半ばの娘さんが一人いるが、同居しているのかどうかは不明だ。
奥さんが既に故人、というのは何気ない会話でわかった。ある日、お客様が私の手を見て、
「こういうのを白魚のような手っていうんだよな」
と言った。私は別に若くないので手も白魚といえるようなものではないシワシワぶりなのだが、確かに生白いので目の悪い人には白魚に見えなくもないのかもしれない。
「そうでしょうか」
と私が言ったら、お客様は。
「おーよ。昔な、ウチのがよくこんな手を『白魚のような手ねぇ』って言ってたもんよ」
と、寂しげな顔で言った。想像するに、奥様は幼い頃の娘さんの手を見て『白魚のよう』と褒めていたんだろうなぁ。
その、おじいさんなお客様が、ある時期50代くらいの女性を連れて来店していた。その女性はなんか奇妙な喋り方をする人だった。日本人の話す日本語ではあるが、誰か有名人の真似でもしているようだった。その頃は、同じ様な喋り方をするモード系(?)のアラフィフくらいの年代の女性達がやたら来店した時期なので、たぶんあの女性もそれと同類だったのだろう。
変な女を連れて来たくらいだったら、それも人生か……と思う程度だ。だが、おじいさんなお客様はある日急に、変な喋り方をする50代女性を連れて来なくなったので、記憶に残った。
それから数ヵ月経った頃、Aさんが一人で店番をしていたところへ例のおじいさんなお客様が来店。いつもとは全然違う超低姿勢で、
と話しかけてきた。なんでも、おじいさんなお客様は銀行のキャッシュカードを無くしたのかもしれなくて、もしかすると当店で買い物中に落としたのではないか? と思い、来店したという。それで、Aさんは落とし物保管庫と店内をくまなく探したが、キャッシュカードはなかった。そうAさんが言うと、おじいさんなお客様は一旦帰ったがまた来店。Aさんに、実はここの所、銀行口座から身に覚えのない引き落としがちょこちょこあったと打ち明けた。だから、気づかぬうちにキャッシュカードを何者かに盗まれて、預金を使い込まれているんじゃないかという。
……。まあ、そんなことをお年寄りが言い出したら、まず認知症を疑うけれども、おじいさんなお客様の場合……。
「それ犯人、あの女じゃね?」
Aさんから話を聞いて、私は言った。
「ですよねー。きっとあいつにキャッシュカード勝手に遣われてるんでしょうね」
とAさんも言った。まあなんだ。老いらくの恋もいいけど、詐欺に注意ですな。
当店の客層はスーツは着ない職業柄のサラリーマンと職人さんが大多数。なのでスーツを着たお客様自体が少数派なのだが、この間の木曜日は謎に仕立てのよいコートとスーツを着ているお客様がやたら多く来店した。一体、世の中に何があって素敵な三つ揃いスーツ祭りになってしまったのかわからない。上着は車の中において来たのか、夜なのにパリッとしたワイシャツとネクタイに皺ひとつないベストにスラックス姿のお客様も来店。ベストに包まれた姿勢のよい後ろ姿ってカッコいい。いいなあ。あと、アームバンド着けてる人を初めて見た。
コンビニバイトの癖に、今日の今日までセブンイレブンの無料Wi-Fiがもうじき終了することを知らずにいた。たまたま、家の近所のセブンに行ったら出入口付近の窓ガラスに告知のポスターが貼ってあるのを見かけて知った。
私のバイト先には無料Wi-Fiが目当てで来店するお客様が大勢来店する。もしも無料Wi-Fiがなくなったら不便なんじゃ? と思ったけれども、帰宅してググってみたら、案外無料Wi-Fiの終了は歓迎されているらしかった。なんでも、無料Wi-Fiの通信速度はとても遅いので、電子マネー決済をするお客様には邪魔なのだそうだ。へぇ……知らなかったぁ……。