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2023-11-29

出入り禁止基準について思っていること


京都繁華街中京区東山区)で飲食業に携わってきた。もう二十年以上になる。独立してから居酒屋をやっていた。

ワンピースがあるだろう。漫画の方だ。多くのキャラクターが出てきて、麦わらのルフィメンツ(なぜか全員童貞に見える…フランキーは別だ)が色々いて、そのうち誰かとは気が合いそうな気が読者はするわけだ。そんな路線をめざしていた。多様性である

今回は自分の考えを伝えてみたいし、お客さんへの接し方の哲学についてもご教示願いたいことがある。料理の作り方や仕入れ広告宣伝とか、そういうのは自分なりの答えをもってる。が、こればっかりは答えが出ない。「嫌な客は出入り禁止にすべきか」という論題だ。

以下、うちの店でお客さんが取った問題行動+店側の対応という形で説明させてもらう。四人分ある。



一人目:壮年男性のA氏

50代ほどの男性だった。夜7時くらいにお店に来る。いつもスーツだった。小綺麗とまでは言わないけど、まあ整った感じだ。性格はおとなしいのか騒がしいのかわからない面があった。『壁』という小説に出てくるS・カルマ氏なんじゃないかと思える時もあった。

うちの店は、京都個人居酒屋標準的メニューを置いていた。豆腐とか、焼き魚とか、季節の野菜の煮つけとか、湯葉スープとか、柚子胡椒風味の鳥のから揚げなんかの、まあ京都って感じのメニューだ。みんなそれぞれ、お互いの店からメニューを盗み合っているという事情もある。俺も若い頃は祇園で修業してたけど、京都市内の飲食街はすべて巡って勉強した。「うちの店」というのも祇園の端っこにあった。先斗町河原町寄りの。

どの業界でもそうなんじゃないか週刊少年ジャンプだってそうだろう。漫画家同士、お互いに表現方法コピーし合っている。半年以内で打ち切りになる漫画でもそうだし、鬼滅の刃みたいな大傑作でも変わらない(○○の呼吸はジョジョの波紋をリスペクトしてる)。

京都飲食業でもそうだ。同業のお店に一般客として出入りし、美味しそうなのを見つけたら、調理法をこっそり見て、自分の店でも同じようなもの提供する。

うちの店では、とあるサービスがあった。お客が女の子店員飲み物を出すと、暇な時間限定で話相手になってくれるのだ。A氏は、いつも地元高校に通っている女子店員ウーロン茶(400円。お客は2杯目から200円)や、イチゴミルク(500円)をごちそうしていた。それで、15~20分程度のお喋りに興じるのだ。そういうサービスが確かにあって、それを目当てに来るお客さんが何人もいた。40代過ぎのリーマンが多かったかな。

彼らは、女子高生や女子大生に限らず、自分の好みの子がいたら「一杯飲んでいいぞ」と声をかける。お気に入り店員飲み物をやり、わずかな時間の楽しみに興じる。

それで、店としては売上が立ち、女の子は注文金額の50%のバックがもらえて、お客さんも喜ぶというわけだ(損して得取れ)。だがある時だったか、猛者の女の子がいて、なんと誕生日シャンパンを奢ってもらっていた。当店の一番安いシャンパンは二万円だったので、一万円儲けたことになる。いやぁ、あれには参ったね……(以後、一万円超の場合は25%バックに変更した)。

そんなある日だった。A氏が行動に出た。帰り際に、ドリンクを奢った女子高生に連絡先を聞いて、食事約束をしようとしたのだ。女子店員は、「え~」といった表情でケータイを取り出していた。すぐさま俺が止めに入って、「お客さん。困ります」とひと睨みすると、「あんたの方がいけんで。こっちの自由やん」とアレな発言をしていた。

この人には二面性があった。このお店に居る時と、それ以外の社会とで違う顔をしていた。女の子には、「オレね、自分名前がわからなくなることがあるんだ」とか、「世界の果てに行ったみたいなあ。世界の果てってどこかわかる?」とか「このグラスと君のグラスが、この間がね、オレとあなたの心の距離」など意味不明なことを喋っていた。

ある日、同じ会社の仲間数人と一緒にお店に来たことがあるが、まるで別人だった。大人しくって何も喋らない。黙々と飲み食いしている。女子店員が話に行っても変わりなしだ。借りてきた猫みたいだ。

かつて、A氏の「世界の果てはどこだろう?」という質問に対して、地元高校に通ってる女子店員(※上で誘われた子)が、「うちの店も世界の果てのひとつですよ。地球は丸いんですよ」と答えたことがあった。でも、その子に話しかけられても黙っていたかな、確か。

で、A氏を止めに入った俺はイライラしていた。「すいませんけど、もう来ないでくれます? 次来たら、その場であんたの会社に連絡しますよ。警察は勘弁してあげますから」とタンカを切った。すると、A氏はそそくさと会計を済ませて出て行って、それ以来うちの店には来ていない。

その日、店員から感謝された。普段、俺に尊敬の念を一切抱いていないと思われる従業員ですら「マスター見直しました!」と言ってくれた。世界の果ての女子高生は、「やりすぎだったんと違います?」と言っていたが、その子未来のためには正しい行動だった。

俺の考えが変わるきっかけだった。どんなお客さんでも受け入れるのが飲食店の正道だと思っていた。面倒くさい客はいるが、それが多様性の確保に繋がるという考えをもっていた。



二人目:B女史

B女史は大学生だった。同志社女子か華頂短期大のどっちかだった気がする。

の子は、いつも夕方に来て、安い定食だけ頼んでサッと食べて帰る。週に一回ほど来ていた。「高島屋化粧品店でアルバイトしてる」と、B女史と店員が話しているのを聞いた。

ちょっと話は逸れるが、うちのお店には、居酒屋としてのメニュー以外に定食があった。安い値段で昼食を食べたい人に向けて、なんと800円でから揚げ定食弁当)を用意していた。味は当然祇園レベルだ。先斗町木屋町にある標準的な店とは比較にならない。

祇園にも、夜に高い値段で酒肴を出している居酒屋が、昼の時間帯にリーズナブル価格で昼食を提供している例がある。それでも千円超えは基本だった。それを、原価計算を積み重ねた末に800円という価格を実現させた。しかウーロン茶が一杯まで無料だ。二杯目から200円。

お昼時に、店の近くの路上弁当を売りに出すのだが、売り切れることが多かった。やはり、コスパがいいのがわかるのだろう。少なくとも毎日30食は売れていた。コスパでこの定食弁当)に勝てる可能性があるといえば、近所だと長浜ラーメンやよい軒くらいのものだった。安い店だと、松屋が近くにあったが、あの定食の味に比べればゴミクズのどちらかだった。

※ここに書いてる話は、相当昔になる。今だと祇園レベルの味で800円のから揚げ定食など不可能だ。あと、今だと道路売店とかやったらすぐに警察が来る。昔は、無許可ラーメン屋台などがよく営業していた。

経営回転寿司のやり方に倣っていた。くら寿司とかで、いくらウニ100円ほど(※当時の価格)で廻っているだろう。ああいう原価割れメニュー提供できるのは、赤だしとかタマゴとかラーメンとかうどんとかデザートとかで黒字にしているからだ。撒き餌である

祇園寿司屋で出してるようなウニだったら、木箱ひとつで当時5万円(200円/g)はした。回転寿司がどんなウニを使ってるかは知らんが、卸値だと(5~10円未満/g)といったところか。祇園で出てくるウニの握りなどは1貫3,000円以上することもある。それでもサービス価格だ。

他流であっても、いいところは積極的に盗むべきだ。から揚げ定食が800円だと原価割れ寸前なのだが、そのお客さんが夜の時間帯にも来てくれたら投資は回収できる(弁当にチラシ入れてる)。そんな未来に賭けていた。

B女史に戻ろう。上のから揚げ定食は、昼の売れ残りの一部を再利用して夕方以降の営業時間にも提供していた。クオリティが落ちてる分は600円にしていた。そして、彼女はその定食しか注文しなかった。夜に来てくれるわけじゃなし、お酒を頼むわけじゃなし、友達と一緒に来るわけでもない。30分くらい居て、女子店員イケメン大学生店員と軽くお喋りをしてアルバイトに出かけていく。

彼氏同志社)と一緒に来たことは何度かあったが、なんと、二人でひとつから揚げ定食シェアしていた。一緒に食べていたのだ。ひとつ定食を。仲睦まじく。電線に留っているツバメカップルみたいだった。

ここまでは別にいい。から揚げ定食投資なんだから

B女史は、ほかの男性から不評だった。うちの店はコの字のカウンターだが、そんなに広いわけじゃない。常連同士、話をするのが基本だ。

B女史の近くの席になった男性客が話を振ることがあったのだが、B女史はいつも愛想がなかった。せめて演技くらいすればいいのに。ストレートに「気分が悪いです」とか「今話したくないです」とか、人が不快になる言葉を発していた。

このまま社会人になれば通用しないだろう。せめて愛想はよくするべきだ。ジェンダーとか多様性とか言われているけれども、保守寄りの価値観大事にすべきだ。人間本来的な感情に根差しているのだから。B女史は、せめて社会関係を保てる程度の『優しい嘘』はつくべきだった。

それである時、とある男性客のおじさんがB女史を叱ることがあった。「あんた、もう少し考えて行動しいや。いけんで。もっと仲ようせんと。就職しても通用せんで」だったかな。俺もそのとおりだと思い、フテ腐れているB女史をやんわりと宥めた。

すると、「だったら、もっとおいしい店を紹介してもらっていいです?」(※京都だと、いいです?↑とイントネーションが上がる)と、人を舐めくさった態度を取るので、俺も頭にきてしまった。

「前から思ってたけど、このお店は君には合ってないみたいや。もう、今日で来るの終わりにしとき

と言ったら、B女史が席を立って会計をしようとした。すると、近くに座っていた若手社会人の常連さんが、「○○さんだっけ。あなた、まだほとんど食べとらんやん。俺も注文しとらんし、よかったらいい店教えてやろか。どうする、まだ時間ある?」と提案をして、それでB女史も同意して、二人で一緒にお店を出て行って、それから彼女が店に来ることはなかった。



三人目:C氏

さっきの若手社会人だ。当時30代前半だったが、人間ができていた。相応の男前で、体格もあった。すでに遠方に異動しているので言わせてもらうと、日本銀行職員だった。ほかの常連さんには内緒にしていたが。会社名を聞かれると、彼はやんわりと『優しい嘘』をついていた。

ちなみに、後で聞いたところによると……彼がB女史を連れて行ったのは、京都で一番予約が取りにくいとされる伝説居酒屋だった。グーグルマップに載っている。高島屋からも近い。C氏は、お店の扉を開けて、「今日入れますか」と店主に声をかけたところ、予約客がキャンセルしており入ることができたらしい。

だが、B女史の財布には非常に厳しい金額だった。C氏が「千円払ってくれる? 好きなだけ食べていいから」と言うと、B女史は本当に好きなだけ食べたらしく……C氏によると、その時に連絡先を交換して、またおいしい店を紹介する約束を取り付けたらしい。それで、その後はと言うと……これはまた別のお話、機会がある時に話すことにしよう。

ここだけの話、『伝説居酒屋』(食堂 おがわ)はバッファーを作っている。全席が予約されてるわけじゃなく、店主の気分次第では、予約なしで入れてくれることもある。後は、偉い人が来店した時くらいか体感だと、5回に1回くらいは予約なしでも入れる。

とにかく、C氏は人格レベルが高かった。若い店員にも敬語だし、いろいろ注文するし、お店の周年記念にはシャンパンを入れてくれるし、テーブルは綺麗にして帰るし、飲み方も綺麗だ。

なぜC氏をここで挙げるかというと、彼もまたやってくれたのだ。どんな人間にも欠点はある。C氏の欠点は、完璧すぎることだ。完璧すぎて、ほかの仏―の人間からすると予想できない方向でトラブルを起こす。

事例①

女子店員がC氏に近づきすぎる。彼はモテた。見た目はそれなりで、清潔感があって、人当たりがよくて、自信に満ちた振る舞いをしていた。彼からいい扱いを受けたい女子店員人間関係が悪くなった。

事例②

正義感が強く、営業中のトラブルに首を突っ込む。警察を呼びたくないのに彼が呼んでしまって、えらいことになった。特に暴力団半グレ関係。体を張ってくれるのはいいが、清濁を併せ呑んでほしかった。

みかじめ料とか何とか言われても、払わねばならないお金だってある。俺に言わせれば、あれは税金一種だ。あれで飲み屋街の平和が守られている面は確実にある。あの辺りの多くのお店は、おしぼり台や観葉植物リース料として支払っている。たまに半端なやくざ者(半グレに近い)が現金要求してお縄につく。

事例③

4人目に譲る

ある時、C氏にやんわりと警告をした。うちの店の課題に首を突っ込まないでほしいと。うちの店の課題自分解決する、と。行政に頼るのは最後の手段なのだと。

それからスッタモンダあって、彼はお店に来なくなった。後は風の噂で聞く程度だ。残念な結果になったが致し方ない。いいお客さんだったけど、これも運命だ。




四人目:D氏

時系列的には、C氏がまだ来ていた頃だ。

D氏は、障害者だった。軽度の知的障害で、あまりモノを喋ることができず、メシは食えるが手がおぼつかない。テーブルの上は汚い。いつも母親が一緒に来ていた。

来客を断る意思はなかった。当然だ、お客さんなんだから。いつだったか、彼が口からご飯を吐き出す行為マネしていた大学生立命館だったと思う)には厳しく注意をした。「客を馬鹿にするな。お前、今度やったらクビにするで」と明言している。

が、お客さん同士のトラブルになると話は別だ。ある日の午後八時頃だったか、その母親とD氏が米類を食べていたところ、ゲフンゲフンとD氏がせき込んで、口の中から飛んだ米粒が別のお客さんグループビールジョッキに入った。幸い、店員が気が付いてすぐに替えのビールを用意した。ほぼ満席で席移動は難しかった。

その日、同じようなことが何度も起きた。何度も何度も、D氏の口から飛び出したモノが、隣のお客さんのスペースに飛んで行った。ついにキレたお客の一人が、「おいあんた! そこのぎこちない感じの人(※京都人なりの婉曲表現)、家に帰してくれへんか!!」と母親に怒鳴った。

母親は「すいません」と謝っていたが、彼が譲る様子はない。「その人は外に出したらあかんのと違うんか。なにしとん。帰ってくれん?」と捲し立てる。

母親は何度も謝っていた。その間も、何がしか物体がお客さんの方に飛んでいく。彼はさらにカッカして、これはいかんとなったところで、離れたところで呑んでいたC氏がこちらを見た。

俺はもう、余計なことは勘弁願いたかった。母親に向かって「お代はいいんで。今日は帰ってください」と伝えた。すると「すいません。堪忍してください。今日誕生日なんです」と返ってきたが、今度はもっと強く「帰ってほしい」と伝えた。

すると、C氏が怒った様子でこっちに来たのだ。「増田さん。その対応で本当にいいんですか。自分がこの人の隣に行きますよ。五人くらいスライドすればいいでしょ」と。

俺はキレた。「お店のことに口を出さないでって言ったでしょ。俺が責任とりまから」と端的に返すと、C氏は憮然とした様子で自分の席に戻った。

母親と息子には、その場で帰ってもらった。お母さんには「ほかのお客さんのこともあります。お店が空いている時でないと今後のご利用は難しいです」と伝えて、お店の入り口まで案内した。

翌々日だった。京都市役所の福祉部署から架電があった。母子のことで、差別に該当するおそれがあるとの内容だった。C氏か、D氏の母親京都市に連絡したのだろう。俺はこういう卑劣行為が許せない。どうしてこんな惨いことができるのだろうか。「障害理由差別をすることは~」と電話口で喋る京都市の職員に怒号を発した。

「ええか、こっちは商売でやっとんのやぞ。お前らは公務員やんけ。民間商売に口はさむなや。こっちがどんだけの思いで商売やっとんかわからんやろ。障害者も受け入れんといかんのくらいわかっとる」

みたいなことを言った。すると、福祉部署職員は変わらず「差別はだめ」とオウムのように繰り返すだけだった。「公務員は楽でいい。頭の中が非現実で、お花畑で、お金暮らしことなんか考えなくてもやっていけるんだからな。羨ましい」そう感じていた。

「それは行政指導やろ。従うかどうか選べるんやろ。ウチは従いません。ええな、おい、おーーーーい!! わかったな」という具合で、受話器をガチャンと置いた。

これが商売世界だ。勝った負けたの世界では、強く、強く自分意思を強く主張できないと食っていけない。公務員サラリーマンじゃないのだ。



結局、お客に接することの哲学というか、そういうのは何が正解なのだろう。どういう場合に出入り禁止にすべきなのか。未だに答えが出ない。

ところで、『うちの店』は、約二年前に閉店した。コロナウイルスに勝てなかった。飲食組合から休業要請の通知があって、当初は休んでいたが、行政対応が誤っていると気が付いて通常営業に切り替えた。うち以外にも、筋違いなことをしている行政には従わないという店舗がいくつかあった。

が、コロナウイルスは強すぎた。店を閉めざるを得ないほどに経営が追い込まれた。ほかにも、グーグルマップ食べログ口コミにあることないこと書くような卑劣な奴らがいた。自分正義とでも思い込んでいるのだろう。

今でも飲食仕事をしている。いつかまた、お金を貯めて店をやるのが目標だ。あの店は居抜き店舗で残してある。幸い、まだ借主は現れていない。いつかまた、店を開いてみせる。

今回は、そんな決意を新たにするために増田投稿した。どんなお客を断るべきか、受け入れるべきか。何かアドバイスがあればいただけると幸いです。

2023-06-08

anond:20230606163132

天下一品先斗町支店に行ったら、町家天下一品が実現して、しかインスタ映えする写真が撮れたのに。

と言おうと思ったら、今は無かったよ。残念!

2023-01-14

焼肉屋で後悔をしたこと

一昨日、近所の焼き肉店で1人で酒席を囲うことがあった。道路河川での土木仕事でさんざん疲れた後の一杯が最高なのだ

この日は、川に橋をかけるための準備工として土嚢を積んでいた。小さい工務店代表として、工事費の設計積算も、現場監督も、銃器捜査肉体労働兼任している。

体重が2kgは減った! という確信があるくらい今日は働いた。まずは冷えたビールを注文して、牛ロース100gに、上カルビ100gに、豚のハラミ100gに、鳥のもも100gに、石焼ビビンバに、韓国冷麺・・・単品のキャベツ素手で齧りながら食べ進めていった。

本題に移ろう。

その店にはキビキビと働く女の子がいる。多分高校生~ハタチくらいかと思われる。その日も、私が注文しそうなタイミングで傍に寄って来たり、注文をしようと厨房を見た段階で気が付いたり、トイレに行っている間に私のせいで汚くなった卓を整えたりと、ファインプレーを見ることができた。

それで、さあ帰ろうかと思ったところ、「お皿拭いたら上がっていいよ」という店主の声を聞いた。あの子が上がる時間になったようだ。22時だった。

の子は壁にあった扉を開くと、中の物置から上着を取り出して、賄いを食べに奥の座席に向かったわけだ。すると、私のふたつ隣に座っていた若い男性(30才過ぎかと思われる)が、「~~ください」と、その子を呼び止めた。その際、私は何とも思ってなかったが、その子が「もうアップ……」と小さく呟いたのを聞いた。

私は〆のアイスクリームを食べていた。考え事をしていた。すると、隣から「お前人生ナメとらんか!?」という声が響いた。例の若い男性だった。ちなみに初対面だ。

後で店主に確認したところ、女の子が「もう上がりなので」と説明したところ、奴さんはキレたらしい。うるせえな、と思いながらも彼の主張を聞くことになった。

社会に出たら定時は関係ない

・お客が求めているのだからプロ自覚があるなら応えないといけない

あなたの考えは甘い。店主に相談して考え直すべきだ。

といったものだ。

女の子は俯いていた。マスクをしていたが、瞳をまっすぐ地面に向けて、涙目になっていた。「すいません、すいません」と答えていた。

店主の方を見ると、天然パーマの頭だけがカウンター越しに覗いている。一応、こちらの方を向いてはいる。これは、店主がビヤ樽に座って休憩している時の姿だ。私の定位置から見るとそういう眺めになる。

残りの厨房スタッフは我関せずとばかり、肉肉肉、米米米!野菜ィィィッ!!!といった雰囲気調理に打ち込んでいた。

若い男性説教が続く中(上の3点目の途中だった)、私は声をかけることにした。メシがまずくなったからだ。「ちょっといいですか」と声をかけると、男性こちらを向いて、「あんた、なん?」と方言混じりにこちらを向いた。

「その子は賢いんですよ。次は大丈夫です」と言ったところ、「大丈夫じゃないさかい、こうしてる」と息を巻いて私を威嚇してくる。

「おじさん、いちびんなや」

私は、彼の目をちょっと見つめた後で、

調子乗っとんのはお前じゃボケ。おい、黙れ。〇すぞ!! おい、お前。黙れといったろ。聞こえとるんけ、おい!」

そんなことを叫ぼうとした直前、ハッとなって我に返った。

あれは5年前、私がまだ不惑になったばかりの頃だった。

この焼き肉店で同じようなこと(迷惑客が店員に絡んだ)があった時、そんなことを叫んで、そいつを蹴っ飛ばして、店から追い出して、さらに何発かブチ殴って、店を出入り禁止になったのだ。

その後、私は反省した。暴力に訴えてはならなかったと。店主に何度も謝って許しをもらい、再入店許可してもらった思い出がある。

私は、彼に向かってできるだけ穏便になるように答えた。

「すいませんが、私は迷惑しています。聞いていると食事がおいしくないんです。そろそろ堪えてくれませんか。店主、あっちで座ってますけど、ほら。すごい表情で睨んでますよ」

と言った。

若い男性は店主の天然パーマの方を見ると、頭を振るようにして手元の手羽先に目をやった。そして焼酎を飲み始めた……解放サインだった。

女の子は、私の方に会釈した。表情は見ていない。トコトコと奥の座席に向かい、もう1人のアルバイト男の子と一緒に賄いを食べ始めた。

私の考えを述べていいだろうか。

やっぱり、ああい勘違いをした御仁は、一度ガンと言ってやらないと効かないんじゃないか。痛い目をみないと反省しないからだ。あの日はどうにかなったが、あいつはまたやるんじゃないか

だったら、あの時リスクを冒しても、私はあいつを全力で威嚇し、場合によっては店の内外で暴力によって制裁を下してやるべきではなかったのか。彼は若かった。それも愛だと思う。

そうすれば、もうあの女の子が絡まれることはなくなる。私も焼き肉店を出入り禁止になるリスクはあるが、私と店主は10年以上の付き合いだ。謝ったら許してくれるかもしれない。

少しだけ自慢をさせてもらうが、ケンカは強い方だと思う。社会人になってからも合計で30回以上、祇園木屋町路上や、飲食店スナックの中で暴れたことがある。それこそ色んな輩と戦っているが、負けたことは二度しかない。

現行犯警察逮捕されたこともある。が、私は経営者からクビになることはないし、従業員だって私がこういう人間だと知っている。みんなの前で、「また捕まったよ!」と冗談交じりに言ったなら、職場がまた笑いに包まれるのだろう。

別件だが、私が奴さんくらいの年の頃だった。2005年くらいか先斗町寄りの祇園の端っこにある居酒屋で、深夜に大学生の男が酒に酔っていた。

私は彼の2つ隣のカウンターに座っていて、その間には黒っぽいスーツ男性が座っていた。片見知りだ。彼は私を知らないかもしれない。

「俺は立命館に現役合格してるし、そのうえ~~(よく聞き取れない)~~、△△(京都で一番有名な製作所)に内定をもらっている。いつか天下を取ってやる」「あのサークルの□□さんは俺のことが好きだ。付き合いたい」「人生はこれからも楽に勝てる」、みたいなことを言っていた。

彼は酩酊して友達に絡んでいた。若さゆえの発散だった。

彼が黒いスーツ男性に絡んだのを覚えている。それを確かめて、酎ハイをぐいっと飲んで、卓に置きかけたところで、カウンター椅子がガッタン!と倒れる音が聞こえた。

怒号があった。あまりに驚いた私は聞き取ることができなかった。すぐ隣を見ると、さっきの大学生が黒いスーツ男性におそらく蹴っ飛ばされて、仰向けで倒れていた。

黒いスーツ男性はまた何か叫ぶと、大学生の脇腹の辺りを鋭く蹴った。うつ伏せ気味になった大学生を、何度も何度も革靴で踏んづけて、首根っこを掴んで引き上げたと思うと、右の拳を彼の顔に何度もぶつけていた(凄まじい台詞だった。そのまま書いたら当日記は削除されるだろう)。

私は周囲を見た。店長と思しき人間を始め、誰一人として暴行を止める様子はない。ほかの客もそうだ。それもそのはずで、スーツの男は本物の暴力団だった。相応の経験を積んでいる。

私もこの業界人を長いこと見てきた。堅気かそうでないかは、怒号の質と、暴力への慣れと、それらへの躊躇のなさで判断できる。

2022年現在暴力団員が深夜に居酒屋を利用することは減ったし、居たとしても隅の方で大人しくしている。だが、この時代は違う。まだ彼らに勢いがあった。あの当時は、暴力団組員が数人連れで大手を振って繁華街をうろついていた(だんだん思い出してきた。この頃、木屋町大通り公衆面前でのリンチ殺人事件が起きて、急に警察官が増えたのだ。それで反社半グレ繁華街から消えた)。

この時、居酒屋の店主が警察通報していたら復讐を受けたのは間違いない。もし、彼らが「〇す」と言ったら本当にやりかねない。いや、やるのだ。本気度が堅気の人間とは違う。

そういうオーラが立ち振る舞いから漂ってくるものから、店側が「あのお客はもしや」と気が付いたとしても、また情報提供を受けて真実を得たとしても、何も対応することはない。これが、繁華街から反社の影が消えない理由ひとつである

話が逸れた。大学生を見ると鼻血を流していた。何度も殴られて、男の衣服を掴んでいた片手がぶらんとなったところで、私は止めに入った。男の肩を後ろから触って、「○○の集まりでいた人だよね。店の奥の客が通報しとったで。はよ逃げ」と、彼の面子を潰さないように嘘をついた。その男は、店長と思しき人間を一睨みすると、お金を払うことなく店外に出て行った。

大学生の方を見ると、大泣きで仲間の肩につかまっていた。店員から「料金はいいですから」と説明を受けていた。

災難だったが、彼はい勉強になっただろう。社会人になってからまり調子に乗ったことをしていると、ある意味で今回よりもひどい目に遭う恐れがある。その前に学べたのだから、彼はむしろツイていた。

例の反社の人は、あれから相当に勢いのある人間に育ったが、現在はわけあって娑婆にいない。あまりに男気が強すぎたのだ……。

さて、私もいい年だ。社会常識はわかっている。何事も、説得によるやり方が一番の至上なんだろう。

が、土木仕事をしていると常々感じる。正しいやり方は、その時々の環境や条件によって変わるのだ。晴天時と小雨の日とでは、現場練りで配合するセメントと水の割合も違ってくる。

初めに戻る。私は、あの時あの状況では、女子店員若い人(といっても30は超えてるだろうが)の未来のために、ついでに焼肉店のためにはどうするのが最上だったのだろう。またあの店で同じようなことがあった時、私はどうすればいいのか。

増田の人の知恵を貸してほしい。できればなのだが、金髪ダイダラボッチアイコンの人か、物憂げな青っぽい女性の人か、楽しい雰囲気黒髪女の子か、鼻が大きい男性の人か、おたまじゃくしの人のコメントがあったらうれしい。おたまじゃくしの人は最近見ない。元気にしているのだろうか。

2022-06-28

anond:20220628121442

五条楽園を切り離して浄化したのと同じく、今回の騒動炎上したとしても「先斗町の行儀が悪い」っていうので切り離すことになるんかなとちょっと思ってる。

川より東の祇園宮川町と、川の西の先斗町はかなり雰囲気違うし、客層も1段落ちるし。で、つぶれて空いたとこを中国人が買うと。

2022-06-27

先斗町を読めたら京都人どすえ

簡単

烏丸

太秦

先斗町

ちょっと難しい

御幸町通

蹴上

糺の森

難しい

不明門通

轆轤町

雲母

答えは自分で調べておくれやす

いけず京都人でかんにんなぁ

とおもたら、文字タッチするだけで解りましたわ(最後以外)

さすがはてなさんやわぁ

メモ

メモ

告発潰しの常套句告発者の言動問題があった』『他の問題だと思わずに頑張ってる労働者を巻き込むな』

2022-05-02

焼肉屋で後悔をしたこと

一昨日、近所の焼き肉店で1人で酒席を囲うことがあった。道路河川での土木仕事でさんざん疲れた後の一杯が最高なのだ

この日は、川に橋をかけるための準備工として土嚢を積んでいた。小さい工務店代表として、工事費の設計積算も、現場監督も、銃器捜査肉体労働兼任している。

体重が2kgは減った! という確信があるくらい今日は働いた。まずは冷えたビールを注文して、牛ロース100gに、上カルビ100gに、豚のハラミ100gに、鳥のもも100gに、石焼ビビンバに、韓国冷麺・・・単品のキャベツ素手で齧りながら食べ進めていった。

本題に移ろう。

その店にはキビキビと働く女の子がいる。多分高校生~ハタチくらいかと思われる。その日も、私が注文しそうなタイミングで傍に寄って来たり、注文をしようと厨房を見た段階で気が付いたり、トイレに行っている間に私のせいで汚くなった卓を整えたりと、ファインプレーを見ることができた。

それで、さあ帰ろうかと思ったところ、「お皿拭いたら上がっていいよ」という店主の声を聞いた。あの子が上がる時間になったようだ。22時だった。

の子は壁にあった扉を開くと、中の物置から上着を取り出して、賄いを食べに奥の座席に向かったわけだ。すると、私のふたつ隣に座っていた若い男性(30才過ぎかと思われる)が、「~~ください」と、その子を呼び止めた。その際、私は何とも思ってなかったが、その子が「もうアップ……」と小さく呟いたのを聞いた。

私は〆のアイスクリームを食べていた。考え事をしていた。すると、隣から「お前人生ナメとらんか!?」という声が響いた。例の若い男性だった。ちなみに初対面だ。

後で店主に確認したところ、女の子が「もう上がりなので」と説明したところ、奴さんはキレたらしい。うるせえな、と思いながらも彼の主張を聞くことになった。

社会に出たら定時は関係ない

・お客が求めているのだからプロ自覚があるなら応えないといけない

あなたの考えは甘い。店主に相談して考え直すべきだ。

といったものだ。

女の子は俯いていた。マスクをしていたが、瞳をまっすぐ地面に向けて、涙目になっていた。「すいません、すいません」と答えていた。

店主の方を見ると、天然パーマの頭だけがカウンター越しに覗いている。一応、こちらの方を向いてはいる。これは、店主がビヤ樽に座って休憩している時の姿だ。私の定位置から見るとそういう眺めになる。

残りの厨房スタッフは我関せずとばかり、肉肉肉、米米米!野菜ィィィッ!!!といった雰囲気調理に打ち込んでいた。

若い男性説教が続く中(上の3点目の途中だった)、私は声をかけることにした。メシがまずくなったからだ。「ちょっといいですか」と声をかけると、男性こちらを向いて、「あんた、なん?」と方言混じりにこちらを向いた。

「その子は賢いんですよ。次は大丈夫です」と言ったところ、「大丈夫じゃないさかい、こうしてる」と息を巻いて私を威嚇してくる。

「おじさん、いちびんなや」

私は、彼の目をちょっと見つめた後で、

調子乗っとんのはお前じゃボケ。おい、黙れ。〇すぞ!! おい、お前。黙れといったろ。聞こえとるんけ、おい!」

そんなことを叫ぼうとした直前、ハッとなって我に返った。

あれは5年前、私がまだ不惑になったばかりの頃だった。

この焼き肉店で同じようなこと(迷惑客が店員に絡んだ)があった時、そんなことを叫んで、そいつを蹴っ飛ばして、店から追い出して、さらに何発かブチ殴って、店を出入り禁止になったのだ。

その後、私は反省した。暴力に訴えてはならなかったと。店主に何度も謝って許しをもらい、再入店許可してもらった思い出がある。

私は、彼に向かってできるだけ穏便になるように答えた。

「すいませんが、私は迷惑しています。聞いていると食事がおいしくないんです。そろそろ堪えてくれませんか。店主、あっちで座ってますけど、ほら。すごい表情で睨んでますよ」

と言った。

若い男性は店主の天然パーマの方を見ると、頭を振るようにして手元の手羽先に目をやった。そして焼酎を飲み始めた……解放サインだった。

女の子は、私の方に会釈した。表情は見ていない。トコトコと奥の座席に向かい、もう1人のアルバイト男の子と一緒に賄いを食べ始めた。

私の考えを述べていいだろうか。

やっぱり、ああい勘違いをした御仁は、一度ガンと言ってやらないと効かないんじゃないか。痛い目をみないと反省しないからだ。あの日はどうにかなったが、あいつはまたやるんじゃないか

だったら、あの時リスクを冒しても、私はあいつを全力で威嚇し、場合によっては店の内外で暴力によって制裁を下してやるべきではなかったのか。彼は若かった。それも愛だと思う。

そうすれば、もうあの女の子が絡まれることはなくなる。私も焼き肉店を出入り禁止になるリスクはあるが、私と店主は10年以上の付き合いだ。謝ったら許してくれるかもしれない。

少しだけ自慢をさせてもらうが、ケンカは強い方だと思う。社会人になってからも合計で30回以上、祇園木屋町路上や、飲食店スナックの中で暴れたことがある。それこそ色んな輩と戦っているが、負けたことは二度しかない。

現行犯警察逮捕されたこともある。が、私は経営者からクビになることはないし、従業員だって私がこういう人間だと知っている。みんなの前で、「また捕まったよ!」と冗談交じりに言ったなら、職場がまた笑いに包まれるのだろう。



別件だが、私が奴さんくらいの年の頃だった。2005年くらいか先斗町寄りの祇園の端っこにある居酒屋で、深夜に大学生の男が酒に酔っていた。

私は彼の2つ隣のカウンターに座っていて、その間には黒っぽいスーツ男性が座っていた。片見知りだ。彼は私を知らないかもしれない。

「俺は立命館に現役合格してるし、そのうえ~~(よく聞き取れない)~~、△△(京都で一番有名な製作所)に内定をもらっている。いつか天下を取ってやる」「あのサークルの□□さんは俺のことが好きだ。付き合いたい」「人生はこれからも楽に勝てる」、みたいなことを言っていた。

彼は酩酊して友達に絡んでいた。若さゆえの発散だった。

彼が黒いスーツ男性に絡んだのを覚えている。それを確かめて、酎ハイをぐいっと飲んで、卓に置きかけたところで、カウンター椅子がガッタン!と倒れる音が聞こえた。

怒号があった。あまりに驚いた私は聞き取ることができなかった。すぐ隣を見ると、さっきの大学生が黒いスーツ男性におそらく蹴っ飛ばされて、仰向けで倒れていた。

黒いスーツ男性はまた何か叫ぶと、大学生の脇腹の辺りを鋭く蹴った。うつ伏せ気味になった大学生を、何度も何度も革靴で踏んづけて、首根っこを掴んで引き上げたと思うと、右の拳を彼の顔に何度もぶつけていた(凄まじい台詞だった。そのまま書いたら当日記は削除されるだろう)。

私は周囲を見た。店長と思しき人間を始め、誰一人として暴行を止める様子はない。ほかの客もそうだ。それもそのはずで、スーツの男は本物の暴力団だった。相応の経験を積んでいる。

私もこの業界人を長いこと見てきた。堅気かそうでないかは、怒号の質と、暴力への慣れと、それらへの躊躇のなさで判断できる。

2022年現在暴力団員が深夜に居酒屋を利用することは減ったし、居たとしても隅の方で大人しくしている。だが、この時代は違う。まだ彼らに勢いがあった。あの当時は、暴力団組員が数人連れで大手を振って繁華街をうろついていた(だんだん思い出してきた。この頃、木屋町大通り公衆面前でのリンチ殺人事件が起きて、急に警察官が増えたのだ。それで反社半グレ繁華街から消えた)。

この時、居酒屋の店主が警察通報していたら復讐を受けたのは間違いない。もし、彼らが「〇す」と言ったら本当にやりかねない。いや、やるのだ。本気度が堅気の人間とは違う。

そういうオーラが立ち振る舞いから漂ってくるものから、店側が「あのお客はもしや」と気が付いたとしても、また情報提供を受けて真実を得たとしても、何も対応することはない。これが、繁華街から反社の影が消えない理由ひとつである

話が逸れた。大学生を見ると鼻血を流していた。何度も殴られて、男の衣服を掴んでいた片手がぶらんとなったところで、私は止めに入った。男の肩を後ろから触って、「○○の集まりでいた人だよね。店の奥の客が通報しとったで。はよ逃げ」と、彼の面子を潰さないように嘘をついた。その男は、店長と思しき人間を一睨みすると、お金を払うことなく店外に出て行った。

大学生の方を見ると、大泣きで仲間の肩につかまっていた。店員から「料金はいいですから」と説明を受けていた。

災難だったが、彼はい勉強になっただろう。社会人になってからまり調子に乗ったことをしていると、ある意味で今回よりもひどい目に遭う恐れがある。その前に学べたのだから、彼はむしろツイていた。

例の反社の人は、あれから相当に勢いのある人間に育ったが、現在はわけあって娑婆にいない。あまりに男気が強すぎたのだ……。



さて、私もいい年だ。社会常識はわかっている。何事も、説得によるやり方が一番の至上なんだろう。

が、土木仕事をしていると常々感じる。正しいやり方は、その時々の環境や条件によって変わるのだ。晴天時と小雨の日とでは、現場練りで配合するセメントと水の割合も違ってくる。

初めに戻る。私は、あの時あの状況では、女子店員若い人(といっても30は超えてるだろうが)の未来のために、ついでに焼肉店のためにはどうするのが最上だったのだろう。またあの店で同じようなことがあった時、私はどうすればいいのか。

増田の人の知恵を貸してほしい。できればなのだが、金髪ダイダラボッチアイコンの人か、物憂げな青っぽい女性の人か、楽しい雰囲気黒髪女の子か、鼻が大きい男性の人か、おたまじゃくしの人のコメントがあったらうれしい。おたまじゃくしの人は最近見ない。元気にしているのだろうか。

2022-04-02

anond:20220402172706

京都大原三千院恋に疲れた女が一人…

あの人の姿懐かしい黄昏河原町

富士の高嶺に降る雪も京都先斗町に降る雪も…

anond:20220401211442

御堂筋で」とか「大通公園で」とか「先斗町で」とか言われてもそんなに気が触れたようにブチ切れてんの?どうでもよくね?

2021-07-16

木屋町にあるキャバクラ黒服仕事をしていた その4

最後に。

今回これを書こうと思ったのは、冒頭の話が関係している。

年末に約十年ぶりに京都に行ったのだが、知っている店はほとんど潰れていた。バーも、キャバクラも、スナックも、マクドナルド河原町三条店も、もちろん――S店も跡形もなくなっていた。

年末にしては暖かい夜だった。寂しい気分で歓楽街をうろついていると、学生時代によく行っていた老舗のバー発見した。店員もお客さんもコロナ禍の中でしんみりとした雰囲気かと思いきや、意外と賑やかだった。

ソーシャルディスタンスなんて関係ないぜ!」みたいな連中がわいわいと騒いでいる中、私は2つほどバーハシゴした。その後、さめざめとした心持ち先斗町の狭い街並みをうろつき始める。

すると、心の内にあることが想起された……そうだ、私は一度、S店で接客を受けてみたかったのだ。それを夢見ていた。だから京都に来たのだ!

私の中では、京都旅行の動機の端っこにあった感情だったけど、大きい部分を占めていたことに気が付いた。

通りを一本挟んだ木屋町に戻った私は、S店がなくなったのであれば、別のキャバクラに行ってみようと思った。深夜2時になっていた。

※ここまで読んでいる諸兄はおわかりだろうが、法律上は深夜1時までの営業になっていても、実際には朝5時まで営業できる。警察があえて取り締まっていないのだ。たまに見せしめで捕まる店がある。

そのRというお店は、私が大学生をしていた頃は新進気鋭のルーキー的な立ち位置だった。今では木屋町で一番の老舗になっている(堅気の店だとは思うが、そうじゃなかったらまずいので名前は伏せさせてもらう)。

最初に19才の可愛い子が隣についた。その、あまりの顔つきの美しさ、手足の細さにびっくりした。まるでアイドルみたいだった。※私はアイドルを見たことはない。

ちょっと後になって、チーママ真正面の席についた。30代後半くらいで、落ち着いた雰囲気があって、笑顔が素敵な人だった。談笑は続いて、残り時間があと40分ほどというところで、R店のメニュー表を持ってきてもらった。人生で一度、キャバクラシャンパンを飲んでみたかったのだ。

せっかくの機会なので、5万円のやつにしようと思って――考え直した。ここはあえて、1万円のものを頼むのが正義であると気が付いた。そうだ、これは最初体験なのだ。5万円のやつを堪能してしまったら、1万円では楽しめなくなる。

こうして1万円の一番安いシャンパンを注文し、私の席に嬢があと2人増え、付け回しをしている人が私の席に挨拶に来た。やがて細長いグラスとクラッシュアイス入りのアイスペールがやってきて、カフェドシャンドンみたいな名前シャンパンが細長いグラスに注がれた。

午前3時半に店を出た。

楽しい夜だった。でも、満足はできなかった。あの日々、私が青春を過ごしたS店はもうないのだ。もう二度と行くことはできない。

こうして私は、木屋町に一人残されてしまった。

お酒を飲んだのに――辛い気分だった。寂しい気分だった。やるせなかった。

そういうわけで、この私こそが世界に産み落とされた最初人間なんだと自分に言い聞かせ、木屋町流れる高瀬川沿いの歩道をほっついて回り、いまだに夜の店を求める者たちがはかなげな声で囀りまわる四条大橋の袂へとぴょんと躍り出るやいなや、私は考え始める。

これからどうしよう、まだ眠気はないのだ! どこに行こう……そうだ、まだ祇園では飲んだことがない。でも、木屋町にもまだ懐かしい店があるかもしれないなぁ。

私はまた考え始める。そしてそれが楽しいのだ。私は夢見心地で祇園四条通り石畳を踏みつけて、曲がっていることもわからないまま小道や細道の角を折れ曲がり、川があることもしらずに祇園の中を通る小橋を走って飛び越え、姿形も見えない、これから行くであろう店でどんな話をしようか思案をはじめる。

……でも、今の私はこの街で一人だった。もう仲間はいない。知り合いもいない。一緒にお酒を楽しめる人はいない。今更気が付いたのだ。



こうして、一人ぼっちになった私は、「お酒も十分に飲んだし、暗い気分を晴らしにデリヘルでも呼ぼうか」と考えた。おっとり刀ホテルに帰り、スマホの遅い読込速度にイライラしながらも、どうにかデリヘルを呼ぼうとする。

私はあるお店の、いろんな女の子が並んだパネルを見ていた。風俗店では、口よりも目を隠している子を指名するのが基本だ。そちらの方が統計的アタリ率が高い。

ある女の子を見つけた。右手で目元を覆っている。慎ましい乳房だ。身長は低い――これは加点要素だ。でも、よく見ると髪型で顔の長さをごまかしている。肩幅を見るに、ガタイの大きさをフォトショ修正している感がある。これは勝てん要素だ。場合によってはチェンジ宣言もやむを得まい。鱗滝さんに「判断が早い!」と怒られる可能性がある。

彼女指名した。待つこと約30分、真っ白のマスクを着けた女の子がやってきた。予想通り、背が小さくてかわいいマスク美人かなと思ったが、はずしてもかわいい

コロナで大変じゃない?」と聞くと、「お客さんは減ってる。でもお兄さんみたいな人が指名してくれるから嬉しい」とのこと。

早速シャワーを浴びて、時間はあまりなかったけど、ベッドで少しばかりの睦言を楽しんで、それからプレイが始まった。肌が触れ合う感じがいい。吸い付くようだった。有意義プレイだった。

最後に、お互いの相性がよかったからか、それとも彼女の温情によるものか、サービスにはないが、『合体』をしてもいいという。コンドームも用意してあるらしい。お金のことを聞いたが、お兄さんの気持ちでいいとのこと。ふと、さっきのシャンパンが頭をよぎる。

だが、挿入の前に問題が起きた。私のやつに適合するサイズコンドームがなかったのだ……私は、彼女が持っていた何種類ものから、一番マシな物を選ぶ必要があった。サイズが小さすぎると途中で抜けてしまう。彼女の中で抜けるわけにはいかない。

残り時間が限られる中、高速でコンドームを試着し続ける私に、彼女不安そうに言う。

「そんなに急いで大丈夫?」

私は笑いながら答えた。

「付け回しは得意だからね」

私はその子を知った。

しっとりとした肌の感触だった。心地よかった。心までひとつになったみたいだった。私はいま一人ではない。

特別サービスで、5分だけ無料で延長してくれるという。お言葉に甘えることにする。

行為が終わった後、その頬にそっとくちづけをした。

気持ちよかった。でも、お金は具体的な額を求めないとだめだよ。仕事なんだから

「これはお店のメニューじゃないからいいの。お客さんに気持ちよくなってほしくて」

彼女は笑いながら答える。つぶらな瞳で私を見上げてくる。が、視線を逸らすことはなかった――鋭い、理性的な、豹のような瞳をぶつけてくる。

私の心は最初から決まっていた。さっき節約したばかりの4万円を財布から取り出して、「ありがとう」とその柔らかい手のひらに渡した。猫が喉を鳴らすようにして彼女は、嬉しそうに受け取るのだった。仕事ができる子だった。



追記

私が大学卒業した年にTちゃんからもらったメールによると、イケメン先輩は100万円を払い終えたらしい。

その後は、M主任の後釜に収まった。イケメン先輩のS店への貢献という「状況」が、1年以上も前に下された免職処分を打ち消したのだ。

メール最後には、Tちゃんイケメン先輩と結婚するとあった。

どうか、今も幸せでありますように。

木屋町にあるキャバクラ黒服仕事をしていた その3

 この体験を経て、私はある理解を得た。「正しい戦略は、その時々の環境文脈空気によって異なる」ということだ。世の中にはいろんなルール常識、慣習があるけれども、それらをストレート適用すべき場合もあるし、必要ならばかなぐり捨てないといけないこともある。

 アブラハム・マズロー欲求の五段階ピラミッドの人)の『完全なる経営』にこんなことが書いてある。

‟彼らの心理学によると、最善の思考や最善の問題解決ができるかどうかは、問題を含んだ状況を、期待や予想、憶測などを交えることなく、この上なく客観的な態度――先入観や恐怖、願望、個人的な利害などを交えない、神のような態度――で見ることができるかどうかにかかっている。…(中略)…解決すべき問題とは目の前に存在する問題であって、経験によって頭の中に蓄えられた問題ではない。頭の中に蓄えられた問題は、昨日の問題であって今日問題ではなく、また、両者は必ずしも一致するものではない‟ p.129-130

さら範囲を広げれば、家庭生活、すなわち妻や夫や友人たちとの関係についても、この方法を当てはめることができる。各状況における最善の管理方法とは、各状況において最もよく機能する管理方法のことだ。どの方法が最善であるかを見きわめるためには、予断や宗教的な期待を排した、完全な客観性が求められる。現実的な知覚は現実的に行動するための必要条件であり、現実的な行動は望ましい結果を生むための必要条件なのだ。‟ p.132

 マズローは、物事ありのままに見つめて、現実的に考え、行動することが成功への鍵だと言っている――と私は解釈した。

 イケメン先輩は結局、条件付きの免職処分になった。黒服が嬢と付き合った場合の店への罰金50万円と、Tちゃん彼氏への慰謝料として50万円、計100万円を返済したら辞めるという処分だ。店長は、翌日のミーティングの席において、みんなの前でイケメン公言した。「約束を破ったら組に売る」と。店に対する裏切り行為は許さないという態度を明白にしたのだった。

 これと、上の引用文がどう関係あるのかというと……この後すぐ、私と同学年のアルバイトの子が、S店の備品を盗んでいたのが判明した(立命館大学に通っていたので、以下リッツとする)。定期的に、ヘネシーなどの高級酒(そのうち廃棄される飲みかけ。キッチンに置いてある)や、午後の紅茶炭酸水チーズその他をくすねていたらしい。その犯行を見つけたのは、皮肉にもイケメン先輩だった。

 そのリッツは、イケメン先輩の時と同じく、閉店後に一番奥の席につかされた。最初の数分は、あの時と一緒だった。坦々とした、もの静かな事情聴取だ。その近くにM主任が座っていたのも同じだ。

 違ったのは、私も主任と一緒に丸椅子腰かけいたことだ。リッツ普段の行動に関する参考意見を述べることになっていた。

 別にリッツは、良くも悪くもない、普通の奴だった。口数は少なかったけど、まあ真面目かなという印象だった。サボっている様子はないし、店の女の子に声をかけるなどの御法度もないし、当日遅刻や欠勤もなかった。

 でも、人間とはそういうものなのだ。裏で何をしているかからない。人間言葉ではなく行動で判断すべきという金言があるが、それでも不十分だ。どんな人間にも裏がある。

 10ちょっとが経過した。私の供述も上の通り述べていた。その間、盗んだ物の確認と弁償代の話をしていたように思う。お店で無くなったとわかっているもの時価8万円相当(私の個人的計算では3万円~4万円相当)とされて、ほかにも盗まれた物があると仮定して、倍額の16万円を1か月以内に弁償すれば警察被害届は出さないという内容で決着した。

 最後店長は言った。「リッツ君。今日最後の勤務日だ。もう来なくていい。けど、ほかのお店に情報共有とかしないから、働きたかったら別のキャバで働いてもいいよ。今回は残念だったけど、また成長したあなたの姿を見たい。それで、いつかまたお客さんとしてうちに来てくれたら嬉しい」という言葉でお開きになった。

 当時の私は、「おかしいのではないか!?」と思った。当時のS店の黒服に課せられる罰金額は、記憶の限りでは以下のとおりだ。

・当日遅刻 5,000円

・当日欠勤 10,000円

窃盗その他の犯罪 250,000円+被害

・嬢と交際した場合 500,000円

・店の売上に影響するトラブルを起こした場合 時価(これが上記慰謝料

 リッツ規定どおりの罰金を科されなかった。被害額のみだ。しかし、イケメン先輩は規定どおりの罰金のうえボコボコにされている。

 当時の私は腑に落ちなかった。後に推測したことだが、店長には以下のような思考順序があったのではないか

リッツを殴って、25万円+16万円を請求したうえで脅す(イケメンと同じ対応

リッツ立命館大学学生課もしくは先輩もしくは親に相談する

相談先が交渉の窓口になる

罰金は減殺される可能性が高い。警察通報されたら逮捕リスクあり。

 上記①~④が成り立つならば、リッツに対して甘い対応をするのが正しい。そう読んだのではないか

 店長は、自他の権益に対してストレートな人だった。取れるモノはきっちり取っていく。悪く言えばがめつくて、善く言えば組織のことを考えている。

 今回の件だと、警察被害届を出してもS店には一銭も入らないし、リッツ問題行動を起こしたことをほかの店に情報共有するメリットはないし、彼がほかの店で問題を起こしても当店には関係がないし、リッツが負い目を感じていれば社会人になってからS店でお金を使うかもしれない。

 ※社会人になった今では、このような考え方は極めて短期的かつ自己本位的なものだと感じる。木屋町風俗営業を行うすべての店の利益を考えれば、リッツ警察に突き出すべきだったし、他店にも情報を共有すべきだった。こうした当たり前のことができないほどに、風俗業界というのは生存が厳しい世界なのだ

 憶測だが、店長には過去に痛い経験があったのかもしれない。16万円でも十分に得をしているからそれで済ませる。そういうことだ。

 一方で、イケメン先輩は、いわゆる「身分がない」タイプ社会人だった。だからルールに則った対応を採る(暴力のうえ正規罰金を課す)のが正しかった。

 私は今、地元広島地方公務員をしている。この仕事は、公平とか中立とか平等が叫ばれる業界ではあるが、確かに市民企業を公平に扱わないことが正しいケースがあるのだ。例えば、地元を盛り上げる活動をする部署が大きいイベントを開催する折には、成功キーパーソン及びその所属団体に対して相応の便宜を図る。近年の例だと、「全国菓子大博覧会」や「広島てっぱんグランプリ」といったものだ。

 上記の「成功キーパーソン及びその所属団体」について、関係者を良好な立地に出店させたり、相応の額の契約を用意したり、行政組織要職に就けたりする(教育委員など)。

 一般市民企業不公平に扱いたいからやっているのではない。公平に扱うのが長期的には一番正しい戦略なのはわかっている。これは、組織目的を達成するために必要不可欠な過程であると上の人間下の人間も判断たからそうなっている。

 反対に、戸籍課や税務課や医療課などの住民対応を行う部署においては、「融通が利かない」などのクレームをどれだけ食らっても、ひらすらに法律や要領に従って仕事をやり続けるのが正しい戦略ということになる。特定の人をひいきしても自治体にとってのメリットは薄いし、逆に訴訟リスクがあるからだ。

 キャバクラでの仕事は正直キツかった。嫌なお客さんには絡まれるし、たまに一気飲みを要求されるし、人が殴られるのを見ることがあるし、ホールに立ちっぱなしで足の裏が痛いし、キッチンものすごく忙しいうえに鼠とゴキブリだらけだ。

 でも、勉強になった。夜の歓楽街での仕事が、今の地方公務員としての自分の糧になっている。あの時、求人情報誌を開いてよかったと今では思える。



大学回生

 この春から時給は1,800円になった。昇給の際、店長からは、「お前以上の時間給をもらっている大学生は木屋町にも祇園にもいない。お前を評価している。就職活動中もシフトに入ってくれ」と言われた。※多分これが目的で時給を上げたのだと思う。これまでと違い、昨年比で増えた仕事もないからだ。

 この辺りからシフトに入ることが少なくなった。これまでは、週に4日、たまに5日という具合だった。でも、公務員試験勉強もしないといけないので週に3日の勤務になっていた。

 時間はあっという間に過ぎていって、夏が終わる頃に内定を得た私は、「自由だあああぁぁ!」とばかり、夜の街で遊びまわるようになった。

 私には小さい名誉があった。木屋町先斗町のいろんなバーに行ったが、S店で黒服をしています、付け回しの仕事を任されていますと言うと、大抵の店員さんや夜の街の常連の顔つきが変わるのだ。「こいつはやばい奴だ」という顔をする人もいれば、軽蔑した視線を向ける人もいれば、逆にすり寄ってくる人もいた。

 バーにはよく行ったが、キャバクラにはほとんど行かなかった。S店で働いているとわかったら追い出されるリスクがあったからだ。それに、私はKFJ京都風俗情掲示板)のお水板において、当時木屋町で№1とされていたS店で何年も働いている。お客さんに「おごってやるから来いよ」と誘われて他店に行ったことはあるが、なかなか満足がいかなかった。S店の子接客されたことはないが、それでもわかる。歴然とした『差』があった。

 今思えば、承認欲求というやつが足りていなかったのだろう。シロクマさんの本で言うと、「認められたい」というやつだ。当時は、自分をスゴい奴なんだと思いたかった。実際はぜんぜんそうではなかったし、逆に、本当にスゴい奴ほど自分を大きく見せたがらない。

 そういう人は飽きているのだ。ちやほやされることに。褒められることに。子どもの頃から自分パフォーマンスの高さを周りに認められるのが当たり前だった。だから調子に乗ったり、偉ぶったりしない。それだけのことだ。

 11月になった頃だった。M主任退職することになった。時期は来年の3月。田舎に帰るらしい。

 トラブルを起こしたわけではない。円満退職だ。夜の業界で7年も働けば、体はボロボロになる。普通は3年もてばいい方だが、M主任はそこまで働いて、十分すぎるほどの結果を出していた。私は「今までありがとうございました」と、お店の終わりに2人だけになったところで伝えた。

 この時のM主任言葉脳裏に刻んであるし、忘れた時のために日記にも取っている。重ねて言うが、この記事でところどころの描写がやたらと詳細なのは大学生当時の日記ベースにしていることによる。

 以下、M主任言葉になる。

「おう。〇〇ちゃん、お前もな、元気でな。ええけ?(※方言が入っている。いいか?の意味)〇〇ちゃん仕事ができる奴になれよ。仕事ができんかったらな、人間は終わりやぞ。どこに行っても生きてかれんようになる。仕事だけはな、ちゃんとやって一流になれよ。お前もこの店で何人も見てきたんやないけ、どうしようもない根性なしの連中を。ええけ? お前は悪い奴じゃない。でもな、どっか気が抜けて、間抜けなところがある。そこが好きなんやけどな。とにかく、仕事ができるって言われるようになれ。俺からお前に言えるんはそれだけや」

 呑みに行きましょう、と誘うつもりだった。でも、誘えなかった。私の中で、M主任はそれだけ偉大な存在だった。神だった。神を呑みに誘うことはできないのだ。

 その翌日。営業時間中の夜10時くらいだったか店長ともう1人、灰色スーツを来た人が紙袋を携えてS店にやってきた。「ちょっと時間あるか」と、上の階にある事務所に連れて行かれ、その人から名刺を渡された。

 このS店の母体である芸能事務所の人だった。取締役ナントカ部長だった。ソファに座らされてからの話の内容は端的で、「私を社員として採用したい」という話だった。

 部長の話には説得力があった。説得力要諦とは、ロジックにあるのではない。本人が持つ、その考えや判断への自信や信仰、そして意見を伝える際の胆力や粘りの強さが、本人の口を通して迫力となり、相手に伝わることで説得力生まれる。

公務員はこれから厳しい時代になる。お金問題ではない。本質的意味で割に合わなくなる。

あなた就職する自治体初任給は16万円だ。うちは基本給だけで26万円出す。

・S店での働き次第では本社に来てもらう

日本芸能界を盛り上げる一員になってほしい。それだけの才がある。

・お客さんも仲間もあなたを支持している

 今思えば典型的リップトークだ。なぜかといえば、上の内容の半分以上は私をほかの人に置き換えても、ちょっと修正するだけで通用するからだ。

 でも、当時の私は大学生だった。この時すっかり、S店で働こうか、それとも地元公務員になろうか迷い始めていた。もし、これが公務員試験を志す前であれば、この会社で働いていたかもしれない。

 特に最後にやつ。あれにはやられた。部長ソファの脇に置いていた紙袋から手紙を取り出した。十枚ほどの。小封筒に入った、そのひとつひとつを私の前にゆっくり差し出すと、それが――すべて嬢から手紙であることがわかった。

「〇〇君。試しにひとつ開けてみて」

 ある嬢からの簡潔なメッセージが入っていた。「これからも〇〇さんと働きたい」「〇〇さんに店長になってほしい」「卒業してもいなくならないで」。こんな言葉が認められていた。

「もうわかるね。〇〇君はみんなに慕われている。社会あなたを認めている。こんな大学生、ほかにいないよ」

 部長はA4サイズの用紙をボールペンとともに手渡してきた。

 『雇用契約書』とあった。裏面には雇用条件的なものが書いてある。これを片手に取って私は、ボールペンを握りしめた。

 右上に日付を書いて、ずっと下の方にある住所欄に個人情報を書き始めようとする。ボールペンをあてどなく前後に振って、書くのを静止しようとする脳と、書くのをやめたがらない右手が小さいラリーを繰り返していた。

 私は思い切って、ボールペンを紙面に押し付けた。そして、インクが紙に付いた途端――心臓から流れ出た血が、冷たい何かとともに押し戻されて、再び心臓へと逆流するのを感じた。私の指先は動くのをやめた。

 その場で立ち上がって私は、「残りを読んでから決めます」と告げて、手紙を抱きかかえてS店に帰ろうとしていた。事務所の扉を開けて出る時、舌打ちのような音が響いた。

 手紙ほとんどはテンプレートだった。ひな形がきっとあって、嬢はそれらを真似ている。そういう罠だった。手紙はぜんぶで11枚あって、その中でテンプレでないのは3通だった。そのうちひとつを挙げると、ヘタクソな文章で、私のこれまで4年間の行動や仕草がつらつらと書いてあった。

 私に対するポジティブ言葉も、ネガティブ言葉もあったけど、この3通の手紙には共通していることがあった。「地元に帰っても頑張って」。そんな内容だったかな……? 初めに読んだ1通はTちゃんからだった。

 彼女ハーフで、日本語がそこまで上手くはないのだが、それでも一生懸命な筆跡だった。何度かミスって修正液で消した跡があった。Tちゃんらしくて、不器用だけど愛が籠った手紙だった。

 一昨日それを読み返した時、ふいに涙が零れた。

 あの部長姑息な手を見抜いてから一週間後、私は2月末でS店を辞める旨を店長に告げた。残念そうにしていたけど、これは当然の結果なのだ

 私は地元公務員として働く道を選んだし、芸能事務所だって私が本当に欲しかったわけではなく、おそらくはM主任の代わりとしてだった。もし本気ならば、大学4年生の春までには声をかけている。

 最後の勤務日は静かだった。普通職場だと、辞める人には花束贈呈とかがあるんだろうけど、S店にそういった慣習はない。ただ普通に、最後の客が帰って、照明の光度を上げて、ホールキッチンを片付け始めて、嬢がみんな帰って……。

 最後に、このS店に初めて来た時に見た、この分厚い扉を閉める際に、「お疲れ様です」と小さく呟いた。私は、夜が明けてほんのりと水色の空が見える河原町通りへと歩みを進めていった。

(次が最後です)

 https://anond.hatelabo.jp/20210716220545

2020-07-16

anond:20200716212744

そこでフォークを選ぶって話やがな

先斗町入るは箸出てくるけど

あ、ゴエモンって洋麺屋か行ったことないわすまん

2018-11-13

anond:20181112183902 京都市自転車問題

昼頃書いたが流れたのでトラバで再掲

11/8(木)京都市の横暴な自転車撤去・10の問題点」― https://note.mu/jss/n/na102e3abebcf
上の記事批判的なブコメが集まっている。トップブコメの内容はこうだ。

"id:sakuya_little 好きな場所に好きなだけ停めさせてくれなきゃヤダヤダ!駐輪場無料にしてくれなきゃヤダヤダ!というアホ"

京都市というのは幅広い面を持つ市である。二寧坂や四条河原町といった観光地歩道輸送力が逼迫している場所であれば、即時自転車撤去というのはやはり理に適っているだろう。しか四条河原町で言えば、阪急ターミナル駅存在する交通の要所であるのに、駐輪場先斗町駐輪場・七之舟入駐輪場ぐらいしかなく、昼間はほぼ必ず満車である。大規模地下駐輪場を整備せず、自転車撤去政策推し進めるのはやはり横暴と言えるのではないだろうか?

さらに言えば、地下鉄東西線東山駅は、地下鉄駅があるにも関わらず、自転車駐輪場存在しない。そして当然のように自転車撤去強化区域指定されている。どうしろというのか?市内の慢性的交通渋滞を減らすためには自転車活用しか短期的に打てる政策がないという状況で、この有様であるパークアンドライドのパークがなければライドもできない。地下駐輪場の整備は急務かつ義務であろう。

そして本題である。こうした圧倒的に駐輪場が不足している状況で、百万遍以北のような歩道の大きさに余裕があり観光地としてあまり見られていない場所では、市内の自転車撤去を少し緩やかにして、例えば店に入るとき店頭20分程度自転車を駐輪し、買い物が済めばそのまま乗り去る、という自転車の使い方が出来た方が、自転車交通の妨げとなって迷惑を掛けられるデメリットよりも、利便性によるメリットが大きいのではないかさらに言えば、買い物を自家用車でなく自転車で行うことで、交通渋滞を減らし、結局は道路容量の有効活用に繋がるのではないか

方法簡単である。駐輪撤去巡回で、自転車シールを張って、シールが貼られた自転車撤去すれば良い。無秩序な駐輪を減らしたければ、京大内にあるような自転車ラック歩道内に整備し、ラックから外れた自転車撤去でも問題なかろう。こうしたビジョンを基に、元記事の著者は「駐輪場無料化」ということを主張したのではないだろうか?

まあここまで書いて、この記事に付く反応は予想できるのだ。自転車歩道にあるとやはり迷惑であると。家の前に駐輪されて我慢できるのかと。私は全く気にならないのである歩道なんてすれ違える程度に道幅が確保されていればそれでいいじゃないかと感じてしまうのである。そこは価値観の違いなのだろう。私は、程度にもよるが、駐輪による迷惑よりも、自転車利便性による快適さを取りたいと思ってしまうのである

2018-05-26

私の父は日大卒で、私は京大なのだか、学生時代先斗町一見さんお断りのバーでバイトしてたときにお客さんに、「へー、トンビが鷹を産んだんやな」と言われてカチンときたことがある。

そういうときって咄嗟に何も返しができなくなるから適当に相づち打ってかえしたのだけど、改めて今10年経って思うと、そのころから日大ってほんとにたいしたことないとこって世間認識だったんかなーと思った。

2017-07-30

大阪なんて嫌い、穴モテできないから。根暗のガキは大阪人にとってはただのブスらしいよ。てか美醜の価値観下品やわ大阪黒髪裸眼つけまマツエクもしてないんが気に食わんのか、そのくせ若干男を出しながら、「何歳児~~??w」とか言いよる。ガッサガサした飲み屋街以外いいとこあらへん、ガッサガサした飲み屋街は最高に楽しいけど、ガッサガサが活かせるとこなんて飲み屋しかあらへんのに、ガッサガサした気分でコミュニケーションを図ってくるやろ。嫌やねんあれ。シラフでそれなんですか?下品ですね。その点奈良は神だよね。京都陰湿で嫌。オカマの立ちんぼのナワバリに迷い込んで噛み付かれたことあるもん。わざわざ繋がってないアイフォン耳に当てて、何らかの人に連絡してますよみたいな感じで、東京から来た女がなあ!自分から誘ってはるんよ!じゃあ、ないんだよ。誘ってねえわ。ただスマホいじってるだけで入れ食いやんけ。ば~~か!!先斗町はいいとこだけど。おでんが旨いし、冬におでん食って熱燗いくやろ、最強。神。陰湿以外は神の京都奈良はすべてにおいて最強の神!!仏像がいっぱい、鹿もうじゃうじゃいる。曼荼羅とか、阿修羅像とか、国宝とかがいっぱい見られて、他はなんもない。ドンキすらない。ドンキない以外は神だけど、補って余りあるほど、東大寺が、サイコー!!奈良は神。神戸は見習え。神戸バカ

2016-07-03

おっさんになったから、気になるのだろうけれど。

祇園キャバクラというか少し格上のお水のお店をニュークラブというらしい。

京都ではね。

その系列店とかが、あって着物ではなくてドレス接客するようなお店の方が、多そう。

先日、出勤前らしき人達を見掛けた。夜の9時過ぎぐらいから。

確かに、綺麗な人は、多い。

京都市条例だと、呼び込みは禁止されていたと、思うんだけど、

普通に黒服のオジサンに、どうですか?みたいに声を掛けてくるんだが、問題ないんだろうかね。

  

  

で。今日は、昔話だけど。

10年ぐらい前の話だよ。

舞妓さんの話を。

舞妓さんって、限られた場所しか出没しない(らしい)。

  

一回だけ、先斗町で、金持ちそうなオッサンと2人で並んで歩いているのを見て、というか、耳に入ってきたんだけど。

『また、”お店に”会いに来てくださいね』(言葉再現できないが、だいたい、そんな意味

なんだ、普通水商売の会話じゃん、と思った。

だけどさ、ハタチそこそこのお姉ちゃんが、頑張って、浮き上がるようなおしろいを塗って、

歩きづらそうな着物姿で、いたずらっぽい笑い方をして、じゃれた感じで言うのがいいんだろうな。

  

なんか、そんな妄想しかないYo!

 
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