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はてなキーワード: キトとは

2020-05-13

アフターコロナ

意識の高いメディアや皆様が「アフターコロナ」を声高に叫んで、

アクセス数を稼ごうとしている。

でも、誰もアフターコロナ世界を具体的に示している人はいないし、

ましてや自分自信の仕事に参考になることを話している人はいない。

東日本大震災の時もそんなことをあてにせず、震災自分判断していち早く行動した人が

短期的に銭を稼いだんじゃなかったっけ?

再生可能エネルギー

防災グッズ

公共工事

復興イベント

etc...

結局産業になったものは何一つなかったな。

オーランチキトリウムはどこにいったんだ?

そのあとゆるゆると、世の中はもとどおりになり、コロナを迎えた。

これから1年前後テレワークが増えて、オフィス専有面積が減って

医療ベンチャーが盛り上がる、くらいのことがアフターコロナなんじゃないのかな。

在宅関連、テイクアウト構造ももワクチンができたら終了。

あえて言うと1年の間に貧乏な人が増えるのがアフターコロナなのかもしれない。

その間に、特定会社旅行会社とかイベント会社)がつぶれて、

金のある会社が焼野原にあぶれたスタッフを集めて参入する。

騒動が終わったら、雇い主が変わるだけで産業構造は変わらないんじゃないの。

生きながらえた飲食店はもしかしたら死ぬまで借金返済に追われる。

火事場のバカ力的に新しいものが生まれ可能性もあるけどそれは一部の人

一般人貧乏人は金をかき集めて耐える、というのがアフターコロナのための対策

アフターコロナとか言って、調子に乗ってる自称知識人

おまえらも、コロナ後にすぐ行動しないとすぐ地に落ちるぞ。

予測なんか無理なんだから

2020-04-20

『うんち』は『いいね!』って意味だよ

疑問に思ってる連中が多いようなので、ここらでちゃんと言っとくか。

ずいぶん前から「うんち」を言っているんだが、「うんち」はうんちって意味じゃない。

はてな匿名ダイアリーでは、『うんち』は『いいね!』だ。 

…そう言い切るのは微妙だが、だいたいそんな感じに運用されている。

だったら素直に、『いいね!』って言えばいいじゃないですか。

どうして『いいね!』って言わないんだろう。

そんなふうに思う人もいるかもしれない。

浅はか。

想像してみろ。はてな匿名ダイアリーが『いいね!』が言い合える場所だったとしたら。

長文の日記が並んで「…以上です。いかがでしたでしょうか?」

返信欄は「いいね!」「いいね!」「いいね!

増田がそんな風に利用されていたなら。

とても居心地がいいよな。

褒めたり労ったり、お互いを思いやれる空間は、居心地がいい。

まりに居心地がいいので、次第に利用者は入り浸るようになる。自然に人の繋がりができていく。

ニンジン増田さん、お仕事お忙しそうですね、体調は大丈夫ですか」

ダイコン増田さん、心配してくださってありがとうございます

和気あいあいの居心地の良さの中に、内輪然とした雰囲気形成されていく。

特定の人に話しかけるような、手紙みたいな文章投稿され、たくさんのお礼が連なる。

話しの前提は省略されて、共有された話題には通じていることが要求される。

新参割り込みにくい空気が、出来上がっていく。

居心地の良さに気をつけろ。

ネット古老には、インターネットの多くが匿名だった時代をくぐり抜けてきた老人には、常識的な知見だ。

馴れ合いがやりたいなら Facebook とか twitter とかの ID 付きの場所へ行けばいい。

そういう場所に馴染めない奴らはどこへいく?

承認されることさえストレスになる人間

褒められると、次は褒められないんじゃないかって身構える。

社会のはみ出しものは社交場には行かない。

気が付かないやつはマジで気が付かないんだが、実は、日陰で生きる人間結構、割と、たくさんいる。

あるいはコミュ強やリア充だって、言えないことはある。

いつも一緒にいる仲間には話せないようなこと、不満とか愚痴とかヤッカミとか。あるいは純粋な自慢とか。日向で咲いてる人間だって、表社会で言えないようなことは結構、割と、たくさんある。

それを黙って抱えていたくないときは、どこに吐き出せばいい?

そういう奴らが居るべき場所が、そういうのを言える場所が、どこかしらには必要なんだよ。

コミュニケーション能力が低かったり文章力がないような奴でも、気軽に利用できるプラットフォーム

若い連中は知らんかもしれないが、初期の2ちゃんねる黎明期ニコニコ動画はそうだった。

住人を慮らない。

積極的無視を、やっていく。

ユーザー同士がお互いに距離をとる。必要以上に近づかないことが、心理的安全性を生む。

いっそ”殺伐”っていえるほどに乾いた空気が、逆に言論多様性を育む。

聞いてないやつがいからこそ、話せることがある。

信じられないかもしれないが、そういうのはあるんだ。

居心地は、悪いくらいがちょうどいい。

オレら古株の増田はその辺をわきまえているから、「いいね!」なんて、間違っても口に出したりしない。

だが共通符丁があると便利ではある。「あっそう」「へぇ」「まぁわかる」これら全部の状況を深く考えずにテキトウに放言できるような、短くて覚えやすワードが。

増田にゆかりのあるワードなら、なおいい。

そんなわけで、Let's say ...

「「うんち」」

追記

傾向としてはつまらない上に無駄に長く自分語り多めで

こんなふうに誤解してる増田がいて驚いている。

忘れているかもしれないが、ここは日記サイトだ。日記サイトで自分を語って何が悪い

昨今は増田も賑わってきていて、若い連中も入ってきてる。

ユーザーインターフェースも携帯端末向きになってきた。

お前らが慣れてるネットは記名ネットだろうから、こういうネット古参が好むような暗黙の文化は、むしろ解りにくかったか

2020-04-01

[] #84-1「幸せ世界

幸せって何だろう。

……なんてことをシラフで管まく奴がいたら、それは人の温もりに飢えているドランカーか、時間を持て余したバックパッカーのどちらかだ。

それ以外だと、弟みたいな哲学的未熟児(ガキ)か。

幸せとは水が沸騰することだよ。外圧によって変化する沸点こそ、幸せの有り様さ」

弟は以前に、そんなことを意気揚々と語っていたが、とどのつまり“人それぞれ”ってのを言い換えているだけだ。

陳腐結論を捏ねくり回したり、とっぽい言い回しで着飾りたい年頃だったのだろう。

本人は「山登りの疲れでハイになってた」って後に釈明していたが。

いずれにしろナンセンスなことで夢想したり、使い古された話で盛り上がれるのは若者特権さ。

無人島に何を持っていくか」だとか、「カレー味のウンコorウンコ味のカレー」だとか、そんな話を大人になってからするもんじゃない。

言うまでもなく、幸せってのが如何に不安定で、捉えどころのないモノなのかは自明の理だ。

例えば俺にとっての幸せは、自分時間スムーズに使いこなすこと。

弟は不安や不満のない、退屈しない程度に刺激的な、メリハリのある毎日を過ごすこと。

父は余裕を持ったスケジュール仕事を終えることで、母は家族と一緒にいられることだと言っていた。

キトゥンは知らない。

俺は猫じゃないし、猫の言葉も分からいからな。

まあ、このように身内の間だけでも多様なのだから幸せズバリ「こうだ!」って答えるのは無理な話なんだ。

弟のようにガワだけ取り繕っても、単なる言葉遊びにしかならない。

だが今回の話に出てくる“とある人物”は、それを壮大かつ究極的に追い求めた。

====

今回の出来事に巻き込まれたのは突然だった。

最初は順調だったんだ。

その日、家族はそれぞれの事情で外出していて、文字通り猫の子一匹いない状態

自宅には俺一人で、都合よく予定も埋まっていない。

それはつまり、俺は俺のためだけに時間を使えるってことを意味していた。

例えば、ラジオ体操筋トレもやりたい放題だ。

「9、1011……いや、もう20回くらいやったっけ……まあいいや、最初からやり直そう」

ランチ健康も行儀も度外視できる。

イレブン豚まんには、やっぱり緑のタバスコが最適解だな」

周りに誰もいないのを承知の上で、あえて独り言を呟いてみたりもした。

特に意味なんてない。

自分のためだけに時間を使えるってことが重要なんだ。

これほど贅沢で、多幸感を覚える方法はないだろう。

勿論これは客観的見解ではないが、異論を挟める人間は今この場にいないんだ。

だが平穏というものは、得てして容易く壊れやすい。

「やあ、マスダ!」

ブレイクタイムの時、そいつ唐突に現れた。

ガイドと名乗る、未来からやってきた輩だ。

「……」

一切の誇張なく、本当にいきなりである

しっかり戸締りをしていたし、入ってきた気配すら感じなかったのに、いつの間にか部屋の中にいたんだ。

だがガイド普段の振る舞いを知っている俺からすれば、これは驚くに値しない。

「……どうやって入ってきた」

「それは言えない決まりなんだ。事情があってね」

こいつの時代不法侵入という決まりはないのだろうか。

あと、人のテリトリーにずかずか入ってきて、一方的に「こっちの事情を汲んでくれ」と主張してくるのも随分だ。

「不躾なのは百も承知さ。それでも優先したい事柄から、こうやって来たんだ」

こいつと出会ったのは一年前だが、どうにも苦手な相手だ。

自分未来に生きているって驕りが、所々に見え隠れして鼻につく。

己の価値観や振る舞いが相手とは違うって前提が、まるでないように動いてくる。

ちゃんと聞いてくれよ。キミが今いる世界、ひいてはボクたちのいる世界消滅する可能性もあるんだ」

なんとも大仰だが、ガイド言葉結果的真実であることが多い。

それは分かっている。

分かっているのだが、真面目に聞けというのは無理な話だ。

なにせエイプリルフールから

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2020-02-25

翳(原民喜

センター試験話題になったけど、全文読めるところが見つからなかったので)

底本:原民喜戦後小説 下(講談社文芸文庫1995年8月10日第1刷発行

     I

 私が魯迅の「孤独者」を読んだのは、一九三六年の夏のことであったが、あのなかの葬いの場面が不思議に心を離れなかった。不思議だといえば、あの本——岩波文庫魯迅選集——に掲載してある作者の肖像が、まだ強く心に蟠(わだかま)るのであった。何ともいい知れぬ暗黒を予想さす年ではあったが、どこからともなく惻々として心に迫るものがあった。その夏がほぼ終ろうとする頃、残暑の火照りが漸く降りはじめた雨でかき消されてゆく、とある夜明け、私は茫とした状態で蚊帳のなかで目が覚めた。茫と目が覚めている私は、その時とらえどころのない、しかし、かなり烈しい自責を感じた。泳ぐような身振りで蚊帳の裾をくぐると、足許に匐っている薄暗い空気を手探りながら、向側に吊してある蚊帳の方へ、何か絶望的な、愬(うった)えごとをもって、私はふらふらと近づいて行った。すると、向側の蚊帳の中には、誰だか、はっきりしない人物が深い沈黙に鎖されたまま横わっている。その誰だか、はっきりしない黒い影は、夢が覚めてから後、私の老い母親のように思えたり、魯迅の姿のように想えたりするのだった。この夢をみた翌日、私の郷里からハハキトクの電報が来た。それから魯迅の死を新聞で知ったのは恰度亡母の四十九忌の頃であった。

 その頃から私はひどく意気銷沈して、落日の巷を行くの概(おもむき)があったし、ふと己の胸中に「孤独者」の嘲笑を見出すこともあったが、激変してゆく周囲のどこかにもっと切実な「孤独者」が潜んでいはすまいかと、窃(ひそ)かに考えるようになった。私に最初孤独者」の話をしかけたのは、岩井繁雄であった。もしかすると、彼もやはり「孤独者」であったのかもしれない。

 彼と最初に出逢ったのは、その前の年の秋で、ある文学研究会の席上はじめてSから紹介されたのである。その夜の研究会は、古びたビルの一室で、しめやかに行われたのだが、まことにそこの空気に応(ふさ)わしいような、それでいて、いかにも研究会などにはあきあきしているような、独特の顔つきの痩形長身青年が、はじめから終りまで、何度も席を離れたり戻って来たりするのであった。それが主催者の長広幸人であるらしいことは、はじめから想像できたが、会が終るとSも岩井繁雄も、その男に対って何か二こと三こと挨拶して引上げて行くのであった。さて、長広幸人の重々しい印象にひきかえて、岩井繁雄はいかにも伸々した、明快卒直な青年であった。長い間、未決にいて漸く執行猶予最近釈放された彼は、娑婆に出て来たことが、何よりもまず愉快でたまらないらしく、それに文学上の抱負も、これから展望されようとする青春とともに大きかった。

 岩井繁雄と私とは年齢は十歳も隔たってはいたが、折からパラつく時雨をついて、自動車を駆り、遅くまでSと三人で巷を呑み歩いたものであった。彼はSと私の両方に、絶えず文学の話を話掛けた。極く初歩的な問題から再出発する気組で——文章が粗雑だと、ある女流作家から注意されたので——今は志賀直哉のものノートし、まず文体研究をしているのだと、そういうことまで卒直に打明けるのであった。その夜の岩井繁雄はとにかく愉快そうな存在だったが、帰りの自動車の中で彼は私の方へ身を屈めながら、魯迅の「孤独者」を読んでいるかと訊ねた。私がまだ読んでいないと答えると話はそれきりになったが、ふとその時「孤独者」という題名で私は何となくその夜はじめて見た長広幸人のことが頭に閃いたのだった。

 それから夜更の客も既に杜絶えたおでん屋の片隅で、あまり酒の飲めない彼は、ただその場の空気に酔っぱらったような、何か溢れるような顔つきで、——やはり何が一番愉しかったといっても、高校時代ほど生き甲斐のあったことはない、と、ひどく感慨にふけりだした。

 私が二度目の岩井繁雄と逢ったのは一九三七年の春で、その時私と私の妻は上京して暫く友人の家に滞在していたが、やはりSを通じて二三度彼と出逢ったのである。彼はその時、新聞記者になったばかりであった。が、相変らず溢れるばかりのもの顔面に湛えて、すくすくと伸び上って行こうとする姿勢で、社会部入社したばかりの岩井繁雄はすっかりその職業が気に入っているらしかった。恰度その頃紙面を賑わした、結婚直前に轢死(れきし)を遂げた花婿の事件があったが、それについて、岩井繁雄は、「あの主人公は実はそのアルマンスだよ」と語り、「それに面白いのは花婿の写真がどうしても手に入らないのだ」と、今もまだその写真を追求しているような顔つきであった。そうして、話の途中で手帳を繰り予定を書込んだり、何か行動に急きたてられているようなところがあった。かと思うと、私の妻に「一たい今頃所帯を持つとしたら、どれ位費用がかかるものでしょうか」と質問し、愛人が出来たことを愉しげに告白するのであった。いや、そればかりではない、もしかすると、その愛人同棲した暁には、染料の会社設立し、重役になるかもしれないと、とりとめもない抱負も語るのであった。二三度逢ったばかりで、私の妻が岩井繁雄の頼もしい人柄に惹きつけられたことは云うまでもない。私の妻はしばしば彼のことを口にし、たとえば、混みあうバスの乗降りにしても、岩井繁雄なら器用に婦人を助けることができるなどというのであった。私もまた時折彼の噂は聞いた。が、私たちはその後岩井繁雄とは遂に逢うことがなかったのである

 日華事変が勃発すると、まず岩井繁雄は巣鴨駅の構内で、筆舌に絶する光景を目撃したという、そんな断片的な噂が私のところにも聞えてきて、それから間もなく彼は召集されたのである。既にその頃、愛人と同居していた岩井繁雄は補充兵として留守隊で訓練されていたが、やがて除隊になると再び愛人の許に戻って来た。ところが、翌年また召集がかかり、その儘前線派遣されたのであった。ある日、私がSの許に立寄ると、Sは新聞第一面、つまり雑誌新刊書の広告が一杯掲載してある面だけを集めて、それを岩井繁雄の処へ送るのだと云って、「家内に何度依頼しても送ってくれないそうだから僕が引うけたのだ」とSは説明した。その説明は何か、しかし、暗然たるものを含んでいた。岩井繁雄が巣鴨駅で目撃した言語に絶する光景とはどんなことなのか私には詳しくは判らなかったが、とにかく、ぞっとするようなものがいたるところに感じられる時節であった。ある日、私の妻は小学校の講堂で傷病兵慰問の会を見に行って来ると、頻りに面白そうに余興のことなど語っていたが、その晩、わあわあと泣きだした。昼間は笑いながら見ものが、夢のなかでは堪らなく悲しいのだという。ある朝も、——それは青葉と雨の鬱陶しい空気が家のうちまで重苦しく立籠っている頃であったが——まだ目の覚めきらない顔にぞっとしたものを浮べて、「岩井さんが還って来た夢をみた。痩せて今にも斃れそうな真青な姿でした」と語る。妻はなおその夢の行衛を追うが如く、脅えた目を見すえていたが、「もしかすると、岩井さんはほんとに死ぬるのではないかしら」と嘆息をついた。それは私の妻が発病する前のことで、病的に鋭敏になった神経の前触れでもあったが、しかしこの夢は正夢であった。それから二三ヵ月して、岩井繁雄の死を私はSからきいた。戦地にやられると間もなく、彼は肺を犯され、一兵卒にすぎない彼は野戦病院殆ど碌に看護も受けないで死に晒されたのであった。

 岩井繁雄の内縁の妻は彼が戦地へ行った頃から新しい愛人をつくっていたそうだが、やがて恩賜金を受取るとさっさと老母を見捨てて岩井のところを立去ったのである。その後、岩井繁雄の知人の間では遺稿集——書簡は非常に面白いそうだ——を出す計画もあった。彼の文章が粗雑だと指摘した女流作家に、岩井繁雄は最初結婚を申込んだことがある。——そういうことも後になって誰かからきかされた。

 たった一度見たばかりの長広幸人の風貌が、何か私に重々しい印象を与えていたことは既に述べた。一九三五年の秋以後、遂に私は彼を見る機会がなかった。が、時に雑誌掲載される短かいものを読んだこともあるし、彼に対するそれとない関心は持続されていた。岩井繁雄が最初召集を受けると、長広幸人は倉皇と満洲へ赴いた。当時は満洲へ行って官吏になりさえすれば、召集免除になるということであった。それから間もなく、長広幸人は新京文化方面役人になっているということをきいた。あの沈鬱なポーズ役人の服を着ても身に着くだろうと私は想像していた。それから暫く彼の消息はきかなかったが、岩井繁雄が戦病死した頃、長広幸人は結婚をしたということであった。それからまた暫く彼の消息はきかなかったが、長広幸人は北支で転地療法をしているということであった。そして、一九四二年、長広幸人は死んだ。

 既に内地にいた頃から長広幸人は呼吸器を犯されていたらしかったが、病気の身で結婚生活飛込んだのだった。ところが、その相手資産目あての結婚であったため、死後彼のものは洗い浚(ざら)い里方に持って行かれたという。一身上のことは努めて隠蔽する癖のある、長広幸人について、私はこれだけしか知らないのである

     II

 私は一九四四年の秋に妻を喪ったが、ごく少数の知己へ送った死亡通知のほかに満洲にいる魚芳へも端書を差出しておいた。妻を喪った私は悔み状が来るたびに、丁寧に読み返し仏壇ほとりに供えておいた。紋切型の悔み状であっても、それにはそれでまた喪にいるものの心を鎮めてくれるものがあった。本土空襲も漸く切迫しかかった頃のことで、出した死亡通知に何の返事も来ないものもあった。出した筈の通知にまだ返信が来ないという些細なことも、私にとっては時折気に掛るのであったが、妻の死を知って、ほんとうに悲しみを頒ってくれるだろうとおもえた川瀬成吉からもどうしたものか、何の返事もなかった。

 私は妻の遺骨を郷里墓地に納めると、再び棲みなれた千葉借家に立帰り、そこで四十九日を迎えた。輸送船の船長をしていた妻の義兄が台湾沖で沈んだということをきいたのもその頃であるサイレンはもう頻々と鳴り唸っていた。そうした、暗い、望みのない明け暮れにも、私は凝と蹲ったまま、妻と一緒にすごした月日を回想することが多かった。その年も暮れようとする、底冷えの重苦しい、曇った朝、一通の封書が私のところに舞込んだ。差出人は新潟県××郡××村×川瀬丈吉となっている。一目見て、魚芳の父親らしいことが分ったが、何気なく封を切ると、内味まで父親の筆跡で、息子の死を通知して来たものであった。私が満洲にいるとばかり思っていた川瀬成吉は、私の妻より五ヵ月前に既にこの世を去っていたのである

 私がはじめて魚芳を見たのは十二年前のことで、私達が千葉借家へ移った時のことである私たちがそこへ越した、その日、彼は早速顔をのぞけ、それから殆ど毎日註文を取りに立寄った。大概朝のうち註文を取ってまわり、夕方自転車で魚を配達するのであったが、どうかすると何かの都合で、日に二三度顔を現わすこともあった。そういう時も彼は気軽に一里あまりの路を自転車で何度も往復した。私の妻は毎日顔を逢わせているので、時々、彼のことを私に語るのであったが、まだ私は何の興味も関心も持たなかったし、殆ど碌に顔も知っていなかった。

 私がほんとうに魚芳の小僧を見たのは、それから一年後のことと云っていい。ある日、私達は隣家の細君と一緒にブラブラ千葉海岸の方へ散歩していた。すると、向の青々とした草原の径をゴム長靴をひきずり、自転車を脇に押しやりながら、ぶらぶらやって来る青年があった。私達の姿を認めると、いかにも懐しげに帽子をとって、挨拶をした。

「魚芳さんはこの辺までやって来るの」と隣家の細君は訊ねた。

「ハア」と彼はこの一寸した逢遭を、いかにも愉しげにニコニコしているのであった。やがて、彼の姿が遠ざかって行くと、隣家の細君は、

「ほんとに、あの人は顔だけ見たら、まるで良家のお坊ちゃんのようですね」と嘆じた。その頃から私はかすかに魚芳に興味を持つようになっていた。

 その頃——と云っても隣家の細君が魚芳をほめた時から、もう一年は隔っていたが、——私の家に宿なし犬が居ついて、表の露次でいつも寝そべっていた。褐色の毛並をした、その懶惰な雌犬は魚芳のゴム靴の音をきくと、のそのそと立上って、鼻さきを持上げながら自転車の後について歩く。何となく魚芳はその犬に対しても愛嬌を示すような身振であった。彼がやって来ると、この露次は急に賑やかになり、細君や子供たちが一頻り陽気に騒ぐのであったが、ふと、その騒ぎも少し鎮まった頃、窓の方から向を見ると、魚芳は木箱の中から魚の頭を取出して犬に与えているのであった。そこへ、もう一人雑魚(ざこ)売りの爺さんが天秤棒を担いでやって来る。魚芳のおとなしい物腰に対して、この爺さんの方は威勢のいい商人であった。そうするとまた露次は賑やかになり、爺さんの忙しげな庖丁の音や、魚芳の滑らかな声が暫くつづくのであった。——こうした、のんびりした情景はほとんど毎日繰返されていたし、ずっと続いてゆくもののようにおもわれた。だが、日華事変の頃から少しずつ変って行くのであった。

 私の家は露次の方から三尺幅の空地を廻ると、台所に行かれるようになっていたが、そして、台所の前にもやはり三尺幅の空地があったが、そこへ毎日八百屋、魚芳をはじめ、いろんな御用聞がやって来る。台所の障子一重を隔てた六畳が私の書斎になっていたので、御用聞と妻との話すことは手にとるように聞える。私はぼんやりと彼等の会話に耳をかたむけることがあった。ある日も、それは南風が吹き荒んでものを考えるには明るすぎる、散漫な午後であったが、米屋小僧と魚芳と妻との三人が台所で賑やかに談笑していた。そのうちに彼等の話題は教練のことに移って行った。二人とも青年訓練所へ通っているらしく、その台所前の狭い空地で、魚芳たちは「になえつつ」の姿勢を実演して興じ合っているのであった。二人とも来年入営する筈であったので、兵隊姿勢を身につけようとして陽気に騒ぎ合っているのだ。その恰好おかしいので私の妻は笑いこけていた。だが、何か笑いきれないものが、目に見えないところに残されているようでもあった。台所へ姿を現していた御用聞のうちでは、八百屋がまず召集され、つづいて雑貨屋小僧が、これは海軍志願兵になって行ってしまった。それから豆腐屋の若衆がある日、赤襷をして、台所に立寄り忙しげに別れを告げて行った。

 目に見えない憂鬱の影はだんだん濃くなっていたようだ。が、魚芳は相変らず元気で小豆(こまめ)に立働いた。妻が私の着古しのシャツなどを与えると、大喜びで彼はそんなものも早速身に着けるのであった。朝は暗いうちから市場へ行き、夜は皆が寝静まる時まで板場で働く、そんな内幕も妻に語るようになった。料理の骨(こつ)が憶えたくて堪らないので、教えを乞うと、親方は庖丁を使いながら彼の方を見やり、「黙って見ていろ」と、ただ、そう呟くのだそうだ。鞠躬如(きっきゅうじょ)として勤勉に立働く魚芳は、もしかすると、そこの家の養子にされるのではあるまいか、と私の妻は臆測もした。ある時も魚芳は私の妻に、——あなたそっくり写真がありますよ。それが主人のかみさんの妹なのですが、と大発見をしたように告げるのであった。

 冬になると、魚芳は鵯(ひよどり)を持って来て呉れた。彼の店の裏に畑があって、そこへ毎朝沢山小鳥が集まるので、釣針に蚯蚓(みみず)を附けたものを木の枝に吊しておくと、小鳥簡単に獲れる。餌は前の晩しつらえておくと、霜の朝、小鳥は木の枝に動かなくなっている——この手柄話を妻はひどく面白がったし、私も好きな小鳥が食べられるので喜んだ。すると、魚芳は殆ど毎日小鳥を獲ってはせっせと私のところへ持って来る。夕方になると台所に彼の弾んだ声がきこえるのだった。——この頃が彼にとっては一番愉しかった時代かもしれない。その後戦地へ赴いた彼に妻が思い出を書いてやると、「帰って来たら又幾羽でも鵯鳥を獲って差上げます」と何かまだ弾む気持をつたえるような返事であった。

 翌年春、魚芳は入営し、やがて満洲の方から便りを寄越すようになった。その年の秋から私の妻は発病し療養生活を送るようになったが、妻は枕頭で女中を指図して慰問の小包を作らせ魚芳に送ったりした。温かそうな毛の帽子を着た軍服姿の写真満洲から送って来た。きっと魚芳はみんなに可愛がられているに違いない。炊事も出来るし、あの気性では誰からも重宝がられるだろう、と妻は時折噂をした。妻の病気は二年三年と長びいていたが、そのうちに、魚芳は北支から便りを寄越すようになった。もう程なく除隊になるから帰ったらよろしくお願いする、とあった。魚芳はまた帰って来て魚屋が出来ると思っているのかしら……と病妻は心細げに嘆息した。一しきり台所を賑わしていた御用聞きたちの和やかな声ももう聞かれなかったし、世の中はいよいよ兇悪な貌を露出している頃であった。千葉名産の蛤の缶詰を送ってやると、大喜びで、千葉へ帰って来る日をたのしみにしている礼状が来た。年の暮、新潟の方から梨の箱が届いた。差出人は川瀬成吉とあった。それから間もなく除隊になった挨拶状が届いた。魚芳が千葉へ訪れて来たのは、その翌年であった。

 その頃女中を傭えなかったので、妻は寝たり起きたりの身体台所をやっていたが、ある日、台所の裏口へ軍服姿の川瀬成吉がふらりと現れたのだった。彼はきちんと立ったまま、ニコニコしていた。久振りではあるし、私も頻りに上ってゆっくりして行けとすすめたのだが、彼はかしこまったまま、台所のところの閾から一歩も内へ這入ろうとしないのであった。「何になったの」と、軍隊のことはよく分らない私達が訊ねると、「兵長になりました」と嬉しげに応え、これからまだ魚芳へ行くのだからと、倉皇として立去ったのである

 そして、それきり彼は訪ねて来なかった。あれほど千葉へ帰る日をたのしみにしていた彼はそれから間もなく満洲の方へ行ってしまった。だが、私は彼が千葉を立去る前に街の歯医者でちらとその姿を見たのであった。恰度私がそこで順番を待っていると、後から入って来た軍服青年歯医者挨拶をした。「ほう、立派になったね」と老人の医者は懐しげに肯いた。やがて、私が治療室の方へ行きそこの椅子に腰を下すと、間もなく、後からやって来たその青年助手の方の椅子に腰を下した。「これは仮りにこうしておきますから、また郷里の方でゆっくりお治しなさい」その青年の手当はすぐ終ったらしく、助手は「川瀬成吉さんでしたね」と、机のところのカードに彼の名を記入する様子であった。それまで何となく重苦しい気分に沈んでいた私はその名をきいて、はっとしたが、その時にはもう彼は階段を降りてゆくところだった。

 それから二三ヵ月して、新京の方から便りが来た。川瀬成吉は満洲吏員就職したらしかった。あれほど内地を恋しがっていた魚芳も、一度帰ってみて、すっかり失望してしまったのであろう。私の妻は日々に募ってゆく生活難を書いてやった。すると満洲から返事が来た。「大根一本が五十銭、内地の暮しは何のことやらわかりません。おそろしいことですね」——こんな一節があった。しかしこれが最後消息であった。その後私の妻の病気悪化し、もう手紙を認(したた)めることも出来なかったが、満洲の方からも音沙汰なかった。

 その文面によれば、彼は死ぬる一週間前に郷里に辿りついているのである。「兼て彼の地に於て病を得、五月一日帰郷、五月八日、永眠仕候」と、その手紙は悲痛を押つぶすような調子ではあるが、それだけに、佗しいものの姿が、一そう大きく浮び上って来る。

 あんな気性では皆から可愛がられるだろうと、よく妻は云っていたが、善良なだけに、彼は周囲から過重な仕事を押つけられ、悪い環境機構の中を堪え忍んで行ったのではあるまいか親方から庖丁の使い方は教えて貰えなくても、辛棒した魚芳、久振りに訪ねて来ても、台所の閾から奥へは遠慮して這入ろうともしない魚芳。郷里から軍服を着て千葉を訪れ、晴れがましく顧客歯医者で手当してもらう青年。そして、遂に病躯をかかえ、とぼとぼと遠国から帰って来る男。……ぎりぎりのところまで堪えて、郷里に死にに還った男。私は何となしに、また魯迅作品の暗い翳を思い浮べるのであった。

 終戦後、私は郷里にただ死にに帰って行くらしい疲れはてた青年の姿を再三、汽車の中で見かけることがあった。……

2020-02-23

[] #83-13「キトゥンズ」

≪ 前

どうやら攻撃を受けたらしい。

至近距離だったせいで前足の動きを捉えきれず、身構えるのが遅れたんだ。

凄まじい勢いで、顔に掌底を打ちこまれた。

一瞬、自分の身に何が起きたかからなくなるほどの衝撃。

いきなりモロに食らってしまった。

奮い立たせた戦意が、途端に削ぎ落とされていくのを感じる。

早く反撃しなければ。

半ば朦朧としたまま右足を突き出す。

「……貴様!」

攻撃クリーンヒットしなかったが、意外にも相手の顔は歪んだ。

爪が絶妙に、相手の古傷をなぞったらしい。

これはラッキーパンチ……そう解釈するのは甘かった。

「よくも、よくぞ本気にさせたなっ!」

相手の勢いは衰えることなく、むしろ増大させてしまったようだ。

前足による攻撃が、左右から交互に襲ってくる。

「ふ、ぐ……」

今度はしっかりと意識から攻撃を食らったにも関わらず、その威力は驚くものだった。

わず息が漏れる。

「このっ!」

反射的に殴ったが、まるで効いている素振りがない。

マズいぞ、こいつ予想以上にケンカ慣れしている。

実力に差があるのは分かっていたが、まさかここまでとは。

勝てる気がしない。

どんどん血の気が引いていくのを感じた。

キトゥンー!」

だが、その時、仲間たちの声援が俺の耳に届いた。

おそらく、ずっと前から応援してくれていたのだろう。

それが聴こえないほど、さっきまで追い詰められていたんだ。

「頼むー!」

なけなしの戦意鼓舞されていくようだった。

大丈夫だ、まだ戦える。

俺は相手パンチを受けながら、あえて前のめりに突っ込んだ。

「うっ……!?

足でだめなら、今度は口だ。

相手の古傷めがけ、俺はガブリと噛み付いた。

「やめろ、この野朗!」

相手も反撃してくるが、俺は意に介さず、しつこく同じ場所に牙を突き立てる。

みつきを避けてくれば、今度は爪で、爪を避けられたなら今度は噛みつく。

どれほど効いているのかは実感がなく、正直いって勝てる気持ちは沸き起こらない。

それでも俺はひたすら攻撃を続けた。

「負けないでくれー!」

そうだ、今の俺に必要なのは“勝てる気”じゃない。

“負けない”という絶対的意思だ。

「こいつ、いつまで、やるんだ……!」

ネコ喧嘩ってのは倒れるまで続ける、なんてことはまずない。

体がボロボロになる前に、どちらかが降参して終わる。

逆に言えば、気力が続く限りは終わらない。

俺に意思がある限り、決して負けることはないんだ。

「いけー! キトゥン!」

====

「……はっ?」

目を開けて、まず視界に入ったのは壁。

次に捉えたのは、本の山だった。

なんだ、頭が回らない。

それに、全身にけだるさを感じる。

「あ、おはよう兄貴

状況を理解するまでに数秒を要した。

「夢って……ふざけてんのか」

どうも俺は、いつの間にか眠っていたらしい。

課題による疲れと、ガイド意味不明SF講義のせいだろう。

変な姿勢で寝てしまったようで、身体の節々が悲鳴をあげている。

「いてて……ガイドは?」

「さっき帰ったよ」

しかも直前の話題に引っ張られて、キトゥンになった夢を見るとは。

内容も我ながらナンセンスものだ。

自身が猫になれば気持ちが分かるだろうと、どこかで考えていたのだろうか。

思い上がりも甚だしい。

あんな夢を見ているようじゃあ、俺もあの動物番組の仲間入りだ。

「あ、キトゥンおかえり」

自己嫌悪に苛まれていると、なんとも微妙タイミングキトゥンが部屋に入ってきた。

あんな夢を見てしまった後だから気まずい。

「ニャー」

当事者はそんなことを露知らず、部屋に入ってくるや否やこちらに擦り寄ってきた。

畜生が、こんな時に限って。

俺は仕方なくキトゥンを抱きかかえると、おもむろに膝の上に乗せた。

いつものように撫でながら、それとなくキトゥンの体を調べる。

正夢なわけはないが、一応だ。

パッと見は大丈夫なように見えるが……これ以上まさぐると嫌がるしなあ。

明日、念のために病院に連れて行こう。

兄貴、なんか調子悪そうだね」

「ああ……嫌な夢を見たからな。動物を、自分とは違う存在を、自分尺度で決め付けて、言ってもいないことを勝手に喋らせて……」

「うーん? それ、人が他人に対してやってることと何か違うの? 割と見たことあるけど、そういうのやってる人」

弟が何か言っているが、まだ夢うつつだったので上手く聞き取れない。

血圧の煩わしさから、俺はぼんやりと相槌を打った。

「……それもそうだな」

(#83-おわり)

2020-02-22

[] #83-12キトゥンズ」

≪ 前

運命の日、俺たちは決戦の地であるネコの国』に立っていた。

「ふん、流れの……しか首輪つきか。あっちの集いで最もマシだったのが貴様か」

対戦相手らしきネコが、こちらに聴こえるような大きさでそう呟く。

聴こえて上等の、軽い挑発のつもりなのだろう。

仲間達は少し怪訝な顔をしていたが、俺は歯牙にもかけない。

どうせ戦いとなれば、牙は存分に使うことになる。

代表者、前へ」

俺は恐れも淀みもなく、いつも歩くように前に進んだ。

不思議身体も心も軽やかだった。

自分過去を顧みれば、なんとも変な感じだ。

不自由首輪を付けているような存在、それが俺だ。

けれど今この瞬間、俺は何よりも身軽なように思えた。


「逃げるなら今のうちだぞ?」

周りの野次一瞥もくれず、俺は対戦相手の間合いに入った。

そしてほぼ同時のタイミングで、お互いに睨み合う。

この時点で、既に戦いは始まっていた。

開始の号令など存在しない。

「すぐには逃げてくれるなよ?」

相手は安っぽい挑発をしながら、更に間合いを詰めてくる。

目を合わせただけで、すごい威圧感だ。

ケンカ慣れしていない俺は、この時点で目を逸らしたくてたまらない。

俺より少しでかいくらいだと思っていたが、至近距離で見ると予想以上だ。

覆われた剛毛が際立っており、実際以上に大きく見える。

こんなことなら、俺も数日前のブラッシング拒否しておくべきだったか

普段の俺なら、この時点で面倒くさくなって退散していただろう。

だが、その程度の有利不利は想定の範囲内

こんなことで悄気てはいられない。

俺も負けじと、相手との距離を詰めていく。

その間も目線は決して逸らさない。

「ほう、嫌々やらされたと思ったが……最低限の根性はあるようだな」

いよいよ、というところまで近づいた。

眼前に広がる、相手顔面

それは同時に、互いの前足が届く距離であることを意味していた。

「シャーッ」

相手は鋭い牙を見せると、まるで蛇のような声を発した。

一度、蛇と対峙したことがあるけれど、迫力はこっちのほうが上かもしれない。

静かだが骨身に染みる、強烈な威嚇である

体が縮み上がりそうだが、ここで怯んだら負けだ。

目も逸らしちゃいけない。

しろ俺も顔を近づけて、威嚇してやるんだ。

「フーッ!」

少しでも自分の体が大きく見えるように立つと、俺は全力で音を発した。

から見てどうだったかは知らないが、気持ちでは負けていないつもりだ。

そして少なくとも、相手にはその気概が十分すぎるほどに伝わったらしい。

「……そうこなっくちゃな!」

相手がそう言った瞬間、俺の視界がグラりと揺れるのを感じた。

次 ≫

2020-02-21

[] #83-11キトゥンズ」

≪ 前

そんなわけで、“流れネコ”ってのは「遠くからやってきたネコ」って意味の他に、「ヒトが忌み嫌っている特定ネコ」って意味も含まれている。

ヒトが勝手に決めた定義で、ネコからすれば知ったこっちゃない話だ。

だがヒトとの付き合い方も求められるイエネコ界隈において、流れネコ無視しにくい存在だった。

俺は何も特別なことはしていないし悪いこともしていないが、「ヒトとの間に軋轢を生み、善良なネコにも迷惑をかける存在」として、他のネコから邪険に扱われたりもした。

母が死んだとき、もしモーロックに拾われていなければ、ヒトに殺されるまでもなく野垂れ死んでいたかもしれない。

そのおかげで食べるものには困らなかったけれど、仲間内では一線を引かれていた。

あの頃の心境を言葉にするのは難しいが、たぶん他のネコができていたことができなかったこと、そして小さい頃に母と離れ離れになったことが大きい要因だと思う。

俺には“何か”が足りていなくて、そして満たされていなかったんだろう。

そのせいで自暴自棄になっていった。

いっそヒトの中に飛び込んで、楽になろうと考えることもあったんだ。

そんな時に出合ったのが、とあるヒトだった。

そのヒトは、どうやら俺を捕まえたがっていたようで、小魚でおびき寄せるという小賢しいことをやっていた。

俺は半ばヤケになって、その人の前に顔を出したんだ。

だが意外なことに、そのヒトは俺を殺すことはなく、それどころか飼うことにしたらしい。

どうやらヒトの中にも、流れネコを嫌う奴と嫌わない奴がいるようだ。

この出来事きっかけで、流れネコに対する、ひいては俺に対する悪いイメージは軟化していった。

飼われた後も集会所には定期的に参加し、数年かけて仲間に認められるようになったんだ。

…………

そこにきて、なぜダージンが“流れネコ”のことを蒸し返すのか。

察しはついていた。

「この戦い、本当にキトゥンに“任せる”んだな?」

ダージンとの付き合いも長い。

俺への嫌悪感から、そんなことを言っているわけじゃないのは分かっていた。

流れネコ歴史と、ヒトの存在は重い。

その血を受け継いでいる、何よりの証明である俺の体躯と体毛。

この瀬戸際からこそ、それは皆の不安を駆り立てる。

“流れネコが悪いわけではなく、ヒトが勝手にそう決めつけているだけ”

理屈では分かっていても、それで俺への不信感が完全に払拭できるわけじゃない。

そんな状態で俺を戦わせれば、勝敗がどうあれ、皆の中に決して消えない“わだかまり”が残るだろう。

「改めて問う、皆はキトゥンに“任せる”か?」

からこそダージンは、あえて言うんだ。

自分達の縄張りのために俺を戦わせるのならば、本当の意味で“任せる”べきだと。

「任せる!」

食い気味に答えたのはキンタだった。

「ええ、任せます。この戦いはキトゥンが適任でしょう」

間もなく、ケンジャもそれに続いた。

「そうだ、キトゥン! お前に任せる!」

続々と周りから同調の声が響き渡り、音は段々と大きくなっていく。

それを聴いて、俺は体から“何か”が湧きあがるのを感じた。

どちらにしろ俺は戦うつもりだったが、その意志がより強まっていくようだ。

キトゥン、お前にも聞きたい。本当にいいのか? この戦いに勝ったとしても、お前に大した得はないんだぞ」

ダージンの問いに、俺は澄ました顔で答える。

「……任せてくれるんだろ」

モーロックが俺を代表指名したのは、こういう意図もあったのかもしれない。

これは俺が皆に認められる、一世一代のチャンスってやつなのだろう。

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2020-02-20

[] #83-10キトゥンズ」

≪ 前

キトゥンにこの戦いを任せるというのは、その……」

異議を唱えたのはダージンだった。

俺は反論することもなく、ただそれを聞いていた。

キトゥンは戦う意志を、しかと示した。なのに、なぜ止める」

ダージンは一瞬だけ俺の首元を見たあと、言葉を続けた。

「なぜって、キトゥンは飼われているネコですよ」

その指摘に、俺は何も反応しなかった。

実際、この戦いに勝とうが負けようが、野ネコじゃない俺は住処に困らないのは事実だ。

場所が確保されているネコに、自分達の縄張りをかけて戦わせるんだから不安にもなるさ。

口にこそ出さないが、同じような想いを抱いているのはダージンだけじゃないだろう。

ただ自分が戦えないという負い目と、勝ち目があるのは俺だっていうことも分かっていたから、皆は声を上げにくかったのだと思う。

ダージンもそれを分かってはいるが、補佐役の立場から意見せざるを得なかった。

それに、彼らが俺を代表にしたくない理由は“もうひとつ”あった。

「それに彼は……“流れネコ”だ」

ダージンの続く言葉に、集会全体がより重苦しい空気となる。

ちょっと、ダージン! その言い草は随分じゃないの~?」

「我々は同じネコです。ましてや、この集会所の仲間をそのように呼ぶのは……」

キンタやケンジャなど、俺を昔から知る仲間は憤慨した。

俺が“流れネコであることは皆も知っている。

だが、あまり良い意味言葉ではなく、それを口に出したがるネコはいなかったからだ。

「今だからこそ、言わないといけないんだ!」

それはダージンだって同じだったが、それでも今ここで言っておかないと、後で尾を引くと考えたのだろう。

「何よアンタ! 細かいことばっか気にして! さてはA型でしょ!」

「いや、血液型関係ないし、お前だってA型だろ」

…………

流れネコ……遠くからやってきたネコのことだ。

ヒトの間では“ガイライ”だの“ガイジュウ”だの言うらしいが、俺たちの間では“流れネコ”って呼ばれている。

その流れネコについて聞かされたのは、母の口からだった。

あなたのお父さんはね、とても遠くの場所から、ここへやって来たの」

「“遠く”って?」

「ずっと、ずっと、遠く」

その場所が具体的に、どれほどの距離かは母も知らなかった。

少なくとも歩いて行けるような場所ではないらしい。

だが、俺はさして興味がなかった。

自身はここ近辺で生まれ育ったし、場所が多少変わったところで違いはないと思っていたからだ。

まり俺は流れネコというよりは、厳密には流れネコの血を引いているだけなんだ。

だけど、そんな事情を周りが慮るとは限らない。

ネコとヒトという垣根があれば尚更だ。

「いいかい、坊や。ヒトに近づいては駄目。姿を見られるのも駄目。特に大きいヒトは危険だよ」

母はことあるごとに、俺にそう言い聞かせていた。

どうやら流れネコは、ここら一帯のヒトたちには嫌われているらしい。

俺と同じ見た目をしたネコは、ヒトに連れて行かれると殺されてしまうという。

近隣にいた同胞も、全てどこかに連れ去られ、二度と帰ってこなかったんだとか。

「なんで俺だけ駄目なのさ。他のみんなはヒトと仲良くしてるのに」

「……ごめんね」

俺にはその意味が分からなかったけれど、たぶん母も分からなかったんだと思う。

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2020-02-19

[] #83-9「キトゥンズ」

≪ 前

絶望が辺りを包み込む。

結局、戦うしかないのか。

「皆よ、悲観するのは早いぞ。これは戦争ではなく、略奪でもない」

しかしモーロックは諦めていなかった。

交渉の末、この戦いにルールを設けたんだ。

「戦うべきは一匹だ。その一匹と、こちらの代表が戦い、認めさせてやればいい」

サシか……。

そうせざるを得ない、妥協案というべきか。

「その条件、信じていいんですか?」

「やつらは戦いを重んじ、強さを重んじる。だからこそ、一度でも認めれば牙を向かぬ」

それぞれ戦わないと駄目ならば、ネコの国に入れない奴が確実に出てくる。

だけど、この中にいる一匹だけが戦うのならば勝機はあるかもしれない。

だけど問題は、誰が代表となるかだった。

「では、諸君……この中に今回の戦い、志願するものはいるか?」

モーロックの呼びかけに、俺含めて皆ウーともニャーとも言わない。

なにせ、ここに集まっているネコたちは、ほとんどがケンカすらしたことないんだ。

それは争いを好まない気性だからってのもあるが、やはり強さに自信がないかなのは否定できない。

どんなのが相手なのかは分からないが、かなり覚えのあるヤツが出てくるはず。

そんなのと渡り合えそうな、体が大きくて力強いネコも仲間内にいるにはいる、のだが……。

「なあ、キンタ。お前ならやれるんじゃないか

「あたしぃ? やーよ、そんなの。戦いも食べ物も、血生臭くないのがいいわ」

有力候補だったキンタは、去勢されて今やこの状態だ。

いくら体格があっても、そもそも戦う気がなければ勝つことはできない。

次点だとケンジャもいるが、あいつは体がでかいというより単に太ってるだけだ。

「むぅ、志願する者がいないのなら……仕方ない、ワシがやるか」

モーロックあんなことを言っているが、当然ながら無茶だ。

昔ならまだしも、今の彼にまともに戦える力はない。

「よ、よしてください! 老ネコあなたには無理だ。下手したら死んでしまう!」

「では、おぬしがやるか、ダージンよ」

「そ、それは……」

そう返すモーロック眼光が鋭く光る。

ダージンはしどろもどろになり、咄嗟に俯いた。

それでも搾り出すかのように、震えた声で答える。

あなた危険晒すくらいなら……や、やります

しかし、ダージン消極的決断が認められることはなかった。

「よく言った、と誉めてやりたいところだがな。敵と相対する前から目を逸らすようなネコ代表は任せられん」


そうして代表が決まらず、どれ程の時間が経ったか

時おり「やろうか」、「やれよ」というやり取りも聞こえはしたが、どれも自信なさげであり、ハッキリとしたものではなかった。

「はあ……できれば強い意志で、自ら決めてほしかったのだがな……」

痺れを切らしたモーロックは、やれやれといった具合に息を洩らした。

「こうなったら、わしが直々に指名しよう」

集会所に緊張が走る。

選ばれたネコ自分達の居場所を得るため、更には皆の思いを背負って戦うことになる。

責任は重大だし、無傷では済まない。

代表は……キトゥン。お前だ」

その名前が出たとき、周りの視線は全て俺に集まった。

この時、肝心の選ばれた俺はというと、自分でも意外なほど落ち着いていた。

何となく、そんな予感はしていたからだろう。

年齢や体の大きさ、それに筋肉のつきぐあい

キンタを除けば、最も渡り合えそうなのは俺ってことになる。

「どうじゃ、キトゥン」

「気乗りはしないが……やるからには、やるよ」

好きでこんな体に生まれたわけじゃないが、別に抵抗感はなかった。

それでも俺が志願の際に消極的だったのは、戦いたくないこと以上に“他の理由”があったからだ。

「ちょ、ちょっと待った!」

そして予想通り、俺の気にかけていたことは起こった。

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2020-02-18

[] #83-8「キトゥンズ」

≪ 前

「皆よ、案ずるな。既に今後のことは考えてある」

無力感に打ちひしがれる中、モーロックは動じなかった。

「残念だが、こうなった以上は別のところへ移り住む他あるまい」

「別のところ……ってアテはあるんですか」

「無論ある。そこへ向かうため、ここに皆を呼んだのだから

モーロックの威厳に、仲間達も希望を取り戻していく。

しかし、後に続く言葉に、皆の顔はフタタビ沈んでいった。

「その場所とは……“ネコの国”だ」

「も、モーロック、それは……クレイジーです」

補佐役のダージンも、その提案は受け入れにくかった。

俺も同じだ。

「ヒトがのさばる世界で、ネコがための地は限られておる。もし他にあるというのなら聞き入れよう」

しかしモーロックに代案を出せるものもいなかった。

実際、“ある一点”を除けば、『ネコの国』は今いる場所よりも優れた地だ。

周りに耳障りなものも、臭いものも少ない。

腹が減ったら、目についた獲物をとることも可能だ。

しかし、そこを新天地にするとして……果たして可能なんでしょうか?」

問題は、そこには別のネコたちが多くいるという点だ。

より良い場所であるが故に、あそこにいるネコたちは縄張り意識が非常に強い。

そして仲間意識も強く、新参が入ってくることを毛嫌いする。

それでも入りたければ、強さにものを言わせて存在感を示すしかないだろう。

「だが、それができるのならば、我々は元からここにいません」

いや、仮にできたとしても、好んでやりたくはない。

この集会所にいるネコたちは争いを好まない集まりだ。

それに、自分達のために他の住処を奪うことは、俺たちを追い出そうとするヒトたちと変わらない。

「分かっておる。だから、わしは少し前に『ネコの国』へ赴き、そこのヌシに話をしにいった」

「モーロックが……どうやって!?

「わしはこう見えても、あそこで偉い立場だったのだ。若い頃の話じゃがな」

「ええっ!?

さらりと明かされた過去に、一同は飛び上がるほど驚愕している。

俺も毛が抜けるんじゃないかってくらい内心びっくりしていた。

「まあ、詳細は省くが、それからやかんやあってな……お望みとあらば、聞かせてやろう~か?」

「いや……結構です」

またも歌って説明しようとするモーロックを、ダージン粛々と静止する。

実のところ少しだけ気にはなるが、今はそれよりも『ネコの国』に行けるかどうかだ。

「それで? その“ヌシ”とやらと話はついたのか?」

「うむ……全員受け入れることを約束してくれた」

「おおっ! やったぁ!」

一部のネコは、予想外の結果に喜び勇んだ。

しかし、ケンジャやダージンたちのような、頭の回るネコたちの顔色は優れない。

そう簡単にコトが運ぶわけがないことは想像がつくからだ。

「……モーロック、なにか条件を提示されたでしょう」

ケンジャの詰問にモーロックは苦々しく応えた。

「うむ……“認めさせろ”と言われた。わしらが『ネコの国』を治めれば、否が応でも納得するだろうと」

その言葉に、ほとんどのネコは凍りついた。

「それ……どういう意味?」

キンタは察しが付かないのか、それとも認めたくないのか、俺に恐る恐る尋ねてきた

「つまり……“戦って、勝て”ってことだ」

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2020-02-17

[] #83-7「キトゥンズ」

≪ 前

ひとまず現状を把握しておくため、俺たちはモーロックの言っていた場所へ向かった。

「本当だ……ヒトがいる」

さすがに皆でゾロゾロと行くわけにもいかないので、偵察に来たのは俺やキンタなどの機敏なネコ数名。

そこにヒトの言葉に詳しいケンジャを加えている。

「ぜえ……ぜえ……ちょっと待って……休ませてください」

そんなに遠い距離でもなかったのだが、太っちょのケンジャは既に息も絶え絶えだ。

「肥え太ったお前には、ちょうどいい運動になったろ」

「ふう……余計なお世話ですし、別にそこまで肥えてないですよ。適正体重より2キロちょっと重いだけです」

とどのつまりデブじゃねえか」

それも、かなりのな。

俺も1キロばかり重くなった時は、家主がとても深刻な顔をしていた。

それからしばらくの間は、食事制限に加えて運動もかなりさせられたから身に沁みている。

1キロ重いだけでアレなんだから、その倍も重くなってるケンジャはよっぽどだ。

「しっ、静かに……ヒトが何か話しています

自分への話題を逸らすかのように、ケンジャは耳を澄ます動作に切り替えた。

「……」

「どうだ? 何て言っている?」

できれば杞憂であってほしい。

そういった期待も込めて、恐る恐る尋ねる。

しかケンジャの表情から、答えが良くないことは明白だった。

「残念ながら、モーロック危惧していた通りのようです……」

…………

集会所へ戻ると、ケンジャから詳しい会話の内容が聞かされた。

ヒトが話していた内容によると、近々ここで大きな建物を作ろうという予定があるらしい。

そして、その作業は非常にやかましく、近隣のヒトをどう説得しようかと話し合っていたようだ。

ヒトですら嫌がるほど音……。

俺たちネコの耳には耐え難いってことは、容易に想像がついた。

「ムカつくわね。そいつら、あたしたちのことはアウトオブ眼中なのかしら」

「どうやら以前から、この集会所は彼らヒトの住処だったらしいです」

まり本来の所有者はヒトだから、俺達を追い出すのに理由なんていらないってことか。

一方的な主張だ。

「“以前から”だと? 我々のほうが昔から、ここにいるんだぞ!」

彼らから言わせれば、俺たちのいう“昔”よりも“ずーっと昔”ってことなんだろう。

それが具体的にどれ程かは分からないし、本当かどうかも怪しい。

だがヒトは俺たちより何倍も長生きだから事実可能性はあるが。

いや、もし嘘だったとしても、事態は大して変わらない。

問答無用……というよりヒトとネコでは問答のしようがない。

ならば後は“強い者が勝ち取る”という、ネコ社会にも通じる道理によって縄張りの所有者を決めるしかない。

そして、それがどちらかなんてことは、実際に勝負するまでもなく分かりきっていた。

俺たちができる抵抗なんて高が知れている。

ヒトに目をつけられた時点で、この集会所は終わっていたんだ。

「いざ別の誰かのものになった途端に惜しくなって取り上げるなんて身勝手すぎる!」

「そんなことが罷り通るほど上等なのかね、ヒトってやつぁ」

ヒトにとって俺たちネコってのは、その程度の存在なのかもしれない。

そもそもネコ」って呼び方も、奴らヒトが決めたものだ。

皆もそれは理解していた。

故に、周りから漏れる仲間達の声は抗議ではなく、諦念からくる恨み節に近かった。

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2020-02-16

[] #83-6「キトゥンズ」

≪ 前

「それでは、気をつけるべき食べ物チョコがあるってことを覚えておきましょう」

ぶどうねぎ、あげもの……なんか、どんどん増えていくなあ」

「わたくしからは以上です」

「ご苦労、ケンジャ」

それなりに有益情報ではあったが、今回集められた理由は恐らくチョコの話をするためではないだろう。

こういった情報共有は今までの集会でもやってきたので、普段と大して変わらない。

「では次はモーロックから大事な話がある……おい、定期連絡を聞き流していた奴も聞いておけ!」

ダージンの怒号に、談笑していた一部のネコがビクリとした。

「この話を又聞きでしてしまうと、仲間たちの間で混乱を招く可能性がある。これからのために、今ここで確と聞いておくように」

普段なら多少は見過ごしてくれるのだが、やはり今回は尋常ではない

「ではモーロック、どうぞ……」

「うぬ……」

今までになく、モーロックは厳かな雰囲気をかもし出す。

それは鈍感なネコですら感じ取ったようで、集会所は静寂に包まれた。

「我々が今いる、この集会所だが……そう遠くないうち、ヒトの手が介入することになる」

モーロック言葉に、仲間達がザワつく。

俺も吐息こそ漏れないが、内心は同様だった。

言葉意味を計り兼ねてはいものの、この集会始まって以来の危機が訪れようとしていることだけは確かだったからだ。

質問よろしいでしょうか」

「言ってみよ、ケンジャ」

「“ヒトの手が介入する”とは……具体的には、どういうことなのでしょうか?」

「うむ、これから順を追って説明しよう」


数日前、ここを縄張りとするモーロック何の気なしにうたた寝をしていた。

しかしヒトの気配を感じ取り、すぐさま目を覚ましたという。

「この場所はヒトが来ることはもちろん、その気配を感じることすら稀な場所だ。その時点で嫌な予感はしていた」

決定的だったのはヒトの“見た目”だった。

今までやってきたヒトといえば、野外で遊ぶことが多い子供がせいぜい。

だが、その時にやってきたの大きいヒトであり、しかも数名。

そして何より、その格好が恐怖を想起させた。

若い頃、見たことがある。あの姿をしたヒトがやってくると、その場所にはヒトの住処が出来上がるのだ」

それはつまり、この場所に俺たちの居場所がなくなることを意味していた。

皆あまりのショックに呆然として立ちすくんだ。

「そ、それは本当なんですか!? 寝ぼけていたってことは?」

「私もまさかと思い、張り込んでみたのだが……モーロックの言うとおりヒトがいた。別の日にもいたから、縄張り確保のため下見に来ていたと考えるべきだろう」

予感は現実へと変わろうとしていた。

それは極めて確かなものとして。

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2020-02-15

[] #83-5「キトゥンズ」

≪ 前

まあキンタの変化も中々だったが、気になったのは今回の集会だ。

見回すまでもなく、参加しているネコ普段より多いのが分かった。

まり意図的に集められたってことだ。

いつもなら集会の参加は自由であり、呼びかけられたりしない。

それぞれ事情ってものがあるからな。

俺みたいにヒトの住処にいて参加が難しかったり、或いは病気調子が悪かったり。

毛づくろいや、食い物を集めるのに忙しい場合もある。

他にも、原因は上手く説明できないけれど、どうにも気分が乗らない日だってあるだろう。

他の集会所はもう少し厳しいようだが、ここはネコたちの自由尊重してくれるんだ。

から、今回わざわざ集められたというのが奇妙だった。

「キンタ。俺を呼んだのはなぜだ? どうやら他のネコたちも集められているようだが」

「あたしも知らな~い。みんなが集まったときに詳しく話すから~とにかく知り合いに呼びかけてくれ~ってモーロックに言われたのん

「モーロックが?」

キンタに理由を尋ねてみたら、意外な答えが返ってきた。

モーロックは皆に指示を出したり、グイグイ引っ張ってくれるようなタイプじゃない。

けれども、そのおかげで俺たちは伸び伸びといられる。

強いネコリーダーになりやす世界で、現役とはいえない老ネコトップにいてくれるから、この集会所は体幹を保てているわけだ。

そのモーロックが俺たちを呼びつけた。

何か異様なことが起きているという感覚を肌で感じる。

「静粛に、静粛に!」

他のネコたちもピリつき始めた頃、ダージンの号令が響き渡った。

俺たちは喉に引っかかりを覚えながらもグッとこらえ、モーロックの方へ首を向けた。

「えー、これより第……うん回の、大定例集会を行う」

モーロックは皆を見渡せる定位置場所に鎮座し、何回目か分からない集会の始まりを告げた。


「まずは定期連絡だ」

最初粛々と、いつも通りの定期連絡から入った。

「この時期に増えている行方不明ネコや、体調不良を訴えるネコについて……ケンジャ、前へ」

一回り肥えたネコが、のしのしとダージンの元へやってきた。

あれがケンジャだ。

「報告および詳しい説明ケンジャからある。では頼む」

「拝承しました」

ケンジャは賢いことを意味する名前らしいが、自称なのか誰かに名づけられたのかは知らない。

ただ、その名前に誇りを持っていることは確かで、実際いろいろなことに詳しい。

「わたくしの調べによりますと、どうやら“チョコ”という食べ物が原因のようですね。ヒト用の食べ物らしく、この時期は特に欲しがる習性があるようです」

どこかで聞いたことがあるな。

我が住処にいるヒトが、そんな話をしていたような気がする。

住処には小さいのと大きいのがいて、確か小さい方がチョコらしきもの差し出してきた気がする。

それを大きいヒトが、凄まじい勢いで止めに入ったんだ。

大きいヒトは落ち着いていることが多いのだが、その時は非常に荒々しかたから今でも印象に残っている。

「つまり、その食べ物ネコには合わず、食べてしまうと体調不良になるのか?」

「ええ、食べる量によっては、最悪の場合は死に至るのだとか」

「や~ん、こわ~い」

そんなに危険な代物だったのか。

あの時は「ヒトだって体に悪そうなものばっかり食べているくせに、なんで俺だけ」と思っていたが。

「それは、どのような特徴があるのだ? 例えば色だとか」

「たまに白いものもありますが、基本的に黒いです。危険度は黒ければ黒いほど上がります。形は色々ありすぎて、わたくしでも把握できていないのが現状です、はい

黒かったり、白かったりするのか。

俺がたまに食べる“あの虫”に似ていて、ややこしいな。

「じゃあ、味は? うっかり口に入れても吐き出せるようにしたい」

「よく分からないんですが、ヒトが言うには“あまい”らしいです」

「“あまい”と言われてもなあ……他にはないのか?」

「後は苦いらしいです」

うげえ、苦いのか。

だったら、あの時に食べなかったのは、いずれにしろ正解だったな。

次 ≫

2020-02-14

[] #83-4「キトゥンズ」

≪ 前
====

キトゥン……キトゥン……こっちに来てちょうだい」

から自分を呼んでいるような声がした。

あの声は、たぶんキンタだろう。

いや、寝ぼけいてたから気のせいかもしれない。

耳には自信があるが、キンタにしては鳴き方が少し違うようにも聞こえたし。

まあ気のせいであれ何であれ、一度でも気にすれば何度でも気になるもんだ。

俺は開けられた窓めがけて、勢いよく跳びだす。

空中で体勢を崩してヒヤりとしたが、地面につくころには俺の四つ足は下を向いていた。

久々にやってみたが、体は覚えているもんだ。

だけど次回からは、いつも通り1階の専用口を使おう。

さて、声が聴こえたのはこっちだったかな。

そちらの方角めがけて、鼻に神経を集中してみる。

すると、先ほどまでこの辺りにいたと分かるほどの確かな匂いを感じた。

どうやら気のせいじゃなかったらしい。

…………

匂いをたどりながら進んでいくが、途中から覚えのある道順だと分かり、自ずと目的地も察しがついた。

そこは俺たちネコ集会場だったんだ。

既にその場所には、見慣れた仲間達が一通り集まっていた。

「おお、来たな……ええと」

キトゥンだ」

「おお、そうか。今はキトゥンだったな」

俺が来たことに最初気づき、声をかけてきたのはモーロック

貫禄のある髭を貯えた年長者であり、この集会所のトップだ。

みんな大なり小なり、彼に有形無形の恩義がある。

もちろん、俺もその中の一匹だ。

「まだまだ元気そうだな、モーロック。片耳がないのに、俺の声もちゃんと聞こえてる」

「ほう、キトゥン。わしの長生きの秘訣を聞きたいのか?」

「え……」

「今ここで、きかせてや~ろうか~? お望みとあ~ら~ば、きかせてやろうか、きかせてやろうか、きかせてやろ~か~」

ただ、こんな感じに、隙あらば歌おうとしてくるのが玉に瑕だ。

「ほらほら、モーロック今日もそんな感じだと持たないよ」

すんでのところで歌を止めてくれたのがダージン

老いたモーロックの補佐的な役割を担い、この集会所を潤滑にまとめてくれる存在だ。

「やっほ~キトゥン」

そして今回、俺をここに呼びつけたキンタ。

メスにモテやすい如何にもな猫って感じで、あい自身もよくそれを鼻にかけている。

「よお、キンタ。久しぶりだな」

お久ブリブリ~。お変わりないようで超安心!」

……のはずなんだが、コイツこんな感じだったかな。

以前の振る舞いも気になってはいたが、今の状態もかなり独特だ。

本当にあのキンタか?

「そういうお前は、しばらく見ない間に変わったな。何というか、全体的にしなやかになったような」

「あ~、キトゥンには分かっちゃう? さすがキトゥン、さすキト~」

いや、俺じゃなくても分かるくらい滲み出てるぞ。

「実はあたくし~去勢されちゃいました~!」

「はあー……なるほど?」

とりあえず納得してみたはものの、正直いうと良く分からん

去勢されたネコは何匹か会ったことあるが、キンタみたいになった奴は初めて見た。

「なあ、ダージン去勢されたら、“あんな感じ”になるもんなのか?」

「うーん、落ち着いた気性になりやすいのは知っているけど……モーロックはどう思う?」

「猫によるとしか言えん」

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2020-02-13

[] #83-3「キトゥンズ」

≪ 前

未来人の価値観理解に苦しむところもあるが、翻訳の難しさは俺たちにでも分かる問題だ。

慣用句や、詩的な表現、そういった何らかのコンテクスト要求されるとき、別の言語に変換することは困難を極める。

該当する適切な表現翻訳先の言語になければ、その時点で破綻するんだ。

そこを意訳したり省略したり、或いは開き直って直訳すれば最低限は伝わるかもしれない。

しかし、それは元の言葉に則った、厳密なものではないだろう。

ガイド時代でも試行錯誤はあったようだが、不可能という結論先延ばしにする以上の意味はなかった。

100%正しい翻訳ではない時点で、100%正しい意思疎通もありえない、ってことらしい。

「結局は翻訳という工程必要としない、新たな共通言語を開発することで対策をしたんだ」

「そういえば以前にどこかで話していたな。フエラムネ語だっけ」

「ヒューメレンゲ語じゃなかった?」

「いや、フュ○メッ△ゲ語だね」

それでも課題は残った。

共通語を用いることができない、介さな相手がいたからだ。

この場合動物である

言語のもの最適化しようが、他種がそれを用いることができない時点で、。

言葉というもの自体が、所詮はヒト向きのコミニケーション手段しかいからね」

そして、その“ヒト向けのコミニケーション手段”でもって動物と“会話”をすることは、極めてヒトの恣意的判断が介入することになる。

それは意思疎通ができているようで、実際は“分かっているつもり”の状態に近い。

しろ中途半端理解によって、新たな問題が発生する場合もある。

「つまり理念に反するんだよ。『人間尺度動物意思推し量ることは傲慢だ』という指摘が多くてね」

ガイド時代技術開発ばかり先行していると思っていたが、そういうことも考えている人も多いんだな。

自分が生きていない遥か未来ことなど大して興味もないが、俺にでも理解できる価値観が残っているようで少し安心した。

「あ~あ、つまんねえの。結局は何も分からないってことじゃねえか。未来って言っても、そんなもんかよ」

「体調を管理する機器を用いて、快・不快度などのバロメーターは分かるよ」

「その程度のことなら、俺たちの時代でもできるっての」

弟にとっては面白くない結果だったが、俺は内心これでよかったとも感じていた。

そりゃあ気にならないわけじゃない。

時々、思うことはある。

キトゥンの奴が日々をどのように世界を見て、考え、動いているのか。

理解できるかはともかく、知れるものなら知りたい。

それが、おこがましいって分かっているから、したくないだけでさ。

自分があのテの動物番組を無邪気に楽しめるタイプなら、こんな七面倒くさいことを考えなくて済んだのかもしれないが。

俺はふと、キトゥンのいる方へ視線を向けた。

……あれ、いないぞ。

恐らく日課散策に行ったのだろうが、いつもどこで何をしているんだ。

あいつの勝手とはいえ、飼い主という名分でもって把握しておくべきなのだろうか。

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2020-02-12

[] #83-2「キトゥンズ」

≪ 前

それから俺は、先ほどのやり取りを引きずることもなく課題に打ち込んでいた。

しかし十数分後、それは突如として襲来したんだ。

「ただいまー」

「マスダがボクに用があるって言うから来たんだけど……」

ドアが開いた音もせず、いつの間にか部屋の中には弟とガイドがいた。

恐らく超光速航法ってやつだろう。

初めて見る光景だったが、自称未来人のガイドには造作もないことであり、驚くには値しない。

「お前の時代ではどうなのか知らんが、お前がやったことは不法侵入だぞ」

「ボクはこの世界人間じゃないから法の適用外さ」

俺はコイツが苦手だ。

所々で垣間見える未来であることの自負心が鼻につく。

他人文化圏に土足で踏み込む無思慮さというか、ナチュラルに見下している節がある。

もしかして、あの件について話を聞く気になった?」

「あの件が何なのか知らないし、知りたくもない」

俺に何か協力して欲しいようで、ちょくちょくコンタクトをとってくるが、胡散臭くて相手にしていない。

未来であることが本当かどうか以前に、単純に人として信頼できないからだ。

「え~じゃあ、何なの? 急いでるみたいだったから、少しでも早く来た方がいいと思ってワープしたのに」

「……弟よ、どうせ連れてくるなら事情くらいは説明してやったらどうだ」

「いやあ~、ワープってどんな感じなのか興味があってさ」

まあ今回みたいに、弟に振り回されることも多いか情状酌量余地はある。

「それで、今回は何が目的で呼んだの?」

「いや、俺は別に呼んでないぞ。弟が勝手にやってるだけで」

「え? どういうこと?」

弟が何でコイツを呼んだのかは察しがつく。

だが、そもそも俺はアテにしちゃいない。

「そっちで勝手にやってくれ」

俺はふと、キトゥンのいる方へ視線を向けた。

飯を食い終わった後は、何食わぬ顔で眠っている。

今の状況が煩わしくて、俺もそうしたいところだ。


「ふむ、なるほどね……」

課題が一区切りついたところで、弟はガイドに経緯を説明し終わったようだ。

「……というわけで、動物言葉が分かるアイテムとか持ってない?」

結論から言うと……厳しいね

「ええ!? 未来技術でも」

しかガイドから出た答えは、意外にも歯切れの悪いものだった。

俺も期待していたわけではないが、肩透かし感は否めなかった。

「できなくはないけど、やらないというか……」

「ハッキリしないなあ」

「俺から言わせれば、“できない”と“やらない”は大して変わらないぞ」

その指摘が癇に触ったのか、ガイドは長々と言い訳を始めた。

「いや、技術的には可能なんだよ。高い精度で、動物の鳴き声を判別できる」

「じゃあ、何が問題なのさ」

「つまり“本当に正しい翻訳とは何か”ってことなんだよ」

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2020-02-11

[] #83-1「キトゥンズ」

きっかけは、弟がテレビを観ていたときだった。

「今週も始まりました、『みんなのアニマルパーク』! 今回は動物に関する映像特集です!」

俺は学校課題に取り掛かっており、テレビから背を向けていた。

音声だけが耳に入ってくるという状態だ。

「ん~? なんだこれ~? なんだろう~?」

「うわ~すごいなあ」

「テコテコ、バシバシ、メキョッ」

耳に入ってくる情報だけでも、その負担は凄まじい。

強い拒否感を覚えた俺は、咄嗟に近くにあったリモコンへ手を伸ばした。

「ちょっ、兄貴! いきなりチャネル変えるなよ」

別にどうしても観たい、楽しみにしてる番組ってわけでもないだろう」

わざわざ公言することでもないが、俺はこういう動物バラエティが苦手だ。

テレビ的な、過剰な演出が多用されたもの特に

出演者リアクション、足されたサウンドエフェクトナレーションドラマティックなストーリー

アフレコ動物を喋らせているのは最悪だ。

あらゆるものが神経を逆なでしてくる、低俗番組だった。

そりゃあ低俗には低俗なりの良さはあるし、必ずしも高尚な作りの方が良いとも思わない。

しかし、この番組は俺のポリシーに反する。

兄貴って、こういうの観たがらないよな。ウチだって猫いるのにさ」

「……だからこそ、だ」

ふと同じ部屋にいる、キトゥンに目を向けた。

何食わぬ顔で飯を食っている。


セールスマン政治家セミナー講師匿名未来人。

この世に胡散くさい人間ゴマンといる。

そしてペットのことを「家族」だとかいう奴、これも胡散臭い

だって、そうだろう?

自宅に軟禁して代わり映えしない生活を強いて、挙句には去勢するんだからさ。

そんな「家族」を彼らはテレビネット見世物にしている。

家族からの了承”なんてとっているはずもない。

そんなことをしても問題にならないのは、結局のところ愛玩動物しかいからだ。

或いは彼らがいう“家族”ってのは、そういう意味なのだろうか。

彼らにとっては“愛しい玩具”の延長線上なのかもしれない。

じゃあキトゥンの飼い主である俺は何なのかっていうと、もちろん例外じゃあない。

飼うようになったのも、そうしなければ駆除される寸前だったからだ。

一時の感情に流された結果である

その過程に、肝心要の猫の意思は介入していない。

とどのつまり自分の心を守るために、たった一匹の猫を守る選択をしたわけだ。

それは動物を慈しむ心だとかではなく、極めてエゴイスティックものに近い。

他の生物と身近になるというのは綺麗事じゃなく、そういうものだ。

あいつにキトゥンという名前をつける前から、俺はそのことに自覚的だった。

からこそ、ああやって無邪気に動物を弄び、それをさも尊いかのように見せる番組が苦手なんだ。

まあ、共感を得られるかというとビミョーだが。

現に、これについて説明を試みたものの、弟の反応は素っ頓狂だった。

「うーん、よく分からないけど……たぶん兄貴はさ、自分キトゥンにどう思われてるか自信がないんじゃない? だから、そういう斜に構えた感じになっちゃうというか」

俺の話をどう聞いたら、そういう解釈になるのだろうか。

自信のあるなしなんて関係ない。

もし関係があるとして、そんなものはないほうがいいんだ。

「弟よ、お前の言う“自信”ってのはな、ほぼ“幻想”と一緒なんだよ。動物の心情を、人様が都合よく思い描いているに過ぎない」

それこそが、あの動物バラエティがやってることだ。

そう語気を強めて言ったつもりだったが、弟は怯まなかった。

「だったら、キトゥンの気持ちが分かればいいわけだ!」

しろ意気揚々と、おこがましいことを言ってのけ、その勢いで足早に出かけていった。

何かアテでもあるようだが、あり得ない。

キトゥンの気持ちが分かるだって

それができれば苦労はしない。

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2019-11-25

anond:20191122230929

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%BA%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%82%A4%E6%98%A0%E7%94%BB

主なゲイ映画作品

ゲイ主題ゲイが準主役の映画重要キャストゲイが登場する作品を含む)

惜春鳥(1959年木下恵介監督

肉体の学校1965年木下監督三島由紀夫原作

薔薇の葬列1969年松本俊夫監督ピーター主演)

戦場のメリークリスマス1983年大島渚監督

らせん素描1991年小島康史監督

おこげ1992年中島丈博監督

きらきらひかる1992年松岡錠司監督

二十才の微熱1993年橋口亮輔監督

眠らない街新宿鮫〜(1993年滝田洋二郎監督キャストの一部にゲイが登場)

GONIN(1995年石井隆監督キャストの一部にゲイが登場)

渚のシンドバッド1995年橋口亮輔監督岡田義徳主演)

ブルースハープ1998年三池崇史監督田辺誠一池内博之主演)

御法度1999年大島渚監督司馬遼太郎原作

憚り天使1999年今泉浩一監督

ハッシュ!(2001年橋口亮輔監督田辺誠一高橋和也主演)

ゲルマニウムの夜2005年大森立嗣監督

真夜中の弥次さん喜多さん2005年宮藤官九郎監督

メゾン・ド・ヒミコ2005年犬童一心監督

46億年の恋2006年三池崇史監督 安藤政信主演)

BOYS LOVE2006年寺内康太郎監督

BOYS LOVE 劇場版(2007年寺内康太郎監督

いつかの君へ(2007年堀江慶監督

キトモ(2007年三原光尋監督

愛の言霊2007年金田敬監督

僕らの愛の奏で(2008年草野陽花監督

体育館ベイビー2008年深川栄洋監督

禁断の恋(2008年草野陽花監督

ALLDAYS 二丁目の朝日2008年村上賢司監督

BL 〜僕の彼氏を紹介します〜(2009年草野陽花監督

タクミくんシリーズ2 虹色の硝子(2009年横井健司監督

タクミくんシリーズ3 美貌のディテイル(2010年横井健司監督

タクミくんシリーズ4 pure~ピュア~(2010年横井健司監督

愛の言霊世界の果てまで〜(2010年金田敬監督

タクミくんシリーズ5 あの、晴れた青空2011年横井健司監督

悪の教典2012年三池崇史監督キャストの一部にゲイが登場)

EDEN2012年武正晴監督原作船戸与一「夏の渦」、主演:高橋和也ら)

どうしても触れたくない(2014年天野千尋監督

セブンデイズ MONDAY→THURSDAY(2015年横井健司監督

セブンデイズ FRIDAYSUNDAY2015年7月横井健司監督

怒り(2016年李相日監督キャストの一部にゲイが登場)

主なゲイドラマ作品

キャストの一部にゲイが登場する作品含む)

あすなろ白書1993年フジテレビ系、キャストの一部)

同窓会1993年日本テレビ系。主役がゲイで脇役がバイセクシャル。全編に渡り同性愛テーマ

告白1997年日本テレビ系。エンディング主題歌も同性愛テーマにしたユーミンの『告白』)

ロマンス1999年日本テレビ系、つかこうへい原作

麗わしき鬼(2007年中島丈博脚本フジテレビ系)

肩ごしの恋人(2007、TBS系、キャストの一部のみ)

花ざかりの君たちへ2007年フジテレビ系)

「翼のカケラ」(2007年テレビ東京恋愛診断」第1章より)

運命のコドウ」(2007年テレビ東京恋愛診断」第4章より)

ママニューハーフ2009年テレビ東京

クレオパトラな女たち2012年日本テレビ系)

シェアハウスの恋人2013年日本テレビ系)

佐藤家の朝食、鈴木家の夕食(2013年BSジャパン

隣の家族は青く見える(2018年フジテレビ系)

2019-11-13

anond:20191112112951

「"自発性に基づく"という前提があるのに、あの広告では不適切だ」と批判

この理路のバカバカしさ


【あれはコラボ企画である

そもそもコラボで人を釣る企画であり、「自発性」を問題にするならコラボ自体NGってことになる

ここについて、クリアファイルで釣るというコラボ行為許容範囲とした場合

ポスター文言イチャモンつける空々しさがお分かり頂けるだろうか

あのポスターは、広告効果として「コラボやってます」以上の価値を持たない

しらん人が見て不快になる事がある可能性が沢山の批判()から類推できるが

批判()してる人の何人が、知らずに献血に行って不快になったのだろう?

一桁レベルじゃないか


んで、バカが見つけて、アホが炎上させて、サルがいろんな屁理屈を並べだした

サルの中にはマチアソビで使われた「鬼滅の刃」のコラボポスターには女性への配慮があるとか抜かしてるが

Vol23で話をしてて、Vol22の竹咥えさせられた禰豆子のポスターを見てないんだと思うんだよな

あれなんて鬼滅の刃を知らなきゃ宇崎ちゃんどころじゃないだろ

その場その場で目に付いたものからキトウに理屈をひり出す

その程度の後付の批判なんだよ

実際みんな、この炎上がなきゃ知らなかったろ?このポスター

2019-11-11

全米ライフル協会】息子を撃った84歳男性、11歳孫に撃たれ死亡 米

ノースカロライナ州で、息子をピストルで撃った84歳の男性が、11歳の孫に散弾銃で撃たれて死亡する事件があった。

警察は、少年父親を守るために祖父を撃ったとみて調べている。

捜査当局によると、事件は同州北部キトレル(人口約500人)で7日夜に発生した。

現地時間の午後7時ごろ、けんかについての通報があり、捜査員が駆けつけたところ、2人が撃たれているのを発見した。

1人はこの家に住むロイド・ウッドリフさん(84)で、12ゲージの散弾銃で撃たれており、間もなく死亡した。

ウッドリフさんの息子で近所の同州ヘンダーソンに住むロイドペイトン・ウッドリフさん(49)は22口径ピストルで撃たれていた。

8日午後現在ダラム病院入院している。

事件には、死亡したロイドさんの11歳の孫が関与していることが判明した。

これまでの調べによると、ロイドさんが息子のロイドペイトンさんを撃ち、父親を撃たれた11歳の孫が祖父ロイドさんを撃ったとみられる。

捜査当局は、まだ関係者の訴追には至っていないと話している。

https://www.cnn.co.jp/usa/35050586.html

2019-11-09

[] #80-3「人は簡単に変われる」

≪ 前

弟は丈夫なスポンジのようなもので、硬くてヘタれにくいが吸水性も抜群だった。

自我は強いが、割と影響されやすいところがあったんだ。

今回の場合、その自己啓発本とフィーリグが合ったらしい。

あっという間に弟は変わってしまい、俺はどう対応すればいいかからなかった。

それは両親も同じだった。

「こら、服を裏返してカゴに入れないでって、いつも言ってるでしょ」

「ごめんなさい。俺は今とても自分を恥ずかしいと感じて、反省している。そして現在、母さんが怒っていることを理解する」

「……うぅん?」

「同じ失敗をせず、そのことを忘れないように、服を裏返してカゴに入れないことを書いた張り紙を、カゴの近くに貼ることで改善を図る」

「その喋り方は何……まさかあなた脳内チップを埋め込んだの!? しかも粗悪なのを!」

「お前、何やってんだ。母さんの思考回路ショート寸前じゃないか

「ごめん兄貴。そして母さん。俺は今とても反省している」

弟は本に書かれていた「感情分析言語化」、「相手への共感」、「問題解決提案」というハウツー馬鹿真面目に再現していた。

しかも、ただ真似ているだけなので言動が不自然になっている。

「父さん、そのサイダー俺の……」

「あ、お前のだったか。すまん、飲んでしまった」

「父さんが謝っていることが分かった。俺は少しの怒りを感じつつも、それを気にしていない気持ちの方が強く、許すことを言葉にする」

「え……どういうことだ? つまり怒っているのか、怒っていないのか?」

それは両親だけではなく、飼っている猫に対しても変わらなかった。

「ほーら、キトゥンおいでー。俺はこの家の住人で、家主の次男。飼い主の弟でもある。君に敵意のない存在だよ~」

何年も一緒にいるのに、今さら自分身分説明し始める。

キトゥンが弟の言葉をどれだけ理解しているのかは分からないが、何かを察知しているようで尻尾が膨らんでいた。

「その言い回しキトゥンにまでするなよ。嫌がってるだろ」

「そんなことないよ。ほら、犬みたいに尻尾ふってる」

「猫の場合、それはストレス感じてる合図なんだよ」


そして、この調子学校でも変わらない。

「『相手を許すには、まず自分を許すこと』なのさ」

本での受け売りクラスメートにやたらと話す。

唐突気味に、掻い摘んで語るだけなので、当然みんなは理解できない。

「分かるか、タオナケ。俺たちは『同じ人間であり、別の生き物』なんだ」

「私、よく分からないんだけど、それどういう意図で言ってるの?」

「それを説明しすぎると、タオナケの自我踏み込みすぎる可能性がある」

「はー?」

「それでも言える事があるならば、世界に一つだけの花なんだよ。ナンバーワンオンリーワンは表裏一体なのさ」

「マスダの例え話はいつも分かりにくいんだけど、いよいよ分からなくなってきたわ」

自身、あまり意味が分かっていなかったのだが、喋るとなぜか気分が高揚したため憚らなかった。

次 ≫

2019-10-13

第二部でやさぐれているキャラ

FE風花雪月にてやさぐれて前半とキャラ変わってる人がいて既視感がすごいけど、類型としてナデシコのアキトくらいしか思い浮かばない。他なんかいたっけ

2019-09-20

彼方のアストラ最終話まで観た

  

ユンファとフニシア以外の女キャラがお嫁さんになって物語が終了した

  

男は再びアストラ号での冒険に飛び立つし、行かないやつも夢叶えてジャーナリストになって、

アストラに乗らない理由説明されたのに

 

アリエスキトリー結婚以外の、冒険の後の物語を持ってない

 

ユンファだけは歌手になって忙しいんだろうなと想像できるけど

他は全員(半陰陽最終話では女寄りになった?ルカ含め)アストラ号に乗らない理由もわからないまま終わった

 

すべてのことが説明されないといけないってわけじゃもちろんないけど

 

これから冒険が続く男3人と

自分の夢を選んだ男1人と女1人

 

以外の乗組員の4人はアストラ号での冒険とともに物語を失った

 

これ自分結構不満だったんだけど同じようなレビューがない・・・

 

 

女も旅に連れてけよとは言わないが

医者になったキトリーとか、記憶力活かしてなんらかの活動してるアリエスとかが描かれないと

「夢を叶えて物語が続く組」に対して

「お嫁さんで終了!!!」になって

ひとりひとり大事な乗組員だったはずが、なんかこう傾斜ができちゃうような感じで

落胆というか拍子抜けというか、なんだろうな

あの目立つキャラ2人について結婚以外の要素0の結末持ってこられたら

ルカやフニシアのその後の物語想像できねーよ

 

彼方のアストラSFか論争は興味ないけど

自分はドラ映画的な、知らない世界冒険友情を楽しむ娯楽の部分が

ミステリ構成の仕掛けを面白がる部分と同じくらい大事な部分だと思ってたので

 

楽しい冒険だったんだから、再びアストラ号に乗りはしないことに

積極的理由がほしかったのかな

 

 

大人の女性になったか冒険しない(特に夢もない)はあまりにも寂しくないか

って話

 

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