はてなキーワード: ハスキーとは
志村動物園とかは初期はそうでもなかったけど、やっぱり愛護方向へ進んだ。
番組で可愛さをアピールしたカワウソが転売されペットショップで売られてしまうようなことも起きていたからだ。
可愛いだけで、飼って起きてしまう悲劇を見せないのは本当に危険行為。
勿論死体をどんと載せているやばい愛護活動家もいるけど、そんなことをしろと言っているわけではない。
少しでも注意文章を書いておいた方がいいと言っているだけだ。
動物のお医者さんが人気を博し、ドラマ化でさらにハスキーが人気になったときがあった。
あれだけ動物飼育の難しさを描いている作品ですら、その後に「ハスキーは飼いづらいので捨てた」という話が出てしまった。
マスコミにも叩かれた。
その後作者は動物ものを描かなくなった。動物のお医者さん関連のメディアミックスもドラマ化以上のことは行われていない。
人間は愚かな生き物で、こういうことからなにも学ばないで繰り返す。
メダカも可愛いだろう。しかしメダカの窃盗が相次ぐニュースでメダカの可愛さを訴えてどうする。馬鹿なのか報ステ。
なにごとも過激な批判は人々の目を遠ざけてしまうものだ。しかし
「責任を持って飼いましょう。飼うのは大変です」
これくらいのことを書く責任もあるはずだと当然のように思う。
35歳、妻子持ち。
年1、2回目地方から東京に出張に来て、夜は大学の頃の友人と飲むのが習わしである。
妻は好きだし魅力的だが、子供ができてからセックスは「年」2回するかしないかって頻度で、もう5年くらい経つ。
妻の性欲は少なく、全然平気らしい。子供生まれる前から、そんなに高頻度だったわけでもない。
てなわけで、我がイチモツから放たれるソレは、もはや何の役割も与えられず、専らPC画面とにらめっこしながらトイレットペーパーに吸い込まれていくだけなわけ。
って話をしたら、そいつは男の人生としてあんまりじゃねぇかと。
世には性風俗という一大産業があり、君みたいな職も稼ぎもある人間が正当に対価を払いそういうのを利用することにより、金は回り不倫のようなリスクは皆無で家庭も安泰、そして経済も回り世は泰平に成り立っているんじゃあないかと。
休日は美術館行って美味い飯食ってピンサロ行って舞台見て呑んで帰ってくんのが、大人の男の文化的な過ごし方ってもんなのよと。
それを聞いて、まぁこの子ったら、なんてまぁ都会っ子になっちゃったのかしら、東京は怖い、怖いと思いつつ、その時は酒も回ってたし、遅かったからさっさと宿帰って寝たんです。
それが昨日の夜で。
今日の予定は午後からだったし、一念発起して行ってみることにしたんすよ。
つっても、ホテルの中では結構長いこと葛藤してしまった。金がもったいないし、妻に悪いし、女の子に悪いし、何やかんや疲れてるししんどいし。いろいろ難癖つけて逡巡していたが、スマホでぐだぐだ店の口コミ調べてたら最終的には興味(失礼、性欲)が勝っちゃった。だって男の子だもん。
さて、午前11時。
五反田駅は仕事では来てたけど、こんな店がこんな密集してたとは知らなかった。いや、ほんとに。こういう発言って、全然信じてもらえないんだけど。
明るくてひとけがないのに看板はギラギラ。ボーイさんの目もギラギラ。かといって地元の夜の歓楽街のように、ウザい声かけをされるでもない。
スマホで見繕った有名店はすぐに見つかり、意を決して中入ると先客もちらほら。
前の人の受付の仕草をつぶさに観察しつつ、自分の番が来るのを緊張して待ち構える。
そして用意していた定型文句「2回転、指名なし、クーポンあり」を無事再生し終わると、「指名しても500円しか変わんないっすよ」と言われ、想定外の流れになり、固まる。
5人位の写真見てもみんな綺麗だし、経験に根ざした審美眼もなく、とっさに一番年輩の子(28歳)にした。
支払いは食券販売機みたいな感じで、なんか妙に感心した。暗いし、手渡しで揉めるの回避してるのね。
すぐに狭いブースに通され、掲示物やら備品やらをしげしげと観察して待つ。
安室奈美恵が流れる中、ボーイさんがマイクでなんか言ってるけど何言ってるか全然わからん。これみんな聞こえてんのかな?
結構待った。というか、落ち着かなくて長く感じたんだろうか。全然来んから、忘れられちゃった的な?いきなりそういう試練??とか思ってたら、やっと来た。
現れた女の子は、ぽっちゃり体型かつ小柄な人だった。写真とは、端的に、違った。
違ったけど、悪く言う気にはならなかった。ちょっと残念な気持ちがあったのは事実だけど、人の容姿を貶すのは例え金払ってても気が引けてしまう。
旅行が趣味という彼女は、何処そこから来たと言ったら「行ったことある!」って、盛り上がって。
しばらく旅のこと、自分の街のことを話した。受け答えの的確さ、行動の賢さからして、30代では?と思った。
不意に柔らかい唇でキスをされ、なんか笑ってしまった。妻とキスするときも、いつもそう。クスッと笑ってしまう。恥ずかしいのもあるけど、妻も笑うので、笑う癖がついちゃったのかも。
これまで4人の女性と付き合って、3人とはキスをしたから、この人は4人めかぁ、などと妙な感慨にふけっていると、じゃあ始めるねと告げられ、ベルトを緩められる。
で、固まって見てたら、ズボンを脱ぐよう促される。そらそうだよね。勝手に浮かないよね、尻。
そして、彼女は服を脱ぎ、なぜかパンツも脱ぎ、あー、いよいよか…と思うも束の間、冷たいのごめんねって、丁寧に消毒され、咥えられた。
そこからの上下動?複雑な動きはすげぇとしか言いようがない。どうやって練習してるんだ?って、諸兄のナニを毎日していらっしゃるのだから、そこはプロフェッショナルだよね。
と言うか、各々方により日々鍛えられた結果を、悠久の時の重みを、いま私は享受しているわけだ。
ありがとう先輩諸氏。
もちろん勃ちました。
で、気持ちいいか悪いかと言われたら、そりゃ気持ちはいい。いや悪いけど、いい。悪い?なんかよくわからん。
そして、どこか現実感がない。
連日の疲れもあるのか、なんとなく体調も良くない感じしたけど、明らかに、性欲が弱い。弱々しい。
一生懸命してくれてるんだけど、萎んでいくのが分かる。
どこ触ってもい良いよって言ってくれて、お言葉に甘えて大きなおっぱいを揉んでも、太ももに触れても、肌は綺麗でスベスベです、っていう触覚情報が入るだけでなんか作業っぽくて。
結局そっと抱きしめる感じで落ち着いた。落ち着いちゃった。
いやー。すごい疲れたまってるんだわー、だめですねー、ごめんねって。
すごい気持ち良いんだけど、ごめんなさいって。言ってしまった。
彼女は笑っていた。でも、なんか意味わかんないんだけど、ヘコんだ。
あなたに魅力がないわけじゃなくて、こちらのコンディションの問題なのですよって、別に相手はそんなの気にしてないと思うんだけど、そんな事口走ってると余計に萎えてくる。
そもそもフェラが好きじゃねえんすわって言いそうになって、しかしそれを言っちゃあおしめえよってもんで、そこは我慢して、グッと押し黙って、ニヤニヤ。アホか自分っ。とか思いながら。
時間が来て、交代になった。
バイバーイって明るく去る彼女の背中を目で追い、脱いだズボンを元に戻した。
もらった名刺は、持って帰るのは嫌だし、でもゴミ箱に入れるのも嫌で、机の隅っこに裏返して置いたままにした。
次に来た子はすごく可愛かった。
背が高くて、すらっとしていて、目も大きくて。
タイプだなと思った。制服着てたんで、学生の頃、こんな子と付き合ってみたかったなって。
いや、妻には妻の良いとこあるから、それを差し置いてってわけではないんだけど。なんだろう、それとこれとは別っていうか…まぁいいよ。これだから男はクズいって好き放題言ってくれよ。構造上の問題だから。
ともあれ、まじかー。こんな子にしてもらうのかーって、嬉しくなった。
だが、それも長続きしなかった。
さっき出したの?って聞かれ。
いえ、出ませんでした。と答え。
にもかかわらず、この有様なわけで。
お前何しに来てんだよって感じで。
なんかもうすみません。
いいよいいよ、せっかく来たんだから出してあげたいよって、ちょっと低めでハスキーな感じの、それもチャーミングな声で言ってくれるんだけど。
んで、それこそ手を変え口を変え?色々してくれるんだけど。もちろん勃つには勃つんだけど、長続きしないの。
もう、ごめんね。
やるだけやってくれてて、それでこの結果で、もう気にしないでって。
いや、それこそ気にしてないと思うけど。
もうダメだから、おっぱいに顔を埋めさせていただいて、よしよししてもらった。なんか泣きそうになった。
遠くまで来れる、金を払える、勇気を出せる、赤の他人に開陳できる、勃てども出せぬ、あぁ、いろんな意味で、おじさんになったんだなぁって。
そして、こうやってEDになってくんだなって。で、あの新聞の社会面の下の方の意味わかんねー薬買うんだなって。
でも、もう子供二人いるし、これ以上は無理って妻も言ってるし、それはそれで都合いいのかもしれん。
この薄暗くタバコ臭い空間に、一日中居るよって。すごく疲れるよって。
いよいよ切なくなってきた。
この子にも親がいて、幼少期があって、ちょっとずつ大きくなって。
うちの娘(3歳)、保育園に毎日抱っこして通ってるけど、正直、この子のようなバイトして欲しくないなって。
とか言いながら、おめーみてーな奴がノコノコとやって来るから、この子はここにいるんだろーがって。
お前が欲した世界じゃねーかって。へへ。なんも言えねー。
ありがとう。ごめんね。
って、3回くらい言って店を後にした。
笑ってくれ。
たぶん、自分がただただウブなお坊ちゃんで、大事に育てられ、当たり前のように人に愛されてきた、幸せな田舎者なのだと思う。
それが稀有なのだ、当たり前でなく、恵まれてるだけなんだってことが、この歳になってつくづく分かり始め、またそれを知らずに来た自分を恥じるわけです。
とかなんとか言って、センチメンタルな初体験に昇華しようと試みつつも、人が多いのにどこかうら寂しいこの東京の、この空気にただ呑まれて、萎縮したんだと思う。気持ちも、股間も。ちいせー。ムスコがじゃなくて、人間が。
でも、今、帰りの高速バスで、抜けてないから、抜きたいんですよ。
ふたりとも、可愛かったなって。なんか脳内にこびりついてしまって。
少しだけ服についた香水の残り香が、たしかにさっきあんな経験したんだなって。また行きたいなって。
そんなこと相反したこと思う自分が情けない。モヤモヤして寝れない。周囲のお客様、安心してください。ムラムラはしていないので。
もう、なんなんでしょう。性欲って。
鬱陶しいったらありゃしない。
みんな(特にセックスレスな既婚者は)どうやって付き合ってるんだろう。
でも、行かなきゃよかったとは、思っていない。
投稿可能文字数は感覚として染み付いていたし、十分に注意もしていたはずだった。だがそれでも、死神のワイヤーの速度に煽られる形で、つい記事の一つが一線を超えてしまった。
もちろん、短縮や分割をした上で投稿し直すことは可能であり、取り返しのつかないミスではない。だがどのみち、今のような記事のままでは黒帽子を退けるイメージが〝増田〟にはどうしても湧いてこなかった。一瞬とはいえ立ち止まったことで、その現状を自覚してしまったのだ。
手の止まった〝増田〟を前に黒帽子は、今度こそ必殺の一撃を放とうとでもいうのか、妙にゆったりとした動きでワイヤーを構える。
「……………………!」
迫りくる「死」を前にして、これまで匿名ダイアリーという修羅の空間を支配してきた圧倒的な異能が、限界を超えて稼働する。
「!」
打鍵音がひとつながりに聞こえるほどの神速で記事を執筆し、投稿した。
『口笛を吹いて現れる黒帽子の死神だけど、笑顔の素敵なJKを飛び降り自殺に追い込んだ時の思い出を語るよ』
投稿するやいなや、凄まじい大炎上が巻き起こった。100、200、300、500……みるみるうちに1000ブクマの大台を超えて炎上、すなわちバズは拡大し続けている。
それは、たとえどんな「設定」であれ強固に定着させるのに申し分ないほど巨大な「承認」だった。
「――というわけさ。こんな形で浮かび上がることになるとは、僕も思っていなかったがね」
澄んだボーイソプラノが〝増田〟、いや、「黒帽子の〝増田〟」の口からこぼれる。
「ほう?」
一応は声を上げたものの、黒帽子はこの特異な状況――自分と寸分たがわぬ姿をした〝増田〟を前にしても、ほとんど驚いた様子がなかった。
だが、これで少なくとも戦闘力に関しては互角のはずだ。仮に相討ちになったところで、〝増田〟の方は「設定」が消えるだけ。〝増田〟は勝利を確信した。
「それで君は――『僕』は、どうするのかな?」
そこで黒帽子は、なんとも奇妙な顔つきをしてみせた。笑っているような泣いているような、左右非対称の表情だった。
〝増田〟は、いつの間にか自分の顔も、鏡写しのように同じ表情を浮かべているのを感じた。
〝増田〟の意思とは無関係に口から言葉が吐き出される。そして、黒帽子の〝増田〟の右手が持ち上がり、肩の上あたりで止まった。
(……?)
「仕上げはよろしく頼むよ、『僕』」
そう言うと黒帽子の〝増田〟は、さよならをするように右手を軽く振った。その直後、耳元で空気を切る音がしたかと思うと、
(!?)
ワイヤーが〝増田〟の首にしっかりと絡んでいた。しかも、そのワイヤーは目の前の黒帽子ではなく、〝増田〟であるはずの黒帽子自身の右手から伸びているものだった。
なぜこんなことにと考える暇も与えず、ワイヤーは〝増田〟の首の皮を、肉を、骨を切り裂き、黒帽子自身の「設定」を破壊した。
「……!?」
黒帽子の「設定」を失い混乱する〝増田〟の首に、今度は前から飛んできたワイヤーが巻き付いた。遂に「本体」を捉えられた今、もはや〝増田〟に逃げ場はない。
黒帽子のワイヤーは、これまでのように一気に切断することはせず、しかし着実に〝増田〟本体の首をギリギリと締め付けていく。
「……! ……!」
「『自分』をないがしろにして、死神なんかに頼るからそうなるんだよ。お別れだ、〝増田〟君。いや、〈アノニマス・ダイアリー〉……」
黒帽子が、世界の敵としての〝増田〟に名前を付けた、まさにその時、ワイヤーの圧力がとうとう限界を超え、〝増田〟という存在に決定的な傷を付ける音が鳴った。
「…………うぅん?」
土曽十口(つちそ・とぐち)は、パソコンデスクの上にだらしなくうつ伏せになっていた上半身を起こした。
締め切っていたはずのカーテンが何かのはずみでわずかに開いており、そこから差し込む朝日に目を灼かれる。不健康な生活をしている女子大生には、その爽やかな光は眩しすぎた。
どうやら、ネットをしながらいつの間に寝落ちしていたらしい。付けっぱなしにしていたヘッドホンからは、午後から日暮れにかけて軽い夕立ちが降ったことを歌う、ハスキーな男性ボーカルの声が流れている。
「んんー……痛っ?」
しつこい眠気を振り払うように大きく伸びをしていると、首の周りに妙な痛みを感じた。
スマホのインカメラで確認すると、寝ている時にヘッドホンのコードがからまったのか、首をぐるりと一周する赤い痕がついていた。それは、本来平凡な容姿のはずの十口が人混みの中でも目立って浮いてしまいそうなぐらい、はっきりとした線だった。何かの目印のようでもある。
「うわ、この痕しばらく残りそう……」
あるいは、一生消えないのかもしれない。なぜかそんな風にも思えた。
それから急に、2年になってからサボりがちで4年間での卒業が怪しくなっている単位のこと、入学直後に一度参加して以来まったく顔を出していないサークルのこと、この前の正月に帰省しなかったせいでしつこく電話をかけてくる両親のことなどが、一度に思い出された。
――なんで突然、こんな当たり前のことばかり? たしかに、私自身の問題ではあるけど……
そんなことを考えながらふとディスプレイに目を向けると、ブラウザには最後に開いていたらしいニュースサイトが表示されていた。見るともなくページをスクロールしていく途中、
という文字が目に入った。
「……」
『岩……海氏の来社時にお茶を出さなかった事実が明らかとなり……』
『消息筋によれば、この一連の動きには二人組の犯罪者、通称“ホーリィ&ゴースト”の関与があるとも……』
「…………」
しかし、それを見てももはや十口の胸には何の想いも湧き上がってはこないのだった。いや、もともと「想い」などというものは無かったのかもしれない。
ただ、自分がひどく無駄なことに時間を費やしていたような、途轍もない徒労感だけが泡のごとく浮かび上がったが、それもすぐに弾けて消えた。
「……よし!」
無理やり声を出して、十口は気持ちを切り替えた。
今までがどうであれ、これからは充実した実生活を目指して生きていけばよい。そのために必要な指針も既に示されているのだから。
すなわち、
『十分な睡眠』
『適度な運動』
『瞑想』
この4つだ。
それらを実践すべく、まず第一歩として十口は、人生の時間を無駄に奪うだけの箱であるパソコンの電源を――ためらいもなく落としたのだった。
今さらセカイ系(笑)の出来損ないみたいな90年代ラノベ引っ張りだしたところで、ガキが食いつくわけもないと分かりきってるのがクソ。どうせ昔のファンも大半はとっくに趣味変わってるだろ。
無意味に時間が行ったり来たりするのがクソ。カッコイイとでも思ってんのか?分かりにくいだけだわアホ。
キャラデザ全員モブ過ぎて誰が誰だか分からないのがクソ。ブギーポップは分からない(爆笑)
ラノベ業界もそろそろ弾切れで苦しいのは分かるけどさあ、さすがにこんなもん引っ張り出してくるぐらいなら、他にもっといい原作あるだろ。たとえば……お留守バンシーとか!
そこまで打ち込んだところで〝増田〟は確認画面に進み、実際に表示される際の見え方をチェックする。特に問題のないことを確認して「この内容を登録する」ボタンをクリックした。
大きく息を吐き、しばし目を閉じて時間が過ぎるのを待つ。ヘッドホンからは、路地裏の秘密クラブについて女性ボーカルが歌うハスキーな声が流れているが、別に〝増田〟の趣味ではない。無音よりは多少の「雑音」があった方が集中しやすいという程度の理由で、適当にまとめて違法ダウンロードしたファイルをランダム再生しているだけだ。
曲が終わったのを合図に目を開き、さきほど投稿した「記事」のページをリロードした。夜の10時過ぎというお誂え向きの時間だけあり、セルクマなどという姑息な真似をせずともブックマークが既に30ほど集まり始めている。トラックバックも、上から目線の傲慢な評価への反発が7割、同意が2割、元記事とほとんど無関係の独りよがりのつまらないネタが少々という予想通りの傾向で、活発に反応してくれている。
たった今書き込んだ記事で扱ったアニメにも、その原作のライトノベルにも、〝増田〟は特に興味がなかった。ただ、SNSなどでの他人の発言を眺めていて、こういうことを書けば「バズる」だろうなというイメージが、なんとなく頭に浮かんだのだ。あとは、このアニメを叩きたい人間の「設定」に自分を重ねるだけで、溢れるように文章が湧き出してくるのだった。
「……」
自分がそれを書いたという証が何一つない文章が、回線の向こうで人々の注目を集めるさまを、〝増田〟は静かに見つめた。
自己主張が少なく控えめな性格、という程度の話ではない。何が好きで何が嫌いなのか、何が得意で何が苦手なのか、人に聞かれるたびに例外なく言葉に詰まった。単にそれを表現するのが下手というだけではなく、自分がどんな人間なのか〝増田〟自身どうしてもよく分からないのだった。
そのため、自己紹介ではいつもひどく苦労させられた。胸の内を語ることのない秘密主義の人間と見なされ、親しい友人を作ることも難しく、いつも孤独に過ごすこととなったが、それが嫌なのかどうかすら〝増田〟には判断ができなかった。
その感覚は、対面での音声によるコミュニケーションだけではなく、ネットでの文字を介したやり取りでも特に変わりがなかった。たとえ単なる記号の羅列に過ぎないとしても、自分を表すIDが表示された状態で、何か意味のあることを言おうという気にはどうしてもなれなかった。
そんな〝増田〟がある時、一つの匿名ブログサービスと出会った。
良識のある人間ならば眉をひそめるであろう、その醜悪な売り文句に、増田はなぜか強く引きつけられた。
そこに書き込まれる、誰とも知れぬ人間の手による、真偽のさだかならぬ無責任な言葉たち。数日の間、寝食を忘れてむさぼるように大量の匿名日記を読みふけった後、それらのやり方を真似ることで、〝増田〟は生まれて初めて自発的に文章を書き出したのだった。
特に書きたい内容があったわけではない。ただ、睡眠不足と空腹でからっぽになった頭を満たす、得体の知れない衝動に従いキーボードを叩いた。
出来上がったその文章は、保育園への子供の入園申し込みをしていたが落選してしまった母親、という「設定」で、政治批判もまじえつつ全体としてはどうにもならない怒りを乱暴な口調で八つ当たり気味にぶつける、といった感じの記事になった。
実際には、保育園への申し込みどころか、当時から現在に至るまで〝増田〟は結婚すらしてはいないのだが。
これを軽い気持ちで匿名ブログに投稿したところ、予想外の爆発的な大反響を呼んだ。ブクマは2000以上付き、「記事への反応」は100を超え、ニュースサイトどころか国会で取り上げられる事態にさえ発展した。
遂には記事タイトルがその年の流行語大賞のトップテンにまで入ってしまったこの一連の動きに、もちろん驚きはあった。だがそれ以上に、自分の指を通して生まれ落ちた自分のものではない言葉、という捩れた存在自体に、〝増田〟は震えるような感動を覚えたのだった。
その確信を得てからは、坂を転がり落ちるように、この匿名ブログへとのめり込んでいった。
様々な立場の人間になったつもりで書いた記事を投稿し続けるうちに、〝増田〟は奇妙な現象に気がつく。ひとたび題材を決めて書き始めてしまえば、それまで全く知識も関心も無かったどんな分野についても、どういうわけか淀みなく言葉が湧き出すのだ。
ある時は、新人賞を受賞してデビューしたものの限界を悟って引退を決意した兼業作家だったり。
〝増田〟は、記事を書くたびにありとあらゆる種類の人間に「なった」。そしてそれらの「設定」の元に、このwebサービスの読者たちに、感動や、怒りや、笑いを提供してきた。〝増田〟にとって、読者から引き出す感情の種類はなんでもかまわない。自分の書いた言葉が、多くの人間に読まれることだけが重要なのだ。
実際、〝増田〟の書いた記事には、著名人気ブロガーですら不可能なほどの高確率で100を超えるブクマが次々と付いた。SNSでも拡散され、ネット上の話題を取り上げる(といえば聞こえは良いが他人の褌で相撲を取るしか能がない)ニュースサイトの元ネタにもなり、つまり――「バズって」いた。
本格的に活動を始めてから、〝増田〟は毎日多数の記事を投稿し続けている。〝増田〟以外の利用者は誰一人気づいていないが、今ではこの匿名ブログサービスにおける人気記事の、実に九割以上が〝増田〟一人の手によるものなのだった。もはやここは〝増田〟のしろしめす王国なのである。
そして、〝増田〟の支配は電脳空間にとどまらずより大きく広がろうとしている。〝増田〟の記事が読者から引き出す強い感情。これを利用し、流されやすい一部の読者の行動を誘導することで、〝増田〟は既に現実でも大小さまざまな事件を引き起こす「実験」を成功させていた。だが、それぞれの事件自体に関連性は全くなく、膨大な投稿量を多数のIDに分散しているため、運営会社ですら事件の背後にいる〝増田〟の存在には手が届いていなかった。
この影響力の、深く静かな拡大。これが順調に進めば、いずれはサービスの運営会社の中枢に食い込むことすら時間の問題だった。
匿名ブログ支配の過程で〝増田〟の掴んだ情報によれば、この運営会社はただのIT企業ではない。その実態は、途方もなく巨大なシステムの下部組織なのだ。そこを足がかりに、「世界」にまで手が届くほどの――
「……っ……っ」
果てのない野望の行く先に思いを馳せ、〝増田〟は声もなく笑った。
そこに、
――♪
「……?」
ランダム再生にしていたメディアプレイヤーから、奇妙な曲が流れ始めた。
口笛である。
音楽に興味のない〝増田〟でさえ聴き覚えがあるほど有名なクラシック曲を、どういうわけかわざわざ口笛で演奏しているのだった。それは、アップテンポで明るく力強い原曲を巧みに再現してはいたものの、しかしやはり口笛としての限界で、どこか寂寥感のある調べとなっていた。
「……」
これのタイトルはなんだっただろうかと〝増田〟にしては珍しく気にかかり、プレイヤーの最小化を解除して現在再生中の曲名を表示した。そこにはこうあった。
「!!」
その事実に気づいた〝増田〟はヘッドホンを頭からむしり取り、音の出どころを探った。
「――♪」
耳を澄ますまでもなかった。口笛は、明らかに〝増田〟の背後から聴こえてきている。それも、ごく至近距離で。
「……!」
背筋を貫く寒気を振り払うように、〝増田〟は回転式のデスクチェアごと素早く振り返った。
片付いているというより極端に物の少ない部屋の中央。そこに、それは立っていた。
金属製の丸い飾りがいくつか付いた、筒のような黒い帽子。全身を覆う黒いマント。男とも女ともつかない白い顔に浮かぶ唇までが、黒いルージュで塗られている。
まったく見覚えのない顔であり、衣装だった。
普通に考えれば、異常な格好をした不法侵入者ということになる。今すぐに警察に通報するべきだ。だが〝増田〟は、そんな常識的な思考をこの黒帽子に適用することが、なぜかできなかった。
部屋のドアには鍵を掛けておいたはずだが、こじ開けられた様子もなくきれいに閉じている。いくらヘッドホンから音楽が流れていたとはいえ、人間がドアを開け閉めして部屋に侵入した物音に全く気づかないということがあるだろうか?
カーテンを閉め切り照明の消えた部屋の中、ディスプレイの微かな灯りに照らし出された黒帽子の姿は、床から突然黒い柱が生えてきたようにも見えた。
〝増田〟の当惑をよそに、黒帽子は口笛を止めて言葉を発した。黒い唇からこぼれる声は澄んだボーイソプラノで、やはり性別を特定することはできなかった。
「人には、自分にとって切実な何かを伝えるために、敢えて何者でもない立場をいっとき必要とすることもある。だが、『匿名』こそが本質であり立ち返るべき『自分』を持たない存在――それは『自分』という限界に縛られないが故に、無目的にただ領土だけを広げ続け、遠からず世界を埋め尽くすことだろう。その新世界では、根拠となる体験を欠いた空虚な感情だけがやり取りされ、真の意味での交流は永遠に失われる……間違いなく、世界の敵だな」
人と世界について語りながらその声はどこまでも他人事のようだったが、最後の断定には一点の迷いも無かった。
世界の敵、という言葉が指す意味の本当のところは分からない。だがこいつは、〝増田〟こそが「それ」だと言っているのだった。
なぜ初対面の異常者にそんな決めつけをされるのか。そもそもこいつは一体何者なのか。
そんな疑問を込めて、〝増田〟は目の前の怪人物を睨み付けた。黒帽子にはそれだけで意図が伝わったらしい。
〝増田〟の耳にその言葉は、それができるものなら、という挑発を含んで聞こえた。
できないわけがない。変質者に名前を教えるのは危険だが、自宅に押し込まれている時点で大差ないだろう。
〝増田〟は椅子から立ち上がって息を吸い込み、自分の名前を告げようとした。
しかし、
「…………!」
声が出なかった。いくら喉に力を込めても、最初の一音すら形にならずに、ただかすれた吐息が漏れるばかりだ。
そう言った黒帽子が肩ほどの高さに上げた右手を、ついっと振った。その指先から細い光の線が伸びてきて、空気を切るような鋭い音がしたかと思うと、〝増田〟の首の周りに熱い感触が走った。
「?」
次の瞬間には、〝増田〟の視界はゆっくりと下降――いや、落下し始めていた。
途中で回転した視界の中で〝増田〟が目にしたのは、頭部を失ったまま直立する、肥満した成人男性の身体だった。
「……っ!?」
直前までまとっていた「自称アマチュアアニメ批評家」の「設定」が霧散したことで、〝増田〟は意識を取り戻した。思わず首の周りに手をやるが、傷一つ付いてはいない。
「なるほど。君の能力にはそういう働きもあるわけだ」
感心したように言って、黒帽子は宙空をかき混ぜるように右手の指を動かした。そこにまとわりつくように、光の線が見え隠れする。目を凝らして見れば、それは極細のワイヤーだった。
〝増田〟の首に巻き付けたあれを素早く引くことで、瞬時に切断を行なったのだと、遅れて事態を把握する。
「……」
いま首を斬られたのは、あくまで〝増田〟の「設定」に過ぎない。だが、味わった「死」の感覚は本物だった。それを実行した黒帽子は、今も平然とした顔をしている。
目の前の怪人が何者であろうと、もはやこれだけは間違いがない。こいつは〝増田〟を殺しに来たのだ。無慈悲に、容赦なく。
「……!」
黒帽子と向き合ったまま〝増田〟は、後ろ手に恐るべき速度でキーボードを叩いた。わずか数秒で4000字超の記事を書き上げると、そのまま確認もせず匿名ブログに投稿する。
記事はすぐさま炎上気味に100オーバーのブクマが付き、新たな「設定」が〝増田〟の全身を覆った。そこに立っている姿は既に、制服を着た男性警察官そのものだった。
実のところ〝増田〟にとっても、匿名ブログのこのような使い方は初めてのことだった。だがその事実を意識することすらなく、〝増田〟はこの応用をごく自然に行っていた。まるでこれが本来の用法だったかのように。
警察官の〝増田〟は、いかにも手慣れた動きで腰のホルスターから素早く拳銃を引き抜いて安全装置を外すと、黒帽子の頭に狙いをつける。この距離なら外すことはないだろうし、さすがに銃弾を正面から受けても平気ということはあるまい。
しかし弾丸が発射されるより早く、引き金にかけた〝増田〟の指をめがけて光が走った。
「そんな危ないものは下ろした方がいい」
切断された指がぽろぽろと床に転がり、〝増田〟は拳銃を取り落とした。重い金属が床に叩きつけられる、ごとん、という音が響く。
「!」
失った指の痛みにのたうち回る間もなく、再び飛び来たワイヤーが〝増田〟の首に絡みついた。鋼糸はそのまま、いともたやすく肉に食い込み――
「……!」
一瞬のブラックアウトの後、警察官の「設定」もあえなく消え去ったことを〝増田〟は悟る。
〝増田〟は、次の「設定」を求めて、慌ててキーボードを叩き始めた。殺されないためにはそうするしかない。
黒帽子がワイヤーを一振りするたびに、現在の〝増田〟の「設定」が消滅する。〝増田〟は超スピードで匿名ダイアリーに記事を書き込み、新たな「設定」を得る。その繰り返しが続いた。
格闘家、ヤクザ、猟師、力士、刃渡り50センチの牛刀で前足を切り落として熊を倒した撮り鉄、1200万ドルの機械義手を身につけ「捕らわれざる邪悪」の二つ名を持つ元アメリカ特殊部隊員……
考えうる限りの、個人戦闘能力の高い人間の立場で書かれた記事を投稿し、その「設定」を使って制圧を試みる。だが、いずれの力をもってしても、〝増田〟は黒帽子の体に触れることさえできなかった。
「……」
異常なまでの適性ゆえに普段は意識せずに済んでいたが、この匿名ブログサービスは本来、少しでも油断すると「あれ?増田さん、この話前にもしませんでしたっけ?」と指摘を受ける、投稿者に厳しい場だ。いかに〝増田〟の記事とはいえ、短時間に似たようなネタを続けて投稿したのでは、ブクマやPVを稼ぐことなどできない。「設定」を定着させるためには、読者からのそういった「承認」を得なくてはならないのだ。
少なくとも同じ職業をネタにすることは避ける必要があった。とすれば、「設定」を潰されるたびに書ける記事の選択肢は少しずつ限られていく。
〝増田〟は、徐々に追い詰められつつあった。
その焦りが引き金となったのか。
「!!」
――字数制限。
馬鹿な恋だった。恋といえるかもわからない。私はまだ高校生で、思春期にありがちな思い込みとか憧れを恋情に取り違えてるだとか人付き合いに慣れてないから感情の整理がついていないのだとか、そういう理屈付けなんていくらでもできてしまえる。
私は今すごく落ち込んでいて、突発的にツイッターで見かけた匿名ブログを思い出してここに登録してこんなものを書いてるくらい気持ちが混乱しているから、きっと文章もぐちゃぐちゃで長くなると思う。時間泥棒。ごめんなさい。
よくある話。相手は同性だった。高校一年の時、本当に最初。入学式の列に並んでいるときに私から話しかけた。振り向いて、その目の大きいのと日に焼けた肌とポニーテールがかわいいのと、一目でころんと恋に落ちてしまった。
声が掠れてて低いこと。背が私より13センチも低いこと。誕生日もこっそり知ってる。同じ中学で絵が上手くて、メガネで華奢な幼馴染によく甘えている。好きな人にはスキンシップが激しい。ズケズケとものを言って、態度がはっきりしている。そこが、可愛くてしかたなかった。
高校一年の時の私は、正直友人がいなかった。グループには居たけれど、ギャルを気取る中間グループでなんとなく馴染めなかった。放課後、バスで皆が話してる中ひとりでうつむいて携帯をいじってるのも嫌で、図書室でぼんやり過ごして、部活のある生徒以外はほぼ帰宅したであろう頃合いに帰る。なんかもうひたすら中学の頃に戻りたかった。親友と遊ぶ約束でも取り付けようかな。そう思ったとき。
「あ、ばいばい!」って、バスケ部のマネージャーだったあの子が声をかけてくれた。
彼女と私は同じグループじゃない。あまり話したこともない。私がただ一方的に見てるだけ。
幼馴染に甘えてる姿に嫉妬した。私があの子だったらいいのに。クラスメイトの女の子にも寄りかかっていた。私があの子だったらいいのに。私と仲良くなって欲しかった。ろくに会話したこともないくせに。会話に耳をそばだてて誕生日とか好きな漫画とか把握して、本当、一歩間違えればストーカー。自分でもキモいと思う。
でも女なんてこんなことよくあることで、女友達の女友達に嫉妬とかは私だって何回もあった。だからもう、本当にこの気持ちがなんなのかわからない。ぐちゃぐちゃ。便宜上、恋って呼んでるけど、混沌としててわけがわからない。認めたくない。
高2になってクラスが離れた。それでも選択授業が一緒で、机が近かった。すこしだけ、週に二時間しかないその授業の間。私は彼女と話せた。同じ趣味を持っていたから、ちゃんと話すことはできたしそれなりに会話も弾んだと思う。
ただ私が勝手に緊張してしまって変な応答をしてしまって、どうにも上手くいかなかった。
高3。またまた選択授業がかぶった。彼女と話すのに緊張しなくなった。ううん、緊張するけど、その緊張にも慣れてきた。
このあたりから、じつは私のこの感情は恋ではないのでは?と思うようになってきた。緊張が消えたから。女が女に恋をするなんておかしいから。世間一般だと偏見はよくないって言われてるし、皆それに賛同するけど、それが身近になったら話は変わってくるでしょ?
彼女に、初めて誕生日プレゼントを贈った。賞味期限切れのゴディバ。ゴディバなんて重いけど、賞味期限が近かったのと従業員割引で500円だった。だからいいかなと思って、贈った。彼女は笑いながら受け取ってくれた。
九月。文化祭は忙しくて会えなかったけど、体育祭では話しかけられた。私はこのとき初めて、ツーショもどき(彼女は写真嫌いなのに、私が無理やり写真撮った。光が差し込んでるしちょっとブレてる)を手に入れた。彼女と好きな漫画の話をした。幸せだった。
10、11。最高に幸せ。今までで一番よく話した。私の誕生日にくれたのはアニメのグッズを手に入れるために買ったコンビニのチョコだったけど、それでもいい。嬉しい。私の受験の時には頑張れって言ってくれた。うれしい。しあわせ。
12月は特にない。飛んで今。きょう。始業式。
「あけおめ。3学期もよろしく。今年もよろしくはしない。高校卒業したら縁切る。ラインもブロックするから」
そんな感じの内容の、笑いながらの冗談。冗談。私も「薄情だなぁ」って笑った。かなしい。かなしい。悲しくてしかたなかった。
彼女の発言に傷ついたのもある。ああ、高校を卒業しても友人でいたいと思えるほどの仲じゃないんだなって。冗談だとしても。
ううん。冗談じゃない。本当だろうなと思った。彼女が私のラインをブロックしようがしまいが、私と彼女の人生が交わるのはあと一ヶ月だけだ。
そんで高校を卒業して、大学生になって忙しくなっていつのまにか一年とか二年くらい経ってて、ふとあんな子いたなって思い出すだけの存在になるんだ。それも、私の方がきっと強く鮮烈に覚えているんだ。彼女はきっと、私のことを忘れる。思い出しやしない。
悔しい。悲しい。意味がわからない。泣きたくてしかたないのに、誰にも話せない。
あのときばいばいって言ってくれて嬉しかった。本当に嬉しかった。
横からしか見たことなかった笑顔を、真正面からみれて嬉しかった。
掠れたハスキーな声が好きで、笑うと普段より高くなる声が好きで、私よりずっと低い身長がすきで、すきで、サバサバした性格もすきで、好きなのに、なんかもう怒りに似た感情すらでてきて。
私は馬鹿な恋をした。距離を三年かけて縮めて、三年後にリセットされて終わり。馬鹿だった。可能性があったら告白するのに。縁を切らせてやらないのに。忘れさせてなんてやらないのに。
でも私は彼女の好きなタイプを知っている。天然でおっとりした、声の低くて運動神経抜群の男の人。正反対。くそったれ。
友情だったらよかったのに。尊敬を取り違えてるんだったらよかったのに。私が彼女の幼馴染だったらよかったのに。
私が女でよかった。
全然違うと思う
アニメでもハスキーボイスっぽい声ってのは低い声(原義のかすれ声でない)で、それっぽい演技ってのは例えばコナンの灰原哀とかだろ
今初めてキズナアイの動画というものを見てみたんだけどアニメ声優の声の平均からするとハスキーだからハスキーと解釈するのが正しい気がする。アニメ文法的に。
そりゃ意識的に低くすることはできるだろうけど。
長く続けるうちに無意識のうちに高い声だした時の方が好感を得られる・楽しい・気持ちいい・コミュニケーションがうまくいく、のような感覚的フィードバックが積み重なってきて自ずとテンション高めの声に固定化されていくんだろう。
電話で声が高くなるのや、アニメの女性声優が普通の演技をしても「萌え声」と捉えられるようになるのと同じこと。テレビショッピングもいい例かもしれない。
ちなみにキズナアイは比較的ハスキーな声だと思うんだけど、彼女の初期はもっと低めだった。
とはいえ単にテンションが低めだったという程度で、今の声もそれなりに地声に近い自然さはある。高く聞こえるとしたら告知などで声を張っている時だ。
だが、彼女の挨拶(「はいどーもキズナアイです」)をモノマネするVtuberを見ると、どれも本物以上に高い声でキンキンした感じになっている。
そのへんは興味深く、その現象のヒントがあるように思う。
本物はテンション高めの挨拶だとしても、もっとハスキーっぽさや肩の力の抜け感も聞き取れるトーンであるのに、それを聞く側はなかなか認識しづらいのかもしれない。
正式化で高くなるかもしれないというので買って遊んでみた
チュートリアル終了直後にネズミが発生、3人いたコロニー住人のうちAさんが噛まれて逃げ周り唯一の治癒技能持ちの身で出血で重傷レッドカード
Aさんを医療用ベッドに運ぶ方法に手間取っているうちに重体になり、Bさんに指示してアホみたいに遠い箇所からコロニーに運んだもののAさんは重体化し意識不明
同時期に遠くで資源を採っていたCさんもネズミに襲われる。ライフルで応戦するもこちらも重傷で移動不能に
グロッキーで寝ていたBさんにCさんの救助運搬を指示し移動開始させるも意識不明だったAさんがコロニー内で死亡、同じ部屋にいたペットのハスキーが発狂し、救助に向かうBさんを全力で追いかけて襲い掛かり重傷を負わせる
たまたま通りかかった不審な黒服の男を追尾しハスキーは消えるものの、噛まれてショック状態のBさんが間に合わず意識不明になり死亡、噛まれた最後の一人はショック状態で昏倒
かーちゃん、酒すげー飲む。
若い頃から強かった。チャンポンなんて当たり前、ワインも焼酎も日本酒も、なんだってがばがば呑んでた。ビールはあまり好かないようだった。
酔っぱらってるところなんて、30年ほどで一度も見たことがなかった。
でも、ここ数年。かーちゃんすげー酔っぱらう。
肝臓弱ってるんだよ、当たり前だよかーちゃんもうすぐ赤いちゃんちゃんこ着る年なんだから。
でも言ったって聞いてくれない。焼酎のお湯割りをあともう少し薄めてほしいのに。
自分はお酒が飲めないからわからないけど、よく売ってる緑の瓶のやつは下手したら半日でなくなる。金色の瓶のも同じ。
せめて2日もたせてほしい。飲むなとは言わない、この際飲まないのは無理なんだから。だからせめて、ゆっくり飲んでほしい。
アル中じゃないって言う。
実際、飲んではダメな日は飲まなくても普通だから、そうなのかもしれない。
ただその代わりにタバコは吸う。かーちゃん、タバコもめちゃくちゃ吸う。
昔はもっと重いのを吸っていた。マイルドセブンの濃い色だった。よく買いに行かされた。
濃い色からだんだん薄くなった。最近では潰していい匂いがするやつに変わった。一ミリだから許してる。もうとやかく言わない、吸わないのは無理ならせめて薄ければいい。
でもできれば、減らしてほしい。
かーちゃん、髪も薄くなった。
白髪もすごく増えた。
かーちゃん、昔は夏目雅子みたいだったんだ。いつでも若い彼氏がいた。
いや彼氏かどうかはわかんないんだけど。多分、彼氏。明言されたことはない。
朝、なんかの用事があって部屋に入ったら半裸の若い男出てきたからさすがに彼氏だと思う。あそこ、寝室だし。
かーちゃん、彼氏(多分)はいつも10歳くらい下。昔はなんでか分かんなかった。自分はかーちゃんが綺麗だって思ったことなかったから。
昔の写真見たら分かる、綺麗だわ。
かーちゃん、とーちゃんと別れてる。自分の年が片手で足りるとき、離縁した。
とーちゃん浮気して出ていった。とーちゃんすげークズ、というか、バカ。
とーちゃんプライド高い、美人なかーちゃん欲しかった。かーちゃんなんでもできる、運動神経もいい、料理も上手い、声だけはちょっとハスキーだけど、悪いところあんまりない。
とーちゃんプライド高いから、結果的にかーちゃんとのことが窮屈になったらしい。
かーちゃん、当時は目が死んでた。
なんの不自由もしなかった。
とーちゃんバカだから建てたばかりの家を置いてってくれたので、住むところはあった。
かーちゃん、自分の服ずっと同じだった。自分は思春期に太りまくったから服たくさん買ってくれた。
かーちゃんに反抗もした。
若い男連れてくんなって言った。だってたまに住んでる人いたし。
男が携帯買ってくれたから許した。でもその男はそのスジの下っぱだったみたいで、追いかけられてたらしくて居なくなった。
かーちゃん、男が車買うときの保証人になってた。五年くらい消費者金融にお金返してた。
最近過払い金返ってきた、真面目に返しすぎていたから結構戻ったみたいでよかった。
かーちゃん、他にも色々あるんだけど。
仕事とか、歯がないとか、色々、とても色々。
長生きしたくないって言う。
酒飲んでタバコ吸って仕事忙しくて全然寝てない還暦間際の姿見てたら、長生きしないだろうなぁって思う。
でも長生きしてほしいよ。
孫、見せてるから。
かーちゃん、こんな反応するんだ?ってこっちの知らない顔で孫と接してる。
長生きしてほしいよ。
お酒も減らしてほしい、タバコも減らしてほしい、ちゃんとごはん食べてほしい、歯だって治してほしい。
なるべく言ってるんだけどな。
なかなか、伝わらないな。
もうちょっと、せめてあとちょっと、言うことを聞いてほしいな。
夜中、かーちゃんに対する不安みたいなものが沸き起こって、突発的にはじめて増田になった。見出しのタグ、あってるんだろうか。
自分やかーちゃんのことをまったく知らない人に聞いてほしくて、読み返しもせずに打ち込んだ。
もっと叩かれると思っていた。だから丸1日はてなを見ていなかった。
友達にも、結婚相手にも、言えない不安だった。聞いてもらえたこと、意見をもらえたこと、すごくありがたい。
「自由に生きる権利」と「人生はその人のもの、つらいものでもある(意訳した、ごめん)」がすごく刺さった。
かーちゃんもそんなことをぽろっと言っていたことがある。長く生きていてほしいと願うのは、こっちのエゴだね。
彼女のことをさんざん振り回した。
本来あるべきひとりの人間としての自由、女性としての自由、それらを奪ってしまっていたなと大人になってから感じた。もっとかーちゃんが若いときに、自由にしてもらう時間を作ればよかったなと思った。長い時間、経済的なところも含めて拘束していた。
反抗心から、土台無理な要求をしたこともある。それでもかーちゃんは叶えてくれた。もちろんずいぶんと無理をして。だからいい子供じゃない。
いい子供じゃなかったからこそ、せめて自由にしてもらおうと思えた。考えが変わった。ありがとう。
あと、自己肯定力が低いのはその通りで、かーちゃんなんでもできるけど壊滅的に自信がない人だ。
自分はとろくさい、かーちゃんはそれでもたくさん褒めてくれた。
絵を描いて金賞をもらったときはすごく褒めてくれた。
なんてことのない紙粘土細工を気に入って、今でも実家に飾ってくれている。正直、かーちゃんの基準はよくわからない。
でもその辺は自分にも子供ができて、わけのわからないぐちゃぐちゃの絵をくれたときに少しだけ気持ちが分かった。結構嬉しい。
安くて旨くて酔えるからと選んでいるらしいお酒、せめてもう少し良いものにしてはどうかと提案する。
もっと近くにいて、いつでも彼女に寄り添えるなら強くも言えるんだが、常にそばに居るわけでもない自分にはかーちゃんに無理強いできないんだ。
あと、かーちゃんは今でもじゅうぶんきれいだ。ちょっと年を取ったんだ。
でも、歯だけは治してほしいかな。仕事柄金銭的余裕はあるんだ、多分。
本当にありがとう。
500mlのウォッカがざらっと調べて830円程度で度数で割って180円程度。
水で割ったウォッカより安いのかよ。
ウォッカ使ってるのに。
今飲んでる俺がヤベー訳だ。
これはヤバイ。
もしかしたら何か魔法的なもので作られた物のものなのかもしれない。
よく小説で転移魔法の事故でとか、次元振動に巻き込まれた宇宙船がとかあるだろう。
あんな感じで主人公的な奴が金策で安い飲用アルコールを作ってだね、
そいつの名前が魚塚とかそんな辺りの名前でウォッカと誤認さする感じでこう。
そんで持ってそいつは2~3人の女性と男の娘とイチャイチャしながら一緒にやってきた男の兄弟か友人と
仲良く苦難を乗り越えたりなんだり。
後は犬とか。柴でもハスキーでもこうモフモフした感じの奴がいて。
そんな感じの奴が居てもいいだろ?ってストロングゼロを飲んでる俺は思うんだ。
2017/6/14に放映されたトップリードのツイッターBROSの中で村山彩希さんのAKB48の16期生メンバーに関するコメントを書きおこしました。
ゆいりー「拙者魚顔ですからー!シックスパック!」(というわけではじめます)
手汗が凄いで有名。握手会でも、この子手汗すごいわ!となる。でも、それで覚えやすいと思う。この子も凄く真面目。AKBは絶対にやるストレッチがあるんだけど、16期生は先輩と絡むときがあまりなくて、ストレッチができなかった。けど、私が教えるようになったら、最初にメモ取って皆に声をかけたりしていた。振りも結構教えてて、皆の事がしっかり見れている。MCのときも話を振ってあげられるところがある。リーダー的存在の子は何人かいるけど、一番っぽいかもしれない。
色んな曲に対応できて、歌もうまくて歌声を聴きにきてください。
私と同じ年なんです。さっきも公演でお誕生日おめでとうございますと言われました。私は明日二十歳になります。
岩立沙穂ちゃんのような後輩からいじられるようなキャラで、自己紹介が始まるときだけ観客側からおーー!という歓声が上がる。癒し系で、踊り方も初々しくて、教えるときも絵で描いてくださいと言われて、次の公演のときには直ってたので、絵で覚えるタイプみたいです。
岡田奈々の推しメン。私の一個下なんだけど、若く見える。闇っぽい曲のときの方が魅力的。喋り方がアナウンサーみたいで、透き通った声をしている。踊り方も好きで、苦手なステップを頑張ってるところもカワイイ。
大人っぽくて、この子の手先が本当に好き。踊ってるときの手先がとっても綺麗。自然と身についてる。
発言がおもしろい。鏡に向かって「私こんな顔なんだ」って言ってたりして、つっこみやすいし面白い。
推しメンが中西智代梨さん。本当に好きで自分じゃなくて、シングル買ってきて智代梨さんに投票するぐらい。踊ってるときはカワイイんですけど、MCでは割とぼけたりつっこんだりする側。MCではサバサバしている。ファンの方が好きな顔なんですよね。
なっきータイプでしっかりしている。頭が良くて、頭で理解して家で学んでくる。なので、言えばすぐに直る。凄く真面目。歌もうまいし、ダンスも癖がない。言えばできる子なので、色々言って行きたい。
すごい美人さん。ダンスが上手い。お笑いが大好きで勘が良い。サバサバしてて媚びない。後、熱狂的なファンの人が付きやすいのか、公演でのコールが凄いんです。12歳だけど、ナイスバディ。ゆいりんごよりナイスバディ。なので、ポニーテールもいいけど、髪の毛おろしてもいいかも。
皆覚えやすいのでは。一人だけしっかりしていて、入って半年なのに肝が据わっている。
背はちょっと低い方。完璧すぎて、いう事なくて怖いです。こんな後輩が居て。でも、ファンの方はフレッシュさとか求めちゃうので、やる気ないとか勘違いされやすい子でこれから予想外の壁にぶつかるかもしれない。
半年でここまでおついてるのもすごいんだけど、元気なのじゃなくてカッコいい曲とかやらせてみたい。
12歳で若い。メンバーからは西野美姫ちゃんにしか見えないと言われる。最近本当に美人になってきた。たっちゃんは、目に見える変化が一番早かった。公演で踊ってる姿を見てて本当に美人さんになってきた。
絶対美人になる。西野美姫ちゃんっぽくなるのか、清楚っぽいアイドルキャラっぽくなるのか。これからが楽しみ。
推しメンが私(村山彩希)なんです。アイドルが好きで、不器用だけど真面目。MCでメンバーをいじって面白くしようとする子。皆からはお姉さんと思われてる子。とても美人さんで、髪の色も薄目で大人っぽく見える。公演で、色んな曲をさせてみたくなる。
12歳ですね。二次元顔でアニメに居そう。一回泣かせてしまったことがある。16期生は18人居るけど、16人に私のプロデュースでは、絞らないといけない。その発表の前だったかもしれないけど、呼び出してこうしたほうが良いよと話をしたら泣かせちゃって。
でも、それは緊張感。16人に絞るのは16期生のためというか、13期生のときもセレクションがあり崖っぷちにさらされたりとかあって(良かったと思っている)。
12歳で子供だけど伸びしろが沢山あると思うので、周りから吸収していけば化けると思う。変だんだけど愛されキャラです。
踊りが苦手。先輩と一対一で教えても、体ではなかなか伝わらない。なっきーとかせいちゃんの初期な感じがある。もっと頑張ればプロ級に踊れるけど、壁を乗り越える前なんですよね。
努力次第だし、それは本人にも伝えている。今はちゃんと覚えて欲しいんですけど、小嶋さんみたいにぼまかしかたを覚えて欲しい。今はごまかし方も分からないし、心配は心配だけど、まだ14歳でこれから。
ポニーテールにして大正解で、本当に似合っている。落ち着いてて、リハーサルでも落ち着いててMCとかでも仕切ってて面白い。部活っぽくて中学生っぽい喋り方や若さが良い。え?頭良いんだ。割とバカなのかなと思ってたけど、頭良いんだ。ちょっと、ゆいりーと正反対はひどいw
突っ込むのが好きなのかもしれない。MCで仕切ってても安心して見てられる。
さきぽん。若いです。顔立ち大人っぽくて相笠萌さんに似ていると言われる。めっちゃ泣き虫で、ネ申すの企画で、ファンの前でUZAとBeginnerの公開振り入れをするときにずっと泣いてたので、私はずっと泣き虫って言ってます。美人さんなので、化けると思ってます。しゃべると子供なんだけど、顔立ち整ってて、どんな曲のジャンルでもいけると思う。
しっかりしてて、メイクさんからも評判が良い。後、本当に真面目。一度取材を受けたときに食べきれなくて、一部を差し入れしたら後日「差し入れありがとうございました」と挨拶をしてくれた。踊り方も武藤十夢さんに似てて、ステージ上でも目立つ。武藤十夢さんとの関係も好きで、めちゃくちゃ冷たいんですよ。それもあって16期生から、武藤十夢さんが怖がれてて。でも、そういう良い関係だと思ってます。Showroomとか見てても、良い関係だなと。
ツインテールで顔はカワイイ。一番ダンスは上手いと思う。癖がない踊り方をしている。笑った時の笑顔がギャップがある。声がハスキーで、色んな曲に対応できると思う。
ただ、髪型がツインテールなのがもったいない。かわいいってイメージを持たれてしまうので、かっこいい曲とかやりづらくなっちゃう。次髪型変えるときは、ストレートやポニーテールにすると良い。
この子は歌が上手い。48thのカップリングでダンスナンバーの曲で唯一選ばれた。すっごいダンスうまいし、真面目だし、美人。
この子は、一匹狼っぽい。私は好きです。未だにちゃんと話したことないけど、一人で黙々と先輩に頼らず個人で色々研究してストイックな感じで好きです。(熱が入ってスカートがめくれる)
もうちょっと肩の力を抜いても良いのかなと思う。完璧主義なんだけど、完璧すぎるより隙がある方がファンの方も好きだったりするし、この曲は力を抜くとかできるともっといい。
アイドルが本当に好きで、真面目に勉強してくる子。今日も公演にきて、ずっとメモしててえらいと思った。新入生のゲネプロを見に行ったときは、良い意味で
見ててブリブリだったので、女子から嫌われそうな子と思ったけど、裏では凄く真面目で、舞台上でアイドルとして完璧にやってる姿の両面を見たときに、本当に良い子だし本当にアイドルが好きなんだと思って、頑張ってほしいと思った。
以上!
ちょうど思春期を迎えようとする多感な頃の話だ。
その頃に読んだ小説に使われていた表現なのだが、すでにその出典もその声がどのように表現されていたのかも思い出せない。
その頃からずっとそういう類の声に憧れている。
出典も表現も忘れているのにどうやってその声に憧れることができるのだと思うかもしれない。
それは一人で留守番をしている時のことだ。ひとりで時間を持て余しているところに電話のベルが響いた。
すぐに受話器を取ると、かかってきた電話はどこで調べたのかわからないが僕に対する予備校の勧誘電話だった。
(親が自営業をしていたこともあるが、その時代は電話が鳴れば出ることは当然のことだったのだ。)
始めは親を探している様子だったが、仕事の手伝いに出て留守だということを告げると、次に僕の名前を口にしながら本人であるかを確認してきた。
正直予備校には全くと言っていいほど興味はなかった。しかし、僕はその声に釘付けになってしまっていた。
電話口から聞こえてきたその声はまさに自分が想像していた”くすぐったい声”そのものだったのだ。
予備校に通う気がなければ、当然返事積極的な返事は出てこない。
でも、少しでも長くその声を聞いていたいがために、僕は思わせぶりな返事をしてはいたずらに会話を長引かせたのだった。
そんな僕のはっきりとしない様子を悩んでいると考えたのか、声の主は僕が発する言葉を丁寧に耳を傾けては、千変万化に感情を変えて答えてくれていた。
優しい声、励ますように力を持った声、迷いにそっと寄り添うような声、時折漏れる大人の余裕を感じさせる喜色を帯びた息。
可愛らしくもあり妖艶とも聞こえるその声を一つとして聞き逃さないように受話器へ耳を強く押し付けては、僕の中に響く音の一つ一つの、恐ろしいくらいの心地よさを感じていた。
不思議な事に、思春期真っ只中の多感な頃でありながら一切の性的興奮を覚えることはなかった。
それは未だに謎のままであり、その時はただ純粋にその心地よさに酔いしれていたかったのだ。
とうとう断る理由も尽き、僕は彼女に説得された形の返答以外の術を失ってしまった。
「ひとまず親に相談してみます」と告げると、彼女はその日一番力強く、それでいて包み込まむような声で「君なら大丈夫」とだけ答えた。
あの時のことを考えると、今でもこの上ないほどに申し訳なく思う。
だからこそのらりくらりといい加減な返答を行なう僕をあれだけ長い時間をかけてでも説得しようとしたのだ。
それが、ただ1秒でも長くその声を聞いていたいだけの少年に対する無駄な努力だったと知ったらなんと思うのだろう。
そんなことを考えては、あの声が怒りに満ちた時はどんな響きを楽しませてくれたのだろうかと、好奇心に押し切られるのだった。
「あんた予備校になんて行きたいと思ってるのかい?」「今まで何度聞いても行く気なんてないっていってたじゃないか」「いくらわたしが断ろうとしても、相手が”本人はもう行く気になってる”って譲ろうとしないんだよ」
そう問い詰めてくる母親に、まさか「声を聞いていたかっただけ」だなんて言えるはずもなく「行く気ないよ。断り方がわからなかったんだ」とだけ答えると、母親は「やっぱりね。またかけてくるらしいから断っておくよ」とだけ言って忙しそうに夕食の準備に戻っていったのだった。
もしそこで「行きたい」と答えたら母親は許してくれただろうか。
もし行かせてもらえることになれば僕は声の主と直接対面することができるし、それ以降もその声を聞き続けることができるかもしれない。
そう考えると惜しい気もしたのだが、何となくではあるが、その声との出会いはそれだけにしておきたかったのだ。
恐怖、というのが一番近いかもしれない。
進んでしまえば、決して戻ってくることのできない一本道に足を進めるかのような不安だ。
それに、これからの人生きっと出会える機会はいくらでもあるはずだ。
これからの人生、めくるめく大人の世界が待っているはずなのだから。
しかし、ついにそれ以来”くすぐったい声”と言える相手に出会うことはなかった。
実在していれば”この声”だと伝えることができるのだが、残念ながらそれは叶わない。
ただ、あの時の声は確かに僕の脳裏にはっきりと残り続けている。
それは、高すぎず低すぎず、ハスキーでありながら音の一つ一つがしっかりと響き、滑舌よくもありながら適度に息が漏れていくような、芯の強さを感じさせつつも甘い響きがあり、エロスでも母性でもない、離れていても耳元で囁かれているようなくすぐったさを持った声である。
これぞという声の持ち主を知っているならば、ぜひとも教えていただけないだろうか。