はてなキーワード: ロッキーとは
出張で三月の終わりに長崎へ行った。二日間の出張で初日に仕事を終わらせ、二日目は自由時間だった。二日目のその日は朝八時頃にホテルのチェックアウトを済ませ外に出た。
コンビニでチュロッキーとコーヒーを買った。コンビニで売っているものは、食べるとうんざりさせられるようなものばかりだけれど、チュロッキーだけは例外だ。港の公園まで十分くらい歩いただけだったけど、もう何日も食べていないみたいにお腹が空いきて、少し気分が悪くなっていた。折角の日を体調悪いままで過ごすことになるんじゃないかと心配したくらいだった。
海辺のベンチに腰をおろし、波だとか、船着き場の船を眺めながらチュロッキーとコーヒーを味わっているうちに、体が温まってきて、だんだん良い気分になってきた。その瞬間、今日は完璧な一日になるってことが、たちまちにわかったんだ。たまにそういうことってあるじゃない。今日がそういう日だったんだな。
港近くの長崎県立美術館に立ち寄った。ちょうど猫の写真展がやっていたからね。でも、「子猫の写真展」ていうタイトルには少し不安になったな。猫のことはとても好きなんだけど、子猫の写真だけは嫌いなんだ。全体的に明るい画面で、ぼやけた背景につぶらな瞳の子猫が不安げな表情を浮かべている写真なんていうのは見ているとイライラしちゃうんだ。でも、そんな不安は展示を見たらあっというまに吹き飛んだよ。そんなイライラするような写真は一切なくて、すごく楽しめたな。特に気に入ったのは、コーヒー農家で暮らす人と猫の写真だな。カゴの中で白い猫が寝ていて、その上にどっさりと赤いコーヒーの実が乗っているんだ。猫は埋められて顔だけ覗いているんだが、その寝顔の穏やかさといったらなかったな。でも、実際僕の心を捉えたのは、猫ではなく人だった。そのカゴにさらにコーヒーの実を盛ろうとしている人の手だ。手だけが写っているんだが、指は太く、表面は木のように真っ黒であちこちひび割れている。その硬そうな手がコーヒーの実を盛った後、猫の白く柔らかい毛を撫でるところを想像したんだ。撫でている写真ではなかったのだけど、そういう光景が浮かんだんだ。すると、なんだか泣きそうになったんだ。これには本当、驚いちゃったな。
美術館には屋上庭園があった。平日の昼前だし、人は僕だけだった。空港に向かうにはまだ時間があったし、美術館の展示にはもう満足していたから、ベンチに座って持ってきた本を読むことにしたんだ。短編集で、適当に読んだ話が大当たりだった。男が一人でキャンプに出かけるだけの話だったのだけど、すごい感じがよかったな。それを読んで、家に帰ったらアウトドア用の軽くて小さな持ち運びのできる椅子を買って、近くの公園にでも行こうと決めた。
小説を読み終わった時、ふと、僕はこの屋上庭園が素晴らしい場所だと気がついた。よく晴れていて、そこらには暖められた芝生の香りが漂っていた。目の前には港があり、あたりは山に囲まれている。山沿いに街が拓かれている。
僕はそこから見える長崎の町並みを写真に撮った。そういった景色をアキに見せたら喜ぶと思ったからだ。アキっていうのは僕の妻で、東海道新幹線に乗って関東の実家に帰省するたびに、熱海の建物が坂道に沿って連なっている様子がすごい好きだって言うんだ。だからきっと、長崎のこの景色も気に入ると思ってね。
しかし、長崎の港の景色っていうのは僕、すっかり気に入っちゃったな。遠くに冗談みたいな大きさのクレーンが見えるんだ。僕が見たときは、何も吊るしては居なかったけれど、あれが動いて、船のタービンやらなにやら、バカでかいものを吊るして動いているところを想像したら、すごい興奮したな。
ベンチから立ち上がり、両手を天に突き出し思い切り伸びをした。体中をピリピリとした心地よさが駆け巡る。その時、どこからか教会の鐘の音が聞こえた。びっくりしたよ。すべてが僕の気分を良くするために動いているような感じがした。僕は教会の鐘の音を生まれて初めて聞いたんだけど、あんなに気分が良くなるものだとは知らなかった。僕は長崎という街が本当に気に入っちゃったな。
美術館を後にして長崎空港に向かった。そこで同期入社の女の子に会ったんだ。僕は彼女のことが好きで、度々連絡をしていたんだ。とてもかわいい子なんだ。今回出張が決まったときにそういえば彼女の地元が長崎であることを思い出して、出張で行くと連絡したら、彼女もちょうど休職中で長崎にいるということだったので、会うことになっていたんだ。
休職していたのは「本当に、先輩がサイアクで」というのが理由らしい。どうも、彼女は嫌がっているのにその先輩がしつこく言い寄ってくるらしい。
「復職するには元いた部署で一定期間ちゃんと働けることを示さないとだめなんだって。でもそれって、人間関係が原因で休職している人に対しておかしいと思わない? 別の部署に移してくれるなら、今にでも復職するのに」と話した。僕はそれはおかしいし、何かが間違っているよといった。
カウンセラーの人に心身に良いから、散歩を心がけるように言われているらしい。一日八千歩歩けるようになることが復職の目安だが、どうしても家でゴロゴロしてしまうので難しい。よしんば歩けるようになったとしても、例の先輩が居る今の部署で働くのは嫌なので、転職をしようか悩んでいると話していた。
飛行機に乗り、伊丹空港から長時間バスに揺られて京都駅についた頃には、耳の少し上のあたりが痛み、お腹がふわふわするような不快感に苛まれていた。京都駅のミスタードーナツでオールドファッションとホットコーヒーを頼んで、京都駅の展望台に向かった。そこからはプラットフォーム全体が一望できる。僕お気に入りの場所だ。電車が行き来して、人が電車から吐き出されたり吸い込まれたりしている様子がよく見える。別々のホームのアナウンスが混じって日本語のようで日本語でないような音声になったのが聞こえる。そうした場所にいると落ち着くんだ。すっかり日が沈んでいて、駅の周りだけがスポットライトをあてられたように明るかった。東の山科方面には暗黒が佇んでいて、新幹線がそちらに吸い込まれて見えなくなった。
僕は彼女と交わした会話について帰りの飛行機からずっと考えていた。オールドファッションを食べているうちにようやく考えがまとまった。僕は自信を失ったんだと思った。僕は彼女の話を聞いている間、つらいね、だとか、おかしいね、とかしか言えなかったのだけど、なんとか元気づけさせるような言葉を言ってやりたかったんだ。でも、変に何を言っても、彼女をバカにすることにしかならないんじゃないかって気分になったんだ。僕の言ってること、伝わるかな。
この世には、会社に死ぬほど嫌な先輩が居ても、そこで働いて’ちゃんと’できることを証明しなくてはならず、そのための訓練として一日八千歩歩くことを指示されている人間がいることを思った。
家に帰ったら、アキが迎えてくれた。「どうしたの、ひどく疲れちゃった顔をしているわね。かわいそうに」と言ってたが、全くそのとおりだったな。あれだけやりたいと思っていたキャンプだとかは、もう馬鹿げたことのようにしか思えなくなっていた。部屋に戻って長崎の写真を見返すと、どれもこれも大したことのない写真にしか見えなくて、すごい驚いたな。
【追記】
「映画シリーズ」は元増田の偏見により「3作以上続いている作品」とさせていただいております。また「代表的」は主観がかなり入りますがその映画と言えばこの俳優だよね、この俳優と言えばこの映画だよね、と一般的に想起されるものを主軸としております。
一昔前まではシルベスター・スタローンの「ロッキー」「ランボー」くらいしかなかった。
最近、キアヌ・リーヴスが「マトリックス」「ジョン・ウィック」でここに加わった。
トム・クルーズは代表シリーズは「MI」で最近「トップガン・マーヴェリック」が出たが、
ジャックリーチャーシリーズも2作までだし、ダークユニバースは解散した。
ダニエル・クレイグは「007」は代表シリーズに入れていいだろうと思うが、
「ナイブズ・アウト」シリーズはまだ2作だが今後続いていけば候補に入るか。
ロバート・ダウニーJrは「アイアンマン」と「シャーロック・ホームズ」だが後者が2作まで。
ヴィン・ディーゼルは「ワイルドスピード」シリーズは押しも押されもしない代表作だが
ジェイソン・ステイサムは「トランスポーター」は確定として「エクスペンダブルズ」を入れれば当確。
でもエクスペはどっちかっていうとスタローンの映画だと思うんだよな。
シュワちゃんは「ターミネーター」で次点がなく、ブルース・ウィリスも「ダイハード」の次点がない。
なんかアクション俳優ばっかりだけど演技派の俳優ってあんま長くシリーズ化する作品の主役にならんイメージ。
この俳優は2つ以上、並び立つくらいの代表シリーズがあるって俳優いる?
ハリソン・フォードは「インディ・ジョーンズ」と「スターウォーズ」(とジャック・ライアンシリーズ)で当確。
ウィル・ビンタ・スミスも「メンインブラック」と「バッドボーイズ」で当確。
イアン・マッケランは「ハリーポッター」のイメージはあるかなぁ……ちょっと脇役すぎない?
ジャッキー・チェンは「ポリスストーリー」と「ラッシュアワー」かなぁ。
〇〇拳、プロジェクト〇は実際はシリーズものではないような気はする。
エディ・マーフィーは「ビバリーヒルズコップ」はいいんだけど、
「48時間」も「ナッティプロフェッサー」も「ドクタードリトル」も2作目までしか出てない。
48時間で思い出したけど
メル・ギブソンは「マッドマックス」「リーサルウェポン」で当確か?
エイゼンシュタイン:教科書枠 モンタージュの人 戦艦ポチョムキンは展覧会の絵のプロムナードを何回繰り返すねんと思った
ヒッチコック:教科書枠 技術的に色々斬新だったらしいが、その後洗練されたフォロワーの現れた今観ても……感は否めない 鳥は割と面白かった
キューブリック:一点透視図法の人 映像に生活感がなくてなんか観てて不安になる 半ば教科書枠のようだけど、普通に面白い
ゴダール︰「ヌーベルバーグ」の人らしいが、ヌーベルバーグが何なのかを知らん
スピルバーグ:エンタメ映画の大天才 かと思えばシンドラーのリストなんかも撮れちゃうのが凄い
ルーカス:スターウォーズ 𝗕𝗜𝗚 𝗟𝗢𝗩𝗘 SWとインディジョーンズの小道具についてのムック本読んだけど、ディテールへのこだわりが病的だと思う
ティムバートン:空想家って感じがする それを映像に起こせるのが凄い 悪趣味とおふざけにセンスがあるけど、それはそれとしてビッグフィッシュみたいなのも撮れちゃうのも凄い
スコセッシ:デ・パルマとごっちゃになる ダメ人間を描くのが上手い気がする
デ・パルマ:アクションで印象的な画を撮るのが上手い気がする miの宙吊りとか水槽ガム爆弾とか
イーストウッド:監督もやるらしいけど観たことないな、と思って調べたらハドソン川の奇跡も撮ってたの知らなかった 手広いな たけしみたいだ
コッポラ:ゴッドファーザーと地獄の黙示録しか観てないから、なんか長い映画の印象 ロッキーのエイドリアンは妹らしい モンタージュが好きらしい
リドリースコット:ブレードランナーとエイリアンの人 怪しい漢字と酸性雨のサイバーパンクの父らしい
ジェームズキャメロン:タイタニックの印象が強いけど、エイリアン2めっちゃ面白かった SFと続き物の2作目に強いらしい
フィンチャー:どんでん返しに定評があるイメージ どんでん返してから更にもう一歩踏み込むのが良い
ノーラン:小難しいけど、エヴァみたいに難解というより単に(意識的な)説明不足なだけでは……と思う でも面白い
タランティーノ:忍殺読んで欲しい 読んで映画化して欲しい 香港ズームがかっこいい
コーエン兄弟:ノー・カントリーめっちゃ良かった なんかドライな感じ
サム・ライミ:完全にスパイダーマンの人という認識 元々ホラーの人らしい
ジョーダン・ピール:黒人差別×ホラー 毎回動物が意味深に出てくる
アリアスター:怖すぎ
屋根裏を整理してたら古いパソコン(といっても2006年頃)が出てきたのでブラウザの検索履歴をサルベージしてみた。
当時自分が何にハマっていたのか思い出されていろいろ懐かしい…
パラ様 生え際
ホケマクイ
ブッチーン 灯花
ぶっこぉすぞー
るくしおん しびれるぜ、鋼の
ティプトリー・ショック
「デストロイがいいね」と君が言ったから六月二十四日はUFOの日
わたるが死んじゃう
琵琶湖タワー
猫いらず 口の周り 光る
尸条書
立方晶窒化炭素
ドーマン法
ひだまりスケッホ
空飛ぶ冷し中華
セーラー戦士が全員ブルマーだったら、アニメ史を変えていたと思うね
34歳児
実はまだ2階に
アリオク
緑はいらない子
そうです。あのコが僕の畏敬する天使様なのです
おかしとか食べる
T-34が倒せない
さあ牛だ
セノバイト
omegaの視界
ぽこにゃん
だぞなもし
倒福マーク
ボッキアウト
フムン
ユープケッチャ
目なき顔のジールバ
やったー+1 シヴィライゼーション
ルロス ロルス
玉音盤奪取
ハレとケ
もえたん 06話
路肩のピクニック
白楽電の詩
ガッシボカ
聖なんとか女学園
クートニアン
お脱ぎなさい
グンニョキ
強さ激しく変動
南斗聖拳108派一覧
みなぎる力がみなぎるぜ
力こそパワー
重い生理が来たみたい
4ひえた
ムーミンパパ海へいく
チャンパーノウン定数
見知らぬ国のデイトリッパー
紫暗号
いざり
比留間 京之介
この娘、最後死んじゃうんだよね
旧神なんていないよ
棒シムーン
S級だけどめどいんでB
オレモダビール
"オナホさん"
アントノフ 積載量
黄金の真昼
Let's Beginning to Look Alot Like Fishmen
けいせい出版
共生るんです
ガネッコ
莫迦め 死んだわ
スコープドッグ 装甲厚
かみそり半蔵地獄攻め
クンデラ 不滅
如意棒 重さ
ちびくろサンボ 枚数
俺のケツをなめろ
大胖女人
大司令症候群
gunyoki
グンニョキ
おしつおされつ
どうしてエレクチオンしないのよぉぉぉぉ
こぐにっしょん
虹作戦
燕山夜話
ドラ28
中国人の部屋
エロ イッカイヅツ
菊屋橋101号
システムショック
ゲバルト・ローザ
完全黙秘
唸るコカトリス亭
みずずちん
なんてこった 死の宣告
アンダーダーク
ロンゴ・ロンゴ
ゲオルギウス
毒薬仁
まじかるぴゅあソング
だいす☆くえすと
つめたく冷えた月
フンカーリート
Shang-Du
水エタノール噴射
願望機
舟に棲む
rom ヘッダ 削る
長靴いっぱい食べたいよ
陣形技 閃き
ハリマオ
ぺちんぺちん
カタリナ おそるべし
野月まひる
マライア 多摩
素敵医師
相沢 祐一 最強
みなみおねいさん
あまぞn
夢のクレヨン王国 SONGBOX
振武刀
クリントワン
ロイさーん
レムコレクション
カードゲーム テケリ・リ
グレゴール・ザザ虫
きみはホエホエむすめ
東方夢終劇
ファミソン8BIT
生きなさいキキ
dwarvish mattock
蟹工船 光線
パラシュート部隊 突然に
ゴクイリイミオオイ
アウト・オブ・眼中
モルディギアン
納骨堂の神
ヴェクナ
パラシュート部隊 突然に
情無用ファイア
末期 少女病
唸るコカトリス亭
アカディネの泉
ショスタコーヴィ
ジャック ケッチャム
シャノン 情報理論
ガロアの郡論
ルルスの術
ラヴォアジエ
宇津田さんの死
レムコレクション
佐保姫 信太の森
ころがる石のような俺の生き様
はしれぐずども
紫暗号
白い神兵
火のバプテスマ
清家理論
サールクラフト
lycanthropy
某研究者
アナ姫さま おげんきですか
オナホ 2番目
宇宙麻雀
電戦トリオ
乳ロマンサー
私は痛みだ
くやしい、でも ビルケナウ
グレゴール・ザザ虫
新藤幸司 CV
Chante キミの歌がとどいたら 先生
開路に時限のある リレー
Drizzt
ちんぽ生やして出直して来い
男根 恐ろしいまでに
コロラド撃ち
HEARTWORK
誠ぉっ そこにいるんでしょ
ずっとオレのターン
ぼくはぼくであること
おれがあいつで
アラバハキ
幻影都市
わたしこそ しんの ゆうしゃだ
クトゥル スペースジョッキー
フラッシャー付自転車
神よりも弱いただのオセロ
おがわみめい
水無神知宏
CARNIVAL 小説
じゃこつばばあ
生と死の境界 安置
うぉ、まぶしっ
ゼロで割る
ココロン
有尾人 フィリピン
子供達を責めないで
圧力計 連成計 BV
エドガー ダケェ
おびんずる
にこにこ商事
ひろ
きっかけは今期に放送している令和のデ・ジ・キャラットを観たことによるものだ。
正直デ・ジ・キャラットに関してはその名前をうっすら聞いたことある程度で、他は何も知らなかった。
オタク向けコンテンツだと何処かで耳にしていたので「ああ昔の萌えアニメね」と認識していた。
猫耳の可愛らしい女の子ってだけで人気出るとか、昔のオタクってチョロいなwとさえ思っていた。
でだ。
圧倒された。
訳が分からなかった。
でも、面白かったのだ。
不思議な魅力に取り付かれ、俺は4分の1話目を延々と繰り返し観た。
Youtubeで昔のデ・ジ・キャラットが公式から全話無料で公開していたので、すぐに全話観た。
いや、気づくと観ていた。惹き込まれていた。最終回の16話目で泣いた。
気づくと俺はデ・ジ・キャラットの魅力にどっぷりに引き込まれ、沼の中へと誘われていた。
ただの萌えアニメじゃなかった。
ああ、この感覚…そうだ。十年前、カナダに旅行してロッキー山脈を観て圧倒された、あのときの感覚に似ている…。
それだけは事実だ。
anond:20220803085802 の続き。
大学1年生の凪(なぎ)は、アパートの隣人でフォークソング部の先輩・夕(ゆう)に片想い中。飲み会で酔い過ぎると眠ってしまう夕を送り届ける役を、部屋が隣同士ということで凪は請け負っているが、実はその際に朝までこっそり夕に添い寝をしている、という秘密があった。
イケメンで人あたりのよい夕はとてもモテる。そんな彼への恋心など不毛だとして、凪は自分の想いを押し隠しつつ、部活の先輩後輩関係として夕との仲間を深めていくが……。
某BLレビューサイトで何故かとても人気のある作品。普段私は、登場人物の顔が見分けのつかない系の漫画にはあまり手を出さないんだけど、期間限定でお安くなっていたので買ってみた。
思ったよりかなり良かった。先輩後輩の関係のまま、徐々に仲良くなっていって、ちょっとしたアクシデントがあって、好きなのがバレて恋人同士になる、という過程が丁寧に描かれている。
タイトルがやけに思わせぶりだけど、内容としては「ずっと愛している」状態なので、タイトル詐欺かも。
エロ描写はセックスのシーンはあれども極少というかほぼない。大学生同士のカプとはいえ大人の恋愛だから、そりゃセックスをすることはあるにしてもそのシーンをガチで描く必要まではあるかっていうとまあ別にないので、これくらいで丁度いいよねーと思った。
最初から最後まで初恋のふわっふわな感じが貫かれており、とても幸せな世界だった……フゥ。
大学生の沙樹(さき)は、飲み会の後に間違えてゲイバーに入ってしまった。そこで会社員風の男・幸村(こうむら)に声をかけられ、名刺をもらう。沙樹はノンケなので当然幸村とどうにかなるつもりはないのだが、もしいい人だったらゲイの友人に紹介してやるかくらいのノリで幸村と会い、一緒に食事をするようになる。
服装や振る舞いなど、どこにも隙のない幸村に対して、徐々に興味が湧いてきた沙樹だったが……。
『86万円の初恋』が良かったので作家買い。『86万円の―』もだが、この『きみが終着駅』も変人観察日記っぽい趣きがある。なんかこう、変な人をちょっと冷めた目で意地悪く分析的に見るというのが、作者の性癖なのかな……。
淡々としたストーリー運びで、言葉で語るよりは絵で魅せるタイプの作品。劇的な大事件などが起こって超反省して考え方を変えるような話ではなく、じわじわと互いに影響を与え合ってのめり込んでいく感じ。
本題の沙樹と幸村の話だけでなく、沙樹の姉の駆け落ち話もけっこうよかった。
初めはやたら高みから幸村を見下していた沙樹がなんやかんやでBLの受けになっているのは、ファンタジーって感じだ。
エロは修正が入るくらいはあるけど、エロ本になるほどは割合が高くない。
正直『86万円の初恋』ほどは心に残らないけど、まあまあよかった。
高校の卒業式の日、林は片想い相手の藤田に呼び出され、ひた隠しにしていた想いが完全に本人にバレていたことを知った。終わった……と観念した林だったが、その一週間後、地元から遠く離れた町のラブホで藤田とセックスすることになった。
事後、これきりで今度こそ藤田との関係は終わったと林は諦めたが、何故か藤田は当たり前のように次に逢う約束をとりつけようとしてくる。
天国から地獄へと突き落とされるはずが、天国からまた天国へ……。予想外のご都合展開におののく、林の運命やいかに。
ボコられたり脅迫されてもおかしくない展開から、もう既にラブラブカッポーになってしまったかのような急展開にビビる林の心理のわかりみの深さたるや。そんな都合のいい話ってある??? という疑問を次々に木端微塵にしいくように、初々しい付き合いたてのわくわくドキドキイベントが起こるので、読者的にもまじかー!? と唖然とせざるを得ないw
まさか初回でラブホ行っちゃうような奴らがこんなに着々と愛を育んでいくとは思わなかった……。
萌えイベント目白押しだけど、二人の仲を揺さぶったり引き裂きそうになるような事件はあまり起こらないやさしい世界で、心が癒されるー。
ちるちるBLアワードとは、商業BL情報サイト「ちるちる」主催のイベント。前年に発売されたBL作品のなかで、ちるちるのレビューページの得点が200点以上の作品からノミネートされる。そして1月にちるちるユーザーの投票がなされて、4月に結果が発表される。
推し作品がノミネートすらされなかったのでやさぐれてしまい、私は投票を完遂できなかったのだけど。BESTコミック部門とBEST小説部門の結果は一部予想通りだった。
BESTコミック部門第1位は『夜明けの唄』(ユノイチカ)。これは納得。私はあまり好きじゃないんだけど、皆好きだよねーこれ。あまりにも爆発的に流行っていたので、これしか1位はないだろうなと思った。
2位は知らんからわからん。3位の『神様なんか信じない僕らのエデン』(一ノ瀬ゆま)は読んだけどかなり面白かった。オメガバース作品なので、設定だけで嫌がられたり過剰に求められたりだと思うが、最近はオメガバースも下火なので、逆境を潜り抜けて3位に輝いた感ある。
そしてBEST小説部門。これは私の予想は「魔道祖師は絶対に1位を取れない」だったんだけど、大当たり。「このBLがヤバい2022」では2位と大差を着けて圧倒的1位に輝いたという『魔道祖師』(墨香銅臭)が何故ちるちるBLアワードでは1位を取れないと思ったのか? それは、このBLがヤバいの方は一般の読者も投票するし有識者の意見も入るらしいんだけど、ちるちるBLアワードの場合はちるちるユーザーだけが投票する(つまり極めつきに商業BLにのめっている人間ばかりが投票する)から。それと、ネットで『魔道祖師』の情報を漁ったところ、「買ったはいいが積んでいる」という人がかなり多かったので、「魔道祖師の人気=原作小説の人気」ではないと思った。
商業BL小説の読者層というのはかなり独特な感性をお持ちで、その他ジャンルの小説を読み漁る、本の虫タイプの読書家の常識では計り知れないところがある。だから、ただの小説として、もっと狭い意味でライトノベルとして、圧倒的な高クオリティの『魔道祖師』はだからといってマジもんの商業BL小説系腐女子には受け入れられはしないんじゃないかなと。単純に売上だけはすごくいいんだろうけどね。しかしそれでも2位だったのはかなりの健闘ぶりだ。たぶんこれ、ドラマとアニメの人気だと思うけど。実は買ったものの積んでいるけど、アニメとドラマ好きだし他の作品は読んでないから取り敢えず投票したって人(商業BL小説読まない民)、多そう。
予想外だったのは、BEST小説部門1位を取ったのが『Interlude 美しい彼番外編集』だったこと。私これ持ってるしすごく面白くて好きだけどマ!? 番外編だぜ!?!?!? うわぁー、さすがに商業BL小説史上に残るレベルの人気シリーズ。番外編集の半分は購入特典などの再録本なので、コアなファンは買って得するようなもんじゃないというのに、すごい。
作者の凪良ゆう先生の書く文章はとても平易で分かりやすい。一方、2位だった『魔道祖師』は「漢字が多くて読めない~」(振仮名ふってあるやんけ)とか、「古代中国の文化なんかわからない~」(脚注あるやんけ)とか言われて敬遠されまくっていた。分かりやすいって大事だなと思いつつ、薄々思っていたけど商業BL小説ばかり読む人ってやっぱり【自主規制】いんだなと思った。
BESTシリーズ部門1位は『囀ずる鳥ははばたかない』(ヨネダコウ)まあねまあね、皆好きだよねー(私は読む気もしないけど)。
『オールドファッションカップケーキ with カプチーノ』(佐岸左岸)は去年のBLアワードのBESTコミック部門ぶっちぎりの第1位作品の続編なのだが、やはり1位は取れなかった。予想通りである。「名言製造機になった」「野末さんがあざとすぎる」など、ボロカス言われてたからなあ。私は好きだけど。人気があるからといって続編を作ったらコケてしまったパターンかもしれない。でも本作も漫画としてのクオリティの高さ半端ないので、むしろ商業BLの民よりも薄く広く漫画を読む人におすすめだ。
あれっ、ノミネート作品のなかでは私の最推しだった『秋山くん』(のばらあいこ)がどこにもランクインしていない。でもまあしょうがないか。ただでさえ複数巻のものは腐女子にはあまり支持されないうえに、『秋山くん』の場合は完結までに12年もの歳月を要したのだ。その間に腐界の雰囲気も変わったらしく、あの衝撃の第1話がまず受け入れられないといって読むのを止めてしまう人が多いようなので。でも最終的には大団円で終わったので、未読だが興味あるけど試し読みしたら怖かったって人は安心して読むがいいさ! 秋山くんにはBEST受け部門にランクインして欲しかったなあ(投票した)。攻めの柴くんはあのBEST攻め部門の錚々たる面子の中にとりつく島はないのはわかる。(ひどい)
やっぱりスクカー底辺男は攻め様ランキングには食い込めないのかなと思いきや! BEST攻め部門第1位を『美しい彼』の平良(ひら)が取っていて笑った。さすが平良! でもこの人の底辺ぶりはあくまでも自己評価でしかない。無自覚ハイスペックニュータイプ亭主関白俺様攻めだから、平良は。
アワードについてはこれでおしまい。次は最近読んだBL。(ネタバレあり)
2018年2月のある日、体育の授業中に突然ヒートを起こした西央(にしお)につられて発情してしまった喬(たかい)。二人は体育館倉庫に転がり込み交わったが、西央の体調は改善せず、倉庫から出られなくなってしまう。喬は一人で倉庫を出て食料や生活用品をかき集め、西央の籠城生活の環境を整え、同時に自分達の体に何が起きたのかを考察する。
籠城三日目、どうやら西央のヒートの峠が過ぎたらしい。あと数日で西央を家に帰せるという見通しをたてた喬だったが、それに一抹の淋しさを感じた時、彼の本能があらぶり始め……。
オメガバース作品で、『旧約聖書』の1節からスタートする本作。人類史上初めてのαとΩの誕生という大事件が、高校の体育館倉庫という狭い密室でひっそりと起きていたという、壮大にしてミニマムなお話。
そもそもオメガバースとはなんぞや? というと、ググった方が早いんだがざっくりいうと欧米発祥の特殊設定。ヒトに男女の性別のほかに「バース性」という性別がある。すなわち、支配者の性α、凡人のβ、産む性(隷属の性)のΩ。それらのバース性のいずれかが男女それぞれについてくる。男性α、女性α、男性β、女性β、男性Ω、女性Ωの六つの性別があるということ。
本作は人類史上初のαとΩの物語なので、主人公の喬(α)は自分とΩの西央が一体何であるのかを知らない。喬はせっせと文献を調べ考察していくうちに、自分達の生態が狼の生態に近いことに気づく。そして自分と西央が異様に盛る様に「発情(ヒート)」という名をつける。
下巻はもっぱら喬がαとしての本能のダークな面をなんとか抑えつけようと奮闘しつつ、αらしい一途さで西央を守ろうとする話。そして喬と西央は互いに相手とは本能抜きではどういう関係なのか? と疑問を懐く。
商業BLではあまり見られない、深いところまでつっこんでるストーリー。オメガバース設定のBLというのは社会問題やジェンダー問題に切り込むものが他にもいくらかある。『リバース』( 麻生ミツ晃)、『シマちゃん家の番事情』(三日ミタ)、『嘘つきな愛を買う』(ポケラふじ子)とか。でも、数年前に二次創作の世界で初めてオメガバース設定を見た時には、社会問題提起系というよりは、SMっぽいというか虐待描写メインの特殊性癖っていう印象だった。今となってはBLでポリコレの影響を最も受けていそうなジャンルのような?
『僕エデ』はジェンダー問題以上に生命の不思議にウエイトが置かれている感じで、昨今流行り? の反出生主義に疲れたハートには心地よかった。終盤、自身と西央が新しいタイプの進化した人類だと悟った喬が、「自分達が多数派になる日が来るまで潜伏する(誰にも内緒にする)」と決断したことろは、ベタでありつつ(漫画の登場人物って変な生き物を発見すると、政府や研究機関に取られるのを恐れてとりあえず隠そうとするよね。)老子っぽくてよかった。
『シマちゃん家の番事情』を読んだ時も思ったけど、今っぽいニュータイプのオメガバースっていいなと思いつつ、しかし以前のもはや男女カプでは容易に描けなくなった禁忌なネタの駆け込み寺的なジャンルが浄化されてしまったようで、それはそれでどうなんだという気がする。でも最近はまたしても欧米渡来の因業設定「Dom/subユニバース」が定着したので、アングラエログロの行着く先はそこかな? いずれそれも浄化されそうだが。
※「Dom/subユニバース」とは……ググった方が早いがざっくり説明すると、ヒトの性別に男女の他にDomとsubという性があるという設定。Domは支配者でsubは被支配者である。Domはsubと二人で決めたワードをsubが言うまでsubを虐めることが出来る。要はSMだな。
真理(まさみち)は美貌の男・佐藤と同居中。というのは、ある夕方にカフェで真理がうっかり通りすがりの佐藤のコートにコーヒーをぶちまけてしまったから。コートのお値段、なんと86万円。怒った佐藤は86万円ぶん真理の家に居座ってやると宣言。以来、奇妙な同居生活が始まった。
佐藤の言うことを何でも受け入れてしまう真理。「マリちゃん」呼びから始まって、ただいまのキスやらなんやら、佐藤の無茶ぶりは次第にエスカレートしていき……。
あんまりレビューが良くないが絵が物凄く綺麗なので、これは絵以外に良いところ無し系の漫画なのかとビビりながらも、試し読みしてみて冒頭一ページに惹かれたので購入。思いの外よかった。
美貌の変人佐藤に常識人陰キャのマリが振り回される系かと思いきや、マリが愛すべき変な生き物って感じで、何が起きても動じないマリに佐藤が戸惑うという話だった。
途中で佐藤の元カノの登場。すごく重要人物という訳でもなくカッコいい姐御でもなく身内でもない女がさらっと登場するのは、BL読者にはあまり喜ばれないところ。だが佐藤と元カノの会話の様子から、もしかして佐藤って実は心から他人を好きになったことがないんじゃない?(だから別れた相手と屈託なく喋れるのでは)という疑念がうっすらと湧いてくる。もしかしてこれはタイトルの伏線回収なのではないだろうか。つまり、86万円がきっかけで初恋をしたのは陰キャのマリだけでなく美貌のコミュ強佐藤もまたそうなのだという。
マリの歳上すぎる友人の件以外、派手な事件は起こらない話だけれど、心情的な揺さぶりやどんでん返しがあり、退屈しない。が、例えばジャンプ漫画みたいにハッキリと事件事故が起きて悲喜劇にならなければ漫画とは認めないような人には、向いていないだろうな、と思う。
表紙がとても綺麗で、中身の絵もとても綺麗。短文モノローグがしばしば挟まるのだが、それらが独特のリズム感を生んでる気がする。
レーベル的にエロがすごく多いのかと思ったら、わりと落ち着きのある感じのエロ配分(オカズ系というよりは人類の一習性レベル)だった。
今日はこれまで。