はてなキーワード: 市長とは
元々増田がウソって言われていて、まあエビデンスも出せないし無理もないよな。
一例だけどこういうケースもある。
【速報】変異株の検出率、高水準続く 宮古島市87.5% | 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-
http://www.miyakomainichi.com/2021/05/140263/
宮古島コロナ、10万人当たり129人 大阪府を上回る最悪水準 - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1310044.html
当然、首長は渡航自粛を訴え、医師会長はロックダウンの必要性を訴えている。
「来島、渡航を控えて」/大型連休で市長が訴え | 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-
http://www.miyakomainichi.com/2021/04/140078/
「島のロックダウン必要」/竹井地区医師会長 | 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-
http://www.miyakomainichi.com/2021/04/139946/
「残念」「仕方ない」/五輪聖火リレー中止 | 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-
http://www.miyakomainichi.com/2021/04/139950/
ビーチにパラソル広がる/前浜、駐車場は満車状態 | 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-
http://www.miyakomainichi.com/2021/05/140245/
どうなっているんだろう―。大型連休(ゴールデンウイーク)に入り、営業している居酒屋は観光客でにぎわい、「宮古島バブルといわれた頃のようだ」と店主は戸惑っている。
西里通りの居酒屋店主。GWに入ってからの店の様子を「すごい。半端でない状況。すべて観光客。地元客はゼロ」と説明する。
要請に応じ、午後8時までの時短営業。客を分散させるために営業開始時間を通常の午後5時半から4時半に繰り上げた。それでもさばき切れないという。
「GWは忙しくなるはずとの話を別の人から聞いていたが、これほどまでとは。緊急事態宣言時は(旅行代金の)キャンセル料が無料になったりした。
正直、都会を離れて田舎に旅行に行くことは、旅行者としてはリスクが低いと感じているのだろうと思うし、その感覚は分からないでもない。
かといって観光業にはありがたい話かもしれず、大っぴらに「観光客はもうこないでほしい」と言えないジレンマがある。
元々増田の「緊急事態宣言って発令されてるんだよね? 」という遠回しの言い方も、心境として理解できる。
変異株が急増している現状では、旅行は低リスク派も減ったかと思うが、念のため沖縄県の新型コロナウイルス感染拡大の状況を示す資料に関する記事も貼り付けておく。
沖縄県のコロナ資料黒塗り開示 知事「個人情報が類推できる」と反論 調査団体「苦しい言い訳」 - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト
https://anond.hatelabo.jp/20210430101328
近年、俺が良く遊んだ、面白かったゲームを並べてみると見事にMade In Japanがない。
(略)
「つまらなくなった」以前の問題として、国産ストラテジーゲームが絶滅危惧種であるというのが現状では。
とりあえず4gamer.net のタイトル検索( https://www.4gamer.net/script/search/index.php?mode=title )で、ジャンル: "ストラテジー"+特徴/開発地域: "日本"で検索し、発売日順にソートして2018年から2020年までのリリース状況を見てみようず(ちなみに、この条件に当てはまる最も最近のゲームのリリース日が2020/12/17なので、2021年は0本。なので実質として直近三年分のリリース状況になる)。
結果がこれ
複数プラットフォームでリリースされてるものは一つにまとめている。また、「ストラテジーゲームの定義」は面倒なので、ここではとりあえず「4gamer.netでストラテジータグが付いているもの」とする。
感想としては、ほぼほぼナンバリングタイトルと有名タイトルからの派生じゃねーか感がある。あと発売元もコーエーテクモゲームス、セガ、システムソフト・アルファーのヘビロテ。
「でもストラテジーゲームっていうジャンルは昔からだいたいこんなもんでしょ?」みたいな人もいるかもしれないので、同じ条件で2001年から2003年までの三年間のリリース状況を見てみようず。
注意点。当時の4gamer.netはPCゲーム専門だったので、上のデータと違ってコンシューマゲームについての登録がない。時代が時代なのでスマホアプリはそもそも存在してないし、ガラケーアプリについても登録は無い。
また、復刻版や廉価版については除外。パワーアップキットなどの追加要素単独発売についても除外。
現在と比べると、リリース数もさることながら発売元やシリーズ名もかなり多様性が有ったことが分かる。あと、上に書いたとおりコンシューマゲーム機向けの情報が抜けているので、実際にはもっとリリースされてたはず。
とはいえこの頃が国産ストラテジーゲーム黄金時代だったかと言うとそうでもなく、後にクソゲーオブザイヤー常連となる某社を筆頭にして、DOS時代と比べると技術的にもゲームシステム的にも後退した印象が強い。
某社、DOS時代は大戦略シリーズの焼き直しだけじゃなくて、「ブリッツクリーク」で諸兵科連合を考慮したシステムを入れたり、「パンツァーカイル」で士気システムや部隊編成システムを入れたりとか、「空軍大戦略」で航空戦に特化してみたりとか色々とシステム面でチャレンジしてたのだけれどなあ…
メーカー側が「ストラテジーゲーム」としているのに4gamer.net側は「シミュレーション」としていたりする例や、カジュアル寄りのRTSやタワーディフェンス系のゲームが含まれていないなどの指摘について。
指摘自体は妥当とは思うけれども、このあたりを深く突っ込んでいくと際限が無いので
と敢えて逃げている。定義論争はSFだけで十分だし、ここでやりたいことは網羅ではなく「同じデータソースを使って過去と現在の状況を比較してみる」ことなので。
ゲームタイトルをジャンルと開発国で絞り込み出来るのが楽なので。Impress Game watchは古くからの記事が残っているという点で非常にありがたいのだけれど、こういう形でタイトルを絞り込む用途には使いづらい。
このあたりも定義論争になりそうだけれど、「シミュレーション」というジャンルは本質的にかなり幅が広くて…
市長視点で市政をシミュレートしたゲーム、社長視点で経営をシミュレートしたゲーム、パイロット視点で操縦をシミュレートしたゲーム、農家視点で農場経営をシミュレートしたゲーム、神視点で生命進化をシミュレートしたゲーム、魔王視点でダンジョン設営をシミュレートしたゲーム、小隊長視点で戦闘をシミュレートしたゲーム、師団長視点で戦術をシミュレートしたゲーム、国家指導者視点で戦争をシミュレートしたゲーム、蟻視点で蟻の巣をシミュレートしたゲーム、普通の人視点でアクアリウムの維持をシミュレートしたゲーム、こういうの全部が「シミュレーション」というジャンルに収まってしまうわけで。
でも元増田が言及してるゲームは戦争・戦闘要素が絡んでくるやつが大部分なので、幅広い「シミュレーション」より、戦争・戦闘要素が強い「ストラテジー」で絞り込んだ方が良いなという印象。(といはいえ4gamer.netの「ストラテジー」ジャンルには戦闘関係ないやつも結構入っているのは確かだしsteamはより大雑把だったりするのだけれど。)
今回の新型コロナウイルス感染拡大で明らかになったことがある。
コロナウイルス感染拡大は飛沫感染が大きな要因であり、多人数で会話しながら食事をすることが大きなリスクになっている。
多くのことはその情報は認知しているが、アルコールを飲む人は、まともな判断ができずにいくら政治家や行政が自粛要請をしても、酒場で大声で会話をしながら食事を続けていた。店舗で酒類の提供をやめると路上で飲酒してしまうほどの恐ろしい中毒性があるのだ。
そんなのは、一部のアルコール好きの人だけかというと、そんなことはない。
行政の人間でも、また市長で医師であってもアルコールの中毒性にさらされているのだ。
◆大阪市職員、5人以上の会食200件1000人超…3月以降の時短要請中
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210424-OYT1T50106/
◆“約70人と会食”の姫路市長『到着まで飲食伴う場であることや規模は知らなかった』
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20210430/GE00038097.shtml
このことから言えるのは「アルコールには恐るべき中毒性がある」ということだ。
真面目な行政の職員や市長でかつ医師である人間でさえも、アルコールを前にするとまともな判断ができなくなるのだ。
少量でも長期的にみて死亡リスクが高まるエビデンスはたくさんでてきている。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO52020370R11C19A1000000/
長期的だけではなく短期的にも、大きな負担を社会にかけている。
急性アルコール中毒で救急搬送された人数は、東京都だけでも年間18,212人もいるのだ。人口比でいうと全国ではこれの10倍ぐらいの件数になるはずだ。
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu-adv/201312/chudoku/
みんな少量をたしなむ程度だからアルコール中毒ではないと思っているようだが、定期的に飲酒としている人は、ほぼアルコール中毒なのだ。
ただ、あまりアルコールは中毒性が高く、その人数も多いために規制をかけることができない。実際にアメリカで20世紀初頭に禁酒法が制定された時には、密造酒、ギャングの台頭など大きな弊害がでてしまった。
アルコールを定期的に飲酒している人たちは、みんなアルコール中毒で、飲酒をやめることができない。また、飲酒に関してはまともな判断ができない思考に陥っているのだ。
だから声を大きくして言いたい。
飲酒をすることは…
①自分の快楽のために社会に迷惑をかけている行為なのだということ
GW中だが私の仕事は休めないので、今日も大阪市内を電車で通勤しているのだが、
おぼろげながら、コロナは飛沫感染するんだなって理解は一般市民にも浸透したと思うのだ。
しかし、その飛沫が眼から入り込む可能性を考えることができていないようだった。
大阪の府知事や市長がどうしようもない奴だと批判している人が大勢いるが、
そもそも大阪府民の民度が低いというか、教養が無いのだと思う。
「コロナ 防護服」あたりでググれば、ほぼ間違いなく眼を守ろうとしているのが分かる。
おでこや頬を露出させている人でも、ちゃんと眼だけはゴーグルで守っている。
涙腺から分泌された涙液は、眼の表面を流れて、鼻涙管を通って下鼻道に至る。
https://www.bausch.co.jp/eye-dictionary/omonamenobyouki-1/mabutatonamidamichi/biruikanheisoku/
眼から入り込む雑菌やウイルスの大半は、自然免疫によって処理されるが、
ときどき、マスクを二重掛けして対策を万全にしているつもりのおっちゃんを見かけるが、
コロナ対策にゴーグルは不可欠というエビデンスが出てくるまで、何もしないつもりなのだろうか。
いずれにせよ、賢明な増田諸氏は、そろそろゴーグル着用生活に入った方が良い。
ゴーグル無しに電車に乗った時は、できる限り眼を閉じるか細めるかして眼を守ろう。
インド変異株は感染するとシャレにならないほどひどいものなので。。。
(参考)
日本環境感染学会の「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版」
http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=355
「い、いえ、どうもしません。では、私はこれでっ……失礼します」
すると、なぜか紳士はバツが悪そうに話を切り上げ、そそくさと店を去っていった。
これは語り手である俺の推測でしかないが、多分この紳士は宗教家だ。
この町で新興宗教を細々とやってる教祖がいるんだが、そいつと言動が何となく似ている。
逃げるように出て行ったのも、政治家と宗教家が関わるもんじゃないと分かっていたからだろう。
なぜなら政治と宗教という組み合わせはジャガイモの入ったカレーライスのようなものだ。
共に食べられてはきたものの、ジャガイモの存在がノイズになっているのは否めない。
市長は気づかず終いだったが、このまま美味しいカレーライスとして消化した方が幸せかもな。
『最近、話題になっております。児童の箸の持ち方を教育機関総出で指導する件におきまして、市は統制ないし後援をいたしませんことを、ここに表明いたします』
『市としましては児童の、ひいては市民の自由意志を尊重しており、これはコモンズにおけるサンクションにおいても同様です』
『その肯否や妥当性、それら取締においても各コモンズ内で完結するものであります』
随分と回りくどいことを言っているが、要約すると……
『箸の持ち方を指導する点について、市は良いとも悪いとも言わないよ』
『自由ということは市も関係ないから、学校側や現場の大人たちが責任もってやってね』
『箸の持ち方をちゃんとしろだの、それ位でやいのやいの言うなって諍いも市民たちで勝手にやって、皆いい感じに付き合っていってね』
ってところだ。
「なんすかそりゃ。箸の持ち方くらいで、わざわざ記者会見を開いてまでやること?」
みんな呆れると共に安堵していた。
ある意味、“マナー”というものが納まるべきところに納まったからだ。
箸に正しい持ち方があることは変わらないし、持てるに越したことがないのも変わらない。
である以上、ちゃんと持てていない者を気にかける人がいるのも当然だ。
だが箸の持ち方に答えはあっても、それをどれくらい重く見るかには答えがない。
そこまで気にしないって人もいるだろう。
個々人が何に対して、どの程度の思いがあるかなんて把握しようがない。
超能力者にも、ロボットにも、未来人にだって分からないだろう。
それを守ろうとすることで社会は円滑に動くが、ちょっと破ったくらいで根元から一気に崩れ落ちるわけでもない。
箸の持ち方は、あくまでこの社会を渡り歩くための“橋”のひとつでしかないのだから。
学校によっては、市から予算が下りないのを承知の上で、矯正用の箸を配給したところもあるらしい。
ちなみに弟の学校はというと、毎年2~3時間くらい指導する程度に落ち着いたようだ。
有象無象(ガキ共)の箸の持ち方を、その程度の時間で矯正できるとは思えないが、たぶん“学校で指導は最低限しました”ってポーズをとっておきたいのだろう。
「ほぅ、マイ箸ですか」
ただ箸を綺麗に持つ者として、その“趣”を知りたかったんだ。
「え? ああ、割り箸はどうも使いにくくて。この細長いタイプじゃないと、しっくりこないんですよ」
「同じ枕じゃないと眠れない、みたいな感じですか」
「ハハハ、そんな繊細な歳じゃないですよ。箸を綺麗に持てるようになったのは、ここ最近です」
「えっ、本当ですか!?」
市長は驚きを隠せなかった。
あれだけ綺麗な持ち方をしているのに、それができるようになったのは成人してかららしい。
「大人になってからだと、とやかく言ってくる人も周りにいないでしょう。どういう心境の変化で直そうと?」
「ふぅむ……あなたは箸をなぜ“箸と書くか”、なぜ“はしと呼ぶ”かご存知ですか」
「うーん……生憎、不勉強なもので。疑問にも思いませんでした」
「箸という漢字は、素材の“竹”に神が宿るとされ、それが“人やモノ”の橋渡し役であることからきているようです」
「へー、竹に神が。八百万の神なんて概念がありますが、食器にも神が宿っているなんて考えがあったんですね」
「いえいえ、扱う物や振る舞いに対して霊験があるというのは、世界的に通ずる考え方ですよ」
これは現代でも通ずる箸のマナーに関するものであり、ひいては市長が今悩んでいる問題にも繋がるものだったからだ。
「例えば、遠い国の中世。手づかみが当たり前だった時代には、その指に神が宿ると言われていました。食べるという行為は突き詰めるなら神聖なものなのです」
「だからこそ、箸も綺麗に持つことは大事だ、と考えるようになったわけですね」
「とはいえ箸の持ち方は、あくまで“一環”です。自分がどのように見られているか、それを自分がどう考えるかという“在り方”の」
「要はマナーってことですね」
「自由、ということは、あなたは箸の持ち方が汚い人がいても気にならないと?」
「気になりますよ、そりゃあ。でも、その人たちに箸の由来だとか、食器には神が宿っているだとか話しても仕方ないでしょう」
ここまで箸に含蓄があるのに、紳士はあっけらかんと言ってのけた。
自分はちゃんとしようと思うし、ちゃんとしていない人間がいれば気になる、それ以上でも以下でもない。
その答えは、今の市長にとって最もしっくりくるものだったらしい。
「なるほど……中々よい話を聞かせていただきました」
昼飯を買ったが、未だ結論は出ない。
このまま帰れば、何となく判を押して終わりだろう。
最後の抵抗とばかりに、イートインコーナーで昼食を済ませることにした。
「いただきます」
心ここにあらずでも、割り箸を横向きにするのは忘れない。
これが身についたのは市長がまだ市長でなかった頃、政治家を志してからだった。
親の庇護下だった頃は実践の機会がなく、知識として教えられていた程度。
彼の親からすれば、自分の子供が割り箸を使うような食生活を送るなんて想定していなかったからだ。
しかし親の元を離れ、市長に立候補しようとした時、今度は政治コンサルタントによる教育が始まった。
やってきた政治コンサルタントが、開口一番そう言ってきたのを今でも思い出す。
むしろ親の教育よりも、この時の方が身に沁みているかもしれない。
“市民は、世間は、あなたの一挙手一投足を気にかけます。文字通りね”
その時、「さすがに、そこまで気にする人はほぼいないだろう」と思ったが、それを見透かしたかのようにコンサルタントは言葉を続けた。
“もし気にかけられないなら、市民に興味を持たれていないということ。興味のない人間は批難されませんが支持もされません”
批難も支持もされない人間は政治家になれない、とまで言われては従う他ない。
そうして、ありとあらゆる“政治家しぐさ”を学んだ。
その賜物……かどうかは正直なところ実感が湧かないが、いま市長をやっているのは事実だ。
「私自身は構いませんが、子供たちや一般市民の方々に、そこまでさせる意味って……あっ」
にも関らず、この日は久々に箸を割るのに失敗してしまった。
“箸の乱れは心の乱れ”
コンサルタントに何度も言われた、いま考えてみても謎の精神論。
だが割るのに失敗した箸は、「そら見たことか」と自分を指差しているように見えた。
「むぅ、割り箸もどうにかしないといけませんかね……環境問題とか色々ありますし」
市長が八つ当たり気味に環境問題を呟いた時、ふと近くで座っている紳士に目がいった。
男の持っていた箸はどうやら自前らしく、一般的な箸よりもかなり細長く、先端は鋭く尖っているようようだ。
その上で持ち手の割合は申し分なく、箸先もピタリと合わさっていた。
それだけで、彼が箸で食事をすることに並々ならぬ拘りがあるのが分かる。
既に各役所で審査は終わっており、市長の考えうる懸案事項は通過済みだからだ。
市長が七面倒な人格者でも町が廻っていたのは、こういった役員達の努力による所が多い。
「慣習的な規範を選別したり忌避する向きも確かにあります。ですが、そもそも文化に基づいたルール自体は社会において必要なものですよ。でなければ法律でガチガチに縛るしかありませんので」
「もちろん箸の持ち方を法律で縛ろうなんて話はしていませんよ。いま話しているのは、法律のように強制力はなくても守った方がいいルールがあり、それが間違いなく社会を回す上で不可欠だという話をしているんです。それを手助けするのも政治の役割ですよ」
そして、それでも市長が渋った場合は、彼を言いくるめる理論武装も済ませてある。
「箸の持ち方を好きにさせろって人も他のマナーを守る時はあるでしょう。その他の常識、文化、マナー、規範といったものによって、快適に社会生活を遅れている側面もあります。そこにきて箸の持ち方だけ好きにさせろというのは理屈じゃないでしょ」
「あー、分かった、分かりましたよ、分かっていますよ!」
「いえ、どうしても判を押さないというのなら構いませんが、それ相応の理由は必要かと。でなければ他が納得しませんので」
「そうですねえ……」
「……昼時なんで、飯食ってきます」
「……そうですか、ではその間に考えをまとめてきてくださいね」
いつも利用する市役所の食堂を通り過ぎて、市長は外で店を探し始めた、
「さて、どうしたものか……」
そうして十数分、あてもなくフラフラしても考えはまとまらず、結局コンビニで適当なものを買うことにした。
市長自身、この件をなぜここまで渋っているのか上手く言葉に出来ずにいた。
ただ、この件が政治的に動くという事実と、それが後は自分の判の一つで決まるという状況。
そのことが、どうしても喉に引っかかって飲み込めなかったんだ。
「やっぱり私が、市政がどうこうするようなものでもないと思うんですよねえ」
あくまで市政がやることは、授業で使う矯正用の箸を作るための資金を出すこと。
市長が声を大にして「みんな箸は持つべきだ」なんて言うわけではない。
秘書はそうも言っていたが、自分の意志で判を押して、相応の金を出す以上はそうもいかない。
だがイエスにしろノーにしろ、今の市長にはどちらも言える気概がなかった。
河村氏、求められる「成果」 4期目の名古屋市政、難しいかじ取り
https://news.yahoo.co.jp/articles/62d75546b44bbf58ffdcd7321d2ef8bee966545d
市長給与の「引き下げ合戦」や新型コロナウイルス対策の「ばらまき合戦」ばかり目立ち、市の将来像を見据えた深い政策論争はなかった。
結果は当選だが、リコール運動の旗振り役だった道義的責任を不問に付したとは言えない。これまでさまざまな目立つプロジェクトを打ち出しては頓挫を重ねてきた河村市政が全面的な信任を得たとも言い難い。
「選挙モンスター」を前に明らかに及び腰だった。既成政党の地方組織が、勝てる首長候補を出せないほど弱体化していることが浮き彫りになった形だ。河村氏の勝利はその反作用でしかない。
「はー、やれやれ。ある意味で尤も重要なのに、尤も簡単な仕事なんですよね。政治システムのバグだと思うんですよ。放置せずデバッグすべきです」
「その話、何回目ですか。もし本当に問題と考え、解決すべきと思っているのなら、ここでおっしゃらず議会で“デバッグ報告”してみては?」
「他に優先したい議題があるとかで、スルーされるのがオチですよ。いち市長の意見なんて、上は都合のいいときしか聞いてくれません」
「でしたら、せめて目の前の書類と戦ってください」
最近の市長はというと、これといった目新しい政策を打ち出すこともなく、良くも悪くも“市長らしいこと”に従事していた。
だが、その状態はいわば休火山のようなもので、政治魂が噴火するのは時間の問題といえた。
「えーと、なになに……『授業に使う矯正用の箸を、大手メーカーに受注・依頼するための予算』……」
「義務教育で箸の持ち方……」
「予算的に問題ないので、後は認可だけ……市長、いかがしました」
少なくとも、呟いたダジャレを自嘲する程度には落ち着いていた。
「いや、箸の持ち方についても賛成派、ということにはなると思います。私自身、箸はちゃんと持てていますし、ちゃんと持てた方がいいとも思っています、けれども……」」
市長の歯切れは悪かった。
いつもの強弁は鳴りを潜め、ひとつひとつ言葉を選ぶように喋っている。
「幼少時代、親に厳しく指導されましてね。ちゃんと持てるようになって良かったと今は思いますし、親の教育にも感謝はしています、けれども……」
「なにか嫌な思い出が?」
「そりゃあ当時の心境を顧みると、決して愉快とは言えませんよ。意味すら分からない歳で親に言われるがまま、慣れない食事を強要されるわけですから。大好きなひじきの煮物を、ちびちびと時間をかけて食べていた時は妙に悲しかったのを覚えています」
「その教育の賜物、“反動”というべきなのでしょうか。私の中では箸を正しく持つことへの信念と同じくらい、それを相手に求めることへの抵抗感もあるんです」
その歴史を背負っている市長も、この件ばかりは普段の向こう見ずな姿勢を正すしかなかった。
「市長のお気持ちは理解しますが、皆が皆そう思うわけではないですから」
「むしろ“逆”かと。誰が、何に対して、どう思っているか分からないからこそ様式に則り、規範を形作るのです。でなければ人々は何を正しいと思い、行動すればいいか分からなくなります」
しかし、市長一人が頭を抱えたところで、書類の段階では突っぱねることも難しい。
箸の持ち方を授業で徹底的に教えるというニュースは市内に轟き、そして他の学校も見切り発車気味に真似しだしたんだ。
そして広がりを見せると授業内容は最適化されていき、次第に抱えている欠点も見えてきた。
「あの、矯正用の道具とか、専用の矯正箸とかあった方が授業も捗ると思うんですが」
「そういえば、そうですね。こういう専門的な授業って、それ用の教材とか準備するものなのに。予算の都合とかでしょうか」
「知らなかったんかい……」
箸がこの国に定着してからかなり経つが、それを助けるための補助ツールが普及したのは割と最近だ。
だけど今まで、そういった意見が出てこなかったのには理由がある。
嘘だと思うなら、行きつけのスーパーで普段は利用しないコーナーを巡ってみるといい。
パッと見だと、こんなもの何に使うんだって商品が並んでいるように見えて、実際はちゃんとした使い時あるものばかりだ。
箸を正しく持てている大人は、小さい頃から家庭での教育や、周りの環境などによって補助具なしで身につけた。
矯正用の箸が既に必要のない立場で、経験上そんなものがない前提で生きてきたので、存在を認識できない。
それを考える時がきても、矯正用の箸というものが存在し、それを使った方がいいなんて発想が出てこない。
当然、ガキは自力で箸を正しく持とうって気概がないので矯正用の箸なんて興味外。
そのため、今まで矯正用の箸を用意した方がいいという、考えてみれば当然の発想が出てこなかったんだ。
しかし、いざ用意するとなると、これが中々に大変だった。
俺はその足跡を把握できていないが、たぶん箸の矯正そのものより過酷だろう。
なにせ箸の持ち方について、これまでは個人の問題、せいぜい小さな枠組みでの課題だった。
そんな中で巷にあった矯正用の箸は、ないならないでどうにかなる代物で、実際どうにかしてきたという現状もある。
そもそも正しく持てている人間には必要ないし、正しく持てるようになれば必要なくなる物だ。
それを学校規模で用意しようとなるとメーカーに依頼し、ほぼ一から作り始める必要があった。
当然それなりの資金も必要なので、政治レベルで金を動かさなければならない。
市長がこれまでにやってきた政策を顧みれば、書類にただ判を押すだけでは済まないだろう。
無料版。シングルプレイヤー。マップは「The World」。時間は無制限。
ちょっと古びた住宅街。パッと見では日本かと思ったが、看板の文字が中国語。
標識に「育徳路」「新吉路」と書いてある。その交差点が初期地点だ。
とりあえず大きな建物が見えるほうに進んでみる。
大通りに出た。これが「樹考路」というらしい。
すぐ近くの店名に「香港」と付く店が2軒、「台中」と付く店も2軒。
この街が香港/台中なのか、それとも香港/台中に本店があるチェーンだったりするのか。
香港の道は「〜〜街」とか「〜〜道」という名前が多いかもしれない。
「〜〜路」が多いのは圧倒的に台中だ。というわけで台中市に絞ろう。
道の名前だけがヒントなので意外に手間取ったが、何とか「樹考路」を見つけた。
誤差は14.1m。5000ptだった。
わりと広い道の交差点。信号機のそばにアメリカ国旗が掲げられている。
国道番号として「201A」と「2」が書いてある。もう少し進むと高速道路番号「95」。
最北東部まで辿っていくと国道2号線と並走するようなところがあった。
その周辺を探ってみると「201A」も発見。
201A号線と2号線が交差する「ノリッジウォック」のあたりで解答ボタン。
誤差は144.5m。5000ptだった。
南北に真っ直ぐに伸びた閑静な並木道。どこまでも森の中という感じ。
なにかの建物(表札などはない)の門前が初期地点だが、その他に建物があるようには思えない。
とりあえず北に向かって進んでみよう。
最初の標識。出たぞ、キリル文字だ。「БОРОДИНСКОЕ」かな。
他の地名と照らし合わせて解読してみよう。
Бは「B」、Рが「R」、ゴルァの口が「D」、Иが「I」、Нが「N」、Сが「S」か。
というか「КОНДИНСКОЕ」という地名を見つけた。
これの読みが「コンジンスコエ」なので、БОРОДИНСКОЕは「ボロジンスコエ」と読むのだろう。
この「〜〜スコエ」という地名は他にも見られる。なにか「〜〜山」とか「〜〜川」みたいな意味なのかもしれない。
そしてロシアの中南部あたりに集中している気がするのでボロジンスコエもそのあたりにあるかもしれない。
でもそれ以上は分からん。
ロシア広すぎんよー。
北に進みまくっても何もなかったので出発点に戻って南へ行く。
あっさり小さな町(というか村?)があった。
その町の入口の看板に「ATTENTION! ZONE OF THE BORDER CONTROL!」と英語で書いてある。
ロシア国旗が掲げられているのでやはりロシアなんだろうと思うが。
Border Controlというのは国境かなにかだろうか。国境付近?
ここらへんで諦めてロシア最南部、オムスクのあたりで解答ボタンを押した。
うーん、ぜんぜん違った。
国境というのは合っていたが、南ではなく西、フィンランドとの国境付近だ。
サンクトペテルブルグの北西に「ボロジンスコエ」という町はあった。
残念。誤差は2675.1km。832ptだった。
ロシア広すぎんよー。
けっこう大きめの街。看板が多くて助かる。言語は英語っぽくない。
「MERCAMA'S DOMINICANA」という店があったのでドミニカなのかな。
道路標識があったが色褪せていてほぼ読めない。
大きな橋があった。やはり色褪せていて読みづらいが「REGRESA PRO…」と書かれた標識が見える。橋の名前だったらいいけど。
なんか大きめの胸像みたいなものが見えるな。「DR. JOSE FRANCISCO PEÑA GOMEZ」と書かれている。あとで調べてみるか。
うーん、だいぶ探したが案内標識のたぐいがない。街の名前がわからない。
看板の上のほうにちょろっと「SANTO DOMINGO ESTE」と書いてるんだよな。やはりドミニカなのか。
あと「SAN VICENTE DE PAUL」というのが道の名前らしい。
でもサント・ドミンゴ・エステ(サント・ドミンゴとは違う地区らしい?)に絞って探したけどそれらしい道や橋は見つからない…
諦めてサント・ドミンゴ・エステの真ん中で解答ボタンを押した。
誤差3.8km。4987pt。意外と惜しい。でもストビューの印象と地図がぜんぜん違うな。
「José Francisco Peña Gómez」さんはドミニカ共和国の有名な政治家で元サント・ドミンゴ市長だったらしい。
大通りに出てみる。なんか急に日本語で「ねぎらーめん」って書いてある店があるぞ。
あと「づぼらや」の写真。日本人の店なのか。「Negi Ramen Trang」とアルファベットで書いてある。
なんとなく東南アジアっぽいな。
ここのストリートビューは歩道視点なんだが。自転車で走ってる?
看板に「ASIAN DELIGHT」「THAI TASTE」って書いてある。
標識に「Trang City Hall」とある。やはり「Trang」という街なのでは。
まっすぐ南北に走る広めの道から「ねぎらーめん」を探す…おお、見つけた。
解答ボタンを押す。誤差は5.7m。5000ptだった。
もう何年経つだろう。
その子を初めて見たのは、とある市町村のふるさと納税制度の運営パートナーを決めるためのプロポーザル型入札の会場だった。
100㎡もないだろう狭い会場の中に私達のグループが入ると、市の職員が数名、一番遠くの壁に並んで立っていた。ふるさと納税の担当部署の職員だった。
その一番左端に、その子はいた。若い職員だった。爽やかなセミフォーマル姿で、装いはパリッとしている。物憂げな瞳を足元に向けて不安そうにしていた。
スライドの正面には、険しい顔つきの幹部職員が座っていた。審査員の顔を見渡し、私達は最初の挨拶(会社と説明者の紹介)を簡単に述べた。副市長の「それでは始めてください」という合図と一緒に、『その子』もすぐ後ろにあった長椅子に他の職員とともに腰かけた。
なぜ、その子の姿が目についたかというと、清潔感だ。清潔感がとんでもなかった。若いっていいな、自分もあんな25くらいの頃に戻りたい、という雑念を捨ててノートパソコンを立ち上げ、レーザーポインタを起動した……
約1週間後、弊社がめでたく第一候補者(※ほぼ内定という意味)として選ばれた。契約書に押印するため、F市役所へと、私が席を置いているオフィスのトップ(所長としておく)と一緒に向かった。
ふるさと納税の事業担当課(地域を盛り上げる的な名前が付いていた)の窓口に行くと、まだ約束の10分前だというのに、その子(Sさんとする)が待機していた。あの時と同じように緊張した面持ちだった。すぐ隣には、四十代半ばくらいの男性上司がついている。
「先日はどうもありがとうございました!」
「緊張しましたよ~」
みたいな世間話をちょっとした後……契約書に印紙を貼って、割り印をして、契約者名のところに押印をして、最後に捨て印を押そうとすると、いらないですと言われ……そして、Sさんに契約書を手渡した。
Sさんが不慣れな手つきで2枚の契約書に市長の印鑑をゆっくりと押すと、はにかんだ笑顔で1枚を返してくれた。
「今後、私がF市の事務担当者になります。今後ともよろしくお願いします」
こんなやりとりだったかな? 男性上司の人は、「この子がメインで渉外を担当します」と説明していた。
衝撃を受けた。想定よりずっと若い人だった。
私がSさんくらいの時は、毎日サークルの部室でごろごろして、アルバイト帰りに仲間と飲みに行って、恋人と別れてショックを受けたりしていた。
それだけに衝撃だった。異常だ、とその時は感じた。でも、それは私達から見た場合の感覚であって、向こうからすれば違う。高校を出てそのまますぐに就職する。そういう人も多くいて、たまたま私達の世界に大卒が多いだけで。それだけの話だった。
大学生ほどの年齢の子が、ふるさと納税という大きなお金が動く舞台で、公務員組織にとっては重大なチャレンジであろうこの機会に、一応はプロのITコンサル(ITだけじゃないけど…)である私達と折衝する役割を担っている。
私の経験上、官公庁側のこういった花形事業の担当者は、〇〇長が付くような役職の人か、30代前半くらいで、昇進が期待されている人が選ばれる。
契約期間は2年だった。
その間に、ふるさと納税制度の導入パートナーとして、システムの整備やら、返礼品の選定やら、業務フローの構築やら、その自治体が安定して制度を回せるまでの準備をしていく。
3年目に晴れて制度がスタートしたら、弊社はシステム保守業者として、毎年度、特命一者タイプの随意契約によって安定的に仕事を得ることができる。
肝心のSさんだけど、こちらの想定よりも頼りになる子だった。普通なら無理なお願いも聞いてくれて、それでいてこちら側の仕事、主にシステム関連の知識をぐんぐん吸収していった。
地頭がよく、それでいて物事に対して本気になることができる。そういう子だった。
ちょっと脇道に逸れる。
この時は、「F市ふるさと納税制度導入パートナー選定業務」みたいな件名で入札が行われたのだが、弊社が勝つ確率は約85%と推定されていた。
というのも、入札実施の前年度に弊社がF市に呼ばれ、「ふるさと納税をやろうと考えているのですが~」といった具合に相談を受けた後、参考見積書と設計書をF市に提出していた。そして、入札にあたっては、その参考見積書と設計書がそのまま採用されている。
おわかりいただけたかと思うが、他社がプロポに入れないよう、提出書類に予め細工をしておくのだ。そうすることで、こちらに有利な形で契約を取りに行ける。実際、プロポに参加した企業は弊社のほかに2社しかなかった。その経済圏におけるライバル企業の数は優に10社を超えているにも拘わらず。
一般に、地方自治体の担当者はIT関連に疎いことがほとんどであるため、こうしたことが通用してしまう――でも、Sさんは違った。上記に挙げた弊社が勝った理由について自分なりに考えて、私達に指摘をしたのだ。
「ほかの自治体でも参考見積書を出したら入札にかなり勝ちやすいんですよね?」と自然に切り出したうえで、他社が入札に参加できないように行った諸々のワザを見抜いた。
Sさんは、システム関連の勉強をして、プログラムの打ち込みに挑戦して、職場でも、電子機器の導入やセキュリティ責任者といった役割を買って出ていた。
一方で、おっちょこちょいなところもあって、メールに添付文書を忘れるのはしょっちゅうだ。褒められると顔を真っ赤にする。急に頭の回転が鈍くなって、とんちんかんな冗談を言ったりする。
一応はコンサルなので、競合他社と同じく顧客の評価やランク付けを行っている。その中でも、F市のランクは高い位置にあった。
無茶な要求をしないし、レベルの低い問題でいちいち呼びつけたりしない(自分達で解決する)し、十分な契約金額と契約期間を用意してくれた。市役所内のシステムの深いところの情報(通常、外部組織に閲覧させるべきではないもの)を見たいといった時も、システム管理課に掛け合ってくれ、数時間もかからず情報を手に入れることができた。
その2年間で、Sさんの表情が曇る時もあった。
年配の職員がSさんの隣に座っていたのだけど、折り合いが悪そうにしている時があった。その先輩がSさんに行った指摘について、私が座っている窓口まで聞こえることがたまにあったが、大抵は些末な内容だった。
文字の送り仮名(行なうじゃなくて行うとか、見積もりじゃなくて見積りなど)や、請求書の処理件名の些末だと思われる部分の指摘、イベント運営マニュアルでの各人の動き方(特にその先輩の)について具体的に文書で示すようにとか、ほかにもグチグチと同じようなことを言っていた。その人との話が終わった後に窓口に来たSさんは、大抵ムスッとしていた。表情が曇っていた。
ある訪問機会のことだった。うちの所長が私と一緒に来ていて、Sさん一人が役所の玄関まで送ってくれたことがある。玄関から離れて社用車へと歩き出す直前、私はついに言ってしまった。
「Sさんは公務員も向いてるけど、コンサル業界も向いてるんじゃない!?」
反射的に「やばい」と思って、所長の顔を見た。
「うん。Sさんウチおいでよ! 歓迎するよ」
所長もノリノリだった。Sさんは俯いて、唇を尖らせていた。
「まだ21なんですけど」
「大丈夫。また今度考えてね。〇〇さん(※私)も応援しているから」
帰りの車の中で、所長が言っていた。
「もちろん冗談だよ。あの子は公務員の方が向いている。でも、うちの採用試験に来てほしいとも思う。働けるだけの実力は多分持ってる」
……それから一か月後。私の携帯に電話が入った。Sさんからだった。
市役所の仕事があんまり好きじゃないんだって。今の仕事は楽しいけど、前の部署で戸籍の仕事をしていた時は、やめたくてしょうがなかったんだって。何から何まで細かすぎるところと、自分で考えて動けないのが嫌なようだ。自分で考えて、自分で動いて、結果に対して責任を取るタイプの仕事がしたいらしい。
私一人で考えてもしょうがないので、所長に報告をして、本社のスタッフ部門にも相談したところ、結論が出た。
・理由①として年齢。大学を出ていないコンサルタントはいるが、そこまで若い人は例がない
・理由②として取引先との関係。人を奪うようなことをすべきではない。彼女が本当にその気であれば止めないが...
・あなた達がそこまで推すなら、23才になったら採用試験を受けてもいい。ふるさと納税導入パートナーの契約期間が終わるまでは必ず待つこと。
あと1年ちょっとだった。
私はこの時、Sさんにとってどんな道がいいのか? と思案していた。
普通に考えれば、地方公務員の方がいいだろう。コンサルタントの道を勧めてよかったんだろうか、あの子を不幸にしやしないかという不安に捉われたのを覚えている。自分で言い出しておいて、本当に勝手なことを考えていた。
それから約1年後。弊社が借りているオフィスの一室に、Sさんがスーツ姿で現れた。
相変わらず、清潔感が抜群だった。真白のシャツがよく似合っている。
試験は何の不安もなかった。書類選考は顔パスだし、筆記試験(Webテスト)は限りなく満点に近かった。
一次面接を務めた私と所長は、Sさんに対してほぼ同じ結論を下した。内容としては、①地頭がいい。頭の回転の速さも悪くない、②温かみがあり、顧客の安心に繋がる話し方である、③偉ぶったところがなく謙虚な姿勢が見える、といったものだった。
本社での二次面接も無事に終えた。面接官だったディレクター(日本企業でいうと本部長~役員くらい)に電話で話をうかがったところ、「概ね一次面接の印象のとおりの子だった。難点として、芯が弱いところがある。強烈なキャラクターの顧客相手だと通用しないだろう」とのことだった。
「次の面接には進めますか」と聞いたところ、「三次面接を行う必要はないと判断した。他社も受けているとのことだったので、ここで内定を出す。弊社のほかは辞退するように伝えてほしい」
当時のメモによると、私はディレクターとこうしたやり取りをしていた。懐かしい思い出だ。
当時は、「Sさんが採用されますように! 弊社でなくても、ほかのコンサルに入れますように」と毎週のように祈っていた。それくらい、Sさんは性格のいい子だった。今でも、あの笑顔を思い出して幸せの余韻に浸ることがある。
そろそろ結末について話す。
Sさんの退職時期と、ふるさと納税導入パートナー企業としての契約期間の満了はほぼ同時だった。
最後にSさんの職場を訪れた時の、あの男性上司の苦渋の顔を忘れることは難しい。
やるせない表情をしていた。見た目は笑っているけど、心の中でなにかヘドロのような汚物がブンブン飛び回ってるんじゃないかって、そんな顔つきだった。
Sさんがうちに来てくれたのは嬉しいけど、本当に申し訳ないと思った。
さて。通常のパターンだと、ふるさと納税を運営していくための基幹システムの整備や地元産品の手配体制、業務フローの構築などを終えると、弊社はシステムの保守管理を地方自治体から請けることになる。
……タイトルにもあるように、弊社は入札の指名を受けられなくなった。法律上は指名停止の理由にあてはまらないので、指名リストに載ったまま『除外』された。弊社はもう、F市から参考見積書や設計書の提出を依頼されることはないし、プロポーザルに呼ばれることもないし、参加申込ができたとしても必ず負ける。
システムの保守管理は、F市が戸籍や市民税のシステム保守を請け負っている会社が一任することになった。その後、弊社のスタッフがF市を訪れたことは一度としてない。
当初は、「ウチのスタッフがいないのに保守なんてできるの?」と疑問に思っていたけど杞憂だった。Sさんが気を吐いて、どんな職員や業者に当たってもシステムの運用管理と保守が担えるように引継資料を作っていた。
今回のような事態を予測したり、意識していたわけではないだろう。ただ、Sさんが仕事に対してひたむきな人だったから、物事に対して本気になれる人だったから、普通の地方公務員のレベルをはるかに超えて、みんなのために頑張ることができた。それだけだ。
筆に熱を込め過ぎた。反省している。
あれから4年以上が経って、私は別の会社に転職した。SさんはITとは別の分野に異動になり、忙しい毎日を送っている。はてな匿名ダイアリーを見ている可能性は0%といってもいい。それくらい忙しい環境だ。辛い日々を送っているかもしれない。いや、確実に辛いだろう。それこそ地獄のように。
今でも思い返すことがある。私があの時、Sさんを誘ったのは本当に正しかったかということだ。
私はSさんが職場で悲しい顔をしていた時、なんとかしてあげたかった。そんなことはできるはずもないけど、それでも助けてあげたかった。だから、無責任な立場ではあったけど、うちに来てみないかって、声をかけた。
本人にとって良き選択だったのか、それがわかるのはまだずっと遠い未来のことだけど……過去でも、現在でも、未来でも、私はSさんの幸せを願っている。
一緒に働けたのは短い間だったけど、楽しかったよ。また会おうね。
アイスランドのジェンダーギャップ指数についての記事を読んでて、まさかそんなことはと思って調べてみたら本当にデタラメな指標だったので書く。
「形式的に」というところがミソだ。たとえば多くの立憲君主制国家では、形式的には君主が一番偉い。君主が首相を任命し、議会を招集し、軍の最高指揮権を持っている(自衛隊の最高指揮権が首相にある日本は例外的)。
でも、実際には、君主に実権はほとんどない。日本やイギリス、ノルウェーのような民主的な立憲君主国では、議会の多数派を握った人物を首相に任命し、内閣に言われるがままに議会を招集し、実際の軍の指揮は首相や国防相といった政治家に任せている。
つまり、そういった国では、「その国で『形式的に』一番偉い人」」と「その国で『実際に』一番権力を持っている人」とは別になる。
後者、つまり「その国で『実際に』一番権力を持っている人」のことを、「政府の長」という。
アメリカのような大統領制の国では、「国家元首」と「政府の長」は同一人物だけど、議院内閣制の国では、この2つは別人だ。
つまり、こういうこと(天皇が元首かどうかというややこしい議論はここでは措いておく。実務的にはどう見ても国家元首なので)。
国 | 国家元首(形式上一番偉い人) | 政府の長(実際に一番権力がある人) |
アメリカ | ジョー・バイデン大統領 | ジョー・バイデン大統領 |
イギリス | エリザベス2世女王 | ボリス・ジョンソン首相 |
日本 | 徳仁天皇 | 菅義偉首相 |
で、オーストラリアやニュージーランド、それにカナダは、いわゆる英連邦王国だ。つまり、イギリス国王がオーストラリア国王やニュージーランド国王、カナダ国王を兼ねている。そうすると、こういうことになる。
国 | 国家元首(形式上一番偉い人) | 政府の長(実際に一番権力がある人) |
オーストラリア | エリザベス2世女王 | スコット・モリソン首相 |
ニュージーランド | エリザベス2世女王 | ジャシンダ・アーダーン首相 |
カナダ | エリザベス2世女王 | ジャスティン・トルドー首相 |
つまり、これらの国の「直近50年での国家元首の男女比」を調べたら、ここ半世紀以上ずっとエリザベス女王が国家元首をしているのだから、全期間にわたって「女性が国家元首」と判定されないとおかしいはずなのだ。
で、ここで最新のジェンダーギャップ指数の報告書を見てみよう。
ドキュメント内を“head of state”で検索すると、最初に出てくるのは次のような文章だ。
...Across the 156 countries covered by the index, women represent only 26.1% of some 35,500 parliament seats and just 22.6% of over 3,400 ministers worldwide. In 81
countries, there has never been a woman head of state, as of 15th January 2021... (p.5)
……思い切り、なんの留保もつけずに「国家元首」って書いとるやん……
いや、普通、こういう文書を作るときはさ、「政府の長」とか「政治的リーダー」とか「選挙によって選ばれた最高位の役職」とか、そういう言い回しにしておくものなのよ。だって、「国家元首の性別」っていうのはジェンダーギャップを考える上で無意味極まりないから。オーストラリアもニュージーランドもカナダもイギリスもこの半世紀以上ずっとエリザベス・ウィンザーさんっていう女性が国家元首だけど、それって政治におけるジェンダー平等においてはなんの意味もないでしょ?
そして、読んでいくとこういう表現にも行き当たる。
...However, in Canada, a woman has been in a head-of-state position for only 0.3 years over the past 50 and in the United States, there has never been a woman as president. (p.30)
……やっぱりこの報告書、「国家元首」と「政府の長」を区別してない! カナダはこの半世紀以上ずっと女性が国家元首だって言っとろーが!
そんなの些細な言葉の使い方の間違いじゃん、と思うかもしれない。でも実は、これは重要な問題なのだ。
現在の民主主義国家の政体を分類するにあたって、国家元首と政府の長がどのように権力を分担しているか、という指標は重要だ。それに従うと、民主的な政治システムは概ね次のように分けられる。
システムの名称 | 内容 | 代表的な国 |
大統領制 | 直接選挙された大統領が政府の長となる | アメリカ合衆国 |
半大統領制 | 直接選挙された大統領と議会の支持を得た首相が権力を分担する | フランス |
議院内閣制 | 国家元首は形式的な存在で、議会の支持を得た首相が政府の長となる | 日本、ドイツ、インド、イギリス |
ここで大事なのは、同じ「大統領」でも、大統領制と議院内閣制では持っている権力が全然違うということだ。アメリカの大統領は国民から直接選挙され、連邦の行政権を握っている。いっぽうドイツの大統領は、議員たちを通じて間接的に選ばれ、国政に関する権能をほとんど持たない。これはどちらかというと戦後憲法下での天皇に近い存在と言っていいだろう。違いは世襲されるか選挙されるかという点だけだ。
サミットを開いたときに、なんでアメリカとフランスは大統領が出てくるのに、日本・ドイツ・カナダ・イギリス・イタリアは首相が出てくるのかといえば、後者の5カ国は議院内閣制の国で、国家元首(天皇や国王、大統領)より首相の方が権力を持っているからだ。なんでオリンピックの開会式では首相ではなく天皇や国王(カナダの場合は国王の代理たる総督)が挨拶するのか? 形式的には彼らの方が偉いということになっているからだ。
(ところで、太平洋諸国やアフリカには、「議会から大統領を選ぶ」タイプの共和国がけっこうある。南アフリカ、ボツワナ、ナウル、マーシャル諸島といった国々だ。こういう国の場合、議院内閣制でありながら大統領が実権を握っているということになるので注意されたい)
なので、「大統領が女性」とだけ言われても、どのくらい権力を持っているのかがわからなければ意味がない。仮に、大統領がなんの権力もない完全なお飾りで、首相がすべての権限を握っている国があったとして、大統領がずっと女性で首相がずっと男性だった場合、女性が政治的に平等な立場にいると言えるだろうか?(インドの大統領がこれに近いかもしれない。10年ちょい前のインドの大統領は女性だったんだけど、覚えてる人ってどんくらいいます? まあ覚えてないよね、インドではここ数十年ずっと首相が男性だったので……)
だから、本当に大事なのは「大統領制における大統領」や「半大統領制における大統領あるいは首相」、そして「議院内閣制における首相」の男女比のはずなのだ。ジェンダーギャップ指数はそれをカウントするべきだ。
それなのに、無邪気に「国家元首」の男女比を出してきて「ニュージーランドでは過去50年間のうち14年間は女性が国家元首でした」なんていうデタラメをぶっこくような報告書を、どうして信用できるだろう(なんでデタラメなのかはわかるよね? NZの国家元首は50年以上前からずっとエリザベス女王だからです)。この報告書は「この国は過去何年にわたって女性が国家元首でした」という数字を羅列してはいるが、「国家元首」の定義がデタラメで融通無碍なのにその数字をハイそうですかと受け入れることはできない。本当に国家元首を数えたのか? 国家元首と政府の長を混同してないか? それらの数字は別々に数えたのか、それとも合算したのか? このことがちゃんと注記されていない数字をどう使えというのだろうか。
まさか、こんな基礎的な事柄について、こんな雑な数字を出してくる統計だとは思ってもみなかったよ。国家元首と政府の長の区別なんて、政治制度を分類する上でのイロハのイじゃねーか。その程度のこともわきまえてないやつが数えた数字になんか意味あんの?
まず、「二元主義型議院内閣制」と「一元主義型議院内閣制」と言っているが政治学ではそんな分類は使わない。議院内閣制とは政治権力が議会で選ばれた首相に一元化させる制度のことである。仮に分立しているならそれは半大統領制という別の制度であって、議院内閣制ではない。
「二元代表制」という言い方はあるが、これは日本の地方自治を指す言葉だ。日本の地方自治は、首長(知事や市長)を直接選挙で選び、首長が県庁や市役所を率いて行政を取り仕切るシステムになっている。上で書いた類型に当て嵌めれば大統領制になるが、知事や市長を大統領と呼ぶのは変なので「二元代表制」と呼ばれている。「二元」というのは、首長と議会がそれぞれ別に選挙されるからだ(議院内閣制では、行政のトップは議会の多数派から選ばれるので「一元」になる)。
(余談だが、現代日本の政治がグチャグチャに混乱している原因の一つが「中央は議院内閣制で地方は大統領制」という政治制度のちぐはぐさだろう。議院内閣制と大統領制では「権力の握り方」が違うから、中央と地方でシステムが違うと政党組織を1つにまとめることが難しいのだ。ある組織の内部に異なる論理で動く複数の組織が混在していると一枚岩になりにくいのは、感覚的に理解できるところだと思う。この点、中央も地方も大統領制で統一しているアメリカや、連邦と州のどちらも議院内閣制で統一しているカナダやドイツと比べてみると日本のちぐはぐさがわかる)
>選挙の開票作業に欠かせない票の点検作業に時間がかかり、翌日の朝方まで確定がずれ込む混乱が、東京都小金井市議選であった。
https://www.asahi.com/articles/ASP3R62L5P3QUTIL03K.html
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>「(各陣営から選ばれた)立会人による票の点検に時間がかかった」
のか読者には分からんよね
>小金井市選挙管理委員会は、被害者である市長候補A陣営からの選挙期間中の文書問い合わせに関しても、選挙終了後の文書問い合わせに関しても、謝罪を忌避し、民事上の責任の有無に関しても明らかにしないという不誠実な態度をとり続けている。
そも選管が信用されてないのが発端なのに