はてなキーワード: 日差しとは
あまりにアホらしくて自分でも悲しくなるが、この週末におしりを低温やけどした。
全治2週間。まぁまぁ軽いほうだと言われた。
原因はポケモンGO。
カメラを持って一人フォトウォークにでかけたのだけど、その時についでにたまごを孵化させようと起動したまま尻ポケットに入れておいた。
土曜日、東京の天気は快晴。突き刺すような日差しの下、汗だくになりながら3時間歩き続けた。
途中、当然尻に熱さを感じてはいたのだけど、全身も発汗による熱を感じていたからそんなもんだろうと高をくくっていた。
孵化装置に入れた10kmのたまごがそろそろ孵る頃だろうと携帯を取り出してみると、尻に違和感。
その後は歩いて衣服がこすれる度に激痛に襲われた。
皮膚科医が言うにスマホが原因の低温やけどって意外と多いらしい。
訴訟大国ならスマホメーカーかゲームメーカー相手に訴訟って感じだろうけど、自分の馬鹿さっぷりが悲しすぎてそんな気持ちになれるわけがない。
便座の長居には注意していたけど、まさかこんなことで低温やけどを経験するとは思わなかった。
本当に、びっくりするくらい普通の熱さでも火傷するから長時間皮膚に当てるときは注意して欲しい。
自己啓発本やら、映画やら音楽やら、この頃は自分以外のすべてに、答えを求めている気がする。
「どうしたらいい?」という問いかけを、いろんなものにして、自分の頭で考えていなかった。
この頃、そういう考えが浮かぶと一旦立ち止まって、「どうしたい?自分で考えたら何が出てくるの?」という問いを自分自身へ投げかけ始めた。
少しずつ楽になっている。
TVやネット、ツイッターや雑誌、CM、ユーチューバー、ニコニコ、インタビュー記事、雑誌、ビジネス書、小説、漫画、美術館の説明、博物館の解説、先輩や友人への質問、すべてに「私はどうしたらいいでしょうか」という気持ちを乗せて向き合っていた。
どこにも答えはないし、答えばかり探していて本当に苦しい。今もまだ何も見つかっていないんだけれど、探すのをやめて大分楽になった。
結局、未来はこの瞬間には何も存在していない。今お腹いっぱいで、冷たい三ツ矢サイダーをお風呂上がりに飲めている。
TV、ツイッター、ニュース、特にネットニュース、を排除したらこんなにも楽なのかと思う。
セミの声に集中して、夏の日差しに皮膚が焼けるような感覚を、やっと体が取り戻してきた。前はいつも頭だけで生きている気がしていた。
同じ年齢で成功した人を羨んだり、年上なのにどうしようもない人をみて蔑んだり、でも結局それは正解でも不正解でもない、その人の人生であるというだけだった。
こうしたい、っていう人生はもちろんある。でも正解ではないんだとわかってきた。理解してきた。不正解でもない。
もっと早くわかれば、とも思わない。これが私のペースだったんだな。
三ツ矢サイダーが美味しい。夏だ。
共働き夫婦ですが、仕事中は”家に帰ったら妻と話したい”と思うことがある。
が、いざ家に帰って妻と話すと途端に辟易する。
何故か。
・1回の話の区切りが長い
これに限る。男女の区別を特につけるつもりはないので、「自分の話を聞いてもらえない」って人に気をつけて欲しい。
1回の会話で自分が喋る時間は15秒以内くらいにした方がいい。
○:
「今朝バスに乗り遅れそうだったよ」→「大変だったね、間に合った?」→「うん、でも走ったから汗かいちゃって」
×:
「今朝バスに乗り遅れそうだったから急いで走ったらすっごい暑くてさ、日差し結構出てたでしょ?急いでいったけど何とか間に合って、それでバスに乗ったらエアコンがどーたらこーたら」→「お、おう・・・(もういいか)」
となる。要するに会話のキャッチボールじゃなくて、会話の打ちっぱなしになってるんだ。ゴルフみたいに。
もちろん、そういう会話が好き同士ならそのままでも構わない。
女の会話は同意を求めてるだけだからいいんだ、て人がいるが、それで満足なら別にそれはそれでいい。その場合、相手が楽しそうじゃなくても不満さえ言わなければ。
「自分の話を何故か聞いてもらえない!いつも相手が不機嫌になる!キー!」って人は、1回の会話を短くしてみよう。
あ、あと変な擬音だけで会話をフルのも禁止。
真夏のうだるような日差しの下、ぼくは海沿いにある片田舎の町の片隅に立っていた。
目の前には長年の潮風にさらされ今にも傾きそうな小さな家がある。
「こんにちわー!」
できるだけ明るいトーンを心がけ、一度で誰が来たかを理解できるように玄関に向かって声を張った。
「開いてるよー」
隙間だらけの家の中から女性の声が響き、慌ただしい足音が近づいてきた。
「いらっしゃ、、、あら?ひとりかい?」
誰が聞いても明らかな様子で後半の声のトーンを下げながら、老齢の女性は答えた。
ぼくはそれにめげないように明るい声で答える。
「えぇ。仕事で近くまで来る予定があったものですから。せっかくなので。」
何やら複雑そうな表情を一瞬見せたが、彼女の腕はすでに紙袋に伸びていた。
そう促す姿の奥に視線を送ると、高齢の男性が不機嫌そうにこちらを見ようともせずに座っていた。
恐らくテレビにでも見入っているのだろう。
「そうしたいのは山々なんですが、まだ行かなくてはならないところがありまして。それに、もともと気を使って頂かないようにと連絡もせずに来たわけですから。」
そういうとぼくは妻から預かった封筒を目の前の女性、妻の母親に手渡した。
中には毎年手渡されるはずの妻とこどもたちからの手紙と、家族の写真が数枚入っている。
「なんだか今年は進学のこととか学校の行事だとかで何かと忙しいみたいで、、、」
あえて言葉の最後を濁すと、お義母さんは意味を悟ったのか残念そうにため息を付いた。
「慌ただしくて申し訳ないですが、お義父さんもお体に気をつけて!」
無駄だとわかっていながらわざとらしくトーンを上げて反応を伺ってみるも、やはりお義父さんは相変わらず同じ方向を向いたままだった。
ぼくはそそくさと妻の実家を後にした。
妻とお義父さんとは、ぼくらが結婚をする前からすでに仲が悪かった。
小さな釣り船屋を営む父親は家庭の中でだけ威厳を示そうとして、よく母親や娘に手をあげていたらしい。
稼ぎも安定せず家族が店に出て生活を支えている中、夕食の準備を急ぐ学校の帰り道で、ツアー会社に売り込みに出ているはずの父親が見ず知らずの若い外国人女性と仲睦まじく歩いている姿を目撃してしまったそうだ。
ところが、母親は驚いた様子も見せず、ただ「しょうがない」と一言返してきただけだったそうだ。
腑に落ちないながらそれ以上聞いても仕方がないと思った妻は、その日以降父親とは聞かれたこと以外話をしなくなってしまったらしい。
ただ、それでも毎年里帰りをしていたのは、お義母さんに孫達を見せたいのと、自分から相手につけ入れられる否を見せたくなかったからとのことだった。
せめてそれが家族の楽しい思い出になるように毎年あれこれとイベントを企画してきたが、とうとうそれも叶わなくなってしまった。
それを予算のせいだからと電話一本で済ませたくなかったのは、きっと妻のプライドなのだろう。
「昔みたく、ぼくが一人で行って手紙でも届けてこようか?」
ぼくがそう妻に告げると、妻は仕方なさそうにこういった。
「本当はみんなで一緒がいいんだけどね。パパがそういうなら仕方ないわ。」
社会に出て間もないころのまだ大した稼ぎのなかったぼくは、青春18きっぷで全国を旅をしながら写真を撮るのと釣りをするのが趣味だった。
そうして訪れた先で、ぼくは妻に一目惚れをしたのだ。
ローカル線を乗り継いでいけば日をまたいで次の日の昼前には到着する。そうすれば1綴りたった11,850円の費用で往復が可能だ。
妻は父親に余計な気を使わなくて済むし電話一本で済ませるという不義理な評価を避けることもできる。
ぼくは夏の小旅行を楽しむことができるし、家族から開放された時間を楽しむこともできるというわけだ。
ただ唯一、こどもたちだけは残念がるだろう。
「せっかく行くのだからこれで美味しいものでも楽しんで、ついでにこどもたちにおみやげでも買ってきてね。」
ぼくはこの人を妻に選んで本当によかったと、心から思った。
そんな美しい物語を夢想しつつ、ぼくは「ぼくだけ留守番してるからみんなで気兼ねなく楽しんできなよ。」とつまに告げたのだった。
ただし、これで一人の時間を楽しめるかというとそれは少し考えが甘いかもしれない。
なぜなら、そもそも旅行代金の高いお盆を避けるように組まれたスケジュールだったので、本来費やされるべき有給休暇は残念ながら持ち越されてしまうからだ。
もちろんそれを不幸とも思わないし、当然全てを受け入れるつもりだ。
僕は学食でカツ丼を食べていた。30歳も迫る年頃となっては20前後の学生に向けた濃い塩味もそろそろ辛くなってきたが味は9年前に入学したときから変わらなかった。僕は大学院生として大した志もなく、大学に残っている。向かい合ったテーブルの向こう側には、初めてあったときから変わらない片言の日本語で精一杯話を続ける中国人の同僚がいた。
「たしかにそうだね」
とうなずぎ同意を示すために顔を上げた瞬間、僕は無意識に通路を歩く女性の姿を追いかけていた。あらゆる社会的妥協を拒否したように黒く真っ直ぐに伸びる長い髪、これからやって来る夏を拒否せんとするばかりに着こまれた地味な服装、学食の喧騒を拒絶し周囲の一切の若さに無視を決め込んだような無表情。
次の瞬間、私の意識は教壇にたっていた。そのとき、僕はTAというものをやっていた。TAというのは教授の小間使で、授業の出席カードを配ったり小テストを採点したりと雑務をやらされる大学院生のことだ。実験をして、コンピュータシミュレーションをして、TAとして雑用をして、無機質な日々が淡々と過ぎていくのを感じていた。教壇の上に立ちながら小テストの様子を見ていると、一人の少女が目に入った。工学部には女子が少ないが、彼女らほど人間が社会的動物であるこを誇示する実例はないというほど密なグループを形成している。しかし、胸のところまである黒髪を頭の後ろに結んだその少女は女子集団を遠く後ろに見ながら、たった一人最前列に座っていた。来る日も来る日もそうだった。少女を形容するには孤独ということばは似合わない。孤高と表現するよりほかない。
「彼女はいったいどうやってこの大学生活を生き抜いてきたのだろうか?」
「女子社会に背を向け、それでもこの学年まで上がってきたということは誰か助けてくれる男子でもいるんだろうか?」
などと考えを巡らせていたが、無論答えはわかるはずもない。彼女と同じ学科と学年のサークルの後輩に彼女を知っているかと興味本位で聞いてみた。
「あの子はですね、いつ見ても一人なんですよ。」
僕は全くの部外者であり、なんの関係もないのだが少し心配になった。学期が終わるともうその少女を見かけることは無くなり、気にかけることもしなかった。
彼女が右足を、左足を一歩ずつ前に出すたびにあの日と同じ黒髪は左右に揺れ、窓から差し込む初夏の日差しを受け一本一本の艷やかな様子が感じられると思えるほどであった。ただ、彼女の黒髪は胸の位置を超えて太ももに掛かるかと思うほどに伸びていた。彼女はまるでこの世界に誰も人間など居ないかのようにしっかりと目を見据えながら歩いて行った。彼女は大学院生なのだろうか。ひょっとして、過年度生になってしまったのだろうか。一瞬のうちにあらゆる想定が僕の頭の中を駆け巡ったが、次の瞬間その想像の不毛さに嫌気が差した。
「それで、あの実験なんですがね...」
中国人の不自然な日本語で一気に現実に引き戻される。そうだ、いま僕は彼と昼飯を食っていたのだと。
時間は残酷だ。あらゆるものを変えてしまって、同じであることを許さない。さらりと伸びた彼女の髪はそのことを示す動かぬ証拠となった。もう5年も経ってしまったのに、あの日々はもう帰ってこないという単純なことが胸を襲った。
時間は昼の14時頃,雲のほとんど見られない快晴の青空の下,立ち並ぶアパートのゴミ収集場所として機能しているであろうラックの一番上,天板部に僕は「それ」を見つけた。
僕は上背がある方だが,そんな僕の鎖骨くらいでやや高いラックなので,普段であればさして気に留めないようなスペースだ。
そのラックの前を通り過ぎるとき,視界の端が「何か」を捉えた。
1秒もないような時間の中で情報として飛び込んできたのは,XJAPANのギタリストだった故人HIDE氏を思わせるビビッドなイエロー・ホットピンク,そして巨乳ロリという文字,いや,記号だった。
嘘偽りなく,横を通り過ぎたその瞬間には僕は「それ」が何かを認識できていなかった。
だから,強烈な配色も,そこに書いてあった文字も,果てはそれが本であったかすらきちんとわかっていたかは定かでない。
ただ「何か」があるということを僕の本能が感じ取ったことは真実であり,しかして10メートルほど歩いて脳内の処理が終わった僕は足を止めた。
頭の中にあったのは「それ」に対するwhatではなくhowであった。
まず,一つ目の理由であるが,稀有なシチュエーションであることそれ自体が僕を高揚させた。
助平なコンテンツを摂取せんと思えば電子の海にROCKET DIVEして有料なり無料なりのものを存分に堪能し,己が欲望が具象化した白い恋人を限界破裂させれば良いのだ。
そんな時代に,「その種の本が落ちている」という場面に遭遇することの衝撃を考えてみてほしい。
さながらポケベルを使って連絡を取る人とすれ違ったような感覚である。
既に述べたようにデジタル時代を迎えているわけだから,この領域で最も勢いのある表示形式は動画であると言っても過言ではないだろう。
そうした世相において本に出会うという現実は,既に非日常である今この瞬間を一層特別なものにした。
たしかに動きや息づかいを知覚できる動画は簡単に臨場感や興奮を与えてくれるだろう。
しかし,静止画だからこそ得られる視聴覚を超えた別次元の感覚,シックスセンスやイマジネーションと呼ばれるような扉の向こう側の感覚は,男をイージートゥワッチ・イージードゥダンスな易きに流れた存在から,一皮剥けた存在へと押し上げてくれるはずなのである。
そう,「あれ」には可能性がある。
歴史を振り返ればいつだって流行は最新技術とアナログなものとが行ったり来たりしているように,動画ではなく,パソコンの画面でもない,本との出会いはかつて読書家だった幼いころの僕を,今も電子書籍にはどこか馴染めないでいる幼い頃の僕の名残を呼び覚ましてしまった。
これらの理由から,僕は今臨んでいるこのあまりにもアナログで古き良き光景に魅せられきっていて,趣さえ感じている。
極力性的なものを近づけないようにと努めてきたが,作用には必ず反作用があるもので,そう,有り体に言えばムラムラしていた。
三つ目の理由はそう,春の日差しが心地よかった,ただそれだけである。
とにかく,僕の頭は落ちていたブツが何かを理解すると同時に,どのようにミッションを達成するかに切り替わっていた。
とりあえずということで一度地図アプリなりなんなりで調べものをしている風を装って後退し,目標物が本当に僕の認識したとおりのものであったのかを再確認する。
横を通り過ぎがてら目視し,間違いなく想像通りのもの,それも2冊あることを確認して一度道を大きく引き返す。
近くの個人商店で少年ジャンプがフライングゲットできるのでまずは購入,もちろん手提げ袋をお願いして,だ。
今日の鞄は最低限のものしか入らない小ぶりのもの,したがってターゲットを収納することは能わない。
もしジャンプを買うことでもらえるビニール袋が十分に大きければ収納は可能であり,小さくともジャンプを買うことができるということで,最初の作戦はローリスクハイリターンだ。
結果として袋が小さく作戦は失敗に終わったが,回収のチャンスが人目のないほんの一瞬であることを考えるとすぐに次の作戦に移る必要があるだろう。
思わず上着を脱いだところで,これだ,という閃きが訪れた。
上着の中に包み込んでしまうのだ。
今日着ていたのは薄手ではあるがダウンなので内容物の輪郭もカモフラージュしやすい,古典的ではあるものの効果的な方法だと言える。
これで準備は整った。
あとは人通りのなくなった瞬間を見計らって,計画を実行に移すだけである。
ドクン,ドクン,と胸が高鳴った。
かつて多くの漢たちが同じ死線をときにくぐり抜け,ときに散っていったのだろう。
昂る感情とは裏腹に,頭の中は静かにフル回転し,スパイやエージェントのような気分になる。
最高に,スリリングだ。
かくして雷光の如き手さばきで勝負を制した僕は,興奮冷めやらぬままにしばし歩いた。
アドレナリンが大量に出ているのを感じる。
周囲の音や普段目につかないものがよく見える,今,間違いなく僕の脳は活性化しているのだと断言できる。
中身がどうという話ではない,「道端のエロ本を拾う」という体験を楽しむのだ。
よもや20代中盤にもなりこのようなイベントでここまでテンションが上がるとは思ってもみなかったが,「エロ本を拾う」という事象は男を童心に返し,心身ともに研ぎ澄ませ,スリルを提供してくれ,そして獲物はどんなものだったろうと心を躍らせる,そんな狩猟本能を呼び覚ますはたらきがあるのかもしれない。
ひとしきり歩いて人目を忍べる場所を見つけてから,ついに報酬とご対面である。
上着の包みを丁寧に開き,逸る気持ちを制しながら手に取ったその本。
なんと,2冊ともダイジェストDVDがついているタイプの本であった。
趣とは何だったのだろうか。
春は理由もなく侘しさを感じる。積もった雪が道端に僅かに残る程度になり、日々を包んでいた寒さも柔らかい日差しであたたかくなってきた。学生は春休みに入り朝の電車に乗る人もすっかり減ってくる。冬は雪があらゆる音を吸収して静かな日々を作り出すが春はまた別の静けさがある。生き物が目覚めて植物が芽吹く前の静かな力強さ。ここは田舎だ。昼間に家にいると子供たちの元気な声が聞こえてくる。自分が子供だったころを思い出す。友達の家に電話して約束をすることが大半だった。たまに約束もせずに友達の家に行くと留守のこともあった。そのようなときも数人は集まった。それでもいつもの面子は集まらず何となく寂しさを感じていた。意味もなく町内を自転車で回っても町は静かだった。鳥の鳴く声とわずかな車の音だけが響いていた。今地元で一番発達している駅前に行くと大勢の人混みに紛れることが出来る。春になると心なしかあらゆる人が笑顔を身に付けているように見える。自分もその人混みを構成してる一員なのだけど何となく場違いな気がしてくる。逃げるように家に戻るとラジオをかけて本をよんだりする。ラジオにしてもテレビにしても自分とは全く別の世界いる人間がしゃべっているような気がしてきて昔から持ってるCDをかける。そしてあのときの彼はどうしているだろうか、あのときこうしておけばよかった、この辺りも変わってしまったなあなどと思いを馳せる。いたたまれなくなった後に通帳を見たり冷蔵庫の整理や掃除をしたりする。そうなるともう夕方でスーパーに夕食を買いに行く。店内にいるのは家族連れやカップル、学生などでやはり自分とは異人種だなあと感じてしまうけど昼間よりは馴染んでいると思い何となく気分が落ち着いてくる。家に帰って手早く夕食を作り深酒にならない程度に飲みながらBSでやっている映画を観る。そうこうしてるともはや11時を回っている。さて風呂に入って寝るかと湯船に浸かる。リラックスしていること、寂寥感に負けてしまわないようにとふと歌を口ずさんでしまう。口ずさむのはtake on me。サビにさしかかり、テイクオンミーと歌っているとどこからか復唱する声が聞こえてくる。それはとなりの家から聞こえてくる。さっと窓を開けると隣の家の窓も開け放たれていた。そこにいるのは妻子供に逃げられた隣の親父。わざわざシャンプーボトルを口にあてて熱唱していた。負けじと声を張り上げる俺。窓枠をリズミカルに叩きながら合わせてくる隣の親父。歌い終えるとこちらにむかって静かにしかし力強く頷いてきた。そうだ、夜はまだ更けてきたばかり。この一帯には俺と隣の二軒しか家はない。観客と歌手が一体になったショーの始まりだ。マイケルジャクソン、デヴィッドボウイ、エアロスミス。往年の名曲を二人で歌い上げていく。どこから持ってきたのか親父の手には菜箸が握られていた。めちゃくちゃ、しかしなぜか調和を感じさせる菜箸風呂桶ドラム。俺はトリックスペシャルで仲間由紀恵が風呂の蓋を壊して息をしてしたのを思い出した。風呂のふたをぶちこわし息を吹きはじめた俺。情けない音を立てる風呂のふた。しかし隣の親父はニヤリと笑うとさらに激しく菜箸を叩きだした。負けじと強く息を吹く俺。ふたの先に手をあてわずかに音の違いを作り出す。即席のジャズセッションが始まっていた。そうだ、俺たちはどこでだってブルーノートを作ることが出来る。セッションを始めたその場所がニューオリンズだ、ステージなんだ。初春とはいえ夜の空気は寒い。しかし俺たちのセッションはそのような寒さなど吹き飛ばしてしまうほどだ。膝下の湯も俺たちの熱気をさらに上げる。隣の親父が頭を強く振り始めた。同時に肩も更に激しく揺れる。そうか物事には必ず終わりがある。この熱いセッションもいつかは終わってしまうのか。一瞬頭に淋しいが通りすぎる。だがしかしそのような感情に押し負けてこの一瞬を台無しにしてはいけないのだ。最後を美しく飾ろうと鼻から最大限の息を吸い込む。そして体を反らせながら思い切り息を吹き込んだ。窓の外に見える空には明けの明星が輝いていた。俺の息が途切れる瞬間親父の菜箸も終わりを迎えた。息を切らせながら向き合う二人。親父の顔には不思議な満足感が浮かんでいた。きっと俺も似たような顔つきなのだろう。言葉もなく、頷きもなく二人は窓を閉めた。男には無駄な装飾など必要ない。ただセッションした、という事実があればいい。携帯を取りだし会社に仕事を休む旨を伝える。そうだ、俺たちは一人じゃない。一歩踏み出せば必ず心の同士と出会えるのだ。
死にたい。思考を止めたい。消えてなくなりたい。俺という存在を最初からなかったことにしたい。なんでこんなことになった?何かが間違っている。おかしいだろう。こんなことは、あっちゃいけないはずなんだ。
事の起こりは数ヶ月前。20年来の付き合いの悪友が電話をかけてきた。その時俺は家で焼き鳥をつまみにビールで晩酌していた。いつもはメールのくせに珍しく電話なんてかけてきて、なんだろうと思った。どうせくだらない話に決まっていた。あれに出なければよかったんだ。
奴は勢い切って言った。ハゲ始まったおでこの下に目ん玉剥きだして、ビックニュースに大興奮のキモい顔面がありありと目に浮かんだ。通報モノだったに違いない。
『魔女先輩』とは中学時代の1コ上の先輩で、すさまじい美人なのに、よく言えばエキセントリック、悪く言えばキチガイな奇行と相まって、学校の有名人だった女に勝手につけたアダ名だ。直に話したこともない、俺の初恋の相手だ。
洋菓子みたいな語感の芸名を教えてもらって、ネットで検索したらすぐに動画まとめが出てきた。もう20年近くも顔を見てなかったが、サムネイルだけで彼女だとわかった。独特の勝気な目つき、そのままだった。流れるような黒髪、長くなっていた。美少女は見事な美女に育ったらしかった。
奴が言うにはデビューは9年も前で、元同級生の間ではとっくに常識になっていたらしい。それを今まで知らなかったなんて、俺たち、まじで二人ぼっちだな、なんてホモくさいことを言い合いながら、俺は電話を切った。そして、瞬間、俺はプライベートな空間にいた。一人になった。パソコンの画面にはきらびやかなサムネイル。青春時代の憧れだった先輩の、あられもない姿が映っている。
一度ブラウザを閉じた。ついでにパソコンの電源を切った。トイレに行って小便を出して、ビールの残りを全部開けた。散らかった8畳間を無駄にうろちょろした。食いさしのポテチの袋を足にひっかけて中身をぶちまけた。
パソコンの電源を入れなおした。起動を待っている間に焼き鳥も平らげた。ついでに床にぶち撒いたポテチも拾って食った。罪悪感とも高揚感とも違う何かがへその下に溜まっていた。
震える指でおっかなびっくりブラウザを立ち上げ、検索窓にさっき聞いた女優の名前を打ち込んだ。唐突に高校生だった時に親父のパソコンでエロ画像を検索した時の事を思い出した。誰も居るわけがないが周囲や背後を確認して、検索ボタンをクリック。どうしようもない背徳感。さっきのページを見つけ、居もしない誰かに心の中で言い訳をしながら動画の再生が始まるまでの数秒感に、心臓が6回大きく脈を打った。
最初のインタビューの場面だけで勃起した。中学のころの面影を残した、大人になった彼女がそこにいた。くりっとした挑戦的な瞳。黒くしなやかな長髪。華奢な体格。胸は大きくなっていた。最近ではオナニーもルーティン・ワークになっていたというのに、その動画だけで3回抜いた。
それからは彼女ばかりでオナニーするようになった。ネットで動画を漁ったのは初日だけで、翌日からはDVDを買い揃えた。デビュー作から順々に。計算してみると、デビュー当時は22歳のはずだが、18歳の現役大学生というプロフィールでデビューしていた。
普段は気にも留めないインタビュー部分も、食い入るように見た。俺は彼女について、少しずつ知っていった。初体験は中学生の時、同級生と。経験人数は50人超え。性感帯は全身。クリ派。休みの日は3時間に一度オナニーする。中絶経験あり。今までにしたことがある一番の変態的プレイは彼氏の友達と宅呑みしてて女体盛りからの乱交。
最初はアイドルのイメージビデオみたいな内容だったが、年季が入るにつれだんだんとハードな内容が増えていった。潮ふき。初アナル。出血。許可無し中だし。浣腸。乱交。SM。全身ぶっかけ。100人斬り。最新作は喪服の未亡人モノだった。熟女というキャッチがついていた。
彼女は俺の中学のヒロインだった。学校中の男が彼女に恋をしていた。彼女は凛とした美少女だった。女だてらに生徒会長をやっていた。ハードル走の選手で、学校で一番足が速かった。しかも成績も良くて、まさに完璧なお嬢様だった。
だけどなぜか魔術にハマっていて、放課後に空き教室を占拠して勝手に怪しげな儀式を執り行っていた。それでついたアダ名が『魔女先輩』だ。タロットや星占いは可愛い方で、床に魔法陣を描いたり、一度、鶏を殺して生き血を使った儀式を行って問題になったことがあった。
彼女らは日がな、何やら哲学的な議論に明け暮れていた。その集団に混ざっていく勇気はなかったが、俺はそれを隣の教室のベランダから、聞き耳を立てて聞いていた。抜けるような青空だった。俺は彼女の事が好きだった。
『魔女先輩』について、忘れられない思い出がある。その日もいつものようにベランダに身を潜めて教室内の会話を盗み聞きしていた。夏休み前の初夏の日差しの下で、汗をぶったらしながら、息を殺して部屋の中の様子を伺っていた。部屋の中には男女が5、6人はいたと思う。声だけしか聞いていないからはっきりとは分からないが。彼らの前で魔女先輩は高らかに宣言した。
ことさらに男女を強調するのに、思春期の俺はいかがわしい何かを予感した。先輩らは教室の窓とカーテンを閉めきって中で何をしているのか見えないようにした。廊下側の扉も鍵を閉めて中を見えないようにしていたようだった。何が始まるのか、俺は全神経を集中して聞き耳を立てた。
音が聞こえた。衣擦れ。どよめき。裸足の足音。「みんなも脱いで」先輩の声。何かをしゃぶる音。「見たことある?」肉と肉の打ち合う音。男子生徒の唸り声。女生徒のすすり泣き。「血を集めて」
いつもと様子が違う。なにか、いけない事をしているというのが分かった。興奮。胃袋がひっくり返るような興奮。同時にひどい汚らわしさも感じていた。今すぐここから立ち去るべきだと思いながら、その実、体は石のようになって動かない。狭窄した視界の中で、先輩の艶めかしい声だけがはっきりと聞こえていた。
オンナの声だった。今では先輩達は人目をはばかるのも忘れて、本能のままに声を上げていた。その声を聞いているうち、俺の中に何かが降りてきて、そして過ぎ去った。青臭い臭いが鼻についた。射精していた。手で触れたわけでもないのに。これが俺の精通だった。汚れた、と思った。
濡れた制服のズボンを前に呆然としていると、がらっと窓が開く音が聞こえた。驚きのあまり心臓が飛び出すかと思った。心臓がバクバクと脈打った。400m全力疾走の後のようだった。息もできなかった。誰が窓を開けたのかは分からない。『儀式』の終わった先輩達が、片付けを始めたのだ。逃げなければと思ったがぴくりとも動けなかった。『儀式』を盗み聴きして、射精までしたと知れたら。考えるだけで全身からおかしな汗が噴き出した。怒られるか、軽蔑されるか。自分の置かれた状況が、涙が出るほど汚らしかった。
結果的には何もなかった。臭いや気配で俺の存在はバレていたと思う。誰のものか、ぺたぺたと裸足の足音が遠ざかっていった時の安心感は、言葉では言い表せない。片付けの終わった先輩たちはそそくさと教室を後にしたようだった。脱力した俺はそのまま、日が沈むまでベランダに死体のようにうずくまっていた。その日から俺は盗み聞きをやめた。
さて、そんな彼女が俺の初めての相手になった話をしよう。俺は女に縁なくずっと今まで童貞だったが、なんとなく彼女の作品を作っている制作会社のホームページを眺めていると、汁男優の募集がかかっていることを知った。別に彼女の作品のための募集とは書いていなかったが、軽い気持ちで応募してみることにした。俺は運がいいのか悪いのか当選した。
撮影は平日だったが、有給を使って会社を休んで制作会社へ向かった。身分証を見せて控室に通されると、パンツ一丁になるよう言われ、服を脱いだ。控室では同じようにパンツ一丁で待機する男達が20名ほどいた。なんというか、出荷前の養豚場の豚のようだった。スタッフから汁の出し方について簡単なレクチャーがあった。
この期に及んでも、俺はなんてことなく思っていた。不思議なほどに、これが俺の初めての女性経験になることに思い至らなかった。うまくできなかったらどうしようとか、自分の性行為を撮影される不安もなかった。やがて男達は撮影用の部屋へ通された。
彼女は眩むような照明の中、マットの上で男に組み敷かれていた。白くか細い肢体を投げ出して。虎のような喘ぎ声を上げてイキ狂っていた。男の物とは違う、むせ返るような臭気がこもっていた。
男達は働き蟻のように整然と列をなして彼女の中に精を放っていった。彼女はその全てを受け入れていった。すぐに俺の番が回ってきた。
彼女の前に立った。男と女の、殴りつけるような臭気。肌の上に粒になって浮いた汗。白く浮き上がる手足。飲み込まれるような黒髪。目と目があった。磔にされた天使のようだった。
ふと見ると、画面越しでは気づかなかったが、うっすらと手首にリスカの跡があった。
俺は鉛のように重くなった性器を彼女に挿入した。これが初めての挿入だったが、思いの外スムーズに彼女の中に入っていった。彼女の熱い胎動が俺を包み込んだ。
彼女と一体になっている間、俺の脳裏には中学校のベランダで盗み聴きした彼女の言葉がよぎっていた。
『語りえぬものについて沈黙するのは知性の方法論に対する隷属』ですか?
『デカルトが分離してしまった物質と魂を融合させる、グノーシス主義の実験』はどうなりましたか?
光が見えた。
時間にしたら数秒だったのだろう。性器を引き抜くと、俺の精子が他人のそれと混じり合いながら彼女の中からこぼれ出た。それだけだった。
そして気が付くと俺は家に帰ってきていた。ポケットに汁男優の謝礼の3000円が入っていたから、近くのコンビニでビールとつまみの唐揚げを買ってきて、泣きながらこれを書き上げて今に至る。死にたい。
春の日差しには程遠い、寒さに震える増田の民は、暖を取ろうと灼炎鳥(ホッテントリ)の確保に勤しんだ。
しかし灼炎鳥を手に入れることのできるのは、ごく少数の選ばれし増田のみ。ここ最近では増田11人衆を名乗る一部のエリート集団が灼炎鳥を独占しており、多数の貧しい増田民は身の凍る思いで湖に釣り糸を垂らしていた。灼炎鳥は湖のなかを泳ぐ鳥であり、釣るものだからだ。
「はぁ……やはり釣れんか……」
老人は深い溜息をつく。幾数年を生きながらえた経験と勘こそが老人の武器であったが、如何せん彼の紡ぐ文体は堅苦しすぎて、ブクマカ鳥たちは喰いつかないのだった。
「おじいちゃん、おじいちゃん」
今年で五歳になる孫娘が、老人の外套を引っ張った。
「エサの主語が小さすぎるんじゃないかな。主語を大きくすれば、ぜったい釣れるよ」
老人は目を細めて微笑んだ。嗚呼なんとこの子は聡明なことだろう。
さっそく釣り針に特大の主語を括りつけて、湖面へと釣り竿を降ろした。
《人類はどうして分かり合えないのだろう》
老人の取り付けたエサにはそう書かれていたが、あまりの辛気臭さにブクマカ鳥たちは皆逃げ出してしまった。主語が大きい警察バードさえも逃げ出す始末だった。
繰り返すが、増田の世界では鳥が水のなかを泳ぎ、魚が空を飛び回るのである。
「やはりワシにはもう駄目なようじゃ」
老人はまたひとつ溜息をついた。
「おじいちゃん、こんなエサはどうかな?」
孫娘が小さな手で差し出したソレは、淡いピンク色でハートの形をしていた。
老人はかぶりを振る。
「いやこれはワシには扱えぬ。それは《ジェンダー論》の釣り餌じゃよ。ワシは30歳を過ぎた童貞じゃから、その手の話はさっぱりなんじゃ」
孫娘は首を傾げて、それじゃあ私はいったい誰から生まれたのだろうと疑問に思った。
「じゃあこのエサは?」
孫娘が次に持ってきたエサは、本の形をしていた。けれど老人はやはり首を横に振った。
「これは《ライトノベル論》の釣り餌じゃな。ワシが最近に読んだライトノベルは、スレイヤーズ・ブギーポップは笑わない・涼宮ハルヒの憂鬱・とらドラ!・灼眼のシャナ・キノの旅・扉の外・断章のグリム・人類は衰退しました・ミミズクと夜の王・とある魔術の禁書目録・僕の妹は漢字が読める・僕は友達が少ない・俺の妹がこんなに可愛いわけがない、くらいじゃ」
「良かった! じゃあおじいちゃんでもライトノベルは語れるんだね!」
「いやいや、昔はライトノベルを語るにはこのくらい読んでおけば十分だったんじゃが、今ではそれでも駄目なんじゃ。ラノベ警察に捕まるか、ラノベ天狗に仕留められるのが相場じゃのう……」
「ふぅん、つまんないの」
少女は岸に転がっていたバケツを蹴っ飛ばした。今日も一匹たりとも釣れはしなかった。
少女は湖の底へ向かって大声で叫ぶ。
「雑なラノベ語りだと他者のブログを批判する暇があるんだったら、自分の好きなライトノベルの一冊でも全力でおすすめしやがれ! バーカバーカ! あっかんべーだ!」
「ああ!! いかん!!」
老人は咄嗟に立ち上がった。だがすべては手遅れだった。
燃えさかる一匹の鳥が、孫娘の足を掴み、湖の底へと引きずり込む。
河川敷を走る一台の三輪車。前には5歳と7歳の男児。そして、少し女の人が一人。日傘をもって歩いてる。
走るといっても、母親の歩く速度とそう対して変わらない。
二人の兄が、ときおり、かわりばんこで、三輪車を押して走る。そのときは、きゃっきゃと笑って、自分が及ばない速度を体感して喜んでいる。
秋晴れの雲ひとつない透き通った空が、4人を見下ろしている。
優しい風が、いつまでもこの時間が続きますようにと、祈りを捧げて通り抜けていく。
川面は絶え間なく秋の日差しを反射し、きらきらと輝いている。あぁ、ずっとこの時間が続けば良いのに。
「お母さん、もういくの?」幼く、高く透き通った声が母を求める。
午後2時の陽気は、永遠の幸せを一瞬に詰めて降り注いだような、暖かなものでした。
深まる夜のにおい。僕はこのにおいが好きだ。
好きだって言うと語弊があるかも知れない。でもずっとかいでいられるってことは、きっと好きなんだろう。
いつだってそばに居て、手を伸ばせば、いや、手を伸ばさずとも、いつも忍び寄ってくる。
殊に、誰もいない夜道を歩いてるときなんかは。僕は時々、こうしてあてもなくふらつく。
そして夜の臭いを手のうちに握って持ち帰る。この孤独の感覚を握りしめていないと、気が狂いそうになる。
ジャケットのボタンをひとつ留める。首回りのガードを固める。夜が入ってこないように僕はフードも深く被る。
入ってきたら一巻の終わりだ。夜は手に握りしめていなければだめだ。
砂利が踏まれる。
今日はどこへ行こうか。
確かに、川本くんはそうではなかった。小学校の頃の彼は、優しくて、人を笑わせるのが好きで、まぁ、お調子者であったり。
ところが、中学に入ってから人が変わっちゃったんだな。人が変わるって言い方も変だけど。でも川本くんは変だったからしょうがない。
僕の知ってる川本くんは、なんだろう、怯えていた。
もっと違う言葉で表現しようとしたんだけど、僕はそのことを知ってるからそうとしか言えないな。
何も知らない頃だったらもっと違う言い方をしたと思う。例えば、「怖かった」とか。
そう、川本くんは怖かった。それが、僕がその頃、周りの人から聞いた川本くんの感想だった。
「てめぇ、何してんだよ!」
「…ごめん」
昨日までの親友はもういなかった。「子供にはあること」かもしれない。
けれど小さな心には、混乱をもたらすばかりであった。
川本くんが遠くから来てたってことは割と有名だったし、遠くに行ったってことももう一方では有名だった。
ごめん、今日はこれ以上は書けない。川本くんが探し出されてしまうようなことについては僕にきかないでほしいし、誰にもきかないでほしい。
とにかく、川本くんが中学にあがるころには、川本くんはほとんど一人で、両親とはもうほとんど会えない状況になってたってこと。
それだけわかってもらえれば良い。
川本くんが殴った理由なんだけど、だいたいもうわかったろ。またもっと具体的に書くかも知れないけど、
だいたいこんなところなんだ。川本くんは優しかった、優しかったけど、馬鹿だったんだよ。
僕は今これ以上具体的なことを書くつもりはない。
体が冷え切る前に、行かないと。
7月、8月はまだいい。
しかし、9月からこっちは少し涼しくなったせいで出勤時に空調が入っていないことが多い。
それなりに強い日差しの中、駅から20分近く歩いて出勤しているため、到着時には汗だくだ。
到着後10分から20分くらいまではうちわであおぎつつ作業しているが、効率は悪い。
到着時だけじゃなく、空調がつく直前くらいはやっぱり暑くてうちわであおいだりしているから作業効率は悪化している。
先々週くらいからようやくかなり涼しくなってきてましになった。
経営者は節電で電気代何%カットできたかは数字に表れるので喜んで採用するんだろうが、現場での効率の悪化は直接数字に表れないから興味ないんだろうな。
あっちーんだよ!こっちは!
この節電の風潮ほんと嫌い。だれかなんとかしてくれ……
細かく気がつく、情に厚い、ほんとにいい人だとは思ってる。
遊びに行くたび、メンバー全員におすすめの美味しいお菓子を買ってきてくれる。
お値段はわからないけど、500円以下ってことはないだろうから
累計するとかなりの額だと思う。
毎回気を使わなくていいと言っているけど買いたいからといってやめない。
昔、神社でハトに餌あげようとしてヒッチコック状態になったから
それ以来、道端や駅にハトがいるたび「大丈夫?」と私の腕を引いて間に入って守ってくれようとする。
別に見ただけで逃げるほど嫌いなわけではないと伝えたんだがやめない。
よく気がつくし、気がついたことはすぐに注意してくれる。
服にホコリがついていたら払ってくれるしバッグの紐が捻れていたら直してくれる。
ご飯を食べていてそろそろ出ようかという時、
携帯を机においたまま財布を出したりバッグを整理したりしていると、
「携帯忘れないでね」と声をかけてくれる。
忘れてて放置してるわけじゃなく、バッグの整理途中だからおいてるだけなんだが。
電車がホームに入るたびに「そっち扉開くよ、気をつけて」と声をかけてくれる。
見りゃわかるし、今私は他の人と話してたのにそれへの返事で会話が中断したんだが。
スーパーに買い物に寄れば「これ使って!」とビニール袋を渡してくる。
「今日は日差し強いねえ」となんの気無しに言えば、「手に持ってるバインダーで日陰作りなよ」と言ってくる。
教えてもらわなくてもやりたきゃやってる。
いい人なのだ。用意が良くてよく気がつくのだ。100パー善意だとは思うのだ。
エコバッグがなくて困ってる時に助けてもらえたらどんなに感謝するか。
ホントは密かに知っている。
ああいうふうに過剰に周りに世話を焼き始めるのは、
すこし鬱を患っているあの人が、テンションが高くて楽しい時だ。
多分神経が高ぶって空回りしているのだ。
鬱が治るといいなとは思っている。でも毎回遊ぶたびに少しずつ嫌な思いをする。
柔らかめに言ったことがある。
「ほら、宿題やろうとした時に『宿題やったの?』って言われたみたいな気分になっちゃうからさあ笑。」
一向に治る気配はない。
最近職場の同僚や友人に「どんな化粧品使ってんの」「スキンケアどうしてるの」と聞かれまくるのでここにまとめる。
【総論】
肌質も肌荒れの仕方もひとりひとり違う。乾燥肌の人もいればニキビ常連の人もいる。
夕方になると顔色がくすむ人もいれば、月経周期に合わせて肌の状態がかなり変わる人もいる。
(2)金はかけなくとも手間はかける
デパートのコスメ売場でしか買えないような高級化粧品はいらない。
高い英会話教室に週1で通うよりは、毎日30分机に向かうほうが英語力上がるのと同じ。
(3)プロの手を借りよう
皮膚科でしかもらえない保湿剤があるし、体質改善のために漢方を処方してもらえるかもしれない。
【私の場合】
(1)手で触るとべたつく肌質。鼻の毛穴は開きやすくて、すぐニュルニュルが出る。
生理前になるとニキビが乱発していたけれど、皮膚科行って治した。
(2)朝は牛乳石鹸で洗顔→MARKS&WEBの化粧水とジェル→目元だけニベア塗って終わり。
IKK○さんが「首までが顔」と言ってたので、化粧水もジェルも首まで伸ばす。
化粧水はアルコールフリーであれば何でもよくて、香りとジェルの感触の良さでM&Wを選んだ。
夜は無印良品のクリームクレンジング→お風呂で手ぬぐい使ってダブル洗顔。
時間があるときは、ユースキンパックもしくはピーリングジェル使う(どちらも週1ずつくらい)。
お風呂あがりは朝と同じく化粧水とジェルとニベア。その後ホホバオイルを1滴うすーく伸ばす。
肌の状態に直結してるかは分からないけど、お酒は飲まないしタバコも吸わない。
毎日野菜スープやサラダを食べて、はと麦茶飲んでる。甘いものは好き。
(3)生理前のニキビがひどかったので、皮膚科行っていろいろ相談した。
頂いた漢方薬(加味逍遥散)を3ヶ月飲んだら生理前のニキビがきれいにおさまった。
漢方薬は人によって効く・効かないがあるから、漢方に詳しい医者に相談するといいと思う。
もし肌のくすみに効くものをご存知でしたら教えて下さい。
やっと晴れた休日のこと、爽やかな秋風の中でやわらかな日差しに包まれながらベンチに横たわっていた時のことだ。
さほど人通りもない中、近くで人の気配がしたからふと目を開けてみたんだ。
すると、少し離れたところで浅黒い色の中東系の外国人と思わしき青年がストレッチをしていた。
この辺りで外国人を見かけるのも珍しいなと思ってまた目を閉じた次の瞬間。
突然空気を切り裂くように「パォーン!」って音が響いたんだ。
「パォーン!」というのは象が鳴くような音ではなくて、トランペットを目一杯強く吹いたような濁りのない音だ。
目を開けてみてもそこには先程の青年だけ。当然トランペットやチューバなどの管楽器は持っていない。
何事かと当りを見回していた次の瞬間、青年が少し腰を落とすようにして軽くふんっ!と力んだかと思うともう一度「パォーン!」という大音量が響いたんだ。
信じられるか?今の音、屁だぜ?
こんな話他に誰にできる?
知ってた?洗練された屁って「ぶ!」じゃなくて「パォーン!」なんだぜ。とか無理。
それくらい本当にすごかった。人間ってこれほどまでにすごい出来事に出会うと素直に感動するんだ。
今でもしっかり耳にこびりついて離れない「パォーン!」。誰か助けて。
ボクと妻、6歳になる息子、そしてカブトムシ
三人が三人と一匹になったのはまだ日差しがそれほど強くない頃だった
居間でテレビを見ていると、息子がさっと立ち上がり一瞬視界を遮って妻のほうに駆けていく
「カブトムシ見に行ってくる」律儀な報告をすませると今度は玄関の方へ早足で向かう
こっそりと音の去った方向を覗き見る
そこにはキラキラと目を輝かせてやまない、カブトムシに恋をしてしまった少年の姿を見つけた
その楽しげな息子の姿を見ていると、ふと昔の自分を思い出す
ボクもカブトムシを飼っていた
小学校に入る前のことだったと思う
20年以上も昔のことだ、ボクはまだ幼く、その頃の全てを憶えてはいないのだろうが
大きなカブトムシと、笑みをたたえる幼いボク
両親を亡くしたボクは祖父に育てられた
祖父は決して自分のことを父と呼ばせることはなかったが、ボクにとって祖父は父であったし、祖父にとってもそうであったと思う
小学校へ入る頃にはとうに60を超えていたはずだが、幼い頃、その記憶の中に出てくる祖父の姿はとても力強く
駆けまわるボクをひょいと捕まえ上げ、肩に乗せ豪快に笑う祖父のその様に、老いを感じたことはなかった
家族について話をする時、決まって寂しかっただろうと言われるが
ボクも決まって、祖父の息子であることに寂しさなんてなかったよと答える
カブトムシを買ってくれたのは祖父だった
大きなカゴに飼育キット、生き物を飼うというのも初めてだった
家へやって来た当初、カブトムシはまだ土の中で眠っていた
大きなカゴは通路の半分を塞いでしまい、妻の機嫌を損ねないか心配もしたが
そんな心配り自体が失礼に思えるほど妻はまだ主の見えない虫カゴを歓迎してくれた
結婚してくださいと、緊張と共にその言葉を妻に送ったあの日のことを思い出す
ボク達の結婚は早かった
家庭と子供、それによって一人前になれるというのは古い価値観かもしれない
でもボクは、なによりもはやく一人前になりたかった
祖父の息子として恥ずかしくない、これからは祖父を支えていける一人の大人になりたかった、それを成し遂げたかった
そしてボク達の子を、妻とボクの子を祖父にはやく見て欲しかった
土の中で眠っているカブトムシ
つぶの大きな土と年輪の浅い丸木、何も動くもののない空間を眺めては
うれしそうに「まだかなまだかな」と呟く
カブトムシが地中から顔を出したのは、しばらくしてからの事だった
息子が盛大に騒ぐ姿を見て1週間
祖父がなくなった
年齢を考えればいつでもおかしくはない、もう何年も前から心の準備はできていた
急なことではあったけれど、元気な姿のままいってしまったのは祖父らしいとも思えた
お別れらしいお別れを出来なかったことが、それらしいことを何も言えなかったことが、それだけが少し残念であった
だからだろうか、式を終えた次の日、祖父の夢を見た
夢の中でボクは、良かった……と、元気な祖父の姿を見て、ただそう思った
最期に話をしたのは祖父が家へ遊びに来てくれた日だった
亡くなる三日前、カブトムシの話で興奮する息子と意気投合した祖父
息子共々とても楽しげな様子だったのを憶えている
ボクは息子に自分を重ねながら、幼かった頃を思い出していた
祖父は息子に泣いてはいけないと教えた
その日が来たら静かに見送ってあげよう、と
地上に顔をのぞかせて30日が経った頃、「大丈夫?」「大丈夫だよね?」と息子がよく聞くようになった
「うーん」と答えに窮する妻、彼女も祖父のこと以来、元気をなくしているように思えた
息子が棒でツンツンとカブトムシをつついている
つつかれたカブトムシの反応を観察している様子だった
妻はやめてあげようね、とやさしく諭すと同時に
元気でいて欲しいならそっとしておいてあげればいいのにと不思議そうに言った
ボクには息子の気持ちがよく分かる
ボクも同じことをしていた
幼いころのボクと幼いボクの息子がまた重なる
元気でいて欲しい
ずっとずっと元気でいてくれると、そう強く信じたい
その気持ちを口にすることが出来ず、言葉とは別の方法で確かめてしまう
日が経つに連れ息子の心配は大きくなっていくようだった
妻はなんとか説得を試みていたが、なかなか頑固な様子だ
結局ボクも息子と一緒にカブトムシの隣に枕を置かしてもらうこととなり
夜中ぶんぶんと羽音をたてるカブトムシのおかげか少し遅起きとなった息子は
朝、起きがけのままに、出かけるボクのことを見送ってくれるようになった
祖父も同じだった
手を振ってボクを見送ってくれた
いつも、ボクが中学を卒業しても、高校を卒業しても、成人してもそれは変わらなかった
そして祖父がボクに手を振ってくれる時、決まってボクも祖父に手を振り返した
最期に話を、元気な姿をみたあの日も同じ
「じーちゃん、さよなら」息子の声に祖父は手を振って答えてくれた
大きく、またなと手を振って息子を見送ってくれた
一週間後、その夏一番の暑さが日本列島を襲い
妻が息子の体調を心配し始めた頃
カブトムシが死んだ
「カブトムシ、死んじゃった」そう、妻から連絡がありボクは急ぎ家に帰った
扉を開けると、エアコンの効いた冷たい空気、そして静けさがボクを出迎えた
玄関の扉をゆっくりと閉め、靴を整えていると妻がそっとやってきて、息子は寝てしまったと教えてくれた
そう……か、としばらく玄関で立ち尽くしていた
数十秒か、数分か、少し経った頃
妻だった
「カブトムシ可愛がってたから……」と言うと遠慮がちに、昨日も昆虫ゼリー沢山買ってきていたでしょう、と続けた
「だから……落ち込んでないかな、と思って」
そうか……もういらなかったのか、ボクは家の中、昆虫ゼリーのある方へ目をやった
「最近、口数も少なくて元気もないし……」
「カブトムシと一緒に寝たり、すごい可愛がってて、心配だったけど……」
静かに、それでいてハッキリとボクに向けて言葉を発する妻
ボクは何もいうことが出来なかった
声がする
「お母さん、お父さん……」
目をやると、息子が立っていた
たった今起きてきたのだろう、いかにも眠たげな表情でこちらを見ている
妻が息子の傍へ行き、眉に垂れる前髪をそっと脇に分けていると、「夢を見た」と一言、息子がいった
前髪をやさしく整えながら「どんな夢?」と妻は聞いた
「カブトムシが死んじゃう夢」
妻が手を止める、表情は見えなかった
冗談を言うような子ではない
どう、何を言えばいいのか……
ボクと同様、妻も何と言えば良いのか分からない様子で、ただ息子の頭を撫でていた
カブトムシ……
そう、カブトムシだった
6歳だった、そうだ息子と同じ
祖父が優しくボクを迎えてくれた
いつも優しかった祖父が……
変わらず元気だった祖父が……
たった一人の祖父……
ボクは震えた声で「カブトムシ死んじゃったんだよ」と言った
息子は少し驚いた素振りを見せ
そして小さく「そっか……」とだけつぶやいた
何秒かの時間を置いて
妻の足をぎゅっと掴むと、息子は大きな声を上げて泣いた
息子を優しく撫でながら、妻は言った
「我慢してたもんね」
「寂しいね」
その声は微かに震えて聞こえる、妻は続けた
「ずっとずっと元気で、ずっとずっと一緒にいられたら良かったのにね」
「大好き……だったもんね」
傍らでボクは
頭に思い浮かんだ言葉、そのどれもを口にすることは出来ず
ただ妻の言葉を聞いていた
ボクが幼い頃、カブトムシを買ってもらった事があった
大きなカゴに飼育キット、生き物を飼うというのも初めてだった
決して泣かないと、そう約束したけれど幼いボクはカブトムシが死んでしまった時、泣いてしまった
あの時とは逆の立場になった今、なぜかやっぱり泣いてしまっている
あの日、二人きりだった家族は、三人に増えた
隣を見ると不思議なことに妻も、それも信じられないほど大粒の涙を流しながらわんわんと泣いていた
大きなカブトムシと大きな虫カゴそして大きな家、ボクの居場所、祖父がボクに最初に与えてくれたもの
祖父とボクは今同じ場所に立っている、そして、幼かった頃のボクと幼いボクの息子も
カゴもその日の内に洗って乾かしてしまい、ほんのちょっと広くなった我が家には少し多めの昆虫ゼリーだけが残った
ゴミの日に捨てなくちゃいけないな、とか
そういえば昆虫ゼリーって口に入れても大丈夫って聞いたけどホントかな、だとか
そんなことを考えながら帰宅すると
「ほら、カブトムシ、好きでしょ?」
顔を赤くしながら妻は言った
まだまだ暑い日が続く
浮世絵しかわからないので、浮世絵がいかに衝撃的だったか、どう世界を変えたか、ちょっとだけ。
ところで、少し脇道から入っていくが、まずこの写真をみて欲しい。
http://img.allabout.co.jp/gm/article/20016/image2.jpg
俺はすっかり大人になっていて、南国にはこういう景色、すなわち澄んだ空と海、強い日差しがあることを知っているけれど、もしもこれを予備知識なくみたならば
「なんて美しい場所だ!本当にこの世なのか?」
と思うと思う。
これをみて、「海と小屋が映ってるだけだろ。なにが綺麗なのかわからん。」
という人はそれでけっこう。わかりあえないので、この先は読まないでいい。
これを西洋人が初めて目にした時の衝撃は、たぶんそれに似てる。
「なんと澄み切った空!見たこともないブルー!ただ青が広がるだけの空がこんなにも美しいのか!影が映らないほどの明るさ!」
「澄み切った水!そして水面がキラキラと光ってる!」
しばらく、その美しさにトリップしたあとに、正気に戻ってみてこの美しさはどこから来るのかと絵を探るといろいろと気付くのだ。
「見たこともない構図だぞ!風景を上から見下ろして描くなんて!!」
「紙が布のようだぞ!紙そのものが上等なシルクのような輝きを放ってる!」
「波打つ水面は、ただ紙に描かれているのではなくて、エンボスになっているぞ!」
「遠い異国の景色であるのに、聖書の物語の一節でも歴史の一部でもないのに、馬を引く人や船を漕ぐ人のドラマが頭のなかで再生されるぞ!」
「表面にインクは残っていない!触ってもインクが手に付かない!光に透かせば光を通し、光に当てれば輝く反射!ありえない!ありえない!ありえない!」
「日本という国では、カラー印刷が一般的なのかッ!!!包み紙に使うほどにッ!!!貴族でも大商人でもない一般庶民が、絵を楽しむというのかッ!!」
「こんなにも簡素な表現で、こんなにも訴えかけることができるのかッ!!!いや、極限までエッセンスを削ぎ落としたからこそ心のドアをノックするのだッ!!!」
「絵とは魔法だ!丸に点を二つ描くだけで、顔に見える!そこに手足を描くだけで動いて見える!我々は見えるものを見えるままにキャンバスに閉じ込める術を手に入れた。しかしどうだ?心をノックするために、見えるものを見えるままにキャンバスに閉じ込める必要などあったのか!?
日本人は、我々が陰影、凹凸、光源の方向、そんなことに執着して、方向を間違えている間に、一瞬の煌きや感動を絵に閉じ込める術を手に入れていたッ!!!」
例えば、もしも浮世絵がなかったら、テレビドラマや映画は登場人物の会話を真横から映し続ける退屈なものだったろう。
それまでの舞台を描いた絵も、物語を描いた絵も、常に真横からの構図だ。
仰視、俯瞰、物陰から、登場人物の一人称視点、あらゆるカットで切り取っていくのは、浮世絵のアイディアだ。
葛飾北斎が「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で、日本人として唯一86位にランクインしたのは、そういう理由だ。
1人200万はウチでは数年に1度しか出せん。俺も嫁もまだまだ修行が足りんわ。
例えばダイビングやったんだが、赤道に近いから日差しが強くてな。人生初、膝の裏が日焼けで皮がむけた。
オットセイが見れるって話だったんだが、あいつら早すぎて水中で見るのは無理。影しか見えん。陸地ではトロい。
写真で色々見て行ったが、ありゃ写真家の腕と奇跡の瞬間のコラボであって、実物は大分違うな。
日本に居ると感じれない事ばかりだからな。異文化交流は楽しいぞ。
年末はイエローナイフに行くよ。子供がオーロラの写真見て行きたいって言うからな。
貧乏はな、やりたい事を思いつけないんだよ。
世の中には楽しい事いっぱい有るし、見たこと無い物も山ほど有る。
それらに関心が無くなるのが貧乏だ。学生時代の友達の過半数はその罠に落ちて見る影も無い。
カネの為に心を売るのは御免こうむるが、貧乏は心を削り取る。
稼いで楽しく生きる為に競争もするし、自分で落ちていくヤツは歓迎だ。
それだけの話だよ。
不動産屋にアパートの契約に向かう。何回の電車を乗り継がなければならない。さようなら六本木、新宿、池袋、楽しかったよ
長い電車の旅、音楽でも聞こうかとイヤホンをカバンから無理やり引っ張り出したら断線した
今日持って来るものはテーブルに置いたのだが、いつも財布とか鍵を置く場所と同じにすればよかった
電車を降りたらめまいがした。暑かったとニュースで言ってるが、それは感じなかった。ただ日差しが刺さるようだった
持っているはずの封筒が無い
乗継駅で新着エントリーをニヤつきながら読んでいて、入ってきた特急に乗り込んだ時、ベンチに置き忘れたのだろうか
会社に提出する書類と、車庫証明の申請書が入っている。まあ、こんな書類はまた取り寄せればいい
しかしメモ帳代わりに使っているノートが入っている。仕事で気づいたこととか走り書きしてある
社会人になって他人に黒歴史を見られることになるとは思わなかった
早々と物件を決めた。この時期、地方にはこちらから選択できるほど物件数がない。せめて最上階の角部屋が取れたくらいだ
不動産屋の車で駅に送ってもらって、軽い便意が何回とも波のように来ていたので、早目にトイレに
漏らしたのだろうか、それともパンツを下げる前にゴーかけちゃったのだろうか
ああ、私も老いたのだろうか。今まで漏らしたのはお腹が痛い時だけだ、緊急事態にトイレが間に合わなかった時だけだ
しかし私は負けない
たまたま入ったのが多目的トイレ。広さは4畳半くらい。ついさっきアパート見てきたから広さは把握できる。ベッドが置けるね
今日に限って白のチノパン。しかしそこは広い多目的トイレ、脱ぐにはスペースは十分ある
そしてこの時期持ち歩いているのが、汗ふきシート
ケッツビーなる人が世間をさわがせたようだが、PBの汗ふきシートはそんなに刺激が無い。拭いた後、ちょっとサラッとさせるために粉っぽい
粉っぽさはパンツをキレイにするのと、アスをキレイにするには関係ないスペックだ
そして手を洗い何事もなかったように列車に乗る。線路の上のかげろうがゆらぐ
※追記
最上階の角部屋の退去は今月末だって。という訳で2階のどうでもいい部屋になりました。本当についていない
※追追記
ノートが入った封筒が駅で見つかった。最寄りの駅まで届けてくれるという。ありがとう東武。これで黒歴史帳が行方不明でモヤモヤすることは無くなった