はてなキーワード: ぶっきらぼうとは
誰にも明かしたことはないけれど、恋多き人生を送ってきた。10代の頃はそれはそれは惚れっぽく、けれどお付き合いの具体的なイメージが沸かないから、すべての恋を胸に埋めて大人になった。大人になると途端に恋は人間関係と結びつき、恋人になるなり、失恋するなり、別れたり復縁したりと暮らしに影響を及ぼすようになった。
けれど、ただ胸の中にアルバムをこしらえて、目が奪われ体に火がついたような一瞬を大切にスクラップし、眠れない夜や開放的な歌を耳にするとついページをめくるような、眩しく淡い恋はあの頃で終わっている。そして夏が私にそれを思い出させる。
入学したときはぽっちゃりした坊ちゃんみたいだった佐野くん。実はピアノが上手くてプログラミングにも長けていて、卒業する頃には背まで伸びて花より男子に出てきそうだったのに、おっとりと優しく人を立てる性格がずっと変わらなかった。
クラス替えの自己紹介で将来の夢を聞かれて、低い声でぶっきらぼうに「DJ」って答えた佐伯くん。全く意味がわからなくて、大人っぽすぎてドキドキした。家に帰って辞書で調べて、ラジオのディスクジョッキーのことと理解して、その夜はラジオから佐伯くんの声が流れ出るのを想像した。
ずっと一匹狼だった小山くん。いじめスレスレのいじりが起こるとすっと話題を変えていた。先生含め全方位につれない対応だったのに、裏表のない態度が一目置かれる存在だった。同じ小学校から進学してきたユカちゃんと話すときの笑顔だけが特別だった。
ロッカーが隣で、ふっと中を覗かせてもらったら、ぴしっと教科書が整列していた坂上くん。ゲラゲラ笑う大胆な人なのに几帳面なんだ!と驚いて、自分のロッカーを見られないようにあわてて閉めたら目があってニヤッとされた。扉の裏にコピーした時間割がまっすぐ留めてあった。
くるくる天然パーマがキュートだった加藤くん。ずっと冴ちゃんに片思いしていて、冴ちゃんが誰と付き合ってても視線の熱が変わらなかった。一度男女混ぜこぜで鎌倉の花火大会に行ったとき、一番はしゃいで盛り上げてくれたことを思い出す。あのとき冴ちゃんが彼氏の呼び出しで早く帰ってしまい、それでも続く明るいトークには抱きしめたくなるほど痺れた。
その花火大会の日に家に寄せてくれた吉住くん。浮いた噂一つない柔和なカタブツで、誰にも平等に接するフェアなところを尊敬してた。ご両親とのやりとりも穏やかでユーモラスで、その後何度もみんなで家に通わせてもらった。高校で柔道部に入ってあれよあれよと体が分厚くなり、人懐っこい熊のようだった。
眉毛を一生懸命整えていた竹内くん。今思えばきっとノンバイナリーな人だった。男子グループに上手く馴染めていなかったけど、料理部に入って人は人自分は自分って感じに対処していた。ミステリアスで目が奪われた。
バスケ部の永田くん。学校ではまるで話したことなんてなかったけど、偶然電車で会ったとき、家のことや好きな本の話など、横浜〜藤沢まで楽しくおしゃべりできた。クラスメイトの陰口など一切言わなかった。鞄の角がすり切れていて、でも持ち手はきれいにしてあって、ものを大切に使うんだなと感心した。
テニス部の藤本くん。華やかな容姿で人目を引いたのに、結局誰とも付き合わず、いつも友達とふざけているか本を読んでいた。一度バスの中で何を読んでいるか聞いたら水滸伝だった。読書するとお小遣いもらえるんだよねと言っていたけど、きっと本当に本が好きだったんだな。
藤本くんの親友で、ある日突然私に現国を教えてと持ちかけて水木くん。勉強なんてしてこなかったけれど、医学部に行くって決めたからと言っていた。弟の病気を直せる医者になりたいってそんな漫画みたいな‥と思ったけど、全力で学ぼうとする姿勢にはむしろ教わることばかりだった。卒業生総代になって、答辞の添削を任せてもらえたときは胸が詰まった。
サッカー部で副キャプテンをしていたのに、引退試合の直前で怪我をしてしまい、試合には出れずコート外から大声で指示を出していた榎木くん。試合終了が近づくともう何も声を出すことなく、ただ制服の白シャツがはためいていた。
回転ドアの向こうに、自転車の後ろ姿に、夏の朝夕、暑さが残る淡く眩しい光のなかに男子学生を見かけると思い出す。みんな素敵だった。私恋ばかりしていたけど、それは当たり前だった。
年貢の納め時がきた。次の年だ。
人生で初めて確定申告をした。凄まじい税額に衝撃を受けた。あれだけ必死で描いて稼いだというのに、国が四割近くも持っていくのはおかしいのではないか。お上の取り分が多すぎる。ずるい。
クリムゾン先生みたいに法人化すればいいのかもしれない――と、税務署まで確定申告の用紙を出しに行った帰りに考えていた。
二週間ほど経った頃だった。父から台所で声をかけられた。「確定申告したのか?」という、いたくシンプルな問いだった。なんで知ってるんだと思った。カチコチに固まってしまって、しどろもどろに声を出そうとしていたところ、父から助け舟が出た。
「税理士から電話があった。うちの確定申告の用紙を税務署に提出したところ、息子さんも確定申告をしているようだと。一世帯でひとつの申告になるから、お前のをこっちにくれ。やっておく」
という事情だった。
そうか、そうだったんだな。一世帯でひとつなんだな(追記:扶養家族が一定以上のお金を稼いだ場合はこうなるそうです)。父さんはずっと前から工場主で農場主だからな、と頭を真っ白にして……二階に昇って、申告用紙をもう一度プリンタで印刷して、父のところに持って行った。「はい、どうぞ」みたいなノリで手渡した。
それで風呂に入ろうとしたところ、「ちょっと待て、この金額は?」と当然の質問が飛んできた。嘘をつこうとしたが、やめておいた。
「漫画を描いてる。売って稼いだ」
それだけ言って風呂場に行った。父の、眉間にシワを寄せた顔が記憶に残っている。
「頼む、これで済んでくれ」と祈りながら風呂に入って、湯冷ましの散歩に行って、また二階に上がってペンタブをちょっとの間だけ握って、マットレスで寝た。
翌日だった。家族会議が開かれたのは。父が、母と妹の前で確定申告の用紙を出して、厳しい問いかけを続けた。
「なぜこんなにお金を?」
「どんなものを描いてる」
「どうして言わなかった」
おおよそこんな内容だったと思うが、正直に答えていった。将来が怖かったこと、何をやっているか恥ずかしいから言わなかったこと、でも漫画を描くのが好きなこと。
父は、手元にあった湯飲みを手に取った。グイっと飲み干した後、急に笑顔になって言うのだった。
「一人立ちできたんだな。おめでとう。どんな漫画を作ってるんだ、見せてくれ。父さんな。若い頃に読んだ三浦先生のベルセルクが好きなんだ」
自分の作品の主人公は、ある意味ベルセルクだ。性的な意味ではガッツもある。男らしさはあまりない。催眠アプリを使って、同じクラスのいたいけで可憐な女の子をセックス漬けにしたりする。
母も期待のまなざしを向けている。滅多に見せない、期待感で高揚している時のあのまなざし。気持ちが悪い。
さて。自分は電子書籍でコンテンツを売っていたのだが、たった1冊だけあった。紙の本が。以前、人生で一度くらいは紙の本を出してみたいなぁと考えていた。それで出版社の依頼を受けて、紙書籍で出させてもらった本があった。
それ(女戦士レイプ凌辱もの)を二階から持って降りて、あとは一番最初にDLsiteで出した電子書籍(妹ものライト強姦アンソロジー)を記念碑的に印刷しておいたものを、一緒に台所に持って行った。
「これ、俺が描いた作品!」
台所のテーブルの上に置いた瞬間、母と妹がのけ反った。明らかにビクッとなっていた。
そこに置かれた1冊(女戦士レイプ凌辱もの)を手に取った父は、まじまじと表紙を眺めていた。やがて、椅子から立ち上がると、クリップ留めの一綴り(妹ものライト強姦アンソロジー)を何枚か手に取って、また眺めた。首を微かに振っていたかもしれない。
沈黙があった。自分は瞬きをしていた。くしゃ、という音がした。クリップ留めの一綴り(妹もの~)にみしみしと皺が入った音だった。
「馬鹿野郎!!」
父の手元にあったはずの湯飲みが額にぶつかって、「やろう」まで聞こえなかった。痛みで聴覚が鈍ったあの感じ。二度と体験したくない。
あまりの痛みに膝を崩して、床に崩れ落ちたところで、父の蹴りが飛んできた。また頭に衝撃が走って、それから床の上から何十回も肉体を踏みつけられた。
母も妹も止める様子はなかった。ただずっと、父から暴力を受けていた。痛かった。苦しかった。呼吸ができなかった。息を吸うためのエネルギーを体が回復力に転化しているのだな、と感じた。
なんで、どうして自分はあんなものを家族に見せたのだろうか。認めてもらえるとでも思ったのだろうか。自分は愚かだ。父がぶっきらぼうに台所を出て、工場の方に向かうと、自分は立ち上がって妹の方を見た。母親の泣く声が聞こえたが、見ないことにする。
妹は、放心した様子でクリップが外れた一綴り(妹ものライト強姦アンソロジー)をじっと眺めていた。微動だにしていない。人は、本当に驚くとこうなってしまうらしい。
その場を離れて洗面台に行って自分の顔を見ると、額がパックリと割れて血が出ていた。後ろを向くと、床に血が滴り落ちている。
「馬鹿だなー、お前。アホが。ゴミかクズのどちらかだな。死ね」
タオルで傷を覆って、自分に対する悪口を連ねた。気分は暗かった。鼻水と涙が出てきて、そのまま二階に上がって、傷は痛いままだったけど、マットレスで寝た。
翌日は全くの無言だった。父とも母とも妹とも会話をしなかった。以後もほとんど話さなかった。
自分は、稼いだお金ですぐに引っ越しをした。引っ越しをしたことはなかったけど、インターネットとか、出版社の人に電話で相談したりしながら、どうにかやり遂げた。
自分が実家を出た日のことだ。あの時の二つの漫画を妹の部屋の前に置いていった。なぜかはわからないが、その方がいい気がした。
ワンルーム4.5万円の、都内にあるボロアパートに引っ越した。以後数年間、ひたすらに漫画を描いて、描いて、描きまくって、今ではこの界隈で一定の地位を築いている。
父とは最近、話ができるまでに関係が回復した。前よりも気持ちよく話ができる気がする。心が通じ合っているというか。
母親はまったくだめだ。何を言っても聞いてくれない。正月に実家に帰った時、「おせちできてる」「風呂が沸いた」くらいは言ってくれる。
妹には、今年の正月にようやく謝った。あの台所の四角い卓に座って、斜めの角度で一緒に食事をしている時だった。
「ごめんな。あんな作品を作ってて。本当にごめん」と謝罪をした後、妹からは、「もういいよ。兄ちゃん、お金持ちになれてよかったね。私もごめんね。ずっと辛く当たってた。本当にごめん」と返ってきた。
鼻をすすって、ちょっと涙目になっていた。肩をちょっと撫でてやると、涙が指に零れてきた。
実際、妹は許してくれたのだろうか。そこが気になっている。
あくまで想像なのだが、妹はショボい兄が許せなかったのではないか。不登校になって、社会的に低層にまで落っこちてしまって、それが許せなかったのではないか。その現実を受け入れるために、自分に対してひどい扱いをすることで一貫性を保っていたのではないか。
自分が実家を出た日、あの時二つの漫画を妹の部屋の前に置いていった理由、それは多分、妹に対する感謝の気持ちがあったからだ。
妹からはひどい仕打ちを受けた。通りすがりに悪口を言われたり、存在に耐えられない軽さの空気みたいに扱われたり、完全に下の存在として見下されたり。いろいろあった。
しかしだ。ムカつきはしたけど、ああいった体験がなかったとしたら自分は今の立場にはない。あの妹がいたから、あの作品が世に出ることになった。それで読者が喜んだ。
そうでなかったら、今でもフリーターとしてマックかどこかでアルバイトをして、ただ何となく若さを消費するだけの毎日を過ごしていた可能性が高い。父が、母が、特に妹が、自分という存在に手痛い一撃を加えてくれたから目覚めたのだ。
家族には感謝している。あの当時は畜生だと思ったけど、今では感謝の念が強い。最後になるけど、ありがとう。自分という存在をここまで高めてくれて。今の自分に暗い怨嗟の気持ちはない。午前八時の太陽のような、ほんのりと暖かい気持ちが込み上げている。
ブログやってみ!と言われたので書く。
初めてやこんなの。
わしは脳外の先生に対して勝手に『外部の人間と接するのが苦手すぎて電話対応がぶっきらぼうになり、怖い印象を持たれてしまうけど、実は身内のことが大好きで知り合いになると突然仲良くしてくれるだけでなくもはやデレさえする人たち』と思っている。これは紛れもなくわしの偏見。でもどうしてもせやろがいと思ってしまう。
脳外の中で一番外面がクールで内面がしょうもないギャグおにいさん(おじさん?)の話をします。
医者って思ったよりオペ中にしょうもない話するんよな。これはオペで緊張しすぎんように大事らしく、中には音楽を流しながらやってるところもあって、それのおかげで手が震えたりパニクッたりが減るから大事なことなんやけど。
中でもここにメモするわしが好きだった医者は、高身長でクールな見た目をしていて、静かで排他的なイメージのある人なんですが、仲良くなるとギャグを連発する人でした(以下『ギャ』と表記)。
研修医「この前スポンゼル切ってる時、クーパーでモリモリ切ってたらワイルドやなって言われました」
研修医がゲラですぐ笑うので、ギャは隙あらば古いギャグをねじ込んでいく。
ギャ「え?(デカボイス)」
後輩医師「なんでもないでーす」
研修医「ヒヒwwww」
脳を触るギャ「どこ見てんのヨ♡」
後輩医師「なんも言ってないでーす!」
研修医「えっへっへwwwwww」
非常に楽しそう。会話だけ聴くと全くオペ中やとは思えんようなソレやった。
研修医「もうすぐ入局科を決めなきゃならんのですけど、全く決められなくて。脳神経外科は興味めちゃくちゃあるんですけど。他に興味ある科があって、どっちも好きなんですよね」
後輩医師「まあできればうちに入ってほしいけど」
ギャ「先生肉好き?」
研修医「え?」
後輩医師「ん?」
研修医「え、肉好きです!え?」
ギャ「肉食べさせてあげる」
ギャは勧誘が下手やった。
また別の日、研修医は入局もしていない脳神経外科の医局に、症例に関する相談をしに遊びに行ってた。ちなみにこの時点で時刻は午後10時頃やった。そんな時間に遊びに来るな。
医師a「それはね……」
と比較的真面目な話をしてたら、どこからともなく(ちゃんと扉の方から)ギャが現れた。
ギャ「それはさあ。ほら……優し〜く治療しないと……ね、マ〜イルドに……さあ……」
医師a「なんすかそれ!」
研修医「ふwwwwwww」
おわり。
週末、数日連続で商品予約が入っていた。それは近所のけっこう大きな会社からの発注だ。オーナーは間違いのない様に商品の取り分けをするようにと私どもアルバイトに厳命した。木曜日のシフトで、金曜朝引き取りの予約が入っていたので、納品した通常商品から予約リストにあるものを指定数取り置きする作業を行った。間違いないよう何度も確認した。がんばった! 金曜朝のぶんは間違いなく済んだようだ。
ところが! 日曜日、オーナー本人がやらかした。朝、予約商品をお客様が取りにきて、オーナーが会計を担当したのだが、商品の個数を間違えてレジに登録、おにぎり数個ぶん余計に料金を請求してしまったのだ。数時間後、お客様がそれに気づいて電話で返金を要求してきたので、オーナーはお金を用意し、打ち直したレシートを添えて「返金、レシート交換」というメモと一緒に夕勤の私とAさんに託した。よもやよもやだ。私らは真面目にミスなくやったのに、結局オーナーのミスで下げなくていいはずだった頭を下げなくてはならない! ま、一番ミスしそうなのはオーナーだって、わかってたけどー。
予約のお客様は夕方に返金を受け取りに来るということだったが、なかなか来店せず、夜もだいぶ遅くなってから来店。Aさんが私よりも素早く事務所にお金を取りに行って対応したのだが、お金と新しいレシートを返せばいいだけのはずが、なぜだか揉め始めた。
そんな時に限って遅い時間にも関わらず次々と来客があり私のレジに行列が出来てしまう。Aさんの方で何が起きているのか見に行く暇がない。
客足がちょっと途絶えた所で、Aさんがこっちに来た。オーナーは「返金、レシート交換」というメモを添えてお金と打ち直したレシートを置いていったので、単にそれをそのままお客様に返し、本来下げなくていいはずだった頭を下げるだけで終了ということだったのに、それでは話が違うとお客様が怒り出したというのだ。レシートは、打ち直したものでは足りなくて、会計をしたその時のレシートもないとダメだから再発行しろとお客様が主張しているのだが、どうしたら良いのかとAさん。そんな時に限ってまたレジにお客様達が並び始めたので、
「それは無理です。一度発行したレシートの再発行はできない」
とぶっきらぼうな応答をせざるを得なかったのだが、Aさんは「やっぱそうですよねー」と言って戻って行った。本気でどう対応したら良いのか分からなかったのではなく、自分に非のない事が確認出来れば良かったらしい。
後でAさんから詳細を聞いた。お客様が言うには、朝にオーナーが会計でミスった時のレシートと、間違のないよう打ち直したレシートの両方を該社に提出しないと経費で落ちないとか。そんな事ってあるのだろうか。ちゃんと返金をしたのだから、わざわざ仕訳を複雑にしなくてもよくね? もしかして、お客様がお使い下手とかで、話がややこしくなっているのだろうか。と思ったが。
お客様は予約商品の料金を個人のクレジットカードで支払っていた。とすると、朝にオーナーがミスった時のレシートの打ち直しを、お客様がいない場でしたとことろで同じレシートは出来上がらない。ほとんど同じ品目の並んだ、現金払いのレシートが出来るだけだ。ていうか、そもそも一度発行したレシートを再発行はできないというのに、何でそれを要求されなきゃいけないのか。買った品目はほぼ同じだが、ある商品の個数が違っている。決済もかたやクレジット、かたや現金払い。打った時間も当然違う。こんな共通点が一部しかないレシートが、一体何の証明になると言うのだろう?
Aさんは、お客様がなかなか引かないので、用意されていた打ち直しのレシートと、レジに記憶されたジャーナル(販売履歴)をお客様に渡して「レシートの再発行は無理です申し訳ございません!」と頭を下げまくって帰ってもらったそうだ。
なんだかなー。こっちがミスったのをいいことに二枚目のレシートを用意させて、二枚とも経費で落とさせようとしたのではないかと疑わしく思ったのだが、実際どうなんだろう。
まさかこの令和になって一条ゆかりのプライドの最後の展開が批判されているテキストを増田で読めるとは。
俺もあの展開ねーよと思ったよ。
というわけで、俺が読んできた漫画でデウスエクスマキナで退場したキャラクターを挙げてみる。
なんかたくさんいる気でいたけどあんまりいなかった。でも忘れられん。
この手の展開ほんと嫌い。
一条ゆかりのプライドの萌はもう上がってるとして、次はブルージャイアントの雪折。
主人公の海外出立の邪魔になりそうだったので事故で物語から退場。マジ胸糞。
親父の買ってきたビッグコミックを毎号読んでいて、当時小学生女児だったが風の大地も読んでいた。
そこで登場したちょっとぶっきらぼうで、でも素敵なキャディのリリィ。マジ好きだった。
子供心に人気が出過ぎたから殺されたって思った。俺愛読者の投稿欄まで読む変態小学生女児だったからな。読者からの支持もあったって覚えてるよ。
本当に本当にこれ30年近く経った今でも忘れられない。
個人的な主観です。個別の作品や他人様の価値観に口を挟むものではないです。
サイゼで喜ぶ女の子、という概念が好きだ。絵も漫画も大いに楽しんでる、もっと見たい。炎上で減ってしまうとしたら悲しいから、ここに支持を表明したい。サイゼを、と書きだしてしっくり来ず、サイゼで、に直した。
女の子は、待ちに待った意中の相手との楽しい時間を過ごすために、相手好みの服を用意し、馴れないメイクに時間をかけて、胸を躍らせながら待ち合わせ場所へ足を運ぶ。
「おはよう!」
相手は見開いた目を慌てて反らしながら、ぶっきらぼうに服や髪型を誉めてくれる。その態度に胸をなで下ろす。まだ付き合って間もない間柄、ぎこちない会話を交わししつつ街中へ。さて何処へ入ろう、あのカフェはどうかな、と相手の顔色を覗くと緊張の面持ち。
「サイゼリアがいいな」
え?と訝しがる相手の腕を掴んで店内へ。
店内の騒々しさも手伝ってか慣れた環境に緊張は解け、会話が弾む。よかった、今日はたくさんお喋りできたね!貴方のこと、たくさん知れて嬉しいな。
キモい?まあキモいな!ごめんな!!でも好きなんだよ。大人になったばかりの、メンタルは少々まだ幼い、そんなカップルの初々しいデートは大好物だよ。
ここからは遙か昔の自分語りで恐縮だが。バッチリめかし込んで素敵な個室居酒屋を予約し二人で行ったものの、相手は下戸なのにノンアル飲料の種類に乏しく、料理も相手の好みから外れていた。優しい人だから文句ひとつ言われなかったけど、自分の我が侭に付き合わせちゃったな、と反省したことがある。それからは我々二人は専らファミレス派である。たまにチェーンの居酒屋も行くけれど。
勿論、デートのひとつもスマートにエスコートできない男は願い下げ、という生き方も悪くない。でも、人が人を好きになる要素は様々で、容姿やデートの振る舞いが優れなくても、魅力的な人はたくさん居て、結ばれるカップルも現実にたくさん居るから。誰に迷惑をかけてる訳でもない行為を、ましてや絵に描いた餅を、杓子定規に批判されるのは悲しかったな。
(注)
こち亀の本田はバイクに乗ると人格が変わるが二重人格なので適合しない。
ピッコロは神と融合して人格に影響を受けているが、神の人格がもうひとりの人格として表出しないので適合しない。
進藤ヒカルは藤原佐為と人格が交換されることがないので適合しない。
(議論あり)
遊戯と闇遊戯が存在を互いに自覚しあったのはモンスターワールド編。
決闘者の王国編以降、遊戯は闇遊戯のことを「もう一人のボク」、闇遊戯も遊戯のことを「相棒」と呼ぶようになる。
翔は「ミコシサマ」というお守りを手放している時に優が危機に陥ると現れる。
どのような過程で優の人格となったかは一切不明だが、ファンの間では優の死んでしまった方の双子の兄(弟)という説がささやかれている (これは才堂家の習わしについて女子の双子と表記されているだけなので、優自身が男女の双子で生まれていた可能性もある為) 。
優は学校で翔の人格が表れ、同級生への傷害事件を起こし転校を余儀なくされる。
おじの鷹野の家へ向かうため弁天町に着いたところからゲーム本編は始まる。
テンジンとみずきは愛し合っていたが、地獄を裏切った代償としてジュリによって殺害されテンジンの体の中に封印されてしまう。
それからはテンジンとみずきは二心一体となり、「マンダラの笛」によって人格は交換することができるが、片方が表に出ている間はもう片方が体内に封印されてしまうため、愛し合いながらも二人は永遠に会うことが叶わなくなった。
みんなが一人一日10回は行き来する事務所玄関に本が10冊ぐらい積まれていた。
夕方になってBくんが「あの本、1冊借りていってもいいか?」と言ったので一緒に見に行くと、いつの間にか10冊ともなくなっていた
だれかが別の場所に持って行ったのであろう
玄関に一番近いところに座っているAくんに
「玄関に本積んであったよね?あれ誰か持って行った?」と聞くと
「そんな本ありましたっけ?知らないですね。わかりません。」だと。
朝から夕方まで置いてあったのは間違いないので、Aくんも絶対に視界には入れてるはずなんだけど
その注意力の無さと、ぶっきらぼうに「知らない」「わからない」が返事として返ってきてしまうコミュニケーション能力の低さにがっかりきた。
これ好きすぎる、こんな曲あってええんか、マジか!ってなるやつ
ないすか?俺はある
Santiago MotorizadoさんのAmor en el cine これはマジでいい
日本語だと愛ってあんまり連発する概念じゃねえし、「映画館」って単語もそこそこ画数が多い漢字三文字だから、結構かたい感じになってしまうな
違うんですよ
愛、amorは、知らんけど、多分わりとカジュアルに表現できるものくさい
「この曲愛してる」みたいな表現をYouTubeのコメント欄でわりと見る
ほんで、映画館だって、「館」なんて大袈裟なものはつかずに、cine、シネの二文字だ
なので、Amor en el cineを「映画館での愛」なんて言っちゃうやつはセンスがないですね 誰だ?そんなこと言ったの 俺だった
とにかく、言語感覚が違うので、多分うまく訳すことはできないんだが、とにかくアモール・エン・エル・シネですよ
「ねえ君、あの映画を見に行こうよ」
ああー違うな もう、一行目から難しい!
Ey nena,一番好きなスペイン語のひとつかもしれない つってもまあ要はHey, babyなのですが…
俺はサンティアゴモトリサードさんが優しい声で言うEy nenaしか知らないから、そのイメージがすごく強いんだよな
ヘイベイビー、って言うとサングラス・革ジャン・イケイケみたいなイメージが頭に浮かんでしまう
エイネーナは違う こう、もうちょいなんと言うか、文学的な感じがするんですよね
でもこれは完全に偏見なんだよな 多分普通にヘイベイビーではあるんだと思う
それはそれとして、どっちにしてもうまく訳せないな
まずEyってなんなんだよという話はあるよな
やあ、ヘイ、よう、なあ、ねえ 多分この辺全部いけちゃうんだよな、Ey
でも多分「ねえ」にある若干ウェットな感じってEyにはないんだよな
でも「なあ」はちょっとぶっきらぼうすぎて解釈違いですっ ここは「ねえ」にしとこう 「エイ」だとお祭りみたいだもんな
そんでネーナだよなあ ネーナとかベイビーとかダーリンとか、なんならyouですら訳出が難しい
言わねえもんな
彼女を映画に誘うとしたら「ね、映画行かない?」くらいになりそう 二人称は入んねえ あっでもこれ「ね」入ってんな! やっぱ「ねえ」だな
ネーナ…なんだろうなあ 「君」ってわりと距離感あるもんな いっそ「ねえ」だけでいいのかもしれないけど、nenaって単語を落とすのは悲しい
いや、でも自然な日本語って意味では落とさざるを得ないわね 落としましょう!
「ねえ、あの映画観に行こうよ」
「ねえ、今夜はひとりにしないでよ」
「僕は全部すごい好きなんだ」
ああもう難しすぎる!!!!
つかこの曲すげえey nena出てくるな oh nena もある どうしろってんだ
答え:原文のまま味わえ
あの映画監督の大ファンなんだ、つった後に「僕はすべての大ファンだ」っていうんだけど、これがいい
「映画館の暗闇の中で」
「映画館にいるのがどれほど好きか君に言うよ」
「でも僕の心には君用のスペースもあるんだぜ」
「でもね、僕は全部に惚れてるんだ」
英訳するか
"Oh baby, in the darkness of the theatre,"
"I will tell you how I love being in the theatre"
"But also there is space for you in my heart "
"But baby, I'm in love with all"
やっぱ英語って気取ってて気に食わねえな
estoy enamorado de todoのニュアンスってもしかするとスペイン語にしか存在しないのかもしれない
多分なんですが、君の全てに惚れていますということではなく、世界のあらゆるものに惚れていますって意味だと思う
そうだよな多分
そうなんですよ
あの映画監督だけじゃなくてすべてのファンだし、君だけじゃなく全てに惚れてるんすよ
そういう人間の歌なんだよ
めちゃくちゃいいんだよな
映画館の暗い中で、っていうから、告白するぞみたいなのがくんのかと思うじゃん
映画館にいるのがどれだけ好きか、ですよ
「増田くんのことが大好きです」って言われるより「私映画館って本当に好きなんです」って語られた方がグッとくる
俺自身、田舎もんだからあんまり映画館行かないのですが、いいよなあの空間
静かにしないといけない雰囲気と、ちょっとした圧迫感と、緊張感、非日常感
地面とかなんか全部絨毯だしさ
目に入るもの全部が人工物じゃん
ああ映画館行きたいな 俺は馬鹿なのでダイハードとかしか見たことないが、もうちょっとこう、それこそアルゼンチンあたりの文学性ある映画を見たい気もする
いやでもそういう、文学性とか気にしてんのがダサいって話だよな 見たい映画を見るべきですよ
なんの話だっけ なんの話かというと、いい曲ってあるよねという話
良すぎて笑いが止まらなかった
そういうことってあるよね あって欲しい
Gomosoってのが正直意味がよくわからないんだが、ゴムっぽい→粘っこい、みたいな連想で、どうもこう、ストーカーじゃねえけど、粘着男みたいなニュアンスで使われているような気がする
君にとって僕はウゼー粘着男にすぎないのだ、みたいな感じなんですか?(知るか)
歌い方もいい
あっ、つかこの曲もey nenaから始まってんな やっぱey nenaなんですよ
でもこの曲のey nenaはわりとヘイベイビーって感じだな 呼びかけって感じはしない
これぜんぜん脈無しの恋愛ソングだし、たぶん呼びかけが届く位置に君はいないんだよな
「ヘイベイビー、僕は君のゴモッソだぜ、僕は君のゴモッソ!」
まずサビの顔見せから始まるのが良い
サビを短めにやってからAメロとかに入る構成好きなんだよな 紅蓮花とかもそうだよな
ゴモッソなんなのかイマイチわかんなくて、まあ、粘着男くらいかなあ…… ゴム質、粘着質のほかにチャラチャラ系ナヨナヨ男みたいな意味もあるっぽいが、この歌はナヨナヨ度関係なさそう
「悲しい今夜は君のことを考える、君のことを考える」
このフレーズのいかにもAメロっぽい始まり方がいい estaのeが伸びるのがすげえ好き
noche tristeは直訳で悲しい夜なんだけど、これは結構難しい
悲しいっていうと行き過ぎな気もするんだけど、実際わからない 何もわからない
で、君のことを考えるって2回言うのがかなりいい しかも俺の大好きなvosが出てくる サイコー
「君が僕のことを思って悲しくなってるのを見たいぜ、すげー正しいだろうな」
とりあえず「正しい」としたが、ここのjustoの意味合いはもうお手上げ
片想いの段階だとすげえあるんだよなその感情 相手が自分のことを思って自分と同じくらい狂っていてほしいという感情 それはあります
なのでまあ、やっぱりjustoは正しいとか公正とかってことでいいんだろうな
君が僕のことで悲しくなってたら、それは"正しい"だろうな、と うーん…イイ
「でも気づいちゃったよ、僕は感情のない君のゴモッソなんだ」
全体的に難しすぎて嫌になってきた
まあ、イケてないってニュアンスなんだよな要は
サビを挟んで2番 このサビの明るさがいい
で、2番ですよ 2番が一番好きかも
「僕は君に心をあげるよ、僕は君に心をあげる」
「僕は君に心をあげる、君がそれを笑ってくれるように」
訳が下手すぎて死にたくなってきたな
とにかく、僕は君に心を渡すんですが、それでどうなるかって言うと、君がウケるだけなんだよな
こういう必死かつ絶望的な好意みたいなやつ、見る分にはかなり好きだな
「君が気にいるかなと思ってこのシャツを買ったんだけど、いまはこのシャツのせいで泣けてくるな」
ここでシャツを指すremeraなる単語、完全にアルゼンチン語で笑ってしまった スペイン語だとcamisetaとかで、マジでカケラも似てねえ!
remera、覚えておきたいな
単語もいいけど中身もいい
頑張って選んだプレゼントがフラれたあと致命的な呪いの品に化ける、みたいなテーマはメチャクチャ好きですね
ここから先がもうすげー好き
「あの夜はすごくmágicaだった、すごくmágicaだった、すごくmágicaだった、
あの夜はすごくmágicaだったんだよ、僕にとっては」
「で、君にとってはすごくゴモッソだった」
もう翻訳を諦めつつある
しかしこのmágicoという概念、メチャクチャ好きなんだよな
magicalとおんなじで、魔術的な・魔法のっていみに加えて「うっとりするような」みたいな訳が辞書にはのっていて、その意味だと思うんだけど、やっぱこう、魔法の要素は外せないよなあ
いっそ「あの夜は魔法みたいだった」みたいに訳した方がええんかもしれん
いやでも、「みたい」なんてつかないもんな 非常にmágicaだったわけですよ もう、そういうことですよ
歌い方もうっとりしたような感じで、なんと3回繰り返す もう泣いちゃうよ俺は
その直後に、おなじみのゴモッソ概念がでてくる
しつこい夜?なんだろう、とにかく、僕はもう舞い上がっちゃってさあ、mágicoなんて言っちゃうくらいウットリなのですが、君にとってはむしろイヤ〜なウザい夜だったってワケ
ムチャクチャいい
mágico概念の良さが反転して悲しさに変わる それが本当に良い
そんでサビでシメですわ
僕は君のゴモッソ!とヤケクソみたいに言って終わる 潔い
わからんけど、すげえ良い
以上……
……
これ、gomosoってグミとかアメとかそういう感じのものを指してる可能性あるっぽいな?!
ウーン……
ただの愚痴です。
今年は社会人になってから6年目にして初めてお盆休みを頂いた。
お盆休みがもらえると決まった時から恋人と車で2時間くらいの所に行く計画を立てていて、ぎりぎりまで行くか行くまいかで迷ったもののありがたいことにまん防もクソもないド田舎なので結局行くことにした。
当日は私が運転して行った。
実際施設に行ったらコロナの影響で入場制限がかかっており、1時間ほど待ちが出ると言われた。
恋人にどうするか聞いたらぶっきらぼうに別にいいと言われたので、改めて予約をして一旦車に戻った。
車内に戻ってから、何か意にそぐわないことがあって気乗りしないならキャンセルしよう、別の場所に行くのも手だし!と提案したところ、前回のデートの食事の際と今回の施設の受付時に私がスタッフさんの応対を嫌がり、自分に押し付けた事が気に食わなかったそうで、そこそこ怒られてしまった。
正直ここまできてそんなこと!?と思ったところはあったし私としてはそんなつもりがあったわけじゃなかったが、嫌な思いをさせてごめんと謝り、今日の所はこの施設をキャンセルして別の所に行きませんか、例えばショッピングモールとか!と提案をしたがもう遅かったらしく、好きにすればの一点張りだったのでどこに行っても楽しめなさそうと判断し、泣く泣く来た道を戻った。
原因が私なのであまり文句は言えないし勝手に舞い上がっていただけと言われればそれまでなのだけど、私は初めてのお盆休みにとてもワクワクしていた為、凄く悲しかった。
家についてからお互いに謝り仲直りはしたのだけど、その後ガソリン代や高速代が返ってくることはなかったし、お詫びにご飯をごちそうするね!とかももちろんないのでちょっとモヤモヤした。
ーーー
親父・・・俺の親父。教師と剣道一筋の人生を送る。昨年還暦を迎えたため自由な時間ができ、いろいろやっている。剣道が強い。
俺・・・親父の息子。親父のことが苦手。わけあって一年時間ができたため地元に帰省し、いろいろやっている。剣道のセンスは普通になかった。残念。
ーーー
GW真っただ中の5月3日。晴天だが風が強く吹いている。雲の動きも速い。時計の針は二時少しを指している。大気が不安定な一日になるそうです、と気象予報士はニュースで述べていた。焼肉を想定している夕方には天気も崩れるだろう。どうせやらないことになると高を括り、曖昧な返事をした後に自室にこもる。
適当に動画を見ているうちに眠っていたらしい。電気がついていない部屋は薄暗い。目をこすって携帯で時間を確認すると、午後5時過ぎ。軽く飯でも食べて筋トレに向かうか、少し寝ぼけながら階段を下る。少し煙臭い。マジか。外に出ると風が少しあるものの、空の青と日の赤さが入り混じる、気持ちのいい夕暮れ時だった。
親父は木炭をくべていた。ちらりと俺に目を向け、すぐに火に目をうつす。俺は観念して焼肉の準備をする。台所には分厚い肉が大量に用意されていた。筋トレ行きたいのに胸焼けしそうだなと思う。野菜は玉ねぎともやしのみ。もやしどうやって焼くんだろう。あと大ぶりのエビ。それらをまとめて庭へ運ぶ。
「父さん、飲み物なんか飲む?」
「いや、いらない」
会話が終わる。適当に飲み物を飲みながら、2人で火を囲む。木炭に火が付くのをじっと待つ。手持ち無沙汰が極まり親父の姿に目を向ける。大学の四年間会わなかっただけで、随分昔とは雰囲気が変わったように思える。
親父、白髪だらけだけど案外髪の毛は残ってるんだな。猫背なのは相変わらず。案外身長低いんだよな。そういえば結構やせたよな。高校の時は全然俺より大きかったのにな。いつから俺のほうが身体大きくなったんだろう。色々、想う。けど言葉には出さない。言葉が心の中で反響し、消えていく。
BBQってこんなに会話が無いもんだっけ?と自嘲気味に笑う。正直気まずい。そもそも親父とあんま面と向かって会話したことなかったな。子どもの時の思い出を振り返る。
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とにかく厳しい人だった。高校で指導教員として、入学したての浮ついた学生を「君たちはもう子供じゃない」とか言って震え上がらせるタイプの人。夏休み前の全校集会で薬物の危険性とかを語る人。お前の父ちゃんって武士みたいだよなとか言われる人。
「子供を預かる教師として、自分の子どもがだらしなかったら生徒の親に顔向けができない」という信念を抱いていたため、自分の子どもに厳しいのは大変理にかなっていた。
小学校の俺はいつもおばあちゃんが作った野菜炒めを残していた。これでもかというくらい大きいぶなしめじが大量に入り、ピーマンを筆頭ににんじんやら白菜やらパプリカやら、とにかく子供が嫌いがちな野菜一色で作られていた。当然、食べることができない。
豆電球の下で親父が無言で腕を組んでこっちを見ている。食べきるまで席を立つことは許されない。泣きながらきのこを咀嚼せず飲み込む。きのこを食べているという事実だけで吐きそうになる。嗚咽が止まらない。思わずもどしてしまう。
「洗って食え」
絶望する。台所に向かい、泣きながらきのこを洗う。親父はじっとこっちを見ている。それが怖くてもう一度、泣く。
ーーー
まじで怖かったなあ。当時を思い出して苦笑する。今でこそ面と向かって食事を一緒に囲めるけど、俺が高校生になるまで食事の時間は緊張しっぱなしだった。食事中のテレビは厳禁だったから、もう黙々とご飯を食べるほかなかった。ご飯を速く食べる癖は案外ここから来ているのかもしれないな、と気付く。
親父はずっと剣道をしているせいかとにかく体がでかくて、何をしても抵抗できない雰囲気を身にまとっていた。よく食べ、よく呑み、よく眠る。毎晩22時前には寝て、朝は5時に起きる。町内を何キロも走って、庭で素振りをする。当時50歳過ぎでそれだもん、中坊のガキが勝てるわけねえよな。
でも、高校生になって直後くらいに親父に反旗を翻したことがある。コテンパンにやられたわけなんだけど。今思うとだいぶささやかだけど、でも当時16の俺にとっては十分すぎる抵抗だった。
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高校生くらいの時に「親父」とか「おふくろ」って呼び方にあこがれる時期あるよね。もれなく俺もそうだった。高校生になり、「父さん」「母さん」呼びは少し恥ずかしいと感じるようになった。同級生が「親父がさ~」と喋るのを羨ましく思ったし、なんだかイケてるようにさえ感じた。
思うに「親父」という言葉には、青年期を迎える僕たちにとっていつまでも親の庇護下ではない、甘えていた関係から自立した存在になる、みたいな印象があった。言い方自体はぶっきらぼうに聞こえるけど、青年期に正しい親子らしい関係性を、親に対して人間としての尊敬を含んだ、そんな印象を「親父」という言葉に抱いていた。
高校生になって数か月たったある日、夜22時を大幅に超えて帰宅してしまった。明確に門限というのは定まっていなかったが、遅くても21時台に帰宅することが暗黙の了解としてあった。仲の良かった先輩が、「もう高校生だぞ?少しくらい大丈夫だって。」というのを真に受けてしまった。
事実、周りの友達や先輩は門限なんて存在しないどころか、よく互いの家に泊まり合っていた。「今日お前ん家泊まるわ」とか「今日疲れたし、このまま朝までいていい?」とか、そんなことがうちは許されるわけがない。もし泊まるにしても、数週間前には事前に泊まるという報告をし、親から親に連絡を行い、「泊まりに行ってきます」の掛け声とともに家をでなければならない。
そんなのおかしい、俺だってもっともっと友達と遊んでいたい。そうした思いが積もり積もって、禁忌「門限破り」を犯す。
先ほどまでの気の大きさはなんのその、家に着いたころにはビビりまくっていた。しかし家の中の電気が付いていたのもあってか、もう高校生だし大丈夫か、と妙に安心する。ドアを開けようとする。鍵が閉まっていて開かない。庭に回る。リビングにいた妹に開けるように頼む。すると妹が「お兄ちゃん帰ってきたよ」と大きな影に向かって言った。
いつもだったら21時過ぎに寝ている父さんが起きていた。どすどすどすと大きな足音を立て玄関に向かう。俺は庭で恐怖に震えていた。
「何時だと思ってるんだぁぁぁぁぁ」
ドアを開けるとともに区域全体、少なくとも両隣三軒には響くくらいの声で突進してきた。そのままの勢いで俺を思い切りぶん殴る。庭にたたきつけられる俺。その上に馬乗りになって殴り続ける。
「どんだけっ!心配したとっ!思ってるんだっ!」
単語の区切り、呼吸の合間に殴ってくる。俺はどっかのボクサーばりに顔面を守ることしか出来なかった。躾の一環として色々殴られたことはあった。でもまるで昭和の家族ドラマみたいに殴られたことはなかった。俺は怖くて少し泣きながら、これから親父と呼ぼう、となぜか思った。
ーーー
この反抗?を経て、面と向かって「親父」とはさすがに言えないけど、俺も友達の前では「親父」呼びをするようになった。すると少しずつ親への恐怖感みたいのは薄れていった。家で極力顔を合わせないようにした。塾に通い、意図的に家に遅く帰るようになった。「塾で勉強してるし、遅くなっちゃうのはしょうがないよね」みたいな。すると自然と会話が無くなる。そもそものコミュニケーション自体が無いため、ごく自然な流れでそうなった。
もちろん色々お世話になった。高校最後の大会の前は、親父直々に稽古をつけてくれた。ライバル校の先生である親父が、ライバル校の生徒である俺を教えることはどうなんだとは思うけど、とにかくお世話になったのは事実だ。結果東北大会に出場できた。ポンコツ剣道野郎にとっては十分すぎる結果だ。
俺もさすがに知ってる。親父が不器用だってことは。俺ももちろん不器用だけど、俺も親父も素直に想いを伝えられない。家では全く会話のない俺たちも、どっちも家以外ではお喋りなのが笑っちゃうよな。
大学の同期が実家に泊まりに来てビックリしてた。「お前マジで親の前では性格変わっておとなしいよな」って。母親もよく言う。「父さんはほんとはお喋り好きで、飲み会ではみんなを盛り上げてるんだからね」って。
親父は俺に対して、何かを介さないとコミュニケーションを取れない。
俺も親父に対して、素直に想いをぶちまけることができない。
ーーー
俺もう成長期じゃないし、こんなに肉食えないよ。しかもこれから筋トレ行きたいし、あんま胃がもたれるようなの食いたくないんだよね。親父も連日肉ばっか食ってない?もう年なんだしお酒も控えて、少しは健康を意識してくれよな。
ちょっと暗くなってきたね。電気つけよっか。目が悪いっぽいね。そういえば車運転するときもっと気を付けて。車間距離近すぎ、あとよそ見しすぎ。前の車が急ブレーキしても止まれるくらいじゃないとだめだよ。
これ肉焦げてない?いいよ俺食うよ。マジで美味しいよ、親父ありがとう。
ーーー
「旨いか?」
「うん」
あれ? ここはどこ?
そっか……あたし……死んじゃったんだ……
ふわふわしたところで神様っぽい人から説明を受けてたような気がするけど、あたし自身もふわふわしてたから何も覚えていない。
気が付いたら、なーろっぱ風の街並みの中にいた。
部屋着姿なのが恥ずかしい。
「あのーちょっとお聞きしたいんですけど……」
娘たちと一緒に見たアニメや暇つぶしに読んでいた漫画とかでなんとなく異世界のセオリーはわかってる。ほんとになんとなくだけど。
こういう時は果物やさんっぽいおじさんが優しい。
「ひょっとしてお貴族様ですか?」
「そーかい。変わった服着てるからてっきり変わり者の貴族が来たのかと思ったぜ。で、なんだ? 聞きたい事って。客じゃねーのか?」
「出来たら、そこの美味しそうな果物を幾つか頂きたいところですけど、多分お金がないんですよね」
「財布を忘れたのか?」
「ええまあ(現実世界に忘れたというか、神様から貰い忘れたというか。神様がお金くれたのかどうかはわからないけど)」
「で?」
「ええと、お聞きしてよろしいでしょうか?」
「ああ、多少はな」
やっぱり親切な方でした。顔は怖いけど。
「あの、お金もないので宿も取れないのですけど、こういう時ってどうしたらいいんでしょうか?」
「まあ、そうなりますね」
「そこをまっすぐ行って(中略)ギルドがある。ねえちゃんでもなにがしかの仕事はあると思うぜ」
お礼を言って、ギルドに行くことにした。
かつては世界最大の船舶建造国であった日本だが、今では中国韓国に追い抜かれ衰退の一歩を辿っている。
少し前まで造船所で設計業務を行っていた中の人として立場から、日本の造船業界の現状と苦境の原因について説明したい。
造船大手サノヤスHDは新造船事業を新来島どっくへ譲渡し不動産賃貸業に特化、三井造船も造船事業を常石造船へ譲渡することを決定済み。
その他中小造船所についても新造船事業から撤退表明が相次いでおり、業種転換や修繕事業への特化に取り組む先が増えている。
余談ではあるがサノヤスHDから新来島どっくへの事業譲渡価格はたったの100万円。人員と設備、40億円超の銀行借入を引き受けてもらうとはいえ実質は無償譲渡。
この譲渡価格を見れば、今の日本国内の造船事業にはその程度の価値しかないということが分かって頂けると思う。
造船所は一般的に最低でも2年分の手持ち工事を確保する必要があると言われている。
(契約から船舶の引渡しまで2~3年なので、手持ち工事量が2年を切ると設計のリードタイムが確保出来ない)
ところが現時点で手持ち工事量が1年を切ってしまっている造船所が国内には多数存在している。仮に今すぐ市況が回復して受注出来たとしても設計作業が追いつかない状態。
まあそんな状況でも「弊社なら年内竣工も可能です!」と安請け合いして現場を大混乱に陥れる営業担当がどこの造船所にもいるはず、多分。
新型コロナの影響も当初は確かにあった。昨年春頃は世界的に物流が停滞するとの見方から用船料が暴落し、ハンディマックスサイズ(DWT60,000トン)のバルクキャリア(ばら積み船)で7,000ドル/day程度まで落ち込み完全に採算割れとなっていた。
しかし今足元では同船型の用船料は25,000ドル/dayとリーマンショック前の水準まで急回復している。
普通ならここまで用船料が上昇すれば新造船を発注する動きが出てくるはず。ではなぜ誰も発注に走らないのだろう。
船舶は世界中を航海するので世界共通の環境規制が定められている。NOx(窒素酸化物)排出についても段階的に規制が強化されており、2016年以降に建造される船には三次規制(従来の排出量から80%削減)が適用される。
各造船所は規制強化間際に駆け込みで契約を進めた(2015年末までに契約した船は少し緩めの二次規制仕様での建造が可能)ので、2016年以降も二次規制対応船の建造を続けられた。
だが昨年くらいで二次規制の契約船の手持ちが尽きてしまった。ちなみに三次規制対応の船は二次規制と比較して建造コストが10%ほど上がる。
このコスト増加分を誰が負担するかが明確になっていないため、誰も発注に踏み切れないのである。
(本質的にはこのコストは当然荷主が負担(用船料へ上乗せ)すべきなのだが、船主・オペレーターが要請しても荷主の方が圧倒的に立場が強いため有耶無耶にされてきた)
また、リーマンショック前に用船料が急騰し、それを受けて2009~2012年頃に大量の新造船が建造された。その後船舶需要が低下したのちも造船所が設備稼働維持を目的としてストックボート(発注が無いまま船舶を建造し、造船所が自社グループ内で船主として船を保有する)の建造を行ったため、供給過剰な状態が続いた。
ストックボートは市況が回復したときには中古船として売却されるわけだが、単なる需要の先食いでしかない。結果として新規受注が伸び悩むこととなっている。
私自身は上記に挙げたような大手造船所ではなく、年間で数隻程度しか建造していない中小造船所で設計部員として働いていた。
現場は1年を通して屋外で作業をするので3Kかと言われれば間違いなく3K。
納期厳守で納期を守るためなら深夜残業や土日出勤も当たり前という反面、色々な面でゆるい職場でもあった。
船舶が完成したあとは引渡し前に必ず海上での試運転を行う。各担当が船舶に乗り込み丸一日かけて運航データを取るのだが、気象条件によってはこれが一日では終わらない。
契約書上では「船速は○ノット以上とする。下回った場合0.1ノット毎に○百万円のペナルティが発生する」となっているので、試運転では必ず契約速度をクリアする必要がある。
風もなく海面もクリアなら特段問題ないのだが、季節によっては荒天続きでまともな運航データが取れないときもある。その場合、延々と条件の良い海面を探し続けることになる。
一日で試運転を終える予定でピクニック気分で酒と食料を積み込んで宴会を開いたものの、翌日も翌々日も天候に恵まれず二日酔い状態で航海を続けたこともあった。
またあるときは台風の接近により、建造中の船舶を岸壁につけたままでは損傷する可能性があるからとタグボートで沖合いまで曳いて行ったこともあった。
万が一に備えて船中泊をする人員を残して私たちは岸壁へと戻ったのだが、事件はそこで起きた。
係船用の岸壁まであと少しというところで急にエンストを起こしタグボートが止まってしまったのだ。なんとか手動でエンジンを再起動するも全く動く気配がない。
9月になっていたとはいえまだうだるような暑さの中で、私たちは仕方なく全員でボート内にあったパイプやら板やらをパドル代わりにして必死に漕ぎ続けた。
なんとか岸壁に到着したときには皆が皆疲労困憊、脱水症状寸前となっていた。
地面に倒れ込みスポーツドリンクを飲みながら、「こんなことなら最初から手漕ぎの方が楽だったな」と冗談を言って笑いあったこともあった。
話が横道へ逸れてしまっていたので、本題に戻ろう。韓国や中国の造船所に対し日本の造船所は価格競争力において圧倒的に劣勢である。
ハンディマックスサイズのバルクキャリアを建造するとして、日本と中国ではUSD2mil~3milの価格差が発生するといわれている。
従来からこの価格差は「中国や韓国は政府が国策として造船を支援しているから」「中国は安い人件費を背景に人海戦術で建造しているから」と説明されていた。
また、価格面では日本は劣るが、品質においては日本が優位だとも言われてきた。
私に言わせればこれはどちらも正しくない。昔はそうだったのかもしれないが、今では中国建造船のクオリティは日本建造と大差ないくらいにまで向上している。
一方で日本の造船所は熟練工の退職による人手不足を外国人実習生で埋めている惨状なので、過去との比較では技術レベルは数段落ちている。
日本と中国の人件費比較においても以前ほどの差はない。ではなぜ日本の造船所の建造コストは高止まりしているのだろう。
私は「設計システムの共通化」「部品規格の共通化」という2つの点で中国に大きく差をつけられているのだと考えている。
日本の造船所は大手から中堅どころまで各造船所がそれぞれに設計部隊を抱えている。造船業は仕事量の山谷が激しいので、自前で設計を抱えると設計コストが高くつく。
更に日本の場合、設計システムについても三菱製、IHI製、日立製などなど各社が自前のソフトでの作業を行っているので、使い勝手は良いがコストは非常に高い。
日本製の設計ソフトを使うのは日本企業だけ、しかもそんな狭い市場に3社も4社も自前ソフトを投入しているので維持管理や改良にかかるコストが高くなってしまう。
翻って中国や韓国は世界トップシェアの英国AVEVA社のソフトを使用しているところが大半なので、システムの維持更新にかかるコストも日本と比べれば格段に安い。
日本の自前主義がガラパゴス化を招き、結果としてそれが衰退の原因となってしまっているのである。
「部品規格の共通化」についても同じことが言える。自動車メーカーはコスト削減のため、異なる車種間の部品共通化を進めコスト削減を図った。
中国の造船所は建造と設計が分離されており、各造船所は決まった設計会社から図面を購入してくるので造船所間の部品規格の共通化が図られている。
日本の場合、同じところに使う部品でも造船所毎に微妙にカスタマイズされているので、部品メーカーは多品種小ロットの製造を余儀なくされ、それがコスト増に繋がっている。
規格共通化を図るため、国内首位の今治造船と第2位のJMUが共同の設計会社「日本シップヤード」を設立したが、今からではすでに手遅れではないかという気さえする。
トヨタに代表される日本の自動車メーカーは地道なカイゼン活動でコスト削減を少しづつ少しづつ積み上げて今の体制を作り上げた。
それに対し日本の造船所は「船価は為替や用船料市況次第で数億円単位で動くので多少のコスト削減は無意味」などと言い訳しながら丼勘定を続けてきた。
アメリカの自動車メーカーがトヨタに駆逐されてしまったのと同様に、経営改善を怠ってきた日本の造船所は淘汰されてしかるべきなのだろう。
他業種と違って造船業界は新型コロナ対策の無利息融資を受けることが出来なかった。コロナ特別融資は「売上高が前年同期比で減少していること」が要件となっている。
造船業界は2年程度の手持ち工事量を確保しているため、コロナの影響はすぐには出ない。各社の売上が減少するのはコロナ前に確保していた手持ち工事が枯渇する2022年以降であるが、その頃にはコロナ特別融資制度は終了してしまっている。
かくいう私の勤務先も手持ち工事量が大幅に減少し、仕事のなくなった一部職種の人たちは近隣の自動車メーカーや半導体工場などに期間限定で出向することとなった。
新規受注が無いので設計人員も約半数がリストラされることとなり、私を含め大勢の設計部員が建築系などの設計会社へ転職することとなった。
退職が間近に迫った日の夜、私は仲のよかった同僚たちと居酒屋で最後の送別会を行った。「昔みたいに一気に船の市況が回復して、またみんなで船を造れたらいいね」と言いながら
でも絶対にそんなことは起きないと頭では分かっていながら、4人で楽しかった頃の思い出を語り合った。
閉店時間まで飲み会は続き、終電を逃してしまった私は一緒にタクシーで帰ろうという同僚たちの誘いを断り、一人で駅前のビジネスホテルに泊まることにした。
妻には今日は帰宅が遅くなるとあらかじめ伝えてある、折角なので今日は久しぶりに遊んで帰ろうと決めた私はすぐにスマホで検索をはじめた。
相応の料金を払うと一定の時間女性を派遣してくれて更に手厚いサービスが受けられるというお店に電話をかけると、私は部屋で一人女性の到着を待った。
やってきたのは、見た目はまあ普通なのだが愛想もなく非常に態度の悪い女性であった。営業トークも無くほぼ無言で体を洗われた私は「やることを済ませてすぐに寝よう」と決めた。
女性の側も同じ考えであったようで、適当に前戯を済ませたあとで「いれてもいいですよ」とぶっきらぼうに言うと身体を投げ出して仰向けになった。
それならばと私も上にまたがり身体を動かしたのだが、態度の悪さに加えアルコールを過度に摂取していたこともあり、一向に気持ちよくならない。
好きな女優の顔を思い浮かべつつ全力で腰を振り続けること数十分、なんとか制限時間ぎりぎりで放出することに成功した。
ぜいぜいと肩で息をする私を尻目に彼女はさっさとシャワーを浴びるとすぐに着替えを済ませ去っていった。
ベッドに寝転がり額の汗を手で拭いながら私は遠い昔の夏の日のことを思い出していた。「こんなことなら最初から手こきの方が楽だったな」
少年ジャンプ+で人気連載中(日間ランキングで1位取ってるし人気でいいよね)の「ボーダレスネーム」、かつてマンガ家の夢を捨てたアラサー女性が、再びマンガ家になる夢を見つけ歩み始めるというマンガです。
主人公女性の現在の仕事は広告代理店のアートディレクター(AD)で、イケメンだけどぶっきらぼうな上司や、物腰柔らかなマンガ編集者などに取り巻かれながら、仕事や将来の夢に向けて悩みながら、成長するという、この20年くらいの青年誌お仕事マンガのフォーマットにある程度乗っかっていると言えるでしょう。(それがジャンプ+で連載されるというのは面白いです)
1話目を読んだときは、ああ、これで広告会社やめてマンガ家修行始めるんだろうな、で、編集と二人三脚してるうちに恋が芽生えたり、イケメン上司からちょっかい受けたりしつつ、マンガ家として成長するんだろうなと思っていたんですが、あれ? 2話目で女性コピーライターが出てきたよ、しかもまだまだ広告会社の話が続くみたいだよとなって、僕は正直、困惑しています。
というのは、広告会社の描写がかなりおかしい。こんな広告会社はありえない(正確に言えば、なくはないがこの規模の会社だと考えられない)のに、広告会社のお仕事マンガとして進んでいるので、やばいんです。このマンガ読んで、広告会社をdisられても困るし、逆に広告会社に入りたくなってもやばい。描写がおかしいのにちょくちょくお仕事の専門用語解説が入る(そこはいちおう内容はあっている)ので、ものすごくもやもやする。というのを立て続けに見せられてるんです。
なので、2話までの中でのおかしいポイントを列挙して、何にもやっと来るのかを指摘してこのもやもやを業界がわからない人と共有したいと思いました。
1話: https://shonenjumpplus.com/episode/3269632237331072609
・P5 何人か指摘してますが、31歳で入社10年目って、この人何歳から働いてるんだろ? 総合代理店のAD職で美術短大や専門学校卒で働くとなると、主人公は学生時代、相当優秀な方だったんでしょうね。賞でも取ってたんでしょうか。
・P8 34歳のイケメンCD(34歳でCDも相当若いですが、まあ優秀だったんでしょう。岸勇希みたいな人なのでしょうか)が、オリエンに連れていきます。まあ、クライアント名を出さずにつれていくのはいいでしょう。そういうやり方の人もいます。でも、そんな雑な今から時間あるでオリエン連れてくな。急に入ったオリエンなら、まずはお前ひとりで聞いてこい(いや、CD一人で行くのもちょっと違うが、それは後述) 広告会社のADなんて死ぬほど忙しいんだ。そんな今から連れてくみたいなやり方でスタッフィングされたら他案件との調整が地獄になるわ。あと、肩たたいて声かけるな、現実で今どき、それやったらパワハラ案件になるぞ。
・P9~12 この回、最大のツッコミどころ。大手出版社の看板雑誌の60周年広告を競合でなく指名で発注。しかも、担当者は広報2人に若手編集1人。それありえる?? そのキャンペーン、ひいき目に見ても出版社も全社総がかりでやる規模の案件だぞ。編集長どころか担当役員が出てくる案件だぞ。少なくとも競合で6社は呼ばれて、納期とバジェット提示されて年間キャンペーンで総合プレゼンさせられる案件だぞ。この会社、出版社のハウスエージェンシーかなんか? そして、何よりこの広告会社、営業いないの? CDが一人で直接話を聞きに行くなんて、怖くてさせられないよ。せめて、一人CP(クリエイティブプロデューサー、ざっくりいうと広告の予算やスケジュール管理をする人)くらい連れて来いよ。CDにそこまでさせたら、普通の会社だったらパンクするぞ。出版社も出版社だ。こんなでかい案件で、オリエンペーパーも作らないのか。予算がいくらとかキャンペーンスケジュールがいつなのかとか、KPI、KGIとか広告で達成したいこととか、現状の雑誌のコンディションとか、ADが「どんな広告がいいですか」とかふわっとした質問をして、編集が「見た人に夢を与えられるものですかね」とかふわっと答えて、それでGOするなよ。主人公も苦手なオーダーだとか思ってるけど、誰だってそんなふわっとしたオーダー苦手だよ。そして、イケメンCD、こんなでかい案件、一人のADに丸投げするな。俺がCDだったら社内で3チームは立てるわ。まあ、社内競合とか文化がない会社なのかなと思ったら、2話目で社内競合かけられてるし、2話目の案件より、こっちのほうが規模ははるかにでかそうだぞ。
・P16 主人公、他人の案件、勝手に引き取るな。せめて上長に手伝ってもいいですかと聞いて一緒にやれ。というか、上司が丁寧にディレクションしてるのに勝手に引き取るな。このモブの後輩もありがとうって面するな。ちなみにこの付箋を見ると、マーケ部云々書かれてるので、マーケいるの? というか、マーケの企画書にCDが赤入れてるの? そんなことされたら、戦争はじまるぞ。
・P17 やっぱり社内競合ですらないし、営業もいない。続きを読むとこれ、プレゼン前日だよね。プレゼン前日の打合せに営業いないし、紙だけで社内打合せするな。誰もノートPCすら持ってないのか。それともこれは2019年ですらなくて、2012年くらいの話か?
・P46 途中の徹夜で作業するところとかはまあいいけど、この人、ADメインの人だよね。コピーから企画から全部ひとりでやるのは、あまりにも抱えすぎじゃないか。それと上司、直前打合せで追加案なんて出したら、それこそメンバーから大ヒンシュク買うし、ADは心折れるぞ。そういうのは面倒見がいいとは言わない。ただ、こういうのをやってくる人、たまにいる。某佐々●宏とか。でも、逆に言うとそれくらいの人じゃないとそういうことはやらない。あんなふわっとしたアドバイスじゃなくて、ちゃんと前日打合せの場か、そのあとにADを呼び出して、ちゃんと伝える。その方針で1つ追加できないかと聞く。
・P49 やっぱり営業がいない。ほんとにいないでいいのか。この会社はCDが営業もマーケもやるのか。というか、出版社サイドもそんな即決していいのか。60周年だよね。
・P66 「営業やマーケティングなどいろいろな分野の人たちが案件ごとにチームを組んで広告制作を行います」!!!??? この会社にもいるの? なんでプレゼンに営業来ないの??
まあ、1000倍ひいき目に見て、必要ない登場人物は省略したとしよう。しかし、この省略はお仕事マンガとしてあり得ないレベルで省略してると言わざるを得ません。
ゲーム会社でいえば、バンナムやスクエニ規模のゲーム会社がプログラマー一人でゲームの企画案を作って、自分でコーディングしてゲームを開発して、自分で納品してるみたいな感じ。
IT企業でいえば、基幹システムの開発を一人でスケジュールもなしに作ってる感じ。
2話: https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496293826525
P3 これはいじわるかもしれないが、この編集さん、プレゼンのあとは作業から外れたのかな? まあ忙しいもんね。でも、せめてこういう感じ始めますってのは、広報から編集部に事前に共有されるよね。メールアドレス知ってたら、せめてその時点でメールするよね。まあ、忙しくて忘れてただけにしておこう。
P16 いくらなんでもこんなに面倒見が悪いトレーナーだったら外れもいいところ。というか、この会社、全体的に人を育てる感じがないよね。
P21 トレーナーになんで自分がこの人を見るのかの周辺事情はちゃんと伝えるのが会社というものです。そうじゃないとこうやって、自分を見放した上司と競合する仕事をしないといけなくなります。あと、今時、広告会社なんて(特にCR分野なんて)オタクだらけです。キラキラ女子みたいなほうがよっぽどレアです。だって、アニメやゲーム、マンガなどのコンテンツは重要な情報源なんですから。そもそもアニメやゲームじゃなくてもオタクじゃないとCRの引き出しは枯渇します。
P23~24 ここがいちばん問題。CRの打合せなんて100本ノック、1000本ノックなんて当たり前。まして、この子、コピーライターでしょ。コピーを無限に書き続けるのが仕事みたいなもんだよ。一万歩ゆずって、プレゼン前なので、そろそろ方向性を絞れって話なら、主人公が打合せ前にディレクションしないといけない。つまり、この子が怒られる筋合いは一ミリもない。
P32 上司、そこにいるなら、主人公の相談にのってやれ。社内競合で負けたらお前の評価にも影響するんだよ。ほんと、この上司、何にもしねーな。主人公は早々に見切って、全スルーして上と直接話するようになったほうがいい。
2話目はこのコピーライターの子がとにかく不憫。転職してきたばっかりでこんな目にあったら、俺だったらすぐに転職サイトを開く。
で、うすうす気づいたが、このマンガの広告会社って、主人公の成長のための舞台設定だけなんだよね。早くコピーライターの子と一緒に仕事辞めてマンガ家になれ。どうせそういう話にするつもりなんでしょ。で、ここまで書いて気づいたけど、この2話目の案件も社内競合なだけで、コンペじゃないんだよね。広告会社マンガで成長を描くためにコンペを使わないのって、相当奇妙なんだけど、そこに何か理由があるのだろうか。というか、社内競合のライバルをこんなに嫌な人に描写してるの、社内の摩擦がすごそうで嫌な会社だなあってなるんだけどいいのだろうか。