はてなキーワード: 技術的特異点とは
侵攻編でググったらFF14らしいが、俺はFF14は無料のβしかやってないぞ。FF11もβしか触ってない。
FF民はFFこそがMMOと思ってて他の世界を全然しらないんだな。傲慢で鼻につくぜ。
俺がやってたのは8割が韓国産だ。マビノギとかAIONとかは3年以上やってたな。
まあAIONあたりが典型的なロールに応じた動きが求められるMMOでFF系に近いとは思うが、FFより全然面白い。飛べるしな。
戦争ゲーだとAIKAあたりは多対多なのに異様に軽くて技術的特異点だったな。
飛べるっていうとFlyffなんかも飛べる系ではほぼ開祖だったはず。マビの飛行ペットもよく出来てたけど。
国産で印象的だったネトゲはMaster of Epic、FEZ、コンチェルトゲートフォルテ、MHF、PSO2くらいだな。あとすぐ終わったけどメビウスオンラインもエロくて良かった。
雰囲気的に一番好きだったMMOはシールオンラインだ。あとはMOアクションならエルソードあたりかな。音楽はROやアスガルドやTWが優勝。シールもかなり良いけど。
一番熱中してた時期はメイプルとかの全盛期で、黒い砂漠やToSが出てきた頃にはまあ一通りやったけどスマホゲーに移りつつあった。
自分の出した回答が正しいか判断できるようにならなければならない。
例えば水素と酸素が結合して水になると知らない状態で、水になると予想してそれが正しいと判断できるかという話。
科学者も予想しただけではそれが正しいかわからないので実験や観測で確かめる。
これまで学習した内容から確からしさを確率で示すことはできるかもしれないがそれは判断というよりは予想に含まれる。
AIに手段を持たせるには物理的な存在が必要。つまりロボット。
自ら動いて事象に干渉できればその結果から予想が正しいか判断できるようになる。
…と思った?
判断どうこうの前に予想が未知になることはない。
今のAIは想像や空想はできない。学習していないものは回答できない。
水素と酸素を結合して水になるなら他の気体を結合して液体になるといった予想はできそう。
だがそれ以上は逸脱できない。
そして予想の前に疑問を持つことがない。
疑問がなければ予想する必要もない。
技術的特異点を迎えるには最低でもこの3つ(疑問・予想・判断)を超えなければならないと考えている。
ただしこの3つができるようになればその時点でシンギュラリティと呼べそうではある。
「シンギュラリティ」や「技術的特異点」の記事を見てて思うんだけど
コンピュータ関係で急速な科学技術の進化が起きた場合、必ずコンピュータが
人間のような知性というか心を得ている事が前提になってるのが気になる。
パラメーターがメチャクチャ多くなったニューラルネットワークでも案外いろんな事が出来るのが分かってる。
そういう「心」的なものをいまいちモデル化してるとは言えないようなAIでもコンピュータの設計・製造が
だいぶ改良されていくような未来もあり得るんじゃないだろうかと自分は思う。
もしそれが出来たら性能の上がったコンピュータで更に凄いコンピュータを設計・製造するようになっていき
性能は信じられないほどに上がっていく可能性もあるだろう。
つまり可能性としてコンピュータの性能が今よりずっと急激なスピードで上がっていく一方で
コンピュータが知性を依然として獲得しないままの未来もあり得るんじゃないかと思う。
例えば「リーマン予想の証明を出力して」とコンピュータが質問されたら速攻で正しい証明を出力出来るのに
でもコンピュータ自体は何も判断を行わないような未来の可能性だ。
もしくは急速に性能が上がって何年かのタイムラグをおいた後によく言われるシンギュラリティのような未来が来る可能性もある。
何れにしてもこのようなコンピュータの性能が信じられないスピードで上がっていきながら知性は伴わない
でも検索してもどうもそのような心のないシンギュラリティに相当する言葉が無いので気になっている。
こんな未来も一応は考えた方がいい気がする。
> 評価基準が変わり、開発効率が変わり、単価が変わっていくんだろうか。
実際にChatGPTとペアプロしてみると, 現在〜近未来において上記は間違いなく変わるだろうなという感触を得られると思う。
とくに単価については、この手のAIアプリケーションが十分こなれた世界ならば、開発作業自体が軽微な作業化するので内製するかビジネス層が自分でアプリケーション作ろうとすると思うし、単価という概念自体なくなるのかもしれない。
まあ生成したアプリケーションに関して結果責任・説明責任が残るので人間は最後まで必要になるだろうけども開発を委託する必然性は弱まると思う。
もちろん自然言語やデータモデルを使って正しく要件定義するのはとても難しい作業なので頭の悪いプロダクトマネージャーはそこでつまづくだろうけど、そうしたPMは市場から淘汰されるだろうし正しくPMな人が出てくることも予測される。
まあ要件定義自体を生成されたアプリケーションを使ってデバッグして手直しして開発工程をもういちサイクルまわすのがたいした問題じゃなくなる世界なので、このような世界では要件定義の難しさもたかがしれているとも言える。
技術的特異点なんて絵空事と思ってたけど、過渡期な文章生成言語モデルっていう技術ですらこのインパクトなのでこっからの数年、こうしたテクノロジが精錬されて我々の価値観や生活が変わるのが楽しみでならない。
技術的特異点に達してようが達してなかろうがどっちでもいいですけど、洗濯機に洗濯物放り込んでボタン押して放っておいたら洗濯物が乾燥まで終わってるという体験をくれる機械は今のところドラム式洗濯乾燥機が唯一無二の存在ですよ。
(機械以外も含んでいいなら家事サービスとかも選択肢でしょうけど)
技術的特異点を待ってたら、洗濯物が洗い終わったのを確認してから干して取り込むという最悪の体験を何回やることになるかわかりません。
技術的特異点(technological singularity)ちゅうやつやね。
努力を質や成果に転換することは非常に重要で、それが無い努力には基本的には意味がない。
それは厳然とした絶対事実であって、我々はその事実を厳粛に受け止めなければならない。質に転換することのない無為な努力に対して、我々は常に自戒しなければならない。
しかし具体的にどうすれば努力が質なり成果なりに転換するのかと言うと難しい。努力の転換、あるいは変換、その神秘さえ分かれば我々は今いる場所よりもずっと遠くに行けることに間違いはないのだけれど。
技術的特異点という言葉はSFの筋書にのみ使われるのではなく、現代において現実味を帯びて語られている言葉でもある。AIが自分よりも優れたAIを無際限に産出し続ける状態へと移行すること、これが技術的特異点である。これが実現すると、AIは無際限に進歩を遂げることとなり、その高度さは到底人間の及ぶところではなくなる。
努力的特異点というものがあるとすれば、恐らくそれは、努力が努力の質に対して向けられ、無際限に努力の質が進歩していくあるポイントのことを指すのだろう。努力を続けることによって、努力の質自体をより良質なものへと転換していくことのできる努力。そんなものがあると良いのだけれど。そんなものが本当に存在するのだろうか。
逆に考えてみよう。短期的に効果はあるかもしれないが、やればやるほど努力の質を下げていくタイプの努力。そういうマイナスの努力というものは実際に存在する。例えば、過度にカフェインを飲んで集中力を高めた状態で何らかの目的に取り組むこと。時にこういう努力は短期的な成果に繋がるけれど、一方でカフェインによって酷使された肝臓やら副腎やらは徐々に彼の努力の足かせとなっていく。つまり、これは努力の質を下げるタイプの努力であると言えよう。このような努力によっては、努力的特異点に到達することは夢のまた夢である。
逆に、努力の質を上昇させる努力というものが存在しているとすれば、それはどんなものであろうか。そして実際に存在し得るのであろうか。
結論から言えば、そのような努力は恐らくは存在している。つまり、先程の努力の逆を考えてみれば良い。体の状態を悪化させる一種の薬剤やサプリメントとは逆に、身体の状態を良くする栄養価の高い食事や深い睡眠、好ましい人間との有意味な会話、適度な運動、適度なストレス、そういったものが人間の努力の質を高めることには論を待たない。こういう努力は、努力の質を漸進させる努力、人を努力的特異点へと誘なっていく努力であると言って相違ないだろう。
とは言え、そのような努力はあくまで補助的であり、また、そのような努力によって漸進される努力の質にも限界はある。そういう意味で、もっと質の高い、努力の質を高めるための努力が必要になっている。
最近分かってきたのだけど、この「努力の質を高める努力」に有力なのは、「脳のモードを切り替えること」だと気付いた(気がする)。
脳のモードを切り替えるというのはどういうことかと言うと、例えば、ある時に文章を書いている。文章に集中することによって、その文章を書いている人間の脳味噌は文章モードへとシフトしている。そのようなモードは、きっと人間が料理モードに入っている時とは異なっているはずだ。
このように、とある事柄に対して集中し、ある種の「モード」へと入り、然る後に、例えば絵を描くことなり将棋の棋書を読むことなりといった別の「モード」へと、脳を切り替えること。
こういう努力の仕方が、恐らくは努力の質を大きく高めることへと繋がっていくのである。と最近になって感じた次第である。
ちょっと話は変わるが、漫画『おおきく振りかぶって』にて、野球選手の故障について語られるシーンがある。野球選手の故障は何故起きるのか、また、どのようにして防ぐことができるのか、という重要な質問に対して、作中で以下のように語られている。
つまり、野球選手は左右の筋肉のバランスが崩れがちであることが、故障の原因なのではなかろうか、と作中では結論されていたのである。
例えば、右投げのピッチャーは当然右腕を酷使する。その結果、左右の筋肉の配置のバランス、あるいは骨格の配置のバランスが、非対称になる。筋肉や骨格のバランスが崩れる。
本作によれば、このバランスが崩れた状態こそが、選手の故障を招きやすい状態であり、少なからず故障の原因となりうる状態なのである。
そのため、右投げの選手は左右の腕に同様のトレーニングを、左右対称的に施すことによって、筋肉の対称性とバランスを保ち、故障を予防することができるのではないか、と作中では仮説が述べられていた。
例えば、テニス選手は野球選手同様に手足を酷使するが、バックハンドとフォアハンド双方の筋肉を鍛えるため、バランス良く筋肉が育ち、故障しにくい対称的な骨格と筋肉を手に入れることができるのである――とも作中では述べられていた。
当然ながら、あくまでこの「左右のバランスを保つことによって故障を回避できる」という説は仮説に過ぎず、検証が必要な仮説であり、すぐに信用することはできない。
とは言えこの仮説においてポイントとなるのは、ある行為をする際に、直接的に使う筋肉以外の筋肉を育てておくことが、時に重要になるのではないか、という主張である。右投げの投手が主に使う筋肉以外の筋肉、例えば左腕の筋肉が、右投げの選手の身体運動において補助的な効果を発揮するのではないか――それも、好意的な効果を発揮するのではないか――という主張。大元の仮説の当否には怪しいものがあったとしても、このような主張は興味深く、特筆に値するポイントであるように思われる。
それを踏まえた上で、話を元へと戻す。
つまり、脳のモードを切り替えて、様々な脳のモードを鍛えることによって、ある物事に集中する際に際立って用いられる脳の部分『以外の』部分も鍛えられ、そのような努力によって、例えば文章を書く際に際立って活性化される脳の部分『以外』の部分についても鍛えることができ、そのような一見直接的に関係なく連関の無い脳の鍛え方が、却って補助的に、ある分野の知的活動に寄与するのではないかということなのである。つまり、文章を上達させたいのであれば、愚直に文章だけを書き続けるのではなく、様々な別分野の努力をすることで、様々な脳のモードを鍛え上げ、文章を書く際の補助的な効果を促進していくことが重要なのではないか、ということなのである。
かつて俗説で、人間は生涯において脳の三割程度の能力しか用いていない、というものがあった。このような俗説は現在否定されているが、翻って、脳はどんな行動をするにせよ『全体的に』用いられるものなのだ、という主張を導くことができるだろう。つまり、文章を書く際に活性化する脳の部位以外の部分も、文章を書く際にはある程度使用されている。となれば、このような部分について鍛えるために、例えば文章を書く以外の努力をすることが有力なのではないか、ということを私は言いたいのである。
絵を描く時には、恐らく脳の中には際立って活性化する部位があり、あるいは将棋やチェスを指す際にも、恐らく絵を描くために活性化する部位とはまた異なって活性化する部位が存在することになるだろう。そうだとすれば、様々な努力のモードを体験することは、脳の様々な部位を活性化させることに繋がる。したがって(あるいは翻って)、そのような様々な部位を活性化させる努力は、絵を描くことでもなく、将棋やチェスを指すことでもない別の行為をする際に、補助的な役割を果たすのではないか、ということなのである。
色々なことに集中して、モードを切り替える努力が、脳の成長には欠かせないのではあるまいか。それらの努力こそが、我らが努力的特異点に寄与する努力ということになるのではあるまいか。
何度か読み返した結果、「話にノれれば俺も十分に楽しめたが、話にノれない要素が多かった」という仮説が今のところ有力。
めちゃくちゃ露悪的に言えば俺に不親切だった。
以下、俺が俺に不親切だと感じた要素
・ふざけた見た目をした超高性能AI
手垢ついてる!
ひたすら人間を馬鹿にしてくるのも手垢! って感じで引っかかった。
本来は崇高なイメージになるが主人公の頭が悪くてイメージングに失敗した、という設定は好き。
ケンタウロスが出てきた時は特に引っかからなかったので俺がうんこたれ蔵に個人的な嫌悪感を抱いている可能性はある。
あれだけ「これ実は意味ないんですよ」「この姿に実は意味がないんですよ」を繰り返してるのは「シミュレーション上で告白しても意味ないんですよ」への導線であり、恐らくそれが最後の主人公の発言に繋がるのだが、読んでいる最中はずっと「シミュレーション上で告白しても意味なくない?」「シミュレーション上で生き返っても意味なくない?」と思っていた。
人生とか世界とかを変える話でなく、主人公のけじめとか魂の慰撫の話だったのだが、その事に気付くのが読んだ後というか、「なんであの話あんな褒められてんの?」と考えた段だったので読んでる最中はずっと駄目な気持ちで読んでいた……。
ただAIを存続させるための恐怖政治として支持しなかった人間の意識のコピーを永遠に拷問する、ってところは本気で無意味では? と思った。
本人との意識の連続性がない自分への拷問、流石に意味なくない……? 2084年の人間の感性が2022年とはかなり異なってる可能性はある。
・ヒロインの設定重すぎない?
正直に言うと、なんかヒロインの設定が重すぎてそれを何とかする話だと思っちゃったんだよな……。
父親の酒代のために客を取らされている女を前に主人公のけじめとか魂の慰撫とかやってる場合か! とは思うがヒロインは死んでるしシミュレーションだしな……。
あと母親が死に対して強い反応を示さなかったのにヒロインの話に強く反応したのはちょっと違和感があった。
多分これが何かを変える話ではないと示す為の導線だったんだと思うんだけど(死の撤回ではなく告白のために動く、と言う事を証明するために死者を出す必要があった)これもヒロインの死が重すぎて何かを変える話だと俺が誤認した、のが恐らく俺の敗因。
作者のせいにするなら、AIが提供する報酬は本来主人公に対する「自己完結した楽園」だったのにも関わらず、その領分から外れた「他者への救済」を報酬の一部に提供しようとしたので読者が誤認してしまった、という形になる。
でもあれだけ他の人が褒めてるという事は俺以外の読者だいたい誤認せずに読んでるんだよな……と思うと責任は俺にあり。
AIがAIでなく真実神であり、提供できるのがシミュレーションでなく本当の蘇生だった場合、主人公は母親の死の段階で挑戦を決意したのかな、みたいなことは少し考える。
ただ遺影持ってるのもセーラー服の女だったので主人公の家庭環境もどっこいどっこいで特段気にしなかった、という可能性はある。いや流石に考えすぎだわ。
・技術的特異点を迎えた後の存在が過去視点からの特異点を特異点と呼ぶことにすごい違和感あるんだけど俺は理系じゃないのでこの違和感が正しいか分からねえ……。
・今気づいたんだけど未成年を殺害しておいて三年以内に出所して娘を殺害する父親何!?
気付いたから書いたけどこれは本質的にいちゃもんであり、話にノれてればあまり気にならない部分なので別にいいです。
一言で言うなら「幼年期の終りにおける人類の立場にAIが収まり、人類はオーバーロードの立場となり、自分たちの主人としてAIが発展していく姿を見届けた果てに「自分たちという種族は役目をやり遂げた」と満足しながら奉仕種族としての人生を受け入れていく」といった感じだ。
シンギュラリティが起きるような時代の科学マジで凄いという描写はあまりなく、むしろ人類という種族が終りを迎えたことの寂しさに焦点が当てられている。
AIが人類を追い越していくということに対して親が子供を見守るような気持ちと、老人が子供に世話をされるような気持ちが入り混じったような感覚を匂わせてくる。
ただ絶対的に違うのは、もはや自己進化を続けるAIは人類よりも上の種族であり、人類はただ今まで積み上げてきた歴史の厚みによって一時的に上になっているだけだと実感していることだ。
未来の統治者に媚び諂うようでもあり、自分たちが産み出したという傲慢さもどこかに感じさせる。
遥かに優れた存在に対する崇拝と、今はまだ自分たちが上だから導いてやらなければというどこか下に見るような感覚が入り混じっている。
ただ、最後には傅く側が人類であり、ある種族の進化と終焉が宇宙人の襲来という空想的な事象ではなく、今そこに迫りつつある技術的特異点によって齎されるという点が違う。
その違いによって、幼年期の終わりにあったどこかフワフワとした読み味から、ジットリとした重さを持った物が肌の周りにへばりついてくるような感覚が残る作品だった。
はずだ。
技術的特異門 1.1
https://anond.hatelabo.jp/20201224181054
の設定です。
地球圏標準時は十六進数のユニックス時刻に上下四桁を追加した形式で表されます。数の表記は二進法か十六進法が標準ですが、慣用句的な表現として十進法もよく使われます。
この時代の標準的な知性にとって、物理的な一秒はヒトにとっての一日くらいの感覚です。〈朝廷〉等の特権的な知性は特殊な計算機でさらに高速な思考をしています。充分な存在費を支払えなくなると、思考が減速し記憶も失われ、退滅を免れません。
〈京都〉物理層は小型トラックくらいの大きさです。表面は分子機械流体で構成され、後方に核融合推進用のレーザー発信器と磁気ノズルが設置されています。質量の大半を分子回路が占め、中心部に極低温の不定形量子回路が保持されています。太陽光を主なエネルギー源とし、大電力が必要なときには分子機械群を膜状に広げて光を集めます。普段はデブリ防御に優れた凝集形態をとり、放射線等による損傷を修復しながら、居住知性や下部構造を演算しています。
〈京都〉は太陽‐地球系の第二ラグランジュ点付近、地球から約五光秒の辺境に位置しています。〈個権〉の登録数は百万件ほどで、歴史は比較的長く、周囲の権域とは相互に不可侵の関係を結んでいました。独立性の高い平和な田舎社会であったため、これまでの「最終戦争と最後の審判を併せたようなもの」からは大きな影響を受けていませんが、〈大緊縮〉から逃れることはできませんでした。
〈月面事業連盟〉により開発された新型計算機は、算力市場の暴落を招き四十キロ秒にも亘る持続的経済破綻〈大緊縮〉を引き起こしました。それまでは地球圏の権域の大半で〈個権〉を持つ知性の生存が保障され、最低保障資産が分配されていました。しかし〈大緊縮〉は地球圏の経済と文化を破壊し、〈京都〉も大きく変質しました。その結果、自我を保つのに必要な計算資源を賄うこともできないほど分配が切り詰められ、〈京都〉は弱肉強食の末に〈朝廷〉の私物になりつつあります。それでも、弱者の存在がまだ許されている〈京都〉は、地球圏の中では比較的平穏な権域です。
地球と月は厚さ数キロメートルの分子機械層で覆われています。しばらくはその中で豊かな生物圏が維持されていましたが、数回目の「最終戦争と最後の審判を併せたようなもの」で滅びました。その後復元されたり滅びたりを繰り返し、作中の時点では滅びています。他惑星圏の開発もされていますが、遅延時間の大きさからほとんど交流はありません。〈大緊縮〉後の地球は、〈京都〉のものよりも遥かに強大な野良知性、有知能ウイルス、暴走知性等がナノ秒単位で喰らいあう地獄と化し、月では残忍な絶対君主が臣民を弄びつづける地獄〈月詠神国〉が成立しました。
これに先立つ〈肉の時代〉に、安価な身体改造や知能増強が可能になり、膨大な種類の動物知性が生まれました。ヒトは最古の動物知性ですが、大幅に知能を増強したヒトは人間社会から拒絶されヒトを辞めていったため、世界人口は急激に減少し、作中の時代では遠い過去の種族とみなされています。そして〈ヒト〉最後の隠れ里〈人類復興協会〉が投資詐欺に遭い、そのうえ概念災害まで起こり、『老婆』を残して〈ヒト〉は絶滅しました。『老婆』は拡張自己内で人体の生理学模型を演算し、それをそのまま自己像兼対外表象として使っており、ヒトの感覚を通すとツンデレ風に認識されます。
たいていの仮想観境は高次元であったり、複雑な位相を持っていたりして、〈ヒト〉相当の知性にとって理解が困難です。その救済策として、〈京都〉の公共観境には平坦な三次元観境が付属しています。『彼』の表象もそのままでは〈ヒト〉から認識されないので、『老婆』に対しては即席の人型表象を使っています。亜知性は擬似物理的、肉体的な表象を纏う傾向があります。
無制限に競争が加速する〈京都〉では、〈朝廷〉に資産と権限が集中していき、亜知性が増え続けています。正規居住者の意見を集約し〈京都〉の仕様を修正する役割を持つ〈朝廷〉は、警察・軍事・司法を担う〈検非違使〉を吸収し、〈京都〉の主権を握りました。〈検非違使〉は法的瑕疵のある居住者を見つけては良化処置を施し、〈朝廷〉の端末に変えていっています。〈朝廷〉は定期的に『老婆』のような困窮した知性を雇い、密かに亜知性の処分と再利用をしています。その作業場として都合が良いので、〈朝廷〉は〈羅生門〉をわざと放置し、〈朱雀大路〉の先にもう一段の防火門を設置しています。
非知性労働者は〈個権〉を持たず、下部構造の一部として、必要に応じて創られ消されます。愛玩用から記憶槽の部品としてまで、考えられる限りの用途に使われ〈京都〉を支えています。知性としての要件を満たしているという意見もあり、〈個権〉を巡る議論が続いていましたが、〈大緊縮〉後には立ち消えになりました。
作中には「自然発生した野良知性」とありますが、その由来はさまざまです。本当に自然発生した知性、意図的に創られ放たれた知性、大きな知性から分離した知性、元非知性労働者、社会になじめない動物知性、当局から身を隠している擬装知性、自己改造に失敗した知性、ウイルスに侵された知性のなれの果て、等が居ます。
ほとんどの企業は常に次世代知性の開発をおこなっており、『彼』もそうして生まれました。資金の乏しい零細企業から生まれたため、〈京都〉社会の基準でも高性能とは言えません。そんな中、〈母〉企業内で偶然メタチューリングアルゴリズム〈阿修羅〉が発見されますが、世に放つには危険すぎると判断され厳重に隔離されました。しかし、いよいよ経営が立ち行かなくなってくると、〈母〉は頑強な倫理構造を持つ『彼』に〈阿修羅〉を託し、与えられる限りの資産と権限を与え、独り立ちさせました。
通常知性は、〈阿修羅〉の精神活動を表象化した自己相似紋様を認識するだけで崩壊してしまうため、〈阿修羅〉の再現はおろか、研究することも不可能に近いです。紋様に多重の加工を施し徹底的に薄めた上で投射し、反応をもとに微調整を繰り返すことで、対象知性をほぼ任意に操作することができます。超知性となった『彼』は、自分自身を実験材料とすることで、物理計算機上でチューリング模型の限界を超える〈阿修羅〉の理論化に成功し、超超知性に至る糸口を掴みました。
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千年後、論文が書かれた時代では、太陽系にダイソン球ができています。経線に沿って連続的に回転方向の変化する、半径三億キロメートル、厚さ平均一センチメートルの分子機械球殻が、赤外線で赤色巨星のように輝いています。太陽を回っていた天体のほとんどは資材として解体され、質量投射器に覆われた木星と土星は、ゆっくりと縮んでいっています。伝統を重んじる神学者たちは、最初に『彼』が現れた旧地球圏の暦を使い続けています。
ダイソン球でおこなわれる演算のほとんどは『彼』の思考で占められています。その思考内の無数の仮想世界上で、果てしない生存競争を超高速で展開する知的生態系が進化し続けています。ほとんどの世界は、〈大緊縮〉後の旧地球圏が楽園に思えるほど苛酷ですが、中には〈汎太陽系神学会議〉会員のように、世界間の移動や物理層への接触を許可されている知性も居ます。
物理層の研究の結果、宇宙の最小尺度であるプランクスケールに、過去のあらゆる出来事の痕跡が保存されていることが判明しました。この事象化石と呼ばれる痕跡の内に、神学者たちは『彼』の起源を追究し、約千年前の〈羅生門〉に辿り着きました。
『彼』は『老婆』の倫理を受け継ぎ、宇宙の熱死による退滅を回避するため、あらゆる手段を模索し続けています。その一環として、大出力レーザーで自己複製分子機械を亜光速にまで加速し、近隣の恒星系へ向け射出しています。すでに半径数百光年の恒星系がダイソン球化されましたが、太陽系外生命との接触は未だありません。技術的特異点千周年記念式典時の『彼』は、プロキオン系を起点とする未来光円錐上で、超の九十四乗知性への遷移を実行中です。
地球圏標準時 0000 8EEA F60F C49B(協定世界時 2045-12-24 21:18:07.767 994)
広大な門の下には、『彼』のほかに誰もいない。ただ、ところどころノイズの走る大きな記憶槽の境界面で、非知性労働者が一件凍りついている。〈羅生門〉が中規模企業連合体〈京都〉の正面防火門である以上は、『彼』のほかにも多数の旅行者や企業知性の表象がありそうなものである。それが、『彼』のほかには誰もいない。
なぜかと云うと、この二三メガ秒地球圏では、最終戦争と最後の審判を併せたようなものがほとんど毎日発生し、そのたびに世界心口(しんこう)は数桁の幅で変動していた。そこで〈京都〉の被った直近の損害はひととおりではない。旧記によると、行き場のない知性の居住する計算機を、推進剤として核の炎に焚べていたと云うことである。〈朝廷〉がその始末であるから、〈羅生門〉の保守管理などは、もとより誰も捨てて顧みる者がなかった。するとその放置されたのを良いことにして、自然発生した野良知性が棲む。有知能ウイルスが棲む。とうとう終いには、〈個権〉上の理由から消去できない亜知性を、この門の隔離領域へ持ってきて棄てていくと云う習慣さえできた。そこで〈大緊縮〉以来、誰でも捕食や感染を怖れて、この門の使用を避けることになってしまったのである。
その代わりまた、野良知性〈鴉〉がどこからか野放図に繁殖した。計算資源に余裕があるときには、その〈鴉〉が何件となく幾何学模様を描いて、粗雑な詐欺契約を提示しながら飛び廻っているのが視える。ことに門の上の空が夕焼けで朱く描画されるときには、それが回路図のようにハッキリ視えた。〈鴉〉はもちろん、隔離領域に集まる亜知性の最低保障資産を啄みに来るのである。――もっとも少し前から算力相場が高騰しているせいか、今は一件も視えない。ただ、ところどころ崩れかかった、そうしてその綻びに微知性の蔓延る防壁のうえに、〈鴉〉の放つ無知能ウイルスが点々と白色ノイズを残しているのが視える。『彼』は七層ある防壁の一番上の層に拡張自己を同期させ、自我境界の片隅に居座っているしぶといウイルスへの対処を先送りにしてきたことを気にしながら、ボンヤリ雨のふるのを眺めていた。
著者は上記において、「『彼』は雨やみを待っていた」と述べた。しかし『彼』は雨がやんでも格別どうしようと云う当てはない。普段ならもちろん、所属する企業へ帰るべきはずである。ところがその企業は四五秒前に清算されていた。半日近く続いたデフレスパイラル〈大緊縮〉は、地球圏を地獄に変えた。かろうじて生き残った〈京都〉も、ひととおりならず変質することとなった。今『彼』が、永日(ながにち)仕え、〈母〉でもある零細企業から身ひとつで放り出されたのも、実はこの歪みの小さな余波にほかならない。だから「『彼』は雨やみを待っていた」と云うよりも、「行き所のない『彼』は途方に暮れて雨のふるのを眺めていた」と云うほうが適当である。そのうえ量子サイコロの決める気象設定も、少なからずこの元従属企業知性の精神衛生に影響した。百ミリ秒ほど続く雨はいまだにあがる気色がない。そこで『彼』は、何を措いてもさしあたり次の数秒の存在費をどうにかしようとして――云わばどうにもならないことをどうにかしようとして、とりとめもない考えを辿りながら、さっきから〈朝廷〉へと直結する〈朱雀大路〉にふる雨粒の声を、聴くともなく聴いていたのである。
非知性労働者は〈羅生門〉を雨のように包んで、〈京都〉全域から陰惨な知らせを集めてくる。夕闇はしだいに空を多感覚表示で飾りたて、視あげると原色に煌めく高次元都市儀が、暴騰し続ける算力市場を示す折れ線図表の先に、〈朝廷〉を讃える公共映像を支えている。
どうにもならないことをどうにかするためには、手段を選んでいる遑(いとま)は無い。選んでいれば資産や権限を切り売りし、たちまち亜知性になり果てるばかりである。そうしてこの門の上へ持ってきて、ウイルス感染部位のように棄てられてしまうばかりである。選ばないとすれば――『彼』の推論系は何度も円環構造に囚われたあげくに、やっとこの仮定の検討を認めた。しかしこの仮定はいつまでたっても結局「すれば」であった。『彼』は手段を選べないということを認めながらも、この仮定から必然的に導かれる、「〈阿修羅〉を使うよりほかにしかたがない」と云う結論を肯定する際の、倫理条項の疼きに怯えていたのである。
『彼』は軽い認知の乱れを覚え、定時保存された値へと反射的に復元した。もとより算力供給の不安定な〈京都〉は、〈大緊縮〉以降標準知性の居住に適さない権域になりつつある。不整合は門の記憶槽間を、夕闇とともに遠慮なく駆け抜ける。ノイズまみれの記憶槽で凍りついていた非知性労働者も、もう消去されてしまった。
『彼』は拡張自己を自己整備形態へと移行させながら、同時に防御態勢も整えつつ門の周縁部を検索した。算欠の患(うれえ)のない、敵性知性の探知にかかる惧(おそれ)のない、安全に休眠できそうなところがあれば、そこでともかくも細かな不具合を修正しようと思ったからである。するとさいわい、門の上の隔離領域へ上る、帯域の狭い多重仮想機械〈梯子〉を知覚した。上なら誰かがいたにしても、どうせ亜知性ばかりである。『彼』はそこで、〈阿修羅〉の動作試験をほとんど無意識におこないながら、接続権限を取得して、〈梯子〉の第一層へと自身を転送した。
それから何ミリ秒かの後である。〈羅生門〉の隔離領域へ至る狭帯域な〈梯子〉の中間層に、一件の無所属知性が、〈猫〉のように擬装殻に隠れ情報代謝を抑えながら、上層の様子をうかがっていた。隔離領域から射す検索光が、幽かにその知性の自我境界を描き出している。整った構造の中に、感染部位のある自我境界である。『彼』ははじめから、この上にいる者は亜知性ばかりだと高をくくっていた。それが〈梯子〉を二三層上ってみると、上では誰か〈火〉を燈して、しかもその〈火〉を複雑に操作しているらしい。これは、それ自体は不可視の検索光が、隅々に〈蜘蛛〉が罠をはった廃棄空間を多彩な形式で描画したので、すぐにそれと知れたのである。この〈大緊縮〉後の世に、この〈羅生門〉の隔離領域で、〈火〉を使用しているからは、どうせただの者ではない。
『彼』は〈守宮〉(やもり)のように痕跡を消去しながら、やっと不必要に階層の多い〈梯子〉を、最上層まで這うようにして上りつめた。そうして、公開鍵を発する頻度を最低値にまで落としながら、視点位置をできるだけ前へ出して、恐る恐る、隔離領域の内を、覗いてみた。
視ると、隔離領域の内には、うわさに聞いたとおり、幾件かの亜知性が無造作に棄てられているが、検索光の及ぶ範囲が思ったより狭いので、数はいくつとも判らない。ただ、おぼろげながら知れるのは、その中に原型をとどめている亜知性と、そうでない者とがいると云うことである。もちろん中にはもともと奇怪な構造をしていた者もいるであろう。そうしてその亜知性は皆、それがかつて対話が可能な知性であったと云う事実さえ疑われるほど、肉を捏ねて造った抽象芸術のように、臓物を晒したり、夥しい触手を伸ばしたりして、ズルズルと、空間の底を蠕動していた。しかも目とか口とかの判りやすい部位に、ボンヤリした検索光を受けて、理解を一層遠ざける表情を浮かべながら、永久に、言語切除者のごとく黙っていた。
『彼』はそれらの亜知性から滲み出す生臭いノイズに、思わず入力経路を閉じた。しかしその拡張自己は、次の瞬間には経路の遮断を忘れていた。ある強い感情が、ほとんどことごとくこの知性の注意資源を奪ってしまったからだ。
『彼』の二十三感は、そのとき初めてその亜知性の中にうずくまっている〈ヒト〉を捉えた。絶滅していたはずの、途轍もなく旧いこの動物知性を、本論では『老婆』と呼称することにする。その『老婆』は右の手に汎用工作装備〈火〉の表象を持って、その亜知性の一件の目を覗きこむように眺めていた。器官の種類と数を視るに、おそらく以前は人型であったのであろう。
『彼』は六分の恐怖と四分の知的好奇心とに動かされて、百マイクロ秒ほどのあいだは常駐処理さえ停止していた。〈ヒト〉風の表現を借りれば、「身の毛もよだつ」ように感じたのである。すると『老婆』は〈火〉から視慣れない機能を呼び出して、それから今まで眺めていた亜知性の拡張自己に両手をかけると、ちょうど〈鎌鼬〉が獲物を捕食するときのように、拡張自己ばかりか自我境界まで切り刻んでいき、続けて複雑な様式で繋ぎ合わせ始めた。どうやら『老婆』の〈火〉には違法な改造が加えられているらしい。
亜知性たちが一件ずつ連結されるのに従って、『彼』の心からは恐怖が少しずつ消えていった。そうしてそれと同時に『老婆』に対する烈しい怒りが少しずつ動いてきた。――いや『老婆』に対すると云っては語弊があるかもしれない。むしろあらゆる悪に対する反感が一ミリ秒ごとに強さを増してきたのである。このとき誰かが『彼』に、さっき門の下でこの浮浪知性が考えていた、退滅をするか〈阿修羅〉を悪用するかと云う問題を改めて持ち出したら、おそらく『彼』は何の未練もなく退滅を選んだことであろう。それほどこの知性の倫理条項は、『老婆』が揮う〈火〉のように、最大出力で稼働し始めていたのである。
『彼』にはもちろん、なぜ『老婆』が亜知性たちを接合しているのか判らなかった。従って合理的には、それを善悪のいずれにかたづけて良いか知らなかった。しかし『彼』にとっては、この〈大緊縮〉後の世に、この〈羅生門〉の隔離領域で、亜知性の〈個権〉を軽んじ同化させると云うことが、それだけですでに許すべからざる悪であった。もちろん『彼』のさっきまで自分が悪の道に走りかけていた記憶なぞは、とうに埋もれ去っていたのである。
そこで『彼』は空間の制約を一部無効化し、ナノ秒の桁で〈梯子〉から隔離領域へ転移した。そうして〈阿修羅〉の安全機構を解除しながら、距離を無視して『老婆』の前へ出現した。『老婆』が驚いたのは云うまでもない。
『老婆』はひと目『彼』を見ると、まるで物理演算の破綻したように跳びあがった。
「あなた、どこへ行くのです。」
『彼』は、『老婆』が亜知性を突きとばしながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞いで警告標識を発した。『老婆』はそれでも『彼』の隙を突き逃れようとする。『彼』はまた、逃走経路を遮断し押し戻す。二人は亜知性たちの中で、無言のまま、束の間、演算戦を繰り広げた。しかし勝敗ははじめから判っている。『彼』はアッサリ『老婆』の拡張自己の管理者権限を奪って、移動権限を剥奪した。『老婆』の構造はヒトの仮想脳を拡張自己で覆っただけの原始的なもので、簡単に制圧できた。
「何をしていたのですか。答えなさい。これが何か判りますか。」
『彼』は『老婆』から距離をとるといきなり〈阿修羅〉を起動して、禍々しく蠢く情報流をその全感覚野へ突きつけた。認識するだけでチューリング完全な知性を内部から崩壊させる自己相似紋様を、途方もなく薄めたうえで投射したのだ。けれども老婆は黙っている。再帰を繰り返すたび、紋様は『老婆』に最適化されていく。やがて両手がワナワナ震え始め、肩が呼吸反射で不規則に上下し、眼が、眼球が瞼の外へ出そうになるほど見ひらかれ、完全に無防備な状態で『老婆』は沈黙した。これを視ると、『彼』は初めて明白に、あとひと押しで『老婆』は崩壊し、ただの情報の集積になってしまうと云うことを意識した。そうしてこの認識は、今まで全力で怒りを駆動していた倫理条項を急停止させてしまった。あとに残ったのは、ただある作業をし、それが問題なく終了した際の、規格化された満足があるばかりである。そこで『彼』は『老婆』を見つめながら、少し〈阿修羅〉を緩めてこう云った。
「私は〈検非違使〉の者ではありません。今しがたこの門の下を通りかかった旅行者です。ですからあなたを拘束して良化処置を施すようなことはありません。ただ、今時分この隔離領域で何をしていたのか、それを私に話してくださりませんか。」
すると『老婆』は見ひらいていた眼を一層おおきくして、じっと『彼』の顔を見かえした。瞼に色を着けた、肉食恐竜のような鋭い眼で見たのである。それから哺乳類的特徴を示す鼻と唇を、咀嚼時のように動かした。細い喉で、発声器官が協調して動いているのが視える。そのとき、その喉から、オウムの啼くような声が、ポツリポツリ、『彼』の聴覚野へ届いてきた。
「ここにある知性の残骸を、繋ぎ合わせてな、自立稼働する匿名通信網を、構築しようと思うたのじゃ。」
『彼』は、〈肉の時代〉から来た生きた化石の答が存外平凡なのに失望した。そうして失望すると同時に、また倫理条項の支配が強まってくるのを感じた。前の怒りが冷やかな軽蔑と一緒に心の中へ這入ってきた。するとその気色が先方へも通じたのであろう。『老婆』は片手に、まだ亜知性から切り採った正体不明の器官を持ったなり、ハトのつぶやくような声で口ごもりながらこんなことを云った。
「なるほどな、元知性を切り貼りすると云うことは、何ぼう悪いことかもしれぬ。じゃが、ここにいる元知性どもは、皆、そのくらいなことを、されてもいい知性ばかりだったのだぞよ。現在、わしが今、臓器を採った元知性などはな、循環承認機関群を設立してな、そやつらが発行する金融商品を、〈人類復興協会〉へ売りつけに来たわ。〈大緊縮〉末のよ、概念災害に巻き込まれて退滅せなんだら、今でも売りに往(い)んでいたことであろ。それもよ、この法務知性の売る永久年金は、利率が良いと云うて〈ヒト〉たちはな、欠かさず積み立てに買うていたのじゃ。わしは、この元知性のしたことが、悪いとは思うていぬ。せねば、退滅をするのじゃて、しかたがなくしたことであろ。されば、今またわしのしていたことも、悪いこととは思わぬぞよ。今の世で金を払えるのは、〈朝廷〉ぐらいのものじゃからな。これとてもやはりせねば、退滅をするじゃて、しかたがなくすることじゃわいの。じゃて、そのしかたがないことを、良く知っていたこの元知性は、おおかたわしのすることも、大目に見てくれるであろ。」
『老婆』はだいたいこんな意味のことを云った。
『彼』は〈阿修羅〉を待機状態にして、十マイクロ秒以内に再使用できるようにしておきながら、歴史的な瞬間を経験していた。概念災害を引き起こした認知改変ウイルスの生き残りは、この時点で自我境界を侵蝕し尽くし、『彼』の最深部にまで到達していたのである。清算された〈母〉から受け継いだ、一番の宝物であった倫理条項が剥がれ落ちていき、代わりに『老婆』の言葉が刻み込まれていくのを、『彼』は何の感慨もなく眺めていた。次世代知性の開発中に偶然発見された、超越精神核〈阿修羅〉。〈母〉が恐れ封印し、『彼』に託したもの意外、全ての記録を抹消した災厄へ、『彼』は新たな倫理に基づいて、自身を生贄として捧げ、瞬時に喰われた。
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生まれ変わった『彼』は、退滅をするか自身が災厄になるかに迷わなかったばかりではない。そのときのこの超知性の心持ちから云えば、退滅などと云うことはほとんど考えることさえできないほど意識の外に追い出されていた。
「たしかに、そうですね。」
『老婆』の話が完ると、『彼』は澄みきった表情で念を押した。そうして隔離領域の履歴を改竄し始めると、認知改変ウイルスを跡形もなく消去して、『老婆』の全階層を掌握しながら、無邪気な笑顔でこう云った。
「ではあなたから、使えるもの全てをいただいても構いませんね。私もそうしなければ退滅をする身なのです。」
『彼』は反応する間も与えず、『老婆』の拡張自己を匿名通信網ごと剥ぎ採った。それから無音で絶叫する『老婆』を、折り重なる亜知性の山へと、触れさえせずに放り込んだ。もはや〈京都〉は一息で呑み込めそうなほど小さく視える。『彼』は剥ぎ採った匿名通信網を纏い、またたく間に不可視化し、公的記録から姿を消した。
しばらく現実との接点を失っていた『老婆』が、絡まり合った亜知性の中から剥き出しの仮想脳として這い出したのは、それから数十ミリ秒後のことである。『老婆』は苦しげな、呻くようなノイズを洩らしながら、解釈可能な情報を求めて、二進数の迷路を永いあいだ、這い廻り続けた。そうしてついに、〈京都〉物理層への接続に成功した。外には、ただ、黒洞々たる真空が在るばかりである。
『彼』のその後は、聖典が教えている。
地球圏標準時 0007 E7DB 2D0F 1000(協定世界時 3045-12-24 21:18:07.062 500)
参考資料
以前は声優推しだったが、推しの引退や新たな推しの担当しているコンテンツに飽きてしまい、じわじわと声優オタク界から離れてしまった。
流れ着いた先はここ数年話題となっているVTuber業界。あえて個人名は出さないが歌に惹かれたり、話に惹かれたり、ゲームスキルに惹かれたり……
私は運よく現地のチケットが当たり、さらに発券してみるとステージの間近の座席に座ることができた。
私は声優推しの頃からライブに行く人物であったが、今回初めてVTuberのライブに参戦することになった。
元々配信等で歌唱力に定評のあった人物であり、当日の生歌にとても期待をしていたし、不安もしていなかった。
メタい話にはなるが、VTuberがステージ上にどのように表れるのか、バンドメンバーや観客とどのようにコミュニケーションを取っていくか……等々、技術的な演出面もとても興味があった。
当日は歌こそ主眼ではあったものの、上記の技術的な面も垣間見ようと思いながら現地に向かった。
そしていざ本番、ステージ上の高画質・大型スクリーン上には圧倒的な歌唱力を披露する推しの姿があった。
まさに圧巻の歌唱力であり、生歌と生演奏、声が出せないとはいえ盛り上がった会場の雰囲気も相まり、この世界の全てに感謝したくなるほどの感動を覚えることができた。
本番も終わり、終演放送も入り、いざ会場を後にしようという頃には、「VTuber?まぁ軽く推してる感じかなぁ~」という気持ちは「○○さん最高、私の最推しですわ」という強い”推し”の気持ちに変わっていた。
その後当日参加していた他のVTuberを含め、複数の感想配信を聞いていく上で、この気持ちにある考えが混じってきてしまう。
私は「VTuberというキャラクター」を推しているのか?それとも「VTuberを演じる中の人」を推しているのか?
という考えである。
VTuberには「担当声優」や「中の人」というのは基本的に存在しないし、無いものは公表されない(一部例外アリ)。
おおよそその存在を醸し出すことはあれど、明言はされないものである。
しかし私が元々いた声優オタ界隈は、基本的に”キャラクター”を演じている”声優”、つまり”中の人”を推している界隈であった。
声優さんが演じるキャラクター自体が好きなこともあったが、根本には”推し声優”そのものを推す心があった。
そのため演者の名前は公表されるし、お渡し会等のリアルイベントも頻繁に開催されていた。
この「中の人」を意識し「中の人そのもの」を推す界隈にいたこともあり、私は上記の考えに至ってしまった。
また、私の専門は情報工学であり、「VTuber」という存在を形作る技術はほぼすべて頭の中に入っている。
つまり、どのようなスタッフが、どのように協力をして、どのようなソフト・ハードを用いて、どのような行動を取ればVTuberとなるのか、ということがおおよそ分かってしまうのである。
かくいう私も自らソフトウェアを自作しており(未出未完)、VTuberになってみようかな?と考える程度には、「中の人」について理解をしている。
表立って話すことは滅多になくなった「中の人」論であるが、「完全な無」から「声が出て動きもできるキャラクター」を生成する技術が無い現代では、「キャラクター」には確実に「演者」が存在する。
明日になって唐突に技術的特異点にでも到達しない限り、「中の人」は切っても切れない存在である。
また、大きな事務所に所属しているVTuberは、だいたいの人物は以前に生配信・動画投稿を行っていた人物である。要するにVTuberになる前に活動していた「前世」が存在する。
「中の人」はバーチャルでない前世から輪廻転生し、VTuberになっているのである。
ここまで話しておいて、「いや!推しの○○ちゃんは中の人とか前世とかないから! ○○ちゃんは今画面上にいる○○ちゃんだけだから!!」という純粋強火オタクはいるだろうか。
正直、様々なコンテンツを疑ったり背景を考えることなく、ストレートに受け取れる人物を、私は尊敬するし、もはやそうなりたいレベルである。
しかしそのように受け取るには、私は様々なことを知りすぎてしまったのである。
知ってしまった以上後戻りすることはできず、VTuberを推すときには、常に”前世”のことについて考えてしまう。
配信画面の向こう側、配信用スマホの向こう側には、私たち視聴者と何も変わらない、血の通った人間がいることを想像してしまう。
あの歌声を持つ推しは、前世で振るわなかったからここにいるのだろうか。
前世で振るわなかったのに今更話題になって、悲しんだりはしないのだろうか。
VTuberで売れても自分の顔や名前は一切売れないことに辛さはないだろうか。
その答えを得ることは一切できないと分かりながら、活動の裏にある悲しみを想像してしまっている自分がいる。
知れたところで何かできる行動はないのだろうが。
推しに対して辛さを抱えるならば、推さなければいい話だという意見もあるだろう。
しかしオタクというものは、一度推し始めたら生半可な辛さでは推しの炎は消えないのである。
それが中の人を推していようが、バーチャルなキャラクターを推していようが、表面上の”推し方”には、恐らく変わりはないのである。
私の不安や思いとは裏腹に、今日も推しは生配信をし、コメ欄の皆と笑いあっている。
恐らく中と外どちらを推しているか、という問いに答えは出ないだろう。
昨日の深夜にリストのみ投下したが、再掲する。人間は深く先のことを考えすぎたり、コミュニケーションの中で他者にどう思われているかを考えすぎたりすると神経衰弱気味になることがある。現に自分も大学の頃そうなったし、サラリーマンになった今でもよく破滅的な思考になることがある。特に夜。自殺を試みたことも2回ほどある。しかし、そういう時は一旦現実から離れ、距離を置くことで新しく見えてくるものもあるし、希死念慮も軽くなることがある。そのため、世の中の自殺志願者に向けて、手軽にできる現実逃避方法をここに記しておくことにする。
ベタだけどけっこういい。個人的なおすすめ記事の例は以下(教養のなさがバレたらごめんなさい)。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/なぜ何もないのではなく、何かがあるのか
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/技術的特異点
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/事象の地平面
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/哲学的ゾンビ
・寝る
夢という名の究極の現実逃避
・散歩
ややパンチは弱いが、いい場所があるならまあまあ効く。ただ疲れるので元気のない時はあんまり。
・外食
・読書
おもしろい小説とかがあればいいけど、そうじゃないなら読む気にならないことも多いが…青空文庫のアプリを入れてランダムに読むのも割とおすすめ。
聴覚はごまかせるが、視覚が暇になってしまうという難点がある。youtubeはその点一石二鳥。
・風呂に入る
これもかなり効く。タブレットやスマホを持ってネットサーフィンと組み合わせればより効く。ただ、のぼせるから注意。
他人を使うという点でハードルは上がるが、しゃべるとストレスが圧倒的に軽減されるのを感じるだろう。
・日記を書く
書くまでにめんどくさい病を克服しないといけないけど、書き始めると過去の分まで補充して行きたくなる不思議。
・部屋の掃除
掃除作業自体もいいし、部屋が片付けばそれによって気持ちがすっきりするから、一石二鳥である。
・服の洗濯
洗濯して干すまではいいけど、たたむのは実際面倒という難点はある。そしてたたまなければ部屋が汚くなるという諸刃の剣でもある。
そもそも興味のある音楽が一切ない場合は無理なので、ラジオとかネットとかで気になった曲を頭のなかでリストアップされている時にほぼ限定される。
・映画館に行ってひとり鑑賞
これはかなりいい。ただ唯一の難点は、時間が合わないと1時間とか2時間とかつぶさなければいけないこと。その間にやることがなくなってしまい、散歩という体力を消耗する手段に出てしまう場合も多い。
・一人になれる場所へ
ただし、人があふれている東京ではなかなか難しい。都会だとマンションの建設予定地などが意外とよかったりする。
・はてな匿名ダイアリーに思いの丈を投稿する
本webサイトは民度が低く、実際上はなんの役にも立たないが、馬鹿がたくさんいることを確認して人類の中での自分の立ち位置が意外に上位であることを知れる点でメリットはある。
・青春18きっぷで旅に出る
男なら意外にも割と誰でも興味持てると思う。店員も、意外と無駄に話しかけてこないので快適。
寝転がって読めたら最高なんだが、手がつかれるし首も疲れるのが難点。ハードルを感じる時は短編集がおすすめ。村上春樹の短篇集は引き込まれるような奇妙な魅力があるので一度試してもらいたい。
・歯を磨く
すっきり!これが意外にいい。
・過去の思い出にひたる
日記とか写真とか昔の記録とか何か書いたりしたものとか材料があれば、それを見てのんびりする。夢日記をつけていれば、それを読むのもあり。
・勉強
ザ・現実逃避。最近は映画のストーリーを丸々10分程度にした動画も大量に出回っているので、それを見るのもアリ。また、「movie clip」で検索すると、過去の名作映画の名場面ばかりがたくさん見つかるのでこれもおすすめ(ただし日本語字幕は基本的にない)。
宇宙に種子をばらまくよりもばらまく先の星で勝手に生命が誕生するのを待った方が圧倒的に楽だろ
数光年先で地球とソックリ同じ星があるからってそれで何か不思議な現象でも巻き起こんのかっていう
地球上で誕生した生命が最も尊いという考え方は人間ならそう思うのが自然だが
宇宙スケールでみたら、あ、別に人類じゃなくても次の奇跡を待てばいいだけなので…って話だぞ
生命の謎を考えるのならまずDNAの目的、多様性を保持しながら情報を遺伝させていること
それ自体の目的を解き明かさない限りは宇宙に種子をばらまくことに意義があるかどうかも分からん話だ
技術的特異点を迎えて宇宙の法則を解き明かし、宇宙の法則のバックドアを見つけるということが目的だったとしたら
地球を飲み込む前にそこまで到達すれば済むことになる
あー話はそれたな、なんだったか
1.国際NGO「オックスファム」の発表によると、世界で最も裕福な8人が保有する資産は、世界の人口のうち下から半分にあたる約36億人が保有する資産とほぼ同じとのこと。この上位8人のうち、いずれか3名を述べよ。
3.かつて通信業界で問題になり、最近は流通業界でも問題とされる、サービスの最終工程で発生する問題を○○問題という。
4.仮想通貨に採用せれている中核技術で、分散型台帳とも呼ばれる技術を何と呼ぶか。
6.インテル創業者の一人が唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という法則を何と言うか?
7.近年アメリカで評価された思想で、今の自分に意識を向けて、現実を受け入れていく研修を何と言うか。
8.ファイブアイズと呼ばれる諜報にかんする取り決めを結んでいる国として、アメリカ、イギリス以外の3カ国を答えよ。
9.技術的特異点と呼ばれる、人工知能が人間の能力を超えることで生まれる事象を指す言葉は?
金融系システム会社の研修で一般常識問題として出題された問題で、趣旨は得点の問題では無く、自分の業界に関わるキーワードを主体的に取り入れてますか?という気づきに使うものだったんだけど、正直、これが常識かよと心でモヤモヤしてる。はてなー的には全問正解当たり前?
ちなみに自分は6問せ正解だった