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はてなキーワード: 会釈とは

2021-11-19

めんどくさいやつ

たとえば挨拶の声が届くほど近くはないが姿くらいは認識できなくはない、という微妙距離感において、私の視力がよくないために相手が誰であるかを識別できず会釈等もせずに素通りしたところ、その場ではなく後になって「お前あのとき無視しただろ何だその態度は気に入らん」とかこちらを一方的悪者に仕立ててくるやつ。

見えないものは見えないんだよ。

2021-11-05

子供がドアに挟まれそうになったので助けた話

イオン自動ドアのある入り口でのこと。

子連れが立っていたのだが、1歳位の男の子が突然走り出し、閉まりつつあった自動ドアの部分で立ち止まった。

このままだと自動ドアに挟まれしまう。

母親が「あっ!」と言ったが何もする気配がない。

俺は咄嗟に「おいおいおいおいおい」と言いながら自動ドアに走り、両手でドアを戻そうとした。

自動ドアは感知したのか、開き、男の子も無事だった。

ありがとうございます!」母親が言った。俺は会釈だけして立ち去った。

母親はあまり助けようとしていない様子だったが、自動ドアが開くのを信じていたのだろうか?

だが小さい子供からかドアは感知してなかったようだった。

ヒヤッとしたが、まあ助けられてよかった。

anond:20211105050443

「あ〜仕事が止まる的な空気されて、演者スタッフ誰一人会釈する事もなく」わかる。自分たち中心で、自分たち余所にお邪魔してるって意識がないんだよ。

町も町に住んでる人も自分たちの道具。

テレビ業界人自分たち中心に世界が回ってると思ってる。

2021-10-28

スーパーレジで小銭ジャラジャラさせてる人

すぐ後ろで待ってる俺に「すみません」みたいな会釈してくるときあるけど

そんな急いでないから、ゆっくり落ち着いてくれって思う。


未だに現金派の人には

クレカとかバーコード決済の手数料、払ってくれてありがとうって感謝してんのにさ

2021-10-27

郵便屋さんの「郵便でーす」を無視するのって当たり前なの??

うちの職場事務所郵便ポストより事務所内の方が近いからか

郵便屋さんが普通郵便を直接事務所内まで届けてくれるんだけど

郵便屋さんが「郵便でーす」って言っても、俺以外の誰も返事も会釈もしないんだよね

なんかほんと透明人間が来たみたい

おまえの職場レベルが低いだけで普通の人は返事するよ、となれば逆に安心なんだけど

なんだか同僚に対してがっかり来てしまっている

2021-10-25

若者個体によるコミュ力格差ものすごい気がする

若者のと言っても自分観測できる範囲だと、高校生大学生なのだけど人によってコミュ力の差が激しすぎないか

自分は彼らにとって、親でも先生でもない大人の知人(時に彼らがバイトしてたりするとお客さん)なわけなのだが、語学教室などで同じテーブルについた際や、エレベーターなどで出くわした際のリアクションの差が人によって違いすぎる。

他人を目に入らない、ないものとして扱う子。会話の必要があった場合に蚊の鳴くような声で目を見ず単語しか話せなくなってしまう子。会釈と一文二文を聞き取れる程度の声で話せる子。(この辺りが期待値レベルだろうか?)

かと思えば、率先して挨拶をし、グループで会話の必要があればリードをし、イキることも卑屈になることもなくよく知らん大人と会話を成り立たせる子。(仕上がってんなぁ、社会人何年目だよ?営業やってました!?レベル

これが陰キャ陽キャの差なのか、コミュ力の差なのか、精神年齢の差なのか、大人慣れの差なのかわからんけど、前者後者の差があまりに極端で驚かされる。

この人たち学校とかで同じ教室内にいて意思の疎通できるんだろうか?というのも心配なるし、数年後会社に前者後者どっちが入ったきてもこっちが、どこに合わせたものだかわからなくなりそう。

別によくも悪くもないことだとは思うんだが、大人同士って見知らぬ者同士でも暗黙の了解コミュ力ない者でも無難に接することができるの楽だよな。

若者と話すと振り幅が激しくてこっちがどうしたらいいかからなくなる狭間世代最近この言葉を知った)の感想でした。

2021-10-12

anond:20211011081123

会釈を返すくらいでもいいのでは? それか、伝家の宝刀の万能フレーズ「どうも!」ですませるとか。やっぱり無反応はあまり良くない。

2021-10-10

anond:20211008135155

大田区住んでるけどこのへんは小さい子に限らず中高生も近所の人にめちゃくちゃ挨拶するな。

横断歩道渡る時手上げたり会釈したりするし。

道端の老人と世間話してたり。

横浜ではまず見ない光景だった。横浜のガキは老人とかからかって虐めてたもんな。

2021-10-09

からなんでーーーーー

電車で腕ぶつかっても謝らないの、、、結構な勢いだったよ、、、

横にいるんだから一言すみません」って言えばいいだけじゃん、、、

せめて会釈するとかしてくれればいいのにそれすらないんだよね

もう「無視」なんだよね、完全なる「フルシカト」なんだよね

ここにいる人の中にも絶対そういう人間いるだろ、その心は????って感じなんだが誰か教えてくれ

2021-10-03

追記あり】逃げ癖酷いアラフォーだけど逃げて後悔したことが1度もなかった

中学時代ブサイクで頭悪いだけで周りからの歯止めの効かない心無いイジリや暴力で居心地が酷く悪くなって、白髪が増えだして学校バックレて不登校になって親から顰蹙買ったけどその後に「あの時学校行っておけば良かった」って思ったことは1度もないし、

高校の時はバイト先のおっさんに目つけられやすくて(なぜかどこ行ってもおばさん達には良くして貰えた)、面倒くさくなるとすぐ辞めたりバックれたりしてたけど、「あの時頑張ってバイト続けてれば」と思ったことは1度もないし、

その後市職員として公務員になったけど人間関係の濃さ故に俺みたいな頭と顔と要領が悪いゴミは真っ先に同期内でスケープゴートされて、仕事も覚えられないし同じ部署に入った同期と比較されてゴミのような扱いを受けて精神科で薬の世話にまでなった挙句バックレたけど、仕事離れた途端薬必要なくなったし「公務員だししがみついてれば良かった」って思ったことも1度もないんだよな……。

何故か逃げ続けた先に破滅が待ってるとか思う人というか、そう願いたい人が多いみたいんだけど、俺は今何してるかって言うと年収400万の薄給で月の半分が休みブルーカラー仕事しててのんびり暮らしてて、心穏やかに暮らせてるので、逃げた先で何とかなってしまった。

「あの時逃げなければ」って思ったことある人はどんな時にそれを思ったの?俺は逃げる時は精神的に限界を迎えてた時だったし、メンタルいから逃走までのストレス閾値がすごい低いんだけど、逃げて後悔したことが思い返すと1度たりとも無いことに気づいた。

たぶんその辺でホームレスになって野垂れ死んでも逃げた事への後悔なんて湧かないだろうし「おちるところまでおちた」「なるようになった」位にしか思わんと思うんだよね。

【※追記

ふと見たらホッテントリしててワロタ。反応読んでたら何故か俺の事を肯定するブコメが多かったんで、気持ちは嬉しいけど俺自身周りに迷惑を撒き散らすタイプ社会ゴミ自覚があるし「それはちょっと違うんじゃねえかな」って思ったので、上に書いてない数多くのバックレエピソード書いていきたいとおもう。

年賀状仕分けスタッフ編】

高校生の頃に年末年始アルバイト年賀状仕分けスタッフをやった。コミュ障で注意力散漫だった俺にも一点集中のこの仕事ならなんとかなると思った。指定された住所順に年賀状を並び替えるだけという小学生でもできる仕事だが、立ち仕事かつタッパのある俺は1時間ほどで背中に痛みを感じ注意力が散漫になった。ハガキを1枚落としてしまい、うっかり踏んでしまった。足跡がクッキリついたので、正直に報告したら凄い剣幕で社員に怒鳴られた。速攻で心がポッキリと折れた。「すみませんでした!以降気をつけます!!」と大きな声でハッキリ聞こえるように謝って深深と頭を下げた。怒られ慣れしてる人間ならわかるが、人目をはばからず人前で容赦なく怒鳴ってくるタイプには大きな声で謝罪するのが1番長引かない。俺が謝罪をするのは自分が悪いと思ったから謝るわけじゃない。メンタルが弱すぎてこれ以上怒られたくないからだ。もう頭が真っ白になっていた。バイト先の郵便局には社員証が必要な改札があって、そこを通らないと出入りできなかった。怒られたあとの休み時間ロッカー社員証をいれ、そのまま1Fの男子トイレの窓から外に抜け出して帰った。2時間ほど後に郵便局から留守電が入ってたが着信拒否して家帰って足をふるわせてガタガタ震えながら寝た。1月末に3日分の給与が振り込まれていた。

IT研修編】

当時、派遣会社が未経験者を3ヶ月で立派なIT人材(笑)へと育成して民間企業への就職斡旋するという人売プロジェクトを行っていた。3ヶ月の研修間中に時給が発生するのは魅力的だった。市役所をバックレたばかりの俺は、当時時間若さだけはあったのでダメ元で申し込んで面接へ行った。事務の姉ちゃんみたいな女が面接官で「ITエンジニアとして働くために今やっている勉強内容を教えてください」と言われたが俺は何一つやってなかった。プログラミング経験も一切なくjavaってなんだ?とかそんなレベルだった。バックレてから今に至るまで検索エンジンに「麻美ゆま」とか「蒼井そら」とか書いてシコって寝てただけだったので「windowsパソコンしか持ってないので今は仮想環境linuxを入れてLPIC勉強をしてます。」と答えた。後日「採用が決まりました」という連絡と「3ヶ月の間に絶対に辞めないこと」という口頭での誓約電話越しに交わされた。研修が始まると、研修生は30人ほどいて、5倍の倍率を突破した先鋭達だとお偉いさんに言われた。ウケる。2日目あたりで経緯は忘れたが講師の女のうち2人がヒステリックな怒り方をし始めた。学校嫌いだった俺は小学校の頃のヒス女の担任を思い出して、その時点でもう完全に心が折れてしまった。ひょっとしたら過酷IT業界で耐えうる人材を育てる為の研修のいっかんだったのかもしれないが、俺には耐えられなかった。(プログラミング自体は楽しかったので、後にVBAを学ぶいい契機になり、VBA知識は今の職場で重宝されているのできっかけとしては感謝してる)頭が真っ白になって動悸が止まらなくなってしまった。酷く不安を感じて目眩がした。帰り際「明日よろしくお願いします!」と会釈して満面の笑顔で元気よく挨拶し、連絡先を着信拒否にして帰路に着いた。一ヶ月後、2日分の給料確認した。

日雇い編】

研修を飛んでから暇だったのでグッド⚫ィルだかで日雇い仕事をした。たしか印刷会社工場でひたすら梱包する仕事だったと思う。

仕事開始から1時間経っても休憩時間が無かったので「何時から休憩なんですか?」と聞いた。「12時の昼休みまで続くのでそれまで頑張って下さい。」と言われた。頭が真っ白になった。「すみませんお腹痛いのでトイレ行ってきてもいいですか」と断りを入れてトイレに行き、トイレの窓から外へ抜け出し連絡先を着信拒否にして帰路に着いた。一ヶ月たっても1時間分の給料が支払われなかったのでさすがに諦めた。

期間工編】

俺は頭がとりわけ悪くて、メモリが小さすぎて人の話を頭に留めておくことが出来ない。電話の取次すら相手名前を間違えるし、話を聞きながらメモも取れない。なので人と接しない仕事をすることにした。某自動車工場で寮費無料期間工に応募した。もうこの頃にはバカ正直に職歴を書くと赤羽駅東口に飛び散ったゲロぐらい酷い履歴書になってしまったので、暇つぶしで取った電気工事士資格を利用し「工場保全仕事をしていました」と職歴詐称した。日雇いで1時間働いた工場名前履歴書に書いた。勤続3年の元工員として面接を受けたら採用されたが待遇は未経験者と変わらなかったので罪悪感はなかった。

研修初日研修生同士で寮が相部屋だった。社員から部屋の中は禁煙からタバコは吸うなと言われた。流石に禁煙社員寮の中でタバコ吸うカスなんているわけねえだろ。俺の相方は以前も期間工任期満了までやったベテランらしい。俺よりも一回り年上だった。コミュ障だが初対面の相手に対してはコミュニケーション能力バグるコミュ障あるある現象が炸裂して普通に打ち解けて雑談していた。相方実家花屋で、閑散期になると出稼ぎにきている。そんな話をしながら相方タバコに火をつけ、深く吸い込んだ紫煙天井に向けて吐いた。唖然とした俺に相方は「あ、こういう事に慣れないと、ここじゃやって行けないよ?」と先輩面で言い放った。心にヒビが入った。研修中に工場見学に行ったら、工場内の機械のあまりにも大きな音と地響きに心が完全にポッキリと折れた。俺は大きな音がとても苦手で、聞いただけで頭の中が真っ白になり酷く不安を覚える。寝てる間もずっと工場の音が頭の中でする。研修を終えて、ようやく個室が与えられた。汚い畳の個室の寮で荷物も広げずに、寮の鍵と社員証を封筒にいれて部屋に置き、すでに纏まっている荷物を抱え夜明け前に始発の電車が来る駅へ向かい連絡先を着信拒否した。一ヶ月後、研修中の1週間分の給料合格祝い金(採用時必ず貰えるとかいうやつ)が振り込まれたのを確認した。

医療事務編】

何故かおばさんウケが異様にいい俺は、隣町の薬局医療事務採用試験に行っていた。とりあえずどんなもんなのかやってみようと思った。面接官がおばちゃん面接と言うより面談形式で話が進み、いつから働けるか聞かれた。採用が決まった。しか面接官のおばちゃん会社のおえらいさんで、職場には居なかった。気難しそうなしかめっ面の薬剤師と、若い女ばっかりだった。俺は詰んだことを早々に確信した。慣れないながらも仕事に食らいついてはいたが、2週間も経つと休み時間俺の頭の悪さを揶揄する陰口が嘲笑の声と共に聞こえた。「顔が生理的に無理」と聞こえて酷く苦しい気持ちになった。学生時代から何度も言われてたから、知ってる知ってる、と内心おどけてみせたが頭が真っ白になった。1ヶ月も経たないうちに俺は限界を迎えていた。とある日、先輩に「飲み会幹事やってくれ、フォローはする」と言われた。俺は飲み会や人の集まり死ぬほど苦手だ。つうか俺一応新入社員だろ。ましてや幹事だなんてとてもじゃないが耐えられなかった。心が砕け散っていたので、その翌日の朝に架空の親戚を急死させ仕事休み連絡先を着信拒否にした。

3ヶ月たったあたりで解雇通知と離職票が届いた。初任給だけは貰えた。

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他にも色々あるけど、俺は我慢強くもなければすぐにバックれる社会不適合者のクズだってのがよく分かってくれたと思う。だから生存者バイアス」ってのは少し違う気がする。何故ならこんな感じで逃げ回ってる間も「もっと頑張ればよかった」と思ったことは1度もないし、向いてないものに対する克己心もすぐ砕けるし、なんなら「もっと早くやめてれば良かった」とさえ思うことの方が多かった。俺の行為を「逃げじゃない」という人もいるけれど、俺が嫌なものを避け、ハードルを潜りながら生きてきたのはたしかだと俺は思う。これが逃げじゃないなら、その人の中ではそうなんだろう。俺は「逃げ」だの「甘え」だの言われても「そうだね」としか思えないし言い返そうとも思わない。ただ、誰になんと言われようが当時の俺は本当にいっぱいいっぱいだった。逃げる以外の選択肢が取れなかった。そして俺のスタンスは「逃げても後悔したこと1度もなかったけど逃げを推奨してるわけではない」克己心のある人は立ち向かうなり問題解決するなりすればいいと思うし、メンタルが弱く頭の悪い俺にはその余力が無かった。ただ、苦しみ続けるか死ぬかの狭間で苦しんでるなら逃げちゃってもいいんじゃないかと思う。俺はなんとかなったし、少なくとも一時的な苦しみからは逃れられる。養老孟司がなんかの本で花鳥風月を楽しむ心をもっと持った方がいい。と言っていた。逃げ回ってた時期によく20kmぐらい歩いて散歩して四季の移り変わりを楽しんでいたが、自然に目を向けるのはとても心が安らぐ。桜や紫陽花の花の美しさも、金木犀香りも、冬の土の匂いも、逃げずに働き続けてたら俺はきっと荒んだ気持ちで気づかなかったと思う。お日様の光をたっぷり浴びて散歩できて、四畳半の清潔な部屋とシャワーがあって、最低限の食事がとれて、たっぷり睡眠が取れれば俺はそこそこ幸せに暮らせることに気づけた。小学生の頃、いつも不安毎日が怖かった。もしもタイムスリップできたら、布団の中で毎日泣いていた幼かった俺を慰めてやることぐらいは出来ると思う。今は最低限の収入がありながらも生活費家賃込で10万程なので、貯金がアホみたいに溜まる。20代の頃橘玲の本を読んだインデックス株に手を出したらまあまあ増えたりして、今の生活水準なら20年ぐらい働かなくても暮らしていける蓄えも出来た。

今苦しんでる人に俺の書き込みがどれだけ救いになるかはわからないけど、お互いなんとかやっていきましょう。

2021-09-25

anond:20210925161548

東京バカ連中て

ガキから大人まで

こっちが道空けて端に寄るのに

突進してきて

何で会釈もせんの?

バカなの?

裏の人通りないとこでも。

2021-09-18

京都西側、予定になかった日の日記

起きたら11時25分で、そのまま布団で二時間ごろごろしていたら、かつてこの地で一緒に学生生活を送り、遠くに住んでる友達からLINEが来た。

しまむらオンラインと一部店舗で、ちいかわのピアス3組セットがゲリラ的に販売開始したらしい。

オンラインはすでに品切れ…ピアスをあつめていてちいかわが好きな友達はずいぶん悔しがっていた。

いま住んでる県内に「一部店舗」もないそうだが、調べてみたら、私は自宅から自転車で30分くらいのところに「一部店舗」があるらしいので、急遽出かけることにした。

いかわのピアス在庫確認に行く、予定にない一日がはじまった。

ごろごろ至上主義者なので、本来なら生まれるはずのなかった一日が生まれたのだ。

まず、半年ぶりに自転車に乗った。

しかしまたがった瞬間、前輪の空気が全ぬけしていることが発覚、慌てて家の斜め前の自転車屋さん(私の自転車故郷でもある)に空気を入れてもらう。

ここにこの自転車屋さんがなければ、はじまったばかりの私の一日は終了していただろう。

半年のらないと空気もぬけちゃいますよね」と言いながら、放置状態が長くて汚れていた私の自転車クリーナーで拭いてくれ、大変恐縮する。

出際には「気を付けていってらっしゃい」と言ってくれた。

予定になかった一日の、予定になかった言葉で、とてもうれしくなる。

縁あってここに住んではいるけれど、地元ってわけでもないので道がよくわからない。グーグルマップを頼りによろよろと自転車こいでいく。

ミリオンタウンという場所の、二階にしまむらがあるらしい。

行ったことがないところにグーグルマップ頼みで行くと、めちゃくちゃ唐突に着いた感じがすることがあるが、今回は最上位のそれ。

ほんとうに唐突についたので、友だちに「なんか着いた」と、ナガノ的な言い回しで到着を報告した。

ミリオンタウンのエスカレーター、びっくりするほど遅い。

普段地下鉄エスカレーターにばっかり乗っているので、その遅さに驚く。高齢者子どもがよく乗るからだろうか?

予定にない一日の、予定にないエスカレーターの遅さだ。

いかわのピアスは売り切れていた。ピアス売り場の広告の品のポップの下がごっそり空いていて、ああ、ここにちいかわがいたんだな…と感じられたけど、

念のため、モップ掛けをしている店員さんがいたのできいてみようと後をついていく。

しか彼女しまむら通路予測不能な経路設計で進んでいくのでなかなか追いつけず、期せずして謎のダンジョン感が出た。予定外のダンジョン

やっとおいついた店員さんに、申し訳なさそうに「ちいかわもうないんです」と言われ、友達に「ちいかわもうないんですって言われた」、とLINEで報告したら

「ちいかわもうないんです」とLINEで復唱された。

しかちょっとジワる言い回しだ。ちいかわもうないんです。

することもなくなったので、そのままイオンモール京都五条に行ってみた。ミリオンタウンのすぐそばにある。私は行ったことがなかった。

自転車をとめて入口に向かっていると、入口そばいきなりステーキがあるのが見えた。

まったく予想してなかったので、ちょっとはっとした。店名に恥じないいきなりステーキぶりだなと感心する。

中に入ったら今度はカルディがあった。今日は22時からオン飲みだからここでお酒を買って帰ろう。オリジナルチューハイがおいしいとちいかわの友達が前言っていた。

カルディの前には生ジューススタンドがあって、カラフルジュース広告キラキラしている。

これもいい、あとで買ってみようと思いつついったんスルー。なにも食べてないのでお腹がすいている、まずはごはん

3階のレストラン街で一番最初に目に入ったバ~ミヤンに入る。

大学生だったころ、一回だけ北大路ビブレのバ~ミヤンに行ったことがある。それ以来だ。

予定外のバ~ミヤン思い入れもなにもまったくなく、とてもすがすがしい。オーダーはタッチパネルで非対面ぶりが徹底されている。

かに玉とよだれ鶏小籠包ドリンクバーを頼んだ。

どれも、びっくりするほどおいしいわけでもなく、顔をしかめるほどまずいわけでもなく、とても安らいだ。

ドリンクバーオリジナルウーロン茶(冷)は、ちょっと茶葉を煮出しすぎたときのあの雑な渋みがあってとてもいい。

わたしはこの、煮出しすぎた茶の雑な渋みが好きなんだ…と気づかされて感慨深く、気持ちよくごくごく飲んだ。

予定外のいい発見があった。

食後には、凍頂ウーロン茶と仏手ウーロン茶を、それぞれポットでゆっくり飲む。

そんなことをしていたら、一階の生ジューススタンドのことがどうでもよくなってしまった。あるあるだ。

せっかくモールに来たんだしなとそのまま一周することにする。

イオンカードポイントが、専門店で買い物すると10倍とあるのにつられて、秋の靴下を6足買った。3足いくらのやつを二組。

鞄屋さんで、地元にいる母が好きそうだなと思いながら赤い革の鞄を眺めていたら、控えめに「あててみてくださいね」と店員さんが言ってすぐ離れていく。

コロナシフトという感じ。

モールキラキラしてるし、靴下も買えたし、ひとりでに「たのし~」と口から出てきた。予定にないことはなんでも楽しい

京都田舎だけど地元もっともっと田舎で、イオンモールもっと身近だった。どこのイオンモール構造は同じ、期せずして故郷を感じる。

母と二人で行くと、思わずきゃっきゃとしてしまって楽しいんだよな。ゆっくりお母さんに会いたいなあ、などとしみじみ思う。

実家から離れて暮らす多くの人たちが、そんな気持ちでいる連休なんじゃないだろうか。

ジュースはどうでもよくなったけど、カルディには寄った。

レモンお酒と、白ワインサングリアを買うつもりで並んでいたら、5倍希釈レモネードのもとが並んでるのをみつけて、ついついそれも買ってしまう。

この前NHKの「ストーリーズ 事件の涙」で、バス停にいた路上生活者女性が急襲されて亡くなった事件を扱っていた。

そのとき生前、すでに路上生活者となっていた彼女大林さんが、ショッピングモールエスカレーターそばキャリーバッグを持ってうなだれている写真が出てきた。

今日とても楽しかたから、帰る前に振り返ってもういちどモールの中を眺めていたら、頭にその写真が浮かんできた。

彼女は私だと思う女性はたくさんいて、私もやっぱりその一人だ。

今は買い物をしている側だけど、結婚仕事もしているけど、それで安定しているというわけでもない。

家も会社も、いつどうなったっておかしくないと思う。

大林さん、何かひとつボタンを掛け違えていた自分なんだ、あるいはこの先の自分なのかもしれないな、そういうことを思いながら自電車を漕いで帰路に就く。

もう夕方になっていた。

古い美容室の前を通りかかったら、女性のお客さんが出てきて、そのあと店内の明かりのトーンが少し下がった。

ああ彼女最後のお客さんだ、髪色が明るく、ぱりっとしたパーマがかかったご婦人彼女リニューアルした髪の毛を、美容師以外で最初に見た他人は私だ。

彼女大事な人でもなく、ほんの通りすがりの私だ。

これも、ほんとうならなかったはずの今日の、全然予定にないことでちょっとうれしい。

わたしなんかでよかったのかなあと思いながら、似合ってますよと心の中でいって自転車をこぎ続ける。

ガソリンスタンドの前を通りかかる。私が通ろうとしているので、スタンドから出ていこうとする車を、店員さんが手で制している。

今日私がちいかわ探しにいかなかったら、この車はここをすんなり出て行ったんだろうなと思いながら、店員と車に会釈をして通り過ぎた。

ガイドブックにも載ってない、小さな神社の舞殿が、橙色の献灯で照らされいて美しい。

いつも電車の中から裏側を見ている整骨院の、表側を通り過ぎて行く。

「○○施術院」とだけ看板の出ている普通の民家、「どんな施術を…」と、なぜかちょっとエロい妄想をしてしまう。

空気を入れてもらった自転車屋はまだあいていて、お礼が一言いいたかったけど、店員さんは奥にいたから声をかけるのはやめて通り過ぎた。

そうして家に帰って自転車しまい、買ってきた酒とレモネードのもとは冷蔵庫しまい、匿名日記を書いて、書き終わった。

弊社にて社内恋愛中のアツアツカップルへ捧ぐ

お前ら!!!!!

全然気付かれてないと思ってますね!!?

バレバレですよ!!!

柱の影でイッチャイッチャしてるのも!!!

2人でランチデートしてるのも!!!!!

いやランチはお昼休みから良いんですが!!

業務時間中にカフェデートしてるのも!!!!!

夕方とかね!!!

みんな気付いてます!!!!!

営業さんは外から帰るとき!!!!!

我々内勤も役所とか郵便局行く時に

よく目撃しちゃってるんですよ!!!!!!

あのね、気付かれてないんじゃなくて、

「全員気付いてないフリしてる」だけです!!!

社員数千人の大企業ならともかくね!!!!!

弊社零細企業なので!!!!!

!!!!!!

一応増田には言ってくれてありがとう!!!

でもその時「ヒソヒソされてる気がして...」て

言ってたな!!?

そりゃしゃーないで!!!!!!

業務時間中のカフェデートは印象悪い!!!!!

大人しくお仕事終わるまで我慢するか、

ヒソヒソされて当たり前やと思って

開き直ってデートせい!!!!!

あとそのランチ帰りにせよ夕方カフェ帰りにせよ

デート帰りに社員とすれ違った時

こちらの「お疲れ様です」の挨拶

ペコリともせず2人でシカトしてそそくさと

去っていくのも印象悪いんじゃ!!!!!

営業さんも内勤の先輩も「シカトされた」

言うてたぞ!!!!気まずいんやろうけど!!!

せめて堂々としろ!!!会釈くらいしろ!!!

それだけでヒソヒソ感は多分減る!!!

!!!!!

女は結婚したがっとる!!!

お前元カノ10年くらい付き合ってたやろ!!!

どしたんや元カノ!!!振ったんか!!?

振られたんか!!!???どっちか知らんが

元カノとはおそらく20歳ほど年下の彼女

乗り換えたんやから今度は責任取れよ!!!!!

老いるまで付き合ってまた次若い女

乗り換えるんか!!!???許さんぞ

堂々とデートなりイチャイチャなりしてるくせに

秘密なので......」ていう雰囲気

このクッソ狭いコミュニティで出すな!!!!!

気ィ遣ってんねんみんな!!!

気付け!!!!!

気付けバカップルども!!!!!

2021-08-24

後悔1 ただものじゃない人妻キスしておけばよかった。

大学入ったばっかりの頃に、機能性がクソな無料出会い掲示板人妻と仲良くなって、駅前で会った。

人妻パートライン工だったらしいんだけど、その日は無理矢理休み取って、夫にも嘘ついて会いに来たんだって

で、ミスドでおしゃべりしたり、書店内うろうろしたり、コーヒー飲んだりしてて、

その人妻の話を楽しく聞いてた。

その人妻は昔からひろゆき尊敬していて、2チャンネルで色々な有名スレ居合わせて、家庭内環境が最悪だったためか、インターネット最後の拠り所だったらしい。

でも耐え切れなくなって、実家飛び出してここに来て、今の旦那出会った。

だけど、その旦那バカすぎて、見てて嫌になるらしい。レスバトルが生きがいみたいな人だったらしいから、論理のロの字もない男は嫌いなんだろうな。

かわいい子供が、唯一の癒しだって

それで、マンネリ化した家庭に嫌気がさして、掲示板を始めたんだって

14人くらいと会って、そのうち10人とはセックスしたらしい。残りの4人は誘い方がきしょすぎて、秒で帰ったそうだ。

セックスに関しては、品と清潔感があって、ラブホまでエスコートした後、若気のみちあふれた性欲をぶちこんでくるタイプがたまらんらしい。

しかし、掲示板でもトラブル続き、ストーカー被害にもあったらしい。

ストーカー被害の延長線上で、掲示板使用が身内にもばれて、旦那旦那の親の前で土下座

壮絶な体験だが、その後も中毒症状なのか、掲示板に戻ってきて、数人目に俺と出会った。

彼女によると、会って普通にデートした後、セックスにも誘ってこなかったのは、俺が初めてだったらしい。

俺は

「みんな性欲のみで寄ってくるかもしれねぇけど、自分は一味ちげぇから。いやー、芯がある自分かっけー」

っていう、もはや中二病かも定かではないパーソナリティーだったので、セックスには誘わなかった。

で、彼女旦那からの急な電話によって、焦って車に乗って帰った。

「お気をつけて」って言って、駐車場に入っていく彼女を見送ったんだけど、少しして

「車の中で急にベロチューしたら気持ちいかなぁ」

とか思って(芯なんてなかった)

駐車場に引き返そうとしたら、ちょうど車が出てきて、人妻さん、車の中から軽く会釈して、行っちゃったよ。

そして現在、その人妻さんのことが恋しくなって、掲示板アプリスクロールし続けている。

いやぁ、女々しい男。ストーカー予備軍じゃん、こんなの。

まぁ、もう忘れるべきだよなぁ。女性関係、まだまだ若いんだからこれから頑張ろう。

美しい、恋煩いだぜ。

僕はあの人と、普通に映画見て、普通に食事して、普通に散歩して、普通に景色を見て、その後めっちゃバキュームフェラしてほしいだけなのに。

あの時、ベロチューしに戻ってれば、いくらか今の寂しさもましだったのかなぁ。

2021-08-16

挨拶しちゃいけない人はいるのかもしれない

誰にでも挨拶しましょうと言われて育ったが

人を選んで挨拶する人間は、挨拶されると「俺/私はこの人に選ばれた!」と勘違いする事もあるらしい

職場は上階が単身アパートなのだ

一応会社名前も背負ってると思い、出入りするときに上の住人と目が合ったら会釈挨拶していた

次第に、朝にエントランスタバコを吸ってたジジイ毎日通勤時間に合わせて粘着してくるようになった

暇そうなババア仕事中にも関わらずお喋りしようと寄ってくるようになった

さすがに「なんかちょっと変だな」と思い始めたところ

清掃のおっちゃんから一線を引くようにと忠告された

前にもここのテナントの人への接触エスカレートしてトラブルを起こしたらしい

寂しさに飢えた人に中途半端に餌を与えてはいけないんだ

2021-08-12

[]笑う人②

私は旧家に生まれた男だ。妻との間には2人の男の子がいる。10歳と7歳でいずれも五体満足。この言い方が批判される時代かもしれないが、私にとっては可愛い息子だ。側から見ればなんの不満があるのかと言われるが、旧家に生まれ宿命みたいなものと戦いながら小さい企業経営している。殆ど収入不動産に頼っていていわゆる不労所得だ。

妻は私の身の回りのことをやってくれている。本当に感謝だ。今の時代では特段評価される方だと思う。いや、特殊すぎておそらく他者積極的評価できないだろう。周りは奥様すごいですねと言ってくれるが、この凄さがどこまで伝わっていることか。すごいなと尊敬しながらも私も甘えている。

お金心配はないのだから安泰であるが、私や私たちの子もの面倒だけをみているのではない。私の両親や祖母の面倒までみている。そんな私に訪れた大きな変化について今日は記したい。

連絡が来たのは3年前の昨日のことだった。今年と同じくらい暑い夏だった。

普段からお世話になっている税理士から電話だった。いつも秘書からの連絡なのに今日ばかりは当人からだった。要件を掻い摘んで話すと、顧客で紹介したい人がいるということだった。私が不動産取引会社経営していることからきっと仕事を紹介してくれるのだろうと息を弾ませた。二つ返事でアポイント確約した。お盆休みだが、特段の予定はなかったのですんなりと予定を組めたのだ。

会うのは連絡を受けた翌日だった。指定喫茶店に少しばかり早く着いた。汗をかきながらもジャケット羽織り、ノーネクタイスタイル椅子にかけた。この手の紹介は最初の印象で決まることが多い。紹介者がいることでおおよその確率で成約するが、紹介者の手前しっかりとしておかなければならない。先についてしまうと携帯電話で改めての指示があるのではないかと気になる。喫茶店の中は静かな時間が流れていた。あまり大きくない店舗にはカウンターも含めて20席くらいだった。このようなところでは他人を気にする必要があるなと少し感じた。私たちの用件では大体隠したいことが多いからだ。

しばらくすると、喫茶店入り口が開いて税理士と1人の同じ歳くらいの女性が入ってきた。軽い会釈とともにいつも通りの税理士のどうもという言葉からスタートした。三者いずれもアイスコーヒーを注文した。税理士世間話が始まった。この税理士はいつも世間話が長い。私たちが彼を訪問した時も長い。殆ど時間が本題ではなくそれに費やされる。まあ、社会情勢に耳を傾けることはとても大切なことなので問題ないが、今日ばかりは先に進んで欲しかった。こちらは仕事の話しだろうと踏んでいるので、どんな仕事かと勇足の状態だ。40分程度世間話は続いた。税理士の横に掛けた女性はうなづくこともなく、表情を変えることもなく40分そこに座っていた。

で、と税理士が切り出した。

こちらなんですが、私のクライアントさんで典明さんと同じような境遇の方でして」

長い文章相手に伝わりにくいというのはこのことだ。きっと話しづらいのだろうけども、なかなか本題に入らない。典明とは私の事だ。私もきっと話している時はそんなものだろうが、受け身になるとよくわかる。

「今回の話はとんでもない話なので無理であれば無理とおっしゃっていただいて構わないんです」

私が断るわけもない。毎日を忙しく動いているわけでもなければ、この手の人生相談にはとても重きを置いている。

こちらの方、大山田弘子さんと言います結構資産家のお嬢様で1人娘さん。ご結婚はされています。お子さんも2人かな?あ、3人だそうです。」

改めて見るとそこまでの美形ではない。いわゆるその辺にいるタイプでそそられる対象ではない。

「で、このたびご両親をなくされて相続されたんです。」

ほら、きた。相続絡みの話しだ。

「たくさんお持ちだったので私としてもとても不安だったんですが、無事に終わりました。」

拍子抜けする話だった。税理士に弄ばれているような気がした。

「なんですが、それでもまだまだご資産があって。今後のことを考えると何か対策しなければいけなそうなんですよ」

ほぉ。そう言うことか。今後の対策のために何かを買いたいということか。で、私が呼ばれたわけかと明日納得した。

2021-07-12

メロス激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのであるメロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺ろうやに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。「王様は、人を殺します。」「なぜ殺すのだ。」「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」「たくさんの人を殺したのか。」「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣よつぎを。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」「おどろいた。国王は乱心か。」「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」 聞いて、メロス激怒した。「呆あきれた王だ。生かして置けぬ。」 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城はいって行った。たちまち彼は、巡邏じゅんらの警吏捕縛された。調べられて、メロスの懐中から短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。その王の顔は蒼白そうはくで、眉間みけんの皺しわは、刻み込まれたように深かった。「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。「おまえがか?」王は、憫笑びんしょうした。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁はんばくした。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟つぶやき、ほっと溜息ためいきをついた。「わしだって平和を望んでいるのだが。」「なんの為の平和だ。自分地位を守る為か。」こんどはメロス嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」「だまれ、下賤げせんの者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔はりつけになってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。」「ああ、王は悧巧りこうだ。自惚うぬぼれているがよい。私は、ちゃん死ぬ覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」「ばかな。」と暴君は、嗄しわがれた声で低く笑った。「とんでもない嘘うそを言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」「そうです。帰って来るのです。」メロス必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑ほくそえんだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙だまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかい奴輩やつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」「なに、何をおっしゃる。」「はは。いのち大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」 メロスは口惜しく、地団駄じだんだ踏んだ。ものも言いたくなくなった。 竹馬の友セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニス面前で、佳よき友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌あくる日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊こんぱいの姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」 妹は頬をあからめた。「うれしいか。綺麗きれいな衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。 眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから結婚式明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄ぶどうの季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺こらえ、陽気に歌をうたい、手を拍うった。メロスも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分からだで、自分のものでは無い。ままならぬ事であるメロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、「おめでとう。私は疲れてしまたから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」 花嫁は、夢見心地で首肯うなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」 花婿は揉もみ手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈えしゃくして、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。 眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃であるメロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。 私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。王の奸佞かんねい邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若いから名誉を守れ。さらば、ふるさと若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止やみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。メロスは額ひたいの汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気のんきさを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧わいた災難、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫はんらんし、濁流滔々とうとうと下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵こっぱみじんに橋桁はしげたを跳ね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟けいしゅうは残らず浪に浚さらわれて影なく、渡守りの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロス川岸うずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮しずめたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」 濁流は、メロス叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽あおり立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はメロス覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻かきわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍れんびんを垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼりのぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊山賊が躍り出た。「待て。」「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」「その、いのちが欲しいのだ。」「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」 山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒こんぼうを振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙すきに、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、流石さすがに疲労し、折から午後の灼熱しゃくねつの太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈めまいを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天いだてん、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者メロスよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代きたいの不信の人間、まさしく王の思う壺つぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎なえて、もはや芋虫いもむしほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐ふてくされた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截たち割って、真紅心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺あざむいた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとうセリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉かな。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。 ふと耳に、潺々せんせん、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々こんこんと、何か小さく囁ささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬すくって、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復かいふくと共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。 路行く人を押しのけ、跳はねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴けとばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人と颯さっとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。「フィロストラトスでございます貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方かたをお助けになることは出来ません。」「いや、まだ陽は沈まぬ。」「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロス疾風の如く刑場に突入した。間に合った。「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉のどがつぶれて嗄しわがれた声が幽かすかに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若もし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯うなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑ほほえみ、「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」 メロスは腕に唸うなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。「ありがとう友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。 群衆の中からも、歔欷きょきの声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 どっと群衆の間に、歓声が起った。「

anond:20210712125327

2021-06-28

弊社で絶賛社内恋愛中の男と女

お前ら!!!!!

全然気付かれてないと思ってますね!!?

バレバレですよ!!!

柱の影でイッチャイッチャしてるのも!!!

2人でランチデートしてるのも!!!!!

いやランチはお昼休みから良いんですが!!

業務時間中にカフェデートしてるのも!!!!!

みんな気付いてます!!!!!

営業さんは外から帰るとき!!!!!

我々内勤も役所とか郵便局行く時に

よく目撃しちゃってるんですよ!!!!!!

あのね、気付かれてないんじゃなくて、

「全員気付いてないフリしてる」だけです!!!

社員数千人の大企業ならともかくね!!!!!

弊社零細よりの小企業なので!!!!!

!!!!!!

一応ワイには言ってくれてありがとう!!!

でもその時「ヒソヒソされてる気がして...」て

言ってたな!!?

そりゃしゃーないで!!!!!!

業務時間カフェデートは印象悪い!!!!!

せめて覚悟してデートしろ!!!

あとそのランチ帰りにせよカフェ帰りにせよ

デート帰りに社員とすれ違った時

こちらの「お疲れ様です」の挨拶

ペコリともせず2人でシカトしてそそくさと

去っていくのも印象悪いんじゃ!!!!!

営業さんも内勤の先輩も「シカトされた」

言うてたぞ!!!!気まずいんやろうけど!!!

せめて堂々としろ!!!会釈くらいしろ!!!

!!!!!

女は結婚したがっとる!!!

お前元カノ10年くらい付き合ってたやろ!!!

どしたんや元カノ!!!振ったんか!!?

振られたんか!!!???どっちか知らんが

元カノとはおそらく20歳ほど年下の彼女

乗り換えたんやから今度は責任取れよ!!!!!

老いるまで付き合ってまた次若い女

乗り換えるんか!!!???許さんぞ

堂々とデートなりイチャイチャなりしてるくせに

秘密なので......」ていう雰囲気

このクソ狭いコミュニティで出すな!!!!!

気ィ遣ってんねんみんな!!!

気付け!!!!!

気付けバカップルどもーーーー!!!!!!

2021-06-11

理不尽な目に遭った

上司に怒られショボショボと車で帰ってた時に

駐車場の目の前の道路で遊んでる親子が居たのだが、こっちが車で近づいても全く気づかない

クラクションを鳴らすと子供が驚いちゃうかな、と思って窓から「すいませーん!通ってもいいですかー!!」と声をかけたら

母親怪訝そうな顔でこっちを見てきた。しかも、ちゃんと退いてくれるわけでもなく少し横にズレただけで終わり


あのさぁ、そこ道路なんだよ。皆が使う道なの。公道なの

お前の私有地なら我が物顔で使ってようが文句ないけど、夕方帰宅ラッシュ時に我が物顔で道路占領してるって何事?

わざわざ声かけ会釈までしたのに、なんで「すいません」の一言もなく怪訝そうな顔してんの?ていうか子供が巻き込まれないようにちゃんと注意しろホントに親かテメーは

通れないから気遣って声かけただけで事案なのか?お?

2021-06-09

日本景観論争は明治末に遡る。

読売新聞読者会員限定記事なので途中までしか読んでいないが。

景観の敵と言われても、昭和生まれには愛着ある電柱電線
https://www.yomiuri.co.jp/column/chottomae/20210519-OYT8T50060/

このように目を引く題名から始まっている記事である

愛着あるかなあ、無電柱化が綺麗だよねって流れや無電柱化推進法はまだまだ昭和生まれ世代が主導した範囲ではないかな。

この先世代の入れ替わりが進んでいくんだろうが。

日本景観が酷い等のように言われるが実は景観論争は昔からあったらしい。

もっとも、日本人の景観への意識が強くなったのは景観施行まで待たないといけないかもしれないが。

実は明治からあった景観論争

原文の著作権が既に切れているので全て転載する。

東京市街の不潔にして乱雑なるは家屋の概して粗悪なると建築様式及び塗色の無制限なると、其その他あらゆる都市設備の不完全なるとに因よるものなりと雖いえども、これ等らを外ほかにして尚なお一個の原因、即すなわち市民自身故意市街体裁破壊すること、宛あたか小学児童自身の手を以もつ顔面に墨を塗り付くるに似たるの事実あり

初めて東京の人となりたる時に於おいて最も市街の乱雑を感ぜしむるもの電柱の遠慮会釈無なく街路の両側に林立せると、之これに貼付せる各種の広告のだらし無きと、商店看板の拙悪にして無作法なるもの多きとの三にして

とこう書かれていたらしい。

anond:20210609145137

630: おさかなくわえた名無しさん 2011/03/17(木) 13:57:47.15 ID:nAgPGu6V

避難所で隣にいたおっさんの神経が分からなかった。

2日目に食料の支給があったんだけど、

おっさんは悠々と飯を食っていた。

が、しばらくしておっさん奥さんが大荷物持って避難所に帰ってきた。

奥さんは「なぜ子供の分くらいでも食事を貰ってこなかった!」と怒ったが

事情を話せば人数分貰えた)

おっさんは「んー…や、並んでたし…」とかゴニョゴニョ言うばかり。

どうも奥さんの言う事を聞くと

おっさんが頼りにならなさすぎたため、3歳位の子を連れて家に必要な物を取りに行ってたらしい。

見かねてまだ手をつけていなかった私のご飯

「お子さんに」と渡すと奥さん涙目でお礼を言ってきた。

おっさんはニヤニヤして顎で会釈

そして「今水の配給をしてますよ」と教えたら、

奥さんは「子供に食べさせてて。私行ってくるから」と走って出て行った。

で、おっさんは小さな一口子供の口に運び、

その後ご飯四分の一位をガッと取り、自分の口へ。

唖然として見ていたら、また小さな一口子供へ、四分の一を自分へ。

結局子供の口に入ったのは3~4口。9割がたおっさんの腹に収まってしまった。

我に返った周りの人たちがおっさんを怒鳴りつけたが

おっさんは俯いたまま何も言わない。

そこに水二本貰ってきた奥さんが帰ってきて、周りの怒り混じりの事情説明を聞き、

無言で両手に500のペットボトル持ってガンガンおっさん殴りだした。

おっさんの言い分は「大人には少ないが子供には多い量だったから」。

結局奥さんは周りの人にお礼を言った後、荷物持って遠くの場所に座ってしまった。

子供は周りの人がお菓子くれたんでお腹いっぱいになったっぽい)

その後、何度かおっさん奥さん達の所に行っては追い払われる、を繰り返してた。

次の日には老夫婦おっさんを迎えに来て、奥さん悪口言いながら妻子置いて帰っちゃったよ。

昔は奥さんが「結婚しよう」と思える位いいところもあった人なんだろうけどなぁ。

2021-06-08

コメパクするなら星つけるのが常識だろうが

近頃のはてなー礼儀なっちゃいねー。

まぁ同じような感想なっちゃうのは仕方ない。けど先人のブコメパクっといて「失礼します」「かぶってすみません」の会釈スターも付けずにさも自分が初めに考えましたってな振りしてシラーっとトップになってんじゃねーよ。この米盗人野郎コメパクするなら星つけやがれ!!

2021-05-31

駅で背負ってたカバンを掴まれ呼び止められたゴリラの話

おっす、オラ背は高くないけどスポーツやっててゴリマッチョ体型の増田だぞ。

 

混んでる駅の乗り換えで急いでたんだけど、うっかり前に歩いているおじさま(恰幅良い40代くらい、坊主スーツ一見チンピラに見える)の靴を踏んでしまった。

 

業務関係で急ぎすぎててそのまま電車に飛び乗ろうとしたら(いや本当に申し訳ない、いつもだったら絶対やらないけど急ぎ過ぎてた)、背負ってたカバンを引っ掴まれて呼び止められ、「靴踏んだのに一言もねぇのか!」と絡まれた。

 

『あーしまったなー』と思いつつ、カバンまれた事の衝撃が大きく、振り返って相手を眺めたら、何かおじさまのリアクション違和感が。

 

小さく「すいません」と会釈したら、割と速攻で掴んだ手を渋々離して無事に電車に乗れたけど、たぶんカバン掴んだ瞬間は俺の体型見えてなかったんだろうなぁとか、もし俺の体型がゴリマッチョじゃなかったら、何なら同じ事を女性や色白細見の男性がやってたもっとネチネチ絡んだんだろうなぁとか思ってしまった。

 

みんなも靴を踏んだときは謝ろうな。ゴリマッチョが行き過ぎて脳みそゴリラになった増田から約束ウホ。

2021-05-12

たった二人のエレベーターで開く押してんじゃねえよ!

出るときの通りづらさと会釈の煩わしさで余裕でマイナスわ!

形だけのマナーなんていらねえんだよ!

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