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はてなキーワード: 夕陽とは

2022-08-15

anond:20220815152424

横だけど、厭世観幸せホルモンが足りていないので、サーカディアンリズムの維持、きちんとした食事や、自然とのふれあい、たとえば海辺朝日夕陽を見たり温泉につかったりみたいなことが大事だと思う。

2022-07-22

金曜日のこの時間帯に、早めに仕事が終わっていると、冷蔵庫からレモンサワーを取り出してデカい氷と一緒にガラスに放り込み、Apple musicSpotifyの新着プレイリストを巡りながら、チビチビ飲んでいく。晴れているときは、向かいマンションガラスに反射した夕陽が、ブラインドの隙間から室内を照らし、気分を盛り上げてくれる。音楽を聴きながら、今日の夕食のことを考える。金曜の夕食については、糖質や脂質のコントロールを気にしないことにしている。これらの時間が、自分幸福定義に近い。

2022-07-18

近江八景女の子名前を作る

石山秋月 [いしやま の しゅうげつ] = 石山寺(大津市

石山寺あたりで見る秋の月

これは「あづき」だな

あづきおねえさん

・勢多(瀬田)夕照 [せた の せきしょう] = 瀬田の唐橋(大津市

瀬田の唐橋あたりから見る夕焼けのこと

これは照のままだとイメージしにくいし、夕陽として「ゆうひ」でよさそう

粟津晴嵐 [あわづ の せいらん] = 粟津原(大津市

膳所から瀬田あたりの琵琶湖畔の、松並木が風に揺れる様

晴嵐セイランのままでも成立してそうだけど、木の揺れる音に風情を感じているっぽいので、

風音」「松葉」「風枝」?

うーん、ピンとこない

夏の晴れた日に揺れる松林ならもう、「夏葉」でもいいかもしれないね

・矢橋帰帆 [やばせ の きはん] = 矢橋(草津市

矢橋の港から見る、帰ってくる船の帆が立ち並ぶ様

帰帆は「きほ」と読めるしそれでよさそう

帰が可愛くないかもしれないから、旗とか輝とかに変えてもいいか

三井晩鐘 [みい の ばんしょう] = 三井寺(園城寺)(大津市

三井寺の除夜の鐘の音

え、これ難しくない?

「〇かね」みたいな感じ?

いっそ「みい」なのか?


唐崎夜雨 [からさき の やう] = 唐崎神社大津市

夜の雨は雨の音

まり雨音で「あまね」

堅田落雁 [かたた の らくがん] = 浮御堂大津市

堅田の浮御堂あたりに降りてくる雁の群れのこと

雁が降りる様は夕方が似合うので、元増田から借りて夕雁で「ゆかり

比良暮雪 [ひら の ぼせつ] = 比良山系(大津市

比良山系に積もった雪

雪の積もった嶺なので、雪嶺で「ゆきね」



anond:20220717222527

2022-06-10

なんとなくのにじさんじライバー分類図

右上に行くほど落ち着いていて、左下に行くほど個性的、っていうイメージ

清楚
鈴谷アキシスタークレアベルモンド・バンデラス
鈴木ルイス・キャミー小野町春香桜凛月イラ
レヴィ・エリファエリー・コニファー来栖夏芽愛園愛美ニュイ・ソシエール
物述有栖雪城眞尋先斗寧戌亥とこ舞元啓介
天宮こころ葉加瀬冬雪アクシアクローネフレン・E・ルスタリオドーラ
家長むぎ西園チグサレインパターソンイブラヒム社築
森中花咲アルスアルマ瀬戸美夜子竜胆夢追翔
天ヶ瀬むゆ朝日南アカネ長尾白雪
安土鷹宮リオン健屋花那夜見れな神田笑一
夢月ロアラトナ・プティ緑仙加賀美ハヤト
魔使マオ奈羅花飛鳥ひな渋谷ハジメ早瀬
ガキ椎名唯華星川サラリゼ・ヘルエス静凛黛灰大人
笹木咲海妹四葉甲斐田ローレン・イロアスオリバーエバンス
えま★おうがすと東堂コハク葛葉夕陽リリ弦月藤士郎
宇志海いちご空星きらめ三枝明那春崎エアルシェリン・バーガンディ
勇気ちひろ卯月コウ山神カルタ黒井しばレオス・ヴィンセント
町田ちま本間ひまわりアンジュ・カトリーナえるジョー・力一
北小路ヒスイでびでび・でびるエクス・アルビ伏見ガク
周央サンゴ語部紡フミ成瀬
魔界りり赤羽葉子樋口不破湊グウェル・オス・ガール
矢車りねましろ壱百満天サロメ剣持刀也花畑チャイカ
葉山舞鈴相羽ういは雨森小夜ギルザレンIII世郡道美玲
文野環月ノ美兎京子鈴鹿詩子
狂気

2022-04-02

anond:20220402090611

それは流石にへりくだりすぎ

「週末は堀江で飲んでた」と「週末は京橋で飲んでた」くらいのエリア分けなら、大阪人はおろか近隣の関西人どうしでも文脈の違い理解できるでしょ

東京だと原宿で…、新橋で…くらいの感覚

元増田の言ってるのは夕陽ヶ丘で…って言われて知らね~~~って返してるレベルの話でしょ

2022-03-29

20年前のゲーム聖地巡礼したが、開発されて変わってしまっていた話(神戸 ハーバーランド 『ハーバーランドでつかまえて』)

ハーバーランドでつかまえて』というゲームがある。

フリーゲームなので誰でもできます

2001年に発表されたゲームです。

  

内容は、関西弁が嫌いな男性が、神戸に転勤になって、関西弁嫌悪しているのを隠しながら暮らすというゲーム

  

で、このゲームが好きな私は、「いつかハーバーランド行きたいな〜」と思ってました。

  

それで、ようやく、神戸に行くチャンスができました。

20年前、辛い受験勉強を支えてくれたフリーゲーム舞台!!!

  

ゲームでは、ハーバーランド埠頭ヒロイン女の子と語り合うシーンがあり、そのような、夕陽に期待していたのですが・・・・・・

なんと、開発されまくって、でっかいイオンみたいなのが立ってたり、コーナンがあったり、観覧車があったり。

寂れた感じの街並みはどこへ。

これじゃー港の風情がなくなってるじゃ〜ん。

  

主人公が、神戸という嫌いなところで、精神を休めたくてもハーバーラーンドも質素で。でも、地元民(ヒロイン)はそういうのを含めて地元を愛していて、主人公がそれに共感

みたいな〜〜〜〜

どこが質素やねん。めっちゃ発達しとるやんけ〜。これじゃあそこらの地方都市と同じだヨォ。

  

20年前にはなかった言葉ですが、

推しは推せる内に推せ」ですわ。

聖地巡礼はお早めに〜

2021-11-05

雑多な、あれ

・祝祭感のある葬式香典相場

・街の空虚が詰まってしまった公園のむき出しのゴミ箱

・破れかぶれで行われる大移動

・気にしたことのない自分の背後

・確かめられることもない路地裏のゴミバケツ

やさぐれてた弟がたまに見せる幸福げな表情(かお)

・死に損ねたあなたの耳に鳴ってるかつて歌だったはずの音

・退屈を持て余した老人の鳴らすカリンバ

・星に願ったはずの祈りが思わぬ形で叶ってしまった朝5時に

・夢から醒めたら夢から醒めたら夢から醒めたら

一見して不味かろう食堂食品サンプルほこり

コーラスが下手くそバンドマンステージ上でXXXを

・金網の跡が残ってしまって起きぬけの顔が崩れている

書籍文字が崩れて意味意味散逸

・長い長い長い長い長い朝

・きりきり舞い舞妓芸妓怖がらずに凝視

・許しを請うてもどのみち左肘から先が無くなるので

・瞬発力のあの小児は外科病棟搬送されて

・籠の中で野菜はただ冷えている

サガリハラミテンニクチチカブ食べ終えて我が胃

・つまらぬふりなどもはやバレてる、真冬公衆電話

笑顔曇り空曇り眼鏡曇りこれからあなたを裂くつもり

サドルがいやに冷たい冬が来たか

・見たかトーテムポール。お前は所詮

・悲しみをポイントに割引きしてくれるドラッグストア

・音の粒がはじけても混じり合わぬ私とあなた

・曲がりなりにも悲しいのなら今すぐこの場で両手を開け

ユニゾンの成れの果て飼い犬の尻尾燃え

・まんまるきのこ昨日の不具合どちらもあなたのせい

天使はいなかったその証明シラスご飯ふりかけ味噌汁付き

バイクの隙間から夕陽燃えて私の手首が曲がってる

ギター弦のゴミ箱なくて晒されてるリズム隊

・寂しいはずのお留守番はたった一度のシャッターに似つかわしく

扇風機からから夏の合間に壊れた関係

・止められるなら苦労はしないさ、かさぶたが溜まるだけの部屋で

・悲しくなってしまう、30cm上から見渡した景色

・照らせバックライト、僕らの行く末

RGBのその先にきっと天竺

土偶が待ってるアパートに帰らなくちゃならない五月

・信じるものは救われてそのひたいにししゃも

あんなにスカートにこだわっていたじゃないでも僕の流行りは終わったか

トゥナイトあなたの膝の怪我舐めてもいいか

・器用な鍵盤弾き30名殺害されてイトーヨーカドー発見されて

スニーカー履いたら五センチ浮けるの 笑って彼女

あいつの腕時計気に食わないマリネにしてやろうかしら

・あざむく速度が似ている彼と同居七年目

・不釣り合いな求人票と睨めっこ、公務員を屠る

類推はするなよ 俺のこと、バレるから

・別れ切り出してフィルム抜く彼女から感光

2021-10-06

anond:20211005191940

面白い着眼点だと思ったので詳しくないけど自分なりにしらべてみたよ

紫色を見ることができる理由

錐体細胞の応答する波長には幅があり青錐体人間視覚の短波長の下限の紫までをカバーしている

・分光の紫色が見える理由(虹・プリズム

白色光源に紫色の波長が含まれていたか

・空が紫色ではなく青色理由レイリー散乱

太陽光は、波長の短い方から順番に、紫、青、緑、黄、オレンジ、赤の光を含んでいる。晴天時には波長の短い光が強調されるが、一番短い紫色の光は空の高いところで散乱されてしまうため、2番目の青色が現れる。一方、夕方になると、波長の長いオレンジの光が多く地上に届くことになる。

https://www.huffingtonpost.jp/2018/10/10/purple-sky_a_23557444/

日中青空夕陽の赤とを波長の違いで説明するのはよく見るが、紫が上層でまっさきに散らされてるなんて知らなかった

ほんとにこの説明が正しいのかはわからん

紫色の空

魔法のような色の空はなぜ見える?薄明はくめい・マジックアワーナゾ

https://www.honda.co.jp/kids/explore/twilight/

夕陽赤色と高空に残る青色が雲で混合されて紫の空に見える例

光の波長の話と、人間視覚の仕組みからくるRGB合成の話を考慮するとわからなくなってくる

2021-09-29

帰りてえ

最近はもう、家に帰ってからも口をついて「帰りてえ〜」なんて言葉が出てくる始末で、俺はいったいどこに帰りたいのでしょうか?

知ったことじゃない?

知ってくださいよ

俺とあなたの仲じゃないですか

俺はどこに帰りたいんだと思いますか?

思うに、海辺にあるリゾートマンションに帰りたい

リゾートなんて立派なものじゃなくてもいいや

ゲストハウスみたいなさ、ちょっと綺麗な感じで、家具が揃ってて、広さはどうでもいいから、とにかく海が見える、明るい、広い窓のある部屋

そういうところで、のんびり一日過ごしたい

昼間に部屋の中にいて、自然光だけ取り込んでるとき特有の、天井らへんだけがうっすら薄暗い感じ、あれを味わいたい

基本的には明るいんだけど、ちょっと光が届きにくいところがあってさ、そういうところだけ、いい感じに影になってるじゃん

陰気な影じゃなくてさ、影なんだけど、なんか明るいんだよ

わかりますかね…

14時くらいに外でてさ、スーパー行ってなんか買って料理しようと思うんだけど、ついつい惣菜買っちゃってさ、それ食って満足するんだよな

あるいは、冬の植物園に帰りたい

冬の植物園ってあんまり人がいなくていいんだよ

植物も元気なくてさ、ほとんど何も生えてない花壇すらある

でもそこそこ整備はされててさ、なんつうか、いいんだよなあ

それで温室に行って、ベンチに腰掛けたりしたい

外が寒いぶん温室は暑くて、脱いだコートのやり場に困るんだ

水音がしていて、冬の弱い陽光ガラス越しに見えて、植物に囲まれている

そういう体験がしたいんだ

それか、海辺民宿に行きたい

お茶菓子食って、ひと息ついて、ちょっと民宿のまわりをふらっとするんだ

漁船を見たり、防波堤の先まで行ってみたり、そういうことをするんだ

夕陽が出ててキレイなんだけど、劇的に綺麗ってほどではなくて、水平線に沈んでいくのが見えるようなロケーションでもなくて、でもかえってそれが派手すぎなくて心地よいわけ

そんで、民宿のうますぎない飯を食って、綺麗すぎない風呂に入って、見慣れないニュース番組を見て、ちょっと体に馴染まない布団で寝るんだ

マジで帰りたいんですよ俺は

誰か俺を帰してくれ

2021-09-11

anond:20210911130622

けれど夕陽は おまえと仲間の ドクロを映す

2021-08-08

未来ボダルタニアス観てるけど

敵に止めをさしてからの爆発シーン

最後キノコ爆発でしめてそこから

ディゾルブで夕陽のシーンに遷移していくの

そこはかとなくオフェンシブだな

2021-07-31

日本人価値が低く見えてきた。

英国バレエ日本人が主演になったかなんかで日本人すごいって自画自賛してる日本人気持ち悪いというか、オールウェイズ三丁目の夕陽時代の古い日本人みたいでまだそういう考え方してるんだなと思う日本人ってどうなんだろうとおもいませんか?

2021-07-20

終わる命

なんだか40歳に近づいてきたら、急に精力が衰えてきたのだが。

老いってこういうことなんだな。きっと自然界ではもう終わる命なんだな、40歳頃というのは。

これから、もしかしたらあと40年生きるなんていうのは悪い冗談みたいだ。終わった命を長引かせる、人間欲望の大きさだ。

でも生きられる限り生きるぞ、おれは。生き汚く生きるぞ。そのための仕事趣味だって用意したし、いまのところ身体健康のものだ。

夕陽の輝きが美しいように、おれの余生も輝くはずなんだ。

2021-07-12

メロス激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのであるメロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺ろうやに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。「王様は、人を殺します。」「なぜ殺すのだ。」「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」「たくさんの人を殺したのか。」「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣よつぎを。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」「おどろいた。国王は乱心か。」「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」 聞いて、メロス激怒した。「呆あきれた王だ。生かして置けぬ。」 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城はいって行った。たちまち彼は、巡邏じゅんらの警吏捕縛された。調べられて、メロスの懐中から短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。その王の顔は蒼白そうはくで、眉間みけんの皺しわは、刻み込まれたように深かった。「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。「おまえがか?」王は、憫笑びんしょうした。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁はんばくした。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟つぶやき、ほっと溜息ためいきをついた。「わしだって平和を望んでいるのだが。」「なんの為の平和だ。自分地位を守る為か。」こんどはメロス嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」「だまれ、下賤げせんの者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔はりつけになってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。」「ああ、王は悧巧りこうだ。自惚うぬぼれているがよい。私は、ちゃん死ぬ覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」「ばかな。」と暴君は、嗄しわがれた声で低く笑った。「とんでもない嘘うそを言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」「そうです。帰って来るのです。」メロス必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑ほくそえんだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙だまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかい奴輩やつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」「なに、何をおっしゃる。」「はは。いのち大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」 メロスは口惜しく、地団駄じだんだ踏んだ。ものも言いたくなくなった。 竹馬の友セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニス面前で、佳よき友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌あくる日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊こんぱいの姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」 妹は頬をあからめた。「うれしいか。綺麗きれいな衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。 眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから結婚式明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄ぶどうの季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺こらえ、陽気に歌をうたい、手を拍うった。メロスも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分からだで、自分のものでは無い。ままならぬ事であるメロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、「おめでとう。私は疲れてしまたから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」 花嫁は、夢見心地で首肯うなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」 花婿は揉もみ手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈えしゃくして、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。 眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃であるメロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。 私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。王の奸佞かんねい邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若いから名誉を守れ。さらば、ふるさと若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止やみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。メロスは額ひたいの汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気のんきさを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧わいた災難、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫はんらんし、濁流滔々とうとうと下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵こっぱみじんに橋桁はしげたを跳ね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟けいしゅうは残らず浪に浚さらわれて影なく、渡守りの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロス川岸うずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮しずめたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」 濁流は、メロス叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽あおり立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はメロス覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻かきわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍れんびんを垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼりのぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊山賊が躍り出た。「待て。」「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」「その、いのちが欲しいのだ。」「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」 山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒こんぼうを振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙すきに、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、流石さすがに疲労し、折から午後の灼熱しゃくねつの太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈めまいを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天いだてん、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者メロスよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代きたいの不信の人間、まさしく王の思う壺つぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎なえて、もはや芋虫いもむしほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐ふてくされた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截たち割って、真紅心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺あざむいた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとうセリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉かな。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。 ふと耳に、潺々せんせん、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々こんこんと、何か小さく囁ささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬すくって、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復かいふくと共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。 路行く人を押しのけ、跳はねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴けとばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人と颯さっとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。「フィロストラトスでございます貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方かたをお助けになることは出来ません。」「いや、まだ陽は沈まぬ。」「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロス疾風の如く刑場に突入した。間に合った。「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉のどがつぶれて嗄しわがれた声が幽かすかに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若もし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯うなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑ほほえみ、「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」 メロスは腕に唸うなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。「ありがとう友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。 群衆の中からも、歔欷きょきの声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 どっと群衆の間に、歓声が起った。「

anond:20210712125327

2021-05-28

夢日記 プロポーズ

学生時代からの知り合いにいきなりプロポーズされたので、数年前に運勢を見てもらった占い師に再び相談することにした。

占い師の家は、古民家なのに妙に天井が高くて階段が多い。どうやら土木作業員の人とその家族下宿させているようで、玄関先では子供がドタドタと走り回って騒いでいた。

私は占い師質問した。

「以前ここで占っていただいた時、『次に付き合う人とは一年で別れる』と言われました。それなのに交際をすっ飛ばし結婚なんかして大丈夫なんでしょうか」

占いの結果はそうだけれど、結婚において大事なのは気持ちからあなたが彼を好きなら、行く末だけを気にしてプロポーズを断ったりすると、この先ずっと後悔するかもしれない」

なるほどな、と思いつつ古民家を後にした。

プロポーズしてくれた知り合いは、まともな性格でまともな生活をしている人だった。少なくとも嫌いではない。

「とりあえず結婚しようかな」と思いながら自宅に帰ると、我が家はきれいさっぱりなくなっていて、敷地内はコンクリートの地面にパイプ椅子と長机が置いてあるだけの状態となっていた。

気の早すぎる母親が、「娘が結婚するならもう持ち家はいらない」と判断し、跡形もなく取り壊してしまったらしい。

仕方がないので、長机の上でパソコンを開いて動画サイトを観ることにした。隣の家との区切りになっている塀の上に、タコ足配線コンセントが設置してあったので、そこにバッテリーを繋いだ。

特に観たいものもなかったので、とりあえず好きなヴィジュアル系バンドの曲を流してみた。本来バラード調の曲がEDMみたいにリミックスされていて、歌詞雰囲気はぶち壊しだったけれどリズムは良かった。

夕陽をバックに海の上をはねる金魚映像音楽と一緒に流れていて、なんとなく楽しい気分になってきた時、近所のおばちゃんがやってきた。

どうやら私の家が取り壊されたと聞いて、わざわざ見に来たらしい。敷地の外を見ると、中学同級生だったAまでがうちの敷地を覗き込んでいた。私はAが嫌いなので、「わざわざ来るなよ」と思った。

Aは珍妙サングラスをかけていて、異様にガラが悪い雰囲気をまとっていたが、敷地の中に入ってくる様子はないので放っておくことにした。

おばちゃん敷地の隅々までをもの珍し気に見て、何やらひとりで感動していた。ホッとした私は、再び映像音楽に集中することにした。そのうち妙におだやかな気分になって、一生このまま画面の前にいられたらいいのにな、としみじみ思った。

おわり。

夢の中でプロポーズをしてきた男の人は、実在人物ではない。そもそも私が学生の時に知り合った異性は、今やどこで何をしてるか分からない人ばかりだ。

占い師に診てもらったことはあるけれど、現実彼女古民家住まいではなかった。

近所のおばちゃんは、実際に近くに住んでる人を二、三人ぐらい混ぜたような雰囲気だった。悪い人ではないと思う。

2021-05-25

htr同人女ジャンル離れお気持ち吐き出し

追記

htr=ヘタレ

ヘッタクソな創作物しか生み出せないゴミカスのこと、下手くそ創作者の叩きスレ発祥

htr字書きだが、やっとジャンルから離れる決心がついた。

サイト時代を含めて約5年半。1つのカプに執着する期間としては比較的短い方かもしれないが、それでも私のオタク人生の中では最も濃くて幸せな夢を見せてもらった。良い時間だった。

海を見れば潮の匂いを浴びながら夕陽に照らされる夏の終わりの推しカプを想像した。山を見ればキャンプ飯の匂いに腹を鳴らしながらビールを煽る推しカプをそこに登場させていた。

世の中のラブソングは全て推しカプの曲に聴こえていたし、いつも2人のことばかりを考えて行動していた。

24時間365日ずっと日常の全てにカットインしてくるような推しカプだった。腐女子やカプ厨の方なら多少はご理解いただける感情かと思う。

それでも世に出した作品は30足らず。5年半という歳月から見ると相当少ない。遅筆の私は2~3ヶ月に一本新作を出すのが限界だった。どこにも出していないものを含めると100は書いたが、全て納得できずHDしまい込んだ。

なんせhtrなのだ。ここまで読んでいただいた皆様にはバレているだろうが、とにかく文章構成が下手だ。語彙の使い方もダサいてにをはがなっていない。一文が長すぎる。読んでも結局何が言いたいのか全くわからない。

人様に読んでいただく文章として下の下の下である

何よりも私の文はWeb二次小説との相性が悪い。

読み手側は起承転結のついた物語地の文が濃い文章など読みたくはないらしい。

伸びている文、評価されている作品はみな「ほのぼの」「ラブラブ」「わかりやすセリフが多い」「日常を切り取った2000字ほどの短文」これに気付くのに4年かかった。

何なら地の文なしのセリフ劇のほうが伸びる。

私のような作風書き手は本当に上手い人しか評価されない世界だった。

文章力もなく、面白みもなく、萌えもしない文章など誰が読むだろうか。ここ半年作品への反応が一気に落ちた。コメントはおろか、ブクマも二桁止まりという有様。

ツイッター作品アップの告知をしてもいいねは1つも付かない。

もちろん日常切り取り系にも挑戦してみたけれど、どう頑張って削っても8000前後は書いてしまう(普段が数万字であることを考えるとこれでも私の中では進歩だった)。日常を切り取った中でもまた起承転結を付けてしまう。どうしても「物語」を書いてしまう。

htrのくせに伝えたいこと、書きたいもの作風は常に一貫していた。読み手の皆様からすれば検索結果に出てくる邪魔ゴミである

斜陽ジャンルマイカーカプだから仕方ない……ここで書く人がいなくなったらジャンルが衰退してしまう……なんて言い訳自分を奮い立たせながら強がって書き続けていたけれど、先日ついに心が折れた。

普段小説とか読まないから字書きさんのページは正直飛ばしちゃうんだよね」

仲のいいフォロワーさんから出た一言だった。もちろん私が長文htr字書きであることは知っている。そして彼女は神絵師だった。

創作に携わる人間でも普段から小説を読まない人がいる。カルチャーショックだった。

ROMの方なら確かにからなくもないのだが、産み出す側の人間でさえそうなのかと何も言葉を返せなくなってしまった。

最後小説を読んだのは読書感想文課題だったかな。アニメは見るよ。漫画もたまに読む。映画?うーん、推しが出てたら……」

皆、物語のものに対して興味がないのだ。読み手が読みたいのは「ほのぼのでラブラブで誰が読んでも理解できるセリフの多い日常の切り取り短文」であって、私のクソ文ではない。

その頃ちょうど、私はまた1つクソ長htr小説を完成させていた。自分で読み返してもわかる。これも伸びない作品だろう。

一度書き上げた作品推敲したその翌日にアップロードするようにしていた。だけど、今回はそれができなかった。

ジャンルを離れよう。もうここで書き続けていても自分が壊れてしまうだけだ。

今朝、私はサイト支部に投げていた全ての作品を削除した。

ツイッターはちまちまと絵を投げていたけれどそれも全部消した。

絵も描けないわけじゃない。今まで出した本の挿絵や表紙は自分で描いてきた。そちらの道で勝負したほうが良いのではないかと何度も何度も考えた。

だけどやっぱり私は小説が好きだ。

その小説が書けなくなってしまったのならば、もうやめよう。

評価を気にして作品を産み出し続ける作業にはもう疲れた

作品評価に拘る時間を減らして、これから私生活を充実させていくつもりだ。

読みたかった本もたくさんある。家族との団らんを素直に楽しんで、今まで以上に仕事にも打ち込もう。幸い、職場ホワイトを極めたようなホワイト企業で仕事内容も楽しい。もちろん創作だって続けよう。

書きたいときに書きたいものだけを書いて、いつかまた活動したいジャンルが現れたときにオンでもオフでもなにか作品を出してみよう。

ジャンル移動というよりジャンル離脱と呼んだほうが正しいかもしれない。

女性向けジャンル男性向けジャンルとは少し毛色が違い、作家ではなくジャンルに人がつく。ジャンルの切れ目が縁の切れ目である

ジャンル活動者も少なく村社会化しているから、仲良くしていただいたフォロワーさんには少し申し訳ない。ただ、私のようなhtrが消えたくらいで衰退するような場所ではないだろう。

検索するときこの人の作品邪魔だなあ」くらいにしか思われていなかっただろうし。

今参加中のアンソロ(脱稿済)の献本が届いたらツイも支部アカウントを消す。サイトはもう閉じた。

離脱する私が言うのも変な話だが、少しでもジャンルが長く太く息をしてくれることを願っている。これは本心だ。

こんなにもジャンル離脱に体力を奪われるものだとは思ってもいなかった。今から気が重い。いっそのこと、あの人がいなくなってよかったね、くらいに思ってもらった方が気が楽かもしれない。

それも私のわがままだな。

自分わがままで去ることになるのだからジャンル者には失礼のないように努めたいと思う。

2021-05-19

日本人価値が低く見えてきた。

英国バレエ日本人が主演になったかなんかで日本人すごいって自画自賛してる日本人気持ち悪いというか、オールウェイズ三丁目の夕陽時代の古い日本人みたいでまだそういう考え方してるんだなと思う日本人ってどうなんだろうとおもいませんか?

2021-03-22

鹿

そのとき西にしのぎらぎらのちぢれた雲くものあひだから夕陽ゆふひは赤あかくなゝめに苔こけの野原のはらに注そゝぎ、すすきはみんな白しろい火ひのやうにゆれて光ひかりました。わたくしが疲つかれてそこに睡ねむりますと、ざあざあ吹ふいてゐた風かぜが、だんだん人ひとのことばにきこえ、やがてそれは、いま北上たかみの山やまの方はうや、野原のはらに行おこなはれてゐ鹿踊しゝおどりの、ほんたうの精神せいしんを語かたりました。

 そこらがまだまるつきり、丈たけ高たかい草くさや黒くろい林はやしのままだつたとき、嘉十かじふはおぢいさんたちと北上川きたかみがはの東ひがしから移うつつてきて、小ちいさなはたけを開ひらいて、粟あはや稗ひえをつくつてゐました。

 あるとき嘉十かじふは、栗くりの木きから落おちて、少すこし左ひだりの膝ひざを悪わるくしました。そんなときみんなはいつでも、西にしの山やまの中なかの湯ゆの湧わくとこへ行いつて、小屋こやをかけて泊とまつて療なほすのでした。

 天気てんきのいゝ日ひに、嘉十かじふも出でかけて行いきました。糧かてと味噌みそと鍋なべとをしよつて、もう銀ぎんいろの穂ほを出だしたすすきの野原のはらをすこしびつこをひきながら、ゆつくりゆつくり歩あるいて行いつたのです。

 いくつもの小流こながれや石原いしはらを越こえて、山脈さんみやくのかたちも大おほきくはつきりなり、山やまの木きも一本いつぽん一本いつぽん、すぎごけのやうに見みわけられるところまで来きたときは、太陽たいやうはもうよほど西にしに外それて、十本じつぽんばかりの青あをいはんのきの木立こだちの上うへに、少すこし青あをざめてぎらぎら光ひかつてかかりました。

 嘉十かじふは芝草しばくさの上うへに、せなかの荷物もつをどつかりおろして、栃とちと粟あわとのだんごを出だして喰たべはじめました。すすきは幾いくむらも幾いくむらも、はては野原のはらいつぱいのやうに、まつ白しろに光ひかつて波なみをたてました。嘉十かじふはだんごをたべながら、すすきの中なかから黒くろくまつすぐに立たつてゐる、はんのきの幹みきをじつにりつぱだとおもひました。

 ところがあんまり一生いつしやうけん命めいあるいたあとは、どうもなんだかお腹なかがいつぱいのやうな気きがするのです。そこで嘉十かじふも、おしまひに栃とちの団子だんごをとちの実みのくらゐ残のこしました。

「こいづば鹿しかさ呉けでやべか。それ、鹿しか、来きて喰け」と嘉十かじふはひとりごとのやうに言いつて、それをうめばちさうの白しろい花はなの下したに置おきました。それから荷物もつをまたしよつて、ゆつくりゆつくり歩あるきだしました。

 ところが少すこし行いつたとき、嘉十かじふはさつきのやすんだところに、手拭てぬぐひを忘わすれて来きたのに気きがつきましたので、急いそいでまた引ひつ返かへしました。あのはんのきの黒くろい木立こだちがぢき近ちかくに見みえてゐて、そこまで戻もどるぐらゐ、なんの事ことでもないやうでした。

 けれども嘉十かじふはぴたりとたちどまつてしまひました。

 それはたしかに鹿しかのけはひがしたのです。

 鹿しかが少すくなくても五六疋ぴき、湿しめつぽいはなづらをずうつと延のばして、しづかに歩あるいてゐるらしいのでした。

 嘉十かじふはすすきに触ふれないやうに気きを付つけながら、爪立つまだてをして、そつと苔こけを踏ふんでそつちの方はうへ行いきました。

 たしかに鹿しかはさつきの栃とちの団子だんごにやつてきたのでした。

「はあ、鹿等しかだあ、すぐに来きたもな。」と嘉十かじふは咽喉のどの中なかで、笑わらひながらつぶやきました。そしてからだをかゞめて、そろりそろりと、そつちに近ちかよつて行ゆきました。

 一むらのすすきの陰かげから、嘉十かじふはちよつと顔かほをだして、びつくりしてまたひつ込こめました。六疋ぴきばかりの鹿しかが、さつきの芝原しばはらを、ぐるぐるぐるぐる環わになつて廻まはつてゐるのでした。嘉十かじふはすすきの隙間すきまから、息いきをこらしてのぞきました。

 太陽たいやうが、ちやうど一本いつぽんのはんのきの頂いたゞきにかかつてゐましたので、その梢こずゑはあやしく青あをくひかり、まるで鹿しかの群むれを見みおろしてぢつと立たつてゐる青あをいいきもののやうにおもはれました。すすきの穂ほも、一本いつぽんづつ銀ぎんいろにかがやき、鹿しかの毛並けなみがことにその日ひはりつぱでした。

 嘉十かじふはよろこんで、そつと片膝かたひざをついてそれに見みとれました。

 鹿しかは大おほきな環わをつくつて、ぐるくるぐるくる廻まはつてゐましたが、よく見みるとどの鹿しかも環わのまんなかの方はうに気きがとられてゐるやうでした。その証拠しようこには、頭あたまも耳みゝも眼めもみんなそつちへ向むいて、おまけにたびたび、いかにも引ひつぱられるやうに、よろよろと二足ふたあし三足みあし、環わからはなれてそつちへ寄よつて行ゆきさうにするのでした。

 もちろん、その環わのまんなかには、さつきの嘉十かじふの栃とちの団子だんごがひとかけ置おいてあつたのでしたが、鹿しかものしきりに気きにかけてゐるのは決けつして団子だんごではなくて、そのとなりの草くさの上うへにくの字じになつて落おちてゐる、嘉十かじふの白しろい手拭てぬぐひらしいのでした。嘉十かじふは痛いたい足あしをそつと手てで曲まげて、苔こけの上うへにきちんと座すはりました。

 鹿しかめぐりだんだんゆるやかになり、みんなは交かはる交がはる、前肢まへあしを一本いつぽん環わの中なかの方はうへ出だして、今いまにもかけ出だして行いきさうにしては、びつくりしたやうにまた引ひつ込こめて、とつとつとつとつしづかに走はしるのでした。その足音あしおとは気きもちよく野原のはらの黒土くろつちの底そこの方はうまでひゞきました。それから鹿しかどもはまはるのをやめてみんな手拭てぬぐひのこちらの方はうに来きて立たちました。

 嘉十かじふはにはかに耳みゝがきいんと鳴なりました。そしてがたがたふるえました。鹿しかもの風かぜにゆれる草穂くさぼのやうな気きもちが、波なみになつて伝つたはつて来きたのでした。

 嘉十かじふはほんたうにじぶんの耳みゝを疑うたがひました。それは鹿しかのことばがきこえてきたからです。

「ぢや、おれ行いつて見みで来こべが。」

「うんにや、危あぶないじや。も少すこし見みでべ。」

こんなことばもきこえました。

「何時いつだがの狐きつねみだいに口発破くちはつぱなどさ罹かゝつてあ、つまらないもな、高たかで栃とちの団子だんごなどでよ。」

「そだそだ、全まつたぐだ。」

こんなことばも聞ききました。

「生いぎものだがも知しれないじやい。」

「うん。生いぎものらしどごもあるな。」

こんなことばも聞きこえました。そのうちにたうたう一疋ぴきが、いかにも決心けつしんしたらしく、せなかをまつすぐにして環わからはなれて、まんなかの方はうに進すゝみ出でました。

 みんなは停とまつてそれを見みてゐます

 進すゝんで行いつた鹿しかは、首くびをあらんかぎり延のばし、四本しほんの脚あしを引ひきしめ引ひきしめそろりそろりと手拭てぬぐひに近ちかづいて行いきましたが、俄にはかにひどく飛とびあがつて、一目散もくさんに遁にげ戻もどつてきました。廻まはりの五疋ひきも一ぺんにぱつと四方しはうへちらけやうとしましたが、はじめの鹿しかが、ぴたりととまりましたのでやつと安心あんしんして、のそのそ戻もどつてその鹿しかの前まへに集あつまりました。

「なぢよだた。なにだた、あの白しろい長ながいやづあ。」

「縦たてに皺しはの寄よつたもんだけあな。」

「そだら生いぎものだないがべ、やつぱり蕈きのこなどだべが。毒蕈ぶすきのこだべ。」

「うんにや。きのごだない。やつぱり生いぎものらし。」

「さうが。生いぎもので皺しわうんと寄よつてらば、年老としよりだな。」

「うん年老としよりの番兵ばんぺいだ。ううはははは。」

「ふふふ青白あをじろの番兵ばんぺいだ。」

「ううははは、青あをじろ番兵ばんぺいだ。」

「こんどおれ行いつて見みべが。」

「行いつてみろ、大丈夫だいじやうぶだ。」

「喰くつつがないが。」

「うんにや、大丈夫だいじやうぶだ。」

そこでまた一疋ぴきが、そろりそろりと進すゝんで行いきました。五疋ひきはこちらで、ことりことりとあたまを振ふつてそれを見みてゐました。

 進すゝんで行いつた一疋ぴきは、たびたびもうこわくて、たまらないといふやうに、四本ほんの脚あしを集あつめてせなかを円まろくしたりそつとまたのばしたりして、そろりそろりと進すゝみました。

 そしてたうたう手拭てぬぐひのひと足あしこつちまで行いつて、あらんかぎり首くびを延のばしてふんふん嚊かいでゐましたが、俄にはかにはねあがつて遁にげてきました。みんなもびくつとして一ぺんに遁にげださうとしましたが、その一ぴきがぴたりと停とまりましたのでやつと安心あんしんして五つの頭あたまをその一つの頭あたまに集あつめました。

「なぢよだた、なして逃にげで来きた。」

「噛かぢるべとしたやうだたもさ。」

「ぜんたいなにだけあ。」

「わがらないな。とにかぐ白しろどそれがら青あをど、両方りやうはうのぶぢだ。」

「匂にほひあなぢよだ、匂にほひあ。」

「柳やなぎの葉はみだいな匂にほひだな。」

「はでな、息いぎ吐つでるが、息いぎ。」

「さあ、そでば、気付きつけないがた。」

「こんどあ、おれあ行いつて見みべが。」

「行いつてみろ」

三番目ばんめの鹿しかがまたそろりそろりと進すゝみました。そのときちよつと風かぜが吹ふいて手拭てぬぐひがちらつと動うごきましたので、その進すゝんで行いつた鹿しかはびつくりして立たちどまつてしまひ、こつちのみんなもびくつとしました。けれども鹿しかはやつとまた気きを落おちつけたらしく、またそろりそろりと進すゝんで、たうたう手拭てぬぐひまで鼻はなさきを延のばした。

 こつちでは五疋ひきがみんなことりことりとお互たがひにうなづき合あつて居をりました。そのとき俄にはかに進すゝんで行いつた鹿しかが竿立さをだちになつて躍をどりあがつて遁にげてきました。

「何なして遁にげできた。」

「気味悪きびわりぐなてよ。」

「息いぎ吐つでるが。」

「さあ、息いぎの音おどあ為さないがけあな。口くぢも無ないやうだけあな。」

「あだまあるが。」

「あだまもゆぐわがらないがつたな。」

「そだらこんだおれ行いつて見みべが。」

四番目よばんめの鹿しかが出でて行いきました。これもやつぱりびくびくものです。それでもすつかり手拭てぬぐひの前まへまで行いつて、いかにも思おもひ切きつたらしく、ちよつと鼻はなを手拭てぬぐひに押おしつけて、それから急いそいで引ひつ込こめて、一目いちもくさんに帰かへつてきました。

「おう、柔やつけもんだぞ。」

「泥どろのやうにが。」

「うんにや。」

「草くさのやうにが。」

「うんにや。」

ごまざいの毛けのやうにが。」

「うん、あれよりあ、も少すこし硬こわぱしな。」

「なにだべ。」

「とにかぐ生いぎもんだ。」

「やつぱりさうだが。」

「うん、汗臭あせくさいも。」

「おれも一遍ひとがへり行いつてみべが。」

 五番目ばんめの鹿しかがまたそろりそろりと進すゝんで行いきました。この鹿しかはよほどおどけもののやうでした。手拭てぬぐひの上うへにすつかり頭あたまをさげて、それからいかにも不審ふしんだといふやうに、頭あたまをかくつと動うごかしましたので、こつちの五疋ひきがはねあがつて笑わらひました。

 向むかふの一疋ぴきはそこで得意とくいになつて、舌したを出だして手拭てぬぐひを一つべろりと甞なめましたが、にはかに怖こはくなつたとみえて、大おほきく口くちをあけて舌したをぶらさげて、まるで風かぜのやうに飛とんで帰かへつてきました。みんなもひどく愕おどろきました。

「ぢや、ぢや、噛かぢらへだが、痛いたぐしたが。」

「プルルルルルル。」

「舌した抜ぬがれだが。」

「プルルルルルル。」

「なにした、なにした。なにした。ぢや。」

「ふう、あゝ、舌した縮ちゞまつてしまつたたよ。」

「なじよな味あじだた。」

「味あじ無ないがたな。」

「生いぎもんだべが。」

「なじよだが判わからない。こんどあ汝うなあ行いつてみろ。」

「お。」

 おしまひの一疋ぴきがまたそろそろ出でて行いきました。みんながおもしろさうに、ことこと頭あたまを振ふつて見みてゐますと、進すゝんで行いつた一疋ぴきは、しばらく首くびをさげて手拭てぬぐひを嗅かいでゐましたが、もう心配しんぱいもなにもないといふ風ふうで、いきなりそれをくわいて戻もどつてきました。そこで鹿しかはみなぴよんぴよん跳とびあがりました。

「おう、うまいうまい、そいづさい取とつてしめば、あどは何なんつても怖おつかなぐない。」

「きつともて、こいづあ大きな蝸牛なめくづらの旱ひからびだのだな。」

「さあ、いゝが、おれ歌うだうだうはんてみんな廻まれ。」

 その鹿しかはみんなのなかにはいつてうたひだし、みんなはぐるぐるぐるぐる手拭てぬぐひをまはりはじめました。

「のはらのまん中なかの めつけもの

 すつこんすつこの 栃とちだんご

 栃とちのだんごは   結構けつこうだが

 となりにいからだ ふんながす

 青あをじろ番兵ばんぺは   気きにかがる。

  青あおじろ番兵ばんぺは   ふんにやふにや

 吠ほえるさないば 泣なぐもさな

 瘠やせで長ながくて   ぶぢぶぢで

 どごが口くぢだが   あだまだが

 ひでりあがりの  なめぐぢら。」

 走はしりながら廻まはりながら踊おどりながら、鹿しかはたびたび風かぜのやうに進すゝんで、手拭てぬぐひを角つのでついたり足あしでふんだりしました。嘉十かじふの手拭てぬぐひはかあいさうに泥どろがついてところどころ穴あなさへあきました。

 そこで鹿しかめぐりだんだんゆるやかになりました。

「おう、こんだ団子だんごお食くばがりだぢよ。」

「おう、煮にだ団子だぢよ。」

「おう、まん円まるけぢよ。」

「おう、はんぐはぐ。」

「おう、すつこんすつこ。」

「おう、けつこ。」

 鹿しかそれからみんなばらばらになつて、四方しはうから栃とちのだんごを囲かこんで集あつまりました。

 そしていちばんはじめに手拭てぬぐひに進すゝんだ鹿しかから一口ひとくちづつ団子だんごをたべました。六疋ぴきめの鹿しかは、やつと豆粒まめつぶのくらゐをたべただけです。

 鹿しかそれからまた環わになつて、ぐるぐるぐるぐるめぐりあるきました。

 嘉十かじふはもうあんまりよく鹿しかを見みましたので、じぶんまでが鹿しかのやうな気きがして、いまにもとび出ださうとしましたが、じぶんの大おほきな手てがすぐ眼めにはいりましたので、やつぱりだめだとおもひながらまた息いきをこらしました。

 太陽たいやうはこのとき、ちやうどはんのきの梢こずゑの中なかほどにかかつて、少すこし黄きいろにかゞやいて居をりました。鹿しかめぐりはまただんだんゆるやかになつて、たがひにせわしくうなづき合あひ、やがて一列れつに太陽たいやうに向むいて、それを拝おがむやうにしてまつすぐに立たつたのでした。嘉十かじふはもうほんたうに夢ゆめのやうにそれに見みとれてゐたのです。

 一ばん右みぎはじにたつた鹿しかが細ほそい声こゑでうたひました。

「はんの木ぎの

 みどりみぢんの葉はの向もごさ

 ぢやらんぢやららんの

 お日ひさん懸かがる。」

 その水晶すゐしやうの笛ふえのやうな声こゑに、嘉十かじふは目めをつぶつてふるえあがりました。右みぎから二ばん目めの鹿しかが、俄にはかにとびあがつて、それからからだを波なみのやうにうねらせながら、みんなの間あひだを縫ぬつてはせまはり、たびたび太陽たいやうの方はうにあたまをさげました。それからじぶんのところに戻もどるやぴたりととまつてうたひました。

「お日ひさんを

 せながさしよへば、はんの木ぎも

 くだげで光ひかる

 鉄てつのかんがみ。」

 はあと嘉十かじふもこつちでその立派りつぱな太陽たいやうとはんのきを拝おがみました。右みぎから三ばん目めの鹿しかは首くびをせはしくあげたり下さげたりしてうたひました。

「お日ひさんは

 はんの木ぎの向もごさ、降おりでても

 すすぎ、ぎんがぎが

 まぶしまんぶし。」

 ほんたうにすすきはみんな、まつ白しろな火ひのやうに燃もえたのです。

「ぎんがぎがの

 すすぎの中ながさ立たぢあがる

 はんの木ぎのすねの

 長なんがい、かげぼうし。」

 五番目ばんめの鹿しかがひくく首くびを垂たれて、もうつぶやくやうにうたひだしてゐました。

「ぎんがぎがの

 すすぎの底そこの日暮ひぐれかだ

 苔こげの野のはら

 蟻ありこも行いがず。」

 このとき鹿しかはみな首くびを垂たれてゐましたが、六番目ばんめがにはかに首くびをりんとあげてうたひました。

「ぎんがぎがの

 すすぎの底そごでそつこりと

 咲さぐうめばぢの

 愛えどしおえどし。」

 鹿しかそれからみんな、みぢかく笛ふゑのやうに鳴ないてはねあがり、はげしくはげしくまはりました。

 北きたから冷つめたい風かぜが来きて、ひゆうと鳴なり、はんの木きはほんたうに砕くだけた鉄てつの鏡かゞみのやうにかゞやき、かちんかちんと葉はと葉はがすれあつて音おとをたてたやうにさへおもはれ、すすきの穂ほまでが鹿しかにまぢつて一しよにぐるぐるめぐつてゐるやうに見みえました。

 嘉十かじふはもうまつたくじぶんと鹿しかとのちがひを忘わすれて、

「ホウ、やれ、やれい。」と叫さけびながらすすきのかげから飛とび出だしました。

 鹿しかはおどろいて一度いちどに竿さをのやうに立たちあがり、それからはやてに吹ふかれた木きの葉はのやうに、からだを斜なゝめにして逃にげ出だしました。銀ぎんのすすきの波なみをわけ、かゞやく夕陽ゆふひの流ながれをみだしてはるかはるかに遁にげて行いき、そのとほつたあとのすすきは静しづかな湖みづうみの水脈みをのやうにいつまでもぎらぎら光ひかつて居をりました。

 そこで嘉十かじふはちよつとにが笑わらひをしながら、泥どろのついて穴あなのあいた手拭てぬぐひをひろつてじぶんもまた西にしの方はうへ歩あるきはじめたのです。

 それから、さうさう、苔こけの野原のはら夕陽ゆふひの中なかで、わたくしはこのはなしをすきとほつた秋あきの風かぜから聞きいたのです。

2021-03-13

若者のすべて

僕は最近、ウーバーイーツの仕事をしている。ぐうたらな大学生活を送る僕にとって、気が向いたときに小遣いを稼げるこの仕事はとても都合がよかった。

この仕事をやっていると、住み慣れて知り尽くしたはずの街に色々な発見がある。さびれた小さい公園とか、遠いところからも見える変な建物のありかとか、ちょっと便利な裏道を見つけるたび、自分世界が少しだけ広がるような気がした。

そして、街は色々な人であふれている。ペンキで汚れたニッカポッカを着た男性や、はしゃぎながら歩く中高生、静かながら幸せそうに歩く老夫婦。あの人たちは、どんなふうに喜びや悲しみを感じ、どんな人たちと関わり合い、どんな人生を歩んできたのだろう。小学生の頃は、途方もなく広がるつながりと、目もくらむような長い時間に想いをはせたものだったが、いつからかそんな街のいろどりに気づかなくなっていた。

先日のことだった。夕方ごろ、アプリが回してくる配車に従い、店に向かって品物をを受け取り、配達先の住所を確認した。配達先は、中学生の頃に初恋を抱いた女の子の家だった。その女の子小学生の頃から同じ学校に通っていて、同じ中学に進学するころ、恋心を抱くようになった。しかし、結局想いを伝えることはなく、中学卒業後はその子が何をしているのかも分からなくなった。

久しぶりに会う相手に、どんな顔であいさつをすればいいんだろう。どんな話をすればいいんだろう。頭の中でいろいろなことがグルグル回って、もうすっかり忘れたはずのドキドキを抑えようとしているうちに、配達先に着いてしまった。

玄関から出てきたその女の子は、「おー、久しぶり!」と元気に挨拶した。5年ぶりに会うその子は、中学の頃よりもいっそう綺麗になっていた。

最近げんき?」と聞かれ、「まあ、ぼちぼちだよ」と返しながら代金のやり取りをした。細かい小銭がなかったようで、「ねえ、7円ない?」と女の子が家の中へ叫ぶと、僕と同じくらいの年の男が部屋から出てきて、女の子に小銭をわたした。

「ありがとねー、ウーバーがんばって!」

「うん、ありがとう。」

そう言って帰ろうとしたとき、袖の小さなほつれがドアのどこかに引っかかった。ほつれた糸は、目を凝らしてようやく見えるような細い糸だった。僕は腕を引いて糸をちぎり、静かにドアを閉めた。

帰り際、昔によく友達や、その女の子遊んだ公園そばを通った。その小さい公園には大きなアスレチックひとつだけあったけれど、何度か改修工事が繰り返された末、今はつまらない遊具が広くなった公園にぽつりぽつりとあるだけだった。

遊具たちが赤い夕陽に照らされて、長い影をつくっていた。ぶさいくな顔をしたパンダの置物が、夕陽を眺めている。

2021-01-29

anond:20210127175952

トラウマになるほど印象に残っている作品タイトル表記が間違っているとモヤモヤする

ドラえもんドラエモンと書くようなもんやぞ

ブコメから

2021-01-26

交差点ベビーカートラックに轢かれそうになっていたので

助けようと走り出したけど

中年太りと運動不足息切れして全然間に合わず

転生しそこねたが

大破したベビーカーをよくみたら

乗せられていたのはカールおじさんのでっかいぬいぐるみだったのでほっと一息

自販機缶コーヒーを買って

みゆ夕陽を眺めた

2020-11-15

賀歌はきみをことほぐ夕陽さす野原をゆきてぼくを待つきみを。

2020-11-11

夕陽を浴びて殴り合って肩を組んで帰るのか?

なんだよ、「男性どうしでもケアする『べき』」って。。。

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