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はてなキーワード: 芋虫とは

2022-03-23

なんでアフリカ芋虫みたいなカバンなのに爪が蛍光ピンクでセーターが黄色なの???

二度と隣に座りたくないオバハン

2022-02-22

普通に考えて芋虫の頃の記憶とかあるはず無いんだけど

芋虫の頃から手で餌を上げると、蝶になったときに懐くみたいな書き込みを見かけた

完全変態してる時点で、脳もドロドロに解けて作り直されてるので、記憶とかを継続されるはずないと思うんだけど

これがマジならどんなしくみなん?魂とかいう頭のイカれた確認のしようがない脳死状態の仮説ほざくやつは、全身を粉微塵に吹き飛ばして、高温高圧で圧縮してダイヤモンドにしてやる。

ようは芋虫から育てるとなつくみたいな書き込みは嘘ということでFA

2022-02-20

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/togetter.com/li/1847633

Googleドライブとかって本当にITリテラシーないやつ(そこそこいる)は使えないよなあ

結局のところ鳥は芋虫視点を持てないのに、製品デザインしてる奴に鳥しかいないからこうなる

2022-02-11

家庭菜園

倒れた猿 https://note.com/itakuratoshiyuki/n/n9e7a6e7430f9 を読んで家庭菜園をしてた時のことを思い出した。

数年前、転勤が決まり、小さい子連れながら東京都からとある地方都市引っ越した。

それまで首都圏から出て住んだことがなかったので不安半分、でも小さい子連れで外出するといつもピリピリと気を張っていなければいけなかった都心生活に疲れ果てていたので、地方だったらのんびりしてるかなと希望を持ちつつの異動だった。

うちが引っ越した先は日本でも下位5位以内に入る人口が少ない県で、まず引っ越した先の家でトイレを流したら床に水漏れしたのにびっくり。(大家さんに言ったらさすがにその日の夕方業者が来て直していった)

引っ越した先は集合住宅は猫のたまり場で、猫の糞尿がそこらかしこにされてるのに誰も気にしてない様子なのにびっくり。(もちろんにおいがきつい。これは退去するときまで変わらなかった)

道を歩いてる人が全然いないし自転車の人すらほとんど見かけないのにびっくり。(みんな車でしか移動しない)

方言もきつく言葉もわからないことも多々あり、あらゆるところでカルチャーショックを受け、都会から着てきた服は地元スーパーではカラフルで洗練されすぎていて目立ちすぎるのに気付いたころにはなんとか地元コミュニティに溶け込もうと必死になった。(子連れじゃなかったらまた違う認識だったのかもしれない)

いつしか地味で無難な服ばかり着るようになり、言葉も聞き真似でイントネーションを合わせ、ついでに月500円で地元農家さんに畑を借りることにした。(今考えると形から入っていこうとしていたのかもしれない)

さて、畑は20平米ぐらいの大きさで、どーんと土と雑草で覆われた畑だった。

好きなものを作っていいんだと思っても何を作っていいのかわからない。というかどうしたらいいのかわからない。

からないのでまず家庭菜園の本を買った。揃えなきゃいけないもの、土をどうしたらいいのか、種や苗をどうやって植えるのか。土を鍬でめっちゃ耕した。(筋肉痛になった)苦土石灰をまいた。わからないながらもマルチングシートで畑を覆った。(これはめちゃくちゃ大事だったと後でわかる)

ホームセンターに行って苗を色々見た。時は春。失敗しなさそうなトマトキュウリピーマンナスオクラサツマイモの苗を買った。植えて毎日様子を見に行った。

暑くなるにつれてどんどん苗は大きくなっていった。すくすくと育っていく苗を見るのはいものだった。花がつくとうれしかったし、花が枯れた後に小さな実がついているを見るのが楽しみになった。

畑を往復してるのに使ってた車があっという間に中も外も土で汚れた。農家の人がみんなハイジェットに乗る理由がわかった。そして害虫雑草被害の大変さを身をもって知ることになる。

まず害虫。都会で生活していたので最初芋虫にいちいち怯えていた。よく見かけたのはタバコガスズメガ、ヨトウガの幼虫だろうか。見つけたらとって中身が見えないように葉っぱをかぶてふんづけるようにしていた。

こいつらマジで滅茶苦茶葉っぱや実を食っていく。オルトランをまくことでだいぶ減ったけどそれでもしぶといのが割とついている。

最初は怯えていたけれどそのうちにせっかく一生懸命育てた作物が無残にも食べられていくのに憎しみを覚えるようになった。じきに見つけたら即はさみでチョキンスタイルに変更になった。緑の中身が出てくるのにも慣れた。彼らに慈悲は無用と考えるようになった。

虫はほかにもいろいろついて、アブラムシウリハムシニジュウヤホシテントウにも本当に悩まされた。ちょっと葉が茂ってるところに踏み込むと、うわっとウリハムシ200匹ぐらい飛び立つスタイルが続いた。殺虫剤はまかなかったので羽虫系は最後までどうにもできなかった。

そして雑草マルチングシートの重要性がわかる。ちょっと隙間があればあっという間に雑草がはびこってくるし、雑草には害虫つくし通路なんてあっという間に荒地化してしまう。

ナメクジにもいろんなものをよく食べられた。ハナムグリなどの甲虫類にも。蝶は卵を産み付けられるので害虫だし、自分の味方だと感じる虫はカマキリテントウムシだけになった。虫ではないけど土蜘蛛も強い味方だった。

そんなでもそれなりの収穫物を得ながら試行錯誤を続け、冬には大根ニンジン白菜などを収穫し、2年目の夏に向けては季節野菜のほかにスイカメロンというなかなか難しそうな果実を作ることにした。

美味しいもの人間も好きだけれど虫や動物も大好き。それまでの乏しい経験から果実なんて修羅の道だろうと思いつつ万全を尽くして苗を植え、手をかけて育て育てた。

スイカの実ってなりたては小さいスイカで本当にかわいい。ぷっくりしたスイカの実を害獣に食べられないように一つ一つにネットをかけ、地面の湿気で腐らないように実の下にトレイを置いた。陽があたらないと皮が黄色くなるらしいのでスイカの実の向きを太陽に当たるように毎日ちょっとずつ調整した。

米のとぎ汁をあげると甘くなるとのうわさも聞き、家からとぎ汁を持って行ってかけた。緑色の実がだんだん大きくなっていくのが楽しみで仕方なかった。

そんなスイカの実が20cmぐらいに大きくなったころのある日。事件がおきた。

無残にもあちこちの実が割られ、食い散らかされたスイカ畑。

食べられ方から犯人がわかった。カラスだ。ネットの隙間から鋭いくちばしでつついて突き崩したのだ。

中の実はちゃんと赤くてみずみずしくて、蟻がいっぱい行列を作っている。きっと甘いんだろうなと思った。

しかったけどやられた実は廃棄するしかなかった。残された数少ない実をさらに食べにくいように葉っぱで隠し、ネットをかけ、障害物を置き、カラス除けも設置した。

猟銃所持許可されてたらマジで付近を飛び回ってるカラスを仕留めてたかもしれない。

それぐらい憎かった。

農家の人たちはこんな思いをしながら作物を育ててるんだろうという一端がすごくよくわかった出来事だった。

そこから自分生活を脅かす動物害獣として割り切れるスキルが身についた気がする。

ちなみに当県ではアライグマ害獣としてメジャー動物です。サルよりも見た目はかわいいと思うんだがやっぱり自分は割り切って対応してしまうかもしれない。

2022-02-09

anond:20220209103113

他人の子供なんて芋虫程度の可愛さにか思えないのにな

自分財産だとそう見えるか

2022-01-28

anond:20220128195833

そういや昨日寄生バチが嫌がる液出してで防衛してる芋虫いるかもって学生科学賞の記事で見たな

2022-01-06

anond:20220106120101

あと基本的に、自分生活俯瞰して見ることが苦手だから管理」そのものが苦手なんだよな…。

視線が常に目の前にある、みたいな感じだから 後先の方が考えられないというかなんというか

自分はあれもやらなきゃこれもやらなきゃっていうTODOよりも、「あとの自分のためにやっておこう!」っていうお気持ち精神論でやるとかなり良かった。

目についたもの全てを触ってる。後回しにしたり、時間を決めてやるの100000%無理だから

そうすると名前の通り、「多動」になっているんだよな。家の中でもせわしなく動いている…俺は芋虫だ…

2022-01-04

女子高生が好きだから教員なったんでしょ」って、

そもそも女子高生」という言葉には「好」という文字が入ってるんですよね

人という漢字芋虫がもたれ掛かり合って、支え合って生きている

なんで芋虫なのか分かりませんが、金髪先生受け売りですね、はーい

2021-12-12

自尊心肥大化しすぎてるネット民がここ数年多くなってるけど

まれてもないのに仕事キャリア経済状況や、いろんな分野に首突っ込んできておいて底辺だと迷惑がられたら、お前らは恵まれてていいよなクソォォォン!って被害者ぶる奴ら多すぎだよね

ダンゴムシ芋虫ははダンゴムシらしく落葉を食べて静かに石の下で過ごすか

蝶になる努力をして花の蜜を吸えばいいのに

なんで何もせずに目につく場所ウゾウゾして蝶に蜜を吸わせるな!っていうのだろうか

男女関係なくこういうやつのせいで石の下にまで殺虫剤を撒かれるように風評被害で叩かれるのホントに嫌なんだわ

ネット契約収入制限とかつけた方がいいわと思う

2021-12-08

anond:20211208020029

非実在キャラ実在人間より好きなのは男女問わずピグマリオンコンプレックス」であってショタでもロリでもないぞ

ショタが少ないのは実在少年が手を出したくなるほどかわいくもなんともないからだ

くさくて汚くて芋虫給食ののこりのパンポッケにいれっぱなしにし弁当箱を出さずに靴下をなげちらかすおまえらをそだてあげた母親に常に感謝しろ

2021-11-29

anond:20211129164532

人間以外のジャンルランクが決められてる感じはある

ブスでデブ芋虫とかと同じ扱い

2021-11-24

自分性癖を書いて整理したいだけ

気持ち悪いと思う人もたくさんいるだろうから自己責任で読んでね。

私はものごころついたと同時に目覚めた。

初めは「おかいつ」の着ぐるみ着ておにいさんたちが踊ってる歌だったと思う。全身タイツも顔だけ出てる着ぐるみも、見ていると羞恥心でいっぱいになった。デフォルメされたかわいいクマや犬、もしくはモノ(エンピツとか)の着ぐるみから人間の顔が出ていてそこだけリアル。ああ、いい大人がこんなものに入れられて可哀想。なんだか見ていてむずむずした。

自分が動けなくなるのも好きだった。遊びで布団にぐるぐる巻きにされて動けなくなって、必死にもがくのが何とも情けなく恥ずかしかった。

初めてオナニーをしたのは幼稚園児か小学校1年生の頃で、リビングの机の脚でやって酷く怒られた。でもやめられなくて人目を盗んでやった。パンツの中にティッシュを詰めたりタイツを履いたりしてより気持ちよくなる方法を探した。寝転がって手ですることも覚えた。布団の中で隠れてやるようになった。学校でも机の下でこっそりした。

アニメ妄想でも「囚われの姫」「拷問」そんなのばっかり考えた。

この行為名前を知ったのは中学生ときで、たいそうびっくりしたのを覚えている。家のパソコンでたまにそういうのを調べることはあったけど、見たいのは別に男女の裸とかではなかった。どういう言葉で調べたらいいのか、それすら分からなかった。

ケータイを買ってもらうと当然いろいろ調べた。自分の好きなジャンルが「BDSM」「ヒロインピンチ」「陵辱」「全タイ」「ボンテージ」「着ぐるみ」などだということが分かった。男性向けAVを見ることが多かったが本番行為には興味がなくいつもそこで止めていた。女の子の甲高い声も好きじゃなかった。

今わかってるのは、とにかくかわいそうで情けないジャンルが好きってこと。変な格好させられてギチギチに拘束されたい。縄でもガムテープでも鎖でも枷でも拘束衣でもシャチ浮き輪でもOK。そのままほっとかれてたい。肌は見えない方がいいけど痛いのは嫌。世に存在するらしい「ご主人様」に奉仕したいとは思わない。ただ物語の中で、不本意に捕まっていじめられたい。ドラマ撮影として縛られるのも良い。あくまでそういう設定の中で楽しみたい。強気で出て心を折られたい。

昔よく妄想したのは、誘拐されるやつ。無理やり連れていかれた先はそういうお店だったり奇妙な性癖もつボスがいるところで、自分以外にも女の子がたくさんいることもある。全身タイツ着ぐるみでお客さんやボスを喜ばせる。彼らに直接なにかされるわけでもなく、ただ芋虫着ぐるみに入ってもぞもぞ動くのを鑑賞されたり、小魚着ぐるみを着て大きなくじらに飲み込まれてり(する体のショー)。とてもAVじゃこんなのないか小説漫画の方が好き。

ついでにそれ以外に対する許容範囲も広い(と思ってる)。レズもやってみたいと少し思うし、それ以外もまあいろいろ。

自分のように幼い頃から目覚めて今もこうして人に言えない歪んだ性癖を持ち続ける人はどのくらいいるだろう。多分思ったより沢山いるんだろうな。一貫性のない性格自分が唯一持つアイデンティティとすら感じる。

まとまりのない文章になりすみません。読んでいただいた方ありがとう

枯れ枝や落ち葉を美味しく食べられたら嬉しいな

わしゃ芋虫(笑)

2021-11-05

最近TikTok外国人芋虫を食べるライブしてるの多いけどなんなん?

2021-09-30

anond:20210930160054

まあ50年で普及させるのは無理よなー

50年後はでっかい芋虫ハンバーグ作って食べてそう

2021-09-20

ものすごくいい加減なディズニー映画史

ディズニー映画に埋もれた名作などというもの存在せず、有名なやつは出来がよく、無名なやつは出来が悪い。

以下、備忘録をかねてウォルト・ディズニーアニメーションスタジオ制作長編アニメ映画史を概観したい。

メイクマインミュージック』以外はディズニープラスで全部見れる。

1. ディズニー黎明期白雪姫』(1937年からバンビ』(1942年)まで

おすすめ作品:『白雪姫』『ファンタジア』(ミッキーのやつだけ)『ダンボ

ディズニー長編アニメ歴史アニメ史に残る傑作『白雪姫』とともに幕を開ける。この作品はとにかく作画が凄まじく、戦後日本人が衝撃を受けたという逸話も納得の出来である著作権が切れているのでYoutube等でも見れるが、できるだけきれいな画質で見たほうがいい。7人の小人たちの非モテ自助コミュニティ描写ピカイチで、増田を見ているような人々は目を通しておいて損はないと思う。

ディズニー映画はこの頃から一貫して「教育的で」「社会的にただしいとされる」物語を描こうというはっきりとした意思を見て取ることができる。そのため、作品の背景には常に制作された時代価値観垣間見える。

例えば『白雪姫』の3年後に公開された『ピノキオ』では、主人公ピノキオを導く良心象徴としてジミニークリケットという名前コオロギが登場する。この「ジミニークリケット」という名前ジーザスクライストの言い換え語らしく、つまりここでは創造主の似姿として作られた人形が様々な誘惑と戦いながらも最終的にはイエス・キリストに導かれ、ただしい人間性を獲得するという物語が展開されるわけだ。

ピノキオ自体は退屈な作品ではあるものの、歴史時代背景を含めて見ていくと別の発見があり、それはそれで豊かな体験である。ちなみに当時のディズニー自身はむしろできるだけ宗教色を薄めたいと思っていたらしく、この辺は社会要請されてやむなくという側面が強いのかもしれない。

ほか『ファンタジア』中の「魔法使いの弟子」と『ダンボ』は見ていて単純にたのしい良作。『ダンボ』のお母さんの健気さは泣ける。

2. 最初の低迷期 『ラテンアメリカの旅』(1942年からイカボードトード氏』(1947年)まで

おすすめ作品:なし

バンビ』のあと『シンデレラ』まで長編物語映画はなく、とくにおもしろ作品はない。とはいえ日本人としては、バリバリ総力戦をやりながらアニメを量産していたアメリカの国力にむしろ驚くべきかもしれない。

この頃の作品群には「丁寧な植民地主義」とでも呼ぶべき傾向があり、具体的にはアメリカ開拓時代の美化とラテンアメリカへの観光的関心、キリスト教的な価値観三位一体となった教育映画制作されている。この辺はおそらく当時のアメリカ外交安全保障戦略と密接に結びついており、いわばアメリカ流の国策映画だったのではないだろうか。

丁寧な植民地主義的な傾向はこの後も非常に根強く、形を変え品を変え、ディズニーらしさの1つの要素として受け継がれていくことになる。

3. ディズニー復活期 『シンデレラ』(1951年から眠れる森の美女』(1959年)まで

おすすめ作品:『ふしぎの国のアリス』『眠れる森の美女

シンデレラ』は物語の大半を出来の悪いトムとジェリードタバタ展開が占め、あまりおもしろくはないもの興行的には大成功を収め、低迷期の脱出成功する。

眠れる森の美女』は『白雪姫』以来の超絶作画であり、これ以降の作品と見比べてもダントツクオリティが高い。一方で興行的には制作費の回収すらできず、総じて失敗作と見なされたようだ。ディズニー作品作画技法は『眠れる森の美女』でひとつの頂点に達し、以降はべつの方法論を模索していくことになる。

ほか『ふしぎの国のアリス』のチェシャ猫や芋虫悪夢的な描写は見たものに強いインパクトを与える。一方で登場人物にだれ1人としてまともに会話の通じるキャラがおらず、集中力の維持が非常にむずかしい作品でもある。

ピーター・パン』では全能感と成熟の拒絶というYoutuberの原型のようなヒーロー像が描かれる。ピーター・パン症候群とはよく言ったもので、本家ピーター・パン未成年淫行炎上する未来を強く予感させるキャラクターだった。

わんわん物語』では都市自由謳歌していた野良犬ペットとして不自由幸福を手に入れて物語が終わる。ここで描かれるペットたちのむき出しの奴隷根性は、前述の植民地主義無関係ではない。『ピーター・パン』『わんわん物語』ともにおもしろくはないが、それぞれ見どころのある作品となっている。

4. えんぴつ作画期 『101匹わんちゃん』(1961年からくまのプーさん 完全保存版』(1977年)まで

おすすめ作品:『101匹わんちゃん』『くまのプーさん 完全保存版』

眠れる森の美女』のアーティスティックで洗練された描線から一転、『101匹わんちゃん』以降はえんぴつで描かれたかのようなラフ描線作品構成されていく。『眠れる森の美女』以上のものを作り出すことが現実的不可能であり、見劣りを避けるという意図があるのか、あるいは端的に制作資金が枯渇しただけかもしれない。

技法的にはやはり『くまのプーさん 完全保存版』でひとつの完結を迎え、以降ディズニー映画は再び模索と低迷の季節を迎えることになる。

『おしゃれキャット』は金持ちペット使用人をブチのめす話で、一方『ロビン・フッド』は貧乏人が金持ちをブチ殺す話だ。この時期のディズニー節操のなさがすごい。

5. 模索時代ビアンカの大冒険』(1977年からオリバー ニューヨーク子猫ものがたり』(1988年)まで

おすすめ作品:『オリビアちゃんの大冒険

この時期の作品群の特徴を一言で言い表すならば、「リアリティへの接近」ということばになるだろう。それは一方では作画技法への3DCGの導入というかたちで現れ、他方で物語上では善と悪の単純な二項対立の脱却が図られることになる。

前者は『コルドロン』の奥行きのある大胆なカメラワーク作画法、『オリビアちゃんの大冒険』『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』での部分的3DCGの導入に見られる。後者は『きつねと猟犬』での人種対立メタファーとして描かれた動物間の争いや、多人種共生する複雑な現実を猫の姿を借りて描いた『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』に象徴である

『きつねと猟犬』はこれまでのディズニー作品に見られた家畜たちの奴隷根性を初めて批判的に描いた作品であり、『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』と合わせて「社会的にただしいとされる」物語像の変容を見て取ることができるだろう。ただしこの時期の作品群は総じて地味で魅力がない。どうやら創業者ウォルト・ディズニーの死や主要スタッフの大量離脱の影響があったようだ。『コルドロン』は興行的にも大コケし、ディズニーの低迷を象徴する作品となった。

シャーロック・ホームズ翻案であるオリビアちゃんの大冒険』がかろうじて見ていられるという程度で、単品の映画作品としておもしろものは少ない。『オリビアちゃんの大冒険』では、冒頭からネズミ女児パンチラという一体どこに需要があるのかわからない謎サービスカットがあり、視聴者集中力が乱される。

6. ディズニールネサンスリトル・マーメイド』(1989年からターザン』(1999年)まで

おすすめ作品:『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン

この時期ディズニー批評評価興行収入の両面で復活を遂げ、一般に「ディズニールネサンス」と呼ばれているらしい。本稿でもその表現に従う。

しか作品クオリティ過去10年とは比べものにならないほど高く、ルネサンスと呼ばれるのも納得の時期である。一方で技術革新価値観の変容は停滞気味で、歴史の流れとしてはさほどおもしろくないというのが正直なところ。ルネサンス言葉通り、ある種の保守回帰時代に当たる。

おそらくこの時期、真に革新的だったのは、作品の表層に現れる技術テーマ設定ではなく、安定して高品質作品を量産する社内の体制組織づくりの技術にあったのではないか

個別作品として語れる部分は非常に多く、『リトル・マーメイド』は作画がよく、『アラジン』は見ていてたのしい。

美女と野獣』でははっきりと他者理解テーマに打ち出し、また女性主人公男性から求婚を拒絶する主体性を獲得するなどプリンセスものとして出色の出来栄え他者尊重することを覚えた野獣が救われ、他者存在最後まで容認できなかった村のヤンキー破滅する。主人公読書好きでヤンキーと話が合わないインテリとして描かれる点も珍しい。ただしこの他者理解プリンセス側に一方的負担を強いるかたちとなっている側面が強くあり、なかなかむずかしい部分もある。

ポカホンタス』は白人によるアメリカ侵略植民地化を矮小化し美化するかなり最悪のお話で、案の定ネイティブアメリカン民族団体にかなり怒られたようだ。引き続き怒られてほしい。

ターザン』もインディアンゴリラに変えただけで『ポカホンタス』とほぼ同類型のお話ではあるが、最後白人研究者たちがゴリラ部落に居残ることでギリギリバランスを取っている。ここにはターザンポカホンタスの男女差が絡んでおり、単純にターザンのほうがいいとも言いがたい。

ノートルダムの鐘』は強引にハッピーエンド化されているという不満はあるものの、子供向けの大作映画障害者活躍を描いた点は積極的評価されてよいだろう。そもそもディズニー作品には『ノートルダムの鐘』以外にも障害者がやたらとよく出てくる。アメリカ社会には障害者積極的に受け入れる土壌があるからできるのだとは思うのだが、日本コンテンツおよび社会全体でも頑張ってほしいポイントである東京ディズニーランドでもべつに障害者見かけないし。

そのほか『ムーラン』『ターザン』ではそれぞれ3D技術進歩を見て取ることができる。

7. 3Dへの過渡期 『ファンタジア2000』(2000年)からホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え!』(2004年)まで

おすすめ作品:『リロ・アンド・スティッチ

みたび低迷期である。『ダイナソー』に代表されるように3D映画への本格的な移行が始まり2D映画最後の全盛期に当たる。

作品としては『リロ・アンド・スティッチ』がずば抜けてすばらしい仕上がりで、商業的にも大成功を収めた。『リロ・アンド・スティッチ』は王子様に救われるというプリンセスもの物語類型とは異なる、弱者同士が助け合う疑似家族モデルを明確に示した重要作品である

自分欲求をうまくコントロールできない少女リロと、破壊衝動を植え付けられ誕生した人工生命スティッチが、貧困家庭ネグレクト問題SFアクションを背景に成長していく姿が描かれる。キャラクターデザインはかわいらしく、作画からかい小ネタに至るまで非常に丁寧に作られており、娯楽作品としてもすばらしい。リロの姉・ナニの恋人もいいヤツで好感が持てる。

残念ながらディズニー映画ではこのあと疑似家族的な想像力は発展せず、プリンセスものという旧来の枠組みのなかで無理やり「価値観アップデート」を図ることになっていく。

アトランティス 失われた帝国』はディズニー映画には珍しく人がバンバン死ぬ作品で、ふしぎの海のナディア宮崎作品みたいなものアメリカ人が真似して作るとこうなるのかといった印象。ガバガバ設定とご都合主義が目につき、リアル路線なのかファンタジー路線なのかどっちつかずの失敗作だった。ただし主人公オタク青年採用されている点は注目が必要で、これ以降ディズニー主人公イケメンマッチョではなく非モテオタク主体となっていく。

白雪姫』で人間扱いされていなかった非モテ小人たちが「社会的にただしいとされる」物語主人公となる時代を迎え、しかもそれが日本アニメの強い影響化で発生しているわけで、価値観の大きな変化を感じ取ることができる。ただし、『白雪姫』の王子様はあれはあれで人間味のかけらもない平板キャラクターではあるので、モテ非モテという面ではそこまで単純明快な話ではない。

ブラザーベア』は殺した相手の子を育てるというなかなか攻めたお話ではあるのだが、最終的にファンタジーに着地するせいでどうも軸がブレる。

続く

https://anond.hatelabo.jp/20210920162554

2021-09-06

anond:20210906153408

もしかして妹はオレンジ色芋虫寄生されてるのでは?

そう、増田が痰を吐いてるように見えていた行為寄生虫が洗面台に出産しているだけだったのだ…!!

2021-08-21

フェミさんて声のデカイ少数派だろう的な意見が主流になって欲しい

男女は同権だが学校やビジスの場面で平等だとやり難い、女の体力を忖度して欲しい。忖度された女はその分給料が低かったり管理職に成れなかったりする場面もあろうけど機会さえ均等であれば、あとは個人判断だと思う。最低限、文化的生活をおくれる給与水準であれば。

貯金は勿論たくさんしたいのが誰しも本音だろうけど、ソノために体壊して医療費に消えるなら総合的にトントンじゃない?稼ぐだけ稼いで若いウチに楽な仕事転職するとか、それも個人判断じゃないかなって。そもそもガンガン働けない女もいるので。

一月のうち健康なのが一週間しか無いとか、どこかで読んだけど正しくソレ。月経の話な。月経前と月経後含んで。

生理中に管理職なんて数字人間関係に気を使う仕事したくない女も居るので、女の敵は女なんだ。マックジョブ何が悪い、世の中の大半は代わりが聞く仕事じゃんってドッカで聞いた。完全に同意。それで生活していける社会なのであればマックジョブがいい。価値観は人それぞれなので。

生理プールに入れないだけじゃないんですよ。同じ女でも軽いのから重いのまで居るんですよ。そんで実際にホルモンバランスは崩れているので生理前後テンションが可笑しい女も居るんです、生理前は自分で分かったりするのもソレなんでしょうよ、でも病気って診断して貰えない。いっそ病気にしてほしいとガチ婦人病の女にブッ叩かれそうな事まで思う程度に重い女も居るんです。

クソがとかシネとか常時呟き続けたいような精神状態になる女だって居るんです、この期間に生理の軽い女と生理の無い男に心無い事言われると殴りたくなる衝動に襲われて悪化するので、ぜひ忖度して欲しい。同僚や同級生がそんな女かもしれない、軽率に刺される前に口を閉じろ。何も言うな、労るな、放置してください。忖度だいじ。

体育教師になる女は絶対生理軽い偏見がある。だから平気で生理中の生徒や胸のデカイ女を走らせようとするんだ。今はどうか知らない昔の話ですけど。

頑張ってないんじゃないんですよ、生理が重いと動けないか芋虫のように転がるしか無いだけなんです。学校だって休みたいけど母親生理軽いと地獄自分学校通えてたもんだから仮病と思われる。ちげーんだよ。生理休暇とか労働基準法にあるでしょ、欠勤になって給料出ないのはともかく有給貰えなくなるかもという手落ち感満載でつかえねー制度だけど概念だけは有るでしょ。仮病じゃないんだよ。

あと乳はデカイとブラしてても揺れるし何なら紐が肩に食い込んで痛い。というか乳は揺れると付け根が痛いのでデカ乳女は極力走りたくないのが一定数居るような気がする。別に運動は嫌いじゃないけど乳が揺れる運動はしたくない、痛いから。体育教師の女の乳は筋肉が支えている偏見がある。あと痛くなるまでデカくないような偏見がある。はっきり言って貧乳だろうという偏見がある。デカ乳は授業でもゆっくり走りたいしウォーキングで誤魔化したい、サボってるんじゃない、乳が痛いんだ。体育なんて個人差あるので個人状態に合わせて欲しいし申告したなら受け入れて欲しい。アスリートじゃないんだ目指してもないんだ。じゃあオメー人より多く勉強したら数学ひゃくてん取れるんですか?何年ほど多く勉強するんですか?同じことだよ。体育なんか健康であることを確認できて表面上、集団行動できればそれで良いだろうが。女の敵は女、お互いに。

普通に活動するために毎月鎮痛薬買ったり通院したりして金も時間もかかるんだよ、別に病気範囲に入ってなくても。何だってグレーゾーンはある。

どんだけ重くても病気って言ってもらえないし実際に病気じゃないんだよ重いだけで。ピルでの管理についてはデメリットも体質もあるので、体質にあった女や知識のない男女がとやかく言うのは論外。医者なら言ってもいいけどケースバイケースな事を医者らしく説明した上で言って欲しい。

というか、微妙に数値がアレなんで今一歩病気じゃねーですとか診断するくらいなら思い切って私を病気と診断して欲しい。グレーゾーンで重くてしんどい人は他にも居ますからとか言われても救われない。医者になれる女は絶対生理軽いだろう偏見がある。月の一週間しかマトモに頭動かない女が医大出てたら叫び声上げて称賛する。女の敵は女だと何度でも言いたい。

トイレに立つたびに便器の中が真っ赤になるのは当たり前、それどころか姿勢を変えると大量に出る感触に常時震えるし何なら服にシミつくる女がその期間中管理職なんか出来るもんかと言い放つ女だって居るんですよ。

オフィスで15分刻みでトイレに立つ女をどう思いますかね、生理重い女は基本コレですよ。多い日っていうか三日目くらいまではコレですよ勘弁しろ。なんでトイレ意味からない?ウンコした赤ん坊のオシメは速攻で変えるでしょ、クサいし膨らむし姿勢変えるとオムツからはみ出してシーツウンコつくし赤ん坊感触キモくてギャン泣きするでしょ。それです。経血は放置すると粘膜が被れるし不衛生なので他の病気心配もありますから速攻でナプキン変えるんです大量に出たら。加えてクソ腹が痛かったり腰が痛かったり熱があったりするのが生理の重い女です。アレルギー持ちだと過敏になってるので普段大丈夫なモノでも中ったりします。

せめて生理中は休むかテレワークが当たり前の世の中が待たれるけど、きっと来ない。

2021-08-01

ナウシカ女子

オッサンJK彼女が出来たんや。超美人や。色気がヤバいくせに処女や。

けど、彼女趣味がヤバすぎた。

虫が好きらしい。それも蝶々とかカブトムシとかじゃなく、クモサソリ、蛾、ムカデデカバッタとかなんかもう駆除対象よねってやつ。

オッサンは正直、虫が苦手や。けどまぁ、クモサソリ程度ならまぁいい、ちょっとカッコいいし。

ただ蛾、というか芋虫が無理や。

オッサンマグナムをしゃぶってる時に芋虫みたいで可愛いって言われた。マジやめてほしい。

2021-07-16

竜とそばかすの姫

2021-07-13

anond:20210713201035

そうやって投稿されていくよく分からん英語タイトルゲーム感想文を一つ拾い上げてみれば

じつは実在しない作品の根も葉もない捏造体験談だったらちょっとおもしろいなと思ったけど

ググって実在することを確認してしまったので僕はその時点で興味が失せてしまった

salt and sanctuaryというのも実在していたしきっと槍の人や芋虫というのも実在するんだろう

どれか一つくらい完全なでっちあげの異質なものが混ざっていてほしいという思いは儚く散ったのであった

2021-07-12

メロス激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのであるメロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺ろうやに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。「王様は、人を殺します。」「なぜ殺すのだ。」「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」「たくさんの人を殺したのか。」「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣よつぎを。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」「おどろいた。国王は乱心か。」「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」 聞いて、メロス激怒した。「呆あきれた王だ。生かして置けぬ。」 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城はいって行った。たちまち彼は、巡邏じゅんらの警吏捕縛された。調べられて、メロスの懐中から短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。その王の顔は蒼白そうはくで、眉間みけんの皺しわは、刻み込まれたように深かった。「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。「おまえがか?」王は、憫笑びんしょうした。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁はんばくした。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟つぶやき、ほっと溜息ためいきをついた。「わしだって平和を望んでいるのだが。」「なんの為の平和だ。自分地位を守る為か。」こんどはメロス嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」「だまれ、下賤げせんの者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔はりつけになってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。」「ああ、王は悧巧りこうだ。自惚うぬぼれているがよい。私は、ちゃん死ぬ覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」「ばかな。」と暴君は、嗄しわがれた声で低く笑った。「とんでもない嘘うそを言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」「そうです。帰って来るのです。」メロス必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑ほくそえんだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙だまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかい奴輩やつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」「なに、何をおっしゃる。」「はは。いのち大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」 メロスは口惜しく、地団駄じだんだ踏んだ。ものも言いたくなくなった。 竹馬の友セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニス面前で、佳よき友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌あくる日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊こんぱいの姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」 妹は頬をあからめた。「うれしいか。綺麗きれいな衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。 眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから結婚式明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄ぶどうの季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺こらえ、陽気に歌をうたい、手を拍うった。メロスも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分からだで、自分のものでは無い。ままならぬ事であるメロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、「おめでとう。私は疲れてしまたから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」 花嫁は、夢見心地で首肯うなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」 花婿は揉もみ手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈えしゃくして、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。 眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃であるメロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。 私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。王の奸佞かんねい邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若いから名誉を守れ。さらば、ふるさと若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止やみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。メロスは額ひたいの汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気のんきさを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧わいた災難、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫はんらんし、濁流滔々とうとうと下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵こっぱみじんに橋桁はしげたを跳ね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟けいしゅうは残らず浪に浚さらわれて影なく、渡守りの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロス川岸うずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮しずめたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」 濁流は、メロス叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽あおり立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はメロス覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻かきわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍れんびんを垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼりのぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊山賊が躍り出た。「待て。」「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」「その、いのちが欲しいのだ。」「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」 山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒こんぼうを振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙すきに、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、流石さすがに疲労し、折から午後の灼熱しゃくねつの太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈めまいを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天いだてん、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者メロスよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代きたいの不信の人間、まさしく王の思う壺つぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎なえて、もはや芋虫いもむしほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐ふてくされた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截たち割って、真紅心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺あざむいた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとうセリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉かな。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。 ふと耳に、潺々せんせん、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々こんこんと、何か小さく囁ささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬すくって、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復かいふくと共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。 路行く人を押しのけ、跳はねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴けとばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人と颯さっとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。「フィロストラトスでございます貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方かたをお助けになることは出来ません。」「いや、まだ陽は沈まぬ。」「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロス疾風の如く刑場に突入した。間に合った。「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉のどがつぶれて嗄しわがれた声が幽かすかに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若もし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯うなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑ほほえみ、「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」 メロスは腕に唸うなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。「ありがとう友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。 群衆の中からも、歔欷きょきの声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 どっと群衆の間に、歓声が起った。「

anond:20210712125327

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