はてなキーワード: クラスメートとは
そうして俺が目的地へ走っている時、兄貴は乗り物で優雅に移動していた。
「それで弟は、『“M”の話を鵜呑みにする人間が多いのは奴が“インフルエンザ”だから』って言ったんですよ」
乗り合わせたセンセイとバスに揺られながら、なんだかユラユラっとした会話を交わしている。
「どうしてあんなものを信じるんでしょうね。知識や読解力がなくても、そもそも匿名の文章って時点で疑ってかかるもんですが」
「恐らく、そこはどうでもいいのだよ。彼らにとって信用できるか、情報が確かであるかなんて重要なことじゃない」
「ええ? 最も重要な点だと思うんですが」
「彼らにとって重要なのは、興味深いかどうかだよ。その情報に対して自分が何を語りたいか、他人がどう語っているかだ」
「大衆は愚かではあっても馬鹿ではないということさ。あれを本気で、何の根拠もなく鵜呑みにしている人は少ないだろう」
「ああ……そういえば、クラスメートも『本当だったら何か言いたくなるし、嘘だったらそれはそれで何か言いたくなる』とか話してました」
「まあ、場末のネットに限ったことでもないがな。マスメディアで情報をこねくり回したり、コメンテーターが適当なことを言うのも同じさ」
「それにつけても“M”がインフルエンサーだってのは変な話ですけどね。どこの誰かも分からない人間の言葉に権威があるなんて。ましてや一般社会から隔離された状態で、社会の意見だとかを吹聴するなんて馬鹿げている」
「マスダの指摘は興味深いが、案外“M”当人に崇高な理念や目的はないかもしれないぞ」
「では何のために? 他人にどう受け取られるかといった意図や期待も希薄なまま、わざわざ目につく場所で主張することを憚らない。一体どういった心理なんですか」
「要は独白、“呟き”なんじゃないかな。自己顕示欲、承認欲求といったものすら漠然としている。自分の中にある鬱屈とした想いを、ただ発露したかっただけなのかもしれない。ネットにはそういうタイプが結構いる」
「それじゃあ、まるでガムを道端に吐き捨てるようなものじゃないですか。噛み終わったのなら、紙に包んでゴミ箱に捨てるべきだ」
「ネット社会はそういうのに大らかなのさ。現実の公道とは違う。だから、彼らは自分の口の中にある“ガム”を吐き出すんだよ。それがどういう結果に繋がるかを深く考えないまま、ね」
「うーん……理解に苦しみますが、辻褄は合いますね。ネットだからこそ“M”には権威があり、それに便乗して語りたがる奴も多くいるわけですか」
「実際のところは分からないがな」
そんな感じで兄貴たちは今回の件に関わろうとせず、ただ俯瞰して見ているつもりのようだった。
でも憶測をあれこれ立てたり、自分の物差しで思うまま語っている時点で、騒いでいるだけの連中と大して変わらない気もするけれど。
兄貴がそんな悠長な話をしていた時、俺はシロクロの住み家にたどり着いた。
「ウェルカム! 遊びに来たのか? それともオレの力が必要か?」
「え、ボクに?」
この家に居候しているガイドって奴は、遥か未来からやってきたらしい。
テクノロジーも進んでいるから、きっと未来のアイテムとかで“M”を見つけ出せるはず。
「へえー、この時代の人たちは随分と純粋なんだね。情報に関するインフラストラクチャーが整ってなくても、教養や意志が薄弱なままでも、非論理的なものに身をやつせるだなんて。少しだけ羨ましいよ」
いつも通りウザいポジショントークをしてくるけど、今はそんなことで不機嫌になっている時間はない。
「やろうと思えばできるけど……やるわけにはいかないかな、それは」
しかしアテが外れた。
いや、俺のアテそのものは外れていない。
こいつにやる気がないってだけだ。
「なんでだよ、人が死ぬかもしれないんだぞ」
「だからこそだよ。人の生死が左右されるレベルの過干渉は避けたいんだ。修正力で直せないほど未来が変わるかもしれないからね」
「不甲斐ないぞ、ガイド! お前は何のために未来から来たんだ!」
「少なくとも、こんなことのためではないよシロクロ」
じゃあ何のために来たのかというと、それも守秘義務だとかで答えない。
なんだか、実は出来ないことを誤魔化しているだけなんじゃないかと勘繰りたくなる。
「悪いけど他をあたってくれよ、マスダの弟」
何が「悪いけど」だ。
悪いだなんて全然思ってないくせに。
面白かったのに3巻で終わりかあ。売れてないわけじゃなかったと思うんだけど。
ダラダラ続いて欲しかったと思う反面、密度高いまま終わって良かったのかな。とも思う。
面白かった。百合ギャグは個人的に引っかかる物が少ないので、これで終わりは惜しい。
面白かった。ズレたまま並行して走っていく感じが上手い。
まだ出るか。って感じのミニマル系イチャラブだけど、これは意外と新鮮だった。
ミニマル系イチャラブは男女のやり取りがハイコンテキストでそこが面白い作品が多い気がするんだけど、
本作は逆を行きつつ成立してるのが新鮮で上手い気がする。クラスメートの反応と相まってほっこり感ある。
球詠 5巻 マウンテンプクイチ
画は毎ページみどころいっぱいで最高。カッコいいしカワイイし。
まあこのレベルで動きのある画を描ける人いないって話だろうけど。
時代の空気を完全に再現した背景が最高で、毎巻楽しみにしてた作品だったので残念。
これだけ強固に作品世界を成立させている背景は、一般的な意味で背景と呼んでしまうのは作家に申し訳ない気になる。
安定して面白い。
話としてそんなに起伏があるわけではないけど、それぞれの釣りの面白さが出てて飽きない。
7 巻でおわりかあ。こういう作品はダラダラ続いてさ、何世代も入れ替わって行ってさ、ついに終わる時に「ああ、最初の頃カラスヤとかいたなあ。」なんて思って喪失感に浸るのが正しい楽しみ方だと思うんだけど。
残念だけどまあ7巻まで出て環会長は送り出せたのでそれなりに区切りはついたのかな。
さめない街の喫茶店 はしゃ
モノの画が最高。カットされたフルーツとか、ラップされたケークサレとか、ガラス器とかその中の液体とか、あらゆる画が楽しい。
マンガとしてもヒューマン?一つまみ、ファンタジー小さじ1の食べ物マンガって感じ。
オーブン使う料理ばっかりなのはわりと新鮮かも。まあ洋菓子多いからそれはそうかって話だけど。
メタモルフォーゼの縁側(2)(3) 鶴谷 香央理
なぜか2巻をスルーしてて、3巻が出たタイミングで2,3読んだ。
うららは苦しんでもいるけど基本的には(大人や友人に、直接に間接に、)救われていて、そんな中でどこかに向かおうとするあり様や、愛されっぷりがグッとくる。
廃墟のメシ1 ムジハ
面白かった。あっちで見たアレや、こっちでみたアレがふんだんに盛り込まれたB級SF食べ物マンガなんだけど、画力があるので独立して十分面白し、カレーを探すってオモシロ設定も楽しい。
最後の展開は正統派SFぽい意外性があって期待感をあおる。でも演出はオフビートでそこもまた良い。
オーイエー!おれたちのサライネスが帰ってきたぜー。
前作も悪くなかったけど、やっぱりこのノリすよ。
「誰も~」を楽しんでたオッサン/オバサンは迷わずBUY。若者もぜひトライしてみて。
お父ちゃん記者会見する話、超好き。しょうもない話にさらにしょうも無い話を何段も重ねてくるの最高。
この作品の視点そのものがちょっとスポーツ新聞ぽい気も。平和で良いと思います。
4巻にして動き出しましたー。良いっす。
個人的には母さんは母さんにしか見えなかったので、今までちょっと評価しずらかった。
おれが実ぐらいの年齢なら別な見え方していたのかもとは思う。
画は常に最高。毎ページ見どころしかない。空間とモノ/ヒトとか、人体とか、服のしわの一つ一つまで見どころ。
電書版の画質は1巻と比べると多少マシになった気がするけど、もう少し綺麗になるとうれしい。
アフタは電書版の画質が他誌(他社?)と比べてイマイチな気がする。
小学校の高学年の時、クラスメートに一人、すこぶる不気味な男の子がいたのだ。
みんなでワイワイ一緒に遊んだりはしない、クラスの人気者枠ではない、群れてない、かといっていじめられっ子だったわけじゃなく、別の男の子と2人でいることが多かったように思う。目立つタイプではなかったけど無口というわけでもなく、誰ともしゃべらないということでもなく。スポーツはあんまり記憶がなく(ということは特に目覚ましく運動神経が良いわけではなかったんかな)、勉強は出来る子の部類だったんじゃないかなと思う。
その子が私に向かってたまに敵意を感じる言葉をぶつけてきた。学校からの帰り道、私が友達たちと別れてひとりになった後で。とはいえ「いじめっ子」というのとも違う。何ていうか、意味不明な言葉をさも罵倒っぽく投げつけてくるのだ。
当時の我が家は一戸建の家の前にカーポートがあり自家用車を置いていた。某スポーツタイプセダン。その車の車種名を何故か私に向かって投げつける。大声で、時には走り寄ってきて追い抜きざまに小声で。「ばーか!ばーか!」みたいな口調で、車種名を。
最初は、まさか車種を大声で叫ばれてると思わないから「?(野良猫でも見つけて喜んでるのかな)」ぐらいに思って私に向かってる言葉だと気づかなかった。ある時、追い抜きざまに我が家の車を指さして「(車種名)!笑笑笑」と嘲り笑いをして去って行ったので、何?車がどうしたの?と。小学生女子それも大してメカに興味があったわけでもないので自家用車の車種名なんてぼんやりとしか知らず、ああそういえばうちの車そんな名前だったかもなぁ。と思う。そして嘲り笑いへの強い不快感。
家に入って兄に「うちの車って変なの?」と聞いた。今思えばごく普通のファミリーセダンだ。ノーマル派の父が珍しくホイール変えた位で他は純正。ホント没個性の普通の車だったのだが、笑われるのは辛い。
同級生に笑われたの…と話をしたら、兄(やさしい)は心配してくれて、イヤなら反撃しろ、反撃できないなら帰る時間をずらすとか、友達についてきてもらえ、ついでに家でみんなでマリカーでもやりゃいいじゃんと言われた。みんなでマリカーやるのはすごく良いなと思ったので、一緒に帰っている仲のいい友達を誘ってマリカー大会をやった。兄(3つ上、やさしい)が謎のマリカーキングでアホみたいに上手かったので、兄がいるときはたまに混ざってくれた。「○○の兄ちゃんの神技見よう」みたいなノリで我が家がたまり場になった。
楽しかったのは良いのだが、毎日みんなが集まってくれるわけはない、せいぜい週に1回。当然ひとりで帰る時が大半で、なるべく時間をずらして後ろからついてこられないようにしようと思ってはいてもいつの間にか後ろにつかれ近付かれて追い越して振り向きざまにギロッと睨まれたり、思い出したように車種名を叫ばれたりしていた。本当に気持ちが悪かった。
マリカー大会仲間のなかの男の子2人とマリカー以外でも仲良くなって、いつの間にか3人の家を行き来したり、3人でどっかちょっと遠くの公園まで遊びに行ったりするようになった。たまには大勢でマリカー大会やりつつ、男の子の行動半径の広さ(私は割と引っ込み思案なタイプだったので)に引っ張られていくうちにだんだん楽しくなってその不気味な男の子の嫌がらせもどうでも良くなった。たまに睨まれたりされてもそんなに気にならなくなった。そのまま小学校は卒業。卒業するまでの間、散発的にその男の子の言ってくることやってくることで嫌な気持ちになることはあったような気がするが、まぁどうでもいいやという感じになっていた。マリカー大会から私は、女の子も男の子も含めて友達が一気に増えたこともあって、すっかり引っ込み思案じゃなくなった。
中学受験とか公立の学区違いとか引越しとかで、小学校の友達は割とバラバラになり、特に仲のいい数人以外とは日常的な交流はなくなるが、それでも「ジモト」だから色々彼らの消息は伝わってくる。大人になって「私に向かって車種を叫んでくる彼」の消息があまり幸せそうだとは言えないようなのが、なんとなく心に刺さったとげのような気持ちになっていた。
他の子たちは、私立中・高→いい大学→いいところにお勤め&美人と結婚みたいなエリート人生まっしぐらな子から、公立のいい高校行ったのに放浪→自称クリエイター実態は奥さんが養ってる、とか、保育士(男)とか、ホテルマンとか、子供3人育てて町内会の仕切りしてと忙しそうなお母さんとか、中学出たら実家の料理屋さんを継ぐために修行、今は板前さん、みたいな子まで色々いる。実家を継いで板前さんになった子以外はみんな実家は出ている。私は中高出て大学行って会社に入りワーカホリックになりアイツこのまま結婚しないのかと言われてたけどかなり遅くにウッカリ結婚した。
その「例の彼」は、私の母いわくずっと実家にいる。同じクラスでご近所だったから彼の母親と私の母親はご近所づきあいをしているのだが、彼の母親から聞く話が割と辛い話が多いようなのだ。母は私にその詳細は言ったことはないが「あなた実家帰ってきたならたまには地元の飲み会(年に1度、年末に帰省して顔出せそうな子が板前になった子の家に集まって飲む)に誘ってあげたら?」と言ってくる。私はそうねー幹事くんに言っとくねーと言ってお茶を濁す。一度は幹事に誘ったら?と言ったがその年の飲み会には来ておらず申し訳ないがホッとした。いつもつるんでた悪友男子2人からは「あいつはお前のことが好きだったんだから放っておけ」と言われた。もちろんこちらも深入りするつもりは100%ない。当たり前だ。中年に差し掛かった今でも鮮明に思い出せるほど不気味だったんだから本当に。もしアレが好きな気持ちの表現だったとしても、そんなもん受け入れられるわけがない。
実家で暮らしている私の母は、日課である朝の散歩の時に出勤中らしき「例の彼」とすれ違うと言っていた。気が付いた当初はあらおはようなどと声をかけていたのが彼からリアクションがゼロで、ひょっとして人違い?と心配し彼の母との井戸端会議にて確認を取ったところやっぱり本人よね?となり再度あいさつや会釈を試みたもののノーリアクションで、ついに先月、なんか気まずいから散歩コースを変えることにしたと言っていた。
小学校の高学年の時、クラスメートに一人、すこぶる不気味な男の子がいたのだ。
みんなでワイワイ一緒に遊んだりはしない、クラスの人気者枠ではない、群れてない、かといっていじめられっ子だったわけじゃなく、別の男の子と2人でいることが多かったように思う。目立つタイプではなかったけど無口というわけでもなく、誰ともしゃべらないということでもなく。スポーツはあんまり記憶がなく(ということは特に目覚ましく運動神経が良いわけではなかったんかな)、勉強は出来る子の部類だったんじゃないかなと思う。
その子が私に向かってたまに敵意を感じる言葉をぶつけてきた。学校からの帰り道、私が友達たちと別れてひとりになった後で。とはいえ「いじめっ子」というのとも違う。何ていうか、意味不明な言葉をさも罵倒っぽく投げつけてくるのだ。
当時の我が家は一戸建の家の前にカーポートがあり自家用車を置いていた。某スポーツタイプセダン。その車の車種名を何故か私に向かって投げつける。大声で、時には走り寄ってきて追い抜きざまに小声で。「ばーか!ばーか!」みたいな口調で、車種名を。
最初は、まさか車種を大声で叫ばれてると思わないから「?(野良猫でも見つけて喜んでるのかな)」ぐらいに思って私に向かってる言葉だと気づかなかった。ある時、追い抜きざまに我が家の車を指さして「(車種名)!笑笑笑」と嘲り笑いをして去って行ったので、何?車がどうしたの?と。小学生女子それも大してメカに興味があったわけでもないので自家用車の車種名なんてぼんやりとしか知らず、ああそういえばうちの車そんな名前だったかもなぁ。と思う。そして嘲り笑いへの強い不快感。
家に入って兄に「うちの車って変なの?」と聞いた。今思えばごく普通のファミリーセダンだ。ノーマル派の父が珍しくホイール変えた位で他は純正。ホント没個性の普通の車だったのだが、笑われるのは辛い。
同級生に笑われたの…と話をしたら、兄(やさしい)は心配してくれて、イヤなら反撃しろ、反撃できないなら帰る時間をずらすとか、友達についてきてもらえ、ついでに家でみんなでマリカーでもやりゃいいじゃんと言われた。みんなでマリカーやるのはすごく良いなと思ったので、一緒に帰っている仲のいい友達を誘ってマリカー大会をやった。兄(3つ上、やさしい)が謎のマリカーキングでアホみたいに上手かったので、兄がいるときはたまに混ざってくれた。「○○の兄ちゃんの神技見よう」みたいなノリで我が家がたまり場になった。
楽しかったのは良いのだが、毎日みんなが集まってくれるわけはない、せいぜい週に1回。当然ひとりで帰る時が大半で、なるべく時間をずらして後ろからついてこられないようにしようと思ってはいてもいつの間にか後ろにつかれ近付かれて追い越して振り向きざまにギロッと睨まれたり、思い出したように車種名を叫ばれたりしていた。本当に気持ちが悪かった。
マリカー大会仲間のなかの男の子2人とマリカー以外でも仲良くなって、いつの間にか3人の家を行き来したり、3人でどっかちょっと遠くの公園まで遊びに行ったりするようになった。たまには大勢でマリカー大会やりつつ、男の子の行動半径の広さ(私は割と引っ込み思案なタイプだったので)に引っ張られていくうちにだんだん楽しくなってその不気味な男の子の嫌がらせもどうでも良くなった。たまに睨まれたりされてもそんなに気にならなくなった。そのまま小学校は卒業。卒業するまでの間、散発的にその男の子の言ってくることやってくることで嫌な気持ちになることはあったような気がするが、まぁどうでもいいやという感じになっていた。マリカー大会から私は、女の子も男の子も含めて友達が一気に増えたこともあって、すっかり引っ込み思案じゃなくなった。
中学受験とか公立の学区違いとか引越しとかで、小学校の友達は割とバラバラになり、特に仲のいい数人以外とは日常的な交流はなくなるが、それでも「ジモト」だから色々彼らの消息は伝わってくる。大人になって「私に向かって車種を叫んでくる彼」の消息があまり幸せそうだとは言えないようなのが、なんとなく心に刺さったとげのような気持ちになっていた。
他の子たちは、私立中・高→いい大学→いいところにお勤め&美人と結婚みたいなエリート人生まっしぐらな子から、公立のいい高校行ったのに放浪→自称クリエイター実態は奥さんが養ってる、とか、保育士(男)とか、ホテルマンとか、子供3人育てて町内会の仕切りしてと忙しそうなお母さんとか、中学出たら実家の料理屋さんを継ぐために修行、今は板前さん、みたいな子まで色々いる。実家を継いで板前さんになった子以外はみんな実家は出ている。私は中高出て大学行って会社に入りワーカホリックになりアイツこのまま結婚しないのかと言われてたけどかなり遅くにウッカリ結婚した。
その「例の彼」は、私の母いわくずっと実家にいる。同じクラスでご近所だったから彼の母親と私の母親はご近所づきあいをしているのだが、彼の母親から聞く話が割と辛い話が多いようなのだ。母は私にその詳細は言ったことはないが「あなた実家帰ってきたならたまには地元の飲み会(年に1度、年末に帰省して顔出せそうな子が板前になった子の家に集まって飲む)に誘ってあげたら?」と言ってくる。私はそうねー幹事くんに言っとくねーと言ってお茶を濁す。一度は幹事に誘ったら?と言ったがその年の飲み会には来ておらず申し訳ないがホッとした。いつもつるんでた悪友男子2人からは「あいつはお前のことが好きだったんだから放っておけ」と言われた。もちろんこちらも深入りするつもりは100%ない。当たり前だ。中年に差し掛かった今でも鮮明に思い出せるほど不気味だったんだから本当に。もしアレが好きな気持ちの表現だったとしても、そんなもん受け入れられるわけがない。
実家で暮らしている私の母は、日課である朝の散歩の時に出勤中らしき「例の彼」とすれ違うと言っていた。気が付いた当初はあらおはようなどと声をかけていたのが彼からリアクションがゼロで、ひょっとして人違い?と心配し彼の母との井戸端会議にて確認を取ったところやっぱり本人よね?となり再度あいさつや会釈を試みたもののノーリアクションで、ついに先月、なんか気まずいから散歩コースを変えることにしたと言っていた。
就活活動をしているときに、自分には「コミュニケーション力」なんてものがあるのかどうかが本当に分からなかった。
○面接が得意
○年度始めのような自己紹介が好き
○いわゆるパリピが怖い、嫌い
○急に距離縮めてくる人が苦手
などなど。インターネットでよくいわれるコミュ障にはあてはまらないけど、明らかに本当にコミュ力高い人の前にいくと自分のコミュ力無さに絶望する。
でも、「自分はコミュ障だから」っていうには違う気がするという思いをぐるぐる抱えていた。
で、気づいたのが、
深い付き合いが苦手
という事実。
面接とかお店とかって、短くて浅いつきあいだから得意なんだ、ってことに気づいた。役割を果たせば良い場所だから。
クラスメートや同僚は、距離感も深さも正解が見えにくいし、とちったときのリスクも大きい。自分は、これが苦手なんだなと思う。
それとも、これもただのコミュ障なんだろうか?
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」なんて、マリー・アントワネットは言っていなかったらしい。
なんで彼女のセリフとして広まったかというと、“あいつなら言いかねない”からだ。
俺たちはそんなフンワリとしたイメージだけで信じてしまえるわけ。
冷静に考えてみれば、そもそも本人に確認を取っていない情報を信じるなって話ではあるけれど、そんなこと言い出したら歴史上の人物はほとんどがそうだろ?
いや、今でも似たようなものかも。
俺たちは信じたいものを好きなように信じて、気をつけて使うべき階段を踏み外して怪我をする。
階段を使うことを決めたのも、気をつけなかったせいで怪我をしたのも自分のせいだけど、そのことについて反省しない。
その日の俺も深く考えないまま、学校の階段を一段とばして上っていた。
朝のチャイムが鳴る前に教室に入っとかなきゃいけないから急いでたんだ。
登校だとかの面倒くさい日課はギリギリまでやらないことがモットーなのさ。
「よっ、ほっ、はっ」
階段を上るたび、背負っている鞄がユサユサと揺れる。
その振動で体のバランスは不安定になりやすく、ちょっと危なっかしい。
さっきの例え話とかけるなら、俺はここで階段から転げ落ちるんだろう。
けど、あくまで例え話は例え話で、フィクションのフラグなんて存在しない。
こんな余裕のないことをしておいてナンだけど、俺だって遅刻したいわけじゃない。
焦るものは焦る。
実際、それで遅刻しかけたこともあるので、ここで走るのは危険を伴う。
急いで歩くことが求められる。
「急げ、急げ、急げぇ~」
そう呟きながら自分を鼓舞しつつ、競歩選手並にクネクネしながら教室へ向かう。
スピード的には走っているようなものだったけど、常に足のどちらかは地面に接しているので問題ない。
だけど、それでも残り数秒あるかどうか。
頼む、間に合ってくれ。
朝のチャイムが鳴り響く。
これまでにないほどバッチリのタイミングだったので、思わずガッツポーズをした。
「客観的に見れば、ただ遅刻しかけただけなのに。よくそんなに喜べるな」
「偉そうなこと言うなよツクヒ。遅刻しなかったのも、遅刻しかけたのも同じ。つまり俺とお前に何の違いもないんだ」
取るに足らないやり取りだ。
むしろ俺が気になっていたのは、仲間のタオナケ達が珍しいネタで盛り上がっていたことだった。
「う、うん……みた、き、きいた」
俺たちガキにとって、ニュースは占いとかミニコーナー目当てに観るものだ。
だってニュースの話で朝から盛り上がるなんて、イキってるみたいじゃん。
だから話題になっているということは、よっぽど気になるネタがあったってことの裏返しでもある。
相貌失認とは違うと思うのですが、多分みんな一度は経験したことがあると思うが。
同じマンションの敷地内で会うと、「あ、6階のひとだ。」と、わかるが近所のスーパーでで会うと誰だか認識出来なくてすぐに挨拶できない。
何処か悪いんでしょうか。
さっき昼休みに弁当買いに行っての帰り道向こうからニコニコした人が来るな、と思ったら「私も買いに行って来ます。」と言われてやっと会社の人と認識できました。
因みに私とその人は20年くらい同じ会社で働いていてうちの会社は会社というより事務所で社員数も10人以下です。
言い訳をするなら今日はその人の顔が私が思ってるのと違ったんです。
あれ、あれ、と思って、ああ、あの人だとわかりました。
もちろん会社の中では全くそんなことを思ったことがないのです。
この人はこんな大きさだったっけ?
本当によくこういう話になってたんだよね、それだけ女子学生は特に日常的に被害にあってるんだよなぁ。
全国で年間2000件ちょっとの痴漢に「日常的にあってる」ねぇ。
全く信用に値しないな。
安全ピンじゃないにしても、校章バッジでぶっ刺してやりたい、みたいな会話は自分がJKの時もしてた。実際にやった子はたぶんいなかったと思うけど、クラスの誰かが「またやられたんだよ」みたいな話になると、そういう「やっつけ方」の情報交換ともストレス解消ともつかない話をよくしてた。
本当によくこういう話になってたんだよね、それだけ女子学生は特に日常的に被害にあってるんだよなぁ。
こんなに「クラスメートの誰かしらが日常的に被害にあってる」なんて犯罪、他にそう多くはないっすよ。あとはイジメぐらい?みなさんイジメにはすごい強硬ですけども。
両親の監視下なのにクラスメートの分のおにぎりを作ることができたのですね。余計な食材を使って咎められなかったのでしょうか。
八頭身で巨乳だそうですが小学生のころから八頭身で巨乳だったのでしょうか。満足な食事も与えられていない栄養失調状態で成長に問題はなかったのでしょうか。
バイト代全額親に取られてもラバーソールは買えたのですね。こっそり買っても目立つ靴ですしラバーソールを買ったことでひどい目に合わなかったか心配です。
結構ゲームやってますね。ゲームボーイや64などで遊ぶことはできたのでしょうか。
1日2本見ても1年で730本、1万本に到達するには10年以上かかりますね。実家を離れてから映画に目覚めて狂ったように見まくったのでしょうか。
http://b.hatena.ne.jp/entry/s/twitter.com/ewan612/status/1129252222838034433
本気で擁護してんのか?
「あなたは、自分だけが秘密の苦痛を抱えていると思っていますが、それは大まちがいです。お兄さんにしてみれば、妹を犯したという罪の意識が、一生ついて回るでしょう。(中略)お兄さんにはお兄さんの悩みや苦しみがあるんです」
第一、兄は相談者に相続放棄させようとしてるんだから兄も罪悪感感じてるとか言われても説得力ないし。
これで相談者が救われると?
「クラスメートと仲良くできないのは珍しいことじゃない」
「自分だけが苦しんでると思うな。いじめっ子も罪悪感で苦しんでる」
とか言うようなもんだぞ。
小学校の頃のテストは100点がデフォルトだった。学校の教科書は、新学期に受け取って数日で全部読んでしまい、独学ですべて頭に入った。夏休みの宿題はふつう夏休みの1週間くらい前に発表されるが、夏休みに入る前にたいていすべて終わらせていた。
なぜこんな簡単なことを他の人たちはわからないのだろう?と不思議だった。すべてが簡単すぎた。そして、そんなことを学ぶために一日学校に縛り付けられているのが苦痛でしかなかった。
でも、そんな簡単な授業さえ理解できずに、テストで60点・70点しか取れないクラスメートたちがたくさんいたのだった。
IQは100が平均だ。この世の半分の人たちはIQが100に満たない。電車に乗ってもどこに行っても、大雑把に半分くらいの人たちはそんな人たちなのだ。世の中のさまざまな制度や教訓などはそういう人たち向けに作られている。
私は社会にたいして大小さまざまな不満を持っているけど、結局、自分のような人間はどこまで行っても少数派だし、私があれこれ考えたところで、そのやり方はほとんどの人たちには適用できないのだ。
自分の学校でイジメが行われている少中高生に届いて欲しいと思って書く。
私は、今話題の不登校小学生YouTuberに関する記事を見る度、思い浮かぶものがある。
かつて自分が加担したイジメによって不登校になったクラスメート達の顔だ。
私がいた小学校では、イジメが行われていた。そして私は、それを止める事はおろか静観する事もなく、自己防衛のためにある種それに加担さえしていた。
「そうしなければ自分が標的になっていた」という自己弁護もできるかも知れないが、大方のイジメはそういった種類の人間によって支えられているものだと思う。
「自分はイジメの首謀者ではない」あの時の誰もがそう言うと思うが、私を含め全員が首謀者であったのだ。
イジメの種類としては、呼び出して暴行を加えたり、どこかに閉じ込めたり、物を隠したりといった積極的なものではなく、
陰で「○○菌」など言って避け、存在を無視するといった、陰湿なものだった。
そしてその標的となったのは2人の女子であった。
そのうち1人はイジメを理由に市内のどこかの小学校へ転校していった。大学生の頃Facebookで見つけたが、楽しい生活を送っているようだった。
それによって私の罪が軽くなる事は決して無いが、非常にホッとしたのを覚えている。実に身勝手な感情だと思う。
もう1人は、不登校になった。正確には覚えていないが、小学校6年間のうち数年間に渡って不登校になった。卒業アルバムの写真は、1人だけスナップ写真が使われていた。
中学に入り、一時期学校に来ていたが、小学校時代ほどあからさまではないものの、本質的には変わらない私達の対応で、またすぐに不登校になった。
小中学校を共に過ごした私達は、中学校を卒業し、各々の学力に応じた高校に散らばった。
過去数年間の学年と比べて高校の進学実績が良かったため、親や教師は「この学年は出来が良い」などと言った。
各々が部活や恋愛で思い出を作り、自分の中学生活を肯定し、晴れやかな顔で卒業式を迎えた。寂しさで涙を流す者もいた。
皆、自分達がその人生を壊した"彼女ら"の存在を、忘れていたり、忘れたフリをしていた。
その後、成人式などの機会で何度か顔を合わせる場があったが、"彼女ら"の事は一度も話題に上がらなかった。
誰もがその話題を避け、決して話そうとしなかった。
私の犯した罪は、15年以上が経った今、どういった手段によっても贖えるものではないだろう。
そして、今私がどういった種類のアクションを起こしても、誰の得にもならないだろう。
だがもし、何かのめぐり合わせで、"彼女ら"と同じ職場になったり、子供同士が同じクラスになったりして、
"彼女ら"と顔を合わせる事があったら、私はどうするだろうか。
きっと、何らかの形でアプローチし、許しを乞うだろう。
許されるはずもないのに、罪の意識に耐えられず、許しを乞うに違いない。
幼いゆえに最も残酷なやり方でもって、"彼女ら"の人生を壊し、「幼いゆえに」という方便を使い、その責任に向き合う事を放棄してきた。
娘ができたからだ。何事もなく成長し、来年には小学校に入学する年になった。
公園で遊ぶ娘の笑顔を見た時、遠い記憶の中の"彼女ら"の顔が、自分の娘の顔に重なった。
その瞬間、身の毛もよだつほど恐ろしくなった。今目の前にいるような少女の人生を、無慈悲に踏みにじり、その事実に目をつぶってきた自分が、酷くおぞましいもののように思えた。
自分には子供を育てる資格はないのでは。いや、幸せになる資格すら無いのでは、と思った。
「未来ある小学生の人生を自分の手で壊した」という否定しようのない事実に、私は今この瞬間も苦しみ続けている。
そして、一生苦しみ続けるべきなんだろうと思う。それしか、私にできる事は無いのだと思う。
もし、これを読んでいるあなたが、イジメに加担しているのならば、
いつか必ず、その罪に向き合わなければならない時が来ます。
そして、その十字架を一生背負って生きていくという重みについて考えてみて欲しい。
その十字架を背負わない為には、今から行動を起こすしかありません。
またもし、これを読んでいるあなたが、イジメを受けているのならば、逃げて下さい。
そして、自分を肯定して下さい。イジメを受けているのはあなたが悪いのではなく、学校やクラスメート等の環境が悪いのです。
転校するのも良いかも知れません。フリースクールに通うのも良いかも知れません。家でできることを探すのも良いかも知れません。
不登校YouTuberの言う通り、不登校は不幸ではありません。学校に通うことは、幸せになる唯一の道ではありません。
・クズ女かどうかは弱者やカースト下位の人間への差別意識でわかる
・どんなに恋愛経験豊富でも半年は交際しないと相手がクズ女かどうかはなかなかわからない
・クズ女と交際する時間は全て無駄。2割の非クズと交際するべき
・イケメンや恋愛工学やってるようなモテ男ほど好んでクズ女とばかり交際してるから優良物件は手つかずでゴロゴロある
・顔がずば抜けて良い女は基本的にクズ。モデルや女優の卵との交際なんてもってのほか
・ちなみに男も8割はクズ
ちなみに
クラスメートの誰かと揉めたリア充グループが「お前あいつと口聞くなよ?」とかクラス中に働きかけることに対して「うわあ…とにかくめんどくさい…」とどちらとも距離を置きたがる女は非クズに入るらしい。
そして、非クズ女は隠れてるだけで実は腐るほどいるんだと。それこそ近所にもいると言っていた。
良い歳して全く結婚できる気配すらない地味な非モテ女なんかは非クズ率が高いんだとか。
らしい
「ちょ、ちょっと待って!? 自分も従業員ですよ。パンを盗める時間なんて無い!」
「でもアンタには、“アレ”があるだろう? ちょくちょく使ってるのを見たから知ってるんだよ」
オバチャン曰く、犯行推定時刻中は皆が目に見える場所にいたらしい。
犯人がこの中にいるにも関わらず、全員にアリバイがあるという状況。
大掛かりなトリックでも使えばアリバイは崩せるかもしれないが、パンを盗むためにそこまでやるとも思えない。
となると、もっと“手軽かつ特殊な方法”が使われたと考えるべきだろう。
そして、この従業員は『アポート』という、物体を瞬間移動させる力があった。
俺もこの従業員とは別件で関わったことがあるので、それが事実であることは知っている。
アポートをつかえば、アリバイを成立させつつパンを盗むことは可能かもしれない。
だが、この推理には一つ誤解がある。
俺は少し横槍を入れることにした。
「オバチャン、その従業員が犯人と決め付けるのは気が早いと思うよ」
「え、何でだい?」
「超能力は万能じゃないんだ……そうだろ?」
俺がそう言いながら目配せすると、従業員はバツが悪そうに説明を始めた。
「信じてもらえるかは分かりませんが……自分のアポートは『二つの非生物の位置を入れ替える』ことしかできないんです。そして、入れ替える対象は同じ大きさじゃなきゃダメだし、視界に両方収める必要もある」
そう、この従業員のアポートは、無条件に何でも移動させられるようにはなっていない。
アリバイを成立させつつ、パンを盗めるような超能力ではないんだ。
「もちろん、この従業員が全て本当のことを言っている保証はない。だけど、超能力にリミッターがあるのは確かなんだ」
「え、何それ?」
何となくそんな気はしたが、オバチャンは超能力のことは知っていても“リミッター”の概念は知らなかったようだ。
超能力は人によって性質こそ様々だが、いずれも何らかの制限がついている。
例えば弟のクラスメートにタオナケっていう超能力者がいて、そいつは裸眼で捉えた物質を破壊することができる。
ただし、そのためには数秒間、対象を睨み続ける必要があるんだ。
更には体調によって成功確率が変動し、普段はせいぜい5回に1回といったところ。
これはタオナケが超能力者としてポンコツだからではなく、身体的メカニズムとしてリミッターがかかっているからだ。
超能力はそのままだと強すぎるので、リミッターがないと人という器は耐えられないのである。
時を止めて自分だけ動くとか、人を生き返らせるといった規格外な超能力は存在し得ないのさ。
「……というわけでアポートには制約が多いので、誰にも気づかれないようパンを盗むのは常識的に考えて難しいかと」
「ええ~、ほんとにぃ~?」
「義務教育で覚える話ですよ」
「それ言われると、弱っちゃうなあ……」
「オバチャンの気のせいってことは? パンは本当に残っていなかったの?」
その後も、皆であーだこーだ言い合うが、話は平行線のまま進まない。
みんな疲弊するばかりであり、俺もこの状況にはかなり参っていた。
もちろん、俺は犯人じゃないことが確定しているから、このまま帰ってしまってもよかった。
帰りに適当な店でコッペパンを買ってもいいし、違うパンでも構わないとも思っている。
このまま何食わぬ顔で何かを食べても、表面上は腹を満たせるだろう。
だが、『食べようと思っていたものが食べられなかったという体験』が問題なんだ。
そんな心理的負荷を抱えたままレポートに取り組める図太さは俺にはない。
この事件を明らかにしない限り、俺の心にはポッカリと穴が空いたままになる。
……まあ、とどのつまりは意固地になってるだけなんだが。
待ち続けること数分―――
「遅いな……」
いや、実際は1分と経っていなかったかもしれない。
なにせ、その時の俺は期末レポートを抱え、空腹とコッペパン欲も併発していた。
焦燥感によって地球の自転速度は狂いまくり、うるう秒による調整は困難を極める。
そんな無限にも思えた時間の中、ようやくオバチャンが戻ってきた。
だけど、何も携えていない。
「ねえ、ちょっと……」
会話の内容は聞き取れないが、表情の険しさからタダ事ではないのが伝わってくる。
そして突然、オバチャンは食堂全体にダミ声を響き渡らせた。
「どういうことだ、オバチャン」
「持っていかれてる」
「え、まさか……盗み?」
「そう」
「何が盗まれたんだ?」
状況から考えて、返ってくる答えは明白だったろうに。
「コッペパンだよ。残りが全部なくなってる」
言葉として理解できても、あまりにも予想外な展開に心が追いつかなかった。
こうして俺はレポートも空腹も宙ぶらりんのまま、事件に巻き込まれることになった。
まったく、何でこんな目に合わなくちゃいけないんだ。
「盗みが起きたのは分かったけど、何でオイラたちは食堂から出ちゃいけないんすか?」
その中にはクラスメートのカジマもおり、ぶつくさと文句をたれている。
「ええ!? どういうこと?」
オバチャンによると、コッペパンの残りは数分前まであったらしく、盗みはその時間内に起きたことになる。
そして、食堂は人が少ない時間帯で、20分ほどの間に出入りをしたのは俺だけ。
「本当にこの中に犯人が? そこまで言い切れる?」
「出入り口はカウンターから一望できるし、今の時間帯は出入りが少ないから、数え間違いは絶対ないよ」
人の出入りがあれば記憶に残るだろう。
「この中にいるのは分かったけど、どうやって犯人を見つけるつもりっすか?」
「ふふん、実は既に見当がついているんだよ」
オバチャンの自信満々な物言いに、皆がザワつく。
俺も多少は絞れているが確信には至っていないので、これには驚いた。
「まず消去法で候補を外していくよ。アタシはもちろん違う。基本的にみんなの目に見える場所で働いているから、パンを盗んだり処理したりするのは無理だからね」
「え~? でもオバチャンは従業員で、しかも第一発見者じゃん。パンがなくなった時間を誤魔化せば、いくらでもアリバイは作れるっすよ」
「やだねえ。もしアタシが盗んだのなら、ここまで大ごとにせず黙ってればいいだけじゃないか」
そんな感じでオバチャンは雄弁に語りながら、推理を披露し始めた。
その様子は少し楽しげにすら見える。
場を仕切りたがるのといい、刑事ドラマでも観て感化されたのだろうか。
「コッペパンを注文した兄ちゃんは、食堂に入ってきた時刻と事件発覚にほとんど間がない。犯行は物理的に不可能だ」
とはいえ、オバチャンの推理はそこまでデタラメというわけではない。
一応の筋は通っているし、憶測の動機から犯人を決め付けたりもしない。
無意味な深読みをして俺を犯人だとか言い出さないだけマトモな方である。
そうしてオバチャンは回りくどい説明を挟みながら、満を持して犯人を指差した。
1日の長さは地球の自転速度によって決まっているらしい。
地球が1回転するのが平均24時間で、それが1日の長さになってるんだとか。
しかし毎日同じというわけでもないようで、その時々によって分や秒の長さも変わる。
天体物理学だとかはサッパリ分からないが、その違いを感じ取ることは俺にでも出来る。
地球の自転速度は異常をきたし、人間の体内時計は大きく狂わされる。
縞柄のシャツをいつも着ていたので、俺たちは尊敬の意を込めて「シマウマ先生」と呼んでいた。
彼の課題に対する評価は非常にシビアであり、他の先生ならば通用する手抜きも減点対象にしてくるほどだ。
「あらかじめ言っておこう。この課題の評価は、成績のおよそ5割を占める。落書きを出した者の末路は悲惨ということだ」
恐ろしいのは、それが脅しでも何でもなく事実であるということだ。
もしもこの忠告を甘く見たとき、その人間に待っているのは「補習」という名の拷問である。
「お前たちの中には、この課題を恨めしく思う者もいるだろう。だが分かって欲しい。私は生徒を正しく評価したいだけなのだ。優秀ないし勤勉でいてほしい。その手ほどきを惜しむつもりはない」
とどのつまり「補習になった生徒に対しては、春休み中だろうと容赦しない」という宣誓である。
その言葉からは、むしろ補習組を作りたいという情念すら感じた。
そんなことをしても教師の仕事は増えるし、生徒の休日は減るしで誰も得しないというのに。
或いは生徒の苦しむ姿を見て喜ぶサディストなのか。
実際どうなのかは知らないが、何にしろ俺たちは課題をこなさなければならない。
春休みにもなって、擦り切れたラジカセのような講釈を聞くのは御免こうむる。
期限は2週間ってところだ。
地球の自転速度が狂っている今、猶予はそこまでないと考えるべきだろう。
「あ、マスダも来ていたんだ」
どうやら俺と同じ目的のようだ。
「カジマは?」
「彼奴は期限ギリギリになるまでやる気がないらしい」
「おいおい、カジマのやつ。またネット記事からパクってくるつもりじゃないだろうな」
「それを気にかける筋合いも、そんな余裕も我々にはない」
冷たいようだが、ウサクの言うとおりではある。
この課題は孤独な戦いであり、俺たちは互いに協力するわけにはいかないんだ。
学校に行きたくなかった。
少なくとも破滅的に悪い人は居なかった。
体育の授業が苦手だった。
運動神経が悪くてつらかった。
でもそれだけならそれ大変だってだけだったと思う。
ドッジボールが駄目だった。
①逃げなくてはいけない
どんくさい私には難しかった。逃げられずにチームの足でまといになるのがいやでいやで仕方なかった。
②ボールをぶつけられる
痛い。単純に痛い。人からボールをぶつけられるの怖くてたまらなかった。バレーボールがたまたま狙いが外れて当たるのとは訳が違う。
明確な意思を持って人に狙わられるその心理もボールの重さも痛くてたまらなかった。
③ボールをぶつけなければいけない
嫌だった。誰かを狙うなんて嫌だった。強い子を狙後々が怖かったし、弱い子を狙うのは自分が狙われてる時を思い出して心がぐちゃぐちゃになった。自分と関係が良くないクラスメートも狙えない。仲が良くて強い子なら狙えるけど、そんな子が味方チームだったり外にいたりすると何も出来なくて、パスを回してブーイングされたりした。つらかった。本当に辛かった。
体育の授業でだけならまだ耐えられたかもしれないけど、毎日休み時間にやらされた。
体育の授業は毎日じゃないけど、ドッジボールの練習は毎日だった。
昼休みつらかった。
楽しい座学授業も給食もドッジボールがあるというだけで心が黒く重く塗りつぶされてつらかった。
大人になったらもっと大変なんだから子どものうちに我慢することに慣れなくちゃって思って頑張ってた。
こんなに嫌だったこと、大人になったら笑い話なるんだろうなと思ってた。
大人はすごく大変で、自分はこんなドッジボールごときでくじけて弱音を吐いてはいけないのだと思ってた。
後悔している。
我慢するべきではなかった。
大人になって大変なことはもちろんあるけど、子どものつらさより大人のつらさの方が「偉い」なんてことはない。
ある程度の我慢はもちろんしなくてはならない。わがままばかり言うことは出来ない。
でも心が歪むほどつらかったのならそこから逃げ出していいのだと昔の私に言いたい。
大変だね。頑張ってるね。つらかったら逃げていいよ。
大人はもっと大変とか、私より貧しい人はもっと大変とか、私より頭悪い人は大変とか、私より鈍い人はもっと大変だから、とか我慢しなくていいよ。
「普通」か「普通より少し恵まれている」あなたの大変さはなかなか理解されにくいけど、だからって大変じゃないってことにはならない。
でも学校から逃げて将来生活していけるのか?って不安あるよね。
死ぬくらいなら不登校で良いよって言う人は多いけどそれで将来どうすればいいのか提示してるひとは少ない。
「よお、しばらくぶりだな。マスダ」
俺を呼ぶその声にギクリとする。
聴こえた方に目を向けると、そこにはツクヒがいた。
「お、おお、ツクヒじゃん。久しぶり」
そうだ、ツクヒ―――こいつがいたんだ。
「なんか手強い風邪だったらしいけど、治ったの?」
「そりゃあ愚問だぞタオナケ。治ってなきゃ、まだ休んでるっつーの」
「な、長く休めて羨ましいなあ……」
「ドッペルか……オレもそう思ってたんだが、今回はマジで酷くてな。何もする気が起きないし、大好きなラーメンすら碌に食えなかったときは絶望したぞ」
俺たちのいる学級はクセの強いやつが多いが、ツクヒはその筆頭だった。
「まったく。オレの容姿が良ければ、ウィルスもここまで暴れなかっただろうに」
こんな感じで、ツクヒは自分のコンプレックスに原因を求めたがる。
自分の思い通りにならないことがあったり、気に入らないことがあるたび、因果関係なく「これも全てはオレの容姿が悪いせいだ」とうそぶくんだ。
呪いの装備は大きなデメリットがあって、自由な付け替えもできない。
だけど多少のメリットもあり、その気になれば普通の装備より使える。
あいつがそこまで自覚した上で利用しているとも思えないけど、いずれにしろ卑屈な奴だ。
「うん? 見慣れない輩がいるな」
ここにきて、初めて見たわけだ。
「あれが噂の転校生か。どうやらクラスに馴染めていないようだが」
「ま、まあ、まだ転校してから日が経ってないし……」
「ふぅん……とりあえず挨拶しておくか」
ツクヒはそう言って、ブリー君に近づこうとする。
俺たちはそれを止めようとした。
「私、挨拶は大事だと思うけど、別にしなくてもいいと思うわよ」
「何でだ。クラスメートなんだから、挨拶くらいしてもいいだろう」
「だ、だって……ツクヒはブリー君のことをよく知らないし、ブリー君はツクヒのことをよく知らないし」
「んん?……だから挨拶なり、自己紹介なりするべきなんじゃないのか?」
ツクヒの言うことは尤もである。
ロクなことにならないという予感がありながらも、俺たちにはツクヒを止める理由がなかったんだ。
ツクヒとブリー君の初対面。
「よお、初めまして、か」
「あれ、きみは……」
「ツクヒと呼んでくれ。よろしく」
「うん、よろしく」
俺たちはハラハラしながら、二人の様子を遠巻きに見つめていた。
今のところは滞りなく会話が進んでいるようだ。
「そうだなあ、ちょっと換気が悪いかな。椅子も座り心地がイマイチ」
だんだん、雲行きが怪しくなってきたぞ。
「そうか、まあ気にするな。お前が美人ならば、すぐにクラスに馴染めただろうが、そうじゃないなら気長にいくしかない」
ツクヒはツクヒで、いきなり悪癖が出てしまった。
失礼なことを言っているが、まあツクヒなりの気遣いなんだろう。
あいつは自分の容姿にコンプレックスを持っていると同時に、それを便利な言い訳の道具だとも思っている。
ブリー君にも、その便利な道具を手渡したつもりなんだ。
だけど、そんなものが伝わるはずもない。
「別に見た目は関係ないよ。仮にそうだとして、見た目で判断するような人と仲良くしても、ねえ」
ブリー君がそう言葉を返すと、ツクヒの眉の角度が少し上がった。
マズい。
「それに見た目を理由にするような人間と仲良くしたい人もいないだろうし」
そして追い討ちの言葉だ。
言ってることの是非はともかく、ツクヒのスタイルを否定し、そしてツクヒ自身まで否定するものだった。
もちろん、ブリー君は悪意や皮肉をこめて、ツクヒを狙い撃ちして言ったわけではない。
ただ、人の機微を察知しないため、自分の言っていることで相手がどう思うか考えないんだ。
「そうか、そうか……」
口調は穏やかでありつつも、ツクヒの眉は既に急傾斜。
「お前の言いたいことは……よーく分かった!」
上手く言葉には出来ないが、ツクヒはいてもたってもいられなかった。
スタスタと自分のロッカーに向かうと、ガサコソと何かを漁り出した。
おもむろに取り出したのは、大きな空のペットボトルだ。
それを二本携え、ブリー君のもとに戻ってきた。
「え、どうしたの、何そのペットボトル」
ツクヒは有無を言わさず、片方のペットボトルをブリー君の足元に放り投げた。
「オレと戦え! 決闘だ」
「えー、皆さん、こんばんは。今回は新プログラムの説明をさせていただくため、先生方にも全員集まってもらいました。ではPTA会長。よろしくお願いします」
「はい、うけたまっ。それでは皆さん、お手元の資料をご覧ください」
その資料の表題には、妙ちきりんなフォントで『新・イジメ対策プログラム』と書かれていた。
「現代社会は流動的です。我々も高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変な教育をしなければなりません。学校という小規模な社会においてもそれは同じであり、然るにこのイジメ問題も―――」
勿体つけた言い方をしているが、要は学校のイジメ対策を強化しようというものだった。
数週間前、近隣の学校でイジメ問題が各メディアで取り上げられたこともあり、彼らはピリついていたんだ。
そこで今回のプログラムを急いで作った、てところだろう。
だけど、そうやって作ったものがちゃんと出来ているはずがない。
色々書かれていたけれど、要約するなら「イジメらしき行動には問答無用で介入して罪・即・罰」といった感じ。
「―――以上になります。特に反対意見がなければ、このまま適用していただこうかと思いますが……何か質問はありますか?」
PTA会長はこう言っていたが、プログラムの適用はこの時点でほぼ決まっていた。
“イジメがよくない”という点では意見が一致しているので、下手な反論をしてもヒンシュクを買うだけだからだ。
それでも、そのプログラムの内容に難色を示す人がいた。
「なぜでしょう。ルビイ先生」
「やや過剰反応といいますか……イジメと言っていいのか分からない微妙なラインを、大人の尺度で判断するのは如何なものかと」
「何ですと?」
生徒たちだけで解決することが可能ならば、生徒主体でやらせるようにしている。
「私たちが必要以上に目くじら立てて、生徒たちの間に介入して問題化させる。それが果たしてベターなのかが疑問なんです。仮にやるとしても、現実問題として教師側の負担が大きすぎますし……」
だけど、ルビイ先生の教育に対する姿勢を、職務怠慢だと感じている人も多くいた。
穏当に、あくまで一つの意見を述べたにも関わらず、周りの人たちから怒号の嵐。
「何を悠長なこと言っているんですか! イジメ問題は、早めに解決しなければ取り返しがつかないんです」
「イジメを認知していなかった学校が、どれほどの責任を追及されるか」
「PTAからはもちろん、大事になればメディアで世間にも広がっていくんですよ。それだけイジメは深刻に見るべき問題なんです!」
「あなたはそれでも教師ですか! 児童の上に立ってモノを教える仕事にをナメているんですか!」
会議室という閉鎖された空間で、その波を一身に浴びてはひとたまりもない。
「い、いや、私はただ冷静に対応しようと言いたいのであって、イジメを容認しているわけでは……」
ルビイ先生はその大きな力に抗えるはずもなく、慌てて取り繕うのが精一杯だった。
「では、“満場一致で賛成”ということで。『新・イジメ対策プログラム』を、みなさん頭に叩き込みましょう」
ルビイ先生はただ黙って、他の職員に合わせて頷くしかなかった。
「はあ……」
『新・イジメ対策』に関する分厚い資料を目の前に、ルビイ先生は人知れず溜め息を吐いた。
場面は戻り、俺たちのクラス。
裏で起きていることなんて知る由もない俺たちは、未だブリー君との距離を測りかねていた。
最初の内は頑張って仲良くなろうとする奴もいたけど、数十秒ほど会話をするとすぐに諦めてしまう。
そんな感じで、一週間経ってもブリー君は孤立している状況だった。
コミニケーションをとれる余裕も、俺たちにはもはや残っていない。
「ちょっと可哀想だけど、当然の結果よ。あんな子と上手くやっていくなんて無理だわ」
タオナケはすっかりブリー君のことを嫌ってしまったようで、遠巻きに見ながら毒づく。
「う、うん、別に悪い子じゃないんだけど……話すと、すごく疲れるんだよね。め、免疫細胞がガリガリと削られていく感じ」
それに対し、ドッペルは控えめな表現をしているが、ところどころにトゲを感じる。
「まあ、大きなトラブルが起きないだけマシ……か」
俺もこの状況を妥協するようになっていた。
ブリー君の今の立ち位置に問題なんてなくて、そこから無理に動かす道理もないんだ、と。
だけど、この時の俺たちは忘れていた。
ブリー君に気をとられすぎて、気づいていなかったんだ。
ブリー君と接触していないクラスメートが、まだ一人だけいたことを。
結果、俺のいるAチームは負けた。
勝敗は内野の残り人数で決まったんだけど、Aチームは俺1人で、Bチームは2人だった。
「うーん、惜しかったね」
俺たちは、それに気のない返事をする。
「……そうだね」
そう、僅差だった。
不平不満を垂れ流して味方チームの士気を下げつつ、パスで敵に易々とボールを渡し、避けるそぶりすらせずやられたブリー君をだ。
もちろん、俺たちのプレイに何の落ち度もなかったわけじゃない。
最も悪目立ちしたのがブリー君というだけだ。
でも、ブリー君が文句をブツブツ言わなければ、パスくらい最低限できれば、避けるのをもう少し頑張ってくれれば……。
そのどれか一つだけでも多少できれば、マシだったなら勝てたゲームだ。
極端な話、ブリー君がAチームではなくBチームにいれば……いや、ブリー君がいなければ勝てたに違いない。
僅差で負けたという結果は、そんな鬱屈とした思いを大きくさせた。
だけど、そんな俺たちのことなんてブリー君は知ったこっちゃない。
「やっぱり戦術不足が敗因だと思う。もう少し対策を練るべきじゃないかな」
「外野も、もっとパスを回して相手を動かして、体勢が調わなくなったら足元を狙えばいいんだよ」
まあ実際のところ、ブリー君の言っていること自体は的外れってわけじゃない。
言ってる本人がまるで出来ていない点を除けば、一理ある指摘だ。
だけど「ブリー君が足を引っ張ったから」という指摘の方が、何理もあるのは変わらない。
そのことを言わないよう気を遣う俺たちと、その可能性を1ミリも考えないブリー君。
俺たちはそう言いながらブリー君に背を向け、小走りでその場を後にした。
ブリー君が後ろからまだ何か言っていたが、自分たちの会話でそれをかき消す。
それは、良いやり方ではなかったけれど、それが俺たちの精一杯だった。
あの時、ブリー君の顔を見たり、声を聞いたりする余裕が俺たちにはなかったんだ。
本心からくる心ない言動が、いつ表に出てくるか分からなかったんだから。
「私、女だけど、ああいうのと上手くやっていける気がしないわ」
俺たちにだけ聞こえる声量で、誰かがそう呟く。
仲間のタオナケだ。
「自分の言っていることが周りにどう思われるか、まるで考えていないんだもの。すごく無神経で、そのことに無自覚で、自分のことを客観的に見ようともしない」
タオナケの言うことには同感だ。
「タオナケ。そういうことは出来る限り声に出さない方がいい。ロクなことにならない」
「私、オカルトは好きだけど、言霊だとか本気で信じちゃいないわよ」
「そういう話じゃあない。言いたいことを言うのに慣れてしまったら、いずれ歯止めが利かなくなっていくと思うんだよ。そうなったら俺たちはブリー君と同じだ」
俺たちはクラスメートとして、否が応にもブリー君と接していかなければならない。
毎回、苛立ちを言葉にしていたら身が持たないんだ。
「無理して仲良くする必要もないけど、だからといってトラブルも望まないだろう?」
「私、その理屈は分かるけど、何だか不服だわ。こっちが一方的に我慢を強いられてるみたいじゃないの。ねえ、ミミセン?」
タオナケが仲間のミミセンに話を振るが、反応は鈍い。
「おい、ミミセン」
俺はミミセンを軽く小突いた。
「……あ、ごめんタオナケ。聴こえてなかった」
雑音を嫌うミミセンは、その名が示す通り耳栓をよくしている。
それでも普段は近くの会話くらいは聞こえるんだけど、その時は耳当てまでつけて音を防御していた。
しかも、その耳当てを手で押さえつけた状態で、小さい呻き声まであげているのだから聴こえるわけがない。
「私、戸惑ってるんだけど、ミミセンどうしちゃったの?」
「どうもブリー君の声が、だいぶ耳に“くる”みたいなんだ。声質とか、喋る時の抑揚とか、色んなものが相性悪いみたいで……」
ミミセンの反応は極端なパターンだけど、この時点でクラスの皆が精神をすり減らしていたのは事実だ。
『この世から失くすべきだけど、絶対に失くせないものって何だろう』
主人公は登場人物に、そして読者に度々そう語りかけてくるんだ。
登場人物はその度に色々な答えを出していくが、それに対して主人公はイエスともノーとも言わない。
そして、答えが結局は何なのか、その本の中では書かれずに終わる。
俺は物語のこういう“やり口”は嫌いだ。
特定の読者が喜びそうなものを散りばめて、肝心なことをボカして書いて、いい感じに解釈することを期待して、何となく深い物語にしようとしてる。
こんな本の感想文を書かなきゃいけない、俺みたいなガキのことを何一つ考えていない。
結局、俺は兄貴から伝授された“感想文の埋め方”を駆使したけど、貰った評価はBだった。
『“この世から失くすべきだけど、絶対に失くせないもの”が何なのか。たぶん主人公も、その他の登場人物も、そして作者も思いついていない』と書いたのがマズかったらしい。
クラスメートは何て書いたんだろう。
ミミセンは「雑音」。
タオナケは「男女」。
ドッペルは「関係」。
ツクヒは「容姿」らしい。
クラスメートじゃないシロクロにも一応聞いてみたら、「自分自身」と答えた。
何だか深いようで、実際は浅そうな答えばかりだ。
それに、これだけバラバラの答えが出てくる時点で、やっぱり俺の感想は間違っていない気がする。
ちなみに兄貴にも聞いてみた。
「そういうのは作中の文章から、それっぽい言葉を抜き取るんだよ。それが見つからないんだったら、大人が喜びそうなこと書いとけ」
流石だ。
『この世から失くすべきだけど、絶対に失くせないもの』なんて、ほとんどない。
本気で失くしたいと思っているなら、そう思っている人がたくさんいるなら、失くせないはずがないんだ。
実際、俺は失くせないと思っていた“とある事”を、失くす方法を見つけた。
今回はそのことを話そう。