『この世から失くすべきだけど、絶対に失くせないものって何だろう』
主人公は登場人物に、そして読者に度々そう語りかけてくるんだ。
登場人物はその度に色々な答えを出していくが、それに対して主人公はイエスともノーとも言わない。
そして、答えが結局は何なのか、その本の中では書かれずに終わる。
俺は物語のこういう“やり口”は嫌いだ。
特定の読者が喜びそうなものを散りばめて、肝心なことをボカして書いて、いい感じに解釈することを期待して、何となく深い物語にしようとしてる。
こんな本の感想文を書かなきゃいけない、俺みたいなガキのことを何一つ考えていない。
結局、俺は兄貴から伝授された“感想文の埋め方”を駆使したけど、貰った評価はBだった。
『“この世から失くすべきだけど、絶対に失くせないもの”が何なのか。たぶん主人公も、その他の登場人物も、そして作者も思いついていない』と書いたのがマズかったらしい。
クラスメートは何て書いたんだろう。
ミミセンは「雑音」。
タオナケは「男女」。
ドッペルは「関係」。
ツクヒは「容姿」らしい。
クラスメートじゃないシロクロにも一応聞いてみたら、「自分自身」と答えた。
何だか深いようで、実際は浅そうな答えばかりだ。
それに、これだけバラバラの答えが出てくる時点で、やっぱり俺の感想は間違っていない気がする。
ちなみに兄貴にも聞いてみた。
「そういうのは作中の文章から、それっぽい言葉を抜き取るんだよ。それが見つからないんだったら、大人が喜びそうなこと書いとけ」
流石だ。
『この世から失くすべきだけど、絶対に失くせないもの』なんて、ほとんどない。
本気で失くしたいと思っているなら、そう思っている人がたくさんいるなら、失くせないはずがないんだ。
実際、俺は失くせないと思っていた“とある事”を、失くす方法を見つけた。
今回はそのことを話そう。
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