何を持って普通と言うべきかなんて知らないが、ともかく普通なんだ。
不衛生というわけではないが、綺麗と評するのには無理がある内観。
カウンターに貼り出されるメニューは、ちょっと離れた場所から見るだけで全部読める。
そして料理の見た目は精彩さを欠き、味に至っては繊細さの欠片もない。
そんなの“自己責任”さ。
食堂を利用する生徒の半分はそう答えるだろう。
1位は唐揚げ
2位はハムカツ
3位は細切りフライドポテト
4位は素ラーメン
5位がカレー
例えば4位の素ラーメンに放り込めば、若者の飽食に応える「揚げ物が入ったラーメン」が完成する。
衣から滲み出た油はスープに溶け込み、そのスープを衣が吸うという循環システム。
コショウをかけて麺と一緒にすすれば、別々に食べるより何倍も美味いという幻覚をもたらす。
或いは、5位のカレーに乗せてもいい。
具があるのかないのか良く分からないカレーは、「明らかに具のあるカレー」に生まれ変わる。
飯とルゥの配分に苦戦しながら頬張れば、「1+1=2」という真理に辿り付けることだろう。
生徒の間ではあまり評価されていないが、このコッペパンは割とちゃんとしている。
甘さも塩気もないが、ほのかに感じる小麦の香りは食欲をかき立て、素朴な味は期待を裏切らない。
バターが塗られていないため艶はないが、しっかりと保たれた楕円形によってパンは輝いているように見える。
トッピングは多くないものの、マーガリンや生クリーム、チョコに粒あん、いくつかの惣菜があったりと要所は抑えていた。
更にはサイドメニューで応用が利くので、その可能性は数倍に膨れ上がる。
そんなわけでコッペパンは人気こそ上位ではないが、安定した需要のある公務員だ。
時々、無性に食べたくなってしまう人もおり、かくいう俺もその一人だった。
特に、その日は月に一度あるかないかというコッペパンモードに突入しており、加えて空腹にも襲われている。
頭への栄養が不足しているせいもあり、わずかな理性で押さえつけているのが現状だ。
俺は焦りを表に出さないよう意識しつつ、平均速度で歩行しながらカウンターに向かう。
とりあえず、たんぱく質が欲しいからハムカツとタマゴは外せない。
それに糖分も欲しいから、シンプルに砂糖だけまぶしたやつを……小豆マーガリンもいっておくか。
それを口当たりのよい牛乳で流し込めば申し分ない。
近々訪れる未来をシミュレートし、自分の口内に唾液が分泌されていく。
「はい、ご注文どうぞ~」
唾液が溢れないよう気をつけながら、俺は注文を口にした。
「オバチャン、コッペパンください」
「それで、二人はもう主題を決めたのか?」 俺は探りを入れてみた。 この期末レポートで最も避けたい事は、テーマや内容が似てしまうことだからだ。 相対評価なんてされたら困る...
1日の長さは地球の自転速度によって決まっているらしい。 地球が1回転するのが平均24時間で、それが1日の長さになってるんだとか。 しかし毎日同じというわけでもないようで、その...
≪ 前 そんなことを考えながら待ち続けること数分――― 「遅いな……」 いや、実際は1分と経っていなかったかもしれない。 なにせ、その時の俺は期末レポートを抱え、空腹とコッ...
≪ 前 「ちょ、ちょっと待って!? 自分も従業員ですよ。パンを盗める時間なんて無い!」 「でもアンタには、“アレ”があるだろう? ちょくちょく使ってるのを見たから知ってる...
≪ 前 しかし、どうすれば解決できるか分からない。 この中に犯人がいるはずなのだが、全員にアリバイがあるという矛盾。 何かを見落としているのだろうけれど、その見当がつかな...
≪ 前 俺はそう言いながら、彼に鋭い視線を向ける。 学年が違う生徒だろうか、あまり見たことのない男だった。 「……なにか不自然なことが? 僕は正解のタイムに一番近いのに」 ...
≪ 前 「何でこんなことをしたんだ! 盗みが犯罪だなんて分かっているはずだ。それともバレなきゃいいとでも思っていたのか?」 従業員が声を荒げながら犯人を問い詰める。 この...