はてなキーワード: 金融緩和とは
スティグリッツは金融緩和による不平等の拡大を問題視してはいるものの、金融緩和をやめてしまえとは一言も言っていないことに注意されたい。例えば、他の場所ではスティグリッツは金融緩和に対してこのような評価を述べている。
一本目の矢である金融政策は、ほとんどの人々が期待し、考えていたよりも成功していると思う。ほとんどの人はそれが成功することを期待していたんですが、彼らが予想していたよりも明白に成功している。それは上手く行っています。
ここでスティグリッツが述べたいことは、金融緩和そのものの否定ではなく、財政政策や税制の改革のような他の政策との組み合わせによって副作用を相殺すべきだとの主張と見るべきではないだろうか。例えば、金融緩和と再分配を組み合わせれば、よりリベラルな政策パッケージになるだろう。金融緩和だけで全てを解決しなければならないわけではない。
http://anond.hatelabo.jp/20160703171723
この記事が典型的で、おそらく意図的に重要なポイントを隠して安倍政権有利に誘導しようとしている。
スティグリッツの資料を見れば明らかだが、重要なのは以下の3点だ。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/siryou2.pdf
量的緩和政策は不平等を拡大した。しかし、投資の大幅な増加にはつながらず、金融市場の不完全性あるいは不合理性により、リスクのミスプライシングやその他の金融市場の歪みをもたらした可能性がある。低金利は資本集約型テクノロジーを生み出し、「雇用なき」経済回復につながる可能性もある。
また金融市場の規制緩和は投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
賃金上昇と労働者保護を高める施策が必要であり、組合や交渉を取り巻く法的枠組みを改善しなくてはならない。格差縮小は、短期的にも、長期的にも、経済パフォーマンスを改善する。
投資条項が好ましくない。新しい差別をもたらし、より強い成長や環境保護等のための経済規制手段を制限する。関税は既にかなりの低水準であり、G7諸国による、資本集約財を輸出する一方で労働集約財を輸入するという「バランスの取れた」貿易取引の増加は、雇用を減少させる。
まともなリベラルならこの決定的に重要な3点をスルーしない。逆にいえばこれをスルーする奴は安倍応援団と見て間違いないだろう。
増田は2年前の記事では、金融緩和をやたらと主張していたが、結果を見ろ。どれほど金融緩和をしても、デフレ脱出は不可能だとわかったのが、この2年間だろ。
増田はいろいろと主張する前に、「金融緩和を唱えていた私は、安倍や黒田と同じく、妄想を信じていました。私は間違っていました」と反省するべきだ。
実際、「金融緩和は無効」と指摘しているブコメがあちこちに見つかる。そちらのブコメの方が正しい。増田はまず自分の誤りを認識するべき。話はそれからだ。
横だけど、金融政策とは金利を下げることで需要を生み出そうとする政策なわけで、金利が下がった時点で手段としての金融政策は上手くいっていると考えていい。問題は、金利が下がったのにも関わらず、なぜ需要が生まれないのかということに尽きる。で、それはなぜか。結論から言うと、財政政策の失敗だ。端的に言うと消費税増税のこと。複数の経済政策が平行して行われているわけで、きちんと要因を切り分けて考えないといけない。
で、問題の消費税だけど、消費税とは消費に対してペナルティを与える政策なわけで、消費者は消費を抑え、企業の売上は落ち込む。それは2014年の出来事からも企業はよく理解しているだろう。そんな政策をまた数年後に実行すると政府は宣言している。企業の身になってほしい。数年後にあなたの会社の売上が落ち込みますよと政府が言っているわけ。そんな状況で企業が投資をするだろうか。新しい事業を立ち上げて労働者を雇い入れようとするだろうか。正規雇用の待遇で、高い賃金で、優秀な人材を集めようとするだろうか。するわけがないよね。企業は儲けを出すために事業をやっているわけで、いくら金利が低くともそんな危ない橋を渡るわけがない。
金融緩和をやりながら消費税による緊縮財政をやることを、どこかの誰かがアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような状態だと表現していたが、全くその通りだと思う。問題は切り分けないといけない。消費税が経済の好循環をせき止めていることが問題なのであって、金融政策の失敗ではない。
(このエントリは http://anond.hatelabo.jp/20160703171723 へのレスです)
2014年に元増田へのレスとしてこんなエントリーを書きました。
Re: 民主党支持者としての執行部のアベノミクス批判への愚痴 http://anond.hatelabo.jp/20141127162302
当時はコメントもらえなかったなー。
2014年の元エントリは「経済学的にみれば企業収益を良くするには失業率を下げるにはデフレ脱却が必要で、そのためには金融緩和しかない。だから安倍のやってることは正しいのに、民主党やマスコミや知識人がそんなことも理解できなくて残念」という内容だった。でも、2013年以降の経済成長の主因は金融緩和じゃなくて円安誘導政策だったよね。元増田が夢見るような、金融緩和→投資促進→市場創造というマクロ経済学的に美しい正帰還ループが廻ってたわけじゃない。なんでかといえば国内市場に底堅い実需がないから。だから今、外部環境要因で円高に振れたとたんに企業収益の悪化が確定してる(世界同時株安のなかでも、日本の株安は円高インパクトと国際市場の減速の両方が向かい風になってんだよね)。
さて、当時の金融緩和路線はさらに進んで、いまやマイナス金利政策まで飛び出したわけだけど、この一連のマネーサプライ促進は景気の好転にはほとんど資してこなかったと思う。おれも会社やってるけど、ほんと銀行が持ってくる長期金利はめちゃくちゃ下がった。メガバンクなんて一声で0.4%とか言ってくるからね。これって金利としちゃ事実上タダみたいなもんでさ、少しでも成長性がある国内市場が存在するなら、信用ある限り借り入れてそこに投資したほうが絶対得なわけ。でも実際そうなってないよね。理由は投資によって着実にリターンが得られるような潜在的ポテンシャルのある市場が国内から失われてるからだよ。だからダブついた投資余力の唯一の出口としてマンションとかの高額不動産を使った節税スキームにマネーが向かったわけだけど、これも実需を反映したものじゃなかったし、もうバブルははじけちゃった。
今回エントリでも「金融緩和の継続を」って言ってて、ということは元増田は金融緩和には景気回復効果が確かにあって、その効果は今も続いてるという認識みたいだけど、自分から見たら期待されたような効果は全くなかったよ(それ以前もマネーサプライは十分に潤沢だったんだから)。もし自分が経営者だったらと想像してみて、いま0.4とか0.5%の借入金利で資金調達して、確実に鞘取りできそうなビジネスを指折り挙げてみてよ。それがあなたから出てこないなら、他の人からも出ないよね。カネの使い道がなければ、金貸しがどんだけ気前いい金利オファーを出してきたところで、借りる意味はないんだよ。
その一方で、マイナス金利政策の煽りで、今期から金融機関の収益は確実に悪くなっていくだろうね。銀行の営業がみんな愚痴ってる。地銀や信金の統廃合も加速するだろうなー。
http://anond.hatelabo.jp/20160703171723
それは,一言で言うと「金融緩和してもほぼ全部金融市場が吸い取ってしまい,実体経済に金が回らない」からである。
(以下は素人の私が勝手に考えたものだが,もし同じようなことを言っている経済学者がいたらぜひ教えて欲しい。まあ,素人と同じようなことを考える学者はいないと思うが。)
そもそも私がこういうことを考えるに至ったのは,1990年代終わり〜2000年代初頭にかけてのITバブルがきっかけである。その当時,IT経済を主とする"成長"は「インフレなき経済成長」と呼ばれていた。それは論理的におかしい,何か理由があるはず,と考えた結果,「これは実体経済に回るとインフレを起こすお金の大半が金融経済に回っていて,その結果金融経済が"成長"している一方,実体経済ではインフレが起きていないのでは」という結論に達した。
具体的には,当時のITバブルでは,資金がインターネット上の広告を売る新興企業に流入した。インターネット上は空間的な制約がないので,それら新興企業はほぼ設備投資をすることなく広告をいくらでも増やせる。他方,インターネット広告への期待から,それら新興企業の広告枠を買う企業が現れる。そうするとそれら新興企業の株価が上がる。株価が上がると,それを売って儲ける投資家が現れる。儲けた投資家は,またそれを新興企業に投資する。広告も一種の投資なので,広告枠を買う形で投資を行う者もいる。そうするとまた株価が上がる。
このバブルでは,対象が「インターネット上の広告枠」という無限に近い資源だったこともあり,実体経済には余りお金が回らなかった。せいぜい Sun Microsystems のサーバーが売れた程度である。ただし巨大なバブルだったので,おこぼれといっても巨大で,この後バブルが崩壊すると Sun は後遺症に悩むことになり,最終的に Oracle に買収されて消滅する。
しかしこのバブルの本質は,2次投資,3次投資,...という高次投資によって金融経済の中で資本が循環し,循環の過程で(見かけ上の)資本が拡大していった点にある,と私は考えている(バブルというのは須らくそういうものだが)。
結局このバブルは,「広告にいくら投資しても実際に広告対象の商品が売れなければ意味なくない?」ということに広告主が気づいたことで崩壊した。つまり,いくら金融経済が期待値で拡大しても,最終的に実体経済がそれに見合った成長をしなければ,それはバブルであり,バブルは必然的に崩壊するのである。
次に,この考えの傍証として私が注目したのは,金融経済と実体経済の規模の乖離である。
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2008/2008honbun/html/i1120000.html によると,2006年時点で,金融資産の規模は実体経済の3.5倍であり,1990年以来の平均成長率は,実体経済が5.7%であるのに対し,金融資産は9.1%となっている。
これは異常である,と思う。
投資というのは,最終的に実体経済が拡大しないと,リターンを得られない。
ちょっと金融からは外れるが,土地転がしを例に考えてみよう。土地の値段は,循環取引的な手法を使えば,原理的には無限に上げることができる。その間,資産規模は拡大していく。しかし,それらはどこまでいっても「投資」であり,その投資を回収するためには,その土地で建物を建てて商売して利益を上げて地代を払ってくれる誰かが必要である。
もちろん投資には期間があって,5年のものもあれば,10年,20年,...といったものもあり,それらが混ざり合っている。従って,必ずしも実体経済と金融経済の規模が一致していなくてもよいが,金融経済の方が実体経済よりも速く成長するのは,やはり異常であろう。
この金融経済と実体経済の乖離は,おそらく1990年代の金融規制緩和以降に始まったのではないかと思う。この規制緩和によって,通貨以外のものを通貨と同様に扱えるようになり(例:株式交換による買収),またBIS規制の枠外で高次金融商品(金融商品に投資する金融商品)が解禁されて,金融商品を土地転がしのように転売することで金融経済が拡大することを可能にしたのではないかと思われる。
その結果,金融経済は恒常的なバブル状態になった。実体経済の成長を伴わない金融経済の成長はまやかしだが,そのまやかしがいつ露呈するかわからないので,それまでは疑心暗鬼ながらもチキンレースを続けている。まやかしだとわかっているが,実体経済よりも遥かに楽に大金をを得られるので,やめるにやめられない。それが今の状況なのではないだろうか。だから逆に,ちょっとしたことで株価が乱高下する。Volatilityが高くなってるのも,恒常的なバブルのせいと考えると個人的には納得がいく。
さて,金融緩和はここでどういう役割を果たしているかというと,このバブルを崩壊させないように金融経済に現金を注入する役割を担っているのではないかと思う。
金融緩和の恩恵を(最初に)受けるのは銀行,投資家,大企業である。
とにかく最初に恩恵を受けるのは銀行。商材であるお金が日銀から低利で借りられる=安く調達できる。
次が大規模投資家(ファンドや超がつくレベルの資産家等)や大企業。日銀から直接お金を借りるような大銀行の主要顧客になるようなところ。ここも従来より安い金利で資金を借りられるようになる。で,借りた資金を,大規模投資家はより(見かけ上の)リターンの高い金融商品(株式等)につっこむ。大企業は設備投資したり,やっぱり別な金融商品に投資したりする。銀行から借りた資金が,給与を上げる原資に直接使われることはまずないと思う。
つまり金融緩和の恩恵の大半は最初に銀行,投資家,大企業が取ってしまうし,その大半は実体経済ではなく金融経済の拡大に回ってしまう。その方が手っ取り早く稼げるからだ。残った僅かな(文字通りの)「トリクル」だけが,実体経済に回る。だから効果はゼロではないが,金融緩和の規模に比べると遥かに小さいし,また効果が出るのも遅い。設備投資が,さまざまな労働者の給与増に波及するのには,時間がかかるだろう。
近年の「異次元」と呼ばれるような金融緩和でもインフレがおきない(インフレ目標すら達成できない)のも,金融経済が金融緩和で生み出された資金を吸収し,実体経済にほとんど回ってないから,と考えると説明がつくように思う。
一番良いのは,金融規制を1990年代以前と同程度まで強化し,過剰流動性をなくすことだと思う。しかし,ここまでバブルが大きくなってしまうと,その破裂によってもたらされる実体経済への影響は,たとえもともとそれが率としてはトリクルであったとしても,絶対額が巨大なため,悲惨なことになると思われる。なので,風船が急にしぼまないよう,少しずつ空気を抜くような慎重さが必要になるだろう。
個人的には,長期投資は実体経済にとっても有益だが,短期投資(=投機)は害の方が多いので,短期投資に高い税率を課し,事実上無意味にしてしまうような政策が取れればいいのに,と考えている。株式や債券,その他の金融商品を在庫管理と同様の手法で管理し,例えば今日買った株を今日売ったら税率99%,逆に20年持ち続けた株を売った時は税率1%というようにすることで,長期投資を促すような政策は手法的には可能だと思う。
また高次投資も有害性が高いので,税率を高くする。例えば株式の売買は2次投資だから課税対象だが,配当は1次投資のリターンなので,非課税にするなど。株式はトレーディングの対象ではなく,本来の「直接金融によってリターンを売る権利&会社の支配権」の位置に戻した方が良いのではないだろうか。
最後に,これは妄想だが,金融経済と実体経済を可能な限り切り離す,というのが本当はできればいいと考えている。具体的には,金融経済はそれ専用の独自通貨を作り,その中で自由になんでもやっていい。ただし実際の通貨に交換できるのは,世界の実体経済のGDPの3%まで,とか決めておく。誰がその3%を使えるかは,金融経済の中で,専用通貨でオークションでもやって決めればよい。まあでもこれは残念ながら実現不可能だろう。
というわけで,今以上に金融緩和をしても無意味なんじゃないかな,と思ってる。
ところで,なぜ財政政策のところが「再分配(例:富裕層への課税強化&低所得層への扶助)」じゃなくて「財政出動」なんだろう?
書いてみてわかったのは、はてなブックマークで月間1位を取ろうが年間ランキングに入ろうが世の中には何の影響もないということです。あきらめましょう(挨拶)
とは言え、ひさしぶりに参議院選挙前に何か書こうかなーと思いつつモチベーションが上がらずにいたら世界同時株安が起きたので、これにからめつつあれこれ書いてみようかなーと思います。ただ、国内の政治状況は変わってないですし、結論はたいして変わらないと思います。
リンク先のタイトルに書いてある政党がなくなったとか言われても知りません。
というわけで、まずは上記のエントリー冒頭部分を引用します。とても大事な前提なので。
ここ15年ぐらいずっと言われてきた「デフレ不況」、デフレとは、物価が持続的に下落している状態を指します。
単純に考えればモノの値段が下がることはうれしいはずなのに、なんでデフレが問題なんでしょうか。
そんなことわかってるよと思われるかもしれませんが、順を追って説明するために書いておきます。
物価が下がって企業の売上が減ると、企業収益が減ります。企業は利益を出すためには費用も減らさなければいけません。
今回はこのうち、人件費を抑える、というポイントにしぼって話をします。
物価が下落したのと同じ割合で社員全員の給料を減らせれば何の問題もないのかもしれませんが、そういうふうにはできないですよね。
正社員の給料は、物価が下落する割合ほどには下がりません。これを「賃金の下方硬直性」と言います。
リストラされずにすんで定収入がある人たちはデフレで少しずつ得をしますが、その分をリストラされて収入が無くなる人がかぶるんです。
結局この被害を一番受けるのは、これから社会に出て仕事をしようとする若い世代です。求人が減って有効求人倍率が下がります。
企業はすでに雇用している人を解雇するよりも先に、新しく入ってくる人を減らすので失業率が高くなります。真っ先にこの影響を受けるのは若者です。
これがデフレを問題視するべき大きな理由です。若年失業者が増え、世代間格差が拡大していきます。
物価上昇率と失業率にははっきりとした相関関係があって、フィリップス曲線と呼ばれていますが、物価上昇率が低いと失業率が高くなります。
==========ここまで引用==========
引用部分から続く2014年のエントリーで私は、現政権の金融政策(世の中に出回るお金の量を調整)を肯定して財政政策(どこから取ってどこに配るのか)と成長戦略(規制政策とか産業政策とか)を批判しました。
当たり前ですが、その内容は今回も変わりません。
まずは、最近よく聞く「物価が上がったから実質賃金は下がって国民の生活は苦しくなっている」という話についての議論から始めてみようかなと思います。
引用部分で、「リストラされずにすんで定収入がある人たちはデフレで少しずつ得をします」と書きました。
収入が変わらずに物価が下がるのでお得です。この状況が、実質賃金が上昇しているということです。
物価より先に賃金が動くことはありません。商品の値段を変えたからといって、会社の給与水準はいちいち変動しないですよね。
ほとんどの企業では多くても年に1回、春闘の時期に給与水準が変わるだけです。
だからデフレ下では短期的には実質賃金が上昇し、失業しなければお得ですが、失業者がその分の割を食います。
長期的には、デフレのせいで給料が上がらないので失業しなくても損するのは皆さんご存知の通りです。デフレスパイラルというやつです。
そして、デフレ下で金融緩和をして世の中に出回るお金の量が増えて利益が上がっても、企業はすぐに給料を上げるわけではないので、物価が上がった分、実質賃金は下がります。
利益が出る前に給与水準を高くする企業なんてあるわけないんだから当然なんですが、でもこれがむちゃくちゃ大事です。物価が上がるのが給与水準よりも先なので、まずは実質賃金が下がります。
下がった分だれが得をしているのかというと、それまで失業していて新しく雇用された人たちです。
失業率が高いうちは、給料を上げなくても新しく雇えるので賃金はなかなか上がりません。失業率が下がり人手不足になり労働市場が売り手市場になってはじめて給料が上がっていきます。
だから「物価が上がったから実質賃金は下がって国民の生活は苦しくなっている」とか主張するのは本当にやめたほうがいいです。
マクロ経済をきちんと学んだことがある人間には「デフレに戻せ」と言ってるのと同じに聞こえるんですよ。
じゃあ、どういうふうに現政権の経済政策を批判してどんな主張をすればいいのかについて書いていこうと思います。
クルーグマン、スティグリッツ、ピケティといった名前を聞いたことがある人はそれなりにいるかもしれません。別に知らなくても何の問題もないです。
クルーグマン、スティグリッツはどちらもノーベル賞を受賞した経済学者で、日本では今年3月に安倍首相が相次いで会談を行ったことがニュースになりました。
ピケティは2014年12月に日本語版が出版された「21世紀の資本」の大ブームで日本でも有名になりました。
ちなみに、上記リンク先のエントリーは2014年11月、ピケティブームの直前に書かれたものです。(エッヘン)
そんなことはどうでもいいんですが、この三人のマクロ経済政策に関する主張はかなりの部分でとても似ています。
三人とも主流派経済学の左派に属する人たちなので、まー当たり前っちゃ当たり前です。
どういうものかというと、失業率が高い状況においては、金融緩和と大規模な財政出動をすべきというものです。
金融緩和についてはもう問題ないと思います。世の中に出回るお金の量を増やさないといけません。
その上で、財政政策(どこから取ってどこに配るのか)については、財政出動(たくさん配ること)を主張しています。
金融緩和によって実質賃金はいったん必ず下がります。この実質賃金低下の影響が大きい層、つまり給与所得者層(中でも特に低所得者層)に配るんです。
必要な段階とはいえ、物価が上がったのに給料が変わってない人は消費を抑えようとしますよね。
せっかく出回るお金の量を増やしたのにうまく循環しないと困るので、実質賃金の低下の影響を財政出動によって和らげるんです。
当然、このタイミングでの消費税増税は、愚策中の愚策です。消費を増やすために財政出動しなければいけないのに、逆にその層からたくさん取ってどうすんだって話です。
現政権の経済政策について批判しなければいけないのはこの財政政策の部分です。
雇用は増やしたけど再分配がまったくできていない、むしろ逆行しているから、低所得者向けの積極的な財政政策をもっとやれという批判の仕方をすべきです。
金融緩和や実質賃金低下を批判しても、雇用を増やしてほしい人たちからの支持を失うだけです。
別にすべての人が経済政策について全体像を理解してなきゃいけないなんて私はまったく思っていません。
ただ、マスコミ、知識人、ジャーナリストなどの、情報や知性のハブになるべき人たちが、必要に応じてその時々できちんと説明できればいいだけです。
そして、経済の話については、ここがものすごく弱いところです。
マスコミに期待するのは無駄だとしても、他の分野の話については専門的・学問的な知見の積み重ねに対して謙虚な人でも、経済の話だとまったくそれを無視するのってなんでなんでしょう(泣)
クルーグマンでもスティグリッツでもいいから入門書を一冊でも読んで全体像を理解して、その全体像の中で個別の論点をそれぞれ掘り下げればいいのにと思うんですが、権威のある経済学者の言葉から、自分の思いつきにあてはまる部分だけでパッチワークを作ってばかりで、知識人とかジャーナリストって勉強嫌いなんですか?
いちおう私について言っておくと、学者でもエコノミストでもなんでもなく、ただの経済学部出身者です。むかしひととおり学部で全体像を学んだことがあるだけです。
知識のハブになる人たちは、「経済学者にはわからないだろうが」みたいなマクラのポエムを書く暇があったら現代の主流派の通説ぐらいは知っといてほしいです。(偏見まみれ)
さて、イギリスが国民投票の結果、EU離脱派が勝利しました。イギリス人が移民に雇用を奪われたことが原因だと言われたり、でも実際に移民が多い地域では残留派のほうが多かったりといった状況で、いろんな人が理由を分析しています。
私も、私なりに思い当たる理由を書いてみようと思います。というか小見出しにもう書いています。
財政赤字削減を公約に掲げて2010年に首相になった英保守党キャメロン首相の「改革」が、間違いなく理由のひとつになっていると考えています。
名誉白人様ことめいろまさんがEU離脱を解説した一連のツイートを読むとわかりやすいんですが、都市部のインテリ(気取り?)は、失業率増加や公共サービスの低下を移民増加と直接的に結びつけて理解していることがよくわかります。
移民が多い地域でむしろEU残留支持が多かったことからもわかるように、緊縮財政政策(政府がなるべくお金をつかわない政策)による不景気、公共サービスの低下が、なんとなくのイメージとしての排外主義を加速させるという意味で、経済学の視点からも学ぶことの多い出来事だったと思います。
クルーグマンの言葉を借りれば「欧米が日本の失策から学ばずに、日本よりひどい失策をしたことに対する反省と皮肉」というやつです。今度は日本が失策からきちんと学べるといいですね。
ここはちょっと箸休めです。あんまり関係ないから読まなくてもいいです。
よくニュースなんかでも使われる「財政再建派」という言葉があります。財政再建派という言葉は、財政政策(どこから取ってどこに配るのか)において、増税(特に消費増税)による税収増と緊縮財政を主張する人たちに使われる言葉ですが、すごく誤解を招きやすい言葉だなーと思っています。
消費税を増税すれば、増税した年の財政赤字を減らすことはできますが、消費を落ち込ませることにより不況の原因になります。
15年以上にわたるデフレ不況によって増え続けた国の借金を、単年だけの税収増でどうにかできると考えるなんて無理があって、好景気による税収増を続けていくことでしか財政再建は成功しないと私は考えているので、せめて「増税優先派」とかにしてくれないかなと思ってしまいます。
財政再建すべきという目的は変わらないのに、片方を「バラマキ派」、もう片方を「財政再建派」と呼ぶのはいくらなんでもなぁとよく思います。
さて、リベラルが主張すべき経済政策です。ここまで読んでくれた方はもうわかりきってるとは思いますが、「金融緩和と低所得者層や子育て世帯への財政出動の組み合わせ」です。
現政権の経済政策のアキレス腱は財政政策です。2014年のエントリーにも書きましたが、
雇用を増やして失業者を減らしたけど、それでもまだ失業している人や低所得者層への再分配だったり世代間格差の是正には興味がないのが現政権で、
再分配に興味はあるけどその原資のために景気を良くしたり失業率を下げるための政策を最後まで採らなかったのが前政権です。
金融緩和を継続するということを大声で主張しましょう。投票先のない経済左派が泣いて喜びます。
そーですね!(やけくそ)
私はリベラリズムが好きなので、候補者や政党が何をどう言おうが、候補者や政党が争点を決めることはできないと思っています。
それぞれの有権者が勝手に優先順位の高い争点を決めて、それぞれの優先順位にしたがって投票してしまいます。それでいいと思います。
その結果、全体としては、これまで有権者にとっての優先順位が高い政策は、雇用や福祉、経済でした。これからも変わらないでしょう。
このことは、本来ならリベラル政党にとってはありがたいことのはずなんです!だって雇用を増やして失業率を下げる政策を主張すれば勝てるんですから!!
なんで勝てないんだろう!?雇用を増やす政策を主張してないからですね!!!
雇用が争点になったら困るリベラルって斬新ですね!!!!新しい!!!!!
本当に情けない、悲しいです。経済左派が雇用を最優先に投票先を選んだら、自民党に投票するのがもっとも合理的になってしまうんです。
相対的に一番ロジカルな経済政策を主張してるのが自民党だからです。
しかも、ここまでに書いたように、よりロジカルな主張が存在するのに、私はそれを主張してほしくてしょうがないのに、リベラルなはずの政党たちは逆方向に全力疾走してます。
自民党一強の状況を、右傾化とかそういう言葉に回収して馬鹿にすることに意味があるとはまったく思いません。
自民党も安倍首相以外の執行部は緊縮財政派がずらりと並んでますし、次の総理が経済で失政したら政権交代のチャンスも生まれるかもしれませんね。
それまで寝て待ちましょうか。そのときにはどんな党名になってるんでしょうね、すごく楽しみですね(棒)
http://b.hatena.ne.jp/entry/bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/20160325-00055564/
このエントリーを見てなんとなく(いや、それ以外も参考にしてだけど)
金融緩和に反対派
ラディカル・フェミニストもここにいる。
保育問題等を解決して欲しい的なことを言う
→表現の自由周りでは過激(いや、まぁ左派リベラルなら普通そうだが)
→そのため共産党系左翼のラディカル・フェミニストと対立する。
極端な反原発の人は少ない
反安保は半々くらい?
また、共産党系左翼の人は自由主義左翼を右翼とみなしている節がある(共産党が最も左に位置するからある意味当然か?)
ラディカル・フェミニストもなぜか共産党系左翼と被る→これはよくわからない。
ラディカル・フェミニストと自由主義左翼は表現の自由をめぐって対立しがち→いわゆるフェミvsオタク
目に見えにくいが、フェミニストではないただの共産系左翼vsオタクの時もある。
俎上に上がるのは山本一郎くらい。しかも別にはてなユーザーじゃない。
南京・慰安婦周りの話では共産系左翼が自由主義右翼、または保守と争い続けている。
前提としてる話がよくわからんから検討はずれかもしれんけど、なんで実質なの?成長率云々は名目で主張してるひとの方がネットじゃ多いんじゃない。
というのも成長できないという前提にたってしまってデフレが加速したという事実があるので。
貨幣は決済を仲立ちする道具という側面があるのだが、デフレが加速した結果、決済の機会自体が減って内需が損なわれたわけで。
だからこそ、金融緩和しようね。金融緩和が有効だね。というのがアベノミクスだったんじゃ?
もちろん金融緩和だけでは、内部の経済構造の改革まではできないので、金融緩和だけでは駄目だけど。
金融緩和だけでは駄目という話を、金融緩和は効果ない意味ないと読み違える論者が、下手に経済学かじっている人間に多いのはなんでだろうね?
EconomicはScienceである面もあるけど、経済学は論理よりも誰が言ったか大事な権威主義的な文系学問だからなのかな。
結果
面倒臭くなったのでここまで。気が向いたら追加する。
SEALDsの行動の良し悪しはここで話す事ではないし、「ぶっちゃけどっちが正しいかとかよくわからない」ので横に置いて起きます。
一般的にですが、若い人から見たら政治家って基本「悪」なんですよ。何やってるかわからないし、いつでも叩けば利権やら何やら出てくるし。給料とかは別にいいんですよ高くたって。ちょっと何かやらかしたらネットでもリアルでも袋叩きに合うわけですし、有名税って事である程度納得はいきます。
ただ一部の権力が行き過ぎる人がもみ消せる事に対しては色々と複雑な思いですが。
「マイナンバーも安保もお前らが選挙で選んだ結果」と言われればすべて終わりなわけですが、35歳以下は基本50%切ってる投票率です。ちなみに僕もその投票してない50%に入ります。
政治に興味がないという理由もありますが、一番大きいのは「どこに投票しても何が変わるかわからない」わけですよ。
民主党どんな事やるんだろう?調べてみようと思ってHPみたらPDF読むか音声聞けやって表示されるんですね。こんな会社に業務を発注する所あるんでしょうか。後、すんげーアバウトなの書いてること。別に民主党が嫌いなわけではないですが、どこの党のホームページもみんな同じ感じなので民主党のマニュフェストPDFを例に挙げる。
いきなり、意味がわからない。厚く豊かなっていうのは中間層のマネー所得者を暮らしやすくするという意味なんでしょうか?違ったらすみません。
だからわからない。初めて聞いた。ググッてみたら「日本銀行が黒田東彦総裁のもと、従来の政策の枠組みから大きく変更し行った金融緩和の通称。」らしい。つまり、一気に物価がインフレしちゃったら国民が大変やろ、もっとゆっくりにするよという事なんでしょうか?違ったらすみません
4Pから5Pに渡り解説されているが、そこそこ政治強いひとでないと何書いてあるかわからないんじゃないでしょうか
パッと見もはや宗教のキャッチコピー。子育て支援や雇用の安定、老後への安心が内容みたい。6Pから7Pに渡り解説されているがぶっちゃけここはわかりやすかった。
中身を読んでも「本当に実現してくれるんなら」とても良い事だなと素直に感じた。
福島復興/脱原発/食の安全が中心の内容。成長戦略?見出し間違ってるんだろうか。でも、農林水産業活発化とか考えてるのは良いと思う。是非マイナンバーを廃止してこの予算で頑張ってもらいたい。
PDFの末尾にまとめられてました。でも目次のようにまとまってるのに、かなり端折ってて色々と疑問が生じる
初めて読みましたこのマニュフェスト。でも若い世代の人達の知りたい事って単純で
「今まで君たちは何が出来なかった」「これから何をするのか」
っていう事なんですよね。これから何をするのかって言うだけなら誰でも言えるんであって、「なんかいっつも同じ事言ってる気がしてならない」んですよ僕。だから前期やろうとしたけど出来なかった事とかも教えてほしいよね。
どっかに実は書いてあるのかもしれないけど、見つからないんですよ。というか見つけてもらう気がないんでしょうか。
政策見たくてホームページ開いたら全部PDFなんて今時ありえないでしょう。馬鹿にしてんのかってレベルです。
何が言いたいかって、もっと君たちを教えてくれって事を言いたい。
「投票率50%未満の若者何考えてんだ、ちゃんと投票しろやべーぞ」とか言ってる暇あったら、この50%にどう投票させるかを考えるのが普通だと思うんですね。投票場までいって紙に手書きで書いて投票させるのだから、ホームページ見たらそこで簡潔させて欲しい。わざわざ何をしてきたかを1枚1枚PDFで見るなんてする訳がないだろう。
SEALDsのおかげで選挙や政治に一切興味を持ってなかった僕がこんなエントリーを書いてるくらいだから結構凄いと本当に思う。ただ、言葉があまりにも汚すぎて子供が泣いてるだけのように見えてしまうのが残念でならない。「安保反対、会話で解決」なのであれば、それ相応の礼節があるだろう。
もしこれが裏で大人が全ての糸を引いてるのであればもう諸葛亮もびっくりの手腕ですね。事の良し悪しはさておき、それはそれで尊敬します。
マネーとは何か?っていうのは喧々諤々のうんぬんかんぬんでいろんな観点からいろいろ語られてるので、なにか言ってもすぐにそれは違うって突っ込まれるからなー。
ここでは、マネーを決済を行うための道具として見た観点で説明する。
決済てのはあれな。物やサービスの取引な。
例えば、飴玉欲しかったら20円払うだろ。来月、飴玉一個30円になるなら、今月のうちに飴玉買っておかないともったいないってなるはずだよな。
しかし、小学生のころならいざしらず社会人になって飴玉欲しいかっていわれるとカロリー増えるしいらんよなって考える人もいる。
つまり、貨幣の価値が毀損したところで、いそいであめ玉確保する気にはならないと、決済は行われない。
この喩え話に沿えば、金融緩和だけしても総需要があがらないとインフレにはならないって話。
だから、総需要に密接に関係する個人消費を懲罰的に扱う消費増税を、金融緩和時にしたのは馬鹿って言ってる人がネットには多い。
そして、名目賃金も実質賃金落ち込んでたら、誰も消費を増進しないから、インフレにはならないっていうことらしい。
ちなみにこういう話をすると、個人消費なんて誤差、総需要が足りないのは消費より投資だから、企業が投資しやすいように法人税減税しろ消費税増税しろっていう人が湧くことがおおい。
そういうモデルのほうが政策決定においては需要があるらしいよ。ポジショントークでもそっちのほうを決める奴らの力が強いよ。なんというか働いたら負けの気持ちがわかるね。
単純な値上げだけでなく内容量減少という実質値上げも含めれば、最近は凄まじい物価上昇ですね。牛丼ですら最近は値上がっています。なんでこんなことをなっているのかというと、円安政策や量的金融緩和の影響もありますが、基本的には日銀が前年比2%のインフレ目標を掲げ、この目標を達成するために色々やっているからです。
なぜこんなことをするかというと、デフレ脱却が一番の目的です。デフレ経済というのは供給過剰の状態の経済であり、需要が足りない状態です。供給過剰の結果として生産物の減産や価格の値下げが行われ、経済に悪い状況を与えます。このように、経済学ではデフレは基本的に悪いもの(経済がうまくいっていないとデフレになる)です。
それだけでなく、急激なインフレやデフレは経済を混乱させます。例えば、2年前は150円だった牛丼が去年は1000円になり、今年は20円になったとします。こんなむちゃくちゃな経済ではみんな困ってしまいますね。そこで日銀がインフレ目標を発表し、インフレ予想というものに働きかけることで実際のインフレ率を安定化させようというのがインフレ目標政策です。
インフレ目標政策は経済を「安定化」するものであって、経済を刺激するものではありません。インフレ目標政策によって日本経済が安定化することはあってもV字回復はしません。経済を刺激する政策である量的金融緩和や拡張的財政政策とは違ったものです。
また、フィリップス曲線を根拠に、インフレ率上昇(デフレ脱却)には雇用拡大効果があるとも言われます。また、インフレ率上昇は実質賃金を減少させるのでその分雇用拡大するのではないかとも言われます。しかし、スタグフレーションのようにインフレ率が上昇しつつ実体経済も悪化する場合や、逆にアメリカのニューエコノミーのような場合もありえるため、インフレ率上昇が必ず雇用拡大に繋がるわけではありません。
金融政策には色々手段があります。日本はずいぶん昔からゼロ金利政策という金融政策を取っていますが、あまり効果がありませんでした。そこで今回チャレンジしているのが量的金融緩和です。これは日銀がどんどんお金を刷って、そのお金を市場にじゃぶじゃぶ投入する政策です。これによって市場でのお金の価値が下がりインフレ率が上昇し、また外国為替市場では円安になります。これは経済を刺激する(景気底上げ)政策です。
量的金融緩和はいつか必ずやめなくてはいけません。量的金融緩和をやめられない場合、極端に言えば経済はハイパーインフレーションに陥ります。でも、だからといって量的金融緩和を急にやめれば景気悪化します。極力悪い影響を与えずにどうやって量的金融緩和をやめるのか、その戦略を出口戦略といいます。出口戦略はアメリカですら苦戦するもので、量的金融緩和を始めたはいいけどどうやってやめるのか、いつやめるのかは課題となっています。
さらに量的金融緩和は通貨の価値を下げ、通貨安状態になります。日本円も下がっており、それによる貿易収支改善が期待されています。しかし、通貨安政策というのは通貨安競争につながるもので、本来IMFが禁止しており、やってはいけないことです。それでもIMFが黙認しているのは、日本が「量的金融緩和の副作用として通貨が下がっているだけですよ。意図したものではないですよ。」という態度をとっているためです。
http://concretism.hatenablog.com/entry/2015/07/04/230101
全部ほかの人が悪い、建築家はなんにも悪くないというだけのひどい記事。
募集側の建築家、応募側の建築家とも、後者(コンセプト側)に寄ったものと解釈するのは当然といえ、3年もの月日を浪費した現在においてその判断を責めるのは酷である。
応募側にとっては、問題があれば募集側が落とせばいいだけだから、どう解釈してもいいだろう。
でも期間や規模が大きければ、それだけコストは大きくなるのだから、コストの重要性は高まる。どっちで解釈するかとはまったく別の問題だ。
さらにいえば、コンペの実施から現在まで、民主党から自民党への政権交代とそれに伴うアベノミクスの実施、日銀による大規模な金融緩和、東京オリンピックの開催決定など大きな経済イベントが続けざまに、かつ国立競技場の発注者である「国」の主導のもと起こっている。
そもそも経済はどうかわるかわからない、発注者の国にもいろいろな省庁があり、国立競技場のためだけに経済政策を変えるなんてばかげたことができるわけがないことを考えれば、発注者である国が主導することとの関係を強調すること自体が異常だ。
そもそもオリンピックは決定していないにしても、それにむけての新国立競技場という側面もあったはず。
オリンピック招致にむけて新国立競技場をつくるが、オリンピック開催決定は想定していませんなんていいわけが通用するものか。
国は特に民間に発注者支援業務を要請することもなく、施工者が参加しない詳細設計業務を先行させたり、技術提案のみで施工業者を決めた上での随意契約へ持っていこうとするなど、建設費抑制に対する適切な対応が取れていない。これらについて、当然ながらコンペ当時の関係者に責任はない。
これはそのとおり。
極めつけはこれ
ザハ、安藤忠雄の両者をはじめとする当時のコンペ関係者は、閉塞感が漂っていた当時の日本、特に「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権下における建設・建築の関係者の鬱屈した気分を晴らすというその責を十分に果たしており、ここまで述べてきた論理的な部分のみならず、感情的にも彼らを咎めるようなことは、この世界でメシを食ってる人間として、できようはずもない。
身内が鬱憤を払うために税金を湯水のごとく浪費することを肯定している、建築業界の人でもここまでひどいのはほとんどいないと信じたいが、もし多くがこんな意見ならば、日本の建築業界は滅んでほしい。
フランス社会党のブレーンだというし、『21世紀の資本』の主張自体、リベラルのものとしても極端な部類だ。
それなのに保守、新自由主義に与しているくせにピケティの威光にあやかろうとしている連中がいる。
例えば竹中平蔵とかね。言わずと知れた小泉政権下での新自由主義の実行者。
この男が週刊ダイヤモンド(2015/2/14)のピケティ特集で『21世紀の資本』の支持率70%だという。
ピケティのいう格差を、自らが作り出した正規・非正規の格差に読み替え、だから正規社員もなくしてしまえ、と。
こう書いてしまうと噴飯ものだが、竹中は口がうまいから、これまでやってきたことや政治的な立場を考えないと一瞬まっとうなこと言ってるのかと思わされてしまう。
正規・非正規の格差が問題なのは確かで、リベラル寄りの飯田泰之も上位6割と下位4割の戦い、みたいな言い方をしているしね。
でも竹中はただただ企業に利せようとしているだけ、実際はピケティとは正反対のところに立っているわけだ。
ピケティが安倍的なるもの(なんて言い方をしたら喜んで噴き上がるのがいそうだが)に対して批判的なのは政治的な立場から明らかだ。
でも一応アベノミクスについてはどうか、と考えてみる。
アベノミクスで実行されたものの中で大きなものは金融緩和と消費増税だろう。
消費増税は収入が少ない層の負担が大きいため、ピケティは反対の立場だ。
消費増税を決めたのは民主党政権だが、自民党も賛成していたし、反対の声が大きい中で実行を決めたのは安倍政権だから、責任は当然大きい。
ただ、格差への影響以前にせっかく表面上よくなっていた景気が予想を超えて後退してしまったため、10%への引き上げは先送りにした。
金融緩和についてはどうだろうか。
ピケティはインフレ自体については肯定的な言い方をよくしている。
「ピケティはアベノミクスを否定していない」とする人たちの論拠はここにある。
「富の集中? もっと重要な問題がある!」:日経ビジネスオンライン
我々経済学者は日本の経験とアベノミクスを注視していますが、「お金の創出」を増やすことだけでインフレの「再創出」に果たして十分なのか、確信が持て ません。消費者物価におけるインフレを生み出そうというなら、一番有効なのは恐らく賃金を上げることでしょうね。まずは公的セクターから賃上げをすること です。
週刊東洋経済(2015/1/31)51ページより
ー日本はどちらかといえば金融政策に頼りがちです。アベノミクスは資産バブルを誘発しています。
ピ そのやり方は間違いだ。われわれは税務政策に比べ、金融政策に対してあまりに高い期待を持っている。日本にとっては、欧州や米国と同じように、金融政策は魅力的だろう。何十億円もの紙幣を印刷するのは簡単だからだ。一方で税制を変えるとなると、計算表を作る作業が膨大で富裕層の反対も受けるし、事態はより複雑になる。だが税務政策が最も透明性が高いといえる。紙幣を印刷しても、何らかの利子率を下げたりすると、特定のセクターがバブル化したり、必ずしも富ませるべきでない人を富ませることになったりする危険がある。
ピケティ『21世紀の資本』訳者解説 v.1.1 http://cruel.org/books/capital21c/APPikettylecture.pdf の21ページで
とした次の22ページで
•実は、過去(20世紀半ば)に効いて今後も使える手法は、もっと挙がっている。
–経済成長
–インフレ
–累進所得税
–相続税
•困ったことに本書は「グローバル累進資本税と比べるとこれは欠点がある」と言って、他の手法の有効性を認めた次の文でかなり徹底的にdisってしまう。だからそれが否定されているように見えてしまう。
「インフレ」とかなってるけど徹底的にdisられたのって金融緩和のことでしょ。
「否定されているように見えてしまう」っていやdisってるんでしょ笑
やらないほうがいいとまでは言ってないって意味だと思うけど、累進資本税の代替としてのそれは否定してるんじゃん。
だからピケティは金融緩和策については懐疑的、少なくとも不十分と何度も言ってるわけ。
つまり、金融緩和策その他の方法に頼って累進資本税なんて到底やる気がない各国政府のスタンス、政策に対しては当然批判的ってこと。
「好きなほうだけつまみ食いしいてる」って笑
山形は翻訳者のくせに自分の都合の悪い部分を黙殺してるんじゃねーか。
好意的に見れば山形はクルーグマン信者だから金融緩和政策を過大評価しているがゆえにピケティの置く重点をとりそこねている。
でもまあ普通に考えればポジショントークの歪曲でしょ。本業は大手シンクタンクの研究員らしいし。
ピケティが重視する具体的な財政策による再分配に消極的ってことは安倍が明言した。
東京新聞:首相、ピケティ氏意識 格差是正へ「再分配」より「機会の平等」:政治(TOKYO Web)
首相はピケティ氏の考えに対し、一月の衆院予算委員会でも「分配だけを考えればじり貧になる」と反論している。施政方針演説では、ピケティ氏の名前や主張には言及しなかったが、その考えにはくみしない立場を明確にしたといえる。
再分配の比率を上げた結果、景気そのものが後退してしまえば結局分配される量が減ってしまう。
安倍を支持するわけなんかないけど、この言い方だけとってみれば「ピケティはアベノミクスを否定してない」とか言うよりはよっぽどまともなんじゃん。
個人的にはピケティのグローバル向けの汎用的な処方箋が仮に実現したとしても、日本にどこまで効くのかなと思ってる。
物質的に行き渡った社会に対して新しい価値が生み出せないっていう日本の弱点は90年代にすでに顕在化してしまっていた。
少子化、年金、地方その他の問題についてすでに手遅れになってしまってもなんの手も打とうとしない、この先送り体質も日本特有のものなんじゃないかな。
ド素人には誰がどういう考えの(自称)経済学者で、なぜそういう主張をするかなかなかわからんので、ざっくりと立場を伝え合うのになんかいい質問・回答集でもないかなあとかぼんやり考えてみた。
例:自分、人類全員、日本国社会、日本国政府、世界主要国政府、日本国企業、日本国労働者、日本国母親、日本国次世代など
例:全員資産平等、現状、1980年日本社会程度の格差、上位10%、下位50%、その他、がだいたい同じ総資産を持つ、など
例:中央銀行の強力な金融緩和、2年間の金融引締め、対ドルの円安、ドル高、
例:最近自分は円安歓迎とみられているが、1ドル=120円がバランスいいと思っているだけでこれ以上の円安ドル高の亢進には反対だ。などなど
やっぱ良質の質問集わかんねえや、誰か考えてくれないかな