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2024-11-10

ブクマカでっち上げデマ概念大学生協における書籍割引販売の「趣旨に反する」について

[B! 大学] 東京電機大学生、生協で取り寄せたらどんな本も1割引きになると凌辱物のエロ漫画を購入→大学「学内で調査を行っております。調査後、大学として厳重に対処いたします。」

いちいち引用しないが、事実を誤認した大量のゴミブコメトップに並んでいる。

生協エロ本を買うのは制度悪用であり、お目こぼしがなくなりルール厳格化を招く」? 全くのデマである

目次 兼 要約

  1. 一般書店で本を値下げできないことこそ、独禁法の「趣旨に反する」歪な既得権益であり、「お目こぼし」されているのが現状である
  2. エロ本を割引するなんてズルい!」こそ、「お目こぼしを良いことにイキる」行為のものである
  3. 大学生協書籍を割引できるのは学業支援目的ゆえではなく、組合員奉仕することを目的とする生活協同組合からである
  4. 大学生協書籍を一律で割引くのは、組合員たる大学教員/職員/大学生の総意に基づくものである
  5. 大量のバカブコメは、大学生による「生協ではエロ本も割引!」啓蒙活動の意義を逆説的に示している

一般書店で本を値下げできないことこそ、独禁法の「趣旨に反する」歪な既得権益であり、「お目こぼし」されているのが現状である

書店でなぜ原則本を値下げできないのかというと、日本には「再販制度」、製造である出版社が決定する定価を書店は変えてはならない、という業界慣行があるからだ。

だが、この形態取引方法は、独占禁止法において明示的に禁止されている。

二条⑨ この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

 四 自己供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品供給すること。

  イ 相手方に対しその販売する当該商品販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品販売価格自由な決定を拘束すること。

  ロ 相手方販売する当該商品を購入する事業者の当該商品販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品販売価格自由な決定を拘束させること。

我々の生きる資本主義社会というのは、市場での公正で自由競争大原則とするものであって、価格決定権は小売業者が持つべものである価格統制を行い、小売業者同士の競争禁止するなぞ以ての外である

このような掟破り行為出版業界でおおっぴらに行われているのは、独禁法23条4項に、著作物の発行事業者による正当な行為であれば、独禁法適用しないという例外が定められているからだ。

なぜこのような特権が認められているのか? 独禁法教科書を開いてみよう。

著作物に係る法定再販制度趣旨は,必ずしも明らかではないが,戦前から定価販売慣行を追認したものとされている。また,著作物の種類ごとに,例えば,新聞については戸別配達の維持,書籍雑誌については多様な出版物の発売や書店での展示販売の確保といった説明が後付け的になされているが,再販行為必要性とは必ずしもつながらないと思われる。(『条文から学ぶ独占禁止法 第3版』p271)

趣旨は必ずしも明らかでない」「戦前から定価販売慣行を追認したもの」「説明が後付的になされているが、再販行為必要性とは必ずしもつながらない」なかなかボロクソな書きぶりではないか

当然「商慣習の追認」なる貧弱な理由で、大原則を曲げていいはずがない。再販制度廃止の動きはこれまでも何度もあった。今もなお現存しているのは、廃止の動きがあるたびに既得権益を守りたい新聞業界が大々的に抗議キャンペーンを行い揉めに揉めたかである政治的駆け引きの末の「お目こぼし」によって成り立っている制度なのだ

エロ本を割引するなんてズルい!」こそ、「お目こぼしを良いことにイキる」行為のものである

新聞業界という第四の権力がバックにある以上、既得権益廃止するのは難しい。されど、お目こぼしをいいことに既得権益を拡大しようとする、出版業界のイキり行為には公正取引委員会は否を突きつけ続けてきた。

この1つの例が2004年ポイントサービス禁止論争である

1990年代を通して喧喧諤諤の大戦争となった再販制度廃止論争は、2001年公正取引委員会による「当面再販制度を存置するのが妥当」という停戦宣言により一応の終結を迎えた。

事実上の勝利にイキった出版業界が次に目をつけたのがポイントサービス禁止である

かに再販価格維持契約定価販売義務付けても、ポイント還元がOKであるならば、事実上値引きと言っていい。「本はどの本屋でも同じ価格」というカルテルを侵す存在であり、再販制度に当面のお墨付きを得た出版業界禁止を目指すのは当然の成り行きであった。

されど原理原則に戻れば、現状の再販制度さえ、政治的判断による苦渋の決断として認められているにすぎないのである

出版業界の舐めた振る舞いに激怒した公正取引委員会は、ポイントサービス禁止運動を行う業界団体に対し、「事業者団体による共同行為禁止する」独占禁止法第8条違反を宣告。

結果、業界団体会長責任をとって辞任、クビを差し出して詫びる羽目になった。

ポイントサービス禁止論争で争点となったのは、1%程度のごく低率のポイントサービスであったが、

現在では、アマゾンヨドバシなどの大手通サイトを見れば、条件付きではあれど12%ポイント還元だとか10%ポイント還元だとか、大幅な値引きを行っている。再販価格維持契約?なにそれおいしいの?の域である

しか再販制度自体お目こぼし例外である以上は、再度「ズルいからやめろ」とヤブをつついて蛇を出したくないというのが業界の考えだろう。

再び公正取引委員会逆鱗に触れ、今度はアマゾン政治力を背後に一気に再販制度廃止まで持っていかれるかもしれないのである

この事例からわかるように「イキり行為」に気をつけなければいけないのは消費者である大学生ではなく、売り手である出版業界側であって、ブクマカ認識はまったくあべこべなのだ

大学生協書籍を割引できるのは学業支援目的ゆえではなく、組合員奉仕することを目的とする生活協同組合からである

ここまで述べた再販制度の縛りを、大学生協は負っていない。これは独禁法23条5項が生協例外例外の1つとして指定しているかである

まり書籍例外として再販価格を拘束する契約を結んでよいが、その例外として生協には通常の取引と同様に、再販価格の拘束契約を結んではならないということである

ブクマカ勝手でっち上げていう「学業目的の特例」とかそんなものではない。実際、書籍の割引は一般生活協同組合(例えばコープこうべ)でもおこなわれていることだ。

ではなぜ、例外例外が設けられたのか?

再販制度という大本例外が設けられた理由再確認すると「商慣習の追認」が定説である。ただこの理屈では再販制度生協のみならずすべての事業者において廃止すべきという結論しか導かれない()。

なので百歩譲って少数説である出版業界ポジショントークを参照すると、再販制度なしには、書店理念を見失い利益至上主義に陥り売れ筋の俗悪本のみが蔓延世界になるから、らしい。

しかしこの捏ねくりだ出した理屈ですら生活協同組合適応することはできない。生協は、利益目的としない消費者うしの相互共助団体であるからである

利益の追求のために消費者不利益を与える行為法律禁止されており、また組合員が持つ平等議決権及び選挙権によって効果的に阻止される。再販制度容認などという副作用の大きな例外を認めるだけの意義はどうあがいても見出すことができない。

大学生協書籍を一律で割引くのは、組合員たる大学教員/職員/大学生の総意に基づくものである

前節では、大学生協書籍が割引が「可能である理由を述べたが、愚かなブクマカは「大学生協学生学業支援するためにあるのだから制度可能であってもエロ本については割り引くべきではない」などと言うかもしれない。

可能であること」と「やること」は違うそれは正しい。

しか大学生協目的なぞをでっちあげたいならば、まず定款を見るべきだ。

第1条 この消費生活協同組合(以下「組合」という。)は、協同互助精神に基づき、組合員生活文化的経済的改善向上を図ることを目的とする。

事業

第3条 この組合は、第1条の目的を達成するため、次の事業を行う。

(1)組合員生活必要物資を購入し、これに加工し又は生産して組組合員生活必要物資を購入し、これに加工し又は生産して組合員供給する事業合員に供給する事業

(2)組合員生活有用協同施設を設置し、組合員に利用させる事業

(3)組合員生活改善及び文化の向上を図る事業

(4)組合員生活共済を図る事業

(5)組合員及び組合従業員組合事業に関する知識の向上を図る事業

(6)組合員のための旅行業法に基づく旅行業に関する事業

(7)前各号の事業に附帯する事業

どこに学業支援なる文字列があるのであろうか。

というか名は体を表すというように、大学生協とは生活、「大学に属するすべての人つまり大学生/大学職員/教職員生活」を共助する団体である役割学業に限られない、当然娯楽を提供することも含まれるのである

書籍の割引販売は、それが教科書であろうと、学術書であろうと、コミックであろうと、エロ本であろうと

(3)組合員生活改善及び文化の向上を図る事業

に一律で含まれるであろう。

追記id:worris 氏のブコメより、誤りの指摘があった。書籍は第3条第1号「組合員生活必要物資である。つまるところ、生協の言う「生活必要物資」とは日常用語生活必需品より広い概念であり、娯楽を含むのだろう。論旨の変更は必要ない。)

もちろん、娯楽の提供大学生協役割に含まれると言っても、程度問題存在する。

生協資金力にも労働力にも限界存在するのだから、何にリソースを投じれば「組合員生活改善及び文化の向上」を達成できるか、取捨選択必要になる。

決めるのは、一人ひとり議決権あるいは選挙権を持つ、組合員である

ブクマカは「イキるとお上のお怒りを買うぞ」という論調であるので、決定権が生協のおえらいさんとか大学経営陣とかにあるように勘違いしているように見受けられるのだが、事実は全くの逆なのだ

組合員自治原則念頭に置いた上で、なぜ本が一律割引されるのかを考えてみよう。

大学生とは多くの人にとって人生で一番本を読む時期である。これは今年『何故働いていると本が読めなくなるのか』という新書ベストセラーになったことでもわかることである

大学教員もまた大量に本を購入する。

そして生協再販価格拘束契約で縛ることのできない例外的な存在として、彼ら組合員独自価値提供できる。

そう考えると書籍の一律割引販売で、組合員合意がまとまるのは、ごく自然なりゆきである

仮に「娯楽本は除外」とか「教科書のみ割引」とかい制度になったならば、利益を得る層が組合員の中で偏ってしまう。みんながWin-Winになる制度こそが、民主主義的な議論で選ばれるものである

ただし、ここ最近若者の「紙の本離れ」が叫ばれて久しい。

紙の本をほとんど買わない組合員からすれば、事業資金は「書籍10%引きで売る」ことより「生協食堂メニューを1品増やす」方に費やしてほしいことだろう。

学術書読んでる同級生応援したいけど、エロ本はな……」と彼らの票が離れることは、あり得る展開ではあるかもしれない。

しかエロ本を割引販売することで、大学生協は何ら損をしていないことにも留意必要である。むしろ大学生協は新たな顧客層を開拓することで利益を得て、他の事業投資可能資金を増やしたと言える。

「割引率が10%であるべきか5%であるべきか」は難しい経営判断であり組合員間での真摯議論が求められるところであるが、割引中止とか販売停止とかになると誰のトクにもならない論上に上げるまでもない愚論なのだ

なお大学生協に客を取られなければ、定価でエロ本を1冊売ることができたであろう一般書店は損をしたといえるが、再販制度というお目こぼしに守られているものが「ズルイ!」なんて言える立場にないことは先に述べたとおりだ。

大量のバカブコメは、大学生による「生協ではエロ本も割引!」啓蒙活動の意義を逆説的に示している

大学生の行為を「バカッター」とか「バイトテロに等しい」だとか意気揚々名誉毀損行為を行うブクマカたちは、

実際は、自分たちがこそが大学生協役割勝手でっち上げたイキりバカブクマカであり、はてなというプラットフォーム名誉を大いに傷つけるブコメテロであることを認め、真摯謝罪すべきである

そして、大学生協役割学業目的だと誤解する人がここまで多いという事実は、「生協ではどんな本でも割引される」ということを声高く啓蒙する意義を証明している。

ルールを正しく理解する人が多ければ多いほど、組合員生活費を節約し、生協の売上は増え、サービスの質は向上するのだから

2024-11-05

anond:20241105122822

ありがとうございます自分は、自分の住む街の小さな新刊書店必要インフラだと思っていなく、基本的に専門書へのアクセスを確保したいと思っています。そのため大型書店が持続可能ビジネスであることが死活的に重要です(amazon重要)。自分読書好きになった経緯から子どもが本好きになるためには図書館へのアクセスの方が重要かなと思います古本屋一定数ある街は、それがインフラかどうかは別として、素敵だなと思います

頂いたご質問自分感覚で答えてみます:

リアル店舗web店舗を問わず在庫検索システムの構築にかかる費用書店単体で担うのか。

個人的には書店在庫APIがあれば、誰かがそういうサイトを作るのではと思います図書館の蔵書に関しては、calilがあるかと思います

会計列を短くする目的レジ台数を増やすとして、そのレジスペースを確保できるのか。またそのためのレジ要員の人件費はどうするのか。

店舗によると思います八重洲ブックセンター本店ときは、1Fにレジスペースがありましたが、最上階に銀行カウンターみたいな会計スペースがあったのでそこで座りながら数十冊・数万円の会計10分ぐらいでしてました。客単価によって、セルフレジ有人レジカウンターみたいに使い分けても良いと思います

新刊小売書店の付加サービスのもの訴求力必要なのか。

必要ないと思います書店での体験が全てです。ただ、「15000円以上のときに送料無料」のようなサービスがあると、(基本的に本を持って帰る自分のような)顧客対話できていない感を感じます。「ポイントx倍」とかのサービス本棚勝負できていない書店稚拙集客に走っている印象です。なお、八重洲ブックセンター物理的なポイントカードは結構好きでした。

書籍を取り寄せするために行われる口頭でのやりとりを短時間で済ませることがはたして可能なのか。

オンラインフォームのようなものがあれば、十分だと思います。参考までに、e-honだと注文は一瞬ですが、物理書店との連携中途半端です。丸善ジュンク堂のshopifyのサイトでも取り置き可能なので、取り寄せを可能にすることは出来るかもです。なお、その際、amazonサイトを見ているときがありますが、様々な理由により敢えて物理書店で買いたいときがあります

書籍を取り寄せするための流通システムamazone-honとでは流通システムが異なるが、その責は新刊小売書店が負うべきものなのか。

流通の細かな話は分からないですが、amazone-honを使わないで書籍を取り寄せしたいニーズもあるので、そうした潜在ニーズ新刊小売書店企業努力で発掘されたら良いと思います個人的には、敢えて物理書店で取り寄せする際は、10日後に納品とかで問題ないです。

しおりを作っているのは大半が出版社であり、自社でしおり制作している書店がどのくらいある(あった)のか。つまりコストカットしているのは本当に書店なのか。

八重洲ブックセンターではしおりがありました。ただ、トーハンが49%の株を持った2016年から、無くなりました。2024年オープンしたグランスタ八重洲店ではオープン当初はありました。神保町東京堂書店も昔あった記憶です。

本棚微妙につまらなくなったとして、それは取次のせいなのか。

→ これも細かな話は分からないですが、取次とのパワーバランス本棚書籍が決まっているような印象を受けるときがあります丸善日本橋丸善丸の内ジュンク堂池袋紀伊國屋書店本店自分比較的詳しい分野だと同じような本が並ぶ感覚が強くなっています神保町東京堂書店自分比較的詳しい分野だと結構厳しくなってきている印象です。

書籍以外を収益源にするのを少し危険に思う根拠

大型書店でx年前に入荷した数千円の本が売れた、みたいなのを積み上げるときに、数千円の文房具雑貨を売るのとオペレーションモチベーションも違うのかなと思います。また、文房具雑貨収入がメインの有隣堂を見ても、書店セレクトした文房具雑貨からといってそこまで面白くなく、中途半端に終わる気がします。丸善丸の内日本橋にあるような高級文房具絵画などは別かもしれませんが、自分がそうした商品を買うときは結局その専門店に行きました。なお、八重洲ブックセンタープレスマンシャーペンは良く購入してましたので、書店アクセントとしてあっても良いと思います

・書棚の回転率よりも客単価を意識するとなにが改善されるのか。

書店体験が変わると思います。今はレクサスを買うのに、カローラ販売店で購入している感覚があります

ブックカバーの付け方が凄く雑になったとして、それは取次のせいなのか。

→ 取次のせいではないと思います。なお、神保町東京堂書店はけっこうちゃんと付けてくれます外人外商に支えられている紀伊國屋書店微妙にこの辺が改善してきている気がします。

・「雑誌ベースインフラを全国に構築している」トーハンは同時に、書籍流通システムも構築していますが、コアな書籍を売りたい大型書店に関わるのが危険する根拠はなにか。

一般論として、toBをメインの収益源にしている企業toCに関わるのは難しいと思いますtoB向けのコストカットkaizentoC向けに中途半端にすると安っぽくなるだけな印象もあります大型書店場合について考えると、ニッチ需要にどれだけ対応できるかが重要なので、書籍流通システムを維持するためにマス向けの本や雑誌毎日物流網に載せたい取次とはやや利益方向性が違い、結果として大型書店で数万円の本を買いたい顧客ニーズ対応する体制を整備することが難しくなるのだと思われます

・いち業界流通販売構造をはたして社会全体で考えるべきなのか。

新刊書籍流通市場で寡占状態により競争が少なくなっていることで、公益が損なわれているならば、社会全体で考えるべきだと思います。なお、再販制度独禁法適用除外となっていることとは別の論点ではあると思います

・「文化事業」でなければ大型書店運営はほんとうに難しいのか。

1978年オープンしたとき八重洲ブックセンターは「文化事業」として数年の赤字前提だったようですが、結局2年で黒字化したようです。オープンして数ヶ月で1000万人の来店者数みたいな記事もありましたが、潜在的ニーズを当時の経営陣が把握できたのは、それが彼らが自身ニーズであり一番の顧客であったからだと思いますが、同時に「文化事業」として大胆な投資を出来たかなのだと思います上記のしおりが必要なのかどうかや文房具雑貨で稼ぐことの問題点みたいな議論貧乏くさい気がしており、結局大型書店は「文化事業」としてすることで潜在的ニーズを中長期で発掘し持続可能ビジネスになるのかなと思います。なお、今の大型書店本棚を見ると、ただ大きなスペースに本を沢山並べているだけ感もあり、そもそも書店員や経営陣はその書店利用者なのかなと思うときがあります紀伊國屋書店みたいな外人向けの運営は良く分かりません。

以上です

2024-08-29

本屋はもう終わってしまった

金物屋をやってる叔父さんがいる。

久々にお盆帰省した時に聞いた話では、今一番売れているのは殺鼠剤らしい。

もはや金物でも何でもないのだが、どうやら足繫く通ってくる常連がいるので店を畳むに畳めないらしい。

元々は職人取引して仕入れてそれを売る、包丁を預かって研ぎに出して戻す、ご家庭で必ず必要になるし堅い商売だったと言っていた。

しかしもうコンビニホームセンターにほぼ需要は吸収されてしまった。広義の意味ではホームセンターこそが今の金物屋形態なんだろう。

書店員としては悲しい限りだが、「本屋」、というのはもう終わってしまったのだと思う。

いやいや残っている、と言われるかもしれないが、それはホームセンターを見て金物屋が残っているな、と思うのとほぼ同じだと思う。

金物屋の利点は、在庫が腐らないことだ。人が手を触れなければ金物は錆びないし、まあそうすぐ錆びるようなメンテが大変なものそもそも扱わない。

本屋の最大のメリットは、再販制度委託販売だ。定価を決める決断力も、在庫を抱える不安も無い。

古着屋の真逆ともいえる。最近はもう聞かなくなってしまったが、昔は潰れた店の在庫を大量にタダ同然で買い付けて、セール品として売るバッタ屋なんてものがいた。

これは、問屋から売れそうなものをどれくらい仕入れて、実際にどれくらいで売るか、在庫をどう抱えて値付けをどうするか、そこが商売キモからだ。

まり、商いがまずければ店がつぶれる、というのが客商売では普通だ。

本屋は、地域社会文化担い手を任される代わりに、その商売の基本を免除されてきた。

本屋に長いこと置いてある文庫シリーズものなんかは、たいてい出版社の社外在庫品として扱われている。

出版社在庫を店においてあげてる形なわけだ。リスク出版社が取っている。

最近も取次からの配本が遅いという話題がでていたが、まあそうだろうと思う。

新刊も既刊も、料率も冊数も、大手ショッピングモール内の大型書店が優先されて、街の本屋冷遇されている。

言いたいことはわかる。今まで地域社会文化の下支えをしてきたのは誰なのかと言う気持ちもあると思う。

自分書店員だったころに比べて、改善されたことも、そのままのところも、多々あると思う。

でも、商売として考えた時に、もはや「本屋」という形態相手にしてられない、というのも、そうだろうな、と思う。

大型書店駅前書店という形で、半ば強制的にお客さんが回遊してくれてやっと維持可能形態になった、という言い方もできる。

月商200万円いくかいかないか、という街の本屋だと、取次は月20万弱の売り上げしか見込めず、まあ話にならんだろうな、と。

だって月商千万いくかいかないか、という駅前書店なら、月100万弱の売り上げになるわけで。しかも大きい分取りまとめて対応できるし。

(その辺の肌感覚も、今は違うのかもしれないが、よりひどくなっているような気がする)

再販制度委託販売が見直されても、もう本という商品性質上どうしようもないと思う。

当時から、おおむねどこの本屋も客商売と言うことを忘れてしまい、「本屋」をやっているところが多かった。

自分がお世話になっていた本屋は珍しく客商売意識していたが、ある時ラノベ新刊が配本されず、潮時だとして店を畳んでしまった。

本屋」なら、取次や出版社文句を言うんだろうが、客商売としてやっている以上、お客が求める商品提供できないのは致命的だ。

それならば最初から駅前本屋に行ってくれ、というのがその時のオーナー決断だった。

英断だったと思う。

個人的には、雑誌に頼りだしたあたりから、もう限界だったのだと思う。

本屋は、究極的にはアニメイトになるべきだったんだろうな、と今はボンヤリと思う。

そこに行けば新刊は手に入る。そこになければネットにもないだろうという信頼を築けなかったのが、痛かったのだろうな、と。

いまは小さな本屋がある街に住んでいるが、そこの本屋話題になる漫画本が必ず置いてある。

地域大学に進学するために必要参考書が偏っておかれているし、話題になる賞レースの本も手に入る。

駅前から少し歩けば紙の本を持って帰れるな、バスは次の停留所で乗れば良いし、という気持ち地域住民がいる間は、たぶん潰れないだろう。

でもアニメ化される本はほぼ確実にあるという目利きがいつまで続くかわからないし、正直に言えばライフスタイルが変わって週末イオンに行く生活になれば、たぶん通うことは無くなる。

変わり続ける日本国内で、変わらずにいることはとても難しいのだろうと思う。

そんなことを思いながら、今日雑誌のようになってしまった本を読みおえて、メルカリに出品する。

2024-08-21

ブックサービスのいま 又は ネット書店大手書店の仲卸事業

昔、クロネコヤマトブックサービスというのがあったのを覚えているだろうか。

まだインターネットが普及するずっと前から電話FAXで本を注文できるというサービスだった。

実は楽天になっている

その後、どうなっているかというと、実は楽天に買収されている。さら楽天が取次の大阪屋と栗田を買収して合併させ、今は楽天ネットワークという会社になっている。

ただ、楽天ネットワークリアル書店向けの取次から事実上撤退をしていて、ネット書店向けの取次業務専業になっている。


さて、その中で旧ブックサービスサービスはどうなっているかというと、一般向けに事実上楽天ブックスに統合されているのだが、実は出版社向けのサービス現在も生き残っている。

そのサービスというのが、出版社書店向けの急配サービスである出版社の代わりに注文を受けて、出版社から本をピックアップし、宅配便配送網で届けると言うサービスだ。

手数料は高いし送料がかかるのだが、仕入れ価格での販売になること、代金引換による発送ができるため取引ハードルが低い。

さらに、現在楽天ブックスの在庫と一体化されているようなので、楽天在庫(≒大阪屋栗田の在庫)も利用でき、事実上楽天ブックスを客注専門取次として利用できるシステムになっている様だ。

ただ、あくまでも出版社向けのサービスなので、対応している出版社キーになるようだ。例えば光文社 https://www.kobunsha.com/purchase/ の様に、一般向けにブックサービスを案内しているようなところであれば書店向けにも出してくれるようである

Amazonによる仲卸機能

また、Amazonが取次をやったらいいのではないか、と言う話もちらほら目にするが、実は既に行われている事はあまり知られていない。

https://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=7620588051

アマゾンビジネスという、企業向けアマゾンの仕組みがあるが、その仕組みを応用した物で、書店として登録すると、本来再販制度のため、割引が出来ない書籍を割引価格で購入できるというものである

その他のサービス、例えばプライムなどは通常通り利用できると思われ、アマゾン並みの即応力で注文を出すことができるというものだ。

ただし、利率は厳しい。市販価格の5%から7%なので、書店には利益ほとんど残らないだろう。なにしろこれは、アマゾン学生向けサービスAmazon studentや、ヨドバシカメラ書籍購入時のポイント還元率よりも悪い利率なのだから。ただ完全赤字自爆仕入れをするよりは相当にマシではある。また、書店であるかどうかの審査は取次ほどは厳しくないため、これを活用し、本業のお店の一角で、店のブランディングとして、あるいは副業として本業に関わる本をセレクションして販売する、と言う様な事をやっている所もあるようだ。

色々なサービス活用してお客さんの信頼を勝ち取ろう

とはいえ、客注に対応する場合、あるいは何か事故があった場合リカバリとしては使えるサービスは確実に増えている。

色々なサービスをうまく使って、お客さんに、あそこに頼めば間違い無い、と言う信頼を勝ち取っていきたいものだ。

書店は本のプロであると同時に書籍流通のプロであるのだから。もちろん利益も大切だから納期に余裕がある場合一般配本を待つと言う方法もある。どの場面でどのサービスが最も使えるサービスであるか、適切に選んでやっていきたい。

2024-08-16

そもそも本って再販制度かいうので守られてんだろ?

じゃあ、ガソリン税とかタバコ税とか、宿泊税とかみたく、税金200円を上乗せしたら良い。

税金から、どんな本でも。

売上落ちるとかもない。価格統制な訳だからさ?

いよ需要は少し減るかもしれないけど、ともかく今より200円値上げする。

あとは、郵便局無料配達させたらいい。

というか護送船団方式な。

郵便ネットワークは無くなったら困るわけだから、本の配達郵便局のみに許す。

ヤマトとかAmazonかには運ばせない。

これで色々な問題解決する。

2024-07-20

維新の会正論しか言ってない

道州制中央集権諸悪の根源なのは事実能登半島地震道州制自治体が強い権限とカネを持ってれば、もっと早くに復興する。

公務員国会議員年収削減。→先進国でここまで公務員国会議員首長優遇されてる国はない。まんま社会主義国ロシア中国より酷い。

医療費削減。→年間40兆円も使ってる莫大な医療費既得権益だらけ。開業医勤務医診療報酬がなぜか2倍も違う。世界一多い病院数。医師免許の更新制度すら無い。

公務員天下り廃止。→言わずもがな当然やるべき。

マスメディア既得権益廃止。→電波オークション導入、記者クラブ廃止軽減税率廃止再販制度廃止クロスオーナーシップ廃止

新自由主義路線。→日本型社会主義諸悪の根源なんだから当然。

維新正論しか言ってないよね。でも、日本は至る所に既得権益利権があるから改革が全く進まない。

自民党ダメ野党ダメとか言ってるバカがいるけど、正論言ってる維新応援したくないのは自分たち既得権益を無くされるのが嫌なだけだろ。

結局、日本人は自己保身的なんだよ。

2024-03-07

anond:20240307032818

街の本屋じゃなくて街の古本屋になればいいと考えてる

竹村響は何度かブックオフの方が棚がいいって指摘している

https://twitter.com/pinkkacho/status/1745256753833677041

https://twitter.com/pinkkacho/status/1745254231349891237

これは配本と再販制度が要因だけど、批判されがちな再販制度により多様な本(売れそうにもない本)を出版することができている

再販制度止めたら、今度は新刊書の種類がぐっと減ると考えられる

再販制度がなくなれば新刊書店の棚がよくなる、ってことは恐らくない(むしろ悪くなると思ってる)

というわけで街の本屋は諦めて、街の古書店で手を打つ方がいいと考えてる

では、どんな古本屋がいいかっていえばブックオフですよ

https://twitter.com/riyomountains/status/1745977570032767247

これにあるように、個人レコード店と同じようにこだわりの古本屋は棚が似てくる可能性が高いが、ブックオフならこだわりなく仕入れて本を並べるから店によって棚が違う

新刊書は大型書店なり通販で買えれば十分

anond:20240307032818

再販制度大事に抱えたまま一旦滅んでもらってからどうしたらいいか考えた方がいいな。

anond:20240307032818

追記

再販制度を維持するための公金チューチュースキームをどうやって構築するかが今回の眼目。

自分たちから身を削るような改革をできるヤツらなら今ごろこんな事になってねーわ。

anond:20240307032818

再販制度については貴方が思ってるより多くの歴史があるので調べてください。

書店の在り方について頭がかたい人が多い

書店を街の必要施設としておく、ということだが

それもう図書館がやってる役割なんだよな。

まあみんな気づきながら言ってると思うけどさ。

残したいならもっと具体的に本屋の在り方を変えていく必要があると思う。

まず「紙の本は最高!」とか言うのが宣伝になると思ってる奴は単行本の『ハンチバック』で後頭部から殴ろうと思う。紙の本は鈍器にもなる。

まず書店はあまりにも長く姿を変えていない。一因として書店はこうあるべき、という形にこだわってる人が結構多いようだ。

一方、蔦屋書店宗教上の理由で嫌いなんだが(失敗しているTSUTAYA図書館参照)あの探しにくさの中でよく賑わっている。

単純にでかいから置いてる本も多いし、なんか混雑してても関係ないオシャレなスタバみたいに思ってる人も居るんだろう。エンタメ施設としての成功は認めたい(TSUTAYA図書館は最悪だ)。

日本書店海外を見ればもう少し色んなことができるはずだ。

専門性を高めた書店大衆書店差別化もそうだが、

例えばもう既に導入されている買う前に読めるカフェの併設。

海外図書館では普通にある光景なのだが、拒否感を覚えている人も多いようだ。

まあカレーパン食いながら本触られたらたまったもんじゃ無い。海外は不潔だ……という話ではなく、海外カレーパンは置いていないか問題ないのだ。クリームパンとかメロンパンもないし。ドイツパンみたいな、かったいパン食ってるだけだから…かったいパンカフェを併設することを薦めたい。頭はやわらかく行こうぜ。

また日本では売れ残った本を返品できるような仕組みなのだが、ヨーロッパなどでは新品の本を半額セールで売ったりする。ワゴンセールだ。

大体電子書籍ポイント還元や%引きが多いのに、紙の本はいつまで定価で戦うつもりなのか…。

文化拠点と言うのなら安く本を買える仕組みというもの書店出版社は協力して作っていくべきじゃないのか。

返品できたほうが本屋は助かるじゃないかとは言うがリスク取って攻めないと商売死ぬ役人仕事みたいになってはいいか

なによりもセールってとても楽しい普段買わないものまで買ってしまう。セールで手に入らなかったら結局は定価で買っちゃったりもする。

セールもなければチラシを撒く必要もないので宣伝もない。本屋のチラシって見たことないよなー。書店企画出されてもなにをしてるのかさっぱり知らない。

そういう『商店』としての楽しみを、発展を止めた本屋は見事に失っていると思う。

そうは言っても書店の店主は歳を取っている場合も多い。そういう人を保護すべきだという訴えなのはよくわかる。

しかしだ。それでも国が支援すべきは「書店の発展」を考える人に対してであろう。そんな人はいない?いやこれはもう10数年前から業界大学等で言われてることであるから専門家も居る。

うっかりTSUTAYA図書館なんか支援しようとしないで、書店に協力していくことは急務ではないかと考える。

まあパブコメ案件だと思うね。

追記

その歴史のある再販制度も触る案件なんじゃないの今回の議論

2024-03-05

anond:20240305160206

横だけど、現在でも再販制度が無いから定価から割引セール期間限定無料公開みたいなのやってるやろって思った。

個人的には今更ダンピングの流れができるのクソだと思うので定価を下げる方向は無し、システム利用料相当分が下がるなら出版社と著者で山分けが一番、たまに出版社自腹でセールでもやってるくらいがちょうどいいと思う。

2024-02-26

anond:20240225221815

すっかり同人に移った

紙の本を買わなくなって久しい

Dlsite とか DMM は定期的に 50%off やるし

なんならコンセプト割引でまとめ売り 80%off まであるしで

商業も買ってたけど定価で買うのアホらしくなったな

電子書籍で割引販売って定価で買ってる人を馬鹿にしてる

自分自分のくび絞めてるよ

再販制度本屋じゃ出来ないのに、電子書籍ならできるのも制度狂ってる


描き手は大分洗練されて

体の描き方もエロくなってるんだけど

昔の方が抜けるんだよね

この辺上手く言えないけど、別にエロビデオを見たいわけじゃないって言うか


2022-09-29

サブスク音楽からねえって話あったけど映像の方ではそういう話聞かないよね。

アマプラやネトフリが人の映画で儲けやがって許さねえ!みたいな声無いよね。

となると、音楽業界の利益配分の仕組みがおかしいんじゃねえの?

フィジカルでも、ハリウッドの大作DVDが1,000円かそこらで売ってるのに

CDは誰でも3,000円〜のまんま(再販制度については知っています

映画より映画サントラのほうが高いっていうね。

2022-09-14

anond:20220914001231

そんな書店ポイントが高く着くと再販制度崩壊が!みたいなの医療機関でもやってるのか、知らんかった

2022-04-06

[][][]

メディアリテラシー

レントシーキング - Wikipedia

地代(英: Rent seeking)とは、経済学における公共選択論における概念の一つで、「特殊利益追求論」とも呼ばれる。

企業がレント(参入が規制されることによって生じる独占利益や、寡占による超過利益)を獲得・維持するために行うロビー活動等を指す。

官公庁記者クラブ室の家賃賃貸料)、光熱費水道代、電気代)をきちんと支払え!!!

税金フリーライドする税金フリーライダー記者税金を返金しろ!!!

全体の奉仕者である公務員は、記者クラブに対して税金利益供与をするな!!!

公正取引委員会は、記者クラブに対しての利益供与を率先してやめろ!!!

電池切れ寸前。ランチで店のコンセント勝手に使ったら?

10年、大阪地裁は、2円50銭相当の電気を盗んだとして、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡している。

https://president.jp/articles/-/10516?page=2

憲法

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である

② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

③ 公務員選挙については、成年者による普通選挙保障する。

④ すべて選挙における投票秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

無形の賄賂とは - コトバンク

https://kotobank.jp/word/%E7%84%A1%E5%BD%A2%E3%81%AE%E8%B3%84%E8%B3%82-641203



韓国記者クラブ廃止されたいきさつ

https://web.archive.org/web/20091225155311/http://incidents.cocolog-nifty.com/the_incidents/2005/12/14br_cd2e.html



クロスオーナーシップ

認定放送持株会社

日刊新聞紙法

電波割当制/レントシーキング典型総務省テレビ会社株主携帯会社株主電波利権をプレゼント!?電波オークション周波数オークション実施しろ

記者クラブ制度雑誌記者フリー記者排除する大人イジメ情報商品商品仕入れ妨害するな!/独占禁止法公正取引委員会

波取り記者

国有地払い下げ/

再販制度

軽減税率

押し紙グリーンウォッシュSDGsウォッシュSDGs/ESG/エコ



[media literacy][メディア・リテラシー][電波利権][電波オークション][レントシーキング]

ファミリー企業との随意契約はやめよう!オークション競争入札)をしよう!

(NHK OR JRA OR UR OR 道路公団) ファミリー企業 随意契約

2021-11-19

anond:20211119095058

良くない、と思うのは消費者だけ。開発側は、合法コピーやらロムの生産管理再販制度なんかを考慮したらサーバークライアントシステ厶を使ったゲームは、コストを加味しても美味しいのよ。続けてほしいなら、金を払えってまともだろ。

2021-05-10

anond:20210510161213

数字はクソ適当だけど

紙:5000 電子:3000 が存続ラインだとすると

紙:4000 電子:4000 

出版社伝統的な自転車操業の都合の影響(再販制度売掛金など)で打ち切りになることがあるから

それは作家問題ではなく出版社構造問題じゃん?って指摘だよ

2020-11-16

冷静に考えたら転売の原因がわかった!

僕はPS5を買えませんでした。転売屋のせいです。もう、とにかくムカついて2~3日くらい眠れませんでした。そして転売屋を憎みながら考え続けました。転売とはなんなのか! そしたら、ようやく答えらしきものにたどり着きました。

転売屋のいない世界

モデルを作ってシミュレーションしてみます。ただし、人数とか価格は実情がわからない部分があるので、完全に仮のものします。

まずは、転売屋のいない世界について考えます100人の人が居て、PS5が発売されたらそれぞれが1万円~100万円未満の値段なら買いたいと思っているとします。1万円未満なら買いたいと思っている人が1人、2万円未満なら買いたいと思っている人が1人、・・・、99万円未満なら買いたいと思っている人が1人、100万円未満なら買いたいと思っている人が1人、といったような100人です。PS5が無料だったらすべての人が買います。PS5が1万円なら、99人の人が買います(1万円未満なら買いたいという人は買いません)。99万円だと1人だけ買います100万円だと誰にも見向きもされません。100万円未満ならPS5を買いたい人は、富裕層お金が余っているのか、お金に余裕はないが熱狂的なPS5のファンのどちらかでしょう。とにかくどちらの理由でもいいので、100万円未満ならPS5を買いたいと考えています

そのような状況で、PS5の在庫が45個で、ソニー10万円で販売したとします。このとき、 PS5を買いたい人は90人に対して、PS5は45個しかありません。2倍の倍率で争奪戦となります

100人のPS5を獲得する能力等価なら、90人のうちの45人に均等にPS5が行き渡ります11万円未満なら買いたいと思ってる人は妥当価格だと思って購入し、50万円未満なら買いたいと思っている人はPS5安くてソニー神!と思うことでしょう。

転売屋の台頭

平和世界でしたが、100人のうちPS5に興味がなかった10人(つまり10万円未満じゃないとPS5を買いたくない人々)が転売屋になったとします。さらに、彼らはPS5の獲得能力が極めて高く、1人につき3台ずつPS5を購入するとします。10人の転売屋と90人のPS5を買いたい人々の間で、一体何が起こるでしょうか。

転売屋によって、45個あったはずのPS5は15個に減ってしまます。買いたい人は90人のままなので、競争の倍率は6倍まで跳ね上がります本来2倍の倍率で買えたものなので、転売屋のせいで本当に買いたかった人が大きな害を被っていることになります

さて、PS5を3台ずつ買った10人の転売屋はこの後どうするでしょうか。彼らはPS5に興味がないので、これを誰かに売る必要があります問題はいくらで売れるのかです。もっともPS5に高値をつけている人は99万円でPS5を買ってくれるので、99万円で売りたいと考えますしかし、10人が30台のPS5を99万円で売りに出しても、買ってくれるのは1人だけで29個のPS5が余ってしまます。PS5を買う人がちょうど30人になる価格は、70万円です(実際は市場に出回った15台のPS5を買えている人もいるので、もう少し安くなります)。よって転売屋は、最初は95万円程度の高値でPS5を売ろうとし、最終的には70万円ですべてのPS5を売り切ります。PS5の本来価格10万円の7~9.5倍の値段で取引されていることになります。近年メルカリでよく見かけている光景ですね!

転売屋は徐々にPS5を安くしていくので、売り切るには時間がかかります。少なくとも発売日当日には、45台販売されたPS5のうち30台は箱に入ったまま眠ることになります転売屋は早くPS5を売ろうとしますが、それでもすべてのPS5を売り切るまでに数ヶ月かかる可能性は十分にあるでしょう。ソニーは使ってもらうため(ソフト等の販売収益を得るため)にPS5を安く販売しているので、ソニーにとっても転売屋害悪だと言えるでしょう。

ここまでの転売屋の影響のまとめです。

最後に、転売屋から70万円以上でPS5を買った人は損をしているのか、について軽く考えておきますシンプルに考えると、10万円で買えるPS5を70万円で買ったので、60万円損をしているように見えますしかし、「10万円で買える」には落とし穴があります転売屋が居ない世界でも、PS5の購入倍率は2倍でした。つまり、もともと10万円で確実に買えるわけではないのです。それを、「70万円出せば確実に買える」という事実から10万円出せば確実に買えていた」という誤った推論に陥いらないように、注意が必要です。

なぜPS5はお手頃価格で買えるのか

PS5、安過ぎると思いませんか? どうしてこんなに安いのでしょう。「ハードウェア赤字販売し、ソフトウェアで利益を得るというソニー戦略である」という答えが一つあります任天堂も同じ戦略ファミコンを売っていたはずです)。しかし、僕らは中学校社会時間に「需要供給法則」というものを習いました。供給より需要が高ければ値段が自然と上がり、需要供給が成り立ったところで価格が決まる、と。PS5は需要供給の2倍という需要過多の状態なのに、なぜ価格が上がらないのでしょうか。

そこには、「希望小売価格」という暗黙の了解がありますソニーヨドバシカメラなどの小売店消費者へ、PS5の価格の目安は10万円ですよと伝えているのです。法的には希望小売価格以上の値段で販売をしても構いません。むしろソニーが定価以上の販売ペナルティを与えたりすると、独占禁止法違反です。

https://www.fuji.ac.jp/strength/jitumu_curriculum/%E3%80%8C%E5%95%86%E5%93%81%E3%81%AE%E5%80%A4%E6%AE%B5%E3%81%AF%E8%AA%B0%E3%81%8C%E6%B1%BA%E3%82%81%E3%82%8B%EF%BC%9F%E3%80%80%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%81%A8%E6%B3%95%E5%BE%8B%E3%81%AE/

このリンクにも、『日本では、商品製造したメーカーは、一度、その商品を卸業者小売業者販売するときに「この商品は、希望小売価格で売ってください」とか「値引きはしないでくださいね」といったお願いをしてはいけないことになっています。』と書いてますね。

じゃあ、なぜヨドバシなどがPS5を希望小売価格で売るのかというと、それが暗黙の了解からです。消費者の多くは、PS5の希望小売価格10万円を定価だと思っており、それ以上の価格で売られていると悪徳業者だと考える人ほとんどでしょう。それが社会暗黙の了解となってしまっているのです。

希望小売価格のない世界

それでは、希望小売価格のない世界でPS5を販売するとどうなるかを考えてみましょう。転売屋はまだ居ないものします。

この場合小売店はなるべく利益を出すために、PS5を高値販売します。45台のPS5をすべて売り切れる金額の上限は55万円です。よって、小売店は55万円でPS5を販売します。ここで小売店転売屋より良心的で、経験も十分にあり、市場適正価格最初から販売できると仮定しています

希望小売価格10万円が設定されていたときと違い、お金のある45人だけがPS5を手にすることができますお金がない人はとても困ってしま世界です。PS5の値段が高くて手が届きません。

希望小売価格のない世界での転売屋

希望小売価格のない世界で、また10人が転売屋転向したとします。しかし、この世界では転売簡単ではありません。

転売屋はPS5を調達することに秀でていて、各自3台のPS5を10万円で調達していましたが、この世界ではPS5は55万円で売っているため、「10万円で」という部分を実現することができません。そこで、「じゃあどのくらいの金額でPS5を買うのか」という姿勢を明確にする必要があります。一体いくらでPS5を購入すると転売して儲けることができるでしょうか?

例えば、転売屋が「40万円で買う」と言う意思決定をするとどうなるでしょうか。当たり前ですが、この場合PS5の販売価格は55万円なので、転売屋は1台もPS5を買うことができません。よってこの戦略で儲けることはできません。

では次に、「85万円で買う」と言う意思決定をするとどうなるでしょうか。直感的には、100万円未満なら出してもいいと思うほどの商品なので、これでも15万円の利益が出て十分転売が成立するように見えますしかし、実際はそうはいきません。転売屋10人が各3台ずつ、合計30台を1台85万円で買おうとしているとします。このとき小売店がPS5を45台売り切るための適正な価格は、85万円となります86万円未満なら買おうと思っている15人のゲーマーと、85万円で買おうとしている10人の転売屋×3台でちょうど45台です)。という事で、マンマ転売屋は30台のPS5をせしめることができたのですが、問題はこの後です。PS5を持っていない残っている人は、85万円未満ならPS5を買いたいと思っている人々です。よって、85万円より大きい金額メルカリへPS5を出品しても、在庫をさばくことはできません。85万円未満であれば売れますが、完全に赤字です。

結局この世界では、転売屋はどのような値段でPS5を購入しても儲けを出せないことになります。儲けを出すには、市場適正価格より安い金額流通しているPS5(例えば、店の広告代わりに安売りするなど)をどこからか見つけてくる必要があります。ただ、そこまで行くと転売と違って苦労や経験を伴う商品の「仕入れ」であり、転売ではなくて商いと言えるのではないでしょうか。

ここまでのまとめです。

PS5を金持ち優遇して売るべきか

希望小売価格撤廃転売屋がいなくなるのはわかりましたが、我々庶民も道連れでPS5が買えなくなります。これは本当に正しいことなのでしょうか?

今、メルカリのPS5の販売金額の実情を見てください。金持ちじゃないととてもじゃないけど買えない価格になっています。つまり、「庶民にPS5が買えない」ということは、すでに起きていることなのです。「転売屋が居なければ庶民でも買えるじゃないか」という主張は半分しかあっていません。転売屋が居なくても、庶民の全員がPS5を買えるわけではなく、買える人と買えない人が出てきます。これは運や調達能力依存して決まります

逆に、PS5が庶民でも買えるように安値を保つべものだと仮定しましょう。その場合日本には「再販売価格維持制度」というものがあります。この制度適用されている代表的もの書籍ですね。書籍出版社が決めた定価で売り買いしなければなりません。理由は先に述べたとおり、書籍文化的もので、庶民でも誰でも平等なチャンスで購入できるべきだからです。また、電気水道などの公共料金も、同様の理由で国が介入して価格を決めています

もし、PS5が再販売価格維持制度対象となれば、定価で取引することが義務付けられますから転売を撲滅することが可能です。ただ、PS5は書籍水道、ガスと同様に国に価格を決めてもらうべきものなのでしょうか? 僕はそうは思いませんでした。

ちなみに、希望小売価格がない世界庶民がPS5を買えないかと言うと、そうではありません。PS5は毎月供給されて着実に増えていき、それと比較して需要は必ずしも増加傾向にないため、販売価格はどんどん下がっていきます。発売日には買えなくとも、自分の手が届くようになったタイミングでいつか買うことはできます

まとめ

転売を撲滅する方法として、以下の2つを提案しました。

僕は、前者のほうが適切だと思います。ただ、大昔には化粧品などが再販売価格維持制度対象となっていたようです。なので、もしかするとPS5やニンテンドースイッチ、希少なグッズなども再販制度適用となる未来もあるのかもしれません。コロナ禍で転売されたマスクなどは、再販制度適用に最も近いポジションにあったと言えるかもしれません。

ところで、転売屋から物を買っていいかですが、転売屋には腹が立ちますが(PS5欲しい)、以下の理由で買っていいんじゃないかと思います

最後に、僕が転売屋をどう思っているかですが、適正価格より安くPS5が売られているのでバカでもできる行為で、何も知性を感じないし生産性もない行為だなあと思ってます。つまり転売屋は嫌いです。

僕と同じ主張をしている人はこの人くらいかなーと思いました。まる。

https://anond.hatelabo.jp/20201115045441

2020-02-20

出版は終わっているなぁ

ついに動き出した電子マンガ中古売買」の成算

https://toyokeizai.net/articles/-/327399

海賊版ガーと言えば何をしても許されると思っている感がそこらかしこから見て取れるよね。

正直この人達が嫌うフェミと同じ過ちをしているだろうよ。

しかしどさくさに紛れて中古価格まで自分達で操作しようとしているのは本当の意味で終わっていると思う。

こいつら綺麗ごとや詭弁ばかり弄して自身の都合の良い囲い込みばかりしか考えていないのな。

>下限価格出版社が決められる

とか言っている時点で出版界隈の悪しき風習である再販制度とか見直す気も全くない気みたいだし、とことん腐りきっていると思うよ。

もはや出版インターネットに害を与える老害と化しているのだから、本気で滅びてほしいと思う。

2019-09-17

anond:20190916165840

本屋出版の間に入っている「取次」っていう問屋抵抗勢力

再販制度定価販売印税の先払いの資金調達役割を担っていたか発言力が一番大きい。

取次がアマゾンみたいになっていれば(そのチャンスは十分あったと思う)今の惨状はなかったはず。

出版流通全体が社会主義的だった。

臭い商慣習と左巻き言論界共依存がもたらした災難だね。

2019-08-29

Amazonで「新品」の本を定価より安く売ってる販売者

というのがいる。表に出てる情報なのでそのまま晒すけど、例えばこういうとこ。

https://www.amazon.co.jp/s?me=A14XIDGNKXC43F

https://www.amazon.co.jp/s?me=A221DI5JCAOTQ8

見た限りだとちょっと前の文庫化されてたり新書になっている単行本10年以上前に出た本とかがほとんど。

で、定価より安く売っているので、何も考えずにカートに入れるとこの販売者から買われてしまう。出版社からするとカートが取れてない状況なんだが、

Amazon基本的に「ユーザーにとってベスト」な販売先がデフォルト選択される設計になっているから、「新品」かつ「安い」のでこっちがベスト、というアルゴリズムになってて、出版社在庫があっても変えようがないんだろう。

新品かどうかなんて確認のしようがないし、出すときの設定次第でなんとでもなるようだ。自己申告。

しか法律上出版社との取引先でなければ再販制度適用外になってしまうので、安く売られても文句も言えない。

理屈だけなら「本屋で買ってきたものを袋から出さずに並べてます!」と言われてしまえば、なんとも手が出せないのが現状。

まぁそこまで毎日売れるようなラインナップでもないし、数も限りがあるだろうから、全体から見れば微々たるものなんだろうけど。

Amazon対応しないのは、もうそういう会社から、とあきらめるしかいかと思うのだが、どこから仕入れているのかを考えると気になる。

ここに限らず住所からストリートビューするとフツーの家っぽいところがほとんどだし、屋号検索してもめぼしい情報は出てこないし、どんな業者かもわからず、気味が悪い。

まさか本当に本屋で買ってきたものをそのまま並べているわけでもあるまいし、古本を新品と偽っているのか、何か別の仕入れルートがあるのかしら。

後者のほうが意外と闇が深そうではある。

2019-06-21

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グレーゾーン解消制度

グレーゾーン解消制度を利用して、公正取引委員会建物に、第二記者クラブ既存記者クラブに非加盟である記者のための記者クラブ)を設立する事が可能確認をしたい!

憲法

第八十九条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善教育若しくは博愛事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

日本国憲法第89条 - Wikipedia



日刊新聞紙法再販制度軽減税率クロスオーナーシップ電波割当制度記者クラブ制度

日刊新聞紙法新聞社の株を自由に売買出来なくして、

再販制度新聞価格を拘束して、

新聞軽減税率を獲得して、

キー局の株を保有してクロスオーナーシップを実現して、

キー局電波を割り当てて貰って、

記者クラブ制度カルテルを組んで排他的情報を入手して

レントシーキング謳歌する新聞社テレビ局

独占禁止法カルテル

「記者クラブ廃止」「独立機関設立」…国連特別報告者が提言 大手メディアはほぼ無視

記者クラブが一番の既得権益層なのよ 会見からフリーを排除する 無料のものを有料で売ってんのよ 税金が使われてるのよ

「税金によって運営されている官庁の持つ公的情報を、なぜ私企業の業界団体にすぎない記者クラブが流通を独占するのか」という非クラブ記者の問いは「政治機構」としての記者クラブの正当性を問うています。

もともと、日本の新聞は再販制度という本来なら独占禁止法違反の価格カルテルを公正取引委員会にお目こぼししてもらうことで市場競争を免れ、さらに記者クラブ制度でニュースという製品の原材料を排他的に供給してもらえるという二重に「政府による規制」に守られた保護産業・規制産業にすぎません。

今、公取に電話して聞いてみた。「情報機関にとって情報は商品である。その商品を一部業者が独占するのは公正な競争を阻害する行為で、独禁法に抵触するのではないか」と。すると、よほど意外な質問だったと見えて「あ、そう言われれば…」という反応だったよ。脈ありかも。

記者クラブ―情報カルテル: ローリー・アンフリーマン (著), 義之,橋場 (翻訳), Freeman,Laurie Anne (原著)

記者クラブ解体新書 「東京六大学」学生だけが使える「六大学学生クラブ」

2019-05-17

anond:20190517144845

実売数は正確な数字ではない~って、DL販売なら正確な数字だし書籍なら再販制度があるんだから戻ってきた数ほぼ正確に把握できる=実売数を同定できる だろ。

逆にそれが暴力的である、という意見にはある程度賛成はできるが、秘匿すべき情報とも思わん。

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