僕はPS5を買えませんでした。転売屋のせいです。もう、とにかくムカついて2~3日くらい眠れませんでした。そして転売屋を憎みながら考え続けました。転売とはなんなのか! そしたら、ようやく答えらしきものにたどり着きました。
モデルを作ってシミュレーションしてみます。ただし、人数とか価格は実情がわからない部分があるので、完全に仮のものにします。
まずは、転売屋のいない世界について考えます。100人の人が居て、PS5が発売されたらそれぞれが1万円~100万円未満の値段なら買いたいと思っているとします。1万円未満なら買いたいと思っている人が1人、2万円未満なら買いたいと思っている人が1人、・・・、99万円未満なら買いたいと思っている人が1人、100万円未満なら買いたいと思っている人が1人、といったような100人です。PS5が無料だったらすべての人が買います。PS5が1万円なら、99人の人が買います(1万円未満なら買いたいという人は買いません)。99万円だと1人だけ買います。100万円だと誰にも見向きもされません。100万円未満ならPS5を買いたい人は、富裕層でお金が余っているのか、お金に余裕はないが熱狂的なPS5のファンのどちらかでしょう。とにかくどちらの理由でもいいので、100万円未満ならPS5を買いたいと考えています。
そのような状況で、PS5の在庫が45個で、ソニーが10万円で販売したとします。このとき、 PS5を買いたい人は90人に対して、PS5は45個しかありません。2倍の倍率で争奪戦となります。
100人のPS5を獲得する能力が等価なら、90人のうちの45人に均等にPS5が行き渡ります。11万円未満なら買いたいと思ってる人は妥当な価格だと思って購入し、50万円未満なら買いたいと思っている人はPS5安くてソニー神!と思うことでしょう。
平和な世界でしたが、100人のうちPS5に興味がなかった10人(つまり、10万円未満じゃないとPS5を買いたくない人々)が転売屋になったとします。さらに、彼らはPS5の獲得能力が極めて高く、1人につき3台ずつPS5を購入するとします。10人の転売屋と90人のPS5を買いたい人々の間で、一体何が起こるでしょうか。
転売屋によって、45個あったはずのPS5は15個に減ってしまいます。買いたい人は90人のままなので、競争の倍率は6倍まで跳ね上がります。本来2倍の倍率で買えたものなので、転売屋のせいで本当に買いたかった人が大きな害を被っていることになります。
さて、PS5を3台ずつ買った10人の転売屋はこの後どうするでしょうか。彼らはPS5に興味がないので、これを誰かに売る必要があります。問題はいくらで売れるのかです。もっともPS5に高値をつけている人は99万円でPS5を買ってくれるので、99万円で売りたいと考えます。しかし、10人が30台のPS5を99万円で売りに出しても、買ってくれるのは1人だけで29個のPS5が余ってしまいます。PS5を買う人がちょうど30人になる価格は、70万円です(実際は市場に出回った15台のPS5を買えている人もいるので、もう少し安くなります)。よって転売屋は、最初は95万円程度の高値でPS5を売ろうとし、最終的には70万円ですべてのPS5を売り切ります。PS5の本来の価格10万円の7~9.5倍の値段で取引されていることになります。近年メルカリでよく見かけている光景ですね!
転売屋は徐々にPS5を安くしていくので、売り切るには時間がかかります。少なくとも発売日当日には、45台販売されたPS5のうち30台は箱に入ったまま眠ることになります。転売屋は早くPS5を売ろうとしますが、それでもすべてのPS5を売り切るまでに数ヶ月かかる可能性は十分にあるでしょう。ソニーは使ってもらうため(ソフト等の販売で収益を得るため)にPS5を安く販売しているので、ソニーにとっても転売屋は害悪だと言えるでしょう。
ここまでの転売屋の影響のまとめです。
最後に、転売屋から70万円以上でPS5を買った人は損をしているのか、について軽く考えておきます。シンプルに考えると、10万円で買えるPS5を70万円で買ったので、60万円損をしているように見えます。しかし、「10万円で買える」には落とし穴があります。転売屋が居ない世界でも、PS5の購入倍率は2倍でした。つまり、もともと10万円で確実に買えるわけではないのです。それを、「70万円出せば確実に買える」という事実から「10万円出せば確実に買えていた」という誤った推論に陥いらないように、注意が必要です。
PS5、安過ぎると思いませんか? どうしてこんなに安いのでしょう。「ハードウェアを赤字で販売し、ソフトウェアで利益を得るというソニーの戦略である」という答えが一つあります(任天堂も同じ戦略でファミコンを売っていたはずです)。しかし、僕らは中学校の社会の時間に「需要と供給の法則」というものを習いました。供給より需要が高ければ値段が自然と上がり、需要と供給が成り立ったところで価格が決まる、と。PS5は需要が供給の2倍という需要過多の状態なのに、なぜ価格が上がらないのでしょうか。
そこには、「希望小売価格」という暗黙の了解があります。ソニーがヨドバシカメラなどの小売店や消費者へ、PS5の価格の目安は10万円ですよと伝えているのです。法的には希望小売価格以上の値段で販売をしても構いません。むしろ、ソニーが定価以上の販売にペナルティを与えたりすると、独占禁止法違反です。
このリンクにも、『日本では、商品を製造したメーカーは、一度、その商品を卸業者や小売業者に販売するときに「この商品は、希望小売価格で売ってください」とか「値引きはしないでくださいね」といったお願いをしてはいけないことになっています。』と書いてますね。
じゃあ、なぜヨドバシなどがPS5を希望小売価格で売るのかというと、それが暗黙の了解だからです。消費者の多くは、PS5の希望小売価格10万円を定価だと思っており、それ以上の価格で売られていると悪徳業者だと考える人がほとんどでしょう。それが社会の暗黙の了解となってしまっているのです。
それでは、希望小売価格のない世界でPS5を販売するとどうなるかを考えてみましょう。転売屋はまだ居ないものとします。
この場合、小売店はなるべく利益を出すために、PS5を高値で販売します。45台のPS5をすべて売り切れる金額の上限は55万円です。よって、小売店は55万円でPS5を販売します。ここで小売店は転売屋より良心的で、経験も十分にあり、市場の適正価格で最初から販売できると仮定しています。
希望小売価格10万円が設定されていたときと違い、お金のある45人だけがPS5を手にすることができます。お金がない人はとても困ってしまう世界です。PS5の値段が高くて手が届きません。
希望小売価格のない世界で、また10人が転売屋に転向したとします。しかし、この世界では転売は簡単ではありません。
転売屋はPS5を調達することに秀でていて、各自3台のPS5を10万円で調達していましたが、この世界ではPS5は55万円で売っているため、「10万円で」という部分を実現することができません。そこで、「じゃあどのくらいの金額でPS5を買うのか」という姿勢を明確にする必要があります。一体いくらでPS5を購入すると転売して儲けることができるでしょうか?
例えば、転売屋が「40万円で買う」と言う意思決定をするとどうなるでしょうか。当たり前ですが、この場合PS5の販売価格は55万円なので、転売屋は1台もPS5を買うことができません。よってこの戦略で儲けることはできません。
では次に、「85万円で買う」と言う意思決定をするとどうなるでしょうか。直感的には、100万円未満なら出してもいいと思うほどの商品なので、これでも15万円の利益が出て十分転売が成立するように見えます。しかし、実際はそうはいきません。転売屋10人が各3台ずつ、合計30台を1台85万円で買おうとしているとします。このとき、小売店がPS5を45台売り切るための適正な価格は、85万円となります(86万円未満なら買おうと思っている15人のゲーマーと、85万円で買おうとしている10人の転売屋×3台でちょうど45台です)。という事で、マンマと転売屋は30台のPS5をせしめることができたのですが、問題はこの後です。PS5を持っていない残っている人は、85万円未満ならPS5を買いたいと思っている人々です。よって、85万円より大きい金額でメルカリへPS5を出品しても、在庫をさばくことはできません。85万円未満であれば売れますが、完全に赤字です。
結局この世界では、転売屋はどのような値段でPS5を購入しても儲けを出せないことになります。儲けを出すには、市場の適正価格より安い金額で流通しているPS5(例えば、店の広告代わりに安売りするなど)をどこからか見つけてくる必要があります。ただ、そこまで行くと転売と違って苦労や経験を伴う商品の「仕入れ」であり、転売ではなくて商いと言えるのではないでしょうか。
ここまでのまとめです。
希望小売価格の撤廃で転売屋がいなくなるのはわかりましたが、我々庶民も道連れでPS5が買えなくなります。これは本当に正しいことなのでしょうか?
今、メルカリのPS5の販売金額の実情を見てください。金持ちじゃないととてもじゃないけど買えない価格になっています。つまり、「庶民にPS5が買えない」ということは、すでに起きていることなのです。「転売屋が居なければ庶民でも買えるじゃないか」という主張は半分しかあっていません。転売屋が居なくても、庶民の全員がPS5を買えるわけではなく、買える人と買えない人が出てきます。これは運や調達能力に依存して決まります。
逆に、PS5が庶民でも買えるように安値を保つべきものだと仮定しましょう。その場合、日本には「再販売価格維持制度」というものがあります。この制度が適用されている代表的なものは書籍ですね。書籍は出版社が決めた定価で売り買いしなければなりません。理由は先に述べたとおり、書籍は文化的なもので、庶民でも誰でも平等なチャンスで購入できるべきだからです。また、電気水道などの公共料金も、同様の理由で国が介入して価格を決めています。
もし、PS5が再販売価格維持制度の対象となれば、定価で取引することが義務付けられますから、転売を撲滅することが可能です。ただ、PS5は書籍や水道、ガスと同様に国に価格を決めてもらうべきものなのでしょうか? 僕はそうは思いませんでした。
ちなみに、希望小売価格がない世界で庶民がPS5を買えないかと言うと、そうではありません。PS5は毎月供給されて着実に増えていき、それと比較して需要は必ずしも増加傾向にないため、販売価格はどんどん下がっていきます。発売日には買えなくとも、自分の手が届くようになったタイミングでいつか買うことはできます。
僕は、前者のほうが適切だと思います。ただ、大昔には化粧品などが再販売価格維持制度の対象となっていたようです。なので、もしかするとPS5やニンテンドースイッチ、希少なグッズなども再販制度の適用となる未来もあるのかもしれません。コロナ禍で転売されたマスクなどは、再販制度の適用に最も近いポジションにあったと言えるかもしれません。
ところで、転売屋から物を買っていいかですが、転売屋には腹が立ちますが(PS5欲しい)、以下の理由で買っていいんじゃないかと思います。
最後に、僕が転売屋をどう思っているかですが、適正価格より安くPS5が売られているのでバカでもできる行為で、何も知性を感じないし生産性もない行為だなあと思ってます。つまり、転売屋は嫌いです。
僕と同じ主張をしている人はこの人くらいかなーと思いました。まる。
「転売屋のせいで高くなる」ではなく「安すぎるから転売屋が出る」のだ。 元の価格が5万、転売価格が8万なら、元から8万で売っておけば転売屋は出ないのだからそうすべきだ。 差額(3...
僕はPS5を買えませんでした。転売屋のせいです。もう、とにかくムカついて2~3日くらい眠れませんでした。そして転売屋を憎みながら考え続けました。転売とはなんなのか! そした...
転売は価値を産んでいないんだよね お客さんに商品売りたいなら、小売店になればいいのにと思う
それはそれで貴族しか娯楽を楽しめない時代が来そうだな
飽きたら価格は下がる定期
元の価格が1個100円のポケモングミとか、1箱1000円のマスクとかはいくらに設定するべきだとお考えですか
ピカチュウのピュレグミ、1個1000円近い値がついてたからな
第2弾のパッケージが速攻1種類だけになったのは笑える(笑えない)