はてなキーワード: 未来のためにとは
今やれることをやろうって思い始めた。
最近鬱で朝は起きれない。タイマーを止めてもそこから二度寝してしまい起きたら出る時間。どうする?休むか?誰も怒る人なんて居ない。
でも仕事行こうって思える、仕事に行くことが今やれる最善の行動だと思うから。
人間はいつも選択肢を抱えてたり迫られたりしている。選んだものに後悔する。私もそうだしたぶんみんなもそう。
わかったことがある、人は100%一度は選んだものに後悔する。ああしとけばよかったな、こうしとけばよかったな。
でも今は違う、もちろん後悔しないわけではないが、"最善だと思ってやった自分がいる"ならまあしょうがないなって素直に思えると思う。
あの人のように"今のためにつらい過去があったんだ"とは思えない。私は過去が辛かったとは思えない。親が離婚したしいじめられたし不登校になったし高校も卒業まで長かったし父親が再婚して子供もできたし母親に殺されかけて妹が自殺未遂したけど、不幸だとは思えないのだ。
確かに人に話せば暗いものかもしれないが、私にとってはそれが当たり前で、自分をつくってきたことだから。
「生まれてこなければよかった」と衝動的に思うことはあれど本当に思ったことはない。今までの人生で「私」が居なければどうなっていただろうか。たぶん最悪の事態になるだろう。
家族や親族の橋渡しになって弱った人の心の支えになる。私が居なければ誰も行えなかったことだ。
あの人のように"今のためにつらい過去があったんだ"とは思えない。でも「過去があるから今がある」というのはよく分かる。
正直、あの人に先を越されたなと思ってる。あの人は一人で立てるようになった、今存在する意味を自分に見いだせるようになったからだ。私は他人に見出すことしかできない。
今のところそこそこ稼げていて、仕事も楽しいけれども、10年後、40代後半になったときにはどうなってるかわからないような仕事だ。
そのころには、今は元気な母親も、介護が必要な状態になっているだろう。
妹は固い職業に就いているが、給料は決してよくはない。父は早くに死んだ。
実家はいちおう、そこそこの値段のマンションだが、まだローンがかなり残ってる。10年じゃ終わらない。
今はわがままを言って実家を離れているけれど、そのうち戻って、実家に今よりももっと金を入れないとダメだろう。
金の問題がなくとも、現状、実家で母と同居している妹に、母親の世話を押し付けてしまっているような状態だし。
家事はまだ母親は自分でできているけど、寂しい老人の話し相手になるのはストレスが溜まるもんだ。
妹には恨まれているだろう。
というか、先日、まとまった入金があったので、一念発起して趣味に関するちょっとデカい買い物(つうても二桁万円代前半ですが)をしたら、「不安定な仕事で、これから金もかかるのに、どうしてちゃんと貯蓄に回したりしないんだ」とめずらしく、本当にめずらしく、妹に激怒されてしまった。
あんなにあいつが家計のことだとか、将来のことを気にして、いろんな気持ちを溜め込んでいるとは思わなかった。
なんかもうな、母親が死んだら、適当なタイミングでスパッと死んでしまいたい。
貧困状態で生きていくような元気はないので、身辺整理して、妹に迷惑がかからないような形で、スパッと死にたいよ。
本当に、今は楽しい。今、これまでの人生で一番楽しい時期を過ごしてる。
学生時代もできなかった一人暮らしができてて、それなりに自分の城らしきものを作れてさ。
日々ネットでは色んな対立や論争が起きてるけど、将来の人口減についてだけは、頭の良さそうな奴もそうでない奴も不可避の運命として珍しく意見が一致してる。
でも少なくとも俺は、それに抗うために政治や社会が一度でも本気で行動したところを見たことがないんだよな。
例えば安倍さんがさ、テレビの前で手をついて、「お願いします!どうか日本のために皆さん二人の子供を産んでください!!」って叫ぶくらいのこと、してみたらいいと思うんだよ。
で、現実にそれを奨励するための施策をバンバン実行してみたらいいんだ。
どうせ国債なんて日銀が全部買ってるから財政破綻なんか起きやしないし、老人が安穏と暮らすために使われるなら癪だが、自分たちの未来のために使われたと思えば、後の世代も納得すると思うんだよな。
中途半端に学歴や所得のある奴が、これから生まれてくる子供が可愛そうとか賢しらに言うのを目にするけど、お前らが嘆こうが毎年まだ100万人近くの新しい命がこの国に生まれてくるんだよ。
その子らからしてみたらさ、なにかわかったような顔して早々に諦めた親世代のことなんて、恨む対象にしかならないんじゃないのかね?
本当に「これから生まれてくる子供」のことを考えているなら、もっとがむしゃらにやり尽くして欲しかった、最後まで必死に戦って欲しかったと思うんじゃないの?
なんかほんと、そこだけは所与のものとして全員が現実から目を背けてるのが俺はほんと許せないんだわ。
頼むから出てきてくれよ、そういう当たり前のことをやろうって言ってくれる集団がさ。
そしたらあっという間に世の中変えるだけの支持を集めると俺は思うし、少なくとも俺はその意思を表明するつもりだぞ。
昨今の引きこもりに関連する殺人事件を見るとどうも他人事には思えない。
引きこもりが全て犯罪者予備軍である、などと言うつもりは無いが私は間違いなく予備軍であった。
そして現在はその状況を脱している。(と思う)
「ご恵贈頂きました」という類いの呟きに寄せた郡さんの「呟き」は、書物を出版するという行為を人脈作りのように扱うことへの反感をこめたものだ。その底流にあるのは、書物という存在に対する畏れ、敬意、尊重するという「しぐさ」であり、それが彼の出版人としてのスタンスの根本に関わる問題であることが伺える。
一方で「その呟きを批判することが自由な言論の流通を阻害する」と批判する小林さんの意見は、これも書物を狭い公共圏の所属物にしてしまうことへの嫌悪や彼女なりの書物の未来への希望に基づく批判だと考えられる。書物はもっと自由で開かれたものであるべきだ、という思想もまた、彼女の出版人としての根本に関わるテーゼなのだろう。
両者の意見を踏まえた上で、その対立について、それから、切り取られた「クッキーでも焼いて…」という言葉について意見を述べたい。
まず、両者の意見はまさに「意見表明すること」に対する価値観を異にしているため、おそらく折り合う点がない。郡さんは「世界に向けて意見を述べるとは、反論・批判を受けて立つ覚悟に基づくべきものであり、それは神聖な行為だ」と考えているのだろう。そういう覚悟のないおしゃべりによる人と人の繋がりを一段低いものと見て、Twitterなどの道具を使ってそれをすることを否定するほど狭量ではないものの、自分が心を込めて関わっているものをそんなことの道具に使う行為に対しては嫌悪感を覚える、というスタンスだ。たとえて言うなら、陶芸家が「いまプレゼントに最適なカップ」特集とか見て、苦虫をかみつぶしているような感覚だろう。
一方の小林さんは、おそらくそういうスタンスをもつ世代の「本」作りには未来がないと踏んでいる。彼女は彼女なりに出版の未来、書物の未来を憂えていて、むしろ前世代の人が気軽な交流の場に本を持ち出すことに苦言を呈すること自体が、書物の未来を奪うものとして気に入らないのだろう。たとえて言うなら、その陶芸家の息子が、自ブランドの社長として上手にブランディング戦略をして「プレゼントに最適なカップ」特集に○○印のカップを掲載してもらっているようなものだ。
……とまとめれば分かってもらえると思うが、こんな二人の話が折れ合う地点など最初からない。
私が問題だと思うのは、こんな折れ合わない二人が触れ合い対立してしまうことを、いまのTwitterの仕組みはプラスにできず(論争が深まる余地がないので)、足を引っ張り合うこと(炎上)にしか繋げられない点だ。SNSは人と人の距離をぐっと近づけたが、ブログvsブログならまだ存在した対話の余地を、Twitterは残さない。そしてそれを煽るのがtogetterのようなまとめサイトで、まさに郡さんの思うような「編集」という行為の恣意性や恐ろしさに気付かないまま、面白おかしく「炎上しやすそうなポイント」に絞ってページ作成者は対立を煽り、社会全体の生産性を下げている。私は、この二人はそれぞれのポジションで自己のお仕事に邁進していただいたい方が、なんぼか日本と世界の、そして書物の未来のためになると思う。
今回の対立は「クッキーでも焼いてフリマで売ってろ」という郡さんの売り言葉に対して「性差別的な発言が感情的な口調」と小林さんが受けたところから本筋を逸脱した。郡さんの文脈でこの売り言葉を読めば、それはつまり「(書物の怖さを尊重せず交流の価値だけに可能性を見出すなら、書物という作るのも受け取るのも恐ろしいものに手を出さず、安全な)クッキーを焼いてフリマで売って(好きなだけ「素敵ー」とか言い合ってぬるい交流をす)ればいい」という意味であるのは明白だし、ブラック気味のジョークとして受け取れる範疇の揶揄であったと考えるが、小林さんはその文脈を外して「(自分が女性だからクッキー焼け、つまり社会に出てくるなという話になるのか、つまり)性差別」でありかつ「(性差別的な発言を不用意に侮辱的に投げかけるほどあなたは)感情的だ」というレッテル貼りを行って、話を泥沼化させた。あとは、Twitterに住む蝿がよってたかってブンブン言わせて、事態は無事小学校の学級会へと堕していった。
郡さんのそのブラック口調が不用意だったのか、あるいは(かねてから似たような目に遭ってきたと想像される)小林さんの受け取り方がよくなかったのか、そこは今更問うまい。両者がその間の事情をそれぞれ忖度すべきだったというほど、両者に重い責任を負わせようとも思わない。ただ、いずれにせよ、両者はTwitterなどという軽い軽い場で議論じみた交流をすべきでなく、ただお互いの仕事に努めた方がずっとよい。陶芸家とその息子、ハッキリ言えば話すだけ無駄だと思う。
これまで何度も繰り返されたこういう出来事(出会うべきでない二人をお節介にも出会わせて無益な対立を生み、あまつさえそれを見世物にする!)をシステム上で防ぐ仕組みができない限り、いずれTwitterは信頼も人心も失っていくだろうと思う。
彼女のことも傷つけたくないし、こちらがここに投稿することによって誰かが不利益を被ることがなるべくないように配慮した上で、今抱えている絶望をここに残しておきたい。断っておきたいのは、この文章を僕の言葉で増田に流している時点でフェアでなく、自分が被害者ですといった書き口になってしまう可能性はぬぐいきれないと言うこと。正しく理解してもらうことはとても難しいと思う。それでもない頭を使って、個人個人の未来のためにも書いているので、できればアドバイスにあたるコメントが欲しい。
先日彼女と二人で一泊二日の旅行に行った。これは二日目に聞いた話なのだけど、彼女曰く「誰かと泊りの旅行に行くのは初めてだったから、家族でちょっとした騒ぎになった」らしい。旅行から帰ってきた次の日、彼女から長いメッセージが届いて、ものすごく悲しいことをしてしまったんだと自責の念に駆られることになった。
簡潔に言うと、一日目の夜、セックスを断ってしまった。断ると言っても「嫌です」と直接言ったわけでなく、彼女の誘いを流して諦めさせてしまったのだ。一応ゴムは持っていった。彼女はおそらく男性経験がないだろうと思って、彼女のことをいたわる思いで滑液がついたものを初めて購入した。でも、とにかく疲れていて、眠たかった。僕は睡眠障害を抱えていて、毎週大学病院に通っており、治療中であることは彼女にも理解してもらってる。もう眠剤を処方され出して二年弱がたち、その日もいつもと同じ薬を服薬してしまった。あとで振り返るとその薬には副作用に「性欲の低下」があり(そんなものがなくても眠たさで欲は消えそうだけれど)、服薬しなければよかったと後悔する。しかし、それはきっとできなかった。両親のアドバイスで眠剤を抜いてみたことがある。すると全く寝れず、不安からパニックになってゲロゲロ吐いてしまった。うつ病も併発していたものだから、それは大きなトラウマになって、これは危険なことかもしれないけれど、半ば強迫観念にかられながら眠剤を服薬しているのだ。
長く、重たいメッセージの中で、彼女は自分が僕に女として見られてはいないのではないか、自信をなくしている、と言う。たまらなく胸が痛み、あまりにも苦しくて吐きたくなった。彼女をひどく傷つけてしまったこと、それからまたこの手の失敗をしてしまった悔しさのことで。
思い出すのはこれまでの失敗。誰かと仲良くなりすぎてしまうことに対して苦しさを覚え、その人の前から逃げてしまいがちな自分は、最近人間関係に対しての苦手意識がずんずん芽生え、重荷になって生活してきた。とはいえど、初対面の人ともうまく会話ができるし、コミュニケーション能力には自信を持っていたのだ。人より優れた共感能力を持っているはずだから、他人に配慮した会話ができていた自信があった。それにもかかわらず、最近いろんな失敗をして(例えば自分の不用意な発言で相手を無自覚に傷つけてしまっていた)、自分は「共感能力が低い人間だった」というのが分かり、いろんなことがわからなくなった。自分はうまくやれているつもりなのに、自分の感覚と他人からの評価のズレが大きすぎて、毎度本気で悩まされるのだ。
恋人とセックスしたい、というのもよくわからない。「セックスしたい」と「恋人になりたい」が両立することをはっきり理解できない。「大好きで、一緒にいたい。でもセックスはしたくない」というのが相手を苦しめるというのを身を以て体験して、驚いた。二人にとってこんなにつらいことは他にないように思えた。そもそも僕は恋人的なスキンシップからして、苦手な方らしい。低体温で、ものを握ると手汗をかいてくるから手を繋ぐのもあまり好きじゃない。近くにいたい、抱きしめたいとは思う。キスはなるべくしたくない。彼女に「君が自信をなくす必要性はきっとなくて、その悩みは僕への不安の裏返しだと思うから、結局のところ性的な魅力がないのは僕の方なんだと思う」と送る。こう返信するだけで、いろんな自信を失った。tinderで知り合った女性となら、自分からできるはずなんだけど、と思って再度インストールして昨日から左へ右へスワイプし続けている。ライクがたくさん来る。多分顔は悪くないんだなと思う。マッチは未だしていない。寂しさを感じる。
自分はもっと普通な人間だと思ってきたのに。今では普通よりマイナス方向に目立った性格ばかりで辟易する。変わっていければいいと思う。変わりたい。
ラインのやり取りの中で、僕なりの知恵を振り絞り、「早めの時間にラブホデートしたいと思うのだけど、いいかな」と提案してみた。眠剤の影響や疲れの影響を受けない状態で試してみたい、という本心からだ。彼女からは「それは嫌。そういうことをしたいっていう君からの言葉がない限り、私はそれを望んでいないです」というだけだった。正直、わからないのだ。彼女のことはかわいいと思うし、付き合えて嬉しいと思う。だけど、したいです、といえば嘘になるような気がするのだ。僕はあくまで試験的に、という意味で送ってみたのだけど、今これを書きながら、それってきっとひどいことなんだろうな、という気がしてきた。
彼女のことが好きだ。暗いトンネルで絶望している時に笑顔で声をかけてくれたのが彼女だった。当時の僕にとって、希望だった。彼女はそう明るい人格ではないけれど、愛嬌があって、一緒にいると安心する存在。できるだけ長く一緒にいられたらいいと思いつつ、考えがぴったり180度違うと言うことも少なくなかった。それでも僕らの会話は楽しく、うまくやれているつもりだった。それなのに、彼女は普段のデートの中でも、自分に自信をなくすばかりだったと言う。
絶望している。やっと暗いトンネルを抜けられたと思ったら、さらに暗いトンネルがやってきたような。苦しくて、逃げ出したくなる。もう一緒にはいられなさそうで、それは僕にとってとてもつらいものだし、これからの人生でも同じ失敗をして苦しむのだろうかと、しなくていい絶望を予習してしまった。嫌になる。これからどうしよう、中身のない未来について、なんどもなんども考えている。
私も増田ほどじゃないけど、月10万以上国に納めてる。稼いだ金が半分くらいは税金で吸われていくのを見て空しくなる
どんなに稼いでも、どれだけ税金を払っても、偉いね、と言われることはなく、結婚してないの? 彼氏いないの? もてないの? と言われる
そして年収300万の子持夫婦が、子育てはストレス、大変、お母さんいたわって! なんて言いながら、偉いねすごいね、やっぱり結婚して子供産まないとね、と言われている
なんで「結婚してない子供いない」ってだけで社会からこんなに馬鹿にされているのに、明らかに幸せな既婚子持の家庭にお金払わないといけないのって思う
子供を産んだ理由ってのは、愛する人の子供がほしいからであって、日本の未来のために生んだやつなんていないでしょ
だから旦那と幸せセックスして、子供産まれて、子供の成長を楽しく見守って、孫に囲まれ幸せな人生だった、とか言われつつ死ぬわけでしょ?
ダーリンがいたから、とか愛が素晴らしいとか家族とはとかいうわけでしょ
君たち全部もう、持っているんだから、なんで子供を社会とか言い出すの、自分たちでなんとかしてよ、持たざる私たちに押しつけないでよ、と思う
障害者とか、明日は我が身だしわかるよ、病気の人に使われる金は問題ない。誰だっていつ病気になるかわからない
無職の人に払う金だっていい。自分だっていつ無職になるかわからない。
自分より圧倒的に幸せな人たちになぜ金を払う必要があるのか心底謎
貯金だって、億単位であるから、別に老後に年金なんていらなくても生活していけるし。
増田と一緒に飲みたいわ
たとえばヴィーガン。今の時点で今すぐにすべての人類にその思想を浸透させると単純に大量の人が飢えて死ぬ。植物の完全自動化工場生産が現状の農地の数倍から数十倍のコストダウンをし、培養肉の生産コスト改良が現状のブロイラー鶏肉を上回ったとすれば、ご説ごもっともな普通の思想に化ける。
たとえばラディカル・フェミニズム。単純に少子化を超加速して人類が滅亡する。人工子宮による出産が天然自然の子宮による有形無形の出産コストを下回って普通に運用されるようになってからなら、女性だけの国を作って運用するなども現実的なので普通の思想に化ける。
たとえば共産主義。まあ失敗したよね。共産主義といえば経済を計画してるくせに常に貧困にあえぐかなぜか単なる独裁になってしまうか。経済学の理論が十分に発達していなかったし、数日数か月数年先のことが十分に見通せていなかったし、物もエネルギーもなぜか足りなくなってしまっていた。あの思想で国を充分にやっていくには、アホみたいに大量のエネルギーと大量の衣食住その他の物資の余裕が必要だ。というわけで原子力というか核融合が十分なコストダウンを果たし搾取し放題で搾取されても人権問題にならない奴隷階級としての知能化された機械が低コストで運用できるようになればたぶんまた挑戦できる。
彼らがやるべきなのは思想啓蒙運動ではなくて科学技術の発展だ。今の時点での運動はただの駄々っ子に過ぎない。思想の未来のために人類の科学を技術を発展させろ。そうでなければ笑われて消えて行け。
《先生の子供を孕む刑》それが麻衣ちゃんに下された罰です。麻衣ちゃんは二週間先生と性交をし続けました。それも完全公開で。すぐさま実験施設のひとつが完全にふたりの閨房として改造されました。私たちはというと、先生と麻衣ちゃんのセックスを見届ける観客として一日中二人を見守る役をさせられました(先生は見られて興奮するタイプなのです)。誇り高い麻衣ちゃんがそんな恥辱に耐えられるはずもありません。しかし麻衣ちゃんは二週間ひたすら先生と性交をし続けました。プライドが高いがゆえにそのような恥辱には耐えられないはずですが、むしろプライドこそが彼女を支えていたのかもしれません。麻衣ちゃんは先生に負けたくなかったから性交を受け切ったのです。実際先生は三日も経つと体力も限界に達してふらふらに見えました。しかし彼もまた国会議員として高いプライドを持つ者であり、ついに二週間耐久性交をやり遂げてみせたのです。憎しみ合うふたりの間には何か他のものが生まれていても不思議ではありません、が、それは私の勘違いです。訪問の最後、先生が車に乗り込むときになり、麻衣ちゃんは先生の男性器に隠し持っていたフォークを突き立てたのです。すぐに麻衣ちゃんは取り押さえられ独房に入れられました。スーツが血だらけになっていた先生がその後どうなったのかはわかりません。麻衣ちゃんは独房で自殺しました。私は彼女のことを忘れません。
同居人がいなくなり寂しくなりました。美少女狩りは日本各地で行われているようですが、良質の絶頂エネルギーを産出できる美少女は限られているため、すこしかわいい程度ではいけないのです。日本の人材はいつも乏しく、朝鮮半島の超兵器の危機は間近に迫っていると大人たちは焦っていました。
本来なら私は高校三年生。私の青春は兵器開発のために消えました。今更どうしようというのでしょう。失った時間は返ってきません。二学期が始まるな、そう思ってすぐのことです。先日、北海道を大地震が襲いました。研究所も揺れに揺れてちょっとしたパニックになりました。研究所の電気は完全に途絶えました。不安の中で私は麻衣ちゃんのことを思っていました。彼女ならどうするかと。彼女なら私に脱走しようというだろうと思いました。脱走防止用の入り口の機関銃が起動しない今しかないと。私は大地震のパニック状態と夜陰に乗じて研究所を抜け出しました。もちろんあのワンピースの姿でです。二年ぶりに壁の外に出てだんだん私は自分の感情というものが復活してくるのを感じました。押し殺し、存在しないものとして扱っていた私の感情や人間らしさ、尊厳というものが鬱勃と私に沸き起こってくるのを感じます。
私は山の中をひたすら走りました。真夜中でしたが、走って走って、転んで、また走って、とにかく走り続けました。涙が止まりません。とにかくがむちゃらに走って走って走りまくりました。やがて時間の感覚がなくなったころ、私は前方にたいまつのような明かりを見ます。こんな山奥に人が、こんな時間に、と不思議に思いましたが、やっと見つけた手がかりなので明かりの方へ向かいました。近くまで来ると人影に呼びかけましたが、彼が振り向いたとき私はしまったと思いました。未開部族だったのです。毛皮をまとい奇妙なお面をかぶった未開人は私に気づくとうぉううぉうと唸り声を上げて警戒のポーズを取りました。私は早口で何かまくしたてますが、当然未開人には理解されません。未開人はたいまつを掲げて、大声で私に何かを訴えています。彼らの言語についての知識がまったくない私には何も理解できません。しかし、彼がこういったのだけは聞き取れました。
「サーターアンダーギー!」
私は全力で「サーターアンダーギー」と叫びました。未開人はぶるっと身震いすると、その場でひざまずいて私に対して祈りを捧げ始めました。顔を上げてとお願いしても彼は祈りの言葉を唱えたままです。肩に手を乗せると、ふごぉという音を立てて未開人がひっくり返りました。彼の持っていたたいまつで山火事になりそうなところでしたが、なんとか私が奪い取ってやりました。
「サーターアンダーギー!」
未開人は手を振ってついてこいというようなジェスチャーをしました。脱走の興奮も収まり、冷静になってみると体はもうぼろぼろで体力の限界が近づいていました。私はまた麻衣ちゃんのことを思いました。国会議員の先生にも負けなかった麻衣ちゃんのことを。私も今倒れるわけにはいきません。自由になるんだ、そう強く念じました。闇夜の中をどれくらい歩いたのか、しばらくすると未開人の集落らしきところにたどり着いていました。まさか未開人がいるとは思ってもいませんでした。この辺りはもともと政府や政府とつながりのある裏社会の管理下に置かれていて、結社の研究所が作られてからはなおさら一般人が立ち入ることはありませんでした。この時代にまだ未開部族が日本にいたのかと、まさかこんなところに未開の土地があったのかととても驚きました。しかしさらに驚いたことに、集落には文明人の先客がいたのです。黒のライダースジャケットにデニムパンツ、登山靴ではなくイタリア風の革靴、縦長の登山用のリュックという格好で、髭を蓄え、未開人とコミュニケーションを取っていました。話を聞くと彼は諸事情あって芸能界を引退した後、旅に出てこの場所にたどり着いたとのこと。髭を蓄えだいぶ顔つきは変わっていましたが、私も彼をテレビで見たことがあります。
「酒に酔った勢いでトラブルを起こしてしまってね。とても反省しているよ」
星がとてもきれいでした。未開人たちは粗末な小屋から出てくると私を取り囲みました。彼らが「さあたああんだあぎぃ!?」というと、私は「サーターアンダーギー」と答えます。すると彼らはひざまずいて私に祈りを捧げます。とにかく私は「サーターアンダーギー」といいました。私たちのコミュニケーションはその程度のものでした。しかしすべてがそれで通じていたのです。
「いい名前ですね」
「いい名前だ」
文明人がふたりと未開人が多数、原始的なキャンプファイヤーのような火を囲んで私たちは穏やかなときを過ごしました。夏の夜は明けかかっていましたが、安心しきった私はいつの間にかその場で眠りに落ちていました。起きた頃には正午近かったでしょうか。佐藤さんのGPS時計によれば午前十一時近くになっていました。昨夜のうちに私の状況はなんとなく話してありました。佐藤さんも最初は信じてくれなかったようですが、事細かな説明を聞いていて、それに私の着ていたわいせつな衣装というのも説得力があったのでしょう、やがて佐藤さんは私の話を信じるといってくれました。
「これからどうする?」
「警察もグルに決まってる。警察になんて行けばきみは研究所にとんぼ返りさ」
「それじゃ、どうすれば」
「俺の別荘に行こう」
佐藤さんは放浪生活の末に北海道のこの地が気に入り、莫大な資産を使って郊外に別荘を作ったのだそうです。山を降りると佐藤さん所有のベンツが停まっていました。私のこの格好では万が一人に見られたとき大変だからと、佐藤さんはレインコートを貸してくれました。大地震からまだ半日も経っていませんでしたが、ひと気のない道路は平和そのものといったように見えました。北海道全域が大停電だなんて私はそのときまだ知りませんでした。見送りに来た未開人たちが手を振ってくれました。屈強な男たちの数人は車を追いかけてきました。が、すぐに彼らの姿も見えなくなりました。田舎道をずっと行き、文明人の暮らす町を目指します。佐藤さんは地震のことが気がかりな様子でした。
「少しでも人の役に立って罪を償いたいんだ」
うとうとしているといつの間にか周りの風景が変わっていました。そこここに人の気配、生活のにおいがします。人の世界に帰ってきたんだと思いました。佐藤さんは別荘に一人暮らしのようでした。地下一階、地上三階建ての独身の男性ひとりには広すぎる豪邸です。居間には高そうなギターやベースが飾ってあり、大型のテレビと映画館並みの音響設備が客人を圧倒します。もっとも停電中なので電化製品はすべてガラクタ同然となってはいますけど。冷蔵庫ももちろん止まっていて、缶ビールやチーズがぬるくなっていました。お酒はやめられなかったのだと知ると少し残念に思いました。
「行き先が決まるまでここを拠点にするといい。使っていない地下室はきみの自由にしなさい」
佐藤さんは着替えを持ってくるといって螺旋階段を上がって行きました。数十万はしそうな白い革張りのソファに座ってほっと息をついて待ちます。思えば性奴隷としての二年間は私をすっかり変えてしまいました。この世の地獄を生き延びた人間として、これ以上悪いことは起こりえないという確信があるからです。もはや私は些細なことで動じる少女ではないのです。かといって自分が大人かといわれればそれも違う気はしますが。特殊すぎる体験によって自分が少女でも大人でもない何か非人間的な存在になってしまったように感じられます。少しずつ元の社会に順応していけたらと思います。
足音が聞こえてきました。螺旋階段から降りてきた佐藤さんは学ランに着替えていました。
「これに着替えなさい」
手渡されたのは女子校の冬服と使用感のある白い下着でした。制服の方はよく見れば女の子なら一度は憧れる東京の名門女子校のものでした。なぜ佐藤さんがこんなものをと訝りながらも、今着ている衣服と呼ぶにはあまりにも特殊なデザインである研究所の服よりはましであるというのも事実ですから、私は素直に制服に着替えました。佐藤さんは私の着替えを目の前で見ていました。本来なら私は男性の目を気にして着替える場所を要求するべきだったでしょう。しかし私はまだそういった当たり前の羞恥心を取り戻すところまでは精神が回復していませんでした。
「すごくいい……」
佐藤さんの表情が変わりました。そして私ににじり寄ってきました。
「佐藤さん……?」
私は頭を両手で押さえられ、思いきりキスされました。佐藤さんの髭が当たってちくちくします。
「佐藤さん!」
佐藤さんは鼻息を荒くして口の中に舌を入れようと試みてきます。わずかの抵抗はあったものの私は突入を許し、彼の舌と私の舌が絡み合いました。佐藤さんは獣のような激しい息遣いになり、慣れた脚の捌きで私を床に押し倒しました。馬乗りになった佐藤さんの日焼けした顔はまるで本物のヒグマのようでした。芸能人として現役だったとき肉体派として人気を博した佐藤さんの筋肉は見せかけではなく本物で、私はそれまで研究所の男たち相手では感じたことのない凄まじい力で蹂躙されました。抵抗は無意味、ほんの少しの希望もない、体の内側から動きを止められている、そんな圧倒的な侵略でした。顔を舐めまわされた後、佐藤さんの舌は首を経由して鎖骨に向かいます。それから優しい手つきで、しかし抵抗を永遠に諦めさせる圧倒的な力で、私の上半身はむき出しにされました。佐藤さんはブラの上から確かめるように乳房を揉み、やがて耐え難い欲望の高まりに動かされて荒々しくブラも外し(少し痛かったです)、乳首に噛み付いてきました。
「痛いです」
左の乳に、右の乳に、行ったり来たりむしゃぶりついてくる佐藤さんはもう理性が吹き飛んでいるようでした。それから連続的な淀みない動きで佐藤さんの右手が私のスカートの中にするりと入り、下着の横から中指(だと思います)が膣へと入ってきました。
「ん、んっ」
佐藤さんの右手の動きは熟練の職人技といったもので、私の急所を的確に捉えてきます。獣としての本能に目覚めた佐藤さんは私の微妙な息遣いの変化や体の動きからその場所を割り出しているようでした。素早く、的確に、効率的に私を攻め落としていきます。自分の顔が真っ赤だとわかりました。体がほてって、頭がぼうっとしてきました。膣はじゅくじゅくで、私の頭の中もとろとろに融けてしまいそうです。
絶頂に達すると私は痙攣し、泥の中に沈みました。私が行動不能に陥っていると、佐藤さんはソックスを脱がせて指一本一本に多量の唾液を垂らしながらしゃぶりつき、それから下着を脚からするりと脱がせて、ちゃぷちゃぷ音を立てながら性器にむしゃぶりついてきました。私はもう声も出せません。されるがままで自分がどこまで行ってしまうのか、それはすべて佐藤さん次第でした。学ランを着ていた佐藤さんはついに脱ぎ始めました。といっても上半身はそのままで、下半身だけずり下げたという格好です。完全には脱ぎませんでした。佐藤さんのふるふると怒張した男性器が現れました。黒々した血管に野性味を感じる極太の一物でした。あんなに大きなものが身長百六十センチ程度の私に入ってきたら、私の股は裂けてしまうかもしれない、一瞬不安がよぎりました。しかし考える間もなく佐藤さんの男性器が私を貫いていました。
感じたことのない衝撃でした。経験したことのないほど膣が押し広げられ、その刺激によって女性としての機能が目覚めたのか、膣もまた佐藤さんの一物に吸い付き、快楽を根こそぎ享受してやろうと超反応しました。私のすべてが脈打ち、快楽に耳を傾けています。どんな小さな快楽の芽もしっかり開花させてやろうと、私の全身のすべてに研ぎ澄まされた超鋭敏な感受性が宿りました。
芸能界のトップで鍛え続けてきた佐藤さんの腰振り運動はまさに本物。修羅場を潜り続けた一流の元芸能人だからこそ、誰が相手でも最高の戦果を得るのです。妥協はありません。激しいコミュニケーションの中で私は何度も絶頂に達しました。最後に佐藤さんは膣の中で射精するのではなく、紳士の礼儀として顔にかけてくれました。私は佐藤さんの優しさに包まれていました。疲弊しきったふたりは荒々しい息遣いでしばらく床に横たわっていました。お互い全力を出し合って快楽を貪ったのです。
その後、私たちはあまり会話をしませんでした。佐藤さんは私を地下室に連れて行くと、停電中で真っ暗な中に放置しました。鍵がかかる音が聞こえました。激しく愛し合ったふたりに何が起こったのか、理解が追いつきませんでした。佐藤さんはその日顔を見せませんでした。
何時間経ったでしょうか、次に佐藤さんが顔を見せたとき、外は明るくなっていました。食事として渡されたのはカロリーメイト四箱と二リットルのペットボトルでした。
「佐藤さん」
「炊き出しに行ってくる」
そういって佐藤さんは地下室に鍵をかけて出て行ってしまいました。まだ電気は復旧していないので地下室は真っ暗です。カロリーメイトの箱を手探りで開けて、袋を切って、もさもさと食べ、二リットルのペットボトルに直に口をつけて飲みます。食欲はあまりありませんでした。
私はまた監禁されていると理解しました。佐藤さんは「行き先が決まるまでここを拠点にするといい。使っていない地下室はきみの自由にしなさい」といっていましたが、あれは私を安心させるための罠だったのでしょうか。拠点というのはそこから外へと行動し、補給や休息のために戻ってくるから拠点なのです。拠点に引きこもる場合、それを拠点とはいわないでしょう。ここから出たい、私はそう思いました。しかし地下室には鍵がかかっていて私の力では脱出は不可能です。まただ、どうして私の人生はこうなんだ、そう思って絶望しました。しかし涙は出ません。私はまた無意識のうちにこの状況に順応しようとしていました。
真っ暗闇の中でうとうとして寝てしまったでしょうか。ふと気づくと激しい打撃音が聞こえます。何かを打ち壊すような荒々しい野蛮な音です。複数の巨漢が暴動を起こしているような、そんな音が地上から響いてきます。何か声が聞こえます。さあた、ぎぃ。あん、さあ。だあぎぃ。
「サーターアンダーギー!」
私は状況を理解しました。未開人たちが私を取り戻しに来たに違いありません。とてつもない嗅覚と体力、人間の潜在能力には恐れ入ります。私は力の限り「サーターアンダーギー!」と叫びました。すると文明人が失ってしまった身体能力を今でも保有している未開人の聴覚が聞き取ったのでしょうか、彼らもまた、あの舌足らずな「さあたああんだあぎぃ!?」で応答してくれたのです。未開人たちの声が大きくなり、打撃音も大きくなります。数分間の格闘の末、未開人たちは佐藤さんの別荘に突入しました。私は「サーターアンダーギー!」と叫び続け自分の位置を知らせます。未開人たちは地下室への扉を見つけると石斧で破壊にかかりました。それはあっという間の出来事でした。すぐに扉は打ち壊され、光が差しました。すぐさま二十代と思われる三人の屈強な未開人が顔を出しました。彼らは部族の中でエリート戦士なのでしょう。着ている毛皮も一等のものです。
「サーターアンダーギー!」
戦士たちは私の前でひざまずき、祈りを捧げました。私は彼らをひとりひとり抱きしめました。
佐藤さんの別荘を出た私たち四人は人目につかない場所を選んで移動しました。佐藤さんがいっていたように私は警察に出向いて事情を説明し保護を求めることもできません。文明人のすべてが敵に見えました。
逃走の中で私はスマートフォンを拾いました。ブラウザを起動してみると「はてな匿名ダイアリー 名前を隠して楽しく日記。」とあります。これしかないと私は思いました。三人の未開の戦士たちに見張りを頼み、私は今この文章を書いています。私は誰かにこの事実を知ってほしいと思いました。日本では野蛮な人体実験が行われていて、美少女たちが日々絶頂エネルギーを抜き取られているということ。その結社には国会議員などが関わっているということ。朝鮮半島を消し去るほどの破壊兵器を製造しているということ。
味方はあまりにも少なく、敵は権力も数も備えています。私に勝ち目がないことはわかっています。しかしどこかの誰かにこの話が伝わってほしい、そして頭の片隅で覚えておいてほしいと願います。日本の平和な未来のために犠牲になっている美少女たちがいるということを。
義務教育、例えば中学校の体育祭では「興味がない」生徒も参加が義務付けられていた。義務教育の外を出ると、私たちは参加拒否などの「選択肢」を得て、興味のないことに必然的に巻き込まれるという経験を失っていく。
今回のオリンピックのサマータイム導入に関しては、オリンピックに興味がないといっている人たちも必然的に巻き込まれてしまう。彼彼女らにはサマータイムに適応しないという選択肢が与えられない。
これまで選択肢を選んできた人間にとって、これは只事ではない。
さらにいうならば、そもそもアメリカでの放送時刻を気にして開催国の日本時間に合わせられないようにしなければならないだなんてそんなの本末転倒だし開催国があまりにも軽んじられている。皆が文句を言うべきはそこではないのか?
あと、スポーツのルールを変えること。室外競技だから〜とかやかましい。これから先の気象条件に合わせて臨機応変に対応すればいいだろ。それができなければこの先どのスポーツも衰退するよ。人間を壊すな。ばかじゃねえの。やめちまえそんなの。
その青年は特に際立った特徴もなく、かといって不真面目と呼べるような人間ではなかった。ようするに平凡な人物なのだ。ある日、青年がいつものように会社への道を歩いていると、突然、青年の心に語りかける声が響いた。
「あなたは惜しいことをしている。あなたには時間をさかのぼる能力が生まれつき備わっているのだ。こんな素晴らしい能力を埋もれさせていたのでは実にもったいない」
「そんなにいうのでしたらどうです、ひとつ証拠でも見せてもらえないだろうか」
「いいでしょう」
そんな声がして、視界は一変して青年の部屋の天井へと移った。青年はベッドに横になっていた。
「これはどういうことだ」
青年は首を傾げた。確かいま会社への道にいたのだ。どうして自分の部屋に戻ってきたのか。これは夢なのだろうか。そう考えるのが一番自然だろう。青年は確かにベッドの中で横になっているのだ。
しかし、青年はテレビをつけて驚いた。なんと今日ではないか。青年はいつも出勤前にニュースを見る習慣がある。キャスターがあいさつをして、今日が何月何日なのかを告げる。すると不思議なことにほんの一時間前にみたものと内容がぴったり一致する。新聞の朝刊をみても確かに同じ日付…正夢になったとはいいがたかった。
「どうしてしまったんだ」
しかしそんな青年の問いかけに答えてくれる人物などどこにもいない。答えられるのは…
「どうです…?」
青年の心にまたもや声が響いた。
「これは信じるしかないようだな」
「分かっていただけましたか」
「ご安心下さい、その能力は初めからあなたに備わっているのです。戻りたい時間のことを強く念じていただければそれだけでよいのです。ちなみに先程やったのはあなたの潜在意識に呼びかけて…」
「そうなんですか」
「ただし、注意していただかないとならない点が一つあります。それは残り一度きりしか使えないということです。それではよく時を考えて…」
そこまで言うと、声は響かなくなった…
「これは素晴らしい能力に目覚めたぞ」
青年は胸をワクワクさせ、この能力をどう使ったものだろうかと考えはじめた。
それからも、青年は色々とこの能力の使い道を考えていた。そして考え付いた結果が、出来るだけたくさんの知識を持ち、もう一度過ぎ去った時をやり直すというものだった。はじめから何が起こるかを予め知っていれば、どうしたものかと考えられる。これから先、いつそんな事件があるか分からないのだ。そのような点に注意深くならなければ…
青年はそんなわけで何事にも注意深く、積極的に、熱心に取り組むようになった。すべて未来のためにと思っての行動だが、青年のまわりの人間はその変貌ぶりにただ驚くばかりだった。あれほど平凡でパッとしなかった人間が、様々なことに情熱を注ぎ、そして意欲を持ち、いきいきと取り組んでいるのだ。友の中には、どうしたらそんなふうになれるのかと問いかけるものもあった。そんなとき青年は決まってこういうのだ。
「素晴らしい未来のためだよ」
もちろんこの言葉の意味するところはもっと別のところにあるのだが、その言葉に感動し自分も目標を持って生きようと意気込むものもあった。
しかし、やはりそんな目先だけの目標ではいつまでも長続きするはずもなく、途中で音を上げてしまうものがほとんどだった。
そんな生活を続けて数年たったある時、青年は重大なことに気がついた。それまでは知識を書き込みという作業によって蓄えられたと考えていた。しかし、良く考えてみると過去に戻れるのは自分の記憶だけなのだ。つまり、こんな紙っ切れに書き込んだところでどうしようもない。
そんなわけで、さらに青年の熱心さは増していった。記憶法を学び、なるべくたくさんの知識を記憶に詰め込むことに努めるようになった。多方面のことに手を出し始め、ついには新聞社に転職した。そのほうが情報が入りやすいと考えたのだ。そして着々と成果を上げていった。
いまや青年は新聞社の社長にまでなっていた。青年としてはそんなつもりはなかったのだが、その熱心さやら積極性やら努力やら、他色々と認められ、驚くほどのスピード出世劇をやってのけた。世の中からも注目を浴び、いまやテレビにも度々登場する有名人となった。多くの業界の知識人とも知り合いになれた。そうなると、入ってくる情報量もますます増え、青年にとっては嬉しい限りだった。
能力に目覚めてから色々なことがあった。いまではそれを全て覚えている。これだけの知識があればそろそろ…とも思いもしたが、いざ能力を使おうとすると、もう少し待ってから使ったほうが賢明というものだと考えてしまい、知識は溜まる一方だった。
もちろん青年もその間人並みに恋をし、そして結婚にまでこぎつけた。社会的地位は高いのだ。自分から求めずとも自然と相手は寄ってくる。その中で互いに心惹かれる相手に出会い、そして結婚した。青年はやり直したその時も、この人とまた結婚したいと考えていた。子供も二人産まれ、まさに幸せの絶頂といえるであろう状態になれた。
気がつけばもう50代後半になっていた。青年はもう青年とは呼べなかった。青年は夕日が差し込む社長室の椅子に一人で腰掛けていた。
どっと疲れた感覚、体内の節々が老朽を訴えていた。世間一般からみればまさに恵まれた人生だっただろう。幸せな家庭を築き、社会的には高い地位に就いている。子供らもスクスクと成長していく。
しかし待てよ、いま思えばそんな事をする意味はあるのだろうか。そんな事をすれば、確かに今より遥かに多くの金や地位を手にすることだって出来るであろう。
しかし妻はどうなる?会社は?子供は?この世界はどうなる?青年はふとそんなことを考えて始めていた。こんな寂しい事は今までなかった。今までやってきたことを全て捨て、全く新しい世界で果たしてうまくやっていけるだろうか。そんな気力が果たして残っているのだろうか。
突然秘書が部屋に入ってくる。そしてこう言った。
「社長の奥様とお子様二人がたった今、交通事故に遭われまして…重症で三人とも助かる見込みは…」
いよいよ決断に迫られたようだった。しかし青年の心は既に決まっていた。青年はほんの数時間前に戻り、買い物に出かけようとする妻と子供らを止めた。もちろん事故も起こらずに済んだ。妻と子供らは不満の声を漏らしたが、青年はただ優しい微笑みを浮かべるばかりで何も言わなかった。妻はこんな微笑み方をする夫を見るのは初めてだと思った。
その一年後、青年は長年の疲労などが祟り、病に伏しそして逝った。
これで良かったのだ。人生なんて一度きりで十分だ。この世界を離れるなんてこれ以上の哀しみはない。最期に青年はこういい残した。
「素晴らしい未来のために…」