はてなキーワード: 防衛庁とは
「東京24区」というゲームで、あらすじをみると「政界BL」とあり、何やら敷居が高そうで一瞬指が止まってしまった。同名のアニメがあるが、それとは無関係なので気をつけてほしい。
友人から勧められたのと、年末年始にSwitchのDLソフトの半額セールをやってたのとで買った。BLは、商業本を年に1〜2冊読む程度で、よく分かってなかったのでテーマの敷居の高さ以外は全く吟味せず購入できた。しかし、主人公総受けというのに少し抵抗があり、購入してから一週間くらい寝かしてしまっていた。でかいイベント終わってやっと完全にフリーなオフ日に、軽い気持ちでなんとなくプレイし始めたらそれがとんでもない沼だった。AM2:00から翌日のAM5:00くらいまでほぼノンストップでプレイしてしまった。もちろん寝不足。
翌日、PC版(R18指定)を買うに至る。BLゲーム自体ほぼ初めてで、BLのドラマCDとかも聞けない質であるにもかかわらず、ストーリーが気になりすぎて気づいたら購入していた。この時点ではまだSwitch版の真エンドにたどり着いていなかったので、ストーリーの面白さは相当だと思う。
与党衆議院議員最年少の若手政治家、其扇晟尋(そのぎ あきひろ)は京都から選出され政界に参戦した。そのルックスと若さにより、マスコミや国民たちからアイドル政治家のような扱いを受けていることに憤慨を感じる日々を送っていた。
渋谷で起こったテロ事件をきっかけに、テロ対策本部が立ち上げられる。あるルートでは臨時の大臣に大抜擢され、公安のSPである我妻タイガ(あがつま たいが)とともに事件解決に奔走する。其扇の後援会とIAFのスポンサーをつとめる大企業、東郷グループの次期社長であり、テロの被害者である東郷遊馬(とうごう あすま)に寄り添い、協力しながらテロ対策として被害者を守るための法案を作る。テロ対策本部に参加することになった東京都の都知事である白洲武彌(しらす たけみ)とともに過去に起こった自衛官自殺事件の真相を暴く。そして、幼馴染で自身の有能な秘書である蓼丸一貴(たでまる かずき)とともにSP、都知事、IAFスポンサーの社長らを巻き込んで、テロ事件の真相に迫る。
まず、主人公である其扇はメンタルが強くて、優しくて、芯がしっかりあってすぐに好きになれたのが大きかった。気に留めるにはあまりに悪意でしかない国民のコメントとか、保身が大事で老害に成り下がってしまってる政治家たちとか、切り捨てるものはスッパリ切り捨てて切り替えられるポテンシャルをもつ其扇のことを普通に好きになった。こういうシミュレーションゲームって、流されてる感というか八方美人やってる感がどうしても拭えなくて苦手になりがちなのだが、今回そういう違和感を持たずにプレイできた気がする。
全ルートプレイした感想としては、劇場版相棒を見終わった後の爽快感とか達成感とよく似た感情でいっぱいだった。しかも、BLである必要があったかと言われると、必要がめちゃくちゃあった。これがすごいと思う。今まで私が読んできた商業誌のBLなどでは、萌えよりストーリーを重視した作品になると、BL要素はストーリーの要にならないものが多いように思っていたからだ。それでいて、刑事ドラマとか、サスペンスとか、推理小説が大好きな私にクリティカルヒットした。というか、それくらい刑事モノとかにどっぷりの私がしっかり楽しいと思える、厚みのある作り込まれたストーリーだった。
私はまず2〜3個自分で選択肢を選んで、その選択肢がどのルートに行くのか知った上でBAD ENDから回収していく傾向がある。各キャラに2つのGOOD ENDが用意されており、それに分岐していくつかBAD ENDがあった。以下はがっつりネタバレを含む。
◇◇
今回、最初になぞるルートとして私に選ばれたのは、我妻タイガという公安のSPだった。
まず、在日フラーシア人の経営する違法なゲイバーに潜入捜査させられることになったタイガに協力し、無国籍児問題と向き合うストーリー。正直ここがゲイバーである意味があるかと言われればそこまでなのだが、現実でもフィリピンパブとかって繁華街と二丁目の境目あたりにあるイメージがあるので無視する。タイガの持つバックグラウンドと外見をハニートラップとして利用するという面でもゲイバーである必要があったのだろう。上からの命令を淡々とこなすだけのタイガに対し、タイガへの不当な命令に怒る其扇。腐った公安の上層部に、タイガとタイガの上司である宮丘、そして国会議員である其扇の3人で立ち向かいつつ、無国籍児問題に切り込んでいく。その過程で、タイガのことを大切に想っていく描写が良かった。最後に事件解決後の休日をタイガの家で過ごすのだが、PCの版ではここにベッドシーンが追加されていた。あと、このルートのBAD ENDの蓼丸のメンヘラっぷりにちょっと引いたが、これが序の口だったと知るのはもっと後の話。
もう一つはテロ対策大臣としての任務を全うしながらテロ事件の犯人像に迫るストーリー。一見Dom/Subっぽいのに、其扇がDom(受)でタイガがSub(攻)っていう構図が良かった。Dom/Sub萌えが一切ない私でも「ふぅん、いいじゃん」となるくらい良かった。タイガが其扇の議員寮まで其扇を送り届けるときに其扇への忠誠を誓うシーンがあり、PC版ではここにベッドシーン(ベッドではない)が追加されていた。
◇◇
次に選んだのは、冒頭の共通ストーリー部分に出てきて気になっていた白洲都知事のルート。タイガルートで十分面白いと思っていたが、ここからが本当の沼のはじまりだった。
白洲武彌は元防衛庁の官僚だったが、ある自衛官の自殺事件をきっかけに政界に身を投じた。そもそもの土台や手腕も全く違うというのに、共に若いというだけでことあるごとに其扇と比較されることに嫌気が差していた。なので最初からかなり好戦的な態度を取ってくる。が、一緒に仕事をするにつれ其扇のことを認めざるを得なくなる。頭脳戦が多いのがこのルートで、最初こそ討論で頭脳戦を展開する2人なのだが、徐々にバディのように悪い笑みを浮かべながら生き生きと共闘する2人を見ることができる。
まず、白洲都知事と一緒に自衛官の自殺事件の真相を追うストーリー。SNSで募集した情報の中から気になる情報を見つけ、故人のプライベートなことだからとオフレコで白洲に共有したいと申し出る。オフレコということで白洲の自宅に招かれたところで、白洲に騙されて無理やりキスされ、それをすっぱ抜かれ白洲との熱愛報道を流される羽目になりキレ散らかす其扇(と蓼丸)。実証実験とのことで、同性愛というだけで批判的な見方をされることはないのではないか、と発言した其扇を試したのだろうと思い至る。そこからはダブルブレインとして自殺事件を追いつつ、途中折れそうになる白洲(と音坂)の背中を押しまくって救い上げる其扇の頼もしさがよかった。自殺した自衛官と白洲が恋人同士だったと勘違いした其扇が他のルートに比べて早めに恋心を自覚して抑え込もうとする描写もよかった。事件解決後被害者の家族に報告した帰りに傘に隠れながらキスをして恋人関係になり、白洲の自宅へ行ってなし崩しに。後日、ばっちりキスの瞬間をすっぱ抜かれ、白洲にまたあなたの仕業か、と抗議の電話をしたところ、会見中だった白洲にそのままマスコミに向かって交際宣言されてしまう、というのも白洲と其扇の明るくて強い関係性現れる締め方ですごく良かった。
もう一つは、白洲との協力を諦め、というか歩み寄ったのを一方的に跳ね除けられたために万策尽き、会議を入れまくることで、ただでさえ多忙な白洲をもっと忙しくしてオーバーフロー起こさせて潰そう、というストーリー。最初はあの白洲をいじめられるという高揚感から其扇の案に乗ってきた議員たちだったが、どの議員も自分が白洲と対峙できるほどの手腕を持ち合わせていないために保身に逃げるようになる。資料作成や会議の調整を全部押し付けられることになった其扇は、やがて疲弊していく。もう少しで折れてしまうというところで、都庁の長いエレベータに乗り合わせてきた白洲都知事が其扇を引っ張り上げてくれるのが、もう一方のストーリーと対照的ですごくよかった。擦り切れていく其扇に比べ、多忙ながらも都庁のスタッフを鍛え上げてメキメキ力をつけていく白洲がめちゃくちゃ頼もしくてかっこよかった。使い物にならなくなった其扇のことなんか簡単に切り捨てると思っていたのに、その埋もれかけていた有能さをしっかり見極めているために、其扇がほしいと言い切れる一途さ。
ここで離党の意志を蓼丸じゃなく晴山に相談しに行ってしまうと、其扇は民自党と、それに拘っていた蓼丸に諦めをつける。そして、エレベータ内で交わした取り引きを行うため、独断で白洲に抱かれに都内のホテルへ行く。GPSと盗聴器を兼ね備えたアプリで白洲との行為を盗み聞きしていた蓼丸は完全に病んでしまう。Switch版ではこの盗聴データを元に、PC版では薬を盛ってハメ撮りしたデータを元に其扇を強請って、其扇が政治家としての志を折って未来を諦めるBAD ENDになる。
一方で、離党の相談を蓼丸にすると、蓼丸は其扇の選択を尊重して一緒についてきてくれることになる。このストーリーが全部のストーリーの中で一番熱くて好きだ。気持ちの踏ん切りをつけた其扇は白洲に連絡を取る。一度白洲にマウントを取らせることで、自分のプライベートを白洲にさらけ出すことで、白洲と一蓮托生の道を歩むことになるという白洲の意見に戸惑いつつも乗る。PC版だとねちっこいマウンティングの描写がある。其扇もやられっぱなしじゃないので、2人の応酬が見れて楽しい。余談だが、エグゼクティブスイートと書かれたCGがどっからどう見てもラブホの絵なのは頑張ってスルーしたい。
4年後の衆議院選で2人は新党を立ち上げ、34席もの議席を確保するという快進撃に。さらに、与党である民自党との連立政権に持ち込む。初登院のインタビューのスチルでは、白洲に影響を受けたとしか思えない其扇の服装を見ることができる。ここで聞けるBGM「好敵手」が本当にかっこよくて、2人の強い決意、ゆるがない闘志が曲から溢れ出ていてめちゃくちゃ好きだ。2人が前を向くとき、この曲が2人の背中を押し、未来を照らしてくれるようだった。
若い世代を政治に引き込もうとするこの2人の強い意志とカリスマ性、まっすぐで眩しくてすごくいい。現実もこうであってほしい。もしかしたらこいつらみたいな闘志を持った政治家もいるのかもしれないと、本当に少しだけ、淡い期待を持てる気がした。私も変わるぞ、お前らのおかげで。
あと、白洲の声優さんの演技、笑い方とか小馬鹿にする感じが本当に自然で素っぽくてすごくよかった。
◇◇
次に、友人が一番好きだと言っていた東郷遊馬のルートへ。冒頭では、初顔合わせの勉強会で其扇に突っかかってきたり、テロの被害者となった遊馬とその父親を見舞いに来た其扇に激昂したりと結構精神が不安定なのかなという印象を受けた。攻略対象の中で一番可哀想で、どうにかして救ってやりたいと思ったと友人は言っていた。
東郷グループは地盤が京都の老舗旅館で、其扇の支援者のうちのひとつ。遊馬はその視野の広さと柔軟性から、年の離れた長兄と次兄を差し置いて次期社長に抜擢されていた。渋谷のスクランブル交差点で起こった無差別テロを目の前で体験した被害者である。東郷グループの社長だった父親は、遊馬を庇って大重体となり、ずっと意識が戻らない。
まず、BAD ENDしかないルートに行ってしまった。渋谷テロ事件の犯人のDNA鑑定の結果を精査せずにマスコミに発表したらBADまっしぐらに。事件がフラッシュバックして夜眠ることができず、意識が戻らない父親の言葉が幻聴として聞こえるようになる。国際関係が悪化する中、遊馬が提案したイベントは政府にとっても魅力的で、政府協力のもと精神が安定しないまま遊馬はイベントを成功させようと張り切る。ルートの分岐はイベント中に父親の危篤を知らるか知らせないかで、どちらの場合も死に際に立ち会えないが、知らせた場合遊馬は完全に壊れる。知らせなかった場合は其扇を恨むようになり、父親の葬儀の朝、刺殺され遊馬は自分の喉元を掻き切って心中する。個人的にこの心中エンドは結構好きだった。死後の描写が一切ないため、葬儀に現れない其扇と遊馬を心配した兄たちと蓼丸が駆けつけて見た地獄はどんなだろう、と想像してわくわくしてしまった。
もう一つはDNA鑑定の結果を慎重に扱い、かつ政府発表の前に遊馬に外国人労働者について尋ねるため、遊馬と其扇と蓼丸の3人で東郷家御用達の料亭で食事を行ったことをきっかけに、東郷グループと協力して国際問題と東郷家の問題に立ち向かっていくストーリー。食事会での遊馬は勉強会や病院で見た攻撃的な遊馬とは違い、其扇たちへの細部に行きわたる気遣い、会社を背負う者としての責任感と広い視野を見せつける。登場人物の中で、遊馬だけがゲイと設定されており、其扇と共に兄弟や社会からの期待に押しつぶされそうになる弱さや、事件によるショック症状に立ち向かう。ここで、ゲイであることを隠してくれ、という選択肢を選ぶと、其扇は遊馬の性欲処理機と成り果てるBAD ENDになる。これもPC版だとガッツリ抱かれるシーンがあり、遊馬に抱きつつあった其扇の恋心は完全にぶっ壊され、遊馬の性欲処理のために身体を開発され遊馬好みに作り替えられていた。全ルートの中で一番淫乱な其扇だと思う。Switch版の舌の裏のピアスと、PC版のぶちまけられた精液が同じ扱いなのがただひたすらにすごい。
GOOD ENDのほうは遊馬に口説かれるにつれ恋心を順調に育て、遊馬の手腕もゲイであることも家族に認められた報告を受け、其扇は法案を通すための手伝いをして欲しいと嫌われる覚悟で遊馬に告げる。其扇からの依頼を受けるのと、抱かれるのとを交換条件にすることで、最後まで其扇の逃げ道を作ってくれる遊馬の優しさに其扇は陥落。このルートだけはSwitch版よりPC版のほうがいいと思う。其扇を抱く時の気遣いというか、遊馬のいいところ、魅力が濃縮されているからだ。2回戦目を其扇がベッドへ誘うというのもよかった。
◇◇
蓼丸ルートはほか3人を攻略してからでないと解放されない。事件の真相がすべてここにあるからだ。
テロ対策大臣として渋谷で演説を行う際、蓼丸が其扇の盾になり撃たれてしまう。一命をとりとめた蓼丸の入院中、蓼丸が裏金を作っていたことが発覚する。退院した蓼丸を見舞いに蓼丸の自宅に向かい、裏金の話をすると蓼丸は其扇の首を絞める。ここでやめてくれ、と言うとそのまま殺されるBAD ENDに終わる。このBAD END、蓼丸の本当の狂気が垣間見えてめちゃくちゃ恐ろしかった。手を離すよう言うと、メインストーリーが進む。事件の真相については端折るが、事件解決を三条総理と大延(勘当されているが蓼丸の実父)から任された其扇は、白洲都知事、遊馬の力を借りながらタイガと蓼丸と共に事件を解決に導く。Switch版では、三条総理と大延の絆を見た其扇と蓼丸は今後の未来に重要な選択を迫られることになる。個人的には登場人物たちの未来を自由に思い描けるPC版Switch版共通のエンディングが好きだった。
◇◇
ストーリーが本当に良く出来ていて面白かった。私なら、タイトルやキービジュアルを見ても「政界BL」という言葉に敷居の高さを感じて躊躇していたと思う。面白かったと勧めてもらって、半信半疑でプレイした結果これだけのめり込むことが出来て、この作品と出会えて本当に良かったと思えた。友人に感謝しかない。
鈴木は陣営外の人にも話が通じる右翼として有名だったが、実は朝まで生テレビの成立に大きな関りがある。鈴木が居なければあの番組は無かったんである。
また風桶式に鈴木が居ねばネットの団塊叩きも無かったんである。ちょっと説明しようと思う。
鈴木の親は民族主義新興宗教の「生長の家」の熱心な信者だった。その為大学時代は六本木にあった生長の家道場の寮に住み込みんで大学に通うと共に国粋宗教活動と学生運動に身を投じ、全共闘の左翼学生と殴りあいをしていた。最近話題の宗教二世だったのだな。
この道場は乃木坂の緑の中にあった。https://goo.gl/maps/tv9eakNek34ZLQXU6
今では生長の家の3代目がエコロジー志向になったので建物も塀も取り払われて開放的な森として一般にも開放されているが、一昔前は周囲の階段が「おばけ階段」と呼ばれるほど鬱蒼とした場所だった。
日本会議の中核メンバーも多くここに入寮しており実はこの寮は戦後の右翼運動の胎盤みたいな場所なんである。安倍政権で日本会議が急接近した事で政治にも影響を与えた。米議会は安倍政権と日本会議の関係を問題視していたのでこの寮の輩出者も分析把握されているかも知れない。
この敷地内には日本教文社という出版社もあってこれは生長の家の教祖谷口雅春の著書を出版して思想と教義を広める為に設立された出版社だ。しかしフロイトの『精神分析入門』や『夢判断』、ユングの選集などをいち早く出版するなど、実は学術分野でも存在感を示してきた社でもあった。
余談だが防衛庁(当時)の庁舎は2000年まで六本木にあり(現ミッドタウン)、更に60年代まで門が開いていたので近所の人は庁舎内の売店で買い物をしていたそうである。六本木、赤坂の物価より安い上に生長の家道場と防衛庁庁舎は目と鼻の先だったので鈴木も利用して安いパンツ等の購入に重宝していた。
ところがある日、左翼学生による防衛庁突入事件があり、それ以来門は閉められ部外者が売店を使用することは出来なくなった。
六本木交差点の先や青山まで行ってハイソ価格のパンツを買うしかなくなってしまった為に怒り沸騰、全共闘と衝突した際には「お前らのせいでパンツが安く買えなくなっただろ!」と叫んで相手を殴っていたとの事である。相手も何を言われているのか不明だったろう、と鈴木は述懐していた。まー、面白おかしく話を盛ったんだろうけど。
1970年に三島由紀夫の市谷駐屯地東部方面総監部占拠と割腹自殺事件が起きて世間を揺るがしたが、三島の介錯、つまり斬首をしたのが森田必勝。森田もまた割腹し介錯された。この森田必勝は鈴木の後輩で、思想的に鈴木の影響を強く受けていたという。
この為に鈴木は強く動揺、やがて右翼として生きる事を決意する事になる。やがて勤めていたサンケイ新聞も退職してしまう。(デモでの狼藉で解雇されたとの話)
鈴木はこの事をずっと気にしていて十字架を背負っているかの如くだったが、2000年頃になると「森田氏」と敬称を付けて呼ぶようになった。十字架を下したのかもしれない。
余談だが、小泉政権時代に男性か女性か判らんと評判になった井脇ノブ子という政治家が居たが、彼女は学生時代、右翼学生運動のマドンナで、ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』の様に数万の男塾みたいな学生の先頭に立ち、当時新右翼学生運動のプリンス的立場だった森田との交際の噂もあったとの事である。
1977年google:image:『おまえらがかわいいけんなぐるんや!』は井脇31歳の時の刊行だが表紙写真の井脇は暴力教師だかダチョウ倶楽部上島だか素人には見分けがつかない。
鈴木らは「新右翼」であり、これは全共闘などが含まれる新左翼に対抗する為に生まれ、政治権力に癒着した旧右翼らと違う軸を志向した。そもそも対抗する相手の新左翼自体が、日本共産党が暴力路線を放棄する事に反発して生まれたもので、要するに暴力vs.暴力。
最初から硬派なバンカラと軍国路線で、彼らが卒業して政治結社を結成するようになると国防色(カーキ)の街宣車を使うようになった。これが80年頃になると威圧感を与える黒塗り街宣車と旭日旗、日章旗、軍歌を流すというスタイルが定着した。
鈴木が代表を務める一水会も黒塗り街宣車で軍歌を流して通行人を威圧して居たが、やがて鈴木はこのスタイルは良くないと考え出す。こんなスタイルでは話を聞いてくれる人が居ない。
という事で今の機動隊バスのような爽やかなブルーに塗り直して大音量の軍歌も怒鳴り声も止めた。これは今で言うとテニスサークルヤクザとか好青年暴走族みたいな強烈なミスマッチである。(考えれば機動隊バスが国防色止めたのも同じ動機だ)
すると傍目には社会党などの街宣車に見えるから、すれ違う右翼街宣車に怒鳴られる事もあったそうである。「あー、てめえらふざけんじゃねえぞおいゴラ!」「あ、一水会さんでしたかどうもすいませんでした」って事が度々あったそうだ。
ただ、話を聞いて貰えないスタイルが流行したのは大人の事情もある。威圧感があって相手が震えあがるというのは、例えば企業相手の抗議に行くときは相手が折れてやり易い訳だ。
更に活動費というのは支持者の寄付と機関紙の購買費で稼ぐのだが、相手が折れた先に機関紙の購買も持ち掛ければ受諾されやすい。そこで心付けを渡してくる相手もいる。
するとシノギの手段としてヤクザが参入してくるようになる。民事介入暴力だ。ヤクザは元々旧右翼と不可分だったが、それが新右翼のスタイルを模倣して参入するわけ。威圧感を高める為に街宣車もカーキや灰色じゃなくて黒塗りの方がいいし、車格も小さいライトバン等より大型のワゴンやバスの方がいい。こういうのを警察用語で右翼標榜暴力団という。当時沢山いたヤクザが参入する事で「業界」のパイも大きくなった。
鈴木はこういう威圧じゃなくて議論や対話を好むスタイルだったので、敵のはずの新左翼側とも交流があり、新左翼出版社から自書を出版して居たりもした。それで「一般人の方も向いている面白右翼」という評判が高くなっていた。
そこで1985か86年に全共闘上がりの活動家と鈴木含む新右翼の大討論会というのを開催する事になった。司会はあの田原総一朗である。
この当時は全共闘とか学生運動というのは完全に過去のものになっていて嫌悪さえされていた。流行っていた思想はポストモダンで、モダンの内容も踏まえずに言葉の戯れを繰り出すのが流行していた。これは凄惨な内ゲバを繰り返して自滅したのに青臭い異議申し立てさえすればよいという立場で「議論」の場に居座っていた学生運動的なものに参加したくない、そうではないものが新しい価値ある態度なんだという、以前の政治的なものへの強い忌避、反感がベースにあった。あの田中康夫も事あるごとに全共闘残滓の異議申し立て的態度や代ゼミ講師的ノリをコキ下していた(湾岸戦争で日本が参戦を求められた事に衝撃を受け転向)。
そんな時代背景では政治議論なんてものはカビが生えた扱いで部外者には面白い訳がない。
そう思われていたのに、いざ討論会をやってみたら部外者にもかなりウケがいい。やってる方も面白い。
それでこれはいけるぞと踏んだ田原総一朗がテレ朝に持ち込んだ企画が朝生だったんである。
当時、エロ一本鎗だった深夜放送枠でフジTVが色々実験的な番組を放送し始め、その深夜枠のいい加減さも相俟って好事家的視聴者層にウケていた。そこにCNNの放送権をゲットして社会路線で行きたかったテレ朝が乗ったのだろう。
こういう経緯だから最初の頃の朝生は体制派vs.反体制派orリベラルという構図が鮮明だ。田原は最近「朝生は最早保守だ左翼だという時代ではないというのが朝生を始めた動機だ」みたいな事あちこちで言ってるんだが、この経緯を見ればこれが嘘って事は判るだろう。ボケちゃってるんじゃないの?討論なんてウケない時代に「激突全共闘と新右翼」討論会の成功で行けると踏んだのが朝生なのだから。
そしてこの討論会は鈴木の左右を超えた交流と議論好きの人格が無ければあり得ず、田原も来なかった筈なのだから、鈴木の存在が朝生を産んだと言って差し支えないんである。
こういう風に鈴木の活動と波及した社会現象は停滞して煙たがられていた政治議論を活性化した。すると全共闘上がりの人士らは元気になって「異議申し立てが必要だ」「もう一度騒いでもいいだろ」と言うようになった。これらを受けて刊行されたのが1994年の『全共闘白書』である。
この動きに対し、同世代の松原隆一郎が文藝春秋社の雑誌『諸君!』で批判を加える。更にこれを受けて諸君!誌では「うるさいばかりで無責任 上と下からぶっ叩け全共闘世代」という特集を組んで、その名の通りに上の世代と若手の執筆者が全共闘叩きをする記事を寄せた。
つまりはこれがネットで長年繰り返された団塊批判の始まりなのだ。この全共闘的振舞いへの批判から団塊Jr.世代(増田もそう)の日本を支配するオヤジ世代へのルサンチマンと甘えが被さり、「団塊世代」全体を叩くという風にスライドしてきたのである。そこでは例えばいい年になっても漫画を読んでるというスタイルを確立したのが団塊だ(劇画市場の成立)とか子供部屋が個室とか結婚は好きな相手とすれば良いしなくても良いという常識とか若者向け流行歌の市場とか個人のプライバシーとか時給制アルバイトとかが団塊世代がわがままをしたせいで出来たって事にも向き合わないで済んだ。
些か「風が吹けば桶屋が儲かる」的だが、鈴木の活動が無かったら全共闘上がりが活性化して『全共闘白書』が刊行されることも、それに対して下の世代が反発する事も無かったのである。そしてそれがネット民の甘えを吸収して団塊叩きに変化する事になったのだ。
最後に現在も統一教会との関係で取り沙汰される朝日新聞襲撃殺人事件の赤報隊に関して。
1990年代に新右翼を名乗る男の脅迫で柳美里のサイン会が中止されるという事件が起きた。鈴木はSPA!誌に連載を持っていてそれを批判したところその男が抗議してきた。その中で男が赤報隊の名を語った為、鈴木は「赤報隊とは面識がある、名前を騙ったお前を赤報隊は必ず殺すだろう」と伝え、懺悔の言葉を引き出す事に成功し、それを連載記事に書いた。
すると、直ぐに警察が何らかの容疑で令状を取り事務所を捜索して書類の類を皆押収してしまったのである。赤報隊の情報を得る為の別件事件だ。これに鈴木は怒って赤報隊の情報は二度と官憲に提供しないと書いてそれきりになってしまった。
結局赤報隊と鈴木の面識が脅迫犯へのブラフだったのか真実だったのかは不明なんである。
ヤクザの根絶やしを目的とする暴対法が施行される事になった時、任侠右翼とも付き合いがある野村秋介に鈴木はヤクザの人権を守れデモに参加しようと強く誘われたが、鈴木は「イヤですよヤクザなんて」と気乗りがしなかったが、野村は親分肌なので断れない。仕方なしに参加したら呉智英らに「アウトローの人権とは笑止」などと言われてしまった。
はてなーのみんなが喜びそうな展開を考えてやったぞ。
・支持率低迷に苦慮していた与党はここぞとばかり手柄をアピール。今後の大怪獣襲来に備え、自衛隊の増強と憲法に緊急事態条項を盛り込むことを訴える
・本当に死んでいるのか問われた首相は自信満々に、自衛隊の強さを訴え、「大怪獣は死んでいる」と国会で答弁
・ところが、防衛庁にて、大怪獣はショックで仮死状態になっており、生体反応があることが判明する。しかし、内閣は発表すると国民が混乱する可能性があるので、夏の参議院選挙までは国民には説明しないことに
・閣議では「突然、生き返ったらどうするんだ?」という声も出たが、「富士山だって突然、爆発する可能性はあるんだから」とみんな納得
・しかし、隠ぺいに耐えられないと、ある官僚が自殺。遺書によりそのことが判明し、週刊文旬がすっぱ抜く
・首相は「我々は隠した覚えはない。防衛庁が勝手にやったこと」「確かに私は『大怪獣は死んだ』と答弁したが、『死んだ』という言葉には、仮死状態が含まれる」と答弁
・仮死状態の大怪獣にとどめを刺そうという案も出たが、それで起こしたら大変だと様子見をすることに
・で、結局大怪獣はどうなったのか…?
・実はまだ、東京駅前にいるのです
ストーリーとしては「個体発生を繰り返す、そんな必要のない臓器をつくれる」という夢のような仕組み(BOP)を九州大学理学部生物学をでた東大博士学生A(女)が、東京大学の医学部の教授Bに横取りされてからストーリーが始まる。
1年後、Aは失意のままに男児Cを生み、マタニティブルーのどん底にいるときに、統合失調症を発生してしまう。男児は、Aの両親が養うこととなる。
3年後、防衛庁が BCP の研究を始める。ただし、軍事機密なため、内容は公開はされなかった。
5年後、ついに Bの論文をテーマとした再生医療をベースに、日本はバイオ立国になるがために、東京医科歯科大学では、失われた歯にBOP を埋め込み、京都大学では医学部において心臓のBOPへの導入、名古屋大学では腎移植に BOP ベースの腎臓をつり、東北大学では目と顔の移植を、九州大学では肝臓と膵臓を、北海道大学においては肺と皮膚を、慶応義塾大は人とBCPの応用を、そして東京大学においては脳と神経担当していくことが国の予算として投入されれこととなった。
10年後、BCP は第3層治験を終え、市中の人々に新たな喜びを与えることになる。治験に参加した8割が、脳血管障害から復活し、歯科も BCP のインプラントが主流となり、Aはそのときのノーベル賞を受賞する。
15年後、BCP を移植した人たちに奇妙な動きをする者たちがでてくるようになった。ある時間になると、すうっと立ち上がり同じものを指を指して動かすようになるのだ。まるで、そこに何かがいるかのように、みんなが指差すものは動くらしく、ただ何かあるわけでなく、数分指を指し終えたら元に戻るというのを繰り返すのであった。当時は BCP 癲癇と呼ばれるようになった。
18年後、脳に BCP を埋め込んだ被験者は、痙攣でないときには IQ 160を超える秀才になるいっぽう、痙攣中は「何者かに動かされたかのよう」に施設を抜け出し、同じ BCPを埋め込まれた人たちが輪になって、空に指をさすという不思議な現象を世界各地で確認されるようになる。
20年後、BCP 移植者たちは異形の者となり、精神は崩壊し、一般人を襲うようになるが、一般人は通常兵器を持って BCP の人たちを殺すことを、ミッションとする私営組織 ABC が生まれて、ハンターとしては異形なものを倒す。
というプロットです。
→世襲3世。厚生労働大臣や運輸大臣務めたベテラン。前回は中川正春に敗れる。
・中川正春 立民
→財務大臣、文科大臣、衆議院議長を務めたベテラン。毎回共産のベテラン穀田恵二と戦い、穀田は比例復活。
・堀場さちこ 維新
→MMT論者。消費税廃止、相続税廃止、公務員増加、年金月額20万、反グローバルを主張。
・山井和則 立民
・なかじまひでき 維新
■大阪
3区、5区、16区(公明党区)、10区(辻元)、17区(馬場)以外は自民と維新の接戦
→元法務副大臣、厚生労働委員長。前回は井坂信彦に約1万票差で勝利。
・井坂信彦 立民
・一谷勇一郎 維新
・桜井周 立民
・馬淵澄夫 立民
→世襲。緊急事態宣言下でクラブに行って離党した3人組の一角。菅内閣の文科副大臣を辞任。前回は次点候補に大差で当選している。
→小泉郵政解散で平沼赳夫の刺客となる。前回は保守分裂選挙で平沼次男の正二郎に勝利。元看護協会副会長。
・森本栄民 立民
妻へのDVで警察出動、コロナ渦でダイヤモンドプリンセス号に立ち入ったの岩田健太郎と喧嘩、厚労政務官と不倫疑惑など。
・柚木道義 立民
・垣内雄一 共産
・佐藤公治 立民
→元官房長官。前回は圧勝。林芳正元文部科学相(参院山口選挙区)が鞍替えを目指しているため、保守分裂は不可避。
・坂本史子 立民
→水野真紀の夫。徳島県知事や県議会をFacebookで批判し、自民徳島県連と喧嘩し県。徳島県連は、公認権を持つ党本部に対し、後藤田氏の非公認を求めている。
→前回は小川淳也に勝利。小川は比例復活し、立民へ。映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で小川の人気上昇中。
「あべぴょん、がんばれ!ばばあ、黙れ!」、タブレットでワニの動画閲覧、デジタル改革担当大臣、「NECには死んでも発注しない」、官僚恐喝など何かと話題。
・広田一 立民
→前回は稲富修二に僅差で勝利。稲富は比例復活し、立民に所属。
百田尚樹の発言「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」に同調、夫婦別姓反対を求める文書を地方議会議長宛てに郵送、丸川珠代アジアンビューティー発言。
対抗馬の稲富修二は、モラハラで妻が子供6人連れて家出中と報じられた。
・稲富修二 立民
昨年から原田と自民党県議の栗原が出馬の意向を示し、公認を争い中。
→元金融担当大臣。前回は次点の城井崇に加えて共産党の田村貴昭も比例復活。
・城井崇 立民
→元佐賀県知事。前回は大串博志に敗れ比例復活。菅義偉内閣総務大臣政務官。あややのファン。
・大串博志 立民
国境なき医師団に参加経験がある消化器外科の専門医。元文部科学副大臣、元厚生労働委員長。
80歳。自民党比例定年73歳に反対している。
・吉川元 立民
野党一本化。
→前回は相手に比例復活を許さず勝利。先週、秘書が運転する車(車検切れ)で当て逃げ事件。武井も同乗していた。公認は不明。
・渡辺創 立民
・外山イツキ 維新
・野間健 立民
野党一本化。
・金城徹 立民
野党一本化
元増田の見立てと自分の見立ては、半分合ってて半分違う。「朝日や毎日を共通の敵にして叩く」というのは計画的なことではなくて、単に偶発的なイベントだと思う。セキュリティ関連法的にはこれで両メディアの法的責任を問うのは難しく、朝日/毎日叩きの界隈では(サンゴKYのように)長く言及されても、世間的には尻すぼみの話題になるだろう。
増田の書いてることで的を射ていると思うのは、「今後何とかワクチン接種が進む度に防衛省は称賛され」の部分だ。今回の自衛隊による大規模接種プロジェクトには、第一にこの効果を狙った政治戦略・メディア戦略という側面がある。そしてそれは、より大きな政権の目的と結びついている。
そもそもこのプロジェクトはどう始まったか。産経報道(5/17)によれば、1月下旬に「菅義偉首相の「特命」を受け、杉田和博官房副長官をトップに防衛省、厚生労働省、総務省などから集まった約10人のチームが編成された」が、その事実は外部には3ヵ月以上秘密にされていた。理由は「自治体の接種態勢が緩む懸念もあったことから計画には箝口(かんこう)令が敷かれた」からだ。そして「河野太郎ワクチン担当相とは、異なるラインで計画は進められた」。
常識的に言えば、相当めちゃくちゃなやり方だ。自治体側のラインと国側の特命チームラインがあって、それぞれが互いに情報交換せず、箝口令まで敷いて、完全に二重行政のまま進んでいた。しかも自衛隊自身が大規模接種のためのリソースを潤沢に持っているというわけではなく、医療従事者の一部とイベント運営全体はそれぞれ医療系派遣会社と旅行代理店に外注する形になっている。なんでこんな不自然なことをしたのか。
この問題はもっと大きな枠組で見る必要がある。自民党の中枢や国会議員達から見て、今年最大のイベントは何か。それは五輪開催でもないし、コロナ鎮圧でもない。衆議院選挙だ。このまま菅首相が解散を行わなければ、2021年10月21日に衆議院は任期満了となり、総選挙となる。そしてよく知られている通り、戦後に行われた25回の衆議院選挙で、任期満了による選挙は1回しかない(1976年のロッキード選挙。自民は結党後初めての過半数割れ)。支持率が上がる政策をぶち上げてから解散権を行使できるのは政権与党が持つ最大の武器で、逆に任期満了による選挙、あるいはその近くでの追い込まれ解散では与党が負ける、というジンクスが政界には根強くある。
だから自民党は何としても任期満了前に解散総選挙に挑みたい。といって、むやみに「大義なき解散」はできない。党内でも菅降ろしのマグマは燻っていて、スジを整えなければ解散の流れが(ロッキード選挙時の三木内閣のように)党内で押し止められる可能性もある。だから国民に好感されるネタをぶら下げて「国民に広く信を問う」体裁が必要になる。そして今年は、平時では難しいが、今だからこそ「国民に広く信を問う」ことが可能なテーマがある。そう、憲法改正だ。
どういう切り口でやるのか。自民党の憲法改正提案のページでは、4つの項目を「変えたい」と言っている。
このうち一番下の「家庭の経済的事情に左右されない教育環境の充実」については、大きな方向性としては反対する国民は少ないだろう。下から2番目の「参議院の合区解消」は、一種のゲリマンダリング(自党有利に選挙区を改編すること)だ。現在合区になっている「鳥取・島根」と「徳島・高知」(いずれも自民党地盤)を分割することで自民党の議席を増やせるという露骨な党利党略案件で、与党の公明党にも疑問視され、日経でも厳しい批判を受け、産経にすら叩かれるという相当ろくでもない代物だ。これはこれで厳しく批判されるべきだろうが、いま注目すべきはその上の2つのほうだ。
これは後期の安倍内閣が目指していた「自衛隊明記改憲」という奴そのまんまだ。統計の取り方で国民の賛否がかなりブレるこの案件だが、新型コロナのワクチン接種に自衛隊を担ぎ出した時点で、勝負はほぼ決まった。各自治体のワクチン接種が(主には国側のロジスティクスの問題で)遅々として進まない中、国と自衛隊が大規模接種をアレンジして、1日100万人の接種水準を達成する。計画通りに行けば、高齢者たちは国と自衛隊に大いに感謝し、国民全体に「やっぱり自衛隊を大切にしよう」という雰囲気が醸成されていくだろう。
おそらく内閣と岸信夫防衛大臣はこのゴールを見据えて、ワクチン特命チームPT以外にもさまざまな仕込みをしてきた。岸大臣が就任した去年末頃から今年5月にかけて、民放テレビ枠で自衛隊の露出が確実に増えている。防衛庁・自衛隊の全面協力による番組コーナーが、ゴールデン帯で何度も放映されている。これまでの自衛隊では情報公開を渋ったような基地構造や訓練・兵装なども惜しみなく紹介し、番組側は「初潜入」「初公開」を謳って大々的にアピールする。元旦放映の「鉄腕DASH!」、幾度となく自衛隊をフィーチャーし、岸大臣自らも出演した「沸騰ワード」。さらに今日(5/24)は「深イイ話」で護衛艦「やまぎり」トップ女性艦長の密着取材をやる。おそらくあと3ヵ月程度は、こういう防衛庁・自衛隊のメディア露出が続くだろう。
防衛省・自衛隊が機微な防衛関連情報をネタにして番組制作者を惹き付け、「選挙まで最長でもあと数ヶ月」という今のタイミングを狙って、国民と自衛隊との接触機会を高める。人間は接触回数が多い対象に親しみを感じるようになることが知られている(ザイアンス効果)。「親しみやすい自衛隊が、コロナの制圧でも頑張ってくれた」。「ワクチンを打ちに行ったおじいちゃんに、自衛隊の人が敬礼してくれた」。こういう風に感謝と感動と親近感をトリガーする建て付けさえ成立していれば、多少のアラはどうとでもなる。
新型コロナウイルス感染症の第4波拡大と変異株の急増に伴って叫ばれるようになった「私権制限」がここにつながる。「今の国や自治体の権限では効果的な営業抑制や人流抑制ができない。法的な根拠・正当性をもって、ロックダウンをはじめとする強力な感染症抑制政策を実施するには、こうした緊急時に一定の私権制限を可能にするような憲法改正が必要だ」---5月になって、そんな議論が盛んにされるようになった(たとえば、いま話題の高橋洋一もこんなことを言っている)。
私権制限論については橋下徹や吉村府知事など大阪維新筋が積極的に発信しているが(ちなみに高橋洋一も政策工房経由で大阪維新と繋がっている)、政府・与党も折に触れて「現在の政府権限では、これ以上の対策は無理」という言い方をしてきた。もちろん感染拡大は一面では政府の失策でもあるのだが、エクスキューズとして「私権制限ができないのが悪い」と言い張れば、国民の不満の矛先は、政府の失策ではなく法の不備、つまり「現憲法における強すぎる私権保護」に向かう。実際、変異株が急増して切迫感が高まるとともに、私権制限をめぐる国民感情は明らかに「NO」から「YES」に傾きつつある。
こう考えてみると「合区解消」以外の3テーマについては、過半数の国民が「YES」と考えるような情勢が整いつつある。国と自衛隊主導でのワクチン接種拡大が「自衛隊明記論」を後押しし、変異株感染の増加と医療逼迫により「私権制限導入」が現実的選択肢として受け入れられていく。平時には国民の賛同を得るのが難しい私権制限論だが、コロナ禍真っ直中の今だからこそ「アリ」なのだ。
残る課題はタイミングだ。高齢者へのワクチン接種が一巡し、パラリンピック(8/24-9/5)も終了した9月中旬頃。おそらく菅義偉首相は衆議院任期満了の1ヵ月前に「憲法改正について国民の信を問う」として衆議院解散に踏み切り、そこで大勝して、自民党改正案の上記4項目を盛り込んだ形で憲法改正の道筋をつける。第二次安倍政権が9年かけても実行できなかった憲法改正を、安倍元首相の実弟の岸信夫大臣、そして昵懇の仲である大阪維新の会をうまく使うことで達成するわけだ。
ただ、このシナリオが成立するにはいくつか条件がある。国と自衛隊による大規模接種プロジェクトが破綻なく進行し、8末までに(自民・公明の大票田である)高齢者層への接種を完了すること。オリンピック/パラリンピックを、形式はどうあれ予定通りの日程で開催すること。コロナのこれ以上の拡大を選挙時点までうまく抑制すること。このどれかが破綻すれば、選挙戦略も大幅に見直さざるを得ない。あとはお手並み拝見というところだが、コロナの推移を見るに、正直かなり暗雲が立ちこめてきた感はある。
この記事のブコメで、例によって櫻井よしこやネトウヨはデマ製造機的に避難されているけど、一概にはそう言えない。
昭和51年の防衛白書には入学拒否に関する記述があるんだけど、それをみるとよく分かる。
防衛庁では,職務上の必要から,隊員を国内の大学院等において研修させているが,受験の際その辞退を求められたり,願書が返送されたりするといった事例は,昭和39年から46年までの間に,延べ約50人に及んだ。最近は,表面上少なくなっているが,これはトラブルの予想される大学には出願を避けている等の理由によるものであり,今なお,希望の学校,科目等を自由に選べない実情にある。
また,私費で,夜間に大学等ヘ通学したり,通信教育により勉学に励んでいる隊員は,昭和50年度において約1万2,300人に達する。この場合ですら,例えば某県であった例のように,自衛官であることを理由として高校通信課程の転入学を拒否され,あるいは大学入学後自治会学生等に1年間にわたってその通学を妨害され,現地の地方法務局に人権侵犯問題として申告した事例等がある。
櫻井よしこは「すべての」自衛官が大学や大学院に入学できないことを主張したわけではないのは、文脈から明らか。自衛官というだけで入学拒否の事例が結構あることが問題っていう主張をしている。