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はてなキーワード: 岡本綺堂とは

2023-11-23

奥さん」という呼称について

相変わらずジェンダーがどうとかつまらない話が多いので、過去の用例から奥さん」あるいは配偶者呼称についていろいろ考えたいなあ。と思って書きます

勿論、女中などに似ようはないと、夢か、うつつか、朦朧と認めた顔のかたちが、どうやらこう、目さきに、やっぱりそのうつ向き加減に、ちらつく。従って、今声を出した、奥さんは誰だか知れるか。

 それに、夢中で感覚した意味は、誰か知らず、その女性(にょしょう)が、

「開けて下さい。」

 と言ったのに応じて、ただ今、とすぐに答えたのであるが、扉(ひらき)の事だろう? その外廊下に、何の沙汰も聞えないは、待て、そこではなさそう。

「ほかに開ける処と言っては、窓だが、」

 さてはまさしく魘(うな)された? この夜更けに、男が一人寝た部屋を、庭から覗き込んで、窓を開けて、と言う婦(おんな)はあるまい。(「沼婦人泉鏡花、1908(明治41年

奥さん」は、自分配偶者というより既婚女性に対する敬称として用いられています。「女中などではなく」自分夢想する上流階級を思わせる女性奥さん)が誰か分からないが、夜更けに訪ねてきた「女性(にょしょう)」は普通の「婦(おんな)」ではないだろう……という流れですが、この呼び分けは、日本語代名詞の豊かな言語世界垣間見せてくれますね。

奥さん」という語がめちゃくちゃ出てくる小説と言えば、やはり夏目漱石こころ」(1914(大正3年))でしょう。前半では「先生」の妻である静さんの呼称として、後半では先生青年期に下宿していた、静さんの母親呼称として「奥さん」が登場します。この作品は、一人称の語り手による手記の体を(前半後半とも)取っているため、固有名詞を避ける書き方をしており、その結果であると思われます

私はすぐ玄関先を去らなかった。下女の顔を見て少し躊躇してそこに立っていた。この前名刺を取り次いだ記憶のある下女は、私を待たしておいてまたうちへはいった。すると奥さんらしい人が代って出て来た。美しい奥さんであった。

奥さんらしい人」という表現から、「奥さん」が「配偶者」の意味で用いられていることが感じられます。ただ、自分配偶者を呼ぶ呼び方ではないですね。

 私の知る限り先生奥さんとは、仲のいい夫婦の一対であった。家庭の一員として暮した事のない私のことだから、深い消息は無論わからなかったけれども、座敷で私と対坐している時、先生は何かのついでに、下女を呼ばないで、奥さんを呼ぶ事があった。(奥さんの名は静(しず)といった)。先生は「おい静」といつでも襖ふすまの方を振り向いた。その呼びかたが私には優しく聞こえた。返事をして出て来る奥さんの様子もはなはだ素直であった。ときたまご馳走になって、奥さんが席へ現われる場合などには、この関係が一層明らかに二人の間に描き出されるようであった。

こころ」は新聞連載ですが、奥さんの初登場は先の連載4回目、その後奥さん先生(夫)の重要なシーンである第8回を経て、この第9回で初めて名前が登場します。この作品先生訪問してきた「私」と奥さんが共に食卓を囲むシーンなどが多くあり、この夫妻は大正当時の一般的夫婦関係よりも幾分現代に近い感じで描かれているように思います

次は、「先生」が若いころ、その奥さんの自宅に下宿をしたとき奥さん母親を「奥さん」と読んでいたというシーンの引用です。(中略があります

 それはある軍人家族、というよりもむしろ遺族、の住んでいる家でした。主人は何でも日清戦争の時か何かに死んだのだと上さんがいいました。一年ばかり前までは、市ヶ谷士官学校そばかに住んでいたのだが、厩(うまや)などがあって、邸(やしき)が広過ぎるので、そこを売り払って、ここへ引っ越して来たけれども、無人で淋しくって困るから相当の人があったら世話をしてくれと頼まれていたのだそうです。私は上さんから、その家には未亡人(びぼうじん)と一人娘と下女より外にいないのだという事を確かめました。私は閑静で至極好かろうと心の中に思いました。

(略)

 私は未亡人に会って来意を告げました。未亡人は私の身元やら学校やら専門やらについて色々質問しました。そうしてこれなら大丈夫だというところをどこかに握ったのでしょう、いつでも引っ越して来て差支えないという挨拶を即坐に与えてくれました。未亡人は正しい人でした、また判然(はっきり)した人でした。私は軍人妻君というものはみんなこんなものかと思って感服しました。感服もしたが、驚きもしました。この気性でどこが淋しいのだろうと疑いもしました。

(略)

 私は未亡人の事を常に奥さんといっていましたから、これから未亡人と呼ばずに奥さんといいます奥さんは私を静かな人、大人しい男と評しました。それから勉強家だとも褒めてくれました。けれども私の不安な眼つきや、きょときょとした様子については、何事も口へ出しませんでした。

「上さん」「未亡人」「妻君」「奥さん」は全て同じ人物を指していますが、それぞれの場所ニュアンスが異なることが分かります。それぞれ「下宿屋の女主人」「(夫を亡くした)配偶者」「配偶者尊称)」「既婚女性尊称)」くらいに捉えるのが適切でしょうか。

かみさん奥さんの用例としては、

そういうわけで、私たちは家の主婦奥さんと呼んでいました。下宿屋のおかみさん奥さんと呼ぶのは少し変ですが、前にも言う通り、まったく上品で温和な婦人で、どうもおかみさんとは呼びにくいように感じられるので、どの人もみな申合せたように奥さんと呼び、その娘を伊佐子さんと呼んでいました。家の苗字は――仮りに堀川といって置きましょう。(「白髪鬼」岡本綺堂、1923(昭和3年))

…「下宿屋のおかみさん奥さんと呼ぶのは少し変」という言語感覚から、「おかみさん」「奥さん」の使い分けがくっきりと見て取れて面白い用例ですね。この話は、発表は昭和ですが、岡本綺堂明治まれですし、物語時間10数年前(つまり震災前)という設定ですから言語感覚としては漱石の少し後、大正期の中頃を反映していると言った方が適切かもしれません(まあ、それを言うなら「こころ」の場合、おおむね時代明治期の想定と言えそうですが。)

昭和に入ると、「奥さん」が配偶者を指す呼称としてライトに用いられ始めたように思います。太宰はこういう言葉ちょっとしたニュアンスが本当に上手な作家で、次の用例の言葉の使い分けは非常に印象的です。

奥さま、もうすこしのご辛棒しんぼうですよ。」と大声で叱咤しったすることがある。

 お医者奥さんが、或るとき私に、そのわけを語って聞かせた。小学校先生の奥さまで、先生は、三年まえに肺をわるくし、このごろずんずんよくなった。お医者一所懸命で、その若い奥さまに、いまがだいじのところと、固く禁じた。奥さまは言いつけを守った。それでも、ときどき、なんだか、ふびんに伺うことがある。お医者は、その都度、心を鬼にして、奥さまもうすこしのご辛棒ですよ、と言外に意味をふくめて叱咤するのだそうである。(「満願太宰治、1938(昭和13年))

医者が、夫の体の静養のためにセックス禁止して…というちょっとした掌編なのですが、最初の「奥さま」は、医者患者配偶者である若い奥さんに言い聞かせるとき呼称医者の「奥さん」は医者の(やや年配の)配偶者ニュアンスで用いられていますが、地の文での「奥さま」と「奥さん」の使い分けで、雰囲気表現されているのは実にうまいです。

最後に、呼称という点で、最初に見かけてこれは書き留めておきたい(ぶっちゃけこの記事を書くきっかけになった)のがこちら。

 は水の引くように痩せて、蚊帳の中で死んでしまった。死ぬ前「今度奥さんを貰う時は、丈夫な奥さんを貰ってね」と言った。

莫迦、お前が死んだら俺は一生独身でいるよ、女房なんか貰うものか」

 彼は妻の胸に涙を落しながら言った。その涙をふいている内にふと俺は嘘を言ってるのかも知れないと思った。

 しかし、妻が死んでしまうと、彼は妻に言った言葉を守ろうと思った。死んだ人間に対しては、もう約束を守るよりほかに何一つしてやるものがないのだと思った。

(「蚊帳」織田作之助、(初出が調べられなかったのですが、上の満願より少し後の1940年前後だと思います。))

この3つの呼称の呼び分けを、代名詞豊富でない文化圏の人にどうすれば伝えられるだろうなあ、と思ったりします。

さて、蛇足ながら、このエントリを書いた理由について。呼称代名詞というのは、時代によって変遷し、人の心を映すもの。だから、いろいろな意見議論はあっていいと思いますし、そもそも言葉時代ジェンダー観を反映するというのは、取り立てていう必要もないくらい当たり前のことではありますが、そういった、人々の内心の方を変えるのが面倒だからといって、言葉の方に罪を着せるようにして言葉狩りじみたことをするのは、正直「違うんじゃないかなあ」と思います。人々の心が変化すれば、誰が強制しなくても言葉は廃れ、変化していきます。〇〇という言葉を使うな!なんて言わなくても、それが指す事象が消えたり変化したりすれば、あっという間に言葉は移り変わっていくものです。だから、変えるべきことを人々の総意に基づいて粛々と変えるよう努力するのが重要であって、「言葉狩り」みたいな遊びで何か大きな社会貢献を為したような気分になるのは、正直やめてもらいたいなあ、と思っています。そんな感じのことを感じていただけたのなら、この記事を書いた意味があったというものです。ありがとうございました。

2020-07-16

anond:20200716151032

岡本綺堂作品ほぼ全部、特に半七捕物帳シリーズ

理系なら理系作家ってことで海野十三も合うかもしれん

十八時の音楽浴、とか

2020-02-24

岡本綺堂名前使ってクソ棘作ってんじゃねーぞ

さては岡本綺堂アンチだなテメー

2017-11-15

anond:20171115002317

砂糖黍の艶やかな皮をむいて、あの白い中身をしゃぶる甘味快味を、私は終生忘れないだろう。

――豊島与志雄「「自然」」

誰も誰も、食うためには、品も威も下げると思え。さまでにして、手に入れる餌食だ。突くとなれば会釈はない。骨までしゃぶるわ。

――泉鏡花紅玉

この飴細工と糝粉細工とが江戸時代形見といったような大道商人であったが、キャラメルドロップをしゃぶる現代の子ども達からだんだんに見捨てられて、東京市のまん中からは昔の姿を消して行くらしく、場末の町などで折りおりに見かける飴売りにも若い人は殆ど無い。

――岡本綺堂「半七捕物帳 54 唐人飴」

梅干布などというものもあって、これは島田で作っていただきますさらし木綿に梅干汁をひたして天日に乾かし、それを小さく切っていざという時しゃぶるのだそうです。

――宮本百合子「獄中への手紙 09 一九四二年(昭和十七年)」

蛇さん、ずいぶんのろまだなあ。おいらのしりでもしゃぶるがいい。

――楠山正雄「物のいわれ」

コリャ堪らん。英雄豪傑の汗なら好んでもしゃぶるが、こんな懦弱い奴の汗を舐めるのは御免である

――押川春浪本州横断 癇癪徒歩旅行

私の母なんかも、昆布をしゃぶるには人後に落ちた事がない。

――直木三十五大阪を歩く」

あんこのついた指をしゃぶるものもある。鼻の頭へ黄豆粉をつけているものもある。上唇についた黒ごまと鼻汁とを一緒になめているものもある。

――長谷川時雨「旧聞日本橋 20 西川小りん」

「今ライムがはやっているの?」「ええ、みんなライム買うわ。メグさんだって、けちだと思われたくなかったら、きっと買うわ。そして、みんな教室で机のなかにかくしておいてしゃぶるの。」

――ルイーザ・メイ・オルコット「若草物語

人間は奪い取って来た生をたしなみながらしゃぶるけれども、ほどなくその生はまた尽きて行く。

――有島武郎「生まれいずる悩み」

ね、ほら、おもちゃがほしくば、この鼻の頭をしゃぶるといいよ。

――佐々木味津三「右門捕物帖 25 卒塔婆を祭った米びつ」

しかし、かわいそうに軽業の女たち、折助は逃げ去ったが今度はいっそう怖ろしい骨までしゃぶる獣、それの襲撃と聞いて歯の根が合わなくなりました。

――中里介山大菩薩峠 09 女子小人の巻」

2017-08-24

https://anond.hatelabo.jp/20170823223701

90~00年代流行ったJホラーが強いインパクトを残してるけど、制作陣でなんとなく共通認識として捉えられていた「因果ものにしない」(「恨みがある相手攻撃する」、こういう原因があったから祟る、はやめる)は、すでに昭和のはじめに岡本綺堂が「因果ものは怖くないのでやめよう」って指摘してる。

幽霊って理不尽存在なわけで、理路整然とこういう理由で襲いますってなったら怖くない。詳しくないけど、そもそも神様自体日本では昔から無差別に祟るでしょ。極悪人や強い恨みを持つ人を殺してそのままにしておくと祟りが広がるから、祀って神様にしてきた。

じゃあなんで世間怪談ホラー因果ものになりやすいかというと、一般的因果がある方が物語として強くなるから。何も関係ない子供ラピュタを見つけるより、主人公たちが血の因果を巡りムスカと戦う方が面白いでしょ。

話としての尺が長くなるほど、因果を強く結びつけた物語性が必要で、それがないと読者や観客が飽きちゃう。だから強い因果必要長編(映画も含まれる)には、幽霊ホラーは向かない、怖くなりにくいと言われている。もしくは、幽霊ホラーを紐解くと悲劇構造である、とか。

Jホラー場合は、80年代?に流行ってた実話投稿怪談ベースになってるので、そのフォーマットに則りいかにも物語っぽい「つくり」を無くす方向から因果を弱めるようにしたらしい。ちなみにJホラー最初短編が多い。

長編として成り立たせるために、映画リング場合は「貞子の死体をきちんと葬れば呪いが解ける」という、ある種の因果ものに見せかけたどんでん返し呪怨物語性を薄くして怖がらせながら、連作短編で飽きさせないという風に、工夫している。

結局流行り廃りが大きいと思うが、ここ数十年は現実無差別的な事件が多く報道されているかホラーもその影響を受けているのでは、という説もある。

2016-08-12

引いたおみくじ漢文を調べてみた。

おみくじ漢詩

仙鶴立高枝 せんかくこうしにたつ

防他暗箭虧 たをふせいであんぜんかく

井畔剛刀利 せいばんごうとうとし

戸内更防危 こないさらにあやうきをふせげ

解釈をググり探したところによると「家の問題に注意せよ」や「出る杭は打たれる」の意味だとか。

……本当に?

おかしいと思いませんか。

鶴の話が、家(戸内)の話になるなんて。

と、いうことで調べました。どうやら元になった故事があるらしい。

故事和訳

 唐の天宝年中、河南「糸侯」子県の仙鶴観には常に七十余人の道士が住んでいた。いずれも専ら修道を怠らない人びとで、未熟の者はここに入ることが出来なかった。

 ここに修業の道士は、毎年九月三日の夜をもって、一人は登仙することを得るという旧例があった。

 夜が明ければ、その姓名をしるして届け出るのである。勿論、誰が登仙し得るか判らないので、毎年その夜になると、すべての道士らはみな戸を閉じず、思い思いに独り歩きをして、天の迎いを待つのであった。

 張竭忠がここの県令となった時、その事あるを信じなかった。そこで、九月三日の夜二人の勇者に命じて、武器をたずさえて窺わせると、宵のあいだは何事もなかったが、夜も三更に至る頃、一匹の黒い虎が寺内へ入り来たって、一人の道士をくわえて出た。それと見て二人は矢を射かけたが中らなかった。しかも虎は道士を捨てて走り去った。

 夜が明けて調べると、昨夜は誰も仙人になった者はなかった。二人はそれを張に報告すると、張は更に府に申し立てて、弓矢の人数をあつめ、仙鶴観に近い太子陵の東にある石穴のなかを猟ると、ここに幾匹の虎を獲た。穴の奥には道士の衣冠や金簡のたぐい、人の毛髪や骨のたぐいがたくさんに残っていた。これがすなわち毎年仙人になったという道士の身の果てであった。

 その以来、仙鶴観に住む道士も次第に絶えて、今は陵を守る役人らの住居となっている。

引用元青空文庫中国怪奇小説集岡本綺堂http://www.aozora.gr.jp/cards/000082/files/1301_11897.html


教訓を得るなら「迷信に殺されるな」。

鶴や家の話ではありませんでした。

訳してみた。

・仙鶴⇒仙鶴観(場所名前

・他⇒彼、ある男

・箭⇒矢

・虧⇒欠ける、損なう

・利⇒鋭利

・更⇒(この場合は)三更⇒夜になって6時間後、夜更け

仙鶴観で木の上から虎へ矢を射かけたが当たらなかった。

井戸状の石穴の辺りで虎を探し、鋭利な剛刀で仕留めた。

こうして、仙鶴観は深夜に侵入する黒虎の危険を防ぐことができた。

漢文門外漢ゆえ多少の間違いはお目こぼし下さい。)

元三大師御籤

元三大師御籤絵鈔 http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/bunko06/bunko06_00249/index.html

おみくじ三十番 http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko06/bunko06_00249/bunko06_00249_p0020.jpg

これによると、元三大師作成した時からこの解釈を取っているらしい。


張竭忠さんのように調べてみて初めて本当の意味が判明するおみくじ

個人的には故事メタでなぞる物語構造面白いと思いました。

しかし、なぜ全然違う解釈おみくじに?

2016-07-15

完全増田オリジナル! クソザコナメクジが読むべきオススメミステリ200作!

http://anond.hatelabo.jp/20160715120436


貴様の好き嫌いから増田に伝わる独自の推理小説検索アルゴリズムによって、

完璧かつスウィートに貴様の趣味嗜好にそって完全オリジナルベストミステリリストを生成したぞ。

ありがたくよむべし。


【国内】

1 横溝正史 獄門島 1947

2 中井英夫 虚無への供物 1964

3 島田荘司 占星術殺人事件 1981

4 夢野久作 ドグラ・マグラ 1935

5 宮部みゆき 火車 1992

6 松本清張 点と線 1957

7 天藤真 大誘拐 1978

8 綾辻行人 十角館の殺人 1987

9 京極夏彦 魍魎の匣 1995

10 横溝正史 本陣殺人事件 1946

11 鮎川哲也 黒いトランク 1956

12 連城三紀彦 戻り川心中 1980

13 東野圭吾 容疑者Xの献身 2005 -

14 小栗虫太郎 黒死館殺人事件 1934

15 山口雅也 生ける屍の死 1989

16 泡坂妻夫 亜愛一郎の狼狽 1978

17 北村薫 空飛ぶ馬 1989

18 東野圭吾 白夜行 1999

19 坂口安吾 不連続殺人事件 1947

20 綾辻行人 時計館の殺人 1991

21 島田荘司 斜め屋敷の犯罪 1982

22 有栖川有栖 双頭の悪魔 1992

23 京極夏彦 姑獲鳥の夏 1994

24 江戸川乱歩 二銭銅貨 1923

25 松本清張 砂の器 1960

26 原尞 私が殺した少女 1989

27 江戸川乱歩 孤島の鬼 1929

28 高木彬光 人形はなぜ殺される 1955

29 髙村薫 レディ・ジョーカー 1997

30 山田風太郎 妖異金瓶梅 1954

31 水上勉 飢餓海峡 1962

32 高木彬光 刺青殺人事件 1948

33 鮎川哲也 りら荘事件 1968

34 泡坂妻夫 乱れからくり 1978

35 江戸川乱歩 陰獣 1928

36 歌野晶午 葉桜の季節に君を想うということ 2003

37 松本清張 ゼロの焦点 1959

38 泡坂妻夫 11枚のとらんぷ 1976

39 横溝正史 犬神家の一族 1950

40 竹本健治 匣の中の失楽 1978

41 宮部みゆき 模倣犯 1995

42 岡本綺堂 半七捕物帳 1917

43 桐野夏生 OUT 1997

44 皆川博子 死の泉 1997

45 大沢在昌 毒猿 新宿鮫II 1991

46 船戸与一 山猫の夏 1984

47 藤原伊織 テロリストパラソル 1995

48 山田風太郎 太陽黒点 1963

49 京極夏彦 絡新婦の理 1996

50 馳星周 不夜城 1996

51 島田荘司 奇想、天を動かす 1989

52 横山秀夫 第三の時効 2003

53 髙村薫 マークスの山 1993

54 横山秀夫 半落ち 2002

55 笠井潔 サマーアポカリプス 1981

56 島田荘司 異邦の騎士 1988

57 横溝正史 八つ墓村 1949

58 船戸与一 猛き箱舟 1987

59 小泉喜美子 弁護側の証人 1963

60 宮部みゆき 理由 1996

61 真保裕一 奪取 1994

62 三津田信三 首無の如き祟るもの 2007

63 麻耶雄嵩 夏と冬の奏鳴曲 1993

64 森博嗣 すべてがFになる 1996

65 大沢在昌 新宿鮫 1990

66 貴志祐介 黒い家 1997

67 山田風太郎 警視庁草紙 1975

68 泡坂妻夫 しあわせの書 1987

69 久生十蘭 魔都 1948

70 西澤保彦 七回死んだ男 1995

71 笠井潔 哲学者の密室 1992

72 舞城王太郎 煙か土か食い物 2001

73 伊坂幸太郎 アヒルと鴨のコインロッカー 2003

74 乾くるみ イニシエーション・ラブ 2004

75 横溝正史 悪魔の手毬唄 1957

76 麻耶雄嵩 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 1991

77 仁木悦子 猫は知っていた 1957

78 京極夏彦 鉄鼠の檻 1996

79 土屋隆夫 危険な童話 1961

80 我孫子武丸 殺戮にいたる病 1992

81 稲見一良 ダック・コール 1991

82 綾辻行人 霧越邸殺人事件 1990

83 中島らも ガダラの豚 1993

84 殊能将之 ハサミ男 1999

85 逢坂剛 カディスの赤い星 1986

86 連城三紀彦 夜よ鼠たちのために 1983

87 江戸川乱歩 パノラマ島奇談 1926

88 高木彬光 白昼の死角 1959

89 志水辰夫 背いて故郷 1985

90 山田風太郎 明治断頭台 1979

91 佐々木譲 ベルリン飛行指令 1988

92 赤江瀑 オイディプスの刃 1974

93 貫井徳郎 慟哭 1993

94 高野和明 ジェノサイド 2011

95 有栖川有栖 孤島パズル 1989

96 都筑道夫 なめくじに聞いてみろ 1968

97 逢坂剛 百舌の叫ぶ夜 1986

98 岡嶋二人 99%の誘拐 1988

99 宮部みゆき 龍は眠る 1991

100 鮎川哲也 黒い白鳥 1959

101 天童荒太 永遠の仔 1999

102 佐々木譲 エトロフ発緊急電 1989


【国外】

1 アガサ・クリスティ そして誰もいなくなった 1939

2 エラリー・クイーン Yの悲劇 1933

3 アーサー・コナン・ドイル シャーロック・ホームズの冒険 1892

4 ウィリアム・アイリッシュ 幻の女 1942

5 アガサ・クリスティ アクロイド殺し 1926

6 レイモンド・チャンドラー 長いお別れ / ロング・グッドバイ 1954

7 ウンベルト・エーコ 薔薇の名前 1980

8 G・K・チェスタトン ブラウン神父の童心 1910

9 トマス・ハリス 羊たちの沈黙 1988

10 ジョン・ディクスン・カー 火刑法廷 1937

11 アガサ・クリスティ オリエント急行の殺人 1934

12 スティーグ・ラーソンミレニアム〉三部作 2005

13 アイラ・レヴィン 死の接吻 1953

14 エラリー・クイーン Xの悲劇 1932

15 ロス・マクドナルド さむけ 1964

16 ジョン・ディクスン・カー 三つの棺 1935

17 フレデリック・フォーサイス ジャッカルの日 1971

18 S・S・ヴァン=ダイン 僧正殺人事件 1929

19 ジャック・ヒギンズ 鷲は舞い降りた 1975

20 アントニイ・バークリー 毒入りチョコレート事件 1929

21 ローレンス・ブロック 八百万の死にざま 1982

22 ジェフリー・ディーヴァー ボーン・コレクター 1998

23 エラリー・クイーン ギリシア棺の謎 1932

24 クリスチアナ・ブランド ジェゼベルの死 1949

25 ギャビン・ライアル 深夜プラス1 1965

26 ジェイムズ・P・ホーガン 星を継ぐもの 1977

27 ジェイムズ・エルロイ ホワイトジャズ 1992

28 ガストン・ルルー 黄色い部屋の謎 1907

29 スコット・トゥロー 推定無罪 1988

30 シューヴァル&ヴァールー 笑う警官 1968

31 アントニイ・バークリー 試行錯誤 1937

32 ルシアン・ネイハム シャドー81 1975

33 F・W・クロフツ 樽 1920

34 エドガー・アラン・ポー モルグ街の殺人 1841

35 ディック・フランシス 興奮 1965

36 ダシール・ハメット マルタの鷹 1930

37 ジョン・ディクスン・カー 皇帝のかぎ煙草入れ 1942

38 ダシール・ハメット 血の収穫 / 赤い収穫 1929

39 ジョセフィン・テイ 時の娘 1951

40 スチュアートウッズ英語版警察署長 1981

41 セバスチアン・ジャプリゾ シンデレラの罠 1962

42 エラリー・クイーン エジプト十字架の謎 1932

43 R・D・ウィングフィールド クリスマスのフロスト 1984

44 カーター・ディクスン ユダの窓 1938

45 ドロシー・L・セイヤーズ ナインテイラーズ 1934

46 ディック・フランシス 利腕 1979

47 アーサー・コナン・ドイル バスカヴィル家の犬 1902

48 イーデン・フィルポッツ 赤毛のレドメイン家 1922

49 アントニイ・バークリー ジャンピング・ジェニイ 1933

50 ジョン・スラデック 見えないグリーン 1977

51 ルース・レンデル ロウフィールド館の惨劇 1977

52 フェルディナント・フォン・シーラッハ 犯罪 2009

53 カトリーヌ・アルレー わらの女 1956

54 スティーヴン・ハンター 極大射程 1993

55 ジェイムズ・エルロイ ブラック・ダリア 1987

56 トム・ロブ・スミス チャイルド44 2008

57 ロス・マクドナルド ウィチャリー家の女 1961

58 キャロル・オコンネル クリスマスに少女は還る 1998

59 アントニイ・バークリー 第二の銃声 1930

60 ジェイムズ・エルロイ ビッグ・ノーウェア 1988

61 スティーヴン・キング ミザリー 1987

62 アガサ・クリスティ ABC殺人事件 1936

63 ウィリアム・L・デアンドリア(英語版) ホッグ連続殺人 1979

64 ロアルド・ダール あなたに似た人 1953

65 R・D・ウィングフィールド フロスト日和 1987

66 アイザック・アシモフ 黒後家蜘蛛の会 1980

67 ウィルキー・コリンズ 月長石 1868

68 ハリイ・ケメルマン英語版) 九マイルは遠すぎる 1947

69 ダン・ブラウン ダ・ヴィンチ・コード 2003

70 アリステア・マクリーン 女王陛下のユリシーズ号 1955

71 トレヴェニアン シブミ 1979

72 ロバート・ゴダード 千尋の闇 1986

73 ジェフリー・ディーヴァー ウォッチメイカー 2006

74 カズオ・イシグロ わたしを離さないで 2005

75 ロバート・R・マキャモン 少年時代 1991

76 シャーロットアームストロング英語版) 毒薬の小壜 1956

77 ドン・ウィンズロウ ストリートキッズ 1991

78 エラリー・クイーン 九尾の猫 1949

79 レイモンド・チャンドラー さらば愛しき女よ / さよなら、愛しい人 1940

80 コリン・デクスター キドリントンから消えた娘 1976

81 セオドア・ローザック フリッカー、あるいは映画の魔 1991

82 サラ・ウォーターズ 荊の城 2002

83 ジョージ・P・ペレケーノス 俺たちの日 1996

84 スコット・スミス シンプル・プラン 1993

85 トマス・ハリス レッド・ドラゴン 1981

86 G・K・チェスタトン 詩人と狂人たち 1929

87 ドン・ウィンズロウ 犬の力 2005

88 サラ・ウォーターズ 半身 1999

89 クレイグ・ライス スイートホーム殺人事件 1944

90 エラリー・クイーン 災厄の町 1942

91 デズモンド・バグリィ 高い砦 1965

92 モーリス・ルブラン 奇岩城 1909

93 ロバート・B・パーカー 初秋 1980

94 トマス・H・クック 緋色の記憶 1996

95 ジェフリー・アーチャー 百万ドルをとり返せ! 1976

96 アーサー・コナン・ドイル 緋色の研究 1887

97 ドナルド・E・ウェストレイク ホットロック 1970

98 リチャード・ニーリィ 心ひき裂かれて 1976

99 アガサ・クリスティ ナイルに死す 1937

100 アイザック・アシモフ 鋼鉄都市


――閉幕(カーテンフォール)。

2012-10-26

http://anond.hatelabo.jp/20121026170336

してるけど音読関係ないと思う。原語だし。

読みながら脳内で意訳するんだけど、その口調がうつる

口調っていうか、せりふ回しの持って行き方みたいなものが。

小説の黙読とかでもうつるよね。横溝とか舞城とかの時代色の出てるやつ。

岡本綺堂うつるけど、ちょっと固いだけで文体自体は平易でフツーなので

「あ、うつってる」って思ってるのは当人だけ(と信じたい)。

2008-09-06

ミスオタの彼女日本古典探偵小説を軽く紹介するための10本

http://anond.hatelabo.jp/20080721222220

アニオタ非オタ彼女アニメ世界を軽く紹介するための10本

まあ、どのくらいの数のミスオタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、「ミスオタではまったくないんだが、しかし自分の探偵小説趣味を肯定的に黙認してくれて、その上で全く知らない日本古典探偵小説世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、戦前戦後日本探偵小説のことを紹介するために読ませるべき10本を選んでみたいのだけれど。

あくまで「入口」なので、時間的に過大な負担を伴う三大奇書は避けたい。

できれば短編、長くても中編程度の分量にとどめたい。

あと、いくら戦後を含むといっても高度経済成長期の雰囲気を醸し出す作品は避けたい。

古典SF好きが筒井康隆は外せないと言っても、それはちょっと現役だし、と思う。

そういう感じ。

彼女の設定は

ミステリ知識はいわゆる「少年探偵団」的なものを除けば、シャーロック・ホームズ程度は読んでいる。犯人当ては苦手だが、頭はけっこう良い

という条件で。

まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。

横溝正史本陣殺人事件』

まあ、いきなりここかよとも思うけれど、「本陣以前」を濃縮しきっていて、「本陣以後」を決定づけたという点では外せないんだよなあ。長さも丁度いいし。ただ、ここで探偵小説批評トーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。

このプロットの複雑な作品について、どれだけさらりと、ネタバレにならず単調すぎず、それでいて必要最小限の宣伝惹句彼女に伝えられるかということは、ミスオタの「編者解説&訳者あとがき能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。

江戸川乱歩パノラマ奇談』、坂口安吾『不連続殺人事件』

アレって典型的な「ミスオタが考える一般人に受け入れられそうな探偵小説(そうミスオタが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのものという意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには一番よさそうな素材なんじゃないのかな。「ミスオタとしてはこの二つは“文学”としていいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。

海野十三『点眼器殺人事件』

ある種のSFオタが持ってる科学への憧憬と、新青年監修のミスオタ的な本格トリックへのこだわりを彼女に紹介するという意味ではいいなと思うのと、それに加えていかにも海野的な

バカミス的で無理のある謎」を解く帆村荘六

を中心として、昭和の香りのするとぼけ世界観を作り上げているのが、紹介してみたい理由。

大阪圭吉『とむらい機関車

たぶんこれを読んだ彼女は「八○屋○○だよね」と言ってくれるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。大阪圭吉が戦死したこと、彼の作品が戦前推理小説としては破格の完成度を持っていること。戦後なら実写テレビドラマになって、それがお茶の間を賑わしてもおかしくはなさそうなのに、死んでからはその存在すら忘れられてしまったこと、なんかを非ミスオタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。

水谷準『カナカナ姫』

「やっぱり本格探偵小説男性読者のためのものだよね」という話になったときに、そこで選ぶのは『牧師館の殺人』でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この作品にかける水谷準の思いが好きだから。

断腸の思い女流探偵キャラを作って、彼女車椅子障害者、っていうのが、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、その「社会的弱者」への視線がいかにも新青年的な左翼だなあと思えてしまうから。

カナカナ姫の性格を俺自身は詮索好きとは思わないし、限りなく魅力的とは思うけれど、一方でこれが乱歩正史だったらきっちり狂人にしてしまうだろうとも思う。

岡本綺堂『半七捕物帳』

今の若年層で岡本綺堂を読んだことのある人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。乱歩よりも前の段階で、探偵小説の技法とかは捕物帳で基礎を築いていたとも言えて、こういうクオリティの作品が雑誌連載でこの時代に載っていたんだよ、というのは、別に俺自身がなんらそこに貢献してなくとも、なんとなく探偵小説好きとしては不思議に誇らしいし、岡っぴきといえば銭形平次くらいしか知らない彼女には読ませてあげたいなと思う。

夢野久作『瓶詰の地獄

夢野の「近代の文学は総て探偵小説である」という思想ミスオタとして伝えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。

「狂気と近親相姦」的な感覚がオタには共通してあるのかなということを感じていて、だからこそ最近妹萌えブームは『瓶詰地獄』以外ではあり得なかったとも思う。

社会から逸脱して虚構的性愛を生きる」というオタの感覚今日さらに強まっているとするなら、その「オタクの気分」の源は『瓶詰地獄』にあったんじゃないか、という、そんな理屈はかけらも口にせずに、単純に楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。

小栗虫太郎完全犯罪

これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。こういうゴシック風味の殺人事件をこういうかたちで密室化して、それが非ミスオタに受け入れられるか気持ち悪さを誘発するか、というのを見てみたい。

高木彬光刺青殺人事件』

9本まではあっさり決まったんだけど10本目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的に神津恭介を選んだ。

密室から始まって密室で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、戦後社会派ミステリの先駆けとなった作家処女作でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。

というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10本目はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。

「駄目だこの幻影城は。俺がちゃんとしたリストを作ってやる」というのは大歓迎。

こういう試みそのものに関する意見も聞けたら嬉しい。

 
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