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はてなキーワード: 情緒とは

2024-10-01

最後にうれしいことを思いついた。美禰子は与次郎に金を貸すと言った。けれども与次郎には渡さないと言った。じっさい与次郎金銭のうえにおいては、信用しにくい男かもしれない。しかしその意味で美禰子が渡さないのか、どうだか疑わしい。もしその意味でないとすると、自分にははなはだたのもしいことになる。ただ金を貸してくれるだけでも十分の好意である自分に会って手渡しにしたいというのは――三四郎はここまで己惚れてみたが、たちまち、 「やっぱり愚弄じゃないか」と考えだして、急に赤くなった。もし、ある人があって、その女はなんのために君を愚弄するのかと聞いたら、三四郎はおそらく答ええなかったろう。しいて考えてみろと言われたら、三四郎は愚弄そのものに興味をもっている女だからとまでは答えたかもしれない。自分の己惚れを罰するためとはまったく考ええなかったに違いない。――三四郎は美禰子のために己惚れしめられたんだと信じている。  翌日はさいわい教師が二人欠席して、昼からの授業が休みになった。下宿へ帰るのもめんどうだから、途中で一品料理の腹をこしらえて、美禰子の家へ行った。前を通ったことはなんべんでもある。けれどもはいるのははじめてである。瓦葺の門の柱に里見恭助という標札が出ている。三四郎はここを通るたびに、里見恭助という人はどんな男だろうと思う。まだ会ったことがない。門は締まっている。潜りからはいると玄関までの距離は存外短かい長方形御影石が飛び飛びに敷いてある。玄関は細いきれいな格子でたてきってある。ベルを押す。取次ぎの下女に、「美禰子さんはお宅ですか」と言った時、三四郎自分ながら気恥ずかしいような妙な心持ちがした。ひとの玄関で、妙齢の女の在否を尋ねたことはまだない。はなはだ尋ねにくい気がする。下女のほうは案外まじめであるしかもうやうやしい。いったん奥へはいって、また出て来て、丁寧にお辞儀をして、どうぞと言うからついて上がると応接間へ通した。重い窓掛けの掛かっている西洋である。少し暗い。  下女はまた、「しばらく、どうか……」と挨拶して出て行った。三四郎は静かな部屋の中に席を占めた。正面に壁を切り抜いた小さい暖炉がある。その上が横に長い鏡になっていて前に蝋燭立が二本ある。三四郎は左右の蝋燭立のまん中に自分の顔を写して見て、またすわった。  すると奥の方でバイオリンの音がした。それがどこからか、風が持って来て捨てて行ったように、すぐ消えてしまった。三四郎は惜しい気がする。厚く張った椅子の背によりかかって、もう少しやればいいがと思って耳を澄ましていたが、音はそれぎりでやんだ。約一分もたつうちに、三四郎バイオリンの事を忘れた。向こうにある鏡と蝋燭立をながめている。妙に西洋のにおいがする。それからカソリック連想がある。なぜカソリックだか三四郎にもわからない。その時バイオリンがまた鳴った。今度は高い音と低い音が二、三度急に続いて響いた。それでぱったり消えてしまった。三四郎はまったく西洋音楽を知らない。しかし今の音は、けっして、まとまったものの一部分をひいたとは受け取れない。ただ鳴らしただけである。その無作法にただ鳴らしたところが三四郎情緒によく合った。不意に天から二、三粒落ちて来た、でたらめの雹のようである。  三四郎がなかば感覚を失った目を鏡の中に移すと、鏡の中に美禰子がいつのまにか立っている。下女がたてたと思った戸があいている。戸のうしろにかけてある幕を片手で押し分けた美禰子の胸から上が明らかに写っている。美禰子は鏡の中で三四郎を見た。三四郎は鏡の中の美禰子を見た。美禰子はにこりと笑った。 「いらっしゃい」  女の声はうしろで聞こえた。三四郎は振り向かなければならなかった。女と男はじかに顔を見合わせた。その時女は廂の広い髪をちょっと前に動かして礼をした。礼をするにはおよばないくらいに親しい態度であった。男のほうはかえって椅子から腰を浮かして頭を下げた。女は知らぬふうをして、向こうへ回って、鏡を背に、三四郎の正面に腰をおろした。 「とうとういらしった」  同じような親しい調子である三四郎にはこの一言が非常にうれしく聞こえた。女は光る絹を着ている。さっきからだいぶ待たしたところをもってみると、応接間へ出るためにわざわざきれいなのに着換えたのかもしれない。それで端然とすわっている。目と口に笑を帯びて無言のまま三四郎を見守った姿に、男はむしろ甘い苦しみを感じた。じっとして見らるるに堪えない心の起こったのは、そのくせ女の腰をおろすやいなやである三四郎はすぐ口を開いた。ほとんど発作に近い。 「佐々木が」 「佐々木さんが、あなたの所へいらしったでしょう」と言って例の白い歯を現わした。女のうしろにはさきの蝋燭立がマントルピースの左右に並んでいる。金で細工をした妙な形の台である。これを蝋燭立と見たのは三四郎の臆断で、じつはなんだかわからない。この不可思議蝋燭立のうしろに明らかな鏡がある。光線は厚い窓掛けにさえぎられて、十分にはいらない。そのうえ天気は曇っている。三四郎はこのあいだに美禰子の白い歯を見た。 「佐々木が来ました」 「なんと言っていらっしゃいました」 「ぼくにあなたの所へ行けと言って来ました」 「そうでしょう。――それでいらしったの」とわざわざ聞いた。 「ええ」と言って少し躊躇した。あとから「まあ、そうです」と答えた。女はまったく歯を隠した。静かに席を立って、窓の所へ行って、外面をながめだした。 「曇りましたね。寒いでしょう、戸外は」 「いいえ、存外暖かい。風はまるでありません」 「そう」と言いながら席へ帰って来た。 「じつは佐々木が金を……」と三四郎から言いだした。 「わかってるの」と中途でとめた。三四郎も黙った。すると 「どうしておなくしになったの」と聞いた。 「馬券を買ったのです」  女は「まあ」と言った。まあと言ったわりに顔は驚いていない。かえって笑っている。すこしたって、「悪いかたね」とつけ加えた。三四郎は答えずにいた。 「馬券であてるのは、人の心をあてるよりむずかしいじゃありませんか。あなた索引のついている人の心さえあててみようとなさらないのん気なかただのに」 「ぼくが馬券を買ったんじゃありません」 「あら。だれが買ったの」 「佐々木が買ったのです」  女は急に笑いだした。三四郎おかしくなった。 「じゃ、あなたお金がお入用じゃなかったのね。ばかばかしい」 「いることはぼくがいるのです」 「ほんとうに?」 「ほんとうに」 「だってそれじゃおかしいわね」 「だから借りなくってもいいんです」 「なぜ。おいやなの?」 「いやじゃないが、お兄いさんに黙って、あなたから借りちゃ、好くないからです」 「どういうわけで? でも兄は承知しているんですもの」 「そうですか。じゃ借りてもいい。――しかし借りないでもいい。家へそう言ってやりさえすれば、一週間ぐらいすると来ますから」 「御迷惑なら、しいて……」  美禰子は急に冷淡になった。今までそばにいたものが一町ばかり遠のいた気がする。三四郎は借りておけばよかったと思った。けれども、もうしかたがない。蝋燭立を見てすましている。三四郎自分から進んで、ひとのきげんをとったことのない男である。女も遠ざかったぎり近づいて来ない。しばらくするとまた立ち上がった。窓から戸外をすかして見て、 「降りそうもありませんね」と言う。三四郎も同じ調子で、「降りそうもありません」と答えた。 「降らなければ、私ちょっと出て来ようかしら」と窓の所で立ったまま言う。三四郎は帰ってくれという意味解釈した。光る絹を着換えたのも自分のためではなかった。 「もう帰りましょう」と立ち上がった。美禰子は玄関まで送って来た。沓脱へ降りて、靴をはいていると、上から美禰子が、 「そこまでごいっしょに出ましょう。いいでしょう」と言った。三四郎は靴の紐を結びながら、「ええ、どうでも」と答えた。女はいつのまにか、和土の上へ下りた。下りながら三四郎の耳のそばへ口を持ってきて、「おこっていらっしゃるの」とささやいた。ところへ下女があわてながら、送りに出て来た。  二人は半町ほど無言のまま連れだって来た。そのあい三四郎はしじゅう美禰子の事を考えている。この女はわがままに育ったに違いない。それから家庭にいて、普通女性以上の自由を有して、万事意のごとくふるまうに違いない。こうして、だれの許諾も経ずに、自分といっしょに、往来を歩くのでもわかる。年寄りの親がなくって、若い兄が放任主義から、こうもできるのだろうが、これがいなかであったらさぞ困ることだろう。この女に三輪田のお光さんのような生活を送れと言ったら、どうする気かしらん。東京はいなかと違って、万事があけ放しだからこちらの女は、たいていこうなのかもわからないが、遠くから想像してみると、もう少しは旧式のようでもある。すると与次郎が美禰子をイブセン流と評したのもなるほどと思い当る。ただし俗礼にかかわらないところだけがイブセン流なのか、あるいは腹の底の思想までも、そうなのか。そこはわからない。  そのうち本郷の通りへ出た。いっしょに歩いている二人は、いっしょに歩いていながら、相手がどこへ行くのだか、まったく知らない。今までに横町を三つばかり曲がった。曲がるたびに、二人の足は申し合わせたように無言のまま同じ方角へ曲がった。本郷の通りを四丁目の角へ来る途中で、女が聞いた。 「どこへいらっしゃるの」 「あなたはどこへ行くんです」  二人はちょっと顔を見合わせた。三四郎はしごくまじめである。女はこらえきれずにまた白い歯をあらわした。 「いっしょにいらっしゃい」  二人は四丁目の角を切り通しの方へ折れた。三十間ほど行くと、右側に大きな西洋館がある。美禰子はその前にとまった。帯の間から薄い帳面と、印形を出して、 「お願い」と言った。 「なんですか」 「これでお金を取ってちょうだい」  三四郎は手を出して、帳面を受取った。まん中に小口当座預金通帳とあって、横に里見美禰子殿と書いてある。三四郎帳面と印形を持ったまま、女の顔を見て立った。 「三十円」と女が金高を言った。あたか毎日銀行へ金を取りに行きつけた者に対する口ぶりである。さいわい、三四郎は国にいる時分、こういう帳面を持ってたびたび豊津まで出かけたことがある。すぐ石段を上って、戸をあけて、銀行の中へはいった。帳面と印形を係りの者に渡して、必要金額を受け取って出てみると、美禰子は待っていない。もう切り通しの方へ二十間ばかり歩きだしている。三四郎は急いで追いついた。すぐ受け取ったものを渡そうとして、ポッケットへ手を入れると、美禰子が、 「丹青会の展覧会を御覧になって」と聞いた。 「まだ見ません」 「招待券を二枚もらったんですけれども、つい暇がなかったものからまだ行かずにいたんですが、行ってみましょうか」 「行ってもいいです」 「行きましょう。もうじき閉会になりますから。私、一ぺんは見ておかないと原口さんに済まないのです」 「原口さんが招待券をくれたんですか」 「ええ。あなた原口さんを御存じなの?」 「広田先生の所で一度会いました」 「おもしろいかたでしょう。馬鹿囃子稽古なさるんですって」 「このあいだは鼓をならいたいと言っていました。それから――」 「それから?」 「それからあなた肖像をかくとか言っていました。本当ですか」 「ええ、高等モデルなの」と言った。男はこれより以上に気の利いたことが言えない性質である。それで黙ってしまった。女はなんとか言ってもらいたかったらしい。  三四郎はまた隠袋へ手を入れた。銀行の通帳と印形を出して、女に渡した。金は帳面の間にはさんでおいたはずであるしかるに女が、 「お金は」と言った。見ると、間にはない。三四郎はまたポッケットを探った。中から手ずれのした札をつかみ出した。女は手を出さない。 「預かっておいてちょうだい」と言った。三四郎はいささか迷惑のような気がした。しかしこんな時に争うことを好まぬ男である。そのうえ往来だからなおさら遠慮をした。せっかく握った札をまたもとの所へ収めて、妙な女だと思った。  学生が多く通る。すれ違う時にきっと二人を見る。なかには遠くから目をつけて来る者もある。三四郎は池の端へ出るまでの道をすこぶる長く感じた。それでも電車に乗る気にはならない。二人とものそのそ歩いている。会場へ着いたのはほとんど三時近くである。妙な看板が出ている。丹青会という字も、字の周囲についている図案も、三四郎の目にはことごとく新しい。しか熊本では見ることのできない意味で新しいので、むしろ一種異様の感がある。中はなおさらである三四郎の目にはただ油絵水彩画区別が判然と映ずるくらいのものにすぎない。  それでも好悪はある。買ってもいいと思うのもある。しか巧拙はまったくわからない。したがって鑑別力のないものと、初手からあきらめた三四郎は、いっこう口をあかない。  美禰子がこれはどうですかと言うと、そうですなという。これはおもしろいじゃありませんかと言うと、おもしろそうですなという。まるで張り合いがない。話のできないばかか、こっちを相手にしない偉い男か、どっちかにみえる。ばかとすればてらわないところに愛嬌がある。偉いとすれば、相手にならないところが憎らしい。  長い間外国旅行して歩いた兄妹の絵がたくさんある。双方とも同じ姓で、しかも一つ所に並べてかけてある。美禰子はその一枚の前にとまった。

anond:20241001222935

ベニスでしょう」

 これは三四郎にもわかった。なんだかベニスらしい。ゴンドラにでも乗ってみたい心持ちがする。三四郎高等学校にいる時分ゴンドラという字を覚えた。それからこの字が好きになった。ゴンドラというと、女といっしょに乗らなければすまないような気がする。黙って青い水と、水と左右の高い家と、さかさに映る家の影と、影の中にちらちらする赤い片とをながめていた。すると、

「兄さんのほうがよほどうまいようですね」と美禰子が言った。三四郎にはこの意味が通じなかった。

「兄さんとは……」

「この絵は兄さんのほうでしょう」

「だれの?」

 美禰子は不思議そうな顔をして、三四郎を見た。

だって、あっちのほうが妹さんので、こっちのほうが兄さんのじゃありませんか」

 三四郎は一歩退いて、今通って来た道の片側を振り返って見た。同じように外国景色かいものが幾点となくかかっている。

「違うんですか」

「一人と思っていらしったの」

「ええ」と言って、ぼんやりしている。やがて二人が顔を見合わした。そうして一度に笑いだした。美禰子は、驚いたように、わざと大きな目をして、しかもいちだんと調子を落とした小声になって、

「ずいぶんね」と言いながら、一間ばかり、ずんずん先へ行ってしまった。三四郎は立ちどまったまま、もう一ぺんベニスの掘割りをながめだした。先へ抜けた女は、この時振り返った。三四郎自分の方を見ていない。女は先へ行く足をぴたりと留めた。向こうから三四郎の横顔を熟視していた。

里見さん」

 だしぬけにだれか大きな声で呼んだ者がある。

 美禰子も三四郎も等しく顔を向け直した。事務室と書いた入口を一間ばかり離れて、原口さんが立っている。原口さんのうしろに、少し重なり合って、野々宮さんが立っている。美禰子は呼ばれた原口よりは、原口より遠くの野々宮を見た。見るやいなや、二、三歩あともどりをして三四郎そばへ来た。人に目立たぬくらいに、自分の口を三四郎の耳へ近寄せた。そうして何かささやいた。三四郎には何を言ったのか、少しもわからない。聞き直そうとするうちに、美禰子は二人の方へ引き返していった。もう挨拶をしている。野々宮は三四郎に向かって、

「妙な連と来ましたね」と言った。三四郎が何か答えようとするうちに、美禰子が、

「似合うでしょう」と言った。野々宮さんはなんとも言わなかった。くるりとうしろを向いた。うしろには畳一枚ほどの大きな絵がある。その絵は肖像画である。そうしていちめんに黒い。着物帽子も背景から区別のできないほど光線を受けていないなかに、顔ばかり白い。顔はやせて、頬の肉が落ちている。

「模写ですね」と野々宮さんが原口さんに言った。原口は今しきりに美禰子に何か話している。――もう閉会である来観者もだいぶ減った。開会の初めには毎日事務所へ来ていたが、このごろはめったに顔を出さない。きょうはひさしぶりに、こっちへ用があって、野々宮さんを引っ張って来たところだ。うまく出っくわしたものだ。この会をしまうと、すぐ来年の準備にかからなければならないから、非常に忙しい。いつもは花の時分に開くのだが、来年は少し会員のつごうで早くするつもりだから、ちょうど会を二つ続けて開くと同じことになる。必死勉強をやらなければならない。それまでにぜひ美禰子の肖像をかきあげてしまうつもりである迷惑だろうが大晦日でもかかしてくれ。

「その代りここん所へかけるつもりです」

 原口さんはこの時はじめて、黒い絵の方を向いた。野々宮さんはそのあいだぽかんとして同じ絵をながめていた。

「どうです。ベラスケスは。もっとも模写ですがね。しかもあまり上できではない」と原口がはじめて説明する。野々宮さんはなんにも言う必要がなくなった。

「どなたがお写しになったの」と女が聞いた。

三井です。三井もっとうまいんですがね。この絵はあまり感服できない」と一、二歩さがって見た。「どうも、原画が技巧の極点に達した人のものから、うまくいかいね

 原口は首を曲げた。三四郎原口の首を曲げたところを見ていた。

「もう、みんな見たんですか」と画工が美禰子に聞いた。原口は美禰子にばかり話しかける。

「まだ」

「どうです。もうよして、いっしょに出ちゃ。精養軒でお茶でもあげます。なにわたしは用があるから、どうせちょっと行かなければならない。――会の事でね、マネジャー相談しておきたい事がある。懇意の男だから。――今ちょうどお茶にいい時分です。もう少しするとね、お茶にはおそし晩餐には早し、中途はんぱになる。どうです。いっしょにいらっしゃいな」

 美禰子は三四郎を見た。三四郎はどうでもいい顔をしている。野々宮は立ったまま関係しない。

「せっかく来たものから、みんな見てゆきましょう。ねえ、小川さん」

 三四郎はええと言った。

「じゃ、こうなさい。この奥の別室にね。深見さんの遺画があるから、それだけ見て、帰りに精養軒へいらっしゃい。先へ行って待っていますから

「ありがとう」

「深見さんの水彩は普通の水彩のつもりで見ちゃいけませんよ。どこまでも深見さんの水彩なんだから。実物を見る気にならないで、深見さんの気韻を見る気になっていると、なかなかおもしろいところが出てきます」と注意して、原口は野々宮と出て行った。美禰子は礼を言ってその後影を見送った。二人は振り返らなかった。

 女は歩をめぐらして、別室へはいった。男は一足あとから続いた。光線の乏しい暗い部屋である。細長い壁に一列にかかっている深見先生の遺画を見ると、なるほど原口さんの注意したごとくほとんど水彩ばかりである三四郎が著しく感じたのは、その水彩の色が、どれもこれも薄くて、数が少なくって、対照に乏しくって、日向へでも出さないと引き立たないと思うほど地味にかいてあるという事である。その代り筆がちっとも滞っていない。ほとんど一気呵成に仕上げた趣がある。絵の具の下に鉛筆輪郭が明らかに透いて見えるのでも、洒落な画風がわかる。人間などになると、細くて長くて、まるで殻竿のようである。ここにもベニスが一枚ある。

「これもベニスですね」と女が寄って来た。

「ええ」と言ったが、ベニスで急に思い出した。

「さっき何を言ったんですか」

 女は「さっき?」と聞き返した。

「さっき、ぼくが立って、あっちのベニスを見ている時です」

 女はまたまっ白な歯をあらわした。けれどもなんとも言わない。

「用でなければ聞かなくってもいいです」

「用じゃないのよ」

 三四郎はまだ変な顔をしている。曇った秋の日はもう四時を越した。部屋は薄暗くなってくる。観覧人はきわめて少ない。別室のうちには、ただ男女二人の影があるのみである。女は絵を離れて、三四郎真正面に立った。

「野々宮さん。ね、ね」

「野々宮さん……」

「わかったでしょう」

 美禰子の意味は、大波のくずれるごとく一度に三四郎の胸を浸した。

「野々宮さんを愚弄したのですか」

「なんで?」

 女の語気はまったく無邪気である三四郎は忽然として、あとを言う勇気がなくなった。無言のまま二、三歩動きだした。女はすがるようについて来た。

あなたを愚弄したんじゃないのよ」

 三四郎はまた立ちどまった。三四郎は背の高い男である。上から美禰子を見おろした。

「それでいいです」

「なぜ悪いの?」

「だからいいです」

 女は顔をそむけた。二人とも戸口の方へ歩いて来た。戸口を出る拍子に互いの肩が触れた。男は急に汽車で乗り合わした女を思い出した。美禰子の肉に触れたところが、夢にうずくような心持ちがした。

「ほんとうにいいの?」と美禰子が小さい声で聞いた。向こうから二、三人連の観覧者が来る。

「ともかく出ましょう」と三四郎が言った。下足を受け取って、出ると戸外は雨だ。

「精養軒へ行きますか」

 美禰子は答えなかった。雨のなかをぬれながら、博物館前の広い原のなかに立った。さいわい雨は今降りだしたばかりである。そのうえ激しくはない。女は雨のなかに立って、見回しながら、向こうの森をさした。

「あの木の陰へはいりましょう」

 少し待てばやみそうである。二人は大きな杉の下にはいった。雨を防ぐにはつごうのよくない木である。けれども二人とも動かない。ぬれても立っている。二人とも寒くなった。女が「小川さん」と言う。男は八の字を寄せて、空を見ていた顔を女の方へ向けた。

「悪くって? さっきのこと」

「いいです」

だって」と言いながら、寄って来た。「私、なぜだか、ああしたかったんですもの。野々宮さんに失礼するつもりじゃないんですけれども」

 女は瞳を定めて、三四郎を見た。三四郎はその瞳のなかに言葉よりも深き訴えを認めた。――必竟あなたのためにした事じゃありませんかと、二重瞼の奥で訴えている。三四郎は、もう一ぺん、

「だから、いいです」と答えた。

 雨はだんだん濃くなった。雫の落ちない場所わずしかない。二人はだんだん一つ所へかたまってきた。肩と肩とすれ合うくらいにして立ちすくんでいた。雨の音のなかで、美禰子が、

「さっきのお金をお使いなさい」と言った。

「借りましょう。要るだけ」と答えた。

「みんな、お使いなさい」と言った。

2024-09-30

女だけどホルモンバランス言い訳にしてほしくない

タイトルのまま。

最近PMSやら産後メンタルやらホルモンバランスの乱れからくる精神面の不調について認知度が高まってきた。それ自体はすごくいいことだと思うがパートナー家族に対する理解を求める前に女性諸君はもう少し自助努力をしたほうが良い。

自分でも対処しきれないもの他人理解せよというのは無理があるし、これが他の持病であればもっと自分でなんとかしようと思うんだよ。例えば頭痛持ちや胃腸が弱い人はまず市販薬対処療法、それでもなんともならなければ病院に行くでしょ?

正直人間関係に影響する程情緒不安定になるならそれはもう異常だし、病院に行ってホルモンバランスを整えることも選択肢に入れるべきだと思う。ピルとか貼るタイプの薬とか色々手段はあるよ。取れる手段があるのにそれを放棄して「どうしようもないの!理解して!優しくして!」は同じ女としてうんざりする。

男とか女とか関係なく自分の心身の健康自分で確保すべきだし、それを放棄して生産性が落ちてる人に社会進出は無理だと思う。

女だけどホルモンバランス言い訳にしてほしくない

タイトルのまま。

最近PMSやら産後メンタルやらホルモンバランスの乱れからくる精神面の不調について認知度が高まってきた。それ自体はすごくいいことだと思うがパートナー家族に対する理解を求める前に女性諸君はもう少し自助努力をしたほうが良い。

自分でも対処しきれないもの他人理解せよというのは無理があるし、これが他の持病であればもっと自分でなんとかしようと思うんだよ。例えば頭痛持ちや胃腸が弱い人はまず市販薬対処療法、それでもなんともならなければ病院に行くでしょ?

正直人間関係に影響する程情緒不安定になるならそれはもう異常だし、病院に行ってホルモンバランスを整えることも選択肢に入れるべきだと思う。ピルとか貼るタイプの薬とか色々手段はあるよ。取れる手段があるのにそれを放棄して「どうしようもないの!理解して!優しくして!」は同じ女としてうんざりする。

男とか女とか関係なく自分の心身の健康自分で確保すべきだし、それを放棄して生産性が落ちてる人に社会進出は無理だと思う。

女だけどホルモンバランス言い訳にしてほしくない

タイトルのまま。

最近PMSやら産後メンタルやらホルモンバランスの乱れからくる精神面の不調について認知度が高まってきた。それ自体はすごくいいことだと思うがパートナー家族に対する理解を求める前に女性諸君はもう少し自助努力をしたほうが良い。

自分でも対処しきれないもの他人理解せよというのは無理があるし、これが他の持病であればもっと自分でなんとかしようと思うんだよ。例えば頭痛持ちや胃腸が弱い人はまず市販薬対処療法、それでもなんともならなければ病院に行くでしょ?

正直人間関係に影響する程情緒不安定になるならそれはもう異常だし、病院に行ってホルモンバランスを整えることも選択肢に入れるべきだと思う。ピルとか貼るタイプの薬とか色々手段はあるよ。取れる手段があるのにそれを放棄して「どうしようもないの!理解して!優しくして!」は同じ女としてうんざりする。

男とか女とか関係なく自分の心身の健康自分で確保すべきだし、それを放棄して生産性が落ちてる人に社会進出は無理だと思う。

2024-09-28

推し認知されたら情緒がめちゃくちゃになった

こじらせたオタク女の長文自分語りだが、よかったら聞いてくれ。

私は人生ほとんどを、ファンとして誰かを応援することに費やしている。

大手事務所アイドル声優さんスポーツ選手俳優さん、本当にいろいろな人を推してきた。

今まで推し認知してもらうことに憧れはあれど実際に認知がもらえることなんて一度もなかったが、今回、初めて推し認知してもらうことができた。

その結果、情緒がめちゃくちゃになっている。

正直、認知されるような推し方をしてしまったのを少し後悔するほどに。

私は、推しに対して、あなた応援していますという気持ちを伝えたくて手紙を書いたりプレゼントを送ったり、現場に足を運ぶことが多いが、それに対して返事がほしいわけではない。

通常であれば、推しオタクは1対多数のコミュニケーション、私から推しへのファン行為一方通行愛情表現だ。

一方通行からこそ、推しへの愛と感謝を出力MAXでぶつけることができる。

私にとってはそういう推し方が当たり前だった。

推しとの握手会に行って、直接思いを伝えられたことに満足して、その人を推すのを卒業したこともある。

ただ、認知されるということにほんの少し憧れはあったけど。

今回の推しジャンルは、今まで推してきた他のジャンルより規模が小さく、ファンとの距離がとても近かった。

一緒にファンになった友人がとても活発な人間なので、ファンになってまだすぐのころ、「一緒についていってあげるから!」と言われて、差し入れを持って接触イベントに行った。

いつもならそこで満足して推すのをやめてしまうのだが、まだ推し始めて日が浅かったことと、友人の存在と、「また来てくださいね!」と推しに言われたことで、単純にまた接触イベに行こうという気になった。

そこから1年間、現場に通い、毎回同じ差し入れメッセージカードを持って接触イベに行き、推し活の様子を自分のインスタに載せ、推しのインスタにいいねを押し続けた。

今思えば、同じ差し入れメッセージカードを贈り続けるという、認知してもらいたい人間がやるような推し方をしているが、当時はあんまり何も考えていなかった。

接触イベに行くこと以外は他のジャンルにいたときと同じような推し方をしていたつもりだった。

ある日の接触イベが終わったあと、いつも通りインスタのストーリー推し活してきたよ!とアップすると、1件のメッセージが届いた。

「いつもありがとうございます!」という、推しからコメントだった。

その日は嬉しすぎて、何も手につかなくなった。

後日の接触イベでも、推しこちらのインスタの内容に触れてくださったりした。

インスタでの推しからコメントも、一度きりのものではなかった。

確実に認知してもらえたことが分かった。

認知がわかった瞬間から、しばらくは嬉しくて夢のような時間だった。

ただ、その後突然冷静になった。

今まで自分接触イベであっても1対多数のつもりで推しコミュニケーションを取っていたが、認知された上で接触イベで会話することやインスタでメッセージのやり取りをすることは、自分の中で1対1のコミュニケーションとなった。

もちろん、繋がりとかでは断じてなく、応援していますという言葉に、ありがとうと返してもらうだけのコミュニケーションである

だが、1対1で神格化した愛をぶつけることに恥を感じる自分がいた。

自分推しへの感情は、推しの都合のいい部分だけをコンテンツとして消費したいという欲をぶつけているだけ、一人の人間としての推しを見ているものではない。

途端に自己嫌悪に陥った。

でも、認知は嬉しい。応援気持ちが届いていたことはとても嬉しい。

同時に、自分という個を認識された瞬間、多数の中の自分を見てくれていたことに対する優越感が含まれた醜い嬉しさも感じていた。

純粋な嬉しさではないことに、また自己嫌悪に陥る。

もう感情ジェットコースターである

毎日嬉しい気持ち自己嫌悪気持ちが波となってやってくる。

もちろん推しはそこまで深く考えていないだろう。

推しからしたら1対多数のコミュニケーションであることは変わらないと思う。

こちらが考えすぎていることは重々承知である

それでも情緒がめちゃくちゃになって、途端に推し活に疲れてしまった。

こんなことになるなら、接触イベには行かず、認知されない程度に影から応援していたほうが良かったのかもしれないと思い始めるほどには疲れてしまった。

認知されてなお、推し純粋気持ち推し続けることができる人に対しては、本当に尊敬の念を抱く。

私もこの状態脱出して、認知されていようがいるまいが、強い気持ち推しを推せる人間に早くなりたい。

2024-09-27

12個上のオジサンと付き合ってるけど自分が未熟だとか頭悪いと感じる機会が増えて辛い、何かとイライラしては彼氏に当たってメンヘラみたいになってしまっている、でも依存しきってるから別れられない、と友人が言っていた

友人はちょっとアホで、そういう生きづらさはありそうだったけど情緒は安定していた。が、このところ急に泣き出したりして正直怖い、というか、何かに動かされてる気がして気持ち悪い。

理解のある彼くんって若くてアホな女を理解必要ヤバい女にしてんのか?

2024-09-25

統失ADHDの服薬レビュー

デパス

本当にすごい。有名なだけある。頓服系の中ではリスパダールと2大巨頭な感じするくらい効いた。体に合ってたのかあん副作用も感じなかった。ODしたことあるけど別に何もなかったんだよね、なんでだよ。

レキソタン

これもすき。マイスリーの次にODしたのこれかも。不安と眠れなさに対処するおくすりだったはずだけど、これも飲むと思考がぼやけてふわふわ世界意識飛ばしてつらいこと忘れられたな。すみません、そのイメージしかないです。

マイスリー

最初は良かったけどODのしすぎで全然効かなくなった。お医者さんごめんなさい。でもODしたことのある薬の中ではダントツでよかった。今でもフラッシュバックの回数がずば抜けてる。腕の傷で深いのはだいたいマイスリー中にやってるかも?薬で酩酊でもしてなきゃ腕にカミソリで肉が見えるほど深いU字の切り傷とか作れないだろ

コンサータストラテラ

同時期に試したけどどっちも私には合わなくて、どっちも(特にコンサータ吐き気でどうにかなりそうだった。ADHDなのにどっちも無理だったの、当時はかなり絶望だったし、全然今でも絶望リタリン規制されてなかった時代に生まれてたらどうなってたんだ?でもストラテラの嘘みたいに青いカプセルめっちゃかわいいも思う。

サインバルタ

最初は白にピンク可愛い薬!って気に入ってたけど、次第に中に入ってる粒がしゃらしゃら揺れる音だけで気分悪くなった。あんものを初回で強い処方したあの医者なんだったんだよ。みんな、ゆ◯メンタルクリニックは行くんじゃないぞ。

エビリファイ

これは内服と頓用を併用してたはず。あんまり効果が実感できなくて頓用のほうを液体タイプにしてもらったら味が本当に本当に本当に本当に本当にまずくて泣きながら錠剤にもどしてもったし、結局やっぱ効かなくて消えた。

ジプレキサ

今でもお世話になってる私のメインウェポン。正直今でも「飲むと落ち着く!効いてる〜!」はないんだけど、でも欠かせないし、ないと自分でわかるほど主に幻聴悪化する。情緒も悪くなる。いつもありがとう体重増加の副作用どうにかなりませんか。

リスパダール

私の2大頓服デパスじゃないほう。デパスは心を落ち着けると表現するとしたら、リスパダール脳みそ落ち着けてくれるみたいなイメージがある。死にたくなった時はデパス幻聴と止まらない思考リスパダールみたいな。

エビ

マジで効かなかった。なんだったんですか?

ベルソムラ

一時期マイスリーと併用してたはず。効くっちゃ効くんだけどこれも昼間本当に眠い。私にとって睡眠導入系は短時間効くやつが合ってたんだろうな〜って思ってる。中途覚醒睡眠薬以外で対処できたわけだし。

ブロン

本当にカス処方箋いらないか無限ODの頻度と一回あたりの錠剤の量が増えていく。口の中は常にカラカラだし、うんちも全然出なくなる。ご飯食べるタイミングミスる嘔吐が止まらなくなって喉から錠剤が溢れてくる。部屋に瓶が転がるようになる。それでもやめられねえんだ、まともに生きる方がよっぽど辛く思えちゃうから。みんな、処方薬はもちろん、ブロンにも手を出すな。メジコンもやめろ。こっち側に間違っても来るなよ。

ここまで書いておいてなんだが、本当にODなんかするな。ODをかっこいいものだとするな。頼むから

2024-09-24

生き恥晒して生きてるよ!

こんにちはっ!

から痛々しい日記を書いていこうと思いま~す

え?なんで痛い自覚があるのにこんな口調なのかって?

そんなのぼくがこの口調が好きだからに決まってんじゃんっ☆

では、まずは自己紹介を!

名前はしあんしーちゃんって呼んでね!

自分幼女と思い込んでる、痛々しい厨二病末期患者だよ!

情緒不安定で、たま~に自傷もしちゃう、頭のおかし中学生

頭も悪くて、顔もゴミ、おまけにデブかい人間として終わってる感じ~

ほんとになんでぼくみたいなゴミが生きてるんだろうねっ、あははっ☆

え?痛い自覚があっても痛いことしてるのかっこいいと思ってそう?

当たり前じゃん、思ってるよ!

でもねっ、見た人がどれだけ不快になろうがぼくには関係ないんだ!

だってそんなの見たキミが悪いじゃん

あははっ、こんな簡単なことにすら気づけないキミ、かわいそ~

…おっと、話が逸れちゃった

じゃあ、今日はぼくの悩みを一つ聞いてほしいなっ

ぼくの悩みはね、ズバリ死にたいことっ!

おかしいよね~死にたいとかw

でもね、ぼくず~っと死にたいんだ

虐待されてるわけでも、

いじめられてるわけでもないのに

なのに死にたいんだ!


あはは、なんでかな?

死にたくて死にたくて仕方ないんだ

何回か首も吊ったよ

でも苦しいだけだった

なんでかな

なんで死ねないのかな

あははっ☆

からかな

からこんなに頭がおかしいのかなっ?

りすかもね、いっぱいしたよ

お酒も入れてみたけど、量が足りなくて死ねなかったや

なんでぼくって死ねないのかなっ?

やっぱりみんな、

「本気で死のうとしてない」とか

「どうせファッヘラだろ」とか言うんでしょっ?

知ってるよ、そんなこと

だってぼくファッヘラだもん

病んでることをかわいいと思い込んでるもん

自傷依存する自分が他の何よりかわいいもん

何が悪いの?

こんなことしかできない自分が嫌だから死にたいだけだよ?

ねぇ

誰かぼくのこと殺してよ

2024-09-23

anond:20240921083225

前半しか読んでないけど、いちばん慰みになりそうな解釈としては、

日ごろから本人ではなくスタッフ巡回して、本人の目に触れたらまずそうなツイートをチェックしている

あいかわらず情緒安定してないw」が目に止まり、ツイ主の日ごろの文脈など確認するわけでもなく、単体でブロック対象判断

というもの

2024-09-21

推し​​にXでブロックされた私の気持ちの置き所

昨日の朝、推しがX上で私をブロックしていることに気がついた。

推しの周囲にいるスタッフさんが引用ポストした引用元が見えなくて、推しアカウントに飛んだところ

「〇〇(推し名前)はあなたブロックしています。」と表示され、目玉が飛び出るかと思った。

同じ経験をした人、これからする人がきっといると思う。

このエントリはその人たちが「推し ブロックされた」で検索した時、その心に寄り添いたくて書く。長くなります

ブロックに気づいたあと、私はすぐに

①他アカウントから推しポストが見えるか

自分のどのポストブロックの原因になったのか を確認した。

まず、サブ垢から推しポストを見ることができた。最新のポストのいくつかに見覚えがない。10日ほど前のポストタイムライン上で見た覚えがあった。

推しが私をブロックしたのはここ10日間ほどの間に起こった出来事らしい。

操作?とも思いたかったが、誤フォローと違って誤ブロックでは手順が多すぎる。推し意図的に私をブロックしたのはほぼ間違いない。

次に私は直近の自分ポスト見直した。その時はまだ信じられないと思っていた。

というのも、ポスト内容には注意を払っている方だと自分では思っていたからだ。

ブロックされた推し活用に使っていた。100人を少し超えるFFがいて、日々推しが出ているコンテンツ感想を書いたり、FF交流したりしていた。

感想ポストをする時はハッシュタグをつけていたし、推しエゴサパブサをしていることは知っていたので、以下のようなことに気をつけていた。

推し本人を含め、誰かを攻撃するような内容は書かない

コンテンツ批判批評するような内容は書かない

推しのことを呼び捨てにしたり変なあだ名で呼んだりしない

 (必ず「今日の動画の〇〇さん、最高だった」というようにさん付けで書いていた)

・極端な愛情表現を含むポストをしない(ガチ恋を思わせるようなものなど)

 ※箱推しで、〇〇が推しメンというわけでもなく、リアコとかでもなかった。

なぜ自分ブロックされたのだろうか?その思いで自分ポストを振り返るが、どれが推し地雷を踏んでしまったのかわからない。

というかこうなると逆に、全部が可能性があるように思える。

メンバーのうち1人だけ(〇〇ではない)最近仕事が忙しそうだと書いたことか?

タイムライン上でバズった話題について「この件について〇〇はどう思うかな?」と書いたことか?

〇〇が童謡を歌っていたのに対し、「幼少期〇〇がこれ歌ってたのかと思うと愛おしいな」と書いたことか?

〇〇が自分ラジオ番組で大暴れしているのに対して、「あいかわらず情緒安定してないw」と書いたことだろうか?

からない。。。

正直「ブロックされるほどの内容か…?」と思っている自分がいて、ハッとする。

自分はなに被害者ヅラしてるんだ。。。

推し ブロックされた」ググった結果、

どのサイトでも「ブロックされるようなことはしていないと思っていても、大抵の場合あなたが何かしてしまっているのです。」と書かれていた。

今回はこっちが先に推しの気分を害しているのだ。推し自分自身のタイムライン清浄に保っただけ。

自分はむしろ加害者であり、その上自分のなにが推し不快にしたのかもわかっていない。最悪だ。

この辺りで、「驚き」から「悲しみ」の感情に変わってきた。

このアカウントでは推し界隈で繋がったFFさんたちと楽しく交流してきた。

でも今は、私だけが推しから「お前はいらない」と拒絶を突き付けられている。

いや、「お前はいらない」は言い過ぎなのかもしれない。

以前から〇〇は自分タイムライン清浄に保つためにわりと気軽にブロックをしていることを話していた。

その時はまさか自分関係する話だとは思っていなかったのだけど。

今でも他のメンバーフォローできているし、番組公式Xなどもフォローできている。

スタッフさんたちが私の感想ポストいいねをくれることもある。

コンテンツは今まで同様に楽しむことができるし、FFたちとの交流もできる。

できなくなったのは「〇〇のポストを見ること」と「〇〇が私のポストを見ること」の2つだけだ。

前者は、別アカウントで〇〇をフォローして、通知を入れておけばいい。

後者は、別に元々見てほしいと思っていたわけではない。ハッシュタグをつけている時は「もしかしたら本人に届くかな」くらいの気持ちはあったが、

メンションしたりリプを送ったり、DMを送ったりしたことはなかった。

まり、失ったものは極めて小さく、ほとんど今までと変わらないのだ。

でも。と、どうしても思ってしまう。

私は推しとの間にある境界線を踏み越えたことはないと思っていた。

SNSフォローして、公開されているコンテンツを追って、

番組感想ハッシュタグをつけてどんどん呟いてください」のアナウンス通りに応援気持ちをこめたポストを書いて、イベントに参加したりしていた。

でもそれだけだ。

DMで凸ったこともリプライで凸ったこともなければ、動画スクショを載せるなどのグレーとされることもしていない。

彼が「ここからここまでが公の自分。これ以上は踏み込まないで」と、線を引いているのを想像し、その線を越えようとしたことはなかった。

でも、私は他のファンと違って彼の「タレントとして公にしている」Xのポストをもう見ることができない。

なぜだ。不当では?

私のポストの内容の何が彼を不快にさせたかからないが、むしろ彼の方が境界線を踏み越えてブロックという手段に出ているのでは?

「悲しみ」が「怒り」に近い感情に徐々に移るのを自覚して、またハッとする。

また被害者ヅラしているな、私は。私は被害者じゃない。加害者のはずなのだ

ブロックされたことで推しとの距離が急に遠くなったかのように感じたが、実際は違う。

元々この距離だったのだ。元々私が推しのことを見ていただけで、推しは私のことなど何も知らない。

〇〇の視界に私が入り、〇〇が不快に感じたら、私が覗き込んでくる窓を閉じることが彼にはできる。彼は自分のためにそうしただけだ。

しかしたら同じ状況になった人がいるかもしれないので言っておくが、以下の行動は悪手すぎるのでやめた方がいい。

事態好転する可能性は万にひとつもない。

①サブ垢などを使い、本人に対して

 ・どのポストブロックの原因かを問う

 ・ブロックした理由はわからないけど謝罪をする

 ・こんなことでブロックするなんて、と文句をいう

推しの周囲の人やスタッフなどに対してメッセージを送り、

 〇〇からブロックされた件について、代わりに話をしてほしいと頼む。

現場などで直接会えた時に、ブロック解除してもらうよう頼む。

私はこれらの行動を実際に起こさない程度には冷静だが、理性を脱ぎ去った本心ではこれらの行動を取りたがっている。

から今そうしたいと思っているあなた気持ちが私はわかると思う。でもその上で、やめた方がいいと言える。

まず、ブロックした本人は「もうあなた存在を視界に入れたくない」と思っている。

私たちにとっては一大事である毎日当たり前にあった大好きな存在から、突然理由もわからず完全無視宣言をされてしまった。嫌われてしまったのだ。

でも、インターネットを利用する以上、入ってくる情報健全清浄に保つ責任を人はそれぞれ自分で負わねばいけないのだ。

あなた推しは、ただそれを遂行しただけだ。

なぜブロックされたのか、理由がわからなくて困惑しているだろう。私もそうだ。

でもその線引きは、個人が好き勝手に引いていい線引きなのだ

「こういうことする人はブロックします」とあらかじめ明示しているタレントさんもいるだろう。誠実なことだ。

でも、本来ブロックなんて、本人が嫌だと思ったり不都合だと思ったら好きにしていいのだ。

まり、〇〇は何ひとつ悪いことをしていない、と私は思う。これは本当にそう思う。

ひとつ悪いことはしていないが、その結果ただ私が傷ついただけだ。

彼にとっては何十万人もいるフォロワーの中の1人が、ただ理由理解せずに悲しんでいるだけだ。

サブ垢で凸るのは、変装した上で待ち伏せして突撃するのと同じだ。

そんなことされたら警察を呼ぶしかないのと同じで、ただ静かに距離を置かれている今の状態より関係悪化するのは明らかだ。

推しの周りの人にDM相談するのもなんの意味もない。そもそも〇〇の周りの人は友人や仕事仲間であって、親でも保育士でもないのだ。

周囲の人が〇〇とそのフォロワー人間関係の面倒を見てあげる義理などない。

「この子が〇〇にブロックされたって言ってるんだけど、なんでブロックしたの?ブロック解除してあげたら?」なんて

わざわざ世話を焼きにくるようなやつは「お節介」以外の何者でもないし、そんな助言でブロック解除するような人なら、最初からあなたブロックなんてしない。

この行動によってブロックが解除されることはないし、なんなら相談した周囲の人からも「この子は変な子だな」と思われてブロックされる可能性すらある。

直接会えた時にブロック解除をお願いするのも良い結果になるわけがない。ライブイベントは楽しむために行くところだ。

そこでもし、推し本人と話す時間を得られるとしよう。その限られた時間に「ブロック解除してください」と言ってみていい空気に転じるわけがない。

「解除するね」となるわけがないだろう。楽しい空気台無しになるだけだ。

結論、〇〇からブロックされたことに関して私にできることは何もないのだ。


私が今できること、それは一つしかないし、頭ではちゃんとわかっている。

彼らのことをこれまで通り応援することだ。Xアカウントが見えなくなったからといって、それは彼らの活動のほんの一部にすぎない。

今まで通り公開されるコンテンツを楽しめばいいし、なんならポストはサブ垢で追えばいいし、ほとんど全部今まで通りだ。

これまで以上に発言に気をつけて、これまで通り応援ポストを書き込む。

しかしたら〇〇には届かなくても、〇〇の周囲の人が私のポストを目にしてくれることがあるかもしれない。

〇〇と話すときに「Xでこんなこと言ってくれる人いたよ」と話題になることがあるかもしれない。

その時に〇〇が「なんで俺にはそのポストが見えてないんだろう?」と思って私のアカウントを探して、

「あ、俺この人ブロックしてたんだ。なんでだっけ」と、軽い気持ちブロック解除してくれることがあるかもしれない。

薄い薄い限りなくゼロに近い望みだが、将来的にブロック解除される可能性があるとしたら、そんなことしか思いつかない。

というか、そんな夢想をすることにしか気持ちの置き所がない。

から私は変わらず応援していればいい。

だけど。

ブロックされる前と今とでは全くちがう。私の心が。

いつもはただ楽しみにしていた動画も、〇〇が映ると心がチクリと痛む。

この人は私には自分を見てほしくないと思っている人なのだ。なのに私は彼を見ている。

見るなと言われていながらチラチラ覗いているような、居心地の悪さが襲う。

〇〇のポストについてFFさんたちがキャッキャと沸いているのを見て、今まで自分もその輪に加わっていただろうけど、今は違う。

私1人だけ、サブ垢に切り替えてこそこそポストを見に行かなければいけないし、リアクションなんてとてもできない。

〇〇の周囲の人が引用ポストをしている。そこに現れる「このポストは表示できません」の文字。〇〇が私をブロックしているという事実がまた突きつけられる。

今回私は〇〇からブロックされたことを誰にも言えていない。

同じ界隈の仲のいい人たちは、これがどんなに辛いことで、私が悲しんでいるか理解してくれるだろうが、彼らの中には今でも「大好きな〇〇」がいるのだ。

彼らの中にある〇〇像を不用意に壊したくはない。だって私も〇〇が好きだから

年明けのイベントチケットが奇しくも当選したばかりだ。

FFさんから「現地でお会いしましょう」と優しい言葉が送られてくる。

私は〇〇からブロックされている。そのことを忘れて、悲しみを混ぜずに楽しみたい。

でもどうしても悲しい。

最後に、〇〇本人や、タレント活動をしてファンブロックしたことのある人がこの文章を読んでくれているとしたら、その人に向けて。

これまで楽しませてくれてありがとう。これからあなたたちの見せてくれるコンテンツを楽しんでいいのだと思ってた。応援していていいんだと思ってた。

あなたたちが見せてくれるコンテンツが好きなのは本当だから、これからファンでいさせてほしい。

イベントチケットを買ってしまっているし、イベントにも行きたい。

Xでの発言は怖いから、今までのようにはしないかもしれないけど、せっかく繋がったFFさんたちもいるし、続けたいと思っている。

でも、これから先、あなたたちを見ている時、私が悲しいと感じるのが変わらなかったら、

その時はもうあなたたちを見ないようにする。

私がファンを離れるのは、私があなたを嫌いになったからじゃない。

あなたが私を嫌いになったからだから

あなたは私のことなんて知らないし、たぶん本当は好きでも嫌いでもない。

あなた自分自身のために私をブロックしただけ。そうかもね。

でも、「あなたは俺の視界に入らないで。俺のこともこれ以上見ないで」ってやっておいて「好きでも嫌いでもない」わけないよね。

私は直接お話したこともないあなたに突きつけられたよ、「お前は嫌い」って。

「お前は嫌い」って言われたら「それでも好き」って言い続けるより、

「そっか、ごめんなさい。」って立ち去る方がよっぽど健全だよね。 あなたも本当はそうしてほしいと思ってるよね。

不快な思いをさせてごめんなさい。もしこの文章をみて何か感じることがあったら、

あなた絶対に許せない境界性を超えてくる悪質なファン以外には、次からミュートを使ってあげてほしいな。

2024-09-19

情緒が安定してる女が好きなので配信で女がキレるとイライラする😠

anond:20240919150246

理解したくないことを理解しようとしないのはパヨさんの悪い癖だよなぁ…

支える会も弁護団もどっちも支える人じゃん!って情緒的なことはどうでもいいんですよ

擁護する人と擁護される人が同一人物だったらただの自作自演ですよね?ってただそれだけの話です

支える会の中身は弁護団弁護士です!って明示してあれば何の問題もなかったんですよ

ただ「自分自分擁護してらーww」ってバカにされるだけで

2024-09-17

漫画でとんでもねえエモいシーン考えるとき、描くとき漫画家ってどういう情緒でやってるんだろうか?

例えば「ムジナ」のサジ奮戦〜怒涛の終盤あたりとか。

自身キャラの表情になって涙でグチャグチャになりながらネーム切ってんのかな。

それとも「ここをこうすれば読者はこう感じるだろう」みたいな冷静な計算を重ねながらひたすらカリカリカリカリ......って作ってるのか?

そんなことを考えたのは、さっきチャリ乗ってて短編小説ストーリーが頭からケツまで完パケで降ってきたのだ。そしてその話のあまりの悲しさにグスグス涙ぐんでしまった。

これは傑作ってことなのだろうか。

俺がおかしいだけか。

2024-09-14

気温的にはまだ夏真っ盛りと言ってもおかしくないのに、メンタル的には気温が下がってくるのと連動して不安定になっていく9月10月感覚キツイ

生理は終わったばかリだからPMSPMDDというよりは気温と20代後半の不安が強くなっていく時期あたりが要因なんだろうけどつらい

一昔前は夏よりも焦燥感が強過ぎて振り切った2月とかの方が気が楽だったけど、近年は夏は必要な分の焦燥感不安から解放されるのに対しどんどん悪化していく予感だけを日々感じる秋が本当にひどくなった

数年連絡してない友達に連絡して助けを求めるとかマチアプで理解ある存在探すとかそういう一歩を踏み出せば逆にすっきりしそうなのに、謎に恐怖が強すぎてずっと足を抱えたまま

昨日から上頭部も右下部の頭痛ヤバくて情緒不安定疲れた

2024-09-13

月曜に係長が俺の職場の部屋に来たのに、こちらをチラリと見ることもなく用事だけ済ませて帰っていって、俺はこんなに係長が好きで、人生係長なのに、係長にとっては俺は数ある知り合いのひとりでしかないんだ…と急に悲しくなって、火曜日も全く同じことが起きてそれで情緒不安定

2024-09-12

名文についての書物を読んだ

その書中において述べられるところの名文とは、単に美的であるのみならず、情緒に満ち、描写が巧みであり、さらにその文章臨場感を伴うことにより読者の心に深く響くものである。美しさとは、単に言葉の装飾ではなく、内在する構造の確かさに拠るものであろう。

澁澤龍彦幻想小説において「幾何学的に書くべきである」と言ったと記憶している。幾何学的とは、感覚的に直感する美麗さと秩序を持ち、その形態は正確かつ普遍的である正三角形が持つ完全性は、内角の和が常に180度であるという確固たる定理に支えられている。これは、いかなる変形にもかかわらず揺るがない事実である。その普遍性こそが美であり、幾何学的美しさの本質を成す。

このように、文章にも同様の美的秩序が存在するのではないかと考える。たとえば、三角形定理文章適用するならば、各要素が一貫して調和する様は正三角形のごとくである三角形の三つの頂点に当たる要素は、物語構造感情の動き、そして読者への影響であろう。この三者が均衡を保つとき文章は完全な形となり、名文と称されるに値する。

恋愛においても、幾何学的な要素が見て取れる。愛する者、愛される者、そしてその間に存在する感情。この三つの要素が整ったとき恋愛は完全な形を成す。しかし、その一部が欠けたとき三角形は不完全となる。非モテであるという状況は、その三つの内角が揃わず、歪んだ三角形のような状態である。だが、その歪みの中にも、何らかの秩序と美しさが宿っていることを認めざるを得ない。

幾何学的な美しさは、完全性の中にの存在するのではない。むしろ、不完全な中にも美しさは潜んでいる。それは、欠けた部分があるからこそ生まれる緊張感であり、そこに宿る秩序の欠如が逆説的に美を生むのであるモテないという状況も、ある種の幾何学的な不完全さであり、その不完全さが一つの形を成し得る。

私は三角形になりたいと願う。完璧であり、無駄がなく、全ての要素が調和している。しかし、不完全なままであることもまた一つの形であり、その不完全さの中にこそ真の美が宿っているのではないか、とも思うのである

幾何学文章の美しさとは、表面上の整合性だけではなく、そこに潜む感情臨場感をも含むものである。その幾何学的な秩序と情感の融合こそ、真に名文たる文章本質であろう。

2024-09-10

インド規律を産んで生産力を向上させてきた時の話 その1


https://anond.hatelabo.jp/20240909201827

そんなに仕事の話をして欲しいならば俺が少しだけ語らねばなるまい。

インド人カスだ。

それが俺のインド駐在で学んだことである

会社の都合でインド支部に異動になり、直面したのはこいつらマジで約束を守らないな、ということである

遅刻は当たり前、嘘も当たり前。それがインド人だ。なんでかというとこいつらは「短期利益のためなら何でもしていい」とガチマジで思っているからだ。

職場学校にいたどうしてそんな下らねえ嘘つくんだよってムカつくタイプを思い出せ。それがインド人デフォルトだ。

なんでかっつーとインドではみんながゆるゆるで事実関係確認なるもの物理的に行えないからだ。

から電車が遅れた」などと言って遅刻されても、本当に電車が遅れているのか確認する術がない。

確認相手インド人カスからだ。真実が霧に消えてしまう国なので、自分の見たもの以外は信じられない。それがインドかい地獄だ。

まあ、その辺かなりの競争社会なのもあって失点=即死みたいな文化もあるから可哀想といえば可哀想なのだが、仕事をする上では適当クソ野郎もの集団と付き合うメリットマジでない。

弊社もそんなインド支部を置いたものから現地人が上手く使えず、日本駐在員たちが次々と精神を病んでしまい、俺にお鉢が回ってきたというわけだ。

余り細かい事は特定が怖いので書かないが、社会的に大変価値のある仕事である。人の命を救うことに非常に関わりの低い商品を扱う会社である

まり適当野郎どもがいなければ救われた命があったというストレスにみな耐えきれなくなって心を病んでいくのだ。だからこそ、俺はその現地法人チームに規律をもたらす必要があった。

そういうのなら、増田君が適任だろ、という上司の力強い言葉は確かである。俺は規律を産むことにかけては自信があった。

まず、着任時のスタンスとして「聞かずにやるな」と「その程度のことは聞くな」二つの性質を合わせもつことにした。

要はダブルバインドだ。大声も重要だ。

インド人基本的にその場を凌ぐためならばありとあらゆる手段使用してくる。

から、とにかく、部下の人格を透明にしていくのだ。混乱をもたらし、人情をもって感情否定していって完璧ソルジャーに仕立て上げる。それが俺の役目だ。

同時に、メンヘラ人格をしっかりと作り上げ、アピールするのも重要である

インド人は実は人情である。非常に。なので、人前で俺は泣いた。

「みんなで俺を出世させない気なんだ!俺が嫌いなのか!俺の子供たちはもう終わりだ!」

みたいなことを言って号泣するのである

楽勝だ。子供なんていないし妻もいないが、インド人家族の事となるとアホになる。根源的に、家族がいないという概念理解できない。

子供にはマジで甘い。ものすごく甘い。厳しい人が時々見せる優しさにも弱い。プリミティブな情緒で生きるカスインド人だ(それを計算に入れて小ズルく短期利益を得ようとしてくる知能があることも忘れてはいけない)。

から情緒を揺さぶることで感情平衡感覚喪失させていく。

学校先生がすねて教室からいなくなる、みたいな手法がやたらと効くのがインド人というみじめなアニマルである

ただしそれだけだと舐められるので、時にマッチョを見せつけることも重要だ。

相手価値観を破壊し、思想破壊するためには必要なことである。Aな人間はBなはずだ、という既存概念を壊していくことで今までの人生経験否定して人生否定して人格否定して、透明で使える人間に仕立て上げなければならない。

いや、人間である必要はない。虫のように美しい機能的な存在へと作り変えるのだ。

そういう意味人間人間たらしめる、『宗教』という共同幻想は厄介だ。

俺は宗教が嫌いだ。

仕事邪魔からだ。

死後の世界とか輪廻転生とか因果応報とかあるわけがないだろ。

そもそも思想だの心の拠り所というもの必要ない。思考だけしてくれればいいのだ。

早く人格個性を捨てて欲しいのだ。インド土人共の基本感覚文字通り地球ゴミことヒンドゥーなのだが、こいつを否定するのはあまりにもコストが高い。

まあ基本的には「君の不利益って全部キミの前世のせいだよね。カスみてえな前世だな」ということをひたすら言い続けるのが有効だ。

勿論直接的には言わない。そういう感覚をくすぐるのだ。あとはカーストプライドも、同様に「くすぐる」。

インド会社にはカスみたいな下働きカスども(トイレ掃除だけするやつとか、社内配送だけするカス。こいつらも自分の下の階層人間を見下しまくっているのでまさにカス中のカスだ)と比べてお前はどうなの?というのをやるのだ。

これはかなりバランスを考えなければいけない。遠回りにやるのだ。あの人の仕事は丁寧だね(それに比べてお前は)といったように。

リボンデスクにつけることも有効だった。俺は10個のリボンを部下に配布した。

「最低限の仕事をするたびにコイツをとる。これが全部とれたら一人前」というようにするのだ。

勿論、この制度は部下から提案があったことにする。インド人基本的に人事評価からなにからなにまで共有する家族的な所がある。

それを壊す意味でも、疑心暗鬼を生み出しコミュニティコミュニケーションの分断を狙っていかなければならない。

あいつはお前を陥れようとしているぞ」というのをなぜか嫌うのだ。やつらは。常に即物的思考他人迷惑をかけまくっているのと矛盾しないのかと思うものだが、とにかくそういうものなのだ

加えてプライドの高さを利用するためにもこのリボン制度有効だった。

要は、リボンが取れてないやつはバカだ、という風潮を作るのである。そして、これはみんなの前では取ったり取らなかったりする。状況や報酬矛盾が生じるようにする。

あいつは俺に嘘をついているんじゃないか?」という不和を生み出すことで、横の結束を機能不全に陥らせる。

これにはまともなインド人の協力が必要不可欠だった。仮に「クリシュナ君」としよう。彼は優秀で、俺やお前達みたいな一般的日本人の規律を多少なりとも理解できる男だった。

俺は彼と親しくすることにした。実際にクリシュナ君は仕事が大変できたので、「なんでこいつみたいにできないんだ」というポジションにつけるのにはうってつけだった。、

同時に、排斥される男も必要で、仮に「サイ君」としよう。彼は仕事はそこそこだったが、とにかく嘘をつく癖がひときわ酷かった。だから俺は彼を徹底的に弄った。

髪型を弄り、顔を弄り、趣味を弄り、学歴否定し、業務を全て笑い物にした。そのうち、俺と一緒にみんながサイ君を笑うようになった。ゴミ共め。知能がねえからイジメなんかするんだ。

と俺は冷静だったが、とにかくそうやって家族集団意識を、会社のチームに少しずつスライドさせる、そういう手ごたえを感じていた。

同時に成績も無事に上がり始めていた。当然だ。通常の3倍働いているのだから、業績もその分伸びる。だが、俺は個人的にはあと倍は行けるなと感じていた。

家族と飯食うとか、下らねえ趣味だとか、そういう余計な人生をやっている暇があったらもっと仕事が出来るからだ。

徹底的な監視システム成功しつつあった。基本的にやった業務は全て写真で撮って送れ、俺は見たものしか信じない、というのを大原則にしたのだ。(これは多くの日系企業、現地企業に取り入れられた)

信じられるのは、ルール規律成功、そして俺だけでいい。蜂さんや蟻さんのような、何も考えず何も思わず集団のために無意味に命を捨てられる、美しい生命体になるのだ。

だが、混沌に秩序をもたらそうとする真実と愛の伝道師ライトサイドの権化たる俺はこの後、ゴミカスから、何故か思わぬ反撃を食らうこととなる。(続く)

2024-09-09

三拍子の曲って難しいな

つい「ケルト風」と称するアニメ音楽みたいになる。

志方あきこ好きなん?みたいな。

ビリー・ジョエルピアノマンとか

ボブ・ディランThe Times They Are a-Changin' みたいに渋かっこいい乾いた感じにしたいのに

安い情緒たっぷりになる

2024-09-06

anond:20240906142618

発露する感情が違うのはその通りだろうね

 

文化的に「女は泣いても許される」「男が涙を見せるなどもってのほか」という風潮があるのに加え

女は男の感情的お世話役性別不問でいうと部下が上司肯定したりするようなやつ)、つまり

職場でも家庭でも感情労働の比重がかなり重いため

ストレスかかってるのかもしらん

 

人間ストレスが高じると情緒不安定になり、

その中には涙もろくなったり泣き叫んだりしやすくなるタイプがいる

anond:20240906142427

情緒不安定とは感情の起伏が激しい状態のことで「イライラする」「すぐ怒る」などの攻撃的な感情が出る一方で「急に涙が出る」「ひどく落ち込む」など、ネガティブ感情が出ることもあり、その変化や落差が大きいことも情緒不安定の特徴です。

学校仕事場で泣き出したりするのは女性が圧倒的に多いので、発露しやす感情が違うのではないでしょうか

anond:20240906142017

人類だいたい情緒不安定だぞ

 

特に

自覚がないだけで

怒りや恨みという攻撃的、否定的感情乳幼児期のころから男のほうが持ちやすく、長引きやすいことを示唆する研究なんかが複数ある

ほら男って衝動性高いじゃん女より

カッとなってやりました…は高確率で男だから

 

男は情緒不安定なほうの性

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