「ミュージシャン」を含む日記 RSS

はてなキーワード: ミュージシャンとは

2015-04-14

小5の気持ちで書く日記

私は文章を書くのが苦手です。何度言われても、上手に書くことができません。

文章を読むのは好きです。

放っておくと、インターネットや本を通して、一日中文章を読んでいます

私には、上手な文章と下手な文章の違いが、なんとなくわかります

上手な文章は、私の中にするすると水のように入り込んで、渇いた心を満たします。

上手な文章は、予想外の方向から力強いパンチが飛び込んできたときみたいに、頭を揺さぶます

上手な文章は、まっ暗闇の中にどこまでも私を引きずりこんで「この先はどこまで続いているのだろう」と恐ろしい気持ちにさせます

こんな風に書くと

「どんな文章が上手で、どんな文章が下手かわかるのであれば、あなたが上手と思えるような文章を書けばよいのではないか?」

と思う人もいるでしょう。

そうではないのです。

プロ野球選手の投げ方と、普通のひとの投げ方を見比べて

プロ野球選手の投げ方のほうがきれいだな」と気づくことは簡単です。

でも、プロ野球選手と同じようなきれいな投げ方で「ビュンッ」という早い球を投げることはとても難しい。

私は、同じことが「文章を書く」ということにも当てはまると思います

私の文章は、きっと、誰の心も満たさないし、誰の頭も揺さぶらないし、誰を不安にさせることもありません。

そのことは、私をとても悲しくさせます

私は、誰かの文章に満たされ、揺さぶられ、不安にさせられた分だけ、私の文章で誰かを満たし、揺さぶり、不安にさせたい。

きっと私は、誰かに褒めてほしいのです。誰かに「あなたはすごいね」って言ってほしいのです。

私は文章が好きで、文章を読むことがとても大切にしてます

私の中で、上手な文章を書くことができる、ということはとてもかっこいいことです。

俳優よりもアイドルよりもミュージシャンよりも、上手な文章を書くひとのほうがずっとずっとかっこいいと思っています

から、誰かに褒められるとき

「おしゃれだね」

よりも

「歌がうまいね」

よりも「運動神経がいいね

よりも

文章が上手だね」

と言われたときが一番うれしいだろう、と思います

今、私は、ここまで自分の書いた文章を読み返してみました。

やっぱり、上手な文章ではないなと思います

それでも、毎日少しずつ文章を書いてみようと思います

毎日絵を描けば、少しずつ絵がうまくなるように、毎日練習すれば、スポーツが上達するように、私の文章も、少しでいいから上手になってほしい。

これは、私の願いです。

2015-04-07

ライブMC音楽表現したいものについて語られるとげんなりする

「ありきたりなこと言っちゃうかもしんないけど音楽ってやっぱり他人自分の感じたことを伝えるためにあるんだって思ってる。

から楽しいことはもちろん、辛いこと悲しいこと悔しいことだって音楽表現する価値があると思う。

次の曲、俺がどん底でやりきれない思いだった時に作った曲で、(ここでどん底エピソード

から、聴いてて気持ちよくはなれないけど、でも、今日、ここで、この曲をやる意味、それは当時の俺と同じ気持ちの奴に、お前はひとりじゃないって伝えたいから。…それでは聴いてください」

こういうMCにはより曲のメッセージ性が強まるという鑑賞ガイド役割があるのはわかっていても、音楽表現したいとか言いつつ長々と言葉で説明してんじゃねーよと思ってしまう。

さらに話しながらミュージシャン本人が涙ぐんで、ファンももらい泣きしていたりすると本当にドン引き

2015-03-12

http://anond.hatelabo.jp/20150312124615

何がしたいのかわからん

一刻も早く復興して欲しいってんなら、ポンと何十万か寄付して好きに使ってもらった方が効果的だろうし、

俺の音楽を聞けぇ!って話なら行って演奏すりゃ良いだろうし、

何がどうなったら良いと思ってるのかヴィジョンとか目的全然見えない。

追記

CD1枚2500円で買うとして、買ってくれるお客さんはその2500円でできた色々な可能性を失うだろ?

他の人のCDを買った方が良かったかも、ランチに使った方が良かったかも、どっかに遊びに行った方が良かったかも。

その可能性を全部捨てて、俺にその2500円使ってください!って、ミュージシャンCD売るってそういうことじゃん。突き詰めて言えば。

ボランティア演奏すんのだって同じだと思う。

旅費の分、他のことに使ってもらった方が良い。ってなったら、それはミュージシャンとしては敗北でしょ。

俺がボランティア演奏することが、一番お客さんを楽しませることになるんだ!ぐらい自信持ってやれない時点で負けてる。

童貞が、自信がないからきな子告白できなくて、

自分プライドを保ちつつ、告白しなかった言い訳必死に考えてるみたいだな。と思った。

旅費をかけて海外から被災地ボランティア演奏意味ある?ない?

音楽留学したのをきっかけに海外移住した。身バレしたくないので詳細は省略させていただくが、何とか生計を立てながら音楽活動を続けて何年かになる。いつまで経っても完璧ということはないが、それなりに満足のいく演奏もできるようになり、人前で演奏してお金をいただけるようになってきた。

東日本大震災の後、用事で日本に帰っている時にたまたま東北ボランティア演奏する機会があった。

自分演奏するジャンルは、必ずしも万人受けするものではないが、日本の伝統的な曲を選んで、心をこめて演奏させていだたいた。しか演奏する時は緊張したし、少し怖かった。

海外から来たと言って演奏すれば被災者が喜ぶと思ってるのか?」

「そこに残るわけでもない旅芸人ときに前向きに頑張れと言って演奏されてもねえ」

震災にかこつけて演奏するのは『役に立った気になりたい』という自己満足なのでは?」

そんなふうに思われるのではないかと思った。それに他にも有名なミュージシャン達が多くのボランティア演奏を行っている。被災地以外で支援金を募るためだったり、東北の現地で被災者に対して演奏をするためだったり、東北未来を担う若者達と一緒に合同演奏をしたり。そんな人達がすでにいるのに、今更自分のような無名ミュージシャン東北に出向いて演奏しますと行っても喜んでもらえるものなのか?

しかし実際に演奏してみたところ、意外にも大変温かく受け入れてもらえた。中には演奏を聞いて涙を流していた方もいた。ボランティアの人たちとも話をして、「あまり難しく考えなくていいのではないですか」と言われた。海外からわざわざ来て東北演奏してくれる人がいるならうれしいものですよ、と。そして被災地で暮らす人たちやボランティアの人たちの色々な苦労を耐え忍びながら長い復興に向けて一日一日を生きていく強さに触れて感動し、私自身が元気をいただいてしまった。

それからしばらく経ち、昨日で震災から4年となった。

ネットニュースSNSで流れてくる記事を見ていると、心の疲れが出てきている人たちが増えてきていると言う。終わりの見えない仮設住宅での暮らし被災者に対する差別風評被害行政東電に対する不満、補助金補償金での不公平な扱い、等々。特に被災者同士が妬みあったりするのは痛ましいことだ。多くの人は不平を口に出すこともなく、黙って耐えているのだろうが、それも限界に近づいてきているのだろう。

何か自分にできることはないのか、とずっと思ってきた。

たかミュージシャンだ。できることは限られている。CDを作って販売したお金寄付する。チャリティーコンサートを開催する。他のミュージシャン友達がやっているように、そういうこともできるだろう。実際自分もそういう活動も少ししている。しかし、実際にまた東北に行って演奏したいという気持ちが私は一番強い。東北に行って演奏することで、何か力になれないだろうか?

もちろん、旅費が一番の問題だ。旅費を稼ぐためにチャリティーコンサートをやったり、CDを売ったりしなければならないのはもちろん、旅費の半分以上は音楽以外の仕事で稼がなければならないだろう。しかしそれだけのお金をかけて、自分のような無名ミュージシャンがわざわざ日本に行って演奏することに意味があるのか。そのお金をそのまま寄付したほうが良いのではないか。

日本に住む親しい音楽仲間にチャット相談すると、彼女の正直な反応が返ってきた。

うちらはただのミュージシャンからできることは限られてるし、何かを解決できないことも多いんじゃないかな。残念だけど。音楽なんて非常時には役に立たないんだし。本っ当に辛い思いしている人に、音楽で元気出して、癒されてって言える?まあでも⚪︎⚪︎(自分名前)が自腹切って日本に来ようとしてるなら、やればいいんじゃないの?誰に迷惑かけるわけでもないんだし、たぶん聞いてくれる人もいるよ。あ、でもこう言うと、それって自分のためにやってるって感じだけど。。」

確かにそうなのかもしれない。何十万円もかけて日本演奏しに行って人に聞いてもらうことに、その何十万円を直接寄付すること以上の意味価値があるのか(自己満足以外に)?

でも心の隅では、必ずしもお金だけじゃないはずだ、と思っている。それに何十万円と言っても、被災地全体が必要お金に比べればごく僅かなもの。その少しのお金自分にとっては大金だが)を、東北出会う人たちと少しの時間を一緒に音楽を楽しんで過ごすために使うことにも意味があるのではないか。

こんな私のようなミュージシャン東北演奏することに意味があるだろうか?

2015-02-21

絵師って、ひょっとしてケチなの?

知り合いにイラストレーターが居て、友達誕生日サプライズパーティー用に、

ちょろっと紙にペンで簡単な絵を描いて欲しいってお願いしたのね。

 

その時は、一瞬の間はあったけど、普通に絵を描いてくれて、ありがとー、ってなった。

 

でも、その後、こっそり私が知らない事になってるtwitterを見たら、なんか

大工さんに無料で家を建ててくれって言わないのに、うんぬんかんぬん」

みたいな、なんか私に対するあてつけのような発言をみたのね。

 

確かに時間がかかる絵をお願いするなら、確かに無料でお願いするのは変だと思うんだわさ。

でも、ほんの30分もかからないぐらいの絵で、なんでこんな事言うの?

これって絵師さんの共通認識なの?

 

例えば、プロミュージシャンに、友達誕生日で、ちょっとそこにあったギター演奏してって頼んだら、

たぶん嫌な顔ひとつしないよね。

 

絵師って、ひょっとしてケチなの?

2015-02-19

「東京」

さっきラジオを流し聞きしてたらケツメイシ東京って曲が流れてきた

よくある「東京に出てきた俺とキミの」みたいな歌詞だった。


こういう曲は昔から沢山ある。良曲も多い

ミュージシャン東京とかの都会に出てきて人前で歌わないとみたいなところあるからしばらく作られ続けるだろうけど、

これからどんどん地元志向マイルドヤンキーになってくるとこういう曲って共感されなくなっていくのかなー

スキマスイッチ事案って、「面白い○○」問題なのではないか、という仮説をたてた。「面白い俳優」「しゃべりが達者なミュージシャン問題の可能性。

スキマスイッチ音楽や人となりがどんなものなのか、まったく良く知らないままの超暴論だが、

唯一知っている情報としては、アメトーークサッカー日本代表芸人スキマスイッチ出てたってとこだけ。そこだけで一点突破だ。

スキマスイッチのどっちの方が出てたか認識してないままに、さらに、1年くらい前のTVの話で恐縮なのだが、

アメトーーク日本代表芸人の時のスキマスイッチは、正直空気読めてないというか割と酷った。何で出たんや。アメトーークのひな壇って難易度高いだろう。そして案の定面白くなかった。

「俺らトークも割といけてる」という自意識が、毒舌MCにつながったのではないか。

2015-02-16

http://anond.hatelabo.jp/20150216050105

便乗して書いた割にブクマが伸びて恐縮している。インスピレーションを与えてくれた元増田感謝するとともに、率直な感想を書いてくれたお前らにも感謝したい。元増田のような文才は俺にはないが、その分ミュージシャンから見た、あまり大げさな飾り言葉のない本音を伝えたつもりだ。

月並みリストだ、つまらん」という意見もあるだろう。しかしそれだけ定番化したものの完成度の高さというのはバカにできないし、それどころか極めて貴重なものであり、これを無邪気に聞き始めることのメリットのほうが海のものとも山のものとも分からないレア盤を首を傾げながら聞くことよりもずっと価値があると俺は考える。もっと重要なこととして、演奏から見ても、これらの定番の超一流アーティストたちというのは、他のアーティストよりも表現手法確立やそれに向けた努力という面で比較にならないほど飛び抜けている。ジャズファンで良くある「そのアーティストなら俺はもう知ってる。もっとレアなのを持ってこい」ていう傲慢な態度にはいつもイライラさせられる。

しかし「こういう説教じみたウンチクジャズハードルを上げてる」という意見には正直ハッとした。自分としては演奏者の立場に立って正直に書いたつもりだったからだ。評論家気取りの的外れ抽象的なジャズ批評には俺自身辟易しているのだが、いざ自分が書いてみるとそういうものと同じカテゴリーで見られるらしいというのは良い発見だった。そのようなハードルを下げるために面白おかしく相手を煙に巻いてわかった気にさせたり、別にからなくっても大した問題じゃないという態度をとるのは自分にはできない選択だ。きちんと聞けばジャズはとても分かりやす音楽からだ。

さて、「アーティスト10人なんて多すぎる、CD3枚にしてくれよ!」という意見はごもっとも。3枚厳選する時間が今ないので、ざっと探してみた感じでこれならとりあえず間違いないんじゃないのかと思うのがあったので紹介しておく。

http://www.amazon.co.jp/Best-Blue-Note-Various-Artists/dp/B004IZBJ3K

これが本当に3,471円なのならお買い得だ。とりあえずこれで100曲繰り返し聞いてみて気持ちよいなと感じる瞬間がたくさんあるならジャズはお前の音楽だ。

追記:前の記事で入れたYouTubeリンクは実は一つ一つかなり厳選した。「あ、とりあえずこのアーティスト動画あるみたいだから貼っとこ」というものではなく、動画最初のほうでサウンドの特徴が出てるものを選んだり、今すぐ流してBGMにできる名盤を選んだりしている。同業者が見たら「ははあ、なるほどね」と意図を分かってくれるようなものが多いと思う。よかったらそちらも是非活用して欲しい。

ジャズの話

http://anond.hatelabo.jp/20150216002609

自分プロではないがジャズ演奏をする。

ジャズは好きだし、有名な盤も聴き切れてはいないが結構聴いてきたと思う。

マイルスの話はすごく共感してしまった。

だれだれが奏でるどうこうしたフレーズ、とかそういう小難しいことをジャズ演奏者や愛好家はよくいう。

もっと直感的に音楽本能で楽しんでもいいのではないかとよく思うんだけど、

ジャズを知らない人がちょっと興味あるとか、ジャンルの幅広げてみたいくらいの気持ちの人にはもうちょっとキャッチーな感じのジャズをすすめられたらいいなと思う。

自分ポップスパンクロックなどの演奏を経てからジャズ世界にやってきたので、聴き始めた頃を思い出してみると、

やっぱりキャッチーメロディや、分かりやす(笑)ジャズはすごく聴きやすかった。

ジャンルで言ったらハードバップはかなりワクワクした。

Horace Silverとか、Cannonball Adderleyとかね。

例えばだけど、全くジャズいたことない友人にHigh Fiveすすめてみたら、聴きやすくて気に入ってくれてたよ。

相手が取り敢えず聴いてみたいのか、ど定番を聴きたいのか、求める回答によってすすめたいのは違うから

誰々がいいとか具体的に書けないけど、

ジャズクラシックみたいにごにゃごにゃとソロがぶわーっと続いて何やってるかよくわかんない小難しい感が

ハードル高くさせてるとなんとなく思うので、

ライトな感じで求めてる人もいるんじゃないかとずっと思っている。

○○も聞いたこと無いの?みたいなジャズミュージシャンとの会話はもう勘弁して欲しい。

あと、大体有名な昔のジャズミュージシャンの紹介も多いけど、

殆どみんな死んじゃって生で彼らの演奏は聞けないし、

現代ジャズミュージシャン面白い人たくさんいるから、そういうのも紹介する記事とかもっと読めたら嬉しいな。

具体的に誰がどうと書けなくて本当に申し訳ないけど。

ジャズで食ってる俺がジャズ聴き始めたい人にオススメするTOP 10

http://anond.hatelabo.jp/20150214223556

これ読んでちょっと偏ってるなーって思ったから書いてみた。

これからジャズ聴きたいっていう人に俺がオススメできるアーティスト10人選ぶならこんな感じ。

10マイルス・デイヴィストランペット

マイルスジャズ歴史の中心にいたことは間違いないのだが、彼のサウンドは案外ジャズ初心者にはとっつきにくい。マイルスジャズ最先端を切り開いて、偉大なフォロワーたちがそれをうまく消化&昇華してスタイルを定式化させていったのであって、そうして洗練されていったものを聞いたほうが入りやすいと思う。俺は今プロでやってるが、若いマイルスを聞いてもピンとこなかった。「マイルス理解できなきゃ本物じゃない」という雰囲気があったから、マイルス分かってるフリしてたけどな。リズムセクション凄さだけは強烈だった。さんざんジャズをやってきた今マイルスを聞いて初めて彼の音楽時代性が分かり、当時いかにインパクトがあったのか、そして彼がどれだけ偉大なバンドリーダーだったのかが分かる。まあ、こういうリストマイルスを入れるのはお決まりなので、10位に入れておく。

50年代 https://www.youtube.com/watch?v=OcIiu1kQMx0

60年代 https://www.youtube.com/watch?v=x_whk6m67VE

70年代 https://www.youtube.com/watch?v=ryiPO1jQdaw

80年代 https://www.youtube.com/watch?v=4qoNZnWcb7M

9位 セロニアス・モンクピアノ

風変わりなアーティストだが、その独特なサウンドは好きな人もいると思う。不協和音のようでもあり、全体としては調性に収まっている絶妙バランス感覚。変てこりんな曲もあれば、ものすごく美しい曲もあって、頭の中を見てみたいと思う一方、まあ感覚が爆発してるアーティストってのはこんな感じだよなとも思う。挙動不審系のパフォーマンスを見ているような面白さもあり、演技なのか本気なのか分からないところがある。モンクはそれを形のある一つのスタイルとして定義できたところがすごい。ジャズミュージシャンの間では別格扱いというか、特別地位を占めている。

https://www.youtube.com/watch?v=KshrtLXBdl8

8位 キース・ジャレットピアノ

この人はすごいよ。メロディーを紡ぎ出す感覚、その一瞬にしかまれないサウンドを追求する即興へのこだわり、小節をまたがってフレーズ自由自在に展開させるオープンタイム感、これらを曲の枠組みが明確なスタンダード曲上で展開することで分かりやすさを担保するバランス感覚、それらの全てを可能にする素晴らしいゲイリー・ピーコックベース)とジャック・ディジョネットドラム)の存在。ただ、彼のもう一つの特徴である「うめき声」には最初戸惑う人も多いと思われるので8位としてみた。ちなみに慣れるとそのうめき声が彼の粘っこい右手メロディ絶妙に絡み合って彼の音楽の一部に聞こえてくる。マイルスから天才であるってのはどんな気分だ?」とからかわれたってエピソードがある。すげーレベルの話だ。

https://www.youtube.com/watch?v=io1o1Hwpo8Y

7位 ウィントン・マルサリストランペット

ジャズエレクトリック系やフリー系に進化していった中で、「ジャズルーツであるニューオリンズ音楽に立ち返り、それをベースモダンハーモニーや複雑なポリリズムを取り入れて新たなジャンルを切り拓いた人。ジャズクラシックの両方でグラミー賞を取ったというとんでもないトランペットの名手でもある。美しい音色と安定したテクニックは卓越している。彼が確立した、「トランペットが張り詰めたソロを吹く背後でピアノドラムが複雑なポリリズムで組んずほぐれつのインタープレイを展開する」というスタイル初心者にも迫力があるはず。ちょっと難解な印象も受けるかも知れないが、その場合は彼の率いているリンカーンセンタージャズオーケストラニューオリンズ風サウンドを楽しむと良いよ。

https://www.youtube.com/watch?v=poZWg-pVboE

https://www.youtube.com/watch?v=ZBJ-MmTA-eU

6位 パット・メセニーギター

ギターが入ってねえなと思ったので、メセニーを入れておく。怒るジャズファンもいるだろう。入れるならウェス・モンゴメリーだ、ジョー・パスだ、ジム・ホールだ、と。まあ確かに、メセニーはフュージョンっぽいサウンドだし、ジャズ構成する重要な要素のうち「ビバップ」や「ブルース」があまり感じられないとも言える。しかし彼の音楽には、聞いていて映画のワンシーンあるいは夢でみたどこかの草原が思い浮かぶような、ビジュアルな美しさがある。その辺は彼の音楽を支えてきたキーボードライル・メイズ空間的サウンドによるところが大きいが、それがメセニー自身音楽観、独特なソロフレージング音色と相まって、ジャズを次のステージ進化させたクレジットはあげていいと思う。音楽理論的には結構複雑なこともやっているのだが、あまり感じさせない。特に変拍子へのアプローチは素晴らしく、「口ずさめる変拍子」「心地よい変拍子」を確立している。その辺の聞きやすさでオススメしておく。

https://www.youtube.com/watch?v=ApI-zA6suXE

https://www.youtube.com/watch?v=gDLcttSAVS0

5位 ジャコ・パストリアスベース

エレクトリックベースの弾き方に革命を起こした人。管楽器並みのソロフレージングハーモニクスを使ったカラフルコード演奏などでベース役割を大きく変えた。細かい音符を自在に刻む指弾きのグルーヴ感は圧倒的。作曲家としても素晴らしい名曲を多く残している。途中からクスリ漬けになってしまって最期悪態をついていたところを警備員に殴られて死ぬという劇的な人生だったが、ジャコ好きな人はそういう破滅的な「危ない」ところも愛していると思う。俺はそうなる前にシンガーソングライタージョニ・ミッチェルと共演している頃の演奏が一番好きだが。

https://www.youtube.com/watch?v=Hbr0hXkArWg

https://www.youtube.com/watch?v=TgntkGc5iBo

4位 カウント・ベイシーピアノ

ディーク・エリントンでもいい。ビッグバンドを一つ入れておこうと思ってな。本当はサド&メル(現在ヴァンガードジャズオーケストラ)と言いたいところだが、やっぱり若い頃にサド&メルのビッグバンドを聞いて最初はピンとこなかったから、初心者には勧めないでおこう。ベイシーとか、まあ当時のビッグバンドは、やっぱりグルーヴ感がすごい。当時のダンスミュージックからね。彼らは四六時中ああい音楽に専念できてギャラもがっぽり稼いでたから、現代の我々が付け焼刃ビッグバンドやってもそうそう敵わないのが辛い。アレンジ良し、テクニック良し、アンサンブル良し。逆にいうと、そういう時代性もあるから、少し古臭く感じるところはある。俺は好きだけどね。

https://www.youtube.com/watch?v=TYLbrZAko7E

https://www.youtube.com/watch?v=4ZLvqXFddu0

3位 ビル・エヴァンスピアノ

現代ピアノジャズのサウンドを確立したと言っていい人。彼がコードを弾くとき和音の積み上げ方はマジで音楽大学教科書に載ってるんじゃないかと思う。そういう理論の部分以外でも、彼のやや哀愁を帯びた内省的な音楽性や、ピアノベースドラム対話するように自由に展開する演奏スタイルはとても理知的面白く、それで多くのファンを惹きつけてると思う。まあ、小説とかにも登場するし、あまり多くを語る必要もない。聞け。

https://www.youtube.com/watch?v=GQwhHdXGFwA

https://www.youtube.com/watch?v=Jl5GDXb2fwQ

https://www.youtube.com/watch?v=FTlKzkdtW9I

2位 ダイアナ・クラールヴォーカルピアノ

やはりジャズに入りやすいところとして一番無難なのは女性ヴォーカルだが、問題は誰を入れるかだ。本当はカーメン・マクレエサラ・ヴォーンエラ・フィッツジェラルドといった鉄板定番を入れたい気もするが、今日現在聞くジャズヴォーカルとしては、ちょっと粋でオシャレな、それでいて正統派スウィング感をもっていて、テクニック表現力もあり、ルックスも良く、きっちりセールスも出しているダイアナ・クラールを押す。ただ、このリストの中ではやや異色と言えるかも知れないので、サラ・ヴォーンなどのリンクも貼っておこう。こう言っておきながら、俺は「ダイアナ・クラールが好き」と言うジャズファンには警戒の念を持って、本当に彼女の実力を分かっているのか、うわべだけのシャレオツさで聞いているのかを探ることにしている。

https://www.youtube.com/watch?v=dJHXQAs9vlk

https://www.youtube.com/watch?v=5cZG2WnXPgk

https://www.youtube.com/watch?v=4VHWw9G6_UU

1位 ジョン・コルトレーンサックス

現代テナーサックスのサウンドを確立した人。コードの細分化再構成、次から次へと繰り出される音の洪水が特徴の一つで、マイルスからは「お前、全部の音をいっぺんには吹けないぞ」とからかわれたとか。まあ、俺としてはそういう音の洪水の部分よりも、ややかすれたような彼のサックス音色が特徴的で、ひたすら高みを目指す修行者のような人柄を連想させて、聞く人の心に引っかかるんじゃないかと思ってる。「コードの細分化を究極まで突き詰めた先にあったのはコードの制約を取っ払うことだった」という彼のサウンドの進化悟りの境地に達した聖者を思わせるというところもある。マッコイ・タイナーピアノ)とエルヴィン・ジョーンズドラム)もコルトレーンのサウンドをともに作り出す中で新たなスタイル確立した。この全体のサウンドが俺は大好きなので1位押し。

https://www.youtube.com/watch?v=Lr1r9_9VxQA

https://www.youtube.com/watch?v=xr0Tfng9SP0

https://www.youtube.com/watch?v=YHVarQbNAwU

https://www.youtube.com/watch?v=-mZ54FJ6h-k

以上。

「あれが入ってねーぞボケ」「やり直し」コメント大歓迎。今後人にオススメする時に参考にさせてもらう。

2015-02-14

( ・3・) クラシック好きの上司ジャズを聴きたいと言いだして・続

承前

http://anond.hatelabo.jp/20150214223556

9. スティーヴ・レイシーソプラノサックス

Steve Lacy (1934-2004)

――スティーヴ・レイシー独立独歩ソプラノサックス奏者です。サックスといえばアルトテナーだった50年代からソプラノを吹いていました。

Evidence (1961) http://youtu.be/X9SBzQw2IJY?t=5m42s

( ・3・) 面白いテーマの曲だな。真面目な顔で冗談を言っているような。

――セロニアス・モンクが書いた曲です。レイシーはモンクの曲をたくさん演奏しています。一方、ハリウッドブロードウェイの曲はとりあげない。レパートリーに関しては人文系古本屋の主人みたいなところがあります

( ・3・) みすず書房とか白水社とか、そういう本ばかり並んでいるわけだ。

――白水社といえば、レイシーはサミュエルベケットと面識があって、ベケットテクストに基づいた作品も発表しています

( ・3・) 「真夜中だ。雨が窓に打ちつけている」

――「真夜中ではなかった。雨は降っていなかった」――と、ベケットごっこはともかく、演奏どうでしょう

( ・3・) まっすぐな音だな。あまりヴィブラートをかけない。アタックの瞬間から音程の中心を目指している。必ずしも正確な音程というわけではないけれど。ソロのとり方としては、テーマとの関連性を保って、構成を考えながら吹いているように聴こえる。言うべきことだけを言って余計なことはしゃべらない。

――そういう点では、プレイヤー資質としてはマイルス・デイヴィスに近いのかもしれません。マイルスとも少しだけ共演したことがあるのですが、もし正式バンドに加わっていたら歴史が変わったかも。 [6]

Reincarnation of a Lovebird (1987) http://youtu.be/FbaKNB4cIlc

――こちらは後年の録音。ギル・エヴァンスという編曲仕事で有名な人がエレピを弾いています。この人も指だけ達者に動くのとは対極にいるタイプで、柔らかい音色中和されていますが、ずいぶん込み入った和声です。

( ・3・) そこらじゅうで半音がぶつかってるな。

――でも美しい。

10. ビル・エヴァンスピアノ

Bill Evans (1929-80)

――昔、レコードを扱う仕事をしていたので確信をもって言えるのですが、日本いちばん人気のあるジャズミュージシャンビル・エヴァンスです。マイルス・デイヴィスよりもリスナー裾野は広いかもしれません。

( ・3・) 俺でも『ワルツフォー・デビー』を持ってるくらいだからな。でもどうして「とりあえずエヴァンスを聴け」みたいな風潮になってるんだ?

――まず、彼がピアニストだということ。もしベース奏者だったらここまでの人気は得られません。それからロマン派印象派に慣れた耳で聴いても違和感がないこと。ジャズに関心がなくてもエヴァンス聴く、というケースは大いにありうるでしょう。最後に、みもふたもない言い方ですが、彼が白人で、細身で、眼鏡をかけていたこと。

( ・3・) 知的で繊細に見えるのな。

――知的で繊細なジャンキーでした。もっとも、最後の要素はなかったことにされがちなのですが……。

( ・3・) ダウナーな面も併せもった音楽だと。

――はいエヴァンスチェット・ベイカーに深く共感してしまう人は、モルヒネ代用として聴いているのではないかと思います。「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」という有名な曲をとりあげたいのですが、エヴァンスの前に、まず歌の入ったものからフランク・シナトラヴァージョンです。

My Funny Valentine (Sinatra, 1953) http://youtu.be/z9lXbgD01e4

( ・3・) 金の力に満ちた声だな。His voice is full of money.

――マフィアを怒らせるようなことを言わないでください。折り目の正しい編曲で、ポップスとしては非の打ちどころがありません。ボブ・ディラン新譜シナトラカヴァー集らしいのですが、ディラン子供のころにラジオで流れていたのはこういう音楽です。当時のアメリカ人にとっては、ほとんど無意識に刷り込まれた声と言っていいでしょう。

My Funny Valentine (Baker, 1954) http://youtu.be/jvXywhJpOKs

( ・3・) 出た、いけすかないイケメン

――チェット・ベイカー。午前三時の音楽です。もう夜が明けることはないんじゃないかという気がしてくる。どんな曲か覚えたところで、エヴァンスを聴いてみましょう。

My Funny Valentine (Evans and Hall, 1962) http://youtu.be/ReOms_FY7EU

( ・3・) 速い。

――速い。そしてちょっと信じられないクオリティ演奏です。ジャズはいつでも誰でもこれくらいできて当然かというと、そんなことはないので安心してください

( ・3・) 別に心配はしていないが。やっぱり即興なのか?

――別のテイクではちがうことをしているので、ほとんど即興だと思います。決まっているのはコード進行だけ。

( ・3・) コード構成音をぱらぱら弾いてもこうはならんわな。自分の頭の中にあるモチーフを発展させるのと、相手の音を聴いて反応するのと――そういう意味ではチェスに似ている。

――この演奏は一対一ですからね。集中力は同じくらい必要かもしれません。しかも持ち時間ゼロという。互いに相手の出方を読んでいるうちに一種テレパシーが起こって、3分50秒あたりにはふたりの脳がつながっているような瞬間があります

( ・3・) このギターを弾いてるのは?

――ああ、忘れていました。ジム・ホール。偉大なギタリストです。悪魔に魂を売って人並み外れた演奏技術を手に入れるというブルース伝説がありますが、ジム・ホール場合は魂ではなく頭髪を犠牲しました。

( ・3・) また好き勝手な話をつくって……。

――いえ、本人がそう語っています。ジミー・ジューフリーバンドいたころ、どう演奏すればいいのか悩んで髪が薄くなったと。 [7] でも、髪なんていくらでもくれてやればいいんですよ。肉体は滅びます芸術永遠です。

( ・3・) ジミー・ジューフリーって、あのドラムのいない現代音楽みたいなジャズをやってた人か。そりゃ大変だったろうな。

おいとま

持参したCDを一通りかけて、そろそろ日が傾いてきた。彼はライナーノーツをめくりながら「はーん」「ふーん」などとつぶやいていたが、夕食の邪魔にならないうちにおいとましたほうがよさそうだ。

「もう帰るのか?」

はい。きょうはもうおしまいです」

「そうか。わざわざ悪かったな。よし、ちーちゃんお客様にご挨拶だ」

彼はそう言って猫を抱き上げたが、ちーちゃんは腕をまっすぐにつっぱって、できるだけ彼から離れたがっているようだった。

「きょう持ってきてくれたCDは、うちに置いていっていいからな」

「置いていっていい?」

だってほら、いちど聴いただけじゃよく分からんだろ。そのかわりと言ってはなんだが、シュニトケ弦楽四重奏曲集を貸してやろう。何番が優れていると思うか感想を聞かせてくれ」

それから

まだCDは返ってこない。「返してほしけりゃ取りに来い」と彼は笑うが、その目はハシビロコウのように鋭い。ただ来いというだけではなくて、また別のCDを持って来させる魂胆なのだわたしはどうすればいいのだろう? ただひとつの慰めは、彼の娘さん――父親との血のつながりが疑われるかわいらしさの娘さん――の耳に、エリック・ドルフィーオーネット・コールマンが届いているかもしれないということだ。サックスを始めた彼女の頭にたくさんのはてなが浮かばんことを。

Further listening

http://www.nicovideo.jp/mylist/34787975

[1] http://www.redbullmusicacademy.com/lectures/steve-reich-the-music-maker?template=RBMA_Lecture%2Ftranscript

[2] http://www.nytimes.com/2009/10/18/books/excerpt-thelonious-monk.html

[3] http://nprmusic.tumblr.com/post/80268731045/

[4] Frederick J. Spencer. Jazz and Death: Medical Profiles of Jazz Greats. University Press of Mississippi, 2002. p. 36. "A diet of honey is not recommended for anyone, and especially not for a diabetic, or prediabetic, patient."

[5] http://www.furious.com/perfect/ericdolphy2.html "'Eric Dolphy died from an overdose of honey,' arranger/band leader Gil Evans believed. 'Everybody thinks that he died from an overdose of dope but he was on a health kick. He got instant diabetes. He didn't know he had it.'"

[6] http://www.pointofdeparture.org/archives/PoD-17/PoD17WhatsNew.html

[7] http://downbeat.com/default.asp?sect=stories&subsect=story_detail&sid=1111

( ・3・) クラシック好きの上司ジャズを聴きたいと言いだして

はじめに

わたしの職場に、自他ともに認めるクラシックマニアがいる。近・現代の作曲家は一通り聴いているというが、中でもお気に入りスクリャービンで、携帯の着信音とアラームには「神秘和音」が設定してあるくらいだ。

その彼が、最近、急にジャズに興味を持つようになった。なんでも娘さんが部活でサックスを始めたのがきっかけらしい。彼の机には娘さんの小さいころの写真が立てかけてあるが、父親と血がつながっているとは思えないかわいらしさだ。パパだってジャズくらい分かるんだぞ、ということにしたいのかもしれない。

彼はわたしジャズ・ギターを弾くことを知っている。音楽に関して(だけ)は寛容なので、各種イヴェントの際には有給を消化しても嫌な顔ひとつしない。

ある昼休みの会話

ちょっと私用なんだが」と彼は言った。「こんどの休みは空いてるか? お前の好きなジャズのCDを10枚くらい持ってきてくれ。うちのオーディオで聴こう」

「CDならお貸ししますよ」とわたしは答えた。特に予定はないが、できれば休日はゆっくり寝ていたい。

「まあそう言うなよ」と彼はつづけた。「プレゼンの訓練だと思えばいい。ジャズの聴きどころを存分に語ってくれ。昼はうなぎを食わせてやるぞ。それとも――」

「それとも?」

「もう有給は当分いらないということか?」

事の次第

こうして、わたしは休日をつぶして彼の家を訪ねることになった。どのCDを持っていくかはなかなか決められなかったが、一日でジャズの百年の歴史を追いかけるのは無理だと割り切って、わたし自身がジャズを聴き始めた高校生のころ――もう15年も前の話だ――に感銘を受けたものを選ぶことにした。マイルス・デイヴィスカインド・オブ・ブルー』、ビル・エヴァンスワルツフォー・デビー』、ジョン・コルトレーンジャイアントステップス』はもうコレクション済みだということだったので、それら以外で。

駅に到着

手土産の菓子と20枚ほどのCDを抱えて最寄駅に着くと――結局10枚には絞り込めなかった――彼の車が目に留まった。

「きょうは夕方まで家に誰もいないからな。気兼ねしなくていい」

「そうでしたか」

「いるのは猫だけだ」

「猫? 以前お邪魔したときには見かけませんでしたが」

「公園で拾ってきたんだ」

「娘さんが?」

「いや俺が。子供のころに飼っていた猫とよく似ていたものだから」

ノラ猫を拾う人間と、ショスタコーヴィチ交響曲全集を部下に聴かせて感想を求める人間が、ひとりの男の中に同居している。この世界は分からないことだらけだ。

家に到着

ちーちゃんお客様にご挨拶だ」と彼は居間の扉を開けながら言った。ちーちゃんと呼ばれた白い猫は、こちらを一瞬だけ見るとソファのかげに隠れてしまった。そそくさと。

「ご機嫌ななめだな。まあいい。そっちに掛けてくれ。座ったままでディスクを交換できるから。いまコーヒーを淹れてくる」

ようやく本題へ

――これ以降は対話形式で進めていきます。

( ・3・) さっそく始めよう。

1. マイルス・デイヴィストランペットバンドリーダー

Miles Davis (1926-91)

――マイルスについてはご存じだと思いますが、次々に作風を変化させながらジャズを牽引していった、アメリカ文化的ヒーローです。デューク・エリントンマイルスについて「ジャズピカソだ」と述べました。

( ・3・) 『カインド・オブ・ブルー』の人だな。

――はい。その作品の後に注目したいんですが、60年代の半ばに、ウェイン・ショーターというサックス奏者がマイルスバンドに加わります。この時期の録音はひときわ優れた内容で、ジャズリスナープレイヤーからはヒマラヤ山脈のように見なされています。

Prince of Darkness (1967) http://youtu.be/-wckZlb-KYY

( ・3・) ヒマラヤ山脈か。空気が薄いというか、調性の感覚が希薄だな。テーマの部分だけでも不思議なところに臨時記号フラットがついている。

――主音を軸にして、ひとつフレーズごとに旋法を変えています。コードが「進行」するというよりは、コードが「変化」するといったほうが近いかもしれません。

( ・3・) ピアノコードを弾かないから、なおさら調性が見えにくいのかもしれないな。

――はい。余計な音をそぎ落とした、ストイックな演奏です。

( ・3・) 体脂肪率ゼロ。

――マイルスバンドには一流のプレイヤーでなければ居られませんから、各々が緊張の張りつめた演奏をしています。

Nefertiti (1967) http://youtu.be/JtQLolwNByw

――これはとても有名な曲。ウェイン・ショーターの作曲です。

( ・3・) テーマで12音をぜんぶ使ってるな。

――覚めそうで覚めない夢のような旋律です。このテーマがずっと反復される。

( ・3・) それってラヴェルボレロじゃないのか?

――ボレロではスネアドラムが単一のリズムを繰り返しますが、こちらはもっと自由奔放ですよ。ドラムが主役に躍り出ます。

( ・3・) おお、加速していく。

――テンポ自体は速くなるわけではありません。ドラムは元のテンポを体で保ったまま、「そこだけ時間の流れ方がちがう」ような叩き方をしています。

( ・3・) ドラムが暴れている間も管楽器は淡々としたものだな。

――はい。超然とした態度で、高度なことを難なくやってみせるのが、このクインテットの魅力ではないかと思います。

2. ジミー・ジューフリークラリネット

Jimmy Giuffre (1921-2008)

Emphasis (1961) http://youtu.be/QRyNUxMJ18s

( ・3・) また調性があるような無いような曲を持って来よって。

――はい。この曲は基本的にはブルースだと思うのですが、テーマでは12音が使われています。ジミー・ジューフリーというクラリネット奏者のバンドです。アメリカルーツ音楽と、クラシックとの両方が背景にあって、実際に演奏するのはジャズという一風変わった人です。

( ・3・) ドラムがいないと室内楽みたいだな。

――ドラム抜きの三人のアンサンブルというアイディアは、ドビュッシーの「フルートヴィオラとハープのためのソナタ」に由来するそうです。

( ・3・) いいのかそれで。ジャズといえば「スウィングしなけりゃ意味がない」んじゃなかったのか?

――スウィングしたくない人だっているんですよ。といっても、ベースフォービートで弾いていますが。

( ・3・) これが録音されたのは……ええと、1961年か。ジャズもずいぶん進んでいたんだな。

――いえ、この人たちが異常なだけで、当時の主流というわけではありません。さっぱり売れませんでした。表現自体は抑制・洗練されていて、いかにも前衛というわけではないのに。同じ年のライヴ録音も聴いてみましょうか。

Stretching Out (1961) http://youtu.be/2bZy3amAZkE

( ・3・) おい、ピアノの中に手を突っ込んでるぞ。(3分16秒にて)

――まあ、それくらいはするでしょう。

( ・3・) おい、トーン・クラスターが出てきたぞ。(4分16秒にて)

――それでも全体としては熱くならない、ひんやりした演奏です。

3. エリック・ドルフィーアルトサックスフルート、バス・クラリネット

Eric Dolphy (1928-64)

――さて、次はエリック・ドルフィー。作曲の才能だったり、バンドを統率する才能だったり、音楽の才能にもいろいろありますが、この人はひとりの即興プレイヤーとして群を抜いていました。同じコード進行を与えられても、ほかのプレイヤーとは出てくる音の幅がちがう。さらに楽器の持ち替えもできるという万能ぶり。順番に聴いていきましょう。まずアルトサックスから。

( ・3・) おお、うちの子もアルトサックスだ。

Miss Ann (1960) http://youtu.be/7adgnSKgZ7Q

( ・3・) なんだか迷子になりそうな曲だな。

――14小節で1コーラスだと思います。きちんとしたフォームはあるのですが、ドルフィーフォームに収まらないようなフレーズの区切り方でソロをとっています。1小節ずつ意識して数えながらソロを追ってみてください。ああ、いま一巡してコーラスの最初に戻ったな、とついていけたら、耳の良さを誇ってもいいと思いますよ。

Left Alone (1960) http://youtu.be/S1JIcn5W_9o

――次はフルート

( ・3・) ソロに入ると、コード進行に対して付かず離れず、絶妙なラインを狙っていくな。鳥の鳴き声というか、メシアンの「クロウタドリ」に似ている。

――鳥の歌に合わせて練習していたといいますから、まさにメシアンです。あるいはアッシジのフランチェスコか。ほかにもヴァレーズの「密度21.5」を演奏したり、イタリアフルートの名手であるガッゼローニの名前を自作曲のタイトルにしたり、意外なところで現代音楽とのつながりがあります。

参考 Le Merle Noir (Messiaen, 1952) https://youtu.be/IhEHsGrRfyY



It’s Magic (1960) http://youtu.be/QxKVa8kTYPI

――最後にバスクラ吹奏楽バスクラ担当だったけど、主旋律で活躍する場面がなくて泣いてばかりいた方々に朗報です。

( ・3・) バスクラってジャズではよく使われるのか?

――いえ、当時、長いソロを吹いた人はあまりいませんでした。

( ・3・) バスクラ自体がめずらしいという点を措いても、独特な音色だな。

――村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』にこんなくだりがあります。「死の床にあるダライ・ラマに向かって、エリック・ドルフィーがバス・クラリネットの音色の変化によって、自動車エンジン・オイルの選択の重要性を説いている……」

( ・3・) どういう意味?

――楽器の音が肉声のようにきこえる。でも何をしゃべっているのかはよく分からないという意味だと思います。あと、ミニマリズム作曲家スティーヴ・ライヒバスクラを効果的に使いますが……

( ・3・) 「18人の音楽家のための音楽」とか、「ニューヨークカウンターポイント」とか。

――はい。彼はドルフィーの演奏を聴いてバスクラに開眼したと語っています。 [1]

( ・3・) ジャズ現代音楽との相互作用だな。

4. オーネット・コールマンアルトサックス

Ornette Coleman (1930-)

――真打登場です。サックス奏者のオーネット・コールマン50年代の末に現れて、前衛ジャズの象徴的な存在になった人です。といっても、難しい音楽ではありません。子供が笑いだすような音楽です。ちょっと変化球で、70年代の録音から聴いてみましょう。

Theme from Captain Black (1978) http://youtu.be/0P39dklV76o

――ギターのリフで始まります。

( ・3・) あれ、ベースおかしなことやってるな。キーがずれていくぞ。

――はい、各パートが同時に異なるキーで演奏してもいいというアイディアです。イントロのギターが床に立っている状態だとすると、ベースは重力を無視して、ふらふらと壁や天井を歩きだす。

( ・3・) 複調を即興でやるのか?

――どのていど即興なのかはわかりません。コンサートに行ったことがあるのですが、譜面を立てて演奏していましたよ。でも、別にダリウス・ミヨーに作曲を教わったというわけではなくて、アイディアを得たきっかけは些細なことだったんじゃないでしょうか。たとえばサックスが移調楽器であることを知らなかったとか。「なんかずれてるな、でもまあいいか」みたいな。

( ・3・) それはいくらなんでも。もし本当だったら天才だな。

Peace (1959) http://youtu.be/bJULMOw69EI

――これは初期の歴史的名盤から。当時、レナード・バーンスタインオーネットを絶賛して、自分がいちばんでなければ気のすまないマイルス・デイヴィスがたいそう機嫌を損ねました。

( ・3・) さっきのに比べると普通にきこえるが……

――1分40秒あたりからサックスのソロが始まります。集中してください。

( ・3・) (4分12秒にて)ん? いま、俺の辞書には載っていないことが起きた気がするな。

――ここはいつ聴いても笑ってしまいます。そのタイミングで転調するのか、脈絡なさすぎだろうって。ソロをとりながら、いつでも自分の好きな調に転調していいというアイディアです。

( ・3・) 言うは易しだが、真似できそうにはないな。

――どの調に跳んだら気持ちよく響くか、という個人的な経験則はあるはずです。突飛な転調でも、「これでいいのだ」といわれれば、たしかにその通り、すばらしい歌ですと認めざるを得ません。

昼食のため小休止

――お昼はうなぎだと聞いておりましたが。

( ・3・) そのつもりだったんだが、いつの間にか値段が高騰していてな。「梅」のうなぎよりも、うまい天ぷら蕎麦のほうがいいじゃないか。

5. セシル・テイラーピアノ

Cecil Taylor (1929-)

――この人も、オーネット・コールマンと同じくらい重要なミュージシャンです。テキサス出身のオーネットに対して、セシル・テイラーニューヨーク出身。都市と芸術の世界の住人です。ピアノを弾くだけではなくて、舞踊や詩の朗読もします。これは1973年に来日したときの録音。

Cecil Taylor Solo (1973) http://youtu.be/X7evuMwqjQQ

( ・3・) バルトークシュトックハウゼンの楽譜を細かく切って、よくかき混ぜて、コンタスキーが弾きましたという感じだな。70年代にはずいぶん手ごわいジャズも出てきたんだ。

――いえ、テイラー50年代から活動しています。チャック・ベリーやリトル・リチャードと同じ世代。この人が異常なだけで、当時の主流ではありませんが。さっきも似たようなことを言いましたね。

( ・3・) このスタイルでよく続けてこられたな。

――継続は力なり。2013年には京都賞を受賞して、東京でもコンサートがありました。

( ・3・) どうだった?

――会場で野菜を売っていたので、買って切って食った。

( ・3・) ちょっと意味が分からんな。

――文字通りの意味なのですが、それについては別の機会にしましょう。演奏の話に戻ると、混沌と一定の秩序とがせめぎあって、台風のさなかに家を建てている大工のような趣があります。「壊す人」というよりは「組み立てる人」です。また、あるフレーズを弾いて、復唱するようにもういちど同じフレーズを弾く箇所が多いのも特徴です。

( ・3・) いちどしか起こらないことは偶然に過ぎないが、もういちど起こるなら、そこには何らかの構造が見えてくるということか。

参考 Klavierstücke (Stockhausen, rec. 1965) http://youtu.be/mmimSOOry7s



6. デレク・ベイリー(ギター)

Derek Bailey (1930-2005)

――きょう紹介するのは北米の人ばかりなのですが、デレク・ベイリーは唯一の例外で、イギリス人です。さっそく聴いてみましょう。これも日本に来たときの録音。

New Sights, Old Sounds (1978) http://youtu.be/nQEGQT5VPFE

( ・3・) とりつくしまがない……。

――そうですか? クラシック好きな方には思い当たる文脈があるはずですが。

( ・3・) 無調で点描的なところはヴェーベルン。でも対位法的に作曲されたものではないみたいだ。あと、初期の電子音楽ミルトン・バビットとか……。

――模範解答です。

( ・3・) でも即興でヴェーベルンをやるというのは正気の沙汰とは思えんな

――即興の12音技法ではありません。それは千年後の人類に任せましょう。ベイリーがやっているのは、調性的な旋律や和音を避けながら演奏することです。最初に聴いたマイルス・デイヴィスも緊張の張りつめた音楽でしたが、こちらも負けず劣らずです。文法に則った言葉を発してはいけないわけですから。

( ・3・) 「どてどてとてたてててたてた/たてとて/てれてれたとことこと/ららんぴぴぴぴ ぴ/とつてんととのぷ/ん/んんんん ん」

――ちょっと意味が分かりませんが。

( ・3・) 尾形亀之助の詩だ。お前も少しは本を読んだらどうだ。それはともかく、こういう人が観念的な作曲に向かわずに、即興の道に進んだのは不思議な気がするな。

――いちプレイヤーとして生涯を全うしたというのは重要で、ベイリーの音楽はベイリーの体から切り離せないと思います。彼の遺作は、病気で手が動かなくなってからのリハビリを記録したものでした。

( ・3・) プレイヤーとしての凄みが音楽の凄みに直結しているということか?

――はい。技術的にも高い水準のギタリストでした。無駄な動きのない、きれいなフォームで弾いています。気が向いたら動画を探してみてください。

( ・3・) まあ、ギター弾きのお前がそう言うなら上手いんだろうな。

――楽器の経験の有無で受け止め方は変わってくるかもしれません。ジャズ一般について言えることですが、鑑賞者としてではなく、その演奏に参加するような気持ちで聴くと楽しみも増すと思いますよ。

ベイリー即興演奏(動画) http://youtu.be/H5EMuO5P174

参考 Ensembles for Synthesizer (Babbitt, 1964) http://youtu.be/W5n1pZn4izI



7. セロニアス・モンクピアノ

Thelonious Monk (1917-82)

――セロニアス・モンクは、存在自体が貴重なピアニストです。生まれてきてくれてありがとう、とお母さんみたいなことを言いたくなる。

( ・3・) 初めて聴く者にとっては何のこっちゃの説明だな。

――とてもユニークスタイルで、代わりになる人が思いつかない、くらいの意味です。まあ聴いてみましょう。

Everything Happens to Me (Monk, 1959) http://youtu.be/YW4gTg3MrrQ

( ・3・) これは彼の代表曲

――いえ、そういうわけではありません。モンクの場合、どの演奏にも見逃しようのない「モンクの署名」が刻まれているようなものなので、わたしの好きな曲を選びました。有名なスタンダードです。最初に歌ったのは若いころのフランク・シナトラ

Everything Happens to Me (Sinatra, 1941) http://youtu.be/ZWw-b6peFAU

――1941年の録音ですが、信じがたい音質の良さ。さすがスター。さすが大資本。これがヒットして、多くのジャズミュージシャンレパートリーになりました。ちなみに曲名は「僕には悪いことばかり降りかかる」というニュアンスです。恋人に手紙を送ったらさよならの返事が返ってきた。しかも郵便料金はこちらもちで、みたいな。もうひとつだけ聴いてみましょう。

Everything Happens to Me (Baker, 1955) http://youtu.be/UI61fb4C9Sw

( ・3・) このいけすかないイケメンは?

――チェット・ベイカー50年代西海岸を代表するジャンキーです。シナトラに比べると、ショウビズっぽさがなくなって、一気に退廃の世界に引きずりこまれる。で、モンクの話に戻りますが――

( ・3・) ショウビズではないし、退廃でもない。

――もっと抽象的な次元で音楽を考えている人だと思います。

( ・3・) 素材はポピュラー・チューンなのに、ずいぶん鋭い和音が出てくるな。

――調性の枠内で本来なら聴こえないはずの音が聴こえてくると、デレク・ベイリーのような無重力の音楽とはまた別種の怖さがあります。幻聴の怖さとでもいうべきか。さいごにぽつんと置かれる減5度の音には、「聴いてはいけないものを聴いてしまった」という感じがよく出ています。

( ・3・) 減5度はジャズでは珍しくないんじゃないのか?

――はい。でも、その音をどう響かせるか、その音にどういう意味を持たせるかというのは全く別の問題です。そういう音の配置に関してモンクは天才的でした。

( ・3・) カキーン、コキーンと石に楔を打ちこむようなタッチで、ピアノの先生が卒倒しそうだが。

――意図的に選択されたスタイルだと思います。プライヴェートではショパンを弾いたりもしていたそうですよ。 [2]

( ・3・) 見かけによらないものだな。

――小さいころから必死に練習すれば、いつかはマウリツィオ・ポリーニの水準に達するかもしれません。しかし、ピアニストとしてモンクを超えるというのは、端的に不可能です。それがどういう事態を意味するのか想像できませんから。

( ・3・) 四角い三角形を想像できないように、か。

ちーちゃんトイレ掃除のため小休止


8. アンドリュー・ヒル(ピアノ

Andrew Hill (1931-2007)

――アンドリュー・ヒルは作曲・編曲に秀でたピアニストです。『ポイント・オブ・ディパーチャー』というアルバムが有名ですが、録音から半世紀を経たいまでも新鮮にきこえます。ペンギンブックスのジャズガイド(なぜか翻訳されない)では、初版からずっと王冠の印が与えられていました。

( ・3・) 英語圏では別格扱いということか。

――ヒルは若いころ、ヒンデミットの下で学んだという話もあるのですが……

( ・3・) ヒンデミットアメリカに亡命していたからな。

――誇張も混ざっているかもしれません。ヒルの経歴は、生年や出身地も事実とは異なる情報が流れていたので。

Refuge (1964) http://youtu.be/zquk2Tb-D6I

( ・3・) 何かひっかかるような弾き方のピアノだな。

――ヒルには吃音がありました。 [3] 言いたいことの手前でつっかえて、解決を先延ばしにするような演奏は、しばしばそのことに結びつけられます。

( ・3・) 否定神学ジャズだな。

――ヒテーシンガク?

( ・3・) ほら、メルヴィルの『モービー・ディック』で、神秘的な白鯨の本質については語れないから、迂回してクジラにまつわる雑学的な記述が延々とつづくだろ?

――どうでしょうアナロジーとしては分からなくもないですが。

( ・3・) 形而下の世界に戻るか。あれ、このサックス奏者、さっきも出てきたんじゃないか? (2分58秒にて)

――エリック・ドルフィー共演者共演者を辿っていくと、きょう紹介する人たちはみんなつながっています。

( ・3・) デレク・ベイリーも?

――はい。セシル・テイラーと共演していますし、この次に紹介する人ともアルバムを出しています。

( ・3・) なんだかドルフィーに耳を持っていかれてしまうな。

――圧倒的です。ねずみ花火のような軌道と瞬発力。数か月後に死ぬ人間の演奏とは思えません。

( ・3・) すぐ死んでしまうん?

――はい。ドラッグでもアルコールでもなく、ハチミツオーバードーズで。正式な診断ではありませんが、糖尿病だったといいます。 [4][5]

( ・3・) ハチミツって、くまのプーさんみたいなやつだな。――ん? いまミスしなかったか? (6分36秒にて)

――ドルフィーアンサンブルの入るところを間違えています。

( ・3・) やり直しになるんじゃないの?

――ジャズは減点方式ではなく加点方式ですから。ミスがあっても、総合的にはこのテイクが最良という判断だと思います。

続く

http://anond.hatelabo.jp/20150214224440

2015-01-26

音楽制作

https://www.youtube.com/watch?v=6QK7bdoDs78

 

この動画シリーズを見て衝撃を受けている。

それ以降、いろいろな録音技術に関する動画を見回っている。

 

https://www.youtube.com/watch?v=rwJeMV-5Aro

 

今の時代打ち込みでなんとでもなるんでしょ?という認識をしてしまっていた自分にとってはこの緻密すぎる裏方作業は想像がつかなかった。

音楽業界が成り立たないのは単純に経済構造が膨らんでしまっているだけだと思っていた。

技術も着々と進歩し、必要スタッフも増え、それはきっと今の経済構造では支えきれないのだ。

当然業界再編経営ダイエット必須にしても、この人たちを守っていくのには1つの作品でどのくらい収益を上げればよいのか、、、。

 

自分想像していた以上に音楽業界は複雑でのっぴきならない

まともな収益を上げてるのって、ほんの一部のミュージシャンアイドルだけでしょ?

 

写真アナログデジタルのように代替技術がきっちり成立していればよいのだが、、、。

 

この緻密な技術が失われる時代の流れだから仕方ないでは済ませられない。

それは、宮大工経営が成り立たないから法隆寺つぶれてもしょうがない。っていってるのと大差ない。

 

録音ハード進化して、このような裏方達がいなくても、高品質な録音が、出来るようになるまで、(出来るの?)

アイドルという阿漕商売必要だと思ってしまった。

2014-12-23

http://anond.hatelabo.jp/20141222231639

これさ、みんな馬鹿にしているけど

マイナー音楽を愛好してる身としては

ミーハーでもいいからそのミュージシャンを聞いていてくれる人のほうが

よっぽどありがたいわ。

高2病だろうと、ミーハーだろうと何でもいい。

mixi無き今、マイナージャンル音楽を語れるコミュニティ友達が俺らはほしくて仕方ない。

からミーハーでもなんでもいいからA〇Bとかセカ〇ワ以外の音楽を聞いてくれよ!

俺の好きなジャンルはここ10年、にわかすら湧き出るシーンがほとんどねーんだよ!

2014-12-22

http://anond.hatelabo.jp/20141222112925

君は方向性が違うだけでミスチルファンと同レベルだな

(あと「普通の人」がルックス重視なのは言うまでもない当然の前提で、ルックスダメ一般受けしたミュージシャンなんて存在しない)

2014-12-19

コブラに30万持ってこいって言われた夢

今朝、嫌な夢を見た。

それはフラッシュバックのような断片的な夢の集まりだった。最初自分第三者的視点で眺めている夢だった。ビデオ早送りのように自分生活が映し出されている。会社、家、会社、家、たまに土日、まれ飲み会。それはちょっと年式の古いガソリンエンジンアイドリング時のノイズのように、不安定さの中に一定リズムを保っていた。そしてそれが改善する見込みは全くないように見えた。

次の夢では、床に古びた大判ハードカバーの本が置いてあった。布地の装丁の青い本だ。表紙が伏せてあったので裏返してみると「人生、思い通りに生きるのが一番の幸せと金箔でタイトルが刻まれてあった。著者の名前自分本名だった。言っていることは一見立派だが、実質を伴っていない点、むしろ安っぽく見えてしまう点で今の自分にそっくりだった。

また次の夢。グレイトフル・デッドのように小型のバンで各地を回るミュージシャンになっていた。暮らしは厳しいが毎日楽しいギター現実でも夢の中でも顔から火が出るほど下手くそだったが、夢の中ではグルーヴという謎のキーワードで裏打ちされて一定の評価を得ていた。

どこで足を踏み外したのだろう。自分自分の好きなように生きると大昔に決めたはずだ。今は派遣社員として見事に社会歯車にハメられている。なぜだ。なぜ抜け出せない。

気が付くと監獄囚人移送車のようなところで寺沢武一の「コブラ」の主人公と2人きりになっていた。「困ってるようだな。現ナマで30万持ってきな。あとは何とかしてやる。」と頼もしそうにコブラは言った。30万? はした金じゃないか。一瞬そう思った。しかし次の瞬間、バブルの余韻から抜けだせず、会計をなんでもクレジットで済ませている自分に気がついた。30万だと? 俺は今同じくらいの借金をしてるじゃないか。これか。これを止めればいいのか。こんな生活が俺を歯車にハメていたのか。

たった30万で何ができるっていうんだ。そう訝ってる俺にコブラは言った。

心配すんなよ。任せておけ」

「分かったよ。半年ほどは掛かるがちょっとまっていてくれ」

俺は答えた。

夢のお告げを信じるなどバカげているかも知れない。世には1億貯金しようなどという連中がいる中で30万の貯金など噴飯物かも知れない。けどいいんだ。どうせこのままだと同じ生活の繰り返し。信じてみようじゃないか。俺は生まれつき毛色が薄く、天パで猿顔をしている。俺はあんなにカッコよくないが、昔から、彼には一定の親近感を得ていた。あれは俺の中にいる別の俺だったのかも知れない。

今度こそ、今度こそ抜けだすんだ。この同じ循環から

2014-12-07

川本真琴かいミュージシャンwwwww

 

あたしは川本真琴というミュージシャンが好きなんです。

 

川本真琴と言えば、テレビで訳わかんない事を突然言い出すぷっつんアイドル崩れの一発屋ようなイメージかも知れません。

そんなイメージとは裏腹にキメる時はビシっとキメるんです。かっこいいんです。

小さく細い体なのに声量はデカくてバックバンド爆音にも負けないボーカルです。

 

あとよく言われるのがグダグダパフォーマンス

MCグダグダは毎度の事ですが、特に共演者サポートメンバーグダグダ感。

確かにテクニック的にうまくない人をサポートメンバーとして一緒にステージに上がる場合があります

最近この楽器を始めました、って人と一緒に演奏していたライブもありました。

観ているこっちも心配になります。でもその後、一緒にやってくれて心強かった、って言っちゃいます

彼女にとっては上手い下手なんてどうでもいいんです。

大島渚キャスティングみたいな感じなんです。

 

そんな感じで末永く活動していただきたいです。

 

2014-11-04

日本ドラマーが安っぽく見える原因

日本のドラマが安っぽく見える原因、備忘録 - pal-9999の日記

この記事を見て、思うところがあったので、書いてみた。

筋肉が圧倒的に足りない説

海外ドラマーは多分オリンピックに出たらメダル獲ると思う

でも彼らはミュージシャンからオリンピックに出ない。

こう考えて日本ドラマーを見るとなんとガリガリのヨボヨボが多いことか!

嘆かわしい

そもそも日本ドラマーテクニック全然ない説

正直ドラムのこと全然知りません。

上に書いたことも、適当な嘘です。

この記事も、ただのダジャレです。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていない。

2014-10-25

http://anond.hatelabo.jp/20141025145953

本当にそう。元コメ主には、商業物流に車は欠かせないんだから、車が憎いなら物流で運ばれてくる商品は一切買わない事をすすめたい。

芸術家気取りのミュージシャンとか、自分たまたま直接的に職業的に関わっていないからって「たか電気」とか言ってるのを見たりすると、本当に浅はかだなぁ…と思うよ。

2014-10-11

欧米は、敵対する国を野蛮に見せるのがめちゃくちゃうまいよね!!

そのためには、ハリウッド俳優でもミュージシャンでも、映画監督でも使うっていう自分教養的だと思っている下々の民へのアプローチが最高!!

そこにしびれるあこがれるぅ!!

2014-10-10

顔という情報

SNSでの発言などに興味を持ってその人を画像検索してみると、

イメージ合致しない意外な顔や風貌である場合結構あって面白い

昨日もsoundcloudフォロー中のアメリカ人ミュージシャンが、

イメージではゴツ目の黒人強面おじさんだったのに、

神経質そうな雰囲気の華奢な白人大学生だったので軽くずっこけた。

Twitterでもicon実在美女写真を使用しているライターさんなどを、

実際はどうなのか検索してみて、何回かずっこけている。

写真を見て、今後はこの人を観測範囲から外そうと急に思ったりする。

写真が発するその人の佇まいのみで、その判断に達するのを面白いと思う。

顔、服装の一部、表情のみの画像から、一体何が分かるのかと思うが、

すごい情報量を発していると思う。

2014-10-08

三次元二次元

twitterpixivに載せる趣味程度で、好きなミュージシャンイラストを描いたりしてるんだけど

あるとき大好きなミュージシャンの絵を描いてアップしたら、それを見た友人に

増田には彼がこういう風に見えてるんだwww」と笑われてしまった。

それ以来、絵を描こうとするとその言葉フラッシュバックしてしまってどうもペンが進まない。

確かに私の絵柄は少女漫画系。

フィルター全開ってやつで好きな人ほど実物とかけ離れる自覚もある。

ただ自分でそう自虐することはあっても、人に面と向かって笑われたのは初めてだったから地味に結構凹んでる。

そうだよお肉の付き方がすっかり中年のそれになってて髪型に無理が出てきてる三十路でも私にはいつまでもキラキラかっこかわいい王子様に見えてるんだよ!と開き直れたらいいのに。

本人の模写みたいなリアル風の絵柄に変えれば済む話なんだろうけど…上達したいからとかじゃなく人に笑われたくないからって理由自分の絵柄を変えなきゃいけないんだろうか。ましてや売り物にするわけでもないただの趣味イラストで。

乗り越え方が分からない。

これって二次創作でもいわゆるナマモノ特有の悩みな気がする。

曲をカスタマイズ可能に

ラップの部分だけが好きになれない、それ以外は好みの曲が結構ある。

好きなミュージシャンが、自分の苦手な声のボーカルを頻繁に起用していて残念だ。

そのうち曲によってはネット販売の際にカスタマイズが可能になり、

声やボーカルを選べたり、インスト曲にできたらいいな。

2014-10-01

場末ミュージシャン

外国人キャバレーみたいなところに行った。そういうところはめったに行くことはないのだが、そういうのが好きな取引先の人がいて、おつきあいすることになった。

白人さんやらなんやらが一人に一人ついて、カタコトで接待してくれる。おもしろいわけではない。退屈だ、早く帰りたいと思っていると、ショータイムになった。

フィリピン人の女2人のボーカル。バックに男1人がキーボード。「君の瞳に恋してる」とかの古い有名曲をやってる。ただのカラオケのショーだろうと思っていたのだが、たしかリズムリズムボックスで出してるものの、男が一人でリズムマシーンとキーボード操作して弾きまくってるのだと気づいた。すごい腕だ。カバー曲とはいえ、本物の音楽を感じた。それに気づいたとき、なんか目から水が出てきて止まらなくなった。こんなすごい腕のミュージシャンが、こんな店で音楽なんか聞く気のない客相手にがんばっているなんてなあ。

(書き捨てなんだけどちょっとだけ追記)

書きかた悪くてうまく表現できなかったけど、泣けたのは場末ミュージシャンがかわいそうとかそういうんじゃなくて、音楽のものっていうか、彼の自分なりの工夫とかがよくて、あと有名曲好きな音楽世界中どこでもいっしょなんだな、みたいな感じだった気がする。こういう外人パブみたいなところでいろんな国の人間が集まってるけど、音楽はいっしょだ。それがいいことなんかそうでないかわからないけど、世界はもうすごく狭いよ。

2014-09-25

ASKA歌詞はなぜ素晴らしいのか?──母音想像力試論

 ASKAの詞の特徴の一つは、複雑な比喩を折り重ねていくことにある。そうした複雑な比喩の解読については、「On Your Mark」の楽曲分析で先日書いたところであるhttp://anond.hatelabo.jp/20140924014048)。

 しかしながら、私はCHAGE&ASKAの熱烈なファンであるけれども、「比喩」の観点から歌詞を見ればASKAよりも巧者は他にもいると思っている。例えば、スピッツ。「ロビンソン」の印象派絵画を思わせる複雑な比喩を見るとASKAに少々分が悪い。では人生の機敏という観点から見ればどうか? 私の考えでは、ASKA中島みゆきに遠く及ばない。しかしそれゆえにASKA歌詞は二流であるわけではない。

 ASKAの詞はJ-POP史上稀に見る「音楽性」を持っている、というのが私の意見だ。「言葉音楽性を持っている」とはどういうことか? 分かりやすい例として、まず"YAH YAH YAH"をとりあげて、それを説明したい。

YAH YAH YAH」はYAH YAH YAHでなければならなかった

 「YAH YAH YAH」のサビは、ご存じのように、ひたすらYAH YAH YAHが繰り返されるだけであるしかし「YAH YAH YAH」という発音には極めて綿密で、天才的な直観があると私は考えている。仮に、YAH YAH YAHの部分を「ウ」でも「エ」でもよいが、別の母音に置き換えたもの想像してみると、「YAH YAH YAH」という曲そのものが成立しなくなることが了解されるだろう。YAH YAH YAH発音秘密はそれだけにとどまらない。その前の歌詞に注目する必要がある。

から一緒に これから一緒に 殴りにいこうか

 この部分を読むと、「イ」の発音が異様に多いことに気がつく。「イ」は、歯を食いしばって発声される。怒りを耐え忍ぶかのような身振りを発音要求している。そして、サビに入る時に「ア」の開放的な音に切り替わる(殴りにいこう「か」)。サビの一個手前に、このような母音ドラマが隠されている。この「イ」と「ア」の動きをYAH YAH YAHというサビで何度も何度も再現するのである。なお、「今から一緒に」の前にある「勇気だ愛だと騒ぎ立てずに その気になればいい」では「イ」で終わっているので、まだ耐え忍ばなければならずYAH YAH YAHと叫ぶことができないように発声的にも規制されていることが分かる。こうして見てみると、一見単純に見えるYAH YAH YAH歌詞には天才的な音楽直観が働いていることが分かるだろう。

先人・井上陽水

 そうした作詞法はASKA専売特許ではない。そうした作詞法を意識的採用しているのは、ASKA尊敬している井上陽水である陽水は、「Tokyo」の冒頭部分「銀座へ鳩バスが走る」という歌詞秘密を次のように語っている。

タモリ で、それを作りたいってことに、なんで銀座が浮かんできたわけ? しょっちゅう行ってるから

陽水 いや、そういうことじゃなくてホラ…、東京でね、やっぱり一曲ね[作りたいと思ってたから]。で、「銀座へ~」っていうね、あのー、人によってね、いろいろ、発音でね、取り柄がある発音とあんま響かないのがある。「銀座へ~」っていうのが、この口にすごく合ってたの。「銀座へ~」、あ、響くなあ、って。

7:00-7:40頃 https://www.youtube.com/watch?v=szB9lhaX2XY

 井上陽水の曲を聞いてみると、たしか言葉の「音」に対する独特の"美意識"があることが分かる。これはこれで、余人には真似しがたい孤高の美をたたえている。「Tokyo」であれ「Make-up Shadow」であれ、言葉に対するきわめて繊細な美意識を私は感じる。

 完全に余談だが、全世界的に流行した「Let It Go」の歌詞にも言葉の音に対するこだわりを強く感じるので紹介しておく。

My power flurries through the air into the ground

My soul is spiraling in frozen fractals all around

And one thought crystallizes like an icy blast

I'm never going back, the past is in the past

この部分は、一番の大サビに向かう、心躍る箇所だ。

歌い始めの「My power flurries through」の部分は、口をすぼめる内気な発音が多い。しかし、「the air」の所でやや反抗的な「エ」の発音がやってきて、「into the ground」で一回大きく開放的になるが、すぐに締められる。「My soul is spiraling in frozen」までは基本的にはやはり内気な発音が多い。「fractals」のところで「the air」とは別のしかたで(歌い方で)反抗的な様子を見せるが、これも「all around」の個所で一回開放的になるが閉じられる。こうした発音ドラマ最後に、「the past is in the past」の個所がやってくる。このようにして、まこと開放的で、ドラマチックな「ア」の発音がここに訪れるのである

 このように、言葉の音に対する意識世界的に存在する。しかしながら、日本語は、世界の様々な言語と比べても「母音」の割合が非常に多いという特徴をもっている。日本ロックミュージシャンたちはこの母音に苦しめられてきたのだ、と言っても過言ではないだろう。そこで例えばサザンは子音に着目した。サザン日本語における子音の可能性を大きく拡張したミュージシャンとして評価することができる。しかし、ASKAあくまで「母音」の可能性にこだわったミュージシャンであると私は考えている。日本語本来の特徴が「母音」にあるのだとしたら、その「母音」を徹底的に活用したのがASKAである

話をASKAに戻すと……

 こうやって私が言葉の音に対して敏感になったのは、チャゲアス音楽を聴いてからだ。ASKAは、まず歌唱からして、母音を強調している。これは良くも悪くも「古さ」を感じる歌唱であろう。母音を強調する歌手として、例えば尾崎紀世彦布施明を挙げることができる。彼らの歌唱には「昔ながらの情念」を感じる人が、とくに若い人になればなるほど多いのではないだろうか。一方、母音を強調しない歌手小田和正歌唱にはそうした「古さ」を感じることはないのではないか。母音は、本能的な部分に訴えかける、ほとんど呪術的と言える原始的な力をもっている。しかし、それを真に受け止めるためには現代はいささかシャイなのだ、というのが私の持論だ。母音とは、一種の「ますらをぶり」であるASKAは「ますらをぶり」のシンガーである

 私の見立てでは、ASKA母音から歌詞構成する方法意識化したのは、だいたいシングル「WALK」以降である。「WALK」より前の曲には、母音に対する美意識を見出すことが難しかった。逆を言えば、WALK以降には母音に対する鋭敏な感覚ASKAの曲に感じる。国民シンガーCHAGE&ASKAが出来上がったのは「SAY YESであるが、「SAY YES」と同レベル作品を量産できるようになったのはだいたいシングル「WALK」の時期からだ。一つ一つ楽曲分析をして証明をすることもできなくはないが、それをするとなると、ちょっと本格的にやらなくてはいけない。そこで、ASKAの曲の中でも、母音の使用がもっとも素晴らしいと思う楽曲を一つ見てみることにしよう。「はじまりはいつも雨」だ。

全てが奇跡的な「はじまりはいつも雨」

 「はじまりはいつも雨」はASKAソロの曲だが、チャゲアスVer.も残されている。私の一番好きな音源であるhttps://www.youtube.com/watch?v=5mzj72QxrYo)。

 「はじまりはいつも雨」は、メロディー歌詞の二つが複雑なハーモニー形成しており、決して不協和音をつくっていない。母音の使用法も極めて洗練されている。しかしながら、冒頭から母音分析をはじめても感覚的に分かりづらいと思うので、もっとも分かりやすいところから見てみよう。それはサビの終わる所である

はじまりはいつも雨 星をよけて(一番)

失くした恋達の 足跡(あと)をつけて(二番)

はじまりはいつも雨 星をよけて ふたり 星をよけて(大サビ

 まず気がつくのは、これら全ての終わりが「エ」で終わっているということである。仮にこれを「エ」以外の音だと考えてみよう。すると、この曲自体がぶち壊しになることが分かると思う。「ア」だと少々なさけない感じがするし、「イ」はやや幻想的になるかもしれないが悲痛な雰囲気も漂いそぐわず、「ウ」はそこで完結してしまい、「オ」では重すぎる。ここは「エ」でなければならない。暗い街中に消えていく複雑な余韻は、ここでは「エ」によってしかつくることができない(なお、似たような曲として井上陽水「帰れない二人」があることを指摘しておく。また、ASKAは「はじまりはいつも雨」を作る時にその曲を意識していると私は考えている)。

 さて、この曲における母音もっとも美しいと思うのはサビに入る前の「誰よりも 誰よりも」という箇所だ。J-POP広しといえども、このような「オ」の大胆な使い方をして、それが成功をおさめている例を私は他に知らない。この箇所は「ア」と「ウ」でも成り立たないことはない。しかし、「ア」だとあまりに開けっぴろげで楽観的すぎるし、「ウ」だと少しストーカーのようないやらしさを感じる。ここはやはり「オ」でなければならず、「オ」という少しくぐもった母音によっていささか内気な青年の、胸の奥底からやってくる高鳴る期待が的確に表現されていると私は考えている。言葉の「意味」ではなく「音」によってこんな複雑な操作をできるシンガーソングライターが今どこにいるだろうか? たいへん残念なことに私はASKA以外に知らない。

 他にも「はじまりはいつも雨」には美しい母音が色々ある。例えば「今夜君のこと誘うから 空を見てた」の「と」の遠慮がちな「オ」とその後にメロディーとともに上を見た時にある開放の「ア」であったり(綺麗な夜空を見て嘆息つくような場景が思い浮かびます)。こういうことは言いすぎると野暮になることかもしれない。とりあえずは「はじまりはいつも雨」を聞いていただきたい。それから、「Say Yes」や「no no darlin'」などのチャゲアス名曲から美しい母音たちを集めて、それぞれ言葉の音を解釈してみるのも一興だと思う。

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん