カテゴリー 「マスダとマスダの冒険」 RSS

2020-11-11

[] #89-14「わたし超能力者

≪ 前

まーそんな仲間たちと協力して

魔法少女の正体を探ったわけ

遭遇するの自体簡単

彼女って頻繁に

自己プロデュースっていうか

アイドルロビー活動してるから

地元イベントにも

ちょくちょく参加してるのよ

夏には水着

ハロウィンには仮装したり

クリスマスにはサンタコス

初詣振袖

ソシャゲキャラかしら?

まーでも需要あるわよね

自分の見せ方というか

売り方を分かってる

わたし的には何というか

必要以上に目立とうとして

節操がないと思ってるし

それを持てはやすガキとか

大きなお友達”っていうの?

正味ウザいと思ってるけど

まーいいんじゃないかしら

目立ってるおかげで

こっちとしては捜索しやすいし


そうして魔法少女を見つけたら

後は追跡&鬼ごっこ

これがもー大変だったわ

仲間たちの力を総結集して

お互いを信頼してなければ

絶対不可能ミッションだった

なおこのミッションについては

詳細を省くわ

アンタには話さな

こーいう過程はね

そっと心にしまっとくものなのよ

当事者大事プロセスから

その部分を事細かに話しても

傍観者フィルターを通れば

なんだか茶番に見えてしまうの

ノンフィクション作品と同じよ

事実に基づいてはいても

商業作品の都合上

それは脚色で彩られている

リアリティこそあっても

決定的なリアルが欠けてるの

個人的体験シェア不可

本当の意味では理解できない

から話すのは結果のみよ

はいっても

魔法少女個人情報について

明かすつもりはないわ

知ってしまった者がとるべき

最低限の配慮というか気遣い

プライバシーポリシー的な?

そーいうアレよ

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2020-11-10

[] #89-13「わたし超能力者

≪ 前

まずリーダーのマスダ

彼は特別これといって

秀でた一芸があるわけじゃないわ

ところどころ知性は感じるけど

基本的にはガキっていうか

良くも悪くも年齢相応

でも決断力があるのよね

うちのチーム個性は強いけど

主体性っていうのかしら

まとまりがないの

でもマスダはビシッと

次に何をしたいか

そのためにどうするべきか

方向性を定めて

真っ先に行動してくれる

リーダー必要資質

次に紹介するのは参謀

みんなミミセンって呼んでる

聴覚が敏感でね

普段は耳当てをしてるの

ひとたび外せば

あらゆる音を拾うソナーと化す

その聴覚もすごいけど

仲間の中で一番アカデミック

マスダの決断フォロー

作戦を確かなものへとしてくれる

不可欠なブレイン

お次は戦闘要員

いつも白黒の服を着てるから

みんなシロクロって呼んでる

こいつだけタメじゃないのよね

というか年齢不詳

仲間の中で一番ノッポで

たぶん大人だとは思うけど

性格ちょっと“アレ”ね

控えめに言って破天荒

背は高いけど背伸びしてない

まーそれなりに楽しい奴よ

彼の仕事荒事解決

それしか能がないけど

それだけなら誰にも負けない

……あー実は

仲間もう一人いるんだけど

の子は隠密役だから

トップシークレットなのよね

アンタ如きにゃ言えないわ

それにね

の子って繊細なの

複雑な子なのよ

損しやすタイプ

世の中って基本シンプルから

そーいう子は置いてかれがち

単純な奴らは構わず進んじゃう

わたし達は違うけど

仲間としては気にかけるわよ

たまに立ち止まって周りを

皆のことを見ているか

の子の歩調も知っている

でも仲間だからといって

踏み込みすぎはよくないわ

良い関係性を保つには

丁度いい距離感大事なの

から皆の説明はここまで

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2020-11-09

[] #89-12わたし超能力者

≪ 前

スクールゾーンの脇道には

サンダーロードが広がっている

そこには秘密の花園もあって

甘酸っぱい果実がつきものなの

お子様には刺激的だけど

大人にとっては野暮ったい

カレーの中辛

ミルクなしのコーヒー

サンタクロースは何者?

着ぐるみの中身もそーよ

子供は知らなくていいもの

大人は知らないふりをする

だけど

その刺激が誰にとって

どれくらい良いもの

どれくらい悪いものかなんて

本当のところは誰も把握してない

それをモラルマナーだとか

共有できもしない前提で覆う

子供という当事者を抜きに

子供を礎にして整備するの

それが公道の内部設計

知るべきか知らないべきか

誰も判断できないから隠すのね

大人お得意の責任回避ってわけ

だけど魔法少女の正体は

大人すら知らないようだった

そりゃもー興味津々よ


から正体を突き止めようと

仲間たちと調査に乗り出したの

……あーそうね

仲間の話もしておこうかしら

ヒトは一人では生きていけない

超能力者だって同じことよ

仲間ってのは大事

友達ってだけじゃダメ

言っとくけど

惚れた腫れたって話じゃないわ

恋愛モノの見すぎよ

わたしも嫌いじゃないけど

なんなら好物だけど

今そーいう話をしてんじゃないの

価値観の違いはあっても

何かあれば助け合う

利害の一致だけじゃなく

行動と魂で繋がる関係

そーいうのが仲間なの

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2020-11-08

[] #89-11わたし超能力者

≪ 前

魔法少女自警がすごいのは

圧倒的な“個”の力でしょうね

何かトラブルが起きると

他の人たちは寄り集まって

時間をかけて解決するけど

魔法少女は杖の一振り

疾風のように現れて

疾風のように去ってゆく

とてもじゃないけど

超能力じゃ真似できない

あのレベルをやろうとしても

発動前に使い手が粉々よ

わたし嫉妬深いけど

あそこまでやられると

憧れすら通り越すわ

スタートラインが違うし

ステージも違うって感じ

なんていうのかしら

最近オリンピック始まったでしょ?

あれの短距離走とか観るんだけど

決勝戦にもなるとさ

もーネグロイドばっかりなのよ

驚きの黒さよね

……あらやだ

些か不適切表現だったかし

今のはオフレコ

まーつまり魔法少女

いうならメダル常連

わたし観客

それくらいの違いがあるの

おこがましいわ

羨望も嫉妬


そんなわけで魔法少女

どこの誰だか知らないけど

町の誰もがみんな知っている

ネット名無しさんみたいな感じ

それでいて匿名人間より

なんというか“華”があるのよ

元気無敵ガール

雲の上の存在

比較するだけ無駄

じゃあ何で気になるかって?

まーあえて言うなら

わたし女の子から

言っとくけど

魔法少女になりたいとか

そんな変身願望はないの

そーいうのは卒業済み

個人的に気にしてるのは

彼女人格というか

魂の規格よ

有り体に言えば正体ね

着ぐるみの中身みたいなもの

ファスナーを開けて

頭をとってやりたい

魔法少女に憧れるほど

わたしガキじゃないけど

大人でもないってこと

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2020-11-07

[] #89-10わたし超能力者

≪ 前

……あーそういえば

未来から来たとかほざくヤツ

そんなのもいたわね

近所に住んでるけど

すっかり忘れてたわ

だって興味も意味もないもの

わたしさとり世代」だし

そーいうのにトキメキ感じないわ

ましてや遥か未来の話なんて

されても……ねー?

わたし寿命で死んでるわよ

あい大事な使命で来たとか

未来の命運がとか言ってたけど

そんなの関係ないわ

今やってる環境対策と同じ

偽善者のためのポーズ

それに他人を巻き込む方が

わたしから言わせれば有害

だって人間地球に優しくしても

地球人間に優しくならないもの

もし優しいと誤解してるなら

それはブラック企業のやり口よ

地球パワハラ上司

アンタは飼い慣らされてる

自然界の社蓄

或いは“かわいそうなお友達”よ

母なる大地からネグレクトされて

神経が麻痺してんだわ

毒親に優しくする義務はないの


それより魔法少女の話を続けるわ

そっちのほうが有意義

自分がいない遥か未来の話より

いま目の前にある幻想こそ

ずーっと現実的じゃない?

彼女は何かトラブルがあれば

どこからともなく介入してくる

正味やってることは自警だけど

気持ちは分かるわ

わたし魔法少女じゃないけど

何かトラブルが起きれば

野次馬根性で見に行くもの

修羅場を見ると血が騒ぐのよ

そーいう土地柄なのかもね

この街って自治体が多いの

とゆーか多すぎ

いったい何やってんだか

よく分かんない組合もいるわ

でも仕方ないのよ

町の人たちは警察を信頼してない

かくいう私も同じ

彼らは無能ってわけじゃないけど

結局は法事国家兵隊さんでしょ

正義の味方じゃないわけ

から各々が正義になるのよ

自治を成すなら私警

市警はお呼びじゃないわ

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2020-11-06

[] #89-9「わたし超能力者

≪ 前

それでヒトとして生きてるのか?

高尚な議論はヨソでやってよ

親に貰った大事身体だとか

そーいう考え方は古くなってるの

大事なのは魂でしょ

さっきも言ったけど

目の前に横たわる現実

それに是非を求めて

理解だとか共感だとか

納得できるかなんて

各々の裁量なの

アンタのは自意識過剰

そんなに大事

他人にどう見られるかって

それはそれで結構だけど

だったら踏ん反り返らないと

少なくとも自分のカッコは

自分で選んだものでしょ

それをどう見られるかなんて

織り込み済みの選択じゃない?

イレズミだとかピアスだとか

髪染めて後付けで着飾っといて

それで評価されることが不服とか

欺瞞もいいところよ

超能力よりスゴイもの

科学だけじゃないわ

魔法魔法

魔法少女(マジシャンガール)よ

マジシャンとは言っても

手品とか超能力だとか

そんなチャチなもんじゃ

断じてないわよ

水のない所で大量の水だしたり

レールもないのに超電磁砲撃ったり

原理は全くもって謎だけど

からこそ魔法と呼ぶのよ

かに言えることは

エスパーよりも夢があるってこと

たことないの魔法少女?

まーいずれ目にするわよ

この街闊歩れば

すぐに気づくわ

如何にもな格好でホーキ乗って

よく分かんないマスコット従えて

今日び珍しいくらいのナリだもの

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2020-11-05

[] #89-8「わたし超能力者

≪ 前

インフラストラクチャーっていうの?

普通に生活しているだけでも

ラボハテのロゴを見ない日はない

もちろん日常だけじゃなく

より革新的なこともやってる

現在進行形でね

まーもちろんだけど

皆が諸手を挙げてるわけじゃない

自然派っていうのかしら

そーいうオーガニックとか

エスニックもどきな感じ

未来と逆行したがる人たち

いるにはいるけど

正味なところ分が悪いわ

言っちゃなんだけど

スケールが小さいの

大言壮語を吐いて

コマンと変わらないのよね


まー確かに

ラボハテは慈善事業じゃない

それはそーかもだけど

助かってる命があるから

わたしの仲間にもいるの

厳密にはその子ママさんが

なんだけど

あー見たことあるかしら?

あの人すっごい若いでしょ

もちろん理由があるわ

マンガとかアニメでよく見る

特に理由もなく若いママさん

そーいうのとは違うの

あの人って実はね

身体ほとんどが機械なのよ

サイボーグってやつね

若い頃に事故に巻き込まれ

酷い状態だったらしいの

死んでてもおかしくなかったらしいわ

一命を取り留めたとしても

ずっとベッド暮らしだったろうって

そこをラボハテに治してもらったわけ

いや「直した」っていうべき?

この場合どー表現すべきかしら

まー何はともあれ

その人が今は2児の母なんだから

ラボハテさまさまでしょ

命を救うだけじゃなく

新たな命の可能性まで与えたの

そーして生まれた子が

わたしの仲間になってる

未来を繋ぐっていうの?

セニックには無理でしょ

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2020-11-04

[] #89-7「わたし超能力者

≪ 前

超能力者普通の人なのは

他にも理由があるわ

もっとスゴイものがあるのよ

この世の中にはね

そーねー例えば……

ロボットとか人工知能

まり機械産業

人々の生活や貧富を語る時

現代機械産業は外せない

映像とかで観たことあるでしょ

機械がモノを作る工程とか

あーいうのって

不思議と眺めてられるわ

油断すると時間を吸収される

あんなのエスパーじゃ無理

無機質だけど精密で等速

たまに不調があったとしても

裏切ったりはしない

人が起こすバグよりはマシ

理不尽でもないし明瞭だもの

まー変な感じだけど

機械が人より優れてるなんて

そもそも人が作ったものなのに


だけど漠然とした違和感なんて

所詮路傍の石

お気持ちしかないわ

何であれ進歩していく

技術は進み続けるの

社会は歩き続けるの

止まってはくれないわけ

その中でも特にスゴイってなると

やっぱり「ラボハテ」でしょーね

さすがに知ってるわよね?

知らないとは言わせないわ

世界有数の機械メーカーもの

詳しくなくても目につくはず

LaBo」って感じのロゴあるでしょ

それがラボハテ

少なくとも国内機械

ほとんどラボハテが関係してる

そーじゃないメーカー

だいたいラボハテの傘下だったり

表面上では提携っていってるけど

ぶっちゃけ1強よ

次 ≫

2020-11-03

[] #89-6「わたし超能力者

≪ 前

話を続けましょーか

前提を共有しておくけど

二度は言わないわよ

忘れないでね

この話を続けるのは

完全わたし善意

何の報酬も出ていないの

ジャポンボランティア

そもそもボランティアって

タダ働きって意味じゃないけど

それでも無償でやってるの

“やってあげてる”の

そこ忘れないでよ

これからする話を

理解できたか

納得できたか

共感できたか

そんなの関係ないわ

それはアンタの問題

そっちで解消しなさい


超能力者普通の人

このことは言ったわよね?

それは人間みんな平等だとか

そーいうのもあるでしょうけど

実際は取るに足らないからなの

超能力は大したことない

リミットがあるから

利点も弊害も予想の範疇なわけ

超能力のない人間でも出来ること

それを違うアプローチで出来るだけ

そーいう認識が広まっていった

から超能力者は「普通の人」なの

まー昔は色々あったらしいけどね

確執やら何やら

そんな感じのエトセトラ

でも細々と説明する気はないわ

どーせ覚えられないでしょ?

歴史教科書を一頁ずつ捲って

ひとつひとつ説明しても

アンタの御頭(おつむ)じゃあ

書かれたことを音読するだけ

から実用的な

現代社会で役立つ

明日から使える話をしましょ

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2020-11-02

[] #89-5「わたし超能力者

≪ 前

ビリの人が応援されるシーン

あるでしょ?

「がんばれー」とか

そのまま受け取っちゃダメ

あれは「さっさとゴールしろ」とか

ノロノロする位ならリタイアしろ

そーいうメッセージなのよ

暖かい声援じゃないわけ

極寒地帯雨あられなの

心を読める超能力者がいたけど

彼はその事実に凍えたわ

まりアンタが心がけるべきは

少しでも速くゴールすること

そーいう気概をもって挑むのよ

コーチの指示は絶対

……はっきり言わなきゃダメ

これから何を話しても

アンタは辛抱強く聞けってこと

いくつかが余計に見えても

必要に思えても

そこに意味見出して走るの

返事は結構

答えは態度で示しなさい


さもなくば引導を渡すから

わたし眼鏡を外したら最期

アンタのシューズ破壊される

数秒後には裸足の大将

それ結構いい靴でしょ?

古くさいけどちゃんとしてる感じ

ヴィンテージってやつかしら

ブタ真珠

デブダイエットコーラ

アンタには過ぎたものだわ

その靴がどれだけ大事かだとか

そんなの知ったこっちゃない

馬が念仏を唱えるんじゃないわよ

嫌なら証明しなさいな

走り抜けるの

実績を解除するの

人生背中で語りなさい

言っとくけど

「男は背中で語るもの」とか

そーいうんじゃないか

アンタが男でも女でも関係ない

これは物理的な話よ

バックボーン背骨のこと

いまアンタの背中は見えてないの

みんな前を走ってるんだから

次 ≫

2020-11-01

[] #89-4「わたし超能力者

≪ 前

それでも話は続けてあげる

わたし寛大だから

だって知らない分野はあるもの

わたしには今さらなことも

かにとっては今さらじゃない

そーいうこともあるでしょうね

アンタは明らかに周回遅れだけど

わたし笑わないわ

ちょっと呆れてはいるし

煩わしいとも思ってるけど

走る気はあるみたいだから一応

選手を観客席から差し

野次を飛ばすだけの衆愚じゃない


だけど調子こかないでよ

アンタはイキれる身分じゃないの

あくまで走る気が“あるだけ”

まり走ってないのよ

遅いとか以前の問題

レースに参加しているだけ

選手登録されてるだけ

マラソンとかでいるでしょ

とぼとぼ歩いてる

そいつらと同じ

コンディション作りも

スタートダッシュ

走り方も

何も満足にできていない

その結果としてのビリケツ

なのに何なの?

いっちょ前に走り疲れた顔して

どーいう了見?

わたし超能力者なんだけど

アンタは超能力について無知

その状態でモノを尋ねてるわけ

これまで学ぶ機会はあったでしょ

手段はいくらでもあるはず

だけどしなかった

やらなかった

やる気がなかった

そこは自覚しなさい認めなさい

今アンタは教えを請う立場

わたしは教えてあげる立場

次 ≫

2020-10-31

[] #89-3「わたし超能力者

≪ 前

もしかしてなんだけどアンタ

学業かいらねーってタイプ

さっきから感じられないのよね

教養的なるもの

無神経というか

無頼というか

無精というか

無頓着というか

無様というか

無粋というか

作法というか

無骨というか

無道というか

節々に滲み出てるのよ

そういうもの

足りてないんじゃない?

普段から学ぼうって姿勢

学校の在り方だとか

必要性だとかそーいうの

うつもりはないんだけど

何事も勉強はしなさいよ

その点だけは確かでしょ


「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」

なんていうけど

聞く前に恥を知りなさい

あれって昔のことわざじゃない?

恥をかかなくても知れる世の中よ

情報社会なんだから

人に尋ねる前に

他に出来ることもあるでしょ

煩わせないで他人

わたし先生じゃないの

アンタのママでもないわ

認知なんてゴメンよ

こんな大きい赤ちゃん

せめて予習くらいはしてほしいわね

せ・め・て!

……まーいいんだけど

アンタの人生から

説教する義理なんてない

わたしだって説教なんて

したくもないし

されたくもない

アンタをなじったのは

お駄賃

煩わせてることに対するね

次 ≫

2020-10-30

[] #89-2「わたし超能力者

≪ 前

もっとすごい超能力はないのかって?

……はぁ

こーいう人いるわよね

超能力者に変な夢を見たり

意味もなく怖がったり

そんなんじゃないか

特別でもないし異端でもない

冷静になって考えてみて

わたし超能力だって平凡

触って壊せるもの

触らないでも壊せるだけ

大した違いはないの

誰にでも出来ることじゃないか

だけど誇れることでもないわ

それに日常生活じゃ役立たずよ

超能力が前提の社会じゃないの

この世界って

わたし達を中心には廻ってない

セカチュウじゃないのよ

叫んでも白い目をされるだけだわ


アンタって左利き

血液型は?

まー何でもいいんだけど

どうあれアンタは一般ピーポーよ

出来ることには限界がある

超能力だって同じ

リミットっていうの

例えば高速移動できるとして

ジェット機より速くなんて無理

人間身体じゃもたない

気圧にも耐えられないでしょ

ヒトでは制御できない力が

まれつき備わるわけない

超能力っていうから誤解されるけど

全然スーパーじゃないの

勝手に期待しないで頂戴

空を自由に飛んだりだとか

世界旅行に行きたいとか

バッカじゃないの

飛行機に乗りなさいよ

次 ≫

2020-10-29

[] #89-1「わたし超能力者

タオナケ

超能力者なんだけど

何ができるかって?

見た物を壊せるわ

生き物は無理だけど

あと大きいのも無理

それに絶対でもないの

物の一点をジーっと

見つめて5~6秒くらいか

成功すれば粉々なんだけど

まー5回に1回ってところね

調子よければ4回に1回

これでも成長した方よ

昔は10回に1回だったか

危なくないのかって?

無神経な質問だわ

私が何度それを聞かれたかとか

そういう想像力がないのね

裸眼だと発動しないわよ

このダサい眼鏡が目に入らないの?

好きで着けてると思ってるわけ?


他の超能力者

いない訳ないじゃん

学校で習ったでしょ

1000人に1人の割合だって

例えば近所のスーパーとか

あそこの店員

マスクで顔わかりにくいけど

あいつも超能力者なのよ

私と違って物は壊せないんだけど

アポートっていうの?

物体位置を入れ替えるの

あそこで買い物するとさ

いらないもの買ってしまわない?

おにぎりの具が昆布のやつとか

そこまで好きじゃないのにね

あいつの仕業なのよ

他のおにぎりと入れ替えてるの

次 ≫

2020-09-29

[] #88-12「マスダの法則

≪ 前

我ながら、何とも支離滅裂な夢を見た。

夢とは得てしてそういうものだが、寝覚めの悪さは否定できない。

思考速度が鈍り、倦怠感は体全体にのしかかる。

この気だるさは低血圧けが原因じゃない。

昨日の疲労冷凍諸君エナジードリンクが体に残っているからだ。

“あの時”に限りなく近い、最悪の状態

だが、それは理想状態ともいえた。

「あー……そうだ、これこれ、この感じ」

まとわりつく不快感に、かえって笑みがこぼれた。

自分の体が、自分の思っていた通りの状態になっている。

それが絶不調という形であれ、目論見どおりであることには変わりない。


これが俺の法則において重要な部分だ。

課題レポートのように掲げるならば『バロメーターバイオリズム因果関係相互作用』といったところだろうか。

まあ、これは超個人的な究明でしかないので、ここでは“マスダメーター”だとか“マスダイズム”とでも呼ぼう。

このマスダメーターは調子の良し悪しを指標する、いわば基準値のようなものだ。

大まかに身体」・「精神」・「神経」などに分類しているが、これらは相互作用している。

今の俺が正にそうだな。

疲れているのに重たい料理を食べたから消化不良を起こし、その消化不良とエナジードリンク睡眠不足に繋がる。

それぞれの要素が絡み合って今朝の不調に繋がり、その不調が更なる不調を生む。

これがバイオリズム……じゃなくて、マスダイズムにも悪影響を及ぼす。

マスダイズムとは、個人的に「何となく気になること」や「何となくやっていること」を概念的に纏めたものだ。

俺が毎日やっている、テレビチャンネルと音量を10にするというのもコレに含まれる。

とはいえ、これ自体パフォーマンスに大きく影響しない。

気になっても引きずらないし、やらなかったとしても後悔に値しない、そんな些細なものだ。

一瞬、体の中を通過していくだけ。

しかし、マスダメーターが不調だと、この“通過”が円滑に行えなくなる。

どうでもいいことを必要以上に気にしたり、悪い方に考えたりする。

占いを信じてもいないのに、やたらと気にしていたのも、そのせいだろう。

やらなくてもいいことに対して成功・失敗の二元論で判定してしまう。

あの時、俺が「しまった」と思ったのも、それが原因だ。

それに悩んだところで、不調で思考も働かなかったのだから、納得のいく結果・結論なんて出てくるわけがない。

そうして最初に抱えていた不調を解消できないまま不平不満が重なり、負の連鎖へと繋がる悪循環が生まれたってわけだ。

噛み砕いていうなら「調子の悪い人間が何かをやれば、それは悪い結果になりやすい。そして悪い結果を出してしまった人間は、更に調子が悪くなる」みたいな話さ。

そして、結果というものは、結果を出した人間というもの他者にも影響を及ぼす。

それが授業中にやたらと名指しされる因果へと繋がったってわけだ。

…………

法則さえ解明されれば、後はこっちのものだ。

要点さえ抑えておけば、テスト赤点をとることはない。

本質理解は、運命裁定権を意のままにするんだ。

まり俺の思うまま、この日は最悪だったってこと。

「心ここにあらずといった感じだな」

5時限目、シマウマ先生の声が教室内に鳴り響く。

「そんなに悠々としているとは、私の話を聞くまでもなく解答できるというアピール……そう解釈してよろしいかな?」

ボーっとしていたので主語は聞き逃してしまったが、その言葉が誰を指しているかは明白だった。

もちろん、授業の内容は頭に入っていないので答えられるわけがない。

これから俺は的外れな解答をして、先生に嫌味たっぷり説教を聞かされるのだろう。

しかし気負いはなかった。

馬面教師の宣告と共に、俺は“答え合わせ”を終えていたのだから

その事実をかみ締めながら、俺は自分の口元を左手で覆い隠す。

それは感情が表に出すぎた時、思わずやってしまう癖だった。

この癖を仲の良いクラスメートは知っているが、いま俺の口元がどのような感情を表しているか、そこまでは分からないに違いない。

だが、それでいい。

この法則と同じで、これは個人的で、誰も共感しなくていいことだ。

からこそ、せめて自分が納得できる結論を求めなきゃいけない。

それこそが俺の、俺による、俺のための法則と、その証明なんだ。

(#88-おわり)

2020-09-28

[] #88-11「マスダの法則

≪ 前

勝負は決戦前から始まる。

その日の俺は学業を終えた後、夜遅くまでバイト従事していた。

家路に着く頃には、肉体的にも精神的にも神経的にもクタクタだ。

時間も真夜中近く、明日学校が待っているから今すぐ寝てしまいたい。

しかし、この時の俺は空腹だった。

寝たいのに腹が減っているというのは、日常における最も煩わしい状態だろう。

空腹感は微睡みを掻き消すが、そのくせ食欲は判然としない。

何か食べる必要はあったが調理する気力なんて残っていないため、インスタント食品しか選択肢はなかった。

となると、自宅にあるもので手早く作れるのはプレートの冷凍食品だ。

しかし手軽に作れるからといって、軽い料理であるかは別の話である

1つの皿に押し込められた料理群は腹を満たしてはくれるが、いずれも消化に悪い。

シャワーを浴びた後も胃腸には溜まったままだ。

これだけでも堪ったものではないが、ダメ押しは就寝前に流し込んだエナジードリンクだろう。

ケミカルな味わいはホットミルク代替品としては不適切であり、カフェイン砂糖が織り成すハーモニー本末転倒だ。

そこに、いまだ腹に残ったままの未消化物が合わさるのだから強力無比といえよう。

しかし人体というものは意外と丈夫なのか、これが若さというやつなのか。

俺はそのままベッドに横たわり、十数分ほどで夢の世界へ迷い込んでいった。

…………

俺は地平線に立っている。

たことも来たこともない場所だったが、ここは地平線という確信があった。

地平線上には、人がまばらに行き交っている。

人々は互いに目もくれず、俺の視界を右から左へ過ぎ去っていく。

なぜか誰も服を着ていなかったが、俺は意に介さない。

ふと、自分も服を着ていないことに気づく。

鏡がないので全体像は分からないが、その裸体はマネキンのように無機質に見えた。

突如、風が吹きすさぶ

纏わりつく空気を阻むものはなく、俺はただ逃げるしかなかった。

しかし体が上手く動いてくれない。

何も着ていないはずなのに、何だこの鈍さは。

からの「動け」という命令に、四肢が渋々と従っているような感じだ。

このままでは風に殺されてしまう。

危機を感じ、俺は近くにあった川辺へ倒れこむように潜り込んだ。

水の中ならば風にはやられないだろう。

しかし、いつまでもそうしてはいられない。

呼吸ができず息苦しくなっていく。

かといって、水面から顔を上げれば風が待ち構えている。

まらず水を吸い込んだ。

……肺に酸素が行き渡る感覚

なんと、水中でも呼吸ができている。

これならば逃げられるぞ。

俺は風をやり過ごすため、更に奥深くへと潜っていく。

つの間にか、川は海となっていた。

この時点で、俺の目的深海の果てを目指すことだ。

潜る、潜る、どんどん潜る。

だが、その最終地点に待っていたのは太陽の光だった。

深海の果ては地上。

俺は潜っているんじゃなくて上がっていたんだ。

その事実に打ちひしがれる間もなく、海から高負荷の斥力が襲いくる。

抗う術もなく、俺は地上へと放り投げ出された。

その先には“無”が溢れており、自分が落ちているのか、それとも昇っているのかすら分からない。

前後左右、四方八方、全てが不明空間

何も分からなかったが、もう助からないという諦念だけはあった。

俺はそっと目を瞑る。

その時、ふと一つの考えが浮かんだ。

「あ……夢か」

そう自覚したと同時に、俺の意識現実世界へと引き戻された。

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2020-09-27

[] #88-10「マスダの法則

≪ 前

目処は立った。

俺は家に帰ると、レポートをまとめる作業に取り掛かった。

検証で書いたメモを、順繰りにノートへ貼っていく。

こういうのには慣れている。

シマウマ先生の授業において、課題レポート評価は成績の5割を占めるからだ。

補習を避けるための小手先ノウハウ)は、望むと望まざるに拘わらず鍛えられる。

「さて、まずは条件Aから始めるか」

ここでBマイナスは手堅く取れる、レポートの作り方を説明しよう。

まずはテーマを決める。

いわば俺はそのテーマしか漠然としていたので苦戦していた。

ここをハッキリさせておけば、そのための資料集めや、最終的なゴール地点も自ずと見えてくるだろう。

次に、それを採点する人間性格を知っておくこと。

例えばシマウマ先生は、現代社会にも根付普遍的問題提起が好物だ。

後は関係のありそうな歴史的背景を添え、科学的根拠で味付けすればいい。

そのゴマすりこそが、ウマ目のホミノイドを満足させるのに欠かせないウマ味調味料なんだ。

それでも建前上は科学社会のためっていうお題目があるから書けるけれど、今回はそうもいかない。

このレポート寸評するのは、それを作った自分自身

より繊細で、より大雑把な作り方が要求される。

「いや、この寝起きの低血圧は条件Aではなく、どちらかというと条件aだな。だから、これは、ここと……」

パズルを組み立てるのに大事なのはピースの形を把握することだ。

記憶の断片を探り、それらの何が、何と関係があり、どのように繋がるか。

あの日は何時ごろだっけ、確か……レバノン料理を食ったよな。いや、レバー料理だったけ。あと飲み物は何だったっか……」

集めた情報憶測に基づいて取捨選択し、打ち立てた仮説を状況証拠裏付ける。

そして実際に起きたことと結びつければ、その原因には可能性が広がっているんだ。

これが学校レポート作りならCすら貰えないだろう。

だが、この超個人的な答え合わせに、権威ある体系やエビデンス必須ではない。

この法則を利用して、テレビチャンネルと音量を10に合わせる人間は俺しかいないのだから

…………

こうしてパズルを組み立てること30分。

「やった、これで理論上は矛盾していない!」

暗中模索だった事象は、真実へと導く法則昇華した。

出来上がったレポートを、しみじみと眺める。

いざ纏まったものを読み返すと、あっけないものだ。

何気なく利用している公式理論も、見た目に反して試行錯誤の末に生まれたのかもしれない。

だが達成感に浸るのは、もう少し先だ。

この法則が、本当に法則足りえるか。

それには実証が不可欠だ。

俺はカレンダーをめくり、来月の日付にデカデカと星形の印をつけた。

あの時と同じ10日、実験はこの時しかない。

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2020-09-26

[] #88-9「マスダの法則

≪ 前

というか、そもそも俺が質問したのはシマウマ先生教育スタイルについてではない。

生徒が自分意図理解していないと嘆く割に、あっちも生徒を理解できていないじゃないか

先生代数学の意義についても結構ですが、それで丸印をつけてくれるテストを俺はやっていません」

俺は彼のコンテクストを真似つつ、改めて本題に対する答えを要求した。

計算式だけ書いてテストで100点取れるならば、解答用紙なんて資源無駄でしょう。先生環境主義者だと思ったことはありませんが、少なくとも浪費家ではない。そう思いたいです」

この意趣返しは予想以上に効いたようで、シマウマ先生は得意の言い回しを介さず答えた。

「あの時のマスダには覇気があった。明らかに答えられる自信に満ちて、教師を出し抜こうという強かさも垣間見えた。私の授業はやる気がない生徒に釘を刺し、学ぼうとする姿勢考える力を研ぎ澄まさせる。その必要がない生徒に、わざわざ労力を課さない」

彼の挙げた理由は実際のところ誤解で、俺にはそんな気概意図もなかったのだが、重要なのは“彼にはそう見えた”という点だ。

行動の模倣意識が向きすぎて、俺はあの時あったような無気力さ、倦怠感まで再現できていなかった。

それが周りにも何となく伝わっていたんだ。

「あと……」

続けて、シマウマ先生は言いにくそうに答えた。

「マスダは昨日も当てたから、今日も当てるのはな……」

彼の反応からして、むしろ本音こちらにあったのだと思う。

とどのつまり、後付けでそれっぽいことを言ってはきたが、実際は大した理由がないってことらしい。

尋ねた際の過敏な反応にも納得がいく。

回りくどさを好む彼からすれば、大した理由もない選択に答えを求められるのは煩わしかったのだろう。

しかし、そんな単純な理由にこそ、根源的な手がかりは隠されている。

「昨日、昨日か……なるほど!」

この検証で見落としていた要素も、気づいてみれば単純だ。

俺は昨日の出来事を再現することにばかり固執していたが、一昨日のことを、ひいては過去出来事過小評価していた。

事象をより広い視野で見る、当たり前といえば当たり前の話だ。

こうなってくると、より徹底して遡る必要がでてくる。

俺は少し高揚した。

考えなければいけないことは増えたが、分からないままじゃなかったからだ。

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2020-09-25

[] #88-8「マスダの法則

≪ 前

「まず最初に断っておくが、私はあの方法を良いやり方だとは思っていない」

俺は先ほど自分を当てなかった理由を知りたかっただけで、やり方そのものについては構わないことだった。

それでも彼が開口一番そう言ったのには少し驚いた。

「では、なぜやるのか。本当の目的は“剪定”にこそあるからだ」

「せんてい、ですか?」

「選び定める方の“選定”じゃないぞ。まあ、そちらの方が楽なのは確かだがな」

剪定とは、樹の形を整えるために枝を切ったりするアレだ。

ここでいう「樹」とは俺たち「生徒」のことで、「枝」は恐らく「意欲」だとかを指しているのだろう。

複数の生徒を同時に教えなければならない環境。そこで教師に求められるのは、平均的な習熟度を高めることだ」

から黒板に書いた問題特定の生徒にだけやらせるのは、不公平だし非効率といえた。

シマウマ先生はそのことを重々承知していたが、それでもやる必要があるとも思っているらしい。

テストで、クラスの平均点を上げる最も効果的な方法が何なのか分かるな?」

「……点が取れない生徒を除外する、ですか」

「はあ、私の話を半分しか把握できていないな。まあ個人的には正解にしてやりたいがな」

シマウマ先生の言っていることを噛み砕いてみる。

彼の授業を受けているのは俺を含めて20人。

仮に、クラスの平均点が76点だったとしよう。

この中に0点を取っている生徒がいた場合そいつ一人で平均点を4も下げていることになる。

そいつがいなければ平均点は80になっていたと考えれば、決して無視できない比重だ。

0点というのは極端にしても、赤点を取る生徒が2人いれば結果は似たようなものになるだろう。

富豪層が平均年収を上げているから、大半の人間はそれ以下になっていると宣う輩がある。しかし私から言わせれば貧乏人が平均年収を下げているという点を甘く見積もり過ぎている」

シマウマ先生にとって最も困った生徒というのは、そういう存在だった。

「ここに入学できた時点で、最低限の学習能力は備わっているはずだ。それで赤点をとるのはな、個人的能力差だとか、予習復習が足りないだとか、そういったレベルじゃない」

けれど、そんな生徒でも見捨てることはできない。

学習意欲のない生徒は怠惰だが、そんな生徒を安易に切り捨てるのは教師の怠慢になるからだ。

まりクラスの平均点を上げる最も効果的な方法、その答えは「そういった生徒に赤点を取らせない」こと。

そのためには「自分の授業を真面目に受けなかった者の末路は悲惨」という意識を植え付けるのが手っ取り早いわけだ。

「そして、私が生徒に勤勉さを求めた旨は、これまでの授業で何度も繰り返してきたことだ」

俺の質問ナンセンスだと言ったのは、そこからきていた。

態度は示したのだから、授業中にやっている言動もそれに基づいているのは推察できるだろう、わざわざ言わせるなってことらしい。

理屈は分からなくもないが、自分のことを他人理解してもらっている前提で是非を求めてくるのは些か横暴な気がする。

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2020-09-24

[] #88-7「マスダの法則

≪ 前

「カジマ」

しかし呼ばれたのは、その視線を突き抜けた先、俺の真後ろの席にいたクラスメート名前だった。

「お前がやってみろ」

「えー、自分っすか?」

目が合ったというのに、明らかに俺を当てるのを避けた。

何らかの力が働いたってことだ。

再現の失敗に落胆こそしたが、結果として大きな成果を得られた。

ここに来て明確な謎が、ようやっと目の前に浮かび上がったんだ。

「はあ……カジマ、もう書かなくていい。前途ある若者の手を、無駄チョークで汚したくない」

「えー、まだ書ききってないっすよ」

そもそも2次方程式で、その問題は解けない。更に言うと計算も間違ってる」

…………

前回と同じように行動したにも関わらず、全く異なる結果。

これは何らかの要素、或いは条件に過不足があるからだろう。

ここから特定のために、前回との差異を比べる必要がある。

まずは不確定要素となりやすい外的要因の精査だ。

休み時間、すぐさま俺はシマウマ先生のもとへ向かった。

ちょっと、よろしいですか。先ほどの授業について質問があるのですが」

「ほう、質問しなければ分からないような教え方をした覚えはないが、君の向上心尊重して貴重なハーフタイムを割いてあげよう」

ありがとうございます。では先ほどの問題をカジマに答えさせたのは何故ですか。直前で俺と目が合ったのに」

シマウマ先生怪訝な表情をすると、これ見よがしに大きい溜め息を吐いてみせた。

教師人生20余年、生徒が私にしてきた質問の中でも五指に入るナンセンスさだな。大した意図目的もなく人にモノを尋ねるのは無知無学以前の問題だ」

よほど俺の質問が期待はずれだったらしく、彼は嫌味たっぷり説教披露する。

「ちなみに1位は『バナナおやつに入りますか』だ。おやつに入らなかったら遠足で1房もってくるのか? それ全部、食べきれるのか?」

こんなことを喋ってるくらいなら、さっさと答えた方が手っ取り早いだろうに。

まあ、彼の反応も分からなくはない。

科目に関する補足説明を求めてくるかと思えば、直接的には関係のない質問をしてきたのだから

俺が教師仕事邪魔する、大人おちょくるしか能がない不健康優良児に見えたのだろう。

だが俺にとっては、この質問重要ファクターを占めている。

否が応でも答えてもらわねばならない。

先生、どー、どー」

捲くし立てるシマウマ先生の顔前に、俺は勢いよく手を突き出し、彼の言葉を無理やり静止した。

「な、なんだそれは」

「落ち着いてください。あなたにとってクダらないことも、誰かにとっては意外と重要だったりするんです。俺の向上心を本気で尊重するつもりがあるのなら、皮肉じゃなく回答に言葉を尽くしてくれませんか」

俺がそう言うと、彼はバツが悪そうに「ふん」と鼻を鳴らし、渋々と理由説明し始めた。

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2020-09-23

[] #88-6「マスダの法則

≪ 前

それから昨日のようにバス停につくと、俺は日課を怠ったことを思い出し、後悔する素振りをした。

「あー、しまった」

前は自然と出てきた言葉だったので、意図的にやった今回はぎこちない。

役者を目指してやってるわけじゃないから、多少の白々しくなるのは許容しよう。

ふと、待合室に備え付けられた時計を覗く。

よし、ほぼ同じ時間、同じように行動できた。

その時、「プシュー」という音が近くで聴こえる。

バスが止まるときに鳴るエアブレーキ音だ。

大型の車はブレーキ空気圧を使っているらしく、それがあの独特の音を生み出しているらしい。

「えっ」

聴き慣れた音だったが、この時の俺は少し戸惑った。

来るのが予定よりも早かったからだ。

いや、前回が遅かったのだから本来ならば予定通りというべきだろうけれど、今の俺からするとそっちの方が困る。

まだ家に戻ろうとするのを堪えつつ、自分間抜けな姿を想像するという行動をやっていないのに。

まるでバス逆張りされているようだった。

求めていない時に限って、真面目に仕事しやがる。

心なしかエアブレーキ音も俺をおちょくっているように聴こえる。

やり場のない怒りに思わず舌打ちをした。

それと同時に、これで状況が大きく変わってしまうんじゃないか不安にもなった。

しかし、こういった外的要因は調整しようがないから仕方ない。

まりに状況が違うと条件の特定も難しくなるが、ここは大人しくバスに乗るべきだ。

…………

俺の不安は的中した。

前回はあれだけ授業中に当てられたのに、今回は明らかに頻度が減っていた。

というより全くと言っていいほど呼ばれない。

あえてボーっとしながら、教師の話をダルそうに聞いてもみても名指しされない。

こうなったら、シマウマ先生の授業に期待するしかないだろう。

「では、この問題を解き明かす栄誉を……」

彼の授業は選択科目なのだが人気がなく、第一希望や第二希望からあぶれた者たちが押し込められる。

そのため他よりも人が少なく、生徒達は不真面目って程じゃないが、この授業に対する意識は低くなりがちだ。

「今、この黒板に書かれていることは断片的だ。しかし私の話を50%以上インプットしているとしよう。そして、お前達の脳みそは最低でも50%以上は活動しているはず。ということは実質100%答えられる問題というわけだ」

シマウマ先生は、そんな生徒に難題を課したがる。

建前上は俺たちへの牽制球らしいが、実際は彼の邪悪からくるボークだろう。

観客がいればブーイングものだが、残念ながらこれは野球じゃない。

「進んで答えて欲しいものだが……それとも、この程度の問題に自信満々というのは、己のプライドが許さないのかな?」

仮に答えられるとしても、生徒たちは手をあげない。

もしイージーミスでもしてしまったら、説教+嫌味の2乗=ストレスで俺たちの免疫細胞は0になるからだ。

「ふーむ、そうだな。では僭越ながら、この私めが指名させていただくとしよう」

待ちに待っていない、運命の瞬間。

馬面教師の淀んだ瞳が、生徒達を一人ひとり値踏みし始めた。

パタ、パタ、パタ……

シマウマ先生の履いているスリッパが、静かな教室内に響き渡る。

俺たち生徒にとって、最も不快蹄鉄音だろう。

そして、みんな目線を逸らす中、あの時のように俺と目が合った。

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2020-09-22

[] #88-5「マスダの法則

≪ 前

今朝から俺の身に降りかかっている謎の不調、不幸。

それらに対する漠然とした気がかりは、放課後になっても俺の中で燻り続けている。

原因がハッキリしていないからだ。

なので何が問題かも、何をどうすればいいのかも分からなかった。

逆に言えば、原因さえ判明すれば、解消方法も自ずと見えてくるってわけだ。

そして、その解法は「法則」にある。

から俺は、この出来事に何らかの法則を見つけなければならない。

決して簡単なことではないし、そもそも可能なことかすら怪しいだろう。

それでも、この得も言われぬ“何か”を、得も言える“何か”にするんだ。

俺は決心を鈍らせないよう、そそくさと家路についた。

…………

当たり前のことだけど、法則というものには法則性がある。

特定の要素で構成されていて、それを一定の条件で行ったのなら同じ現象にならないといけない。

から法則を見つけ出すには、その「特定の要素」と「一定の条件」を探し出す必要があるんだ。

翌日、俺は起床すると、すぐさま昨日の出来事をシミュレーションしてみた。

「思い立ったが吉日」ってやつだ。

まあ、俺のやってることは吉日というよりは凶日の再現といえるが、大事なのはそこじゃない。

これは、その吉凶にどれだけの意味を持たせられるかという検証なんだ。

「ごー、ろく、しち、はち……っと、次は弓引きサイドランジだ」

俺は今朝の行動を同じように再現する。

ストレッチ洗顔歯磨き

意外なところに要因があるかもしれないので、関係いであろう行動も出来る限り模倣した。

「母さん、この歯磨き粉もうすぐ無くなりそうだ」

「ええっ? 昨日、変えたばかりなのに」

「うん、キトゥンの餌はもうやったよ」

「今の流れで、なぜその話にシフトするの」

家族に奇異の目で見られつつも、セリフも出来る限り同じにした。

噛み合わないところが出てくるかもしれないが、それで結果に違いがあるならば要素や条件を絞ることに繋がる。

こうして、俺は自宅での行動をほぼほぼ再現した。

残りはあの、十二星座占いだけだ。

俺はゆっくりと立ち上がると、テレビリモコンを手に取る。

昨日と同じく、自分運勢確認するまでもなく画面を消した。

もちろんチャンネル10に、音量を10にはしていない。

さて、これが吉と出るか、凶と出るか。

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2020-09-21

[] #88-4「マスダの法則

≪ 前

「なんだよ、その“マフィン法則”ってのは」

マーフィーの法則ね」

タイナイが言うには、マーフィーの法則というのは“推測可能なことは起こりうる”って前提に基づいている。

そこから失敗の可能性を掘り下げ、ひいては日常で起こりうる不幸や不運について解析するのが、この法則ってことらしい。

例えば、置き傘をしていない時に雨が降るだとか、ニキビは一番カッコ悪いところにできる、なんてのもそうだ。

口内炎は最も痛い場所にできやすい、とかもそうか?」

「うん、マーフィーの法則だね。僕の場合だと、深夜に書いてしまったブログ記事ほどバズりやすいかな」

しかし、挙げられた例の多くは法則というには大袈裟で、言ってしまえば“あるあるネタ”のようなものだった。

どちらかというと、認知バイアスに基づいた経験則といった方が正しい。

「うーん、こんなもの法則っていうのは、少々おこがましくないか?」

「けどマスダの言っていたことも、ほとんど似たようなもんだよ」

かに今日の俺の出来事で、いくつかは当てはまるものもあるだろう。

だが、それだけだ。

現時点では、俺の体験には「マーフィーの法則」っていう如何にもな呼称があり、それを知ったに過ぎない。

あの馬面教師のありがたい言葉から拝借するなら、「学んでなくても出来ること」ってやつだ。

数学公式みたいなもので、名前だけ知っていても意味がない。

計算式を学び、解き方を勉強しなければ答えは導き出せないんだ。

マーフィーの法則……法則、ねえ」

それでも俺は、この法則自分の求める“何か”が隠されていると感じていた。

その“何か”は、かかっている靄を晴らすには頼りなく、あってもなくても変わらないかもしれない。

精々、ペンライト程度の頼りない光だ。

だが、そんなものでも、目的地の道しるべくらいは見えるだろう。

そんな予感があったんだ。

法則法則……」

言葉オウムのように繰り返しながら、自分の中で咀嚼していく。

そして、ふと違和感の在り処に“あたり”をつけた。

もしかして法則か?」

それはマーフィーの法則のものではなく「法則」という一部分だった。

そう、つまり解決の糸口は「法則」にあったんだ。

その糸を手繰り寄せられるかは疑問だったが。

「うーん……やるだけ、やってみるか」

俺は緩く決心した。

その時、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。

キンコーンカンコーン

代わり映えしない、今さら何の感情も湧いてこない音色

だけど、この時だけは試合開始のゴングのように聴こえた。

「ねえ、結局マスダは何に悩んでいたの?」

「その答えは、これから、だ」

「え、どういうこと」

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2020-09-20

[] #88-3「マスダの法則

≪ 前

「正直、自分でも確信がないんだが……気がかりなことがあったんだ」

まりにも個人的なことだったから気恥ずかしかったが、俺は思い切って言った。

「俺はテレビチャンネル10に、音量を10にしてから電源を消すんだが」

「え? なんで?」

自分でも分からん。ともかく、それを今朝やり忘れたから気になっていたんだ。ほんの少しだけどな」

「ふーん、つまりルーティンだ」

意外にもタイナイの反応は澄ましていた。

笑われるよりはマシだが、少しだけ鼻につく。

スポーツ選手とかも、よくやるよね。特定動作をすることでパフォーマンスの安定化を図るんだ」

「まあ……それはいいんだが」

俺はそう言ってルーティン説明を流した。

タイナイの癖だ。

気取った言葉を散りばめて、何かを分かった気になってる節がある。

だってルーティンは以前から知っていたさ。

けれど自分のやっていることを横文字ひとつに押し込めても、全て綺麗に収まるわけじゃない。

その言葉リズムや心地よさが、そのまま答えに直結するわけではないからだ。

ハンバーグミートローフって言ったり、ホットケーキパンケーキって言うのと同じさ。

緻密な言葉選びや言い換え自体に、求めている本質存在しない。

から俺は話を続けた。

テレビの電源を消したとき星座占いがやっていたんだ」

「マスダって、そういうの信じるタイプだっけ」

「信じてない。だから途中で消したよ。けど……」

「けど?」

「きっと運勢は最悪だった。そう感じてもいる」

占いを信じてもいないし、結果を見たわけでもないのに?」

「ああ、何だか今日はツイてないって感じるんだ。因果関係もあったもんじゃないが、さっきシマウマに嫌味を言われたのだってそうだ」

「他にも何かあったの?」

売店で目当てのパンを買おうとしたら俺の番で売り切れたり、仕方なく買ったパンも落としちまったんだよ」

「落としたのはマスダの不注意だろ」

「それはそうなんだが、よりによってジャムがついてる方が地べたについたんだよ。おかげで掃除に手間取って、昼飯どころじゃなかった」

から起きた出来事を順繰りに話し、その都度感じたことをコメントし、適当な相槌を打つ。

肝心な部分を掴めていないまま話しているため、やり取り含めて宙ぶらりんの状態が続いた。

女子の会話は纏まりがないなんて言われがちだが、この時の俺たちよりは遥かにマシだろうな。

だが、そんな1対1の会議も、踊り続ければ多少の身にはなるらしい。

オカルトじみたことを言いたくはないけど、何か変な力が働いている気がするんだよな。確率論だとか統計学だとかはサッパリだが、嫌なことが嫌なタイミングで起きて、失敗が最悪の形で重なってる感じなんだ」

「うーん……つまり今のマスダは『マーフィーの法則』に引っ張られて、物事をそういう風に見てしまってるんじゃないか?」

ふとタイナイが、あまり聞きなれない言葉を口にした。

先ほどと同じで、タイナイの気取った言葉遣い、その延長線上だろう。

「なんだよ、その法則

だが、その未知の法則には、自分の気がかりを解消するための手がかりが隠されている。

この時の俺は、そんな期待感を僅かばかり覚えたんだ。

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2020-09-19

[] #88-2「マスダの法則

≪ 前

「ああ、しまった」

わず呟き、自分自身を嗜める。

忘れていたのもそうだが、そのことを「しまった」と思ったのも腹立たしい。

ふと、待合室に備え付けられた時計を覗く。

全速力で家に戻れば、次のバスには間に合うだろう。

だが逸る気持ちをグッとこらえた。

個人的かつ些細なまりごとで、わざわざ帰るなんて馬鹿げているからだ。

もし、誰も馬鹿にしなかったとしても俺が馬鹿にする。

気にしている時点で癪なのに、そのために行動するなんてもっと癪だ。

戸締りや、ガス栓の開け閉めを確認するのとはワケが違う。

慌てて家に帰ってやることは、テレビチャンネルと音量の変更。

そんな自分の姿を想像し、間抜けさに内心もんどりを打った。

その時、「プシュー」という音が近くで聴こえた。

まるで今の俺をあざ笑うかのような吹き出し音だったが、あれはバスの停まる音だ。

予定の時刻より少し遅れていたが、まあ許容範囲か。

後ろ髪を引かれる思いはあったが、それを振り払うかのように小走りでバスに乗り込んだ。

…………

この、ささやかな“気がかり”は俺の頭をもたげ続けた。

それは学校に着いた後も変わらず、負の連鎖へと繋がる。

なぜか授業中、回答役に俺がやたらと選ばれた。

よりによって集中が途切れていた時や、授業を話半分に聞いていた時に限ってだ。

特に億劫だった5時限目は応えた。

「おお、マスダよ! 間違えてしまうとは情けない!」

耳障りの悪い嘆声が教室内に響く。

声の主は担当教師だ。

彼は馬面で、いつも縞柄シャツを着ていた。

から生徒たちは、裏で「シマウマ先生」と呼んでいる。

まあ察しの通り、そんな渾名をつけられる人なので生徒ウケのいいタイプではない。

かく言う俺もそうだった。

その理由は、この講釈を聞いているだけでも分かるだろう。

「板書をノートに丸写しして、それを綺麗に出来たと満足気にする生徒は無知無学だ。なぜだか分かるか?」

「……『学んでなくても出来ることだから』でしょう?」

「そう、お前が黒板に書いた解とは、その証明なのだ

こんなことを言われて生徒が発奮すると思っているのなら、この教師は人の心がない。

前世は本当にシマウマだったんじゃないだろうか。


その後の休み時間、うな垂れている俺を見かねて隣席のクラスメートが話しかけてきた。

シマウマ先生に隙を晒すとは、今日のマスダは絶不調だね」

「ああ、タイナイ……お前か」

「心ここにあらずだね……夏バテ?」

「いや、そういうんじゃないんだ」

そうは言ったものの、具体的な原因が何なのかは自分自身でも捉えきれていなかった。

「朝、起きた時にさ、学校行くのが途轍もなくダルいなあって感じる時あるだろ。病気とかじゃなくて」

「まあ、あるね。寝起きの血圧とかが原因で」

「ああ、だから調子は戻るんだ。家を出る頃には完全に消えてる」

“それ”を上手く言葉にできない俺は、漠然としたまま説明を試みた。

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