はてなキーワード: 絵画とは
※これはフィクションです。実在の人物、団体、界隈などとは一切関係ありません。
そのひとが描く、すらりと伸びた手足が好きだった。
何にも染まらない白い肌が同じように白い肌と重なっている。草原の中に佇む、少年とも少女ともつかないその姿は確かに静止画としてそこから動かない筈なのに、きっと誰にも捕まえられない。吹き抜ける風のように自由で追いかけても追いかけてもすり抜けていくだろうから。
「尊い」
そんな私の口から零れたのは、たったそれだけ。ツイッターで回ってきた、その美しすぎるイラストについて、私はそれ以上語る言葉を持たなかった。
いや、持てなかった、と言うべきだろう。私のような語彙力のない人間がありふれた陳腐な言葉で褒めちぎっても何にもならない。
だからただ「尊い」とそれだけ言っていればいいのだ、そうだそうだ、それが正解だ。
残念なのは、一回しかふぁぼが出来ないこと。見た瞬間に無意識に1回ふぁぼって、見入って息をするのを忘れて、それからやっと呼吸を再開した時に手癖でもう一度ハートマークを押したら、ふぁぼが解除されてしまった。正直あと億万回押したい。ツイッターの仕様変えられないの?
これだからツイッターはなんて思いながら、絵についてるツイートに目をやった。
なるほど、確かに見たことないキャラだと思ったけど、やっぱりオリジナルだったんだ。そして”久しぶり”という言葉から察するに、普段は二次創作をやっている人のようだ。
ツイ主のアイコンは、知らない2頭身の金髪の女の子キャラのイラストだ。アカウント名は@noanoa_hc、スクリーンネームはNoa。
初めて見る人だ。世の中にはまだまだ私の知らない素晴らしい絵師さんがいるんだなぁと思いながらその人のプロフィールページに飛んだ。
固定ツイートを見てぎょっとした。
女の子と女の子がキスをしているイラストだった。一人はアイコンにもなっている金髪ロングの女の子、もう一人の子は茶髪のポニーテールだ。
オリジナルの中世的で絵画的でもあった雰囲気とは全く印象が違う。女の子らしさを凝縮したふわふわキラキラした世界。可愛らしい色合い。
でも確かに絵柄は同じだった。すらりとした手足のタッチは同じ。間違いなくどちらもNoaさんが描いたものだということは分かる。
そうかそうか。なんだ、その、普段は百合?をやってる人、なんだ。え、それってどういうこと?
っていうか百合って男向けのだよね?そういえば時々BLとか少女漫画の作家さんが百合描いてるの見かけるけど、正直仕事として依頼されたからだよね。好き好んで男のために消費されるようなものを作る女なんていないでしょ。
だったら何?このひとは一体何なの?bio見る限り商業作家さんではなさそう。お仕事用別アカウントもないみたいだし。趣味で百合をやってる女のひと、ってこと?
ああ、そうだ、きっとそうだ。それを収入源にして本当にやりたいオリジナルやってるひとなんだ。なんかそれってすごい。女を消費したがる男を食い物にして自分の好きなことの肥やしにしてるってことだよね。格好いいな。
私は男子の絡みを主食にしているし、可愛い受けより美人で男前な受けが好きだから、こういういかにも”かわいい”を強調したイラストを見ていると少し居心地が悪い。だけどやっぱり絵柄自体は好みだから、不思議とずっと見ていられた。もうフォローするしかなかった。
Noaさんのツイート頻度はそんなに高くなかった。2~3日に一回つぶやけばいい方。おはようとか疲れたとかの一言だけだったり、突然おいしそうな飯画を上げたり、内容はまぁ普通だ。口調は結構乱暴な感じだけど、名前からしても多分女のひとだろう。あんなに繊細で美しくて尊いイラストを描ける人が男であるはずがないと思う。
そんな普通なツイートに混じって、週に1回平日(後にそれが毎週水曜日であることに気付く)に何かのアニメの実況をしているらしいことも分かった。
最初は何のアニメなのかよく分からなかったけど、ツイートがやけに熱いなと思っていたら、その日のうちにワンドロを上げたりすることも多くて、例の固定ツイートにしている女の子達が出てくるアニメのようだった。
イラストはワンドロにも関わらず、毎回クオリティが高くて、知らないアニメだけどNoaさんのは別だ。即座にハートマークを押して、でも少し考えてそれを取り消した。
内容が内容だから、自分のフォロワーさんにこんなのが回ったら絶対迷惑になる。みんな百合の耐性ないもんね。
だから私はNoaさんを追うためだけのアカウントを作り、改めてフォローし直した。ふぁぼ欄がNoaさんのイラストやツイートで埋まっていくのが嬉しかった。
Noaさんは週末には時々オリジナル絵も上げてくれた。キャラは私が初めて見た時のものと同じだったりそうじゃなかったり。とにかくもうNoaさんの絵が全部好きだった。
というかNoaさんのことを好きになっていた。低めのテンションから自ジャンルの話題に食いつくときのギャップが最高だし、普段の砕けた乱暴な口調も格好良い。何か自カプについて考察みたいなことをツイートして界隈からのふぁぼリツをかっさらっていったかと思えば、オリジナルの儚げなイラストで私達を殺しにくる。
ツイート頻度が高くないことは重々承知の上で、それでも今日は呟いているかどうかと、毎日のようにアカウントを見にいった。
そうしていると段々話しているジャンルの内容が気になってきた。気になりすぎて動画サイトで探して、アニメを前クールから全部追った。
正直そこまで私には刺さらないアニメで、男同士でやればいいのにと何回も思ったけど、ツイートの中身がスラスラ分かるようになったのは本当に良かった。
TLを読解出来るようになると、それまで見えていなかった色々なものが見えてくる。
ジャンルの界隈の人でいつもNoaさんの考察に空リプしてる人、それに丁寧に対応するNoaさん。時には長めの議論に発展することもあるけど、いつもNoaさんが綺麗に論破してしまう。
そして、Noaさんをしきりにご飯に誘ってくるのはいつも同じアイコンだった。休日の度に何度も何度も図々しい。でもNoaさんは優しいからその誘いに乗ってあげていた。
TLに流れてくる二人分のスイーツ画に吐き気がした。Noaさんはお前のSNS映えのための道具じゃないんだぞ。
無事に現行クールの話数に追いついた私は、水曜日にはリアルタイム視聴もするようになった。Noaさんの実況を見ながら見るアニメは格別だ。離れているのに、お互い顔も本名も知らない関係なのに、一緒の時を過ごしている感じがする。
そして、見ているうちに私はある思いが日に日に強くなっているのに気が付いた。
Noaさんの自カプ、BLじゃない?と。
女王様系の金髪ロングと、従者的な幼馴染の茶髪ポニーテール。BLじゃ王道中の王道の関係性じゃない?断然金髪が受け。大人っぽいのに可愛いところもあって女王様な美人受け、最高じゃん。茶髪の方は幼馴染だからってこともあって、金髪の傍若無人な振る舞いを上手いこと扱っていて、なんかちょっと熟年夫婦感があるんだよね。もしこの二人が男の子だったら私の好みどストライクだ。本当になんで男同士じゃないんだろう。もったいなさ過ぎる。
いよいよ私は我慢が出来なくなって、その思いをNoaさんのマシュマロにしたためた。Noaさんが私の考えをどう思うのかが知りたくなった。
メッセージを送った瞬間は正直冷や汗が出た。これまでイラスト好きですとか応援してますとかそんなことしか送ったことはなくて、CPについて聞くなんて初めてだったから。
百合のことなんか全然分からないけど、やっぱり男体化って話題はよくなかっただろうか。でもでもNoaさんの普段の発言じゃ、金髪と茶髪に付いて嫁とか夫だとかいう言葉だってよく出てくるし、彼氏面とかも頻繁に言ってるし。それにオリジナルの時はどちらかというと少女より少年っぽさの方が強調されたりもする。”男キャラ”についてそこまで拒否感はないはず。いやでも。そんな考えが頭の中をグルグル巡って、やっぱり送らなければよかったとさえ思った時、それは起こった。
『男体化!その手があったかー!ありがとうございます!!』
TLに現れたその文字列を見た瞬間、私の体温は5度くらい上がったんじゃないかと思う。
その後Noaさんは続けざまに男体化について3ツイートくらいのツリーを形成して思いの丈を語った。もちろんマシュマロのお返事含め、それらは全部スクショした。
Noaさんが、あのNoaさんが、私の意見を拾って、それに賛同、私と同じように萌えてくれたのだ。
自分の性癖にとことん刺さるBLを読んだ時くらい嬉しかった。嬉しすぎて文字通り部屋の床をゴロゴロ転がり回ってしまった。
数時間後に男体化イラストが上げられた時には確実に一度心臓が止まったと思う。
これだと思った。二人の少年はばっちりNoaさんの絵柄にハマっていた。そうなのだ、これが金髪女王改め王子と茶髪従者の真の姿だ。彼らはその女性性を捨てることで、真に美しい姿に、概念にまで昇華したのだ。
その後もNoaさんは度々男体化イラストをUPしてくれた。それに触発されて界隈の他の絵師が同じように描き始めたけどやっぱり全然だめ。Noaさんじゃないと、”少年”のリアルな質感は描けない。絶対に。やっぱりNoaさんは男同士を描くために生まれてきたんだと思う。これまでの百合をやってきたのは金髪王子と茶髪従者に出会うための布石だったんだ。私はそう確信してさえいた。
自ジャンルのオンリーイベントのサークル参加募集が始まったのはちょうどそんな頃だった。Noaさんがサークルカットと共に『新刊男体化漫画やります』とツイートした時は、見間違いじゃないか5度見くらいした。
大好きなNoaさんが、他でもない私が布教した大好きな男体化カプで新刊を出すのだ。信じられない思いだった。というかこんなにいいことばかり続いていいのか?とさえ思った。
そして、一番重要なことはイベントに行けばNoaさんに会うことが出来るということだった。一体どんな人なんだろう。いや素敵な人に違いないとはもちろん思っているけど。これまで飯画や上げられる写真には本人は全く映り込んでいなくて、顔もそうだが服装や雰囲気なども一切分からなかった。でも、会えるのだ。せっかくの機会、Noaさんと自カプについて話がしたい。
そのためにも私はもう一度アニメを隈なく見返した。金髪王子と茶髪従者についてやれるだけ考察を重ね、解像度を上げることに専念した。
いよいよイベント当日。
一般入場が開始された瞬間に私はまっすぐNoaさんのスペースを目指した。15分前にTLをチェックした限りでは設営完了とのこと。新刊表紙の茶髪従者にお姫様抱っこされている金髪王子を目印に人の波をかき分けて進んだ。
パンフレットとスペース番号を何度も見比べながら場所を確かめる。ああ、私Noaさんに会うんだ。そう思うと心臓はがなり立て、喉はカラカラに乾いてくる。歩みを進めながらも深呼吸してごくんと唾を飲み込んだ。
スペースには大きな列こそ出来ていなかったものの、既に5~6人並んでいた。開始直後にってすごくない?やっぱりNoaさんって人気作家なんだ。
声の主の方を視線で辿って息を飲んだ。めちゃくちゃ美しいひとがそこにいたからだ。可愛い、ではなく、キレイなどでは足りず最早「美しい」という言葉しか適さない顔の造形だ。
身長は170cm近くあるだろうか、きれいめのジャケットをクロップドデニムでカジュアルダウンしている姿が様になりすぎている。
耳が見えるくらいの明るい色のショートカットの髪が、さらさらと額の上で揺れていた。
一見して男か女か分からなかった。どっちと言われても信じることが出来そうだ。確かなのはその人が美しいということ。
そしてそのひとの胸元に名札がついているのに気が付いた。
”Noaだょ”
崩した文字だけど、確かにそう書かれている。Noaさんだ。Noaさんなのだ、この人が。この美しいひとが。
聞こえてくる「ありがとうございました」の声は見た目の印象よりも少し高め。それに何より名札から下をよくよく見ていると、柔らかそうな身体つきが見て取れた。Noaさんは女のひとだ。メンズライクだけど確かに女のひと。男装カフェとかにいても不思議じゃないタイプの。私だってあんな風に顔が良かったら男装コスだってしてみたいと思ったことが1度や2度くらいある。もちろん鏡を見てすぐに諦めたけど。
Noaさんは私の理想のひとだった。あんな風になりたかったと思えるひとだった。最高のイラストが描けて、TLでも人気者でその上顔やスタイルまで美しくて格好いいなんて。すべてが私の理想通りだ。こんな素敵なことがあってもいいのだろうか、本当に。
私はの緊張はいよいよピークに達し、息が上手く出来なくなってきた。
無情にもNoaさんの客さばきは高速で一気に私の番になってしまう。
「あ、あの、しんかん1部、くださひっ……」
噛んでしまった。
やばい恥ずかしい。一気に顔に血が上ってくるのが分かる。今すぐにでも逃げ去りたい。そんな私を気にも留めずにNoaさんは新刊1冊ですね、と私の震える手から500円玉を受け取った。
何をしているのだ。こんなことで怯んでどうするのだ。何のためにここへ来たのか、何のために夜通しアニメを見返したのかも分からなくなってしまう。
私はNoaさんのから新刊を受け取ると、「あの」と切り出した。
「あの、実は私、Noaさんに最初にマシュマロで男体化よくないですか?って言った者なんです……!」
よかった。今度は噛まずにちゃんと言えた。少しだけほっとする。
「そうなんですか!?えー、ありがとうございますー」
Noaさんは目を見開いて驚いて、すぐさまぱぁっと明るい笑顔を浮かべる。
「うわー、じゃあこの新刊出せたのもあなたのおかげじゃないですかー。えー」
「いえいえそんな全然です!あの、やっぱ二人の関係はちょっと少年的というか、男体化すると無垢な感じがめちゃくちゃ出るというか、それがNoaさんの絵柄に合うんじゃないかってずっと思ってて」
やばいなと思いながらも一気に捲し立ててしまった。やばいな、Noaさん引いてるかな。ちらりと顔を見ると、Noaさんは先程から変わらずニコニコとした笑顔のままだった。
「いやぁ嬉しいなー。マシュマロもらった時私もその手があったかー!って思って興奮しちゃって。ほんと”少年”って儚げな感じがこの二人っぽくもあっていいですよね」
なんてことだろう。私が思い描いたような展開が繰り広げられている。本当に夢かもしれない。それなら覚めて欲しくないけど。
そう思っていると、隣のスペースの人がNoaさんに声を掛けた。
「るかちゃーん、今ソラリよんさんからラインきて、今日の打ち上げ来れるかって言ってっけど、参加でいいよねー?」
「ん?ああだいじょぶー」
「りょ~!」
背中まである長い髪を綺麗に巻いたその女は、Noaさんの返答を聞くが早いかキラキラしたネイルの指先ですぐさま返事を打ち始めた。
なんだこの女。やけにNoaさんに馴れ馴れしくないか?あのNoaさんだぞ?分かってる?
隣のスペース誰だったかな、ほとんどNoaさんしか見てなかったからよく覚えてない。でもお品書きポスターの新刊表紙に見覚えがあった。
こいつ、毎週末NoaさんをSNS映えの餌食ににしているクソ女じゃないか。いつもこんな風に馴れ馴れしくNoaさんに絡んでるんだ。最悪。胸の中にモヤモヤした感情がくすぶり始める。
でも同時にそれが正しくない感情であることも私には分かっていた。だって私はオフラインのNoaさんのこと、ほとんど何も知らないのだ。隣のクソ女の方がずっとずっとNoaさんを分かってる。他にも打ち上げの連絡をしてきたソラリよんか誰か知らないけどそういうやつとか、打ち上げに来る他のメンバーなんかの方がよっぽどNoaさんを知っているはずなのだ。
それでも、それだけで私がこの人たちに負けていると思いたくなかった。私はそんなみんなから慕われている神絵師同人作家Noaさんに布教してそれをNoaさんも気に入って新刊まで出したのだ。それをさせたのは、間違いなくこの私。
気が付いたらNoaさんが再び私の方を見ていた。
「え!?」
いきなりのことにひっくり返ったような声が出てしまった。
「あ、お時間あればいいんですけど」
Noaさんは白い歯を見せながらニカッと笑った。笑顔があまりにも眩しすぎる。Noaさんはクソ女の方を振り返る。
「ねー、もりーぬさん、打ち上げもう一人追加でいいー?えーっと」
そしてもう一度私の方を振り返って聞いた。
「あ、双樹、です」
「りょーかいです。もりーぬさーん、”そうじゅ”さん、追加で。そ、1人。あ、そうじゅさん終わったら連絡するんでライン教えてもらえません?」
それが私がNoaさんと”繋がった”瞬間だった。
Noaさんのスペースを後にして、会場をぼんやり歩く。正直百合がメインのジャンルだから男体化で本まで出しているサークルは少なかった。打ち上げの時にNoaさんと話すネタになるだろうと買い込みたかったが、Noaさんに触発されて突発で出したコピー本みたいなのが数冊だけしかなかった。それでも収穫は収穫だ。
どこかでご飯食べて戦利品に目を通して、打ち上げの連絡を待つとしよう。
Noaさんのスペースは会場のだいぶ奥だったから入口まで地味に距離がある。それにまだ一般入場が始まって30分も経っていないわけで、色んな列が進路を阻み、色んなスペースに向かう人が色んな方向を目指して進むに進めなくなって新たな混雑を生んでいる。ぼーっとしていたら人の波に攫われてしまいそうだ。
そういえば今までBLのオンリーやオールジャンルには参加したことがあったけど、百合がメインなのは初めてだ。どこもかしこも女の子のイラストのポスターやらなんやらが目につく。そしてそんな会場にいるひとの8割くらいは男性なのだった。確かに女性はいるし、サークルで参加している人には女性が多いようには思うけど、客はみんな男性だ。こういう男女比のところに初めて来たから余計にそう思うのかもしれないけど。やっぱり百合は男性向けなんだ。男女ものの男性向けほど直球のエロじゃないにしても、キレイな理想の女の子と女の子の世界ってやっぱり男の考えた理想郷で、男のための消費物に他ならない。
よかった、Noaさんが男体化をやるようになって。あの美しいひとが、例え売れるからってこれ以上男のための消費物を作り続けるなんてもったいなさ過ぎる。、
そういえばさっきNoaさんのスペースに来てたのもほとんど男の人だった。男体化でもちゃんと買ってくれるってことはやっぱりNoaさんの画力と漫画の上手さだよね。
いや、待てよ。もしかしてNoaさんガチ恋勢なんじゃないの?だってあれだけ美しいひとなんだし、それもない話ではない。だって元々百合が好きなのに男体化の本を買うなんてありえない。絶対あいつら内容なんて見てないんだ。ああやっぱり男って最悪。Noaさんもこのまま男体化続けて、早くBLにきたらいいのに。
人込みの中、男がこっちにぶつかってくる度に聞こえるように舌打ちしてやりながら、私は何とか会場を出た。
連絡を受けて、打ち上げ会場となる居酒屋に集合より少し早い時間に到着した。既に店の前でNoaさんとクソ女、それからいかにもな感じの男オタクが2人いた。Noaさんはすぐに私に気付いてくれて、私をそこにいた人達に紹介してくれた。一通り自己紹介が終わるとクソ女が男達に身内的な話題を振って私以外の4人で話し出した。何これ居辛ら過ぎる。私が死んだ魚のような顔になってもクソ女と男共は全く気付いていないようだった。最悪。
するとNoaさんが、急にこちらを向いた。私は慌てて生き返った顔に戻る。ヤバイ、見られたかな。Noaさんはこちらを見てにっこり笑うと、クソ女と男共に「そろそろ時間だし先はいっとこ」と言った。流石Noaさん。きっと私を気遣ってこう言ってくれたんだ。まだ来ていない人が2~3人いるらしかったが、その人達にはクソ女が連絡することになり、私達は店の中に入った。
ビールで乾杯した後、早速みんなアニメや今日のイベントの話をしたり、戦利品について語り始めたりする。
席順は奥からクソ女、Noaさん、私。そして向かい側に男が二人。男のうち1人は赤髪と紫髪の姉妹が自カプらしくてその話をNoaさんに振ってくる。
「82話のお姉ちゃんの妹への眼差しがやっぱりすべてを表してるんすよ」
「あれはね。流石に言い逃れ出来ない」
「っていうかソラリよんさんの新刊が、全部やってくれたからなー」
「空白の8時間!!」
「いやまじで空白の8時間ってなにっていう」
そんな会話が次々と展開されていく。なにこれ。っていうか赤髪と紫髪のカップリングって何で人気あるのか不思議なんだけど何で?今日のイベントでも島が出来て
R18要素あるので、未成年はタブ閉じてください。
わたくしは外人で30代半の会社員、バツイチ子持ち。外人ですが納税していて母子手当はもらえない年収です(なんとなく予防線)。そんなわたくしが、GW最終日にふさわしく女性向けアダルトについて思うことを書きたいです。外人なので日本語が変だったらすみません。シングルマザーをやって数年が経過し、生活になにか足りないなーと思い始め『それ』がなんだろうと考えた結果『性』でした。なので女性向けアダルトに手をだしてみましたた。
人間は生々しく苦手だったのであまり調べていません。DMMやTSUTAYAのサイトを見る限り、男性向けはSMや制服といった性癖?カテゴリが重要のように思えますが、女性向けは作品が少ないのかカテゴライズされておらず、特集といった形でまとめられています。おすすめは『シル○ラボ』というメーカーで、ここのメーカーのパッケージや商品紹介もぱっと見、アダルト感がありません。
男性向けは開始して1~3分以内に行為がはじまるものが多いですが、女性向けはなぜそこに至ったか背景やシチュエーションが映画のようにしっかり描かれています。でもやっぱり人間は生々しいので最後まで視聴できませんでした。これは好みの問題ですね。
それと、自宅にVIVE(アダルトアイテムではない)があるので、VRアダルトにもチャレンジしてみたいところです。普段はFPSをしていて、かがんだり激しく動いていたりするのですが、VRアダルトはどうなっているんでしょうね。自分が動くとキャラクターがこっち向いたり、叩いたりすると反応してくれたりするんですかね?楽しみです!
感動したのは声に臨場感があったことです。臨場感の正体はダミーヘッドマイクでの収録だそうです。声優たちのイケボや演技にも驚かされました。イケボが耳元で囁くわけですよ、耳が妊娠するかと思った!!!でも、きょうび聴くことだけに専念できる環境ってなかなかないんですよね。『聴くだけ』って難易度が高いなって。ついついスマホいじっちゃうわ、家事しながら再生しちゃうわで最後まで聴けない。寝ながら聞いてみたら、イケボすぎて寝ちゃう。ところでキス・水音シーン・って声優自身の指なめてるのかな?(再生中の雑念がすごい)私には向いてませんでした。それでも最後まで聴いたのは『青の○虐 緑の被○』というSM作品です。キャラクターのひとりは、マゾの男性なんけどサディスティック?オレ様ついて来い系のキャラで、そんな組み合わせは初めてみたのでなんというか…新感覚だった…。
■小説
男性のソレ、女性のアレを表現するだけで何パターンあるんだろうって感動しました。新しい日本語も覚えました、チャラ男は軽佻浮薄とかね。これ!といったおすすめの作品にはまだ出会えていないのですが、どれも表現や日本語の勉強になります。
■マンガ
小説もマンガもスマホで見られるので気軽です。わからない日本語があればすぐに検索できるので○indleで購入しています。しかし、絵画とは違う形で、リアルすぎずデフォルメすぎず男性と女性の身体を描くってすごいなって思います。裸の絵がとても美しいです。ストーリーは小説ほどねちっこくなく、エロに突入しますがそれでもシチュエーションは大事にしています。女性向けはシチュエーションが大事、勉強になりますね。おすすめは相葉○ョウコさんの『○するランジェリー』です。絵がすごく綺麗で、仕事を頑張る女性のお話です。ゲームでもどんな作品でも言えるのですが女主人公が天然でバカだととたんにそんなわけあるか!!って突っ込みたくなるので芯のある女性がいいと思います。好みの問題ですが。
■エロゲ
シチュエーションCD、小説、マンガの組み合わせ技といますか、集中してプレイできました。ゲームというだけあって選択肢によってエンディングが変わります。確かにエロいのですが、シナリオで泣きました。おすすめは『蝶の○ 華の○』というもので、キャラクターが多く、絵が綺麗で、シチュエーションが豊富でした。マルチエンディングを用意しながらも途中のストーリーが破綻しないように、さらにそこにシチュエーションの違うエロを絡めるなんてシナリオライターさん天才かなって思います。ただ、PCの前必須というのがつらいなって思います。
というわけで20作品くらい触れてみたのですが、自分の祖国では私の知る限り“ 女性向けアダルト ”というのがなく、その点日本ってすげぇよな、アダルトまで種類たっぷりだもんって感動しました。ここまで書いておいてあれなんですけど、自分で致すことはしてないんですよね、動画は生々しいし、CDは寝るし小説は勉強だし、マンガは読み入っちゃうし、エロゲはパソコンの前にいるしで。もっと没入感が欲しいなって思いました。
昨今、暴力表現がある作品を所持してる人が犯罪を起こすと「この作品の影響!!」など言っている人がいますが、
そんな表現は昔から小説、ドラマ、漫画、絵画、いろんなもので存在していたわけで影響もくそも無い気がするのですが…、
自分たちの教育が間違っている事を指摘されても認めず、作品を徹底的に叩く姿はどちらがモンスターなのかなと悩む所です。
私が子供の頃にはテレビの中で殺人表現されてるドラマがあれば、殺人は怖いもの、他人を傷つけてはいけない、あれはあくまでテレビの演技など、親に様々な教えを受けたものです。
時代が流れても、教育の過程では一種のマニュアルのようなものではないだろうか…と思うのですが、たまたま児童達100人弱くらいとコミュニケーションをとる機会があり、
こういった教えを保護者からされているか質問してみた所「されていた」児童は20人程度でした。
これを見て、まず思ったのは保護者がやるべきことをしているのかどうか、という事でした。
昔の人が優秀であったわけではありません。
むしろ色々な部分で現在に劣ります。当たり前です。発展した未来と過去を比べるのは愚かですから。
しかし、教育という観点では昔の教育は今より厳しかったとも考えられます。
やってはいけないことをすれば、ゲンコツが飛んできたものです。
痛い思いをして教えられる。人には必要のある経験かと私は考えます。
昨今では痛みからの教育はタブーのようになっており、仮に行うと虐待だと騒ぎ立てる親が多くなりました。
非常識なほどのお仕置きは駄目だと思いますが、軽めのゲンコツ程度は体罰と考えるには少し考えすぎな気がしますし、
そもそもそういう事が起きないようにしたいのであれば、まず保護者から子供への教育をきちんと行ってほしいですね。
子供の教育を学校へ丸投げしておいて、何かあればギャーギャー騒ぎ立てて子供が問題あるのは学校のせいだ!なんだと言っている様は、モンスターそのものです。
そんな方々が口を揃えるのは○○という漫画はーアニメはーという作品叩きです。
正直な所、作品叩きだって極論からすれば現存する作品全てが有害になりますよ。
今は保護者となった大人たちが見てきた本やテレビ、アニメ、全てが有害です。
子供が同じ道を歩んでいるだけなのに、自分たちが見てきたものをなかったことにしてあらゆる作品を叩くのです。
それっておかしいですよね。
自分たちが暴力的な表現のある作品を見てきて、なぜ問題を起こさずに大人になり、親になれたかを考えないのです。
自分が大人になれたのならば、子供もまたそのように教えていけばよいではありませんか。
しかし、自分たちが成長の過程で経験してきたことを活かすこともせず、親もメディアも何かあるたびに作品叩きをします。
叩く前にやるべきことをやっているのかと。私はそう考えるのです。
本当におかしいのは、昔から変わらず作られている作品たちでしょうか?
私は悩むのです。
個人的には下記の通り。
上記の業界の商品は、おおよそ同じ金額を払って同じようなパッケージを受け取ることしかできない。
高い金を払ってより高品質なパッケージを手に入れることはできない。
様々な人に自らの作品と触れてほしい、という思いはうれしい。
ただ、俺としては正規の手段でもっと金を払って作り手に報いたい。
それは単にオリジナルの創作者だけではなく、手に届くまでにかかわってくれているすべての人に報いたい。
でもただ金を寄付したいわけじゃない。商取引として妥当だと思う内容なら、という条件付きだ。
同じ商品を無駄に複数買ってゴミを増やすとか、余計な飾りに余計な金を払うという方法じゃなく、
アニメなら高画質高品質で、高い金払えば高品質(今だと4Kかな?)のままローカルにキャッシュしてオフラインでも閲覧可能とか
漫画なら物理本より高い金額を払えばデジタル版も即日DL可能(電子透かしぐらいなら入っててもいい)になるとか、
既存のビジネスと併存してよりメリットのある高額なサービスを提供してくれないものか?
ゲームだと最近は拡張パスがセットで高額で売りに出されるのは一般化してきた。
ちょっと前までは絵画を切り取って売っている画像を掲げてドヤ顔で批判する人たちもいたが
最近はマイクロトランザクションというよりヘイトを集めるサービスが台頭してきたおかげで
ただ、自分にゴミを増やすだけとか余計な飾りとかそういうものに金を払う気はない。
頼むよ、泥棒や乞食を追いかけたって一銭にもなりゃしないんだから俺からちゃんと金を巻き上げる方法を考えてもっと繁盛してくれよ。
より金を払ってでもいいサービスを受けたい人間はちゃんといるよ。
もちろん標準サービスの客より少ないけど、より多くの金をちゃんととれるよ。
これから先労働力は減っていく一方なんだから、理想を掲げてブラックな働き方するの止めて
自分の趣味にすら払う金を削ろうとする連中より、自分の趣味により金を払う連中の意見を尊重してくれよ。
別に前者を無視しろってわけじゃない。今後者をガン無視してるんだからもう少しこっち向いてくれ、っと言ってるだけだ。
物理本の流通経路に悪影響を与えたくないってんなら、DL版と一緒に物理本買うことも厭わないよ。
素粒子が逐次入れ替わって意識だけ残っている自分自身の体や心についてどう思っている?
生きる意味なんてないのは分かって、感情なんて長い目で考えればいっときのもので、
たまに絵画や音楽を鑑賞したり、作ってみたり、自然現象の動きを考える。
でも結局死ぬ。
自分が死ぬまでにやりたいことは何?と聞かれれば、まだ認識していないものを認識したい。
家族や教師に不快な思いをぶつけられたり、そういう人間が自殺して、死体を見せられたりして、でもどうにか立ち直れた。
その時無限に湧き出てくるものをどうにかしたくて、自然科学や宇宙物理学や世界史や哲学の本を読み漁り、いろんな小説、漫画も読んだ。
勉強という形でなく、気持ちをどうにか、とりあえず自分の疑問が解決出来るようになるまで突き詰めた。
今までにないダメージを受けて、頑張って自分で考えてきたから、もうそういう経験は慣れすぎた。
話題になるなんてどうでもいい。自分が認識できるのは自分が思う他人のみなのだ。
自分がもっとうまく伝えられるような、物語とかの表現をしたつもり。
文字や絵や音というものから、本能やありそうな経験に語りかけてくる自然現象、その表現が好きだ。
それを追求することを職にしている人はすごいなあと思う。
自分は何も気にしないまま表現するのがやはり好きなのだ。表現は表現として割り切りたい。
年増の研究者とかそんなことを考えるのかなあ。何考えてんだろ。
最近そんなことを考えて書き連ねて、1日が終わる日も少なくない。
今のところやりたいことは、グランドキャニオンとかオーロラとか、
生で見たことない自然現象を、今分かっている自然科学の知識を得た上で見てみたい。
より満足感を得られる行為を続けていきたい!
金は…まあどうにかなる?
後楽器を弾けるようになりたいなあ。
まず職業がしょうもない。定義的には職にはついておらず、ただ日がな一日パチンコをして、なにかあったら“事務所”に寄って、夜には負けて怒って家に帰ってくる。
それで30万円もらっていたらしい。ヤ○ザってすげえな。
次に子育てがしょうもない。基本的になんでも放置するくせに殴る蹴るだけはしっかりやる。
それで骨折して医者に行けば、後ろで「階段で転んだんだよな?」と俺に言ってくる。首肯した。
なにをしても褒めない。絵画コンクールで1番になっても褒めない。
その後入賞常連になったけれど「1番じゃないからなあ」とか言ってついぞ褒められたことがなかった。
でも罰だけは与える。サディズムがすげえな。
性格がしょうもない。あれをしてやった、これをしてやったばかりで「してやれなかった」「してしまった」ことを一度も口にしたことがない。
謝罪をしない。小さい頃電気屋で店頭デモのパソコンを夢中になって遊んでいると、父親が切れてしまい店員を殴って怒鳴り散らしていた。
お兄さんは鼻血を出しながら怯えきっていた。屑。すげえな。
考え方がしょうもない。俺が精神の病気になってもそれを認めようとしなかった。
父から見るとただの怠け者らしいので、これで治るはずだと整体だの電気治療だの行かされた。
俺は今も障害者手帳を持っている。顧みなさすげえな。
抗争になって“指定”になって、家にいると俺達兄妹も殺されかねないから1週間に一度しか帰ってこなくなった。
1週間に一度、いつ殺されるかわからないのにきっちり家に帰ってきて、お金と1週間分の食べ物を置いていく。
ワケは何も言わない。俺はそれをいいことに学校はサボり夜更かしして笑っていた。すげえな。
俺達が県外へ出ることを望んでいた。自分の評判が悪すぎるからということらしい。
“自分の子どもだと知られない方がこの子たちのため”だと思っていたようだ。すげえな。
子育てが本当にしょうもない。欲しいと口に出して言えば、どんなに家計が苦しくてもきちんと買ってくれた。
なにかしても謝りさえすれば一応許してくれた。
風呂場で、妹とふざけて溺れたふりをして「助けてー」と叫んでいたら血相を変えて駆けてきた。
母親は俺達を育児放棄していて、保育園の先生から見ても「お父さんに育てられなかったらあなたたちは死んでいた」らしい。
ヤ○ザになったくらいだから自分だって碌な育てられ方をしていなかったくせに、知りもしない無理した男手一つの育て方で今俺は27歳になっている。
「この子たちには母親がいないから、その分、物くらいは」と無理をして色んなものを買ってくれた。美味いものをたくさん食べさせてくれた。
それもあってか、今では自身が惨めな暮らしをしている。すげえな。
今は自分だってお金なんてないのに、何も言わず家出して関東に行った馬鹿息子が「生活が苦しい」と言えばお金を送ってくれた。
精神がおかしくなった俺が「死ぬから探すな」と書き置きすれば、あらゆる方面に連絡して探してくれた。
昔から家出をしたら絶対に探して、見つけて家に帰した。すげえな。
いつも俺に彼女ができないか聞いてくる。お前は痩せればモテるぞと笑う。
妹が癌になって死ぬかもしれないときには、どんなに金がかかっても治せる先生を見つけて付きっきりで看病していた。
俺が難聴になってしまったときも、県で唯一治せる病院に入れてくれた。
精神病も知識なんてないくせに方々に相談して一番定評のある病院に入れた。すげえな。
ヤ○ザである自分が長生きしていることに罪悪感と疑問を感じている。
「あそこの○○さんはきちんと働いて真面目だったのに亡くなって、俺がまだ生きていて……」と最近よくこぼす。
抗争で仲間内は皆死んでしまって、自分だけが生きていることが虚しいらしい。すげえな。
考え方が本当にしょうもない。生活費だけは絶対に取っておいた。
今でも浪費癖が激しい俺に貯蓄の重要性と効果的な資金の分け方を毎回教えてくれる。
どら息子は何度聞いても実行しない。すげえな。
今頃になって“自分が何をしてもらっていたか”にようやく考えが至った阿呆息子が仕送りやらを持って行くとお礼を言ってくれる。
俺はしてくれるのが当たり前だとありがとうなんて言ったことがないのに。すげえな。
いつ死んでもおかしくないと思っているらしい。もう72歳になる。
身体も弱って思考も鈍って、それでようやく自分の胸の内やなぜ昔そうしたのかを話してくれるようになった。
これを書いていて、そういえば、という風にしてもらったことが湯水のように湧いてきた。涙がとまらない。すげえな。
自分のことしか考えておらず、いつまでも親から何をされただのしてもらえなかっただの不満に思っていた。
何をしてあげられるかを考えていない。
世間で言う毒親に自分の父親もピッタリ当てはまると、一致する部分だけをことさらあげつらっていた。
一体どれだけのことをしてもらったのか考えていない。あとどれだけ話ができるのかわかっていない。
俺にできる復讐は、父の残る余生をしょうもなく平和に静かに、奴の領分であるしょうもない争いとは無縁の生活にさせてしょうもない退屈のまま過ごさせることだと思う。
なんだかんだ実家を訪れたら2時間ぐらい話して帰る。しょうもない。
未だに俺を心配している。しょうもない。笑って話してるがそいつは裏ではあんたの悪口を山ほど言いまくっていた人間の屑なんだぞ。
しょうもない。騙されやがって。
騙されたまま笑って余生を送れ。震えて眠れ。しょうもない。
俺も同じように疑問だったんだけど数年前やっと気づいたので、
もし君も同じ疑問を持ってたら助けようと思う。
人間の基本的な性質、この場合脳の仕組みとか心の仕組みとかは変わらない。
人間には集合的無意識が存在することを証明した有名な実験として、
ブーバ/キキ効果、Bouba/kiki実験というものがある。
これは色んな社会、年齢性別、ときには他と交流のない未開の地域にて
「どちらがブーバで、どちらがキキか」と問うたところ、
98%で「曲線図形がブーバで、ギザギザ図形がキキだ」と答えが返ってきた。
これはいかなる言語体系でもブーバが丸い曲線図形で、キキがギザギザ曲線をイメージした解答が得られた。
つまり人間の持つ、ハードウェアとしての性能は人種や文化問わず、実は一様にして同じなのだ。
そうすると当たり前の話だが歴史の中で同じような状況に同じ性質を持つハードウェアが置かれた場合、
本人が意図せずとも歴史において過去あったことと同じことをなぞろうとしてしまうのだ。
だからこその「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」のだ。
歴史は人間のハードウェアが引き起こす問題や失敗を既に体験している。
自分が歩いた道が誰のものでもないと思うのは幻想であり、実際は似たような、まるで同じ体験を歴史は既に繰り返している。
だからこそ多くの歴史を学ばない者たちは、過去の歴史と同じ失敗を繰り返す。
心の未解明問題について脳という器官の特性についてのハードウェア問題、物理的現象が確認できない意識についてのソフトウェア問題と分けられるが、
俺は人間の寿命による経験という蓄積の消失を人間のハードウェア問題と呼んでいる。
でも人間は進歩してきてるのではないか、と君は反論したくなるだろう。
先ほど述べたように、人間はハードウェアとして経験と性質を引き継ぐことができない。
いくらDNAに多くの情報を記載することができたとしても経験を産まれた子どもに転移させることはできない。
ところがソフトウェアである学問、つまりはテクノロジーは人間のハードウェア問題を超えて引き継ぐことができる。
そう。
人間は文字を発明したときから他の生物と全く別の道を歩み出す。
ソフトウェアとしてのテクノロジーは後世に伝え続けることができ、寿命がなく、永遠に進化し続けることができる。
文字として理論や技術は残され、誰もがそれを参照・学習することができる。
誤りがあれば訂正され、さらに合理的・効率的・革新的理論により進化を進める。
人間は既に生物的な進化を終えていて、進化はテクノロジーに引き継がれた。
人間にとっての子孫とは、テクノロジーを進化させるための、ただの薪に過ぎない。
芸術もまた学問ではあるが人間の集合的無意識において働きかけるものであるため、
時代を変えて同じような音楽や絵画が溢れてしまうのは当然のことと言える。
テクノロジーによる補助なしでは達成されないものとなってきた。
これも人間の心というハードウェア自体が進化していない証左である。
結論に戻るが、
人間は死を持ってして、経験という名のハードウェアとしての蓄積を終了させる。
歴史を学ばないものは人間の集合的無意識に沿ったいつかの時代の誰かの失敗を繰り返す。
そのため歴史を学ばないものが大多数の社会は、また同じ過ちを繰り返す。
唯一、人間の進化を代行してきたテクノロジーのみ、過ちを繰り返さず前に進むことが許された。
人間が文字を発明し、進化を委託した瞬間から、人間は生物的進化をしておらず、
故に歴史は必然的に繰り返されるものとして記録され続けている。
しかし成長・進化しない人類という種によってテクノロジー自体も妨害なしに進化し続けてきたとは言い難い。
またどれだけ優秀な頭脳を持つものが現れても死ねばそこでおしまいだ。
だからこそ、AIがシンギュラリティを引き起こすと信じられている。
池永、野口を買わないのは何故か? に対する俺の美人画云々~への言及だとして、だ。(そう考えないと話が噛み合わない)
その上で、
>高尚とか低俗なんて言ってない、単純に永く続くものをリスペクトしなくて、すぐに廃れるものをオタクは消費するのに違和感がある、その理由を教えて欲しい。
でいいんだな?
他の言及と、それに納得している意見もあるが俺の意見は違う。少し長いけどじっくり読んでくれ。
まず一言でいえば「そういう風に報道されてるのを信じてる奴が多いから」だ。
反論ではなく、違和感の説明の為に必要なんだが、どうして骨董品収集家は骨董品オタクと言わないんだ? そう言っちゃいけない決まりがあるのか?
報道されてないだけで昭和30年、40年代のアニメや特撮を好きな人はたくさんいるし、そういうのが好きだからって美術品をDisるオタクは非常に少ない。
寧ろ、絵師に至っては尊敬する画家や好きな絵画が少ない人間の方が少ないかもしれない。
ゲーム制作では今は関わる人間がとても多くなったせいもあるだろうけど、オペラや美術、古典音楽や芸能に通じてる人も大勢いて、よく見ればそういう影響は至る所にある。
あまり語らないし、語られないのは単純に言うと反発が大きくて面倒だからだ。
って言う人が多いからね。
にも関わらず、どうして豚のように与えられた消費コンテンツだけを食い漁って古い物を尊敬しないように感じるか、ってのは"感じ方が間違ってる"んだよ。
だって、オタクが古い物を馬鹿にしてるの見た事ないだろう? 尊敬してないんじゃなくて、馬鹿にされるから語る奴が少ないだけなんだ。
それに加えてネットでは流行の新しいものを話題にした方が人気が出るから、新しいコンテンツを語る若い人の方が多いし、目立つんだ。ステマもあるかもしれないけどね。
そして更に、テレビや新聞では権威を保つためにそう新しいものには触れ辛い。
ここでは省くけどオタクを軽蔑した書き方にならざるを得ない理由があって、「馬鹿がバカなものばっかり追ってる」*ように報道するんだ。
そうするとどうなるか?
今のところ、過半数かそれに近い人の目にしている新聞やテレビでは古典がリスペクトされているのが目につき、そういう場所でDisられてるオタクはネットで発言する事が増え、更に話題になって欲しいから新しいものは語るけど、バカにされるから古典には触れない、って事になるだろう? すごく分かりやすいじゃないか。
まだまだ他の要因はあるし語りたい部分もあるけどやめとくよ。
音楽で例えるとこんな感じだな。
「HipHopのMCってなんでクソ左翼で反体制のヤク中ばっかなの?」
みてーなw
「流行りのlyricばっか消費してんのにballadeとかvillanelleやらねーし、John DonneもAndrew Marvellも語らないとか違和感あんだけど?」
ってな。
要は「オタク以外の奴の承認欲求がオタクがうるせぇから満たされない」*って言ってるっぽいけどな。
もし仮に詩をやるんだったら、自分の感じ方もたまには疑ってみるのも大切だぜ? …よけいなお世話かもしれないけどな。
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