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はてなキーワード: ねがいとは

2021-04-24

タイトルに「☆」が入るアニメは「ザ☆ウルトラマンしかない

 

なぜ3週間以上たってからブクマされだすのか問題

2021-04-17

首相ファイザーCEO電話

企業に「まず国のトップが出てこい。話はそれからだ」と言われて、悩んだ挙句結局おねがいするはめに。

2021-04-16

やよい軒は「とり天定食」「しまほっけと貝汁の定食 」をレギュラーメニューにしてください

ねがいしま

本当にたのむ・・・

たのむよ・・・

2021-04-15

関西方面の言いそうなこと。

こんなにコロナが増えてるのは、公務員が怠けてるからです。

公務員を減らせば必死に働くようになるんです。

公務員を削減してコロナに勝ちましょう。

みなさ~んよろしくねがいしまーす。

行政スリム化を我々が実行するんです。

あとはエイヤーでやるしかありません。

個人的スマホゲー雑感

コンパス

オワコンニコニコとしっぽりしてるゲームオワコンパス

でもスマホゲーの中ではゲーム性かなりある方。いわゆるMOBA

基本は3対3のチーム戦で、マップに5つある拠点を巡って攻防を繰り返す。占拠した拠点相手チームより多ければ勝ち

チームの力が拮抗してればかなり面白いけど、スマホゲーなのでガチャ要素が足を引っ張る。強力なレアカード凸ってる方が勝つ

ガチャ天井がない

プロセカ

ボカロ音ゲー

音ゲーとしてはオーソドックスシステムレアカード入れてシャンシャンすれば高スコア稼げる

曲についてはもちろんボカロ。ただ、ゲームオリジナルキャラがいて、ボーカロイド歌唱バージョン以外に、そいつらの歌唱バージョン選択できたりする

個人的に好きなのはスタミナ無くなっても曲がプレイできる事、キャラ衣装の色変えできる事

プリコネ

サイゲブヒゲー

女の子を戦わせて装備集めたりコイン集めたりピース集めたりする

ゲーム性はあんまりない。「いつ必殺技ボタンポチるか」と「どんなパーティにするか」の二つくらいしかない

俺はプロ赤ちゃんじゃないから知らんけど、キャラによっては限界突破(ランク上げ)をしない方がいいらしい。面倒くさい

キャラ可愛いのと自動戦闘スキップがすこぶる優秀なゲーム

もんげ

宇宙人ゲーム

10人くらいで仕事をこなして、仕事達成ゲージが満タンになるのを目指す

でもその中には人狼がいて、仕事をしているフリをしたり、電気消したり事故起こしたりして仕事妨害したり、他人を殺したりする

そして何かあったら会議イベントを起こす。そこで他プレイヤーと議論して、こいつが人狼だとか侃々諤々する

最近日本語対応した

心理ゲーム楽しいけどめっちゃしんどい。隙間時間にやるゲームではない

神経の細い人間がやるもんじゃない。自分のせいで負けたり、他人の目を気にしながら殺すのがストレス

BBDW

れいぶるーおるたなてぃぶだーくうぉー

2020年FGOクローン三銃士の一人

ブレイブルーっていう格ゲーの前日譚らしい。本編のキャラも出てきたりするけど主人公は出ない

FGOだけどオート戦闘があるのでFGOよりえらい。それとオート戦闘の設定を細かくできるので、同じFGOクローンの通常攻撃必殺技しか撃たないファンリビよりえらい

でも優良誤認とか無断転載とかシャレにならん事件を起こしまくる。企業倫理ヤバいわよ!

ファンリビ

ふぁんたじありびるど。ファンタビだとファンタスティックビースト

2020年FGOクローン三銃士の一人(あとの一人はサクラ革命)

ファンタジア文庫のIPを使ったお祭りゲー。スレイヤーズとかフルメタとかある

でも作品偏重がある。参戦キャラデートアライブが多いし、東京レイヴンズ参戦とか言ってるけど礼装でしか登場してない

一応オート戦闘はあるけどBBDWより頭がわるい

ラノベなのにシナリオ否定意見が多い。でも最近実装されたワールド3は肯定意見が多い。もしかしたらでんでん現象かもしれない

俺ステ

「おねがい、俺を現実に戻さないで!シンフォニアステージ

こっちは電撃文庫音ゲーオーソドックス音ゲー。なので音ゲーやりたければプロセカなりデレステなりやってれば事足りる

でも音ゲーとして及第点で、さしたる欠点はない。欠点人口がない事だけ

曲としては結構良い。でもキャラや曲の一部はエンプリ(電撃文庫ソシャゲ。「そう簡単サービス終了して課金無駄になることもないんだ!」と謳われたサ終ゲー)から流用してる。ネクロマンサーやめろ

サバかく

かくれんぼサバイバルゲーム

雰囲気ゲーの感が強い。寂れた校舎でサバイバルするゲーム

食料とか水とかを確保する為にかくれんぼする。よくわからん

かくれんぼパートは非対称対戦ゲーム基本的には隠れながらアイテムを取得していく。プレイヤーの誰かが特定アイテムを拾うと、そのプレイヤーは一定時間鬼になる。鬼になったプレイヤーは他プレイヤーを見つけてしばけばアイテムがもらえる。鬼になったりならなかったりしながらアイテム取っていく

オリジナリティという観点ではまず高得点だけどゲーム性は自分には合わんかった

2021-04-14

anond:20210414001604

最近しばらく考えていた事を話すきっかけになる増田ありがとう

俺が考えていたのは、しいて名前をつけるとしたらニューバランス教。

靴のメーカーですでにあるが、それしか言いようがないから仕方ない。

ニューバランス教の信仰対象バランスという概念です。

物事はどこかに振れると必ず触れ戻しが生じますバランスを取ろうとします。

例えば人口が増え過ぎた場合パンデミックや大規模な戦争が起きて人口が減る方へ触れ戻しが発生します。

二酸化炭素が増えて地球温度が上がれば植物が増えて二酸化炭素が減るフェーズに戻ります

ニューバランス教としては、それらマクロバランスを受け入れ、自分の中のミクロバランス感覚を養う事がその中心教義となります

人と人とのコミュニケーションに落とし込めば、それは中庸の追求となります中庸は人ひとりで完結せず、止揚の中にしか存在せぬものとして、互いを尊重する、という教徒生活指針が、現代社会にも十分受け入れられる余地があるものと思ってます

ということで、よろしくねがいしま

anond:20210414001604

最近しばらく考えていた事を話すきっかけになる増田ありがとう

俺が考えていたのは、しいて名前をつけるとしたらニューバランス教。

靴のメーカーですでにあるが、それしか言いようがないから仕方ない。

ニューバランス教の信仰対象バランスという概念です。

物事はどこかに振れると必ず触れ戻しが生じますバランスを取ろうとします。

例えば人口が増え過ぎた場合パンデミックや大規模な戦争が起きて人口が減る方へ触れ戻しが発生します。

二酸化炭素が増えて地球温度が上がれば植物が増えて二酸化炭素が減るフェーズに戻ります

ニューバランス教としては、それらマクロバランスを受け入れ、自分の中のミクロバランス感覚を養う事がその中心教義となります

人と人とのコミュニケーションに落とし込めば、それは中庸の追求となります中庸は人ひとりで完結せず、止揚の中にしか存在せぬものとして、互いを尊重する、という教徒生活指針が、現代社会にも十分受け入れられる余地があるものと思ってます

ということで、よろしくねがいしま

2021-04-13

そろそろ藤井聡太にも伝説的なコピペがあってもいいんじゃないか?

藤井聡太先生が何やってこんなにすごいと言われてるのか」

初心者にいわれると、

「まあとにかく色々記録を作りまくっててすごいんだ」

くらいしか言えないんだが、驚くべきことに今年で現役5年目、確かにガチ将棋初心者にそのすごさを一言で伝えるにはキャリアが長くなってきている気もする。

そして、羽生先生コピペやら、米長邦雄先生打線コピペやらで育った身からすれば、あのへんがにわかにもわかりやす限界だよなあとも思ってるのでかなり評価してるのだが、調べても藤井聡太コピペみたいのは存在しないわけだ。

と言うわけで、仕方ないから書くことにする。

ただ、何せご本人がまだまだ未成年でありこれからバリバリ記録を作ることがほぼ確定。つまりこのコピペ擬きはあっという間に劣化すると思われるので、気が向いた人が語呂よく改善・改造していくようおねがいします。


・年々厳しくなってるプロ登竜門を圧倒的最年少でデビュー

デビューから29連勝して最多連勝記録を作る。

一年目の棋戦でいきなり名人竜王を倒して優勝。ちなみに竜王はあの羽生さん。

・もちろん新人戦も優勝。

・あまりに勝ちすぎて最年少で新人戦への出場権をなくす。

・あまりに勝ちすぎて5段昇段パーティーが7段昇段パーティーになる。

・なお5段だった期間は16日間。6段であった期間もわずか三カ月。

半年は余裕で負けないのでアンチファンに同情される。

・あまり公式戦で負けないので非公式戦の負けは乱数調整扱い

・同年代プロになったときにすでに二冠。

趣味詰め将棋でも現在連覇中。

・あまりに勝つの将棋フィクション作家ノンフィクションを名乗り始めた。

他の棋士に失礼なのでは?みたいなネタも入ってる方がコピペの完成度でとしては高そうなのだが気がとがめるのでこのへんで。

明らかに書きすぎてるので誰かいいかんじにやってくれ。40年後ぐらいには完成してるといいな。

2021-04-12

モンスター新人T やるきまんまん

有名私立大卒新人Tは新人研修のテストが社内でぶっちぎりの最下位

スパルタ教育で有名な係長のもとで一から鍛えられるはずだったが、

その係長栄転で私が教育係に任命される

顔合わせの飲み会コロナ前の話です)をした

翌日のはなし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

朝、新人Tが一番に出社していた。

T「おはようございます。昨日はごちそうさまでした」

あれ、きちんとお礼も言えるんだ?

私[おはようございます。これからよろしくね。あれ、朝早いね。急ぎの仕事でもあるの?」

T「いえ、資格勉強していまして。仕事ではないんです」

そういえば、Tは資格マニアで20~30くらい資格をもっているとか聞いたことがある。

私「資格をいっぱい持っているんだって勉強家だね」

T「・・・誰に聞きました」

このときTの顔は真顔だった。何かを警戒するような・・・

私「誰だったかな。自分プロフィールに書いていなかったっけ?」

本当は姉御肌のHさんに聞いたのだが、とっさにごまかす。

S「・・・書いています。でも、誰かに聞いたのかと思いました」

私「本当に勉強が好きなんだね。そうだ、勤務開始ししたら、さっそく、お願いすることあるから

S「承知しました

勤務開始直前にHさんが出勤して、明日17時までに間に合うようHさんに簡単資料の取りまとめと、

Tにその資料に使う項目の数字の集計を依頼した。

Hさんは午前中の早々に仕上げて、Tの数字待ちの状態

翌日の朝に、Tに進捗を聞いたら7割出来ていますというので、

大丈夫だろうと思っていたら、16時半になっても何も言ってこない。

私「Tさん、そろそろ締め切りなんだけど出来たかな?」

T「時間までにはできます。」

17時すぎ

私「できたかな?」

T「できました!」

集計した数字・・・少し見て「数字がちいさくないか?」とわかるレベル

Tに数字確認たか聞くと、汗をどっとかい挙動不審に「確認しました」とのこと

私「チェックするから集計したエクセルファイルメールして」

いたことに、項目ごとの足し算をすればいいだけなのに、VBを組み込んだファイルが送られてきた。

そして、集計する前のエクセルファイルは上書きされて残っていない・・・・・

T「なにか間違っていましたか修正します」

私「・・・いや、Hさんに集計もお願いするので、その確認をおねがいします」

T「私がやります。私の仕事です」

そういって、やるきはマンマなのだ

結局、集計対象ファイルを新たに送信してもらい、Hさんが数字の集計、私が数字資料のチェックして

無事に資料はできたが・・・・・。

私がチェックしたあとの資料新人Tがチェックするという「Tの仕事」を作ることで落ち着いた。

しかし、仕事は出来ないのにやるきまんまんな新人Tのプライド想像以上に傷ついてしまたことは

知りようもなかった。

つづく

2021-04-11

anond:20210411235100

すとっぷどらんくどらいびんぐ、みんなのねがいです

政治家というキチガイ

なんであんなに偉そうに話すのか

「・・・しかたないのう、どれ、このワシがやらんならんかのう」

誰もたのんでないし?そうならなんでオマエら選挙のたびに「お、おねがいじまずうぅハナミズナミダブシャー!」なんてやっとるの?

コロナ禍に負けず、きちんと感染予防して、頑張っていきましょう!」

うるせーよ!エッラそうにゆうな!すんな!

2021-04-10

ソロキャンプ女性に「手伝うよ」「危ないから気をつけて」 やたらと話かけてくる「男は一体何?」、女性相談に注目あつまる(2021年4月9日)|BIGLOBEニュース https://news.biglobe.ne.jp/trend/0409/blnews_210409_3137784020.html

今のご時勢で不用意に話しかけるオジサンもアレだけど、「すみませぇーん、xxxxねがいしたいんですけどぉー」等と話しかけてくる女性キャンパーにも注意が必要、という事ですよね?

痴漢冤罪同様、男性からアクションを起こしていないのに警官が来ると事実と異なる話の流れに持って行かれる可能性がある)

保育園女児わいせつ 容疑で保育士逮捕福井県警時事ドットコム https://www.jiji.com/jc/article?k=2021040901084&g

23歳で「性的欲求を満たすためにやった」≒未成年の頃からソウイッタ性癖を持ち関連資格を取得・就業していたのでは?説、を唱えたい。

当然のことですが、実在未成年者とは何ら関係の無い二次元キャラクターに対して同様の妄想表現したり描いたりする方々とは「別」に扱っていただく事が『大前提』の話となりますので、よろしくねがいします>関係各位

2021-04-07

婚活で失敗できなかった

追記:いろんな人が読んでコメントくれたみたいで本当にありがとうささやかだけどお礼とか、訂正とか書いた。

この日記を書いた時よりはネガティブ気持ちが薄れたと思う。優しい言葉とかアドバイスをくれた人たちに心から感謝します。

https://anond.hatelabo.jp/20210409130812

スペック

身長180 年齢27 顔は普通よりは悪いと思う デブハゲではない 専門学校

年収450くらい 都内一人暮らし

大手婚活サイトIBJ運営ちゃんとしてるやつ)を利用して半年くらい経った。

で、半年経って一回も誰とも会えなかったどころか、メッセージのやりとりすらほとんどできなかった。

結果的に「出会ってフラれた」みたいなとこまでいかなかった。失敗すらさせてもらえなかった。

いいねは月に貰える回数分は全部使い切ってたかちょっと余らせてしまうくらいだった。

最終的にマッチング3件。メッセージのやりとりは相手から1つ。こっちからは4つ。つまり3人に対する挨拶1回と、それに対する反応に対して返した1回だけ。

マッチングのうち2件は返答すら帰ってこなかった。

はじめまして! マッチングありがとうございますよろしくねがいします」の文章、やっぱ淡白すぎてキモかったんかな。

片方の人には「○○お好きなんですね! 自分も○○の☓☓好きで結構興味あります、よければ何が好きかとか教えてくれませんか」みたいなの書いたけどこれはこれでキモかったのか。


男子校男子校エンジニア就職ルート女性と縁がなくて、社会人慣れてきたし、30も手前だしそろそろ少し視野に入れて活動しようかな、と思ってた。

結婚願望自体はすごくあったわけじゃないけど、いい人と出会えないかな、とか、でも全然女性と喋ったことないし、そういうところ嫌われないかな、とか不安とか期待とか色々あった。

でまあ、色々やって半年全然マッチングしない。

で、そのマッチングした相手も「はじめましてよろしくねがいします」みたいな文章送ってそのまま返答なし。

結局期間内女性から帰ってきたメッセージは「すみません事情があってこのサイト活動やめます」だけだった。

「残念です、事情はわかりませんがお体に気をつけて」とだけ返した。色々大変なのかもだし、健康で元気にやってるといいんだけど。

外見は自分ではめちゃくちゃに悪いとまでは思ってない(平均以下だとは思う)んだけど、まあ身ぎれいにはしようと思って、一応ちゃんとしたところで写真取ったりした。

体系的に太ってるわけじゃないんだけど丸顔で骨格太いか写真だと太って見えるよみたいな話を言われたりしてびっくりしたな。あ、そういうのあるんだ? って。

なんかとり方の工夫とか服の工夫で細く見えて見栄えがよくてびっくりしたもん。俺意外とイケてるじゃん……とまでは思えなかったけど、結構見栄えしてびっくりした。

適切な服、やっぱ格好つくんだなって。馬子にも衣装

写真取る前にはちゃん美容院行ったりとかさ。まあ、男ばっかの現場エンジニアやってるようなオタクならだいたいわかると思うけど、髪とかちゃんと整えない人多いじゃん。

俺もそうだったんだけど、学生以来久々にヘアオイルとかワックスとか買ってちゃんと整える習慣もつけた。

やりかたも教えてもらった。親切に教えてくれて嬉しかったな。ありがとう

髪の毛整えると顔周りの印象かなり違うんだね。ああ清潔感ってこういうことかって思ったよ。まあ元がひどくてもしかたらこれでもまだ不衛生で汚かったんかもだけどさ。

服とか靴も色々興味出てきて、ちょっとした値段のやつ(って言っても本当におしゃれな人ほどお金かけられてはないけど)買ってみたりとか、色々勉強してみたりもした。

結構そういうのは楽しかったのかもしれない。照れはあったけど。

自分磨きって言うと他にもあって、実際に会ってみてなんも話せないとか話し方わからんとかってなったらやっぱ相手に悪いと思って、

初デートの会話のコツみたいなのとか結構読んだり、あとは趣味増やそうと思ってインドアアウトドアわず色々触ってみたりとかした。

初デート決まってもないのにコツとか読むのキモいなって我ながら思ったけどね。でも、最終的に俺を選ぶことがないとしても、やっぱお会いするなら不快になってほしくはないじゃん。

なんか世の中に知らんルールとかマナーあったら困るしさ、備えはあったほうがいいのかもなって。こういう言い訳するところがキモかったんかもな。

なんか知らなかったことを知るとなんてことなく見てスルーしてたネット記事とか新聞記事とかTwitterとか、そういうのが「あ、これこないだのやつかな」ってわかったりして、

世界解像度が上がるみたいで楽しかったな。いや、自分磨きを楽しんでいいのかって話はあるけど。これは楽しかっただけで娯楽だったのかも。

自分の好きな世界に閉じこもってる以外にも得られるものがいっぱいあるってわかったのは嬉しかったな。皆知ってる、当たり前のことかもしれないけど。

そういう大事な、きっと尊いんだろうなってとこに触れたのはもしかしたら幸せだったのかも。今はもうわからない。

あとはプロフィール欄とかも何書いていいかからなかったから、似たようなサイトとか使って真面目に婚活して成功した友人に色々聞いて、確認とかしてもらって、ちゃんとした文章書いてみたりもした。

やっぱどうしても自分セールスポイントとかわかんなかったりするじゃん。就活でも同じ困り方したけどさ。

でもネガティブすぎたらそりゃ相手には選ばんよなーって思って、一応一生懸命自分の魅力が伝わるようには書いたつもり。

魅力なんて最初からなかったのかもしれないけど。

年収はやっぱ見られるってサイト担当? 問い合わせの人? とかいろんな記事とか友人も言ってたから、初めて自分年収とかちゃんと見た。

プロフィール欄に入力しなきゃいけなかったしね。あれ本当に困った。あとネット源泉徴収スクショじゃ受け付けてくれなくて更に困った。

そもそも源泉徴収って貰ったっけ? って焦った。紙で貰ってねえぞ!? みたいなね。普通ネットで見れたわ。そりゃそうだよな、ネット給与明細貰ってんだから

月収すらちゃんと見てなかったもんな。奨学金振り込む時と交通費下ろす時、あとたまにデカい買い物する時しか口座見なかったし。みんなちゃんお金計算とか管理とかしててすげえ。

意外と貰ってたどころか世代の平均ちょい超えだった。お金の話ってシビアだと思うから周囲と比べたり話題にもあえて出すなんてなかったからさ、自分の頑張りが数字で見れて嬉しかった。

給料が少ないと頑張ってないって意味ではもちろんないよ。でも、お金それ自体より、就職とか残業とか頑張ってきた結果なのかもなと思って少しくらいは誇らしかった。

全然意味なかったんだけどね。

他はなんだろうな、職業年収と外見と自己アピール文と……タバコ吸うとか吸わないとかその辺のプロフィールは見れるんだよね。

タバコ吸わないしお酒はほどほどだし、自分の両親と一緒に暮らしたいとかもないし、どうだろう、結婚相手として特別ネガティブになるような要素はあんまりない……と思いたかったなあ。

家事手伝いのとこは分担してやるって書いたし。逆にやりたくないって書くくらいのがウケたのかな……。胡散臭く見えたんかも。でも俺料理とか掃除とか結構やりたかったしな。

実際に選ばれてないんだからなんかやっぱ受け入れ難いとこはあったんだと思う。

じゃあ申込みとかあんましなかったんじゃね? ってなると思うんだけど、-3歳から+6歳くらいまで結構幅広く見て、毎月貰える申し込みの数はだいたい使い切るか、ちょっと使い切らないくらいとかだったと思う。

誰でも良かった……とは言わないけど、まずはマッチングしないと話にならないなと思ったし。

幸い東京に済んでるから条件に合う人はすごく多かった。やっぱ人口多いなって。

住まい東京じゃなくても東京で働いてますって書いてる人はたぶん東京近いとこ住んでるんだろうなと思って申し込んだりもした。

よっぽど厳しいなって思った条件の人、例えば申し訳ないけど専業主婦希望の方なんかは俺のこれから給料で養い続けるのは子供考えたら難しいなって思ったから、

そういう人を除いてだいたい押してたと思う。こういうとこで条件合わないと不幸になるだけだしね。どうしても無理ってとこはやっぱ避けた。悪いなって思ったけど。俺の稼ぎが足りんばっかりに……。

言い方悪いかもなんだけど、いろんな人が魅力的で、本当にみんな素敵に見えたってのもあるよ。びっくりした。やっぱマッチングアプリみたいなのって出会い系サイトみたいな悪い偏見あったからさ。

子供の頃散々ネットで知り合った人とは会っちゃいけませんなんて言われてたのに今はネット婚活してたんだから不思議だよな。

いっぱい申し込みしてたのはどうだったんだろう。不誠実な態度だったのかな。ひとりひとりもっとちゃんと見て向き合って申し込みボタン押したほうが良かったんかもね。意外とそういうの透けて見えんのかな。

でまあ、色々やって……もしかしたらホントはみんなが当たり前にやってきたことだったり、やるべきだったことかもしれないなって思うこともたくさんあるんだけど、本当に色々やった。

楽しいことだけじゃなくてやっぱ身につまされることもあったんだけど(服がすげえ適当だったなってのは今にして思えばやっぱ恥ずかしい)、概ねいい方に努力できたんじゃないかって思ってた。

そんでマッチング件数は1桁。デートゼロ。やりとりのメッセージの数は全部合わせて相手からは合計1行。相手からの申込みゼロ

つっても申し込みゼロは言うほど珍しくはないらしいね。そりゃそうか。

悔しいとか悲しいとか通り越しちゃってさ。期間の課金だったか最初半年買ったんだけど、それが切れたときになんか自分を支えてたエネルギーみたいなのがどっか行った気がした。

今は退会したのにメールがまだ届くのが鬱陶しくて会員の完全な削除できないか調べないとなって思ってる。ブラックリスト入れるほうが早いかもだけど。

なんか、会ってみて駄目だったとか、喋ったら駄目だったとか、もしくはメッセージのやりとりで駄目だったっつーなら諦めとか、反省とかあるんだよね。

やっぱうざかったかなとか、文章からも伝わると思うんだけどネガティブなのはよくなかったなとかさ。オタクやっぱ早口かなとかさ。

なんかの配慮が足りてなかったのかなとか、もっと頑張らなきゃなって思えたと思うんだよ。

でもそもそもメッセージのやりとりすらしてもらえないくらい選ぶに値しない問題外だったんだなって思ったらなんかこう、ああ、あと一人で生きて死ぬんだなと思ってさ。

そりゃ友達でいてくれる人もありがたいことに何人もいるけど、でもそいつらも結婚とかし出してるわけじゃん。

これで40、50になった時に回り見たときに1人しかいなかったとして、それを想像したらなんかすげえ泣いた。恥ずかしい話なんだけどさ。

今まで死ぬとか生きるとかって創作の中でしかたことなかったけど、急にリアル死ぬって実感が湧いてきたんだよね。

おかしいよな、死ぬまであと30~50年くらいはあるだろうにね。

もう結構色々やったし、じゃあもうなんかそれでもどうしようもないくらい駄目なとこがあるんだなと思ったんだよね。

誰に教えてもらえるわけでもないんだけどさ。教えてもらってこれから頑張れるかはもうわかんないけど。無理かもなあ。

そしたらなんか今まで楽しかったり頑張ってきたことが全部どうでもよくなってさ。

まあこういうとこが選んでもらえなかったとこなんかもね。それが伝わるようなコミュニケーションは取ってなかったと思ってるんだけど、プロフ文章から透けるものがあったのかな。

今もう自分の悪いとこ全部「だから選んでもらえなかったんだろうな」って思っちゃうもんな。

同時に「いやでもそれが伝わるほど話もさせてもらえなかったじゃん」って思って、「そういう言い訳するとこだぞ」って思って無限ループだよ。

こういう女々しいとこが悪かったのかも。性根の問題なのかもね。

止めになったのが後追いで初めた友人3人が全員先にマッチングしたことなんだよね。

あー、なるほどねと思った。内心やっぱ「コロナの時期だからみんなあえて婚活はしないかもだしな」って言い訳があったわけよ。

まだ大丈夫かも、とか、コロナ収束すれば……みたいなね。実際にはコロナからこそ婚活と向き合うみたいな話もたくさんあるの知ってたけど。

結局、単純に俺に選ばれる価値とか魅力がなかったんだって話だった。安心したのかその時心がぽっきり折れたのかはわからなかったな。

友達はみんなマッチングの後やりとりしてて、今うまく行ってるみたいだから、それはすげえ応援してる。

嫉妬とか失敗しちゃえとか思うようになったら自分の汚さで嫌になるなーって思ったんだけど、それは幸いなことになかった。

純粋にお祝いの気持ちとか、うまくいって欲しいって気持ちちゃんとあったのは本当によかった。それすらなくなってたら意味わかんねえじゃん。

みんな結婚式呼んでくれるかな。こんなやつ呼びたくもないかもだけどさ。

実際に結婚した友人は1人しかいないんだけど、そいつ東京から引っ越してお嫁さんの実家の近くで式上げたんだよね。

呼ばれてたんだけどどうしても移動時間考えると仕事と折り合いつかなかった。悪いことしたな。

とりあえず新しく買った服は全部中古ショップで売った。キレイにしても誰が見てくれるわけでもねえなと思ったらかっこいいなとかイケてるなって思った服も全部ゴミに見えてさ。

せっかく作った人にも悪いなと思って。ゴミだと思って着るやつに着られたくないじゃん、多分。でももうどうしてもかっこよくは見えなかったんだよね。

色々やろうってやり初めたことも全部やめた。今はもうリモートワークだから仕事して寝るだけ。普段やってた料理も面倒でやらなくなってコンビニおにぎりしか食べてない。

髪もどうでもよくて整えなくなった。よく考えりゃリモートワークのカメラちょっと映るだけだもんな。相手も見てねーよどうせ。

ワックスとヘアオイルだけ残ってんのどうしようかな。あれ開けちゃう使用期限あるんだよね。

使い切る気はしないなあ。これは流石に売れないので捨てちゃっても勘弁してほしい。物は大事にしたかったんだけど。もうちょっと小さいの買えばよかったな。あるのか知らないけど。

色々頑張って……いやまあ、結果が出なかったし楽しんでたこともあるから頑張ってなかったんかもだけど、とにかく色々やってたんだけど、それ全部やらなくなった。

時間とかたくさんできて好きなこととか色々できるなとか思わないわけじゃなかったんだけど、これがもう驚くほど何やっても面白くない。

もうずっと頭にちらつくんだよね。選ばれる価値がないのに何やっても一緒じゃね? って。

気にしすぎなんだろうな。そういう気にし過ぎなとこが選ばれない理由だったのかもしれないけど。

死ぬのって痛いし怖いよなって漠然と思ってたところに一人で死ぬリアルさを想像しちゃったからなおさら死ぬのが怖くて、自殺とかするつもりはあんまりない。

ただ生きててももうあと選ばれることがないのは半年かけてわかったから、どうしても生きてる楽しみとか見つからなかったらどうなるかはわからない。

今はただ死ぬのが怖くて生きてる。でもそうしてても結局一人で死ぬんだよな。新聞とかニュース孤独死の話とか見るたびに心臓がきゅってなる。

なんともならんね。

あんま人様に迷惑かけないようにひっそりやっていこうと思う。せめてそれはやってこうとは思う。

読んでくれる人いたんかな。いたらありがとう。長々とごめんね。抱えてるのも辛くてさ。

そんでもし婚活中だったら、あんま気張らずに頑張ってほしい。一生懸命やって駄目だったら……まあ、なんとかなるよ。俺もなんとかやってくことにするし。なんともならなかったらごめん。

結婚以外にも幸せって当然あるし、駄目だったらそういうの探せばいいんだと思う。俺はまだちょっと考えられないけど、死ぬ決心付けるよりは先にそういう幸せを探せると思う。

もし相手がもういるんだったら、どうかお幸せに。それは掴むの結構大変な幸せから、取りこぼさないようにお相手と頑張ってほしい。言われなくてもそうするか。

anond:20210406195521

それは弱者男性として特別配慮をおねがいするのではなく

普通コンテンツ愛好者として未成熟な読者は未成年ならすみわけした上で「いやならわざわざ見るな」と対処するしかない

書き手女性から炎上させたくない」なんて「その書き手が書いて出ししてる女性キャラが豚同然」だったらどうしても怒りは湧くもの

結局感情感情のぶつかり合いにしかならないよ

好きなら買い支え電子書籍noteといった隠れ家に隠れてもしつこく探し出して買いに行く

それしかないのよ

女性オタクたる腐女子もそうやってきたんだしそれをそろそろ学びなさい

2021-04-06

anond:20210406170828

社民党からJR東労組にこんなシナリオで行きますからひとつよろしくねがいしますみたいな挨拶をしてから一発かましたのか、何の調整もなく本当にゲリラ的にやったのか、どっちなんだろうね。

大量脱退からの分裂で大ダメージを受けているJR東労組と、政党としては死に体社民党関係は今どうなってるのだろう。

2021-04-03

anond:20210402183911

ヒラマツエリ「おねがいがあるぅ~~のよぉ~~

ワタシのタイトルつかう~~増田ぁ~~♪」

2021-03-31

anond:20210331163039

高齢女性に徒歩でぶつかった女子中学生賠償金790万円」

https://news.yahoo.co.jp/articles/bc0a8a0eecf2233e6399d42b0d61816718999db9

「もうおねがいゆるして…」目黒5歳虐待死はなぜ防げなかったのか

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56028

老婆は女子中学生にかなわないし赤ん坊女性に勝てないよ

女は自分の加害性を自覚するのだ

2021-03-29

anond:20210327231744

獣医アドバイスにしたがって適切な方法伝染病対処しております 疾病対策についてご理解いただけますようおねがいします でいいのでは

2021-03-22

シグナ

「ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、

  さそりの赤眼あかめが 見えたころ、

  四時から今朝けさも やって来た。

  遠野とおのの盆地ぼんちは まっくらで、

  つめたい水の 声ばかり。

 ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、

  凍こごえた砂利じゃりに 湯ゆげを吐はき、

  火花を闇やみに まきながら、

  蛇紋岩サアペンテインの 崖がけに来て、

  やっと東が 燃もえだした。

 ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、

  鳥がなきだし 木は光り、

  青々川は ながれたが、

  丘おかもはざまも いちめんに、

  まぶしい霜しもを 載のせていた。

 ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、

  やっぱりかけると あったかだ、

  僕ぼくはほうほう 汗あせが出る。

  もう七、八里り はせたいな、

  今日も一日 霜ぐもり。

 ガタンタン、ギー、シュウシュウ

 軽便鉄道けいべんてつどうの東からの一番列車れっしゃが少しあわてたように、こう歌いながらやって来てとまりました。機関車きかんしゃの下からは、力のない湯ゆげが逃にげ出して行き、ほそ長いおかしな形の煙突えんとつからは青いけむりが、ほんの少うし立ちました。

 そこで軽便鉄道づきの電信柱でんしんばしらどもは、やっと安心あんしんしたように、ぶんぶんとうなり、シグナルの柱はかたんと白い腕木うできを上げました。このまっすぐなシグナルの柱は、シグナレスでした。

 シグナレスはほっと小さなため息いきをついて空を見上げました。空にはうすい雲が縞しまになっていっぱいに充みち、それはつめたい白光しろびかりを凍こおった地面じめんに降ふらせながら、しずかに東に流ながれていたのです。

 シグナレスはじっとその雲の行ゆく方えをながめました。それからやさしい腕木を思い切りそっちの方へ延のばしながら、ほんのかすかにひとりごとを言いいました。

「今朝けさは伯母おばさんたちもきっとこっちの方を見ていらっしゃるわ」

 シグナレスはいつまでもいつまでも、そっちに気をとられておりました。

カタン

 うしろの方のしずかな空で、いきなり音がしましたのでシグナレスは急いそいでそっちをふり向むきました。ずうっと積つまれた黒い枕木まくらぎの向こうに、あの立派りっぱな本線ほんせんのシグナル柱ばしらが、今はるかの南から、かがやく白けむりをあげてやって来る列車れっしゃを迎むかえるために、その上の硬かたい腕うでを下げたところでした。

お早う今朝は暖あたたかですね」本線のシグナル柱は、キチンと兵隊へいたいのように立ちながら、いやにまじめくさってあいさつしました。

お早うございますシグナレスはふし目になって、声を落おとして答こたえました。

「若わかさま、いけません。これからあんものにやたらに声を、おかけなさらないようにねがいます」本線のシグナルに夜電気を送おくる太ふとい電信柱でんしんばしらがさももったいぶって申もうしました。

 本線のシグナルはきまり悪わるそうに、もじもじしてだまってしまいました。気の弱いシグナレスはまるでもう消きえてしまうか飛とんでしまうかしたいと思いました。けれどもどうにもしかたがありませんでしたから、やっぱりじっと立っていたのです。

 雲の縞しまは薄うすい琥珀こはくの板いたのようにうるみ、かすかなかすかな日光が降ふって来ましたので、本線シグナルつきの電信柱はうれしがって、向こうの野原のはらを行く小さな荷馬車にばしゃを見ながら低ひくい調子ちょうしはずれの歌をやりました。

「ゴゴン、ゴーゴー、

 うすいから

 酒さけが降ふりだす、

 酒の中から

 霜しもがながれる。

 ゴゴン、ゴーゴー、

 ゴゴン、ゴーゴー、

 霜がとければ、

 つちはまっくろ。

 馬はふんごみ

 人もぺちゃぺちゃ。

 ゴゴン、ゴーゴー」

 それからもっともっとつづけざまに、わけのわからないことを歌いました。

 その間に本線ほんせんのシグナル柱ばしらが、そっと西風にたのんでこう言いいました。

「どうか気にかけないでください。こいつはもうまるで野蛮やばんなんです。礼式れいしきも何も知らないのです。実際じっさい私はいつでも困こまってるんですよ」

 軽便鉄道けいべんてつどうのシグナレスは、まるでどぎまぎしてうつむきながら低ひくく、

「あら、そんなことございませんわ」と言いいましたがなにぶん風下かざしもでしたから本線ほんせんのシグナルまで聞こえませんでした。

「許ゆるしてくださるんですか。本当を言ったら、僕ぼくなんかあなたに怒おこられたら生きているかいもないんですからね」

あらあら、そんなこと」軽便鉄道の木でつくったシグナレスは、まるで困こまったというように肩かたをすぼめましたが、実じつはその少しうつむいた顔は、うれしさにぽっと白光しろびかりを出していました。

シグナレスさん、どうかまじめで聞いてください。僕あなたのためなら、次つぎの十時の汽車が来る時腕うでを下げないで、じっとがんばり通してでも見せますよ」わずかばかりヒュウヒュウ言いっていた風が、この時ぴたりとやみました。

「あら、そんな事こといけませんわ」

「もちろんいけないですよ。汽車が来る時、腕を下げないでがんばるなんて、そんなことあなたのためにも僕のためにもならないから僕はやりはしませんよ。けれどもそんなことでもしようと言いうんです。僕あなたくらい大事だいじなもの世界中かいじゅうないんです。どうか僕を愛あいしてください」

 シグナレスは、じっと下の方を見て黙だまって立っていました。本線シグナルつきのせいの低ひくい電信柱でんしんばしらは、まだでたらめの歌をやっています

「ゴゴンゴーゴー、

 やまのいわやで、

 熊くまが火をたき、

 あまりけむくて、

 ほらを逃にげ出す。ゴゴンゴー、

 田螺にしはのろのろ。

 うう、田螺はのろのろ。

 田螺のしゃっぽは、

 羅紗ラシャの上等じょうとう、ゴゴンゴーゴー」

 本線ほんせんのシグナルはせっかちでしたから、シグナレスの返事へんじのないのに、まるであわててしまいました。

シグナレスさん、あなたはお返事をしてくださらないんですか。ああ僕ぼくはもうまるでくらやみだ。目の前がまるでまっ黒な淵ふちのようだ。ああ雷かみなりが落おちて来て、一ぺんに僕のからだをくだけ。足もとから噴火ふんかが起おこって、僕を空の遠くにほうりなげろ。もうなにもかもみんなおしまいだ。雷が落ちて来て一ぺんに僕のからだを砕くだけ。足もと……」

「いや若様わかさま、雷が参まいりました節せつは手前てまえ一身いっしんにおんわざわいをちょうだいいたします。どうかご安心あんしんをねがいとう存ぞんじます

 シグナルつきの電信柱でんしんばしらが、いつかでたらめの歌をやめて、頭の上のはりがねの槍やりをぴんと立てながら眼めをパチパチさせていました。

「えい。お前なんか何を言いうんだ。僕ぼくはそれどこじゃないんだ」

「それはまたどうしたことでござりまする。ちょっとやつがれまでお申もうし聞きけになりとう存ぞんじます

「いいよ、お前はだまっておいで」

 シグナルは高く叫さけびました。しかシグナルも、もうだまってしまいました。雲がだんだん薄うすくなって柔やわらかな陽ひが射さして参まいりました。

 五日の月が、西の山脈さんみゃくの上の黒い横雲よこぐもから、もう一ぺん顔を出して、山に沈しずむ前のほんのしばらくを、鈍にぶい鉛なまりのような光で、そこらをいっぱいにしました。冬がれの木や、つみ重かさねられた黒い枕木まくらぎはもちろんのこと、電信柱でんしんばしらまでみんな眠ねむってしまいました。遠くの遠くの風の音か水の音がごうと鳴るだけです。

「ああ、僕ぼくはもう生きてるかいもないんだ。汽車が来るたびに腕うでを下げたり、青い眼鏡めがねをかけたりいったいなんのためにこんなことをするんだ。もうなんにもおもしろくない。ああ死しのう。けれどもどうして死ぬ。やっぱり雷かみなり噴火ふんかだ」

 本線ほんせんのシグナルは、今夜も眠ねむられませんでした。非常ひじょうなはんもんでした。けれどもそれはシグナルばかりではありません。枕木の向こうに青白くしょんぼり立って、赤い火をかかげている軽便鉄道けいべんてつどうのシグナル、すなわちシグナレスとても全まったくそのとおりでした。

「ああ、シグナルさんもあんまりだわ、あたしが言いえないでお返事へんじもできないのを、すぐあんなに怒おこっておしまいになるなんて。あたしもう何もかもみんなおしまいだわ。おお神様かみさまシグナルさんに雷かみなりを落おとす時、いっしょに私にもお落としくださいませ」

 こう言いって、しきりに星空に祈いのっているのでした。ところがその声が、かすかにシグナルの耳にはいりました。シグナルはぎょっとしたように胸むねを張はって、しばらく考えていましたが、やがてガタガタふるえだしました。

 ふるえながら言いました。

シグナレスさん。あなたは何なにを祈っておられますか」

「あたし存ぞんじませんわ」シグナレスは声を落として答えました。

シグナレスさん、それはあんまりひどいお言葉ことばでしょう。僕ぼくはもう今すぐでもお雷らいさんにつぶされて、または噴火ふんかを足もとから引っぱり出して、またはいさぎよく風に倒たおされて、またはノア洪水こうずいをひっかぶって、死しんでしまおうと言うんですよ。それだのに、あなたはちっとも同情どうじょうしてくださらないんですか」

「あら、その噴火洪水こうずいを。あたしのお祈りはそれよ」シグナレスは思い切って言いました。シグナルはもううれしくて、うれしくて、なおさらガタガタガタガタふるえました。

 その赤い眼鏡めがねもゆれたのです。

シグナレスさん、なぜあなたは死ななけぁならないんですか。ね。僕ぼくへお話しください。ね。僕へお話しください。きっと、僕はそのいけないやつを追おっぱらってしまますから、いったいどうしたんですね」

だってあなたあんなにお怒おこりなさるんですもの

「ふふん。ああ、そのことですか。ふん。いいえ。そのことならばご心配しんぱいありません。大丈夫だいじょうぶです。僕ちっとも怒ってなんかいしませんからね。僕、もうあなたのためなら、眼鏡めがねをみんな取とられて、腕うでをみんなひっぱなされて、それから沼ぬまの底そこへたたき込こまれたって、あなたをうらみはしませんよ」

「あら、ほんとう。うれしいわ」

「だから僕を愛あいしてください。さあ僕を愛するって言いってください」

 五日のお月さまは、この時雲と山の端はとのちょうどまん中にいました。シグナルはもうまるで顔色を変かえて灰色はいいろの幽霊ゆうれいみたいになって言いました。

「またあなたはだまってしまったんですね。やっぱり僕がきらいなんでしょう。もういいや、どうせ僕なんか噴火ふんかか洪水こうずいかかにやられるにきまってるんだ」

「あら、ちがいますわ」

「そんならどうですどうです、どうです」

「あたし、もう大昔おおむかしかあなたのことばかり考えていましたわ」

「本当ですか、本当ですか、本当ですか」

「ええ」

「そんならいいでしょう。結婚けっこんの約束くそくをしてください」

「でも」

「でもなんですか、僕ぼくたちは春になったらつばめにたのんで、みんなにも知らせて結婚けっこんの式しきをあげましょう。どうか約束くそくしてください」

だってあたしはこんなつまらないんですわ」

「わかってますよ。僕にはそのつまらないところが尊とうといんです」

 すると、さあ、シグナレスはあらんかぎりの勇気ゆうきを出して言いい出しました。

「でもあなたは金でできてるでしょう。新式でしょう。赤青眼鏡あかあおめがねを二組みも持もっていらっしゃるわ、夜も電燈でんとうでしょう。あたしは夜だってランプですわ、眼鏡もただ一つきり、それに木ですわ」

「わかってますよ。だから僕はすきなんです」

「あら、ほんとう。うれしいわ。あたしお約束くそくするわ」

「え、ありがとう、うれしいなあ、僕もお約束しますよ。あなたはきっと、私の未来みらいの妻つまだ」

「ええ、そうよ、あたし決けっして変かわらないわ」

結婚指環エンゲージリングをあげますよ、そら、ね、あすこの四つならんだ青い星ね」

「ええ」

「あのいちばん下の脚あしもとに小さな環わが見えるでしょう、環状星雲フィッシュマウスネビュラですよ。あの光の環ね、あれを受うけ取とってください。僕のまごころです」

「ええ。ありがとういただきますわ」

「ワッハッハ。大笑おおわらいだ。うまくやってやがるぜ」

 突然とつぜん向むこうのまっ黒な倉庫そうこが、空にもはばかるような声でどなりました。二人はまるでしんとなってしまいました。

 ところが倉庫がまた言いいました。

「いや心配しんぱいしなさんな。この事ことは決けっしてほかへはもらしませんぞ。わしがしっかりのみ込こみました」

 その時です、お月さまがカブンと山へおはいりになって、あたりがポカッと、うすぐらくなったのは。

 今は風があんまり強いので電信柱でんしんばしらどもは、本線ほんせんの方も、軽便鉄道けいべんてつどうの方もまるで気が気でなく、ぐうん ぐうん ひゅうひゅう と独楽こまのようにうなっておりました。それでも空はまっ青さおに晴れていました。

 本線シグナルつきの太ふとっちょの電信柱も、もうでたらめの歌をやるどころの話ではありません。できるだけからだをちぢめて眼めを細ほそくして、ひとなみに、ブウウ、ブウウとうなってごまかしておりました。

 シグナレスはこの時、東のぐらぐらするくらい強い青びかりの中を、びっこをひくようにして走って行く雲を見ておりましたが、それからチラッとシグナルの方を見ました。シグナルは、今日巡査じゅんさのようにしゃんと立っていましたが、風が強くて太っちょの電柱でんちゅうに聞こえないのをいいことにして、シグナレスに話しかけました。

「どうもひどい風ですね。あなた頭がほてって痛いたみはしませんか。どうも僕ぼくは少しくらくらしますね。いろいろお話しまからあなたただ頭をふってうなずいてだけいてください。どうせお返事へんじをしたって僕ぼくのところへ届とどきはしませんからそれから僕の話でおもしろくないことがあったら横よこの方に頭を振ふってください。これは、本当は、ヨーロッパの方のやり方なんですよ。向むこうでは、僕たちのように仲なかのいいものがほかの人に知れないようにお話をする時は、みんなこうするんですよ。僕それを向こうの雑誌ざっしで見たんです。ね、あの倉庫そうこのやつめ、おかしなやつですね、いきなり僕たちの話してるところへ口を出して、引き受うけたのなんのって言いうんですものあいつはずいぶん太ふとってますね、今日も眼めをパチパチやらかしますよ、僕のあなたに物を言ってるのはわかっていても、何を言ってるのか風でいっこう聞こえないんですよ、けれども全体ぜんたい、あなたに聞こえてるんですか、聞こえてるなら頭を振ってください、ええそう、聞こえるでしょうね。僕たち早く結婚けっこんしたいもんですね、早く春になれぁいいんですね、僕のところのぶっきりこに少しも知らせないでおきましょう。そしておいて、いきなり、ウヘン! ああ風でのどがぜいぜいする。ああひどい。ちょっとお話をやめますよ。僕のどが痛いたくなったんです。わかりましたか、じゃちょっとさようなら

 それからシグナルは、ううううと言いながら眼をぱちぱちさせて、しばらくの間だまっていました。

 シグナレスもおとなしく、シグナルののどのなおるのを待まっていました。電信柱でんしんばしらどもはブンブンゴンゴンと鳴り、風はひゅうひゅうとやりました。

 シグナルはつばをのみこんだり、ええ、ええとせきばらいをしたりしていましたが、やっとのどの痛いたいのがなおったらしく、もう一ぺんシグナレスに話しかけました。けれどもこの時は、風がまるで熊くまのように吼ほえ、まわりの電信柱でんしんばしらどもは、山いっぱいの蜂はちの巣すをいっぺんにこわしでもしたように、ぐゎんぐゎんとうなっていましたので、せっかくのその声も、半分ばかりしかシグナレスに届とどきませんでした。

「ね、僕ぼくはもうあなたのためなら、次つぎの汽車の来る時、がんばって腕うでを下げないことでも、なんでもするんですからね、わかったでしょう。あなたもそのくらいの決心けっしんはあるでしょうね。あなたはほんとうに美うつくしいんです、ね、世界かいの中うちにだっておれたちの仲間なかまはいくらもあるんでしょう。その半分はまあ女の人でしょうがねえ、その中であなたはいちばん美しいんです。もっともほかの女の人僕よく知らないんですけれどね、きっとそうだと思うんですよ、どうです聞こえますか。僕たちのまわりにいるやつはみんなばかですね、のろまですね、僕のとこのぶっきりこが僕が何をあなたに言ってるのかと思って、そらごらんなさい、一生けん命めい、目をパチパチやってますよ、こいつときたら全まったくチョークよりも形がわるいんですからね、そら、こんどはあんなに口を曲まげていますよ。あきれたばかですねえ、僕の話聞こえますか、僕の……」

「若わかさま、さっきから何をべちゃべちゃ言いっていらっしゃるのです。しかシグナレス風情ふぜいと、いったい何をにやけていらっしゃるんです」

 いきなり本線ほんせんシグナルつきの電信柱でんしんばしらが、むしゃくしゃまぎれに、ごうごうの音の中を途方とほうもない声でどなったもんですからシグナルはもちろんシグナレスも、まっ青さおになってぴたっとこっちへ曲げていたからだを、まっすぐに直なおしました。

「若わかさま、さあおっしゃい。役目やくめとして承うけたまわらなければなりません」

 シグナルは、やっと元気を取り直なおしました。そしてどうせ風のために何を言いっても同じことなのをいいことにして、

「ばか、僕ぼくはシグナレスさんと結婚けっこんして幸福こうふくになって、それからお前にチョークのお嫁よめさんをくれてやるよ」と、こうまじめな顔で言ったのでした。その声は風下かざしものシグナレスにはすぐ聞こえましたので、シグナレスはこわいながら思わず笑わらってしまいました。さあそれを見た本線ほんせんシグナルつきの電信柱の怒おこりようと言ったらありません。さっそくブルブルッとふるえあがり、青白く逆上のぼせてしまい唇くちびるをきっとかみながらすぐひどく手をまわして、すなわち一ぺん東京まで手をまわして風下かざしもにいる軽便鉄道けいべんてつどうの電信柱に、シグナルとシグナレス対話たいわがいったいなんだったか、今シグナレスが笑ったことは、どんなことだったかたずねてやりました。

 ああ、シグナルは一生の失策しっさくをしたのでした。シグナレスよりも少し風下にすてきに耳のいい長い長い電信柱がいて、知らん顔をしてすまして空の方を見ながらさっきからの話をみんな聞いていたのです。そこでさっそく、それを東京を経へて本線シグナルつきの電信柱に返事へんじをしてやりました。本線ほんせんシグナルつきの電信柱でんしんばしらはキリキリ歯はがみをしながら聞いていましたが、すっかり聞いてしまうと、さあ、まるでばかのようになってどなりました。

くそっ、えいっ。いまいましい。あんまりだ。犬畜生いぬちくしょうあんまりだ。犬畜生、ええ、若わかさま、わたしだって男ですぜ。こんなにひどくばかにされてだまっているとお考えですか。結婚けっこんだなんてやれるならやってごらんなさい。電信柱の仲間なかまはもうみんな反対はんたいです。シグナル柱の人たちだって鉄道長てつどうちょうの命令めいれいにそむけるもんですか。そして鉄道長はわたし叔父おじですぜ。結婚なりなんなりやってごらんなさい。えい、犬畜生いぬちくしょうめ、えい」

 本線シグナルつきの電信柱は、すぐ四方電報でんぽうをかけました。それからしばらく顔色を変かえて、みんなの返事へんじをきいていました。確たしかにみんなから反対はんたいの約束くそくをもらったらしいのでした。それからきっと叔父のその鉄道長とかにもうまく頼たのんだにちがいありません。シグナルもシグナレスも、あまりのことに今さらカンとしてあきれていました。本線シグナルつきの電信柱は、すっかり反対の準備じゅんびができると、こんどは急きゅうに泣なき声で言いいました。

「あああ、八年の間、夜ひる寝ねないでめんどうを見てやってそのお礼れいがこれか。ああ情なさけない、もう世の中はみだれてしまった。ああもうおしまいだ。なさけない、メリケン国のエジソンさまもこのあさましい世界かいをお見すてなされたか。オンオンオンオン、ゴゴンゴーゴーゴゴンゴー」

 風はますます吹ふきつのり、西の空が変へんに白くぼんやりなって、どうもあやしいと思っているうちに、チラチラチラチラとうとう雪がやって参まいりました。

 シグナルは力を落おとして青白く立ち、そっとよこ眼めでやさしいシグナレスの方を見ました。シグナレスはしくしく泣なきながら、ちょうどやって来る二時の汽車を迎むかえるためにしょんぼりと腕うでをさげ、そのいじらしいなで肩がたはかすかにかすかにふるえておりました。空では風がフイウ、涙なみだを知らない電信柱どもはゴゴンゴーゴーゴゴンゴーゴー。

 さあ今度こんどは夜ですよ。Permalink | 記事への反応(0) | 22:29

又三郎

風の又三郎

宮沢賢治


どっどど どどうど どどうど どどう

青いくるみも吹きとばせ

すっぱいかりんも吹きとばせ

どっどど どどうど どどうど どどう

 谷川の岸に小さな学校がありました。

 教室はたった一つでしたが生徒は三年生がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗くりの木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴ふく岩穴もあったのです。

 さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光運動場いっぱいでした。黒い雪袴ゆきばかまをはいた二人の一年の子がどてをまわって運動場にはいって来て、まだほかにだれも来ていないのを見て、「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大よろこびで門をはいって来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人ふたりともまるでびっくりして棒立ちになり、それから顔を見合わせてぶるぶるふるえましたが、ひとりはとうとう泣き出してしまいました。というわけは、そのしんとした朝の教室なかにどこから来たのか、まるで顔も知らないおかしな赤い髪の子供がひとり、いちばん前の机にちゃんとすわっていたのです。そしてその机といったらまったくこの泣いた子の自分の机だったのです。

 もひとりの子ももう半分泣きかけていましたが、それでもむりやり目をりんと張って、そっちのほうをにらめていましたら、ちょうどそのとき川上から

「ちょうはあ かぐり ちょうはあ かぐり。」と高く叫ぶ声がして、それからまるで大きなからすのように、嘉助かすけがかばんをかかえてわらって運動場へかけて来ました。と思ったらすぐそのあとから太郎さたろうだの耕助こうすけだのどやどややってきました。

「なして泣いでら、うなかもたのが。」嘉助が泣かないこどもの肩をつかまえて言いました。するとその子もわあと泣いてしまいました。おかしいとおもってみんながあたりを見ると、教室の中にあの赤毛おかしな子がすまして、しゃんとすわっているのが目につきました。

 みんなはしんとなってしまいました。だんだんみんな女の子たちも集まって来ましたが、だれもなんとも言えませんでした。

 赤毛の子どもはいっこうこわがるふうもなくやっぱりちゃんとすわって、じっと黒板を見ています。すると六年生の一郎いちろうが来ました。一郎はまるでおとなのようにゆっくり大またにやってきて、みんなを見て、

「何なにした。」とききました。

 みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の変な子を指さしました。一郎はしばらくそっちを見ていましたが、やがて鞄かばんをしっかりかかえて、さっさと窓の下へ行きました。

 みんなもすっかり元気になってついて行きました。

「だれだ、時間にならないに教室はいってるのは。」一郎は窓へはいのぼって教室の中へ顔をつき出して言いました。

「お天気のいい時教室はいってるづど先生にうんとしからえるぞ。」窓の下の耕助が言いました。

しからえでもおら知らないよ。」嘉助が言いました。

「早ぐ出はって来こ、出はって来。」一郎が言いました。けれどもそのこどもはきょろきょろ室へやの中やみんなのほうを見るばかりで、やっぱりちゃんとひざに手をおいて腰掛けにすわっていました。

 ぜんたいその形からが実におかしいのでした。変てこなねずみいろのだぶだぶの上着を着て、白い半ずぼんをはいて、それに赤い革かわの半靴はんぐつをはいていたのです。

 それに顔といったらまるで熟したりんごのよう、ことに目はまん丸でまっくろなのでした。いっこう言葉が通じないようなので一郎も全く困ってしまいました。

あいづは外国人だな。」

学校はいるのだな。」みんなはがやがやがやがや言いました。ところが五年生の嘉助がいきなり、

「ああ三年生さはいるのだ。」と叫びましたので、

「ああそうだ。」と小さいこどもらは思いましたが、一郎はだまってくびをまげました。

 変なこどもはやはりきょろきょろこっちを見るだけ、きちんと腰掛けています

 そのとき風がどうと吹いて来て教室ガラス戸はみんながたがた鳴り、学校のうしろの山の萱かやや栗くりの木はみんな変に青じろくなってゆれ、教室のなかのこどもはなんだかにやっとわらってすこしうごいたようでした。

 すると嘉助がすぐ叫びました。

「ああわかった。あいつは風の又三郎またさぶろうだぞ。」

 そうだっとみんなもおもったときにわかにうしろのほうで五郎が、

「わあ、痛いぢゃあ。」と叫びました。

 みんなそっちへ振り向きますと、五郎が耕助に足のゆびをふまれて、まるでおこって耕助をなぐりつけていたのです。すると耕助もおこって、

「わあ、われ悪くてでひと撲はだいだなあ。」と言ってまた五郎をなぐろうとしました。

 五郎はまるで顔じゅう涙だらけにして耕助に組み付こうとしました。そこで一郎が間へはいって嘉助が耕助を押えてしまいました。

「わあい、けんかするなったら、先生ちゃん職員室に来てらぞ。」と一郎が言いながらまた教室のほうを見ましたら、一郎はにわかにまるでぽかんとしてしまいました。

 たったいままで教室にいたあの変な子が影もかたちもないのです。みんなもまるでせっかく友だちになった子うまが遠くへやられたよう、せっかく捕とった山雀やまがらに逃げられたように思いました。

 風がまたどうと吹いて来て窓ガラスをがたがた言わせ、うしろの山の萱かやをだんだん上流のほうへ青じろく波だてて行きました。

「わあ、うなだけんかしたんだがら又三郎いなぐなったな。」嘉助がおこって言いました。

 みんなもほんとうにそう思いました。五郎はじつに申しわけないと思って、足の痛いのも忘れてしょんぼり肩をすぼめて立ったのです。

「やっぱりあいつは風の又三郎だったな。」

二百十日で来たのだな。」

「靴くつはいでだたぞ。」

「服も着でだたぞ。」

「髪赤くておかしやづだったな。」

「ありゃありゃ、又三郎おれの机の上さ石かけ乗せでったぞ。」二年生の子が言いました。見るとその子の机の上にはきたない石かけが乗っていたのです。

「そうだ、ありゃ。あそごのガラスもぶっかしたぞ。」

「そだないでああいづあ休み前に嘉助石ぶっつけだのだな。」

「わあい。そだないであ。」と言っていたとき、これはまたなんというわけでしょう。先生玄関から出て来たのです。先生はぴかぴか光る呼び子を右手にもって、もう集まれのしたくをしているのでしたが、そのすぐうしろから、さっきの赤い髪の子が、まるで権現ごんげんさまの尾おっぱ持ちのようにすまし込んで、白いシャッポかぶって、先生についてすぱすぱとあるいて来たのです。

 みんなはしいんとなってしまいました。やっと一郎が「先生お早うございます。」と言いましたのでみんなもついて、

先生お早うございます。」と言っただけでした。

「みなさん。お早う。どなたも元気ですね。では並んで。」先生は呼び子をビルルと吹きました。それはすぐ谷の向こうの山へひびいてまたビルルルと低く戻もどってきました。

 すっかりやすみの前のとおりだとみんなが思いながら六年生は一人、五年生は七人、四年生は六人、一二年生は十二人、組ごとに一列に縦にならびました。

 二年は八人、一年生は四人前へならえをしてならんだのです。

 するとその間あのおかしな子は、何かおかしいのかおもしろいのか奥歯で横っちょに舌をかむようにして、じろじろみんなを見ながら先生のうしろに立っていたのです。すると先生は、高田たかださんこっちへおはいりなさいと言いながら五年生の列のところへ連れて行って、丈たけを嘉助とくらべてから嘉助とそのうしろのきよの間へ立たせました。

 みんなはふりかえってじっとそれを見ていました。

 先生はまた玄関の前に戻って、

「前へならえ。」と号令をかけました。

 みんなはもう一ぺん前へならえをしてすっかり列をつくりましたが、じつはあの変な子がどういうふうにしているのか見たくて、かわるがわるそっちをふりむいたり横目でにらんだりしたのでした。するとその子ちゃんと前へならえでもなんでも知ってるらしく平気で両腕を前へ出して、指さきを嘉助のせなかへやっと届くくらいにしていたものですから、嘉助はなんだかせなかがかゆく、くすぐったいというふうにもじもじしていました。

「直れ。」先生がまた号令をかけました。

一年から順に前へおい。」そこで一年生はあるき出し、まもなく二年生もあるき出してみんなの前をぐるっと通って、右手下駄箱げたばこのある入り口はいって行きました。四年生があるき出すとさっきの子も嘉助のあとへついて大威張りであるいて行きました。前へ行った子もときどきふりかえって見、あとの者もじっと見ていたのです。

 まもなくみんなははきもの下駄箱げたばこに入れて教室はいって、ちょうど外へならんだときのように組ごとに一列に机にすわりました。さっきの子もすまし込んで嘉助のうしろにすわりました。ところがもう大さわぎです。

「わあ、おらの机さ石かけはいってるぞ。」

「わあ、おらの机代わってるぞ。」

「キッコ、キッコ、うな通信簿持って来たが。おら忘れで来たぢゃあ。」

「わあい、さの、木ペン借せ、木ペン借せったら。」

「わあがない。ひとの雑記帳とってって。」

 そのとき先生はいって来ましたのでみんなもさわぎながらとにかく立ちあがり、一郎がいちばんしろで、

「礼。」と言いました。

 みんなはおじぎをする間はちょっとしんとなりましたが、それからまたがやがやがやがや言いました。

「しずかに、みなさん。しずかにするのです。」先生が言いました。

「しっ、悦治えつじ、やがましったら、嘉助え、喜きっこう。わあい。」と一郎がいちばんしろからまりさわぐものを一人ずつしかりました。

 みんなはしんとなりました。

 先生が言いました。

「みなさん、長い夏のお休みおもしろかったですね。みなさんは朝から水泳ぎもできたし、林の中で鷹たかにも負けないくらい高く叫んだり、またにいさんの草刈りについて上うえの野原へ行ったりしたでしょう。けれどももうきのうで休みは終わりました。これからは第二学期で秋です。むかしから秋はいちばんからだもこころもひきしまって、勉強のできる時だといってあるのです。ですから、みなさんもきょうからまたいっしょにしっかり勉強しましょう。それからこのお休みの間にみなさんのお友だちが一人ふえました。それはそこにいる高田さんです。そのかたのおとうさんはこんど会社のご用で上の野原の入り口へおいでになっていられるのです。高田さんはいままでは北海道学校におられたのですが、きょうからみなさんのお友だちになるのですから、みなさんは学校勉強ときも、また栗拾くりひろいや魚さかなとりに行くときも、高田さんをさそうようにしなければなりません。わかりましたか。わかった人は手をあげてごらんなさい。」

 すぐみんなは手をあげました。その高田とよばれた子も勢いよく手をあげましたので、ちょっと先生はわらいましたが、すぐ、

「わかりましたね、ではよし。」と言いましたので、みんなは火の消えたように一ぺんに手をおろしました。

 ところが嘉助がすぐ、

先生。」といってまた手をあげました。

はい。」先生は嘉助を指さしました。

高田さん名はなんて言うべな。」

高田三郎さぶろうさんです。」

「わあ、うまい、そりゃ、やっぱり又三郎だな。」嘉助はまるで手をたたいて机の中で踊るようにしましたので、大きなほうの子どもらはどっと笑いましたが、下の子どもらは何かこわいというふうにしいんとして三郎のほうを見ていたのです。

 先生はまた言いました。

「きょうはみなさんは通信簿宿題をもってくるのでしたね。持って来た人は机の上へ出してください。私がいま集めに行きますから。」

 みんなはばたばた鞄かばんをあけたりふろしきをといたりして、通信簿宿題を机の上に出しました。そして先生一年生のほうから順にそれを集めはじめました。そのときみんなはぎょっとしました。というわけはみんなのうしろのところにいつか一人の大人おとなが立っていたのです。その人は白いだぶだぶの麻服を着て黒いてかてかしたはんけちをネクタイの代わりに首に巻いて、手には白い扇をもって軽くじぶんの顔を扇あおぎながら少し笑ってみんなを見おろしていたのです。さあみんなはだんだんしいんとなって、まるで堅くなってしまいました。

 ところが先生別にその人を気にかけるふうもなく、順々に通信簿を集めて三郎の席まで行きますと、三郎は通信簿宿題帳もないかわりに両手をにぎりこぶしにして二つ机の上にのせていたのです。先生はだまってそこを通りすぎ、みんなのを集めてしまうとそれを両手でそろえながらまた教壇に戻りました。

「では宿題帳はこの次の土曜日に直して渡しまから、きょう持って来なかった人は、あしたきっと忘れないで持って来てください。それは悦治さんと勇治ゆうじさんと良作りょうさくさんとですね。ではきょうはここまでです。あしたかちゃんといつものとおりのしたくをしておいでなさい。それから四年生と六年生の人は、先生といっしょに教室のお掃除そうじをしましょう。ではここまで。」

 一郎が気をつけ、と言いみんなは一ぺんに立ちました。うしろ大人おとなも扇を下にさげて立ちました。

「礼。」先生もみんなも礼をしました。うしろ大人も軽く頭を下げました。それからずうっと下の組の子どもらは一目散に教室を飛び出しましたが、四年生の子どもらはまだもじもじしていました。

 すると三郎はさっきのだぶだぶの白い服の人のところへ行きました。先生も教壇をおりてその人のところへ行きました。

「いやどうもご苦労さまでございます。」その大人はていねいに先生に礼をしました。

「じきみんなとお友だちになりますから。」先生も礼を返しながら言いました。

「何ぶんどうかよろしくねがいいたします。それでは。」その人はまたていねいに礼をして目で三郎に合図すると、自分玄関のほうへまわって外へ出て待っていますと、三郎はみんなの見ている中を目をりんとはってだまって昇降口から出て行って追いつき、二人は運動場を通って川下のほうへ歩いて行きました。

 運動場を出るときの子はこっちをふりむいて、じっと学校やみんなのほうをにらむようにすると、またすたすた白服の大人おとなについて歩いて行きました。

先生、あの人は高田さんのとうさんですか。」一郎が箒ほうきをもちながら先生にききました。

「そうです。」

「なんの用で来たべ。」

「上の野原の入り口モリブデンという鉱石ができるので、それをだんだん掘るようにするためだそうです。」

「どこらあだりだべな。」

「私もまだよくわかりませんが、いつもみなさんが馬をつれて行くみちから、少し川下へ寄ったほうなようです。」

モリブデン何にするべな。」

「それは鉄とまぜたり、薬をつくったりするのだそうです。」

「そだら又三郎も掘るべが。」嘉助が言いました。

又三郎だない。高田三郎だぢゃ。」佐太郎が言いました。

又三郎又三郎だ。」嘉助が顔をまっ赤かにしてがん張りました。

「嘉助、うなも残ってらば掃除そうじしてすけろ。」一郎が言いました。

「わあい。やんたぢゃ。きょう四年生ど六年生だな。」

 嘉助は大急ぎで教室をはねだして逃げてしまいました。

 風がまた吹いて来て窓ガラスはまたがたがた鳴り、ぞうきんを入れたバケツにも小さな黒い波をたてました。

 次の日一郎はあのおかし子供が、きょうからほんとうに学校へ来て本を読んだりするかどうか早く見たいような気がして、いつもより早く嘉助をさそいました。ところが嘉助のほうは一郎よりもっとそう考えていたと見えて、とうにごはんもたべ、ふろしきに包んだ本ももって家の前へ出て一郎を待っていたのでした。二人は途中もいろいろその子のことを話しながら学校へ来ました。すると運動場には小さな子供らがもう七八人集まっていて、棒かくしをしていましたが、その子はまだ来ていませんでした。またきのうのように教室の中にいるのかと思って中をのぞいて見ましたが、教室の中はしいんとしてだれもいず、黒板の上にはきのう掃除ときぞうきんでふいた跡がかわいてぼんやり白い縞しまになっていました。

「きのうのやつまだ来てないな。」一郎が言いました。

「うん。」嘉助も言ってそこらを見まわしました。

 一郎はそこで鉄棒の下へ行って、じゃみ上がりというやり方で、無理やりに鉄棒の上にのぼり両腕をだんだん寄せて右の腕木に行くと、そこへ腰掛けてきのう三郎の行ったほうをじっと見おろして待っていました。谷川はそっちのほうへきらきら光ってながれて行き、その下の山の上のほうでは風も吹いているらしく、ときどき萱かやが白く波立っていました。

 嘉助もやっぱりその柱の下でじっとそっちを見て待っていました。ところが二人はそんなに長く待つこともありませんでした。それは突然三郎がその下手のみちから灰いろの鞄かばんを右手にかかえて走るようにして出て来たのです。

「来たぞ。」と一郎が思わず下にいる嘉助へ叫ぼうとしていますと、早くも三郎はどてをぐるっとまわって、どんどん正門をはいって来ると、

お早う。」とはっきり言いました。みんなはいっしょにそっちをふり向きましたが、一人も返事をしたものがありませんでした。

 それは返事をしないのではなくて、みんなは先生はいつでも「お早うございます。」というように習っていたのですが、お互いに「お早う。」なんて言ったことがなかったのに三郎にそう言われても、一郎や嘉助はあんまりにわかで、また勢いがいいのでとうとう臆おくしてしまって一郎も嘉助も口の中でお早うというかわりに、もにゃもにゃっと言ってしまったのでした。

 ところが三郎のほうはべつだんそれを苦にするふうもなく、二三歩また前へ進むとじっと立って、そのまっ黒な目でぐるっと運動場じゅうを見まわしました。そしてしばらくだれか遊ぶ相手がないかさがしているようでした。けれどもみんなきょろきょろ三郎のほうはみていても、やはり忙しそうに棒かくしをしたり三郎のほうへ行くものがありませんでした。三郎はちょっと具合が悪いようにそこにつっ立っていましたが、また運動場をもう一度見まわしました。

 それからぜんたいこの運動場は何間なんげんあるかというように、正門から玄関まで大またに歩数を数えながら歩きはじめました。一郎は急いで鉄棒をはねおりて嘉助とならんで、息をこらしてそれを見ていました。

 そのうち三郎は向こうの玄関の前まで行ってしまうと、こっちへ向いてしばらく暗算をするように少し首をまげて立っていました。

 みんなはやはりきろきろそっちを見ています。三郎は少し困ったように両手をうしろへ組むと向こう側の土手のほうへ職員室の前を通って歩きだしました。

 その時風がざあっと吹いて来て土手の草はざわざわ波になり、運動場のまん中でさあっと塵ちりがあがり、それが玄関の前まで行くと、きりきりとまわって小さなつむじ風になって、黄いろな塵は瓶びんをさかさまにしたような形になって屋根より高くのぼりました。

 すると嘉助が突然高く言いました。

「そうだ。やっぱりあい又三郎だぞ。あいづ何かするときっと風吹いてくるぞ。」

「うん。」一郎はどうだかわからないと思いながらもだまってそっちを見ていました。三郎はそんなことにはかまわず土手のほうへやはりすたすた歩いて行きます

 そのとき先生がいつものように呼び子をもって玄関を出て来たのです。

お早うございます。」小さな子どもらはみんな集まりました。

お早う。」先生はちらっと運動場を見まわしてから、「ではならんで。」と言いながらビルルッと笛を吹きました。

 みんなは集まってきてきのうのとおりきちんとならびました。三郎もきのう言われた所へちゃんと立っています

 先生はお日さまがまっ正面なのですこしまぶしそうにしながら号令をだんだんかけて、とうとうみんなは昇降口から教室はいりました。そして礼がすむと先生は、

「ではみなさんきょうから勉強をはじめましょう。みなさんはちゃんとお道具をもってきましたね。では一年生(と二年生)の人はお習字のお手本と硯すずりと紙を出して、二年生と四年生の人は算術帳と雑記帳と鉛筆を出して、五年生と六年生の人は国語の本を出してください。」

 さあするとあっちでもこっちでも大さわぎがはじまりました。中にも三郎のすぐ横の四年生の机の佐太郎が、いきなり手をのばして二年生のかよの鉛筆ひらりととってしまったのです。かよは佐太郎の妹でした。するとかよは、

「うわあ、兄あいな、木ペン取とてわかんないな。」と言いながら取り返そうとしますと佐太郎が、

「わあ、こいつおれのだなあ。」と言いながら鉛筆をふところの中へ入れて、あとはシナ人がおじぎするときのように両手を袖そでへ入れて、机へぴったり胸をくっつけました。するとかよは立って来て、

「兄あいな、兄なの木ペンはきのう小屋でなくしてしまったけなあ。よこせったら。」と言いながら一生けん命とり返そうとしましたが、どうしてももう佐太郎は机にくっついた大きな蟹かに化石みたいになっているので、とうとうかよは立ったまま口を大きくまげて泣きだしそうになりました。

 すると三郎は国語の本をちゃんと机にのせて困ったようにしてこれを見ていましたが、かよがとうとうぼろぼろ涙をこぼしたのを見ると、だまって右手に持っていた半分ばかりになった鉛筆を佐太郎の目の前の机に置きました。

 すると佐太郎はにわかに元気になって、むっくり起き上がりました。そして、

「くれる?」と三郎にききました。三郎はちょっとまごついたようでしたが覚悟したように、「うん。」と言いました。すると佐太郎はいきなりわらい出してふところの鉛筆をかよの小さな赤い手に持たせました。

 先生は向こうで一年の子の硯すずりに水をついでやったりしていましたし、嘉助は三郎の前ですから知りませんでしたが、一郎はこれをいちばんしろちゃんと見ていました。そしてまるでなんと言ったらいいかからない、変な気持ちがして歯をきりきり言わせました。

「では二年生のひとはお休みの前にならった引き算をもう一ぺん習ってみましょう。これを勘定してごらんなさい。」先生は黒板に25-12=の数式と書きました。二年生のこどもらはみんな一生

風の

どっどど どどうど どどうど どどう

青いくるみも吹きとばせ

すっぱいかりんも吹きとばせ

どっどど どどうど どどうど どどう

 谷川の岸に小さな学校がありました。

 教室はたった一つでしたが生徒は三年生がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗くりの木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴ふく岩穴もあったのです。

 さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光運動場いっぱいでした。黒い雪袴ゆきばかまをはいた二人の一年の子がどてをまわって運動場にはいって来て、まだほかにだれも来ていないのを見て、「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大よろこびで門をはいって来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人ふたりともまるでびっくりして棒立ちになり、それから顔を見合わせてぶるぶるふるえましたが、ひとりはとうとう泣き出してしまいました。というわけは、そのしんとした朝の教室なかにどこから来たのか、まるで顔も知らないおかしな赤い髪の子供がひとり、いちばん前の机にちゃんとすわっていたのです。そしてその机といったらまったくこの泣いた子の自分の机だったのです。

 もひとりの子ももう半分泣きかけていましたが、それでもむりやり目をりんと張って、そっちのほうをにらめていましたら、ちょうどそのとき川上から

「ちょうはあ かぐり ちょうはあ かぐり。」と高く叫ぶ声がして、それからまるで大きなからすのように、嘉助かすけがかばんをかかえてわらって運動場へかけて来ました。と思ったらすぐそのあとから太郎さたろうだの耕助こうすけだのどやどややってきました。

「なして泣いでら、うなかもたのが。」嘉助が泣かないこどもの肩をつかまえて言いました。するとその子もわあと泣いてしまいました。おかしいとおもってみんながあたりを見ると、教室の中にあの赤毛おかしな子がすまして、しゃんとすわっているのが目につきました。

 みんなはしんとなってしまいました。だんだんみんな女の子たちも集まって来ましたが、だれもなんとも言えませんでした。

 赤毛の子どもはいっこうこわがるふうもなくやっぱりちゃんとすわって、じっと黒板を見ています。すると六年生の一郎いちろうが来ました。一郎はまるでおとなのようにゆっくり大またにやってきて、みんなを見て、

「何なにした。」とききました。

 みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の変な子を指さしました。一郎はしばらくそっちを見ていましたが、やがて鞄かばんをしっかりかかえて、さっさと窓の下へ行きました。

 みんなもすっかり元気になってついて行きました。

「だれだ、時間にならないに教室はいってるのは。」一郎は窓へはいのぼって教室の中へ顔をつき出して言いました。

「お天気のいい時教室はいってるづど先生にうんとしからえるぞ。」窓の下の耕助が言いました。

しからえでもおら知らないよ。」嘉助が言いました。

「早ぐ出はって来こ、出はって来。」一郎が言いました。けれどもそのこどもはきょろきょろ室へやの中やみんなのほうを見るばかりで、やっぱりちゃんとひざに手をおいて腰掛けにすわっていました。

 ぜんたいその形からが実におかしいのでした。変てこなねずみいろのだぶだぶの上着を着て、白い半ずぼんをはいて、それに赤い革かわの半靴はんぐつをはいていたのです。

 それに顔といったらまるで熟したりんごのよう、ことに目はまん丸でまっくろなのでした。いっこう言葉が通じないようなので一郎も全く困ってしまいました。

あいづは外国人だな。」

学校はいるのだな。」みんなはがやがやがやがや言いました。ところが五年生の嘉助がいきなり、

「ああ三年生さはいるのだ。」と叫びましたので、

「ああそうだ。」と小さいこどもらは思いましたが、一郎はだまってくびをまげました。

 変なこどもはやはりきょろきょろこっちを見るだけ、きちんと腰掛けています

 そのとき風がどうと吹いて来て教室ガラス戸はみんながたがた鳴り、学校のうしろの山の萱かやや栗くりの木はみんな変に青じろくなってゆれ、教室のなかのこどもはなんだかにやっとわらってすこしうごいたようでした。

 すると嘉助がすぐ叫びました。

「ああわかった。あいつは風の又三郎またさぶろうだぞ。」

 そうだっとみんなもおもったときにわかにうしろのほうで五郎が、

「わあ、痛いぢゃあ。」と叫びました。

 みんなそっちへ振り向きますと、五郎が耕助に足のゆびをふまれて、まるでおこって耕助をなぐりつけていたのです。すると耕助もおこって、

「わあ、われ悪くてでひと撲はだいだなあ。」と言ってまた五郎をなぐろうとしました。

 五郎はまるで顔じゅう涙だらけにして耕助に組み付こうとしました。そこで一郎が間へはいって嘉助が耕助を押えてしまいました。

「わあい、けんかするなったら、先生ちゃん職員室に来てらぞ。」と一郎が言いながらまた教室のほうを見ましたら、一郎はにわかにまるでぽかんとしてしまいました。

 たったいままで教室にいたあの変な子が影もかたちもないのです。みんなもまるでせっかく友だちになった子うまが遠くへやられたよう、せっかく捕とった山雀やまがらに逃げられたように思いました。

 風がまたどうと吹いて来て窓ガラスをがたがた言わせ、うしろの山の萱かやをだんだん上流のほうへ青じろく波だてて行きました。

「わあ、うなだけんかしたんだがら又三郎いなぐなったな。」嘉助がおこって言いました。

 みんなもほんとうにそう思いました。五郎はじつに申しわけないと思って、足の痛いのも忘れてしょんぼり肩をすぼめて立ったのです。

「やっぱりあいつは風の又三郎だったな。」

二百十日で来たのだな。」

「靴くつはいでだたぞ。」

「服も着でだたぞ。」

「髪赤くておかしやづだったな。」

「ありゃありゃ、又三郎おれの机の上さ石かけ乗せでったぞ。」二年生の子が言いました。見るとその子の机の上にはきたない石かけが乗っていたのです。

「そうだ、ありゃ。あそごのガラスもぶっかしたぞ。」

「そだないでああいづあ休み前に嘉助石ぶっつけだのだな。」

「わあい。そだないであ。」と言っていたとき、これはまたなんというわけでしょう。先生玄関から出て来たのです。先生はぴかぴか光る呼び子を右手にもって、もう集まれのしたくをしているのでしたが、そのすぐうしろから、さっきの赤い髪の子が、まるで権現ごんげんさまの尾おっぱ持ちのようにすまし込んで、白いシャッポかぶって、先生についてすぱすぱとあるいて来たのです。

 みんなはしいんとなってしまいました。やっと一郎が「先生お早うございます。」と言いましたのでみんなもついて、

先生お早うございます。」と言っただけでした。

「みなさん。お早う。どなたも元気ですね。では並んで。」先生は呼び子をビルルと吹きました。それはすぐ谷の向こうの山へひびいてまたビルルルと低く戻もどってきました。

 すっかりやすみの前のとおりだとみんなが思いながら六年生は一人、五年生は七人、四年生は六人、一二年生は十二人、組ごとに一列に縦にならびました。

 二年は八人、一年生は四人前へならえをしてならんだのです。

 するとその間あのおかしな子は、何かおかしいのかおもしろいのか奥歯で横っちょに舌をかむようにして、じろじろみんなを見ながら先生のうしろに立っていたのです。すると先生は、高田たかださんこっちへおはいりなさいと言いながら五年生の列のところへ連れて行って、丈たけを嘉助とくらべてから嘉助とそのうしろのきよの間へ立たせました。

 みんなはふりかえってじっとそれを見ていました。

 先生はまた玄関の前に戻って、

「前へならえ。」と号令をかけました。

 みんなはもう一ぺん前へならえをしてすっかり列をつくりましたが、じつはあの変な子がどういうふうにしているのか見たくて、かわるがわるそっちをふりむいたり横目でにらんだりしたのでした。するとその子ちゃんと前へならえでもなんでも知ってるらしく平気で両腕を前へ出して、指さきを嘉助のせなかへやっと届くくらいにしていたものですから、嘉助はなんだかせなかがかゆく、くすぐったいというふうにもじもじしていました。

「直れ。」先生がまた号令をかけました。

一年から順に前へおい。」そこで一年生はあるき出し、まもなく二年生もあるき出してみんなの前をぐるっと通って、右手下駄箱げたばこのある入り口はいって行きました。四年生があるき出すとさっきの子も嘉助のあとへついて大威張りであるいて行きました。前へ行った子もときどきふりかえって見、あとの者もじっと見ていたのです。

 まもなくみんなははきもの下駄箱げたばこに入れて教室はいって、ちょうど外へならんだときのように組ごとに一列に机にすわりました。さっきの子もすまし込んで嘉助のうしろにすわりました。ところがもう大さわぎです。

「わあ、おらの机さ石かけはいってるぞ。」

「わあ、おらの机代わってるぞ。」

「キッコ、キッコ、うな通信簿持って来たが。おら忘れで来たぢゃあ。」

「わあい、さの、木ペン借せ、木ペン借せったら。」

「わあがない。ひとの雑記帳とってって。」

 そのとき先生はいって来ましたのでみんなもさわぎながらとにかく立ちあがり、一郎がいちばんしろで、

「礼。」と言いました。

 みんなはおじぎをする間はちょっとしんとなりましたが、それからまたがやがやがやがや言いました。

「しずかに、みなさん。しずかにするのです。」先生が言いました。

「しっ、悦治えつじ、やがましったら、嘉助え、喜きっこう。わあい。」と一郎がいちばんしろからまりさわぐものを一人ずつしかりました。

 みんなはしんとなりました。

 先生が言いました。

「みなさん、長い夏のお休みおもしろかったですね。みなさんは朝から水泳ぎもできたし、林の中で鷹たかにも負けないくらい高く叫んだり、またにいさんの草刈りについて上うえの野原へ行ったりしたでしょう。けれどももうきのうで休みは終わりました。これからは第二学期で秋です。むかしから秋はいちばんからだもこころもひきしまって、勉強のできる時だといってあるのです。ですから、みなさんもきょうからまたいっしょにしっかり勉強しましょう。それからこのお休みの間にみなさんのお友だちが一人ふえました。それはそこにいる高田さんです。そのかたのおとうさんはこんど会社のご用で上の野原の入り口へおいでになっていられるのです。高田さんはいままでは北海道学校におられたのですが、きょうからみなさんのお友だちになるのですから、みなさんは学校勉強ときも、また栗拾くりひろいや魚さかなとりに行くときも、高田さんをさそうようにしなければなりません。わかりましたか。わかった人は手をあげてごらんなさい。」

 すぐみんなは手をあげました。その高田とよばれた子も勢いよく手をあげましたので、ちょっと先生はわらいましたが、すぐ、

「わかりましたね、ではよし。」と言いましたので、みんなは火の消えたように一ぺんに手をおろしました。

 ところが嘉助がすぐ、

先生。」といってまた手をあげました。

はい。」先生は嘉助を指さしました。

高田さん名はなんて言うべな。」

高田三郎さぶろうさんです。」

「わあ、うまい、そりゃ、やっぱり又三郎だな。」嘉助はまるで手をたたいて机の中で踊るようにしましたので、大きなほうの子どもらはどっと笑いましたが、下の子どもらは何かこわいというふうにしいんとして三郎のほうを見ていたのです。

 先生はまた言いました。

「きょうはみなさんは通信簿宿題をもってくるのでしたね。持って来た人は机の上へ出してください。私がいま集めに行きますから。」

 みんなはばたばた鞄かばんをあけたりふろしきをといたりして、通信簿宿題を机の上に出しました。そして先生一年生のほうから順にそれを集めはじめました。そのときみんなはぎょっとしました。というわけはみんなのうしろのところにいつか一人の大人おとなが立っていたのです。その人は白いだぶだぶの麻服を着て黒いてかてかしたはんけちをネクタイの代わりに首に巻いて、手には白い扇をもって軽くじぶんの顔を扇あおぎながら少し笑ってみんなを見おろしていたのです。さあみんなはだんだんしいんとなって、まるで堅くなってしまいました。

 ところが先生別にその人を気にかけるふうもなく、順々に通信簿を集めて三郎の席まで行きますと、三郎は通信簿宿題帳もないかわりに両手をにぎりこぶしにして二つ机の上にのせていたのです。先生はだまってそこを通りすぎ、みんなのを集めてしまうとそれを両手でそろえながらまた教壇に戻りました。

「では宿題帳はこの次の土曜日に直して渡しまから、きょう持って来なかった人は、あしたきっと忘れないで持って来てください。それは悦治さんと勇治ゆうじさんと良作りょうさくさんとですね。ではきょうはここまでです。あしたかちゃんといつものとおりのしたくをしておいでなさい。それから四年生と六年生の人は、先生といっしょに教室のお掃除そうじをしましょう。ではここまで。」

 一郎が気をつけ、と言いみんなは一ぺんに立ちました。うしろ大人おとなも扇を下にさげて立ちました。

「礼。」先生もみんなも礼をしました。うしろ大人も軽く頭を下げました。それからずうっと下の組の子どもらは一目散に教室を飛び出しましたが、四年生の子どもらはまだもじもじしていました。

 すると三郎はさっきのだぶだぶの白い服の人のところへ行きました。先生も教壇をおりてその人のところへ行きました。

「いやどうもご苦労さまでございます。」その大人はていねいに先生に礼をしました。

「じきみんなとお友だちになりますから。」先生も礼を返しながら言いました。

「何ぶんどうかよろしくねがいいたします。それでは。」その人はまたていねいに礼をして目で三郎に合図すると、自分玄関のほうへまわって外へ出て待っていますと、三郎はみんなの見ている中を目をりんとはってだまって昇降口から出て行って追いつき、二人は運動場を通って川下のほうへ歩いて行きました。

 運動場を出るときの子はこっちをふりむいて、じっと学校やみんなのほうをにらむようにすると、またすたすた白服の大人おとなについて歩いて行きました。

先生、あの人は高田さんのとうさんですか。」一郎が箒ほうきをもちながら先生にききました。

「そうです。」

「なんの用で来たべ。」

「上の野原の入り口モリブデンという鉱石ができるので、それをだんだん掘るようにするためだそうです。」

「どこらあだりだべな。」

「私もまだよくわかりませんが、いつもみなさんが馬をつれて行くみちから、少し川下へ寄ったほうなようです。」

モリブデン何にするべな。」

「それは鉄とまぜたり、薬をつくったりするのだそうです。」

「そだら又三郎も掘るべが。」嘉助が言いました。

又三郎だない。高田三郎だぢゃ。」佐太郎が言いました。

又三郎又三郎だ。」嘉助が顔をまっ赤かにしてがん張りました。

「嘉助、うなも残ってらば掃除そうじしてすけろ。」一郎が言いました。

「わあい。やんたぢゃ。きょう四年生ど六年生だな。」

 嘉助は大急ぎで教室をはねだして逃げてしまいました。

 風がまた吹いて来て窓ガラスはまたがたがた鳴り、ぞうきんを入れたバケツにも小さな黒い波をたてました。

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