はてなキーワード: パイプラインとは
--
この本は5章まであるが、4章と5章はハンズオンであるため、文字としてまとめるのは1から3章に留める。
1章
【コンテナとは】
他のプロセスとは隔離された状態でOS上にソフトウェアを実行する技術
コンテナにはアプリの稼働に必要となるランタイムやライブラリを1つのパッケージとして全て含めることができる。そうすることでアプリの依存関係をすべてコンテナ内で完結できる。
全ての依存関係がコンテナ内で完結するため、オンプレでもクラウドでも起動する。
ステージング環境でテスト済みのコンテナイメージをプロダクション環境向けに再利用することで、ライブラリ差異による環境ごとのテストに必要な工数を削減できる。
サーバー仮想化では、仮想マシンレベルでリソースを分離し、ゲストOS上でアプリが起動する。つまり、アプリだけでなく、ゲストOSを動かすためのコンピューティングリソースが必要。
一方コンテナは、プロセスレベルで分離されてアプリが稼働する。OSから見ると単に1つのプロセスが稼働している扱いになる。
【Dockerとは】
アプリをコンテナイメージとしてビルドしたり、イメージの取得や保存、コンテナの起動をシンプルに行える。
イメージ(アプリケーションと依存関係がパッケージングされる。アプリ、ライブラリ、OS)
レジストリに保存
【Dockerfileとは】
このファイルにコマンドを記述することで、アプリに必要なライブラリをインストールしたり、コンテナ上に環境変数を指定したりする。
1章まとめ、感想
コンテナの登場により、本番・開発環境ごとに1からサーバーを立ててコマンドや設定ファイルを正確に行い、環境差異によるエラーをつぶしていき...というこれまでの数々の労力を減らすことができるようになった。
2章
ECSとEKSがある。
オーケストレーションサービスであり、コンテナの実行環境ではない。
ECSの月間稼働率は99.99%であることがSLA として保証。
デプロイするコンテナイメージ、タスクとコンテナに割り当てるリソースやIAMロール、Cloud Watch Logsの出力先などを指定する。
指定した数だけタスクを維持するスケジューラーで、オーケストレータのコア機能にあたる要素。サービス作成時は起動するタスクの数や関連づけるロードバランサーやタスクを実行するネットワークを指定。
2種類ありECSとFargateがある。 Fargateに絞って書く
Fargateとは
コンテナ向けであるためEC2のように単体では使用できず、ECSかEKSで利用する
サーバーのスケーリング、パッチ適用、保護、管理にまつわる運用上のオーバーヘッドが発生しない。これにより、アプリ開発に専念できるようになる
・コンテナごとにENIがアタッチされるため、コンテナごとにIPが振られるため起動に若干時間がかかる
ECR
・App Runner
利用者がコードをアップロードするだけでコードを実行できるサービス。AWS側で基盤となるコンピューティングリソースを構築してくれるフルマネージドサービス。
App Runner
2021年5月にGA(一般公開)となったサービス。プロダクションレベルでスケール可能なwebアプリを素早く展開するためのマネージドサービス。Githubと連携してソースコードをApp Runnerでビルドとデプロイができるだけでなく、ECRのビルド済みコンテナイメージも即座にデプロイできる。
ECSとFargateの場合、ネットワークやロードバランシング、CI/CDの設定などインフラレイヤに関わる必要があり、ある程度のインフラ知識は必要になる。App Runnerはそれらインフラ周りをすべてひっくるめてブラックボックス化し、マネージドにしていることが特徴である。
ECS Fargateを利用した場合のコスト、拡張性、信頼性、エンジニアリング観点
【コスト】
EC2より料金は割高。ただし、年々料金は下がってきている。
【拡張性】
デプロイの速度 遅め
理由1 コンテナごとにENIが割り当てられるため。ENIの生成に時間がかかる
理由2. イメージキャッシュができないため。コンテナ起動時にコンテナイメージを取得する必要がある。
タスクに割り当てられるエフェメラルストレージは200GB。容量は拡張不可。ただし永続ストレージの容量が必要な場合はEFSボリュームを使う手もある。
割り当て可能リソースは4vCPUと30GB。機械学習に用いるノードのような大容量メモリを要求するホストとしては不向き
【信頼性】
Fargateへのsshログインは不可。Fargate上で起動するコンテナにsshdを立ててsshログインする方法もあるが、セキュアなコンテナ環境にsshの口を開けるのはリスキーである。他にSSMのセッションマネージャーを用いてログインする方法もあるが、データプレーンがEC2の時に比べると手間がかかる。
しかし、2021年3月にAmazon ECS Execが発表され、コンテナに対して対話型のシェルや1つのコマンドが実行可能となった。
Fargateの登場からしばらく経過し、有識者や経験者は増え、確保しやすい。
多数のユーザーに使ってもらう
CI/CDパイプラインを形成し、アプリリリースに対するアジリティを高める
各レイヤで適切なセキュリティ対策(不正アクセス対策、認証データの適切な管理、ログ保存、踏み台経由の内部アクセス)を施したい
2章まとめ、感想
AWSが提供するコンテナサービスにはいくつかあり、なかでもFargateというフルマネージドなデータプレーンがよく使われている。ホスト管理が不要でインフラ関連の工数を削減できる一方、EC2より料金が高く、起動に若干時間がかかるのが難点である。
3章
この章では運用設計、ロギング設計、セキュリティ設計、信頼性設計、パフォーマンス設計、コスト最適化設計について述べている。
Fargate利用時のシステム状態を把握するためのモニタリングやオブザーバビリティに関する設計、不具合修正やデプロイリスク軽減のためのCI/CD設計が必要である。
モニタリングとは
システム内で定めた状態を確認し続けることであり、その目的はシステムの可用性を維持するために問題発生に気づくこと
オブザーバビリティとは
オブザーバビリティの獲得によって、原因特定や対策の検討が迅速に行えるようになる
・cloud watch logs
・Firelens
AWS以外のサービスやAWS外のSaaSと連携することも可能
Firehoseを経由してS3やRed shift やOpenSearch Serviceにログを転送できる
fluent bitを利用する場合、AWSが公式に提供しているコンテナイメージを使用できる
- ソフトウェアやライブラリの脆弱性は日々更新されており、作ってから時間が経ったイメージは脆弱性を含んでいる危険がある。
- 方法
脆弱性の有無はECRによる脆弱性スキャン、OSSのtrivyによる脆弱性スキャン
継続的かつ自動的にコンテナイメージをスキャンする必要があるため、CI/CDに組み込む必要がある。しかし頻繁にリリースが行われないアプリの場合、CICDパイプラインが実行されず、同時にスキャンもなされないということになるため、定期的に行うスキャンも必要になる。
cloud watch Eventsから定期的にLambdaを実行してECRスキャンを行わせる(スキャン自体は1日1回のみ可能)
Fargateの場合、サービス内部のスケジューラが自動でマルチAZ構成を取るため、こちらで何かする必要はない。
・障害時切り離しと復旧
ECSはcloud watchと組み合わせることでタスク障害やアプリのエラーを検知できるうえに、用意されてるメトリクスをcloud watchアラームと結びつけて通知を自動化できる
ALBと結びつけることで、障害が発生したタスクを自動で切り離す
AWS内部のハードウェア障害や、セキュリティ脆弱性があるプラットフォームだと判断された場合、ECSは新しいタスクに置き換えようとするその状態のこと。
Fargateの場合、アプリはSIGTERM発行に対して適切に対処できる設定にしておかなくてはならない。そうしておかないとSIGKILLで強制終了されてしまう。データ不整合などが生じて危険。
ALBのリスナールールを変更し、コンテンツよりもSorryページの優先度を上げることで対処可能
自動でクォータは引き上がらない
cloud watch メトリクスなどで監視する必要がある。
パフォーマンス設計で求められることは、ビジネスで求められるシステムの需要を満たしつつも、技術領域の進歩や環境の変化に対応可能なアーキテクチャを目指すこと
利用者数やワークロードの特性を見極めつつ、性能目標から必要なリソース量を仮決めする
FargateはAutoscalingの利用が可能で、ステップスケーリングポリシーとターゲット追跡スケーリングポリシーがある。どちらのポリシー戦略をとるかを事前に決める
既存のワークロードを模倣したベンチマークや負荷テストを実施してパフォーマンス要件を満たすかどうかを確認する
・スケールアウト
サーバーの台数を増やすことでシステム全体のコンピューティングリソースを増やそうとする概念。可用性と耐障害性が上がる。既存のタスクを停止する必要は原則ない。
スケールアウト時の注意
・Fargate上のECSタスク数の上限はデフォルトでリージョンあたり1000までであること。
ECSタスクごとにENIが割り当てられ、タスク数が増えるごとにサブネット内の割当可能なIPアドレスが消費されていく
Application Autoscaling
Cloud Watchアラームで定めたメトリクスの閾値に従ってスケールアウトやスケールインを行う
CPU使用率が60~80%ならECSタスク数を10%増加し、80%以上なら30%増加する、という任意のステップに従ってタスク数を増減させる
パイプラインって言うんですけど、そのパイプラインの段数をある程度までは増やしたほうがスループット上がるんですよね。それと同じです。
例えばコンビニでは:
会計待ち行列スペース → カウンター(店員がバーコード読み・客が支払い機で支払う・店員が袋詰め)
っていう2スペースしかないんですけど、
スペースが空くまで待ってる人は先へ進めないわけです。
会計待ち行列スペース → カウンターで店員がバーコード読み → 客が支払い機へ移動して支払う → 客が袋詰めスペースへ移動して袋詰め
客がカウンターから支払機へ移動した時点で、待ち行列の次の人間がカウンターへ進めるわけです。
場所を取って作業段階を細分化することで、後ろで待ってる人がどんどん先の作業へ進めるわけです。
所要時間を
バーコード読み10秒
支払い10秒
袋詰め10秒
と仮定すると、
待ってる人が2人いる場合、
センターピボットと言われても分からない人もいるかもしれないが、要は『円形の農地の中央にスプリンクラーを置いて灌漑するやつ』である。アメリカや中国の乾燥地帯などではこの方法を用いて大規模な穀物生産をしている。
このやり方、水効率は確かに良い。が、水の出所は多くの場合地下水であり、地下水は限られた資源だ。一方で灌漑に用いられた水は一部は植物に取り込まれ、一部は蒸発し、一部は地下に還っていく。
つまり、センターピボットによる農業を続けている限り地下水が減少していくのであり、大規模なセンターピボットを行っている地域で地下水が尽きたら農業生産が大きく落ち込む。明らかに持続的ではない。
もちろん、「だから今すぐセンターピボットを止めろ。穀物の価格が上がって貧乏人が餓死しても知ったことか」などと言うつもりはない。が、今のうちに持続可能なものにする必要はあるだろう。
蕨変電所の火災でJR線が止まってる問題だが、これは直ぐには復旧できない。恐らく世の人が思っている以上に大きな事故なんである。
何故なら蕨変電所は普通の変電所と違ってハブになる変電所なので東京の1/3の路線に送電できなくなるからなのだ。
その影響は過去の事例から見て不通の解消に1日程度、つまり明日の朝は東京北部のJR線は走らないと考える。
そしてダイヤの大幅な乱れや並行私鉄線の殺人的な混雑は1週間程度続くと思われる。
まず、送電というのは発電所--変電所--変電所--変圧器(電柱の上)--家 となってるのだが、鉄道の場合はちょっと違う。電車が直流で走るからだ(関東以西)。
電力会社の変電所--鉄道会社の直流変電所(ここで交流→直流化する)--架線
国鉄はコストダウンの為に大需要地である東京での電力の自家調達に努めた。因みに見る角度で本数が変わる「千住のお化け煙突」っていうのは千住の国鉄石炭火力発電所の事だったのよ。
それが
・川崎火力発電所(火力/ガスタービン式、燃料はパイプライン供給の天然ガス/鶴見線扇町駅近く)
・信濃川発電所--武蔵境交流発電所(中央線武蔵境駅近くで見える巨大変電所)--沢山の直流発電所--架線
・川崎火力発電所--鶴見交流変電所(湘南新宿ラインで東海道線から分かれて直ぐに見える巨大変電所)--沢山の直流発電所--架線
となっている。そしてもう一つが今回問題の蕨で
・東京電力(パワーグリッド)鳩ケ谷変電所(岩槻街道沿いの超巨大変電所)--JR蕨交流変電所(蕨-西川口間にあるが少し線路からは離れている)--沢山の直流発電所--架線
となっている。
そして各系統間で電力を融通する為の「連系線」というのが、蕨--武蔵境--鶴見と各交流変電所間にあるんである。蕨交流変電所の隣を電車で通ると「JR蕨」って書いた鉄塔が見えるが、あれが蕨--武蔵境の連系線の鉄塔だ。(東電鳩ケ谷-JR蕨間は地下ケーブル)
因みに福一原発事故で外部交流電源途絶といった時の外部電源はこの連系線の事だよ。
ここで重要なのは、電気は各系統のを混ぜて使うって事は出来ない。
何故なら発電所は交流で位相(+と-が入れ替わる周期)が合っていない。それを「混ぜ」ようとすると打ち消しあって電力が減るし、それ以前にショートと同じだから送電線が爆発する。
だから連系線の電気を使う時は交流変電所から直流変電所への系統ごと切り替えるんだな。
こういう訳なので、架線も直流変電所ごとに区切ってある。その区切りが「エアセクション」ってやつ(架線が変電所系統ごとに平行に張ってある)。よく「エアセクションで電車が止まって立往生」になるのはこういう訳で、変電所毎の区切りをゆっくり進んでしまうとパンタグラフで各系統をショートさせた形になるから過熱して溶けたり燃えたり爆発する訳だ。
ここまで読んでもらったら、蕨交流変電所の復旧が2ステージに分かれる事が判るだろう。
過去に新宿直流変電所が爆発してとんでもない混乱が発生したことがある。山手線が中央線と合流する直前にその間に挟まるように白青の変電所が見えるが、あれが新宿直流変電所。事故以前は小さくてぼろっちい建屋だった。
1994年12月11日は冬の嵐で、多摩地区などでは雷が発生して交通網が混乱していた。そんな中、新宿変電所が漏電により出火。消防隊が臨場したが電気火災なので水を掛ける事ができない。そこでJR社員が遮断しようとしたがもう破壊され尽くしていて不可能。
すると上流の武蔵境交流変電所で遮断するしかありませんな。変電所火災は放っておくと変電器などが破裂して中の絶縁油に引火して大火災になっていきます。
ハブになっている武蔵境で遮断したら当然、東京中の路線も駅も停電して大混乱ですわ。因みにJRの場合は新宿にあるJR病院や本社ビルまで停電しちゃうのな。
それでやっと消火したけど新宿変電所は20万Vで溶接機振り回したような状態で建屋も完全破壊。復旧不可能ですわ。
仕方ないので新宿変電所を切り離す工事をして仮復旧。これで武蔵境から他の変電所に送電できるようになった。これに一日掛かってる。でも電力が足りないので相当な間引き運転で、振替先の私鉄地下鉄各線殺人ラッシュに。
次に新宿が受電してた送電線を他の変電所につなげる分散工事をして復旧。これで普通の運転間隔に戻せた。これが1週間。
話の脱線なんだが、新宿変電所を立て直す際にJRは送電の容量アップ、冗長化を進めたのね。それはインフラ企業として正しい事。
でも冗長性は普段は遊びになっちゃう。そして蕨からの送電は東電への電力料金が発生する。鶴見の発電は天然ガス代の支払いが発生する。信濃川はタダだ。連系系フルに活用できるだけのインフラも増強した。但し取水制限がある…。
という訳で「冗長化した設備の有効活用」が動機になってああいう不正をするようになっちゃったって面があるのよね。
新宿発電所の事故はこんだけ大変だったのだが、新宿はスター型結線の末端(少しハブの機能もあった)。
それに引き換え、蕨は大本のハブなのだ。今回の自体の深刻さが判って頂けただろうか?
望みは連系線フル活用できるように冗長構成がされていて信濃川でインチキしていた頃の取水をすれば被害を減縮出来そうってところ。
明日あたりに国に「蕨壊れちゃった…」と言って取水量大幅アップの許可取るのでは?それと川崎火力のタービン全開にしたら運転間隔半分までにはしないで済むかもしれない。
増田の家は東京北部なんだけど、昼過ぎに2度瞬停があって一瞬暗くなり、デスクトップパソコンは落ちなかったが電子制御の扇風機は動作不安定になった。
今考えるとあれが蕨での事故の瞬間と東電鳩ケ谷の遮断の瞬間だったのかなと。
蕨交流変電所の役目知らない人は「何時復旧するの」とイライラするが、知ってたら諦めた方が良いと判るね。
それでも会社に行かねばならない人は線路脇の送電装置類を眺めてその機能を調べて時間を潰したらどうだろう?電車撮ってる鉄オタは白い目で見られるけど、送電系が気になる銅オタは白眼視されないのでおススメです。
今年2月にあったテキサス大停電のことだと思うけど、あのときは歴史上例を見ない-19℃という大寒波の影響で、再エネ風力(タービンの凍結)・LNG火発(パイプラインの凍結)・石炭火発(石炭の凍結)・原発(冷却水の凍結)など、多くの発電設備が止まってしまった。
原因は、風力タービンが欧州や日本で使われているような凍結防止型になってなかったこと、その他の火発・原発が氷点下気温に対応してなかったこと。つまり、テキサスの発電送電網は、再エネと化石エネと原発のすべてが、そもそも世界的に「再エネをやらなきゃいかんぞ」となった理由である気候変動に対して、極めて脆弱な状態のままだった。なおテキサスでは発電電力の2/3が化石燃料+原発由来で、なかでもLNGのシェアが圧倒的に高いため、結果的にはLNGが大停電の主犯だったことになる。このことは、停電発生当初は再エネを苛烈に批判していたグレッグ・アボット知事も後に認めている。
この凍結への準備不足に関して、米連邦政府は昔から凍結対応をせよと警告してたんだけど(1980年代から何度か寒波による電力供給問題が起きていた)、テキサスはエネルギー政策では極めて反連邦的で、アボット知事の州政のもと、そうした連邦レベルの指示・規制を受けないよう、グリッドを切り離して独自の運用をしていた。
本来、電力というのは送電網を使ってどこからでもどこまででも容易に送電できるのが燃料エネルギーに対する長所なわけで、ただ地域内で個別の再エネ設備やLNG火発が止まっただけなら、他地域から送電すればよい。実際、テキサス以外の米本土各州はすべて州間のグリッド接続をしていて、そのほとんどは「東部インターコネクション」と「西部インターコネクション」という2つの送電網に集約されている。ところがテキサスは全米で唯一、連邦政府の規制を避けるために、州間グリッド接続をせず州単位の系統(テキサスインターコネクション)を運用しており、これが命取りになってしまった。電力が不足してもほとんど他州から電力を流せない状態になっていたのだ。
うまく機能する電力取引市場の大前提は、あらゆる発電設備と需要家が相互にグリッド接続されているということだ。だから欧州では地域間どころかEU全体に及ぶレベルで国際連系が形成され、非常に強靱で効率的な電力網が構築されている。テキサスはこういう流れに背を向け続けた結果、地域内の発電設備の一部が停止しただけで大ダメージを受けた。
というわけで、テキサス大停電は、今では再エネの技術的問題などではなく完全な「人災」だった、という評価になっていて、アボット知事は激しい批判に遭い、テキサスインターコネクションを管理するERCOTは訴訟を起こされている。この停電の教訓は、
①これまで以上の気候変動を想定した、よりロバストな発電設備を導入すべき。
②安定した電力供給のためには、広域グリッド接続をしっかりやるべき。
ということ。
ご指摘ありがとうございました。ついLをつけてしまった。仰るとおり、米国で火発に使われているのは液化してないNG(天然ガス)です。上のLNGは全て天然ガスと読み替えてください。
(このエントリは
の続きです)
増田は一期一会が基本だが、「記事への反応」は特定の相手とのつながり、いわばパイプライン、ホットライン(?)を保ちうる唯一な手段だ。
やり取りが白熱しているうちは自分の日記欄の上の方に自分が相手にした書き込みが表示されるから「記事への反応」の変化に気づきやすい。
しかし永遠に続く熱量というものはなくだんだん双方とも書き込みの頻度が落ち込んでいく。すると相手に最後にした書き込みは他の書き込みに埋もれて2ページ以降に追いやられていくことになる。
こうなった時点でだいたいの場合その「記事への反応」は二度と確認されなくなる。
といっても細く長く続けるタイプの粘着もいてそういうのはしばらく相手から反応がなくなっても適当に他の増田に茶々を入れながら頭の片隅にその相手のことを覚えておくものだ。
2ページどころか3ページ目とかになっても完全にはつながりは途切れない。最初数分間隔でトラバし合ってたのが一日ごとになっていく場合もありえる。
こういう関係は最高何日(いや何ヶ月?)持つものだろうか。お前らの経験でいいから教えて欲しい。
個人的には同じ相手への一連のツリー内のトラバには回数制限を設けてほしい。たまにものすごい粘着がいてきりがない。レスバトラーだらけの知恵袋すら同じ質問者に対して最高百回あるいは七日間までしか返信できないようになってるのに…。
遊びには2種類の側面がある。「現実」と「非現実」である。 ~俺~
俺が求めていたゲームってのは現実から離れて自由に遊べる非現実空間だったんだ。
何も考えてない人向けなJ-POPで歌われる「リセットボタンで全てが終わるテレビゲーム」こそ俺のやりたいゲーム。
そこに帰ってくるのに10年の歳月を要した。
いつからかチームプレイゲームで勝ち負けを全てとする割に自分は下手くそで、それを認めたくないばかりに味方のせいにしてばかりいる荒らしになっていた。
気晴らしに一人プレイゲームをやっているときでさえ、実績の達成率が気になってしまい動画攻略をなぞってクリアしては「この実績持ってないやつの発言とか無意味やぞ?」「動画見てクリアの何が悪いんだよ努力ってそういうものだろ?」と掲示板やチャットで連投する荒らし行為を続けていた。
違うんだ……俺が求めていたゲームはこんなんじゃない……5年前にはそう気づいていたが、今ここで逃げたら敗北を認めるような気がして必死に誤魔化しながら自分の中のゲーム像と戦っていた。
ようやく答えが出た。
俺はJ-POPの歌う「リセットボタンで全部が終わるヌルい世界」が好きなんだ。
「現実と地続きでもって生まれた動体視力、計算能力、情報収集力、コミュ力、それらを複合した総合的なゲーム力によって優劣が決まる世界」は、間違って渡ってしまった橋の先にある別の島だったんだ。
『横断歩道の信号待ちで、本当に渡りたい側が赤信号だった。そこと直角に交差する別の信号が青だから、折角出しさっきにそっちを渡った。でもそこでそっちを渡ったのは完全に間違いで、でもそれを認めたくないから目的地の近くまで反対の岸をあるき続けたら、引き返すタイミングがなくなってしまった』そういった経験が誰にでもあるだろう?
ヌルいより、ストイックが偉い。1人プレイより、複数プレイの方が高度。実績を持ってる奴が正しい。ランクが低いやつはノイズ。勉強してない奴は発言するな。本当に好きならやり込める。結果を出すのが愛の証明。そういったゲームコミュニティのなんちゃってマチズモに振り回されて、間違った場所でずっとゲームを遊んでいた。
かわいいキャラクターと一緒にスローライフを送るゲームを、やたらノンビリ遊んで周りから「Aさん。もしかして行き詰まってますか?ゲーム内時計を弄ると~~」みたいな余計なアドバイスを貰うようなペースで遊んでも良いんだ(この話はフィクションです)。
実績が意味を持つ世界を生きるかどうかは、プレイヤーが決めるものだ。
ランクってのは同じ強さのプレイヤー同士がマッチするためのもので、高い人が偉いってものじゃないんだ。
でも、そういうのはもういい。
俺はもう現実と非現実の間にあるパイプラインを徹底的に切り落とし始めたから。
1人でのんびり遊ぶから、急いでトレンドを追うこともしないし、感想を誰かと語り合うことだってやめる。
プレイした本数でマウントを取るために有名ゲームを片っ端からやるのだってもう辞めた。
自由だ。
やりたい時にやりたいゲームをやる。
俺だけの世界にこもるための触媒としてだけゲームがあり、その世界のことを他人と比べることもなくした。
癒やされる。
どうせゲームの世界なんて開発者の手垢まみれなんだから、別のプレイヤーなんて居なくても孤独になんてなりようがないんだよなあ。
いっそ寂しさを感じたかった。
なんか今度は、開発者の残した自己主張や価値観の声が煩く聞こえてくるよ。
どこまでも現実と地続きではあるんだなあ。
「メール来てますんで読みましょう。ラジオネーム『ナイナイだいすきっ子』さんからです。
『~世の中自粛自粛で風俗にも行けず、性欲とストレスが溜まって困っています。そこでラブドールの購入を検討しております。伯山先生、オススメのラブドールなどありましたらご教授いただければ幸いです。~』
って事なんですが、コレ絶対どこにでも読まれない今メールだねコレね。あのーね、コレ一択です。「ラブドールを購入してください」えっとね4月9日から5月11日まで、あの今調べたらオリエント工業がスプリングキャンペーンやってます。ステイホームってことで丁度いいと思うんでね。
あとこのメールはね多分ね、どこに出しても多分読まれないと思うから、今。これが元でいろいろな事が起こってますから。
何かいま、変なギャクリレーみたいなの、Twitterであるじゃんあのクソつまんねーやつ(笑)。俺も落語家の先輩とか何人かいたんだけど。いい人達なんですよ?なんかさ、水面下でそのギャクリレーとか、貴方に廻していい?みたいに言われるけど。俺さ、スゲー野暮だなぁと自分でも思うのは、全部断ってるからねギャクリレーとかそういうの。
「あ、そういうの僕の任じゃないんで」とか(笑)
だから僕が言っときたいのは、このメールは多分読まれないと思うんですけど、一応だからキャグリレーみたいな感じで言うと、まあ読まれそうな「爆笑問題カーボーイ」に送ってもらえないかなと思ってね。太田さんなら今週拾わなかったけど来週は拾うかも知れないんで。これに対して明快な答えとか言ってくれると思うんですよね。
まー俺は元々ナイナイリスナーだからなー。ラジオもなーあのジャネットのコーナーとか面白いもんなー何かこう結局さー俺。このラジオ、そもそも深夜ラジオじゃねぇからさーそんなの全然何か触れなくていいしー岡村さんとかも一回会ったぐらいだからさ。岡村さんが何か今さエラい炎上してるけどさ。何か、まぁ、ねぇ。そこについて俺が言及するのは野暮だなとか思っちゃうんですけど。
この件に限ってですよ、あくまでこの件に限って全くTwitterで同じ意見の人を挙げるとすれば、能町みね子さんでしたね。
岡村隆史ANN実際に聴いてないからあれだけど、風俗行っただのデリヘルがなんだの、自分の体験としてテレビとかラジオでそもそも語ることかね、と個人的には常々思っている一方で、そこまでズカズカ入り込んで大勢で批判しにいくほどのことかね、とも思う— 能町みね子とアマビエは全く関係ないよ (@nmcmnc) April 26, 2020
能町みね子さんのTwitterを僕は聖書って呼んでますから。大体能町みね子さんの言ってる事をみんな言えば間違ってないです。僕は能町っ子なんで。伊達におしゃれメガネを何本も持ってるだけではない、あと相撲が好きっていうのも好きだね。あと「vs志らく」ていうのもいいね。
あと能町さんはね、一回このラジオでなんかちょっとお話をしたらさ能町さんが何かすごいラジオで喜んでくれた、というのが一回だけあるし。自分の何か文章とかで載せてくれたというのがあるから、俺の中で勝手に能町さんには細いパイプラインが一個あるって勝手に思ってるからね。
そう、そうだから、ラブドールは本当購入してった方がいいと思う。わかんないけど。その。みうらじゅんさんとかの本とかで一杯出てるもんね。何かあのそういうのね「嫁入り」みたいな事いうんでしょ?いいラブドール。俺も一回もラブドールしたことないからこれを機に買おうかな俺も。それでは。
FCEV(燃料電池) vs BEV(電気自動車)について返答してみる。FCEVに水素をいれるよりも、BEVを充電した方が効率が良いという話です。
水素を作る際に投入する電力のうち、数割は熱に変わってしまう。この点をBEVと比較しようと思う。Well-to-Wheelではなく「Grid-to-Wheel」で見た場合となっている。
水素を製造する際には電気分解が主流だ。(石油からの生成もあるが、今回は電気分解とさせていただく)
なお電気分解の際は、送電グリッド(交流)での変換とすると、まず交流を直流に変換する必要がある。この効率を92%とする。
【92%】
電気分解法としてPEMを考えると、効率が80%であるから、この時点で:
【92% * 80% = 74%】
となる。
燃料が問題なのは、「物質」であるために、「貯蔵」と「輸送」が必要になる点だ。
貯蔵に関して言えば、(水素は密度が低いので)貯蔵する際に液化または高圧にする必要があり、必ずエネルギーを消費する。
輸送に関して言えば、重さのある物体を動かすわけなので、必ずエネルギーを消費する。
ここで、燃料を貯蔵する際に使うエネルギーの効率を見てみると:
つまり貯蔵方法として圧縮する場合、今までの効率を掛け合わせると
となった。タンクに充填する段階までで、投入電力の36%は熱として失われる。
さて、ここまで製造した水素を水素タンクに充填した。次はその水素を使用するわけだが、ここでもロスが生じる。
燃料電池に貯蔵されたエネルギーは直流で取り出される。この効率を95%とする。また、取り出した電流をACに変換する必要がある。例えばMiraiのモーターは交流同期モーターで、DCからACへの変換効率を90%とすると、
【92%(ACDC) * 80%(PEM) * 87%(充填) * 95%(FCスタック効率) * 90%(DCAC) = 55%】
となる。
バッテリへ充電する際、ACDC変換の効率を92%、充電の効率を80-90%、インバータのDC→ACの変換効率を96%とすると
【92%(ACDC) * 80-90%(充放電) * 96%(DCAC) = 70-79%】
となる。
すなわち、同じ電力を投入する仮定のもとでは、電気自動車を充電した方が効率が高い。燃料電池車は、「水素製造」〜「燃料電池からの電力を取り出すまで」の間に、投入した電力のうちの45%の熱を出すわけだ。
数字をよくみると、問題なのは PEM電気分解 と 充填 の効率だ。ここが余分に入っているせいでFCEVの効率が悪くなっている。これらを再生エネルギーでやればいいのでは?と思うかもしれないが、そういう話ではなく、その再生エネルギーをBEVの充電に使った方が効率が高いよね、という話なのだ。
電気分解をしないケース(石油精製時利用する水素を使うケース)で見ると、
【87%(充填) * 95%(FCスタック効率) * 90%(DCAC) = 74%】
となり、まぁ悪くないような感じになる。ただ、このケースではCO2を出している。
「水素燃料の輸送ロスについて」への返答としては、「場合によるが(余り物の水素を使うなら効率が高い)、BEVよりも劣る」だろう。
輸送の際の話は答えていないので答えると、液体水素で輸送する場合ボイルオフ(気化していく)によりロスが生じる。圧縮する時にはエネルギーを投入する必要がある。パイプラインを引けばロスはない。
燃料電池スタックにも寿命がある。BEVとの比較はデータがないので難しいが、ここはおあいこのようだ。
Miraiとかはかなり頑丈なプリプレグでタンクを作っており安全性は高い。
リチウムイオンの危険性も確かにあるが、今は切ったり突き刺したりしても燃えないように作られている。
安全性を語る時はケース(事故)を色々考えないといけないので論ずるのは難しいが、一般論で言えばどれも極端なケースを除けば安全に作られていることは確かだ。
ガソリンは使い方を間違えれば兵器にもなるわけだし、あれほど危険なものをある程度安全に使えているので、安全性に関しては規制でなんとかなるという見解だ。
EVに蓄電するケースは自然エネルギーとの付き合い方では最も最適だ。EVをバッファとして使う。その際にパワーグリッドの需給状況に応じて充電電流などを変える必要があるだろうが、CHAdeMOはすでに遠隔監視のために携帯電話網に接続されたものもあることから、あとは制度次第で可能だろう。
水素で蓄電することももちろんできて、各水素ステーションの改質のタイミングを電力のオフピークに行えば良い。ただ書いたように、同じ電力を使うならEVに充電した方が効率は高い。
LPG車が細々と残り続けていることからも、こういう形で燃料電池車が使われるのではという確証の無い予想をしている。
現在のリチウムイオン電池はエネルギー密度が低く、例えばトラックなどがEV化した場合、目指す航続距離にもよるが、トラックの自重の半分とかが電池の重さになるだろう。大型トラックでも25tまでしか許されないので、電池ばかりを積むこともできない。航続距離が欲しいなら積載量を削ることになり、積載量を増やしたいなら航続距離を減らすことになる。
リチウムイオン電池のブレークスルーがなければ、燃料電池車もある程度日の目を見るだろう。
ただ、トラック・バスをEVやFCEVにするのはあまりにもコストがかかるわけで、もうしばらくはハイブリッドのままなのでは無いだろうか。
まず、有害図書(正しくは不健全図書)に指定されるのには、いくつかパターンはあるんだけど、最大の要素が「消しの大きさ」と「全体のページ数に対するエロの割合」なのね。
コンビニエロマンガ見れば、性器全消しになってたのは分かるよね? あれが「全年齢」の範囲です。
で、あれって具体的に明文化されたガイドラインがあるものじゃなくて、警察と出版社の間で「ここまではいける、ここまではダメ」ってのを、世間の情勢や色んなものをはさみつつ、譲歩しあってできたものなんだよ。
あの消しには、出版社と警察の長年のやりとりがあってできたもので、かつ、それも常に安全なわけじゃない。先月大丈夫だったのに、今月はもうダメ、ってのがある。
で、それ以外にも「内容のインモラルさ(インモラルを称賛してないかどうか)」とか「児童虐待や犯罪行為を肯定してないかどうか」などがある。エロが多くても「ストーリー的に必要な要素」であれば見逃されるケースもある。
コンビニエロ漫画だと、ここらへんを避けるために、「セーラー服を書かない」「近親相姦はNG」「未成年と明言しない」とか内容のレギュレーションがいっぱいある(ちなみに、今の携帯コミックとかもこの辺に準拠してる)。
BLが不健全図書に引っかかるのは、まず、不健全図書に引っかかりだしたのがここ数年(長くて十年)の話で、警察との間にパイプラインがないので、消しのレギュレーションがはっきりしてないこと。それこそ、監査委員のお気持ち次第で「なんか消し薄いんじゃないかな-」くらいで引っかかったりする。
そして、BL作品に多い高校生の年齢層が絵柄によって幼く見えたり、攻めがヤクザで受けを拉致したり、父親から虐待受けてる設定だと、「消しがちょい足りない気がする」+「インモラル」のあわせ技でアウトを食らうケースが多い。
要は、「BL出版社と警察や行政側とのやり取りが始まったばかりで、まだガイドラインがきちんと決まっていないから、そこから外れるものも多い」ってだけ。
コンビニエロ漫画にそういうのがないのは、「過去に何度も逮捕者まで出して、ある程度ガイドラインが決まってるから」なだけ。
あと、そもそも「不健全図書」というのは「全年齢」で刊行されてる本の中から、「これは全年齢はアウトだろ」とみなされたものってことなので、そもそも18禁で出してる本には適用されない。コンビニエロ漫画が単行本になったり、コンビニ撤去後に、黄色の成人向けマークがついて18禁になったら、消しが薄くなったのはそういう理由だ。
昔々、横浜は関内に住んでいた時のことだ。この関内、は文字通りであってJR(さすがにもう国鉄ではなかった)の駅から海側のエリアである。諸氏はそんなところに住居があるのかと驚くかもしれないが、当時は雑居ビルの上の方に思ったよりは多く転々と貸間があった。ただし、下の方からは常に酔客の声やカラオケのだみ声(後学のために申し上げると、カラオケ騒音で一番外に響くのはよりにも寄って音痴なおっさんの胴間声であって、BGMは全く聞こえぬ)が常に聞こえ、よく言って華やか悪くいうとそりゃ真っ当な借り手はなかなかつかねぇよね、ということになる。
その時は-このシノギだけは真っ赤な嘘の話だが-、石化パイプライン屋の営業部隊に属して、港町には良くある怪しい中東系商社から注文を取って糊口をしのいでいた。中東系商社は母国の都合で動く。つまり、朝は遅く夜は次の日が来るぐらいまでが仕事のピークである。こっちもそれに合わせて変則的な労働時間で暮らす。それはいい。だが困るのは飯だ。飲み屋以外で食い物屋なぞない。コンビニと牛丼屋ぐらいはあるが、毎日ではつらい。トドメに、下戸である(中東屋さんとしては問題ないのだが)。飲み屋の線はこの段階で選択肢としてはさすがに消える。
ある雨の日、所要があって珍しく海側から我が雑居ビルへと帰途を辿っていた。いつものように腹が減っていた。あの辺り一帯は、細長い区画が一応碁盤の目状に並んでいる。一回右に曲がって一回左に曲がれば、どの通りを選んでも貸間に帰りつけるのは、小学校でやった懐かし「場合の数」だ。ただし、客引きのおねぇちゃんがうるさい通りというのがあり、こいつは敬遠せざるを得ない。
考えもせずひょいっと辻を曲がった先にあったのが、未明なのになぜか営業していたイタ飯屋だった。外のケースに入れられていたメニューは、いつもの夕食よりはちょっと高めだが、出せないほどではない。いい加減雨にも追われている、パスタとグリルを頼めばまあ恰好はつくだろう、たまには人がましいものが食いたい、そう思って扉を開ける。慇懃で痩せぎすのウエイターが案内したのは入り口近くの窓際の席だ。他に客はいないが、フリの怪しい安スーツに着られたような小僧っ子には、そんなもんだろう。
出されたメニューから慎重に安めのパスタとグリルを頼む。グリルは肉、シンプルに塩だ。呑むのはお冷。酒は頼まないし、ソフトドリンクに金を払うのは当時としては、ばかばかしく感じられていた。人心地ついて、水をすすりながらぼうっと薄暗い店内を見渡すに、どうもややちゃんとしたリストランテなようだ。しかし客は他にない。いればどんな店かも推量が利くというのに。そもそも、ちゃんとしたリストランテが酔狂にもかくも深夜まで空けているのか、さすがにいぶかしんだが尋ねるほどの気安さもない。ウエイターはほぼ厨房の入り口あたりの定位置に戻って、こちらには目もくれない。
ほどなくして出てきたパスタ、そしてグリルは確かに旨かった。これこそ久々のちゃんとした食事という奴だ。しかしただの大喰らいの悲しさ、昔の料理を思い出して論評するなどということは出来ない。しかしいくらなんでもちゃんと仕事をしてある2皿だ、ということ位は判る。悪くない。遅い晩餐の唯一の欠点は、こちらがやたらと水を飲むことだ。端から置いてあったグラスにサーブされたお冷は数回おかわりした。そしてさすがにリストランテ、見ていないようでウエイターは、こちらの水が切れると音もなくお代わりをちゃんと入れていく。それはちゃんと冷えていて、薄手のグラスに汗をかかせる。全く悪くない。
少なくとも追い出されはしなかった、塩を撒かれるほどの醜態でもなかったはずだ。そう思って、月に一回ぐらいは帰りがけに足を延ばした。向こうからすれば余程奇矯な客なんだろう、二回目からは、パスタと一緒に銀の水差しがサーブされてきた。嫌味かもしれないし、サービスかもしれない。お互いそっちの方が楽だもんな、それも悪くない(というとさすがに上から目線過ぎるか)。ウエイターは今度こそこっちの方を見ないで済んだはずだ。
佳き日は往々、突然に終わりを迎える。ある日、また人がましいものを食おうと思って店の前にたどり着くと、レストランは深夜営業をやめていた。そりゃそうだ、通った間、一度として他の客なぞ見たことはなかった。店としては、同伴とかお仕事帰りのお姐ぇ様方が使う心づもりだったんだろうが、どうしたって来たのは貧乏神めいた小僧だけだったのだから。さすがに空気よりはましだった、とは思いたいが、そんな細っちい客は切って捨てるのが当然の経営判断だ。
今にして思えば、どう考えたって利幅の薄い立派な不良顧客である。あのウエイターだってその奥にいるシェフだって、態々残業してきたのがあんなのだった、というのは落胆した事だろう。しかし、出てきた料理は真っ当だったし、ウエイターもあからさまに追い立てるそぶりはかけらも見せなかった。あの当時なら少なくとも匿名で世間様に晒されるようなことはなかった。もっとも晒されたとしたところで、こっちの低いアンテナに引っかかるものかは疑問が残るが。
ほどなくしてこちらも横浜を引き払った。まだあの店があったとして、出世払いに赴けるほどの立身は遂にしなかった。或いはケチって水ばかり飲んでいたツケかもしれない。そして時々人がましいものを食いたい時、まだ入る店には迷うのである。