はてなキーワード: 凍結防止とは
今年2月にあったテキサス大停電のことだと思うけど、あのときは歴史上例を見ない-19℃という大寒波の影響で、再エネ風力(タービンの凍結)・LNG火発(パイプラインの凍結)・石炭火発(石炭の凍結)・原発(冷却水の凍結)など、多くの発電設備が止まってしまった。
原因は、風力タービンが欧州や日本で使われているような凍結防止型になってなかったこと、その他の火発・原発が氷点下気温に対応してなかったこと。つまり、テキサスの発電送電網は、再エネと化石エネと原発のすべてが、そもそも世界的に「再エネをやらなきゃいかんぞ」となった理由である気候変動に対して、極めて脆弱な状態のままだった。なおテキサスでは発電電力の2/3が化石燃料+原発由来で、なかでもLNGのシェアが圧倒的に高いため、結果的にはLNGが大停電の主犯だったことになる。このことは、停電発生当初は再エネを苛烈に批判していたグレッグ・アボット知事も後に認めている。
この凍結への準備不足に関して、米連邦政府は昔から凍結対応をせよと警告してたんだけど(1980年代から何度か寒波による電力供給問題が起きていた)、テキサスはエネルギー政策では極めて反連邦的で、アボット知事の州政のもと、そうした連邦レベルの指示・規制を受けないよう、グリッドを切り離して独自の運用をしていた。
本来、電力というのは送電網を使ってどこからでもどこまででも容易に送電できるのが燃料エネルギーに対する長所なわけで、ただ地域内で個別の再エネ設備やLNG火発が止まっただけなら、他地域から送電すればよい。実際、テキサス以外の米本土各州はすべて州間のグリッド接続をしていて、そのほとんどは「東部インターコネクション」と「西部インターコネクション」という2つの送電網に集約されている。ところがテキサスは全米で唯一、連邦政府の規制を避けるために、州間グリッド接続をせず州単位の系統(テキサスインターコネクション)を運用しており、これが命取りになってしまった。電力が不足してもほとんど他州から電力を流せない状態になっていたのだ。
うまく機能する電力取引市場の大前提は、あらゆる発電設備と需要家が相互にグリッド接続されているということだ。だから欧州では地域間どころかEU全体に及ぶレベルで国際連系が形成され、非常に強靱で効率的な電力網が構築されている。テキサスはこういう流れに背を向け続けた結果、地域内の発電設備の一部が停止しただけで大ダメージを受けた。
というわけで、テキサス大停電は、今では再エネの技術的問題などではなく完全な「人災」だった、という評価になっていて、アボット知事は激しい批判に遭い、テキサスインターコネクションを管理するERCOTは訴訟を起こされている。この停電の教訓は、
①これまで以上の気候変動を想定した、よりロバストな発電設備を導入すべき。
②安定した電力供給のためには、広域グリッド接続をしっかりやるべき。
ということ。
ご指摘ありがとうございました。ついLをつけてしまった。仰るとおり、米国で火発に使われているのは液化してないNG(天然ガス)です。上のLNGは全て天然ガスと読み替えてください。
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