はてなキーワード: パイとは
■本文。
今年上半期の美少女ゲーム業界を見渡すと、市場の拡大に伴う、保守化の流れに向かいつつある感がある。これは、おたく業界全体が内包している問題ではあるのだが、正直な所、拡大する市場を追いかけるのは既に辛くなっている。個人的にも、久々に行った秋葉原で、ギャル絵の洪水に立ち眩みがしたのも確かだ。
さて、コンシューマ市場は肥大したが故に、一般性の高さが必然となっていった。例えば、ドリームキャストの失敗は、古くからのセガファンが放つ、マニアックな重力から作り手の側が脱する事ができなかったが故の悲劇とも言えるのだが、一般性ばかりを追い求める状況は、作り手の側にも不満が蓄積されていく。
その、取り残された創作性を実現させる場所として、美少女ゲーム業界が成立したという背景がある。実際、筆者が一番面白かったのはDOSからWINDOWSへ移行する過渡期で、けったいな野心作が多く出た時期だったのだが、その後、市場として、成長・拡大すると、やはり、メディアミックスなど、資本主義的な視線が入り込んできた。
そして、今の美少女ゲーム業界は、昨年来からのレーベル数の増加と、タイトル数の増加と反比例するように、ゲームのジャンルの多様性が失われる傾向が生まれている。タイトル数の増加の背景に、発売サイクルの短期化があり、制作期間の短縮に伴い、システムやシナリオの練り込みが薄れている作品も多い。バグなどの不具合の発生が日常茶飯事になっていて、インターネット上での差分ファイルの配布が流行している現状に至っては、もはや何をいわんかや、という感じでもある。
不幸中の幸い、筆者はそういうゲームにあまり遭遇したことはないのだが、シナリオの練り込みが足りない上に、一時間程度で終わるゲームの為に一万近い金を出すのは、効率が悪いよなあ、という心境は間違いなくあるだろうと思われる。また、メイドものや恋愛ゲームがタイトル数の半分以上を占めるという状況では、やる気そのものが起きなくなってくるのは事実だ。
まあ、メディアミックスを基盤とした企業複合体のシステムに組み込まれた大手では、実験的な企画はほとんど通らないという話もあるし、一獲千金を狙う中小メーカーも、安全パイの企画しか通さない所が増えた。市場が拡大すればするほど、ジャンルが逆に淘汰されていくというのは、当然と見るか、皮肉と思うべきなのだろうか……。
このような、メーカー側の風潮と相互作用しているであろう、ユーザー側の意識についても、前回、「オブジェクト嗜好」と指摘したように、非常に即物的な傾向を示している。キャラクターの消費サイクルが非常に早くなっているため、自己の内面においての批評的な掘り下げが生まれなくなったのだ。
既に、ゲーム誌の編集者すら、全体を把握しきれない程、美少女キャラクターが氾濫している現在の市場状況では、その心性に惚れ込むのではなく、快楽的な記号の組み合わせだけで、売れ線のキャラクターが成り立ってしまう。あまりにも多い選択肢に対峙した時、人間というのは表層的で直接的な視覚イメージを優先してしまうからだ。
ところが、快楽的な記号を積み重ねれば積み重ねるほど、どんどんキャラクターはフリークス化していくし、リアルな少女像から離れれば離れるほど、逆説的にキャラクターがイノセンスを獲得して、ユーザーはヒーリングされる……といった構図になっているのだろう。多分。
何故、おたくのセックス観がリアルな肉体から遠く離れなければならないのかを考えると、それだけでこのコラムの3回分になってしまう位に深くて浅い問題なのだが、やはり、日本の特殊なフェミニズム環境が背景に存在しているような気がしてならない。これほどまでに、二次元の美少女を消費しなければならない、内的な問題とはいったい何なのかについては、また改めて書くとしても、これらの背景に、戦後日本の構築した、過剰な消費社会のターゲットが若者のみに向けられ、若さの素晴らしさや、青春の幻想をメディアが強調しつづけた蓄積の結果であると思われる。その副作用として、「オブジェクト嗜好」も含めた、おたくの奇妙な性嗜好が構成されているようにも思う。
これは、日本独自のフェミニズム的なものに対する、無意識下での抵抗と位置づける事もできるし、その中で形成された美少女概念と現実のズレが生み出した現象ともいえる。現に、美少女ゲームにおけるヒロイン像の大半が、十代中盤の保守的な少女に設定されているのは、当たり前と言えば当たり前だが、不自然といえば不自然でもある。だが、少なくとも、筆者はこの状況を全面肯定できるほど、気楽にはっちゃけられないのだ。
しかし、同じおたくの枠に括られているとはいえ、メタ的なものやフェミニズム的な表現を賛美するサブカル好きなおたくと、ひたすら癒しを求めて空想世界に依存し続ける昔気質なおたくは、明らかに正反対の方向を向いているし、それ故に、前号の本誌「オタク定点観測」にもあったが、双方の感情的な対立も表面化している。だが、前者には普遍化させようという意志が欠けているし、後者には相対化する視点が欠けているので、おそらく、どこまで行っても歩み寄ることはないだろう。
まあ、自分のことは棚に上げるが、本誌のコラム陣もまた、サブカル否定・おたく保守の傾向が強すぎるようにも思うし、最近はあらゆる所で極端な対立が起きるので、さすがにどちらかに与して云々という気持ちも無くなってしまったのだが、おたくという言葉が生まれて、15年の歳月が経ち、その括りだけでは収まりきれない時代になっているのだろう。美少女まんがはそれぞれのニーズに応えようとして、遂に80誌を超えようかという所まで肥大してしまったが、ならば、美少女ゲームはどうなっていくのだろうか?
加えるならば、前回の原稿を書いている時にインターネット上でぶつかった、萌え派と泣き派の思想的対立というのも、拡大する市場と、それに伴う価値観の拡散に伴う混乱、そして、批評軸の喪失といった状況が、結果、ユーザーの思想を脆弱にしてしまったという意味では、分かりやすい例だと思う。
快楽記号が多くてキャラクターに萌えられるから良いゲームだ、とか、心の琴線に触れて泣けるから、良いゲームだ、というのは、はっきり言って、どちらも同じ穴のムジナだし、良いゲームかどうかを決めるのを、一元的な価値観のみに拠って決めること自体が、ゲームの本質を歪めているようにも思うのだ。そして、作り手の側も、「時代がそれを求めている」とかいう言葉で、その表層的な状況をそのまま受け入れているようでは……なんだか、ヒヨコが先か、タマゴが先か、といった話になってきたのだが、もう、この世界は良い方向へ向かうことは絶対にない、と言わざるを得ない。これは、鬱のせいばかりじゃないと思うし、美少女ゲームに限った話でもないのだ。
批評軸の無い世界は自由に限りなく拡散していくのだろう。だけども、空洞化した世界には秩序は生まれないし、結局、内面の闇から逃げる為に、無意味な祭りを繰り返すのだろう。そして、絶望と祭りを行ったり来たりする筆者の心は、まるで墓場と酒場を行ったり来たりする沢田研二のような気分なのだ。ダバダバダバダ(意味不明)。
■暑くて憂鬱な夏の総括。
なんか、またゲームの話をしなかったなあ、このコラム。最初は普通にゲーム評をやるつもりだったんだけど、すっかり別物になりつつあります。ごめん。しかし、ゲームのことを書くと、褒めても褒め方が気に食わないと文句付けられるらしいので、いっそ全く書かない方がいいのかも知れない。まあ、これは某メーカーの広報誌と化した、とあるコンシューマ系ゲーム雑誌で書いている友達の台詞なので、美少女ゲーム誌では、そんな事はないと僕は信じているけどねっ☆
http://anond.hatelabo.jp/20141226100757
:
数Aの広川に追い返されたあと、二人でスタバに入った。テーブルが狭いので顔が近い。
そうやっていつも俺に無関心なそぶりをみせるから、ついつまんないことを言って気を引きたくなるのだ。
今日の英語の時間前だって、いつも通り "仕込み" と称して机に単語帳の出題範囲を一心不乱に書き込んいたから、どうでもいいことを質問してみる気になったのだ。
「読め!」
俺がしょうもないことを思いつく前に、彼女は俺の方に顔を上げ、スマホを突き出した。
「ググッとググった」ダジャレの好きな奴だ。
「ウィキなりWikipediaに書いてあった」こいつの辞書に女言葉という文字はない。
:
「この証明はわかった。でも、だったらπrもダメってことじゃん」
「なんで?」
「次の節に書いてあるだろ? 桁ごとの操作が無限回の手順に無証明のまま適用されてるから、この証明は厳密でないって」
「でも、高校数学の範囲ではこれで正解って書いてあるからいいんだろ」
「俺はそういうのが嫌なの! それに、こんな証明でいいのだったら、なんで広川は教えてくれなかったんだ?」
「そうかも知れない。だけど藪蛇になっちまうと思ったんじゃないかな? まあ聞け。πも無限小数だよな」
「うん」
「だったらrが整数や有限小数だったとしても、厳密な計算には無限回の演算が必要になるよな?」
「…」
「じょうざんすね」はぐらかしにかかったな?
「球の体積に至っては4/3パイアールの三乗だから、式の前半だけでも無限小数同士の乗算が必要になる」
「何がダメなんだ?」
「俺たちが習ってきた公式は、砂上の楼閣かもしれないってことじゃないか。円周とか、円の面積とか、円柱の…」
「ちゅうちゅう」
ちゅう…っと、俺の唇が彼女の唇でふさがれる…
私は
お尻 16勝3敗 175回 2.38
http://www.dmm.com/mono/dvd/-/detail/=/cid=n_641enfd5515/
http://www.dmm.com/mono/dvd/-/detail/=/cid=n_641enfd5597/
http://www.dmm.com/mono/dvd/-/detail/=/cid=n_691lcdv40647/
http://www.dmm.co.jp/rental/ppr/-/detail/=/cid=h_455ooniku018r/
http://www.dmm.com/mono/dvd/-/detail/=/cid=n_707jmdv221/
http://www.dmm.com/mono/dvd/-/detail/=/cid=n_681ms0019/
http://www.dmm.com/mono/dvd/-/detail/=/cid=n_681ms0018/
どっちかというとファンな方に位置するけど、
最近あんまりにも、「ベビメタだらけの・・・」というBaby Metal応援サイトがはてなブログの人気エントリに来すぎじゃないだろうか?
金積まれてるの?ってくらい露骨に、このブログだけ毎日のように上がっており、はてなスタッフの恣意か、何らかのSEOならぬはてなブログ対策的なものを感じる。
だって、このブログ、ブクマも、リツイートも大してないわけで、はてな村民に反感を相当買っている(少なくとも将来買う)のではないかと勝手に思う。
このバンドのいいところは、あくまでもニッチを狙ったところにあるわけだから、そのニッチ層と適合的なはてな村民というパイをみすみす失わせるのはどうかと思った次第。
クックパッド公式のニュースで、薔薇の形をしたアップルパイが取り上げられた。はてブで話題になってたから見ただけなんだけど。
リンゴスイーツ史に残る名作!薔薇の形のアップルパイ! | クックパッドニュース
http://cookpad.com/articles/3214
曰く、
既存のアップルパイを根底から覆す新種を見つけました。丸くも四角くもないアップルパイ。なんと薔薇の形をしたアップルパイだったんです!
とべた褒め。
この記事を書いたライターの目には、薔薇の形になってるリンゴスイーツレシピというのが、ものすごく斬新に映ったのだろう。記事に取り上げられたのは2014年9月27日投稿のレシピ。
しかし、薔薇の形をしたアップルパイのレシピは、このレシピ以前にもいくつも投稿されている。
リンゴ1個で作る薔薇のアップルパイ by フルール★のりこ [クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが187万品
http://cookpad.com/recipe/2440686
また、投稿日が2014年1月19日のこのレシピも。こちらは2013年9月5日にも投稿したと書いてある。
バラのアップルパイ by FionaMcLane [クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが187万品
http://cookpad.com/recipe/2334711
どちらも過去にtwitterで出回っていたバラの形をしたアップルパイの画像をヒントに自作したとのこと。
記事で取り上げられたレシピとの違いは、リンゴをソテーするかレンジでチンするかだけ。加熱方法なんてつくれぽで「アレンジしちゃいました~」くらいの些細な違いだ。
クックパッドのライターや編集、または多くのユーザーが注目したのは、パイシートにスライスリンゴを載せて巻き上げるだけ、という簡単アイデアの方だろう。
このアイデアは2014年9月の投稿者だけが思いついたものではない。
別にパクリだなんだって話ではない。何故、クックパッドニュースの編集は、1つのレシピだけを取り上げて「りんごスイーツ史に残る」とか「既存のアップルパイを根底から覆す新種」と煽り、その他の同様のレシピを無視したのか。一緒に紹介すればいいじゃん。「他にもこんなに投稿されてました!」「密かにtwitterで話題になってたようです!」って。
いや、理由は分かる。twitterやつくれぽでこのレシピだけがバズってたからだ。バズった時点で記事を書いたライターも、クックパッドで他の「薔薇の形のアップルパイ」レシピがないか検索くらいしたはずだ。しかし、他のレシピのつくれぽは一桁二桁。だから無視した。
このソーシャル時代に、バズ至上主義で過去を切り捨て、なんてのは珍しくない。まとめブログやバイラルメディアがやってることだ。けれども、公式のニュース配信で、その他の投稿レシピが切り捨てられるってのは、切り捨てられたユーザからすれば不満があったりはしないのだろうか。
それこそ、まとめブログやバイラルメディア界隈の間では、単に同じYouTube動画や面白ツイートを紹介するだけで、「あっちのバイラルメディアが先に紹介してたぞ、この記事はパクリ」的に糾弾される。ブロガー界隈でも同じネタ紹介がしにくくなってる。朝日新聞と読売新聞が同じニュースを報じるようなことがネットではしにくくなっている。というのは別の話題なので置いといて、
レシピを投稿する際の承認欲求があったはずだ。それはつくれぽだったり、twitterだったり、公式ニュースに取り上げられることだったりで満たされる。しかしその公式ニュースで無視されたら……。ブロガーでも同じ内容の記事なのに、おちゃらけた別のブロガーの記事ばかりが話題になって、先に投稿して更に文章力も高い自分のブログが全く無視されている状況だったら、もうそれ以上書く気が失せたりもするだろう。クックパッドユーザーも投稿するのが嫌になったりしないのか?「クックパッドに最初に投稿したのは私!」と認められたくはないのか?レシピ業界の「アイデア」とか「著作権」とか「発明者」なんてのはないも同然ということは分かるのだけど、コミュニティ内の先行者名誉くらいはほしいとは思わないのかな。
他所のブログやまとめやバイラルメディアで、「今、クックパッドでバズってるこのレシピ」と紹介するだけなのは諦めるけど、せめて、公式ニュースくらいは、「今、クックパッドでバズってるレシピの歴史!」的に関連情報として、他の人の先行レシピを紹介してやってほしいんだ。それは、はてブニュースなどの他のコミュニティの公式ニュースサイトでもいえることだけど。アルファじゃない人、バズらない人の承認欲求をもっと満たすことのできる取り上げ方をしてほしいんだ。
http://anond.hatelabo.jp/20141104113539
とりま箇条書きにするわよ。うっふん。
■最低賃金をあげろ! に対して。
■老人の貯蓄を薄めろ! に対して。
→インフレを起こす場合、急激な円安になる(現状で既にコントロールができなくなってきてる)。
→円の価値が相対的にさがり、輸入する原材料が高騰し、食費があがり生活が苦しくなる。中小はばたばたと倒産する。
→現役で働いてる価値を創造する層、雇用を生み出す層の力を削ぐことになる
■ベーシックインカムを導入せよ! に対して。
→経済への刺激にはならず、悪影響を与える
→一時期の日本なら可能だったかもしれないが、他国に追いつかれつつある現在でそれをやると国際競争で負けて凋落する。
→雑に言うと20年前の日本と比べて相対的に不景気に感じている'気持ちの問題'が主。テレビも冷蔵庫もPCもスマホも、一応みんな買える。
→要は他国から搾取して富を感じていたものが、搾取できなくなっている
→過去に製造業で勝っていたが、アメリカに知的価値創造の分野で負けはじめ、現在は搾取される構造に。みんな大好きappleやamazonやgoogleたちにね。
→知的価値創造の分野で勝たないと、今後はより相対的に不景気に感じる。
→国内で限られたパイをどう分配するかは重要だが、もっと重要なのは他国からいかにパイを奪うか
→出る杭をつぶす税制や企業の体制を変えないと、全体のパイが減っていく
■相対的とか知らん馬鹿。リアルに生活が苦しいんだぞ馬鹿! に対して。
→両親と同居したら育児の問題も家事の問題もほとんどが解決し、経済的に結婚する余裕もできる。
→貧乏なあなたの両親はお金持ちでは?一緒に住んで寄生しましょう。面倒見てあげれば、親も将来の不安が減り、貯めた金を息子と孫に使ってくれます
→昔は家を売りつけるために核家族化を推進してきたが、今後は少子化を止めるためにも拡大家族を推進していくべし
→一人暮らしも下宿に変えるなど、無駄な費用をなくし昔の状態に戻そう
→雑に言うとモノが増えていくとインフレしていくが、IT化って基本的にモノが増えないから、放っておくと原理的にデフレになっていく。
→今後この歪みがどうなるかは未知。
今後追加していくかもしれないわよ。うっふん。
まあ、言いたいことは判るが、斜陽産業というのはそういうもの。見切りをつけて辞めるか、諦めて割に合わないの承知でやってくしか無い。
一定以上のパイを前提としていたビジネスモデルは一度パイが縮むととてもやってけない代物になるのに、疲弊していく中で構造を変える余力なんて無い。
そのモデルの欠陥をを何故漫画家だけに押しつけるのか、という怒りは判るが、そこを出版社も共に背負えば共倒れになるだけ。
いまのところまだ漫画家は「憧れ産業」の地位を保っていて、漫画家の方が使い潰そうが、搾取して嫌気差して辞められようが替えが利く。
一方「一流企業でございます」という出版社の看板は、一度大手で経営危機でも起きれば「実際は未来の無い斜陽産業である」という化けの皮が剥がれて、
需給関係で弱い側に負担を押しつけ、将来展望でよりクリティカルパスになる方にリソースを回すのは経営判断として間違ってない。
全く公正では無いが、経営の論理に公正を求めるのが、そもそも無茶というもの。
良く晴れた、ある秋の日。
からころとカウベルのような音を立てて、喫茶店に一人の女性が入ってきた。
正確に言えば、扉に付いているのは高地で放牧されていた牛がつけていたものを喫茶店のマスターが旅先でもらってきたものであるので、事実、カウベルの音なのだが。
ふと、目をやると、カウンターの上に2つのりんごが置いてある。
「りんごだ」
秋恵はそうつぶやいてから、ひどく恥ずかしくなった。りんごを見て、りんごだ、とつぶやくのはなんというか、あまりにもそのままだったからだ。
他に誰も聞いている人が居ないかを確認してから、秋恵は買い出して来た材料を片付ける為に、店の奥に向かった。さほど大きくはない喫茶店なのだが、カウンターの他に何故か調理室がある。
「……よし」
今日は、キッシュを作ろうと心に決めていた。しかし、調理室に入っていざ準備をしてみると、なぜか少し不安がある。秋恵の中では、料理は特技の中には入っていない。どちらかと言うと、手芸であるとか、もっと具体的に言えば手袋を編むのは中々のものだと思っている。
しかし、まだ季節は秋である。手袋をプレゼントにするには少し早い。
サプライズパーティーをする予定で、他のメンバーがマスターを外に連れ出している。まずお茶の時間にケーキとちょっとしたものでサプライズをして、夜はしっかりごちそうを作る予定だ。
まだキッチンは秋恵だけである。というよりも、料理に自信がなかったので、少し早めに来て先に進めようと考えていたのだ。
秋恵の不安は大きくなる。挽き肉とほうれん草のカレーをマスターに美味しいと褒められたので、パーティーらしくキッシュにしようと挽き肉とほうれん草を買ってきたのだが、良く考えたらカレーだから美味しかったのであって、キッシュにしたらぱさぱさにならないか?チーズとかいるのだろうか?
冷凍パイ生地を使って作ったことがあるのはアップルパイだけだ。アレは自分で食べたのだが中々美味しかった。先ほど見たりんごが脳裏をかすめる。
マスターの趣味で、五香粉だのクミンシードだの、調理室には様々な香辛料が溜め込まれている。当然シナモンもある。
「……よし」
もし、誰かが使うつもりのものだったら謝ってあとでスーパーに買いに行けば良い。ちょうど2個あるし、使ってしまおう。
そう思って喫茶店内にとって返したところで、からころと音がなった。
秋恵がりんごに手を伸ばしたタイミングで、ちょうど目があった。
春香が大声を上げる。
「え?いや、ちょっと使わせてもらうかなーと思ったんだけど」
さすがの秋恵も、自分が買ってきたわけでない食材を勝手に使おうとしていたのでしどろもどろに返答していたのだが、途中でハタと気がついた。
「なによ!ちゃんとマスターにも聞いたんだからね、今欲しい物が何かって!」
それを直接聞くなよ、サプライズだぞ妹よ、と秋恵は思ったのだが口には出さない。どうせ面倒な事になるのが目に見えているからだ。この妹は基本的に善良で模範的な市民なのだが、内弁慶である。そして、すぐに懐いて身内扱いするので、知り合いに対して弁慶である。もう、ほぼ弁慶だ。
「ひどい!4つも食べたの?信じらんない!だから彼氏にも逃げられるのよ!」
「ひどいひどい!マスターがリンゴが6個食べたいって言ってたから、ちゃんと昨日のうちにスーパーで買って来て、これから磨こうと思ってたのに!」
「りんご6個?」
ものすごく嫌な予感がする。秋恵は妹をこれ以上刺激しないようにしたいと心の底から思ったのだが、好奇心が勝った。
「それって、もしかしてApple6って言ってなかった?」
まだ妹が何かを喚いているが、秋恵は聞いていない。そう、妹はこういう奴なのだ。春香ちゃんって天然だねと常連客に言われて、農薬なんか使ってませんと突然怒るような娘なのだ。
秋恵がほんのりと妹の天然さ加減に心温めていると、ついに弁慶が物理的に攻撃を仕掛けてきた。慌てて説明を再開する。
「いや、待てって。あたしはまだ使ってないって。これからちょっと借りてパイをつくろうと思ってただけで」
「借りるって使っちゃったら返せないじゃない!」
「だから、まだ使ってないって。あんたのりんごには手を出してないから」
「今触ってたじゃない!」
「いやだから」
結局、春香が納得して残ったりんごを磨き始めるのに、45分かかった。大幅なタイムロスである。
「もう!誰が4つ食べちゃったのよ」
「そりゃわかんないけど、意外とマスターあたりじゃないの?」
秋恵もなんとなくりんご磨きに付き合わされている。こんなことをしている場合ではないのだが、もはやキッシュを作るのと春香を同時に相手にするのは無理だと心の何処かで諦めている。
りんごを磨きながら扉を見やると、無理やり渋い顔を作っているマスターと、夏代が入ってくるのが見える。
「わたし食べた」
先ほどまでの騒動を三割増しで春香がマスターに報告していると、夏代が唐突に告白した。
春香が目を大きく見開いたのをみて、慌ててマスターが補足を入れる。
「僕が先に食べようって言ったんだよ。ね、夏代ちゃん?」
「先に見つけたのはわたし」
「どういうことよ!ナッちゃんマスターといつのまにそんな関係になったのよ!」
秋恵が黙ってりんごを磨きながら噛み合わない会話を聞いていると、なんとなく全貌が掴めてきた。
つまり、こういうことだ。
昨晩、春香がりんごを6個買ってきて、カウンターの上において帰った。どうやらビニール袋に入れたままだったようだ。プレゼントの扱いが雑だぞ妹よ、と秋恵は思ったが当然口には出さない。
閉店清掃をしていた夏代がカウンターのビニール袋に目を留め、閉店前精算をしていたマスターが、りんごを剥いて夏代と一緒に食べたということのようだ。
「おいしかった」
もうぐだぐだである。マスターも一応気がつかないふりで渋い顔をしていたはずだが、すっかり嬉しそうな様子を隠そうともしない。
「まあまあ、結局は僕へのプレゼントを僕が食べたんだし、良いじゃない」
春香は、マスターに頭をなでてもらってすっかりご満悦である。秋恵は、磨いているりんごを夏代がじっと見つめてくるのが少し気になるが、取り敢えずは無視して気になっていることを聞くことにする。
「ナッちゃんさ、ふゆねぇは?」
「ケーキを取りに行った」
もうサプライズでもなんでも無いなと秋恵は思ったが、主に春香のせいなので気にしないことにする。
「や、なんか変だなーとは思ったんだよね。冬美さんがお散歩しませんか、とか言うから。まあ今日は暇だし、ちょっと休憩がてらと思って、冬美さんと夏代ちゃんと一緒にお散歩に出たら」
冬美は散歩の途中で唐突に、厠に、と言ったらしい。マスターはそこがツボだったらしく、いやあ女性が言うと雅だねとか何とか言っているが、それにしてももう少しマシな言い訳は作れなかったのかと秋恵は思う。
「待ってるつもりだったんだけど、冬美さんも時間が掛かるから先に帰っててって言ってたし、先に帰ってきたんだよね」
そのお茶はサプライズのパーティーという打ち合わせを昨晩きちんとしたはずだし、トイレに時間がかかると女性が言うのはどうだろうと秋恵は思ったが、もはや何を言っても無駄な気がしてきている。
からんころんという音とともに、冬美が大きな箱を持って店内に入ってきた。
「あら、みんなでお茶の準備かしら?」
本人は自然なつもりなのだろうが、どうみてもケーキが入っている箱を持っているし、不自然極まりない入り方に秋恵は少し目眩がする。
「わたしミルクティー」
「じゃあ、わたしはマスター特製のブレンドにしようかしら」
「……あたしもブレンドで」
それでもお湯を沸かしカップを揃え、豆を挽いてミルクを温めてと、マスターを中心に淀みなく準備が進むのは、流石に喫茶店での作業に手慣れた姉妹ならではのものだ。
4人がカウンターに並んで座り、マスターはカウンターの作業側に立っている。いつもの光景だ。
普段と違うのは、明らかにケーキが入っている箱が不自然に中央に置かれていることだ。
冬美がたっぷりと溜めてから箱を開き、驚いたでしょう?という顔でマスターを見上げ、マスターはとても嬉しそうだ。まあ、嬉しそうだからもう何も言うまいと秋恵は諦めてりんごを磨いている。
「あたしも!りんご!ほら、お姉ちゃんも渡して!それあたしのプレゼント!」
春香に続き、秋恵も大人しくマスターにりんごを渡す。ほんの少しだけ渡すのが寂しいと秋恵が思ったのは、丁寧に磨いたからだろうか。
「いや、嬉しいな。ありがとう。僕、結構りんご好きなんだよね」
秋恵がApple6がりんご2個になったと知ったらマスターがどんな顔をするだろうかとぼんやり想像していたが、隣からそわそわとした雰囲気が伝わってきたので、怪訝に思って見てみると、冬美が明らかに何かを企んでいる顔をしている。
これは何かまだプレゼントがあるな、サプライズの意味が解っている流石は最年長者だと素直に秋恵は感心した。
「実はですね~、もう一つ」
「え?りんごがまだあるのかな?良かった、生のりんごは好物でね」
「ナマの?」
秋恵は反射的に聞いてしまってから、後悔した。隣の冬美が笑顔のまま突然硬直したからだ。嫌な予感がする。
「そう、僕は焼きリンゴとかはギリギリ大丈夫なんだけど、アップルパイみたいに煮てあるやつがダメでね。くにゅっとした食感がどうにも苦手で」
マスターは基本的には喫茶店のマスターらしく空気を読むし、苦手な食べ物でも相手から出されたものは断らない。ましてや冬美がプレゼントするものを拒否することはありえない。例え砂まみれでも笑顔で食べるだろう。
「も、もう一つは……あ、あたしからの歌です!」
冬美の無理矢理のリカバリーを夏代が台無しにするが、まだマスターは笑顔のままだ。
「な、ナッちゃんもほら、一緒に!ハッピバースデートゥーユー!」
ハッピバースデーディアと一緒に歌いながら、秋恵は思い出す。そういえば調理室でキッシュを作ろうとして不安になったのは、甘い匂いが残っていたからではなかったか。シナモンが目立つ位置に出ていたのは何故だったか。りんごは元々6個あり、マスターと夏代が食べて、今マスターが2個持っているということは、残りの2個はどこに行ったのか。そして、キッシュを作っていないことに気が付き溜息をつきそうになるが、嬉しそうに蝋燭の炎を消すマスターをみて、まあ、幸せそうならば良いかと秋恵は思い直す。
喫茶店の外は、秋らしく良く晴れている。
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【第0回】短編小説の集い
http://novelcluster.hatenablog.jp/entry/2014/09/18/121657
はてブでは「id:zeromoon0 」を入れて感想をいただければ恐縮です。
http://b.hatena.ne.jp/entry/twitter.com/kazu_fujisawa/status/515137863516573696
こういうの見ると本当にスカッとするんだよなあ。リプライで「努力してきた人には不景気が最高の時です」って言ってる人がいるけど、本当にその通りだと思う。
だいたいあさましいんだよねえ。馬鹿で非正規野郎のくせにシコシコリフレ()本とか読んじゃってるのかネットでお勉強してるのかしらないけどさ、お前がマクロ経済学()なんて今さらお勉強したところで、お前の人生の負けはお前のせいだから(笑)
まともな頭で考えたら消費増税が必要なのはわかるじゃん? ろくに仕事してこなかった負け犬のクズが、ポクも景気が良くなればギリギリ助かるかも~っていう卑しい下心から、一部の思惑を思った学者共の説にすがってるだけのくせに。 政府が金をもっとばら撒いて、怠け者のボクの人生の負債を肩代わりしてよ!って、喚き散らしてるだけじゃん(^m^ )
安倍さんは最初のほうで、ちょっと貧乏カスに媚びすぎたんだよなあ。政治って正論を押し通すだけじゃ難しいんだろうし、仕方ないとは思うけれど。
でも最近は馬鹿な下流媚びも手仕舞いして、きっちり国を正す道を歩んでくれてるようで安心( ・∀・)でも欲をいえば、もう一度麻生さんに登板してきただきたいと思うところ。 きっちり将来の日本のために財政重視を徹底させて、ちょっと調子にのった「庶民」とやらを、キュッと(笑) 軽く締めあげていただきたいねw そのほうが反日殺しも捗るだろうし。(これ重要。デフレ脱却とかいってるとサヨクがやたらつけこんでくるんだよねえ)
ま、というわけで、さっさと消費税は20%くらいまでは上げて、馬鹿な貧乏人が肥大したパイに群がってくるようなことのないクリーンな社会を現政権には作っていただきたいなあということを願ってやまないのでした・・
それなりに形になったので、メモをしておこうと思う。
地域性があるようで、西のほうでは牛モツで、東のほうは豚モツが多いようだ。
たまねぎ 1個
にんにく 1かけら 芽は取る
しょうゆ 100ml
さとう 大さじ2
酒 100ml
これの分量は、しょっぱくなりすぎない安全な分量。この分量で煮て、味がうすければ、最後に少しずつ調整すること。
モツを水に入れて沸騰させ、一度、水を捨てる
3回くらい水をかえながら、すすぐ
これでかなりにおいが取れる
圧力釜に水とモツとにんにく入れて、1時間煮る。圧力釜の使い方は、圧がかかるまで強火、圧が安定したら最小の弱火。
1時間後に圧を抜く。時間があれば自然に時間がなければ減圧する。
材料がシンプルすぎるので、適宜追加していただくとさらに楽しめる。
そもそもゲーム(人間が作った)を余りしないので、その例えが良く分からないけど・・・・。
あるゲームの中に、王道(人気ジャンル)とマイナー(不人気ジャンル)というジャンルがあって、
単に、与えられた枠内にあるジャンルで、
そして単に人気がないという理由でマイナーなんだったら、やっぱり、マイナーにもいかないよ。
行く意味がない。エネルギーも出ないし、モチベーションもない。
単に、王道で勝てないから自分の存在意義を示す為に勝ちやすい所に行くっていう。
その考え方とは180度違うと言っているんだよ。
本当は、王道が好きだし、出来ることならそちらに行きたいけど、負けが嫌だから諦めるのとは全然違う。
人気ジャンル(王道)が本当に好きなら、私なら人気ジャンルにストレートに行くよ。
あなた、競争しちゃうタイプなんだね~。捻くれ者はあなたの方では?
私の言う別のパイを探すというのは、(例えは少し悪いけど)
A地点で油田が見つかったとする、すると、みんながA地点の権利を獲得する競争を始める。
だけど、それには乗っからないでB地点の油田を探すという感じ。まあブルーオーシャンなんだけど。
あ~でも、サッカーというチームでプレイするゲームで、(サッカー知らないけど)
どの立ち位置も重要だけど、特に、人気のあるポジションがあって競争になるという場合は、
あえて人気の無いポジションに回るかな。それなら分かる。
直ぐに、”勝”と言われるものを譲ろうと考える癖がある。
全く、一瞬たりとも、競争心がわかないんだよね。
無人島なんかで、10人の人間がいて、そこに一つのバナナが与えられたとする。
競争して勝ったものがバナナを食べることができるというルールを作るんだけど、
競争するよりも、バナナ以外のパイを増やそうと考えてしまうんだよね。
もしくは、ルールが決められているのなら(バナナしか食べちゃダメみたいな)、そのルール自体を壊そうと考えるんだよね。
競争することに全くエネルギーが出ないというか、これは条件反射のような感じ。
集団として自分の行動は理に適っているんだろうな、と思うようになった。
しかし、社会では、バナナを何本も獲得した実績のある人間が評価される仕組みもあるので、
(そしてそれによって、どうやら、優劣を決めているようなので)
※バナナを取りにいこうとする闘争心高い人間は、出会って直ぐに分かる。
匂いとか、行動の一つ一つとか、
ぎらぎらしてたりとか、生命力あふれているというか、考え方とか180度違う。
私ときたら、もうここ数年、カミさんの生パイどころか服の上からですらノータッチです。
先日、カミさんの後ろを通り過ぎたとき、手の甲で尻を触っただけなのにその後、無茶苦茶機嫌悪くなりました。
純粋に、うらやましいです。