はてなキーワード: 今日一とは
いきなりですが自分は今回が同人イベント初参加だったのです。正確に言えばお○かけライブなんかには顔を出していたりしていたのですがあのイベントはグッズ参加だったりファンの交流会としての側面が強かったりしたので本を売買するのがメインであろう同人誌即売会への参加はこれが初めてということになります。
「分からねえ……分からねえよ! 自分には何が正解なんだかひとっつも分かりゃしねえ! いったいどうすりゃいいってんだ!」
このようなハラハラドキドキを抱えつつ準備を進めます。まずは小銭です。イベントでは300円や700円など100円玉硬貨があった方が支払いやすそうな価格の本が大量に並んでいそうなことは予想できました。ならば両替だ! と銀行に行ってぼそぼそとした陰気な声で「アノー……リョウガエタノンマース……」とか言わなきゃならないのか、憂鬱だな……とこの時点でコミュニケーション能力に難のある自分はテンションが下がりましたがここは快適な薄い本漁りまくりタイムのため、と銀行にて両替を敢行。無事に大量の100円玉と500円玉を入手するに至ったのです。
次はカバンです。カバンが無ければ本を入れられません。丈夫で大きいカバンの予備が無かった自分はその足で雑貨屋へと向かいました。ファッションセンスというものと無縁なので店員さんに勧められるままシャレオツっぽいものを買ってしまって「どうすんぞこれに合う服とかねーし! 合わねえし!」と内心焦りながら会計を済ませます。とりあえずなんとなく合いそうなものを近くの服屋で見繕いましたが終わった今となってはこのチョイスが正解だったのかどうか大いに疑問が残ります。やっぱ一人で買い物なんかするもんじゃねえや!
あんまり規模が大きいと迷っちゃうかもしれないし、だからって寂しいのもなんだかなあと優柔不断な自分は迷います。泊りがけという選択肢はありません。日帰りです。日帰りは決定事項なのです。仕方ないのでピクシブにてサンプル巡りをします。
「……二日目だな。これは二日目だな。というか他の日にあまりにも人が……気のせいか?」
この時点では配置図は出ていませんでしたが、気のせいではありませんでした。しかしこれはこれで多そうだなあ大丈夫かなあと不安になりつつサークルチェックを進めます。と言ってもナンバーが出て居なかったのでカップリング別にサークル名をメモしておいたぐらいだったのですが。
ゴールデンウィークなんだよなあ、自由席って空いてるかなあ、いざとなったらこだまに乗るぞ! 不安が頭をよぎるたび、自分はイケるイケるとそれを頭の隅に押しやります。不安いっぱいでは恐怖に駆られてせっかくの買い物も思うように楽しめないだろうからという浅はかな考えですが、そうでもしないとこのときの自分は夜も眠れそうになかったのです。
朝早くに起き下手なメイクを施し慣れないスカートを履き荷物をせかせか準備します。財布はイベント用と普通に使う用を2個持ち、なんだかファンシーなデザインの大きいカバンを肩に引っさげ、支度は整いました。朝飯代わりのウイ○ーインゼリーを胃袋に流し込み士気を高めます。
怖え……人いっぱい居るとこ怖え……でも! 行かないと、そこにパラダイスがあるから! 自分は行かなければならないんだ! このような寒いことを考えでもしないと冷静ではいられませんでした。引きこもりをこじらせるとこのようになるので皆さんも気を付けてください。要らぬ心配だとは思いますが。
市内電車に乗って新幹線が停まる駅まで向かい、駅に着くと切符を買ってそわそわしながら列車を待ちます。し、新幹線か、慣れてないからなあ。席空いてるかなあ。立ちっぱは辛い距離だよなあ。考えている間に列車は到着しました。中を覗くと若干の空席があるようでした。よっしゃ! などと言おうものなら不審者まっしぐらなのでここはぐっと抑え、乗り込みます。
乗っている間は携帯をいじったり腕を組んで妄想に励んだり携帯用固形食をかじったりするぐらいで特にどうということも無かったのですが、寝ると荷物をすられやしないかと神経過敏な自分は警戒し続けていたのであまり気が休まりませんでした。とはいえ一人なので寝ないのが当たり前と言えなくもない気がします。
名古屋駅に着くと、そこは未知の国でした。「……デカい!?」というのは規模に対しての感想です。名古屋ってどんなところだろう、味噌? 味付けが濃い? モーニングが豪華? 程度のにわか知識しか無かった自分は大いに驚き、迷いはしないかとビビりました。が、案内板通りに進むことで無事方向音痴の自分も乗り継ぎ切符を買い豊橋駅に向かうことが出来ました。今回は観光出来ませんでしたが、次に来るときは周囲を散策してみたいなと思っております。
豊橋駅に着くと外がなにやら騒がしく、ふらふらと声のする方へ向かって行くとイベントをやっておりパフォーマンスとしてよさこいらしきダンスを披露していました。そのままぼけーっと眺めていましたが、はっと腕時計を見るともうすぐ開場時刻! しかもここバス出るとこと反対出口! 気づいた自分は慌てて早歩き。「待ってろよST豊橋2、もうすぐ自分はそこに着くんだぞ! 逃げるなよ!」逃げねえよ、と思うだけの冷静さはもう既に頭から無くなっておりました。
早足で外に出るとYOUの案内板を持ったスタッフが見え、その方の指示する方向へ向かいます。この時点で同じ目的と思われる方々に取り囲まれていました。会話の内容から彼女たちが誰萌え、あるいはどこ校萌えであるのかが窺い知ることが出来なんだか暖かい気持ちになりましたが、同時に一人で歩く自分に対しどこか寂しい気持ちになりました。しょうがないですよね、ぼっちで来たんですから。
「バスが……立派だ!!」
第一印象がコレか、と思われるかもしれませんが立派でした。観光バスを借りるとは、……儲けてやがるな!? などと下衆な感想を抱きましたがそこは脳内で流して乗り込みます。既に車内には何人か待機しており、彼女らもまたこれから向かう会場に対しての予想などを並べ立てていました。なんせ地図で見た限りは倉庫でしたから、会場として機能するのか不安もあったのだと思われます。かくいう自分もその通りで、大丈夫かなあとぼんやり考えながらバスに揺られていました。さあ会場はもうすぐそこです。
「うわ外観めっちゃ倉庫やん!」まんまじゃねーか、な感想は置いておきます。手荷物検査を受けるとシールを渡され目立つところに貼っておくようにと念を押されました。流石にセキュリティは厳重です。なんだかピリピリした雰囲気だなあと思いながら入口から会場の様子を窺います。
そこに居たのは300スペース超のサークル参加の方々と、今日を楽しみに集まってきた一般参加の方々、その方々の熱気で構成された異空間、夢が形になった場所でした。ここにいる人たちは趣向の差はあれどおおむね同じ目的で参加しているんだなあ、そのことを実感し感動しました。生の空気というものはいいんだなあ。同人誌なんて通販で買えばいいじゃん、そのように冷めた気持ちが自分の中にあったことは否定できません、しかしこのときをもってそのような斜めに構えた気持ちは消え去ったのです。この熱を自分の肌で感じ、自然とそのようになったのでした。
ややまごつきながらパンフレットを買い、きょろきょろとあたりを見回しながら会場の隅に向かいます。パンフレットの配置図へ事前にチェックしておいたサークルをマーカーで引き、いざ出発! 果たして無事に買うことが出来るだろうか、そう思いながら横目で受付近くを見ているとなぜか地元の団体さんがはんぺんを配っていました。後で聞くとこのはんぺんは無料だったようで、というか放送でもそんなことを言っていたようで、しかも美味しかったという感想もあり、もらっておけばよかったかなあなどと今更現金なことを考えています。
目当てのCPの島に来ると当たり前ですが同じCPが固まっていて、そこで買い物をしている方を見て「あ、同じCPが好きなんだな」と思うとなんとなく嬉しく思いました。自分ではあまり買わないCPでもポスターやポップが来られているとついつい寄ってしまい「よし買いだ!」と買わせてしまう、そんな勢いや愛にも満ちていました。幸せな気分で今日一番の目当てだったサークルさんの所に足を運びます。無事に帰るだろうか、緊張しながらスペースに向かうと……。
誰も居ない。あれ、間違えたかな、と机に張り出されているナンバーとサークル名を見ました。間違っていません。すかさずツイッターで確認を取ります。今日になって急遽欠席が決まったようでした。しょぼくれましたが、気を取り直し他のサークルさんの元へ向かいます。ここで挫けてはいられません、目当ての本は他にもたくさんあるのですから。分かってはいても、やっぱり残念でした。またの機会があれば今度こそ、と思いつつ探索を続けます。
「おおう、やはり色がどこも派手だなあ。こういう彩のあるジャンルは見てるだけでも楽しくていいよね」
なんて他人事なコメントだと思われるかもしれませんが、現実の光景だというのに目の前で行われているイベントにリアルさを感じることが出来なかったのです。そこはさながら夢の国、すっごい遊園地。異世界でした。普通にレイヤーさんが歩いているのを見て○○が歩いてる……そんな風に茫然とするしかなかったのです。BGMとしてキャラソンがかかりまくり、人はごったがえし、そこらじゅうで普段は出来ないジャンルトークを楽しんでいる。夢のようでした。同人イベントっていいなあ、漠然と抱いていた憧れはここで実感に変わったのです。
コピー本コンテストに投票したり、同人誌なのにすごい厚いよ!? とアンソロジーを見て驚愕したり、「だって○○受けってここしかないじゃん……」とジャンル友達にぶっちゃけトークをしているのを聞いて複雑になったり、桃リコが可愛かったり、こんなCPあったんだーと驚いたと思っていたらいつのまにか買っていたり、委託本にも手を出したり、同じところをぐるぐる回って「へへへこのCPもいっぱいいるじゃんすげーじゃん」と悦に入ったり、……とにかく、普段では絶対に発散できない類の衝動を思いっきり発散できる場所であり、幸せが形になった場所でした。
「そういえば、このジャンルはしばらくイベントが開催できなかったんだよなあ……」
噛みしめます。無事に開催できて本当に良かった。これだけの人が喜びを分かち合える空間が壊されなくてよかった。どうかもう、中止などという悲しすぎることが起こらないように。改めて祈りました。
そろそろ会場を後にしなければ。腕時計を確認すると会場を出てバス乗り場に向かいます。クレープの屋台などが出ていましたが、どうも待ち時間的に食べられそうになかったので泣く泣く断念。ちくしょう、時間に余裕を持って行動しないとな。
バスに乗り込むとイベントの熱が冷めやらぬ人たちが熱心に語り合っています。これが公共の交通機関であれば眉をひそめられることなのでしょうが、ここはイベント専用の車内です。思う存分余韻を分かち合会えるこの空間もまた乙なものだなあと思いました。ただ、送迎用にバスを用意するなんて普通は無理だよなあとも思います。アフターがしたいならやはり2次会にしておいた方が良いようです。自分はぼっちなのでどうにもなりませんが。
バスから降りると、一気に現実に引き戻されました。もう夢は終わったんだ。でも、自分には思い出が出来ました。代えの利かない大切な思い出です。また行きたいな。今度もこのジャンル、いや別のジャンルか、ジャンル無しの大きいイベントにも勇気を出して行ってみようか。今までは恐怖が先立ちどうしても踏み出せなかった一歩をやっと踏み出したこの日、自分の世界は広がった気がします。今回のイベントに参加できてよかった。心からそう思っています。
最後に、主催のスタジオYOUさん、イベント開催お疲れ様でした! また次も頑張ってください、応援してます!
いつからか「何者かになりたい」という思いを漠然と抱いていた。もしかしたら思春期特有かもしれない。
「自分がいつか輝ける場所」を探して、あれでもないこれでもないと数々の場所を渡り歩き、拾っては捨ててを繰り返してきた
そして周りと自分を比較し、自分の才能の無さに呆れ、傷ついていた。どうせ何者にもなれなくて無駄に長生きするくらいなら、さっさと死んでしまいたいと思っていた
「何者かになりたい」という思いはいつしか強迫観念になっていた。毎晩寝る前になると様々な思いが浮かぶ
「今日一日、一体お前は何を成し遂げたんだ?」「何も成し遂げられないならさっさと死ねよ」
自分の言葉に自分で傷ついていた。まるで自傷行為。ずっとそれを繰り返していた
夏休み、ゼミの研修旅行である地方に行って、その地域特有の問題に関わっている人たちを取材して回った。研究発表のために真面目に聞いていこう。最初はそれだけだった。でも話を聞いていくとそれどころではなくなった
彼ら一人一人のかっこよさに心を打たれてしまった。真剣に考え、悩む彼らの姿を見て、「やべぇ、うわぁ、やべぇ」という思いが止まらなくなった
説明されなかったらどこにでもいる普通の人としか思えない人たちだった。彼らは「何かを成し遂げる」なんて考えてなくて、「自分にできること」を考えて、それを一つ一つこなしているだけだった
「ああ、これが正しい生き方なんだな」
深い実感が心に染み渡った
彼らは有名人じゃなかった。フォロワーが大勢いるわけでもなかった。誰もが憧れる仕事をしているわけでもなかった。存在もその人の思いも、直接会うまではハッキリ分からなかった
でも彼らは確実に「何者か」だった。キラキラしてなくても、泥臭くても、輝いていた
確かに社会で生きていくためには何かしらの能力とかスキルは必要だし、そのためには学びも止めちゃいけないんだけど、その根幹の「生きる力」は「物事に真剣に向き合うこと」、つまり「どれだけ多くのことを自分と地続きで考えられるか」なんだなって、やっと気づいた。「何者か」になるためには、才能よりも思いが大切なんだなって気づいた
私たちは当たり前のように線を引く。「男だから、女だから」「理系だから、文系だから」「ウェイだから、陰キャだから」なんて色々と。何が怖いかって、それを意識せずに、無意識にやっちゃうこと。だからどれだけ意識していても確実に何かと線を引いてしまう。人間の行うあらゆる判断は恣意的にならざるを得ない。それが人間の原罪。だからこそ「一つでも多くのことを自分と地続きで考えられるか」って重要なことなんだなって思う
だからたとえどんな仕事をしても、どんな状況になっても、「目の前のことに真剣に向き合うこと」だけは絶対に忘れないでおこう。たとえそれが社会問題みたいな大きなことじゃなくても、仕事のこととか、友達のこととか、家族のこととか、「自分には関係ないから」と思わず、一つ一つ真剣に向き合おう。そして焦らずに一個一個でいいから少しずつ学んでいこう
そうしたらいつか「何者か」になれるはずだから
ずっと治らない傷がある
転んで擦りむいた脛の傷
すぐ治ると思ったのになかなか完治せず
搔き壊しているうちにもう10年くらい
周辺は赤黒くくすんで なんかひどい状況
塗り薬 効果あるような気もしたが
やっぱり痒みで搔き壊してしまい
そのうち薬を塗るのも忘れがちになって
結局治せなかった
そんな感じだったがドラッグストアで乾燥肌のかきむしり用のクリームを見つけた
元は擦り傷だし、乾燥肌ではないし と思ったが
説明読むほどに もしかしたら自分の万年傷のボコボコの皮膚はコレなんでは?という気持ちになり
試しに買ってみることに
これを昨晩塗ったところ、今日一日痒みを感じないで済み、かきむしり搔き壊す事がなかった
もしかしたら本当に治るかも、十年来の治らない傷が
そう思うと嬉しくなっている
この汚い痣になったような脛がきれいになるんだろうか
きれいに治るような気がする 今度こそ
「いってらっしゃい。お仕事頑張ってね。お土産楽しみにしてるわ。」
そう。今回のシゴトは、私の一生を掛けた大仕事。最後までわずかなミスも許されない。
大手機械メーカーの大阪支社に勤める私は、大分県別府市内に建設計画中の工場案件の全てを任されている。
サマータイム導入から10年。すっかり国力の落ちた日本では、ベトナムに工場を作るよりも国内に作った方が
輸送費等の兼ね合いで安く済んでしまう。AIによる製造工程の自動化が進んだ結果、人件費も無視できるレベルに抑えられたのも大きい。
だが、それが一番の問題でもある。
雇用を産まない工場が地方にどれだけ敬遠されているのか、経営陣は本当に分かっているのだろうか…。
私はこの2年間、何度も別府市に行き、地権者から商工会関係者、市会議員から市長まで接待を繰り返した。
接待というものは、される側にはとても気持ちのよいものだが、する側の味わうストレスは大変なものである。
そんなストレスを解消するために、ある時より別府から大阪への帰路にフェリーを使うようになった。
別府 19:35 発~大阪 翌朝 7:35 着 のさんふらわあ号12時間の旅は、翌朝会社に直行するのにちょうどよい時間であったのと、
市街地の明かりが全く見えない海上で甲板から見上げた星空の美しさは言葉では表せない素晴らしいものであったのだ。
半年ほど前からは、携帯式の反射式望遠鏡を購入し、甲板からつかの間の天体観測を楽しむようにしていた。
フェリーの船長は、そんな私に気を利かしてくれて船の常夜灯を最小限の明るさに抑えてくれた。
その日は、数々の環境確保条例をクリアして工場着工に関する最終認可を別府市から得ることに成功し、
この2年間の苦労が報われた本当に長い1日だった。
もちろん、工場は建設が始まれば、後は全て現場任せにできるという簡単なものではない。
すべての設備が導入されて、最初の製品が出荷されるまではまったく気が抜けない。
私はいつものように甲板から星を眺めつつ、これからの仕事に対して、改めて、自分自身に気合いを入れるのであった。
朝 7:40 頃、私は大阪南港のフェリー乗り場の近くでタクシーを捕まえて会社に向かった。
気の良さそうなタクシーの運ちゃんにフェリーでの天体観測の話をしたのち、夜間、誰にも邪魔されないように切っていたスマホの電源を入れたところ、5分と経たずして、電話が鳴った。
警察から掛かってきたその電話は、妻の非業の死を告げるもので、自宅での現場検証に立ち会ってほしいとのことだった。
私はひどく狼狽し、しどろもどろになって、タクシーの運転手に自宅の住所を告げた。
朝 8:10。
自宅周辺に張られた規制線のそばで私を出迎えたのは、よれよれのコートを着た冴えない中年の刑事だった。
刑事「このたびは、まことに…なんといいますか、奥さまが亡くなられたことにお悔やみ申し上げます。」
私「社交辞令はいいので。いったい何が起きたのか教えてもらえますか?」
刑事「ん~。あたしもまだ詳しいことはさっぱりなんですがねぇ。。。
分かってるのは、朝6時半に親切な牛乳配達員が、玄関そばの牛乳箱の周りの血痕に気づいて、不審に思って半開きのドアを開けたら血だらけになった奥さまを発見して通報したことだけ。」
配達員は妻からなにか最後の言葉とか犯人の特徴とか聞いてないんですか?
刑事「ん~。この出血量だとねぇ。。心肺停止と言っても即死みたいなもんだからねぇ。。どうなのかなぁ。。」
要領を得ない刑事の言葉に少しイラッとしたが、玄関口から廊下の奥まで広がる血の海は、
配達員は間違いなく何も聞けていない...。
その後、警察は自宅内に残された犯人の指紋を探すとのことで、家人である私は鑑識に指紋を採られた。
自宅に出入りした可能性のある人物を聞かれ、親族と妻の友人数名の名を挙げた。
おそらく彼らの指紋も照合されるのだろう。
室内には荒らされた形跡があり、盗まれたと思われる妻の財布や貴金属、通帳などいくつかを警察に伝えた。
窓や勝手口などの出入り口については、1ヵ所ずつ状態を確認し、普段の施錠状況と合わせて異常の有無を説明させられた。
勝手口の鍵が掛かっていなかったことから、犯人はそこから出入りしたとも思われる。
例の刑事は、「あのー。大変聞きづらいんだけど。。これ。おたくさんの?」
と妻の寝室のゴミ箱から取り出した使用済みのコンドームを振って見せた。
私「…。その。。妻とはずっと、レスでして。。。」
刑事「あー。そう。」
しばらくの沈黙後。
私「分かりません。涙。」
仕事で大成功した翌朝に妻を殺されて、その直後に妻の不貞が発覚したとき、夫はどんな顔をすべきなんだろう?
何カ月も前からこの瞬間について考えていたのだが結局分からなかったので、私は泣くことに決めた。
全ては計画通りに進行しているので、本来、喜ぶべき時なのではあるが...。
昼13:30。
午後になると、私は警察署に連れて行かれ、妻の遺体と対面した。
(・・・おまえが全て悪いんだよ。私が心血を注いで集めたコレクションを二束三文で売り払ってしまうなんて。)
(・・・結婚前にもお互いの趣味について尊重するとあれほど約束したのに。。)
(・・・プレミアのついた「レイカは華麗な僕のメイド」 フィギュアをいったい、いくらで買ったと思ってるんだ・・・)
無言の妻を前にして、言いたいことは山ほどあったが、私は沈黙を貫き、ひたすら号泣した。
刑事ドラマでみかけるような取調室とおぼしき部屋で待っていたのは、あの刑事だった。
刑事「あのーですねぃ。ひじょーに聞きづらいことなんですが。。
これは捜査の一環として、どうしても関係者一人ひとりに確認しておかなければならないことがありまして。」
と尋ねた。
刑事「そうなんです。
べつにあなたを疑ってる訳じゃなくてね、容疑者から除外するために必要と言いますか、聞いておかないとあたしが怒られちゃうんで・・。」
私「はぁ..。私は昨日の夜19時半に別府港でフェリーに乗って、今朝7時半に大阪港に着きました。それからタクシーで家に戻りました。これでいいですか?」
おもむろに財布にしまってあった、フェリー乗車券の半券と大阪港から自宅まで乗ったタクシーの領収書を取り出した。
半券には 19:35発 7:35着の文字がくっきり書かれている。
間違いなくフェリーに乗っていたことは、天体観測している様子を見た船員が証言してくれる。
領収書は自宅到着時の印字時刻しか書かれていないが、タクシー会社は何時何分に客を乗せたか記録しているはず。
刑事は、私のアリバイ以外にも妻の普段の生活習慣のことや近所付き合い、最近のなにげない出来事まで、こと細かく聞いてきた。
一通り聞き終えた刑事は満足したようで、ようやく私は質問責めから解放された。
私が取調室を出て帰る瞬間、刑事は「すみません。あと1つ。」と呼び止めた。
刑事「おたくさん、お持ちのスマホは1つだけ?個人用と会社用と別に持ってない?」
私「うちの会社は経費節減で会社専用の携帯は支給されてないんですよ。個人のスマホで代用して仕事で使った通話料だけ請求するカタチなんです。」
刑事「あらま。実は、これから関係者の電話の通信記録を調べようと思ってましてね。もし犯人が奥さんの知人だった場合、過去に一度くらい電話してるかもしれないでしょう?見落としがあるといけないので聞いてみたんですわ。」
刑事「それにしても最近のスマホはすごいもんですなぁ。うちのかみさんがスマホを忘れた時なんて、パソコンでちょちょっと操作するだけですぐに置き忘れた場所が分かっちゃったんですよ。」
あの刑事は私を疑っている?
かみさんの話は私にカマを掛けたものかもしれない。ちょっと面白くなってきた。
最新のスマホは複数の基地局と同時に通信するため、およその居場所が通信局のログに残ってしまう。
だから私はフェリーに乗る時にスマホの電源を落とした。念には念を入れて、スマホをアルミ箔で包むことで
完全に電波遮断したので、スマホの移動履歴からアリバイを崩すのは不可能だ。
夜18:00。
自宅のリビングのソファに座り、長かった今日一日の出来事を考えていると、うとうとして眠くなってきた。
昨夜から一睡もしていなかったことを思い出してしばらく仮眠をとることにした。
夜23時過ぎに、リビングの窓を叩く音で目が覚めると、外にはあの刑事が居た。
刑事はどうしても確認したいことがあるとのことで、しかたなく私はリビングに招き入れた。
刑事「昼間聞いた、おたくのアリバイなんだけどね。もう一度、説明してもらえる?本当のところを。」
私「はぁ..。私は昨日の夜19時半に別府港でフェリーに乗って、今朝7時半に大阪港に着きました。それからタクシーで家に戻りました。これで満足ですか?」
刑事「でもねぇ。昨夜はサマータイムの切替え日だったでしょ?夜中に時刻が2時間巻き戻ってるよねぇ?」
夜19時半から航行時間である12時間後が何時になるのか?これ見よがしに数えてゆく。
刑事「1,2,3,4・・・12。ほらね?大阪港に着くのは今朝の5時半だ」
刑事「5時半に着いて、7時40分のタクシーに乗るまでの約2時間。おたくはいったいどこで何をしていたんです?
冴えない刑事の目が、一瞬、狼の目のごとく鋭く光ったように感じた。
それでピンときたね。
あれ?この人、もしかして奥さんが運ばれている様子を見ていたのではと。」
だから無意識に救急隊員という言葉を口にしてしまったことを思い出した。
迂闊だった。
私「そんなことで・・・」
刑事「そうだよ。
5時半に着いたあんたは、バイクか何かで自宅に戻り、6時過ぎに奥さんを殺した。
毎朝6時半に届けにくる配達員にわざと死体を発見させたのを確認して、7時半には大阪港に戻った。
違うかね?」
…素晴らしい。完璧だ。
…およそ完全犯罪というものは、良きライバルに巡り合えてこそ、真に完成するというものだ。
…だが、君がたどり着けるのはそこまでだ。
私「そんなことで。そんなくだらない妄想で、今日一日。初動捜査の貴重な一日目を無駄にしたんかっ」
私「この一日の間に真犯人が絶対捕まらないところへ逃げおおせたら、いったいどない責任とるつもりやねん」
顔を真っ赤にした私は、自分でもびっくりするほどの大声で刑事に怒鳴りつけた。
私「お前はなんもフェリーのことが分かっちゃいない。
サマータイム切替え日には、航行時間を10時間にしたり、14時間にすることで
時刻の辻褄をあわせてるんや。ほら、ここよくみいや。」
フェリー会社の「よくあるご質問」ページをスマホで開いて見せた。
Q:サマータイム切替え日の乗船/下船時刻はどうなるのでしょうか?
A:海上での航行時間(速度)で調整しますので、時刻表通りとお考えください。
無慈悲な一文が、刑事の考えた時刻表トリックをあっさりと打ち砕いた。
私「信じられんなら、明日フェリー会社に問い合わせてみるといい。
船長も船員も乗客も、そうじのおばはんも、み~んな朝7時半に着いたと証言するわっ。アホめ。
もうお前が私を疑っていると分かった以上、今後はいかなる質問も弁護士を通してもらうからな。
こんなクソの役にも立たない捜査官なんて、もう二度と顔もみたくないわ。」
これから先、あの刑事がどこをどう調べても私のアリバイが崩れることは無いだろう。
だって、私は本当に19:35発~7:35着のフェリーに乗っていたのだから。
アリバイ崩しをあきらめて、寝室で見つかった精液の持ち主を追い始めてくれたらそれで十分だ。
私が出張先の風俗店のごみ箱から拾った精液の持ち主がどうなろうと知ったことではない。
夜23:55。
私は自分の寝室に戻り、省電力モードで待機しているメイドロボット・レイカのスイッチを入れた。
レイカ「お帰りなさいませ。ご主人様」
魔改造を重ねられたレイカは、どんな命令をもこなせる最強メイドだ。
もちろん夜のサービスだって完璧だし、アイ・カメラからの映像をネット経由で遠隔地に飛ばすことも可能。
完璧なメイドに完璧な仕事をさせる。夜のいちばん長い今日を執行日に選んだのはそれが理由だった。
今日から、死が二人を分かつまで、彼女との二人きりの甘い生活が始まる。
妄想で頭をいっぱいにした私は、レイカの柔らかな胸に顔を埋めつつ、深い眠りにおちるのだった。(終
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参考)
https://www.ferry-sunflower.co.jp/route/osaka-beppu/time/
http://my-s-maid-reika.sakura.ne.jp/figure/index.html
レイカさん、良いですよねぇ。
原作は1冊のみで完結なんですが、番外編としてぐすたふ先生ご本人の同人誌が続くようでファンとしてはうれしい限りです。
最近、ミクさんと結婚された男性が話題になってましたけど、私が結婚するなら絶対レイカさんが良いデス。
http://b.hatena.ne.jp/entry/370544145/comment/gabill
http://b.hatena.ne.jp/entry/370569310/comment/tetsutalow
https://anond.hatelabo.jp/20180907005441
「19:35発」と書いた時点ですぐに、サマータイムで時間のズレがぁぁ
アリバイが崩れて不可能だった犯行が可能にぃってバレバレじゃないですか。
少しひねって、サマータイムの時差で2時間分の余裕ができたが、犯行に必要なのは3時間。残り1時間はどうやって?
としたら、ただの時刻表トリックと変わりなくなってしまいそう。
アリバイは崩れたけど証拠が無いよ系を面白く書くにはショート・ショートでおさまらないかなと。
推理モノなら、家宅捜索の時点で埃を被って動かないレイカさんが出てくるべきなんでしょうけど、
最初の草案では、正統派コロンボのように、天体観測が趣味なのに関連する書籍が本棚に少なかったり、荒らされた部屋の紛失物をすらすらと言える姿に疑いを深めてゆきます。
最後に、奥さまの体内のチタンプレートにこんな傷を負わせられるのはロボットしか居ない。とか、あなたはロボットの目を通してしか現場を見ていなかった。だからこんなケアレスミスをしたんだ。
みたいなことを考えていたんですが、これだと、魔改造によってロボット3原則を破れるようになったレイカさんは破壊処分されてしまいます。
それが嫌でこうなりました。
今日久しぶりに10時に出勤(正確には自営業の取引先)し、19時に退社した。
そして気がついてしまった。
人の心を殺していたのはこれだということに。
在宅勤務というやつだ。
会社に通わなくなってから、会社員時代は何に対しても無関心で感情を失っていたことに気がついた。
考えてみれば当たり前だった。
開業して家で自由に働くようになってからは、ふとした散歩など日々の日常で楽しいな、穏やかだなと感じることが増えてきた。
平日、仕事に飽きたら本を読んで休憩したり、人の少ないジムにいってリフレッシュしたり、新しいことの勉強にも意欲的に取り組めた。
だが10時に出社して19時まで会社に拘束、となると仕事するかぼーっと休憩するかだ。
何もできない。
時間に拘束され、拘束が解けたと思えばゴミのような人混みにもまれる。
ジムに行っても混んでいるし、散歩しようにもお日さまの光はとうに沈んでいる。
今日一日だけ再び通勤してみて、一瞬で心がしぼんでいくのを感じた。
毎日週5で決まった時間拘束されるために同じ場所に通うことが、どれだけ自分の心にダメージを与えてきたのかをとても痛感した。
これはうつ病になるわけだ。
こんなことを繰り返していたら本当になんのために生きているのかわからなくなる。
昨日、調布FMのアニソン三昧を聞き終えて何だかボンヤリとした悲しい気持ちに包まれたんだ。
その時は、夏休みが終わって久しぶりに職場に行くのが憂鬱なんだと思っていた。
でもそれだけじゃなかったんだよ。
アニメソングを聞きながらネットにいる連中とアニメの思い出話をしているうちに、自分の思い出がアニメゲーム漫画インターネットだけだって事に気づいてしまったんだ。
小学校の頃に友達がいた気がしたけど、よく考えたらあれはお互いにとって共通の友達だった「多人数プレイゲーム」を一緒に遊ぶための相手であって、ゲームという友達の友達どうしでしか無かったんじゃないかって気づいてしまったんだ。
中学校の頃に教室でひたすらアニメの話で盛り上がったアイツらも、高校時代にインターネットミームで盛り上がったアイツらも、皆皆今は疎遠になっている。
大学時代に入った漫画サークルでは、周りに馴染めずいつの間にか1人になって、社会人になってからはそういった関係を持とうともしなくなった。
いつだって自分は、アニメやゲームという皆のお友達を介しての付き合いしか出来なかった。
わかりにくいな図にするか。
こんな感じかな。
この人生にあったのは、赤の他人が作ってくれた素晴らしい娯楽を思う存分味わったという思い出だけで、それで十分だと思っていたんだけど、やっぱり寂しくなってきた。
その時そのアニメを見てなにを思ったのかという気持ちはあっても、その感想すらアニメに誘導されるままに出てきた人並みの感想でしか無くて、自分だけの何かを感じることは出来ないんだ。
平凡な感性しか持っていないけど、人付き合いが苦手で、子供じみた娯楽が好きすぎて人間関係よりもそっちを優先してばかりいるだけの人生だった。
それが何だか辛くなってきた。
割り切っていたはずなのに、いざ実感すると辛いものがある。
俺には俺の思い出がない。
死んでしまったオーキド博士を思って涙をすることはあっても、その涙は結局アニメキャラに向けられたものでしかないんだ。
現実で自分の知り合いが亡くなった時、自分の祖母や祖父が死んだ時には流せなかった涙を、アニメキャラの声優にもう会えないことを思い出して泣くんだ。
自分のことを見てくれていたはずの気持ちを蔑ろにし続けて、ただ一方的に放送されるだけのアニメのキャラクターに対して親しみを覚えるような人間なんだ。
他人を思いやる気持ちなんて全く無いやつが、ただ自分の思い出に浸って1人で勝手に泣いてるだけだって気づいてしまったからこんなにも悲しいんだ。
ごめん……婆ちゃん……俺には人の心なんて分からないままだったよ。
いつだって自分の妄想の中にある他人の幻影に踊らされてばかりで眼の前の相手なんて見てなかったんだ。
そんな人間だから、他人から嫌われて、嫌われるから他人が嫌いになって、1人でピコピコ出来るような遊びばかり好きになっていたんだ。
俺の人生にアニメとゲームしかないのは、アニメやゲームならコミュニケーションを取る必要がなくて、一方的に相手の言いたい事を妄想するだけで終わらせても問題がなかったからなんだ。
そして、そんな妄想まみれの感想を撒き散らす俺にあきれて、漫画サークルの連中は遠ざかったんだ。
全部わかったんだ。
あの12時間の間に。
俺の人生が何なのか、無意識の仲で全部わかったからあんなに悲しかったんだ。
それを今日一日かけて言語化していたから、今日はこんなにも辛かったんだ。
なんなんだこの増田は。
こんなものを読まされた奴らはどうすればいいんだ。
知ったことか。
嫁。
そしてブクマでもしとけ。
俺の自己顕示欲を満たす餌になれ。
同年代で30近くのオジサンが顔出しyoutuberとして身の上を語っていた
曰く、親の会社に雇われ定額をもらっているけど辞めたとかなんとか
なんか途中で心に何かが引っかかって見るに耐えなくなり再生を止めた
そして、彼のことが羨ましくもあり、彼のような悩みと葛藤こそ正しいと思えた
ここで自分語りはしない
だけれども、かつて学生時代に生きる意味とか定年まで続く無意味な労働やらにぶち当たって悩んでいた自分が遠くなり、日々の仕事に追われ悩まないが疲れているばかりの自分に気付き嫌悪と憐憫を感じた
アタマがボーッとして、何もかもどうでもよくなる
だけど、それって幸せなのかな?
自分には何もできないのだけれど、悩み続ける彼に賛辞を送りたい
そして、加齢と劣化というのか、成熟と感性というのかわからないが、変わってしまった自分を哀れに思う
一歩でもすすむんだ、絶望に追いつかれないように