はてなキーワード: 怪談話とは
有名心霊スポットにテントを張って、深夜にその中で出演者が順番に怪談話をするという企画をしてたら、何者かがテントの周囲を歩き回る気配がする。
一同は「ひー」とビビるだけ。だいぶ時間がたってから男の出演者が外にでて、周囲を確認するがなにもなかった。
別のビデオ。
そこにかかわって行方不明になってる人もいるというエピソードもある。
撮影スタッフや出演者がそこに訪れて、撮影していたら謎の車がやってくる。
ビビって一目散に逃走。
別のビデオ。
オカルトライターがホラー映画の監督をそこに招いてインタビュー。
しばらくしたら背後の壁の天井あたりから、真っ白い手がぶら下がる。
こういうのを見ていつも不満に思うのは、決定的な瞬間にでくわしてるのになぜ突撃しないのか。
・テントの外で怪しい気配がする→すぐ外にでて正体をたしかめる
・心霊スポットに謎の車がやってきた→関係者の方ですか?と正体を確かめる
・リアルな見た目の幽霊の手が出現した→その手を掴みにいく。あとで手の出たあたりを調べて人がいる余地がないか確認する。
このくらいしてくれないとモヤモヤする。
最近だったら「近畿地方のある場所について」だったり、もっと前にも「ほねがらみ」だったかな、どちらもカクヨムで連載していて書籍化までいったやつだよね。
複数の話(伝聞や新聞記事やネットの投稿など)を時系列ばらばらに散りばめていって、それらが一つの話に収束していくスタイルのやつね。
読んでる方も考えながらパズルを解いていってるような面白さがあって、それが当たって近年どんどん量産されていってる。
そこで私も、なんかそれっぽいの書いてみようかなと思って書いてみて、できあがったのがこちらになります。
まずはそれらしい複数の怪談話に、共通項を持たせるところから始まって、その共通項にまつわる謎を主人公が追求していくという流れで書いてみたら、わりあいすんなりと話が進んでいって、トータル二週間くらいで書けたかな。まぁ、ホラーなので、謎は謎のままで余韻を残す形で残しておけばよいかなと思って、最後うやむやで終わってるけど。
こういう現実なのか、フィクションなのか、読んでるうちによくわからなくなってくるような、そういうふうに読者を混乱させるようなお話を考えるのが正直私は大好きなので、今後もこういうタイプの小説を書いていこうと思う。
実話怪談とは、四谷怪談のような古典怪談ではなく現代の怪談だ。というとトイレの花子さんのような都市伝説を思い浮かべる人もいるだろう。しかし、そのような出所不明の噂話とも違う。
まず大前提として「実際に不可解な体験をした人というのは、この世の中にいるんだ」というところから始まる。そして、それら体験者から聞き取ったものを語ったり、あるいは執筆という形で記録されたものが実話怪談である。
と、基本的な説明としてはこれで十分ではあるのだが、多くの人が疑問に思うことだろう「それが実際にあった話だとする根拠は?」と。
ここははっきりと申し上げておくが「そんなものはない!」である。
ないんスよ。というのも怪談は超自然的なもの、未知のものを扱う分野だからだ。最新の科学技術や物理知識を以てして証明できてしまったなら、その時点で、もはやそれは「怪談だったもの」となってしまうからだ。
うん、わかった。
もう少し突っ込んで説明しようか。
つまり、実話怪談とは「実際にあった話だとする根拠はないが、とにかく、本当に不可解な体験をしたと主張する人がいて、その人の実在を根拠とした話」のことだ。
そんな根拠の拠り所となる体験者は、実際に語られるさいには、諸般の事情により匿名として扱われることが多い。
…はい、お察しのとおりだ。実のところ、受け手側に実話であると判断する材料はほぼない。
ここまで読まれた皆様におかれましては「せめて、なにか実話を担保するものはないのか?」とお思いかと存じます。
まあ、その、あるにはあるんですよ。お気に召すかはわかりませんが。
というわけで、以下が令和最新版だ。
実話怪談とは「実際にあった話だとする根拠はないが、とにかく、本当に不可解な体験をしたと主張する人がいて、その人の実在を根拠とした話…としたいけど、事情により身元は明かせない以上、聞き取ってきた私という実在を仮の根拠とした話」のことである。
あきれちゃった人には申し訳ないが、こういった回りくどい手順を踏むことで、かろうじて実話と呼べるものになっているのが実情だ。ゆえに実話怪談はその性質上、二重の信用が必要となる。
つまり、怪談話者(著者)は、取材において体験者が事実を話していると信用し、受け手は話者(著者)が嘘を言っていないと信用したときに、初めて実話怪談を楽しむことができるのだ。
もはや新手のカルトのように聞こえるかもしれないが、事実そうなのだ。とはいえ実話怪談愛好家がなんでもかんでも受け入れているかというと、そんなわけではない。聞いていて、あるいは読んでいて「なんかこの話うさん臭いなぁ」と思うことは多々ある。
なぜなら、それぞれが自分なりの実話怪談観を持っており、常にそれをもとにこの話者(著者)を信用するかどうかを推し測っているからだ。また、これは怪談の取材時でも吟味される事柄である。(興味があるなら『忌み地 怪談社奇聞録』あたりを読もう)
こういった部分も含めてこのジャンルの楽しみ方となっている。
個人的に言えば、実話怪談とは少額の霊感商法だと思っている。騙されたとしても、実害は、文庫本なら数百円ていど、新書なら千円か二千円ていど、映像ならタダから数千円ていど。イベントもそれくらいのものだろう。
これは受け手側としての心持ちについて論じているが、同時に話者(著者)側にある程度の倫理観を求めるということでもある。
実在する人物を扱うこともそうだし、死を扱うという点においてもそうだ。タブーをかき分けた先に真の恐怖はある。根本的に不謹慎なジャンルなのだ。
だからこそ信用される優れた話者(著者)となるためには、細心の注意を払いつつもギリギリを攻めるという綱渡りを行わなければならない。
ともかく、信用を重視する点からわかる通り、実話怪談というジャンルは意外なほど属人的な性質を孕んでいる。そしてこの属人性こそが、昨今の実話怪談ブームの一因であるように思う。
分かりやすく言うと、怪談師と呼ばれる人々が出てきたことによって盛り上がったのだ。
実話怪談の始祖を『新耳袋』とするなら、最初の媒体は書籍であり文字媒体だった。(ちなみに稲川淳二御大の語る怪談を、実話怪談の枠に当てはめるのは無理があるので割愛)
まだ怪談師という言葉はなかったが、初期のころから属人的な気質は垣間見れた。とはいえ、この時代の実話怪談はエピソード至上主義であった。
私は00年代の初期からの愛好者だが、この時代は怪談にとって冬の時代だった。それでも『新耳袋』や『「超」怖い話』がシリーズとして刊行を続けてきたことが、今日の盛り上がりの土壌となっている。
「怪談師」という言葉が出だしたのは10年代の中頃だろうか。怪談師とは怪談話者のことだ。彼らの活動範囲は音声のみならず、映像やイベントなど大きく広がっていった。
そのため必然的に話者の存在が前に出ることとなったが、属人性の強い実話怪談と非常に相性がよかった。
昨今の怪談人気は、すなわち怪談師の人気と言って差し支えない。
さて、それに加えて、去年あたりから呪物が盛り上がりを見せている。
いわゆる呪物ブームだ。
事情を知らない人からするとマンガ『呪術廻戦』人気に乗っかったものだと思われるかもしれないが、それは半分くらいは正しい。マンガの影響はでかい。
とはいえ呪物コレクターと呼ばれる存在が昨日今日で誕生したわけではない。もっと言えば、呪物と呼ばれるものは大昔からあり、怪談好きに限らず、多くの人から認知されていたはずだ。
そもそも実話怪談においては、エピソードが重要視された。実話の「話」とはお話(エピソード)のことだから当然と言える。ゆえにエピソードの乏しいものは主流から外れていく。
怪談ジャンキーには「ここの木陰に恨めしそうな女の顔があります」だけではお話として弱く感じるのだ。
「出ると有名な廃墟を探索しました。すごく雰囲気があって怖かった」だけでは怪談欲は満たされないのだ。
呪物もその性質上エピソードに乏しい。「これが丑の刻参りで有名なご神木に刺さっていた藁人形です」だけでは情報不足も甚だしく、消化不良を起こしてしまう。
とはいえ、これらは実話怪談という評価基準において物足りないというだけで、それぞれに違った魅力があり、愛好する者が一定数いる。
また、怪談師という存在が実話怪談を発表するメディアを広げたことにより、別媒体として点在していたそれらが、集約されつつある。その中でもビジュアルに優れた呪物は、具体的なイメージに乏しい実話怪談を補佐する存在とも言える。
だが、それは本質ではない。
呪物ブームの最大の理由は、呪物コレクターの所有する呪物のエピソード性の高さだ。いつの間にか呪物はお話を手にいれ、怪談そのものとなっていたのである。
むろんこれにはカラクリがある。そして、それこそが先般の木札に関連した炎上事件の原因ともなっていると考えられる。
具体的な手口は単純で大したことではない。呪物の定義を限りなく押し広げた、それだけ。
一般的な「呪い」や「呪物」といったもののイメージは「恨みを持った人間が、儀式などの間接的な方法で怨念を晴らそうとする行為=呪い」であり「その儀式で使用される道具=呪物」ではなかろうか。すなわち丑の刻参りを行うことが「呪い」であり、そこで使用された藁人形が「呪物」であると。
・呪われるわけではないが曰くのあるもの
・心霊現象に関わる物品
・念のこもったもの
これらをまとめて呪物として扱ったのだ。
呪物という語にそれらを無理やりに詰め込んだ結果、呪物のミーム化といった現象がこの界隈で起こった。これによりエピソード性は強いが呪物と呼びがたい物すらもその範疇に納めることに成功する。
どこまで意図的に行われていたかは分からないが、そういった呪物コレクターの戦略が奏功し、折よくマンガの人気と合わさったことで、呪物ブームが巻き起こったのではなかろうか。
あくまで個人的な考察ではあるが、あながち的外れでもないかと思う。
というのも、今回の炎上には特徴的な温度差が見てとれる点からも、それらを裏付けているように感じたからだ。
今回の件はジャニーズ性加害問題と似ている。すなわち、内部においては問題意識がほとんどなく、外部の人間が指摘することで初めて問題化したという点だ。
そもそも木札のエピソードは2022年の時点ですでに紹介されており、それこそ祝祭の呪物展というイベントでは2年連続で展示されていた。しかし木札について問題視する声は(自分の観測範囲内では)なかった。
私自身はイベントに足を運んではいないが、動画にてその存在を知った一人である。だが、やはりその時はまったく問題意識はなかった。
事が明るみになったさいも、初めは事情の分かっていない人が騒いでいるだけだろうくらいに思っていた。しかし実際に内容を確認するにつれ、そういった次元の出来事でないことに気付き、心地よい夢から叩き起こされたような気分となった。
この件に関しては、はやせ氏に非があることは間違いない。
問題は複数あるが、やはり東日本大震災の被災者と関連のある物品を「呪物」というくくりに入れてしまったことに尽きる。呪物コレクターとしての戦略が裏目に出た形だ。
だが、本当に非があるのははやせ氏だけだろうか。
これは出自不明と説明された木札の出所が判明し、そのエピソード自体に疑問が持たれた今だからこそ言える話などではなく、最初の発表時からあった問題だ。
しかし自分も含め誰も指摘できなかった。受け手側も麻痺していた部分があったのだ。間違っても「はやせさんがあんなに謝ってるんだから、許してあげてください」なんて言える立場にない、どころか一緒にごめんなさいしなくてはいけない立場にあると言える。
…とはいえ、頭では理解できるものの、心の奥底では引っ掛かりを感じている。
それは結局のところ、不謹慎さも含めて楽しむというスタイルが染みついているせいだろう。
自分は高潔な人間などではない。心の奥底にドロドロとした薄汚いものを秘めた、しょうもない人間でしかない。
冒頭に戻るが、今、実話怪談が盛り上がってきている。
文字媒体くらいしか発表の場がなかった時代は終わり、怪談師の活躍により発表の場は増えていった。賞レースも盛んとなり、多くの怪談師と無数のファンを生み出した。
方法は知らない。
祖父は生前父に「他にも姉たちが沢山いたのに父は身勝手に死んだ」と言っていたらしい。
享年47歳だったらしい。
ご近所さんの倉庫にあった農薬をお酒と一緒に飲んで自死したらしい。
父は生前私に「結局姉たちやわしのことも考えずに、近所の人への迷惑も考えずに死んだんや」と言った。
享年48歳だったようだ。
父は生前ヘルニアを患っており、手術はしたものの担当医から「数年以内には車椅子になる事を覚悟してください」と言われたのを苦に、
私は当時小6で「結局お父さんもじいちゃんたちのようにうちのことも、弟のことも考えてくれなかった」と思った。
享年49歳だった。
弟は小5で父が自死したこと、そんな父に姿も声も癖も段々そっくりになっていくことがコンプレックスになっていた。
しかも住んでいた家が大◯てるに一時期掲載され(今は跡地にスーパーが建っている)、「早朝に出る」と怪談話にもなってしまった。
しかし、弟本人は高校生くらいで「47、48、49、ときてるからもし何かあっても俺が死ぬのは50歳ちゃう?」と話していた。
遺書によると、担当部署が残念ながら「顧客との通話に録音機能が無い」という状況で、
上司にも代わってもらえない環境で毎日毎日クレーム対処を行っていたのが辛くなって
人生RTAを誰がしろと言った。男女の双子が生まれてすぐにぶっちぎりで更新するんじゃない。
享年26歳だった。
祖父も父も弟も皆「父親が自死した」というのが本人も自死するまでずっと人生に暗い影を落としていた。
そして自死した末っ子長男達に対して歴代の母(妻)や姉たちは「何も出来なかった」とずっと思いながら人生を生きていくしかない。
弟に関しては父の二の舞にならぬようきちんと投薬治療・入院させようと病院を探していた矢先だった。
りゅうちぇるのニュースを見て「なんて身勝手な父親なんだろう」と思ってしまった。(あえて「父」と言わせてもらった)
死人に鞭打つな、と思う人もいるだろう。
・「お父さんがいない家の子と仲良くするのは…」と交流をなくそうとする保護者がいた
・「お父さんが亡くなったのは信心が足りないから」としつこくしつこく宗教勧誘された
・「心の健康のためには良い調理道具が必要」としつこくしつこくマルチ勧誘された
・婚約してご両親にご挨拶しに行ったら、「うちの子まで自死したら困る」と反対されて結局破談した
ことがあったのを思い出すと
「お父さんの所為で苦労した」「お父さんにあの時守ってほしかった」と思ってしまうのは酷だろうか?
俺は嬉しくない。
たとえば君が電車で椅子に座ったとき、前に座った誰かの体温が尻から伝わったら嫌じゃないだろうか?
少なくとも私は嫌だ。
うっすらとアンモニア臭がする老人の座った直後、君はその温かさの何割かが老人の猿股から染み出した尿なのではという疑いを持たずにいられるだろうか?
モケットに染みついた他人の尿素がウールやポリエステルを毛細管現象で伝わって君のお尻にそっと辿り着くのではという不安が1ミリも無いと言い切れるか?
反対に、他人の体温が自分の方へと移ることに対して、他人が勝手に嫌がってくるのではないという不安もないだろうか?
同じく電車の座席を例にとれば、顔立ちの良い女学生が座った直後、女性特有の体温の高さを感じるとき、そこに変態じみた欲望を見出していると疑わる不安に駆られることはないだろうか?
私はある。
醜い中年オヤジが、せめてうら若き人肌の温かさだけでも感じ取りたいと、内心必死の思いでその席に腰掛けたと疑われるのではと怖くなることがある。
ドアの向こうに消えた少女が私の方に振り向き「うわ……キモ……」と目で訴えかけるのではという恐怖で腰掛けて暫くは顔をふせっってしまうほどだ。
無い方がいい。
君の言葉が「温度を感じさせない」というならそれは最高の才覚だ。
背の高い人間が梁に頭をぶつけるたびに我が身の不便さを恨むように、豊かな家庭に生まれたものが自分の努力の証明の邪魔になると疎むように、自分が恵まれていることに人は気づかないものなのだ。
気持ち悪いだろう?
全くもって不気味そのものだ。
夏だからホラーでも...怪異とか超常現象とかの話ではない。すまん。
増田はお茶汲み事務員だ。仕事は出来ない。が、挨拶と謝罪とお礼の声がデカいからギリギリ存在を許されている。声がデカいので社員旅行では毎年司会をやらされていた。
増田の会社は制服がない。男性はスーツだが、女性はすっぴんシャツジーパン、おっぱいモロ見え超ミニ丈ワンピ、緑色の髪に穴だらけのジャケット、と実に様々なファッションの社員がいた。増田はブラウスにロングスカート、そしてレースの靴下に丸い靴を履いていた。俗に言うイモい格好である。
まあそんなこんなで、役に立たない割に結構楽しく働かせてもらったいた。
ある日、先輩女性社員(毎日上下真っ黒の服を着ていたので以下黒先輩と呼ばせて頂く)のパソコンのバックアップを命ぜられデータを移していると恐ろしいものを見つけてしまった。
増田ちゃん頑張ってるね☆とかいう内容...ではもちろんまったくなく、
「全員に嫌われているクセに気付かないのか、
凄まじい内容が書かれていた。
とりあえず増田はその日から服をユニクロで固めたが、ついで言うとこの日記はもう定年で去った黒先輩のもっと先輩の社員と共有されていた。かなり死にたくなった。
増田はコレを見なかったことにして数年過ごした。その間に増田は結婚し、さらにちょっとしてから妊娠した。増田は黒先輩によると全社員にめちゃくちゃ嫌われているらしいが、結婚の時も妊娠が分かった時も本当に申し訳ないくらい盛大にお祝いをしてもらった。みんな何考えてるか分からんけど。
で、産休開始の前日、増田は今までのお礼とこれからもよろしくお願いしますの気持ちを込めてお菓子を配り回った(弊社にはそういう風習がある)。お菓子と引き換えにちょっと早いけど、と出産祝いを頂いたりもした。ひたすらにありがたかった。そして黒先輩にもお菓子を渡すと「私からもこれ...」と包んだプレゼントをもらった。めちゃくちゃビビりながら、たくさんお礼を言ってとりあえず笑顔でその場を離れた。
帰宅後もらったお祝いを一つずつ開けていった。スイーツ、スキンケアグッズ、金券、バッグ、その他諸々お手紙も入ってたりもして、「嫌われているクセに」が頭をよぎりながらも嬉しくてちょっと泣いた。
そして黒先輩からの包みを開けた。中には
が入っていた。
真紫色の生地にラメの入った靴下に、水筒洗い用タワシのような真っ白で固いレースが付いている。増田の趣味とはだいぶ違う、だが間違いなくレースの靴下だった。ビビり過ぎて友達に相談したらそれチェーン店の3足1000円のやつやでと教えてもらった。じゃあコレ300円ちょっとか。
黒先輩はバックアップ作業後増田が急にユニクロ女になったからあの日記を知ってしまったと知っているのだろうか、あるいは増田が真相を知っているとは知らずプークスクスするためにこれをプレゼントに選んだのだろうか。分からない、分からないが、申し訳ないが増田には特級呪物にしか見えなかった。
もう産休に入っちゃったから黒先輩の真意は分からない。2人目妊娠のタイミングによっちゃ黒先輩が定年でいなくなってしまうのでもしかすると一生分からないかもしれない。どちらにせよ怖かったので捨てた。本当にすみません。
オチはない。すまん。
とりあえず増田は育休明けのその日が来ることが少し恐ろしい。しょうもない体験談でしたが、お化けより人間が怖いなと思いました。
「白いぼうし」
タクシー運転手の松井さんのことを、どれだけの人が覚えているだろうか。「白いぼうし」は、タクシーを運転している松井さんが出会ったことが書かれた車のいろは空のいろに収められているおはなし。シリーズの他の作品は知らなくても、教科書に収録された「白いぼうし」だけは知っているという人も多いのではないだろうか。
松井さんのタクシーに乗るとただよってくるのは、夏みかんの香り。田舎の母親が送ってくれた夏みかんを乗せておいたのだが、タクシーに乗り合わせたお客さんも、夏みかんの香りをかいで幸せになれる。そんな夏みかんのにおいがするタクシーを走らせていた松井さんだが、道路のそばに置かれた白いぼうしを見つける。このままでは風に飛ばされて車にひかれてしまうと考えた松井さんは、もっと安全な場所に移してあげようと思い、ぼうしを取り上げるが、ぼうしの下からモンシロチョウが逃げ出していった。
それを見て、しまったと思う松井さん。子どもが捕まえたモンシロチョウが逃げないように、ぼうしでつかまえていたのだろうが、思わぬ親切が仇となってしまった。このままでは、子どもをガッカリさせてしまうと思った松井さんが取った策とは、ぼうしの下にモンシロチョウの代わりに夏みかんを入れておくこと。モンシロチョウが夏みかんに化けたと思って、男の子が驚く姿を想像して喜ぶ松井さんだが、物語はこれで終わりではない。夏みかんをおいて戻ってきた松井さんのタクシーに小さな女の子が乗っていたのだ。菜の花横丁までという女の子を乗せて、タクシーを走らせる松井さんだが、ふと気がつくと女の子の姿は消えていた。後部座席から人が消えたら怪談話だが、女の子が消えた場所の周りを飛び回るのは、たくさんの白いチョウ。女の子は松井さんが逃がしてあげたモンシロチョウの化身だったのだろうか。
モンシロチョウを逃がすという失敗をしながらも、1個の夏みかんのおかげで、松井さん、チョウを捕まえた男の子、逃げ出したモンシロチョウの誰もが、幸せな思いをするという構造がおもしろい。「よかったね。」「よかったよ。」「よかったね。」「よかったよ。」
作品のツボ→子どものうちは、花や果物の香りに対しては無頓着なので、夏みかんのにおいを、どんなものだか想像しにくいのだが、それでも文章を通じて夏みかんのすっぱいいいにおいが感じられるような、後味の良い作品となっている。
この文章は実際に起きた出来事をもとに書いています。誰かを批判したり糾弾する意図はなく、事件の備忘録として秘匿で公開することをご了承ください。
また、特定を防ぐため一部事実と異なる記載もしていますが大元の筋は変えていないつもりです。
SNSで死んだはずのフォロワーが転生した。ちょうど一年前の7月の話だ。以降便宜上転生する前のそのフォロワーをAと仮称する。
Aとは今から三、四年くらい前にTRPGのセッションで知り合い、何度かオンラインで卓をし、作業通話などを行ったこともあった。声を聞いたり私生活を聞く限り、とても若いなという印象があった。
今から一年前の5月。その日は私と何人かのフォロワーがプレイヤーとしてAにTRPGシナリオの続きを回してもらう予定だった。ところが時間になってもGM(ゲームマスター、シナリオ進行者のこと)であるAは現れない。連絡しても反応がない。心配に思いつつシナリオ進行者であるAがいない以上卓を行うことなどできないので結局その日は解散となった。
Aのアカウントが沈黙して数日後、Aの親族を名乗る人物がAのアカウントを使いタイムラインに投稿した。なんでもAは腹痛で病院に運ばれたのだという。さらに数日後、A自身が自分の身体に癌が見つかった、初期の発見ではあったが命に関わるものだという旨のツイートをした。
この話を聞いた時、私よりはるかに若いAが重い病を患う事実は正直にショックだった。A本人からはしばらく卓ができない旨の謝罪があったがそれより元気になってほしいと思った。私自身、昔上司を癌で亡くした経験があり、癌の恐ろしさはある程度知っているつもりだった。癌というのは本当に、ぞっとするほどあっという間に命を奪う。
しかし、Aの体調によりAとの交流がストップし、AとはSNS上のタイムラインを見るだけのやりとりとなった中で小さな違和感が芽生え始めた。
AはA自身のSNSによれば抗癌剤による治療を受けているとのことだった。その中でAはかなり頻繁に他のフォロワーと通話を行っていたようなのだ。それも夜遅くまで。私には入院経験がないので病院のきちんとしたスケジュールは把握してないが、就寝時間が深夜に設定されている病院を私は知らない。それに抗癌剤治療はものすごくきついと聞く。それこそ毎日通話する余裕があったのだろうか、と。ただこの時は多少違和感があった程度でAを疑うまでは至らなかった。何よりフォロワーの病を疑うのは失礼だと思っていたから。
一ヶ月後、再びAの親族を名乗る人物がAのアカウントを使用し報告した。Aが亡くなった。
この報告を受けて私の中の違和感は確実に膨らんだ。癌は若い人ほど進行が早いと聞くが、いくら何でも早すぎる。それに腹痛で運ばれたにも関わらずAの親族が告げたAの死因は腹部や消化器系の癌ではなかった。Aの死を悲しむ気持ちと違和感だらけの事実に頭がごちゃごちゃになった頃、同じくAがGMを行った卓にPLとして行き、卓が中断していたフォロワーから連絡があった。「Aのことどう思う?」。
私はAの訃報は悲しいが、違和感があり正直信じられないと答えた。フォロワーも同意見だったようだったが、それ以上言及することはなく、私はAの訃報にお悔やみの言葉を送った。
数日後、SNS上で中断していた長期卓のGM募集をよく見るようになった。私がAの訃報で中断となったシナリオの卓もけっこうあった。私はこれらがAの一件によるものだと知り、その多さに愕然とした。Aは確かに時間のかかるシナリオやキャンペーンシナリオをよく回していたが、とある一人のフォロワーがAに対して6つの中断したシナリオを抱えていると聞いた時は慄いた。
私はAのSNSに連絡を取った。Aの訃報に対するお悔やみの言葉、その上でAに対する違和感、もしAが生きているなら返事をしてほしいこと、もしAが亡くなっておりAの親族がこれを見ているのならこれはAに対する言葉なので返事をしないでほしいことをAの個人チャットに送信した。
Aと私は竹馬の友と言う訳ではない。せいぜい数回遊んだ程度の、何かあれば簡単に縁など切れてしまう程度のフォロワーだ。それなのに今でも馬鹿な連絡を入れたと私は思う。Aにもまだ誠意があると少しでも思ってしまった。この時Aに連絡を入れたことは今日に至るまで誰にも話していない。
私が文章を送信してから三時間ほど後にAの親族から返信が来た。あなたの送った内容に憤りを感じている。私(Aの親族を指す)も嘘だと思いたい。もAに生きていて欲しかった。そんな感じの内容だった。
私が考えていた中で最悪のパターンだった。同時に私はAは生きていると確信した。
私はAに嘘でもいいから生きていてほしかった。だからA本人から連絡がくるのが最高のパターン。次にこのままDMが動かす読まれることなく終わる、もしくは返信なくブロックされるのが想定内のパターン。どんな親切な親族だろうと身内の死を疑う内容の文面にまともな返事を送らないだろうと考えていたからだ。そもそも本人以外返事をしないでほしいとわざわざ書いた。
Aは私という他人の前ですら、誠実なふりをすることすら辞めたらしい。親族という皮をかぶり本当に身内を喪った親族からすれば気分を害する内容の連絡にさほど時間を置かずに返ってきた妙に丁寧な文章、「あなたは誠実な人なのですね」という一文がただただ気味悪かった。私はこれ以上の言及は無意味だと適当に連絡を打ち切った。
それから一ヶ月後、とある匿名アカウントが現れる。警告アカウントと題されたそれにはAが別のアカウントを使い、別人としてシナリオを制作し卓の募集をしているというものだった。死んだフォロワーが転生した。ちょうど一年前の7月の話だ。
私は特に驚かなかったが心底がっかりはしたし憤りもした。新しいアカウントとやらに見に行くと確かに作成したシナリオはAと酷似している。というかほぼ同じだ。もうちょい上手にやれよと呆れざるを得ない。警告アカウントが広まり始めるとAの新アカウント(仮)はアカウントのみ残して消えた。
そこからさらに数ヶ月、とあるTRPGシナリオを目にした。それはAの新アカウント(仮)が作成していたシナリオそっくり、というかほぼ同じで、あっと思った頃には警告アカウントも再び動き出していた。転生、アゲイン。ここまで露骨に分かると笑ってしまう。笑い事ではないのだけれど。
ただ前回と違うのはその新アカウントはめちゃくちゃ人気を博しており、現在に至るまで消えていないということだ。Aが生きていた頃から感じていたことだが、Aには「信者」なるものがいるらしく、以前Aが問題ごとを起こしたときも指摘をした人がAの信者らしき匿名アカウントにものすごく叩かれたのだという。今回も新アカウントにコンタクトを取った末叩かれたり脅迫されたりした人を何人か見た。
地獄への道は善意で舗装されている、という言葉をまざまざと見た。新しいアカウントでのフォロワーは1000人を超え、再びいくつもの長編シナリオを回す予約を取り、さらにシナリオの販売まで始めたAは次はもう転生できないだろう。前回と異なり金銭が絡んでいるのだから。なのに転生したAはまた同じようにいくつもの卓を立て大量の長編キャンペーンシナリオを制作し、そのどれもが制作途中に関わらずすでにプレイヤーを募集している。
私は転生したAを見つけたときとてつもなく怒りの感情があった。他人とのコミュニケーションと信頼の上で成り立つゲームを途中で放り出され、癌という最悪の部類の嘘を吐かれ、批判覚悟で送った文章を足蹴にされた。その上すぐにバレるような形で転生し、なんの反省もなく同じことをくりかえしている。
だが転生を繰り返すAを今はただただ哀れだと思う。嘘をつき続けるというのはすごくしんどいことではないだろうか。それとも息をするように嘘が吐ける体質でもあるのだろうか。それはそれで嫌な人生だ。
私はAと関わりのありそうな全てのアカウントをブロックし、以降は目に入れないようにしている。警告アカウントも流れてきたものを目にするだけで特にリアクションしない。警告アカウントも警告アカウントでAの新アカウントの作品動画に直接警告文を送るなど、段々過激になっていることに少なからず嫌悪を抱いている。これらAに関する一件に触れたくないフォロワーもいる。私は真実かどうか分からない薄い正義より今でも一緒に遊んで元気に生きてくれるフォロワーの方が大事なのだ。
フォロワーがAの新アカウントをフォローしたりAの新アカウントが作ったシナリオで遊んだりすることも特に何も思わない。警告アカウントができた当初はフォロワーへの注意喚起として拡散したりもしたが、フォロワーが誰と何で遊ぶかはフォロワーが選ぶことだ。フォロワーに対する余計なお世話である。
ただ何も思わないっちゃ思わないのだが、新アカウントの動向を軽く見た限り恐らくその人は同じように大量の長編シナリオの予約をしてすっぽかす可能性が非常に高いので苦労するからやめとけとは思う。ちなみにそれなりに募集はかけたが一年が経った今も私達が放棄された卓の続きを行ってくれるGMは見つかっていない。
ここまで書いておいてなんだかAが死んだと嘘をつき、新アカウントで猛威を奮っているという確たる証拠はない。もしかしたらAは本当に亡くなっていてAによく似たシナリオを描く誰かなだけかもしれない。そうであってほしいとも思う。
Aの訃報を聞いた時、嘘でもいいから生きてくれと思った。Aの新アカウントを見つけたとき頼むから死んでいてくれと願った。今はもう嘘が本当か分からない夏の怪談話の一つを手に入れたような気分だ。
私はAの転生を見て様々な学びを得た。計画性なく卓を詰め込みすぎないこと、できないと思ったら素直に申告すること、心からの謝罪の大切さ、過ちを庇うだけが思いやりではないこと、人はそう簡単に変われないこと。
皮肉なことに不幸中の幸いなのはAが家族でも親友でも恋人でもない、ただ数回遊んだ程度の、何かあれば簡単に縁など切れてしまう程度のフォロワーであるということだ。もしも家族や友人がAのようだったらと考えるとぞっとする。家族や友人が善意で舗装された地獄への道を歩いているとき、多分私は何もできない。
せめて、私が大切だと思う人たちが嘘による転生などを行わないことを、嘘の繰り返しで誰かを傷つけないことを、ただただ願う。