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2021-04-26

anond:20210426160332

「白いぼうし」

あまんきみこ ポプラ社

タクシー運転手松井さんのことを、どれだけの人が覚えているだろうか。「白いぼうし」は、タクシー運転している松井さんが出会たことが書かれた車のいろは空のいろに収められているおはなし。シリーズの他の作品は知らなくても、教科書に収録された「白いぼうし」だけは知っているという人も多いのではないだろうか。

松井さんのタクシーに乗るとただよってくるのは、夏みかん香り田舎母親が送ってくれた夏みかんを乗せておいたのだが、タクシーに乗り合わせたお客さんも、夏みかん香りかい幸せになれる。そんな夏みかんのにおいがするタクシーを走らせていた松井さんだが、道路そばに置かれた白いぼうしを見つける。このままでは風に飛ばされて車にひかれてしまうと考えた松井さんは、もっと安全場所に移してあげようと思い、ぼうしを取り上げるが、ぼうしのからモンシロチョウが逃げ出していった。

それを見て、しまったと思う松井さん。子どもが捕まえたモンシロチョウが逃げないように、ぼうしでつかまえていたのだろうが、思わぬ親切が仇となってしまった。このままでは、子どもをガッカリさせてしまうと思った松井さんが取った策とは、ぼうしの下にモンシロチョウの代わりに夏みかんを入れておくこと。モンシロチョウ夏みかんに化けたと思って、男の子が驚く姿を想像して喜ぶ松井さんだが、物語はこれで終わりではない。夏みかんをおいて戻ってきた松井さんのタクシーに小さな女の子が乗っていたのだ。菜の花横丁までという女の子を乗せて、タクシーを走らせる松井さんだが、ふと気がつくと女の子の姿は消えていた。後部座席から人が消えたら怪談話だが、女の子が消えた場所の周りを飛び回るのは、たくさんの白いチョウ。女の子松井さんが逃がしてあげたモンシロチョウ化身だったのだろうか。

モンシロチョウを逃がすという失敗をしながらも、1個の夏みかんのおかげで、松井さん、チョウを捕まえた男の子、逃げ出したモンシロチョウの誰もが、幸せな思いをするという構造おもしろい。「よかったね。」「よかったよ。」「よかったね。」「よかったよ。」

作品のツボ→子どものうちは、花や果物香りに対しては無頓着なので、夏みかんのにおいを、どんなものだか想像しにくいのだが、それでも文章を通じて夏みかんのすっぱいいいにおいが感じられるような、後味の良い作品となっている。

 
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