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2015-02-14

( ・3・) クラシック好きの上司ジャズを聴きたいと言いだして・続

承前

http://anond.hatelabo.jp/20150214223556

9. スティーヴ・レイシーソプラノサックス

Steve Lacy (1934-2004)

――スティーヴ・レイシー独立独歩ソプラノサックス奏者です。サックスといえばアルトテナーだった50年代からソプラノを吹いていました。

Evidence (1961) http://youtu.be/X9SBzQw2IJY?t=5m42s

( ・3・) 面白いテーマの曲だな。真面目な顔で冗談を言っているような。

――セロニアス・モンクが書いた曲です。レイシーはモンクの曲をたくさん演奏しています。一方、ハリウッドブロードウェイの曲はとりあげない。レパートリーに関しては人文系古本屋の主人みたいなところがあります

( ・3・) みすず書房とか白水社とか、そういう本ばかり並んでいるわけだ。

――白水社といえば、レイシーはサミュエルベケットと面識があって、ベケットテクストに基づいた作品も発表しています

( ・3・) 「真夜中だ。雨が窓に打ちつけている」

――「真夜中ではなかった。雨は降っていなかった」――と、ベケットごっこはともかく、演奏どうでしょう

( ・3・) まっすぐな音だな。あまりヴィブラートをかけない。アタックの瞬間から音程の中心を目指している。必ずしも正確な音程というわけではないけれど。ソロのとり方としては、テーマとの関連性を保って、構成を考えながら吹いているように聴こえる。言うべきことだけを言って余計なことはしゃべらない。

――そういう点では、プレイヤー資質としてはマイルス・デイヴィスに近いのかもしれません。マイルスとも少しだけ共演したことがあるのですが、もし正式バンドに加わっていたら歴史が変わったかも。 [6]

Reincarnation of a Lovebird (1987) http://youtu.be/FbaKNB4cIlc

――こちらは後年の録音。ギル・エヴァンスという編曲仕事で有名な人がエレピを弾いています。この人も指だけ達者に動くのとは対極にいるタイプで、柔らかい音色中和されていますが、ずいぶん込み入った和声です。

( ・3・) そこらじゅうで半音がぶつかってるな。

――でも美しい。

10. ビル・エヴァンスピアノ

Bill Evans (1929-80)

――昔、レコードを扱う仕事をしていたので確信をもって言えるのですが、日本いちばん人気のあるジャズミュージシャンビル・エヴァンスです。マイルス・デイヴィスよりもリスナー裾野は広いかもしれません。

( ・3・) 俺でも『ワルツフォー・デビー』を持ってるくらいだからな。でもどうして「とりあえずエヴァンスを聴け」みたいな風潮になってるんだ?

――まず、彼がピアニストだということ。もしベース奏者だったらここまでの人気は得られません。それからロマン派印象派に慣れた耳で聴いても違和感がないこと。ジャズに関心がなくてもエヴァンス聴く、というケースは大いにありうるでしょう。最後に、みもふたもない言い方ですが、彼が白人で、細身で、眼鏡をかけていたこと。

( ・3・) 知的で繊細に見えるのな。

――知的で繊細なジャンキーでした。もっとも、最後の要素はなかったことにされがちなのですが……。

( ・3・) ダウナーな面も併せもった音楽だと。

――はいエヴァンスチェット・ベイカーに深く共感してしまう人は、モルヒネ代用として聴いているのではないかと思います。「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」という有名な曲をとりあげたいのですが、エヴァンスの前に、まず歌の入ったものからフランク・シナトラヴァージョンです。

My Funny Valentine (Sinatra, 1953) http://youtu.be/z9lXbgD01e4

( ・3・) 金の力に満ちた声だな。His voice is full of money.

――マフィアを怒らせるようなことを言わないでください。折り目の正しい編曲で、ポップスとしては非の打ちどころがありません。ボブ・ディラン新譜シナトラカヴァー集らしいのですが、ディラン子供のころにラジオで流れていたのはこういう音楽です。当時のアメリカ人にとっては、ほとんど無意識に刷り込まれた声と言っていいでしょう。

My Funny Valentine (Baker, 1954) http://youtu.be/jvXywhJpOKs

( ・3・) 出た、いけすかないイケメン

――チェット・ベイカー。午前三時の音楽です。もう夜が明けることはないんじゃないかという気がしてくる。どんな曲か覚えたところで、エヴァンスを聴いてみましょう。

My Funny Valentine (Evans and Hall, 1962) http://youtu.be/ReOms_FY7EU

( ・3・) 速い。

――速い。そしてちょっと信じられないクオリティ演奏です。ジャズはいつでも誰でもこれくらいできて当然かというと、そんなことはないので安心してください

( ・3・) 別に心配はしていないが。やっぱり即興なのか?

――別のテイクではちがうことをしているので、ほとんど即興だと思います。決まっているのはコード進行だけ。

( ・3・) コード構成音をぱらぱら弾いてもこうはならんわな。自分の頭の中にあるモチーフを発展させるのと、相手の音を聴いて反応するのと――そういう意味ではチェスに似ている。

――この演奏は一対一ですからね。集中力は同じくらい必要かもしれません。しかも持ち時間ゼロという。互いに相手の出方を読んでいるうちに一種テレパシーが起こって、3分50秒あたりにはふたりの脳がつながっているような瞬間があります

( ・3・) このギターを弾いてるのは?

――ああ、忘れていました。ジム・ホール。偉大なギタリストです。悪魔に魂を売って人並み外れた演奏技術を手に入れるというブルース伝説がありますが、ジム・ホール場合は魂ではなく頭髪を犠牲しました。

( ・3・) また好き勝手な話をつくって……。

――いえ、本人がそう語っています。ジミー・ジューフリーバンドいたころ、どう演奏すればいいのか悩んで髪が薄くなったと。 [7] でも、髪なんていくらでもくれてやればいいんですよ。肉体は滅びます芸術永遠です。

( ・3・) ジミー・ジューフリーって、あのドラムのいない現代音楽みたいなジャズをやってた人か。そりゃ大変だったろうな。

おいとま

持参したCDを一通りかけて、そろそろ日が傾いてきた。彼はライナーノーツをめくりながら「はーん」「ふーん」などとつぶやいていたが、夕食の邪魔にならないうちにおいとましたほうがよさそうだ。

「もう帰るのか?」

はい。きょうはもうおしまいです」

「そうか。わざわざ悪かったな。よし、ちーちゃんお客様にご挨拶だ」

彼はそう言って猫を抱き上げたが、ちーちゃんは腕をまっすぐにつっぱって、できるだけ彼から離れたがっているようだった。

「きょう持ってきてくれたCDは、うちに置いていっていいからな」

「置いていっていい?」

だってほら、いちど聴いただけじゃよく分からんだろ。そのかわりと言ってはなんだが、シュニトケ弦楽四重奏曲集を貸してやろう。何番が優れていると思うか感想を聞かせてくれ」

それから

まだCDは返ってこない。「返してほしけりゃ取りに来い」と彼は笑うが、その目はハシビロコウのように鋭い。ただ来いというだけではなくて、また別のCDを持って来させる魂胆なのだわたしはどうすればいいのだろう? ただひとつの慰めは、彼の娘さん――父親との血のつながりが疑われるかわいらしさの娘さん――の耳に、エリック・ドルフィーオーネット・コールマンが届いているかもしれないということだ。サックスを始めた彼女の頭にたくさんのはてなが浮かばんことを。

Further listening

http://www.nicovideo.jp/mylist/34787975

[1] http://www.redbullmusicacademy.com/lectures/steve-reich-the-music-maker?template=RBMA_Lecture%2Ftranscript

[2] http://www.nytimes.com/2009/10/18/books/excerpt-thelonious-monk.html

[3] http://nprmusic.tumblr.com/post/80268731045/

[4] Frederick J. Spencer. Jazz and Death: Medical Profiles of Jazz Greats. University Press of Mississippi, 2002. p. 36. "A diet of honey is not recommended for anyone, and especially not for a diabetic, or prediabetic, patient."

[5] http://www.furious.com/perfect/ericdolphy2.html "'Eric Dolphy died from an overdose of honey,' arranger/band leader Gil Evans believed. 'Everybody thinks that he died from an overdose of dope but he was on a health kick. He got instant diabetes. He didn't know he had it.'"

[6] http://www.pointofdeparture.org/archives/PoD-17/PoD17WhatsNew.html

[7] http://downbeat.com/default.asp?sect=stories&subsect=story_detail&sid=1111

( ・3・) クラシック好きの上司ジャズを聴きたいと言いだして

はじめに

わたしの職場に、自他ともに認めるクラシックマニアがいる。近・現代の作曲家は一通り聴いているというが、中でもお気に入りスクリャービンで、携帯の着信音とアラームには「神秘和音」が設定してあるくらいだ。

その彼が、最近、急にジャズに興味を持つようになった。なんでも娘さんが部活でサックスを始めたのがきっかけらしい。彼の机には娘さんの小さいころの写真が立てかけてあるが、父親と血がつながっているとは思えないかわいらしさだ。パパだってジャズくらい分かるんだぞ、ということにしたいのかもしれない。

彼はわたしジャズ・ギターを弾くことを知っている。音楽に関して(だけ)は寛容なので、各種イヴェントの際には有給を消化しても嫌な顔ひとつしない。

ある昼休みの会話

ちょっと私用なんだが」と彼は言った。「こんどの休みは空いてるか? お前の好きなジャズのCDを10枚くらい持ってきてくれ。うちのオーディオで聴こう」

「CDならお貸ししますよ」とわたしは答えた。特に予定はないが、できれば休日はゆっくり寝ていたい。

「まあそう言うなよ」と彼はつづけた。「プレゼンの訓練だと思えばいい。ジャズの聴きどころを存分に語ってくれ。昼はうなぎを食わせてやるぞ。それとも――」

「それとも?」

「もう有給は当分いらないということか?」

事の次第

こうして、わたしは休日をつぶして彼の家を訪ねることになった。どのCDを持っていくかはなかなか決められなかったが、一日でジャズの百年の歴史を追いかけるのは無理だと割り切って、わたし自身がジャズを聴き始めた高校生のころ――もう15年も前の話だ――に感銘を受けたものを選ぶことにした。マイルス・デイヴィスカインド・オブ・ブルー』、ビル・エヴァンスワルツフォー・デビー』、ジョン・コルトレーンジャイアントステップス』はもうコレクション済みだということだったので、それら以外で。

駅に到着

手土産の菓子と20枚ほどのCDを抱えて最寄駅に着くと――結局10枚には絞り込めなかった――彼の車が目に留まった。

「きょうは夕方まで家に誰もいないからな。気兼ねしなくていい」

「そうでしたか」

「いるのは猫だけだ」

「猫? 以前お邪魔したときには見かけませんでしたが」

「公園で拾ってきたんだ」

「娘さんが?」

「いや俺が。子供のころに飼っていた猫とよく似ていたものだから」

ノラ猫を拾う人間と、ショスタコーヴィチ交響曲全集を部下に聴かせて感想を求める人間が、ひとりの男の中に同居している。この世界は分からないことだらけだ。

家に到着

ちーちゃんお客様にご挨拶だ」と彼は居間の扉を開けながら言った。ちーちゃんと呼ばれた白い猫は、こちらを一瞬だけ見るとソファのかげに隠れてしまった。そそくさと。

「ご機嫌ななめだな。まあいい。そっちに掛けてくれ。座ったままでディスクを交換できるから。いまコーヒーを淹れてくる」

ようやく本題へ

――これ以降は対話形式で進めていきます。

( ・3・) さっそく始めよう。

1. マイルス・デイヴィストランペットバンドリーダー

Miles Davis (1926-91)

――マイルスについてはご存じだと思いますが、次々に作風を変化させながらジャズを牽引していった、アメリカ文化的ヒーローです。デューク・エリントンマイルスについて「ジャズピカソだ」と述べました。

( ・3・) 『カインド・オブ・ブルー』の人だな。

――はい。その作品の後に注目したいんですが、60年代の半ばに、ウェイン・ショーターというサックス奏者がマイルスバンドに加わります。この時期の録音はひときわ優れた内容で、ジャズリスナープレイヤーからはヒマラヤ山脈のように見なされています。

Prince of Darkness (1967) http://youtu.be/-wckZlb-KYY

( ・3・) ヒマラヤ山脈か。空気が薄いというか、調性の感覚が希薄だな。テーマの部分だけでも不思議なところに臨時記号フラットがついている。

――主音を軸にして、ひとつフレーズごとに旋法を変えています。コードが「進行」するというよりは、コードが「変化」するといったほうが近いかもしれません。

( ・3・) ピアノコードを弾かないから、なおさら調性が見えにくいのかもしれないな。

――はい。余計な音をそぎ落とした、ストイックな演奏です。

( ・3・) 体脂肪率ゼロ。

――マイルスバンドには一流のプレイヤーでなければ居られませんから、各々が緊張の張りつめた演奏をしています。

Nefertiti (1967) http://youtu.be/JtQLolwNByw

――これはとても有名な曲。ウェイン・ショーターの作曲です。

( ・3・) テーマで12音をぜんぶ使ってるな。

――覚めそうで覚めない夢のような旋律です。このテーマがずっと反復される。

( ・3・) それってラヴェルボレロじゃないのか?

――ボレロではスネアドラムが単一のリズムを繰り返しますが、こちらはもっと自由奔放ですよ。ドラムが主役に躍り出ます。

( ・3・) おお、加速していく。

――テンポ自体は速くなるわけではありません。ドラムは元のテンポを体で保ったまま、「そこだけ時間の流れ方がちがう」ような叩き方をしています。

( ・3・) ドラムが暴れている間も管楽器は淡々としたものだな。

――はい。超然とした態度で、高度なことを難なくやってみせるのが、このクインテットの魅力ではないかと思います。

2. ジミー・ジューフリークラリネット

Jimmy Giuffre (1921-2008)

Emphasis (1961) http://youtu.be/QRyNUxMJ18s

( ・3・) また調性があるような無いような曲を持って来よって。

――はい。この曲は基本的にはブルースだと思うのですが、テーマでは12音が使われています。ジミー・ジューフリーというクラリネット奏者のバンドです。アメリカルーツ音楽と、クラシックとの両方が背景にあって、実際に演奏するのはジャズという一風変わった人です。

( ・3・) ドラムがいないと室内楽みたいだな。

――ドラム抜きの三人のアンサンブルというアイディアは、ドビュッシーの「フルートヴィオラとハープのためのソナタ」に由来するそうです。

( ・3・) いいのかそれで。ジャズといえば「スウィングしなけりゃ意味がない」んじゃなかったのか?

――スウィングしたくない人だっているんですよ。といっても、ベースフォービートで弾いていますが。

( ・3・) これが録音されたのは……ええと、1961年か。ジャズもずいぶん進んでいたんだな。

――いえ、この人たちが異常なだけで、当時の主流というわけではありません。さっぱり売れませんでした。表現自体は抑制・洗練されていて、いかにも前衛というわけではないのに。同じ年のライヴ録音も聴いてみましょうか。

Stretching Out (1961) http://youtu.be/2bZy3amAZkE

( ・3・) おい、ピアノの中に手を突っ込んでるぞ。(3分16秒にて)

――まあ、それくらいはするでしょう。

( ・3・) おい、トーン・クラスターが出てきたぞ。(4分16秒にて)

――それでも全体としては熱くならない、ひんやりした演奏です。

3. エリック・ドルフィーアルトサックスフルート、バス・クラリネット

Eric Dolphy (1928-64)

――さて、次はエリック・ドルフィー。作曲の才能だったり、バンドを統率する才能だったり、音楽の才能にもいろいろありますが、この人はひとりの即興プレイヤーとして群を抜いていました。同じコード進行を与えられても、ほかのプレイヤーとは出てくる音の幅がちがう。さらに楽器の持ち替えもできるという万能ぶり。順番に聴いていきましょう。まずアルトサックスから。

( ・3・) おお、うちの子もアルトサックスだ。

Miss Ann (1960) http://youtu.be/7adgnSKgZ7Q

( ・3・) なんだか迷子になりそうな曲だな。

――14小節で1コーラスだと思います。きちんとしたフォームはあるのですが、ドルフィーフォームに収まらないようなフレーズの区切り方でソロをとっています。1小節ずつ意識して数えながらソロを追ってみてください。ああ、いま一巡してコーラスの最初に戻ったな、とついていけたら、耳の良さを誇ってもいいと思いますよ。

Left Alone (1960) http://youtu.be/S1JIcn5W_9o

――次はフルート

( ・3・) ソロに入ると、コード進行に対して付かず離れず、絶妙なラインを狙っていくな。鳥の鳴き声というか、メシアンの「クロウタドリ」に似ている。

――鳥の歌に合わせて練習していたといいますから、まさにメシアンです。あるいはアッシジのフランチェスコか。ほかにもヴァレーズの「密度21.5」を演奏したり、イタリアフルートの名手であるガッゼローニの名前を自作曲のタイトルにしたり、意外なところで現代音楽とのつながりがあります。

参考 Le Merle Noir (Messiaen, 1952) https://youtu.be/IhEHsGrRfyY



It’s Magic (1960) http://youtu.be/QxKVa8kTYPI

――最後にバスクラ吹奏楽バスクラ担当だったけど、主旋律で活躍する場面がなくて泣いてばかりいた方々に朗報です。

( ・3・) バスクラってジャズではよく使われるのか?

――いえ、当時、長いソロを吹いた人はあまりいませんでした。

( ・3・) バスクラ自体がめずらしいという点を措いても、独特な音色だな。

――村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』にこんなくだりがあります。「死の床にあるダライ・ラマに向かって、エリック・ドルフィーがバス・クラリネットの音色の変化によって、自動車エンジン・オイルの選択の重要性を説いている……」

( ・3・) どういう意味?

――楽器の音が肉声のようにきこえる。でも何をしゃべっているのかはよく分からないという意味だと思います。あと、ミニマリズム作曲家スティーヴ・ライヒバスクラを効果的に使いますが……

( ・3・) 「18人の音楽家のための音楽」とか、「ニューヨークカウンターポイント」とか。

――はい。彼はドルフィーの演奏を聴いてバスクラに開眼したと語っています。 [1]

( ・3・) ジャズ現代音楽との相互作用だな。

4. オーネット・コールマンアルトサックス

Ornette Coleman (1930-)

――真打登場です。サックス奏者のオーネット・コールマン50年代の末に現れて、前衛ジャズの象徴的な存在になった人です。といっても、難しい音楽ではありません。子供が笑いだすような音楽です。ちょっと変化球で、70年代の録音から聴いてみましょう。

Theme from Captain Black (1978) http://youtu.be/0P39dklV76o

――ギターのリフで始まります。

( ・3・) あれ、ベースおかしなことやってるな。キーがずれていくぞ。

――はい、各パートが同時に異なるキーで演奏してもいいというアイディアです。イントロのギターが床に立っている状態だとすると、ベースは重力を無視して、ふらふらと壁や天井を歩きだす。

( ・3・) 複調を即興でやるのか?

――どのていど即興なのかはわかりません。コンサートに行ったことがあるのですが、譜面を立てて演奏していましたよ。でも、別にダリウス・ミヨーに作曲を教わったというわけではなくて、アイディアを得たきっかけは些細なことだったんじゃないでしょうか。たとえばサックスが移調楽器であることを知らなかったとか。「なんかずれてるな、でもまあいいか」みたいな。

( ・3・) それはいくらなんでも。もし本当だったら天才だな。

Peace (1959) http://youtu.be/bJULMOw69EI

――これは初期の歴史的名盤から。当時、レナード・バーンスタインオーネットを絶賛して、自分がいちばんでなければ気のすまないマイルス・デイヴィスがたいそう機嫌を損ねました。

( ・3・) さっきのに比べると普通にきこえるが……

――1分40秒あたりからサックスのソロが始まります。集中してください。

( ・3・) (4分12秒にて)ん? いま、俺の辞書には載っていないことが起きた気がするな。

――ここはいつ聴いても笑ってしまいます。そのタイミングで転調するのか、脈絡なさすぎだろうって。ソロをとりながら、いつでも自分の好きな調に転調していいというアイディアです。

( ・3・) 言うは易しだが、真似できそうにはないな。

――どの調に跳んだら気持ちよく響くか、という個人的な経験則はあるはずです。突飛な転調でも、「これでいいのだ」といわれれば、たしかにその通り、すばらしい歌ですと認めざるを得ません。

昼食のため小休止

――お昼はうなぎだと聞いておりましたが。

( ・3・) そのつもりだったんだが、いつの間にか値段が高騰していてな。「梅」のうなぎよりも、うまい天ぷら蕎麦のほうがいいじゃないか。

5. セシル・テイラーピアノ

Cecil Taylor (1929-)

――この人も、オーネット・コールマンと同じくらい重要なミュージシャンです。テキサス出身のオーネットに対して、セシル・テイラーニューヨーク出身。都市と芸術の世界の住人です。ピアノを弾くだけではなくて、舞踊や詩の朗読もします。これは1973年に来日したときの録音。

Cecil Taylor Solo (1973) http://youtu.be/X7evuMwqjQQ

( ・3・) バルトークシュトックハウゼンの楽譜を細かく切って、よくかき混ぜて、コンタスキーが弾きましたという感じだな。70年代にはずいぶん手ごわいジャズも出てきたんだ。

――いえ、テイラー50年代から活動しています。チャック・ベリーやリトル・リチャードと同じ世代。この人が異常なだけで、当時の主流ではありませんが。さっきも似たようなことを言いましたね。

( ・3・) このスタイルでよく続けてこられたな。

――継続は力なり。2013年には京都賞を受賞して、東京でもコンサートがありました。

( ・3・) どうだった?

――会場で野菜を売っていたので、買って切って食った。

( ・3・) ちょっと意味が分からんな。

――文字通りの意味なのですが、それについては別の機会にしましょう。演奏の話に戻ると、混沌と一定の秩序とがせめぎあって、台風のさなかに家を建てている大工のような趣があります。「壊す人」というよりは「組み立てる人」です。また、あるフレーズを弾いて、復唱するようにもういちど同じフレーズを弾く箇所が多いのも特徴です。

( ・3・) いちどしか起こらないことは偶然に過ぎないが、もういちど起こるなら、そこには何らかの構造が見えてくるということか。

参考 Klavierstücke (Stockhausen, rec. 1965) http://youtu.be/mmimSOOry7s



6. デレク・ベイリー(ギター)

Derek Bailey (1930-2005)

――きょう紹介するのは北米の人ばかりなのですが、デレク・ベイリーは唯一の例外で、イギリス人です。さっそく聴いてみましょう。これも日本に来たときの録音。

New Sights, Old Sounds (1978) http://youtu.be/nQEGQT5VPFE

( ・3・) とりつくしまがない……。

――そうですか? クラシック好きな方には思い当たる文脈があるはずですが。

( ・3・) 無調で点描的なところはヴェーベルン。でも対位法的に作曲されたものではないみたいだ。あと、初期の電子音楽ミルトン・バビットとか……。

――模範解答です。

( ・3・) でも即興でヴェーベルンをやるというのは正気の沙汰とは思えんな

――即興の12音技法ではありません。それは千年後の人類に任せましょう。ベイリーがやっているのは、調性的な旋律や和音を避けながら演奏することです。最初に聴いたマイルス・デイヴィスも緊張の張りつめた音楽でしたが、こちらも負けず劣らずです。文法に則った言葉を発してはいけないわけですから。

( ・3・) 「どてどてとてたてててたてた/たてとて/てれてれたとことこと/ららんぴぴぴぴ ぴ/とつてんととのぷ/ん/んんんん ん」

――ちょっと意味が分かりませんが。

( ・3・) 尾形亀之助の詩だ。お前も少しは本を読んだらどうだ。それはともかく、こういう人が観念的な作曲に向かわずに、即興の道に進んだのは不思議な気がするな。

――いちプレイヤーとして生涯を全うしたというのは重要で、ベイリーの音楽はベイリーの体から切り離せないと思います。彼の遺作は、病気で手が動かなくなってからのリハビリを記録したものでした。

( ・3・) プレイヤーとしての凄みが音楽の凄みに直結しているということか?

――はい。技術的にも高い水準のギタリストでした。無駄な動きのない、きれいなフォームで弾いています。気が向いたら動画を探してみてください。

( ・3・) まあ、ギター弾きのお前がそう言うなら上手いんだろうな。

――楽器の経験の有無で受け止め方は変わってくるかもしれません。ジャズ一般について言えることですが、鑑賞者としてではなく、その演奏に参加するような気持ちで聴くと楽しみも増すと思いますよ。

ベイリー即興演奏(動画) http://youtu.be/H5EMuO5P174

参考 Ensembles for Synthesizer (Babbitt, 1964) http://youtu.be/W5n1pZn4izI



7. セロニアス・モンクピアノ

Thelonious Monk (1917-82)

――セロニアス・モンクは、存在自体が貴重なピアニストです。生まれてきてくれてありがとう、とお母さんみたいなことを言いたくなる。

( ・3・) 初めて聴く者にとっては何のこっちゃの説明だな。

――とてもユニークスタイルで、代わりになる人が思いつかない、くらいの意味です。まあ聴いてみましょう。

Everything Happens to Me (Monk, 1959) http://youtu.be/YW4gTg3MrrQ

( ・3・) これは彼の代表曲

――いえ、そういうわけではありません。モンクの場合、どの演奏にも見逃しようのない「モンクの署名」が刻まれているようなものなので、わたしの好きな曲を選びました。有名なスタンダードです。最初に歌ったのは若いころのフランク・シナトラ

Everything Happens to Me (Sinatra, 1941) http://youtu.be/ZWw-b6peFAU

――1941年の録音ですが、信じがたい音質の良さ。さすがスター。さすが大資本。これがヒットして、多くのジャズミュージシャンレパートリーになりました。ちなみに曲名は「僕には悪いことばかり降りかかる」というニュアンスです。恋人に手紙を送ったらさよならの返事が返ってきた。しかも郵便料金はこちらもちで、みたいな。もうひとつだけ聴いてみましょう。

Everything Happens to Me (Baker, 1955) http://youtu.be/UI61fb4C9Sw

( ・3・) このいけすかないイケメンは?

――チェット・ベイカー50年代西海岸を代表するジャンキーです。シナトラに比べると、ショウビズっぽさがなくなって、一気に退廃の世界に引きずりこまれる。で、モンクの話に戻りますが――

( ・3・) ショウビズではないし、退廃でもない。

――もっと抽象的な次元で音楽を考えている人だと思います。

( ・3・) 素材はポピュラー・チューンなのに、ずいぶん鋭い和音が出てくるな。

――調性の枠内で本来なら聴こえないはずの音が聴こえてくると、デレク・ベイリーのような無重力の音楽とはまた別種の怖さがあります。幻聴の怖さとでもいうべきか。さいごにぽつんと置かれる減5度の音には、「聴いてはいけないものを聴いてしまった」という感じがよく出ています。

( ・3・) 減5度はジャズでは珍しくないんじゃないのか?

――はい。でも、その音をどう響かせるか、その音にどういう意味を持たせるかというのは全く別の問題です。そういう音の配置に関してモンクは天才的でした。

( ・3・) カキーン、コキーンと石に楔を打ちこむようなタッチで、ピアノの先生が卒倒しそうだが。

――意図的に選択されたスタイルだと思います。プライヴェートではショパンを弾いたりもしていたそうですよ。 [2]

( ・3・) 見かけによらないものだな。

――小さいころから必死に練習すれば、いつかはマウリツィオ・ポリーニの水準に達するかもしれません。しかし、ピアニストとしてモンクを超えるというのは、端的に不可能です。それがどういう事態を意味するのか想像できませんから。

( ・3・) 四角い三角形を想像できないように、か。

ちーちゃんトイレ掃除のため小休止


8. アンドリュー・ヒル(ピアノ

Andrew Hill (1931-2007)

――アンドリュー・ヒルは作曲・編曲に秀でたピアニストです。『ポイント・オブ・ディパーチャー』というアルバムが有名ですが、録音から半世紀を経たいまでも新鮮にきこえます。ペンギンブックスのジャズガイド(なぜか翻訳されない)では、初版からずっと王冠の印が与えられていました。

( ・3・) 英語圏では別格扱いということか。

――ヒルは若いころ、ヒンデミットの下で学んだという話もあるのですが……

( ・3・) ヒンデミットアメリカに亡命していたからな。

――誇張も混ざっているかもしれません。ヒルの経歴は、生年や出身地も事実とは異なる情報が流れていたので。

Refuge (1964) http://youtu.be/zquk2Tb-D6I

( ・3・) 何かひっかかるような弾き方のピアノだな。

――ヒルには吃音がありました。 [3] 言いたいことの手前でつっかえて、解決を先延ばしにするような演奏は、しばしばそのことに結びつけられます。

( ・3・) 否定神学ジャズだな。

――ヒテーシンガク?

( ・3・) ほら、メルヴィルの『モービー・ディック』で、神秘的な白鯨の本質については語れないから、迂回してクジラにまつわる雑学的な記述が延々とつづくだろ?

――どうでしょうアナロジーとしては分からなくもないですが。

( ・3・) 形而下の世界に戻るか。あれ、このサックス奏者、さっきも出てきたんじゃないか? (2分58秒にて)

――エリック・ドルフィー共演者共演者を辿っていくと、きょう紹介する人たちはみんなつながっています。

( ・3・) デレク・ベイリーも?

――はい。セシル・テイラーと共演していますし、この次に紹介する人ともアルバムを出しています。

( ・3・) なんだかドルフィーに耳を持っていかれてしまうな。

――圧倒的です。ねずみ花火のような軌道と瞬発力。数か月後に死ぬ人間の演奏とは思えません。

( ・3・) すぐ死んでしまうん?

――はい。ドラッグでもアルコールでもなく、ハチミツオーバードーズで。正式な診断ではありませんが、糖尿病だったといいます。 [4][5]

( ・3・) ハチミツって、くまのプーさんみたいなやつだな。――ん? いまミスしなかったか? (6分36秒にて)

――ドルフィーアンサンブルの入るところを間違えています。

( ・3・) やり直しになるんじゃないの?

――ジャズは減点方式ではなく加点方式ですから。ミスがあっても、総合的にはこのテイクが最良という判断だと思います。

続く

http://anond.hatelabo.jp/20150214224440

2015-01-29

わたくしなりのジャズ10選

まずはこれだ!

①Big John Patton - Latona (1965)

https://www.youtube.com/watch?v=X7S1sSFH9BI

わたくしはサックストランペットの音が苦手だったので、これを早いうちに知れたらよかった。

編成はオルガンヴィブラフォンギターに、ベースドラムです。


次はスペースエイジの徒花のような。ジャズじゃないよって話もきっとあるけど良いです。

Dick Hyman / Mary Mayo - Space Reflex (Blues In 5/4) (1962)

https://www.youtube.com/watch?v=i2-uL6Z6sjk


○Orchester Roland Kovac - Milky way (1968)

https://www.youtube.com/watch?v=7NwY6eWRtdc


ジャズはなんでも飲み込むしどこにでも這い入るので、それがジャズと呼ばれてても呼ばれてなくても、あなたの好きなジャズは必ずあるのです、と断言したいです。


次はやわらかいやつで、歌も入っていて良いです。

③Duke Pearson - Sandalia Dela (1969)

https://www.youtube.com/watch?v=8nyZram3_nw


次は激しく!

④Joachim Kuhn Band - O.D. (1978)

https://www.youtube.com/watch?v=97-1Ljv3KYY


楽しく!

⑤Manfredo Fest - Jungle Kitten (1979)

https://www.youtube.com/watch?v=T132--erIgo


○Dusko Goykovich / Lala Kovacev - Quo Vadis Samba (1979)

https://www.youtube.com/watch?v=x2cyiXjtrD8


○Olli Ahvenlahti - Grandma's Rocking Chair (1976)

https://www.youtube.com/watch?v=HDAApfV9W_w


じゃあ「怪しく!」だ。コメントよすよ。

⑥Jacques Thollot - Cinq Hops (1978)

https://www.youtube.com/watch?v=d_cc0sTc-D8


Joe Haider - Last Time (1968)

https://www.youtube.com/watch?v=9VHeuqNkf6E


⑦Annette Peacock - Pony (1972)

https://www.youtube.com/watch?v=U4Uet2aVxsE


Don Ellis - Whiplash (1973)

https://www.youtube.com/watch?v=pCykgzrwIw0


⑧Al Di Meola - Sequencer (1984)

https://www.youtube.com/watch?v=srcQdDavBJA


Jimmy McGriff - Deb Sombo (1970)

https://www.youtube.com/watch?v=cmsdpu5r3TM


⑨Quarteto Novo - O Ovo (1967)

https://www.youtube.com/watch?v=hx2cuJ3vlgI


○Ze Roberto Bertrami and Projecto III - Arabian Things (1969)

https://www.youtube.com/watch?v=XaNygHpVR7I


Dieter Reith - Knock Out (1976)

https://www.youtube.com/watch?v=BZidig6cXKg



やっぱり偏っています。ここに好きなものが見つからなくても何でもないです。


追記:白丸のを足しました。

2015-01-26

職場恋愛の春

会社の向かいの席の先輩を

好きになってしまった。

同じ部署の人とか、失敗したら絶望的に

きまずくなるの解ってたのにね。

美人なのに表情くずれるくらい

ケラケラと明るく笑う所も、

ジャズとか聴いてそうなのに、

ビジュアル系が好きな所も、

誰にでもちゃんと優しくて、

仕事も手を抜かない所も、

めちゃくちゃお酒が強くて、

ビールとお肉に目が無い所も、

気付いた時は完璧に俺は貴方トリコでした。


先週の金曜日のさし飲みの時、

クラフトビールのグラスを3杯開けた後に

少しイントネーション関西弁っぽくなったから、

「○○さん、関西の方でしたっけ?」

って聞いてみたら

「あ、方言出てた?うち仲良くなると、

なんか出ちゃうんよね。

やっぱこっちの方が落ち着くわ。」

なんてね。もうね。無理すよ。

そりゃ、行って良いってサインだと思うでしょ?

お店出て、勇気出して

手を握ってみたら特に嫌がらないの。

俺は勝ったと思ったわけですよ。

で、

「もうちょっと飲み直しませんか?」

って誘ったら、

今日ちょっと体調良く無いからって断られた。

少しがっかりしたけど、

でも、またスグに飲もうって言ってくれた。

良かった。嫌われてないや。

あとでLINE送ったら返事が帰って来た。

今度はパクチーバルに行こうってさ。

明日の先輩の顔を見れるのが楽しみで、

うまく寝れなくて、こんな時間増田を書いてる。

遠足前の小学生か!俺は。

一足早い春はもうそこまでやって来てる。

2015-01-25

古いジャズ,新しいジャズってなんだ(詳しい人がいたら教えてほしい)

http://anond.hatelabo.jp/20150124220256

ジャズ20世紀初期ごろからはじまったらしいね

1910年台にニューオーリンズで名付けられた

1930年台はスウィングジャズでみんな踊りまくってたっぽい

ビッグバンド形式でのジャズはこの時代フォーマットができあがったっぽい

1940年からバードとかディズとかマイルスとか、一流のセンスを持つ若者バンドから抜けだして裏で切磋琢磨する場所ができた

ここでジャズって言葉が変化して「一流のセンスを持つ若者が集まって切磋琢磨する遊び場」って意味でも呼ばれるようになったと私は理解してる

(違ってたら教えてほしい)

それから1980年台くらいまでいろいろジャズ派閥ができたりしたけど、

「おれのほうがもっとうまくできる」っていう奴らがジャズって遊び場で自分なりの才能を持ちよって、

競い合いながら「おれの考えた最強のジャズ」のフォーマットをグイグイ生成していったって感じ

1910年から1980年台までいろいろ作られたフォーマットが、伝統芸能的に現代まで受け継がれてってしまってるよね

元増田セレクトは昔の時代フォーマットのものばかりだから、古臭いのは構造上どうやっても避けられない問題だと思う…

1991年マイルスのDOOBOPが出たよね

マイルスも分かってたよね

時代が進んで、一流のセンスを持つ若者にとって、ヒップホップって場所が一番ジャズしてる場所だったってこと

元増田は、2015年現在進行形の「ジャズ」はどこにあると思ってるのかな?

私はインターネットにあるんじゃないかなって思ってるんだけど…

http://anond.hatelabo.jp/20150124220821

フリーだの前衛だのノイズだので調べると「ジャズ」でもスタバでは死んでもかかってないようなやつもそこそこある。ストレス解消にもおすすめ

こういうの。

https://www.youtube.com/watch?v=CywghE1pk5Y

http://anond.hatelabo.jp/20150125004225

http://anond.hatelabo.jp/20150124234053意見同意かな。

元増田の挙げた曲は90年代からせいぜい00年代の古臭いジャズだなーと思った。

そもそも解説が臭い。それを読んで誰が興味を持つんだ。

今のカッコイジャズを広めるなら、なんだかんだで毎年のグラミーノミネートされてるやつをフックにするのがいいと思っている。

今年ならグレッチェンパーラトのやつなんかいいよね。

http://anond.hatelabo.jp/20150124234053

元増田です。

ご指摘には心から同意します。

他方で、ジャズジャズという枠組みで演奏する以上、ジャズという「呪縛からは逃れられないんですよね。もっとも、これはあらゆるジャンルにも言えることで、例えばJ-POPJ-POPの枠踏みで演奏される以上、J-POPという「呪縛からは逃れられない訳で。どれほど新しく見えても、結局のところ中身の文法自体は変化していません。だからこそ現代音楽が生まれた訳ですが、これも結局のところ文脈依存であることは否めないところですし、大衆からも受け入れられません。

そういう意味では、私はジャズに古いも新しいもないと思っています。新しいジャズ、ひいては新しい音楽、なんていうフレーズは非常に胡散臭いものと考えています

ただ、あえて言うとしたら、チャーリー・パーカー以前と以後は存在しうるのではないかと考えていますし、また、チャーリー・パーカー以上に革新的なことを行った人物はいないとも考えています

2015-01-24

http://anond.hatelabo.jp/20150124220256

増田が挙げてるようなフュージョンビッグバンドこそが“古臭いジャズ”なんだと思う。

フュージョンビッグバンドのせいでジャズを古臭いと思ってしまっている人らに対して、

時代を問わず素晴らしい3ピーススタンダードジャズか、本当に革新的フュージョンビッグバンドを挙げるべきだろう。

ジャズは古臭いと思ってるあなたに捧げる10

今この増田を読んでるあなたは、「ジャズ」、と聞いたとき、何を思い浮かべますか。

十中八九、そこらへんのファーストフード店喫茶店で流れている、”おしゃれ”な音楽を思い浮かべるでしょう。あるいは、スウィングガールズ効果で、吹奏楽界隈でも一時期流行ったSing Sing Singのような曲も、頭の中で流れるかもしれません。

これは、まさにそうした人々のための増田です。広いジャズ世界の中でも極々一部の曲を聴いてジャズを知った気になる、あるいはジャズはどこか古いものだと思ってしまう、これほどもったいないことはありません。

前置きが長くなりますが、以下から本題です。動画サイトへのリンクも張っておいたので、気に入った方は今後のジャズ界の振興のためにもAmazonなりiTunesなりなんなりで高音質のものを買ってください。

"Not Yet" by Michle Camilo

http://youtu.be/tZOCdrwGch4

最高。何も考えずに聴きに行くべし。

これだけだとあまりにも不親切だからもう少し何か書くと、Anthony Jacksonのベースライン聴くだけでも絶頂できます

"Barcelona" by Metropole Orkest

http://youtu.be/-GcTk91J0iE

二発目は稀代のコンポーザー/アレンジャーVince Mendozaを擁するメトロポールによるバルセロナ。聴けば分かるように、オーケストラビッグバンドコラボレーションが、一昔前の映画音楽でよく見られたような、ストリングスストリングス独立していて、前でなんかジャズの奴らがごちゃごちゃ遊んでいるというものではなく、不可分のものとして一つの芸術作品を作り上げていますはい意味が分からないという人は、ぜひ一度だまされたと思って聴きに行っていましょう。

"Cerulean Skies" by Maria Schneider

http://youtu.be/HS-x4-_tCAE

演奏慶應義塾大学Light Music Society通称慶応ライト。恐らくこれを聞いた人は、これがジャズなの!?と驚くでしょう。ジャズです。心が洗われるような、美しいその音楽性には涙を流すほかありません――大自然の息吹を感じるのです。Maria Schneiderはこの他にも多くの曲を出していますが、初期のアルバムもっとジャズ色が強めな一方、最近アルバムクラシックにかなり傾倒しているので、この曲が収録されているSky Blue前後作風が好きです。

ちなみに、この演奏は生で聴いていました。

"As Seen from Above" by Jan Garbarek

http://youtu.be/Fzeb7paMftM

これもまたきれいな曲です。前曲よりもフュージョン寄りですが、ドンキーコング2のとげとげタル迷路と、どことなく似た雰囲気を持っていると思いませんか?独特なソプラノサックス音色と共に歌い上げられるメロディミニマル雰囲気を生み出しているバック。気分は海の中に漂っているようです。少なくとも私は広大な海原に一人放り出されて息を止めたまま海流に流されるままの自分夢想しながら聴いています

"Expansion" by The Orchestra

http://www.nicozon.net/watch/sm9452541

北欧ビッグバンドでは有名どころの一つです。ディスコ音楽ジャズの融合という、見た目だけだとゲテモノ間違いなしですが、いざ聴いてみると違和感はありません。まあ、もともとジャズもみんなで楽しく歌って演奏して踊るものだったのですから親和性は元々高かったのでしょう。映像からも分かるように、踊っています。というか、思いっきディスコです。ちなみに、このバージョンショート版で、アルバムにはロング版が収録されており、ロング版のテナーサックスソロは必聴です。

"Tortoise and the Hare" by Yellow Jackets

http://youtu.be/hMGz0-fJ-Xw

Yellow Jacketsのナンバーはどれもかっこいいのですが、今回はこの「ウサギとカメ」をチョイスしました。ピアノの美しいイントロドラムによって加速するドライブ感、そしてサックスのどこかゆったりとしたフレーズと絡み合うせわしないピアノ――ここに、ウサギとカメの名称の由来が来ているのだと私は勝手に思い込んでいます。これはかっこいい曲だ。

"Return of the Kung Fu World Champion" by上原ひろみ

http://youtu.be/rk7_dXIKt0Y

みなさんもグラミー賞を取ったということでご存知の上原ひろみ。ですが、この人の曲を実際に聴いたことがある人ってどれくらいいますか?ということで、数ある曲の中から、変わり種に入りそうな、シンセサイザーがかわいらしくピコピコ鳴っていて、どことなく8ビット香りも漂ってくる、ただでさえ聴いていると体力が奪われるのに、ライブから余計に疲れる、カロリーの高い曲をチョイスしました。目まぐるしく変化していく曲調にあなたは目を回すこと間違いなし。

"First Circle" by Pat Metheny

http://youtu.be/LEmL6tIaYWU

ジョジョエンディングテーマ演奏していることでネット界でにわかに脚光を浴びているPat Methenyによるナンバー。この人も良い曲をたくさん持っているのですが、今回はメセニーらしさがぞんぶんに出ている曲を選びました。よくわからない拍子、男声ヴォーカル、爽やかな雰囲気はい、メセニーですね。ただ、こだわりのエレキギターの音を聴けないのが残念です。

本当はメセニーの世界を余すところなく堪能できるOrchestrionを紹介しようと思ったのですが、長すぎるのでやめました。

"Phobos" by Darcy James Argue's Secret Society

http://youtu.be/bEd6fIq-WnM

名前からして古臭さを一切感じさせないですね。フォボスとか、宇宙にまで行っちゃいましたよ。そしてこのバンド名も厨二病溢れる名称。曲も退廃的な雰囲気を漂わせちゃって、なんか厨二病っぽいです。テナーサックスソロ厨二病っぽいです。

"Toys" by Vertu

http://youtu.be/9NcEo9I_flU

曲調がしょっちゅう変わる曲その2。とにかくにぎやかで豪華で壮大で荘厳でいかめしくていかつくて以下省略。とにかく聴いていて飽きません。疲れません。おなか一杯になりにくいです。上原ひろみのものと比べたら、耳にやさしいです。あえて無駄にでかい虚栄心を張ったスケールの曲なので、ラストにふさわしいでしょう。

いかがでしたでしょうか。

ジャズの新たな世界は開けましたか

2014-12-23

自分のことかと思った

http://anond.hatelabo.jp/20141222231639

洋楽ビョークレディオヘッドジャズの流れが自分のものだった。

ただそこから演奏もするようになって、ノイズ系にはあまり深く踏み込めてない。興味はあって機材がほしい。

僕はこの無間地獄から一生抜けだせそうにありません。

http://anond.hatelabo.jp/20141222231639

彼氏がまさにこういうタイプだ。もう10年近い付き合いになるけど、普通に流行ものも買ってくるし突然ノイズテクノみたいなの聞いてたり古いジャズひっくり返したりしてる

うんちくんって超面倒くさいけど、うんちくん自身は、自分の耳に気持ちの良い音楽を探してるだけという側面もあるみたいよ

別にカッコつけてるとか戦ってるとか、そういうことじゃないんじゃないかなぁ

戦ってるように見えたとしたら、増田がうんちくんのうんちくに辟易として身構えてたからじゃないかとか

友人だったら、おまえ音楽の知識すげえけど蘊蓄超めんどくせえな、ぐらい言ってあげたらよかったのに。

2014-12-22

J-POPなんてダサくて聞いてらんねー」

高校大学と一緒だった友達がいてさ。

彼は音楽が大変に好きで小遣いの殆どCDに費やしてしまい、昼休みはいつもナイススティックを食べていた。

「お前んち、CD何枚持ってんの?」とか「あー今月CD買いすぎて金ねーわー」とか休み時間の度にアピールする彼を何故か嫌いになれなくて、

たまに席が近くなるとちょっと話す、くらいの関係がだらだらと続いていた。

彼のことを「音楽博士」「家がツタヤ」と呼ぶと今お気に入りCD(たいていライブ版だ)を3枚貸してくれたので、

部屋で聞くCDにも困らなかった。後で感想を聞かれるのが困ったけど。


いつもの様に彼からCDを借りようとしたある日、

3枚のCDの中に日本語じゃないのが混じっているのに気がついた。赤ん坊が海中を悠然と泳ぐジャケットニルヴァーナだ。

「もうJ-POPなんてダサくて聞いてらんねー。どいつもこいつもおんなじ歌詞、おんなじコード進行ばっかりだ。これからはコレ(洋楽)だわ」

彼は誇らしげに言った。後日感想を求められたがあまり真面目に聞いてなかったので、「カッコイイんじゃない」としか言えなかった。

彼は喜んだ。


月日が経つにつれ、彼の貸してくれるCDは徐々に、難解で、TVで見かけないものが増えていった。

「今はリンキン・パーク流行ってるみたいだけど、あれがイイなんて言える一般人センスが逆にわからんね」

また彼は誇らしげに言った。その時彼が貸してくれたのは、確かビョークだったと思う。「難しくて、正直よくわからんかった」という僕の感想を聞いて、逆に彼は喜んだ。「だよな。お前にはまだはえーわ」


大学に入り少し疎遠になってからも、たまに彼はCDを貸してくれた。決まって3枚ずつだった。

ビョークレディオ・ヘッドに変わり、そこからジャコ・パストリアス肖像」に変わった。ジャズに踏み込んだ後はジョン・コルトレーンの「ラブ・シュプリーム」に移り、そこから先のことはよく覚えていないが、二人で飲んだ夜に「コルトレーンなんて誰でも聞ける」と繰り返していたのは覚えている。

「なあ、これが今一番アツいやつ」彼は黄色iPod miniに繋がったイヤホン差し出した。ノイズけが流れている。ザザー。ジジジー。

ちょっとついていけない」「だよな。お前にはまだはえーわ」

彼はイヤホンを耳に戻し、ボリュームを上げた。ここからでもわかるくらいの音漏れ。彼は少し早足で、下宿に帰っていった。


しかすると彼は、音楽聴くことで(音楽聴くポーズをすることで)何かと戦っていたのかもしれない。そう思った。


社会人になり、彼とはもう会わなくなった。

今頃彼は、何を聞いているんだろう。いっそ演歌にハマったりしないだろうか。登録してからひとつ投稿がない彼のFacebookアカウントメッセージを送る。

「久しぶり。今どんなの聴いてるの」


エクセルリストが送られてきた。

添えられたメッセージは「オススメ度4以上のやつから聴け」だった。

2014-11-13

jazz勉強

ここ5年ほどJAZZを勉強してきた。

最近jazz勉強の難しさを痛感している。

はじめの3年は先生に師事した。個人ではなく企業音楽教室のやつ。

まずこれがいけなかった。レッスンは30分だったんだが、そんな短い時間では何もならない。

初回は先生が「レに向かってド ♯ド レってやるとジャズっぽいです」とかリズムは裏拍を意識して~とか始まって

「じゃあやってみましょう!」とか言われて「は?」となる。

何をやるかって当然アドリブで何故かJAZZ界ではアドリブをするのに「アドリブをとる」と言う。何故取る(執る?)なのかは今でも分からない。

今思えばいきなり「じゃあやってみましょう!」も仕方ないことだと思えるが当時はアドリブが出来なくて出来るようになりたくて教室に通ってるのにいきなりヤレと言われても・・・と思った。

これは音楽関係者が言うアドリブ一般人が思うアドリブ認識の差によるから起こる。

一般人が「あれアドリブでやってんだぜ~!」という時のアドリブって何か天から音楽が降ってきてそれを楽器で奏でてる。まさに湧き出る泉のごとく・・・みたいな?

音楽関係者アドリブって言葉意味は「予め用意されたピース」を継ぎはぎする作業で一部予め決めてない部分があるからアドリブという。

この予め決めていない部分が多ければ多いほどアドリブ初心者と言う。

そう。音楽でいうアドリブってやる前から殆ど決まってる。その決める事項、決めない事項が人それぞれ違いそれが個人差、特徴となる。

これが初心者はまず理解できない事が多い。「決めるって何を?どう?どうやって?」ってなる。

それを理解するにはコードスケールジャズ理論ジャズの特徴的なフレーズが分からないといけない。

でもそんなの短いレッスン時間じゃとても教えてられないしデスクワークなんで嫌いな人はすぐ嫌になっちゃう。「俺は楽器で弾けるようになりたいんだ!」「理論はいからジャズを弾けるようにしろ!」こうなる。てか俺がそうだった。

少しアドリブできるっぽい中級者だって「予め決められている」という事を理解しない人たちも多い。

「こんなカッコいいJAZZが弾けるようになりたいな」からつのにか「俺のJAZZができればいいんだ」に変わってる。それは多分JAZZじゃない。カッコよくもない。

どうしてカッコよく聴こえるのか?なんでJAZZっぽいのか分って演奏したいならコードスケール理論はやらないと分からない。これは初心者のうちからやるべきだと思う。

もー勉強したくねーってならひたすら名演奏コピーしかない。で、演奏の前に「~~風にしか弾けません!」「このCDと同じでお願いします!」これしかないしアドリブではないがそれもアリなんだと思う。

とにかく演奏の前になるべく多くフレーズ理論を準備して臨めるかどこまで予め演奏を決められるか、その上で天から音が降ってくるのを待つ。奇跡が起きると本当に嬉しい。やってて良かったと思う。

あとリズムがクソな奴はほんと練習足りてないから自覚しろ!!!

2014-11-05

J-POPアーティストライブなんかの何がいいの?

J-POPってアーティストが誰だかちんぷんかんぷんな状態で聴いてもわけがからない音楽だと思うんだよね。

ジャズライブでも聴きに行った方がよっぽど良い体験ができると思う。

聴くためにアーティスト自身を知ることが必要音楽というか。

CDが売れるのは分かる。なんとなく分かりやすいし。

でもライブだとJ-POPBGMに食事というよりは、音楽のものを聴きに行くわけじゃん。

そこでアーティストの事を良く分からいであろう人たちは、J-POPの何を聴きに来ているんだ?

もしかして、ある程度アーティストの細かい情報を知っている人だけが来ているのかな?

http://anond.hatelabo.jp/20141105065656

ジャズライブなんかの何がいいの?

ジャズって音楽理論やらがちんぷんかんぷんな状態で聴いてもわけがからない音楽だと思うんだよね。

J-POPアーティストライブでも聴きに行った方がよっぽど良い体験ができると思う。

聴くための訓練が必要音楽というか。

CDが売れるのは分かる。なんとなくオシャレなBGMとしては有用だし。

でもライブだとジャズBGMに食事というよりは、音楽のものを聴きに行くわけじゃん。

そこで何が起きているかからいであろう人たちは、ジャズの何を聴きに来ているんだ?

もしかして、ある程度聴き方を知っている人だけが来ているのかな?

2014-10-09

フリースタイルラップと形状記憶メンタル

フリースタイルラップリズムに合わせて歌詞即興で作るのだが、リズムに乗ると不思議言葉が浮かんでくるそうだ。競技かるたリズムをとってカルタ記憶するらしい。リズムにどんな意味があるのか?

その謎をとくカギは「グルーヴ」にある。ブラックミュージック理解日本人がまず躓くのが「グルーヴ」という概念。それはただ機械的なリズムに乗ることではなく、体感とのシンクロ要求される。

この理解困難な概念に対するわかりやすい喩えが心拍という名の音楽だ。ケージ4分33秒音楽になるなら心臓だって音楽になる。君は心臓や呼吸に音楽を感じるかい環境音楽的ワークってやつだ。

その先駆けは現代音楽家Pauline Oliverosだ。いまや小学校音楽教科書にもその種のワークが載っている。ゆとり世代以降の人間なら記憶にある人も多いはず。

心臓リズムを感じるには目を閉じて心を静かにする必要がある。一種の瞑想だ。心拍が分かったら今度はそれに合わせて身体を揺らしてみよう。揺らすと心拍が変わる?そこが難しい所で、

心拍に干渉しないまま身体を揺らしていく。この感じがまさにグルーヴなわけ。がむしゃらに即興演奏すると必ず体感に干渉してしま体感迷子になる。ムードをぶち壊したらセックス台無しである

まり機械的にリズムに乗るだけでなく、体感シンクロすることで自然リズムが生まれてくるわけである。身体がそんなふうにできている。それがグルーヴジャズにおけるスイングも同様だ。

グルーヴあるリズムリズムマシンの作る厳密に一定リズムからは若干のズレがある。そこに生演奏の味わい深さがあると言われるが、正確に言えばズレかたに体感が反映されているから味わい深く感じる。

リズム一定さやズレ自体には別段深い意味はない。あくまでもリズム一定性やズレはグルーヴ副産物にすぎない。「世界リズムに満ちている」とは某音楽家言葉だが、正確にはそれはグルーヴなのである

音楽以外にも思考や会話にもグルーヴというものがある。相手のテンポを崩すようにワンテンポ遅れた返事や食い気味の返事を返すとかみ合わない感じがするだろう。

からテンポについて行けない人間どうしで深く仲良くなるのは極めて難しい。世の中の「親友」の多くはテンポがかみ合わないのに誤魔化し誤魔化し仲良くしているように見える。

トークのテンポというのはつまるところ、その人なりの言語体感とのシンクロの仕方である。単なる会話の速度ではない。早口でも会話のテンポが遅い人はいくらでもいる。

また、熟練すれば無理に話題テンポを速くできるが、結局は自分テンポで話すのが一番快適なことには変わりないわけである。けだし会話のテンポほとんど先天的である

.

一方、グルーヴには安定性という要素もある。ジャズでは「この人の演奏には安定したグルーヴがある」「安定したグルーヴにはノリやすい」「今回のセッショングルーヴが安定しなかった」

などと言われる。グルーヴが安定しない現象は先ほどの心音迷子になる現象と同じである体感を見失って、形の上でしかリズムに乗れてない状態。それはどうしても演奏に現れ、バラバラでちぐはぐな印象を与えてしまう。

安定性はその人のメンタルを表している。気持ちが不安定ならグルーヴ不安定になる。熟練演奏者なら多少メンタル不安定でも「いつもの体感自体は出せる。

だけど、別の「普段にはない体感」が邪魔をしてきて、演奏に乱れが生じるわけだ。そんななか繊細な感覚をつかまえてグルーヴ表現するのは並大抵のことではない。

演奏家という仕事一般人が考えるよりずっと鋼鉄メンタルを要するのだ。

.

強いメンタルになりたいと誰もが憧れるが、その秘密は形状記憶性にある。本当に強いメンタルとは、ガッチガチオリハルコンメンタルなどではなく、柔軟に形を変えてはすぐ元に戻る形状記憶性にある。

上善如水」を知ってるか?上善は水のごとしと訓読する。最高の善を説いた老子言葉だが、これは最強の心を説いた言葉でもある。

宮本武蔵五輪書で「水を本として、心を水になす也」と言った。水はどんな器にも合わせて形を変える。そんな心を養えという意味だ。

柔軟に適応しすぐ平常心に戻る。その様子はグルーヴから説明することもできる。ハメ撮りの帝王こと村西とおるは、黒木香にほら貝を吹かせた。脇毛で有名なAV女優といえば若い人にも分かるだろう。

村西氏はセックス快楽演奏の乱れで表現したわけだ。どんな演奏にもグルーヴはある。人間体感リズムに同期することでリズミカル運動ができるのである

ところが快楽があるとうまく体感と同期できなくなり、演奏が乱れてしまう。そこをなんとかうまく演奏しようとするところにエロティシズムがある。

現代的に言えば「ローターつけてお散歩」だ。pixivの「平然」タグもこれに関係する。くやビク(悔しいけどビクンビクン)はもう古い。大和撫子は奥ゆかしく「平然プレイ」だ。

そしてこの快楽ゲージがあがっても平静を装う平然プレイにこそ、形状記憶メンタル秘密がある。それはフリースタイルラップにしても同じことだ。

なぜラッパーはあのような無駄攻撃的ともとれるラップバトルをするか?それは戦いのなかでも終止安定したリリックを紡ぎ、安定したライム(韻)を生み出し、

安定したフロウ(歌い方)を展開することを競っているわけである。そんな「動中に静あり」の文化理解することなくただただ攻撃的なディスり合戦をやったところで何の意味もないのである

2014-07-26

個人タクシー対応から見る景気動向

週に数回程度深夜にタクシーを使う。都内の小さな繁華街から2000円弱の距離にある自宅まで午前2時くらいに乗る。最近気付いたのだが個人タクシーの運転手の対応が数年前と比べてかなり悪くなっている。一昨日夜に乗った運転手は静かなジャズをかけていた。後席のシートは非常によい座り心地だった。行き先を告げて5秒後に大きな声ではあっとため息をついた。耳にピアスをした50代の運転手は運転中に何度も舌打ちをする。チキンな俺は運転手が機嫌が悪いのを悟ったが何も言わず車窓から外を眺めていた。降りがけに適当なおつりの渡し方をするものから10円玉が俺の手からこぼれ落ちた。暗い車内で探したが見つからない。運転者はやるよと偉そうに10円玉を投げてよこした。もちろんありがとうございましたとは言わない。ここまでひどいのは初めてだが個人タクシーは総じて応対が悪くなった。景気がよくなったんだと俺は気付いた。領収書を見たら山口タクシーとあった。

iPodで大量の自分好きな音楽を聴き続けた結果

通勤中にiPod Classicを使っている。ほとんどの時に全体をシャッフルして聴いている。

初代iPod Classicが発売されてちょっとしてから買った。その160GBの容量を利用して今まで自分が聴いてきた音楽をできる限りiPodに入れていつでも聴けるようにしたいと思って、かなり充実したなと思えたのが5年くらい前。160GBでもきつくなったため、その後はあまり増えていない。いくつかの例外を除いてアルバム単位iTunesに入れている。

結婚以来はあまり積極的音楽を聴いていたわけではなくiTunesに入っているのは90年代までのものほとんど。音楽聴くのはそもそも「かっこつけたい」という考えから入りすぐ手段目的化したという経緯なので「今まで自分が聴いてきた音楽」というのが洋楽ジャズクラシックに偏っていて邦楽ほとんど入っていない。シャッフルして聴くとき邦楽が混ざるのはなんとなく聴きにくく感じるので邦楽はすべて「シャッフル時にスキップする」にチェックを入れている。

iPod Classicを買う前は通勤中に音楽は聴いていなかった。それがこういうミュージックライブラリシャッフルして聴くようになって5年くらいということになる。最近1年くらいで気付いたのが下のようなこと。

洋楽を聴いて「懐かしい」と思うことがほとんどなくなった。

iTunesに入っている曲にしても5年間一度も聴いていない曲もあるはずなのに何を聴いても「懐かしい」と思うことがほとんどなくなった。言い方を変えると「この曲を聴くのは久しぶりだ」と認識することはあるのだけれど郷愁のようなものを感じることがなくなったという感じ。

しかiTunesに入っている曲ではなくてもどこで洋楽を聴いても懐かしいと思うことがなくなってしまった。ジャズクラシックについても洋楽と似た感じ。

iTunesに入っている邦楽を聴いて「懐かしい」と思うことがほとんどなくなった。

邦楽については洋楽と違って手元にある曲だけだが「懐かしい」と思うことがほとんどなくなった。

嫌いだった邦楽を聴いて「懐かしい」と思うことが多くなった。

上に書いた二つの結果、「懐かしい」と思う曲は邦楽自分が好きだと思っていなかったけど昔流行った曲ばかりということになった。つまりしろ嫌いだった曲にばかり郷愁を誘われるようなってしまった。例えば"小室ファミリー"の曲とか。


自分の好みの曲というのはある種の傾向があるだろうからその傾向に飽きたとか、加齢で感受性の方向が変わったとかが理由なんだろう。ただユートピアをもたらすと思い描いていたiPodプラス大量の自分好みの音楽がもたらしたのはディストピアだったのかもしれないと少し悲しくなっている。

2014-07-09

俺の嫌いなはてなブックマークスタンス

-ねこ大好き

2014-06-28

http://anond.hatelabo.jp/20140628195848

しかアメリカだとイタリア系人間自分達のエスニシティを保ったままマフィアになり、同じマイノリティ黒人表現ジャズ支援したりするのに、日本だとヤクザを始め、日本人よりも日本的な様式にこだわって、自らのエスニシティを出そうとはしないのはなぜなんだろう。

そりゃ、単に「見た目で分かるか否か」の違いでしょう。

http://anond.hatelabo.jp/20140628135634

格闘技界は極真に限らず、澤井健一中村日出夫をはじめとして在日が多いからな。

半島系以外でも全空連トップだった在日華僑の蔡長庚とか。

おなじく半島大陸系の人間が多いヤクザとのつながりもそう考えると納得できる。

しかアメリカだとイタリア系人間自分達のエスニシティを保ったままマフィアになり、同じマイノリティ黒人表現ジャズ支援したりするのに、

日本だとヤクザを始め、日本人よりも日本的な様式にこだわって、自らのエスニシティを出そうとはしないのはなぜなんだろう。

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