はてなキーワード: ベタベタとは
ある日いきなり「離婚したい。子供も嫁さんも捨てて失踪したい」とか俺に相談してきた。
結婚生活円満にしか見えなかったし、小学2年の息子は普通にいい子。夫婦仲だって良い。だから本気でこう相談されたときは心底驚いた。
わけを聞いたらどうやら離婚したい理由は嫁さんとか家庭にはないらしく、父親という肩書そのものにあるようだった。
息子が地元の少年野球チームに加入した半年前から本格的にキツくなったと彼は言っていた。
「チームメイトの父親のこと『パパさん』って呼ぶ文化あるんだよ……俺それがどうしても無理で…本当に吐き気がするほど無理なんだよ。『パパさん』だぜ?のび太の親父呼ぶときのドラえもんかよ」
じゃあ呼ばなきゃいいだろそんなもん。名字にさん付けでいいじゃん。
「いや、俺の詰んでる感の本質はそこじゃない。『パパさん』って呼ばないと『(ああ、こいつ不穏分子だ)』って具合に周りが敵になるんだよ。勘違いじゃなくてこれは感覚でわかる。お前もわかるだろ?そういう無意味に顰蹙を買うやつってあるじゃん。
で、もう空気感だけで『これ合わせないと終わるやつだ』ってわかるときあるじゃん!?パパさん呼び文化もモロにそれだってわかる…」
じゃあパパさんって呼ぶようにすればいいじゃん…。
「うわあああ最悪だよもう。『パパさん』って…気持ち悪すぎる。加齢臭キツくてすっかり老けてるオッサンオバハンがなに学芸会的な世界観作り出してんだよ…なんでそれ言わなきゃ顰蹙を買うんだよほんとさあ…」
まあ内心で彼の言うことはかなり共感できた。
こいつとは小学校以来の付き合いだけど周りには到底理解されない『これは生理的にキツい』ってポイントを俺たち二人に限ってはお互い共有できてた。
だからこそ仲良くなれて20年以上付き合えてこれた。二人とも大学生の頃に発達障害と診断されたときは「ああなるほどな」と納得できた。
「『パパさん』呼びもそうなんだけど、踏んだら絶対にいけない地雷があまりに多すぎるんだよなあ…。学生時代も社会出てからもそういうの腐るほどあったけどまだなんとかギリかわせてた。
『お前なんで彼女作らないの?』って問いに対して『今は欲しいと思わないから』って自由に解答することがたとえ本心から出た言葉であっても許されないのとか、
『有給何に使うの?』っていう上司からの追及に『それ言う義務ありますか?』なんて突っ張らないようにするのとかはまあ嫌々でもクリアできてきた。お約束解答以外は許さない鬱陶しい友達いても密かにフェードアウトして関わらないようにすれば良かったってのもあるし。
でもさあ、子供生まれて地域コミュニティに身を置かざるをえなくなってから、こういう踏んじゃいけない地雷が爆発的に増えたんだよ。少年野球でも学校でも近所付き合いでもそう。
父兄同士の絡みとか茶番演じるの必須だし、演じないとキチガイ扱い出し、逃げられないし、自分の振る舞いが子供にモロに悪影響及ぼすしもう頭が変になりそうだよ。
父兄で飲み会とかカラオケとか超気持ちわりい…グループLINE作って顔文字付きでワイワイ話したり、学校の集まりでいい大人が良い子ちゃんなしょうもない意見交わし合ったり超気持ちわりいよ。小学生に戻ったみたいだよ。地獄だ。マジでこういうのばっかり。仕事よりキツい」
俺には無理だ。
パパさん呼びって謎同調圧力はまあいけるにしても、地域社会で周りとベタベタ付き合い続けてなおかつ顰蹙買わないようにする耐久レースは絶対に無理。一ヶ月でギブアップするだろう。
「お前よく言ってたじゃん。『笑ゥせぇるすまんでよくあるような、上司と社畜が一緒にスナックに行くのに生理的嫌悪感ある』って。結婚して嫁さんの両親と上っ面の会話するのとか絶対に無理とかも。俺が結婚したら気遣って言わなくなったけど。
あれやっぱ俺もそうだよ。大人になっても結婚しても子供生まれても全然変われなかった。そういう感性の持ち主なんだよ結局。だから、地雷踏み抜かないようにするための学芸会的な振る舞いが過酷になっちゃう。
こういう俺みたいな奴は結婚するべきじゃなかった。ましてや父親になるだなんて…もう俺終わりだよ。地獄。ほんと地獄」
奮起を促すような言葉は思い浮かばなかった。思い浮かんだとしても言えなかっただろう。
なぜなら、俺自身、自分のそういう性分をよくわかってて余計な苦痛を味合わない生き方をしてきたからだ。
「まあ無理かなあっていうボンヤリした嫌な予感は婚約したときからずっとあったよ。会社入ったばっかのときだって他の人が味合わないような苦労してきたしさあ。
『挨拶もするし、言われたことやってるのに、なんで雑談に混ざっていかないと敵視されるの?雑談振ってもらったのに素っ気ない対応した、とかでもないのに!?危害加えたわけでも喧嘩売ったわけでもないのに!?』
ってとにかく困惑してたもん。こういう困惑は普通の人はしないんだとさ。やっぱ根っこがズレてるんだよ。そういう人間が人間関係広げたり、コミュニティ増えたりしたらまあ破綻するわな。会社生活だって他の人がしないような苦労してあっぷあっぷだったのに。
ものすごく迷った挙句、えいやっと申し込んだのが、某イケメンマッサージ店。
テレビでも放送されてたし、「風俗店ではありません」という触れ込みに、初級編としては
ありかな、と。
すごい密着、ハグに、手つなぎ。
ああ、そうですね、たぶんこれが世間でいう「恋人」なんでしょうな、と。
えらいこっちゃ。
アロママッサージも好きで、女性に何度かしてもらったことがある。
健全なエステだけども、場所によっては思わずビクッと反応してしまうことも多々あり、、、
これが男性だとどうなるんだろう、と。
黒、グレー、などの隠語から、イニシャルトークまで、まぁ読みづらいこと。
摘発対策?らしいけど、それを何とか解読した結果、嘘か真か、場合によっては
どこまで信ぴょう性があるか分からないけど、それこそまさにグレー。
でも、客は選ぶよね、いくら何でも。
アラフォーの色気なし、地方から来てる細客相手にそこまでしないだろうという理性と
誘われてそれをやんわり大人の女らしくたしなめてみたい(笑)←イザとなったらたぶん気が動転するだろうが。
ただ、期待してがっかりするのは嫌だから、必死で落ち着こうとしている。
わざわざマッサージの後に友人に会って、クールダウンするアポまで取った。
※
さて、予約も取れたし一安心、と思ってたけど、冷静に考えれば全然準備できてねえ!
長袖の季節で油断してたムダ毛処理から、腹までされるマッサージに備えて腹筋、いくら何でもイケメンに会うのに
みすぼらしい恰好で惨めな思いはしたくないから服のコーディネートを考えて、あんなに顔が近づくならパックとか
しとかないと!
化粧をしてマッサージを受けるか否かまで考えて、気分は初夜前日(笑)
無駄あがきと分かっててする腹筋にも、力が入る。
間食もする気になれないなんて、何の奇跡?!
とよく言うけど、今すごい分かる気がする。
デートの前とか、お泊りの準備する女性ってこんなにいろんなことに気を遣うんだろうなと、初めて知った。
そりゃ、そんな日がしょっちゅうあれば、嫌でもきれいになるよ。
まぁ、疑似体験だけでも、とりあえず、今は。
どう転ぶか分からないけど、3年越しの悶々とした悩みに、一石を投じるのがこの月末!
どこまで腹は凹むのか?
実際のサービスはどうなのか?
終わった後、私は大人の階段を半歩でも上がることができるのか?
まだずっと先だけど、すっごいドキドキしてる。
疑似恋愛に似た感じ。
どうか、いい思い出になりますように。
んでもって、後腐れがありませんように。
別にまだ反対されたわけじゃないけど、いざ言い出したら反対されそうだなぁと。
付き合って9カ月。
お互いの年齢も、付き合ってからの実績もまだ結婚は早いことを物語ってるけど、早く結婚したい理由が、この秋から遠距離になったから。
一回会うだけで2万は軽く飛ぶ。
彼氏はなるべく会いにくるから、と言うけど月一回が関の山だろうことは目に見えてる。
お金がもったいないから結婚したいのかって、まあそれもあるし、いろいろあるじゃないですか。
会えない時間が愛を育むとか信じられないので。
会えなくてすれ違って別れちゃうカップルなんていくらでもいるじゃないですか。
それを元からあってなかったって言うのは強引すぎるじゃないですか。
ちゃんと会ってグズグズ言う彼女の気持ちを聞いてあげて、彼氏もしっかり言い分を説明できて、あとはベタベタくっついとけば解決できた問題が、時間とお金と距離の三重苦に邪魔されてうまくいかなかったのは元から合わなかったじゃないでしょ。
そうなりたくないんですよ。
一緒にいれたら解決できた問題が、遠距離だからってだけでうまくいかないのが。
でもねー、うちの親は付き合ったの19歳からで結婚は30過ぎてからだったし、何より遠距離5年選手なんですよ。
言えね〜。
なんか言えねぇわ。
お母ちゃん最近私が結婚するって言いださないように「ず〜っと実家いていいんだよ〜家事なんかお母さんがやってあげるから!」って言うし(ここ数年で一気に兄弟が巣立って行って寂しいんですね)。
「早く結婚したい」!も「(いろんな意味で)早すぎる!」だろうし、「遠距離辛い!」も「お父さんとお母さんは耐えれた!」ってなりそう。
うーん。
餃子はめんどくさいぞ。
だからいい。
ひき肉と野菜をボールでこねて、さらには包むというめんどくさい作業がある。
だからいい。無心になれる。自分の食べるものを作るという純粋な作業だ。
その先には出来立てのぷりっぷりの美味い餃子が待っている。ごま油の香りがたって脳内に満ちてくるだろう? もちっとした皮、中から滲み出る野菜と肉のスープが目に浮かぶだろう?
レシピはなんでもいい。検索して上位にくるものなら、おかしなレシピではないはずだ。
餃子はめんどくさい、それがいいとは言ったが、無用な作業は不要。
キャベツあるいは白菜をゆがいてから刻んで具にする人もいるが、この作業はない方が時短かつ、野菜のシャキっとした食感につながる。生のまま刻んでボールにぶちこめ!
いま野菜を食べている!と実感する食感につながる。私は白菜ではなくキャベツ派だ。理由は、なんだろな。好みだ。
ニンニクは入れなくもいい。 しかし!シヨウガは入れろ。刻んで入れてもいいが(野菜だ!の食感がある)、チューブ入りのおろしシヨウガでも風味の意味で充分いい仕事をする。
そして肉だ。私はこれまで肉に言及していなかった。なんということだ。肉!
合挽きではなく、豚ミンチをおすすめする。ニラ、シヨウガ、キャベツ…これらと相性のいいのは豚だ。まあ、なんとなくだ。
でもってこねるわけだが、粘るまでこねるんだぞ、素手で。ベタベタするが楽しいぞ。非日常だ!
でもって、包む……,楽しい。私は時間に追われて大量の餃子を包む作業を仕事でしているわけではない。だから楽しい。めんどうなのにご褒美みたいに楽しいぞ。
問題は最終工程「焼き」だ。最後に立ちはだかる難関。でもテフロンのしっかり効いたフライパンなら充分焼ける。
『プーと大人になった僕』を見てきたので感想。いつものごとくネタバレ気にしてないのでそういうの嫌な人は回避推奨。あらすじ解説とかもやる気ないので見た人向け。
これは100点っすな。点数の基準は「上映時間+映画料金を払ったコストに対して満足であるなら100点」なので、この100点は大傑作という意味ではない(300点とかありえる)んだけど、ごちそうさまでした、わしゃぁあ満足です。という意味で良作だというのはたしか。損しません。
まあ、家族向けとかカップル向けかと言えば、実はそんなことはなくて、一人で見に行けよおい、しかも社会人がいけよ、っていうのはあるので万民向けとはいい難いんすけどね。この映画は、だって、学生にはわからなさすぎでしょ。
ざっくりいうと「おとなになって社会人となり企業戦士として毎日ブラックな労働をしているクリストファー・ロビン。仕事と家族の間で板挟み。人生の迷子になっちゃった。プーさんといっしょに正しい人生を探そう」みたいなあらすじ&テーマであって、それは予想通りだったし、そして予想を満たして十分以上な脚本完成度です。テーマや物語性(増田はここを中心として映画を見ちゃうタイプです。趣味合わない人は申し訳ない)でいえば、非常に満足でした。
がー。そのてんに関してはー。満足だったのでー、逆に満足であったがゆえにー。脇へうっちゃっておいてー。この映画のー。感想についてはー。別の部分をー。述べたいとー。おもいまーす。
映画冒頭部分では、まだ「100エーカーの森」でくまのぷーさんと遊んでいた頃のクリストファー・ロビン(ショタ)が登場するんですが、もうね、これがね、非常にこうファビュラスっていうか尊いわけですよ。華奢な白人少年が四分丈の(日本で言う半ズボンよりは少し長いけど膝上の)ズボンから、少し筋張ったくらいの細っい脚をね。伸ばしてね。みどり豊かな森の中をバスケットを持って歩く姿がね。素晴らしいわけです。
シーンはクリストファー・ロビンが寄宿学校へ向かうその直前。楽しく美しく永遠だと思われていた「森でのプーさんとの日々」が終わるちょうどその時。作中では「お別れをいう日(Day to say goodbye)」と描かれるその日なわけですよ。
クリストファー・ロビンは楽しい田舎暮らしから、厳しく抑圧的な寄宿学校へ入らなきゃいけない。それは大人への第一歩で、もう今までのように日々をただ日々として楽しく過ごせる時間は終わってしまった。それをクリストファー・ロビン本人もわかってるんですよ。もう自分はゆったり時間を過ごせない、これからは時間に追われて毎日何かをしなきゃいけない、大人になるからもう仕方ないんだって、諦観してるんですよ。
その「子供としての最後の日」。100エーカーの森で、プーさんとピグレットやティーガーたち森の仲間でパーティーをして楽しく過ごしたその後、森を見下ろす高台の丸太ベンチに座ったクリストファー・ロビンとプーさんの二人は、こてんと肩を寄せ合い夕日に向かってずっと座ってるんですよ。
そこで「ぼくのことをわすれちゃうの?」と鼻にかかった声で尋ねるプーにたいして、ショタ(大事なのでもう一度いう)美少年のクリストファー・ロビンが、優しくて、それでいて困ったような表情で「プーのおばかさん」って言うんですよ。
ほんと。
尊い。
わかるか人民どもこの尊さが? 「おばかさん」ですよ。もうね、水銀灯の牙城にいちどの跳躍で飛び込む偉大なシーンですよ。もちろん画面は映画でありフルカラーなわけですけれど、この夕暮れは追憶と郷愁の甘さを伴ってセピアにさえ見えるわけですよ。つまり何がいいたいかって言うとクリストファー・ロビンが尊い。
あっという間に幼少期、少年期、青年期を過ごしたクリストファー・ロビン。寄宿学校で父の訃報に接して、社会に出て、将来妻になるべき女性イヴリンと出会い、求愛して結婚し、子供を作り、出兵(たぶん第二次世界大戦)して、なんとかロンドンに帰ってきて、就職して仕事に打ち込む中年になってるんですよ。
大企業のカバン製造部門の責任者となったクリストファー・ロビンは、会社上層部からこの部門の効率化(予算削減)を求められていて、その要求は−20%。リストラ待ったなしの状況で、大事な部下を切り捨てるかどうかの瀬戸際の日々を送り、その結果として休日も家族との時間も奪われているわけですよ。妻からは「もう何年も笑顔を見ていない」と言われ大事な娘のマデリンからは失望されて、でも、家族を守るために部門を守るために、家族旅行への参加をキャンセルしてまで働かなきゃならんわけです。
予定されてた旅行にイヴリンとマデリンの妻子を送り出して、週末も缶詰で仕事しなきゃと追い詰められたロンドンのアパルトメントのクリストファー・ロビンのもとになぜかプーさんが現れて助けを求める、というのがこの映画の第二の開幕です。
懐かしい友プーに出会ったクリストファー・ロビンは彼の頼み(行方不明になってしまった仲間たちを探してほしい)を叶えるために(どっちかっていうと大都会ロンドンにおいては厄介なお荷物のプーさんを森に帰すために)、郊外の美しい故郷に戻ろうとします。そこでプーさんとクリストファー・ロビンは一緒に旅をするわけですけれど、相変わらずふわふわ夢みたいなことを言う(まあぬいぐるみなので当たり前だけど)プーさんの脳天気っぷりに、時間が黄金よりも貴重になってしまったブラックカンパニーソルジャーマシーンのクリストファー・ロビンはいらつくわけですよ。プーさんがベタベタのはちみつで汚してしまった廊下を掃除している間にも、刻一刻とリストラのタイム期限が迫ってるわけで。「なにもしないをすればいい」とか「ゆっくりすればいい」とかいうプーさんの言動が癪に障るのは、まあ、仕方ないです。
送り届けた「100エーカーの森」で、とうとうクリストファー・ロビンは切れちゃうわけっすね。
「ぼくはもう昔のぼくとは違う」とプーに突きつけてしまう。その時の表情がね、もうね、良い。
良いよね。
良い。
失意のぷーさんは「従業員を捨てなきゃならない(リストラ)」というクリストファー・ロビンに「もしかしてぼくも捨てたの?」と聞いちゃうわけです。
それに対してクリストファー・ロビンは「捨てたんだよ」と答える。
この時の表情も、良いのです。
「ソレ」をいっちゃったら相手が傷つく以上に自分も傷ついちゃうのを自覚していて、それでも言ってしまったクリストファー・ロビンの、ナイーヴな表情が尊いわけです。おっさんのくせに。イケオジつぇえな。
この時クリストファー・ロビンは「いいやプーは特別な友達だから捨てるわけないじゃないか」と適当に言うこともできたわけです。でも、それは事実じゃないわけですよ。現実として30年以上プーさんを忘れていたわけだし、放置していたし、それは客観的にって捨てたと言われても当然なわけですよ。そういう現実を糊塗して「捨てるわけない」とクリストファー・ロビンは言えなかった。特別な友達だからこそ、そこで嘘はつけず、自分も相手も傷つけるのなんてわかっていたけれど、「捨てたんだよ」と答えるしかなかったわけですよ。
40代になったクリストファー・ロビンはもうおっさんなわけですけれど、ロンドン紳士然としたイケオジなんですね。その彼がいろんな現実や言葉を飲み込んで、意地っ張りにも露悪的な「捨てたんだ」って告げるそれが、もうね。
ほんと。
尊い。
わかるか人民どもこの尊さが? 「捨てたんだ」ですよ。そんでもってさらに終盤になってね、途方に暮れて懺悔をするようにつぶやく「ぼく迷子になっちゃった」ですよ。いつも迷子になったプーさんを探しては連れ帰る、森の英雄だったショタロビンが、社会人になって人生の迷子になっちゃったわけです。大事で大事で何よりも大事な娘を守るために頑張ってるはずなのに当の娘にがっかりさせて心配させて、もう何が正しいんだかよくわからなくなっちゃったわけですよ。大人になったクリストファー・ロビンにこそぬいぐるみのプーは必要なわけです。
つまり何がいいたいかって言うとクリストファー・ロビンが尊い。
本物は初めて見た。
スーツではない、黒っぽい上下に、底の厚い白いスニーカーに、重そうなリュックをしょっている。
髪の毛はぼさぼさ、ベタベタしており、頭頂部はやや薄くなっている。
落ち着きなく、なんども足を組み替えたり、チラリ、チラリと車内に目をやったりしている。
きっとこれまでいろいろ社会から疎外されて、一番お手軽に反撃できる場がここなんだろう。
いろいろな人や場所で疎外されてきただろうに、特に女性専用車両が許せないものに見えるのは、
女性を自分より下に見ているからだってことも、きっと自覚がないんだろう。
こういう風に「見た目で判断する女」なんて、彼にとってはステレオタイプの加害者でしかないのだろう。
でもせっかく安全な女性専用車両に乗っているのだから、もっとリラックスしたらいいんじゃないの?
いつになく意地悪な気持ちが心にたまってしまい、増田に書いている。
私にとっても、増田があってよかった。
この点、あの彼と私は同じ種類の人間だ。
惣菜コーナーに向かうと、その日に作った弁当や惣菜が並んでいる。
そこに70歳くらいのお爺さんがいて、お弁当を持って置いて、また違うお弁当を持って置いて、をずっと繰り返している。
惣菜コーナーを離れて、1周して戻ってきてもまだお弁当を持って置いてを繰り返している。
一体何をしているのか気になり、よく見ていて自分は気づいた。
──お弁当を重さを量っている...!
もうその瞬間悲しくなった。
おそらくそのお爺さんはできるだけ米や具材の量が多いものを数あるお弁当の中から選びたいのだ。
そんなものに対して長い時間かけて調査している姿や、その無駄な時間の使い方に悲しくなった。
自分は買い物するふりをしてしばらく様子を観察していたが、親子丼を持っては置き、少し移動して今度は幕の内弁当を持っては置きを繰り返している。
弁当コーナーを一周して、どうやらお爺さんはとんかつ弁当に絞ったらしい。
そしてやっと買うべき弁当が決まり、選びぬいた弁当を一つだけ、他の弁当の山とは違うところにキープとして置いた。
──やっと終わった...。
安堵した瞬間、お爺さんが選びぬいた至高の弁当を歩いてきた大学生がカゴに入れてレジに向かった。
お爺さんは一瞬何が起こったのかわからない表情になり、大学生はスマホを見ながら悠々と歩いていった。
お爺さんは悲しい顔をして大学生の後ろ姿を見ていた、声をかけるのかと思ったけれど、またとんかつ弁当を持っては置きを繰り返し始めた。
ハンバーグ屋に行った。
たまにあるやつだ。
鉄板が熱すぎるのかわからないが程度は甚だしく、大量のソースが四方八方に跳ね、向かいの空いたイスにその一部が垂れていた。
ナフキンで客の正面は守られるけど後ろや横は完全にノーガード。
店が狭いこともあって、他のお客さんから跳ねたソースが服の背中に付くのは日常茶飯事のようだ。
あんなにアツアツ感出ていたのに、ハンバーグに乗っているチーズが冷たい。チーズってこんなに熱が回らないものなのか。店の人も「乗せたらハンバーグの熱で溶けるっしょ」と考えていただろうし想定外の出来事だろう。
コミュ障の私にコンビニでバイトなんか出来るのか心配だったが、思いの外普通にやれている。
・根の性格がどうかと接客が出来るのかどうかは別問題なのかもしれない。大抵コンビニとかスーパーとかそういう接客の仕事は元気で明るい人を求人してるけど、そういう性格の人でも続かない人は続かないみたいだ。
・私が働いてるお店はそもそも店長や役職付の人達が人間関係とか苦手としているらしい。
・お客さんの方もそんなにサービスされたがってる感じしないしな。
・誰でも良いから話し相手して欲しいお年寄りとイケメン正社員氏目当ての老若男女は時々来るけれど。皆一方的に喋れれば気がすむのだし、被害をこうむるのは主にイケメン正社員氏だけだし。
・女は歳を取るとちょっとは楽になるのかもなと思う。若い頃よりも有意に客に絡まれる回数が減った(昔はウエイトレスをやってたが酷い目にあった)。
・でも歳を取れば取ったでまたあまりうまくないんだとも思う。相棒(私の母親より歳上)が客から浴びせられる暴言はひどい。相棒と同年輩か上の男性客が主な加害者。
・若い女は生きづらいなと以前は思っていたけど若い男もなかなかに生きづらいのだなとイケメン正社員氏を見てて思う。上司や客からのパワハラはもろに喰らっているし、女性のパートさん達からのボディータッチすげえ。べったべたに触られまくりである。例え肩や背中や上腕などさわって直アウトにならない部位を触るんでも、男が女の子にあんな風にベタベタ触りまくったら大問題なのに。
・明らかにどこか他店で働いているお客様がいらして、そういう方はおでんを注文するとき大根とこんにゃくから注文する。注文を全部カップに入れ終えたら、お客様は「よし、OK」と仰り鍋に蓋をして下さった。
・ノーミスと愛想は最大の防御だと思う。日本人の接客は賃金のわりにやり過ぎだとも言われるけど、やっぱりクオリティ高い接客をしてるとお店の中は平和だし、何より自分が痛い目見なくて済む。
・ある年代のお年寄りのお客様に限って異常に態度が悪く、店員によく危害を加えて来るんだが、それ以外の年代のお客様は概ね大人しい。若いお客様は大体礼儀正しい。
・ただし、店員のちょっとしたミスで豹変する客というのは年齢問わず一定数いる。そういう人は大抵女性店員相手だとめちゃめちゃ強気に出てくる。
・個人的に嫌な客となりうるので要警戒なお客様は自分と同年代~ちょっと年下くらいの女性のお客様。マジで容赦ない、恐い。
・コンビニでバイトしてると言うと尊敬の目で見られると同時に引かれる。鰻とか恵方巻とかクリスマスケーキとかを押し売りされると思われているのだろうか?
・だが実は、近頃は本部の方針で、店員にノルマを課して店員本人に買わせたり家族親戚友人知人などに無理に買わせるなどという事はしないように、フェアや季節ものの商品の売り込みはあくまで店頭でやるように、という事になっている。
・そう説明したところで誰も信じてはくれないのだが。
・昔児童館で仲良くなったママさんが、偶々店の近所に住んでいる人で、以前はよくご来店していたようなのだが、あるとき私が店で勤めていると知るや露骨に嫌な顔をして私を避けるようになってしまった。その人はたまに私の勤務時間に家族とご来店するが、絶対私のレジには並ばない。
・レジでお客様にセールや季節ものの商品のご案内をせよとオーナーから改めて厳命があったんだけど、具体的にじゃあどうすればいいの?という事は誰も教えてくれないのだった。
・なので相棒とプロアルバイター氏に聞いてみたら、二人とも「別に、チラシを袋に入れときゃ良いんじゃね?」とのこと。あっ、良いんだそれで……。
・などと適当な事を言うプロアルバイター氏はよく、ホットスナックが上げたての時とかおにぎり100円セールの時とか、大きい声で「いかがですか~?」と呼び掛けをしているのである。プロフェッショナルな呼び掛けの口上すき。
・そんなプロアルバイター氏は何故か女性店員達の間で使えない男扱いをされている。マルチタスクを若干苦手としているようで。
・コンビニの仕事で分からないことがあったらこの店の中で一番の新人であるプロアルバイター氏に聞くのが一番手っ取り早いし分かりやすい。組む相手を選べるんならプロアルバイター氏とが良いくらいだ。
・自分で言うのもなんだが私はレジの作業が素早い。でもよそのコンビニや、うちの近所のドラッグストアの店員さんがこんなにキビキビ仕事を流しているのを見たことがない。速さより丁寧さの方が大事なんだろうかと、ドラッグストアで店員さんがじっくりつり銭を数えてから手渡してくれるのを見ながら思った。
・元気も良いし素早いけどサクサクこなしすぎているとロボっぽくて人間味ないんじゃないかとも思う。歴の長いパートアルバイトの人達とかイケメン正社員氏がお客様と談笑しながら仕事をしているのを見て思った。
・近所のスーパーやドラッグストアでも、店員さん達はフレンドリーで暇な時は向こうから話し掛けて来る。そしてチラシくれたり何かをおすすめして来たりするのだ。これがレジ打ちの営業というものなのだろうか。
・私にはもうすっかり事務作業な人というイメージが定着してるだろうなと思って、この間は事務作業的にお客様に一言声をかけつつおでん割引セールのチラシを袋に入れる活動を独自にしてみたが、意外にお客様には嫌がられなかったんだが続けていいものかどうか分からないでいる。そういうのはイラネって内心思うよね、ぶっちゃけ私が客なら要らない。
・ようやるわ、という顔の相棒。お客様にお声かけとかそういう事は絶対にしない主義の人なのである。給料安いのに割りに合わないとキッパリ言い切っていた。
・もしかして私、真面目に仕事しすぎなのかなぁ。出掛けた先で入ったコンビニで、ド金髪の女の子が怠そうに接客してるのを見てそう思った。あまりにも怠そうだったので「レシートください」と言えず、買った金額を頭の中で繰返しながら帰った。