「心室中隔欠損症」を含む日記

はてなキーワード: 心室中隔欠損症とは

2024-02-10

■anond:20240210234837

虫歯は心室中隔欠損症絡みで1問出るだろ

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2021-01-30

■もう今度こそおわるぞ！

https://anond.hatelabo.jp/20210130154542

まったくもぉー。

針金が体内でバラ バラ 事件

小学生の頃にはちゃんと形が残っていたはずの、胸骨をぶったぎった跡繋ぐための針金が、中学生になる頃にはバラバラに割れていた。細かい破片が胸の中にいくつも埋まっているという状況を知り、動揺しないでいられるほどの強メンタルではない。
主治医はそれについてはノーコメで、私も凄く気になるんだけど先生が何も言わないんだから大丈夫だろ、たぶん、きっと、だったらいいなと思った。
ワイヤー付きのブラジャーが当時流行っていたというか、店に売られているブラジャーには子供用のにも硬いワイヤーが必ず入っていたので、着け心地最悪だなと思いつつもしぶしぶそういうのを着けていた。そしたら胸の真ん中のワイヤーが当たった所が真っ赤になった。普通にぶつけて出来た痣のようにいつか紫になるということはなく、ワイヤー入りのブラジャーを着けている限りずっと赤くなっている。
しばらく我慢していたが、ある日ちょうど胸骨の真上の箇所が楕円形に真っ赤に染まっていて、しかも楕円形の中心を何かが内側からボコッと押し上げていた。なんかもう全然大丈夫じゃないじゃん！と思ったけど、誰にも相談できないと思い、一人で怯えて過ごした。
それで、翌年の健診辺りに、この骨を留めていた金具が粉々になってるのが気になるんですけど、と主治医に言った。手術で取ろうとすれば取ることができるけれど、別に命に関わるものじゃないものをわざわざ取ってもお金が余分にかかるし痛いしで大していいことはないと、主治医はいった。
まあ騙し騙し？金属片が皮膚を突き破ってこないことを願ってなんとか胸の真ん中に負担をかけない暮らしをしていくしかないのか。
そうは思っても、まだ中学生だったし、自分の下着も自分で選ばせて貰えない身分であり、学校にはバッグを肩に斜め掛けして行かないといけなかったりもするし、胸の皮膚を金属片が突き破って来そう問題は、成人してしばらく経つまで解決しなかった。
大学生くらいになると、ブラジャーのワイヤーが痛いくらいにカチカチということもなくなってきたし、今現在はユニクロのカップ付きキャミソールで快適に過ごせるのでいい。

人生で一番ひどい差別発言

まだ会社勤めをしていた頃、ロッカールームで着替えていたら、50代のお局様に突然タンクトップの胸ぐらを掴まれて鳩尾の辺りまで引き下ろされた。やっすいタンクトップは、引っ張られるとびよーんと伸びてしまったのだ。

「何この傷は！　あんたはこれで他人の同情が引けると思っていい気になって見せびらかして歩いているんでしょうけど穢らわしい！　こんなもん見せられたら皆言わないだけで気持ち悪いって思うのよ！　人の善意につけこんでいい思いをしようと思うんじゃないよこのクズ！　アバズレ！　こんな汚いもの見せつけるなんて人に対して失礼だから、大金払って綺麗に治すのが義務でしょ！」

いや見せびらかしてないだろどう見ても。ここロッカールームだぞ。私とお局以外には誰もいないし、私はただ作業着から普段着に着替えようとしただけだろ。汗かいたから作業着の下に着てたTシャツ脱いだだけなのに、横から手ぇ出して来たのは誰だっつの。
普段からあの人は私をいびり倒していて、しかも私の前に部署に来た若い人全員、あの人のせいで心を病んで会社を去っていた。なんかもうすごいな。人を蹴落とす為なら何でも言えるって。邪悪過ぎて返す言葉がなーい。
ところで、私の父は私の傷を勲章だ誇りだと言ったわりに、私の傷痕がいつまで経っても消えないのを気にしていた。
主治医からは、大人になったら傷は自然と消えるはずだが、もしも消えなかったら美容整形で治すことはできるかもしれないと言われた。
私としては、別に傷くらい気にしてないし、自分で得ようと思った訳でもなく得た傷をわざわざお金払って治すのも馬鹿らしいと思った。これを見て人が嫌な顔をするにしても、それは私の問題ではなくそいつの問題のはずだ。
ジュンコちゃんの暴言にしても、言われたことと相手の表情をよく覚えている辺り、私は傷付いていたのだろうか？言われた時は、悲しいというよりも驚いた、と自分では思っていたけれど。
三人くらいの男性から、「そんな傷があっても気にしないで抱けるのは俺だけだ」って言われたけど、そう言うくらいならだいぶ気にしてるんだろ、実際。

心室中隔欠損症仲間には一度しか会ったことがないが。

子供の頃に病院で出会った一つ上の男の子以外に、心室中隔欠損症の当事者と出会ったことがない。
だが、心房中隔欠損症という、なんか似たような名前の疾患を持ったメイクアップアーティスト（？）のメイク本に載っていた、彼女の半生を読んだことがある。
心室と心房では色々勝手が違うのかもしれないが、彼女も子供時代に走ると息が切れてしゃがむことがあったと本に書いてあった。私と同じだ。やっぱり、私はただの根性なしじゃなかったんだ。ただ一つの共通点でも、私以外にも同じことで困っていた人が世の中にはいるという事実は、心強いと思った。
彼女の場合は成人するまで心臓の手術を受けられなかったようだ。それで、病気の影響で赤ら顔なのを隠すためにメイクを始めたとか、たぶんそんなことが書いてあった。
この連作の一番最初の記事のブクマに、「今は小さい穴ならカテーテルで治せるらしい」とか書いてあったけど、子供の頃に主治医から聞いたことによれば、小さい穴ならわざわざ治さないこともあるという。命に別状のないレベルだと、治療するかしないかは、QOLの問題なのかなぁ。
今、子供達の走り回って遊ぶ様子を見ると、子供時代の私がすぐに疲れてスッとしゃがむ行動というのは、もしも自分の子がやったとしたら、かなり異常に見えると思うんだ。どうしたのかな、具合悪いのかな？って思うだろう。根性がないなんて、言わないと思うなぁ。小さい頃からずっとそんな感じの子供だったとすると、それがその子の「普通」で、他人と比べたら「根性なし」に見えてしまうのだろうか。

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■心室中隔欠損症をもって生まれた。の続きの続き。

https://anond.hatelabo.jp/20210130130504

うっかり書きもらしたうえに伏線を回収し忘れるというミス！

幼い頃、私は「将来の夢は看護婦さん！」と言っていたが、これは母が「大きくなったら看護婦さんになるんだよね？」と言うのでそれをオウム返ししていただけに過ぎなかった。母の母校の女子高に看護科があったので、母はそんなことを言ったのだと思う。母は何かと娘に自分と同じであることを望む人だった。でも、母は看護科じゃなくて普通科出身なんだなぁ～。真面目に看護師の資格を取ったとしても、私は絶望的に血が苦手で、しかも恐怖の度を超えた途端に具合が悪くなるという嫌な性質を持っているため、医療の現場ではとことん使えない奴になっていたことだろう。
高校時代に、家に刑事さんが二人私を訪ねてきた。その理由はというと、私が受けた手術を見学していた医者達の中に後にテロリストがいたからだった。私はテロリストの支援者かもしれないと疑われていたのだ。
子供時代はよく、世のため人のためになるようなことをしろとか、有名になれというプレッシャーを感じていた。沢山の国費と医療者の労力で命を助けられたんだから当然だと、よく両親と父方の伯母達から言われていたのだ。祖母とか母方の伯父伯母などは、生きてるだけで丸儲けだろ～とユルく可愛がってくれた。

大学 卒業後

卒業と同時に結婚した。不景気でものの見事に就活に失敗してしまい。自営業主の息子の嫁だったのだが、義両親がまだ若く家業を継ぐ必要も当分ないということで、私は義父の口利きで某企業でパートをすることになった。義父の希望は、私が外で事務職の修行をしつつお金を稼いで家を支えることだったのだが、何故か私は事務職とは無縁のゴリゴリにきっつい現場作業に回されてしまう。
パートなのに長時間労働で過労になるという不思議が起きた。大体9時～20時の実働10 時間×週5くらいで働いていた。大学時代はバイトでコテンパンにのされていて勤労への自信が地に堕ちていたけれど、パートはキビキビ働けていて、自分やれば出来るじゃん！と思った。
夫と二人暮らしをしていたが、私が働いて稼いだぶん、夫は義父母からもらう給料を減らされていたので、全く生活に余裕がなかった。それでも私がコツコツお金を貯めるので、義父は急な出費があると私にお金の用意をさせた。貸したお金はさくっと返ってきた。
疲れが溜まってしまったらしく、ある冬にインフルエンザにかかりこじらせてしまった。そういえば、心室中隔欠損症の最後の診察の時に、帰り際に主治医が「そうそう、感染症にだけは気をつけてね。まれに心臓の縫った跡に菌が感染することがあるから」と言っていた。
高熱が数日下がらず、起きられずにものが五重に見えるという酷いことになったが、夫が「熱を測らなければ風邪は風邪じゃない」思想の持ち主で、中々病院に連れて行ってくれなかったが、心室中隔欠損症の手術跡にウイルスが感染するかもしれないと私が言い、熱を測ったら罹患数日目にして40度もあったので、病院に連れて行ってもらえることになった。タミフルを処方された。服用したらだいぶ良くなったが、起き出してテレビで次長課長のコントを見たら笑いが止まらなくなるという謎症状に見舞われた。
過労で急に動悸がしたり不整脈が出るようになったので恐くなり、昔のかかりつけではない病院の心臓外来を受診したら、同年代の女医に「若い癖にどうしてこんなとこに来たの？根性ないんじゃない？」と言われ、診察時間一杯説教されたが、念のために超久しぶりのポータブル心電図とどこでもいっしょ暮らしをすることに。
職場の上司に報告したら、「じゃあその間は有休取って休んでいいよー」と言うので、「それじゃ検査の意味なくないですか？」と言い返して普通に出勤したが、午前11時くらいに帰らされた。いつもは21時近くまで残業させられるのになんで？
心電図を取った結果、別に問題になるほどの不整脈じゃないからやっぱりあなたの根性がないだけじゃない？と医者から言われただけで終了。
家計が苦しくて、子供を育てるどころではないし、相変わらずピルなしでは月経困難で生きられなかったから、数年ピルを飲んでいた。
結婚前はそんなこと一つも言ってなかったくせに、結婚したら夫が急に本当に私は子供を生んでも死なないのか、子供には病気が遺伝しないのかを気にし出した。
ネットで調べたら、心室中隔欠損症は別に遺伝するような病気ではないっぽかった。
義父母の自営業がつぶれて、夫が転職したあとにやっと子供を作るかっていうテンションになったが、ピルを辞めても子供が出来ず、不妊疑惑が持ち上がったけれども、28歳で妊娠した。産婦人科医は、心室中隔欠損症だったにしろ手術して治ったんなら出産は問題ないと言った。
健診で胎児の性別が女の子だとわかった時、私が「女の子かぁ」と言った声が元気なさそうに聴こえたらしく、医師が「女の子だったらなんか問題でも！？」と目を見開いて言った。いや、何も問題ないっす。
当時は妊婦の体重管理が非常に厳しかったので、ちょっと体重が増えると食事どころか水の摂取も制限された。だがそれにしても胎児が小さいということで、妊娠後期に食事制限を解かれた。食べても私が太るだけで、胎児は肥えず。
妊娠後期になってから急に、医者が「心室中隔欠損症はともかくとして、肺高血圧症は遺伝する可能性がある」と言い出した。でも、医者の経験では肺高血圧症に生まれた女児が死んだことはないので安心しろという。じゃあ男児は？「言っちゃなんだけど皆死んだね」ﾅ,ﾅﾝﾀﾞｯﾃｰ！？
私の肺高血圧症は心室中隔欠損症の合併症の可能性が高いので遺伝する可能性は低いと医者は言った。
分娩の最中に、ヘトヘトに疲れてしまう。疲れ過ぎて頭が冷静になり、「疲れた～」とは言っても「もうやだ産むのをやめる～」という産婦あるある発言は胎児に失礼なので言わないでおこうと考えた。
ヘトヘトだったがなんとか産めた。赤ちゃんは産まれたとき全身が緑がかった紫色で、産声も「んれぇ～」と気の抜けた声で上げたが、助産師さんが「元気な女の子ですよ～」って言ったし、あれでも元気だったんだろう、たぶん。身体計測を終えてカンガルーケアに連れて来られた時には本当に元気そうで、私の胸の上で猫の香箱座りみたいな体勢でまるで首がもう据わっているかのように頭を持ち上げ、目を見開いてキョロキョロしていた。コットに寝かされる頃には、赤黒かった肌が明るい薔薇色になっていた。
分娩が終わって少し休んだら、分娩台から自力で降りて自力で病室まで戻らなければいけない決まりになっていた。だが歩いている途中で潮騒のような音が耳の中に響いて目の前を渦みたいなノイズが覆った。立っていられず膝から崩れ落ちたが、倒れる前に助産師さんが支えてくれた。「あぶなーい！」と同時に叫んで生まれた、謎の連帯感。
特別に、分娩室の隣の陣痛室で休ませて貰えることになった。窓がなくて暗いので落ち着いて二時間熟睡出来た。
夕方に赤ちゃんを見にきた私の両親と義母が中々帰りやがらない上に、皆座ってるせいで私には座る場所がなく、午前中に出産したばかりなのに90分立ちっぱなしという苦行を強いられた。今思えばだいぶ非常識だが、私はその時疲れたという意識がなく、急に眩暈と吐き気に襲われるまで、具合が悪くなっていることに気づかなかった。
育児は特に大変なこともなく順調だった。だがいつだったか、韓国と北朝鮮がミサイルの撃ち合いをするニュースを見たのがきっかけで、心身の調子を崩してしまう。以来、夕方のニュースが恐くて見れなくなり、はてなブックマークのトップページも見ると動悸が止まらなくなり眩暈と吐き気がしてくるほどだった。なので一旦はてなのアカウントを消して、三年くらい復帰出来なかった。そんな体たらくなのに、不思議と育児自体には支障が出なかった。当時は無職だったのでストレス源といえばニュースくらいだったかもしれない。
妊娠中に生まれて初めて貧血と診断され、産後半年経っても治らなかった。鉄剤を処方されて飲んだ。
三年後にまた妊娠した。今度は本格的に胎児の成長が悪くなってしまい、それでも胎児の心拍は元気でちゃんと生きていた。私がよく食べても、胎児は思うように成長しない。私が太るだけで。どうやら私は血行が悪いらしかった。「君は体質的に、小柄な赤ちゃんを産む人なのかもねぇ」と産婦人科医が言った。
股関節が痛すぎてあまり歩けず、運動といえば草むしりくらいしか出来なかった。歩くのは股関節が痛くても、ウンコ座りにしゃがむのは平気だったのだ。また貧血になり、鉄剤を飲んだ。
赤ちゃんは2400g台前半で小柄でやせっぽっちに産まれて来たが、産声が元気一杯だったし、ミルクも母乳も沢山飲んで、むくむくに大きく肥えていった。
私は産後も貧血のままで、しかしそんなに不調でもないので処方された鉄剤を飲みきると、貧血の検査も治療もしなくなった。
出産を機にまたしてもメンタルの具合が悪くなる。しかし、育児にはあまり影響がなかった。下の子が2歳くらいになった頃、よく北朝鮮がミサイルを飛ばしていたので、アラートがなる度に怯え、動悸のし過ぎで具合が悪くなっていた。恐怖の極みで爪が真っ青になっても、子供達がいるからぶっ倒れる訳にはいかないと、気力で頑張っていた。
産後と育児は疲れるのが当たり前なので、私が「疲れた～」と言っても誰も「根性なし」とも「頑張れ」とも言わないのが、気分的に楽だった。

現在

運動不足すぎるせいか、血行の悪さに拍車がかかり、妊娠中に出来て産後に引っ込んだ静脈瘤が復活してきた。下の子が小学校に上がったら、何か動き回れる仕事をしようかなあ。
今も少しはバイトをしているが、それでは動き足らない。
下の子が「ママ、よーいどんしよ！」とよく言うので、一日に一回はかけっこする。去年初の「よーいどんしよ！」に付き合った時、走ってもあまり脈が早くならず、走ってからしばらく経って呼吸が苦しくなった。大学時代に言われた心臓の反射神経130歳の老人並み、という言葉を思いだし、走る最中に苦しく感じなくても意識して呼吸をするように気をつけてたら、走った後で眩暈がすることはなくなった。
もう生まれた当初に宣告された余命よりも30年近く生きているし、なんかもういいだろ、好きに生きても……って思う今日この頃だ。

（おしまい）

と、思ったらしまえなかったー！

伏線回収をまたしても忘れた！！

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■心室中隔欠損症をもって生まれた。の続き。

https://anond.hatelabo.jp/20210130055110

中学生 時代

中学の制服はセーラー服だったのだが、夏服でも胸のところにあて布のあるタイプだったから、制服を着ていて傷が見えることはなかった。体操着も襟ぐりが相手ないから傷は見えなかった。水着の時はさすがに傷が少しはみ出た。
子供の頃はごく短期間だけ、心ない同級生からバイ菌扱いされたが、皆わりと早くに「ひとの病気や障害をバカにするとかなりヤバい」と気づいたようで、私みたいに傷がデカデカと残っているとか、明らかに重度の知的障害の子なんかは、それをもっていじめられるということは、あまりなかった。そのかわり、知能がギリギリ低めみたいな、健常者に近いけど少し違う子へのいじめは酷かったなあ。
中学入学直前に病院で健診を受けたが、入学後の健診結果に「病院で精密検査受けて結果を提出しろ」っていうお便りがついていた。健診の結果は異常なしだったんだが、既往症のある生徒全員に機械的にそういうお便りが届くだけだった。母がそれを見て「うんざり」って顔をしていた。
中学からはたぶん健診は年一だったのかな？よく覚えてないけど。子供の頃から一度も検査に引っ掛かったことがない。
相変わらず、生理で経血量が多いとたちまちダウンするということ以外は、基本的に元気一杯だった。
剣道部に入っていた。入部するなり過酷な筋トレメニューで筋肉痛になり、しばらくは学校の階段を這って登るような有様だった。元が超絶運痴なので全く強くはならず、錬成試合とかで毎度郡内ビリ争いをしている三人のうちの一人だった。剣道をしていて心臓がどうにかなりそうということはなかった。
剣道をしたら痩せて身軽になり、運動をするのが楽しくなった。剣道自体は苦手の極みのままだったが、基礎トレの走り込みと腕立て伏せと素振りのおかげで、1000メートル走と斜め懸垂、垂直跳びが得意になった。
剣道部では反射神経の悪さを発揮していたわりに、体育の授業でやったバドミントンはすごく得意で、テニス部の人よりもきびきびラリーしていた。でも何故かサーブが打てないのである。
一年生の頃の体育の先生は女子に対する期待値が物凄く低くて、あまり無茶なことを生徒にやらせない人だったのだが、二年三年の時の体育教師は鬼コーチタイプで授業も軍事教練かよって感じだった。男子が遊びながら運動をしているのを横目で見つつ、めちゃめちゃ走る、跳ぶ。
私は縦方向や左右に跳ぶのは得意だったのだが、前方に跳ぶのがすごく苦手で走り幅跳びとハードルが出来ず、体育教師に目をつけられていた。
前に跳ぶことが出来ないのと、あと生理でプールを休みがちなので、得意の中距離走では挽回してやろうと考えた。
ところが、1000メートルをいい感じに走り抜けて、クラスでも上位の記録を出して喜んだのも束の間。めちゃめちゃ気分が悪くなった。生理の一番酷い日くらいの吐き気がして、芝生の上に倒れて動けなくなった。そのまま転がっていたら鬼教師が近づいてきて、怒られるかと思ったら、私を見てすごくびっくりしていて「今すぐに保健室に行きなさい！」と、介助人までつけてくれて保健室に行かせてくれた。自力で歩かなきゃいけないのは辛かったけども。
当時の養護教諭が根性論の持ち主で、滅多なことでは保健室で休ませてくれなかったんだけれど、この時ばかりは私がベッドに横になることを渋ったりしなかった。
私はどんなに体調が悪くても顔に出ない奴だったのだが、この時だけは唇と爪が濃い紫色になってしまっていたそうで、誰の目から見ても死にそうだったそうだ。具合が悪くて失神するなんてことはこれまでなかったのに、ベッドに横になった瞬間意識が飛んだ。けど、付き添いの友達は「よく寝てる～」とほっこりして私の寝顔を見守っていたらしい。
私が心室中隔欠損症を患っていたことを初めて知った体育教師から「あまり無茶しないの！」と説教された。以来、1000メートル走でいい感じにスピードが乗っても限界を超えようとするのはやめた。
1000メートル走でぶっ倒れたり、生理の時に貧血で元気がなかったわりに、血液検査では一度も貧血と診断されたことがなかった。二十代後半に妊娠出産する前までは、全く貧血の心配がなかった。

高校生 時代

入学直後にやらかしてしまう。健康診断に引っ掛かった女子生徒が全員保健室に集合するように命じられていた日、私はうっかりそれを忘れてすっぽかしてしまった。同じクラスで保健室行きだった女子達が連帯責任だと養護教諭からめちゃめちゃ叱られたのだそう。そのメンバーに学校一の美少女がいて、「増田ちゃんのせいで皆怒られたんだよぉ」と可愛い顔で涙をはらはら流すので、学校一の美少女を泣かせた奴としてクラスの除け者となってしまった。
定期健診は年一だった。成長すると共に看護師と検査技師のあたりが凄くキツくなって嫌な感じだった。私が挨拶をしないとか無礼な態度を取った訳でもないのに、なんか冷たいしぞんざいに扱われた。特にレントゲン技師は高圧的に「そこでブラジャーだけ外して下着一枚でここに立て！」とか命令するので、私は命令が聴こえなかったふりをして上半身裸で撮影機の前に立つという嫌がらせで対抗した。
相変わらず、健診の結果は問題なし。18歳で卒業出来ると主治医は言った。
高校の制服もセーラー服だったが、この制服を採用した奴は一体何を考えてるんだというくらい、胸元がざっくり開いたデザインだった。しかしこの制服、大昔に、誰だったか有名な女性デザイナーにデザインしてもらったものを、生徒会が採用したものであって教師のセクハラの賜物ではないのだという。
制服の胸元から傷が丸見えになること自体は、私はまるで気にしなかったのだが、貧乳なのに男子の視線が私の胸元に固定されるという現象にしばしばあった。
女子は気軽に「それなにー？」と指差しで聞いてきたが、「手術の跡だよー」と答えればあまり深追いしては来なかった。
でかい傷は肺の手術の跡と思ってる人がけっこういるということを、女子何人かで弁当を食べながら話していた間に知った。肺はでかいからな。
高校時代は帰宅部だったので、せっかく得意だった1000メートル走や持久走が得意でなくなった。
高校一年の中間テストの結果が散々で、期末テストに向けて猛勉強した辺りから、心身の調子を崩し始める。最近バズッていた鬱病体験者の漫画みたいに、夜ずっと動悸がして眠れず、一時間半睡眠という日がざらになった。なのに私は具合が悪いという意識が全然なくて、動悸がするのは恋してるからじゃね？などと呑気に思っていた。
眠れないぶんの時間を勉強にあてていたおかげで成績が爆上がりしたが、今思えば色々と奇行の目立つ高校生だった。気持ち悪がられて友達が出来なかった。
高校は普通クラス、理系クラス（主に看護系志望の女子のためのクラス）、進学クラスに別れていたが、私は進学クラスだった。
一年生の頃は進学クラスでも勉強が全てじゃないという価値観の子が多く、そのぶん私が青い顔で狂人しぐさをしていても気にしない子が多かったのだが、二年生からは意識高い系ばっかり進学クラスにつどったので、友達関係も恋愛関係も「使えるか使えないか」というシビアな取捨選択をみんなしがちで、私は「使えない」方にソートされて当然ボッチに。
いじめられはしないが明確に除け者にされ、不利な役割ばかり押し付けられるというのが、今思えばかなりストレスだったみたいで、夜の動悸と不眠が益々ひどくなった。
月経困難がいよいよ酷くなり、貧血で保健室のお世話になることが増えた。養護教諭は恐いけどいい人で、私に「子供だからといって親に自分の体調管理の権利を握られなくていい」と教えてくれた。
それで、月経困難を治したいという意思表示を母にしたのだが、母は「そんなことで産婦人科を受診したら『保険証が汚れる』」と渋っていたが、養護教諭が強く受診を勧めてくれていると話すと、しぶしぶ産婦人科の受診を認めてくれた。
だが田舎なので産婦人科医の理解がまるでなく、生理痛は根性で我慢すべきもの、ということに変わりはなかった。たぶんこの頃に低用量ピルが日本でも認可されたのだが、産婦人科医の口からはピの字も出なかった。そんなことより、母は私が処女かどうかを気にしていて、私が内診を受けた後で私そっちのけで母が診察結果を聞き、ニヤニヤ笑いながら戻って来るというのが本当に気持ち悪かった。
養護教諭が言ってくれたのとは逆に、私はかえって自分の健康を管理する権利を母に握られてしまう結果となってしまった。それでも私は養護教諭が言っていたことを信じて、親元を離れたら自分の身体のことは自分でなんとかしようと考えた。
ちなみに、子供時代の心臓外科の主治医は患者の母親が先手先手で口を出すことを許さない人で、「自分の言葉で話してごらん？」と言ってちゃんと目を合わせて私の話を聞いてくれる人だった。私は「げんきー！」しか言うことがなかったけれども。母が口を挟もうとすると「私はこの子に聞いているんです」と厳しく言った。偶然かどうかわからないが、心臓外科の先生だけじゃなくて、ただの風邪でかかる内科の先生もそういう人だったんだが、母はそういうのが気に入らなかったのか、途中で内科のかかりつけを地域で一番人気の小児科に変えた。そこは人気があるので診察時間は短く、子供に何か聞くということはされなかった。
18歳で、めでたく心室中隔欠損症の経過観察は終了。18歳までは医療費は公費で補助されていたらしい。

大学生 時代

一人暮らしをする。いよいよ心身の調子が本格的に鬱病めいて来たのだが、私には鬱病という病気の知識がゼロで、自分がおかしいとも思っていなかった。アパートから2kmほど離れた銀行に自転車で行ってATMで通帳記帳をしただけでヘトヘトに疲れてしまい寝込む、というようなことを自分では普通だと思っていた。
それなのにバイトをしようという意欲だけはあって、でも友達に誘われて始めたウエイトレスのバイトは疲れやすいことが原因で一月ももたずにやめることになった。
疲れやすくてもそれを鬱とは思わなかったし、心室中隔欠損症の影響と疑うこともなく、何故か「私はずっと疲れていて何も出来ないのが普通」と思っていた。高校時代までは暇な時間があれば田んぼ道を走り込んでいたくせに、それはないだろ。
性格もめっきり暗くなった。二年生からまたバイトを始めたが、仕事を覚えられないのと性格が暗いのとでバイト先では強烈ないじめの対象にされていたが、真面目に働いていたのでお客さん達から可愛がられ、能無しだのグズでクズだのと店長から罵られたりバイトの後輩からすらあからさまに嫌がらせをされていたのを、お客さん達がかばってくれた。おかげでいつもクビにするぞと店長に脅されていたのに、バイトは長続きした。
一年生か二年生の頃に必修科目に体育があって、長距離走が好きだった私は、地獄の長距離レースで皆が苦しんでいるなか、一人だけ元気一杯だった。走っている時だけは鬱がどっかにいった。
だが、運動不足のせいで後期の長距離走のタイムが大幅ダウンしていて、ペナルティとして教授の研究のための体力測定試験を受けることになった。体力測定では、心拍数を測定しながら自転車を全力で漕ぐといういうもの。どんなに全力で漕いで回転数が充分あっても私の顔色が全然変わらないことに、同期が驚いていた。だがこれが実はいいことではなかった。普通は運動を始めるとすぐに交感神経だかが働いて心臓が速く拍動する。そういう反射があるものだが、私の場合はその反射神経がとても鈍いのだそうで、教授いわく、「反射神経年齢は130歳の老人並み」全力で走ったり度を超えた恐怖を覚えたりするとチアノーゼを起こす原因はこれだろうか？生まれて初めて、「これは生まれつき私の心臓が悪いせいでは？」と怖くなった。
三年生の時、大学の講義中に『我が子を喰らうサトゥルヌス』の絵をプロジェクターで見せられたとたん気分が悪くなって講義を途中で抜けたことがあった。その時、私はだいぶ顔色が悪かったらしく、教授が驚いて「早く家に帰ってゆっくり休みなさい」と声をかけて来たほどだ。家に帰って吐き気にうなされ、歌を歌って誤魔化してしのいだ。中学時代からそうだったが、貧血になると息が切れて苦しいので、歌を歌うことで呼吸を活発にすると少しマシになったのだ。結局、月経前症候群だったようで、翌日に生理がきて、しばらく具合が悪かった。
バイト代で懐が温まったのと、サトゥルヌスのせいで酷い目にあったのとで、ついに産婦人科を自分で受診する決意をした。高校時代の養護教諭の言葉を信じて、自分でよさげな産婦人科を探した。ちょうどこの頃に携帯電話でもネットで検索が出来るようになったので、産婦人科を探すハードルが低くなったこともある。大学の同期に見つからないように、住んでた街の隣街の裏通りにあった産婦人科を受診することに決めた。昔ながらの「料亭」という名の何か（）があるのと同じ通りに産婦人科はあった。そういう立地のせいと、既に分娩の取り扱いを辞めている診療所だったため、主に若い女性と更年期障害の女性しか来ないような所で、とても通い易かった。当たり前にピルを処方された。自費診療だが保険証の提示は必要だったので、母に産婦人科を受診したことがバレるとびくびくしていた。
月経困難問題はそれで解決。そこそこの日々を遅れるようになる。

Permalink | 記事への反応(2) | 13:05

■心室中隔欠損症をもって生まれた。

　心室中隔欠損症とは、文字通り心臓の右心室と左心室を隔てる壁の一部が欠損している、先天性の心臓病だ。手術さえ成功すれば予後は良いらしい。

　私の場合、心室中隔欠損症の合併症らしき肺高血圧症も患い、あとなんか動脈に異常があって手術したっぽいけど忘れた。心室中隔欠損症という病名がインパクトでかすぎるのが悪いな。

誕生 から 乳児期

私の記憶が確かならば、私は出産予定日の1ヶ月半も後に産まれたと母が言っていたが、そんなことってあり？昔だったから予定日が正確に出なかったのかなあ？
胎内にいた時には別に異常があるとか医者に言われなかったっぽい。
遅く生まれたわりに「未熟児」だったので、すぐ保育器入り。でも出生体重は2900g台だった。
父が言うには、異様にミルクを飲まない新生児だったらしく、最初からなんか怪しい感じだったそうだが、それを言うなら私の娘だって母乳やミルクを超絶飲まない子だったが、すごく健康体なのだが。
生後二週間後の検診で心雑音がみとめられ、あれよあれよという間に入院。生後11ヶ月に手術を受けるまで、入退院を繰り返すが、病気であること以外はいたって元気だったらしい。
入院していた病室には、重い心臓病の赤ちゃんばかり入れられていたが、私以外の全員が亡くなったらしい。
普通なら、体力のつく5歳頃まで手術は待つのだが、私の場合は病状が悪く、そこまで長生きしそうにないから早くに手術しようってなった。もし手術したせいで死んだとしても、赤ちゃんなら何も分かんないだろっていうのもあったようだ。
手術はかなり大がかりで、他の病院からも医師が見学に来るほどだったそうだ。
手術は恙無く終了。私、超元気。
医者や看護師さん達から可愛がられたらしい。そのおかげか、医療者への信頼と愛想の良さを持って育っていく私だった。
赤ちゃんだから何も分かってなかったと思われていたが、私は当時のことをちょこちょこ覚えている。はためくカーテンの黄ばみ、お気に入りのぬいぐるみとタオルケット。絵本を読んでくれた祖母など。
入院中、両親は仕事が忙しく見舞いにはあまり来れなくて、代わりに祖母達が毎日通ってくれていた。
一歳の誕生日は病院で迎え、重たい一升餅を容赦なく背負わされた。よく可愛がってくれた伯父伯母が来ていた。
退院後は、遠くの病院に結構な頻度で通っていた覚えがある。父の運転する車の助手席に設えられたベビーチェアに座らされた。椅子には自動車のハンドルを模したものがついていて、車がカーブや角を曲がる度に私はハンドルを回して、運転している気になっていた。カーステレオからカーペンターズの『トップオブザワールド』が流れて来ると、ウォウウォウウォウとノリノリで歌っていた。
たぶん2歳か3歳頃には、通院する病院が変わっていた。知らないうちに行き先が変わったことに対し、当時どう思ったかは記憶にない。遠くの大病院から、家から遠くない総合病院へ。
3歳頃までは、家の中で祖母と年子弟と過ごすことが多かったと思う。ほんとちっちゃい時は、祖母が押す一輪車（いわゆるネコ）に乗せられて畑まで行ったりしていた。
たまに一緒にいたはずの弟が記憶からきえている。祖母の自転車で本家のじいちゃん家に行った時は、弟も絶対いたはずなのだが。

幼児期

4歳頃、自転車を買って貰った頃から急にアクティブに外遊びをするようになった。庭の中にいる限りは、どんなに走り回っても祖母からはおとがめ無し。
やがて近所の子供達が私と弟と遊ぶ為にぞろぞろやって来るようになった。
定期的に通院するのと、胸に大きな手術痕が残っていることにより、自分は人とは違うという感覚は持っていたが、普通以上に活発な質だったので、病人の自覚は皆無だった。
一つ年下の従妹の方が、健康に生まれたわりには虚弱で、私は子供なりに気をつかった。
幼稚園に入る前には羞恥心が既にあった。
定期健診のとき、ちょうど研修医の団体が小児科に集合していたことがあった。何でか私は診察台にパンツ一丁で寝かされたが、そんな格好をしている周りにぞろぞろと若い医者達が取り囲んでくるのは、かなり恥ずかしかった。
レントゲン室の匂いがなんか好きだった。数ヶ月に一度ペースでレントゲンを撮った。普通の人の人生三周ぶん以上は撮っていそう。
この頃はまだ、ぶったぎられた胸骨を留めるためのセラミック製の針金のようなものは、ちゃんと円形を保っていた。末端をねじって留めて輪っかにしてあった。
レントゲン室の待合所は明るく、2階の心電図と心エコーの待合所は凄く暗かった。
あと、1階と2階を繋ぐ階段の手すりの下が子供一人軽く通れるほどスカスカで、吹き抜け屋根の2階、待合所の椅子の背から飛び降りようと思えば飛び降りられるようになっていた。子供の墜落防止措置が、私が通院を完了する18歳の頃でもとられていなかった。
小さい頃は、健診の度に手摺りから吹き抜けの一階を見下ろして、せっかく病気を治してもらえたのに、自分はここから落ちて死ぬのかもしれない、なんて妄想をしていた。
心電図をとるのに、たぶん20分以上かかった。途中、緑色のマットの上でパンツ一丁のままピョンピョンジャンプをしなければならなくて、それが息が切れるし疲れるので嫌いだった。
心エコーの部屋は真っ暗。エコー室の前室にまず通されるのだけど、座って待っていると私の前にエコーを受けた中学生くらいのお姉さんが、上は肌着一枚で背中を丸めてとぼとぼと戻って来る。そしてモソモソとブラジャーをつけ始める。プライバシーが絶妙に守り切られていない感じ。
心エコーを受けている最中、横を向かされるとドアに貼られたポスターが見えた。暗いのでよくわからないが、なんか動物のキャラクターが沢山描かれていたような。毎度、ゴリラ？ゴリラなのか？って思う。
エコーの時に塗るゼリーがぬるぬるベトベトするのが好きで、エコーの機械が肋骨をゴリゴリするのが嫌いだった。
健診には途方もない時間がかかった。午前9時くらいに病院に来て、下手すると帰りは夕方6時。ただでさえ多動気味の私が我慢できるはずもなく。ずーっとしゃべり倒している私を、母は無視して『女性自身』を読んでいた。絵本を読んでくれたりとかは、あまりなかったなぁ。

幼稚園 時代

ずっと自覚がなかったが、私は走り回るわりには絶望的に走るのが苦手だということに、幼稚園に入園して初めて気づく。走るとすぐに息が切れ、疲れてしまうのだ。
身体が大きくなっていくにつれ、身体の重さと心臓のパワーのバランスが崩れていった気がする。
どんどん、運動が苦手になっていった。とにかく走れない。入園したての頃には楽々こなしていた、タイヤの馬跳び跳び箱ができなくなっていく。
幼稚園の健康診断の時、お遊戯室に肌着とパンツ姿で集合するのだけれど、階段を上がる時に列の前後の女の子達が、「それなあに？」と無邪気に胸の傷痕をベタベタさわろうとしてくるのが嫌だった。指で傷を上から下までツーッとなぞるのが、気持ち悪い。
私が「心臓病の手術のあとだよ」というと、女の子達が一斉にサッと引いて、「気持ち悪い！うつるの？」と聞いてきた。それがショックで、聞いてきた女の子ジュンコちゃんの嫌悪感丸出しの表情が、今でも忘れられない。
私はジュンコちゃん達に「先天性の病気は生まれつきだからうつらないんだよ」と説明したが、誰も「先天性の病気」という言葉を知らないし、いくら説明しても理解してくれないことがまたショックだった。
私自身は、今も昔も自分の胸の傷痕をとくに気にしてはいない。私にはなくてはならないものと感じている。子供の頃は、弟にも四つ下の妹にも胸の傷がなく、ツルツルの肌をしていることが不思議に思えた。
幼稚園では気持ち悪いと言われ、一瞬バイ菌扱いされたが、先生が物凄く怒ってバイ菌呼ばわりしてきた子達を叱ったので、すぐにバイ菌は言われなくなった。
幼稚園でバイ菌呼ばわりされたことを私は家で言ったのかなんなのか、父がいきなり、「その胸の傷はお父さんお母さんじいちゃんばあちゃんの勲章だからな。お前が今生きていられる証なんだから誇りを持ちなさい」とか言い出した。私はそもそも傷痕自体にくよくよすることはないのだが、家族から大事にされている印と見ればそう無下には出来ないもの的なことを思った。
幼稚園の担任の先生は、私の病気に理解があるところとないところがあった。私が病気のことでバイ菌扱いされるのを先生は許さなかった。一方で、普段は普通に走り回っている（すぐに疲れて立ち止まるけど）私を運動会のリレーから外した。私は走れる子達から「ずるい！」と詰られるのが嫌だった。
『仮面ライダーブラック』かなんかで、余命の短そうな心臓病の女の子？が登場する回があった。なんか凄く悲劇的な話だが、それに引きかえ私はこんなに楽天的に生きていていいのか？的な疑問が湧いた。ちなみに、仮面ライダーの話だし、心臓病の子は手術に堪えて命が助かったエンドだった……はず。
私も仮面ライダーに元気づけられてみてぇとも、たぶん思った。
6歳の頃、身長はクラスで二番目くらいに大きくて、たぶん既に120cmあった。足のサイズが19cmもあった。19cmの、プラスチックで出来たトゥシューズっぽい靴を履いた私の足を「すらりとして羨ましい」と母が言ったので、足のサイズを覚えてしまったのだ。
幼稚園の頃は、定期健診の日の朝イチに母が病院に診察券を出しに行き、その間私は病院に近い母の友人宅か祖母の友人宅に預けられて、その家の子達や近所の子達に混じって集団で遊んでいた。
その集団の中に、凄く薄幸そうな美少女がいた。その女の子は口蓋裂かなんかの病気だったようで、唇が『鬼滅の刃』の伊黒小芭内みたいになっていた。その女の子は私の胸の傷痕を観て、「私達、同じ仲間だね」って言った。たった一日限りの関わりなのに凄く仲良くなった。

小学生 時代

　幼稚園で同じクラスだったガキ大将と共に、就学前健診で引っ掛かり、以来、健診のたびに皆とは別に二人で心電図を受けることになった。低学年の頃は男女一緒の場所で受けさせられたので、タコ吸盤と巨大洗濯ばさみに拘束されている間、退屈しのぎに見詰め合ってへらへら笑ったりなどした。

いたって健康そうなガキ大将が毎度健診に引っ掛かる理由は、彼の妹が川崎病だったかららしい。
子供ながらに、毎春休みに病院で受ける健診結果を学校に出せば、学校での健診居残りは必要なくね？と思っていた。
一年生の夏休みに、いつもの健診でエコーの順番を待っていた時、初めて自分と同じ病気の子供に出会った。一つ年上の男の子で、5歳くらいの時に手術を受けたんだったか。意識がバリバリある時期に手術で痛い思いをしたというだけで尊敬に値する的なことを思った。
彼は心臓を患っていても運動が得意らしく.一輪車にも乗れるというのが、すごいと思った。
彼のお母さんは、男の子は水泳の授業で上半身裸になるから、傷のことでいじめられるかもしれなくて可哀想で……と嘆いていた。私は「大丈夫、私女だけど傷気持ち悪いっていじめられたことあるよ！」とフォローにならんことを言った覚えがなきにしもあらず。
私が赤ちゃん時代に余命10年と宣告されていたことを、父方の伯母二人が悪気なく私に言った。私は物凄くショックを受けてしまった。
もうすぐ私は死ぬ、みたいなことを思ったら過呼吸発作を起こしてしまった。祖母が慌てて母に電話し、母によって私は病院の救急外来に運ばれた。だが、精神不安での過呼吸なだけあって、お医者の白衣を見ただけでケロリと治ってしまった。
二度過呼吸を起こして、母からは仮病を疑われた。主治医は念のために昼間の日常活動の心電図をとりましょうといった。
そんなわけで、一週間か二週間、ポータブル心電図とどこでもいっしょ暮らし。小学校の担任の先生が私を心配して体育を見学させた。
普段通りに過ごせって医者はいったけど、体育の見学って普段通りではないのでは？と疑問が湧く。あと、やっぱり同級生にはズルいって言われた。
元々、祖母はある新興宗教に傾倒していたのだが、私が二度も過呼吸を起こしたことでますます宗教活動にのめるようになった。とはいえ、毎朝神棚に榊とご飯をお供えしてお祈りをするだけの活動が主だった。お布施くらいはしていたかもしれないが。
祖母は夜寝る前に私が元気に過ごせるようにお祈りをした。お祈りはよく効いたと思う。
祖母と一緒に宗教の道場へ泊まりに行った。神様に助けてもらう為とかなんとか。
それ以来、宗教団体から子供向けの機関紙が届くようになった。裏表紙に、人間の生殖の話が書いてあった。精子と卵子が出会って結合することにより赤ちゃんになるとかなんとか。その宗教には、神様は人間達が楽しく暮らしていることを望んでいるという、やたらポジティブな教えがある。男女手を取り合い、子供を沢山生んで陽気に楽しく暮らしましょうとかなんとか。
宗教に私はハマらなかったものの、宗教を通じて神様への信頼感を得た。そのおかげか過呼吸発作は起こさなくなった。
赤ちゃんの頃から、夕方が嫌いだったなと、夕方に限って過呼吸発作を起こしたことで思い出した。たぶん、赤ちゃんの頃の入院時代、夕方はお見舞いにきた祖母達とバイバイする時間だったから、寂しかったのだろう。
健診の度に、母が心配するようになったのは、私の命そのものよりも、私が将来子供を産めるかどうかということと、私を小学校のバレー部に入れても大丈夫かということだった。
この頃には、心肥大が治りつつあって、運動は制限なくやっていいし、将来子供を生むこともできるだろうと言った。
宗教によって、子孫繁栄をうっすらポジティブに思っていたのが、母が健診の度にしつこく「この子は将来子供を産めますか？」と医者に聞くので、子供を生むということにプレッシャーを感じるようになってしまった。
小学三年生の頃、友達が市営プールで遊ぶのにハマった。その子はお金持ちの一人っ子だったので、その子の親が「うちの子と遊んでくれる子は大歓迎」と言い、わざわざプールに一緒に連れていってくれてお金まで出してくれた。
友達に半ば強引にウォータースライダーに引っ張っていかれ滑った。私は怖くて指導員の注意を無視し、滑ってる最中に上体を起こしてしまったのだけど、そしたらスライダーの屋根のない部分から危うく外に放り出されそうになった。
恐怖で心臓が止まるかと思って、プールから上がり友達のお母さんのもとに戻ると、友達のお母さんは血相をかえて友達を叱った。私の唇や手足の爪が真っ青になっていたからだ。「増田ちゃんは心臓が弱いんだから無理させたらダメじゃないの！」と。
私自身は心臓が弱いという気はしていなかった。主治医も、もうすっかり健康だから激しい運動だって少しなら出来るよ、遊びや体育は皆と同じに出来るよと言った。心臓の大きさも、もう人並みに近づいているはずだった。なのに私には、この当時も今も、医者には否定されるがビミョーに不調、ということがたまに起こる。
幼稚園から小学校低学年の頃は、走ったらすぐに疲れてしゃがむようなところもあったが、四年生になるとすっかりそんなことはなくなった。
四年生の担任は大学卒業したての新米の男性教諭で、心室中隔欠損症という小難しい病名を持った私の扱いが、最初はわからなかったようだ。それで持久走を私だけ見学させようとしたが、同級生達の「ずるい！」コールが酷かったのと、私は元気一杯で走りたかったのとで、先生は私を持久走に参加させることにした。ただ、いつ具合が悪くなっても対応出来るようにと、先生は他の子達の様子も見つつ、私の横を並走しては「大丈夫か？」と声をかけてくれた。四年生の頃の体育の授業は目一杯身体を動かせて楽しかったので好きだった。
小五の終わりくらいに初潮を迎え、それから一気に体調が悪くなった。定期健診は半年に一回だったか年一だったか忘れたが、何の問題もなし。生理で貧血を起こすとすぐにへたばる。経血量が多い方にしたって、それでもダウンするのが人よりも早すぎやしないか？と思った。
部活は母の希望を蹴って吹奏楽部に入り、コルネットを吹いていた。息を使う役割だけれど、別に苦しくもない。ただ、急に太ったせいで走り込みが辛かった。生理中に元気がすごく無いのは言わずもがな。
6年生の頃にクラスで『幽遊白書』が流行り、私もテレビで観ていた。物語の終盤辺りに「軀（ムクロ）」というキャラクターが登場する。彼女は自身の身体の傷を飛影に見せて言う。「今ではこの半身はオレの誇りだ。治す気もない」生まれて初めて自分と似たような考えを持った人を見た気がしたが、大人になってから原作漫画の単行本を読み返してみたら、彼女は傷は誇りという境地にたどり着くまでに1000年くらいかかった人だということがわかったので、やっぱ私とは同類っぽくなかったと、ちょっとがっかり。
生理の度にダウンする、という不調を抱えたまま、中学に上がる。

Permalink | 記事への反応(1) | 05:51

なお、僕自身も自分でやっすい医療保険に入ってるんだけど、これは心臓も保障される筈。

でも大腸が保障対象外。数年前に虚血性大腸炎にかかって検査入院したら「潰瘍性大腸炎の疑い」ってカルテに書かれたらしくて、それで大腸が保障されなくなった。

僕の心臓の病気は「心室中隔欠損症」っていうんだけど、合併症もあって重かったが、赤ん坊時代に手術して以来健康体。その後長らく定期的に検査で通院していた。18歳で完治したので経過観察終了の御墨付きが出た。

保険入る時には担当者から別に何も言われなかったな。

Permalink | 記事への反応(1) | 15:09