はてなキーワード: 分不相応とは
つもりなだけで、分不相応なんじゃない?
「担当だった私の顔写真まで貼られてしまいましてね。逃げ場を断たれたと思いましたよ」
コンサルタントは、婚活レースにおける敏腕コーチとして祀り上げられる。
しかし言い換えるならば、夢追い人を増やして生殺しにする罪も大きくなったということだ。
「母数が多いから成功者も多いと誤解しがちですが、実際に結婚までいけたのは三割ってところです」
「打者なら上等ですな」
そこを明言せず宣伝し続けるのは欺瞞だろうとコンサルタントは言った。
「いい加減な仕事をしているとは思っていません。真摯に対応してきたつもりです。それでも結果は伴いません」
何とか止めようとしても改善せず、裸一貫の血だらけで走り続ける者はいる。
そんな惨状に何度も居合わせ、自分は返り血で真っ赤だとコンサルタントは言った。
「婚活が上手くいかない人に対する、周りの風当たりが強いのも問題でしょう。たまたま上手くいった人たちや事情を知らない人は物知り顔で、厳しい態度をとりがちです」
そのせいで当人は余計に意固地になるか、ふさぎこんで前を向けなくなってしまうという。
それではマトモに進むことは出来ない。
泣き言も許されない環境で、それでも走り続けられる人間は少ないだろう。
「何か言いたいって気持ちも分かるんですけどね。しかし分不相応だとか、あなたの尺度や都合で決め打ちしてはいけない……なんてこと言うわけにもいきませんからね。こちらは現状の説明や、ノウハウを教えることしかできない」
しかし結婚できるかどうかというのは最終的に運だと、コンサルタントは声を強める。
麻雀のプロが素人に負けることがあるように、勝率を上げる要素は多分にあっても、それが決定打とはなりえないのだという。
「何がよくて何がダメかなんて、本当のところは誰にも分からないんです。それでも私の場合、仕事でやっているので何か言わざるをえませんが」
タケモトさんが見かねてライターを差し出すが、静かに断りのポーズをした。
「昔は自由に恋愛も結婚もできなかった社会でした。しかしこういう仕事をやっていると、今をいい時代と捉えることはできないんですよね。煉獄に片足を突っ込んでいるように感じます」
「あの、そろそろまとめに入ってもらっていいですか」
コンサルタントが物思いにふけたあたりで、休憩時間は残りわずかとなっていた。
野暮ったいとは思ったが、タケモトさんは結論を急くことにした。
「その話をしたのはなぜなんです。とどのつまり、オレはどうすればいいんで?」
「ちゃんと走るのを忘れないことです。後先を考えることは大事ですが、まずこのレースを走りきってください」
走るためのコンディションが調えば、後は走るしかない。
「成功率を上げるのに必要なのは“選ぶ側”と“選ばれる側”の意識、その両方をバランスよく持つことに集約されます」
“相手に何を望むか”と“相手が望むものに応えられるか”は地続きだ。
その考えが地に足をつけて、次の二人三脚レースを走るためにも必要なものとなりうる。
そうコンサルタントは語った。
「しんどいなあ……」
そのことを理解はしたものの、タケモトさんは息を重苦しく吐きだす。
「やる気を出しても、跳べないハードルを今すぐ跳べるようになるわけじゃないですし」
「そこは開き直ることも大事です。ハードルを倒してゴールしても失格にならないんですから」
ハードル走では、わざと倒したりして跳ぶ気が一切ない限りゴールは認められている。
「結婚はゴールじゃないと言う方はいますが、婚活レースにおける紛うことなきゴールですよ。だから手を抜いて走ってはいけません」
「……まあ、ゴールしたきゃ進むしかないですわな」
タバコの火を消すと、タケモトさんは渋々といった感じで喫煙場を後にした。
面白い。
Bが予算オーバーな時点でまさに分不相応。買う側に相応の価値がないということなのでBは買うべきではない。つまりAを買う。
Aで事足りなくなってから、AからBに乗り換えるリスクを改めて考える。今考えたところで状況は変わるし。Bがより安く高性能になったり、Aを経ずBを買って間もなく不慮の事故(破損とか)あるかもだし。身の丈にあったものが壊れるならともかく、身の丈に合わないもので壊れたら割と長く後悔すると思う。異論は認める。
というか悩んで結局買わないというのはある意味節約としては正しいんじゃないか。なくても現状困らない訳だし。壊れてすぐに買わざるを得なくなって、その時買えるいいものを多少割高でも買うために、貯金しとくってのもありかもしれない。
1.買い物などのために自転車がほしいと思った
2.2万円程度で買えるなら、優先度が高い
3.どうせ買うなら電動がいいなと思った
4.電動なら8万円を超える
5.8万円を超えるなら、優先度が低い
6.買い替えが嫌なので、2万円の自転車を買うこともない
7.結果当分買わない
8.でも本当は自転車がほしい
1.Aがほしい
2.AがX円で買えるなら、優先度が高い
3.どうせ買うなら良いやつが欲しい
4.良いやつはY円する
5.Y円ならば、優先度が低い
6.買い替えが嫌なので、X円のAを買うことはない
7.結果当分買わない
8.でも本当はAが欲しい
もっと何も考えずにノリで買えよ
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・冷蔵庫(3年)
・机(1年 自作したい)
・Mac(40万円)
・カメラ
・絨毯やカーペット
・かばん(1年)
共通点:でかい、重い、1つあれば十分、買うのに悩む、売りにくい、とか?
意を決して買ったもの
たぶん意志が弱いんだろうな
いつ買うんだろうな〜と思いながら1年以上経つの草
どの商品が良いか、調べるところまではやるんだけど、そっから放置する
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◯わかりづらい解説
A,B、どちらか1つあれば十分な場合、AからBにアップグレードした時に2つになってしまう問題がある。
それの対処は「Bを買った後にAを売る」「Bを買った後にAを捨てる(あげる)」「Bを買った後にAを放っておく」「Aが壊れたらBを買う」「Aを買わずBを買う」などあると思う。
「売る」ができると非常に嬉しいが、「売れない」「売るための手間が大きい」商品は結構ある。
更に「耐久年数より前にアップグレードしたいと思っている」とき、「Aが壊れたら」の選択がとれない。
残る選択肢は「Aを捨てる(あげる)」「Aを放っておく」「Aを買わずBを買う」。
あげる、放っておくというのは価値の放棄なのでもったいない、となれば「Aを買わずBを買う」が残るんだけど、
Bは高いため、今時点の予算がオーバーしてしまう(他の商品CやDやEと競合する)
Bが高いせいで優先度が相対的に落ちて、購入が先延ばしになってしまう。
結果、Aの価値もBの価値も得ることができない期間が生じる。と言う現象。
例外:
・消耗品
・2つになっても気にならないもの
・十分に安い場合
→これら例外を除外すると、該当するのは家具や家電などのデカブツとなる
(特に捨てるのが億劫とか、捨て方が分からないものはより顕著になる)
あとは血圧計のような売れない類の機器とか、サービスとかも入ってくる
考察:
これが少し厄介なのは、比較軸が「AかBか」という単純な構造をしていない点だ
時間軸と、CやDやEという別の選択肢が混ざっていてるから、評価変数が複数あって混乱するんだ
そのうち考えるのが面倒になる
たぶん私の間違いは、多く指摘されているように「3.どうせ買うなら〜」の部分だと思う
昔は「いっちゃん安いので!」って事が多かったけど、少し稼げるようになって「背伸びすれば良いの買えそう!」となってからおかしくなった
たぶん予算の使いみちを決める人とかもこういうの悩むんじゃないかな
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「既にAを買った場合に買い替えづらい」のようなコメントがあるけど、これはこの現象と表裏一体だと思う
たぶんAを買ってしまったら、Aが壊れるまでもったいないからBを買わないんだと思う
特にデカいものはそう(エアコンとか照明とか。前の家では照明が無い真っ暗期間があったw)
要はケチなのか?アホなのか?
実家暮らしの人に「一人暮らしすれば?」って言うと怒り出すようなイメージがある。
それか、「今の収入だとキツい」とか言われる。
でもさあ、家にいくら入れてるんだか知らないけど、その金額で一人暮らしはできないっていうなら、分不相応なハイレベルの家に今住んでるっていうことだと思うんだけど。
月3万とかで広くて自分の部屋もあって車もあったりして。しかも家事をお母さん任せだったりしたら、家事の仕方も身につかないよね。
そういうことを言おうとすると、「家事は適度にやっている」とか「両親に出て行かないでほしいと言われている」とかで、’実家暮らししか選択肢はないんだ’って感じで、話を終えようとする。
「仕事が終わって寝に帰るだけのスペースの為に10万とか使うなんて馬鹿らしい」とかも言われる。
でも本当に寝に帰るだけなら狭い部屋でベッドがあればいいんだから、探せばもっと安いところあるのに。
とまあ、この時点でなんだか険悪な雰囲気になっちゃうのでこれ以上はこの話を続けられない。
お母さんが食材を買ってきてくれて、大きな冷蔵庫に保管してくれて、料理してくれてるのって全部タダで得られるものだと思ってるのかな?(洗濯にしても同じ)
何十年後かにお父さんもお母さんも亡くなって、その家に自分だけで暮らすことが理想なわけではないんだよね?
一人暮らしという無駄な出費を抑えて、結局お金はどれぐらい貯まったの?
険悪になっちゃうから言えないけど、一人暮らしのメリットっていっぱいあるよ。
まず、自分で何でもコントロールできること。今日はこれが食べたいと思えばそれを食べればいいし、作る気になれなければ’食べない’って選択肢もある。
夜遅く帰ってきたり、誰かのうちに泊まっても、お母さんに「昨日遅かったわね」とか言われない。
家族と同居するっていうことは、人の気配が常にあるということ。自分の存在がある程度把握されているということ。これがなくなるって思いのほか楽しいことだよ!
一回一人暮らししてみて、寂しいんだったらまた戻ればいいよ。
でも一回自分で物件見つけて、家賃払って、水道光熱費払って、インターネットの工事して、自分の食べものは自分で用意して、自分の洋服は自分で洗濯して、自分が汚した部屋は自分で掃除してみた方がいいよ。
今払っていないお金を使うことになるのが不安になるのはわかるけど、意外となんとかなるよ! 人間あるお金でやりくりするしかないんだよ。
もし行き詰まったら実家に戻ればいいよ。
というわけで一回一人暮らししてみたらいいのに。
※ある程度の収入があるのにいつまでも実家暮らしの兄に向けて書きました。介護をしている、自分が世帯主となって親を扶養している、ひきこもりニート、事業を起こす為の軍資金を貯めている、等々事情があって実家を出られない方や、この先実家を出る予定の方への文章ではございません。
学歴ってこの社会を生きるには便利になるもんだと思って勉強して大学入ったけど、地頭の追いついてない、分不相応な大学に努力して入ったところで、その努力を続けられないと、大学を出た後に重石になったりするんだな
大学入学までは頑張って勉強したけど、入った途端に遊びまくってろくに授業も出ず適当にやり過ごして卒業したから、何も身についてないわけ
身についてないどころか、頭を使うってどうするのか忘れた。何にしても思考するのが面倒になってしまった。
でも会社のやつは○○大出てるから頭良いんだよねみたいな感じで俺を見てくる。
国立理系大卒って肩書きは世間的に良く見えるだろうし、俺もそう思うけど、俺自身はその肩書きに見合った能力はないんだわ。
まあそんな無能俺だけど、この学歴のおかげで盆明けには昇進してしまうんだよな
学歴って辛いな
自分には分不相応と思ったけど、招待されたし調べて恥ずかしくない格好で行こうと頑張ったんだけど。
麻のワンピースは、スーパーで買ったのかな?(ナチュラル系のブランドは分からないけど)
ドレスコード指定は無し。でもじゃらんではハイクラス扱いだし、と思ってスマートカジュアルにしたのに、それでも浮いてる私。
(黒のセットアップに、地味になりすぎないようにシルバーの大ぶりイヤリングとバングルを合わせた。一応、よそ行き用の普段着)
おっさんおばさんらの集団が居酒屋ばりに騒いでてここファミレス?って。
同行者が乳飲み子連れなのもあり得ないと思ったけど、びっくりするくらい大人しくて○。
なのに、おい、大人!
これが地元の高級ホテルかと思うと、恥ずかしい。(同行者は県外からのゲスト)
もう、すごく楽しみにしてたのに、すべてががっかりで朝からおめかししてった自分が悲しくて、地元民として情けなくて。
すごいがっかり
男の人もそうじゃない?
綺麗でスタイルがよくて、料理もできて、とか芸能人で○○みたいなってそりゃ誰でもそんな人が彼女ならいいわって人言って鏡で顔見てみろよ、稼いでから言えみたいに言われる人も珍しくないと思う
あと結局顔と体しか見てない料理とか考えが古いみたいな人間性や価値観自体の否定や非難とか
テレビでもさえないオタクみたいな人が街頭インタビューとかで好み聞かれてアイドルとか女優さんで答えさせられて笑いのネタにされてるの結構ある
分不相応、どの立場で言ってんの?お前が?その感じで?って嘲る笑い
女性の好みは?って言ってぽっちゃりした人好きですね、家事もできなくてもいいです、年齢もステキだと思えば関係ないです、みたいな男性が賞賛されるのと同じだと思う
好きに言えばいいと思う
ブスとかババアって言ってくる層の人間に受け入れられたいんだ、そういう人たちが自分の女としての発言の自由を握ってるんだ、そういう人達の評価が気になってしょうがなくて言えないんだって思うなら仕方ないけど
利尿剤や下剤などの薬物服用、過食嘔吐などを含めた不健康なダイエット方法のこと。通称病みダイ。
※この記録は無理なダイエットをお勧めするものではありません。むしろ、心身ともに破壊されます。絶対にやめましょう※
☆
私は幼い頃から食べることが好きだった。朝も夕飯も机に一汁五菜は軽くないと拗ねる父親と、料理大好きでそんな父のリクエストにも軽く応えてしまえる調理師免許持ちな専業主婦の母親の元で育った。ちなみに、お昼は幼稚園〜高校と全て私学に通ったせいで給食というものに縁がなく、15年毎日母親の手作り弁当をぶら下げていた。
想像に難くないと思うが、育ったのは年齢だけではなく横幅も順調に大きくなった。なんと小学校6年の頃は160cm 75kg、高校を卒業する頃には165cm 120kgと、小さい頃から大きくなるまで痩せていた期間がまるでないエリートデブの道を歩み続けた。
高校卒業後は医療系の大学へ進学し、日々講義や試験、実習に追われる中で次第に「このまま社会人になってもあまりにもデブすぎて患者さんに説得力ないよなぁ……」などと思い始めた頃に、1年を通した病院実習が始まった。その実習では、比較的学年の中でも声の大きい男子を含めた3人と一緒になった。
声が大きいだけで真面目というわけではなく、講義はサボるし実習も出来る限り出ない。課題は出来る学生のものを借りて写す。テニサーの女好きで、まあ、いわゆるクソみたいなパリピ的存在のやつだった。
あー、多分実習の課題は全部私が見せるんだろうし、代返もさせられそうだし面倒だなと思っていたところ、実際その通りの展開となった。「どうせ君真面目だから全部見ていくでしょ?俺早く帰りたいから早めに抜けるわ。悪いけど、学生1人いれば先生の班への印象もいいもんで最後まで残っておいて」などというお願いは日常茶飯事で辟易していたが、文句を言って関係が悪くなるのも嫌で黙って従っていた。
そんな折に彼が別グループの男子学生たちに向かって、休憩室で「いやまじアイツと一緒とかないわwwwこう、もっと可愛い女の子と一緒に実習できるの期待してたのにあのデブスと一緒なのはマジ最悪www」とこれ見よがしに言っているのを聞いてしまった。
実際彼としては本心なのだろうし、普段なら受け流せた発言だったはずだ。エリートデブとして培われたデブやブスといった単語に対する免疫力を舐めないでほしい。ただ、その時は課題のことや出席のことなど散々肩代わりしてやっていた頃だったため、「(お前散々人に迷惑かけといてその言い草はなんなんだよ)」とそっち方面でイラついてしまった。
そして、このままではあまりにも自分がデブ過ぎて医療関係者としての説得力にかけるという自覚もあったために、ダイエットを決意した。
実習は忙しく、生活自体が気をつけないといとも簡単に破綻する。食事制限するにはもってこいだった。まずは食事をイベント(上の先生が奢ってくれる、友達とご飯に行くなど)以外では極力摂らなくなった。
しばらくすると、何かを食べようとしても食べることへの罪悪感から物が胃に収まらなくなった。友人たちと食事をして帰宅するとそのまま猛烈な吐き気に襲われて、トイレで全部吐いてしまう。食べることは好きだけど、そのままでは太ってしまう。味を感じられればあとは吐けば良い。そういった思考に陥り、ここから過食嘔吐生活が始まった。
ご飯はそこそこ食べるのだが、しばらくすると吐いてしまう。そして吐いたことによってスッキリする。体重計に可能な日は朝夜寝る前と乗り、前回より10gでも増えていると耐えられなくなった。市販の下剤を飲んだり、長風呂で汗をかいて数字だけは減らす日々。最終的にはあんなに好きだった食べることさえも苦痛となり、ほぼ絶食状態へ。
ただ、流石に缶コーヒーを週で2本しか飲まなかった時は、病院へ行く電車に乗ろうとして意識がブラックアウトしてしまった。電車とホームの間に落ちた私を助けてくれたOLさん、サラリーマンのお兄さんには感謝しかない。
そして体重の推移を事細かに記載し続け、2年で50kgほどの減量に成功した。max125kgはあった体重が、75kgまで減った。
途中、1ヶ月で20kgほど体重を落とした際は体重減少性無月経や低体温に悩まされたりもしたが、体重を落とす速度を緩やかにした結果改善した。一時食事が食べられなくなってしまった身体は、母親の献身的な支えによって今まで通りに食事が取れるまでに回復した。
今考えると人外かというレベルの三桁デブを卒業した私は、その後は一応デブな人間として生きることができた。なにより、デブ御用達の大きいサイズ専門店ではなく、その辺の普通のお店で服が買えるようになったことが一番嬉しかった。
大学を卒業し、リバウンドもなく2年間は社会人として仕事を続けた。3年目になり、異動した先の職場はかなり激務だった。食生活も乱れまくり、気がついたら体重は10kgほど増え、85kgほどになっていた。流石にこのままではやばいと思い、再度生活の見直しを始めた。なるべく体を壊さずに、ジム通いや食事内容の変更をするように心がけた。その後、通っていたジムの周辺で連れ去り殺人事件が起きたことからジムだけはやめてしまったのだが。
そんな折に職場の同僚が、長らく付き合っていた彼女と遠距離の末に別れたという話を聞いた。何やらとても美しく優秀な女性だったようで、彼としては結婚も考えていた相手との破局に未練タラタラだった様子であった。
「君も早く彼氏作ったら?」
「いやー、私デブだしブスだし無理かな。今は仕事も忙しいから、そのうちね」
私も親からここ数年結婚に関しては強く言われ始めていたが、自分の容姿が一般男性ウケしないことは誰よりも重々承知していた。だからこそ、まずは自分の見た目をなんとかしてからでないと、恋愛や結婚を考えるなど分不相応だという気持ちが強かった。男性側からしたら、こんな見た目の女に好かれても迷惑としか思えない。
別に同僚はただの同僚であり、入職から今までなぜか常に私に対しては上から目線が強かった男だった。そんな彼からの面倒な詮索に関しても、適当にあしらって話を終わらせて帰ろうと思った。しかも自分の元カノの容姿、性格その他ひたすら褒め続けるのを聞くのにも疲れた。適当に自分を卑下して話の腰を折り、さっさと撤収に限る。しかし、それがなぜか彼の変なスイッチを入れてしまったようだった。
「どうせ自分の見た目がダメだから、とかいうんでしょ?正直言ってそれはそう。太ってる女が好きな男はまずいないから。俺も細い子が好きだしね。男はね、女が男の顔しか見てないのとおんなじで身体が良ければ顔とか性格は割とどうでもいいんだよ。」
「はぁ……?」
突然何を言いだすんだこいつ、と思ったが彼の勢いは止まらない。
「君はまず痩せること。痩せればモテるよ。胸もデカいし、綺麗になると思う。だから明日から君はご飯食べちゃダメ!ファスティング!!筋トレ!!!わかる?ファスティングと筋トレだからね!!」
「」
「あと男を見つける努力が足りない!!ちゃんと婚活とかしてる?あ、みんなで出かけた帰りとかよく飲み屋街でナンパされてるの見けど、あーいうのに着いていけば良いじゃん!簡単に男できるし、新しい世界が広がるよ」
「いや、そういう明らかに一杯飲んだらこのあとホテルへ的なのは……」
実はこの1年前くらいに、知らない男に夜道で車に無理やり乗せられかけたことがある。そのときは抵抗して逃げ切ったが、今でもあの時のこのまま車に入れられたらどこかで知らない男に犯されていたかも、下手したら殺されていたかもと言った恐怖が色濃く、それを伝えた上であまりそう言った話題は、とお願いした。通っていたジム付近での殺人も女性が連れ去りの果てに殺されたというものだったため、余計に怖かったのである。
「んー、俺の彼女もよく声かけられてて大変だったけど、そんな雰囲気なかったよ」
「それはすごく美人さんだから、手軽に犯せそう!みたいな軽いタイプが選ぶ相手じゃなかったんだよ。意外とそういうところは相手選ばれてるよ」
「ふーん。まあ、君の場合は身体から始まる関係もありじゃない?まずは行動あるのみ!今度はそういうのにも着いて行ってみなきゃ!世界を広げよう!!」
愕然とした。こんなに気軽に性犯罪に巻き込まれるかもしれないような提案をされたこと、そうでもしなければ男なんかできないと言われたことがショックだった。
確かに私はデブだし、ブスだけど私にも人を選ぶ権利、出会いを選ぶ権利はあるはずなのに。ほぼ同じ内容のことを、その日の夜に別の同期と3人で出かけた時にも言われた。別の同期がトイレに立つと、私に言いたいことをぶつけてくるという状態であった。
それ以来精神的に参ってしまい、同期がいる前では満足に食事をとることが出来なくなった。それでも腹は減るため、職場で我慢した分家ではありえないほど食べてしまう。そうすると罪悪感で吐く。過食嘔吐が再発した。マロリーワイス症候群のようになり、血を吐いたりもした。
この時、別の同期は3人で卓を囲んでいた時もその時の飲み会での私への態度が酷かったことに、ひっそりと気付いていたらしい。
「気を遣わせてごめんね、ありがとう」
「でもあいつなんて言ったと思う?『あのくらい言っても良いくらいの関係は築いてるから大丈夫』とか言ってんだぞ?クズか?」
親しき仲にも礼儀あり、とはよく言ったものである。過食嘔吐に苛まれながら、さらに職場で彼と会うことが苦痛になった。なんと、それ以来私にあれだけ断食しろと言っておきながら
「パン余ったんだけど、食う?」
「飲み会やるんだけど、来てよ」
と、職場で声を掛けてくるのだ。パンなどは断ったが、もしかしたら飲み会などは誘いに乗るしかなくて物を食べている私を内心馬鹿にしているのかもしれない。お腹が空いてごめんなさい、ご飯を食べてしまってごめんなさい。後で全部ちゃんと吐いて綺麗にします。
エスカレートした被害妄想は止まらなくなり、仕事に行きたくなくて、消えない食欲の罪悪感から彼の顔も見たくなくてしょうがなくなった。でもデスクは隣だし、仕事も被っている。どうしても無理だ。昼休みを隣のデスクで過ごすことも苦痛で、女子ロッカーの椅子に腰掛けて過ごすようになった。
何らかの方法で胃を悪くしてご飯が食べられなくなれば彼は許してくれるのではないか。ふと、そんな考えが頭をよぎった。
これは名案かもしれない。
簡単に胃をやるとすれば、数年前にダイエットしていた時に一番効いたのは、アイスコーヒーの1Lパックを1日で2本弱飲み干した時だった。なるほどカフェインは胃酸の分泌を亢進させる働きがあるから、胃は傷めつけられそうだ。ついでに利尿効果もある。ちょうどいい。
カフェインについて調べると、そういえばエナジードリンクと錠剤の併用が原因らしいという死亡事件が一時期話題になっていたことを思い出した。カフェインは人間は個体差はあるものの、ある程度摂取が可能だが、その他の哺乳類にとっては猛毒である。また、人間にとっても中毒域と致死量の幅が狭い。嗜好品としてのコーヒー程度ならば問題ないが、錠剤の多量摂取は気軽にやると急性カフェイン中毒を引き起こすし、下手をすれば死んでしまう。
ならば、中毒域に入らない程度でカフェインを飲んでいい感じに胃を悪くしてやろうと思い立ち、ドラッグストアでカフェイン剤を購入した。
家に帰って1回2錠1日2回までと書いてあった箱を開けると、茶色い錠剤が20錠出てきた。とりあえず2錠飲んでみたが、何の変化もない。
時計を見ると17時半。明日から仕事であることをまた思い出し、次第に同僚に会いたくない気持ちと恐怖と嫌悪感がむくむくと頭をもたげだ。いっそ身体が壊れればしばらく休職できるかもしれない。頭の中でカフェインの中毒量と致死量を計算した。体重換算で一箱飲んだら中毒量は超えるが、致死量は全然超えない。まだ両親も健在で、死ぬわけにはいかない。全部飲んでも死なないなら、いっそ全部飲んで身体さえ壊れてしまえばいいのでは。仕事を休みたい。
気付いた時には20錠分の空のPTPシートを手にしている自分が、床に座り込んでいた。
タイミングよく実家の母親から電話が来た。何を言ったのかは朦朧としていたためにあまり覚えていないが、同期が嫌で仕事に行きたくなさすぎて薬を飲みすぎてしまったことは伝えた気がする。
4時間半ほど経ち、動悸と頭痛、冷や汗と吐き気に苛まれているところに焦った母親が高速を飛ばしてやってきた。ベッドに横たわる私と、ゴミ箱の中の薬の空き箱やシートを確認すると、
「そんなくだらない男のためにこんなことしないで。死のうとするならママも一緒に連れて行って」
と泣き崩れてしまった。
「大丈夫、致死量は飲んでないから気持ち悪くて胃が悪くなるだけで、そのうち薬が抜けたらよくなるから……この量じゃ絶対死なないから。計算したから……」
その後のこともおぼろげなのだが、職場への救急搬送は意地でもされたくなかったため、一晩母親の付き添いで明かした。朝、立って歩くこともやや覚束ない状態となった私は上司に電話をしたが、ODのことは踏ん切りがつかずに伝えられなかった。
「気持ち悪くてずっと吐いてます。今日の仕事は出られそうにありません……」
「腸炎か?ノロ、流行ってるからなぁ。君、一人暮らしだろう?飯も食えない、水も飲めないだともう入院したほうがいいんじゃないか?受診の手続きを整えるから」
そう言って電話は切れた。上司はどうやら感染性腸炎を疑っているようだった。母親も病院で補液をして早く血中濃度を薄めるように、という。まず、上司や先輩たちは私が精神的に不安定だったことを知らない。ODを疑われる要素は職場には絶対にない。もし、血液検査異常などで疑ってかかられたとしても、抗不安薬や抗うつ薬などと違って、カフェイン中毒はそれを念頭に置かないとバレる可能性は低いだろう。
そしてそのまま感染性腸炎疑いとして入院となった。血液検査異常も少なく、ODはまるで疑われなかった。母親は自分自身の通院があるため、入院の手続きだけして実家へとんぼ返りした。部屋を出る際、再度泣きながら
「もうこんなことしないでね。もし死にたくなったら一緒だからね」
と言われたことを覚えている。
気持ち悪さに苛まれている間、何よりも強く思ったのは少しくらい太っていてもいいから、本来なら美味しくご飯が食べられる身体は大事にしたほうがいいということだ。
あれだけ好きだったお粥も、お魚の煮付けも、サラダも、まるで喉を通らない。無理に食べても全て数分後には吐き出している。制吐剤を打ってもらわないと夜は眠れないほど胃が辛い。切り取って水洗いしたいほどに苦しく、ベッドの上でひたすらのたうち回っていた。睡眠不足でうとうとすると悪夢が見える。同期が笑いながら私を蔑んでくる。はっとして起きると、気持ち悪さで苦しい。夜通しその繰り返しだった。
しかし、致死量までは飲んでいないのも本当で、制吐剤と補液で徐々に改善傾向にある。食事もお粥半量程度なら口にできるようになった。それでも頭痛と心窩部不快感は残っているのだが。
こんな苦しい思いをするのなら、そして親に多大な心労をかけるならこんなことしないほうがマシだったと思う。
でも、食事が取れるようになってくると、再度食事をすることへの罪悪感が生まれてくるようになって来ているのも事実である。あまりにも辛かったことからODは2度としないが、もしかしたら退院できてもまたしばらくは過食嘔吐や拒食からは抜けられなくなるかもしれない気はしている。
ダイエットを考えている方々には、こんな自分の身体を痛めつけるようなことはやめるべきと伝えたい。適度な食事制限と、運動が遠回りに見えても何よりの近道だ。むしろ少し太ってたって、美味しいものを美味しく食べられることは、こんな風に身体をボロボロにするよりは幸せかもしれない。
ダイエットしている人や、太っている人が周りにいる人は、その何気ない一言が相手の心を大きく傷つける可能性があることを今一度考えて過ごしてほしい。私は思いとどまれたが、私も両親という枷がなければ勢い余って致死量まで飲んで死んでいたかもしれない。
自戒を込めて、記録に残そうと思った。
まだベッドから降りて動き回るのはつらいが、そろそろ退院と自宅療養が見えてきた。今は身体が辛くて精神も持たないため、今後の仕事での身の振り方や、今回の件に関しての相談をどうするかについては身体が良くなったら考えることにする。