はてなキーワード: ひとみとは
多分そんなに中身ないし、シェアハウスやめとけレポとかがあるならそっちを見た方がいいかもしれない。
親友へ
もし読んでいるなら"最後まで"見てくれ。もしこの記事が何らかの形で君のもとへ届き、読んでいる途中でブチ切れたりなんてことがあったら大変だ。頼むぞ。
仲良しの友達とシェアハウス、大好きな彼と、彼女と、シェアハウス。毎日ゲームして、セックスして、騒いで壁ドンされて…幸せで楽しい日々が待っている!
はずだった。
お互いにゲームが大好きで、インクをかけてびちゃびちゃにする感じの某FPS(TPS)で出会った。discordで通話しながらゲームしてて、その後お互いにTwitterをフォローした。
その後、某大人気対戦アクションゲームや、Switchで配信されたファミコンや、ネットに落ちてるフリーゲーム、ボードゲーム、あらゆるゲームを遊び尽くして俺達は毎日を過ごした。
はしゃぐ時のノリや思考回路、お互いの趣味なども綺麗に合致し、まさに気が合う親友と呼べるような存在であることを、言わずとも互いに認知していた。
マジで馬鹿みたいに遊んでいたと思う。でも最高に楽しかった。爆笑が絶えない日々だった。
これまでオンラインで通話しながら遊んでいただけだったが、2年生か3年生かになった頃には、スマブラのオフライン大会に一緒に出たり、家に泊めたりなんてこともあった。何百回と遊んできたが、会ったのはこれが初めてだ。スマブラ漬けの2,3日、この日も最高だった。
というか、留年して自主退学したらしい。その頃の俺は、プロ○ラレイヤーとかレンタルなんも○ないひとみたいな?自由な人を尊敬していたし、そういう行動ができる人がすげえなと思っていたので、それはそれでありなんじゃないかと思っていた。かけた言葉は「あ、そうなん。マジかー」くらいだった。その後親友はバイトと実家のあれこれでなんとか普通の生活はしていた。
時は過ぎ、卒業の季節になった。
俺はテキトーに入ったITの会社に内定が決まっていた。親友はどうするんだろうと思っていると、LINEが来た。
そう思った。
「一緒に住もう」
俺は親友のことが大好きだった。
あいつも俺のことが大好きだったと思う。
そん時は。
俺はカッコよく一言だけ返した。
「いいよ」
親友は
「いや、割と真面目に」
と言う。
俺は
と返した。
今思えばこれが全ての始まりだったんだなと思う。
色々と話し合った。
2人で家探しをし、なんとか2LDKの部屋を借りることができた(男2人での入居はなかなか見つかりにくいのだ)。
2人で家探しをし、って書いたけど、ほぼ俺がやったんだよな。家もガスも電気も水道も、立ち会いだって俺がした。電気やら水道がおかしくて修理に来てもらった時も俺が対応した。あいつは寝てた。あ、とてもイライラしてきたので一旦落ち着きましょう。(イライラ)
なんとか部屋を借りられた俺たちは、諸々の金の計算をし、2人で折半することとなった。が、彼はなかなかの金欠で、初月からしっかりと俺に借金をすることになった。全体で返さなきゃいけないのが15万くらいで、毎月5000円くらいずつ返してもらってたかな?多分そんくらい。給付金の10万もすべて渡してくれた。ここでまた思い出したが、こいつはなかなかのギャンブラーで、競馬、パチンコ、タバコなどとにかくカスみたいな金の使い方をする。法を犯しているわけではないのでまあいいけど、金返してからにしろよと思った。(イライラ)
さて、また話が逸れたが、いよいよ2人での同居生活が始まった。
「いらっしゃい。待ってたよ。」
「おす」
俺は腰をへこへこしながら、彼の荷物の運搬を手伝った。(イライラ)
いろいろと荷物を運び終わり、シーリングや椅子など、生活に必要なものを買ったりした。この頃はメシも一緒に作ったり、食ったり。ちっさいモニターでYouTubeを見ながら鍋したりなんてこともあった。楽しい日々、
楽しい日々────。
楽しい日々は、3ヶ月くらいで怪しくなってきた。
タオルは1週間に1回変える、自分の食器は自分で洗う、共有のものは食後すぐ洗う、掃除当番はあーでこーで、とかそんな感じだ。彼がこの辺のルールをことごとく破っていった。(イライラ)
わざとやっているなんてことはないだろうが、俺はそこそこ神経質で、彼は無神経だった。気が合うと信じこんでいた俺らに、そこを疑う考えはなかった。
ここに彼の犯した罪を列挙する。(イライラ)
・タオル交換忘れ13回
・電気つけっぱなし4回
・エアコンつけっぱなし4回
・鍵閉め忘れ3回
・窓閉め忘れ2回
・掃除忘れ2回
・水出しっぱなし1回
・冷凍庫開けっ放し1回
・精算後の金渡し忘れ2回(金の管理は俺がしていたので、月末に家賃や日用品などの精算を諸々して、金を渡してもらうようにしていた)
・鍵の紛失1回
・深夜まで大声で通話 365日
正確には覚えていないが、こんな感じだったと思う。俺も最初からすべて数えていたわけではない。あまりにもルール違反が多くてもう逆に面白くなって概算で数え始めた。読者のみんなは、耐えられるだろうか。耐えられる人同士だったら、同居、同棲したりしてみてもいいかもしれない。が、いや、ちょっと待てよ…と少しでも思った人は考え直した方がいいかもしれない。というか落ち着いてもう1回考えた方がいい。マジで。
色々列挙したが、俺も人間なので何個かは罪を犯した。でもレベルが違った。大声で通話のあたりが特にひどくて、これに関しては30分だけ聞き専にしてくれとかルールを決めたが、それすら破ることも何度かあった。(後半はけっこう守ってくれてた)
そんなこんなで最悪の日々が約1年と7ヶ月?続いた。
明日、俺は家を出ていく。
対面で話すことはほぼなくなった。
俺の方からはたまに声掛けてるんだけどな。けっこう断られるなぁ。
悲しいな。
こんなことになるなんてホントに思わなかったな。
大喧嘩したことはなかったが、微妙で最悪な距離感が長いこと続いてたな。
同居解消したら、元に戻れるのかな、俺たち。
はー。
俺は最後になんて声掛けて出ていくんだろうな。向こうはなんて声掛けてくれるんだろうな。
上にグダグダ書いたけど、俺はやっぱり元に戻りたいよ。2人でまたバカみたいに騒ごうよ。2人でYouTubeやろうよ。年収6000マンになろうよ。俺も反省してるよ。気づかないうちにいっぱい迷惑かけたかもしれない。ごめん。
「スマブラしようぜ」って。
そしたら返すからよ。いつもみたいに。
「いいね」って。
俺、そろそろ行くから。
じゃあ、またな。
この手の話を見ると、ロバート秋山やドランクドラゴン塚地のオタクいじり系のネタを思い出す。
他にも大量にあると思う。
これ見た当時はとにかく自分達オタクのことを言われているのだと思って不安になった。
もちろん自分はここまでのあくの強いオタクではないんだけど、彼らがデフォルメしつつ切り出している変なオタクのエッセンスの一部は多分自分の中に流れているものであるという実感があるというか、ほんの少しだけ身に覚えがあるようなところがあり、それを責められているようで嫌だった。
世の中の人が変だと笑う要素を自分も持っているのだと突きつけられるような感じというか。
こういうのって、自分がいじられるカテゴリに該当しないと多分不快感を理解できないのではないかという気がする。
例えば、志村けんの変なおじさんとかひとみ婆さんとかを見ても自分は何とも思わなかったし普通に笑って楽しんでいたけど、自分がちょっと変かもしれないと思って不安になってるおじさんとか耳が遠くなってきて不安になってる老婆からしたら、ひょっとしたら不快な表現である可能性があるな、ということに気付いたというか。
そしてそれに気づいたからこそ、自分に該当しなくてもなんとなくそれを見て不快感を覚える視聴者を想像してしまってこういうネタでうまく笑えなくなった感じがある。
でも彼らもいじる対象に悪意があってこういうことをしているわけではないと思うから、糾弾するのも違うと思うし、なんだかとても難しいね。
2017年に七千万ぐらい集めた劇場版アニメの感想noteを読んだので勝手にレスポンス
Twitterに書いてたら長くてツリーにするのがめんどくさくなったので。
これは勝手な推測だが件のアニメがあんなシナリオになっているのは、当時の原作ゲームが出たとき、
「なんで男たちは出てこないのか。ほかのキャラは出てこないのか。FDではないのか」
という声がメーカーにたくさん届いたのだろうと思われる。
ので、その当時の声に従って、当時は作れなかったそれを作っただけに過ぎないのではないか。
商業メーカー的には、ロイヤリティの高いユーザーたちから多数その声が届けばそれが唯一の正解なのでは。
劇場版アニメのヒロインキャラについて、メーカーは正直扱いに困っていたのかもしれない。
スピンアウト作品である原作ゲームのスピンアウト元作品では、男キャラたちがメインディッシュで人気がある、とされていた。
とはいえギャルゲーメーカー的には男キャラグッズをバンバン作れば売れたか、というと実際そんなに出ていないことからも、
「商業的な人気」はそれほどでもない、とソロバンを弾いたのだろう。
なので彼女のグッズはたくさん出た。初出の作品が15年近く前になるのに2021年にもフィギュアが出るぐらい。
メーカー的にはありがたいはず。
そこの社長がアキバブログがどっかで、当たり(人気)キャラは天然的に生えてくるから難しい(意訳)みたいなことを言っていた気がする。
ただそのキャラはメーカー生え抜きのシナリオライターからは産み出されなかった(それが何故かは識者が答えてくれると思う)。
キャラクターデザインを行った原画家を売りだすことは成功したから、結果オッケーと思っていたかも。
扱いに困るだろう、とはそういう意味。
Vチューバーが中の人交代で荒れるように、萌えキャラの中身が解釈違いになることは荒れることでしかないし。
そんなこんなで自社IPとして活用しようとしたとき、メーカー視点からは、かつてユーザーから出た不評を回避しようとして、
最大公約数的なシナリオにしたのだろう。アンケート、ネットの評判いろいろから
件の「スピンアウト作品(原作ゲームそのもの)」を好きな人又はそのキャラがすきな人 <
(多く見積もって前者は3~4割、後者は6割と勝手に想像している。)
このロジックはつまるところ、原作ゲームの忠実なアニメ化は不可能である、という命題の前に、ディレクターだかライターだかが頭をひねったのだろう。
TVアニメ版はそもそもギャルゲーなのに友情ゲーといわれてるから恋愛描写を削ったぐらいで、そこから派生してるのだから当然の流れではある。
とはいえ、件のクラファンは「原作ゲームのアニメ化」を謳って資金を募ったわけで、最初から「スピンアウト元作品の拡張OVA作ります」
にしておけばnoteのひとみたいな悲しみを生まなかったのではないか。
そうであれば多数派以外のひとも笑って見られたのでは。
「なんで男たちは出てこないのか。ほかのキャラは出てこないのか。FDではないのか」
六割取れれば勝ちである。
と、メーカーは考えたのかもしれない。
それだけの話のような気がする。
○ご飯
朝:なし。昼:ピーマンと鳥肉とミニトマトとご飯をケチャップで炒めて上に卵焼きを乗せてケチャップをかけたやーつ(オムライスでは?)夜:焼豚。麻婆豆腐。チーたら。ビール。レモンサワー。
○調子
ロング缶二本も開けたのでまっすぐ歩けない程度には酔っ払い。
○アニシャド
ニコニコ動画で「赤尾でこが悪いのか?」みたいなコメントしてたけど?人類史でいまだにみえのひとみが間違えたことはないからそんなわけないんだよなあ。
じゃあワタルも面白くないのかってはなしですよ?(ワタルは関係ない)
○グラブル
四象霊晶3つ回収して四象は終わりでいいかなあ。黒麒麟3凸一枚しかないからまだ金印集めを卒業できてないんだけど、高難易度する気もないし別にいいかなあって。
ガチャピン20連+ガチャピンモード80連で、SR水着フェリ、ゴムーン2つ。スクラッチは銀天。
100連でSR加入とゴムーン2つってフェス外だから普通なんだろうけど、これを見た後現金に換算するとマジでゾッとするね。(3万円だよ!?!?)
四時から今朝けさも やって来た。
つめたい水の 声ばかり。
凍こごえた砂利じゃりに 湯ゆげを吐はき、
火花を闇やみに まきながら、
蛇紋岩サアペンテインの 崖がけに来て、
やっと東が 燃もえだした。
鳥がなきだし 木は光り、
青々川は ながれたが、
丘おかもはざまも いちめんに、
まぶしい霜しもを 載のせていた。
やっぱりかけると あったかだ、
僕ぼくはほうほう 汗あせが出る。
もう七、八里り はせたいな、
今日も一日 霜ぐもり。
軽便鉄道けいべんてつどうの東からの一番列車れっしゃが少しあわてたように、こう歌いながらやって来てとまりました。機関車きかんしゃの下からは、力のない湯ゆげが逃にげ出して行き、ほそ長いおかしな形の煙突えんとつからは青いけむりが、ほんの少うし立ちました。
そこで軽便鉄道づきの電信柱でんしんばしらどもは、やっと安心あんしんしたように、ぶんぶんとうなり、シグナルの柱はかたんと白い腕木うできを上げました。このまっすぐなシグナルの柱は、シグナレスでした。
シグナレスはほっと小さなため息いきをついて空を見上げました。空にはうすい雲が縞しまになっていっぱいに充みち、それはつめたい白光しろびかりを凍こおった地面じめんに降ふらせながら、しずかに東に流ながれていたのです。
シグナレスはじっとその雲の行ゆく方えをながめました。それからやさしい腕木を思い切りそっちの方へ延のばしながら、ほんのかすかに、ひとりごとを言いいました。
「今朝けさは伯母おばさんたちもきっとこっちの方を見ていらっしゃるわ」
シグナレスはいつまでもいつまでも、そっちに気をとられておりました。
「カタン」
うしろの方のしずかな空で、いきなり音がしましたのでシグナレスは急いそいでそっちをふり向むきました。ずうっと積つまれた黒い枕木まくらぎの向こうに、あの立派りっぱな本線ほんせんのシグナル柱ばしらが、今はるかの南から、かがやく白けむりをあげてやって来る列車れっしゃを迎むかえるために、その上の硬かたい腕うでを下げたところでした。
「お早う今朝は暖あたたかですね」本線のシグナル柱は、キチンと兵隊へいたいのように立ちながら、いやにまじめくさってあいさつしました。
「お早うございます」シグナレスはふし目になって、声を落おとして答こたえました。
「若わかさま、いけません。これからはあんなものにやたらに声を、おかけなさらないようにねがいます」本線のシグナルに夜電気を送おくる太ふとい電信柱でんしんばしらがさももったいぶって申もうしました。
本線のシグナルはきまり悪わるそうに、もじもじしてだまってしまいました。気の弱いシグナレスはまるでもう消きえてしまうか飛とんでしまうかしたいと思いました。けれどもどうにもしかたがありませんでしたから、やっぱりじっと立っていたのです。
雲の縞しまは薄うすい琥珀こはくの板いたのようにうるみ、かすかなかすかな日光が降ふって来ましたので、本線シグナルつきの電信柱はうれしがって、向こうの野原のはらを行く小さな荷馬車にばしゃを見ながら低ひくい調子ちょうしはずれの歌をやりました。
「ゴゴン、ゴーゴー、
酒さけが降ふりだす、
酒の中から
霜しもがながれる。
ゴゴン、ゴーゴー、
ゴゴン、ゴーゴー、
霜がとければ、
つちはまっくろ。
馬はふんごみ、
人もぺちゃぺちゃ。
ゴゴン、ゴーゴー」
それからもっともっとつづけざまに、わけのわからないことを歌いました。
その間に本線ほんせんのシグナル柱ばしらが、そっと西風にたのんでこう言いいました。
「どうか気にかけないでください。こいつはもうまるで野蛮やばんなんです。礼式れいしきも何も知らないのです。実際じっさい私はいつでも困こまってるんですよ」
軽便鉄道けいべんてつどうのシグナレスは、まるでどぎまぎしてうつむきながら低ひくく、
「あら、そんなことございませんわ」と言いいましたがなにぶん風下かざしもでしたから本線ほんせんのシグナルまで聞こえませんでした。
「許ゆるしてくださるんですか。本当を言ったら、僕ぼくなんかあなたに怒おこられたら生きているかいもないんですからね」
「あらあら、そんなこと」軽便鉄道の木でつくったシグナレスは、まるで困こまったというように肩かたをすぼめましたが、実じつはその少しうつむいた顔は、うれしさにぽっと白光しろびかりを出していました。
「シグナレスさん、どうかまじめで聞いてください。僕あなたのためなら、次つぎの十時の汽車が来る時腕うでを下げないで、じっとがんばり通してでも見せますよ」わずかばかりヒュウヒュウ言いっていた風が、この時ぴたりとやみました。
「あら、そんな事こといけませんわ」
「もちろんいけないですよ。汽車が来る時、腕を下げないでがんばるなんて、そんなことあなたのためにも僕のためにもならないから僕はやりはしませんよ。けれどもそんなことでもしようと言いうんです。僕あなたくらい大事だいじなものは世界中せかいじゅうないんです。どうか僕を愛あいしてください」
シグナレスは、じっと下の方を見て黙だまって立っていました。本線シグナルつきのせいの低ひくい電信柱でんしんばしらは、まだでたらめの歌をやっています。
「ゴゴンゴーゴー、
やまのいわやで、
熊くまが火をたき、
あまりけむくて、
ほらを逃にげ出す。ゴゴンゴー、
田螺にしはのろのろ。
うう、田螺はのろのろ。
本線ほんせんのシグナルはせっかちでしたから、シグナレスの返事へんじのないのに、まるであわててしまいました。
「シグナレスさん、あなたはお返事をしてくださらないんですか。ああ僕ぼくはもうまるでくらやみだ。目の前がまるでまっ黒な淵ふちのようだ。ああ雷かみなりが落おちて来て、一ぺんに僕のからだをくだけ。足もとから噴火ふんかが起おこって、僕を空の遠くにほうりなげろ。もうなにもかもみんなおしまいだ。雷が落ちて来て一ぺんに僕のからだを砕くだけ。足もと……」
「いや若様わかさま、雷が参まいりました節せつは手前てまえ一身いっしんにおんわざわいをちょうだいいたします。どうかご安心あんしんをねがいとう存ぞんじます」
シグナルつきの電信柱でんしんばしらが、いつかでたらめの歌をやめて、頭の上のはりがねの槍やりをぴんと立てながら眼めをパチパチさせていました。
「えい。お前なんか何を言いうんだ。僕ぼくはそれどこじゃないんだ」
「それはまたどうしたことでござりまする。ちょっとやつがれまでお申もうし聞きけになりとう存ぞんじます」
「いいよ、お前はだまっておいで」
シグナルは高く叫さけびました。しかしシグナルも、もうだまってしまいました。雲がだんだん薄うすくなって柔やわらかな陽ひが射さして参まいりました。
五日の月が、西の山脈さんみゃくの上の黒い横雲よこぐもから、もう一ぺん顔を出して、山に沈しずむ前のほんのしばらくを、鈍にぶい鉛なまりのような光で、そこらをいっぱいにしました。冬がれの木や、つみ重かさねられた黒い枕木まくらぎはもちろんのこと、電信柱でんしんばしらまでみんな眠ねむってしまいました。遠くの遠くの風の音か水の音がごうと鳴るだけです。
「ああ、僕ぼくはもう生きてるかいもないんだ。汽車が来るたびに腕うでを下げたり、青い眼鏡めがねをかけたりいったいなんのためにこんなことをするんだ。もうなんにもおもしろくない。ああ死しのう。けれどもどうして死ぬ。やっぱり雷かみなりか噴火ふんかだ」
本線ほんせんのシグナルは、今夜も眠ねむられませんでした。非常ひじょうなはんもんでした。けれどもそれはシグナルばかりではありません。枕木の向こうに青白くしょんぼり立って、赤い火をかかげている軽便鉄道けいべんてつどうのシグナル、すなわちシグナレスとても全まったくそのとおりでした。
「ああ、シグナルさんもあんまりだわ、あたしが言いえないでお返事へんじもできないのを、すぐあんなに怒おこっておしまいになるなんて。あたしもう何もかもみんなおしまいだわ。おお神様かみさま、シグナルさんに雷かみなりを落おとす時、いっしょに私にもお落としくださいませ」
こう言いって、しきりに星空に祈いのっているのでした。ところがその声が、かすかにシグナルの耳にはいりました。シグナルはぎょっとしたように胸むねを張はって、しばらく考えていましたが、やがてガタガタふるえだしました。
ふるえながら言いました。
「あたし存ぞんじませんわ」シグナレスは声を落として答えました。
「シグナレスさん、それはあんまりひどいお言葉ことばでしょう。僕ぼくはもう今すぐでもお雷らいさんにつぶされて、または噴火ふんかを足もとから引っぱり出して、またはいさぎよく風に倒たおされて、またはノアの洪水こうずいをひっかぶって、死しんでしまおうと言うんですよ。それだのに、あなたはちっとも同情どうじょうしてくださらないんですか」
「あら、その噴火や洪水こうずいを。あたしのお祈りはそれよ」シグナレスは思い切って言いました。シグナルはもううれしくて、うれしくて、なおさらガタガタガタガタふるえました。
「シグナレスさん、なぜあなたは死ななけぁならないんですか。ね。僕ぼくへお話しください。ね。僕へお話しください。きっと、僕はそのいけないやつを追おっぱらってしまいますから、いったいどうしたんですね」
「ふふん。ああ、そのことですか。ふん。いいえ。そのことならばご心配しんぱいありません。大丈夫だいじょうぶです。僕ちっとも怒ってなんかいはしませんからね。僕、もうあなたのためなら、眼鏡めがねをみんな取とられて、腕うでをみんなひっぱなされて、それから沼ぬまの底そこへたたき込こまれたって、あなたをうらみはしませんよ」
「あら、ほんとう。うれしいわ」
「だから僕を愛あいしてください。さあ僕を愛するって言いってください」
五日のお月さまは、この時雲と山の端はとのちょうどまん中にいました。シグナルはもうまるで顔色を変かえて灰色はいいろの幽霊ゆうれいみたいになって言いました。
「またあなたはだまってしまったんですね。やっぱり僕がきらいなんでしょう。もういいや、どうせ僕なんか噴火ふんかか洪水こうずいか風かにやられるにきまってるんだ」
「あら、ちがいますわ」
「そんならどうですどうです、どうです」
「あたし、もう大昔おおむかしからあなたのことばかり考えていましたわ」
「本当ですか、本当ですか、本当ですか」
「ええ」
「そんならいいでしょう。結婚けっこんの約束やくそくをしてください」
「でも」
「でもなんですか、僕ぼくたちは春になったら燕つばめにたのんで、みんなにも知らせて結婚けっこんの式しきをあげましょう。どうか約束やくそくしてください」
「わかってますよ。僕にはそのつまらないところが尊とうといんです」
すると、さあ、シグナレスはあらんかぎりの勇気ゆうきを出して言いい出しました。
「でもあなたは金でできてるでしょう。新式でしょう。赤青眼鏡あかあおめがねを二組みも持もっていらっしゃるわ、夜も電燈でんとうでしょう。あたしは夜だってランプですわ、眼鏡もただ一つきり、それに木ですわ」
「え、ありがとう、うれしいなあ、僕もお約束しますよ。あなたはきっと、私の未来みらいの妻つまだ」
「ええ、そうよ、あたし決けっして変かわらないわ」
「結婚指環エンゲージリングをあげますよ、そら、ね、あすこの四つならんだ青い星ね」
「ええ」
「あのいちばん下の脚あしもとに小さな環わが見えるでしょう、環状星雲フィッシュマウスネビュラですよ。あの光の環ね、あれを受うけ取とってください。僕のまごころです」
「ワッハッハ。大笑おおわらいだ。うまくやってやがるぜ」
突然とつぜん向むこうのまっ黒な倉庫そうこが、空にもはばかるような声でどなりました。二人はまるでしんとなってしまいました。
ところが倉庫がまた言いいました。
「いや心配しんぱいしなさんな。この事ことは決けっしてほかへはもらしませんぞ。わしがしっかりのみ込こみました」
その時です、お月さまがカブンと山へおはいりになって、あたりがポカッと、うすぐらくなったのは。
今は風があんまり強いので電信柱でんしんばしらどもは、本線ほんせんの方も、軽便鉄道けいべんてつどうの方もまるで気が気でなく、ぐうん ぐうん ひゅうひゅう と独楽こまのようにうなっておりました。それでも空はまっ青さおに晴れていました。
本線シグナルつきの太ふとっちょの電信柱も、もうでたらめの歌をやるどころの話ではありません。できるだけからだをちぢめて眼めを細ほそくして、ひとなみに、ブウウ、ブウウとうなってごまかしておりました。
シグナレスはこの時、東のぐらぐらするくらい強い青びかりの中を、びっこをひくようにして走って行く雲を見ておりましたが、それからチラッとシグナルの方を見ました。シグナルは、今日は巡査じゅんさのようにしゃんと立っていましたが、風が強くて太っちょの電柱でんちゅうに聞こえないのをいいことにして、シグナレスに話しかけました。
「どうもひどい風ですね。あなた頭がほてって痛いたみはしませんか。どうも僕ぼくは少しくらくらしますね。いろいろお話ししますから、あなたただ頭をふってうなずいてだけいてください。どうせお返事へんじをしたって僕ぼくのところへ届とどきはしませんから、それから僕の話でおもしろくないことがあったら横よこの方に頭を振ふってください。これは、本当は、ヨーロッパの方のやり方なんですよ。向むこうでは、僕たちのように仲なかのいいものがほかの人に知れないようにお話をする時は、みんなこうするんですよ。僕それを向こうの雑誌ざっしで見たんです。ね、あの倉庫そうこのやつめ、おかしなやつですね、いきなり僕たちの話してるところへ口を出して、引き受うけたのなんのって言いうんですもの、あいつはずいぶん太ふとってますね、今日も眼めをパチパチやらかしてますよ、僕のあなたに物を言ってるのはわかっていても、何を言ってるのか風でいっこう聞こえないんですよ、けれども全体ぜんたい、あなたに聞こえてるんですか、聞こえてるなら頭を振ってください、ええそう、聞こえるでしょうね。僕たち早く結婚けっこんしたいもんですね、早く春になれぁいいんですね、僕のところのぶっきりこに少しも知らせないでおきましょう。そしておいて、いきなり、ウヘン! ああ風でのどがぜいぜいする。ああひどい。ちょっとお話をやめますよ。僕のどが痛いたくなったんです。わかりましたか、じゃちょっとさようなら」
それからシグナルは、ううううと言いながら眼をぱちぱちさせて、しばらくの間だまっていました。
シグナレスもおとなしく、シグナルののどのなおるのを待まっていました。電信柱でんしんばしらどもはブンブンゴンゴンと鳴り、風はひゅうひゅうとやりました。
シグナルはつばをのみこんだり、ええ、ええとせきばらいをしたりしていましたが、やっとのどの痛いたいのがなおったらしく、もう一ぺんシグナレスに話しかけました。けれどもこの時は、風がまるで熊くまのように吼ほえ、まわりの電信柱でんしんばしらどもは、山いっぱいの蜂はちの巣すをいっぺんにこわしでもしたように、ぐゎんぐゎんとうなっていましたので、せっかくのその声も、半分ばかりしかシグナレスに届とどきませんでした。
「ね、僕ぼくはもうあなたのためなら、次つぎの汽車の来る時、がんばって腕うでを下げないことでも、なんでもするんですからね、わかったでしょう。あなたもそのくらいの決心けっしんはあるでしょうね。あなたはほんとうに美うつくしいんです、ね、世界せかいの中うちにだっておれたちの仲間なかまはいくらもあるんでしょう。その半分はまあ女の人でしょうがねえ、その中であなたはいちばん美しいんです。もっともほかの女の人僕よく知らないんですけれどね、きっとそうだと思うんですよ、どうです聞こえますか。僕たちのまわりにいるやつはみんなばかですね、のろまですね、僕のとこのぶっきりこが僕が何をあなたに言ってるのかと思って、そらごらんなさい、一生けん命めい、目をパチパチやってますよ、こいつときたら全まったくチョークよりも形がわるいんですからね、そら、こんどはあんなに口を曲まげていますよ。あきれたばかですねえ、僕の話聞こえますか、僕の……」
「若わかさま、さっきから何をべちゃべちゃ言いっていらっしゃるのです。しかもシグナレス風情ふぜいと、いったい何をにやけていらっしゃるんです」
いきなり本線ほんせんシグナルつきの電信柱でんしんばしらが、むしゃくしゃまぎれに、ごうごうの音の中を途方とほうもない声でどなったもんですから、シグナルはもちろんシグナレスも、まっ青さおになってぴたっとこっちへ曲げていたからだを、まっすぐに直なおしました。
「若わかさま、さあおっしゃい。役目やくめとして承うけたまわらなければなりません」
シグナルは、やっと元気を取り直なおしました。そしてどうせ風のために何を言いっても同じことなのをいいことにして、
「ばか、僕ぼくはシグナレスさんと結婚けっこんして幸福こうふくになって、それからお前にチョークのお嫁よめさんをくれてやるよ」と、こうまじめな顔で言ったのでした。その声は風下かざしものシグナレスにはすぐ聞こえましたので、シグナレスはこわいながら思わず笑わらってしまいました。さあそれを見た本線ほんせんシグナルつきの電信柱の怒おこりようと言ったらありません。さっそくブルブルッとふるえあがり、青白く逆上のぼせてしまい唇くちびるをきっとかみながらすぐひどく手をまわして、すなわち一ぺん東京まで手をまわして風下かざしもにいる軽便鉄道けいべんてつどうの電信柱に、シグナルとシグナレスの対話たいわがいったいなんだったか、今シグナレスが笑ったことは、どんなことだったかたずねてやりました。
ああ、シグナルは一生の失策しっさくをしたのでした。シグナレスよりも少し風下にすてきに耳のいい長い長い電信柱がいて、知らん顔をしてすまして空の方を見ながらさっきからの話をみんな聞いていたのです。そこでさっそく、それを東京を経へて本線シグナルつきの電信柱に返事へんじをしてやりました。本線ほんせんシグナルつきの電信柱でんしんばしらはキリキリ歯はがみをしながら聞いていましたが、すっかり聞いてしまうと、さあ、まるでばかのようになってどなりました。
「くそっ、えいっ。いまいましい。あんまりだ。犬畜生いぬちくしょう、あんまりだ。犬畜生、ええ、若わかさま、わたしだって男ですぜ。こんなにひどくばかにされてだまっているとお考えですか。結婚けっこんだなんてやれるならやってごらんなさい。電信柱の仲間なかまはもうみんな反対はんたいです。シグナル柱の人たちだって鉄道長てつどうちょうの命令めいれいにそむけるもんですか。そして鉄道長はわたしの叔父おじですぜ。結婚なりなんなりやってごらんなさい。えい、犬畜生いぬちくしょうめ、えい」
本線シグナルつきの電信柱は、すぐ四方に電報でんぽうをかけました。それからしばらく顔色を変かえて、みんなの返事へんじをきいていました。確たしかにみんなから反対はんたいの約束やくそくをもらったらしいのでした。それからきっと叔父のその鉄道長とかにもうまく頼たのんだにちがいありません。シグナルもシグナレスも、あまりのことに今さらポカンとしてあきれていました。本線シグナルつきの電信柱は、すっかり反対の準備じゅんびができると、こんどは急きゅうに泣なき声で言いいました。
「あああ、八年の間、夜ひる寝ねないでめんどうを見てやってそのお礼れいがこれか。ああ情なさけない、もう世の中はみだれてしまった。ああもうおしまいだ。なさけない、メリケン国のエジソンさまもこのあさましい世界せかいをお見すてなされたか。オンオンオンオン、ゴゴンゴーゴーゴゴンゴー」
風はますます吹ふきつのり、西の空が変へんに白くぼんやりなって、どうもあやしいと思っているうちに、チラチラチラチラとうとう雪がやって参まいりました。
シグナルは力を落おとして青白く立ち、そっとよこ眼めでやさしいシグナレスの方を見ました。シグナレスはしくしく泣なきながら、ちょうどやって来る二時の汽車を迎むかえるためにしょんぼりと腕うでをさげ、そのいじらしいなで肩がたはかすかにかすかにふるえておりました。空では風がフイウ、涙なみだを知らない電信柱どもはゴゴンゴーゴーゴゴンゴーゴー。
「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。」
いきなり、カムパネルラが、思い切ったというように、少しどもりながら、急せきこんで云いいました。
ジョバンニは、
(ああ、そうだ、ぼくのおっかさんは、あの遠い一つのちりのように見える橙だいだいいろの三角標のあたりにいらっしゃって、いまぼくのことを考えているんだった。)と思いながら、ぼんやりしてだまっていました。
「ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸さいわいになるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだろう。」カムパネルラは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。
「きみのおっかさんは、なんにもひどいことないじゃないの。」ジョバンニはびっくりして叫さけびました。
「ぼくわからない。けれども、誰たれだって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思う。」カムパネルラは、なにかほんとうに決心しているように見えました。
俄にわかに、車のなかが、ぱっと白く明るくなりました。見ると、もうじつに、金剛石こんごうせきや草の露つゆやあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河の河床かわどこの上を水は声もなくかたちもなく流れ、その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射さした一つの島が見えるのでした。その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架じゅうじかがたって、それはもう凍こおった北極の雲で鋳いたといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。
「ハルレヤ、ハルレヤ。」前からもうしろからも声が起りました。ふりかえって見ると、車室の中の旅人たちは、みなまっすぐにきもののひだを垂れ、黒いバイブルを胸にあてたり、水晶すいしょうの珠数じゅずをかけたり、どの人もつつましく指を組み合せて、そっちに祈いのっているのでした。思わず二人もまっすぐに立ちあがりました。カムパネルラの頬ほほは、まるで熟した苹果りんごのあかしのようにうつくしくかがやいて見えました。
そして島と十字架とは、だんだんうしろの方へうつって行きました。
向う岸も、青じろくぽうっと光ってけむり、時々、やっぱりすすきが風にひるがえるらしく、さっとその銀いろがけむって、息でもかけたように見え、また、たくさんのりんどうの花が、草をかくれたり出たりするのは、やさしい狐火きつねびのように思われました。
それもほんのちょっとの間、川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、白鳥の島は、二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、絵のようになってしまい、またすすきがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいました。ジョバンニのうしろには、いつから乗っていたのか、せいの高い、黒いかつぎをしたカトリック風の尼あまさんが、まん円な緑の瞳ひとみを、じっとまっすぐに落して、まだ何かことばか声かが、そっちから伝わって来るのを、虔つつしんで聞いているというように見えました。旅人たちはしずかに席に戻もどり、二人も胸いっぱいのかなしみに似た新らしい気持ちを、何気なくちがった語ことばで、そっと談はなし合ったのです。
「ああ、十一時かっきりには着くんだよ。」
早くも、シグナルの緑の燈あかりと、ぼんやり白い柱とが、ちらっと窓のそとを過ぎ、それから硫黄いおうのほのおのようなくらいぼんやりした転てつ機の前のあかりが窓の下を通り、汽車はだんだんゆるやかになって、間もなくプラットホームの一列の電燈が、うつくしく規則正しくあらわれ、それがだんだん大きくなってひろがって、二人は丁度白鳥停車場の、大きな時計の前に来てとまりました。
さわやかな秋の時計の盤面ダイアルには、青く灼やかれたはがねの二本の針が、くっきり十一時を指しました。みんなは、一ぺんに下りて、車室の中はがらんとなってしまいました。
〔二十分停車〕と時計の下に書いてありました。
「ぼくたちも降りて見ようか。」ジョバンニが云いました。
「降りよう。」
二人は一度にはねあがってドアを飛び出して改札口かいさつぐちへかけて行きました。ところが改札口には、明るい紫むらさきがかった電燈が、一つ点ついているばかり、誰たれも居ませんでした。そこら中を見ても、駅長や赤帽あかぼうらしい人の、影かげもなかったのです。
二人は、停車場の前の、水晶細工のように見える銀杏いちょうの木に囲まれた、小さな広場に出ました。そこから幅はばの広いみちが、まっすぐに銀河の青光の中へ通っていました。
さきに降りた人たちは、もうどこへ行ったか一人も見えませんでした。二人がその白い道を、肩かたをならべて行きますと、二人の影は、ちょうど四方に窓のある室へやの中の、二本の柱の影のように、また二つの車輪の輻やのように幾本いくほんも幾本も四方へ出るのでした。そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原かわらに来ました。
カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌てのひらにひろげ、指できしきしさせながら、夢ゆめのように云っているのでした。
「そうだ。」どこでぼくは、そんなこと習ったろうと思いながら、ジョバンニもぼんやり答えていました。
河原の礫こいしは、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉トパースや、またくしゃくしゃの皺曲しゅうきょくをあらわしたのや、また稜かどから霧きりのような青白い光を出す鋼玉やらでした。ジョバンニは、走ってその渚なぎさに行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮ういたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光りんこうをあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。
川上の方を見ると、すすきのいっぱいに生えている崖がけの下に、白い岩が、まるで運動場のように平らに川に沿って出ているのでした。そこに小さな五六人の人かげが、何か掘ほり出すか埋めるかしているらしく、立ったり屈かがんだり、時々なにかの道具が、ピカッと光ったりしました。
「行ってみよう。」二人は、まるで一度に叫んで、そっちの方へ走りました。その白い岩になった処ところの入口に、
〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物せともののつるつるした標札が立って、向うの渚には、ところどころ、細い鉄の欄干らんかんも植えられ、木製のきれいなベンチも置いてありました。
「おや、変なものがあるよ。」カムパネルラが、不思議そうに立ちどまって、岩から黒い細長いさきの尖とがったくるみの実のようなものをひろいました。
「くるみの実だよ。そら、沢山たくさんある。流れて来たんじゃない。岩の中に入ってるんだ。」
「大きいね、このくるみ、倍あるね。こいつはすこしもいたんでない。」
「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」
二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きました。左手の渚には、波がやさしい稲妻いなずまのように燃えて寄せ、右手の崖には、いちめん銀や貝殻かいがらでこさえたようなすすきの穂ほがゆれたのです。
だんだん近付いて見ると、一人のせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴ながぐつをはいた学者らしい人が、手帳に何かせわしそうに書きつけながら、鶴嘴つるはしをふりあげたり、スコープをつかったりしている、三人の助手らしい人たちに夢中むちゅうでいろいろ指図をしていました。
「そこのその突起とっきを壊こわさないように。スコープを使いたまえ、スコープを。おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。なぜそんな乱暴をするんだ。」
見ると、その白い柔やわらかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣けものの骨が、横に倒たおれて潰つぶれたという風になって、半分以上掘り出されていました。そして気をつけて見ると、そこらには、蹄ひづめの二つある足跡あしあとのついた岩が、四角に十ばかり、きれいに切り取られて番号がつけられてありました。
「君たちは参観かね。」その大学士らしい人が、眼鏡めがねをきらっとさせて、こっちを見て話しかけました。
「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。ごく新らしい方さ。ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。いま川の流れているとこに、そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。このけものかね、これはボスといってね、おいおい、そこつるはしはよしたまえ。ていねいに鑿のみでやってくれたまえ。ボスといってね、いまの牛の先祖で、昔むかしはたくさん居たさ。」
「標本にするんですか。」
「いや、証明するに要いるんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという証拠しょうこもいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。わかったかい。けれども、おいおい。そこもスコープではいけない。そのすぐ下に肋骨ろっこつが埋もれてる筈はずじゃないか。」大学士はあわてて走って行きました。
「もう時間だよ。行こう。」カムパネルラが地図と腕時計うでどけいとをくらべながら云いました。
「ああ、ではわたくしどもは失礼いたします。」ジョバンニは、ていねいに大学士におじぎしました。
「そうですか。いや、さよなら。」大学士は、また忙いそがしそうに、あちこち歩きまわって監督かんとくをはじめました。二人は、その白い岩の上を、一生けん命汽車におくれないように走りました。そしてほんとうに、風のように走れたのです。息も切れず膝ひざもあつくなりませんでした。
こんなにしてかけるなら、もう世界中だってかけれると、ジョバンニは思いました。
そして二人は、前のあの河原を通り、改札口の電燈がだんだん大きくなって、間もなく二人は、もとの車室の席に座すわって、いま行って来た方を、窓から見ていました。
そういうのが苦じゃないひとがいる、おまえをそだててくれたひとみたいな、な。
作詞は安井かずみさんという方で、現在メジャーなのは以下の詞であるらしい。
ある晴れた 昼さがり いちばへ 続く道
荷馬車が ゴトゴト 子牛を 乗せてゆく
かわいい子牛 売られて行くよ
悲しそうなひとみで 見ているよ
ドナ ドナ ドナ ドナ 子牛を 乗せて
ドナ ドナ ドナ ドナ 荷馬車が ゆれる
青い空 そよぐ風 つばめが 飛びかう
荷馬車が いちばへ 子牛を 乗せて行く
もしもつばさが あったならば
ドナ ドナ ドナ ドナ 子牛を 乗せて
ドナ ドナ ドナ ドナ 荷馬車が ゆれる
この歌詞でさえ十分に悲しくなれるのに、同じ安井かずみさんの作詞で、もっと悲しくなる別バージョンがあって、最初に作られたのはこっちらしい。
ある晴れた 昼さがり 市場へ つづく道
荷馬車が ゴトゴト 子牛を 乗せてゆく
何も知らない 子牛さえ
売られてゆくのが わかるのだろうか
ドナ ドナ ドナ ドナ 悲しみをたたえ
ドナ ドナ ドナ ドナ はかない命
青い空 そよぐ風 明るく とびかう
つばめよ それをみて おまえは 何おもう
もしもつばさが あったならば
ドナ ドナ ドナ ドナ 悲しみをたたえ
ドナ ドナ ドナ ドナ はかない命
現在メジャーなバージョンでは、子牛が乳牛として売られていくのか肉牛として売られていくのかは明確には描写されていないが、この最初のバージョンでは「はかない命」となっていることから、肉牛であることを暗に示唆していると言っていいだろう。
作詞者がどうしてこのような変更を加えたのかは想像するしかないのだが、「あまりになまなましい」と自分で思ったのか、あるいはそのような意見が外部から寄せられたかということだろうか.。
お前らの食ってる野菜がなくなることで崩れる生態系は無視かよw
農業のために森林が開墾されてつぶらなひとみの小動物たちが絶滅危機www
悪いけど地球上のエネルギーを1ミリも消費しないようにするには自分が死ぬしか無いんだわ。
質量保存の法則考えれば誰でもわかる。
だからせめてもの感謝を、奪った命分だけ世の中が良くなるように努力するって、いただきます!っていうんじゃねーの?
俺だって祖父の葬式で、通夜振る舞いに出てきた寿司を見て真剣に考えたよ。
祖父の死はこんなに悲しいのに、この寿司だって同じ生命を奪われた生物じゃないかって。
なんでみんな平気な顔して食べてられるんだって。
そうやって自分なりに真剣に考えて導き出した結論は、娯楽で生物の命を奪わないこと。
奪ったら無駄にしない。
そうして頂いた命で成り立ってる自分も粗末にしない。
俺にも蚊が潰せない時期があった。
ここで潰されたら、この蚊の命は終わるんだ。もし自分だったらどうしようって。
潰されるような相手の血を吸わないといけないような状況になってしまった時点で。
その分この生命をちゃんとしたことに使おうって決めたのだからそれでいいじゃんか。
どこまでいっても、自分が生きている以上は、何かの命を奪うよ。
その中のどれかにしぼって、せめて自分だけは奪わないって決めたならそれでもいいと思うよ。
でも、野菜だけ食べてれば問題ないってのは嘘だね。へそで沸かした茶を飲んだ鼻が笑い出すレベル。
だって、それをするなら世界の人口を減らすほうがよほど効果あるでしょ。
単純に考えて人間が増えた分のタンパク質やらが地球上から減ってるんだから、その分の動物が減るのは摂理。
動物を減らしたくないなら、「食わない」じゃなくて「食う存在を減らす」ってことだとちょっと考えればわかる。
そういう意味で、自分の命を削ってまで動物を食べませんっていうならわかる。
だけど、動物を食べなくても健康に害はありません。っていうのはどうなの?
そうやってノーリスクにエコができますみたいな表現はやっぱりおかしいよ。
さらに言えば自分たちは一切動物に迷惑をかけてないから、動物を食べる人間を攻撃してもOKみたいのはどうなんだっていうの。
他の生き物だって、色々な生き物の命を食って生きてるんだよ。直接的であれ間接的であれ。
淘汰で生き残れなかった命を預かって、次の淘汰に備えてるんだって。
それを人間だけ天上界みたいなところから見下ろそうなんてのは文明2,000年程度の青二才には早すぎるよ。
ヴィーガンの存在は別に自由だけど、思想は鼻で笑うよ。悪いけど。
じゃないとお前の血肉になった命がうかばれねえだろ。
お前の命がいたずらに奪われても文句を言うなよって思う。
でもそれは植物も一緒で、野に咲く花を引っこ抜いてちょっと嗅いだくらいで捨てるやつもおんなじ。
「誰も傷つけない笑い」ということばを聞くたびに、少し、もやっとする。「誰も傷つけない笑い」自体はいいことだと思う。傷つけるよりは傷つけない方がいいし、笑いにおいても、笑いでなくとも、あらゆる場面でなるべく傷つくひとが少ない方がいい。ただ、「誰も傷つけない笑い」ということばは、いつもではないけれど、ときどき、微妙なニュアンスを含んでいることがあって、それが私をもやっとさせる。
そこには「本当に頭がいいひとは」ということば使いを聞いたときと似ている感じがある。その後に続くことばはなんでもいい、ただ「本当に頭がいいひとは」ではじまる文章のうち、けっこうな割合で、実は、話題になっているのは、その、当の「本当に頭がいいひと」への称賛ではなくて、「その条件を満たさない身近にいる頭はいいかもしんないけどちょっとムカつくあいつ」ではないか? あのひとは頭いいかもしれないけどさ、本当に頭がいいひとってのは私たちにもわかりやすく説明してくれるのにね、あのひとはそこがちょっとね、みたいな。称賛に見せかけてその目は別のところを横目で見ている。
同じように、「誰も傷つけない笑い」を称賛することばを聞くとき、いつもではないけれど、そこには「かつて笑いで傷つけられた私」の恨みの響きがこもっていることがあるように思う。そこには、なんというか、ちょっと甘ったれた感情がまとわりついていて、それがこちらにねとっと投げかけられる感じがする。ねえ、あなただってやだよね、わかるよね、弱い私たちを守ってほしいよね。みたいな。これはまあおおげさな書き方だけれども。そういうときは、もう、「これが嫌い」と言った方が良い、と個人的には思う。何が好きかで自分を語るのは素敵なことだけれど、好きというものを称賛しつつ、それに満たないものを否定したい気持ちがあるのであればそれは明確にした方がいい。そんなことで好きなものを利用するのがいいことだとは思えない。
そして何より、そのような顔で「誰も傷つけない笑い」を称賛するひとたちは、みな一様に、自分は弱者で、弱いのだから、そのような笑いによって傷つけられるばかりのかわいそうな存在で、あたかも自分は笑いで誰かを傷つけたことはないし、これからもそんなことなんて起こり得ない、というようなピュアな被害者意識を当然のように持っていて、そしてきっとそれを自覚もしていない。「自分はこの点で間違いを犯すことはない」という意識もされないくらいの信念に裏打ちされた、でもあくまで弱い立場からの被害者意識の滲出。
弱いのだから直接「誰かを傷つける笑い」を否定することはしない(できない)けれど、しかし一矢報いたい。その甘ったれた被害者意識を、その語り口から感じることがあって、もやっとするんだろうな。別にいつもじゃないし、本当にやさしい気持ちでこのことばを口にしているひともけっこういることはわかっているのだけれど。
しかしこういう「響きからこういうニュアンスを感じ取ってしまう」みたいな話って、自分で自分の文を読んでてもちょっと思ったけど、ありもしない電波を受信するひとみたいにも見えなくはないね。わかるひとにはわかってもらえるかもしんないし、わかんないひとからすると勝手に電波受信してなんかゆってるこのひとやばい、みたいな話なのかも。実際のところどうなのか、は検証のしようもないことなんだけれど。という、ぼやきでした。長々と書いたけれども、ここまで書くほどもやもやしているわけではない(なんなんだ)。