はてなキーワード: 助長とは
政治に文句があるなら政治家になればいいみたいなことを言うでない。
批評というのは、それが批判的なものであろうとも、人の手で創られた以上決して完全ではありえない「作品」を十全にするための試みであり、協力関係にあると考えられないだろうか。作品なくして批評はないので、一方的なものにはなるが。
ところで「差別を助長するのでああいう描写はするべきではない」と言ってる人、そんなにいるかね?
なにもかも「差別を助長するのでああいう描写はするべきではない」とか「偏見を生まないためなら、あらゆる物語を殺して回るべきだ」という意見に見えていないだろうか?
「あなたの好きな作品も含めたあらゆる物語を殺し尽くすだけの覚悟があってその批判を行っている」とか「表現への殺意の表明」とか妙に肩に力の入った書きぶり。批判的意見が何もかも表現を殺す悪い意見のような言いぐさ。
二番煎じ・三番煎じだろうけど書いておく。
何故なら、作中のニュース記事等で「薬物中毒による犯行」と明言されていないから。
と同時に、覚醒剤(アンフェタミン系の精神刺激薬)の中毒症状における典型的な症状でもある。
発生メカニズム的にこの両者の症状はかなり近い(Wikipediaで「ほぼ同じ」と書かれているくらい https://ja.m.wikipedia.org/wiki/覚醒剤)ので、単純な症状の描写だけでは両者が区別できないのは当然と言える。
ところで、作中の犯人の男は明らかに「理不尽に命を奪う」というイベントの引き金的に描かれている。
用意された悪役というか、憎まれるための舞台装置に近いポジションである。
であれば、メカニズム的にも矛盾はないので、ヤク中だったとするのが最も角は立たない。
「ヤクやるような奴だから人を殺すのだ」は一般的に受け入れやすいストーリーで、犯人が薬物中毒だったとしたら新聞記事やニュースでそこに言及がないのはほぼあり得ない。「薬物中毒者〇人殺人事件」という事件名がついたケースすらある。
逆に言えば、そういった描写をしないことで、明らかに作中では「精神を病んだ患者の犯行」の可能性を匂わせている。
「いわゆる『頭のおかしい奴』との断絶」を強烈なかたちで描くことで、犯行現場へ駆けつけて京本を救うヒーローとしての「ありえたかもしれない藤野」のカタルシスを描いている。
「僕はきれいな部分とか、優しいものを描くなら残酷な部分を描かないといけないと思っていて。そのほうが優しい部分に触れたときに、映えるじゃないですか」と語る藤本氏がいかにも好みそうな「残酷な部分」の象徴として、精神疾患の犯人を描いているのである。
これがヤク中の犯人では「残酷な部分」にはならない。ヤク中では掘り下げて描写しないと「クソ迷惑な阿呆がヤクやって人を殺す」という、「避けられたであろう理不尽さ」が拭えない。
精神病はそうじゃない。ヤクはヤク打ちたくて打って転げ落ちるイメージがあるが、統合失調症患者はなりたくてなるようなもんじゃない。
なりたくてなったわけじゃないのに「そう」なって人を殺してしまう、というのは残酷な話だ。
そう読む読み手がいるのは自然な話であり、精神病の当事者から抗議が行くのも自然な話だ。
普通に精神病への偏見を助長するような、配慮の足らない描写であるからだ。
個人的にはかわいそうなやつだ、と思う。『ルックバック』の犯人の話である。
ヤクか病かは知らないが、登場時点で明らかに被害妄想に苦しめられている。
正史というか京本脱ヒッキーの世界線では、この後人を殺すという大罪を犯してしまい、世間からクソボッコにされるのだ。
ただでさえ日常が意味もなく四面楚歌なのに、一線超えてしまったせいで本当に世界の敵になってしまうのだ。かわいそうに。
かわいそうと言えば藤野もかわいそうだ。「京本を部屋から出さなければ死ぬことはなかった」が完全に正となってしまった。部屋から出さなくてもいずれ漫画家とアシとして組めたというウルトラハッピー世界線の描写が逆に後味悪い。あれを藤野が直接認識することがないのは救いだ。あんなん見てもうたら残りの人生ずっと「京本を部屋から出さなければ良かった」に呪われて、再び歩き出せるようになるまでにえらい時間を食ったことだろう。
なお、『ルックバック』が京アニ放火殺人事件をモデルにしているという言及があるが、京アニの犯人は精神疾患があり過去に投薬治療も受けている。
「京アニの犯人は犯行当時責任能力があった」という言を以って『ルックバック』を擁護する向きがあるようだが、擁護になっていない雑な話と言わざるを得ない。
実際に私の親戚に統合失調症とともに生きていて、この前も三億円と書かれた紙片をくれたり合衆国大統領のボディーガードをしてることを教えてくれたりしたけれど、ルックバックでその特徴を想起することはなかったし、殺人を犯すとも思わなかったよ。
といっても、どうせ結局「私はそうは思わなかったよという人がひとりいた」としか受け取ってもらえないと思うけれど。
代表的な症状のうちその3つがそうであるというところからルックバックに統合失調症を見出そうというのもこじつけと言えなくもない(繰り返すけど薬物によるせん妄の可能性もある)。
差別が助長されることを恐れる気持ちはわかるけれど、だからこそ掲載からたった数日で賛同者を集めて抗議といういきなり急進的な態度に出るのではなくて、たとえば窓口との対話からはじめてみるという入り口もあるのだから、そういうところから初めて欲しかったなという気持ち(もちろんそういう発想をポンと出せず苦しい思いをしているという部分もあると思うけれど)。
今、はてなで小山田批判の次くらいに熱い、ルックバック統合失調症患者問題。
ただ、一方で、漫画の描写が統合失調症患者の偏見を強めるという意見に関しては完全に否定できるモノではないとも思っている。
統合失調症患者の描写に限らず、また「差別を助長する」と言われるような描写に限らず、あらゆる物語は正負を問わず人に影響を及ぼし、社会の価値観の形成の一助になるだけの力を持っているモノだ。
その力を無視して「漫画の描写が偏見を助長することなどない!」というのは、あまりにもご都合が過ぎるだろう。
だが、それでも俺は「差別を助長するのでああいう描写はするべきではない」という意見には頷かない。頷けない。
それは身も蓋もない話だが、物語の持つ悪影響ということを言い出したら際限がなくなってしまうからだ。
マンガに男の殺人鬼が出てきたからといって「男は全員殺人鬼だ」と思う奴はいない(anond:20210719195613)
※追記 引用元を間違えていた。正しくは → anond:20210719205459
どんな属性の人間が悪役と描かれていたって、それはその属性=悪とする歪んだ価値観の固定化に繋がる可能性は十分にあり得る。
あるいはどんな作品だって、わずかな敵キャラの悪行の描写から読者に悪徳を学ばせ得るし、可愛い女の子のキャラクターの姿が視聴者に不健全な形での性的衝動を呼び起こす可能性はあるし、不健康な嗜好品を嗜む姿で閲覧者に自分もと思わせてしまう危険性はある。
もし、そうした可能性を逐一あげつらって許さないと言っていたら、世の中の物語の9割以上が死に絶える。
大人気ヒット作も、歴史的な名著も、殺され尽くす。残るのは道徳の教科書の教育的な物語くらいではないか?
いや、度々、道徳とは何かという議論が起きていることを思えば、人々の考える正義の違いによってそうした物語も誰かにアウト認定されるだろうか。
「それは暴論だ、程度の問題がある」という人もいるだろう。
そもそも、ルックバックの描写が『程度』を大きく逸して邪悪な描写をしていたかと言われたら、そんなことはないだろう。
素直に読めば、あの殺人犯は物語においてただ理不尽な死を与えてくる存在というだけで、それ以上にフォーカスされるような点はないキャラクターだ。
批判している人たちだって、おそらくその半分くらいは批判のバズりを目にしていなかったら気にも留めなかっただろうし、多少「ん?」と描写に引っ掛かりを覚えた人だってこれが無名の新人の作品だったらわざわざ声をあげなかった人がほとんどなのではないだろうか?
ハッキリ言って、あの程度で許されざる描写と認定してしまうなら、どんな物語からでもいくらだって批判点を見つけることができてしまうハズだ。
結局、批判のやり玉にあがるかどうかに『程度』なんて基準はなく、流行りものの人気作だから、人気がなくて誰かも擁護されないから、インフルエンサーが批判しているから、マスメディアが擁護しているから、キモオタしか読んでないから、馬鹿な大衆しか持ち上げていないから、芸術的価値がないから、評論家気取りが持ち上げているから、俺が気に入らないから──、人々のそんなお気持ち次第でどうとでもなってしまうものなのだ。
もしも本気で人々に悪影響を及ぼす描写の規制を考えるなら、そのような恣意的極まる基準で規制することは断じて許されない。
少しでも偏見や加害や悪徳を生む描写は一律禁止にするしかない。
もしも、あなたが「偏見を生まないためなら、あらゆる物語を殺して回るべきだ」というのなら、それはそれで良い。
だけど俺は僅かな偏見の種を積むためだけに人々から物語を奪うことの方がより重篤な人権侵害だと考える。
そして、人々がこのどちらの意見を支持するか考えた時、俺は人々は物語を守る方を選んでくれると信じている。
まだ人類が言葉すら持っていない頃から、物語は連綿と紡がれ続け、今日まで人々に愛され続け、生み出され続けてきた。
そんな物語を人類が手放す日はけっして来ないと俺は信じている。
ルックバックの描写一つではなく、あらゆる物語の『正しくない』描写全てを秤にかけた時、人々が物語を守る方向に傾いていくれることを願っている。
だから、ルックバック批判に関しては、俺は一人の物語愛好家として強く否定をするし、もしもあなたがルックバックの殺人犯の描写を批判するというのなら、その時、あなたの好きな作品も含めたあらゆる物語を殺し尽くすだけの覚悟があってその批判を行っているのか考え直してほしいとも思う。
○追記
様々なご意見をいただいている中で、気になったこと、というか聞きたいことがあったので追記。
「表現の自由も批判も認められるべき」という中立的な意見が幾つも出てきているけど、そういう意見の人達はどこに落とし所を想定しているのだろう?
「その表現は人々や社会に悪影響を及ぼす良くない表現だ」という批判は、その表現の存在そのものを悪と認定するものだと俺は思っているのだけど、中立派はそうは思ってはいないのだろうか?
それとも、「邪悪だけど存在は許すよ」という立場なのだろうか?
俺自身も表現の及ぼす悪影響というモノは認める立場だけど、でもその悪影響をあって当たり前のことと受け入れるのではなく批判という対応を取るのなら、それは「その表現を許さない」という表現への殺意の表明なのではないかと受け止めている。
言い方は悪いが、「悪だとは叩くけど、その表現の命に自分から手をくだすつもりはありませんよ」という態度は、卑怯な責任逃れなんじゃないかとさえ思う。
自分なりの落とし所を持っている人がいたら教えてほしい。
shinonomen 批判=表現規制ではない。批判のお陰で読者は統合失調症への偏見に留意することができた。自由な創作と批判の双方を享受できる状態が最も健全だ。
「統合失調症への偏見に留意する」機会を作るなら、「この表現は良くない」と批判するのではなく、「統合失調症の人もそうでない人と同じで、人を殺す人もいればそうでない人もいますよ」とフラットに啓蒙するだけで良くない?
実際の事件として統失の患者が犯罪をした事例ってあるわけじゃん
それを見て原因が統合失調症のせいか、それとも犯人の人間性のせいかって判断するのは聴衆の善性とか価値観、判断能力によると思うんだけど
そしてそれは証明しようのないものだから、ただ起こってしまった現象として受け止めるしかない。つまり受け止める側の問題であって、作品が実際に起こった事件を基にしていようがそれが偏見の助長につながるっていうのはお門違いの批判に感じる
統合失調症患者が事件を起こした漫画を読んで「この漫画は統合失調症への偏見を強める!」って主張するのはあなたが偏見を持ってるだけでは?って思う
実際に起きた事件をまるでなかったことにしようとしたり、なんらかの意味を持たせようとして認知を捻じ曲げたりする方がよっぽど歪んだ見方なんじゃなかろうか
時間 | 記事数 | 文字数 | 文字数平均 | 文字数中央値 |
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00 | 88 | 18145 | 206.2 | 56 |
01 | 61 | 9923 | 162.7 | 61 |
02 | 55 | 9021 | 164.0 | 62 |
03 | 32 | 1993 | 62.3 | 38 |
04 | 11 | 2251 | 204.6 | 31 |
05 | 21 | 1798 | 85.6 | 39 |
06 | 43 | 4809 | 111.8 | 32 |
07 | 58 | 5279 | 91.0 | 45 |
08 | 156 | 12551 | 80.5 | 40 |
09 | 182 | 20606 | 113.2 | 44 |
10 | 147 | 17440 | 118.6 | 43 |
11 | 210 | 19459 | 92.7 | 55.5 |
12 | 237 | 20908 | 88.2 | 42 |
13 | 189 | 14694 | 77.7 | 39 |
14 | 250 | 23556 | 94.2 | 38 |
15 | 269 | 17269 | 64.2 | 36 |
16 | 202 | 20757 | 102.8 | 40 |
17 | 219 | 17610 | 80.4 | 38 |
18 | 210 | 23990 | 114.2 | 39.5 |
19 | 183 | 16637 | 90.9 | 36 |
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21 | 150 | 22484 | 149.9 | 44 |
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23 | 114 | 11706 | 102.7 | 50 |
1日 | 3419 | 368876 | 107.9 | 42 |
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横からだけど、
この絵は絶対エロ文脈用意してるからオタクは卑怯!本気でわからないなら社会不適合者笑
この増田へのブコメを読んで絶望感を抱いた統合失調症当事者がここに。
増田の考えこそ妄想的でさすが糖質ですねお薬飲みましょう、みたいなやつ。
私は増田が妄想の症状として増田を書いたとは思わない。正直な感想を言うと、貴様らごときが理解できる程度の文章のどこが妄想的なのか?だ。
私もルックバックを読んで、あの犯人は統合失調症として描かれていると思ったよ。そうした人物が大量殺人を犯す描画はいかにもテンプレで差別を助長するとすら思わないくらい薄っぺらな描写でしかなかった。
でも、あれで統合失調症への偏見が助長されるという意見には反論の余地はないよ。自分の感想をベースに薄っぺらい描写だから他人への影響なんてないとか主張する気はない。
というか、差別か否かってのは被差別者が声を上げるべきで他人がジャッジするものじゃないってのが差別問題を考える第一歩で、人物自分は差別と思わなかったから差別じゃないなんて言い訳にすらならないことなのになんでそれが統合失調症に対してはまかり通ると思ってるの?
「統合失調症」って病名が書いてあろうが書いてなかろうが
その症状である被害妄想や幻聴を、暴力犯罪に結びつけるような偏見を助長するなら、統合失調症患者がその偏見を受けることになるだろうが
わからんのかな
あるいはなぜバキエロ妄想おばさんがドラマ化を許されて幸色のワンルームは許されなかったのか。
幸色のワンルームは家族から虐待され自殺しそうになった少女をストーカーが保護したという作品だ。
その前に男性が少女誘拐して暴行した事件があったが全く別の話である。似ても似つかない
批判してた人たちは、被害者や被害者家族へのセカンドレイプだと言っていた。
現実の誘拐事件をモチーフにして、あたかも被害にあった少女が自ら望んで同意したかのように描いてると言っていた。
加害者を免責し、少女や家族を責める鬼畜の所業であるかのように責められた。
しかし本当にそうなら作品そのものの連載が止まっていただろうが、実際には作品の連載は問題なく続けられた。
これらの批判は完全に無実であり、ヒステリー状態になった女性たちの集団極化現状でしかなかった。
そして現在、統合失調症患者への偏見を助長しかねないと言われるルックバックは賞賛され、おじさんに侵される男は実は求めてました妄想を垂れ流すBL女の妄想はなんの問題もなくドラマ化されるという。
幸色のワンルームが潰されたことには運がなかったとしか言いようがない。
こういうことが繰り返されませんように。
"統失の症状のある男"が人を殺しましたとか、"20代の若い女"がドンファンを殺しましたとか、"プリウスに乗ってる人"が人を轢きましたとか
杉田俊介@「対抗言論」2号刊行されましたさんはTwitterを使っています
「名指しで批判されている。↓は今朝書いたが、他人のツイートに触発されてのことであり、自分の認識がぬるいと言わざるをえない。物語の必然に従ってあのような犯人像が選ばれたのか、作品の価値判断はどうあるべきか、根本的に考え直したい。まずは偏見の助長に無防備に荷担した点をお詫びしたい。」 / Twitter
じゃあ何だったら良かったんだよって話で、酔っ払ったおっさんだったら酔っぱらい、あるいはおっさんへの偏見を助長し、居眠り運転トラックだったらトラック運転手への差別を助長し、みたいな感じになるじゃん?何の特徴もない20代男性だったら20代男性に対する偏見を助長とか言えるし、もう何でもありじゃん?フィクションの中で犯罪が起きる度に抗議してるの?とかちょっと不思議。宇宙人とか妖怪とかに殺されたのなら満足なのか?
……ということは、エロゲーで登場人物は全員18歳以上ですの但し書きを付ければ許されるように、登場人物はすべて惑星ナヤンヌハマに住む妖怪です、という但し書きを付ければ解決だな。
nanaminonanamino 京アニ事件の犯人は精神鑑定の結果完全責任能力が認められてるんでしょ。統合失調症に対する偏見を持っているのは増田の方だよ。
2021/07/21
https://b.hatena.ne.jp/entry/4705733946799076258/comment/nanamino
これとかもそうだけど、「差別を指摘するほうが差別」みたいなのはあまりものの役に立たない意見で、言う側のストレス解消くらいにしかなっていない。
作者はメインキャラクターを退場させるために、世間的な偏見を受けやすい属性と思しきキャラクターを使った。自然災害とかではなく。
それが一番手っ取り早かったからか、考えに考え抜いたからかわからないけど、とにかくそうした。
しかし受け手側だって、あれを見てその属性(病気)を連想する人がそれなりに数いるくらいには世間的偏見がある。そもそも取りざたされる事件の犯人だって、その病気じゃないのか?と検査される程度の“偏見”があるわけだろ。
どこかで誰かが釘を差す必要はあるよ。子供が読むときは保護者がそれをできればいいし、成人が読むときは、物語を楽しむ自分とは別の自分がそれをする。そしてそういうストッパーが期待できない読み手の可能性も考えておかなければならない。その結果がこれだ。逆説的には、指摘に対して反発する(自分の内面で解決できていない)人がいるから指摘が必要みたいな感じになっている。
作品中に「この物語には特定の病気を持つ方への誤った認識を助長するような表現がありますが~」みたいな現実に引き戻すメッセージを入れない代わりに、批判的視座を外部委託することで、ひとたび自分の好みの作品にケチをつけられたと認識するや許せないと思う感情を抑えられなくなる都合はよいが面倒な客の相手をしてもらえるんだから、作り手側は万々歳だ。それはそれで無責任な話だけど。
荻上です。ラジオのOPで、2、3分ほどのフリートークの時間があります。僕はそこで、『ルックバック』現象について簡単に触れました。
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496401369355
内容は、「『ルックバック』というすごく良い漫画が話題になっていた。漫画家クラスターなどを含めてさまざまな反響があった。「過去を振り返る」「前を向く」ことについて読み手に考えさせる作品であるが、打ちのめされたようなツイートをしている人も。詳細は、社会的な出来事に関わる漫画でもあり、触れるとネタバレになりそうなため、ひとまず読んでいない方は是非」というものです。
受け止め難い理不尽な出来事を前に自分を責め、「あり得たかもしれない別の世界」あるいは「イマジナリーな救済」に一時避難するが、それでもなお「自分の席」に座り直すというストーリー。主人公たちが過ごした時間をサイレント手法でリズミカルに描くことで、読者を、他者の感情の解釈や理解へと誘う力強い漫画だと思い、紹介しました。
ここで割愛した評の一つが、加害者のキャラクター描写についてでした。サイレントでも感情が豊かに表現される主人公描写に対し、加害者は悪魔化・患者化された記号として登場し、その背景は描かれません。もちろん、加害者の実相が主人公に理解可能かどうか、あるいは物語時間の中で必要な情報が取得できるかなど、物語の制約上の限界がそこにはあります。それでも、悪魔化・患者化された記号としての加害者描写は、本作がモデル漫画であるか否かに関わらず、幻聴に関連する特定の疾病群に対する偏見を助長する可能性は気になりました。同様の指摘は、複数の精神福祉関係者が行っています。
作中では犯人像について詳しく語られておらず、あくまでメディア上に提供された定型的な警察発表のみが紹介されています。主人公の浸る仮想or空想世界での犯行シーンは、実際におきた風景の再現にあたるものなのか、あくまで警察発表などの断片情報から作られた主人公の想像上のものなのかは、解釈に委ねられています。個人的には後者であるという理解です。そのため、作品そのものが「特定の病名について断定的な描写を行なっている」というより、「定型的なメディアの事件報道を描き、またそれを元にイマジナリーな加害者像を作り上げる主人公を描いた」という構図だと捉えています。
このような描写が、特定の精神疾患群に対して、「対話不能な凶悪犯罪者」であるというステレオタイプ的な読解を生み、補強しうるというのは、その通りだと思います。作中の描写が、「従来の事件報道が各種疾患へのステレオタイプを拡散してきたことの再現」であり、主人公もそのイメージをトレースしているからこそです。
そのことについての批評的注釈を割愛し、「ひとまず読む」ことを推奨するだけでよしとした判断の背景に、疾患に対する無理解や鈍感さ、語り手としての怠慢があるのではないかと言われれば、そうなのだと思います。僕のラジオ経由で漫画を知り、漫画を読んだということは、僕の発言に一定の信頼をおいてくださっていたのでしょう。それが不意打ち的に、当事者性ゆえの脅威を強く味わうことになったのは、僕の言論の責任だと思います。
なお一部のブクマやツリーでは、元増田氏の投稿に対して、疾病名に絡めて嘲笑するものも多くありました。そのような非難には賛同できません。また、面白い作品、読むことが強く勧められる作品であると感じたからといって(実際、「ルックバック」は優れた作品であると思います)、その作品への懸念や批判を一括して否定する必要はないでしょう。優れた作品も、推敲可能性が常に検討できますし、読者との応答を通じて描写が変化することもあります。「このようなレスポンスが確かにある」ということが読み手間で交わされることもまた、作品に対する同時代的な注釈にもなります。
*
ところで、同趣旨で荻上(および杉田俊介氏)を名指しする投稿は、ツイッター上の @YANA1952 ( https://twitter.com/YANA1952 )氏のアカウントでも行われていました。追記部分では、元増田氏とツイート主は同一人物であるように読めます。実際に @YANA1952 氏は、最初の増田投稿の17分後に、追記とされる増田については、投稿1分後に、ツイッターでそのURLをリンクしています。
@YANA1952 というアカウント名には見覚えがあります。以前は「矢那やな夫」( @YANA1945 )と名乗っておられたのですが、その後「障害者雇用の働き方」という名前に変わっていました。昨夜までも同アカウント名だったのですが、今日になって、IDを @CHL1952 ( https://twitter.com/CHL1952 )に、名前を「障害者雇用で働く人」に変えられました。
IDの推移
リネームが続いておられるので、 @YANA1952 宛、あるいは @CHL1952 宛にリプライした場合、再度リンク切れになってしまう可能性があると思い、増田にてレスポンスすることにいたしました。ウェブ上のテキストのみのコミュニケーションであるため、元増田氏、ツイート主含めて、どこまでその内容が事実であるのか、その当事者性がどういうものなのか、僕にはわかりません。ただ、特定の投稿の真偽や有無にかかわらず、補足・応答の必要は感じていたため、こちらに投稿したいと思います。
https://twitter.com/torakare/status/1417636459775811591?s=20
はてなブックマークというサービスが面白いとネットで友人が褒めていたので、見てみた。
世論調査や内閣支持率のブコメで、今の自民党を支持するやつは殺人鬼だ、というブコメがスターをたくさん集めていた。
それでも私は明日、出勤しなければいけない。
つらい。
LGBTや精神障害者への差別には敏感でも、自民党員への差別には鈍感な反差別業界。
つらい。
周囲の目が怖い。
時間 | 記事数 | 文字数 | 文字数平均 | 文字数中央値 |
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00 | 157 | 22540 | 143.6 | 41 |
01 | 69 | 8871 | 128.6 | 43 |
02 | 39 | 16195 | 415.3 | 180 |
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04 | 48 | 4772 | 99.4 | 42 |
05 | 36 | 1861 | 51.7 | 37 |
06 | 38 | 2443 | 64.3 | 27 |
07 | 70 | 5429 | 77.6 | 31.5 |
08 | 118 | 15046 | 127.5 | 51.5 |
09 | 116 | 16348 | 140.9 | 67 |
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11 | 322 | 23288 | 72.3 | 40 |
12 | 255 | 22435 | 88.0 | 41 |
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「統合失調症を想起させる」「統合失調症を社会悪のように描くな」といった批判が寄せられている。
私自身は上記の批判がピンと来なかったので改めて読み直してみたところ、
作中で“被害妄想により自分を罵倒する声が聞こえていた”とは書かれているものの、
彼(作中の殺人犯)が被害妄想に陥った直接的な原因はやはり描写されていなかった。
にも関わらず、多くの批判者が「統合失調症を想起させる」と感じたのはなぜだろうか?
作中の描写から読み解ける範囲では、例えば彼が麻薬中毒者であったとか、
大学内に飾られている絵画に憑りついた幽霊に唆されて凶行に走ったとかであっても、全く矛盾がないはずだ。
しかしながら、批判者は一様に「彼は統合失調症であり、それが凶行の原因として描写されている」と認定している。
恐らくは、批判者の頭の中に「京アニ放火殺人事件」の犯人が想起されたのだと思う。
あの事件の犯人が逮捕された当初、犯人は統合失調症であり、それによって犯行が引き起こされたかのような風評が発生した。
(断っておくが、当該の犯人は「刑事責任能力には問題がない」と判断されており、統合失調症が犯罪を引き起こすという風評は全くの誤りである。)
本作も、京アニの事件がモチーフの一つとなっていることは明らかだろう。
しかし、実際の事件の犯人が本当に統合失調症に罹っていたからといって、
「ルックバック」の通り魔殺人犯が「統合失調症の患者である」と断定することはできないはずだ。
繰り返しになるが、彼が麻薬を打っている描写や幽霊に取りつかれている描写がないのと同様に、
批判者は、本作が「統合失調症に対する誤った認識・偏見を助長しうる」ことを懸念しているが、
私から見ると、そのような批判者の言動(その外見だけで統合失調症と断定し、凶行の原因と結びつけること)こそが、
統合失調症をとりまく偏見と同質の、謂れなき批判ではないかと思う。
改めて、なぜ彼が(麻薬中毒者ではなく)統合失調症であると認定できるのかを考えてみてほしい。
(7/21追記)
コメントくれた皆さん、ありがとうございます。いくつか返信してみます。
「確率」の意図するところがわからないけど、「麻薬中毒者の凶悪犯罪率<統合失調症患者の犯罪率」という主張であれば、そんなことはないでしょう。
(雑にググってみたけど明確なデータが見つからなかったので、情報お持ちの方はコメントください。)
それに、確率の高さを論拠に犯人の特性を推定する行為は「この地区は●●人の犯罪率が高いから、この事件も●●人が起こしたに違いない」みたいな偏見と地続きの危険性がありませんか?
実際の事件でそれが風評被害をもたらしたことを(批判者は)知っているにも関わらず、作中の彼をその言動から「統合失調症である」と安易に断定することに異議がある、という趣旨です。
当該の批判がピンとこなかったと書いたとおり、私はそう思いませんでした。
私自身作品を正しく読み解けている自信はありませんが、『ルックバック』は“創作”のもたらすカルマと救済を描いた作品だと思っていて、
彼が凶行に至った原因も「"創作"に狂わされた」以上の意味付けは考えていませんでした。
「丸メガネと出っ歯の特徴をもつ日本人のキャラクター」に対しては「ステレオタイプだなあ」と反感を持ちますが、
「丸メガネと出っ歯の特徴をもつキャラクター」そのものに文句をつけたりはしないです。
繰り返しになりますが、「通り魔殺人」と「統合失調症」を結びつける論拠が作中に提示されてないのに、
「統合失調症を示す描写だ」と断定することに問題があると指摘しています。
事例をお借りすれば、日本人と示されていない丸メガネと出っ歯のキャラクターが出てきただけで、
「これは日本人差別だ!」というのはおかしいのではないかという指摘です。
追記しておくと、読者が作品を読んで「彼が凶行に至った原因は〇〇である」と解釈するのは自由ですし、