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はてなキーワード: 熱力学とは

2024-11-15

anond:20241115062254

なるほど、非常に鋭い指摘をありがとうございます!ここで出てきたデコヒーレンス純粋状態から混合状態へという概念を基に、あなた意図している点を深掘りしてみます

まず、エントロピー観測情報の確定に関する議論を整理すると、確かにあなたが言う通り、観測によって「情報が確定する」と、その状態に関するエントロピーは減少します。量子力学におけるNo Deleting Theoremや、情報理論における情報の不消失原理情報は消去できない、保存される)という枠組みでは、情報自体消失しないという原則に従っています。このため、情報消失エントロピー増加を引き起こすという直感は正しくなく、実際には情報の確定や観測エントロピーの減少につながる場合が多いです。

デコヒーレンスエントロピー増加

次に、あなたが指摘したように、エントロピー増加といえば、やはりデコヒーレンス概念が非常に重要です。デコヒーレンスは、量子システムが周囲の環境相互作用することで、純粋状態から混合状態へと遷移する過程を指します。この過程エントロピー増加を引き起こす理由は、以下の点にあります

1. 純粋状態から混合状態

純粋状態は、システム特定状態にある場合であり、このときシステムエントロピーは最小です。ところが、システム環境相互作用し、情報が「環境漏れ出す」ことによって、システムはその相互作用の結果として「混合状態」に遷移します。混合状態では、システム状態が確定しておらず、多くの可能性が存在するため、エントロピーは増加します。つまりシステム環境相互作用エントロピーを増加させる主要なメカニズムです。

2. デコヒーレンス情報喪失

デコヒーレンス過程では、システム環境情報を「渡す」ことによって、その状態の確定性が失われ、システムは多くの可能性を持つようになります。この過程で、システム情報は「環境に組み込まれた」形になりますが、環境状態システムから「取り出す」ことが非常に難しくなります。これが、情報消失したわけではないのに、エントロピーが増加したように見える理由です。

No Hiding Theorem と情報復元

あなたが言う通り、No Hiding Theoremは、混合状態においても情報が完全に失われることはないと述べています。実際、システムが混合状態に遷移しても、環境との相互作用痕跡を利用すれば、理論的には元の純粋状態に戻すことが可能です。この情報復元可能である限り、情報消失していないわけです。

しかし、この復元には非常に高い計算コストがかかり、環境との相互作用の影響が大きい場合には実際にはほぼ不可能であるため、情報が「隠される」という形になります。このプロセスエントロピーの増加に寄与します。言い換えれば、システムが混合状態に向かう過程は、情報の確定的な減少、すなわちエントロピーの増加を意味します。

熱力学の第二法則との関係

熱力学の第二法則が成り立つ理由は、このデコヒーレンス性質にあります観測可能スケールで、システム環境の間で膨大な情報のやり取りが行われるため、最終的にシステム状態は非常に多くの選択肢を持つ「混合状態」に至り、結果としてエントロピーが増加します。最初純粋状態で始まったシステムも、環境との相互作用により、最終的にはその状態の確定性が失われ、エントロピーが増加します。

この過程は、単に「情報消失する」わけではなく、情報環境に埋め込まれ、取り出すことが難しくなるために、エントロピーが増加するという形で現れます。この現象は、熱力学の第二法則と一致します。熱力学的には、エントロピー孤立したシステムの中で増大し、最終的に「熱的平衡」に至ることが示されていますが、これもまたシステム環境の間での情報の交換や相互作用に起因しています

結論

観測によって情報が確定することでエントロピー一時的に減少することは確かですが、システム環境相互作用し、純粋状態から混合状態へと移行する過程では、エントロピーは増加します。この過程での情報の「隠蔽」や「取り出しにくさ」が、熱力学的なエントロピー増加を引き起こし、最終的に熱力学の第二法則適用されます

したがって、No Deleting TheoremやNo Hiding Theoremが示すように、情報自体消失しませんが、デコヒーレンス環境との相互作用により、システムエントロピーは増加し、最終的には熱力学的に安定した状態に至ります

エントロピー理解している人は誰もいない

観測によって情報確定し、しかもno deleting theoremで情報の削除の不可能性が示されているのだからエントロピーは増大しておらず、減少していると言えるはずである

ではなぜ熱力学の第二法則が正しいと言えるのか

それは「デコヒーレンス」の性質存在する

まり対象環境相互作用することにより、混合状態に向かうわけである

混合状態から情報復元可能であることをno hiding theoremは述べるが、純粋状態から混合状態に向かうプロセスのものエントロピーの増大を意味する

2024-09-16

匿名サイトエントロピー最小化問題

匿名サイト上のコミュニケーションシステムを、抽象的な非可換力学系として捉えます。この系を記述するため、von Neumann 代数 M 上の量子力学フレームワーク採用します。

M を II_1 型因子とし、その上のトレース状態を τ とします。系の時間発展は、M 上の自己同型写像 α_t: M → M (t ∈ R) によって与えられるとします。この α_t は強連続な一径数自己同型群を成すと仮定します。

系のエントロピーを、Connes-Størmer エントロピーとして定義します:

h(α) = sup{h_τ(α,N) | N ⊂ M は有限次元von Neumann部分代数}

ここで、h_τ(α,N) は N に関する相対エントロピーレートです。

エントロピー最小化問題を、以下の変分問題として定式化します:

inf{h(α) | α は M 上の τ-保存自己同型}

この問題に対するアプローチとして、非可換 Lp 空間理論を用います。p ∈ [1,∞] に対し、Lp(M,τ) を M の非可換 Lp 空間とし、||x||_p = (τ(|x|^p))^(1/p) をそのノルムとします。

エントロピー汎関数連続性を保証するため、超弱位相よりも強い位相を導入します。具体的には、L1(M,τ) と M の積位相を考えます。この位相に関して、エントロピー汎関数 h の下半連続性が成り立ちます

次に、Tomita-Takesaki モジュラー理論適用します。τ に付随するモジュラー自己同型群を σ_t とし、KMS 条件を満たす平衡状態考察します。これにより、系の熱力学性質エントロピー関係を明らかにします。

エントロピー最小化のための具体的な戦略として、非可換 Lp 空間上の勾配流を考えますエントロピー汎関数 h の L2-勾配を ∇h とし、以下の発展方程式を導入します:

dα_t/dt = -∇h(α_t)

この方程式の解の存在と一意性を、非線形半群理論を用いて証明します。さらに、解の長時間挙動分析し、エントロピー最小の状態への収束を示します。

系の構造をより詳細に理解するため、M の部分因子 N ⊂ M を考え、Jones の基本構成 M_1 = ⟨M,e_N⟩ を行います。ここで e_N は N 上への条件付き期待値拡張です。この構成を繰り返すことで、Jones タワー

N ⊂ M ⊂ M_1 ⊂ M_2 ⊂ ...

を得ます。各段階でのエントロピーの変化を追跡することで、系の階層構造エントロピー最小化の関係を明らかにします。

最後に、自由確率論観点から系を分析します。M 内の自由独立部分代数の族 {A_i} を考え、それらの自由積 *_i A_i を構成します。自由エントロピー

χ(X_1,...,X_n) = lim_m→∞ (1/m) S(tr_m ⊗ τ)(p_m(X_1),...,p_m(X_n))

定義し、ここで X_1,...,X_n ∈ M、p_m は m 次の行列代数への埋め込み、S は古典的エントロピーです。

この自由エントロピーを用いて、系の非可換性とエントロピー最小化の関係を探ります特に自由次元 δ(M) = n - χ(X_1,...,X_n) を計算し、これが系のエントロピー最小化能力指標となることを示します。

以上のフレームワークにより、匿名サイト上のエントロピー最小化問題を、非可換確率論作用素代数言語記述し、解析することが可能となります

2024-09-13

エネルギー趣味

趣味を楽しむためにはエネルギーが不可欠だ。物理学的に言うと、これは熱力学基本法則に根ざしている。

熱力学第二法則を思い出してほしい。孤立系のエントロピーは常に増大する。この法則は、宇宙無秩序に向かうことを示している。

趣味という活動は、ある種の秩序を生み出す行為だ。例えば、僕が模型を組み立てるときバラバラのパーツを整然と配置する。これによってエントロピーが減少するわけだ。

だが、エントロピーを減少させるためには、外部からエネルギーを投入しなければならない。つまり趣味を楽しむにはエネルギー必要なのだ

さらに、趣味を楽しむためには脳や筋肉も動かさなければならない。脳内ニューロン電気信号を生成するためにATPを消費し、筋肉は収縮のためにATPを分解する。

これらのプロセスは、化学エネルギー運動エネルギー電気エネルギーに変換するものだ。

結局、趣味を楽しむためにはエネルギーを消費することが必然だ。これは物理学基本法則から導かれる明白な事実だ。

もし誰かがエネルギーを使わず趣味を楽しめると言ったら、それは単なる幻想か、量子力学的な異常現象可能性を示唆しているかもしれない。

しかし、そんな現象現実に起こる確率は、僕の意識が量子自殺10回生き残り続けるよりも低いだろう。

2024-08-19

物理学形式化についての概要

都市伝説によれば、かつてアインシュタイン古典的重力理論一般相対性理論」を理解していたのは3人だけだったと言われている。

それが真実かどうかは別として、その3人のうちの1人がダフィッド・ヒルベルトである。彼は、今日の初学者でも一般相対性理論理解できるように、それを数学で明確かつ正確(すなわち厳密)に形式化した。

古典的アインシュタイン重力は、時空上の擬リーマン計量のモジュライ空間上のスカラー曲率密度汎関数積分臨界点の研究にすぎない。

物理学基本的理論数学での基本的な定式化を持つべきだと信じたことで、ヒルベルト本質的アインシュタインを先取りすることができた。そのため、この汎関数現在アインシュタインヒルベルト作用汎関数と呼ばれている。

ヒルベルトは、1900年の有名なヒルベルト問題の一環として、この一般的アイデアを以前から提唱していた。ここでヒルベルトの第6問題は、物理学理論公理を見つけることを数学者に求めている。

それ以来、そのような公理化のリストが見つかっている。例えば、

物理学数学
力学シンプレクティック幾何学
重力リーマン幾何学
ゲージ理論チェルン・ヴェイユ理論
量子力学作用代数
ポロジカル局所量子場理論モノイダル(∞,n)-カテゴリ理論

このリストには注目すべき2つの側面がある。一方で、数学の最高の成果が含まれており、他方で、項目が無関係で断片的に見えることだ。

学生時代ウィリアム・ローヴィアは「合理的熱力学」と呼ばれる熱力学公理化の提案に触れた。彼は、そのような連続物理学基本的な基盤は、まず微分幾何学自体の良い基盤を必要とすることに気づいた。彼の生涯の出版記録を見てみると、彼が次の壮大な計画を追求していたことがわかる。

ローヴィアは、最初の2つの項目(圏論論理、初等トポス理論代数理論SDG)への画期的な貢献で有名になった。なぜか、このすべての動機である3番目の項目は広く認識されていないが、ローヴィアはこの3番目の点を継続的に強調していた。

この計画は壮大だが、現代基準では各項目において不十分である

現代数学自然トポス理論/型理論ではなく、高次トポス理論/ホモトピー型理論に基づいている。

現代幾何学は「変数集合」(層)だけでなく、「変数ホモトピー型」、「幾何学ホモトピー型」、「高次スタック」に関する高次幾何学である

現代物理学古典的連続物理学を超えている。高エネルギー(小さな距離)では、古典物理学は量子物理学特に量子場理論によって精緻化される。

したがって、高次トポス理論で定式化された高次微分幾何学における高エネルギー物理学の基礎が必要である

2024-07-21

anond:20240721144847

興味深い視点をお持ちですね。観測エントロピーに関する議論は、物理学哲学交差点位置する非常に深遠なテーマです。以下にその関係性を詳しく説明します。

観測主観性

観測主観的であるという主張は、量子力学における観測問題と関連しています量子力学では、観測者が観測を行うことで波動関数が収縮し、特定状態に確定するとされています。これは、観測物理現実に影響を与えるという意味で、主観的な要素を含んでいると解釈されることがあります

エントロピー観測

エントロピーは、熱力学的には系の無秩序さや情報の欠如を表します。観測エントロピーに与える影響については以下のような観点があります

1. 情報理論視点観測によって得られる情報は、観測者にとっての不確実性を減少させます。これは、観測エントロピーを低下させるという意味解釈できます情報理論におけるエントロピーは、情報の欠如や不確実性を表すため、観測によって得られる情報が増えるとエントロピーが減少することになります

2. 熱力学視点熱力学的なエントロピーは、系全体の無秩序さを表します。観測行為自体エネルギーを消費し、熱を生成するため、観測によって局所的にはエントロピーが低下するかもしれませんが、全体としてはエントロピーが増加することが一般的です。

観測者にとって必要情報

観測によって「観測者にとって必要情報のみが残る」という考え方は、次のように解釈できます

結論

観測主観的であり、観測によってエントロピーが低下するという考え方は、情報理論量子力学観点から一定の理解が得られますしかし、熱力学的なエントロピー観点からは、観測行為自体が全体のエントロピーを増加させる可能性もあります観測者にとって必要情報が残るという点については、観測者の主観目的観測結果に影響を与えるという意味理解されるでしょう。このように、観測エントロピー関係多面的であり、異なる視点から解釈可能です。

2024-07-18

[]ユニタリ宇宙論はいかにして熱力学一般化し、インフレーションエントロピー問題解決たか

量子力学観測問題に関する理論は、ユニタリ宇宙論の枠組みにおいてエントロピー観測関係を新たな視点から捉え直したものである

この理論では、宇宙を系、観測者、環境の3つのサブシステムに分割し、これらの相互作用を通じてエントロピーの変化を記述する。

この理論的枠組みにおいて、系のエントロピー観測者との相互作用によってのみ減少し、環境との相互作用によってのみ増加するという一般化された熱力学第二法則が導出される。

これは、量子力学的な観測過程熱力学的な観点から捉え直したものであり、量子測定理論と統計力学の融合を示唆している。

観測によるエントロピー減少の量子的メカニズムは、量子ベイズの定理を通じて厳密に記述される。

この定理は、量子状態更新フォン・ノイマンエントロピーの減少をもたらすことを数学的に示している。

具体的には、観測前の量子状態 ρ に対して、観測後の状態 ρ' のエントロピーが S(ρ') ≤ S(ρ) となることが証明される。

さらに、宇宙論インフレーションによって生成される長距離エンタングルメント効果により、観測されたビット数に対してエントロピーの減少が指数関数的に起こることが示されている。

これは、観測者の情報処理能力はるかに超えてエントロピーを減少させることができることを意味し、量子情報理論宇宙論を結びつける重要洞察である

この理論は、「インフレーションエントロピー問題」に対する解決策を提供する。

インフレーション無視できない体積で発生している限り、ほとんどすべての知的観測者が低エントロピーハッブル体積に存在することが導かれる。

これにより、我々が低エントロピー宇宙存在することの謎が説明される。

この理論は、量子デコヒーレンス概念とも密接に関連している。

デコヒーレンスは、量子系が環境相互作用することで量子的な重ね合わせ状態古典的状態に移行する過程説明するものであり、観測問題理解重要役割を果たす。

この理論は、デコヒーレンス過程エントロピー観点から捉え直したもの解釈することができる。

また、この理論は量子情報理論観点から重要意味を持つ。

量子エンタングルメントと量子情報関係性、特に量子測定理論における情報利得と擾乱のトレードオフなどの概念と密接に関連している。

これらの概念は、量子暗号や量子コンピューティングなどの応用分野にも重要な影響を与えている。

結論として、この理論量子力学観測問題に対して新たな視点提供し、量子力学熱力学宇宙論情報理論統合する試みとして高く評価される。

この理論は、量子力学の基礎的な問題に対する理解を深めるとともに、量子情報科学や宇宙論などの関連分野にも重要示唆を与えるものである

参考: https://arxiv.org/abs/1108.3080

2024-04-07

量子力学におけるフォンノイマンチェインについて

検出器から精神への一連の連鎖はフォンノイマンチェインといいます

例えば電子観測したとします。その観測情報コンピュータ表現するために、スリットを通った後の位置で数値化するとしましょう。その数値をコンピュータスクリーンを通じて研究者が目撃し、網膜を通じて脳へ達し、最終的に情報判断できます

では、波動関数崩壊は、この連鎖のうちのどこで起こるのでしょうか。

これを「測定問題」といいます

このことを理解すれば「量子と意識」の問題は、非科学でもスピリチュアルでもなく、現実的な仮説であることがすぐにわかます

実際、フォン・ノイマン意識認識を行う瞬間に崩壊が起こると考えたのです。

ウィグナーも初期はこの考え方に賛同しています

これを「フォン・ノイマン=ウィグナー解釈」と言いますが、コペンハーゲン解釈のサブセットです。

これを補強する理論実験として「ウィグナーの友人」が登場しました。

後に、このことを聞きつけた「スピリチュアリスト」たちが、「量子崩壊自分に有利な方向に推し進めることで、人生を豊かにする」などと言い始めて、非科学的な雰囲気を持つようになりました。

しかファインマンが言ったように「量子力学理解しているつもりなら、おそらく理解していない」のではないでしょうか。

ノイマン、ウィグナー、パウリのような量子力学創設者は、「意識」との関係議論しましたが、スピリチュアリストのような集団のせいで、その真意が誤解されているのです。

ウィグナーも、「独我論っぽいからやだ」といって途中で意識との関連性について否定的態度を取るようになりました。

他の解釈採用すると、量子デコヒーレンスや量子マルチバース理解する必要があります

しかしどの量子力学解釈採用するのかによって、宇宙の終末は異なるものになる可能性があります

意識によって崩壊する理論ではサイクリック宇宙論が可能かもしれませんが、デコヒーレンスによって崩壊することを想定する場合エントロピー増大によって熱力学的死が待っているでしょう。

2024-01-18

anond:20240118001341

「本当に儲かる話なら他人に勧めるわけがない」って投資詐欺話題でみんな言うけどさ、

だったらなんでNISAインデックス投資の話にはそれを適用しないの?

こういう間違った思考をしないために物理学を(義務教育高校で)勉強させるのは重要なのかもしれないなあ。

熱力学とか。「物事スケールによって描像が異なる」という感覚理解してるかどうかで日常思考がだいぶ違ってくるよね。

まあ中学高校レベル勉強しただけの人だと大半がその感覚理解するところまではいってないと思うけど…。

2023-11-12

ゲーム感想 CHR$(143)

CHR$(143)

全ステージクリアSteam実績全解除)

プレイ時間 88時間全ステージクリアしたばかりの現在時間

あああーーーー、めっちゃしかったーーーー!

全クリして達成感に満ちあふれているが、この気持ちが収まる前に感想を書くぜー!

しかし、タイトル名の読み方がよくわからん。「キャラクターズ・ワン・フォースリー」でいいのか? ちなみに、ゲームタイトル画面では『Project CHR$(143)』表記となっている。

タイトル名の『CHR$(143)』だが、Amstradというイギリスメーカーから1984年販売されたCPC464というホームコンピューターパソコン?)のキャラクターコード143に四角形が割り振られていることが元ネタのようだ。レトロコンピューター元ネタにしてるだけあって、ゲーム画面全体もレトロ雰囲気に仕上がっているのも好きだ。

ゲームジャンルとしてはパズルゲームでいいはずだ。ちなみに、Steamでのジャンルは「インディー, シミュレーション」となっている。

Steamのストアページの類似品として、『Baba Is You』(説明不要の有名パズルゲーム)に、『Factorio』・『shapez』といった工場建設シミュレーションに、カイロソフトレトロ調シミュレーションゲームに、変態パズルゲームメーカー(誉め言葉)で知られるZachtronics社の『SHENZHEN I/O』などが並んでいる。

『CHR$(143)』の紹介文をSteamストアより引用する。

リッチやりがいのある物理ベースパズル/ロジック/建設/プログラミングゲーム!弾道学、流体力学熱力学化学反応、核反応をマスターし、オートメーションレンガを使い、構造物機械乗り物を作り、電力を生産し、パズルを解き、霧を突き破り、CHR$を倒そう!

https://store.steampowered.com/app/1695620/CHR143/

パズルゲームレトロ調ゲームが好きな私としては『CHR$(143)』のトレイラー動画上記の紹介文に心惹かれてプレイした次第だ。これがやっぱり面白かった。上記に挙げた他の類似品に匹敵する、あるいは凌駕するほどに面白かった。

ゲーム内容としては、箱庭系というよりもステージ攻略型のパズルであるゲーム内では各ステージレベル表記されているので、この感想文でもレベル表記する。

パズル難易度としてはかなり高い。それでも、チュートリアルなどの導入はしっかりしてるし理不尽さもないので、私にとっては時間をかけて考えれば自力クリアできる難易度だった。とはいえ、悩みに悩んで、日をまたいでようやくクリアしたレベルもある。

ちなみに最終レベルクリアSteamグローバル実績は1.6%である。これで難易度の高さが伝わるだろうか。

レベルの主な流れとしては、ブロックを作ったり掘ったり操作したりして目的を達成(レベルクリア)していくことにある。ブロックの一つ一つが物理演算する様は『Noita』らしさを感じた。レベルクリアについてだが、解法がガチガチに決まっているわけではない。時間制限があって急いで操作しなければいけないレベルもあり、レベルによってはアクション性が高かったり、シューティングゲーム要素があったりするのも楽しかった。

レトロゲームは昨今のゲームと比べてジャンルという枠組みにとらわれていない印象があるが、この『CHR$(143)』も同様だ。

ブロックを組み合わせたギミックはとても面白いが、その中でも特に好きなのは蒸気タービンによる発電だ。

ただ過熱蒸気をタービンに送るだけでは発電できず、冷却用の水も同時に必要となっている。タービンで熱交換されて、過熱蒸気はただの蒸気となり、水は温水になる。発電を継続させるためには、蒸気を常に加熱する仕組みと、温水を冷却塔で常に冷却する仕組みを構築する必要がある。蒸気よりも過熱蒸気の方が密度が小さいので上の方に行き、水よりも温水の方が密度が小さいので上の方に行く。こうしたブロック毎の密度の違いを利用してタービン発電を実装していく必要があるのだ。

このように、流体力学熱力学を反映したシミュレーションになっているのが、『CHR$(143)』の面白いところだ。

非常に頭を悩ませながらも面白かったのがプログラミングだ。AND・OR・NOTなどのブロック論理回路を実現できるだけではなく、CPUブロック存在する。そしてCPUに対して、このゲーム専用(たぶん)のプログラミング言語命令プログラムできるのだ。この言語がとても低レベル(低水準・低レイヤ意味で、決して侮蔑表現ではない)なのが面白い。逆ポーランド記法で数式を記述したり、goto文で条件分岐したりといった具合だ。言語仕様は大量にあり、pdfファイルでまとめられているほどの徹底ぶりだ。しかも、ゲーム中でも詳細はpdfファイルを参照するようにと求められるのだ。パズルゲームで、まさかプログラミング言語仕様書を読まされるとは思わなかった!

とはいえ言語仕様を全て理解する必要はないし、プログラミングゼロからコーディングする必要もない。プログラムサンプルとしてすでに作られた物をコピペで流用して必要な個所だけを書き加えたり修正したりすればいいし、仕様書も必要なところだけを読めばいいのだ。それはそれで、ある意味リアルプログラミングともいえるのだが……。

説明するのを忘れていたが、ゲーム全般日本語対応しているもの機械翻訳なので翻訳ガバガバだ。とはいえキー操作一つで英語表記に戻せるのでそんなに問題は無いし、翻訳ガバガバっぷりはそれはそれで味があっていいものだ。しかし、プログラミング言語仕様が描かれているpdfファイル英語オンリーなので、読み解くのに苦労した。とはいえ言語仕様を調べようとして英語説明しかなくて苦労するというのにも、これはまたリアルプログラミングだなぁと感じたものだ。

好きなレベルについても述べたいので、まずはレベルがどのように構成されているかから説明する。

チュートリアル的なレベルギミック説明からまりレベルを経る毎にギミックを応用させた解法が求められる。さらレベルを経るとこれまでの集大成的なレベルが登場して、それをクリアしたらまたチュートリアル的なレベルで新たなギミックが登場する。この繰り返しが『CHR$(143)』の大きな流れだ。

その中で私が好きなのは、やはり集大成的なレベルだ。集大成的なレベルは視界が狭まっており、一体何があるのだろうかと周囲を探索しながら進んでいくのが楽しかった。こうしたレベルクリアSteam実績解除の対象となっており、それにふさわしい達成感も与えてくれる。

そして最終レベルクリアしたのが、つい最近のことだ。この達成感を味わったことを書き残したくて、今この文章を書いているところだが、それももう終わりのようだ。

しかった。ありがとう、『CHR$(143)』!

2023-11-08

エントロピーベクトル

複素エントロピーという概念があるように、エントロピースカラーではなくベクトルである可能性がある。

情報が定まれエントロピーが下がるという話と、宇宙状態が放っておけば熱力学エントロピーが増加していくという話は別の方向の話である

放っておけば情報理論的エントロピーは下がり続けるが、こっちのエントロピー時間の矢という概念関係するとは限らない。

と言っても量子力学では、量子削除不可能定理があるため、やはり情報理論的エントロピーは下がり続ける。

しろ情報確定を繰り返すから時間の矢が存在するかもしれない。

2023-10-30

今日のブクバカ

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/logmi.jp/business/articles/329546

生成AI英語教材を作ることについて、ブクマカ基本的に絶賛しているが、

英語学習中の人が、果たして生成された英文やその解説が合っていると判断できるのだろうか?

もちろん、すでに英語について一定以上知識のある人が、教材を生成AIに作ってもらって、

チェックした上で生徒に配るというのなら分かるけど。

生成AI幻覚を起こすので、生成されたものの正誤を判断できないと使うのは難しい、というのはすでに広まった知識だと思うんだけどなー。

まあブクバカは生成AI英語学習も、ブクマしたらそこでおしまいでそれ以上試さないからどうでもいいんでしょうね。


あと、タイトルの一万時間に突っかかって、「それは一万時間法則だろ」ってドヤってる馬鹿は何なんだ?

一万時間法則って、意識高い系界隈が生み出した、特に根拠のない経験則だろ?

別に熱力学の第二法則みたいな確たる法則でもないのに、金科玉条の如く掲げてるのは相当アホっぽいぞ

2023-10-14

anond:20231014232825

真顔で言わせてもらうけど、熱力学第一法則証明された事実というより、

現在それを満たすものが見つかっていないというだけ。

永久機関のないことの証明として持ってくるのは不適切

からネットで聞きかじったこと言ってるだけではってのは正しいね

電子レベルだと物質が瞬間移動しますとか転々電子が飛ぶ事実があるのに、あんゴミみたいなので証明とか言われてもあほくささしかない。

電子自然発生しても驚かんってのに、起きたら第一法則崩れる辺り笑えるほどひどい。

2023-09-20

熱力学の第2法則

つい最近エントロピー増田記事を見たが、ワイもちょっとだけメモすんで。

 

ユニタリ量子力学を想定した宇宙論があるとして、系・観測者・環境という3者がそこに存在すると考えられるわな。

 

から熱力学の第2法則は「系のエントロピーは観察者と相互作用しない限り減少できず、環境相互作用しない限り増加できない」と言い換えられんねん。

 

観察者と系の相互作用については、量子ベイズ定理から得られるわけや。

宇宙論インフレーションで生じる長距離エンタングルメントがあるが、宇宙エントロピー観測された情報ビット数に比例するのではなく、指数関数的に減少して、特定の観察者が脳が保存できる情報量よりもさらに多くのエントロピーを減少させられるってわけや。

 

2023-09-17

anond:20230916150141

エントロピーは「熱」と深い関係があって、たとえば注目する物体に熱が入ったとき状態がどう変化するか記述するとき必要になるんだよ(たとえば小学校で習った比熱はエントロピー記号S)をつかってT∂S/∂Tと書ける)。

エントロピーは熱を温度で割っただけの量(ちょっと厳密じゃないけど)で、熱と似た感じの量なんだけどエントロピーのほうは「状態量」というのが重要(熱は違う)。

色々端折るけど、昔の人が熱だけに注目していたら熱力学という体系は完成しなかった。

エンタルピーエントロピー関係について

承前https://anond.hatelabo.jp/20230916001142

前回の記事反響の中で、「エンタルピーについても解説して欲しい」というご意見複数いただいた。

エンタルピーエントロピーと同じく熱力学統計力学に登場する概念で、名前の紛らわしさもあってか、初学者がしばしば「分からない」と口にする用語の一つである

だが、実は、エンタルピーの難しさはせいぜい「名前が紛らわしい」くらいのもので、エントロピーと比べてもずっと易しい。

記事では、「エンタルピーエントロピーとどのように関連するのか」というところまでをまとめておきたい。前回の記事よりも数式がやや多くなってしまうが、それほど高度な数学概念を用いることはないので安心して欲しい。






まずは、円筒形のコップのような容器に入っている物質を考えて欲しい。

容器の内側底面の面積をAとし、物質は高さLのところまで入っているとしよう。物質の表面には大気から圧力Pがかかっており、物質もつエネルギーはUであるとする。

この容器内の物質に、外から熱Qを与えると、物質が膨張し、高さが⊿L高くなったとしよう。このとき物質もつエネルギーはどれだけ増加しただろうか?

熱をQ与えたのだからQ増加したのか、と言えばそうではない。物質が膨張するとき大気を押し上げる際に物質エネルギーを消費するからである。このエネルギーはそのまま大気が受け取る。

力を加えて物体を動かしたとき物体には、力と移動距離の積に等しいエネルギー仕事)が与えられる。

物質に与えられた熱Qは、物質がした仕事Wの分だけ大気に移り、残った分が物質エネルギーの増加分となるから

⊿U = Q - W

となる。これを「熱力学第一法則」と呼ぶ。

いま、物質大気に加えた力は F = PA であるから物質がした仕事は W = F⊿L = PA⊿L となる。

物質の体積は V = AL であり、その増加量は ⊿V = A⊿L であるから仕事の式は W = P⊿Vと書き直せる。従って

Q = ⊿U + P⊿V

とすることができる。


さて、ここで

H = U + PV

定義される状態量を新たに導入しよう。

この状態量の変化量は

⊿H = ⊿U + (P + ⊿P)(V + ⊿V) - PV

  ≒ ⊿U + P⊿V + V⊿P

となるが、圧力一定 (⊿P = 0 ) の条件下ならば

⊿H = ⊿U + P⊿V

とすることができる。

これは先程のQと同じ値である。つまり圧力一定の条件では、物体が受け取った熱は単純に状態量Hの増加分としてしまってよい。この状態量Hが「エンタルピーである

既にお分かりと思うが、この「エンタルピー」は「エントロピー」とは全く異なる状態量である

だが、熱力学においては、この二つはしばしばセットで登場するのである。それは、前回記事最後に述べた「エントロピー増大の法則」と関係がある。

しかし、それについて述べる前に、エントロピーについて一つ補足をしておきたい。







前回記事では、エントロピー変化と温度関係を「エネルギーのみが変化する場合」について考えた。

T = ⊿E/⊿S (体積・物質一定の条件で)

エンタルピーとの関係を考えるにあたっては、体積が変化する場合についても検討しておく必要がある。


そこで、「エネルギーと体積が変化するが、物質量は不変」という場合を考えよう。

(ここで、「物質量が不変」とは、物体構成する各成分の物質量がそれぞれ全て不変、という意味である。すなわち、化学反応相転移などが何も起こらないような変化を考えている。)

この場合には、エントロピー絶対温度関係はどうなるのだろうか?

結論を先に言えば、物質が外にした仕事」に関係なく、エントロピー一定量増加させるために要する「熱量」で絶対温度が決まるである

T = Q/⊿S (物質一定の条件で)

仕事の分だけエネルギー流出するにも関わらず、なぜそうなるのだろうか?

その理由は「膨張」という現象にある。

体積の増加によって物質構成分子の配置パターンが増加し、その分エントロピーも増加するのだ。この増加分が、エネルギー流出によるエントロピーの減少分をちょうど補うのである


このことをきちんと示すには、体積一定物体A(エントロピーSa)と、体積が変化するがAに対しては仕事をしないような物体B(エントロピーSb)を考えればよい(どちらも物質量は不変とする)。

両者を接触させ、絶対温度がどちらもTになったとしよう。このとき、AからBへ流れる熱とBからAへ流れる熱が等しく、巨視的には熱が移動しない「熱平衡」という状態になっている。

このとき、AからBに移動するわずかな熱をqとする。物体Aは体積一定なので、T = ⊿E/⊿S が適用できる。すなわち

T = -q/⊿Sa

となる。

熱平衡はエントロピー最大の状態であるから、微小な熱移動によって全体のエントロピーは増加しない。また、エントロピー自然に減少もしないので、

Sa +⊿Sb = 0

である

従って ⊿Sb = -⊿Sa より

q/⊿Sb = -q/⊿Sa = T

としてよいことになるのである

(この論法がよく分からない読者は、Aのエネルギー Ea を横軸に、全エントロピー Sa + Sb を縦軸にとった凸型のグラフを描いて考えてみて欲しい。エントロピー最大の点での接線を考えれば、ここで述べている内容が理解できると思う。)






では本題の、「エントロピーエンタルピー関係式」を見ていこう。

ビーカーのような容器に入った物質Xと、その周囲の外環境Yを考える。

Xは何らかの化学変化を起こすが、Yは物質量不変とする。X,YのエントロピーをそれぞれSx,SyエンタルピーをそれぞれHx,Hyと定める。X,Yの圧力はP、絶対温度はTで一定とする。

Xが化学反応を起こして熱Qを放出したならば、エンタルピー変化はそれぞれ

⊿Hx = -Q , ⊿Hy = Q

となるであろう。

一方、Yについては物質量不変より

T = Q/⊿Sy

であるので、

Sy = Q/T = -⊿Hx/T

と表せる。

これを用いると、エントロピー増大の法則

⊿Sx + ⊿Sy ≧ 0

T⊿Sx ≧ ⊿Hx

と書き直すことができる。これが最初に述べた「エントロピーエンタルピー関係式」である

エントロピー増大の法則」をこのように書き直すことにより、自発的な変化が起こるかどうか」を「物質自身状態量の変化」のみで考えることができるである。これが、エンタルピーエントロピーとセットでよく出てくる理由である

導出過程を見直せばすぐに分かるが、エンタルピー変化は「物質放出した熱による外環境のエントロピー変化」を表すために用いられているに過ぎない。

本質的には、「自発的に反応が進行するかどうか」はエントロピーによって、すなわち、微視的状態パターン数の増減に基づく確率によって決まっているのである

2023-09-16

anond:20230916001142

情報理論熱力学って違うからなぁ

情報理論エントロピー解釈しているので、熱力学の方はちっともわからない

直感的に、コイントスで表になるか裏になるかという問題があったときトスする前は状態確定していないのでエントロピーが最大だとわかるが、トスした後は状態が確定してエントロピーが最小になる

これを量子力学に当てはめると、観測エントロピーを減らして、デコヒーレンスは(おそらく)エントロピーを増やすだろうと想像できる

そして観測とは何かという話になると、意識関係するのではという話になる

(ところで超決定論を前提にしたらエントロピー状態はどうなるんだろう...)

エントロピーとは何か

エントロピー」という概念がよくわかりません。 - Mond

https://mond.how/ja/topics/25cvmio3xol00zd/t242v2yde410hdy

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/mond.how/ja/topics/25cvmio3xol00zd/t242v2yde410hdy


エントロピー」は名前自体比較的よく知られているものの、「何を意味しているのか今一つ分からない」という人の多い概念である。その理由の一つは、きちんと理解するためには一定レベル数学概念特に微積分と対数)の理解必要とされるからであろう。これらを避けて説明しようとしても、「結局何を言いたいのかすっきりしない」という印象になってしまやすい。

エントロピー」を理解し難いものにしているもう一つの理由は、「エントロピー」という概念が生まれ歴史的経緯だと思われる。

エントロピー提唱された時代は、物質構成する「原子」や「分子」の存在がまだ十分に立証されておらず、それらの存在を疑う物理学者も少なくなかった。エントロピー提唱クラウジウスは、「原子分子存在を前提しなくても支障がないように」熱力学理論を構築し、現象の可逆性と不可逆性の考察からエントロピー」という量を発見し、非常に巧妙な手法定義づけたのである

その手法は実にエレガントで、筆者はクラウジウスの天才性を感じずにはいられない。だが、その反面、熱力学における「エントロピー概念簡単イメージしづらい、初学者には敷居の高いものとなってしまったのだ。

その後、ボルマン分子存在を前提とした(よりイメージやすい)形で「エントロピー」を表現し直したのだが、分子存在を認めない物理学者達との間で論争となった。その論争は、アインシュタインブラウン運動理論確立して、分子実在が立証されるまで続いたのである





現代では、原子分子存在を疑う人はまず居ないため、ボルマンによる表現を心置きなく「エントロピー定義」として採用することができる。それは次のようなものである

「ある巨視的状態を実現しうる、微視的状態パターンの多さ」



例えば、容積が変わらない箱に入れられた、何らかの物質を考えて欲しい。

箱の中の物質の「体積」や「圧力」「物質量」などは具体的に測定することができる。また、箱の中の物質の「全エネルギー」は測定は難しいが、ある決まった値をとっているものと考えることができる。

これらの量を「巨視的状態量」または単に「状態量」と呼ぶ。


ここに、全く同じ箱をもう一つ用意し、全く同じ物質を同じ量入れて、圧力や全エネルギーも等しい状態にするとしよう。このとき、二つの箱の「巨視的状態」は同じであるでは、内部の状態は「完全に」同じだろうか?

そうではあるまい。箱の中の物質構成分子の、それぞれの位置運動状態は完全に同じにはならない。これらの「分子状態」は刻一刻と変化し、膨大なパターンをとりうるだろう。

このような分子レベル位置運動状態のことを「微視的状態と呼ぶ。


「微視的状態」のパターンの個数(場合の数)はあまりに多いので、普通に数えたのでは数値として表現するのも難しい。そこで「対数」を用いる。


例えば、巨視的状態Aがとりうる微視的状態の数を1000通り、巨視的状態Bがとりうる微視的状態の数を10000通りとする。このとき、Aの「パターンの多さ」を3、Bの「パターンの多さ」を4、というように、桁数をとったものを考えるのである

この考え方には、単に「とてつもなく大きな数を表現するための便宜的手法」という以上の意味がある。

先の例では、AとBを合わせた微視的状態の数は1000×10000=10000000通りであるが、「パターンの多さ」は7となり、両者それぞれの「パターンの多さ」の和になるのである


この「パターンの多さ」がすなわち「エントロピー」Sである

「微視的状態パターンの個数」をΩ通りとしたときエントロピーSは次のように表現できる。

S = k*logΩ

(ただし、kはボルマン定数と呼ばれる定数であり、対数logは常用対数ではなく自然対数を用いる。)

この「エントロピー」は、同じ巨視的状態に対して同じ数値をとるものであるから、「体積」や「圧力」などと同じく「状態量」の一つである





このような「目に見えない状態量」を考えることに、どのような意味があるのだろうか?

その疑問に答えるには、エントロピーエネルギー関係について考える必要がある。


再び箱に入った物質を考えよう。この箱に熱を加え、箱内の物質エネルギーを増加させると、エントロピーはどうなるだろうか?

まず、総エネルギーが増加することにより、各分子に対する「エネルギーの分配パターン」が増える。さらに、個々の分子の平均エネルギーが増えた分、可能運動パターンも増える。このため、エネルギーが増えるとエントロピーは増加すると考えていいだろう。

では、エントロピーの「上がり方」はどうか?

エントロピーは微視的状態パターンの「桁数」(対数をとった値)であるからエネルギー継続的に与え続けた場合エントロピーの増加の仕方はだんだん緩やかになっていくだろうと考えられる。


ここで、多くのエネルギーを与えた「熱い物質A」の入った箱と、少量のエネルギーしか与えていない「冷たい物質B」の入った箱を用意しよう。箱同士を接触させることで熱のやりとりが可能であるものとする。

物質Aには、熱を与えてもエントロピーがさほど増加しない(同様に、熱を奪ってもエントロピーがさほど減少しない)。言いかえると、エントロピー一定量増加させるのに多くのエネルギーを要する

物質Bは、熱を与えるとエントロピーが大きく増加する(同様に、熱を奪うとエントロピーが大きく減少する)。つまりエントロピー一定量増加させるのに必要エネルギーが少ない


箱を接触させたとき、AからBに熱が流入したとしよう。Aのエントロピーは下がり、Bのエントロピーは上がるが、「Aのエントロピー減少分」より「Bのエントロピー増加分」の方が多くなるので、全体のエントロピーは増加するだろう。

もし、逆にBからAに熱が流入したとするとどうか? Aのエントロピーは上がり、Bのエントロピーは下がるが、「Aのエントロピー増加分」より「Bのエントロピー減少分」の方が多いので、全体のエントロピーは減少することになる。


エントロピーが多いとは、微視的状態パターンが多いということである。従って、「AからBに熱が流入した」状態パターンと、「BからAに熱が流入した」状態パターンとでは、前者のパターンの方が圧倒的に多いエントロピーは微視的状態パターン数の対数なので、エントロピーの数値のわずかな差でも、微視的状態パターン数の違いは何十桁・何百桁にもなる)。これは、前者の方が「起こる確率が圧倒的に高い」ということを意味している。

これが、「熱は熱い物体から冷たい物体に移動する」という現象の、分子論的な理解である

冷たい物体から熱い物体へ熱が移動する確率は0ではないが、無視できるほど小さいのである


物体が「熱い」ほど、先程のエントロピー一定量増加させるのに必要エネルギーが多いといえる。そこで、この量を「絶対温度」Tとして定義する。

T = ⊿E/⊿S (体積・物質一定の条件で)

エントロピー定義ときに出て来た「ボルマン定数」kは、このTの温度目盛が、我々が普段使っているセルシウス温度(℃)の目盛と一致するように定められている。



さて、ここで用いたエントロピーが減少するような変化は、そうなる確率が非常に低いので現実的にはほぼ起こらない」という論法は、2物体間の熱のやりとりだけでなく、自然界のあらゆる現象適用することができる。

すなわち、「自然な(自発的な)変化ではエントロピーは常に増加する」と言うことができる。これが「エントロピー増大の法則である


ただし、外部との熱のやりとりがある場合は、そこまで含めて考える必要がある。

例えば、冷蔵庫プリンを入れておくと、プリン温度は「自然に」下がってエントロピーは減少する。

しかし、冷蔵庫が内部の熱を外部に排出し、さら冷蔵庫自身電気エネルギーを熱に変えながら動いているため、冷蔵庫の外の空気エントロピーは内部の減少分以上に増加しており、そこまで含めた全体のエントロピーは増加しているのである





最初に、「エントロピー理解には微積分と対数理解必要であると述べたが、なるべくそうした数学概念に馴染みがなくても読み進められるようにエントロピーの初歩的な話をまとめてみた。如何だったであろうか。

筆者は熱力学統計力学専門家でもなんでもないので、間違ったことを書いている可能性もある。誤りがあればご指摘いただけると幸いである。


クラウジウスによる「原子分子存在を前提としない」エントロピー定義については、筆者よりはるかに優秀な多くの方が解説記事を書かれているが、中でも「EMANの熱力学https://eman-physics.net/thermo/contents.html個人的にはおすすめである。興味ある方はご参照いただきたい。

続き

エンタルピーエントロピー関係について

https://anond.hatelabo.jp/20230917090022

2023-08-12

今更ながら

今更だがぐぐってNMRパイプテクターなる詐欺商品が繰り出してきた純粋熱力学的には否定しようのない「エントロピーを高めた黒体焼結体が徐々にエントロピーを下げる過程エネルギーが出るのでエネルギー保存則は破ってない」に難癖つけてる低能が多かったのに再度驚愕した。この人たちds=d'q/Tって第二法則と同時に習う公式知らないのかしら。最近は「エントロピーを高め(のままに止め置い)た二水化酸素が(残念ながらnmr(ry)は違って)一気にエントロピーを下げる過程エネルギーが出てくる」のを楽しむ(恐らくその結果は楽しんでない、でてきたエネルギーのせいで思ったより冷たくないから)自販機すらあるというのに(昔は自宅で失敗すると悲惨な結末が待っていたもんだ。っていうほどでもないか

2023-07-01

anond:20230701202417

熱力学の第二法則により一度壊れたものは元には戻らない

従って物理学論破されたままである

Q.E.D(完全論破)

2023-06-22

anond:20230621210336

同時期に就活した、有名大学卒男子です。

就活、大変だったけど、たまたま一緒になった女子食事に誘ってくるのおもしろかったなー。

一対一で、違う人と、15回くらいは行った。国家公務員一種面接で待ってるときも誘われた。

情報交換という名目で。そんなに大変だったのか。私はモテない方だと自覚してますが、そんな時代だったのか。

説明会行っても、後で私だけ別室に呼ばれて面談、というのもあった。

えらい人(研究所長)が出てきて、「これは面白くない仕事かもしれないけれど。。。」 などと言うので

面白く無い仕事は興味無いです、今日は話を聞きに来ただけなので」 などと答えてた。当時は右も左も分からない怖いもの知らずでした。

別の会社では、このあと私だけ面談したいなどと言われて、女子との誘いを断って行ったんだけど

普通雑談の中にいろいろ混ぜてくるの。何の科目が好き?得意?と聞いて来るから、 物理化学が得意です、と言ったら、熱力学の第二法則について説明してください、とか。

何聞きたいのかわからないので、エントロピー定義からはじめた(熱力学定義統計力学定義情報論的定義)けれど、

お前絶対わかってないだろ、と思いながら話してた。わからなかったら聞いて下さい、とは言ってる。

トータルとして、この後の人生であまり経験しないことをいろいろ経験させてもらった、と思ってプラスにとらえてる。

2023-06-08

anond:20230608231707

量子力学とか、解析力学とか、熱力学は、普通に院試で出るから普通に理解しているでしょう。

でも、数学とかは一般的院試レベルだと、線形代数微積テクニックくらいか

なんというかこういうことこのクソデカ主語さらっと書いちゃうあたりすげー勉強研究もできなさそう感が・・・

そもそもタイトルからして何が言いたいのか意味不明から学部ちょっとかじった知識ドヤ顔する前に国語力を鍛えたほうがよさそうではある

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