はてなキーワード: 逮捕状とは
伊藤詩織氏と山口敬之氏との件について、最初の彼女の会見から、事件の本質と関係ないことも含めて多くのことが語られ、多くの人がその事件の本質と関係ないことに気を取られてややこしくしてるように見えるので、整理する意味でちょっと書く。
実際、「レイプがあったかどうか」という核心にだけ絞れば出来事はかなりシンプルだと思う。で、先に結論めいたことから言うと、(真実はひとつだとしても)今回の両者の言い分や状況から第三者が客観的に判断しようとした場合、どちらかが間違っててどちらかが正しいということだけでなく、ある程度のところまで両者の言い分がともに正しいという可能性がある、ということを考えてる。
まず、俺はとりあえず男な(一応、これは最初に言っておこう)。伊藤詩織氏の最初の会見、先日のFCCJの会見をはじめ、公になっているインタビュー記事やそれへのネットの反応などは一通りチェック済み。Blackboxは申し訳ないが未読。山口氏のフェイスブックでの投稿や先日上がったHanada動画は視聴済み。
法律の専門家じゃないのでそのへんの解釈や定義は曖昧なところあるかも。いずれにしても素人の感想ではあるので、そのつもりで。
就職を斡旋してやるからセックスさせろとか、就職を世話してやる俺の酒は断るな、ということはなかったようなので、そういう点でのセクハラ、パワハラ、アルハラというのは除外していいよね。あくまで二人で食事に行ったきっかけに過ぎない。
これは重要かつ決定的物証となり得ると思うけど、実際どうだったかを今の段階で科学的に検証できないのであれば、この論点に拘り続けることはできない。
この辺はやや重要なところではある。刑事事件としては一応結論が出てしまったわけだけど、この件の本質的な争点は、当時の伊藤氏の状態が準強姦の定義である「心神喪失」「抗拒不能」に当たるかどうかだと思うから。
でも、タクシーの中では「駅でおろしてほしい」とわりとまともなことを言ってたようだし、このタクシー運転手の証言だけでは、山口氏が挿入した際に「心神喪失」「抗拒不能」だったとまで断定することは難しいだろうと思う。一目撃者に過ぎないのでは。
これについては山口氏がHanadaの動画の中で自分で確認したと言っているが、伊藤氏はふらふらながら自分でカバンを抱え、自分の足で歩いていたという。ここで伊藤氏の主張と食い違いが見られるが、民事でこの映像が証拠として出ればはっきりするはずなので、これ以上はここでは触れない。何か明確なものが写ってることを願う。
2軒目の寿司屋のトイレあたりから記憶を失っていた伊藤氏。目を覚ましたときには山口氏に挿入されていたという。それに対して山口氏は、伊藤氏は嘔吐して水を飲んだり土下座して吐いたことを謝ったりしていたという。ここは完全に二人にしか分からない上に、伊藤氏は自身でも記憶を失くしていたと言っているので、証言という点で伊藤氏は不利にならざるを得ないだろう。
ここで俺が引っかかったのは、「行為中に目を覚ました」ということだ。
ちょっと本筋から外れるけど、これまでいろんなテレビドラマや映画、漫画など創作の世界(敢えていうが欧米のも含めて)で、羽目を外して飲み過ぎて記憶を失い、翌朝目が覚めたら見知らぬ男の部屋のベッドで事後だった、みたいなのってあるよなぁって。
物語だと、だいたい自分の失態として、あちゃーやっちゃった、みたいな後悔と二日酔いを抱えてとぼとぼ家に帰るってことになるんだけど、考えてみれば、それもほとんどレイプ(準強姦)と同じなんだなってこと。だけど、自分が楽しく酒を飲んでたっていう記憶と、行為中の記憶がないっていうことによって、「レイプだ」とまではなかなか本人(また、そういう創作物を見ている側)は思わないというのも、人の心理というか、人情なのかもしれない。
(断っておくが、俺は、だからこうした演出や筋書きをすべて準強姦的だと非難したいわけじゃないし、そういう女性は「レイプ被害者」だと自覚を持てとか言いたいわけじゃない。まあ、なんていうか人の営みってそういうところあるよねって感じ。何でもかんでも法律だ警察だってことではないだろとは普通に思う)
ともあれ、伊藤氏がここまでこの件を引っ張るのは、行為中に我に返ったからで、実際に痛みと恐怖を感じたからなんだろうな、と察することはできる。
あと、アルコール性健忘症というのもなかなか厄介だ。その時は普通に受け答えをしているけど後になると本人は覚えてないってやつ。これも、後から本人がそういう状態にあったということを科学的に立証することはできないんだろう。
この件を、確定的な出来事に即してシンプルに見れば、男と女が飲みに行き、女が飲み過ぎか体調不良で意識が朦朧とし、男がホテルに連れ込んでセックスがあった、という、ありきたりといえば言い過ぎだけど、珍しくはない話でしかないだろってこと。そして、アルコール性健忘症を鑑みたときに、伊藤氏と山口氏のどっちが正しいということでなく、伊藤氏が記憶を失くしているときに山口氏の主張したとおりの行動をしたのかもしれず、たまたま挿入中に目覚めた伊藤氏が痛みと恐怖で逃げ出した、という、両者の言い分が相当なところまで両立することも有り得るんじゃないの、という可能性を指摘したかった。
だって、最近伊藤氏の応援側は、酩酊した女性を病院に連れて行かずにホテルに連れ込むとは何事だ、ぐらいなことしか言えなくなってんだもん。いやまあ、そりゃあそうだけどさ。実際、本当に明らかになっていることで第三者がはっきり言えるのってこれぐらいのことなんだよな。そりゃメディアも取り上げにくいだろ。
伊藤氏がまるきり嘘ついてるとは思わないし、望まない性行為があったのは事実のようだからいろんな意味で彼女の行動が報われてほしいと思うけど、実際、これからメディアで発言していくにしても、「刑事事件としては不起訴処分」みたいな注釈をいちいちつけられるわけだろ、なんか運が悪いっつーか。
で、最後に、敢えて触れなかったが、逮捕状が出たけど直前でもみ消された件。
人によっては、この点こそがこの件の本質だと思ってるんだろうが、これについては俺にはよく分からん、ので特に言えることはない。そもそも、ここまで書いてきたようにこの件で本当に客観的に準強姦が立証できるかというのもなかなか難しいんじゃねって俺は思ってるけど、実際に政権上層部の人間の恣意的な判断があったならぜひ明らかになってほしいとは思う。安倍政権にかかわらず、権力に何ができるのかということは国民は知るべきだろ。
以上、読んでくれてサンクス。山口氏に肩入れするつもりはないけど、まあ、そう読めるかもしれん。何度も言うように伊藤氏が嘘をついているとも思ってないので、山口氏に味方していると言われるのは本意じゃない。念を押すが、両者の言い分がある程度までともに正しいという可能性がある、ということを主張したかっただけ。あと、行為中に我に返ったというところが事態のかなり大きな分かれ目になってるのでは、ということは言われてないように思えたので。大した結論出てなくてすまん。民事でどうなるかは、ここで俺が書いた以上の決定的な新事実が出てこない限り、どっちかが完全勝訴みたいにはならないんじゃないかな。まあ、裁判のことはよくわからんが。最後に、デートレイプドラッグはきちんと啓蒙すべきだ。これ大事な。
https://www.news-postseven.com/archives/20141011_280513.html
正しいかどうかは知らんけど。
刑事訴訟法第217条
条文
第217条
30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第213条から前条までの規定を適用する。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E4%BA%8B%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E6%B3%95%E7%AC%AC213%E6%9D%A1
現行犯人の逮捕は、司法警察職員に限らず、逮捕状がなくても一般人問わず誰でも、行うことができるとされている。私人(常人)逮捕は犯人が、現に犯行を行っているか、行い終わったところに限る。また現行犯については逮捕して身柄を確保する必要が高い上に、誤認逮捕のおそれがないためである。 私人逮捕を行うには次の条件を満たす必要がある。
30万円以下の罰金、拘留、科料にあたる罪の場合(刑法では、過失傷害罪・侮辱罪)は、犯人の住居、氏名が明らかでなく、又は犯人が逃亡するおそれがある場合(217条)。
個人に対してデートレイプドラッグを盛られたはずだ、ドラッグにより意識なく合意なしに暴行された、と記者会見で言っているのは表現の自由で認められる範囲を超えてるし、やられた側も名誉毀損で争えるから構わないって話でもない。
逮捕状がもみ消されたと思うと言うのは表現の自由だけど、この件について検察審査会が不服を受理してくれた直後なのだからその結果を待ってからにした方がいいという意見も道理と思うよ。こちらに限った記者会見なら自由だけどね。
http://anond.hatelabo.jp/20170603150418
この点について詩織さんも誤解しているっぽいよね。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3069385.htm
「当の捜査機関が逮捕状をもみ消してしまうからです。私はあのときに感じた脱力感を今でも忘れることができません」(詩織さん 先月29日)
逮捕はあくまで疑うに足る時に逃亡や証拠隠滅をさせないための拘束に過ぎないので
起訴が確実なものでもなければまして有罪を約束するものでもなくて、逃亡や証拠隠滅
間違っている点をいくつか
(「遠隔捜査 −真実への23日間−」というPSPのゲームソフトがあるので、私の中では有名である。)
内訳は
なお、本来の制度では「逃走や証拠隠滅の恐れがない」場合には逮捕も勾留も認められない。
つまり、制度的には「諸外国のような2、3日」の通りになっている。
(現行犯逮捕には逮捕状が不要なので、その後の72時間は警察の判断のみで拘束できる。)
個人的には「ノーチェックで3日間」というのは十分ひどいと思うのですが。
なお、「証拠隠滅の恐れ」には「被害者への恫喝」が含まれるので、おそらく勾留請求の論法としてはそこを主張したものと思われます。
おそらく警察は最初から最大勾留を請求するつもりが無かったので、早い段階で勾留請求を行ったのでしょう。勾留に移行すると、逮捕からの経過時間と関係なくそこから10日間で勾留期限になります。
- 3日目 地裁(5分)
が勾留請求と思われるので、定石通り逮捕から72時間近くねばっているようですね。どんなやりとりがあったのか興味があるところ。
逆に「11日」「22日」という記述は記憶違いという事になります。
本来、裁判前に容疑者が収容されるのは「拘置所」と規定されていて、これは裁判所の管轄である。
警察の留置所を使用するのは「一時的な経過措置(代用監獄)」とされている。なお、「一時的措置」が何十年続いているのかという問題があり、「代用監獄問題」として知られている。
留置所は本来そのような長期の収容を行う施設ではないので、居住性が悪い。
本来の通りに拘置所にいた場合、「警察の拘束時間が長すぎる」となるはずである。
日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:国際人権基準に適った未決拘禁制度改革と代用監獄の廃止に向けて
代用監獄問題は冤罪事件の温床と言われているので知っておきましょう。
まぁ「72時間」の時点で十分に冤罪は捏造できるので、「取り調べ可視化」も必須です。
「まず、当番弁護士を呼ぼう。」
まぁこれを当然のように知っているのは、大学時代に「デモに参加して捕まったときの対処法」を常に語っていた知り合いや、弁護士の勉強をしていた知り合いが複数いるからだろうが。
状況、被害者の証言、容疑者の行動(自殺未遂など)を無視して、事件性を排除したいと考える人たちがいる。
この人たちは何とか「児童の家出」「同棲」ということにしたがっているが、その言動の原理は何だろう?
埼玉県朝霞市の中学3年の女子生徒(15)が2年ぶりに保護された事件で、埼玉県警朝霞署捜査本部が東京都中野区東中野の寺内樺風(かぶ)容疑者(23)=未成年者誘拐容疑で逮捕状=の自宅マンションから、玄関ドアを内側から開けられないようにする「外鍵」の器具を押収していたことが30日、捜査関係者への取材で分かった。捜査本部は、自殺を図ってけがをし治療中の寺内容疑者を31日に逮捕し、事件の全容解明を急ぐ。
http://www.sankei.com/affairs/news/160331/afr1603310001-n1.html
捜査本部によると寺内容疑者は「間違いありません。弁解することはありません」と容疑を認め、
「誘拐した女子生徒とは何の面識もありませんでした」と話しているという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160331-00000520-san-soci
追記:
id:shira0211tama 確定的な証拠と言い分が出揃ってないうちに世論が固まりすぎると警察によってテキトーなオチつけられそうっての警戒してるんじゃ?少なくとも自分はそう。
それは被害者を誹謗する根拠にはなりません。もしこの主張で誹謗する人がいれば、それは"真実追及"ではなく"逆張り"と呼ばれるものだ。
id:straychef 報道内容を鵜呑みにする人って
そのコメントでは、捜査が終結しても「真実は隠された」「真実が歪められた」と言い訳し続けることになるだろう。
「鵜呑み」どころか"自分に望ましい情報"以外を認めないことになりかねない。
id:nanamino オタクが犯罪者予備軍扱いされるとしたらマスコミの報道じゃなくこいつらのせいだよ。こんなに酷い中傷をマスコミは報道しないんだから、オタクに対しては全然甘い甘い
ところで、凶悪犯罪が起きて犯人が捕まるたび、いつも思うのだけど、警察はどういった捜査をして犯人を突き止めているんだろう。
もし、私が犯人だったら、(まず犯罪を犯そうと思うことがないけど)絶対に足がつくようなことはしない。
防犯カメラの映像もあんなに荒いのに、指紋も残っていないのに、どうやって特定できるんだろう。
捜査の様子がテレビで流れているのを見ると、生垣の隙間にライトを当てて、あるかどうかも分からない何かをくまなく探しているみたい。
そんなところに証拠品なんて無さそうなのに。でも、それできっと何かを見つけているんだと思う。
捕まえることが警察の仕事で、捕まえて当たり前だっていう人がいるのも分かるんだけど、私は、毎回、すごいなあって思っている。
どうやって、犯人までたどり着いたんだろう。
不審車両が警察官2人はね逃走、警視庁が発砲し身柄確保 殺人未遂容疑で逮捕へ 東京・新宿
23日午後5時20分ごろ、東京都新宿区大久保の路上で、警視庁第2自動車警ら隊が不審車両を停車させようとしたところ、車が体当たりして同隊員2人をはね、パトカーや一般車両に衝突しながら逃走した。
同隊員が拳銃を発砲したところ、車を運転していた30代男が右太ももに銃弾を受け、全治1カ月の重傷。命に別条はないという。警視庁は殺人未遂と公務執行妨害の疑いで男の逮捕状を請求。男の回復を待って逮捕する。
警視庁地域総務課によると、車は停車後も職務質問に応じず、同隊が窓ガラスを警棒でたたき割った直後に発進。車の助手席側にいた男性巡査部長(50)が車と立木の間にはさまれ、右太ももを切るけがを負い、別の男性巡査部長(36)も胸を打撲した。
男は発砲後も助手席にいた20代女と車両を乗り捨ててタクシーに乗り換えて逃走を続けたが、数キロ先の交番で新宿署員が発見。新宿署に任意同行を求めたところ、負傷していたことが分かり、都内の病院に搬送された。
先日、江沢民に対して逮捕状がだされた件(http://anond.hatelabo.jp/20131120204514)について書いた増田です。
つい先日中国がADIZを設定したことで世の中は大盛り上がりのようです。ここはてなでも極東ブログさんが
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2013/11/post-46f6.html
こんな記事を書いたり、scopedogさんが
という記事を書いたりとそこそこに盛り上がっていたと思います。ただ、このお二方は残念ながら国際法の観点から書いておらず、どうにも政治的態度の表明に終始している感が否めません。なので、本稿では国際法、国家実行の観点からADIZ及び空の自由に関して記述していきたいと思います。
まずは領空主権を巡る国際法についてさらっとおさらいしおきましょう。
ライト兄弟による飛行機の実験、ブレリオによるドーバー海峡横断などは言うまでもないでしょうが、飛行機の歴史は比較的最近のものです。そのため、かつては原則的空域自由説や、無害飛行権を認める条件付空域主権説が主流でした。ところが、ここで第一次大戦が発生してしまったのです。この大戦では近代兵器が初めて大規模に使われましたが、飛行機もまたその例外ではありませんでした。なので、空域主権説をとる国が増加しました。
第一次大戦後に結ばれた1919年のパリ国際航空条約、そしてそれに続く1944年のシカゴ航空条約を読めばその変化がはっきりとわかります。こうして領空においては国家の主権が完全に及ぶことになったのです。ところで、領空とは国境もしくは領海の外側の限界までですが、裏を返せば、それよりも先、つまり公海や排他的経済水域(EEZ)の上空では飛行の自由が認められています。このことは国連海洋法条約でも明示されています。
以上を見れば分かるように、許可なしに他国の領空を飛行するときは領空侵犯と見なされるため、実生活では大変な不便を強いられることはすぐに分かりますね。そこで、領域国の着陸要求や航空路の指定等にしたがうことを条件として、不定期航空の民間航空機に限って他国の領空を飛行し、同時に運輸以外の目的における着陸の権利を認めました。当然ながら、国の飛行機には認められません。
なら、定期国際航空業務に就く民間機はどうなるのかというと、こっちは特別の許可を必要としています。なので、定期国際航空運送は、二国間の特別協定を通して行われています。現在ではアメリカによるオープン・スカイ政策に倣った協定も多く結ばれるようになっています。これは文字通りいちいち政府の許可をとらなくても民間は自由に航路を変更できるというものです(もちろん例外はありますが)。
最後になりましたが、外国の飛行機が違法に領空に侵入してきた場合、どんなことが起きるでしょうか。
当たり前ですが、民間機の場合だと侵犯状況の如何に関わらず、撃墜することは不可だとされています。旧ソ連による大韓航空機撃墜事件後に改正されたシカゴ条約でも、武器使用を認めてはいるものの武力行使は禁止しています。
ただ、9.11以降この流れはやや変化し始めており、例えば大規模テロ攻撃に対しては例外的措置をとれるとする見解が出始めていますし、ADIZのような新たな問題も出てきています。
実は先述したシカゴ条約は主に民間機に対するもので、軍用機を規律する国際法はないのです。1982年の国連海洋法条約でEEZが設定されたこともより一層事態をややこしくしました。ブラジルを始めとした一部の沿岸国がEEZにおける軍事活動を許可制にしようという動きがあったのですが、そのときにEEZの上空においても領空と同じ主権を認めるように求めたのです。この提案は国際民間航空機関の法委員会によって否定されましたが、この考えは心の隅に入れておいたら、中国による防空識別圏の設定と中国当局の考えに対する理解をより深めることができます。
また、廃棄物投棄に係わる海洋汚染防止条約(通称"ロンドン条約")も領空を超えて空域を規律しようとする考えに対して、重要な位置を占めています。この条約は上空から海洋に廃棄物を投棄することを禁止していますが、国の飛行機は例外としているのです。さらには、管轄権を行使できる海洋においてのみ適用されるとしているので、EEZの上空はここに含まれない訳です。
そこでここから先は各国の国家実行を眺めていく必要がある訳ですね。そこで、まずはオーストラリア空軍のハンドブック(http://airpower.airforce.gov.au/Publications/List/36/RAAF-Doctrine.aspx)を見てみましょう。ガイドブックによると、
Military and civil aircraft are free to operate in international airspace without interference.
としており、ここでいうinternational airspaceとはEEZの上空を含まれるとしています。アメリカのレーガン大統領が1983年にアメリカのEEZを設定したときも、EEZ上空ではあらゆる国は公海上の飛行と同じ自由を享有すると宣言しています。同様の宣言あるいは解釈は、イタリア、イギリス、オランダ、ドイツなどが行っています。一方で、ブラジルのように、EEZにおける軍事活動を規制できるとする国内法を有している国家も存在していますが、9カ国のみ(バングラディシュ、ミャンマー、中国、インド、イラン、マレーシア、北朝鮮、パキスタン、ウルグアイ)と少数です。そういったことを示唆しているのが5カ国、その他もろもろの主張をしている国を合わせると20カ国弱がEEZ上空における権利を主張しています。ここ、重要です。こういった考えが少数派であっても存在することは押さえておきましょう。
以上を踏まえると、EEZ上空を規律できるかどうかは怪しく思えるかもしれません。なら、EEZ上空の自由を推進しているアメリカですら設定しているADIZとは一体何なのでしょうか。
ADIZ自体は冷戦期から存在しており、現在でもノルウェーやイギリスは維持しています。
さて、アメリカは冷戦期、1950年の朝鮮戦争に端を発する旧ソ連との緊張関係から全部で5つのADIZを設定していましたが、アメリカの連邦規則集(Code of Federal Regulations)がどのようにADIZを定義してるか見てみましょう。
Air defense identification zone (ADIZ) means an area of airspace over land or water in which the ready identification, location, and control of all aircraft (except for Department of Defense and law enforcement aircraft) is required in the interest of national security.
(a) A person who operates a civil aircraft into an ADIZ must have a functioning two-way radio, and the pilot must maintain a continuous listening watch on the appropriate aeronautical facility's frequency.
(b) No person may operate an aircraft into, within, or whose departure point is within an ADIZ unless—
(1) The person files a DVFR flight plan containing the time and point of ADIZ penetration, and
(2) The aircraft departs within five minutes of the estimated departure time contained in the flight plan.
(c) If the pilot operating an aircraft under DVFR in an ADIZ cannot maintain two-way radio communications, the pilot may proceed, in accordance with original DVFR flight plan, or land as soon as practicable. The pilot must report the radio failure to an appropriate aeronautical facility as soon as possible.
(d) If a pilot operating an aircraft under IFR in an ADIZ cannot maintain two-way radio communications, the pilot must proceed in accordance with § 91.185 of this chapter.
ここでDVFRとはDefense Visual Flight Rulesのことで、この文脈においてはADIZを飛ぶときに提出しないといけない飛行計画のことですが、通常のVFRと中身は同じで単に何かあったら軍に連絡したりADIZの中では相互無線が必須なだけで、どうせ必要となるものです。
まあADIZとは、ざっくり言えば例外を除いて全ての飛行機に対して諸々の情報を安全保障上の観点から問い合わせがあったらすぐに答えないといけない空域のことですね。この文面を見る限りでは、国による飛行機はどうも明確に除外していないようですが、国家実行そのものは軍用機であっても、アメリカの領空に入る予定のものを除けば、自由に飛行させています。実際に、アメリカがアラスカ方面に設定したADIZで、ロシアによる軍事訓練が行われたときも、監視をするのみで抗議もせずに放置していました。つまり、ADIZというのはその名前に反して意外と緩いものだということが分かります。別にADIZを設定したからといってどうこうなる訳ではありませんし、設定国がどうこうできるわけでもありません。これは他のADIZを設定している多くの国についても同様です。(ただ、ロシアはやや例外に入るかな?)
とまあおおざっぱに書いてきましたが、実は、中国によるADIZ設定は本質的な問題ではありません。上でも述べましたが、EEZ上空における主権のあり方の認識がそもそも違うのです。今回ADIZの設定で大騒ぎになっていますが、事の本質は、EEZをどう捉えるかというものなのです。EEZは天然資源の保護のために設定された区域ですが、この区域において主権と同様の権利を行使できるかどうかが問題となるのです。中国による失策との声がありますが、それは中国の国際法に対する態度を無視したものです。この辺は、中国の国際法学会の動向も踏まえて書けたら面白いのですが、本稿はそこまで立ち入りません。
何分この分野は専門外なので、何か間違いがあれば遠慮なくご指摘お願いします。
そもそも今回の問題を考えるためには免責特権について知る必要があります。
免責特権とは、特権免除あるいは不逮捕特権とも称され、読んで字の如く逮捕されることのない特権のことです。大使といった外交官も、この特権のおかげで逮捕されることがないことはよくテレビでも取り上げられていることです。ただ、外交官の本国がその特権を放棄したら、とたんに逮捕されることになります。実際に、グルジアの大使がアメリカで酒酔いひき逃げ事故を起こしたとき、グルジア本国が特権を放棄した結果、アメリカ当局がその外交官を逮捕した事例(Gueorgui Makharadze事件)があります。また、刑事に関しては絶対的に免除される一方、民事に関しては、例えば相続や商業活動といった私的行為を巡る事件については裁判を受ける可能性があります。
さて、次は1999年にあった、政府トップの刑事裁判権について大きな一石を投じるピノチェト事件について触れましょう。
この事件の概要を三行でまとめると、
・ピノチェトは大統領時代に反対派に対して拷問などの弾圧を行っていた
・辞任後にロンドンで療養中のところスペインの国際逮捕状に基づきイギリス警察が逮捕
・チリ政府はピノチェトの免責特権の侵害であるとイギリス政府に抗議しイギリス貴族院が審理することに
この事件でのポイントは、"元"国家元首に対しても特権が認められるかどうかでした。そこを、イギリス貴族院が、在職中は「絶対的な人的免除」を享有し、利殖後は「事項的免除」を享有するとしました。この事項的免除というのは「公的な行為」以外の行為に関しては免除されないというものです。
で、ここからが肝となりますが、イギリス貴族院は拷問といった強行規範(絶対に破ってはいけないルールのこと。例えば奴隷制だとか拷問だとか。)に違反するばかりか条約でも禁止されてる行為は公的任務に当たらないとしたわけです。実はチリは拷問禁止条約を批准しており、その条約の趣旨に反する免除は黙示的に撤回しているというのです。だからピノチェトの免除は認められず、イギリス警察による逮捕・引渡しは合法であるとしたのです。
ここまで書くと江沢民の訴追は可能なように見えますが、そう簡単なお話ではないんです。
実は2002年にアメリカで、中国国内の法輪功に対する弾圧を巡って江沢民を訴追する動きがありました。アメリカ国務省が元首免除に基づいてその訴訟は止めろと言った後に、江沢民はトップの座から降りたので、訴追できるのではないかとしたのです。しかしながら、第七巡回区控訴裁判所での判決で、辞任後も免除は存在する上に、強行規範違反に関連する訴追であっても免除は享有されるとしたのです。他にも、2000年にはジンバブエのムガベ大統領が訴追から免除される事例もありました。ヨーロッパに目を向けても、フランスはカダフィ事件においてカダフィ大佐の免除を認めました。
分かりません。本当に分かりません。ただ、以上を見ていたら分かるように、国内裁判所が外国の国家元首をたとえ"元"であろうとも、裁こうとすることはかなり難しいことなんです。この辺はもっと詳しく学説だとか各国の政治事情だとかを絡めて話したらもっと面白くなりますが、とりあえず、国際法に絞って書いてみました。何か間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。
警察庁幹部は「逮捕状に書いてあることを被疑者に読み上げないのは、法律上極めて難しい」と指摘したそうだ
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20121109/dms1211091218015-n1.htm
しかし警察官職務執行法にも犯罪捜査規範にもそのような規定はみあたらない
落し物の拾い主の連絡先等も「拾い主が教えてもいいと言った場合は」教えられるだけだ
国の発表を鵜呑みにして拡散するメディアの存在には、気をつけねばなるまい
もし逮捕状を読み上げる規定があるというなら、メディアはその条目を取材するべきだろう
ミランダルールすら存在しないのに、逮捕状を読み上げるなどとということがどこの法律に書いてあるか
日本の警察も海外刑事ドラマのようなことをするのだと庶民が勘違いしているとでも思っているのか
さらに犯人は、読み上げられた逮捕状の内容をすぐに記憶し、逮捕されてから後もずっと覚えていたということになるが
被害者の新姓だけならともかく、聞いたこともない新住所などは、その場でメモを取らなければ、普通は正確には覚えられないはずだ
したがって、警察が被疑者に個人情報をメモさせ、のちの犯罪を煽ったという疑いが残る
自分から別れたあとに引っ越したら昔の相手には連絡先を教えないのが普通だろう
殺された女は、よもや警察に住所を晒されるとは思わなかっただろう