はてなキーワード: ジャストとは
ダス! イスト! デア! トロプフェン! デス! アルラウネ!
アイネ! クライネ! ナハト! フランケンシュタイン!
イッヒ! リーベ! ナツィオナル! ソシアリスティッシェあわわわわわ! この辺で。
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“幻想芸術集団 Les Miroirs(レ・ミロワール)” という豪快な源氏名を名乗っているが、つまりは都内の小劇団だ。
んーむ、どういうことなんだろ、また芝居を観に来てしまった。
これまでの人生で演劇なんて片手の指にあまるくらいしか行ったことないのに。
ひょんなことから、とある小劇団の芝居に行ったのが先月。
劇場でダバっと大量のフライヤー(チラシ)を渡されるので、眺めているうちに妙に気になって今回はこの劇団の演目『アルラウネの滴り -改訂版-』を観に行ってきた。
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観劇後の印象がなかなか良くて、それで妙に語りたくなったので記録の意味でレビューを残しておくことにする。
当方、舞台観劇はズブの素人なので、マニアから見たら噴飯モノの印象がバンバン飛び出すことと思われるが、そこはヌルく見逃してほしい。
あと、上演も終わっていることだし、ネタバレ上等で書くので、そこは4649!
それでは、行ってみよー!
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■全体として
先入観が無かったといえばウソになるわけで。
幻想芸術集団という大迎なプレフィックス。
おフランス語の劇団名でミロワール(鏡たち)というのは、つまりキャスト達のことだろう。
豪奢な近世ヨーロッパ風衣装。
中央には男装の麗人。
「これはきっと、『ベルばら』風にお嬢様たちがキラッキラにやりたいことだけをやりたおした豪華絢爛、欧州絵巻だろうな」と。
それで、「どれ、どれだけ背中とオシリが痒くなるか、いっちょ見てやろう」くらいの気持ちで足を運んだのだが。
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これが。
開始10分で背筋を伸ばして、
脳を総動員して、
つまりは本気でストーリーを追いかけることになった。
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近世ドイツを舞台にしたバリバリに骨太なサスペンス/スリラーになってる。
そりゃそうだよな。
単なるキラキラ少女漫画ワールドだけで、旗揚げから10年以上も劇団が存続できるワケないもんな。
幻想的な要素は “アルラウネ(マンドラゴラ)の美女を集めた娼館” というキー・ガジェット一点のみ。
あとは細部まできっちりと整合したダークなクライムストーリーで。
(このへん、『スリーピー・ホロウ』(ティム・バートン)に通じるものがあるな。
あれも超現実はデュラハン(首無し騎士)の一点だけで、あとはストレートな推理モノだった)
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そして、今さらながら。
自分がなんで演劇を面白いと感じるか、分かった。
右から左から、見ても見ても、どこまで見ても情報量が尽きることがない。
これはフレームで切り取られた映画にはない楽しみであって。
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この舞台にしても。
ブリンケン伯爵が実に俗物らしくロゼマリー嬢を相手に大笑しているときに、うしろでフローラが嫌悪感をまる出しにしていたり。
カスパルが客前で気取った口上を並べているときに、後ろでオリヴィアとペトラがクスクス笑っていたり。
ふとカスパルが来歴をほのめかすときに、バックでアルマがアラベスクをキメていたり。
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どこに視線を固定しても、漏れる情報がある。
これが脳にすごい負担がかかる。
決して不快ではない負担が。
これが自分的な芝居の楽しみだと、劇場を出るときに気がついた。
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作劇について、もうちょっと書くと。
衣装がキラッキラなのは舞台が娼家だからであって、ここを誤解していた。
実際の登場人物はというと、全員が第三身分。
それも、ドラマにしやすい貧民でもなければブルジョアでもなく、中間層の知識人というのがニクい。
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そしてデカダンス。
スパイス程度の頽廃なんてもんじゃない。超頽廃。超デカダンス。
なにせ純愛がまったく出てこない。
娼館。
仮面夫婦。
父を求めて得られなかった少年は長じて若いツバメ(愛人)となる。
例外はアルマとカスパルの気持ちが通じるところ、それにヘタレ青年が主人公に想いを寄せるところだが、どちらも一方通行に近い。
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さらに設定考証がすげぇ。
神聖ローマ帝国時代のバイエルンの片隅にある架空の歓楽街、というか売春窟を中心に時代と風俗をガチガチに作り込んである。
おそらく、俺の気が付かないところもガチガチだろう。
唯一、気になったのは
「あれ、ドイツ語圏ならネーデルランドじゃなくてニーダーランドじゃね?」
ってところくらいで、これも観客のアタマへの入りやすさを選択した結果だろう。
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うん。正直に言うと、作り込みすぎじゃね? っていうところもあった。
具体的に言うと、ダイアログが文語中心で、若干だけど苦しい。
当方、語彙力にはそこそこ自信があるオッサンだが、それでも、
「じい(侍医)」とか、
「せんていこう(選帝侯)」とか、
会話をトレースして理解するのにアタマを総動員する必要があった。
かと言ってなぁ。
そこを「侍医」→「お付きの医者」とか、「選帝侯」→「偉大なる領主さま」とか言いかえるとテイストがどんどんボヤけるしなぁ。
時代のフレーバーとして、いたしかたなしか。
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ほかにも上に書いた「若いツバメ」とか、娼館ではロウソクがタイムチャージに使われていたりとか。
ともかく文学的で含みのある表現を多用していて、ターゲット年齢が高いか、あるいはマニアックな層か、ともあれコレくらいのレベルが普通なのかな?
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あと、要求水準の高い批判をすると。
“階級社会の不条理に対する怒り” というのを冒頭に打ち出した割には、通底するというほど通底していない。
21世紀の今から見て付け足した感じ。
フレーム全体の仇役としてエーヴェルス先生を立てて、カール殿下の誅殺を5分のエピローグとしてサラっと流したので余計にそんな感じがする。
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もう1つ細かいことを言うと、カスパルとエーヴェルス先生がクライマックスに対峙するまでハチあわせしないのは、苦しくないか?
それを言うのはヤボというものか。
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ま、ともかく。
全体として、チケット代以上に大いに楽しみ、没入し、満足した。
見て損はなかった。
ほかの演目については保証しかねるけど、再演のときには是非とも足を運んでみてください。(繰り返すけど、俺は関係者じゃないよ)
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以下は、キャストと演出について
※普段は「役者は顔じゃない」というのがポリシーなんだけど、ここまでビジュアルにこだわった劇団と演目に対しては、しゃーない、キャストのビジュアルについても言及させてもらいます。あしからずぅ。
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■男優3人
劇団と演目を全体として俯瞰すれば。
耽美で退廃的なテイスト。
きらびやかな衣装と意匠。
おそらく女性中心の運営で女性中心の企画立案で女性中心のキャスティングをしている集団だと推察するけど。
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自分にウソはつけない。正直に言う。
観劇後の印象は男優三人組が大部分かっさらって行った。
全員が客演。
おそらく、3人が3人とも、キャスティング担当者が選びに選んで一本釣りで連れてきたのだろう、と、思う。
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エーヴェルス先生の狂気、
フランツの怯懦と勇気、
ブリンケン伯爵の俗物さ。
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多分それは、つまりこういうことだろう。
女性陣、主人公2トップをふくめ、大部分のキャラクターは何らかの葛藤や二面性を抱えていて、心理に微妙な綾があるのに対して、男性陣3人は完全にバイプレイヤーとしてストーリーの進行装置以上のキャラクターが割り振られていない。
あとはそれを渾身のパワーで演じれば良いだけで、結果としてものすごい強烈でシンプルな印象をこっちに叩きつけてくることになる。
これが観劇初心者の俺みたいな人種にはビンビン来るのよ。
ある意味、三者三様にヨゴレで良い役をもらってるとも言えるわけで。
こればっかりは、しょうがない。
こういう観客もいるということで、ひとつ。
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■高山タツヤ(エーヴェルス先生)
いやしかし、悪役ってオイシイよな。
自分的には今回の演目でこの人がNo.1。
最初はシャーロック・ホームズ的な近代合理精神の尖兵として事件に切り込んでいくのかと思いきや。
途中からどんどんマッドサイエンティストの素顔が出てきて、終盤すべての黒幕という正体が明らかになって、最後はムスカ大佐みたいに天誅がくだる。
宣伝スチルでは “生に倦み疲れた貴族” みたいな立ち位置かなーと思っていたら、もっとパワフルだった。
理性的で狂人、策謀家で紳士、もうテンコ盛り。
唯一の難としては、演技とキャラクター作りが設定より若干、若く感じた。
そのせいでカスパルとの対比が弱い。
しかし、それにしても、実験体のときにカスパル13歳、エーヴェルス24歳。
最後に対峙した時点でカスパル31歳、エーヴェルス42歳か。
これまた描写の難しい年齢差を持ってきたな、とは思う。
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■谷英樹(フランツ)
普段は剣戟主体のアクション俳優さんらしい。もったいない(と言ったら失礼か)。
ねぇねぇ、性格俳優やりましょーよ。
できますって絶対。実際できてたし。
高い鼻筋、シュッとした輪郭ともあいまって、ヨーロッパのダメダメ青年を完全に演じきっていた。
迷い、失敗し、バカにされ、それでもフローラへの思い一徹。
というか、この劇中、唯一の未熟者役で、これは配役としてよいポジション。
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■杉山洋介(ブリンケン伯爵)
たぶん、この人はただの色ボケ爺ぃじゃないよ。
宮廷の権謀術数、
複雑な典礼プロトコルの知悉、
家門の切り盛り。
そういったシンドイ大事や雑事を乗り越えて、やっとこさトレッフェン通りで馴染みの嬢を片手に思いっきりハジけているところに腹上死。
涙を禁じえません。
そういう想像が働くところが、杉山氏のキャラクター作りのなせる技かと。
いや、たんなる家門だよりのアーパー伯爵っていう設定かもしれないけどさ。
ともかく、そんな感じがした。
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ストーリーも半ばを過ぎたところで、ハタと気がついた。
「カスパル、フローラが客から評価をもぎとってくるフォワードだとしたら、オリヴィア、ペトラ役のこの2人が失点を防ぐディフェンダーなのね」
アルラウネだけじゃない、葬儀の席のゴシップ婦人、伯爵家の侍女と、早着替えをしながら、縦横無尽に八面六臂。
よほどの高能力者じゃないと、こうはいかない。
逆に言えば。
ストーリーのスケールに比してジャスト10人という少数精鋭のセッションで。
もしもこの2人が「私たちモブよ、モブよ、モブなのよ~」と手を抜いたり段取りが悪かったりしたら?
それこそ目も当てられないほど悲惨なことになるのは想像できる。
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この芝居を観た人がいたら聞きたいのだが。
ストーリー展開のつなぎが悪かったところがあったか?
会話のリズムと展開がギクシャクしたところがあったか?
状況の説明が足りないと感じたところがあったか?
少なくとも、俺にとっては無かった。
これ全部、彼女たちの仕事であって。
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こうも言える。
「観客を40人と仮定して、80個の目玉とその批評眼の猛攻を、2時間近くの上演中、ゼロ失点でしのぎきった」と。
しかも、それだけじゃない。
「それじゃ、ここはカスパルを見ていよう」と視線を切ったままにしておくと、いつの間にか “弱気なオリヴィア” と “地味に辛辣なペトラ” がシャドーストライカーとしてヌッっと認知の前景に割り込んでくるから油断がならない。
専属キャストがスポットを浴びて歌い踊る後ろで、 “舞台成立請負人” として劇団を渡り歩くって、ックーッ! シビれるっすねぇ(想像のしすぎか)。
特にオリヴィア役の武川さんはホームチーム無しのフリーランサー。
次にどこで会えるかもわからないという、この西部劇カウボーイ感。
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■マリコ(伯爵夫人クロリス)
夫に先立たれ、あとは家門を守る化石となりつつある中、若いツバメとともにふと訪れた春。
でも心の底では彼が自分を利用しているだけと気がついていて、寂しさがつのる人生の晩秋。
っていうメロドラマ的挿入話を、たった1人でゴリゴリ成立させてしまった。
オフショットを見たら、周囲に負けず劣らずの美人さんなのに、哀切よろめき婦人にサクッと変身するあたり、地味にスゴいよ、この人。
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■中村ナツ子(ロゼマリー)
加東大介(『用心棒』)といい、中村梅雀(『八代将軍吉宗』)といい、馬鹿キャラってオイシイよな。
と、思いつつ、可愛い子チャンで馬鹿キャラってのは失敗例が山ほどあるワケで。
美人馬鹿キャラ、厳密に言うと “短慮と衝動、それに浅知恵で状況を悪化させるキャラ” っていうのは、全世界のホラー/パニック映画ファンが怒りまくってることからも分かるとおり劇薬であって、書くのも演るのも本当に難しくて大変で。
(フィクションで最近の成功例だと、『デスノート』の弥海砂とか。自分の中では『ウォーターシップダウンのうさぎたち』のネルシルタとか)
その中でも彼女ロゼマリーの配役と演技は大成功と言っていい。
シナリオ、人物造形、演技の巧みさ、3つが合体して、ストーリーを停滞どころかグイグイ展開させる存在として実に効いている。
アルラウネたちが、それぞれどこか華美な中にもダークさを感じさせる装いの中、ひとり明るい髪色でキャるるンッとしたバービー人形のような出で立ちも良い。
彼女を舞台で見るのは実はこれが初めてではなくて、かなりの美形なことは知っていたけど、作りようによっては、なんというか、 “こういう美人” にもなるのか、と今さら驚く。
(彼女の第一印象については、
https://anond.hatelabo.jp/20170925212923
の中村ナツ子の項を参照のこと)
というあたりで。
最後に。
あー、業務連絡、業務連絡。中村さん、編集者やってみる気はありませんか? 原稿ライティングができてAdobe製品が使える最強のマルチ編集者になれますよ。その気になったら、いつでも当方に声をかけてください。
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■麻生ウラ(アルマ)
うー、うーうーうー。モゴモゴ、わかった、言う。
えー、強烈な声優声なのは、演出上の要請か、それともそれ以外の発声メソッドを持っていないのか。前者だと信じたい。
さて。
最古参のアルラウネ、そしてカスパルの右腕として気持ちを交わし、動き、嘆き、そして踊る。
ちょうどキャプテン・ハーロックにおけるミーメみたいな立ち位置。
キレイどころ揃いのキャストの中でもアタマ1つ抜けているビジュアルとダンスを買われての登板か。
(「ビジュアル充実で演技とダンスが良いなら文句ねーだろ」という方は、この項の2行目を参照のこと)
休眠状態の彼女のポーズを見て、開場のときに舞台においてあったオブジェの意味がやっとわかった。
それにしても。
とんでもなく整ったマスク。
スレンダーで柔軟な身体は恐ろしく妖艶に動く。
世を忍ぶ仮の姿はバンドヴォーカル兼ヨガ・インストラクターとのこと。
ドュフフフフ、オジサンに勤務先教えてくれないかなぁ。
(この6行、後でカット)
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■乃々雅ゆう(フローラ)
アイライナー(と、おそらくカラコン)を差し引いても深い情熱的な眼、意志の強そうな頬からおとがいのライン。
なんというか、豪華欧州絵巻を演るために生まれてきたような。
実際、ブルボン王朝の末席にいて、ベラスケスが肖像を描いてそうだ。
その意味では、この劇団の申し子みたいな雰囲気。
立ち上げからのメンバーかと思った。
そのくらいピッタリの所属先を見つけたと言えるんじゃなかろうか。
宣材写真を見たときはもっと毒のある雰囲気で、「ふむ、このヒトが超々々毒婦をやったら面白そうだ」と思って劇場に行ったんだけど。
なんというか、キャラクターもご本人も想像より瑞々しい感じの人だった。
“運命と戦うヒロイン” という、もう本人の雰囲気そのままの役回りを手堅く好演。
娼館の女主人のときはもっと毒々しくても良かった気がする。
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■朝霞ルイ(カスパル)
どんなに声のトーンを落としても客席まで声が届いていたのは彼女だけだった。
ベテランの風格。
打ち棄てられた実験体児がどこでどうやって成長すれば、こんな艶やかでピカレスクなトリックスターに育つのか、そこを見てみたかった気もするが、そこを書いたらタダでさえ2時間ちかくある上演時間がさらに伸びるので、いたしかたなし。
この俳優さん、眉頭にいい感じに険が出ていて、男装の麗人からリアル美丈夫への過渡期にある感じがする。
男役としては、これからが一番いい時期なんじゃなかろうか。
カスパルがどんな人物かというと。
ん。
待てよ……整理すると!
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1)娼館の影のNo.1として女主人をウラからあやつり、朗々と艶やかな口上を述べるトリックスターで、
2)火災その他のカタストロフから巧みにサバイバルし、言葉巧みに未亡人の情夫におさまる冷徹ピカレスクで、
3)非人道的な実験の結果として対アルラウネ耐性を有する厨二病キャラで、
4)それでいて不幸な幼少期から、どこかはりつめた脆さを感じさせ、
(それは例えて言うならば、ラインハルト・V・ローエングラム的な)
5)そして、こころ疲れた時には情を交わす女アルマが影に寄り添い。
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なんてこったい! 男装女子の演りたいこと、全部入りじゃねーか!
どうなってるんだ朝霞さん! アナタの配役が一番オイシイよ!
観劇前はフローラとカスパルが互いのカウンターパートをつとめるセッティングかと思ったら、終わってみれば伯爵から先生からアルラウネ達からフローラから、もうもう全員が彼との関係性を軸に話が展開するという、まさにザ・主人公・オブ・ザ・主人公!
しかし考えてみれば、そのぶん舞台上でも舞台裏でも負荷は並大抵では無かったはずで、本当にご苦労さまでした。
良かったっす。
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■a-m.Lully
あの役がオイシイ、この役がオイシイ、と書いていて気が付いたが、
全者全様にオイシイ役ばかり。
調べたら当然のごとく、当て書き脚本だった。
この辺が座付き作家、というか作家が率いる劇団の最っ高のアドバンテージだよなぁ。
と、同時に。
「このストーリー、映像化してもイケるんじゃね?
というか、ヨーロッパあたりに売り込んでもいいんじゃね?」
と思ったのだが。
脚本、キャスト、演出のケミストリー(化学反応)による名演と脚本単体のポテンシャルの見分けがつくほど、俺は観劇に強いわけではないので、この印象は保留しておく。
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■大道具・セット
背景と大道具がすごい。なんてったって “何もない” んだから。
物理的に必要な長椅子が脇においてあるだけ。
これ、大英断だと思う。
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メインの舞台となるのは近世ヨーロッパの娼館で。
自分がイメージできるのは『ジェヴォーダンの獣』(クリストフ・ガンズ)くらいだけど、あれを雰囲気だけでも匂わせるには1千万円あっても足りない。
その後の場面展開を考えたら、そこはバッサリ切り落として、そのかわり衣装と装飾品にガッツリとリソース(金と時間と手間)をかける。
少なくとも自分はそう思った。
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で、板の上には何もない代わりに、ステージ背面全体を三分割して並んだ3つのセル(部屋)。
ライティング次第で中のキャストを浮かび上がらせて、複数のストーリーラインを同時に進行できる空間なんだけど、これが実に効いてる。
回想、視点の移動、娼館の部屋それぞれ。もう大活躍。
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白眉はエーヴェルス先生が娼館に潜入するシーン。
ライティングを目まぐるしく切り替えて、それこそ『ミッション・インポッシブル』か『オーシャンズ11』かっていう高速カットバックを実現している。
(いや実際、照明さんは胃に穴が空いたんじゃなかろうか?)
実を言うとアタマのスミでは「それをやりたいなら映画でやったら?」と思わないでも無かったけど、映像作品と舞台の良いとこ取りをした意図は買うし、実際、効果的だった。
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と、同時に。
こうも思った。
「ああ、そういうことか。エイゼンシュテイン以降の変革は舞台にも及んで、自分はいま変革後の作品を見てるのね」と。
MTV以降、ライブコンサートに巨大モニターが導入されて各種フレーミングが可能になったように、舞台も律儀に単一フレーム(場の一致)なんて守ってる場合じゃないよね。
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■最後に、気がついたこと、気になったことをまとめて
・会場の音響が悪すぎ!
卓かアンプが、どこかでバチバチに歪んでる。
せっかく古典派の交響曲でストイックなまでにかためた選曲が台無し。
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・キャパ、狭すぎ!
ねえねえ、次はもっと大きい小屋でやりましょーよ。
大丈夫。大丈夫だって。
連日満員でエクストラシート用意するくらいなんだから。
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・ハッキリとした開演ベルが欲しかったところ。
カスパルがおもむろに登場してアルラウネのオブジェを撤去して暗転ってのは、演出としてどうかと思った
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・プログラムの誤植。
コーヒー愛飲の習慣のところ、 “嫌遠” は “嫌厭” の間違い。
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・余談だけど、今回の上演『改訂版』の前の上演回をみんな『祈念』と呼んでいる。
理由を調べようと思ったけど、まーいーか。
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・キャスティングの軽重に関係なく、みんな多かれ少なかれセリフが飛んだり、噛んだりしていた。
最終日の最終回、疲労のピーク。
ステージハイっていったって、限度があるわね。
その中でもディフェンダー2人(武川、小川)は、自分が見る限り
挙動とセリフに一切のミスがなかったことを記録しておく。
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……んー、こんな感じか。
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ともかく、まとめとして言うならば。
幻想芸術集団レ・ミロワールの『アルラウネの滴り -改訂版-』良かったっす。
俺は怒っている。骨格診断とかいう厄介ビジネスが、多くの女性からファッションの楽しみと本質を奪っていることに猛烈に怒っている
いま、美容に関心のある女性の中で広がってるのが「骨格診断」とかいう診断ビジネス
かつて、その人に似合う色を診断する「パーソナルカラー診断」が流行って、定着したという経緯があり
とにかく美容業界で診断ビジネスが金の卵みたいになって、個人から企業まで、とにかくウハウハあぶく銭が舞い込んだ
パーソナルカラー診断が定着し、診断ビジネスやばい、他に何か診断ビジネスができるもんはないか?ってことで生まれたのが、この「骨格診断」ビジネス
こっちは似合うファッションを提案するというもので、骨格スタイル協会とかいう謎の団体が提案、そして資格ビジネスをやってるものである
人っつーか日本人を「骨格」から3タイプに分類し、それぞれに似合うファッションのタイプ(フリルが多いもの、直線的なラインのもの、など)を結びつけて提案する
ほとんどがモンゴロイドの日本人の骨格が、そんなに平均的にわかりやすくばらついてんの?という疑問はさておき
どんな服を買ったらいいのかわからない、どうしたら美しく見えるのかわからない、という女性はかなり多く、「なんでもいいから正解をくれるもの」に飛びつきやすいという背景も手伝って、今や大盛況だ
パーソナルカラー診断のように、ある程度の妥当性(PC診断は特に口紅の色選びにおいて妥当性がある)があればいいのだが、この骨格診断、全くもってデタラメなのである
まずこの診断、太ってるとか痩せてるとかいう体型の問題を、「骨格」の話にすりかえる
服選びにおいて、体型の自覚は避けては通れない。かといって、「太ってるあなたにはコレ」なんて言えば傷つくから、骨と筋肉の話にすり替える
あなたの鎖骨が肉に埋まっているのは、(太っているからではなく、)そういう「骨格」だからです……。こんなこと言ってる診断といえば、いかにデタラメかわかるだろうか
んで、そんなあなたは、コーデュロイでできた服は「ダメ」とか言うんですよ。アホかと。ナメるのもいい加減にせいやと。やるならちゃんとやれやと
確かに、体型別に苦手なシルエットは存在してるが、体格が影響する素材なんて特殊なものだよ。なんでコーデュロイが体型に影響されてNGなんだよ……
しかしこの協会はパーソナルカラー診断の(そして血液型などの従来の)4タイプの単純さがヒットした原因と判断したのか
めちゃくちゃな論理で服と体型をタイプ分けし、結びつけている。これがもう本当にダメ
骨格スタイル「ウェーブ」とかいうわけのわからんタイプに分類され、ひたすらひらひら、フリル系の服ばかり買うように勧める。死んで欲しい
華奢な体型には確かにふわっとしたシルエットも似合うが、例えばダークな色のジャケット、シャツ、シガレットジーンズ、ブーツのクールな装いだって似合うに決まってんですよ
それなのに骨格診断とやらは、そういった可能性を「捨てさせる」。ファッションの可能性を奪う
これはもう本当に、はっきり言うけど害悪。害悪オブ害悪。どうか骨格診断なんつーもんに騙されないでくれ。骨格診断とか言ってるやつに近付かないでくれ
服選びのポイントは、ジャストサイズを選ぶこと、体のどこかのライン(素肌という意味ではない)を見せること、縦長のシルエットを意識すること、あとは色のくみあわせに気をつけて
週末の書店。
プログラミングコーナーに行くと、いつもうんざりした気分になる。
何故ってこんなに入門書が溢れかえっているのに、何一つとして入門者向けの本が無いからだ。
日本の書籍小売の総本山、神保町は三省堂書店の棚の端から端まで見た所で、ビギナー向けの本などありはしない。
なぜなら、入門書を謳っている本のコードはほとんどが動かないコードだからだ。
入門書だと言うのに、ページを割くべきところに文章やイラストを割かない本が多すぎる。
例えばポインタ、コンストラクタ、インスタンス、カプセル化…それぞれの概念。
イラストの入門書だってそうだ。「入門」と書いてあるからといって、開いてみればデッサンや形のとり方を教える本などありはしない。
そう、日本の入門書とは「元々デキる人がリメディアルとして持っておく本」のことであり、「ビギナー向けのウェルカム本」ではないのである。
だからといって、誰もがpythonの専門家になる胎教を受けて産まれるわけではないし、誰もが10代で写真と見まごうスケッチを描けるわけではない。
では、その「デキる人」は誰に教わったのか?やはりデキる人たちや、海外の入門書を車座になって読んで学習したのである。
しかし、その「始祖・デキる人」がヒーローの時代とは、今とは複雑度合いも、求められるものも違う。
今は学生であっても、ある程度の高度な成果(ここでは、ネットで発表したものがネットニュースでバズった経験や、学会で評価された経験のこと)があって始めて企業の受験票でしかない。
なぜ入門者向けの本がないのか?
習うより慣れろ。仕事は見て盗め。教えられるのを待っているな。・・・
自分より出来ないやつに教えるのが大嫌いなのだ。(入門書の著者ですらそうなのだ!)
上にあるように、ある程度デキる人でないと、その手の会社には認められない。
だからといって、大学教育で手ほどきを受けられるわけではない。これもある程度デキる人向けなのだ。
では、書籍で自助努力を、となっても、文頭にあるように、入門書向けの本など無く。
では、デキる人はどこにいる?これもやはり雲の上の大学にしかいない・・・
今はネットがある?これも難しい。
知恵袋や、teratailであっても、初心者に与えられる答えは「ググレカス」のみ。
では、ネットにジャストな回答があるか?といえば・・・ない。基本的には公式リファレンスのコピーや、動かないコードしかない。
デキる人は、デキない人の気持がわからない。何がわからないのかわからない。
だからあいつらがわからないのは、あいつらが勉強不足だから、と考える。
わからないのは、あいつらの自己責任だ。だから初心者は嫌なんだ。となる。
適性を測っている、という見方もある。
しかし、適性というものは基本的にやらなければわからないもので、やる前の教育から放棄しているのは適性を測るというより、
日本人の初心者軽視、というか教育軽視は今に始まったことではない。
「失敗の本質」でもそれは指摘されている。ということは戦時から既に教育嫌いなのだ。
職場でもそう。教えられるのを待っているな、と言っておいて、いざ聞きに行けば「常識でわかるだろ」「ネットで調べて」「リファレンスマニュアル調べて」
学校でもそうだ。
授業の勉強も予習が前提。では授業ではより高度な話をするのか?しない。教師我流の演習である。
演習するだけならば、家や図書館で黒本や赤本を解いていたほうがマシじゃないか!
学校教育ですらこうだ。
外食が好き。上げ膳据え膳最高。
でも、分量が多すぎ。
「ご飯半分にしてください」というと三分の二くらいになる。
最近は「四分の一」でお願いしている。
ダイエット始めたのだ。
ご飯を減らしても、おかずだけで色々オーバー。
お店の方は残してね、と仰ってくださるのだが。
私は私のせいで発生する廃棄を容認しがたい。
安くならなくてもいい。
分量減らしてほしい。
もしくは、注文方法によって、減らす工夫ができるようにならないかな。
コストパフォーマンスなんてくそくらえ。
追記及び謝辞。
-------------
・堂々と残す勇気を持て、とのお言葉。ありがとうございます。
仕事都合でランチ時等のピーク時にはごはん行けないし、そういった場合は残すことも多いです。
・王将さんのジャストサイズメニューは初めて知りました。ありがとうございます。
・お店によってグラムで伝えられるのも初めて知りました。ありがとうございます。
最近俺が書いたやつ
http://anond.hatelabo.jp/20170512111739
まあ茶化して書いているんだが、ここまでとは言わなくてもアホみたいに横文字使って会話しまくるやつは結構いる。「あ、これはジャストアイディア(思いつき)なんですが・・・。」とか。
業種にもよるんだろうが。
一枚絵 一枚絵
一枚Yeah Yeah Yeah Yeah...
横に動かしたり 縦に動かしたり
近づけてみたり 遠ざけてみたり
さすがにしょっぱいので
レイヤーくらいは工夫しておく
歩かせるなり 走らせるなり
(スーパーディフォルメ)
背景だけの絵で間を繋いだり
何らかのエフェクトで味付け
セピアな感じで
色褪せているね
「今回紹介するジャストコーズは『イダテン』。どんな相手も逃がさないスピードを持つとされている。しかも、そのスピードの余波で周りに迷惑をかけないようにする力も持ち合わせている」
「今回はやりすぎてしまっているように見えるが、演出上の都合でそう見えるだけだ。だから俺のことを嫌いにならないでくれ」
「視聴者のみんな。たとえ正当な理由があっても、正しい筋道で行うことが大事であることを忘れないでください。そしてやりすぎないこと」
「良い子も、悪い子も、その二つを持ち合わせている子も、自分が何者かで悩んでいる子も、心身に刻み込んでね」
「俺たちとの約束だぜ!」
とうとう港町に着いた俺たち。
早速、船を出してくれる人を探すのだが、その時に現れたのは明らかに嫌な奴だった。
また貴様か、イノウ。
見え透いた挑発をしてくるが、だからといって不当な物言いを見過ごしていいわけではない。
不用意な発言をする人間は、時と場所関係なく裁かれて然るべきなのだ。
俺がこらしめてやる、溜飲を下げさせてもらうぜ。
次回、「船酔いは痛覚で上書きできる」
来週もジャストコーズ、オン!
登場する人物・団体・ 名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「大丈夫ですか。野菜泥棒はかなりの俊敏さを持ち合わせております」
改めて説明しなければならない。
「ジャストコーズ、オン」
ヴェノラには独特のパワーが備わっており、彼は正当な理由があるとき目的を最大限遂行するための力を一時的にその身に宿すことができるのだ。
まるでテレポートするかの如く、ヴェノラは野菜泥棒に接近する。
あまりにも予想外な出来事に不意を突かれた野菜泥棒は赤子同然。
拘束することは、ヴェノラの実力ならば造作もないことであった。
「まいった、助けてくれ。どうしても野菜をもっと食べたかったんだ」
「こんなにたくさん、お前一人でか?」
「余った野菜は売るつもりだった。なあ、許してくれよん」
「ダメだ。法の裁きを受けよ」
「ヴェノラさん。私からもお願いします。許してやってください」
間に入ってきたのはこの村の長であった。
「確かにルールを守り、正しく生きようとすることは大切です。ですが、正しさだけでは人は生きていけないこともある。時には許容と順応を促すことも、社会において大切なことなのです」
「理解しました。村には村のルールがあるならば、それを優先し、尊重しましょう。ですが、何らかの処罰は与えることを推奨します」
「すまない、村長。これからはそこらへんにある廃棄物を拾って、それを売って生計を立てるよ」
「捨てられたものだからといって、お前の自由にしていいわけではないんじゃぞタワケ」
翌日。
「おはようございます。ヴェノラ」
「すごいぜ、ヴェノラ。これでこの町にも野菜が潤沢に供給されたな」
「さすがです、ヴェノラ……しかし」
「分かってるよ、ウロナ。『ここの野菜は葉物ばかりです。いくら野菜とはいえ、これではバランスがよいとはいえません』。だろ?」
「さすがです、ヴェノラ。あと……」
「『できれば果物も欲しいところです』。だろ? 朝食は果物中心でいこう」
「さすがです、ヴェノラ」
ヴェノラは大地の恵みと農家の人々に深く感謝し、作物を噛み締めることを改めて心身に刻み込むのであった。
トアル村の宿には公衆浴場があり、男湯、女湯、混浴、その他にも色々な専用浴場がある大規模なものであった。
ヴェノラ一行は様々な側面から考え、それらを秤にかけた結果、男女別で入ることを決めたのであった。
リ・イチとウロナは、何らかの効能があるかもしれないし、ないかもしれない温泉で旅の疲れを癒していた。
浴槽の湯が熱めなのか、外界との温度差なのか湯気がすごいことになっていて、あなたたち視聴者には湯気しか見えないかもしれないが。
なお、彼女たちはタオルを湯船につけてしまっているが、これは複数の公序良俗を秤にかけた結果であって、湯船にタオルをつけることを推奨した表現、演出ではございません。
「ウロナ、あなたはとても綺麗な肌ですね」
「それはどうも」
「触ってみてもよろしいですか?」
「そうですね。私が愚かでした。許してください」
「許しましょう」
何たる健全。
一方、ヴェノラたちは……
「隣の浴場から、仲間たちの声が聞こえるな」
「そうだな。周りに迷惑をかけるから、もう少し静かにするべきだ」
ヴェノラがふと辺りを見渡すと、疑わしい行動をする者がいた。
「む、そこのお前。何をしている」
「ノゾキだ」
不届き者の登場に二人は憤る。
「ノゾキはよくないことだぞ」
「なんだテメエ。如何にもノゾキしそうな顔をしているくせに、つまらない正論を吐きやがって」
何たる偏見。
「なんて奴だ。法の裁きを受けよ」
「残念だな。法はあっても、裁くものはなかろう」
「仕方がない、ならば俺がこらしめてやる。溜飲を下げさせてもらう」
改めて説明しなければならない。
「ジャストコーズ、オン!」
ヴェノラには独特のパワーが備わっており、彼は正当な理由があるとき目的を最大限遂行するための力を一時的にその身に宿すことができるのだ。
その正当なる拳の角度と熱さは45度。
「あっちいいいい」
前回のあらすじ
四天王の中では最弱らしく、既に他の四天王をこらしめていたヴェノラ一行は余裕だった。
しかしスミロドンは、ヴェノラの「とにかくすごいってことだけは伝わる設定の武具」が通じない特異体質であった。
そのことで動揺したヴェノラたちは隙を突かれ、あまりにも予想外なピンチに陥る。
だが、仲間の一人であるイセカは、スミロドンに故郷をやられた過去を持っていた。
その怒りが彼に大義名分と、形見の武器チョウナ・ブーメランに力を与える。
「渡させて頂く。引導を」
こうしてスミロドンをこらしめ、イセカの溜飲は下がったのであった。
勝利の余韻に浸る一行だったが、地に伏した剣姫スミロドンの口から語られたのは、あまりにも予想外な展開であった。
「私は元四天王だ。少し前に、私より優れた者に取って代わられた。お前たちが今まで倒した四天王も、私と同じ影武者に過ぎない」
四天王の中で最弱どころか、四天王ですらなかった相手をこらしめて今まで喜んでいたことを知った一行は恥ずかしい思いをした。
例え相手が四天王であろうとなかろうと、ヴェノラがやるべきことは変わらない。
だが、復讐を遂げたイセカは、メンバーから外れることを宣言する。
「お前たちと冒険する大義名分がなくなった。我には大義名分が必要なのだ」
そう言うイセカに、ヴェノラは静かに諭す。
「イセカ。大義名分がお前にとって必要だというのなら、これから作ればいい」
ヴェノラの感動的な説得力により救われたイセカは改めてメンバーに加わり、一行は気持ちを新たに冒険の旅を続けるのであった。
目指すはドカワ海らへんにあるというコニコ島。
そこに現役四天王であるクヨムがいるらしい、ということをスミロドンから聞き出した。
ですので船を得るため、まずは港町を目指すのだ。
今回はその道中、トアル村で休息を取る一行の話である。