はてなキーワード: ユーフォニアムとは
続きです
デカリボンちゃんはトランペット奏者です、当然同じパートである香織先輩と麗奈の技量については熟知しているでしょう
香織先輩はもちろんのこと、デカリボンちゃんが麗奈の個人練習を聴いている姿も作中で描かれています
デカリボンちゃんはある意味では滝先生以上に二人のソロを聴き比べ、その力の差について知っているのです
だからこそ、麗奈に対し当日の再オーディション前、教室において頭を下げ懇願したのです、わざと負けて欲しいと
しかしそれも失敗しました、もはや麗奈が本番直前に心変わりして手心を加えてくれる、そんな望みしかありません、が……おそらくそれも叶わないでしょう
つまりデカリボンちゃんは演奏が開始される前、最初から香織先輩が負けることは分かっていたのです、そして決めていました、その結果に関係なく香織先輩に拍手しようと
実際、滝先生に拍手を促された時すぐさま拍手をすることが出来たのはデカリボンちゃんと久美子だけでした
別に反射神経が良いとか決断力があったとかそういうことではありません、この二人はもう始まる前から決めていたんですね、演奏の内容や結果に関係なく誰に拍手するのかを
ここまで、演奏が終わりデカリボンちゃんが香織先輩に拍手をすることまでは、ある意味でデカリボンちゃんの想像していた通りでした
しかし、その後、滝先生の問いと香織先輩のそれに対する答え、そしてそれを見たデカリボンちゃんが襲われた感情の波は、想像していたものとはおそらく違ったのでしょう
香織先輩の方が上手いと思っていたのに麗奈の方が上手かった、その驚きからでしょうか、それとも香織先輩に気を遣ったから?
そもそも騒動の原因って何だったのでしょう、部員たちは本当に香織先輩の方がソロにふさわしいと思っていたのでしょうか
もちろん原因の一端は間違いなくデカリボンちゃんの言動にあります、あれがなければこんな騒動自体がなかったかもしれません
しかし、振り返って騒動の最中、部員たちが口々に言っていることを聞いてみると、それは多くが滝先生への不満であることが分かります
つまりどういうことか、結局、この騒動の本当の原因は滝先生の実力制オーディションというやり方への不満であり、それがあることをきっかけに噴出したものでしかないんですね
4月、部員たちは滝先生に今後の北宇治高校吹奏楽部の目標を問われた時、全国を目指すことを約束し、ある種強制的にではありますがそのために努力してきました
久美子はこのやり方に対して大人はずるいよと言っていましたが、サンフェスの成功を経て部内の空気は大きく変わります
オーディションの開催を告げされた時、多くの部員はその決定に反感を抱いたように見えました
しかし部員たちにとって全国大会を目指すと約束してしまった以上、実力制オーディションに反対することは自分たちの言動に矛盾を生みます
オーディション自体は全国大会を目指すという目標のためには明らかに必要なことですから、それを盾にされると言い返すことは出来ないのです
更に、4月のあの頃、まだ滝先生のやり方に異を唱えていた部員も多かったあの頃とは、もはや流れ、部の空気が変わってしまいました
約束を人質に取られ、空気もそれを許さない、これでは誰もオーディションに反対など出来ません
ここに降って湧いたのが先生が麗奈を贔屓したのではないかという疑惑でした
つまり部員たちは疑惑それ自体よりも、そもそもオーディション自体に反対だったのですね
この事に部員達が自覚的だったかは人それぞれでしょう、しかし自覚的かどうかに関わらず、部員達は自らの不満をソロオーディションへの不服という形でしか表明することが出来ないのです
「オーディション自体が麗奈のためだったらしいよ」という生徒がいますが、まさにその気持ちをよく表しています、そもそも実力制のオーディション自体が間違いだったと言っているんですね
彼ら彼女らは部活動の方針の急速な変化、とりわけ上級生をも容赦なく落とすオーディションなどというものへの不満をここぞとばかりに爆発させているだけなのです
極端なことを言ってしまえば誰も香織先輩の方が上手いとは言っていないのです
だからこそ再オーディションにおいて目の前で香織先輩と麗奈の実力差を見せつけられた時、多くの部員は拍手をすることができなかったのです
香織先輩の演奏が文句無しに上手ければ、麗奈より優れていれば何の問題もなかったでしょう、しかし現実はそうではありませんでした
あの場面で、より劣った香織先輩に拍手すること、それはつまり実力制オーディションを否定することであり、滝先生に問われ約束した全国大会を目指すという決意自体を否定することになります
いくら影ではオーディションへの不満を言い募ろうと、あの場所で、部員全員の前で、さあどうするのかと問われればやはり反対など出来ないのです
しかしだからといって麗奈に拍手することも出来ません、集団の空気や流れというのは簡単に変わるものではないのですから
再オーディション開始前、麗奈は久美子に対し勝てば私は悪者になると言っていますが、まさにその通りあの時点で麗奈は悪者なのです
麗奈という女の子の言動を客観的に見てみると、先輩に向かって生意気な口を叩いたり、仲間を作らず一人浮いた存在であったりと余り好かれるような存在ではありません
もちろんキチンと謝るべきは謝り、その言動も悪意があったりするものではないので、好かれないながらも嫌われるという程のものでは無いのですが
あくまで部員たちの目線として見てみると麗奈に対して好意的になる要素は余りないことが分かります
物語を客観的に見ている視聴者は麗奈の方が香織先輩よりもトランペットの技術が優れていると知っているから?
それともオーディションにおいて滝先生は不正などしていないと知っているからでしょうか?
違いますよね
それは、あの麗奈の特別になりたいという想いを、久美子と一緒にあの甘酸っぱい告白を聞いてしまったからです
だから視聴者は麗奈に負けてほしくないと思うのです、久美子が麗奈のあの告白によって一瞬で心を奪われ麗奈に惚れてしまったように、視聴者もまたあの告白で麗奈に惚れてしまったんですね
そして久美子と視聴者にとって麗奈が特別であるように、デカリボンちゃんにとっても香織先輩が特別だったのです
再オーディション当日、選考開始前の準備時間、「私が負けたら嫌?」そう問いかける麗奈に対し久美子は言います
久美子「嫌だ……
いやだ!」
麗奈「どうして」
麗奈「そうね……」
久美子「麗奈は他の人とは違う、麗奈は誰とも違う。
人に流されちゃダメだよ、そんなのバカげてるでしょう」
――――「響け! ユーフォニアム」第11話
久美子の想いは理屈ではありません、部活のためでも、それどころか麗奈のためでもありません
麗奈に対し特別でいて欲しい、自分では出来ない、だからこそ麗奈にそうであって欲しい、そんな我儘な想いです
そしてデカリボンちゃん、彼女が香織先輩に抱く気持ちもまた、久美子のそれと同じものです
教室の窓際、デカリボンちゃんに対し「トランペットが好きなの」そう微笑み掛ける香織先輩
久美子がたった一言、一瞬の出来事で麗奈に心を奪われてしまったようにデカリボンちゃんもあの瞬間あの場所で香織先輩に心を奪われました
なぜ大会前の大事な時に滝先生へデカリボンちゃんはあんな事を言ったのか、香織先輩が望まないと分かっていながら、なぜあんな騒ぎを起こしたのか
全ては香織先輩に特別であって欲しい、香織先輩は特別でなくてはならない、その想いゆえのことなんですね
リボン「諦めないで……
香織先輩の……
香織先輩の夢は絶対に叶うべきなんです!
じゃなきゃ……」
――――「響け! ユーフォニアム」第10話
デカリボンちゃんが絶対に叶うべきだと言った香織先輩の夢、それが叶うことはありませんでした
香織先輩が自らの口でソロは麗奈が吹くべきだ、そう言ったあの瞬間、その夢は潰えたわけですが
あの時、実は香織先輩には違う選択肢、可能性もありました
もしくはただ沈黙を貫く、そして麗奈の気持ちを聞く、そういった可能性です
結果だけ見れば拍手の数は同数でした、多くの部員たちは投票するという権利を放棄し、結果を他人に委ねたのです、文句は言えないでしょう
なぜでしょうか、滝先生の言外の圧力に屈したから?それとも会場の、部員たちの空気を読んだからでしょうか?
人には自分が決めるではなく、空気の中でいつの間にか出来上がるそれぞれのラインがあります、キャラクターと言ってもいいかもしれません
ドラえもんのジャイアンは力持ちで気の強い男の子です、ジャイアンがのび太と喧嘩をしてもそこに驚きはないでしょう
一方のび太は、弱虫でいつもイジメられている男の子です、もしものび太がジャイアンに喧嘩を挑んだら、勝ち負けは関係ありません、そこには驚きが生まれます
人は、誰かの行動がその想定値を超えた時、心を揺さぶられ感動するのです、
ジャイアンに喧嘩を挑んだという事に驚くのではありません、のび太が喧嘩を挑んだという事に驚くのです
だからこそ香織先輩が再オーディションを望んだ時、香織先輩がそのラインを超えた時、多くの部員が驚き、それを見た人は心を揺さぶられました
再オーディションの日、副部長のあすかに対する想いを聞かれた香織先輩は部長に対しこう答えます
香織先輩「なんか、見透かされてるような気がするんだよね、
私が思ってることなんでも……
あすかが思っている私の一歩先を、本物の私が行きたい」
――――「響け! ユーフォニアム」第11話
香織先輩はあの時、「再オーディションを希望します」と言ったあの瞬間、確かに一歩先を行ったのです、それはあすかに対してでは無かったかもしれません
しかし、間違いなく多くの部員が思う香織先輩という人物の一歩先を歩いたのです
そしてだからこそ、香織先輩にはあの場面、滝先生にあなたが吹きますかと問われたあの時、あの場所で
今までの中世古香織であればしなかったかもしれない、部のためを想えばそんなことは言えないかもしれない
でも、あの時の香織先輩には、技術的には劣っていても私が吹きたい、吹かせてくださいという選択肢が、権利があったのです
あるいはデカリボンちゃんはそう言って欲しかったのかもしれません
もしくは麗奈なら、誰よりも特別になりたいと強く願う麗奈であったなら、そう言ったかもしれません
あの日、あの瞬間、香織先輩は決めたのです、人に言って決められるのではなく、空気によって決められるのでもなく
自分の判断によって、中世古香織という人間は、中世古香織のトランペットはここまでだと、他人にラインを引かせるのではなく、自分自身によってそこにラインを引いたのです
そして麗奈こそがふさわしいと、麗奈こそが吹くべきだと言い、優しく微笑みます、あの日、教室の窓際でデカリボンちゃんにそうしたように
デカリボンちゃんはそれを見て、香織先輩とはどんな人であったか、どれだけ優しい人であったかを思い出して泣くんですね
一歩先を行きたいと願った香織先輩の夢の終わり、そこにいたのはデカリボンちゃんの大好きないつもの優しい香織先輩でした
だからデカリボンちゃんはあふれる涙を止めることが出来ないのです
涙って悲しいときにだけ流れるものじゃないですよね、怒った時にも笑った時にも流れます
つまりそれが喜怒哀楽どんな気持ちであれ、その感情が大き過ぎて自分の中で抱えきれなかった時、必死に抑えようとしてもあふれ出てしまう時、それが涙となって瞳からこぼれ出していくのです
デカリボンちゃんを襲ったのは香織先輩の夢が叶わずに悔しいという気持ちであり、香織先輩の微笑みが思い出させてくれたあの時の胸の高鳴りであり
香織先輩の一歩先に行きたい願う高揚感であり、香織先輩のやさしさが与えてくれた安心感でした
そういったもの全てがデカリボンちゃんを襲い、満たしあふれたからデカリボンちゃんはあの時涙が止まらなかったのです
わんわんと声を上げ、ただこぼれ出る涙が止まるのを待つしかなかったのです
あそこまで泣くかと思うかもしれませんが、それは仕方のないことだったのですね
余談ですがこのシーンで流れているBGMはここまで劇中では1度しか使われていません
そして、2度目がこの香織先輩が滝先生の問いに答えデカリボンちゃんが涙する一連のシーンとなっています
曲のタイトルは「重なる心」です
この後、北宇治高校吹奏楽部は滝先生の指導のもと一つとなって全国大会という目標に向けて走っていきます
その熱量は騒動以前と比べても明らかに上がっており、まさに雨降って地固まるということわざの通りです
物語としては、やはり終盤なので主人公である久美子に焦点を絞り
これまでいつも受け身だった久美子が麗奈という存在に感化され初めて真正面からユーフォニアムという楽器に向き合い、「上手くなりたい」と心の底から願い必死に努力する
そんな久美子の成長が細やかな演出と美しいアニメーション作画で描かれており、ラストまでワンシーンワンカット目が離せない文句無しで面白い作品となっています
この空気に明確に逆らった人物として描かれているのは葵ちゃんです、彼女と久美子の姉は部活に精を出す久美子のアンチテーゼとして作中何度も登場します
逆に空気に流されやすい人物として描かれているのはポニテ先輩です、作中でも「私そういうのに弱くって」とチョコシェイクを飲みながら久美子に告げています
では主人公の久美子はどっちなのだろう、そんな視点で改めて久美子を眺めてみると
序盤、友人に流されて吹部や低音パートに入る部分は当然のこと、終盤、大会に向けて今までになく必死で練習する姿もある意味では部内や友人の空気に流されただけ、という風にも見えます
もちろんそれは上述したように久美子の成長でもありますし、空気にのせられること、みんなで一丸となって何かをすること、それが悪いという意味ではありません
しかし優柔不断な一面が久美子にはあるというのも事実であり、久美子自身もそれを自覚しています
葵ちゃんは「みんな傷つかないようにまとまっていく」と言いました、麗奈は「人の流れに抵抗してでも、特別になりたい」と言います
今の久美子にとって麗奈のように特別になるということはユーフォニアムをもっともっと上手くなるということです、それは北宇治高校吹奏楽部が目指す全国大会という目標に完全に合致します
しかし、もし久美子にも誰かとぶつかって傷付いてしまいそうなるという、優柔不断なままではいけない、人に流されるままではいられないという、そんな事態が来た時
久美子は特別になりたいという想いを貫くこと、そして集団の空気に逆らうことができるのでしょうか
1期ではそういった場面は殆ど描かれませんでした
しかし見方によっては美味しい部分をあえて残したとも表現できます
ですから続編となる2期ではそんな久美子の新しい活躍と成長の軌跡も見ることができるのではないかと、勝手ながら楽しみにしています
全体では同じ方向を向いているように見えても、その実、ひとりひとりの部員の想いは様々なのです
響けユーフォニアムは、思春期特有の友情とも恋愛ともいえない女の子同士の関係や甘酸っぱい男女の恋、そして部活に明け暮れる高校生の青春と色々なものが描かれています
しかし、その中でも吹奏楽部というモチーフを使ったからこそ描くことのできる、思春期の高校生達が作る空気感、そしてその空気に寄り添うひとりひとりの想い
・響け!ユーフォニアムの2期が決まってうれしいです、とても面白い作品でしたね
・素晴らしい点を上げるとキリがないのですが、私はとりわけこの作品の描く「空気」が好きでした、作品のテーマの一つでもあると思います
・特に2話の葵ちゃん「みんな~問題のない方向へ~まとまっていく」というセリフ、8話の麗奈「特別になりたい」というセリフ、この2つが重要なシーンではないでしょうか
・この空気に着目した上で10話、香織先輩が再オーディションを希望するシーンを見ると、とても感動します
・久美子の心の成長も見所の一つです、でも久美子って少し流されやすいような気もします
・劇場版、そして2期、本当に楽しみです
と大体このような感じ
もしまだご覧になったことがないという方は、本当にオススメの作品です、ぜひぜひこの機会にご視聴ください
ところで、響け!ユーフォニアムってどこが面白いの?と問われたら、視聴済みの皆さんは何と答えますか
作画の綺麗さや演出の巧みさ、声優さんの演技の上手さなど色々なものが思い浮かびます
答えは一つではないと思いますが、私には響け!ユーフォニアムのココが好きだ!という点がずばり一つあります
それは、今まで深夜アニメーションという媒体では余り描かれることのなかった部活や学校という空間の空気
引いては集団の中で発生する同調圧力的な側面について描き、それをしっかりとエンターテイメントとして見ていて楽しい物に昇華しているという点です
少し話は変わりますが
おそらく一度は聞いたことがある、どんな物語か程度なら知っているという方も多いと思います
ストーリーの説明は省きますが、絵本の中でスイミーはたくさんの仲間達と一緒に大きな魚のふりをして泳ぎ、マグロを追い払いますよね
あのスイミーが案じた作戦、これはおとぎの世界の話だけではありません、現実の世界でも類似の例を見つけることが出来ます
例えば、チョウチョウウオという魚です
沖縄方言ではカーサと呼ばれ、その意味は葉っぱ、名の通りほのかな橙黄色に色付いた木の葉のような魚です
一匹でも十分に綺麗なこのチョウチョウウオですが、海の中で生活する時は大きな群れを作ることが知られています
チョウチョウウオはそれほど大きくない魚ですので、単体ではすぐに捕食者に狙われてしまいます
ですからまとまって大きな集団を作ることによって、捕食されることを回避しているわけですね
このようにして魚が群れを作るメカニズム、そこにあるシステムを群知能といいます
群知能は魚の群れを説明するための用語というだけではありません、他にも自然界の様々な場面で見ることのできる普遍的な概念です
ところでこのチョウチョウウオの群れですが、全体としては同じ方向を向いていても
中を細かく見てみるとそれぞれの個体や個々の集まりでは別の方向を向いていたりすることに気付きます
スイミーは全員が一丸となって戦うお話でしたが、現実世界のチョウチョウウオでは少し違うわけですね
外から全体を俯瞰して眺めるとみんなが同じ方向を目指しているように見えても、それぞれにはぞれぞれの想いがある
大きいものでは会社組織、小さい単位なら家族や友人関係かもしれません
そして多くの人が人生において最初にそれを経験する場所、それが学校であり、とりわけ部活動なのではないでしょうか
一概に部活動といっても様々あります、体育会系ならサッカーや野球、文化部なら美術などが有名ですよね
そしてもう一つメジャーなものの中に冗談めいて体育会系だとも文化部だとも言われる部活があります
そう吹奏楽部です
それが体育会系といわれる所以なのかもしれませんが、一つ他と決定的に違う点があります
それは圧倒的な力量を持った選手が一人や二人いたとしても、それが集団にとって即大きなアドバンテージとはならない、という点です
吹奏楽という競技においては、群れのレベルは全体の平均ではなく最も弱い個体の能力度合いによって決まるからです
これは積極的に底辺の能力を押上げようという助け合いの精神、教え合いの動機ともなり得ますが
いざという時には、底辺を全体のために容赦なく切り捨てるという残酷な選択を強いる結果にも繋がります
吹奏楽ほど、群れというものを意識する部活は他にはないかもしれません
そしてそこには、必ずしも絵本で描かれるスイミーのようなやさしさも海で群れをなすチョウチョウウオのような美しさも、あるとは限りません
それが京都アニメーション制作の「響け! ユーフォニアム」です
吹奏楽が舞台であるといっても、1話や序盤では多くの時間がキャラクター紹介、人物の関係性やこれからの展開をほのめかす場面に割かれます
彼女が高校生となって吹奏楽部に入部し、新しい学園生活、新しい友達や上級生と馴染んでいく過程を描いています
そんな序盤のキャラクターのやり取り、シーンの一つにこんなものがあります
久美子の幼なじみであり部活の先輩でもある葵ちゃん、彼女と久美子の会話です
久美子「でも今日みたいに聞かれたら、全国大会目指すっていう方に手挙げるでしょ」
葵「そりゃあ…ねえ」
久美子「だからややこしくなるんだよ、大人はずるいよ」
葵「それ言ったらどっちにも手を挙げなかった誰かさんが、一番ずるいんじゃない?」
久美子「それは……そうだけど……」
葵「きっと、そうするしかないんだよ。みんな何となく本音を見せないようにしながら、一番問題のない方向を探ってまとまっていく、学校も吹部も、先生も生徒も」
久美子「どうして……?」
葵「そうしないとぶつかっちゃうからだよ、ぶつかってみんな傷ついちゃう」
――――「響け! ユーフォニアム」第2話
この言葉は学校という世界しか知らなかった高校生の頃に立ち戻って考えてみれば、いっそう共感のできる言葉だと思います
そして、学生の時のみならず、社会人となってからもこの「空気」を読めという感覚は常についてまわるものです
集団、群れがあればそこには空気があります、そうして出来上がった集団の流れ、空気に逆らうことはとても難しいものです
特に思春期の女の子にとって集団から抜け落ちたり弾かれたりすることは、死ぬほどに辛いことだと思います
2話の終盤、このシーンはさらっと流れます、その為とりわけ重要ではないシーンのように思われるかもしれません
しかし、深夜アニメにとって大事だと言われる1~3話において、2分以上の長尺を取り久美子との二人きりの会話を描いているのは、このカット以外にはないんですね
音楽に通奏低音という言葉があります、本来はバロック音楽における用語ですが、転じて「常に底流としてある、考えや主張のたとえ」というような意味も持ちます
吹奏楽でいうならば久美子や友人である緑輝や葉月がいる低音パートですね
彼女たちの低音が吹部の演奏を支えてるように、葵ちゃんのこの言葉は響け!ユーフォニアムという作品における通奏低音となっています
続く話数、これ以降の3~6話ではある意味で葵ちゃんの言っていた通り、一つにまとまり
一致団結してサンライズフェスティバルという地域のイベントに向けて頑張る吹部の様子が描かれます
しかし、当の葵ちゃんは今までとは違う、空気の変わってしまった吹部についていけず退部を決意します
顧問の滝先生が赴任して来なければ、部のやり方が変わらなければ、葵ちゃんも最後まで部活動を続けたかもしれません
ただ去年の出来事を経験した葵ちゃんにとって今の空気はどうしても受け入れることの出来ないものだったのです
退部後の葵ちゃんと部長の晴香がファミレスで二人、話し合うシーンがあります
葵ちゃんは自分はそこまで吹部が好きではなかったと言った後、部長に対し晴香はどう?と問いかけます
部長は即答することが出来ません
今までの吹部とは違う、全国大会出場という大きな目標を掲げ、部員一丸となって全国という高みに向けて邁進する北宇治高校吹奏楽部
ですが、一人ひとりが見ている方向は必ずしも一致していません、全体では同じ方向を向いているように見えても個々人の想いはそれぞれなのです
ここまでが7話でした
そして続く8話、とても印象的な回ですね
この第8話終盤、麗奈と久美子の密会シーンは中盤のクライマックスです、その内容を憶えている人も多いでしょう
麗奈と久美子、二人以外は誰もいない小高い丘の上、眼下には楽しげなお祭りの光、麗奈はまっすぐと久美子を見据えて言います
麗奈「ねえ、お祭りの日に山に登るなんて馬鹿なこと、他の人はしないよね」
久美子「うん、まあ……」
麗奈「久美子なら分かってくれると思って。私、興味のない人と無理に仲良くなろうと思わない。誰かと同じで安心するなんて、馬鹿げてる。
当たり前にできあがってる人の流れに抵抗したいの、全部は難しいけど。でも分かるでしょ?そういう、意味不明な気持ち」
久美子「麗奈……」
麗奈「私、特別になりたいの。他の奴らとおなじになりたくない」
――――「響け! ユーフォニアム」第8話
特に未だ少年少女時の万能感から脱却しきれていないモラトリアム期の高校生ならば、それは多くの人が抱いた「本音」かもしれません
「特別になりたい」
しかし、多くの高校生はその本音を隠します、他者とぶつからないよう、ぶつかって傷つかないよう、波風を立てず皆と同じように日々を過ごします、それが「普通」なのです
麗奈は違います、久美子にはっきりと言います、特別になりたいと、他の人に流されたくないと
葵ちゃんのセリフと対になるこの言葉、少し甘酸っぱく子供っぽい麗奈のこの告白は、久美子の心を大きくざわつかせました
そして続く9話、ここからやっと吉川優子ことデカリボンちゃんと吹部のマドンナ中世古香織先輩にスポットライトがあたっていきます
去年までの熱意のなさが嘘のようにやる気を出し、ここまで大きなゴタゴタもなく順調に進んできた北宇治高校吹奏楽部
あとは大会に向けて全力で頑張っていくだけという感じですが、その前に一つ課題を乗り越えなればなりません
オーディションです
滝先生が事前に発表していたこの実力制メンバー選抜は、ことの成り行き次第では少々問題が起きそうな雰囲気です
さてオーディション、視聴者としてはポニテ先輩のことも気になりますが、吹部として重要なのは麗奈と香織先輩、どちらがソロを吹くのかという点です
部員の殆どは、麗奈が優れたトランペット奏者だということは知っていても、上級生であり、部内屈指の実力と人望を兼ね備えた香織先輩がまさか負けるとは思っていません
しかし当事者である香織先輩の認識は少し違っています、麗奈の実力を認め、負ける可能性を十分に考慮しているようです
さあ、結果はどうなるのか?と言うと……
この結果は当然ながら驚きを持って迎えられます、中には滝先生の選考に内心疑問を呈した部員や不満を抱いた部員もいたでしょう
しかし、個々人の想いとは関係なくこの時の部内の空気はオーディションの結果を受け入れるものでした、空気が異を唱えることを許さなかったのです
集団の空気に逆らうというのはとても難しいことです、もしもこのまま何事も無く事が運べば、大した波乱などなく一致団結して大会まで進んでいたかもしれません
ここで爆弾を落とすのがデカリボンちゃんです、オーディションから少したった頃、滝先生に対し部員が見守る中、こう言い放ちます
リボン「高坂麗奈さんと以前から知り合いだったって本当ですか?」
滝先生「それを尋ねて、どうするんですか?」
リボン「噂になってるんです、オーディションのとき、先生がひいきしたんじゃないかって、答えてください」
――――「響け! ユーフォニアム」第10話
この出来事から急速に部内の空気は変化していきます、元々個々人の中ではオーディション結果に対しくすぶっていた所もあります
0から1に突然変わったというような変化ではありません、空気を意図的に誘導しようとするそんな人物がいたわけでもありません
それどころか自分たちが一体どこに向かっているのか、それさえ誰にも分からぬまま漠然と悪い方向へ流れが変わっていく、そんな様子が丁寧に描かれています
滝先生は音楽の知識こそ豊富ですが、教員としての指導経験はまだ浅く、この事態に戸惑い苛つきます
見かねた部長が、このままではいけない、そう覚悟を決めなんとか解決しようと動き出した頃、丁度時を同じくして滝先生は一つの解決策を見出します
滝先生「今日は最初にお知らせがあります。来週ホールを借りて練習する事はみなさんに伝えてますよね。
そこで時間を取って希望者には再オーディションを行いたいと考えています。
前回のオーディションの結果に不満がありもう一度やり直して欲しい人はここで挙手してください。
来週全員の前で演奏し、全員の挙手によって合格を決定します。全員で聞いて決定する。これなら異論はないでしょう。いいですね?」
――――「響け! ユーフォニアム」第10話
この言葉に対し、香織先輩は一歩を踏み出すように立ち上がり、高く手を掲げ、まっすぐと滝先生を見つめて言います
香織先輩という人物についてはこれまでも何度か描かれています
葵ちゃんが退部し、部長がめげてしまった時にはおみやげを持参して励ましました
ポニテ先輩は、葵ちゃんと部長に加え香織先輩だけが、去年の部内のゴタゴタに対して真摯に解決しようと頑張っていたと言います
公園で二人きり、デカリボンちゃんから本人や父との縁故を理由に滝先生が麗奈を贔屓した可能性を告げられた時も噂を止めるようお願いするだけです
これらのことから伺えるのは香織先輩のやさしさであり、部に対する想いです
部長と共に、損な役回りを引き受けてでも部内の空気を良い方向へ持って行きたいという、そんな心配りです
その香織先輩が、今まで吹部内の空気をなによりも優先してきた、そんな香織先輩が、初めて自分の想いに素直に寄り添って決意表明したのがこの場面なのだと思います
もしかしたら吹部の嫌な空気、それを払拭するためにあえて希望した、もしくは香織先輩を推す部内の空気にのせられる形で希望しただけという穿った見方もできるかもしれません
しかし、友人を心配そうに見つめる部長の眼差しや驚きを持って香織先輩に視線を集める部員達の表情からそうではないことが見て取れます
香織先輩はこのとき空気に反発したのでも迎合したのでも、そして沈黙したのでもありません、ただ自分の確かな意志を表明したのです
まっすぐに滝先生を見つめ、自分の想いを吐露する香織先輩のその姿は麗奈が久美子にした特別になりたいという告白に重なります
さあ再オーディションです
まずは香織先輩が、吹き始める前こそ緊張の面持ちでしたがいざ吹き始めると特にミスもなく、普段通りの演奏を客席に座る部員たちの前で披露します
二人の演奏が終わり、よりふさわしいと思う方へ拍手するよう言われますが殆どの部員はどちらにも拍手することが出来ません
そんな空気の中、滝先生は香織先輩に問います、あなたがソロを吹きますかと
香織先輩は麗奈こそが、自分ではなく麗奈こそがソロを吹くべきだと、そう言い
それを聞いたデカリボンちゃんは泣いてしまいます、大粒の涙を流しながら、わんわんと声を上げて
一度目のオーディションの時ではなく、二人の演奏が終わった時でもなく、滝先生が麗奈を選んだ時でもありません
デカリボンちゃんは香織先輩が負けたことが、選ばれなかったことが、技量的に麗奈に劣っていたことが悔しかったのではありません
人を気遣い、自分よりも他人を思いやり、誰よりも優しい先輩、その先輩がたった一度、自分のために、自分だけのために
北宇治高校吹奏楽部の中世古香織としてではなく、一人のトランペット奏者として初めて挑んだ、ぶつかって傷付くことを恐れずに挑戦した
その特別なものへの憧れが、それが叶えらなかった事が、デカリボンちゃんは何よりも悔しいのです
悔しくて仕方がなかった、だから泣いたのです
もしもその悔しさだけだったなら、こんなにも大粒の涙を流すことはなかったでしょう
なぜならば、デカリボンちゃんはおそらく再オーディションが決まったその日から、自分がこの日再オーディションの当日、誰よりも悔しい思いをするという事は分かっていたからです
http://anond.hatelabo.jp/20151114054047 へ続き Permalink | 記事への反応(3) | 19:37
今期はうしとらとデュラくらいしか見ていないので、気に入って録画を残していたアニメをみている。
響けユーフォニアムはとにかく全てに隙がなくいいアニメだった。
淡々と進みながら涙が出てくる最終回はみればみるほど味が出る。
初期からの主人公や部員たちの成長がじわじわとしていてとてもいい。最初に戻るといろんなことの変化を実感して、
自然に書ききった手腕を誉めたくなる。
端々で感じるスタッフの青春への愛と作品にかける思い入れも素晴らしい。
ジョジョは一部のまとまりのよさと熱さはやっぱり別格だよなーと久しぶりにみても本当に面白くて止まらない。
二部も止まらないうっかり消している話などがあると、自分を殴りたくなる。
あの突っ込みどころしかないのに面白いし熱いから突っ込むのが野暮な力業は今の漫画家も見習うべき。
さてクロスアンジュを見るかと思ったが消していたのを思い出した。
サムネイルがヤバい事が多かったからつい!家族にみられたらヤバいからつい!とか!当時の自分のアホーと悶絶して現在に至る。 クロスアンジュのDVDなんて危険なものは持てないがみたくて仕方ないので映画化してほしい。
今期ではうしとらが見返しアニメになるんだろうなー、伏線回収が本当に素晴らしい漫画だったから、最後をみてから見直すのは楽しすぎるだろうなと今から楽しみ。
響けユーフォニアムめちゃくちゃおもしろいんだけど、やっぱり色々性的すぎてゴールデンタイムには流せないだろう。もったいない
大人向け深夜アニメのキャラデザがどんどんどんどん性的になっていく
・巨大に潤んだ瞳
・上気した頬
一般人からみてメタファーとかそういうレベルじゃなくてほとんどド直球にポルノ描写である
とくに上気した頬って、従来は「暑い」「恥ずかしい」「興奮している」「怒っている」とかだいたい普通じゃないときの表情だと思うけれど、ラブライブとか少女たちが四六時中発情しているようなもので困惑する
いまどきのアニメファンはその辺感覚がマヒしていてこのあたりのキャラデザがもう普通になっている
(けれど正月のお茶の間で美少女アプリのCMが流れたときにバツの悪い思いをするくらいにはポルノであることをうっすら理解している)
響けユーフォニアム!といういま放映中の(一部で話題になっている?)アニメーション作品を観ながらふと思ったこと。
久美子と麗奈がクソレズクソレズ言われてるけれど、描写が若干過剰気味のきらいはあるとしても、現実でもあるある的な展開でしょう。これこそ微笑ましい相方、というか相棒の関係だと思う。
一方で久美子と秀一の微妙な関係性についても毎回触れられてて、こちらも多分これから展開があるのだろうなと。でももしそうだとしても、麗奈との関係と秀一との関係は両立できないことになると思います?麗奈の性格からいって一悶着ある可能性は否定できないし、そちらの方に話の舵取りが進んでいくのかもしれないけれども、両立できる可能性だって十二分にあると思う。
…とここまで思考回路が進んでいったところでタイトルの内容にたどり着いたわけです。
恋人を相方呼ばわりしている人たちって恋人以外に相方と呼べる人がいないの?相方というより相棒かな。
いや、相方相棒的な恋人関係も端から見てて微笑ましいし、それはそれで良いのです。惚気具合が適度なところに収まって、相方相棒的な関係になってるパートナー関係なんかは素敵。(自分はそこまでいえるほど関係が毎度続かないのが残念だけれども)
【追記】
今回に関しては相方呼称の批判というよりは素朴な疑問とか表題の通りです。
思春期から今に致るまでそれこそ「相方/相棒」的な存在がいることが多かったので、その中でポジショニングが近い位置になるとはいえ、恋人を相方/相棒と呼ぶ気にはならなかったなぁみたいな感じ。
日時:2014年6月28日(土) 18時30分開演(第2回公演)
入場無料だが、ハガキによる事前応募・抽選制である。つまり私の個人情報は防衛省に把握されたw
原題は「シェルタリング・スカイ」。
同名の映画があるが、特にそれとは関係ない模様。ちなみに映画の方の音楽は坂本龍一氏の担当で、ゴールデングローブ賞受賞らしいので、今度聞いてみようと思う。
曲は終始穏やかで、オーボエの澄んだ音色とトランペットの柔らかな音が印象的だった。
「オリエント急行」「ドラゴンの年」「ハーレクイン(ユーフォニアム独奏曲)」などで有名なスパークの曲ということで楽しみにしていた。期待通りのスパーク節を、厳選された編成の音楽隊が見事に演奏した。
これ以上吹くと崩れる、というギリギリのところで荒ぶるホルンの音が、吹奏楽サウンドのホルンで、とても気に入った。
トランペットは途中で舞台裏で演奏するのだが、舞台裏から聞こえるフレーズとしては相当難易度が高く、スパーク先生鬼だ……と思った。
パーカッションは、上手からひな壇にかけてかぎかっこの“「”字状に配置されていたが、上手手前に「パチン」と打ち合わせる楽器(名前が分からない……スラップスティック?)、上手奥にタンバリン、上手中央にスネアと、結構離れているのに終始揺るぎないリズムを刻んでいて安心して聴けた。
ロビーでも放送で流れたのは、カフェで休憩中の身にはありがたかった。
1部はウィンド・オーケストラ編成、2部は大編成のシンフォニック・バンド編成とのことだった。
これも期待していた曲。上手に吹くととてもカッコイイ。
曲目紹介で、1964年の東京オリンピック、そして先日の国立競技場での編隊飛行の話があった。「F-86F」「T-4」とちゃんと紹介するあたり、ニヤッとしてしまった。
演奏は文句なかったが、特にトリオのサックスが美しかった。そしてドラムセット!どこまで譜面に書いてあって、どこまでアドリブなんだろう。普通の曲ならアドリブだろうと思うのだが、なにしろ斎藤高順「航空中央音楽隊第4代隊長」の作である。一音一音忠実に……なんてことも???
服部克久氏の息子の服部隆之氏の曲。「機動戦艦ナデシコ」「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」など劇伴の分野を中心に活躍されている方が、航空自衛隊50周年(つまり10年前の2004年)に委嘱により作曲したもの。
トゥッティの音圧と、それに負けないツインスネアドラム。迫力のある曲だった。
この曲は、航空自衛隊60周年記念で募集した作品の中から選ばれた、コンサート・マーチ。
東京藝術大学トロンボーン専攻で首席で卒業、入隊1年3ヵ月の田中裕香さんの曲。
この曲も60周年記念。こちらは歩ける行進曲。
国立音楽大学卒のトランペット奏者で、北部航空音楽隊所属の和田信さんの曲。
トリオがEuphの旋律(対旋律ではなく)で始まるのが意外だった。
曲自体は弱起で始まり、装飾的な動きや音量差も多く、歩くのに向いているかどうか……
二人は曲目紹介でそれぞれマイクを握ったが、ちゃんと階級を名乗るのか、と思った。
一般の方で「○○会社課長の△△です」という機会はそんなにないと思う。
航空自衛官の16階級中、2等空曹は12番目、空士長は14番目である。ちなみに航空中央音楽隊長で指揮の水科克夫さんは2等空佐、4番目である。
「春になって、王達が戦いに出るに及んで」を知っていたので、期待していた。
複雑な拍子の曲で、非常に難易度が高い。「危険な空でぶつかり合う2つの対立した力を表現」とあるが、まさにそんな感じだった。
アメリカ軍のことは全く知らないのだが、第564戦略空軍司令部軍楽隊の委嘱による作曲と聞いて「564」という数に驚いた。
アンコール1曲目は「一旦地上に降りて(水科克夫さん)」ふるさと。
ここで、楽団のメンバー紹介が行われたが、北部、中部、西武、南西の各音楽隊からのメンバーが想像以上に多くて驚いた。
アンコール2曲目は空に戻って。
おそらく音楽会最後の曲として定番になっているのだろう、公式の行進曲。
やや大きなシンフォニック・バンド編成になった第2部だが、野暮ったく分厚くなることはなく、高いレベルの合奏による心地よいサウンドが維持されていた。木管の弱奏の際に一瞬、弦?と思うような、ふわりとした音が鳴った瞬間があった。
この日の空は荒れ模様だったが、ホールの中は澄んだ、濁りのない吹奏楽サウンドで満たされていた(すみだ、だけに)。