はてなキーワード: 鮨詰めとは
6、7年前のこと。
当時、私は大学を1年休学し、アルバイトで貯金を貯めては発展途上国に旅に出るという生活を送っていた。
いわゆるバックパッカーという奴で、当時はうだつの上がらない大学生を中心にとても流行っていた。
国民からの支持も厚きプミポン国王陛下(大変偉大だった。名前の響きも良い)がまだご存命であらせられた頃の微笑みの国で、途上国と言っても過ごしやすい場所だった。
主な活動拠点であった首都バンコクにはそこら中にコンビニがあるし、バンコクでなくても観光地ならそこら中にコンビニがあった。
短距離の移動も楽で、自動車やバイクやトゥクトゥクなんかのタクシーが車道を(適宜信号を無視しながら)縦横無尽に行き交っていた。
足に自信があればレンタル自転車でも移動できたし、自信がなくてもレンタルエレファントに騎乗することによってなんか自分がとても偉くなった気分にもなれた。
だが、長距離の移動は辛かった。
何十キロも移動する場合、貧乏学生に与えられた選択肢は乗合バスか国有鉄道の2択になる。
私はこの1年後、南国フィジーで偶然出会った黒人と雰囲気でビガップするまで乗合バスというものを食わず嫌いしていたのでタイで乗ったことはない。乗り込んだら最後、ギャングが鮨詰めになったファベーラっぽい場所に連れて行かれるような気がしていたからだ。
なので国有鉄道ばっかり乗っていた。
国有鉄道は大変安価で、バンコクから国中に放射状に線路が伸びていたっぽい。バンコクのなんか名前の長い駅からどこへでも行けるし、どこからでもバンコクに戻れた。
だだ、乗り心地は酷かった。
座面も背もたれも材質不明の硬い何か(プラスチックっぽい)で長時間乗るとケツが割れる。
窓はいつも半開きなくせになぜか換気能力が低く、どの車両に乗っても独特の臭いがした。しかもこの窓は出入り口でもあった。車両が駅に停車すると野生の物売りたちが華麗な身のこなしで窓から乗り込んでくるのだ。なので泥とか砂とかがいろんなとこについてた。
最も難儀したのは、夕方夜にかけて、バンコクから地方に向かう鉄道の車内である。
一つ考えてほしい。我々日本人は、夜にへとへとで電車に乗りこんだものの、座席が空いていなかったらどうする? 観念して空いている場所に立つか、次の電車を待つかするだろう。
タイの疲れた人々はどうだろうか。そんな非効率的なことはしない。
何故なら、電車には床があるのだ。そして疲れているのだ。疲れている人は、座るか、寝るのだ。
そう、電車の床に座って、寝るのである。それも、スペースがあればあらゆる場所に。
座席の肘置きはもちろん、座席の下に潜り込んで疲れを誤魔化す。始発のバンコクならまだスペースに余りもあるが、途中の街から乗り込もうものなら、扉をあければもうみっちみちである。
しかも、地方に行くほど駅が減る。1時間停車しないということもあった。つまり、長時間、めちゃ揺れる車内に、みちみち。
私はその日の夕方、とある観光地から別の観光地に向かう鉄道に乗り込んだ。そして、普通に行き先を間違えた。
動揺を押し隠して途中下車し、優しい駅員の指示のもと折り返しの電車を待った。折り返しの電車が来るころには、空は暗く、月が輝いていた。
やたら笑顔の駅員にはにかみながら、私はやってきた車両に乗り込んだ。
扉を開けると、わぁ……人がみっしりしていたぁ……。
足の踏む場もないほどの人の密集具合に、育ちのいい小学生ほどもあるバカみたいにでかいリュックを背負っていた私は、車両にいることさえ不可能なのではないか思った。
行き場所を失い、半分外みたいな場所に追いやられた私は、そこが電車の連結部であることに気づいた。(賢いので)
日本の電車の連結部は大抵、人間がおっこちて線路脇のゴミにならないように何かしらで覆われている。だがその車両は違った。
連結部の左右は吹き抜けで、端的に言うとめちゃくちゃ危なかった。
だが、私の居場所はそこにしかなかった。私は肩の荷を慎重に下ろし、それに腰掛ける形で車両入り口の扉に向かい合った。バランスを崩すとそのまま車両から脱落する可能性が大いにあったので、足を広く開き、腕は胸の前で組んだ。RPGのボスみたいな座り方だな、と思った。
それからしばらく、私は連結部の主だった。
どれぐらい動的不動の時間が過ぎたか、12、3歳の少年が、扉を開いて入ってきた。
続きはまた今度書く。
さて、続き。
少年の年齢は私の推測である。見慣れた日本人ならともかく、他人種の正確な年齢など私にとっては一目見て分かるものではない。
ただ、少年は成人男性の顎ぐらいの身長でスポーツ刈りだった。よれよれのシャツを着て、よれよれのズボンを履いていた。
少し話は逸れるが、私がタイを訪れ、タイ人と出会って抱いた強い印象の中に『なんか目がキラキラしている』というのがある。これは漫画的な表現ではあるけれど、これが一番適切な表現だと信じている。涙袋のせいだとか二重がどうこうといった美容的なことは知らないので詳しくはわからないが、タイ人の多くはどことなく目が大きく、それでいて黒目が抱き込んでいる光がたくさんあるように見えたのだ。今昔の写真で見返すとそんな風にも感じないのが不思議だが、とにかく、当時の印象としては、大人から子供まで、とにかくキラキラした瞳を持った人間が多く、特に子供たちはだいたいキラッキラだった。屈託のないとか、卑屈な感じじゃないとか(実態はともあれ)そんな感じだったのだ。ちなみに、現地でインド人もたくさん会ったが(外人にスーツを仕立てさせる押し売りが流行ってたっぽい)特にそんな印象はなかった。
さて、話を戻すと、その少年もまた瞳がキラキラしていた。表情は特に無かったと思う。連結部は車両の光で明るく、顔はよく見えたはずなのだが、今思い出せるのは瞳の印象だけである。
少年は私を見ると、なんか言った。タイ語は全くわからなかったので、私は唯一知っているタイ語で挨拶をした。
「サワディカ」どこでも使えて便利な挨拶だった。
すると少年は少し笑って、挨拶を返してくれた。浮かれた様子はまったく無かったので、彼にとっては電車の連結部で見知らぬ外国人がふんぞり返ってる状況など慣れたものだったのかもしれない。
私は気が楽になって、アイフォン(当時はオンボロの5を使っていた)を取り出してイヤフォンを耳に入れると、昨日ホテルのWi-Fiでダウンロードしていたアニメを見始めた。
画面に青白い顔でピンク色の制服を着た女子高生がウロウロしたり電気をつけたりするオープニングが流れ出すと、少年が近づいてきてそれを覗き込んだ。
私は少年の顔を見た。少年は、驚きとか、興奮とかそういう表情を浮かべてはいなかった。ただ、じっとアニメーションを見ていた。私は途中からイヤフォンのコードを抜いて、音量をあげた。
そのオープニングが終わると、別のアニメのオープニングを流した。それから、アイフォンに入れていた日本のアーティストのMVや、ディズニー映画のミュージカルシーンなんかをいくつか再生した。
私は映像を流し見しながら、少年を見た。少年はだいぶ負担のかかりそうな首の角度で、画面を凝視していた。
海外の反応集みたいな大きな反応を期待したが、そういうものはなかった。だが、私には分かるような気がしていた。幼い頃、実家で兄が怪物と戦うゲームを遊んでいた時、たぶん私もこんな風に画面を凝視していた気がする。
しばらくして、私は再生するのをやめて、アイフォンをしまおうとした。少年に見えるように持っているのが普通にしんどかったからである。
すると、少年がなにやらそれを止めた。
まだ何かが見たいのかと思ったが、どうやらそれも違う。自分の写真を撮ってほしいということを身振りやら表情で伝えてきた。
そんなことならとカメラを向けると、少年はポケットから小さな箱を取り出した。
それはたばこだった。
真っ黒な内蔵の写真が雑にプリントされた、やたらグロテスクなパッケージのタバコである。当時、タイのたばこは全て買う気が失せるようなパッケージをしていた。(今もかもしれない)
私は少しだけ衝撃を受けた。少年は明らかにタバコを吸っていい年齢ではない。タイではそういうものなのかもと思ったが、そんなわけないなとすぐに思い直した。
が、一介の腐れ大学生で、この国のことを何も知らない観光客である私には、目の前の未成年喫煙を止めるような義務も、権利もない。
少年は慣れた手つきでたばこを取り出すと火をつけて、口元に持っていって、動きを止めた。
どうやらポーズが決まったらしい。私は写真を撮り、それを見せた。
少年は素人のブレブレで光の加減も適当な写真を見て、口の片方だけを上げるやたらニヒルな笑い方をした。私も真似した。
それが気に入ったのか、少年は私にタバコの箱を差し出した。吸うか? ということらしい。
私は普段タバコを吸わない上に、未成年からこんなものを勧められるとは、などと色々と迷ったが、こんな経験も貴重だろうと一本いただいた。
少年にライターを借り、私はタバコに火をつけた。そして一口吸った。普通の煙たいタバコだった。
私と少年は少しの間、揺れる車両の連結部で煙をふかした。吐いた煙もタバコの先から出る副流煙も、すぐに飛ばされていった。
少年は私がたばこを吸い終わるのを待って、吸い殻を引き取ってくれた。そして、車両の外に放った。私はポイ捨てとかが嫌いな人間だったが、それをここで誇示してもしょうがないなと思ったのを覚えている。
私は車両に戻ろうとする少年の肩を少し叩いて、アイフォンの内カメラを見せた。一緒に写真を撮ろうという意思表示である。
少年は少し照れくさそうにしていたが、写真を撮る瞬間だけ何故かすごいハードボイルドな顔をしていた。たばこを吸っている写真を撮らせたり、なにかそういうのが流行っていたのかもしれない。
私は車両連結部の主に戻った。
私は時折車両の揺れによって荷物経由でケツを叩かれてバウンドしながら、ぼんやりと思った。
この電車は、私が乗り込んだ駅から、まだどこにも停車していない。私が乗り込んだ駅にはあの少年はいなかった。つまり、彼はどこか遠くからずっとこの電車に乗っているのだ。連結部で少しの時間を過ごしたが、親や兄弟と思しき誰かが様子を見に来ることも無かった。時刻はとっくに夜だった。平日だった。少年の様子は、何も特別なものではなかった。
あの子は家から離れた場所に働きに出ているのだろう。と結論づけた。
翻って白状すると、私は就職活動から逃げるためにバックパッカーをしていた。
ただし、当時の私は反省などしなかった。今もしていない。自分がやっていることは間違いじゃないし、こういうことしていたからこういう経験ができたわけだし。
だが、瞳だけはキラキラで、貧乏な風体の、サラリーマンみたいな貫禄の少年に、思うところがないわけでは無かった。
少年と自分を比較して、自分の子供時代を評価していたことにも気づいた。
意味のないことをした。と思ったと同時に、何かとても価値のあるイベントに参加したような気もした。
それから、電車はいくつかの停車地を経て、私を目的地へと運んだ。
電車を降りる時、さりげなく少年を探したが、彼は見当たらなかった。
私は何故かさらに少しだけ気分が良くなり、意気揚々と宿を探すことにした。
宿を探すのにはさらに1時間近くかかり、しかも宿のベッドで南京虫と格闘することになったため、私は激怒した。
結局、特に何かを伝えたい話ではない。
東京が憎いんですよ俺は
個々の東京人は憎くねえ 大学の先輩も親戚もいて、彼らはいい人たちだ
でも、それはそれとして、当たり前のように、注釈なしに東京の地名をバンバン出してくるインターネットの雰囲気はすげえムカつくし、毎回かなり新鮮な怒りを覚える
この前腹立ったのはこの記事だ: https://dailyportalz.jp/kiji/imagawa-yaki-pretending-be-pancakes
今川焼きをパンケーキ代わりにする?うーん、楽しそう!読もうっと!
丁寧に時間をかけて焼き上げた厚みのあるホットケーキ。板橋区大山の「ピノキオ」など、昔ながらの喫茶店でも人気のメニューだ。
ああ?"板橋区"?都道府県名言わずに、いきなり"区"ですか?ってことは……東京だな?
「東京のおいしいパンケーキ屋さんをご紹介!」みたいな記事でこの感じなら全然文句もねえ
しかし、こういう、おもしろ記事みたいなテイで、サラッと、東京の地名をなあ、なんの注釈もなしに、いきなり!ぶち込んでくるので!その度に!俺は!自衛もできず!!ムカつくんだよ!!!!
この記事、マジで東京圏を舞台にしてるってことを一切明かさずにいきなり"板橋区"だからタチが悪いよ
渋谷くらいならギリ許せんでもないが、板橋ってなんだよ んなローカル地名知るかよ
"区"つったら東京にしかない、って状況なんだったらまだわかるが、そんな事実はねえ
http://www.tt.rim.or.jp/~ishato/tiri/cities/seirei.htm
これがいきなり「安芸区の〜」だったらどう思うかって話だ はあ?何?どこ?知らねえぞそんなとこ、テメーの世界が全てだと思うなよ、ローカルメディアならまだしも、そんな括りじゃねえだろ、このサイト! そう思うんですよ
いっそ「東京を中心とした情報をまとめる、関東人専用のおもしろサイトです。都道府県名に言及のない地名はすべて東京都のものです。田舎者お断り!」くらい書いてるサイトなら文句はねえが、いちおう万人に開かれてるってえ体裁のサイトでやることかい!これが!!
コロナちゃん、実店舗ぶっ殺し力が高くて、俺は本当に推しているんだ
東京のパワーの中核をなしていた、「いろんな店が密集している、いろんな場所に行ける、たくさん人がいる」を全部潰してくれるんじゃないかと思ってるんだ 全部は無理でも、多少は……
そういうことなんだよな
東京のギチギチライブハウスの映像とか、昔は「すげーなあ!」と思って見てたけど、今見ると「うわ……」って感じだもん 確実に潮目が変わっている
もう少し粘って、この意識を定着させてほしい
実店舗に行くのなんて無駄、全部オンラインでOK!人と直接会う意味なんてねえ、zoomでOK!そういう風潮を醸成してくれ!
東京を、ただ人がギチギチに鮨詰めになってるだけのキモくて臭い街にしてやってくれ
田舎を、開放的な空間と安い地価を享受しつつ、都市部と受けられるサービスはそう変わらない極楽に変えてくれ
俺の願いはそれだけだ
20分のステージの為に片道1時間半かけて通うくらい熱狂したバンドがいる。
久しぶりに現場に行ってみようと思って、すっかり幻滅してしまった。
音楽でバカになって踊るとかの類じゃなく、知能が低い方のバカ。
かっこいいステージも痺れる爆音も記憶から薄れてしまうぐらい、バカの存在が鼻についた。
箱のキャパは250ぐらい、チケットの番号が230ぐらいだったので
スペースを探していたら、フロアの段差に10人ぐらい座り込んでた。
えぇ……
もちろん立っていればその分スペースが空くし詰められるし、
そのため、小さいプラコップを渡されて
注がれた飲み物を合図があるまで飲まないでね!っていう約束だったんだけど、
無視して飲み干して何度も注いでもらおうとする。
それで他の人の分がなくなってた。
鮨詰めの状態で身内で乳繰り合って周りにぶつかっても気にしなかったり、
曲中も身内同士で頭をナデナデナデナデナデナデしたり、
そんなのを開演前から終了までずーーーーーーーーーーーっと続けてる。
目に入れたくないなら移動すればいいって思われるかもしれないけど、
後ろのスペースがある所でやるならまだしも一番人が集まる前方中央でやってる。
嫌でも目に入る。
無理じゃん。
腹いせにゴツいシルバーだらけの拳で手を挙げるついでに殴ってきたり
モッシュ(笑)でとにかく人を突き飛ばすのが大好きな大柄な男に
肘で鳩尾を打たれて泣いたり
嫌な思いしたことはあってもやっぱりステージと音楽が好きだから足を運んでいたけど…。
バンド側が何か言ってくれる訳でもなく
足を止める方を選ぶと思う。一緒にされたくないし。
何度も言うけど音楽とステージは好きだから、多分CDが出たら買うし、
でも現場に関しては、好きなものを見たい気持ちより嫌いなものを見たくない気持ちの方が大きすぎる。
周りなんか気にならないぐらいのライブじゃないってことなのか、
自分が神経質すぎるだけなのか、
その両方なのか定かじゃないが、
"○○が大阪に冷たい"
その他の田舎民や出稼ぎ労働者であるという事実をまず念頭に考えよう。
するとその人たちがマウント取れるのは
よく分かってない「北海道」でもなく
残ったのはその他の県であり
自分たちが担ぎ上げている東京に劣る存在としてこき下ろすのに都合のいい存在。
だから地元東北でも存在感のない名古屋でもよくわからん北海道でもなく
TVで露出しやすく馬鹿にしやすい大阪を攻撃対象に捉えている。
もう一つの理由としては、大阪が都会としての機能を持っていながら
大阪以外の県の人間に対しても差別なく接しているのが大層気に入らないのだ。
よそ者の集まりである関東では自分たちの地元の言語でしゃべるなど持っての他で
出稼ぎ労働者たちである彼らは地元というアイデンティティを押し殺しながら日々車両に鮨詰めにされる日々を送っている。
そんな中でTVに写る大阪人は自我を持ち品性の欠片も無い地元言語でベラベラ面白おかしくお話しているわけである。
それを見て快く思う人間の方が多ければ政治は何もしなくても良い方向に転がるだろう。
現実世界ではサイレントマジョリティの彼らもネットでは声高に自我を膨張させ大阪バッシングにいそしむことができる。
彼らにとってはネット世界こそが現実世界の「大阪」の代わりなのだ。
だからこそ現実世界の大阪に住む人間たちに殺意を持ち怒りを持ち憎しみを持ち、そして羨望を持っている。
残念ながらその行為では何も解決することはないが、彼らは目の前のニンジンをかじるのに精いっぱいの生活を送っているため、
決して気づくことはないし改めることはない。報われることもないだろう。
当の大阪人たちはというと話題にされることをむしろ喜んでいるフシがあり、
俺たちはこんなに注目されているんだ!と上機嫌であるか、
それよりも目の前の話に夢中で気にかけていられないといった態度だ。
ネット上でも大阪人たちの反応が冷ややかというかどちらかというと冷静なのも
怒りの感情の正体には出稼ぎ労働者たちの「俺たちも大阪に生まれていれば好き勝手できたのに」という気持ちを無意識に察しているからかもしれない。
哀れみの心を持って自らガス抜きの対象として甘んじている大阪人たちがいる限り、
ネット社会の地元ヘイトは大阪バッシングによってバランスが調停されるだろう。
逆に千代田区・中央区・港区・渋谷区に産まれ住む、原初の都会人たちは
大阪人に対して羨望の欠片もなく面白い動物くらいの認識なので、
そもそも憎しみを抱くことすらない。
くらいの。
えーそうなのー?
明石焼きなんてのもあるぞ!酒に合うぞ!
わーおいしそー!
僕の職場はその19階
急ぎ足でビルに入るとちょうど1階にエレベータが着いたところで、
ぞろぞろ人が乗り込んでいるところだった
僕もそのエレベータに飛び乗る
ぎりぎり始業に間に合いそうだ
ホッとして、エレベータのボタンに目をやると、19階だけ押されていない
30人もいて19階に降りたいのは僕だけか
僕以外の29人は10秒遅れるということだ
自分しか下りなくても構いやしない、19階を押したらいいじゃないか
そうすれば、自分の到着が十数秒遅れるだけで、29名分の10秒が短縮される
いやいや、、、、
と、そんな葛藤をしているうちにエレベータは19階を過ぎてしまい、
こんなの僕だけ?
昔は、東京本社の人間が大阪支社に出張ともなれば、宿泊が前提。
遠路はるばるおこし下さいまして、ということで、一席設けて
それがいまや、朝10時から夕方5時までの会議を梯子して日帰り出張が
当たり前になった。
暖かい布団は窮屈な自由席に、暖かい夕食はワゴンの弁当になった。
Cルートが出来ても日本人は幸せにならないよ。朝6時八王子始発の
リニアにドブネズミ色のスーツを着たサラリーマンが鮨詰めになって、
大阪で8時30分から始まる会議の資料を轟音が鳴り響く長大なトンネルの中で読む。それがCルート。
一方、会議を早めに終えて、夕暮れの南アルプスを眺めながら読書しつつ、
「やったー、パパ!ありがとう!」
「なあに、今日は良夫の誕生日じゃないか!土産が買えたのもBルートのお陰だ。」
「何ですの?そのBルートって。」
「いいかい、ここが名古屋、ここの南アルプスを抜けて、ほおらここが諏訪湖・・・」
「いやん!くすぐったいですわ、あなたん!やめてください!あっ!あっ!」
「こりゃひとつ、良夫の誕生日プレゼントに可愛い弟か妹をこしらえて
やらにゃいかんな。」
「まあ、あなたったらん♪」
これがBルート。.
ここの南武線は
・毎朝、「前の列車が出発したら、もう次の列車が見えるくらい」の間隔で運行。
・でも乗客は鮨詰め。
・駅には8両収まる幅があるのに、6両編成で走らせている。
という環境。
2階建てなんて贅沢言わずとも、8両にすりゃ良いじゃん、てなものだが、そうはいかない。
ホームの階段が、これ以上の人間を受け止める余裕を持たないからだ。
隣駅から川崎駅に行くまでよりも、
川崎駅のホームに入ってから改札口を出るまでの方が時間がかかる、なんて事もザラ。
列車の運行は万事滞りないのに、川崎で階段に人の渋滞が出来て降りられないから、
後続列車が一時停車するなんて事もザラ。
これじゃ運搬能力の向上なんてとてもとても。
それでも、一人も人がいなくなれば、それなりにデカい駅だ。
計画段階で、これ以上大きく作る勇気は無かったろう。
人間は、予想以上に増えすぎた。
そう考えると、あの時代に御堂筋をブチ開いた関一は偉いな。
妊娠8ヶ月のお腹が大きい私
新幹線は混雑していた。
お腹も大きいし1本見送り比較的空いている次の便に乗車した。
車内では立っていたがまあ、品川まで25分くらいなので大丈夫だろうと思っていた。
お腹がつぶれたらどうしようと急に不安になり、降りようとしたが
既に扉が閉まってしまった。
急に恐怖心が起こり、お腹がが張って痛くなった。
パニックをおこしてしまい、具合が悪くなり周囲に助けを求めた。
その後はあまりよく覚えていないが
混雑した中、皆さんが席を譲ってくれたり介抱してくださった。
私は32年間生きていて、女性だけど弱者の立場に立った事がなかった。
心身共に健康で程よく鈍感だ。
自分の体の自由がきかない事がこんなに不安だとは思わなかった。
はがゆくて、悲しくて、怖くて、不安。
今までは守る側にいた私が守られる側になった。
混雑した車内で私を守ってくれたみなさんありがとう。
みなさんが空間を空けてくれたり、声をかけてくれて安心しました。
差し伸べてくれた手にすがりました。
席を譲ってくださった方、助けて頂いた方みなさんありがとうございます。
今日は仕事が休みだったので久々に姫路の映画館に最近封切されたアニメ『ドラえもん のび太のK-1初参戦』を観ようと思って姫路までバスに乗って行った。すると駅前のヤマトヤシキのあたりが何だか騒々しいので、『ドラえもん のび太のK-1初参戦』の上映時間にはまだ間があったので野次馬根性に任せて何が起きたのかと行ってみたところ人が鮨詰めの状態で入ろうとしておりその傍らでは人々が両脇に大量のトイレットペーパーを抱えて出てきた。
「一体何があったんですか」
「第二次オイルショックです」
「また石油の値段が高くなるんですか」
「本当に大変ですね」
「それは本当にお気の毒です」
「それはそれとしてどうしてトイレットペーパーを買い占めようとするんですか」
「第二次オイルショックだからです」
「いやそれは分かったんですが何故トイレットペーパーを買い占めるんですか」
「これ以上話しかけないで下さい紙が無くなっちゃうじゃないですか先着二百名の特典なんですよ」
そういう不毛極まりない会話が弾んだところで突然神姫バスの停車場から爆音が聞こえてそちらを振り返ってみると煙と炎が舞い上がっていた。一体どうしたというのか。
「あちらは山陽百貨店だからやはりトイレットペーパーが無くなって暴動が起きたようですね」
さっきとは別の人が私に話しかけてきた。全く物騒な世の中だ。私はこんなことはしていられない。『ドラえもん のび太のK-1初参戦』を観なければいけない。今回は特別にミルコ・クロコップがのび太の対戦相手として出演する。コマーシャルで流れていた予告編がカッコ良かった。
「僕はお前を秒殺する!!」
そう言えば『魁!!クロマティ高校』という映画が放映されたそうだがクロマティがクレームをつけたという一件を思い出した。これがアメリカのフロリダ州に1953年という経済的繁栄の最中に生まれた彼の真摯な怒りの発露だったのだろう。全くアメリカ人はやる時は容赦が無い。ワールド・ベースボール・クラシックの審判問題を考えてみたら分かる(私は見ていないのだが)。今回の第二次オイルショックもアメリカが抱える経済的な病巣のせいだろう。
「どうしました?」
さっきの人が話しかけてきた。私は話しかけられてきたことを忘れていたので慌てて思考を元に戻した。一旦脇に逸れた思考が元に戻るまでに15秒かかるという話を聞いたことがある。その15秒間が命取りになるかもしれないので用心する必要がある。私は腰に挿した日本当の柄の手ごたえを確かめた。ちなみに私はいつも日本刀を持ち歩いているので(例えば自動販売機の下に落ちたお釣りを探したりする目的で)三島由紀夫に間違えられることが多い。
「第二次オイルショックだそうですね」
「そうみたいですね」
「あちらでもトイレットペーパーが売れてるみたいですね」
「そうみたいですね」
「何故オイルショックが起きたらトイレットペーパーが売れるんでしょう?」
「そうみたいですね」
「紙は石油から作られているんでしょうか?」
「そうみたいですね」
疑問が解決したので私は本来の目的を思い出して『ドラえもん のび太のK-1初参戦』を観に行った。すると何かおかしい。よく観ると出ていたのはミルコ・クロコップではなく長州小力だった。
「橋本ぉー!!」
「僕は野比のび太だよ」
何だか力が抜けてしまったので家に帰ろうと思い神姫バスの停車場に向かったところバスが一台もない。そういえばオイルショックと聞いていたがガソリンが尽きたのだろうかと思い事務のおばちゃんに聞いたところ今日のバスはもう全部出てしまったといわれた。それで一夜を過ごすためにひとまず手近なビジネスホテルに泊まった。今そのホテルから書いている。ここは13階なのだけど窓の外に頭頂部から砕けた灰色の脳味噌を飛び散らした黒髪の痩せた女が般若のような形相でこちらを見ていたのでとりあえず日本刀で切ってみたらそのまま落ちていった。