はてなキーワード: 珠洲とは
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http://anond.hatelabo.jp/20150715014005
(づつきです)
通常のネットは当局から禁ぜられ程なく使えなくなったが、「もう一つのネット」は問題なく作用した。
珠洲子は住まいのある東京都北区赤羽(Akabane東京都の地名。濁音化せずに日本語で書くとAkahane。ハネhaneは元来ハニhaniであり、ハニは「土」を意味する。すなわち赤いハニ(red soil)が地名の由来となっている)から脱出するまで1度だけ襲撃を受けた。都内から離れた後は襲撃はなく、追手はひとまず撒けたことになる。襲撃した相手はハーバード大学3刀流の使い手だった。この流派は2050年代にネットが身体の操縦に役立つ技術になった際、ヨーヨー・マビルマーク・ザッカーバーゲイツ・アダムズシニアジュニア3世を名乗る、ハーバード大学を後に退学になる男によって創始された。3つの刀を間違った日本の文化に即して扱うもので、その内の一つは特に電子的に管理し中空に浮かせておくのが特徴だと師匠から教わった。『名探偵ホームズ』には「バリツ」という武術が登場する。シャーロキアンのこれでもかって程の執拗かつ綿密な研究のおかげで、「バリツ」が19世紀末ロンドンで実際に教示されたことは21世紀後半の現代ではよく知られている。日本の作法が伝言ゲームで面白く意味を持つ。ハーバード大学3刀流はこの時代の「バリツ」なのだ。
珠洲子はこうした刺客(Shikakuここでは珠洲子を追捕するために派遣されたエージェント)を2秒半ほどで退けた。刀が落ちて金属音を立てるのを尻目(Shirime)に聴きながら、珠洲子は師匠(Sishou)の事を思い出した(remember)。珠洲子の師匠の一人は陳老師(Chen-raoshi、チンさん)という名前で、昔幕府があった場所の名の付いた優秀な弟子を手掛けたことで知られる。珠洲子もそのまた優秀な弟子だ。
「教えの歴史的な古さが強さをもたらすのでない。当然新しいからと言って勝つわけではない。よかったのう!」
チンさんの教えはよく分からないこともあったけれど、この言葉は間違っていない。歴史の重みはある種、不必要だ。必要なのは揃っている道具で今考えることだ。
2時間42分後、珠洲子は岐阜県関市に到着した。明治・昭和・平成、さらにその次と次の元号の時に行政区の変遷があり関市も随分様相を変えた。人も変わった。ここには鷲見(すみ)太郎という政治家がいる。彼女は彼に会いに来た。事前に「もう一つのネット体系」を経由し短報を送っておいた。鷲見はネットが身体を操作し始めた50年代に先鋭的に反対を唱えた男で、のち中央政界で1期務め、現在は岐阜県議の職にある。珠洲子の主人は、鷲見にアポイントを取るよう手筈を整えていた。珠洲子は鷲見の邸宅に予告通り忍びこんだ。鷲見は報せを受けてから警備を敢えて「普通」にして待っていた。政治家の邸宅における警備を縫うことは「普通」は不可能。しかし21時4分現在、書斎にいる鷲見の眼前に可愛らしい女性が難なく現れ、彼に簡単なブリーフィングを伝えていた。当然、ブリーフィングよりも忍びこんだ事実の方が、より雄弁に「もう一つのネット」の機能と彼女の任務とを物語っていた。
「私の反ネット勢力のツテを頼りたいのだろう」「左様です」「あまり役に立たないと思う」「何故です…」「かつてネットが身体の制御に使用されようとしたとき、多くの人が危険だと唱えた。その内に先鋭化して回線切ってネットを捨てるべきと考える者が現れた。」「…」「スイッチのようにオンとオフだけで考えてはならなかったのだ」「?」「ネットを捨てるべきと言った連中はその内コンピュータが不用と言い、テレビや暇つぶしの携帯ゲームが害悪だと訴え、車も複写機も信号機も要らない、電子的なデバイスをあれこれと捨てようとした」「…」「そしてついに眼鏡がいらない、とかスリッパが要らない、もっと自然に過ごそう! とか言い始めた」「…」「そうなると火薬も羅針盤もいらないし、文字もいらないし衣服もいらないし石器も言語も要らなくなる…ということに多くの人間は、どこかの段階で、気づいた」「??」「人間は道具を使う。ネットに異を唱えたはいいが、どこまで自分が道具を持ち、使っていたのか。そこに無自覚に、ネットだけをつついていたんだ」「反ネット勢力の名簿はいただけないのですか?」「勿論差し上げよう。だが今話したごときの懊悩、えっと悩みね。…悩み。道具に関する悩みを私や私と同じような人間は共有している。だから私の同胞では…ネットをストップしようと考えただけの時代の人間ではダメだ。おわかりいただけたかな?」「…わかりました」
鷲見の邸宅から去り、関市内吾妻町の、関市が幾度も合併する前からあるホテルに赴く。「もう一つのネット」でホテルにチェックインし、「もう一つのネット」で架空の銀行口座から架空の資金をホテルに支払う。自分の部屋でモルツビールを空けながら10時のニュースを見つつ、鷲見からもらったリストを網膜で走査する。
2缶目がもう少しで飲み干せるぐらいの時に、関係者の中に元カレ(Moto-kare昔の男性の交際相手)の名前を見付けた。「???」
インターネットは誰が管理しているか? ほとんどの人間はこれを気にしない。
インターネットが普及して80年ほどが経過した。無線による生体ネット接続が通用し、網膜に映して必要な情報を得ることが一般化した。
「昔の人間は、網膜の情報なくしてどのように車の運転をしていたのだろうか?」なんて話題が小学校の生活の授業で登場する。
観光地や官公庁の案内が、紙や吊るされた案内掲示板によって確認されていたという祖母の昔話に驚いた。
最近は微力な電力を提供することで、人間の動作の補助をネット経由で行なうことも多くなった。初めは介護施設で試験的に創められ、今では街を歩くときに障害物などに対応して移動の補助を行ないうるようになった。すでに老人だけでなく、生体ネットを持つ者の多くが、この動作補助アプリケーションをダウンロードして日々を送っている。視力を眼鏡で矯正した往時の人々と同様に、動作を矯正して正しい、より強い動作が可能になった。
かつてIPアドレスやドメインの管理はアメリカの民間団体であるICANNによって行なわれていた。インターネットの利便性が人間の身体性にまで及ぶようになった時、些細な、かつ歴史的に何度もあったような、単純な理由をもって、インターネットの支配権をめぐる争いが起こった。その結果、新たな管理者が現れた、ネットを管理している者の正体は複合的な国家とそれから委嘱された営利団体により巧妙に隠されて一般の人間には見えにくくなっている。そもそもインターネットは大変便利で使うに越したことは無いのだが、その仕組みを考えたり理解したりすることは、一般人には極めて困難だ。そしてネットの管理者はその点を突き、管理者の意に沿わない人のネット接続をはじくようにした。ネットは警察権と癒合したのだ。「犯罪者」は、ネットを外された瞬間、見事にぎこちなく、身体動作がガタガタになる。古典的表現で言うなら眼鏡や杖を外されるようなものだ。諸々の視覚情報も得られず、たくさんあるネット認証ゲートの使用もできない。
誰だかよくわからない管理者が露骨にその支配権を表明し、強制的な徴兵や労働を人民に課すようになった。逆らえばネット接続を外されてしまう。そうすれば生きてはいけない。ネットを梃子に人々はたやすく支配された。私はその状況を打破するために、1990年代後半に造られた「もう一つのネット体系」の復原を試み、ほとんど成功させた。直接のデータは紙媒体、それも感熱紙に印刷しており当局もそこまで情報をカバーしていなかったことは幸運だった。ほとんど歴史学者みたいなことを続けて、私はwwwに寄生する形で改良を重ねついに実用段階を迎えた。
「通常」のネットがある日突然使えなくなった。既に私の研究は当局に露見しており、ネットの不正使用ということで逮捕されると網膜に通告がなされた。25分後に警察が到着するという。
私の家は中山といい、代々貴族の家系で家格は羽林家(Urin‐ke)というレベルで中級の貴族だった。貴族制度などから恩恵を得る時代はとうに過ぎて、羽林家だからといって何か得するわけでもない。一つ変ったことといえば、随身(Zuijin)として古代(Ancient)から忍者(Shinobi)として仕える秦(Hata)という一族(Family)がいることぐらいだ。21世紀の今日び忍者なんて流行らず、一族の最後の生き残りであるくのいち(Kunoichi)珠洲子が一人仕えるのみだ。それが必要かどうかは措くが、彼女は先祖からの知識や知恵や武術を高いレベルで継承したという。私より4つ年上だから今年33になるのだろうか。栗毛の短い髪に大きな二重瞼の瞳。顔の造形は美しく、飲み屋でよくナンパされるという。高い運動神経は美しい身体曲線をつくる。足首がキュッとした美脚を30代でも維持していることが自慢なんだよー、とよく私に話しかける。
珠洲子を呼ぶ。「…ここに」時代劇じゃないんだからそんな台詞言わなくてもいいのだが。裾の短い、くのいちの装束を身に付けた珠洲子が現れる。本当にくのいちはこんな格好してたのか? 謎だ。「君に生体接続を試みる。別種のネットだ。」「?」「私は拘禁される。…が君は逃げのびて、支配的なネット規制の現状を打破してほしい」「…かしこまりました」「仕組み、多分使えば慣れるはずだ」「…かしこまりました、任務ということでよろしいですね」「そうだ、任務だ」任務といえば逆らえないのが随身の定め。酷い話だが、彼女を脱出させる唯一の方法だ。別れの際も、普段のように会話できれば良かったのだが。